説明

治療用結合性分子

【課題】 医薬として有用である、少なくとも1個の抗原結合部位を含む分子、例えばキメラまたはヒト化抗体を提供すること。
【解決手段】 医薬として有用である、少なくとも1個の抗原結合部位を含む分子、例えばキメラまたはヒト化抗体を見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、例えばCD45抗原イソ型に対する結合性分子、例えばモノクローナル抗体(mAb)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な疾患の処置における一方法は、病原性白血球の排除または不活化および寛容誘導についての潜在能力による病的免疫応答の不活化の達成である。
【0003】
臓器、細胞および組織移植拒絶および様々な自己免疫疾患は、主として、抗原−MHC複合体形態の抗原提示細胞(APC)、例えばマクロファージおよび樹状細胞により捕獲され、処理され、ヘルパーT細胞に提示された特異抗原を認識し得るヘルパーT細胞により誘発されるT細胞性免疫応答の結果である、すなわちヘルパーT細胞が特異抗原を認識すると、刺激されてサイトカイン、例えばIL−2を産生し、サイトカインレセプターおよび他の活性化分子を発現またはアップレギュレーションし、増殖させると考えられている。これらの活性化ヘルパーT細胞の中には直接的または間接的に作用して、すなわちエフェクター細胞傷害性T細胞またはB細胞を支援して、選択された抗原を発現する細胞または組織を破壊し得るものもある。免疫応答の終結後、成熟クローン選択細胞の中には記憶ヘルパーおよび記憶細胞傷害性T細胞として残るものもあり、それらは体内で循環し、再び現れた場合抗原を急速に認識する。この応答を誘発する抗原が無害の環境抗原である場合、結果はアレルギーであり、抗原が外来抗原ではなく、自己抗原である場合、それは自己免疫疾患を誘発し得、抗原が移植臓器からの抗原である場合、結果は移植拒絶であり得る。
【0004】
免疫系が現れて非自己から自己を認識する。この特性は、生物が日常的な病原体の攻撃に曝された環境で生残ることを可能にする。この非自己についての特異性および自己に向かう寛容性は、正および負の選択のプロセスを通じて胸腺におけるT細胞レパートリーの発現中に生じ、上記プロセスには自己反応性T細胞の認識および排除も含まれる。このタイプの寛容は中枢寛容と称される。しかしながら、これらの自己反応性細胞の中には、この選択機構を回避し、自己免疫疾患発現についての潜在的危険を引き起こすものもある。末梢へ逃れた自己反応性T細胞を制御するため、免疫系は、自己免疫性に対する防御を提供する末梢調節機構を有する。これらの機構は、末梢寛容についての基盤である。
【0005】
特異的mAbにより認識される細胞表面抗原は、一般的に、連続国際白血球タイピングワークショップにより割当てられたCD(白血球分化抗原群)番号により示され、本明細書で適用されているCD45の語は、細胞表面白血球共通抗原CD45をいい、その抗原に対するmAbは本明細書では「抗CD45」として示される。
【0006】
白血球共通抗原(LCA)またはCD45は、抗リンパ球グロブリン(ALG)の主成分である。CD45は、貫膜チロシンホスファターゼ群に属し、レセプター相互作用によって、細胞活性化の正および負の両レギュレーターとなる。CD45のホスファターゼ活性は、BおよびTリンパ球の抗原レセプターに伴うSrc−ファミリーのキナーゼ類の活性化に要求されると思われる(Trowbridge IS et al.,Annu Rev Immunol.1994、12:85−116)。すなわち、T細胞活性化では、CD45はシグナル1に不可欠であり、CD45−欠失細胞は、TCR伝達活性化事象において甚大な欠陥を有する。
【0007】
CD45抗原は、一群の貫膜糖タンパク質を含む異なるイソ型で存在する。CD45の独特なイソ型は、CD45細胞外領域の一部をコーディングする3可変エキソンのオルターナティブスプライシングから生じるそれらの細胞外ドメイン構造が異なる(Streuli MF.et al,J.Exp.Med.1987、166:1548−1566)。CD45の様々なイソ型は異なる細胞外ドメインを有するが、約300残基の2つの相同的高度保存ホスファターゼドメインを有する同じ貫膜および細胞質セグメントを有する。異なるイソ型の組合わせは、TおよびBリンパ球の副次集団で差次的に発現される(Thomas ML et al,Immunol.Today1988;9:320−325)。モノクローナル抗体のなかには、種々のイソ型全てに共通のエピトープを認識するものもあれば、それらが認識するオルターナティブスプライシングされたエキソン(A、BまたはC)により異なる、制限された(CD45R)特異性を有するmAbもある。例えば、その結果としてエキソンAの生成物を認識するモノクローナル抗体はCD45RAと称され、エキソンBを含む様々なイソ型を認識するものはCD45RBと称されている(Beverley PCL et al,Immunol.Supp.1988;1:3−5)。抗体、例えばUCHL1は、活性化T細胞、記憶細胞および皮質胸腺細胞のサブセットに制限されると思われ、B細胞からは検出されない180kDaイソ型CD45RO(可変エキソンA、BまたはCのどれも伴わない)に選択的に結合する(Terry LA et al,Immunol.1988;64:331−336)。
【発明の開示】
【0008】
図面の記載
図1は、「候補mAb」による一次MLRの阻害が0.001および10μg/ml間の範囲において用量依存的であることを示す。「濃度」は「候補mAb」の濃度である。
【0009】
図2は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号15におけるヌクレオチド配列の配列番号12(3921−4274)を有する重鎖を含む発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHQのプラスミド地図を示す。
【0010】
図3は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号16におけるヌクレオチド配列の配列番号11(3921−4274)を有する重鎖を含む発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHEのプラスミド地図を示す。
【0011】
図4は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号17におけるヌクレオチド配列の配列番号14(3964−4284)を有する軽鎖を含む発現ベクターHCMV−K HuAb−humV1のプラスミド地図を示す。
【0012】
図5は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号18におけるヌクレオチド配列の配列番号13(3926−4246)を有する軽鎖を含む発現ベクターHCMV−K HuAb−humV2のプラスミド地図を示す。
【0013】
発明の記載
我々は、以後、「CD45RO/RB結合性分子」とも称する、CD45ROおよびCD45RBに結合するポリペプチド配列を含む結合性分子を見出した。本発明によるこれらの結合性分子は、免疫抑制を誘導し、一次T細胞応答を阻害し、そしてT細胞寛容を誘導し得る。さらに、本発明結合性分子は、一次混合リンパ球応答(MLR)を阻害する。好ましくはCD45RO/RB結合性分子で処理した培養物から誘導された細胞はまた、二次MLRにおけるCD45RO/RB結合性分子の不存在下でさえ二次MLRでの充分に機能を果たさない増殖応答を有する。二次MLRにおける充分に機能を果たさない上記増殖応答は、本発明結合性分子の寛容誘導能力の指標である。さらに、ヒトPBMCによる注射後に異種GVHDを発現している重症複合免疫不全症(SCID)マウスにCD45RO/RB結合性分子をインビボ投与すると、循環しているヒトT細胞は依然としてCD45RO/RB結合性分子処理マウスから検出され得るが、対照処理マウスと比べてマウスの生存期間が延長され得る。
【0014】
「CD45RO/RB結合性分子」とは、単独または他の分子と共に、CD45抗原のCD45RBおよびCD45ROイソ型に特異的に結合し得る分子を全て包含する。結合反応は標準的方法(定量的検定法)により示され得、例えばあらゆる種類の結合検定法、例えば直接または間接免疫蛍光法を蛍光顕微鏡法または細胞蛍光解析(FACS)分析と共に行うか、固相酵素免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイが行なわれ、特定CD45イソ型を発現する細胞への分子の結合が視覚化され得る。さらに、この分子の結合の結果、これらのイソ型を発現する細胞の機能が改変され得る。例えば、一次または二次混合リンパ球応答(MLR)の阻害が測定され得、例えばインビトロ検定法またはバイオアッセイによりCD45RO/RB結合性分子の存在および不存在下における一次または二次MLRの阻害が測定され、そして一次MLR阻害における差異が測定され得る。
【0015】
別法として、インビトロ機能変調効果はまた、例えばMLRにおける細胞活性化後、または特異抗原、例えばテタヌス(破傷風)トキソイドまたは他の抗原、またはポリクローナル抗原細胞、例えばフィトヘマグルチニン(PHA)または抗CD3および抗CD28抗体またはホルボールエステルおよびCa2+イオノホアによる刺激後に、PBMCまたはT細胞またはCD4T細胞増殖、サイトカインの生産、細胞表面分子の発現の変化を測定することにより測定され得る。抗原細胞としての同種異系細胞の代わりに可溶性抗原またはポリクローナル抗原細胞、例えば上述のものを使用する以外は、MLRについて記載した方法と同様にして培養を始める。好ましくは上記要領でH−チミジン取込みによりT細胞増殖を測定する。好ましくはサンドイッチELISAによりサイトカイン生産を測定し、その場合、サイトカイン捕獲抗体を96ウェルプレートの表面でコーティングし、培養物からの上清を加え、1時間室温でインキュベーションし、次に特定サイトカインに特異的な検出性抗体を加えるが、第2工程抗体には酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、次いで対応する基質をコンジュゲートさせておくものとし、そしてプレート読取装置で吸光度を測定する。細胞表面分子の変化は、好ましくは特定細胞表面分子に特異的な抗体による標的細胞の染色後、直接または間接免疫蛍光法により測定され得る。抗体は蛍光色素により直接標識され得るかまたは第1抗体に特異的な蛍光標識第2工程抗体が使用され得、そして細胞をサイトフルオリメーターにより分析する。
【0016】
本発明結合性分子は、CD45ROおよびCD45RBの両方についての結合特異性を有する(「CD45RB/RO結合性分子」)。
【0017】
好ましくは、結合性分子は、15nM未満の解離定数(Kd)、さらに好ましくはKd<10nM、最も好ましくはKd<5nMでCD45ROイソ型に結合する。好ましくは、結合性分子は、Kd<15nM、さらに好ましくはKd<10nM、最も好ましくはKd<5nMでCD45RBイソ型に結合する。
【0018】
さらに好ましい態様において、本発明結合性分子は、
1)CD45分子のAおよびBエピトープを含むが、Cエピトープを含まず、および/または
2)CD45分子のBエピトープを含むが、AおよびCエピトープを含まない
CD45イソ型、および/または
3)CD45分子のA、BまたはCエピトープのいずれも含まないイソ型
に結合する。
【0019】
さらに別の好ましい態様において、本発明の結合性分子は、
1)CD45分子のA、BおよびCエピトープの全て、および/または
2)CD45分子のBおよびCエピトープの両方を含むが、Aエピトープを含まない
CD45イソ型には結合しない。
【0020】
さらに好ましい態様において、本発明の結合性分子は、さらに
1)記憶およびインビボアロ活性化T細胞を認識し、および/または
2)ヒトT細胞、例えばPEER細胞におけるその標的に結合し、ただし、上記結合は、好ましくはKd<15nM、さらにこのましくはKd<10nM、最も好ましくはKd<5nMを伴うものとし、および/または
3)インビトロアロ反応性T細胞機能を阻害し、ただし好ましくは約5nMのIC50、さらに好ましくは約1nMのIC50、最も好ましくは約0.5nMまたはさらには0.1nMのIC50を伴い、および/または
4)インビトロでアロ抗原−特異的T細胞寛容を誘導し、および/または
5)有効量で投与されたとき、ヒトPBMCの注射によりSCIDマウスで誘導された致命的な異種移植片対宿主病(GvHD)を阻止する。
【0021】
さらに好ましい態様では、Aversa et al.,Cellular Immunology158、314−328(1994)により報告されている通り、本発明結合性分子は、モノクローナル抗体「A6」と同じエピトープに結合する。
【0022】
上記結合特性および生物活性故に、上記の本発明結合性分子は、医学上、治療および/または予防に特に有用である。本発明結合性分子が特に有用である疾患には、下記でさらに示されている通り、自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーがある。
【0023】
我々は、配列番号1のポリペプチドおよび配列番号2のポリペプチドを含む分子がCD45RO/RB結合性分子であることを見出した。我々はまた、配列番号1のCD45RO/RB結合性分子における超可変域CDR1'、CDR2'およびCDR3'を見出しており、CDR1'はアミノ酸配列Arg-Ala-Ser-Gln-Asn-Ile-Gly-Thr-Ser-Ile-Gln (RASQNIGTSIQ)を有し、CDR2'はアミノ酸配列Ser-Ser-Ser-Glu-Ser-Ile-Ser (SSSESIS)を有し、そしてCDR3'はアミノ酸配列Gln-Gln-Ser-Asn-Thr-Trp-Pro-Phe-Thr (QQSNTWPFT)を有するものであった。
【0024】
我々はまた、配列番号2のCD45RO/RB結合性分子における超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を見出しており、CDR1はアミノ酸配列Asn-Tyr-Ile-Ile-His (NYIIH)を有し、CDR2はアミノ酸配列Tyr-Phe-Asn-Pro-Tyr-Asn-His-Gly-Thr-Lys-Tyr-Asn-Glu-Lys-Phe-Lys-Gly (YFNPYNHGTKYNEKFKG)を有し、そしてCDR3はアミノ酸配列Ser-Gly-Pro-Tyr-Ala-Trp-Phe-Asp-Thr (SGPYAWFDT)を有するものであった。
【0025】
CDRは、本質的に抗原結合特性を決定するいわゆる超可変域でもある3つの特異的な相補的決定領域である。これらのCDRは、例えばそれぞれ配列番号1または配列番号2の可変域の一部であり、これらのCDRはフレームワーク領域(FR)、例えば定常域と交互にくる。本発明によるキメラ抗体において、配列番号1は、例えば配列番号3の軽鎖の一部であり、配列番号2は例えば配列番号4の重鎖の一部である。重鎖のCDRは会合した軽鎖のCDRと共に、本質的に本発明分子の抗原結合部位を構成する。軽鎖可変域により為される結合エネルギー特性への寄与は、会合した重鎖可変域による場合と比べて小さいこと、および単離された重鎖可変域はそれら自体に抗原結合活性を有することが知られている。上記分子は、一般に単一ドメイン抗体といわれる。
【0026】
一態様において、本発明は、少なくとも1個の抗原結合部位を含む分子であって、配列中に超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1がアミノ酸配列Asn-Tyr-Ile-Ile-His (NYIIH)を有し、CDR2がアミノ酸配列Tyr-Phe-Asn-Pro-Tyr-Asn-His-Gly-Thr-Lys-Tyr-Asn-Glu-Lys-Phe-Lys-Gly (YFNPYNHGTKYNEKFKG)を有し、そしてCDR3がアミノ酸配列Ser-Gly-Pro-Tyr-Ala-Trp-Phe-Asp-Thr (SGPYAWFDT)を有するものである分子、例えばCD45RO/RB結合性分子、例えばおよびその直接均等内容物を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、少なくとも1個の抗原結合部位を含む分子、例えばCD45RO/RB分子であって、
a)配列中に超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1がアミノ酸配列Asn-Tyr-Ile-Ile-His (NYIIH)を有し、CDR2がアミノ酸配列Tyr-Phe-Asn-Pro-Tyr-Asn-His-Gly-Thr-Lys-Tyr-Asn-Glu-Lys-Phe-Lys-Gly (YFNPYNHGTKYNEKFKG)を有し、そしてCDR3がアミノ酸配列Ser-Gly-Pro-Tyr-Ala-Trp-Phe-Asp-Thr (SGPYAWFDT)を有する第1ドメイン、および
b)配列中に超可変域CDR1'、CDR2'およびCDR3'を含み、CDR1'がアミノ酸配列Arg-Ala-Ser-Gln-Asn-Ile-Gly-Thr-Ser-Ile-Gln (RASQNIGTSIQ)を有し、CDR2'がアミノ酸配列Ser-Ser-Ser-Glu-Ser-Ile-Ser (SSSESIS)を有し、そしてCDR3'がアミノ酸配列Gln-Gln-Ser-Asn-Thr-Trp-Pro-Phe-Thr (QQSNTWPFT)を有する第2ドメイン
を含むものである分子、例えばおよびその直接均等内容物を提供する。
【0028】
好ましい態様において、配列中に超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を含む第1ドメインは、免疫グロブリン重鎖であり、配列中に超可変域CDR1'、CDR2'およびCDR3'を含む第2ドメインは免疫グロブリン軽鎖である。
【0029】
別の態様において、本発明は、配列番号1のポリペプチドおよび/または配列番号2のポリペプチドを含む分子、例えばCD45RO/RB結合性分子、好ましくは一ドメインに配列番号1のポリペプチドおよび別のドメインに配列番号2のポリペプチドを含む、例えばキメラモノクローナル抗体を提供し、また別の態様では、配列番号3のポリペプチドおよび/または配列番号4のポリペプチドを含む分子、例えばCD45RO/RB結合性分子、好ましくは一ドメインに配列番号3のポリペプチドおよび別のドメインに配列番号4のポリペプチドを含む、例えばキメラモノクローナル抗体を提供する。
【0030】
抗原結合部位が第1および第2ドメインの両方または配列番号1または配列番号3の各ポリペプチドおよび配列番号2または配列番号4の各ポリペプチドを含む場合、これらは同じポリペプチドに位置し得るか、または好ましくは、各ドメインは異なる鎖にあり得、例えば第1ドメインは重鎖、例えば免疫グロブリン重鎖またはそのフラグメントの一部であり、第2ドメインは軽鎖、例えば免疫グロブリン軽鎖またはそのフラグメントの一部であり得る。
【0031】
さらに我々は、本発明によるCD45RO/RB結合性分子が哺乳類、例えばヒト体内環境においてCD45RO/RB結合性分子であることを見出した。すなわち本発明によるCD45RO/RB結合性分子はモノクローナル抗体(mAb)として示され得、結合活性は、主として上記CDR領域、例えば結合特異性を伴わずに他の分子と会合しているCDR領域、例えばフレームワーク、例えば定常域により決定され、これらは実質的にヒトに由来する。
【0032】
別の態様において、本発明は、Aversa et al. Cellular Immunology158、314−328(1994)により報告されている、モノクローナル抗体「A6」ではないCD45RO/RB結合性分子を提供する。
【0033】
別の態様において、本発明は、キメラ、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である本発明CD45RO/RB結合性分子を提供する。
【0034】
CD45RO/RB結合性分子の例には、例えばB細胞またはハイブリドーマにより産生された抗体から誘導されるキメラまたはヒト化抗体またはそのフラグメント、例えばF(ab')2およびFabフラグメント、並びに一本鎖または単一ドメイン抗体が含まれる。一本鎖抗体は、通常10〜30アミノ酸、好ましくは15〜25アミノ酸から成る、ペプチドリンカーにより共有結合した抗体重および軽鎖の可変域により構成される。従って、かかる構造は重および軽鎖の定常部分を含まないため、小ペプチドスペーサーは全定常部より当然抗原性が低いと考えられている。キメラ抗体とは、重および軽鎖または両方の定常域がヒト起源を有し、重および軽鎖の両方の可変域がヒト以外(例、ネズミ)の起源である抗体をいう。ヒト化抗体とは、超可変域(CDR)がヒト以外(例、ネズミ)の起源を有し、他の部分の全部または実質的に全部、例えば定常域および可変域の高度保存部分がヒト起源である抗体をいう。しかしながら、ヒト化抗体は、超可変域に近接した可変域の一部にネズミ配列の数個のアミノ酸を保持し得る。
【0035】
超可変域、すなわち本発明によるCDRは、ヒトに由来するあらゆる種類のフレームワーク領域、例えば軽および重鎖の定常部と会合し得る。適切なフレームワーク領域は、例えば“Sequences of proteins of immunological interest”、Kabat, E.A. et al.(米国厚生省、公衆衛生総局、国立衛生研究所)に記載されている。好ましくは、ヒト重鎖の定常部は、サブタイプを含むIgG1タイプに属し、好ましくはヒト軽鎖の定常部は、κまたはλタイプ、さらに好ましくはκタイプに属する。重鎖の好ましい定常部は配列番号4のポリペプチドであり(上記で明記したCDR1'、CDR2'およびCDR3'配列部分を伴わない)、軽鎖の好ましい定常部は配列番号3のポリペプチドである(上記で明記したCDR1、CDR2およびCDR3配列部分を伴わない)。
【0036】
我々はまた、本発明によるCDR1'、CDR2'およびCDR3'を含む、アミノ酸配列番号7またはアミノ酸配列番号8の軽鎖可変域および本発明によるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、アミノ酸配列番号9またはアミノ酸配列番号10の重鎖可変域を含むヒト化抗体を見出した。
【0037】
別の態様において、本発明は、配列番号9または配列番号10のポリペプチドおよび配列番号7または配列番号8のポリペプチドを含むヒト化抗体を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、
−配列番号9のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチド、
−配列番号9のポリペプチドおよび配列番号8のポリペプチド、
−配列番号10のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチド、または
−配列番号10のポリペプチドおよび配列番号8のポリペプチド
を含むヒト化抗体を提供する。
【0039】
例えば本明細書記載の配列、例えばCDR1、CDR2、CDR3、CDR1'、CDR2'、CDR3'、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の本発明ポリペプチドは、例えば上記ポリペプチドの機能的誘導体を含む、上記(ポリ)ペプチド(配列)の直接的均等内容体を包含する。上記機能的誘導体は本明細書で明記された配列の共有結合修飾体を含み得、および/または上記機能的誘導体は本明細書で明記された配列のアミノ酸配列変異体を含み得る。
【0040】
「ポリペプチド」は、本明細書で他に特記しない場合、N−末端先端部から出発し、C−末端先端部で終結するアミノ酸配列を有する、ペプチド結合により互いに連結されたアミノ酸を含むペプチドまたはタンパク質を包含する。好ましくは、本発明ポリペプチドはモノクローナル抗体であり、さらに好ましくは、キメラ(V−グラフト化)またはヒト化(CDR−グラフト化)モノクローナル抗体である。ヒト化(CDR−グラフト化)モノクローナル抗体は、受容抗体のフレームワーク(FR)配列へ導入されたさらなる突然変異を含む場合も含まない場合もあり得る。
【0041】
本明細書で使用されているポリペプチドの機能的誘導体は、本発明ポリペプチドと共通した定性的生物活性を有する、すなわちCD45ROおよびCD45RBへの結合能力を有する分子を包含する。機能的誘導体は、本発明ポリペプチドのフラグメントおよびペプチド類似体を包含する。フラグメントは、例えば本明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドの配列内の領域を含む。「誘導体」の語は、例えば本明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドのアミノ酸配列変異体および共有結合修飾体を特定するのに使用されている。例えば本明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドの機能的誘導体は、例えば本明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドのアミノ酸配列と、好ましくは少なくとも約65%、さらに好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%の全体的配列相同性を有し、実質的にCD45ROおよびCD45RBへの結合能力を保持している。
【0042】
「共有結合修飾」の語は、有機タンパク質性または非有機タンパク質性誘導体化剤による、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドまたはそのフラグメントの修飾、異種ポリペプチド配列への融合、および翻訳後修飾を包含する。例えば明細書に示された配列の、共有結合修飾ポリペプチドは、依然として架橋によるCD45ROおよびCD45RBへの結合能力を有している。共有結合修飾は、慣例的にはターゲッティングされたアミノ酸残基を選択された側鎖または末端残基と反応し得る有機誘導体化剤と反応させることにより、または選択された組換え宿主細胞で機能する翻訳後修飾の機構を利用することにより導入される。ある種の翻訳後修飾は、発現されたポリペプチドに対する組換え宿主細胞作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基に翻訳後脱アミド化されることが多い。別法として、これらの残基は、弱い酸性条件下で脱アミノ化される。他の翻訳後修飾には、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリル、チロシンまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化がある。例えば、T.E.Creighton, Proteins:Structure and Molecular Properties, W.H.Freeman & Co.,サンフランシスコ、79−86頁(1983)参照。例えば共有結合修飾は、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドを含む融合タンパク質およびそれらのアミノ酸配列変異体、例えば免疫接着体、および異種シグナル配列へのN−末端融合体を包含する。
【0043】
天然ポリペプチドおよびその機能的誘導体に関する「相同性」は、本明細書では、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義されるもので、先に配列を整列させ、必要ならばギャップを導入して最大相同性パーセントを得るが、保存的置換を配列同一性の一部とは見なさない。N−またはC−末端伸長も挿入も、同一性または相同性を低減化させるものとして解釈すべきではない。アラインメントについての方法およびコンピュータープログラムは公知である。
【0044】
「アミノ酸(複数も可)」は、天然に存する例えばL−α−アミノ酸およびD−アミノ酸を全て含めたものをいう。アミノ酸は、公知の一文字または三文字名称により識別される。
【0045】
「アミノ酸配列変異体」の語は、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドと比べた場合にアミノ酸配列に何らかの差異を伴う分子をいう。例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、依然としてCD45ROおよびCD45RBへの結合能力を有する。置換変異体は、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドにおいて少なくとも1個のアミノ酸残基が除去され、異なるアミノ酸がその場所の同じ位置に挿入されたものである。これらの置換は、分子中のアミノ酸が1個のみ置換された場合は単一であり得、または同分子中で2個またはそれ以上のアミノ酸が置換された場合、それらは多重であり得る。挿入変異体は、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドにおける特定位置のアミノ酸に隣接して1個またはそれ以上のアミノ酸が挿入されているものである。アミノ酸に隣接しているとは、アミノ酸のα−カルボキシまたはα−アミノ官能基に連結されていることをいう。欠失変異体は、例えば明細書に示された配列の、本発明ポリペプチドにおいて1個またはそれ以上のアミノ酸が除去されたものである。通常、欠失変異体は、分子の特定領域における1個または2個のアミノ酸の欠失を伴うものである。
【0046】
我々はまた、以下のポリヌクレオチドを見出した:
−CDR1のアミノ酸配列をコード化する、GGCCAGTCAGAACATTGGCACAAGCATACAGTG、
−CDR2のアミノ酸配列をコード化する、TTCTTCTGAGTCTATCTCTGG、
−CDR3のアミノ酸配列をコード化する、ACAAAGTAATACCTGGCCATTCACGTT、
−CDR1'のアミノ酸配列をコード化する、TTATATTATCCACTG、
−CDR2'のアミノ酸配列をコード化する、TTTTAATCCTTACAATCATGGTACTAAGTACAATGAGAAGTTCAAAGGCAG、
−CDR3'のアミノ酸配列をコード化する、AGGACCCTATGCCTGGTTTGACACCTG、
−配列番号1、すなわち本発明mAbの軽鎖の可変域のポリペプチドをコード化する配列番号5、
−配列番号2、すなわち本発明mAbの重鎖の可変域のポリペプチドをコード化する配列番号6、
−配列番号9、すなわち本発明によるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変域のポリペプチドをコード化する配列番号11、
−配列番号10、すなわち本発明によるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変域のポリペプチドをコード化する配列番号12、
−配列番号7、すなわち本発明によるCDR1'、CDR2'およびCDR3'を含む軽鎖可変域のポリペプチドをコード化する配列番号13、
−配列番号8、すなわち本発明によるCDR1'、CDR2'およびCDR3'を含む軽鎖可変域のポリペプチドをコード化する配列番号14。
【0047】
別の態様において、本発明は、CD45RO/RB結合性分子をコード化する、例えば本発明によるCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチドおよび/または、好ましくは本発明によるCDR1'、CDR2'およびCDR3'のアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチド、および
配列番号5のポリヌクレオチドおよび/または好ましくは配列番号6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、および
配列番号7または配列番号8のポリペプチドおよび配列番号9または配列番号10のポリペプチドをコード化する、例えば
−配列番号7のポリペプチドおよび配列番号9のポリペプチド、
−配列番号7のポリペプチドおよび配列番号10のポリペプチド、
−配列番号8のポリペプチドおよび配列番号9のポリペプチド、または
−配列番号8のポリペプチドおよび配列番号10のポリペプチド、
をコード化するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、および
配列番号11または配列番号12のポリヌクレオチドおよび配列番号13のポリヌクレオチドまたは配列番号14のポリヌクレオチドを含む、好ましくは
−配列番号11のポリヌクレオチドおよび配列番号13のポリヌクレオチド、
−配列番号11のポリヌクレオチドおよび配列番号14のポリヌクレオチド、
−配列番号12のポリヌクレオチドおよび配列番号13のポリヌクレオチド、または
−配列番号12のポリヌクレオチドおよび配列番号14のポリヌクレオチド
を含むポリヌクレオチド
を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0048】
「ポリヌクレオチド」は、本明細書において他に特記しない場合、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを包含し、それらは非修飾RNAもしくはDNA、または修飾RNAもしくはDNA、ただし限定するわけではないが1本および2本鎖RNAを含むものとし、および1本および2本鎖領域の混合物であるRNAであり得る。
【0049】
本発明によるポリヌクレオチド、例えばアミノ酸配列CDR1、CDR2、CDR3、CDR1'、CDR2'、CDR3'をコード化するか、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の各ポリヌクレオチド、例えば配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14の各ポリヌクレオチドは、そのアレリック変異体および/またはそれらの補体を含み、例えばそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10と少なくとも80%相同性を有するポリペプチドをコード化する、例えばそれぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14のヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドが含まれ、例えば上記ポリペプチドの機能的誘導体、例えばそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10と少なくとも65%相同性を有する機能的誘導体、例えばそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の共有結合修飾体を含む機能的誘導体、例えばそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列変異体を含む機能的誘導体が含まれる。例えば配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14はまた、それぞれ、遺伝コードの重複性(縮重)の結果として、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のポリペプチドをそれぞれコード化するか、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の各アミノ酸配列と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコード化する配列を含む。
【0050】
例えばキメラまたはヒト化抗体である、CD45RO/RB結合性分子は、組換えDNA技術により製造され得る。すなわち、CD45RO/RBをコード化する1個またはそれ以上のDNA分子は、構築され、適切な制御配列下に置かれ、適切なベクターにより発現に適切な宿主(生物体)中に移入され得る。
【0051】
別の態様では、本発明は、本発明CD45RO/RB結合性分子の単一の重および軽鎖をコード化するポリヌクレオチド、および組換え手段による本発明CD45RO/RB結合性分子製造を目的とする本発明ポリヌクレオチドの使用に関するものである。
【0052】
CD45RO/RB結合性分子は、本明細書で提供されている情報、例えば超可変または可変域のアミノ酸配列およびこれらの領域をコード化するポリヌクレオチド配列の情報と共に慣用的方法に従い、例えばそれと同様にして得られる。可変ドメイン遺伝子の構築方法は、例えばEP239400に報告されており、簡単に述べると以下の通りに要約され得る。何にせよ特異性を有するmAbの可変域をコード化する遺伝子をクローン化し得る。フレームワークおよび超可変域をコード化するDNAセグメントを決定し、超可変域をコード化するDNAセグメントを除去する。二本鎖合成CDRカセットを、本明細書で明記されたCDRおよびCDR'配列にしたがいDNA合成法により製造する。これらのカセットに付着末端を随伴させることにより、それらはヒト起源の所望のフレームワークの接合点でライゲーションされ得る。1本鎖抗体をコード化するポリヌクレオチドはまた、慣用的方法に従い、例えばそれと同様にして製造され得る。こうして製造された本発明ポリヌクレオチドは、好都合には適切な発現ベクターへ移入され得る。
【0053】
適切なセルラインは、慣用的方法にしたがい、例えばそれと同様の方法で見出され得る。例えば適切なプロモーター(複数も可)および重および軽鎖定常部をコード化する遺伝子を含む発現ベクターは、公知であり、例えば市販されている。適切な宿主は、公知であるかまたは慣用的方法にしたがい、例えばそれと同様にして見出され得、細胞培養物またはトランスジェニック動物が含まれる。
【0054】
別の態様において、本発明は、例えば配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18の配列の、本発明CD45RO/RB結合性分子をコード化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、
−本発明ポリヌクレオチドを含む発現系(上記発現系またはその一部が適格宿主細胞に存在するとき、上記発現系またはその一部は本発明CD45RO/RB結合性分子を生産し得る)
および
−上記発現系を含む単離された宿主細胞
を提供する。
【0056】
さらに我々は、本発明CD45RO/RB結合性分子が、インビトロMLRにより測定された通り一次アロ免疫応答を用量依存的に阻害することを見出した。それらの結果は、本発明CD45RO/RB結合性分子の存在下でアロ活性化された細胞が、アロ抗原に対するそれらの応答において充分に機能を果たしていないことを示している。これは、本発明CD45RO/RB結合性分子が、エフェクターアロ反応性T細胞に直接作用し、それらの機能を変調し得るという指摘を確認している。さらに、一次MLRから誘導されたT細胞の機能特性を、二次MLRにおける再刺激実験で、特異的抗原細胞または第三者の抗原細胞を用いて観察された機能性効果の特異性を評価することによりさらに試験した。我々は、本発明CD45RO/RB結合性分子が存在する一次MLRから誘導された細胞について、二次培養物に抗体は全く加えられなかったが、特異的抗原細胞による後続の最適刺激に対するそれらの応答能力が損なわれていることを見出した。阻害の特異性は、非関連第三者ドナーからの抗原細胞に対する本発明CD45RO/RB結合性分子で処理された細胞の通常応答能力により立証された。すなわち、一次MLR培養物から誘導されたT細胞を用いる再刺激実験は、本発明CD45RO/RB結合性分子の存在下でアロ活性化された細胞が、原初アロ抗原に対し低応答性、すなわち寛容性であることを示している。
【0057】
さらに、我々は、本発明CD45RO/RB結合性分子で前処理した細胞における細胞増殖が外生IL−2により立て直され得ることを見出した。これは、本発明CD45RO/RB結合性分子によるアロ反応性T細胞の処理が、寛容状態を誘導することを示している。事実、本発明CD45RO/RB結合性分子で処理した細胞で観察される増殖応答の低下は、T細胞機能の損傷に起因しており、これらの細胞は外生IL−2に応答し得たことから、これらの細胞はアネルギーで真の不応答状態であることを示している。この応答の特異性は、本発明CD45RO/RB結合性分子により処理した細胞が非関連ドナー細胞に対し対照処理細胞のレベルまで正常に増殖させる能力により示された。
【0058】
さらに、実験は、CD45ROおよびCD45RBへの本発明CD45RO/RB結合性分子の結合が、特異的リコール抗原に対する免疫化ドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)の記憶応答を阻害し得ることを示している。すなわち、CD45ROおよびCD45RBへの本発明CD45RO/RB結合性分子の結合はまた、可溶性Agに対する記憶応答の阻害にも有効である。本発明CD45RO/RB結合性分子が免疫化ドナーからのPBMCにおける破傷風に対するリコール応答を阻害し得るということは、本発明CD45RO/RB結合性分子が、記憶T細胞の活性化をターゲッティングし、変調し得ることを示している。例えば、これらのデータは、アロ反応性および活性化T細胞の認識に加えて本発明CD45RO/RB結合性分子がそれらの機能を変調し得、それによってT細胞アネルギーを誘導することを示している。この特性は、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性拒絶、および疾患、例えば乾癬、炎症性腸疾患で見られる通り、自己抗原およびアレルゲンおよび恐らくはアロ抗原に対して進行中の免疫応答の処置において重要であり得、その場合記憶応答が病状の持続においてある役割を演じている。それは、病気の状況、例えば自己抗原に対する記憶応答が病気の持続にとって主たる役割を演じ得る自己免疫疾患における重要な特徴であると考えられている。
【0059】
我々はまた、本発明CD45RO/RB結合性分子が、インビボ混合リンパ球応答(MLR)においてT細胞増殖応答を変調し得ることを見出しており、すなわち本発明CD45RO/RB結合性分子はインビボ試験において対応する阻害特性を有することが見出された。
【0060】
すなわち、本発明CD45RO/RB結合性分子は、免疫抑制および寛容原性特性を有し得、アロ抗原、自己抗原、アレルゲンおよび細菌叢抗原に対するインビボおよびエクスビボ寛容誘導に有用であり得、例えば本発明CD45RO/RB結合性分子は、例えば自己免疫疾患、例えば限定されるわけではないが、慢性関節リウマチ、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、I型およびII型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、自己免疫性胃炎、糸球体腎炎、移植拒絶、例えば臓器および組織アロ移植および異種移植拒絶、移植片対宿主病(GVHD)および乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーを含む病気の処置および予防に有用であり得る。
【0061】
別の態様において、本発明は、例えば自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーの処置および予防における、医薬としての本発明CD45RO/RB結合性分子の使用法を提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーに伴う疾病の処置および予防における医薬の製造用の本発明CD45RO/RB結合性分子を提供する。
【0063】
別の態様において、本発明は、少なくとも1種の医薬上許容される担体または希釈剤と共に本発明CD45RO/RB結合性分子を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
医薬組成物は、さらに例えば有効成分、例えば他の免疫変調性抗体、例えば限定されるわけではないが、抗ICOS、抗CD154、抗CD134Lまたは組換えタンパク質、例えば限定されるわけではないがrCTLA−4(CD152)、rOX40(CD134)または免疫変調性化合物、例えば限定されるわけではないがシクロスポリンA、FTY720、RAD、ラパマイシン、FK506、15−デオキシスペルグアリン、ステロイド類を含み得る。
【0065】
別の態様において、本発明は、自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーに伴う疾病の処置および予防方法であって、上記処置および/または予防を必要とする対象に例えば本発明医薬組成物形態を呈する、本発明CD45RO/RB結合性分子の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0066】
さらに本発明結合性分子で処置される自己免疫疾患には、限定されるわけではないが、慢性関節リウマチ、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、I型およびII型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、自己免疫性胃炎、糸球体腎炎、移植拒絶、例えば臓器および組織アロ移植および異種移植拒絶、移植片対宿主病(GVHD)が含まれる。
【実施例】
【0067】
実施例
以下の実施例により本発明に関する理解がさらに深められるはずである。しかしながら、それらは発明の範囲を制限するものと見なされるべきではない。以下の実施例において、温度は全て摂氏である。
【0068】
「候補mAb」または「キメラ抗体」は、配列番号3の軽鎖および配列番号4の重鎖を含む本発明CD45RO/RB結合性分子である。
【0069】
以下の略語を使用する:
ELISA:固相酵素免疫測定法
FACS:蛍光活性化細胞選択装置
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
FBS:胎児牛血清
GVHD:移植片対宿主病
HCMV:ヒトサイトメガロウイルスプロモーター
IgE:免疫グロブリンイソ型E
IgG:免疫グロブリンイソ型G
PBS:リン酸緩衝食塩水
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
xGVHD:異種移植片対宿主病
【0070】
実施例1:一次混合リンパ球応答(MLR)
細胞
血液試料を健康なヒトドナーから入手する。末梢血単核細胞(PBMC)を、血液型は既知であるが、HLA型は未知である全末梢血、ロイコフェレーシスまたはバフィーコートからの白血球からフィコル−ハイパーク(ファルマシアLKB)での遠心分離により分離する。MLR実験の中には、40Gyでの照射後PBMCを抗原細胞として直接使用する場合もある。他の実験では、CD2またはCD3ダイナビーズ(ダイナール、オスロ、ノルウェー)を用いることにより、T細胞をPBMCから枯渇させる。ビーズおよび汚染細胞を磁場により除去する。T細胞枯渇PBMCを照射後抗原細胞として使用する。
【0071】
PBMC、CD3T細胞またはCD4T細胞を、MLRにおける応答細胞として使用する。細胞を抗原細胞に対し異なるドナーから調製する。抗CD16mAb(ザイムド、カリフォルニア)、ヤギ抗マウスIgGダイナビーズ、抗CD14ダイナビーズ、CD19ダイナビーズを用いる負の選択によりCD3T細胞を精製する。さらに抗CD8ダイナビーズを用いて、CD4T細胞を精製する。得られた細胞をFACScanまたはFACSCalibur(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー、カリフォルニア)により分析すると、得られた細胞の純度は>75%であった。細胞を、10%熱不活化FBS、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびL−グルタミンを補ったRPMI1640培地に懸濁する。
【0072】
試薬
また、キメラ抗CD45RO/RB mAb「候補mAb」およびイソ型マッチ対照キメラ抗体を生成する。KLH(キーホール・リンペットヘモシアニン)または組換えヒトIL−10に特異的なマウス(ヒト)対照IgG抗体をBDファーミンゲン(サンディエゴ、カリフォルニア)から購入する。抗ヒトCD154 mAb 5c8は、Lederman et al(1992)によるものである。
【0073】
一次混合リンパ球応答(MLR)
1×10PBMCまたは5×10のCD3またはCD4細胞のアリコートを、示されたmAbの存在下またはAbの不存在下で96ウェル培養プレート(コスター、ケンブリッジ、マサチューセッツ)の各ウェル中1×10照射PMBCまたは5×10T細胞枯渇照射(50Gy)PBMCと混合する。幾つかの実験では、Fc部分に特異的なヤギ抗マウスIgまたはヤギ抗ヒトIgのF(ab')フラグメント(ジャクソン、イムノリサーチ、ウエストグローヴ、ペンシルベニア)を候補mAbに加えて10μg/mlで加えることにより、標的CD45分子の最適なインビトロ架橋を確実にする。混合細胞を5%CO中37℃で4または5日間培養し、培養の最後の16〜20時間H−チミジンを細胞に適用することにより増殖を測定する。他の実験も上記実験と同様に行うが、ただし以下の例外を伴う:1)使用培地は、10%FBSおよび1%ヒト血漿含有EX−VIVO(バイオ−ウイタッカー)である;2)抗マウス全IgG(5μg/ml)を2次架橋工程として使用する;3)抗原細胞の照射は60Gyである。
【0074】
一次MLRを、「候補mAb」または対照キメラIgG(10μg/ml)の存在下第2工程試薬、Fc部分に特異的なヤギ抗ヒトIgのF(ab')フラグメント(10μg/ml)の両方により遂行する。「候補mAb」による阻害パーセントを、対照IgGの存在下における細胞増殖と比較して算出する。結果を下表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
本発明候補mAbは、表1から明らかな通り一次MLRを阻害する。平均阻害効果は、4種の異なるドナー由来のCD4T細胞において60.83±6.83%であり、統計的に有意である。「候補mAb」による一次MLRの阻害は、図1に示されている通り0.001および10μg/mlの「候補mAb」の範囲で用量依存的であることが示されている。「候補mAb」による一次MLRの阻害についてのIC50は、応答細胞として一ドナーPBMCを用いる3つの別々のMLR実験の結果から測定される。すなわち、ドナー#229および#219からの応答CD4T細胞および抗原細胞としてT細胞を枯渇させた照射PBMCを、「候補mAb」または対照キメラAbの存在下10μg/mlのヤギ抗ヒトIgのF(ab')フラグメントと混合する。実験を3回反復し、「候補mAb」の存在下における増殖のパーセントを、対照Abの存在下におけるT細胞増殖と比較して算出する。オリジン(V.6.0(登録商標))を用いてIC50値を測定する。細胞活性IC50値を計算したところ、0.87±0.35nM(0.13±0.052μg/ml)であった。
【0077】
実施例2:二次MLR
「候補mAb」が特異的アロ抗原に対するCD4T細胞の非応答性を誘導するか否かを評価するため、一次MLC後に抗体の不存在下で二次MLRを遂行する。CD4T細胞を、10日間96ウェル培養プレート中指示抗体の存在下で照射同種異系抗原細胞(T細胞枯渇PBMC)と培養する(一次MLC)。次いで、細胞を集め、フィコル−ハイパーク勾配上で層状に重ねて死んだ細胞を除去し、RPMIで2回洗浄し、同じ抗原細胞、第3者抗原細胞またはIL−2(50U/ml)で再刺激する。細胞を3日間培養し、培養の最後の16〜21時間細胞にH−チミジンを適用することにより、増殖性応答を測定する。
【0078】
具体的には、CD4T細胞を、10μg/mlの「候補mAb」、対照IgG1キメラAbおよびヤギ抗ヒトIgのF(ab')フラグメントの存在下照射した同種異系抗原細胞(他のドナーから採取したT細胞枯渇PBMC)と培養する。一次MLR増殖を5日目に測定する。二次MLRについては、応答および抗原細胞を、「候補mAb」の存在下で10日間培養し、次いで細胞を採取し、RPMI1640中で2回洗浄し、Abの不存在下で特異的抗原細胞、第3者抗原細胞またはIL−2(50U/ml)により再刺激する。3日目に細胞増殖を測定する。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
増殖が損なわれるのは「候補mAb」による処理の結果としての非応答性に起因するか否かを試験するため、一次MLRから誘導された細胞をIL−2(50U/ml)の存在下で培養する。IL−2を添加することにより、一次MLRにおいて「候補mAb」で処理されたT細胞の増殖応答がIgG対照Abの存在下で観察されるのと同様のレベルまで立て直される。これらのデータは、「候補mAb」で処理されたT細胞において損なわれた二次応答が、特異的抗原細胞に対して不応答性となった応答T細胞の機能的改変に起因することを示している。
【0081】
阻害パーセントは、下式にしたがって計算される:
【数1】

【0082】
統計分析は、シグマスタット(バージョン2.03)を用いて遂行される。二方向ANOVA、次いでDunnett方法によりデータを分析する。全試験手順において、確率<0.05は有意であるとみなされる。実験によってはt−試験を使用する場合もある(シグマスタットV.2.03)。
【0083】
実施例3:SCIDマウスにおけるインビボ生存試験
SCIDマウスにおけるhu−PBLの移植
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、SCIDマウスCB17/GbmsTac−PrkdcscidLystbgマウス(タコニック、ジャーマンタウン、ニューヨーク)へ、細胞移入後4週間以内に90%を越えるマウスにおいて致命的な異種移植片対宿主病(xGvHD)を誘発するのに充分な量で腹腔内注射する。以後、上記処理SCIDマウスをhu−PBL−SCIDマウスと称す。
【0084】
hu−PBL−SCIDマウスのMab−処理
0日目、PBMC注射直後、3日目、7日目そしてその後1週間間隔でhu−PBL−SCIDマウスを「候補mAb」またはマウスまたはキメライソ型マッチmAb対照により処理する。Mabを100μlのPBS中体重1kg当たり5mg/kgの最終濃度で皮下送達させる。全対照マウスが死亡した時点で処理を停止した。
【0085】
処理結果の評価
この試験における「候補mAb」の効果を評価する主たる基準は、hu−PBL−SCIDマウスの生存であった。Systat v9.01ソフトウエアの支援により対数ランク試験(マンテル法)を用いる統計的生存分析方法により結果の有意性を評価する。生存分析方法はノンパラメトリック試験であり、特定マウスがまだ生きているかどうかだけでなく、それが処理/病気とは関連性の無い理由、例えばその臓器/細胞によるインビトロ分析の遂行に必要とされる理由から殺されたか否かを考慮する。肝臓、肺、腎臓および脾臓のバイオプシーを死んだマウスから入手することにより、さらに評価を行う。さらに、hu−PBL−SCIDマウスを、実験開始時(細胞移入前)および終始(二日毎に)それらの健康状態の間接的評価として秤量する。各マウスから得た体重対PBMC移入後の日数値を用いて一次回帰線を作成し、それに続いて、ノンパラメトリックのマン-ウイットニー試験を用いてそれらの傾き(対照対抗CD45処理マウス)を比較した。
【0086】
結果
マウスmAb対照で処理したhu−PBL−SCIDマウスは全て、肺、肝臓および脾臓でヒト白血球を浸潤させており、細胞移入後約2〜3週間以内に死亡した(4/4)。死亡は、xGvHDの起こりがちな結果である。さらに対照mAb処理マウスは3週間以内に、約10%およびそれ以上の割合で直線的に体重を減らしていた。
【0087】
「候補mAb」処理を3週間後に停止したが、それでも「候補mAb」で処理されたhu−PBL−SCIDマウスは全て生存しており(4/4)、4週間を越えても病気の明白な徴候は見られなかった。「候補mAb」処理マウスは4週間以内に約5%以下まで直線的に体重を増加させていた。
【0088】
実施例4:本発明抗体の発現
配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10を含むヒト化抗体の発現
図2〜5で示されたプラスミド地図による発現ベクターで、それぞれヒト化軽鎖可変域humV1(配列番号7)、ヒト化軽鎖可変域humV2(配列番号8)、ヒト化重鎖可変域VHE(配列番号9)またはヒト化重鎖可変域VHQ(配列番号10)のアミノ酸配列をコード化する対応するヌクレオチドを含むものを構築する。これらの発現ベクターは、配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18の各DNA(ヌクレオチド)配列を有する。
【0089】
ヒト化抗体重および軽鎖発現ベクターの構築
バージョンVLhおよびVLmについてのヒトカッパ軽鎖発現ベクター
ヒトカッパイソ型の完全ヒト化軽鎖をコード化する最終発現ベクターを構築するために、完全軽鎖可変域(VLhおよびVLm)をコード化するDNAフラグメントを、HindIIIおよびBgIIIを用いてVLhおよびVLm含有PCR−Scriptクローニングベクター(ストラタジーン)(VLm領域)から切除した。次いで、ゲル精製フラグメントを、ヒト化抗IgE抗体TESC−21(Kolbinger et al、1993)の構築中に作製され、もともとM.Bendigから受けた(MRCコラボレイティブ・センター、ロンドン、イギリス国)(Maeda et al.1991)C21−HCMVカッパ発現ベクターのHindIIIおよびBamHI部位へサブクローニングした。ライゲーション生成物を、フェノール/クロロホルム抽出により精製し、電気共穿孔コンピテントのエピキュリアン・コリ(登録商標)XL1−ブルー株(カタログ番号#200228、ストラタジーン)へ電気穿孔した。LB/amp寒天プレートにおいて一晩37℃で培養後、各12コロニーを選び取り、バイオロボット9600(キアゲン)を用いて、3ml培養物からプラスミドDNAを調製した。図面でさらに記載されているように、この結果、ヒト化抗体バージョンVLhおよびVLmについての軽鎖発現ベクターがそれぞれ得られた。
【0090】
VHQについてのヒトガンマ−1重鎖発現ベクター
VHQ発現ベクターを構築するため、段階的方法を採った。まず、Kolbinger et al 1993(Protein Eng.1993年11月;6(8):971−80)に記載の方法論にしたがってPCRによりVHQの完全可変域を組立て、同酵素を用いてC21挿入体が除去されたC21−HCMV−ガンマ−1発現ベクターへサブクローニングした。次いで、完全可変域を含むPCRScriptクローンVHQのHindIII/BamHIフラグメントを、同酵素により開裂された発現ベクターC21−HCMV−ガンマ−1中へサブクローニングした。これにより、ヒト化抗体バージョンVHQについての最終発現ベクターが得られた。
【0091】
VHEについてのヒトガンマー1重鎖発現ベクター
ヒトガンマ−1イソ型の完全ヒト化重鎖をコード化する最終VHE発現ベクターの構築は、可変域をコード化するHindIIIおよびBamHI制限PCRフラグメントを、ヒト化抗IgE抗体TESC−21(Kolbinger et al、1993)の構築中に作製され、またもともとM.Bendigから受けた(MRCコラボレイティブ・センター、ロンドン、イギリス国)(Maeda et al.1991)C21−HCMVガンマ−1発現ベクターのHindIIIおよびBamHI部位へ直接ライゲーションすることにより達成された。
【0092】
COS細胞における一時的発現
以下のトランスフェクションプロトコルを、スーパーフェクト(登録商標)トランスフェクション試薬(カタログ番号301305、キアゲン)を用いて、150mm細胞培養皿において接着性COS細胞に適合化させる。上記4種の異なる発現ベクターを、細胞の一時的トランスフェクションに使用する。ヒト化抗体を発現させるため、重鎖挿入体を含む2つのクローン(それぞれVHEまたはVHQ)の各々を、軽鎖をコード化する2つのクローン(それぞれhumV1またはhumV2)の各々と共に、重および軽鎖発現ベクターの全部で4つの異なる組み合わせ(VHE/humV1、VHE/humV2、VHQ/humV1およびVHQ/humV2)で細胞へ共トランスフェクションする。トランスフェクション前、プラスミドを、アンピシリン耐性遺伝子をコード化する領域で開裂する制限エンドヌクレアーゼPvuIにより線状にする。トランスフェクション前日、30mlの新鮮な培養培地中4×10COS細胞を、150mm細胞培養皿に播種する。この細胞密度で播種すると、一般的に24時間後には培養飽和密度の80%に達した。トランスフェクション当日、線状重および軽鎖DNA発現ベクターの4種の異なる組み合わせ(各々15μg)を、全体積900μlの血清および抗生物質を含まない新鮮培地中で希釈する。次いで、180μlのスーパーフェクトトランスフェクション試薬を充分にDNA溶液と混合する。DNA混合物を室温で10分間インキュベーションすることにより、複合体を形成させる。複合体の形成が行われている間、成長培地をCOS細胞培養物から除去し、細胞をPBSで1回洗浄する。次いで、新鮮な培養培地(10%FBSおよび抗生物質含有)9mlを、トランスフェクション複合体を含む各反応管に加え、充分に混合する。最終調製物を即座に4培養物の各々に移してトランスフェクションさせ、静かに混合する。次いで、細胞培養物を37℃で5%CO中3時間DNA複合体とインキュベーションする。インキュベーション後、トランスフェクション複合体含有培地を除去し、30mlの新鮮な培養培地と交換する。トランスフェクションの48時間後、培養上清を採取する。
【0093】
培養上清の濃縮
ELISAおよびFACS分析のため、重および軽鎖プラスミドによりトランスフェクションしたCOS細胞から集められた細胞上清を以下の要領で濃縮する。各上清10mlを、製造業者の記載に従いセントリプレップYM−50遠心分離フィルター装置(カタログ番号4310、ミリポア)に加える。セントリプレップフィルターを室温で10分間3000rpmで遠心分離する。次いで、5分のみの遠心分離を用い、濃縮の展開を監視しながら上清の残りの20mlにより遠心分離工程を再び反復する。濃縮上清の中間500μlを回収し、新たなミクロコン遠心分離フィルター装置(カタログ番号42412、ミクロコン)に移し、製造業者のプロトコルにしたがってさらに濃縮する。濃縮上清を室温で24分間3000rpmで4回、10分間6000rpmで1回、次いで5分間を3回常に濃縮の展開を監視しながら遠心分離にかける。到達した濃縮条件培地の最終体積は、最初の培養培地の250〜300倍濃度に相当する100〜120μlであり、使用時まで4℃で貯蔵する。比較および対照のため、上記と同じ遠心分離プロトコルを用いて、非トランスフェクション細胞からの培養培地を同様に濃縮する。
【0094】
実施例5:ELISAによる組換えヒトIgG発現の測定
培養上清で発現された組換えヒト抗体のIgG濃度を測定するため、サンドイッチELISAプロトコルが開発され、標準としてヒトIgGを用いて最適化された。平底96ウェルのマイクロタイタープレート(カタログ番号4−39454、ヌンク・イムノプレート・マキシソープ)を、4℃で一晩100μlのヤギ抗ヒトIgG(全分子、カタログ番号l1011、シグマ)によりPBS中0.5μg/mlの最終濃度でコーティングする。次いで、ウェルを洗浄緩衝液(0.05%トウィーン20含有PBS)で3回洗浄し、37℃で1.5時間遮断緩衝液(PBS中0.5%BSA)で遮断する。3洗浄サイクル後、抗体試料および標準ヒトIgG(カタログ番号14506、シグマ)を、遮断緩衝液中系列1.5倍希釈により調製する。100μlの希釈試料または標準をデュプリケイトでコーティングしたプレートに移し、室温で1時間インキュベーションする。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、それに続いて1時間遮断緩衝液中で1/4000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgGカッパ−軽鎖(カタログ番号A−7164、シグマ)100μlとインキュベーションする。対照ウェルには100μlの遮断緩衝液または濃縮通常培養培地を投与した。洗浄後、製造業者の使用説明書にしたがいTMBペルオキシダーゼEIA基質キット(カタログ番号172−1067、バイオ−ラッド)を用いて、試料および標準ウェルで結合したペルオキシダーゼの比色定量を行う。
【0095】
ペルオキシダーゼ混合物を1ウェル当たり100μlの割合で加え、暗所中室温で30分間インキュベーションする。100μlの1M硫酸を加えることにより比色定量反応を停止させ、ELISAプレート読取り装置(モデル3350−UV、バイオラッド)を用いて、各ウェルにおける吸光度を450nmで読み取る。
【0096】
IgG標準曲線に関する0.998の相関係数により、以下の濃度を4つの異なる培養濃縮物(約250〜300倍濃縮)について測定する:
VHE/humV1上清=8.26μg/ml
VHE/humV2上清=6.27μg/ml
VHQ/humV1上清=5.3μg/ml
VHQ/humV2上清=5.56μg/ml
【0097】
実施例6:FACS競合分析(結合親和力)
その細胞表面でCD45抗原を発現したことから、ヒトTセルラインPEERを、FACS分析についての標的細胞として選択する。ヒト化抗体上清の結合親和力を分析するため、レファレンスとしてFITC標識キメラ抗体を用いる競合実験を遂行し、精製マウス抗体およびキメラ抗体の阻害と比較する。PEER細胞培養物を10秒間3000rpmでの遠心分離にかけ、培地を除去する。細胞をFACS緩衝液(1%FBSおよび0.1%アジ化ナトリウム含有PBS)に再懸濁し、1ウェル当たり1×10細胞の細胞密度で96ウェル丸底マイクロタイタープレート中に播種する。プレートを遠心分離にかけ、上清を廃棄する。遮断試験を行うため、まず、25μlの濃縮非トランスフェクション培地またはイソ型マッチ対照抗体(陰性対照)、非標識マウス抗体またはキメラ抗体(陽性対照)並びに様々な組み合わせのヒト化抗体(試料)を含む濃縮上清を、各ウェルへ明細書に示された濃度で加える。4℃で1時間のインキュベーション後、PEER細胞を遠心分離により200μlのFACS緩衝液により洗浄する。それに続いて、細胞を4℃で1時間、20μg/mlの最終濃度で25μlのFACS緩衝液中FITCとコンジュゲートしたキメラ抗体とインキュベーションする。細胞を洗浄し、2μg/mlヨウ化プロピジウム含有FACS緩衝液300μlに再懸濁することにより、生存し得る細胞がゲーティングされ得る。細胞調製物をフローサイトメーターで分析する(FACSカリバー、ベクトン、ディッキンソン)。
【0098】
FACS分析は、濃縮ヒト化抗体培養上清による蛍光色素標識キメラ抗体の用量依存的阻害を示している。キメラ抗体結合の用量依存的阻害は、イソ型マッチ対照抗体については全く見られないことから、異なるヒト化抗体の組み合わせによる遮断効果はエピトープ特異的であり、エピトープ特異性はヒト化プロセス後も保持されると思われることが示されている。
【0099】
実施例7:CD45RB/RO結合性分子の生物活性
この試験では、我々は、CD45RB/RO結合性キメラ抗体が、ポリクローナル活性化一次ヒトT細胞の培養物に存在するとき、(i)特徴的なTreg表現型をもつT細胞の分化を持続させるか、(ii)T細胞活性化後にアポトーシスを阻止または促進するか、そして(iii)再刺激後にサブセット特異的抗原および受容体の発現に影響するか否かという疑問に取り組んだ。
【0100】
CD45RB/RO結合性キメラ抗体は、ポリクローナル活性化T細胞における細胞死を促進する。
一次T細胞(CD4およびCD8Tサブセットの混合物)に対し、CD45RB/RO結合性キメラ抗体の存在または不存在(=対照)下で抗CD3プラス抗CD28 mAb(各々200ng/ml)による活性化を行った。2日目に過剰の抗体を洗浄により除去した。アポトーシスおよび壊死細胞により取込まれるDNA染色染料として7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)を用いることにより、活性化後の細胞死を測定した。結果は、CD45RB/RO結合性キメラ抗体の存在下におけるT細胞の活性化により、活性化の2日後には7−AAD陽性細胞のフラクションは2倍を越えて増加したことを示している。7日目、7−AAD陽性細胞の部分は、同じくCD45RB/RO結合性キメラ抗体処理および対照培養物の場合と類似していた。
【0101】
対照mAbではなくCD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞は、T調節細胞(Treg)表現型を呈する
CD25および陰性調節タンパク質CTLA−4(CD152)の発現増加は、Treg細胞のマーカーである。CD45RB/RO結合性キメラ抗体による一次および二次T細胞応答の機能的抑制は、Treg細胞の誘導に起因し得る。この問題点に取り組むため、T細胞を抗CD3+CD28 mAbにより活性化し、CD45RB/RO結合性キメラ抗体または抗LPS対照mAbの存在下で培養した。CTLA−4およびCD25発現の時間経過は、二次刺激後1および3日目に対照およびCD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞間で著しい差異を示す。
【0102】
細胞内CTLA−4発現は、CD45RB/RO結合性キメラ抗体の存在下で持続される
かなりの量のCTLA−4もまた細胞内で見出され得ることが報告されている。従って、表面CTLA−4染色と並行して、細胞内CTLA−4発現を分析した。T細胞培養物間の中程度の差異は刺激後4日目に見られた。しかしながら、培養延長後、高レベルの細胞内CTLA−4は、対照T細胞ではなく、CD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞でのみ持続された。
【0103】
CD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞は、CD4およびCD8について二重陽性になる
刺激後、T細胞は、幾つかの表面受容体、例えばCD25、CD152(CTLA−4)、CD154(CD40−リガンド)などの発現を誘導し、アップレギュレーションする。対照的に、CD4またはCD8の発現レベルは、比較的一定したままであると考えられている。我々は、活性化後対照Ab処理T細胞ではなくCD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞に関するCD4およびCD8両抗原の強度の増加を再現可能なものとして観察した。CD4/CD8二重陽性T細胞集団の出現は、CD8+サブセットにおけるCD4および逆にCD4+サブセットにおけるCD8のアップレギュレーションに起因すると思われる。これは、対照培養物における二重陽性T細胞の中程度の低パーセントと対照をなす。
【0104】
CD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞による高IL−2受容体アルファ鎖であるが非常に低いベータ鎖発現
Treg細胞は、CD25、IL−2受容体アルファ鎖について構成的に陽性であることが知られている。Treg細胞におけるトリマーIL−2受容体の他のサブユニットの調節については知られていない。最近、我々は、CD45RB/RO結合性キメラ抗体の存在または不存在下で活性化および伸長されたT細胞におけるIL−2受容体のベータ鎖、例えばCD122の発現を比較した。結果は、CD45RB/RO結合性キメラ抗体処理T細胞が、対照培養物におけるT細胞の場合と比べて約10倍低いCD122発現性を有することを示している。この差異は、Treg細胞が増殖するためにIL−2以外の因子を必要とすることを示し得る。
【0105】
実施例8:本発明の配列(本発明CDR配列は下線部である)
配列番号1
キメラ軽鎖のアミノ酸配列の一部
【表3】

【0106】
配列番号2
キメラ重鎖のアミノ酸配列の一部
【表4】

【0107】
配列番号3
キメラ軽鎖のアミノ酸配列
【表5】

【0108】
配列番号4
キメラ重鎖のアミノ酸配列
【表6】

【0109】
配列番号5
配列番号1のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列
【表7】

【0110】
配列番号6
配列番号2のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列
【表8】

【0111】
配列番号7
humV2(humV2=VLm)と称されるヒト化軽鎖のアミノ酸配列の一部
【表9】

【0112】
配列番号8
humV1(humV1=VLh)と称されるヒト化軽鎖のアミノ酸配列の一部
【表10】

【0113】
配列番号9
VHEと称されるヒト化重鎖のアミノ酸配列の一部
【表11】

【0114】
配列番号10
VHQと称されるヒト化重鎖のアミノ酸配列の一部
【表12】

【0115】
配列番号11
アミノ酸配列配列番号9をコード化するヌクレオチド配列
【表13】

【0116】
配列番号12
アミノ酸配列配列番号10をコード化するヌクレオチド配列
【表14】

【0117】
配列番号13
アミノ酸配列配列番号7をコード化するヌクレオチド配列
【表15】

【0118】
配列番号14
アミノ酸配列配列番号8をコード化するヌクレオチド配列
【表16】

【0119】
配列番号15
発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHQのヌクレオチド配列
(3921〜4274の配列番号12(VHQ)を含むヒト化重鎖発現ベクターの完全DNA配列)
【0120】
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【0121】
配列番号16
発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHEのヌクレオチド配列
(3921〜4274の配列番号11(VHE)を含むヒト化重鎖発現ベクターの完全DNA配列)
【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【0122】
配列番号17
発現ベクターHCMV−K HuAb−VL1 humV1のヌクレオチド配列
(3964〜4284の配列番号14(humV1=VLh)を含むヒト化軽鎖発現ベクターの完全DNA配列)
【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【0123】
配列番号18
発現ベクターHCMV−K HuAb−VL1 humV2のヌクレオチド配列
(3926〜4246の配列番号13(humV2=VLm)を含むヒト化軽鎖発現ベクターの完全DNA配列)
【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】

【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、「候補mAb」による一次MLRの阻害が0.001および10μg/ml間の範囲において用量依存的であることを示す。「濃度」は「候補mAb」の濃度である。
【図2】図2は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号15におけるヌクレオチド配列の配列番号12(3921−4274)を有する重鎖を含む発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHQのプラスミド地図を示す。
【図3】図3は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号16におけるヌクレオチド配列の配列番号11(3921−4274)を有する重鎖を含む発現ベクターHCMV−G1 HuAb−VHEのプラスミド地図を示す。
【図4】図4は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号17におけるヌクレオチド配列の配列番号14(3964−4284)を有する軽鎖を含む発現ベクターHCMV−K HuAb−humV1のプラスミド地図を示す。
【図5】図5は、完全発現ベクターヌクレオチド配列の配列番号18におけるヌクレオチド配列の配列番号13(3926−4246)を有する軽鎖を含む発現ベクターHCMV−K HuAb−humV2のプラスミド地図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列中に超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1がアミノ酸配列Asn-Tyr-Ile-Ile-His (NYIIH)を有し、CDR2がアミノ酸配列Tyr-Phe-Asn-Pro-Tyr-Asn-His-Gly-Thr-Lys-Tyr-Asn-Glu-Lys-Phe-Lys-Gly (YFNPYNHGTKYNEKFKG)を有し、そしてCDR3がアミノ酸配列Ser-Gly-Pro-Tyr-Ala-Trp-Phe-Asp-Thr (SGPYAWFDT)を有する、少なくとも1個の抗原結合部位を含む結合性分子。
【請求項2】
a)配列中に超可変域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1がアミノ酸配列Asn-Tyr-Ile-Ile-His (NYIIH)を有し、CDR2がアミノ酸配列Tyr-Phe-Asn-Pro-Tyr-Asn-His-Gly-Thr-Lys-Tyr-Asn-Glu-Lys-Phe-Lys-Gly (YFNPYNHGTKYNEKFKG)を有し、そしてCDR3がアミノ酸配列Ser-Gly-Pro-Tyr-Ala-Trp-Phe-Asp-Thr (SGPYAWFDT)を有する第1ドメイン、および
b)配列中に超可変域CDR1'、CDR2'およびCDR3'を含み、CDR1'がアミノ酸配列Arg-Ala-Ser-Gln-Asn-Ile-Gly-Thr-Ser-Ile-Gln (RASQNIGTSIQ)を有し、CDR2'がアミノ酸配列Ser-Ser-Ser-Glu-Ser-Ile-Ser (SSSESIS)を有し、そしてCDR3'がアミノ酸配列Gln-Gln-Ser-Asn-Thr-Trp-Pro-Phe-Thr (QQSNTWPFT)を有する第2ドメイン
を含む、請求項1記載の結合性分子。
【請求項3】
キメラまたはヒト化モノクローナル抗体である、請求項1または2のいずれか1項記載の結合性分子。
【請求項4】
配列番号1のポリペプチドおよび/または配列番号2のポリペプチドを含む、請求項1または2のいずれか1項記載の結合性分子。
【請求項5】
配列番号3のポリペプチドおよび/または配列番号4のポリペプチドを含む、請求項1または2のいずれか1項記載の結合性分子。
【請求項6】
キメラモノクローナル抗体である、請求項4または5のいずれか1項記載の結合性分子。
【請求項7】
配列番号9または配列番号10のポリペプチドおよび配列番号7または配列番号8のポリペプチドを含むヒト化抗体である結合性分子。
【請求項8】
−配列番号9のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチド、
−配列番号9のポリペプチドおよび配列番号8のポリペプチド、
−配列番号10のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチド、または
−配列番号10のポリペプチドおよび配列番号8のポリペプチド
を含むヒト化抗体である結合性分子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の結合性分子をコード化するポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項2記載のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をコード化する請求項9記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項2記載のCDR1'、CDR2'およびCDR3'のアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号5のポリヌクレオチドおよび/または配列番号6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号7または配列番号8のポリペプチドおよび配列番号9または配列番号10のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号11または配列番号12のポリヌクレオチドおよび配列番号13のポリヌクレオチドまたは配列番号14のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項15】
発現系またはその一部が適合性のある宿主細胞に存在するとき、発現系またはその一部は請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドを製造し得る、請求項9〜13のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む発現系。
【請求項16】
請求項15記載の発現系を含む単離宿主細胞。
【請求項17】
医薬としての請求項1〜8のいずれか1項記載の分子またはヒト化抗体の使用。
【請求項18】
自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーの処置および/または予防における請求項17記載の使用。
【請求項19】
少なくとも1種の医薬上許容される担体または希釈剤と共に請求項1〜8のいずれか1項記載の分子またはヒト化抗体を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか1項記載の分子またはヒト化抗体の有効量を処置および/または予防を必要とする対象に投与することを含む、自己免疫疾患、移植拒絶、乾癬、炎症性腸疾患およびアレルギーに伴う疾患の処置および/または予防方法。
【請求項21】
薬剤におけるCD45ROおよびCD45RBの両方についての結合特異性を有する結合性分子の使用。
【請求項22】
結合性分子がキメラ、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項21記載の使用。
【請求項23】
結合性分子がCD45ROイソ型に結合し、その解離定数(Kd)が<15nMである、請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
結合性分椎がCD45RBイソ型に結合し、その解離定数(Kd)が<15nMである、請求項21〜23のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
結合性分子が、
−CD45分子のAおよびBエピトープを含むが、Cエピトープを含まず、および/または
−CD45分子のBエピトープを含むが、AおよびCエピトープを含まない
CD45イソ型、および/または
−CD45分子のA、BまたはCエピトープのいずれか一つを含まないイソ型
に結合する、請求項21〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
結合性分子が、
−CD45分子のA、BおよびCエピトープの全てを含み、および/または
−CD45分子のBおよびCエピトープの両方を含むが、Aエピトープを含まない
CD45イソ型には結合しない、請求項21〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
結合性分子がPEER細胞におけるその標的エピトープに結合し、その結合がKd<15nMを有する、請求項21〜26のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34108(P2009−34108A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229759(P2008−229759)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【分割の表示】特願2002−571886(P2002−571886)の分割
【原出願日】平成14年2月11日(2002.2.11)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】