説明

治療用組成物

血糖降下薬として適する経口組成物は、ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉から得られる、特定の分子量を有する単離物を含む。この単離物は、分子量カットオフ濾過によって測定した場合に、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する。ヒト患者におけるグルコース代謝は、ステルキュリア・ウレンス(Sterculia urens)の浸出物などの、非代謝性、水膨潤性多糖及びグアーガムなどの水溶性多糖とともに、ギムネマ・シルベスタの葉から得られる先述の単離物を含有する剤形によって制御することができる。必要に応じて、この経口組成物は、生理的に許容されるカルシウム源、生理的に許容される金属炭酸塩、生理的に許容されるクロム塩及び/又は生理的に許容されるバナジウム化合物を含むことができる。さらに、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、d−α−トコフェロール、カロテノイド、リコピン、ルテインなどの抗酸化剤も含ませることができる。この組成物は、コレステロール血症、肥満、糖尿病の慢性的合併症の軽減、及び先述した疾病に対する素因がある患者の予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2002年11月12日に出願された同時係属の米国特許出願10/292,831号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、天然に存在する植物由来成分による、ヒト患者におけるグルコース代謝の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト血流中のグルコースの濃度は、正常な健康を保つために、比較的狭い範囲(60から120mg/dl血液)内に調節されなければならない。血中グルコースが低くなりすぎると、低血糖として知られる症状が生じ、失神、脱力感、頭痛、意識混濁及び性格の変化などの症候を伴う。重度の低血糖は、けいれん、昏睡及び死に至ることがある。過剰な血中グルコース、すなわち高血糖は、過剰な尿産生、喉の渇き、体重減少、疲労を引き起こし、最も重症な症例では、脱水、昏睡及び死を招く。慢性的な高血糖は、過剰なグルコースと細胞、組織及び臓器中のタンパク質との間の化学反応のために、組織に損傷を引き起こす。この損傷は、失明、腎不全、インポテンツ、アテローム性硬化症及び感染症に対する感染のし易さの増加という糖尿病性合併症を引き起こすと考えられている。
【0004】
膵臓は、血中グルコースの濃度を制御するホルモンを作る。インシュリンは、血中グルコースレベルを低下させる。食後、グルコースレベルが上昇すると、膵臓はインシュリンを分泌し、筋肉及びその他の組織に、血流からグルコースを取り込ませる。グルカゴンは、血中グルコースレベルを上昇させる。血中グルコースレベルが低下すると、膵臓は、貯蔵されているグルコースを利用可能にするように肝臓にシグナルを出すために、グルカゴンを分泌する。
【0005】
第三のグルコース制御ホルモンであるアミリンは、1987年に発見された。現在では、生理学者は、3つのホルモンが全て、グルコース代謝の複雑な状況において役割を果たしていると、一般に考えている。アミリンの化学構造並びに筋肉及び膵臓組織に対するアミリンの代謝作用が、最近、解明された。アミリンは、インシュリンと連携して、ある種の状況下で、インシュリンのグルコース低下効果を和らげて、食後に、肝臓グリコーゲンの補給を助け、過剰なグルコースからの脂肪の合成を促進するといわれている。その結果、アミリンは、グルカゴンのように、血中グルコースレベルを上昇させることができる。
【0006】
糖尿病には、持続的且つ病的な血中グルコース濃度の上昇が伴う。糖尿病は、アメリカでの代表的な死因の一つであり、全死亡数の約5%を占める。糖尿病は、若年性糖尿病としても知られるI型、又はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)、及び成人発症性糖尿病としても知られるII型、又は非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)という、2つの主要なサブクラスに分けられる。
【0007】
米国糖尿病協会によると、アメリカには、100万人を超える若年性糖尿病患者が存在する。糖尿病は、自己免疫疾患の一形態である。患者によって産生された自己抗体が、膵臓のインシュリン産生細胞を完全に又は部分的に破壊する。若年性糖尿病患者は、従って、終生、外来インシュリンを受けなければならない。治療を行わないと、過剰なアシドーシス、脱水、腎障害及び死が生じる場合がある。治療を行った場合でも、失明、アテローム性硬化症及びインポテンツなどの合併症が起こり得る。
【0008】
アメリカには、II型(成人発症性)糖尿病患者と診断された者が500万人を超えて存在する。II型疾患は、通常、中年の間に発症し、正確な原因は不明である。II型糖尿病患者では、食後の血中グルコースレベルの上昇が、膵臓によるインシュリン産生を適切に刺激しない。さらに、末梢組織は、一般に、インシュリンの効果に対して抵抗性がある。生じた高い血中グルコースレベル(高血糖)は、多大な組織障害を引き起こし得る。II型糖尿病患者は、しばしば、インシュリン抵抗性と称される。II型糖尿病患者は、身体がインシュリン抵抗性に打ち勝とうとするので、血漿インシュリンレベルが通常より高いことが多い(高インシュリン血症)。現在では、一部の研究者は、高インシュリン血症が、高血圧、高レベルの循環低密度リポタンパク質(LDL)、及び通常より低いレベルの善玉高密度リポタンパク質(HDL)の発生原因因子である可能性があると考えている。II形糖尿病の早期では、穏やかなインシュリン抵抗性は、インシュリン分泌の増加によって補償され得るが、進行した病状では、インシュリン分泌も損なわれる。II型糖尿病の治療は、インシュリン抵抗性とインシュリン分泌不全の両方に対処することが好ましい。
【0009】
インシュリン抵抗性及び高インシュリン血症は、耐糖能障害及び代謝性肥満という、かなりの健康上のリスクを惹起する2つの他の代謝性疾患とも関連している。耐糖能障害は、食前には正常なグルコースレベルが、食後に、上昇したレベルになる(高血糖)傾向があることを特徴とする。世界保健機構によると、20歳から74歳までのアメリカ人の約11%が、耐糖能障害を有するものと推定されている。これらの個体は、糖尿病及び冠動脈疾患に対するリスクがより高いと考えられている。
【0010】
肥満にも、インシュリン抵抗性が伴う場合がある。肥満、耐糖能障害及びII型糖尿病の間の因果関係が提唱されているが、生理的な基礎は未だ確立されていない。ヒトがインシュリン抵抗性と高インシュリン血症を発症した後、疾病過程の後期にならないと、耐糖能障害及び糖尿病が臨床的には、観察及び診断されないと、一部の研究者は考えている。
【0011】
インシュリン抵抗性には、しばしば、高血圧、冠動脈疾患(アテローム性硬化症)及び乳酸アシドーシス、並びに関連する病状が付随する。これらの病状間の基礎的な関係及び治療法は、確立されていない。
【0012】
インシュリン及びスルホニル尿素(経口低血糖治療剤)は、今日、アメリカで処方されている糖尿病薬の2つの主要なクラスである。インシュリンがI型糖尿病及びII型糖尿病の両方に処方されているのに対して、スルホニル尿素は、通常、II型糖尿病患者のみに処方されている。スルホニル尿素は、自然のインシュリン分泌を刺激し、インシュリン抵抗性を低下させる。これらの化合物は、代謝におけるインシュリンの機能を代替しない。スルホニル尿素を服用している患者の約1/3は、スルホニル尿素に対して抵抗状態となる。II型糖尿病患者のなかには、スルホニル尿素療法に対して応答しない者がいる。スルホニル尿素による初期治療に応答する患者のうち5から10%は、約10年後には、スルホニル尿素の有効性を喪失する可能性がある。
【0013】
インシュリン自体は、比較的、治療濃度域が狭い。血中グルコースが極度に低下するので、比較的高いインシュリン用量は、低血糖性ショックを引き起こし得る。低用量又は低頻度の投薬は、高血糖症をもたらし得る。
【0014】
ヨーロッパでは、経口低血糖剤の他の2つのクラス、すなわち、ビグアニドとα−グルコシダーゼ阻害剤が用いられている。ビグアニドは、肝臓でのグルコース産生を低下させ、グルコース吸収を制限することによって、効果を発揮する。ビグアニドはカナダでも使用されているが、死亡の発生が増加しているために、アメリカでは禁止されている。α−グルコシダーゼ阻害剤は、一部のヨーロッパ諸国で売られているが、アメリカで使用するためのFDAの認可は得られていない。これらの薬物は、摂取された食物の取り込みを遅らせることによって、高い血中グルコースレベルを低下させる。副作用には、鼓腸、下痢及び腹痛などがある。
【0015】
Hijiらの米国特許第4,761,286号は、グルコースの吸収を阻害するために、腸管によってグルコースとして吸収される食物とともに、ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉に由来する水性抽出物を使用できることを開示している。Chattaerji、国際特許出願WO 95/10292は、G. シルベスタの葉から得られた抽出物を、生物不活性な多糖(すなわち、患者によって代謝可能でない多糖)とともに経口投与することによって、ヒト患者でのグルコース代謝が効果的に調節され得ることを報告した。
【0016】
しかしながら、必要に応じて、非代謝性、水膨潤性の多糖及び水溶性多糖と組み合わせて、G. シルベスタの葉から得られた比較的高分子量の単離物を経口投与することによって、ヒト患者におけるグルコース代謝を効果的に調節できることが、本発明によって明らかとなった。
【発明の開示】
【0017】
発明の要約
本発明は、ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉から得られた比較的高分子量(HMW)の単離物を提供する。本発明は、水溶性の多糖、好ましくは、グアーガムとともに、前記単離物と、非代謝性、水膨潤性の多糖(好ましくは、ステルキュリア・ウレンス(Sterculia urens)の浸出物)とを、それぞれ、好ましくは5:1から約1:5、より好ましくは約2:1から約1:2の範囲の重量比で、含有する治療用剤形も包含する。上記単離物は、ギムネマ・シルベスタの葉のエタノール抽出の後、インシュリン分泌活性成分を抽出物から単離することによって取得することができる。単離されたインシュリン分泌活性成分は、分子量カットオフ濾過に基づくと、少なくとも約3000ダルトンの分子サイズを有する高分子量画分である。
【0018】
本発明の別の側面は、哺乳動物の血中グルコースレベルを少なくとも安定化し、好ましくは減少させるのに十分な、成分の上記組合せの有効量を、前記哺乳動物に経口投与することによって、哺乳動物、例えば、ヒト患者、家庭のペットなどにおけるグルコース代謝を調節する方法である。
【0019】
本発明の単離物は、糖尿病の発症を遅延させるための栄養補助食品として有用であり、血糖レベルの調節を補助し、糖尿病、コレステロール血症又は肥満に対する遺伝的素因がある者における糖尿病の発症の可能性を低減するために、I型糖尿病患者に対する、インシュリンとの補助療法として有用である。本発明の単離物は、糖尿病性網膜症、コレステロール血症、及び心血管疾患、褥瘡性潰瘍などの糖尿病の慢性合併症の治療に対しても有用である。
【0020】
ギムネマ・シルベスタは、ガガイモ科に属する植物である。この植物は、主として、中央及び西インド、熱帯アフリカ並びにオーストラリアに生息している。G.シルベスタの葉から得られる水性抽出物は、甘味物質の味を、一時的に阻害すると報告されている。また、インドでは、G.シルベスタの未加工の葉が、糖尿病を含む様々な病気に対する民間薬として使用されてきたという報告もある。全て比較的低分子量である、約14又は15の異なる化合物が、様々な技術によって、G.シルベスタの葉から単離されたことが報告されている(例えば、Stocklin, J. Agr. Food Chem., 1969,17(4): 704−708 and Sinsheimer, J. Pharm. Sci., 1970, 59(5):622−628を参照。)。米国特許第5,137,921号は、ギムネマ・シルベスタの葉から単離された低分子量の単糖(分子量146)であるConduritol Aが、活性な抗糖尿病因子であることを報告している。しかしながら、本発明の高分子量単離物が、G.シルベスタの葉の強力なインシュリン分泌活性成分であることが、本発明によって明らかとなった。
【0021】
G.シルベスタの葉のインシュリン分泌活性成分は、選択された分子量のインシュリン分泌活性画分を抽出物から単離するために、前記抽出物からのサイズ選択的濾過によって、新鮮なG.シルベスタの葉のアルコール水溶液抽出物から得られる。一つの好ましい実施形態において、得られた前記単離物は、分子量カットオフ(MWCO)濾過によって測定した場合に、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する。
【0022】
好ましくは、一価のC1からC4アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノールなど、最も好ましくはエタノール水溶液による、G.シルベスタの葉の抽出によって抽出物が得られる。次いで、G.シルベスタ抽出物のインシュリン分泌活性部分は、分子量カットオフ濾過によって単離される。特に、活性部分は、約3000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を通して、前記抽出物の水溶液を濾過することによって単離され、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する、膜によって保持された物質(すなわち、保持成分)が収集され、単離される。
【0023】
好ましくは、本発明の産物は、まず、アルコール水溶液、好ましくは、約40容量%のエタノールを含有するエタノール水溶液中に、周温で、少なくとも4時間、G. シルベスタの新鮮な葉を浸漬することによって調製される。好ましい実施形態において、葉は、少なくとも約18時間、水の中に浸漬され、次いで、少なくとも約40容量%のエタノール濃度を得るために、水にエタノールを加え、その後少なくとも約4時間にわたって、得られたエタノール水溶液中で浸漬を継続する。余分な固形物を除去するために、得られた液体抽出物を濾過し、エタノールを除去するために蒸留して、底に残った水溶液を得、この水溶液を硫酸で処理して、そのpHを約2以下の値まで下げ、酸に不溶性の得られた塩を沈殿させる。沈殿物を濾過によって除去し、水酸化ナトリウムでろ液を中和する。次いで、中和された抽出物を濃縮し、精製して、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有するギムネマ・シルベスタの葉のインシュリン分泌活性因子である、本発明の単離物を得る。
【0024】
保存寿命を延ばすために、次いで、この単離物は、好ましくは凍結乾燥され、本発明の態様を構成する経口剤形を製造するために、ステルキュリア・ウレンスの浸出物又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの、非代謝性、水膨潤性多糖と必要に応じて組み合わされる。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、「非代謝性多糖」という用語は、ヒト患者によって顕著に代謝されない多糖を表す。Whiteに付与された米国特許第4,959,466号に開示されている、部分的にエステル化されたオリゴ糖及び多糖も、非代謝性多糖としての本用途に適する。非代謝性、水膨潤性多糖の一例には、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース加水分解産物、デンプン加水分解産物、オート麦繊維などが含まれる。好ましくは、非代謝性多糖は、インドで見られ、容易に購入できる樹木であるS.ウレンスの乾燥された浸出物である。
【0025】
水溶性多糖の一例は、グアーガム、イナゴマメガム、キサンタンガム、トラガカントゴム、アラビアゴム、アカシアゴムなどである。
【0026】
水溶性多糖は、本経口組成物の総多糖含量の少なくとも約10重量%を占める。好ましくは、水溶性多糖に対する、水膨潤性多糖の重量比は、それぞれ、約1:1から約1:3の範囲である。より好ましくは、重量比は約1:1である。
【0027】
さらに、本発明の経口組成物は、生理的に許容されるカルシウム源、生理的に許容される炭酸金属塩、生理的に許容されるクロム塩及び/又は生理的に許容されるバナジウム化合物を含むことができる。生理的に許容される抗酸化剤も含まれ得る。
【0028】
本組成物に使用するのに適したカルシウム源の一例は、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどの有機酸のカルシウム塩である。
【0029】
炭酸金属塩の一例は、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び重炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩及び重炭酸塩である。
【0030】
本組成物のインシュリン分泌特性は、クロム塩及びバナジウム化合物によって供給することができるクロムイオン及びバナジン酸イオンによって強化することができる。
【0031】
本組成物に使用するのに適したクロム塩の一例は、ニコチン酸クロム、ピコリン酸クロムなどの有機酸のクロム塩、並びに、所望されるクロムイオンとバナジン酸イオンとを与えることができるバナジン酸クロム[CVO]などの無機のクロム塩である。
【0032】
本用途に適したバナジウム化合物の一例は、硫酸バナジル[(VO)SO]、オルトバナジン酸[HVO]などである。
【0033】
所望であれば、本経口組成物は、アスコルビン酸(ビタミンC)、コレカルシフェロール(ビタミンD)、d−α−トコフェロール(ビタミンE)、β−カロテン(ビタミンA)、リコピン、ルテインなどのカロテノイドなど、本用途に適した、一以上の生理的に適合性のある抗酸化剤も含むことができる。
【0034】
前記単離物は、好ましくは、凍結乾燥され、それぞれ、約5:1から約1:5の範囲の重量比で、より好ましくは約2:1から約1:2の重量比で、非代謝性多糖と組み合わされる。最も好ましくは、非代謝性多糖に対する凍結乾燥された単離物の重量比は、約1:1.5である。得られた配合物は、次いで、経口投与用の硬ゼラチンカプセル中に詰めることができる。本発明の態様を構成する典型的なゼラチンカプセルは、約100から約200mgの凍結乾燥された単離物と、約150から約300mgのS. ウレンス浸出物と、を含有する。
【0035】
ヒト患者のグルコース代謝を調節するために該患者に投与されるべき投薬量及び治療上有効な量は、とりわけ、患者の年齢、体重及び状態に応じて変化するであろう。通常の一日投薬量は、好ましくは、約200mgから約900mg/日の凍結乾燥された単離物の範囲にあり、好ましくは、S. ウレンス浸出物などの非代謝性多糖の約300mgから約1350mgと組み合わされる。
【0036】
本明細書において使用される「治療上有効な量」という用語は、臨床医によって求められている、患者の生物学的又は医学的応答を惹起し得る前記単離物の量を意味する。
【0037】
約100mgの凍結乾燥された単離物と約150mgのS. ウレンス浸出物とを含有するカプセルを用いた好ましい投与スケジュールが、下表1に記されている。
【0038】
表1
投薬スケジュール
患者の診断 投薬スケジュール
高インシュリン血症 1−2カプセル b.i.d.
II型糖尿病(軽症) 2カプセル b.i.d.
II型糖尿病(重症) 2−3カプセル t.i.d.
I型糖尿病(軽症) 1カプセル b.i.d.
インシュリンを補助療法と用いたI型糖尿病(重症) 2カプセル t.i.d.
b.i.d=1日2回、t.i.d.=1日3回
【0039】
本発明の経口剤形は、高血糖を治療し、血清コレステロールレベルを低下する(すなわち、コレステロール血症を治療する)のに有用であり、糖尿病、コレステロール血症又は肥満に対して遺伝的に素因がある患者に対する予防薬としても非常に適している。例えば、家系に基づいて素因があると思われる妊婦は、各妊娠の全期間を通じて、先述の凍結乾燥された単離物の経口用量を服用することができる。このようにして、母親及び新生児の血糖レベルが上昇する可能性は、大幅に低減される。妊婦の場合、好ましい経口投薬量は、約300mgのS.ウレンス浸出物と組み合わせて1日2回与えられる、約200mgの凍結乾燥された単離物、すなわち、本発明の凍結乾燥された単離物と、S.ウレンス浸出物とをそれぞれ約2:3の重量比で含有する500mgのカプセル、1日2回である。本発明の単離物は、糖尿病性網膜症の治療にも有用である。
【0040】
先述した剤形に加え、本発明の経口組成物は、栄養ドリンクミックス粉末、健康スナックバー及び経口摂取用の同種の製品中に取り込ませることもできる。
【0041】
本発明の単離物は、本分野において周知の様々な手法によって、インシュリン分泌活性を評価することができる。例えば、インシュリン産生細胞は本発明の単離物で処理することができ、「Morgan et al., Diabetes 12:115−126(1963)」の二重抗体法によって、細胞のインシュリン産生をモニターできる。本文献の関連する開示は、参照により、本明細書に組み込まれる。ラットインシュリノーマ(RIN)細胞は、哺乳動物のインシュリン産生に対する、本発明の単離物などの薬剤の効果を調べるのに便利なモデルである。RIN細胞は、グルコース(典型的には、約0.1重量%から約0.5重量%)と、約10重量%のウシ胎児血清(FCS)とを含有し、哺乳類細胞代謝に適した、グルコース、アミノ酸及びビタミンなどの栄養素を提供するダルベッコの改変イーグル培地(D−MEM)などの、グルコースに富む培地中で培養することができる。
【0042】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0043】
抽出物と単離物の調製
ギムネマ・シルベスタの新鮮な葉を購入し、植物学者によって確認された。新鮮な葉を、周温で、水道水中に、約18時間浸漬した(約1kgの葉/4Lの水道水)。エチルアルコール水溶液(約90容量パーセントのエタノール)を、十分な量、これに加えて、総アルコールパーセントレベルを約40重量%とし、バッチ全体を10個の三角フラスコ中に、攪拌しながら分配した。フラスコを振盪台の上に置き、約4時間、振盪した。
【0044】
フラスコの内容物をろ過し、回収された液体抽出物を複数のバッチに蒸留し、エチルアルコールを除去した。得られた残留水溶液を合わせて、希硫酸(約1から2M)をこれに添加して、最終pHを約2とした。酸不溶性の塩から構成されるスラッジが形成され、濾過によって除去した。葉に内在する、ナトリウム及びカリウムの可溶性塩は、ろ液中に残存していた。希水酸化ナトリウムでろ液を中和し、イオン交換カラムを通して脱イオン化した。真空装置を取り付けた回転フラスコを使用し、約55−70℃の温度まで加熱された水槽上で、45°の角度で回転フラスコを回転させながら、半固体の薄茶色の塊(糖蜜の稠度の「シロップ状の」塊)になるまで、得られた溶液(溶出液)を濃縮した。
【0045】
次いで、この半固体濃縮物を、攪拌されたAmicon濾過セルと分子量カットオフ(MWCO)膜とを用いた限外濾過にかけた。特に、200mLのAmicon攪拌限外濾過セル(Millipore Catalog No.5123)及び対応する3000MWCO膜(Millipore Catalog No. PLBC 06210)を用いて、得られた半固形濃縮物を分画し、約3000ダルトン未満の分子量を有する浸透画分と、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する保持画分(単離物)とを得た。
【実施例2】
【0046】
ギムネマ・シルベスタ単離物のバイオアッセイ
Linco Research, Inc., St. Louis, MOから購入したRIAキット(カタログNo.RI−13K)を使用し、ラットのインスリノーマ(RIN−58)細胞、I−125標識インシュリン、ラットインシュリン抗血清、及び「Morgan et al., Diabetes 12:115−126(1963)」の二重抗体技術を用いたラジオイムノアッセイ(RIA)によって、実施例1の得られた浸透物及び保持物のインシュリン放出活性を調べた。主な活性は、少なくとも約3000ダルトンのMWCOを有する保持物中に見出された。
【0047】
ラットインシュリノーマ細胞(RIN−58)を、6ウェルのプレート中に播種し、グルコースを含有する組織培地中で増殖させた。80%の集密度に達した時点で、培地を無グルコース培地と交換した。約24時間後に、アッセイすべき画分とともに、10mMグルコースを含有する新鮮な無血清培地を添加した。この細胞を3時間インキュベーションした。RIAのために、各25μLの二対の分取試料をウェルから取り出した。アッセイの結果を下表2に示す。
【0048】
表2
インシュリン放出活性のバイオアッセイ
画分 活性
保持物(MW≧3000ダルトン) 9.5ng/mL
浸透物(MW<3000ダルトン) 2.35ng/mL
【実施例3】
【0049】
インシュリン分泌性ドリンクミックス粉末
水に分散させるドリンクとして使用するのに適した経口組成物が、下表3に示されている。
【0050】
表3
凍結乾燥されたG.シルベスタの画分 1グラム
S.ウレンスの浸出物 2.5グラム
グアーガム 2.5グラム
クエン酸カルシウム 500ミリグラム
ニコチン酸クロム 120マイクログラム
ナイアシン(ニコチン酸) 120マイクログラム
分子量≧3000ダルトン
【実施例4】
【0051】
インシュリン分泌性ドリンクミックス粉末
水に分散させるドリンクとして使用するのに適した経口組成物が、下表4に示されている。
【0052】
表4
凍結乾燥されたG.シルベスタの画分 0.5グラム
S.ウレンスの浸出物 2.5グラム
グアーガム 2.5グラム
クエン酸カルシウム 500ミリグラム
ニコチン酸クロム 60マイクログラム
ナイアシン(ニコチン酸) 60マイクログラム
分子量≧3000ダルトン
【実施例5】
【0053】
栄養素及びインシュリン分泌性ドリンクミックス粉末
水に分散させる栄養ドリンクとして使用するのに適しており、表記の用量の抗酸化剤、アミノ酸、ミネラル及び酵素を含有する組成物が下表5に記載されている。
【0054】
表5
抗酸化剤を加えたドリンクミックス粉末
凍結乾燥されたG.シルベスタの画分 1グラム
S.ウレンスの浸出物 2.5グラム
グアーガム 2.5グラム
クエン酸カルシウム 500ミリグラム
ニコチン酸クロム 60−200マイクログラム
ナイアシン(ニコチン酸) 60−120ミリグラム
コエンザイムQ10 50−100ミリグラム
松の樹皮の抽出物 10−20ミリグラム
イノシトール 50ミリグラム
L−プロリン 150ミリグラム
L−リジン・HCl 150ミリグラム
L−アルギニン・HCl 50ミリグラム
L−システイン・HCl 50ミリグラム
L−カルニチン酒石酸塩 50ミリグラム
パントテン酸 50ミリグラム
ビオチン 100マイクログラム
葉酸 150マイクログラム
リン(リン酸ナトリウムとして) 50ミリグラム
鉄(グルコン酸第一鉄として) 18ミリグラム
マグネシウム(塩化マグネシウムとして) 80ミリグラム
亜鉛(塩化亜鉛として) 10ミリグラム
セレン(亜セレン酸ナトリウムとして) 50−200マイクログラム
銅(グルコン酸銅として) 1ミリグラム
マンガン(クエン酸マンガンとして) 2ミリグラム
モリブデン(モリブデン酸アンモニウムとして) 10マイクログラム
カリウム(塩化カリウムとして) 50ミリグラム
ビタミンA(β−カロテン) 5,000I.U.
ビタミンC(アスコルビン酸) 50ミリグラム
ビタミンE(d−α−トコフェロール) 400I.U.
ビタミンB(チアミン) 10ミリグラム
ビタミンB(リボフラビン) 10ミリグラム
ビタミンB(ピリドキシン・HCl) 15ミリグラム
ビタミンB12(シアノコバラミン) 50ミリグラム
ビタミンD 400ミリグラム
分子量≧3000ダルトン
【0055】
所望であれば、コエンザイムQ10を増量し、下表5Aに記されている成分を追加することによって、表5の組成物の抗酸化特性を増強することができる。
【0056】
表5A
抗酸化剤の増強
コエンザイムQ10 50ミリグラム
リコピン 1−5ミリグラム
ルテイン 1−3ミリグラム
シリコン(ケイ酸として) 2ミリグラム
バナジウム(硫酸バナジルとして) 10マイクログラム
ニッケル(硫酸ニッケルとして) 5マイクログラム
ホウ素(ホウ酸として) 150−1000マイクログラム
分子量≧3000ダルトン
【実施例6】
【0057】
インシュリン分泌性ドリンクミックス粉末
糖尿病及び肥満の治療に非常に適したドリンクミックス粉末が、下表6に記されている。
【0058】
表6
凍結乾燥されたG.シルベスタの画分 2グラム
S.ウレンスの浸出物 3.5グラム
グアーガム 2.5グラム
コミフォラ・ムクル 100ミリグラム
クエン酸カルシウム 500ミリグラム
ニコチン酸クロム 120マイクログラム
ナイアシン(ニコチン酸) 150ミリグラム
分子量≧3000ダルトン
【0059】
必要に応じて加えてもよい他の成分は、アンドログラフィス・パニキュラタ(Andrographis paniculata)(約50ミリグラム)、ソラナム・ニグラム(Solanum nigram)(約50ミリグラム)、フィランタス・ニルリ(Phyruntus niruri)(約50ミリグラム)、精製されたシラジット(Silajit)(約50ミリグラム)、オシマム・サンクタム(Ocimum sanctum)(約150ミリグラム)、ウィサニア・ソムニフェラ(Withania somnifera)(約100ミリグラム)、ピクロルライザ・クロア(Picrorrhiza kurroa)(約75ミリグラム)、チノスポラ・コルヂフォリア(Tinospora cordifolia)(約250ミリグラム)、シミキュフガ(Cimicufuga)(ブラック・コホッシュ)(約500ミリグラム)、トリビュラス・テルレストリス(約200ミリグラム)及びセレンサ・レペンス(Serensa repens)(約100ミリグラム)の抽出物であり、これらの一以上は、上記表3、4及び5に記載されている調合物に添加することができる。
【0060】
先述された表に記されている調合物は、好ましい一日の組成物を表しており、このため、一日投薬量は、等しく、2から4の細分割量で与えることが一般に好ましい。例えば、これらの製剤をカプセルとして服用するのであれば、好ましい剤形を2つのカプセルとして、一日二回服用することが好ましい。栄養ドリンクミックス又は健康スナックバーとして投与する場合には、好ましい剤形は、一包みのドリンクミックス粉末又は一本のバーとして、一日二回、便利に与えることができる。患者及び医療従事者は、好ましい組成物の投薬レベルの範囲内に留まるようにしながら、送達系の選択を混合するように選択することができる。また、患者の健康状態、及び疾病若しくは症候を調節し、又はこれに対する予防を与える必要性に応じて、医療従事者は、本発明の教示に従いながら、一定の期間にわたって、代替投薬パターンを推奨することもできる。
【0061】
上記考察及び実施例は、本発明を例示することを意図するものであり、限定するものと解釈してはならない。本発明の精神及び範囲に属するさらに別の変形例が可能であり、当業者であれば容易に想到するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量カットオフ濾過によって測定された場合に少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する、ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉から得られる凍結乾燥されたエタノール抽出物と、
非代謝性、水膨潤性の多糖と、および
水溶性多糖とを含み、
前記水溶性多糖が、経口組成物中の総多糖含量の少なくとも約10重量%を占める、
血糖降下薬として適切な経口組成物。
【請求項2】
カルシウム源をさらに含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記カルシウム源がクエン酸カルシウムである、請求項2に記載の経口組成物。
【請求項4】
生理的に許容される金属炭酸塩をさらに含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記炭酸金属塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及びこれらの混合物からなる群の要素である、請求項4に記載の経口組成物。
【請求項6】
生理的に許容されるクロム塩をさらに含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項7】
前記クロム塩が、ニコチン酸クロム、ピコリン酸クロム、バナジン酸クロム及びこれらの混合物からなる群の要素である、請求項6に記載の経口組成物。
【請求項8】
生理的に許容されるバナジウム化合物をさらに含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項9】
前記バナジウム化合物が硫酸バナジルである、請求項8に記載の経口組成物。
【請求項10】
前記非代謝性、水膨潤性多糖が、ステルキュリア・ウレンス(Sterculia urens)の浸出物である、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項11】
前記水溶性多糖がグアーガムである、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項12】
前記水膨潤性多糖がステルキュリア・ウレンスの浸出物であり、前記水溶性多糖がグアーガムであり、前記水膨潤性多糖及び前記水溶性多糖が、それぞれ約1:1ないし約1:3の範囲の重量比で組成物中に存在する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項13】
前記水膨潤性多糖がステルキュリア・ウレンスの浸出物であり、前記水溶性多糖がグアーガムであり、前記水膨潤性多糖及び前記水溶性多糖が約1:1の重量比で組成物中に存在する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項14】
生理的に適合性のある抗酸化剤を含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の経口組成物を含む、ドリンクミックス粉末。
【請求項16】
請求項1に記載の経口組成物を含む、スナックバー。
【請求項17】
ヒト患者の血中グルコースレベルを所定の値に維持するのに十分な量及び頻度で、請求項1に記載の組成物を前記患者に経口投与することを含む、ヒト患者のグルコース代謝を調節する方法。
【請求項18】
遺伝的に糖尿病に対する素因があるヒト患者の血中グルコースレベルを所定の値に維持するのに十分な量及び頻度で、請求項1に記載の組成物を前記患者に経口投与することを含む、遺伝的に糖尿病に対する素因があるヒト患者を調節する方法。
【請求項19】
I型糖尿病に罹患しているヒト患者の血中グルコースレベルを所定の値に維持するのに十分な量及び頻度で、請求項1に記載の組成物を、インシュリン療法に対する補助として、前記患者に経口投与することを含む、I型糖尿病に罹患し、インシュリン療法を受けているヒト患者を治療する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物の治療上有効な量を、ヒト患者に経口投与することを含む、肥満に対する素因があるヒト患者を治療する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物の治療上有効な量を、ヒト患者に経口投与することを含む、ヒト患者における糖尿病性網膜症を治療する方法。
【請求項22】
患者の血中グルコースレベルを所定の値に維持するのに十分な量及び頻度で、請求項1に記載の組成物を哺乳動物に経口投与することを含む、哺乳動物におけるグルコース代謝を調節する方法。
【請求項23】
患者の血清コレステロールレベルを減少させるのに十分な、治療上有効な量で、請求項1に記載の組成物を、コレステロール血症の治療を必要としている患者に投与することを含む、コレステロール血症を治療する方法。

【公表番号】特表2006−519867(P2006−519867A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509057(P2006−509057)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006528
【国際公開番号】WO2004/078139
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505171654)アユールベデイツク−ライフ・インターナシヨナル・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】