説明

治療的介入のためのY2選択性レセプターアゴニスト

Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性であるPYY3-36以外のYレセプターアゴニスト、及びY2レセプターの活性化に応答性の症状の治療におけるその使用が開示される。広義には、Y2選択性アゴニストは、
(a)C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有し、且つ天然ペプチドに関して種々の改変を有するPYY、NPY、PYY模擬体及びNPY模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるもの、又は
(b)C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有し、且つ天然ペプチドに関して種々の改変を有するPP及びPP模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるもの、又は
(c)N末端で両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなり(該両親媒性アミノ酸配列ドメインは該Y2レセプター認識配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなり、該ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束されている)、(ii)アゴニストがNPY又はPYYと類似するN末端構造を有する場合には上記(a)に列挙した改変の1又はそれ以上を有し、アゴニストがPPと類似するN末端構造を有する場合には上記(b)に列挙した改変の1又はそれ以上を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性のアゴニストとして作用するペプチド又はペプチド性化合物に関し、また、Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療、例えば肥満及び過体重、並びにこれらが一因とされる症状の治療における使用及び脈管形成の誘導のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
PP折り畳みファミリーのペプチド − NPY(ニューロペプチドY)(ヒト配列−配列番号:1)、PYY(ペプチドYY)(ヒト配列−配列番号:2)、及びPP(膵ポリペプチド)(ヒト配列−配列番号:3)は、天然に分泌される、相同な36アミノ酸の、C末端がアミド化されたペプチドであり、これらは共通の三次元構造−PP折り畳み(PP-fold)(これは驚くべきことに希水溶液中でさえも安定であり、当該ペプチドのレセプター認識に重要である)−により特徴付けられる。
【0003】
初期に、トリのPPのX線構造は、0.98Åまでの小さい分解能のX線結晶学的分析及び独特な構造(その名がこのペプチドから命名された)により非常に詳細に特徴付けられた(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85)。続いて、このファミリーの他のメンバーのPP折り畳み構造が、特にNMR分光光学的分析により分析された。X線分析及びNMR分析は両方とも、明らかに、非常に濃縮された条件又は固相条件で実施される;しかし、詳細な円偏光二色性分析は、NPY及びPPが水溶液中でさえPP折り畳み構造をとることを示唆している。このことは、このような小さなペプチドに関しては通常ではない(Fuhlendorffら、1990 J.Biol.Chem. 265: 11706-12)。重要なことに、これらペプチド並びにそれらのフラグメント及びアナログのタンパク質分解的安定性の分析は、例えば完全長PP1-36が希水溶液でさえ折り畳まれた形状(この形状が、僅かな置換のためにPP折り畳み構造をとることができないアナログを容易且つ迅速に分解する或る種の酵素による分解から保護する)に保持されることを強く示している(Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 611: 35-47)。
【0004】
NPY、PYY、及びPPに共通するPP折り畳み構造は、1)N末端ポリプロリン様ヘリックス(Pro2、Pro5、及びPro8を有する残基1〜8に相当)、続いて2)タイプI βターン領域(残基9〜12に相当)、続いて3)両螺旋軸間に約152度の角度を有してポリプロリンヘリックスに対し逆平行に位置する両親媒性αヘリックス(残基13〜30)、及び4)C末端ヘキサペプチド(残基31〜36)からなる。折り畳まれた構造は、両親媒性αヘリックスの側鎖と、これらと互いに密接に嵌合する両親媒性αヘリックスの側鎖との間の疎水性相互作用により安定化されている(Schwartzら、1990)。レセプター認識C末端ヘキサペプチド中の鍵となる残基の他に、PP折り畳みペプチドのファミリー間で保存されているのは、PP折り畳み構造を安定化するコア疎水性残基である。図1AはNPY配列を示し、NPY、PYY、及びPP間で保存されている残基が、黒の背景に白抜き文字で表されている。図1Aはまた、上記のPP折り畳み構造の要素を説明する。C末端ヘキサペプチド(これはレセプター認識に重要である)は、一般には構造化されていないと考えられているが、PP折り畳みは安定な足場を提供し、この足場がC末端ヘキサペプチドをレセプターに提示する(これは種々の程度で当該ペプチドのN末端の部分にも依存し、又は依存しないこともある)(図1Bに図示)。NMR分光光学分析により、例えばNPYの極C末端部分及びN末端部分はかなり可動性であることが証明されている。このことは、PP折り畳みが、常時、その自由端から「開かれる(unzipped)」の危険があることを意味している。
【0005】
NPYは、ヒトにおいて多くの異なるレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4、及びY5)を通じて作用する中枢神経系及び末梢神経系の両方の種々の部分で複数の作用を有する非常に広範に散在するニューロペプチドである。主要なNPYレセプターは、概してNPYニューロンの「作用」を伝えるシナプス後レセプターであるY1レセプター、及び概してシナプス前の抑制性レセプターであるY2レセプターである。これは、NPYニューロン−これはまたメラノコルチンレセプターアンタゴニスト/逆アゴニストAgRP(アグーチ関連ペプチド)も発現する−が弓状核の刺激性分枝における一次「感覚」ニューロンとして作用する視床下部でも事実である。したがって、食欲及びエネルギー消費を制御するこの「センサー核(sensor nucleus)」では、NPY/AgRPニューロンが、抑制性POMC/CARTニューロンと共に、身体のホルモン及び栄養の状態を監視している。なぜなら、これらのニューロンは、レプチン及びインスリンのような長期レギュレーター、並びにグレリン及びPYYのような短期レギュレーターの両方の標的であるからである(下記参照)。刺激性NPY/AgRPニューロンは、例えば室傍核−これもまた視床下部である−に投射する。そこでは、シナプス後の標的レセプターはY1レセプター及びY5レセプターであると考えられている。NPYの脳室内(ICV)注射に際してげっ歯類は文字通り破裂するまで食べるので、NPYは食物摂取の増大に関して公知の最も強力な化合物である。NPY/AgRPニューロンからのAgRPは、主としてメラノコルチンレセプタータイプ4(MC-4)に対してアンタゴニストとして作用し、このレセプターに対するPOMC由来ペプチド−主にaMSH−の作用を遮断する。MC4レセプターシグナルは食物摂取のインヒビターとして作用するので、AgRPの作用は、−ちょうどNPY作用のように−食物摂取のための刺激性シグナル(すなわち、抑制の抑制)である。NPY/AGRPニューロン上に、抑制性−シナプス前−Y2レセプターが見出されている。このレセプターは、局所的に放出されるNPY及び腸ホルモンPYY−別のPP折り畳みペプチド−の両方の標的である。
【0006】
PYYは、食事の間に−食事のカロリー含量に比例して−遠位小腸及び結腸の腸内分泌細胞から放出され、末梢ではGI管機能に対して作用し、中枢では満腹シグナルとして作用する。末梢では、PYYは、例えば上部GI管の自動運動性、胃酸、及び膵外分泌性分泌に対してインヒビター−「回腸遮断(ileal break)」−として機能すると考えられる。中枢では、PYYは、主として、弓状核(血液からアクセスされると考えられている)のNPY/AgRPニューロン上のシナプス前抑制性Y2レセプターに対して作用すると考えられる(Batterhamら、2002 Nature 418: 650-4)。このペプチドはPYY1-36として放出されるが、或る割合−約50%−は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(3つの全てのPP折り畳みペプチド−PP、PYY、及びNPY−と同様にPro又はAlaが2位に見出されれば、ペプチドのN末端からジペプチドを取り除く酵素)による分解産物であるPYY3-36として循環する(Eberleinら、1989 Peptides 10: 797-803)。したがって、循環中のPYYは、PYY1-36(これはY1レセプター及びY2レセプターの両方に対して作用し、Y4及びY5にも種々の親和性で作用する)とPYY3-36(これは親和性Y2レセプターに関する親和性より低い親和性をY1レセプター、Y4レセプター及びY5レセプターに関して有する)の混合物である。
【0007】
PPは、特に食物摂取により誘発される迷走神経のコリン作動性刺激によってほぼ独占的に支配される膵島の内分泌細胞から放出されるホルモンである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。PPは胃腸管に対して種々の効果を有するが、そのほとんどは単離した細胞及び器官では観察されず、無傷の迷走神経供給に依存しているようである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。このことと一致して、PPレセプター(Y4レセプターと呼ばれる)は脳幹に位置し、迷走運動ニューロン−この活性化はPPの末梢効果を生じる−及び孤束核(NTS)−この活性化は満腹ホルモンとしてのPPの効果を生じる−で強力に発現する(Whitecombら、1990 Am.J.Physiol. 259: G687-91;Larsen & Kristensen 1997 Brain Res.Mol.Brain Res 48: 1-6)。血液脳関門は末梢からの種々のホルモンが感知されるこの領域で「漏れやすい(leaky)」ので、血液からのPPは脳のこの領域
に自由に出入りできることに留意すべきである。最近、食物摂取に対するPPの効果の一部は、弓状核のニューロン−特にPOMC/CARTニューロン−に対する作用を通じて媒介されていると主張されている(Batterhamら、2004 Abstract 3.3 International NPY Symposium
in Coimbra, Portugal)。PPはY4レセプターを通じて作用し、このレセプターに対してナノモルの親和性を有するPYY及びNPYとは対照的にPPはナノモル未満の親和性を有する(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。PPはまた、Y5レセプター対して相当の親和性を有するが、このことは、このレセプターが特に発現しているCNSの細胞へのアクセスを欠いているため、及びPPに関する比較的低い親和性のために、循環PPに関しては生理学的に重要である可能性は低い。
【0008】
PP折り畳みペプチドレセプター
ヒトには、4つの十分に確立されたタイプのPP折り畳みペプチドレセプター:Y1、Y2、Y4、及びY5が存在し、これらは全て同様な親和性でNPY1-36及びPYY1-36を認識する。かつては、PYYよりNPYを好むとされたY3レセプタータイプが示唆されたが、今日ではこれは真のレセプターサブタイプとして受け入れられていない(Michelら、1998 Pharmacol. Rev.
50: 143-150)。Y6レセプターサブタイプがクローニングされたが、ヒトでは、これはTM-VII並びにレセプターテイルを欠く切断形態で発現され、その結果少なくともそのままでは機能的レセプター分子を形成しないようである。
【0009】
Y1レセプター − 親和性研究により、Y1はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。Y1に対する親和性は、PP折り畳み分子(NPY/PYY)の両末端配列の同一性−例えば残基Tyr1及びPro2が必須である−及びペプチド端が全く正しい様式で提示されていることに依存する。C末端部(その残基の幾つかのものの側鎖が必須である)では、Y1レセプターは、−Y4レセプター及びY5レセプターと同様であるが、Y2レセプターとは異なり−34位(通常はGln)での或る種の置換(例えばPro)に寛容である(Fuhlendorffら、1990 J.Biol.Chem. 265: 11706-12;Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 61: 35-47)。Y1レセプター及びY2レセプターの要件に関する構造-機能研究も幾つか報告されている(Beck-Sickingerら、1994 Eur.J.Biochem. 225: 947-58;Beck-Sickinger及びJung 1995 Biopolymers 37: 123-42;Sollら、2001 Eur.J.Biochem. 268: 2828-37)。
【0010】
Y2レセプター − 親和性研究により、Y2はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。このレセプターは、特にPP折り畳みペプチド(NPY/PYY)のC末端部を必要とする。したがって、長いC末端フラグメント−例えばNPY13-36(αヘリックス全体+C末端ヘキサペプチド)程度までの−は、比較的高い親和性で、すなわち全長ペプチドの親和性の1/10〜10倍(within ten-fold)で認識される(Sheikhら、1989 FEBS Lett. 245: 209-14;Sheikhら、1989 J.Biol.Chem. 264: 6648-54)。したがって、種々のN末端欠失(これはY1レセプターへの結合を消失する)は、依然としてY2レセプターへの或る程度の結合を保存する。しかし、C末端フラグメントの親和性は、比較的長いフラグメントに関してさえ、NPY/PYYと比較して約1/10倍(10 folds)に低下する。NPY及びPYYの34位のGln残基は、Y2レセプターのリガンド認識にとって高度に重要である(Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 611: 35-47)。
【0011】
Y4レセプター − 親和性研究により、Y4はPPに血漿中で見出される濃度に相当するナノモル未満の親和性で結合する一方、NPY及びPYYはよりずっと低い親和性で認識されることが示唆されている。このような研究により、Y4レセプターはPP折り畳みペプチドのC末端部に高度に依存すること、及び比較的短いN末端欠失はこのリガンドの親和性を損なうことが示唆されている。Y4レセプターに関する構造活性研究が幾つか報告されている(Gehlertら、1996 Mol.Pharmacol. 50: 112-18;Walkerら、1997 Peptides 18: 609-12)。
【0012】
Y5レセプター − 親和性研究により、Y5はNPY及びPYYに等しく親密に結合し、PPにもより低い(が、このホルモンの通常の循環レベルを下回る)親和性で結合する。PYY3-36もまた、Y5レセプターによって十分に認識されるが、このレセプターは、このペプチドが末梢に投与されたときに容易に該レセプターにアクセスできないCNSにおいてかなりの程度で発現される。
【0013】
PP折り畳みペプチド及びこれらのアナログは、動物モデル及びヒトでこれらペプチドの或る種のものの証明された効果、並びに、肥満のヒトがPYY及びPPの低い基礎レベル及びこれらペプチドのより低い食事応答を有している事実に基づいて、肥満及び付随する疾患(例えばプラーダー‐ヴィリ症候群を含む)の治療における使用について示唆されている(Holst JJら、1983 Int.J.Obes. 7: 529-38;Batterhamら、1990 Nature)。プラーダー‐ヴィリ症候群の患者におけるPPの注入は、早くから、食物摂取を減少させることが示され(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)、この効果は健常なヒト対象におけるPPの注入によって確認されている(Batterhamら、2003, Clin.Endocrinol.Metab. 88: 3989-92)。PP折り畳みペプチドはまた、例えば治療的な脈管形成(Zukowskaら、2003 Trends
Cardiovasc Med. 13:86-92)及び炎症性腸疾患(例えばWO03/105763を参照)における使用について示唆されている。
【0014】
しかし、天然型PP折り畳みペプチドは、バイオ医薬品としての使用に最適ではない。例えば、完全長ペプチドPYY1-36及びNPY1-36は、全てのYレセプタータイプと広く反応しすぎ、したがって心血管性の副作用及び例えば嘔吐を引き起こす。更に、天然ペプチドは、通常、比較的短時間、ニューロペプチド又はホルモンとして作用するように作られているので、タンパク質安定性について最適化されていない。天然に存在する、よりY2選択性であるペプチドPYY3-36は、例えば、そのPP折り畳み構造がポリプロリンヘリックスの重要なPro2(これは、完全長ペプチド中では、当該分子の両親媒性ヘリックス領域のTyr27と相互作用する)の除去に起因して損なわれているという欠点を有している。
【0015】
したがって、Yレセプター調整に応答性の症状の治療のためには、標的として意図される選択したYレセプターに特異的であり、且つレセプター結合に重要なPP折り畳み構造の要素が安定的に保存されるYレセプターPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体を使用することが望ましい。特に、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性である薬剤を使用することが極めて望ましい。Y2レセプターは、肥満、メタボリック症候群などの治療のために、例えば食物摂取及びエネルギー消費に対して有益な効果を与えるレセプターであり、例えば末梢血管疾患又は冠血管疾患を有する患者で治療的な脈管形成を得るために有益な効果を与えるのもまたY2レセプターである。しかし、Y2レセプターアゴニストとして作用する薬剤は、それがY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターについて選択性でない限り、このような治療に特には有用でない。Y1レセプターに対する作働作用(agonism)は、例えば心血管系並びに腎臓系における重篤な副作用−それぞれ血圧の上昇及びナトリウム排泄増加−を引き起こす。同様に、Y4レセプターよりY2レセプターに対する選択性は望ましい。なぜなら、2つの天然のY2アゴニスト及びY4アゴニストであるそれぞれPYY及びPPは、例えば胃腸管に対して多くの同様な効果を有し、その或るものは有益であるが或るものは望まない副作用を引き起こし得るからである。例えば、Y2レセプター及びY4レセプターは共に、小腸及び大腸でそれぞれニューロン性の作用態様及び上皮直接性の作用態様を通じて抗分泌効果を促進する(Coxら、2002 Br.J.Pharmacol. 135: 1505-12)。したがって、Y2レセプター及びY4レセプターの組合せ刺激を通じて、相加的な抗分泌効果又は可能性としては相乗的な抗分泌効果さえも得られる可能性が高く、これは便秘を導き得る。
【0016】
本明細書で使用する幾つかの共通する用語
親和性:特定のレセプターに対するペプチドの親和性は、例えばIC50値又はKi若しくは
Kd値として与えられる。親和性は、具体的ではあるが限定的でない例において、アッセイ、例えば競合結合アッセイで決定される。IC50値は、該当する所定のレセプターに関しての、Kdより遥かに少ない量で使用する放射性リガンドと50%置換するペプチドの濃度に相当する。
【0017】
食欲:食物に対する自然な欲望又は切望。食欲の増加は、一般に、摂食行動の増加に至る。
食欲抑制剤:食物に対する欲望を減少させる化合物。
【0018】
結合:2つの分子が相互作用するような当該2つの分子間の特異的相互作用。レセプターへの結合は特異的且つ選択的であることができ、その結果、或る分子は別の分子と比較して優先的に結合される。特異的結合は解離定数(Kd)によって同定されてもよい。この値は、試験される化合物の選択性に依存する。例えば、10nM未満のKdを有する化合物は、一般に、優れた薬物候補であると考えられる。しかし、より低い親和性を有するが特定のレセプターに対して選択性である化合物もまた、良好な薬物候補であり得る。
【0019】
ボディ・マス・インデックス(BMI):ボディマスを測定するための数式であり、時にケトレー指数(Quetelet's Index)とも呼ばれる。BMIは体重(kg)を身長2(メートル)で除して算出する。男性及び女性の両方について「正常」と認められている現行の標準は、約20kg/m2のBMIである。1つの実施形態では、25kg/m2より大きなBMIは、肥満対象を同定するために使用することができる。グレードIの肥満は25kg/m2のBMIに相当する。グレードIIの肥満は30〜40kg/m2のBMIに相当し;グレードIIIの肥満は40kg/m2より大きなBMIに相当する(Jequier 1987 Ain. J Clin. Nutr. 45:1035-47)。理想的な体重は、身長、体格、骨構造、及び性別に基づいて種間及び個体間で変わる。
【0020】
カロリー摂取又は熱量摂取:個体により消費されるカロリー数(エネルギー)。本発明に関しては、この用語は用語「エネルギー摂取」と同一である。
【0021】
美容処置:この用語は、医学目的でないが、例えば対象の外観に関して、対象の満足な状態(well-being)を改善するための処置を指称すると意図される。この用語には、必ずしも過体重でも肥満でもない体重を減少させることを望む対象の処置が含まれる。
【0022】
食物摂取:個体によって消費される食物の量。食物摂取は体積又は重量で測定することができる。この意味には、i)個体により消費された食物の総量としての食物摂取、及びii)個体のタンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、ミネラル、又は他の任意の食物成分の量である食物摂取が含まれる。したがって、本発明に関して使用される用語「食物摂取」は、用語「エネルギー摂取」と同様である。
【0023】
正常な日々の食餌:所定の種の個体についての平均的な食物摂取。正常な日々の食餌は、カロリー摂取、タンパク質摂取、炭水化物摂取、及び/又は脂肪摂取に関して表すことができる。ヒトにおける正常な日々の食餌は、一般に、以下を含んでなる:約2,000、約2,400、又は約2,800カロリー〜それより相当高いカロリー。加えて、ヒトにおける正常な日々の食餌は、一般に、約12g〜約45gのタンパク質、約120g〜約610gの炭水化物、及び約11g〜約90gの脂肪を含む。低カロリー食餌は、ヒト個体の正常なカロリー摂取の約85%以下、好ましくは約70%以下である。動物では、カロリー及び栄養の要件は、動物の種及びサイズに依存して変わる。例えば、ネコでは、1kg当たりの総カロリー摂取並びにタンパク質、炭水化物及び脂肪の構成比は、ネコの年齢及び繁殖状態で変わる。
【0024】
肥満:過剰の体脂肪がヒトを健康上の危険に曝しているかもしれない症状(Barlow及びDietz, Pediatrics 102:E29, 1998;National Institutes of Health, National Heart,
Lung, and Blood Institute (NHLBI), Obes. Res. 6 (suppl. 2):51 S209S, 1998を参照)。過剰の体脂肪は、エネルギー摂取及びエネルギー消費の不均衡の結果である。1つの実施形態では、ボディ・マス・インデックス(BMI)が肥満を評価するために使用される。1つの実施形態では、約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2まで、特に約25.0kg/m2から30kg/m2までのBMIが過体重とみなされる一方、30kg/m2以上のBMIは肥満である。
【0025】
過体重:理想的な体重より体重が重い個体。過体重の個体は肥満であり得るが、必ずしも肥満ではない。1つの実施形態では、過体重の個体は、体重を減少させたいと願っている任意の個体である。別の実施形態では、過体重の個体は、約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2までのBMIを有する個体である。約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2まで、特に約25.0kg/m2から30kg/m2までのBMIが過体重とみなされる。正常値よりほんの僅かに高いBMI(例えば約22〜約25kg/m2)を有する対象は、体重の減少を願うことが非常に頻繁であるが、これは美容的理由のみからであり得ることに留意すべきである。
【0026】
効力:化合物のインビトロ効力は、該当する所定のレセプターに関してのシグナル伝達アッセイで決定されるEC50値に関して、すなわち達成可能な最大限の効果の50%を導く濃度に関して定義される。
【0027】
対象:対象は、ヒト対象及び獣医学上の哺乳動物対象の両方を含む任意の対象であり得る。したがって、対象はヒトであり得、又は非ヒト霊長類、家畜動物(例えばブタ、ウシ、ヒツジ及び家禽)、スポーツに用いる動物若しくはペット(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ハムスター及びげっ歯類)であり得る。
【0028】
治療有効量:特定の症状又は疾患を予防、治療又は寛解し、及び/又は、特定の症状又は疾患の特定の徴候又は症状を緩和するために十分な用量。この用語は、障害の進行を予防し又は退行を引き起こすに十分な用量、又は障害の徴候若しくは症状を軽減できる用量、又は所望の結果を達成することができる用量を含む。美容処置又は過体重若しくは肥満の治療に関連する実施形態では、レセプターアゴニストの治療上の効果は、体重増加を阻害又は停止するに十分な量、又は食欲を減少させるに十分な量、又はエネルギー若しくは食物の摂取を減少させるか又はエネルギー消費を増加させるに十分な量である。用語「美容上の有効量」は、処置される対象が所望の効果を達成するために十分な用量を指称すると意図される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の詳細な説明
最も広い観点では、本発明は、Y2レセプターの活性化用組成物の製造における、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性であるPYY 3-36以外のYレセプターアゴニストの使用を提供する。
ここで、
【0030】
(a)前記アゴニストは、
NPYのTyr1に相当するチロシン残基を有さず、及び/又は
NPYのPro2に相当するプロリ残基を有さず、及び/又は
NPYのSer3に相当するセリン残基も、アスパラギン残基も、グルタミン残基も、スレオニン残基も、ロイシン残基も、イソロイシン残基も、バリン残基も、メチオニン残基も、トリプトファン残基も、チロシン残基も、フェニルアラニン残基も有さず、
NPYのLys4に相当するリジン残基もアルギニン残基も有さず、及び/又は
NPYのLeu24に対応する位置にロイシン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのArg25に対応する位置にアルギニン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのHis26に対応する位置にヒスチジン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのIle28に対応する位置にイソロイシン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのAsn29に対応する位置にアスパラギン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのLeu30に対応する位置にロイシン又はメチオニン以外の残基を有する
PYY、NPY、PYY模擬体及びNPY模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
【0031】
(b)前記アゴニストは、
C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有し、及び
PPのPro2に対応する位置にプロリンを有さず、及び/又は
PPのLeu3に対応する位置にロイシンを有さず、及び/又は
PPのGlu4に対応する位置にグルタミン酸を有さない
PP及びPP模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
【0032】
(c)前記アゴニストは、(i)N末端で両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなり、該両親媒性アミノ酸配列ドメインは該Y2レセプター認識配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなり、該ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状中に拘束され、(ii)前記アゴニストがNPY又はPYYと類似するN末端構造を有する場合には上記(a)で挙げた改変の1以上を有し、前記アゴニストがPPと類似するN末端構造を有する場合には上記(b)で挙げた改変の1以上を有する。
【0033】
本発明に関連する具体的用語法
本発明に係るアゴニストは、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性である。本発明に関しては、この条件は、当該アゴニストが、本明細書中に記載の親和性アッセイで測定したとき、Y2レセプターに対して、Y1レセプター及びY4レセプターに対してより少なくとも10倍(10-fold)低いIC50値を有すれば充足される。一般に、効力に関して、本発明のアゴニストはまた、本明細書中に記載の効力アッセイで測定したとき、Y2レセプターに対し、Y1レセプター及びY4レセプターに対してより少なくとも10倍(10-fold)低いEC50値を有している。本発明の好ましいアゴニストの多くは、Y2レセプターに対し、Y1レセプター及びY4レセプターに対してより少なくとも100倍(100-fold)高い親和性及び効力を有している。これは、天然ペプチドPYY3-36で得られる差より大きな差である。幾つかの本発明の好ましいアゴニストは、Y2レセプターに対し、Y1レセプター及びY4レセプターに対してより少なくとも1000倍(1000-fold)高い親和性及び効力を有している。
【0034】
本明細書の目的のためには、PP折り畳みペプチドは、X線結晶学により決定した(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85)トリPPの本来の3-D構造に対してマッピングしたとき、NPY、PYY及び/又はPPのN末端ポリプロリン様ヘリックス、タイプIβターン領域、両親媒性αヘリックス及びC末端ヘキサペプチドドメイン(図1)に対応し、実質的にこれらと同様に整列されるドメインを有する3-D構造を有する分子である。したがって、本明細書で使用するPP折り畳みペプチドの種々のドメインの記載は、トリPPの本来のX線構造(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85;Schwartzら、1990)を参照している。
【0035】
本明細書の目的のためには、PP折り畳みペプチド模擬体は、トリPPの本来の3-D構造に
対してマッピングしたとき、PPの両親媒性αヘリックスの最後のターン及びC末端ヘキサペプチドドメインに対応し、実質的にこれらと同様に整列されるドメインを少なくとも有する3-D構造を有する分子である。PP折り畳みペプチド模擬体はまた、上記のようにマッピングしたとき、両親媒性αヘリックスの残りのターン、N末端ポリプロリン様ヘリックス及びタイプIβターン領域のうちの1又はそれ以上に対応するドメインを有していてもよい。ペプチド模擬体は、全体が古典的なペプチド結合によって連結されたαアミノ酸の配列からなっている必要はない。そのような配列中の1又はそれ以上の結合は、当該ペプチド模擬体が擬ペプチド配列とみなされ得るように、ペプチド模擬結合(例えば逆アミド(reverse amide)、及び還元されたペプチド結合)によって置換されていてもよい。このような結合置換は、エンドペプチダーゼ分解に対する耐性を付与し、当該分子の薬力学特性を改善することができる。
【0036】
「PP折り畳みペプチド」及び「PP折り畳みペプチド模擬体」の上記定義で言及した3-D構造の比較は、例えばX線回折法により決定される原子座標に基づいて分子比較モデルを構築することにより、又は構造式から予測される分子の3-D構造の視覚化用に市販されているコンピュータプログラム、例えば:Schrodinger Inc.(1500 S.W. First Avenue, Suite 1180 Portland, OR 97201)の「Maestro Modelling Environment」;Accelrys Inc.(San Diego)の「Insight II Modeling Environment」 Release 4.0;及びTripos Inc.(1699 South Hanley Rd., St. Louis, Missouri, 63144, USA)の「SYBYL(登録商標) 7.0」の1又はそれ以上を使用することにより行ってもよい。本発明に従うPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体の3-D構造は、天然のNPY、PPY、又はPPの3-D構造と正確な対応関係を有する必要はなく、一般にはそのような正確な対応関係を有していないことに留意すべきである。PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体の見かけの3-D構造は、これを研究するために使用される実験条件に依存して変わり、特により小さなペプチドについては、或る種の条件下ではより多く折り畳みが解かれているようにも見えるし、より少なく折り畳みが解かれているようにも見え得る。しかし、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体は、上記で特定したPP折り畳みドメインに対応するドメインを有するべきであること、及びそれが天然型ペプチドと同様の全体形状(C末端配列及び存在すればN末端配列が正常に配向している)をとるための構造的要素を有することで十分である。
【0037】
本発明に係るアゴニストとの関連で使用される場合、C末端Y2レセプター認識配列は、アゴニストのC末端に位置する、通常約5〜7残基長の配列、特にヘキサペプチド配列であり、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体中に存在する場合、Y2レセプターに結合し、結合相互作用を通じて該レセプターを活性化する配列である。古典的なC末端Y2レセプター認識配列は、天然のNPY又はPYYペプチド中に見出されるものであるが、本明細書中で明らかになるように、これら古典的配列は例えばY2認識を保持するがY1認識を減少させるように改変されてもよい。任意の特定のアゴニスト中に存在するC末端配列は、その配列が存在するときに問題のPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体が本明細書中に記載の親和性アッセイ及び/又は効力アッセイでY2レセプターと相互作用し、その配列が欠失されたときに相互作用しなければ(又は相互作用が有意な程度でなければ)、Y2レセプター認識配列である。
【0038】
本明細書中で、「NPYのSer3に相当する残基」のような用語は、アゴニストの3-D構造をNPYの3-D構造にマッピングすると、NPYのSer3に最も近接してマッピングされる当該アゴニストのアミノ酸残基をいう。同様に、「PPのGlu4に対応する位置に」のような用語は、アゴニストの3-D構造をPPの3-D構造にマッピングすると、NPYのGlu4に最も近接してマッピングされるアミノ酸残基の当該アゴニスト中での位置をいう。特定のペプチド中の特定の残基の実際の番号付けは、天然ペプチドに関して例えば欠失が生じていることに起因して、これとは変わり得る。
【0039】
一般に、本発明に係るPP折り畳みアゴニスト又はPP折り畳み模擬体アゴニストは、通常、ペプチド性主鎖又は部分的にペプチド性である主鎖(少なくともC末端アミノ酸配列及びしばしばN末端アミノ酸配列に)を有するが、主鎖の残りは、非ペプチド性リンカー基、例えば直鎖又は分枝鎖のアルキレン鎖であってもよい。アゴニストのペプチド性部分に存在するアミノ酸は、通常、特にY2レセプターと相互作用するC末端及びN末端の配列では、天然に存在するアミノ酸であるが、PP折り畳みを保存し且つY2レセプター結合を妨げない非天然αアミノ酸もまた存在してもよい。
【0040】
本発明に係るアゴニストがC末端アミノ酸配列又はN末端アミノ酸配列を有する場合、C末端がアミド化され、及び/又はN末端がアシル化されて、カルボキシペプチダーゼ及び/又はアミノペプチダーゼに対する耐性を付与されてもよい。事実、天然型NPY、PYY、及びPPペプチドのC末端はアミド化されているので、本発明のアゴニストのC末端アミノ酸もアミド化されていてもよい。
【0041】
本明細書中で、アミノ酸に対する言及は、一般的な名称又は略称、例えばバリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、システイン(Cys)、及びプロリン(Pro)により行われる。立体異性体型を特定せずに一般的な名称又は略称で言及する場合、問題のアミノ酸は、L体として理解されるべきである。D体を意図する場合、アミノ酸は、そのように特定して言及される。時には、文脈によりそうすることが望ましい場合には、L体は推論されるよりむしろ特定される。
【0042】
本明細書中で使用される用語「保存的置換」は、1又はそれ以上のアミノ酸が生物学的に同様な別の残基により置換されることを指称する。例としては、同様な特徴を有するアミノ酸残基(例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸)の置換が挙げられる。本発明における使用に適切な保存的アミノ酸置換の限定的でない例としては、下記の表に記載のもの、及び元の残基の同様な特徴を有する非天然αアミノ酸による類似置換(analogous substitution)が挙げられる。例えば、本発明の好ましい実施形態において、Met残基は、Metの生物学的等価物であるが−Metとは対照的に−容易には酸化されないノルロイシン(Nle)で置換される。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質では通常は見出されない残基での保存的置換の別の例は、Arg又はLysの、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又はその他の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関する更なる情報については、例えばBowieら、Science 247, 1306-1310, 1990を参照。
【0043】
【表1】

【0044】
出現する文脈中で特に断りのない限り、本明細書において任意の部分(moiety)に適用される用語「置換(された)」は、4つまでの適合性の置換基で置換されていることを意味する。この置換基の各々は、独立して、例えば、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、ハロ(フルオロ、ブロモ、及びクロロを含む)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ、フェニル、-COOH、-COORA、-CORA、-SO2RA、-CONH2、-SO2NH2、-CONHRA、-SO2NHRA、-CONRARB、-SO2NRARB、-NH2、-NHRA、-NRARB、-OCONH2、-OCONHRA、-OCONRARB、-NHCORA、-NHCOORA、-NRBCOORA、-NHSO2ORA、-NRBSO2OH、-NRBSO2ORA、-NHCONH2、-NRACONH2、-NHCONHRB、-NRACONHRB、-NHCONRARB、又は-NRACONRARB(式中、RA及びRBは独立して(C1-C6)アルキル基である)であり得る。「任意の置換基」は上記の置換基のうちの1つであり得る。
【0045】
文脈が他を示していない限り、本明細書中でのNPY、PYY、及びPPペプチド並びにそれらの配列への言及は、ヒト形態のこれらペプチド及び配列に関する。しかし、他の哺乳動物のNPY、PYY、及びPPペプチドは、それらの用語が本明細書中で使用されているように、ヒトNPY、PYY、及びPPのPP折り畳みペプチド模擬体又は保存的置換したヒトNPY、PYY、又はPPを構成する。
【0046】
本発明に従う使用のためのタイプ(a)アゴニスト
一般に、タイプ(a)アゴニストは、Y1レセプターに対する効力を実質的に減少させる改変を有する、NPY若しくはPYYのPP折り畳みアナログ又はNPY若しくはPYYのPP折り畳み模擬体である。このようなPP折り畳みアナログ及び模擬体としては、PP折り畳みの特徴(N末端ポリプロリン様ヘリックス、βターン、両親媒性αヘリックス及びC末端ヘキサペプチド)を全て備えたペプチド、主鎖の一部(例えばβターン残基及び隣接残基)が非ペプ
チド性スペーサー鎖により置換されているペプチドアナログ、並びにC末端ヘキサペプチド及び両親媒性αヘリックスの最後のターンを保有するが、ポリプロリン様ヘリックス及び/又はβターンの全て又は一部を欠いている切断型ペプチドが挙げられる。
【0047】
本発明に係る上記タイプ(a)のY2選択性アゴニストの1つのセットは、NPYのTyr1に対応する位置にTyr、Trp又はPhe以外の残基を、及び/又はNPYのPro2に対応する位置にPro以外の残基を、及び/又はNPYのSer3に対応する位置にIle、Leu、Val、Phe、Trp、Tyr、Ser、Thr、及びAsn以外の残基を、及び/又はNPYのLys4に対応する位置にリジン及びアルギニン以外の残基を有する。
【0048】
このタイプのアゴニストの特に好ましいサブセットは、1位にTyr、Trp及びPhe以外の残基が、及び/又は2位にPro以外の残基が、及び/又は3位にIle、Leu、Val、Phe、Trp、Tyr、Ser、Thr、及びAsn以外の残基が、及び/又は4位にリジン及びアルギニン以外の残基が存在することを除いてヒトNPYの配列と同一の配列を有するペプチドからなる。このようなアゴニストの配列と天然型配列とは基本的に(1〜4位の指定された変更はいずれも別として)同一であることが好ましいが、天然型配列のその他の残基の保存的置換は、特にC末端ヘキサペプチド配列から遠隔で、許容することができる。
【0049】
本発明に従う使用のためのタイプ(b)アゴニスト
一般に、タイプ(b)アゴニストは、Y4レセプターに対する効力を実質的に減少させY2レセプターに対する効力を増大させる改変を有する、PPのPP折り畳みアナログ又はPPのPP折り畳み模擬体である。タイプ(a)アゴニストの場合と同様に、このクラスとしては、PP折り畳みの特徴(N末端ポリプロリン様ヘリックス、βターン、両親媒性αヘリックス及びC末端ヘキサペプチド)を全て備えたペプチド、主鎖の一部(例えばβターン残基及び隣接残基)が非ペプチド性スペーサー鎖により置換されているペプチドアナログ、並びにC末端ヘキサペプチド及び両親媒性αヘリックスの最後のターンを保有するが、ポリプロリン様ヘリックス及び/又はβターンの全て又は一部を欠いている切断型ペプチドが挙げられる。
【0050】
本発明に係る上記タイプ(b)のY2選択性アゴニストの好ましいセットは、34位にGln又は構造的に同様な残基を有し、PPのPro2に対応する位置にPro、Tyr、Phe、及びTrp以外の残基を、及び/又はPPのLeu3に対応する位置にIle、Leu、Met、及びVal以外の残基を、及び/又はPPのGlu4に対応する位置にGlu又はAsp以外の残基を有する。
【0051】
このタイプのアゴニストの特に好ましいサブセットは、34位にGln残基が、及び/又は2位にPro、Tyr、Phe、及びTrp以外の残基が、及び/又は3位にIle、Leu、Met、及びVal以外の残基が、及び/又は4位にGlu及びAsp以外の残基が存在することを除いてヒトPPの配列と同一の配列を有するペプチドからなる。このようなアゴニストの配列と天然型配列とは基本的に(2〜4位の指定された変更はいずれも別として)同一であることが好ましいが、天然型配列のその他の残基の保存的置換は、特にC末端ヘキサペプチド配列から遠隔で、許容することができる。
【0052】
本発明に従う使用のためのタイプ(c)アゴニスト
一般に、タイプ(c)アゴニストは、最小PP折り畳み構造的特徴(C末端ヘキサペプチド及びαヘリックスの最後のターン)が指定された分子内共有結合性連結により安定化されている、タイプ(a)及び(b)のPP折り畳みペプチドアナログ又はPP折り畳み模擬体と見なすことができる。
【0053】
このタイプのアゴニストは、天然型のNPY、PYY、又はPPペプチドに等価物がないか、又は非共有結合性相互作用に相当するか若しくは非共有結合性相互作用を共有結合性連結で
置換されたかのいずれかの分子内連結により特徴付けられる。例えば、[Cys2,DCys27]PYY(配列番号:13)中のCys2とD-Cys27との間の共有結合性ジスルフィド橋架けはトリPPのX線構造で観察されるようなPro2及びTyr27の側鎖間の非共有結合性疎水性相互作用を模擬する。記載したように、このような連結は、PP折り畳み構造の必須要素、特に可動性C末端Y2認識配列及びαヘリックスの最後のターン、及び/又はN末端の提示を安定化するために働くことができる。完全長ペプチド又は完全長に近いペプチドでは、このような連結は、天然型PP折り畳み構造自体を安定化することができる。このことは2通りで有益である。第1には、そのような連結は、両親媒性αヘリックスのC末端部分を安定化し、そのことにより、最適な様式でのC末端Y2認識アミノ酸配列の提示を安定化し、その結果、Y2レセプターに対する改善された効力を生じる;第2には、PP折り畳み自体の全体を安定化することにより、ペプチドがタンパク質分解性分解に対してより感受性でなくなる。なぜならば、酵素は、標的配列がむしろ折り畳みを解かれている様式で見出されることを要求することが多いからである(Schwartzら、1990)。分子内連結はまた、天然型ペプチドの構造に関して激しく(heavily)改変されているY2選択性アゴニスト、例えば天然型ペプチド中に見出される1又はそれ以上のドメイン、又はドメインの部分を欠くアゴニストを可能にすることができる。
【0054】
このタイプ(c)のアゴニストの1つのセットは、PP折り畳み構造を有し、該構造において、ヘリックスターン拘束性分子内連結が、両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、該両親媒性ドメインに逆平行に伸びPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分の連結点まで伸びている。このアゴニストがNPY又はPYYと類似するN末端構造、例えばNPY又はPYYの最後の数個の残基にマッピングされるN末端ドメインを有する場合、該アゴニストは、NPYのTyr1に相当するチロシン残基を有さず、及び/又はNPYのPro2に相当するプロリ残基を有さず、及び/又はNPYのSer3に相当するセリン残基も、アスパラギン残基も、グルタミン残基も、スレオニン残基も、ロイシン残基も、イソロイシン残基も、バリン残基も、メチオニン残基も、トリプトファン残基も、チロシン残基も、フェニルアラニン残基も有さず、及び/又はNPYのLys4に相当するリジン残基もアルギニン残基も有するべきではない。このアゴニストがPPと類似するN末端構造、例えばPPの最後の数個の残基にマッピングされるN末端ドメインを有する場合、該アゴニストは、PPのPro2に対応する位置にプロリンを有さず、及び/又はPPのLeu3に対応する位置にロイシンを有さず、及び/又はPPのGlu4に対応する位置にグルタミン酸を有するべきではない。ヘリックスターンを拘束する分子内連結、例えばジスルフィド連結又はラクタム連結は、前記の場合、両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、4つのN末端残基のうちの1つまで伸びていてもよい。
【0055】
このタイプのアゴニストの特に好ましいサブセットは、ヘリックスターンを拘束する分子内連結が両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基からポリプロリンドメインのN末端部分の連結点まで伸びることを除いてヒトPYYの配列と同一の配列を有するペプチドからなる。このような連結は、5位と20位の残基間又は8位と16位の残基間、特に2位と27位の残基間にあり得、例えば27位のD-Cysと2位のCysとの間のジスルフィド連結であり得る。D体Cysは27位で好ましい。なぜなら、これは、分子全体がPP折り畳み構造をとり模擬するために、チオール側鎖を最適に配向し、2位に導入された「正常な」L体Cysとジスルフィド橋架けを形成するからである。安定化性分子内連結を含んでなる完全長PP折り畳みペプチドは、原則的にY1レセプター認識に必要である当該分子の極N末端部分を有し得るが、本発明のアナログは、上記のように、Y1レセプターに対してアゴニストとして作用しないか、又はより低い効力でのみ作用することに留意すべきである。このことの理由は、分子内連結自体が、Y1認識に通常は必要である残基、例えばPro2及びTyr27を含むか、又は該連結がY1認識エピトープから遠く離れた位置である場合には、確実にY1選択性よりY2選択性であるように意図的に置換がペプチドになされているかのいずれかである。このアゴニストの配列とPYY天然型配列とは基本的に(操作された分子内連結に起因する変更はいず
れも別として)同一であることが好ましいが、天然型配列のその他の残基の保存的置換は、特にC末端ヘキサペプチド配列から遠隔で、そのアナログ中で許容することができる。
【0056】
タイプ(c)の別のセットのアゴニストでは、ヘリックスターンを拘束する分子内連結は、αヘリックスドメインの最後のヘリックスターンの残基間に伸びるか(例えば該ヘリックスターンのLys残基とGlu残基との間に形成されるラクタム連結)、又はC末端Y2認識アミノ酸配列中の残基とαヘリックスドメインの最後のヘリックスターン中の残基との間に伸びる(例えば[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19、図2B)中のLys28とGlu32との間のラクタム橋架け)。このタイプのアゴニストの1つのサブセットは、N末端(例えば残基27程度に遠く)が切断されていることを除いてヒトPYYの配列と同一の配列、及び当然のことではあるが当該操作された分子内連結により必要とされる任意の変更を有する。
【0057】
本発明に従う使用のためのタイプ(a)、(b)及び(c)アゴニストの性状
C末端
Y2選択性であるために、本発明に係る3つの全てのタイプのアゴニストは、C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有する。本明細書に記載される親和性アッセイ及び効力アッセイを用いる暗索法は、特定のC末端試験配列がY2レセプターを認識するかどうかを容易に決定する。本発明のアゴニストに存在する好ましいC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列の1つのセットは、-X-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、Xは塩基性又は酸性の残基ではなく、R1及びR2は独立して水素又はC1-C6アルキルである)又はThrがHis又はAsnに置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheに置換され;及び/又はArgがLysに置換されたその保存的置換変形体に代表される。現時点では、R1及びR2の両方が水素であることが好ましい。
【0058】
1つの特定のC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列は-Ile-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2であり、別のものは-Ala-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2である。
【0059】
本発明に係るタイプ(a)、(b)又は(c)のPP折り畳み模擬体アゴニストの1つのセットでは、Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるC末端の配列は、そのN末端で、該エピトープのN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインと融合していてもよく、及び少なくとも2つのアミノ酸のN末端アミノ配列。該C末端及びN末端のアミノ酸配列はリンカー基にペプチド結合により結合している。該リンカー基は、任意に1又はそれ以上の二重結合又は三重結合を含有していてもよい、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。例えば、このリンカー基のペプチド結合は、式NH2(CH2)nCO2H(式中、nは2〜12であり、特には6、7、8、9又は10である)のアミノ酸のカルボキシル基及びアミノ基とそれぞれ形成されていてもよい。したがって、このアゴニストは、上記のようなCys-Cys橋架けを有するが、天然型ペプチドの5〜24に相当するアミノ酸残基が6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸)、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、及びアミノデカン酸からなる群より選択される6〜10炭素原子の炭素鎖を有するアミノカルボン酸で置換されているNPY、PPY又はPPのアナログであってもよい。具体的な実施形態において、8-アミノオクタン酸(本明細書中で時に「Aoc」と略される)が好ましい。このようなアゴニストの例は、[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16;図2A)である。
【0060】
N末端
本発明に係る3つ全てのタイプのY2選択性アゴニストは、N末端でアシル化されてアミノペプチダーゼ活性に対する耐性を付与されていてもよい。例えば、アシル化は、2〜24炭素原子を有する炭素鎖を用いるものであってもよく、N末端アセチル化は特定の例である。
【0061】
本発明に従う使用のための適合化されたアゴニスト
ここまで、本発明に従う使用のための基本的なY2選択性アゴニストを一般的に記載し、そのようなアゴニストの具体的例を提供してきた。しかし、薬物動態学、薬力学、及び代謝特性の改善を目的として、種々の改変がこのようなアゴニスト(具体的に特定されたアゴニストを含む)に対してなされ得る。このような改変としては、アゴニストを、それ自体はペプチド又はタンパク質の製薬分野で公知の機能集団(functional groupings)(モチーフとしても知られる)に連結することが含まれ得る。本発明に係るアゴニストの場合に特に有益な3つの特定の改変は、タイプ(a)、(b)又は(c)のいずれであるかにかかわらす、血清アルブミン結合モチーフ又はグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフとの連結、又はPEG化である。
【0062】
また、PYY3-36は本発明に従う使用から除外されるが、このような改変を有するPYY3-36の使用は除外されない。
【0063】
血清アルブミン結合モチーフ
血清アルブミン結合モチーフは、代表的には、投与の際に体内で延長された滞留を可能にするため又は他の理由で組み込まれる親油性基であり、これは、種々の公知の方法で、ペプチド性又はタンパク質性の分子に、例えばi)共有結合性連結を介して、例えば側鎖アミノ酸残基上に存在する官能基に、ii)当該ペプチド又は適切な誘導体化ペプチド中に挿入された官能基を介して、iii)当該ペプチドの統合部分(integrated part)として、カップリングされ得る。例えば、WO 96/29344(Novo Nordisk A/S)及びP. Kurtzhalsら、1995 Biochemical J. 312: 725-31及びL.B.Knudsenら、2000 J.Med.Chem. 43: 1664-69は、本発明に係るアゴニストの場合に用いることができる多くの適切な親油性改変を記載している。
【0064】
適切な親油性基には、任意に置換されていてもよい、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基が挙げられる。このような基は、例えばアゴニストの主鎖中のアミノ酸残基の側鎖又はPP折り畳み模擬体アゴニストの主鎖中の非ペプチド性リンカー基の主鎖炭素若しくは主鎖炭素からの分枝へのエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合により、アゴニストの主鎖に対して側鎖を形成していてもよいし、該側鎖の一部を形成していてもよい。親油性基の付着のための化学ストラテジーは、重要でないが、親油性基を含む以下の側鎖が、アゴニストの主鎖炭素又はそれからの適切な分枝に連結され得る例である:
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH-(式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH-(式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH-(式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO-(式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3(式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格。
【0065】
1つの化学合成ストラテジーにおいて、親油性基含有側鎖は、アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基、例えばテト
ラデカノイル基である。
【0066】
記載のように、改善された血清結合性特徴を提供するように本発明に従う使用のためのアゴニストを改変することは、一般に(特には上記に列挙した具体的アゴニストの場合に)適用され得るストラテジーである。したがって、適切な改変アゴニストとしては、Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY、[Cys2,N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4,D-Cys27]PYY、[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys13]PYY3-36又は[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4]PYY3-36、及びそれらの保存的置換アナログが挙げられる。
【0067】
GAG結合
上記の親油性血清結合モチーフの場合と同様に、本発明に係るアゴニストは、アゴニストの主鎖に対して側鎖として又は側鎖の一部としてGAG結合モチーフを組み込むことによって改変されていてもよい。この方法での組込みのための公知のGAG結合モチーフとしては、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)が挙げられる。複数、例えば3つのこのような配列が、コンカテマー(直鎖)又はデンドリマー(分枝鎖)の様式で組み込まれていてもよい。具体的コンカテマーGAGモチーフとしては、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala及びAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaが挙げられる(この両方が、例えばコンカテマーGAG結合モチーフのC末端とアゴニストの主鎖アミノ酸の側鎖中のアミノ酸、例えばアゴニスト[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY(図3A)中のLys13又はアゴニスト[Lys13]PYY3-36中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合を通じてカップリングされ得る)。
【0068】
主鎖残基に対する側鎖として又は側鎖の一部としてアゴニストに付着する代わりに、GAGモチーフは、アゴニストのC末端又は(好ましくは)N末端に、直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結していてもよい。ここでまた、GAG結合モチーフは、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、例えば配列[XBBBXXBX]n(式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなってもよい。このようなコンカテマー反復は、GAGと結合する場合、αヘリックスを形成する傾向にあり、その結果C末端ヘキサペプチド/最後のαヘリックスターンと融合する場合、当該ターンを安定化することができ、そのことによりY2レセプター認識に最適な方法でこの組合せ構造を提示することができる。このタイプのアゴニストの具体例は、[XBBBXXBX-XBBBXXBX]PYY25-36又は[XBBBXXBX-XBBBXXBX-XBBBXXBX]PYY25-36(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、特にAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-PYY25-36(配列番号:21)(図3B)である。
【0069】
本発明に係るY2選択性アゴニストは、とりわけ、治療的脈管形成に有用である。この使用のためには、具体的には、アゴニストは、好ましくは、上記のようなグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフを含んでなる。このようなモチーフにより、確実に、アゴニストは細胞外マトリクス中のGAGに結合し、そのことにより、その組織中のY2レセプターの延長された局所的曝露を確実にする。成長因子、ケモカインなどがパッチ状の塩基性アミノ酸(これがGAGの酸性糖鎖と相互作用する)を介してGAGに結合する。成長因子上のこれらの正に荷電したエピトープは、通常、塩基性残基の側鎖から構成されている。塩基性残基の側鎖は、必ずしも配列中で連続して位置していないが、二次構造要素(例えばαヘリックス又はターン)により、又は当該タンパク質の三次元構造全体により近接して提示されることが多い。上記のような或る種のGAG結合性直線配列、例えばXBBXBX及びXBBBXXBX(式中、Bは塩基性残基を表す)が記載されている(Hilemanら、Bioassays 1998, 20: 1
56-67)。これらセグメントは、GAGへの結合に際してαヘリックスを形成することが円偏光二色性により示されている。このような配列が、例えばコンカテマー又はデンドリマーの構築物(ここでは、例えば3つのこのような配列、例えば各々ARRRAARA配列が提示されている)で配置されている場合、得られる24マーペプチド、例えば、ARRRAARA-ARRRAARA-ARRRAARAにより、確実に、高分子量ポリリジンと同様に細胞外マトリクス中で保持される。すなわち、これは、4時間の灌流期間の間に洗い流されない(Sakharovら、FEBS Lett 2003, 27: 6-10)。
【0070】
したがって、成長因子及びケモカインは、天然には、2つのタイプの結合モチーフを有して構築される:1つは、それを介してシグナル伝達が達成されるレセプター用の結合モチーフであり、1つは、それを介して付着及び長期持続局所活性が達成されるGAG用の結合モチーフである。PYY及びNPYのようなペプチドはニューロペプチド及びホルモンであり、これらは組織からかなり迅速に洗い流され、長期持続局所活性に最適化されていない。GAG結合モチーフを本発明に従うY2選択性アゴニスト又は古典的な公知のペプチドアゴニストPYY3-36に付着させることにより、成長因子及びケモカインと同様な二機能性分子が、PP折り畳みペプチド部分のレセプター結合エピトープ及びGAG結合モチーフの両方を有して構築される。このようなアゴニストの例は、図3Aに示されている。
【0071】
既に上記で論じたように、本発明の好ましい実施形態において、GAG結合モチーフ、例えば上記のようなコンカテマーの24マー配列は、Y2選択性アゴニストのN末端伸長として配置される。この配置は、N末端が切断されたPP折り畳み模擬体アゴニストに関して特に興味深い。本明細書に記載のものはY2選択性であるが、Y2レセプターに関し、天然型のPYY3-36又はPYYと比較して幾分減少した親和性又は効力を示し得る。このような切断型PP折り畳み模擬体アゴニストにとって、コンカテマーのGAG結合モチーフで伸長することは有利であり得る。なぜならば、これは、GAGへの結合に際して、ヘリックス部分の安定化を助け、そのことにより極C末端のセグメントを正確な様式で提示することを助けることができるαヘリックスを形成するからである。このようなアゴニストの例は図3Bに示されている。
【0072】
PP折り畳みペプチドのGAG結合モチーフ−例えば塩基性コンカテマー又はデンドリマー構築物−の導入のための別の適切な位置は、NPYペプチド及びそのアナログのためには14位であり、PYY及びPPペプチド並びにそれらのアナログのためには13位である。しかし、上記のように、GAG結合モチーフを含んでなる残基は、この導入が、タイプ(a)、(b)及び(c)の本発明に係るアゴニスト中で必要とされるPP折り畳み構造及び必要なC末端Y2認識配列の保持と矛盾しないという条件で、当該アゴニスト中の任意の位置で導入することができる。したがって、GAG結合モチーフは、PP折り畳みの部分が非ペプチドスペーサーにより置換されているアナログ中のスペーサー構築物の一部として配置され得る。
【0073】
PEG化
PEG化において、ポリアルキレンオキシド基は、投与後の身体内での効果半減期を改善するため、及び免疫原性を減少させ、溶解性を増大させるなどのために、ペプチド性又はタンパク質性の薬物に共有結合的にカップリングされる。この用語は、このようなプロセスで使用される好ましいポリアルキレンオキシドに由来する。すなわち、この用語は、エチレングリコール−ポリエチレングリコール、又は「PEG」に由来する。
【0074】
適切なPEG基は、任意の簡便な化学により、アゴニストに、例えば当該アゴニストの主鎖アミノ酸残基を介して、付着してもよい。例えば、例えばPEGのような分子に関しては、頻繁に使用される付着基は、リジンのε-アミノ基又はN末端アミノ基である。その他の付着基としては、遊離カルボン酸基(例えば、C末端アミノ酸残基又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸残基のもの)、適切に活性化されたカルボニル基、メルカプト基(
例えば、システイン残基のもの)、芳香族酸残基(例えば、Phe、Tyr、Trp)、ヒドロキシ基(例えば、Ser、Thr又はOH-Lysのもの)、グアニジン(例えばArg)、イミダゾール(例えばHis)、及び酸化した炭水化物部分が挙げられる。
【0075】
アゴニストがPEG化されている場合、それは、通常、1〜5のポリエチレングリコール(PEG)分子、例えば、1、2又は3のPEG分子を含んでなる。各PEG分子は、約5kDa(キロダルトン)〜約100kDaの分子量、例えば約10kDa〜約40kDaの分子量、例えば約12kDaの分子量、好ましくは上限約20kDaの分子量を有していてもよい。
【0076】
適切なPEG分子は、Shearwater Polymers, Inc.及びEnzon, Incから入手可能であり、SS-PEG、NPC-PEG、アルデヒド-PEG、mPEG-SPA、mPEG-SCM、mPEG-BTC、SC-PEG、トレシル化mPEG(米国特許第5,880,255号)、又はオキシカルボニル-オキシ-N-ジカルボキシイミド-PEG(米国特許第5,122,614号)から選択してもよい。
【0077】
特定の実施形態において、上記で言及したアゴニスト[Cys2,Lys13,DCys27]PYYは、Lys13のεアミノ基でPEG化されていてもよく、アゴニスト[Cys2,DCys27]PYYはLys4でPEG化されることができる。
【0078】
血清アルブミン、GAG、及びPEG
アゴニストに対する改変が血清結合、GAG結合、又はPEG化を介する改善された安定性を促進するための基の付着である場合、血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ、又はPEG基は、PYY又はPPの以下の位置:1位、3位、4位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当するか又はNPYの以下の位置:1位、3位、4位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当するアゴニストの主鎖炭素の側鎖であってもよいし、又はその一部を形成していてもよい。
【0079】
特にアゴニストが(c)タイプである場合、血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ、又はPEG基はまた、PYY、NPY又はPPの以下の位置:2位、5位、8位、9位、13位、14位、20位及び24位のいずれかに相当する主鎖炭素の側鎖であってもよいし、又はその一部を形成していてもよい。
【0080】
より大きな生体分子との接合
上記のように、或るモチーフをPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体中の種々の位置で、それらの高いYレセプター親和性を損なうことなく連結することが可能である(実施例参照)。同様に、Y2選択性レセプターアゴニストは、それが例えばアルブミン若しくは別のタンパク質又は有益な薬力学的特性若しくは他の型の特性(例えば、減少した腎排泄のような特性)を提供するキャリア分子と連結されている融合タンパク質として使用し得る。使用することができる多数のタンパク質又はキャリアが存在するように、当該分野で公知の共有結合性付着に使用できる多数の化学的改変及びリンカーが存在する。特に、Y2選択性ペプチドアゴニストのアルブミンへの共有結合性付着は、好ましく、種々のモチーフを伴う改変に関して本明細書中の他で指摘したPP折り畳み構造中の位置である。本発明の好ましい実施形態において、C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列で終結するペプチドは、大きな生体分子、例えばアルブミンのC末端部に融合される。このような融合タンパク質は、ペプチドを本明細書中に記載のようなペプチド合成により作り、組換え技術により生体分子を作ってもよい種々の半合成技法により製造することができる。融合タンパク質はまた、全体が、例えばGly-Lys-Arg配列(これは、真核細胞で分泌性タンパク質として発現する場合、生合成酵素により切断され、GlyはC末端Y2レセプター認識配列のC末端Tyr残基上のカルボキシアミドに転換される)により伸長された前駆体分子
として発現された組換え分子として作られてもよい。
【0081】
安定化
本明細書中の種々の箇所で記載したように、本発明のY2選択性アゴニストの多くが、種々の方法、例えばN末端アシル化により、又はアゴニスト主鎖の一部を非ペプチド性リンカーで置換することにより、又はPP折り畳み構造を安定化する架橋を内部環化することにより、安定化されている。この安定化は、ほとんどの場合で、2つの目的に働く。一方は、PP折り畳みを保存することによりレセプター認識エピトープをY2レセプターに最適な様式で提示することであり;他方は、分解(すなわち、特にはタンパク質分解性分解)に対してペプチドを安定化することである。これは、Y2選択性アゴニストがまた、上記のような種々のモチーフの付着により、延長された半減期、持続性放出、及び/又は長期持続性組織曝露を得るために改変されている場合に、特に重要である。通常、このペプチドアゴニストは、主に腎臓を通じて、比較的迅速に排泄され、タンパク質安定性自体は重要な問題ではないかもしれない;しかし、種々の体液中のペプチドの存在が、1又はそれ以上の方法で、何時間も延長される場合には、ペプチドの生物学的活性もまた無傷で維持されること、すなわち、一般的に及びY2選択性アゴニストペプチドの具体例に関連して記載されているように、タンパク質分解性攻撃に対して耐性である形態(例えばPP折り畳み安定化環状[Cys2,D-Cys27]PYY及びこの種々のアナログ)で安定化されていることが特に重要である。
【0082】
ヘリックス誘導性ペプチド
本発明に係るアゴニストのN末端のアシル化は、アミノペプチダーゼの作用に対してアゴニストを安定化する手段として言及されている。別の安定化する改変として、4〜20アミノ酸残基の安定化性ペプチド配列をN末端及び/又はC末端、好ましくはN末端で共有結合性に付着することが挙げられる。このようなペプチド中のアミノ酸残基は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Metなどからなる群より選択される。興味深い実施形態において、N末端ペプチド付着は、4、5又は6のLys残基、例えばLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)を含んでなる。これらは、PP折り畳みペプチドアゴニストのN末端で連結することができ、又はこれらは、N末端が切断されたPP折り畳み模擬体アゴニスト又はN末端が短縮化されたPP折り畳み模擬体アゴニストのN末端に配置されてもよい(ここで、スペーサペプチドが新たなN末端と安定化性ペプチドとの間に導入されている)。このような改変は特に興味深い。なぜならば、Lys残基の連続<string>は、上記のように本発明のY2選択性アゴニストペプチドの最後のヘリックスターン及びC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列のレセプター提示に対して有益であるαへリックス構造を形成し、これを後続の残基に誘導する傾向を有するからである。このような安定化性ペプチド伸長の一般的な記載は、WO 99/46283(Zealand Pharmaceuticals)(本明細書中に参考として援用する)に与えられる。
【0083】
本発明に係るレセプターアゴニストは、周知の方法、例えば合成法、半合成法及び/又は組換え法のような方法により製造されてもよい。このような方法としては、標準的なペプチド調製技法、例えば、溶液合成、及び固相合成のようなペプチド調製技法が挙げられる。当該分野の教科書及び一般的知識に基づいて、当業者は、本アゴニスト及びその誘導体又は改変体を取得するための手順を理解する。
【0084】
本発明に従う使用のための具体的アゴニスト
本発明に従う使用のためのアゴニストの具体例としては、以下を挙げることができる:
PYY2-36(配列番号:4)
NPY2-36(配列番号:5)
[D-Ala1]PYY(配列番号:6)
[D-Ala2]PYY(配列番号:7)
[Ala28]PYY(配列番号:8)
[Ala30]PYY(配列番号:9)
[Ala31]PYY(配列番号:10)
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)
[Cys2,D-Cys27]NPY(配列番号:14)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:15)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPY(配列番号:17)
[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:18)
[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19)
[Glu28,Lys32]PYY25-36(配列番号:20)
Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-PYY25-36(配列番号:21)
[D-Ala2]PYY2-36(配列番号:22)
[Lys4,Leu17,Gln34]PP(配列番号:23)
[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP(配列番号:24)
[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:25)
[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:26)
N-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:27)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:28)
[Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:29)
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:30)
[Cys2,N-PEG5000-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:31)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Leu28,Val31]NPY(配列番号:32)
[Cys2,Ile3,Nle17,D-Cys27,Nle28,Val31]NPY(配列番号:33)
N-アセチル-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:34)
N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:35)
[Cys2,D-Cys27]PYY2-36(配列番号:36)
[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:37)
及びそれらの保存的置換アナログ。
【0085】
本発明に従う使用について特に好ましいY2選択性アゴニストは、[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)、[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12;図2B)、[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:13;図2A)、及びそれらの保存的置換アナログである。
【0086】
以下で、本発明に従う具体的アゴニストを、分子薬理学的特性並びにペプチド化学特性及び安定性特性に関して記載する。
【0087】
PYY2-36(配列番号:4)
このタイプ(a)の高度Y2選択性レセプターアゴニストは、内因性ペプチドPYY3-36と共通する多くのレセプター結合特徴を有するが、PYY3-36と比較して改善されたペプチド安定性を有する。PYYの主要な内因性循環形態は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)(この酵素は、上記のように、最初の2つの残基を除去し構造的に重要なPro2残基を欠くより不安定なペプチドを生じる)による効率的且つ迅速な分解に起因して、PYY3-36である。
【0088】
レセプター認識プロフィール − PYY2-36はTyr1を欠き、Y1レセプターに対して貧弱な親和性を有するが、Y2レセプターに対しては例えばPYY3-36と同等な高親和性で結合し、PYY由来ペプチドであるので、Y4レセプターによりPYY3-36と同様な低親和性で認識される。
【0089】
タンパク質安定性 − PYY2-36は、PYY3-36と比較して、より安定で、したがってより良好なバイオ医薬薬剤であるという利点を有する。改善された安定性は、以下に基づく:1)2番目の残基としてProもAlaも有しないので、DPP-IVの基質ではないこと、2)N末端Proは、例えばアミノペプチダーゼNを含む大部分のアミノペプチダーゼによる分解を防ぐこと、3)重要なPro2の保存が、Pro2と逆平行αヘリックスの最後のヘリックスターン(すなわち、特にTyr27)との間の重要な相互作用がPYY2-36中に依然として存在しているので、PYY3-36中より安定なPP折り畳みを確実にすること。
【0090】
[D-Ala1]PYY(配列番号:6)
このタイプ(a)の高度Y2選択性レセプターアゴニストは、内因性ペプチドPYY3-36と共通する多くのレセプター結合特徴を有するが、PYY3-36と比較して改善されたペプチド安定性を有する新規のペプチドである。
【0091】
レセプター認識プロフィール − [D-Ala1]PYYはTyr1の側鎖を欠き、Y1レセプターに対して減少した親和性を有するが、Y2レセプターに対しては例えば、PYY3-36と同等の高親和性で結合し、PYY由来ペプチドであるので、Y4レセプターによりPYY3-36と同様な低親和性で認識される。
【0092】
タンパク質安定性 − [D-Ala1]PYYは、PYY3-36と比較して、より安定で、したがってより良好なバイオ医薬薬剤であるという利点を有する。改善された安定性は、N末端のD体Alaが、例えばDPP-IV及びアミノペプチダーゼNを含む大部分のアミノペプチダーゼによる分解を防ぐという事実に基づく。更に、PYY2-36中と同様に、重要なPro2が保存されていることにより、Pro2と逆平行αヘリックスの最後のヘリックスターン(すなわち、特にTyr27)との間の重要な相互作用が[D-Ala1]PYY中に依然として存在しているので、PYY3-36中より安定なPP折り畳みが確実になる。
【0093】
[D-Ala2]PY2(配列番号:7)及び[D-Ala2]PYY2-36(配列番号:22)
これらのタイプ(a)の高度Y2選択性レセプターアゴニストは、Y2選択性を得るための置換がPYYのN末端ポリプロリンセグメントに導入されている新規のペプチドである。
【0094】
レセプター認識プロフィール − [D-Ala2]PYY2-36はTyr1を欠き、Pro2の側鎖もまた欠く一方、[D-Ala2]PYYは重要なPro2の側鎖のみを欠き、その結果、Y1レセプターに対して−PYY3-36と同様に−低親和性で結合するが、Y2レセプターに対しては高親和性で結合する。表1に示されるように、[D-Ala2]PYYの親和性は、Y2レセプターに対しては0.93nMであり、対照的にY1レセプターに対しては483nMであり、Y4レセプターに対しては31nMである;表2に示されるように、[D-Ala2]PYYの効力は、Y2レセプターに対しては1.4nMであり、これに対してY1レセプターに対しては127nMであり、Y4レセプターに対しては591nMである。
【0095】
タンパク質安定性 − [D-Ala2]PYY及び[D-Ala2]PYY2-36は、PYY3-36と比較して、より安定で、したがってより良好なバイオ医薬薬剤であるという利点を有する。改善された安定性は、[D-Ala2]PYY2-36中のN末端のD体Alaが、例えばDPP-IV及びアミノペプチダーゼNを含む大部分のアミノペプチダーゼによる分解を防ぐという事実及び[D-Ala2]PYY中のPro2の置換が同様な目的に働くという事実に基づく。
【0096】
[Ala28]PYY(配列番号:8)
これは、Y1選択性を超えるY2選択性を確実にする改変がαヘリックスドメインに導入されているタイプ(a)の高度Y2選択性レセプターアゴニストである。[Ala28]PYYは新規のペプチドである。
【0097】
レセプター認識プロフィール − [Ala28]PYYはLeu28の側鎖を欠き、Y1レセプターに対する親和性は、PYYと比較して1/300倍(300-fold)に低下している;重要なことは、Y2レセプターに対する高親和性及びY4レセプターに対する低親和性が保存されていることである。したがって、[Ala28]PYYは、例えばPYY3-36より良好なY1よりY2に対する選択性窓を有している。
【0098】
タンパク質安定性 − [Ala28]PYYはPYYと同様に安定なPP折り畳みを有する。したがって、バイオ医薬としての特性を改善するため、及び例えばアミノペプチダーゼによる分解を防ぐために、N末端がアセチル化された形態が、上記のように製造されてもよく、又はAla28置換が、D-Ala1置換若しくはD-Ala2置換と組み合わされてもよい(置換はまたY1認識を超えるY2認識の窓を更に改善する)。
【0099】
[Ala30]PYY(配列番号:9)
これは、Y1選択性よりY2選択性であることを確実にする改変がαヘリックスドメインに導入されているタイプ(a)の別のY2選択性レセプターアゴニストである。[Ala30]PYYは新規のペプチドである。
【0100】
レセプター認識プロフィール − [Ala30]PYYはLeu30の側鎖を欠き、Y1レセプターに対する親和性はPYYと比較して1/100倍(100-fold)に低下している;重要なことに、Y2レセプターに対する高親和性及びY4レセプターに対する低親和性は保存されている。したがって、[Ala30]PYYは、例えばPYY3-36の選択性窓と同様に、Y1よりY2に対する選択性窓を有する。
【0101】
タンパク質安定性 − [Ala30]PYYはPYYと同様に安定なPP折り畳みを有する。したがって、バイオ医薬品としての特性を改善するため及び例えばアミノペプチダーゼによる分解を防ぐために、N末端がアセチル化された形態を上記のように製造してもよいし、又はAla30置換を例えばD-Ala1置換若しくはD-Ala2置換と組み合せてもよい(置換は更にY1認識よりY2認識する窓も改善する)。
【0102】
[Ala31]PYY(配列番号:10)
これは、タイプ(a)の別の高度Y2選択性レセプターアゴニストであり、Y1選択性よりY2選択性を確実にする改変がC末端Y2認識アミノ酸配列自体に導入されている新規ペプチドである。
【0103】
レセプター認識プロフィール − [Ala31]PYYはVal30の側鎖を欠き、Y1レセプターに対する親和性はPYYと比較して1/1500倍(1500-fold)に低下している。Y2レセプターに対する親和性は1/3〜1/4倍(3-4 fold)に低下しており、Y4レセプターに対する低親和性は保存されている。したがって、[Ala31]PYYは、例えばPYY3-36のものと同様に、高度に改善されたY1よりY2に対する選択性窓を有する。
【0104】
タンパク質安定性 − [Ala31]PYYはPYYと同様に安定なPP折り畳みを有する。したがって、バイオ医薬品としての特性を改善するため及び例えばアミノペプチダーゼによる分解を防ぐために、N末端がアセチル化された形態を上記のように製造してもよいし、又はAla31置換を例えばD-Ala1置換若しくはD-Ala2置換と組み合せてもよい(置換は更にY1認
識よりY2認識する窓も改善する)。
【0105】
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)
この新規ペプチドは、タイプ(b)の高度Y2選択性レセプターアゴニストである。すなわち、基本のPP折り畳みペプチドは、Y2レセプター及びY4レセプターに対する高親和性並びにY1レセプターに対する低親和性を確実にするC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有するPPである。ここで、Y4選択性を超えるY2選択性を得るために、Y4認識を破壊する置換が、PPのN末端ポリプロリンドメインにおいて4位になされている。上記のように、Y4選択性を超えるY2選択性は他の置換により得てもよい。[Lys4,Gln34]PPは、他のY2選択性リガンド及びPP折り畳みペプチド一般と比較して、Y5レセプターに対しても比較的高い親和性を有するという追加の興味深い性質を有する。したがって、[Lys4,Gln34]PP及びこれのアナログ(例えば下記のもの)は、Y2-Y5組合せ選択性アゴニストであると考えることができる。
【0106】
レセプター認識プロフィール − [Lys4,Gln34]PPは、PYY3-36のものと極めて同様なY2レセプターに対するインビトロ効力を有する(下記表2)。Y1レセプターに対して、[Lys4,Gln34]PPは、PYY3-36と同様の、Y2レセプターに対する効力とY1レセプターに対する効力との間に100倍(100-fold)を超えるEC50窓を有する。同様に、[Lys4,Gln34]PPは、Y4レセプターに対してほとんど100倍(100-fold)の選択性窓を有する。したがって、[Lys4,Gln34]PPは、PP足場上に構築されたY1及びY4よりY2に高度選択性であるアゴニストである。興味深いことに、[Lys4,Gln34]PPは、例えばPYY3-36とは対照的に、Y5レセプターに対して非常に高い効力を有する。Y5レセプターに対する[Lys4,Gln34]PPの効力は、最も強力な内因性リガンドPYY及びNPYの効力より尚更に高い。
【0107】
タンパク質安定性 − [Lys4,Gln34]PPはPPと同様に安定なPP折り畳みを有する。バイオ医薬としての特性を改善するため、及び例えばアミノペプチダーゼによる分解を防ぐために、N末端がアセチル化された形態が、上記のように製造されてもよく、又は置換が、D-Ala1置換若しくはD-Ala2置換と組み合わされてもよい(置換はまたY1認識を超えるY2認識の窓を更に改善する)。
【0108】
[Lys4,Leu17,Gln34]PP(配列番号:23)、[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP(配列番号:24)、[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:25)
これらは、タイプ(b)の新規な高度Y2選択性レセプターアゴニストである。すなわち、基本のPP折り畳みペプチドは、Y2レセプター及びY4レセプターに対する高親和性並びにY1レセプターに対する低親和性を確実にするC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有するPPである。ここで、[Lys4,Gln34]PPに関しては、Y4選択性を超えるY2選択性を得るために、Y4認識を破壊する置換が、PPのN末端ポリプロリンドメインにおいて4位になされている。[Lys4,Gln34]PPと同様に、これらのペプチドは、他のY2選択性リガンド及びPP折り畳みペプチド一般と比較して、Y5レセプターに対しても比較的高い親和性を有するという追加の興味深い性質を有する。興味深いことに、[Lys4,Leu17,Gln34]PP、[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP、及び[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PPでは、17位及び30位のMet残基の一方又は両方が、酸化され得ないLeu又はノルロイシン(Nle)のいずれかで置換されている。したがって、これら3つのペプチドは、Met残基の酸化が酸化不可能な残基での置換により予防されているY2選択性ペプチドの一群の代表である。
【0109】
タンパク質安定性 − [Lys4,Leu17,Gln34]PP、[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP、及び[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PPは、[Lys4,Gln34]PPのものと同様な一般的な安定性を有する。しかし、これらペプチドは、1又はそれ以上のMet残基の酸化を受けない。このことは、或るバイオ医薬品では、利点である。
【0110】
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPY(配列番号:17)
本明細書中でC2-NPYとも呼ばれるこのペプチドは、タイプ(c)の高度Y2選択性アゴニスト、すなわち、共有結合性分子内連結(この場合には、N末端ポリプロリンヘリックスドメインに対応するNPY1-4セグメントに導入されたCys2とαヘリックスドメインに導入されたD-Cys27との間に配置されている)によりヘリックス形状に拘束される両親媒性アミノ酸配列ドメイン(この場合にはNPY25-30からなる)にN末端で融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるペプチドである。C-2 NPYでは、NPYの残基5〜24の配列は、8-アミノオクタン酸で置換されている(Krstenanskyら、1989 PNAS 86: 4377-81;Cox & Krstenansky 1991 Peptides 12: 323-27)。[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPYは、よりずっと小さい−僅か16残基−が依然として非常に安定であるという例えばPYY3-36に対する追加の利点を有する高度Y2選択性アゴニストである。
【0111】
レセプター認識プロフィール − C2 NPYは、Y2レセプターに対してNPYの効力と同等の効力を有するが、Y1レセプター及びY4レセプターによっては基本的には認識されない。残基4と残基25との間にアミノヘキサン酸スペーサーを有するPP折り畳み切断型NPYの2位のGluと30位のLysとの間にラクタム橋架けが作られている、対応する[Ahx5-24,γ-Glu2-eps-Lys30]NPYは、インビボで、NPYとは対照的に、ラットにおいて血圧上昇を誘導しないこと、すなわち、インビボで試験したとき古典的Y1レセプター効果を欠くことが示されている(Beck-Sickingerら、1992 Eur. J.Biochem. 206: 957-64)。
【0112】
タンパク質安定性 − これは環状ペプチドである。
【0113】
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16)
本明細書中でC2-PYYとも呼ばれ得るこのペプチドは、新規なタイプ(c)の高度Y2選択性アゴニスト、すなわち、共有結合性分子内連結(この場合には、N末端ポリプロリンヘリックスドメインに対応するPYY1-4セグメントに導入されたCys2とαヘリックスドメインに導入されたD-Cys27との間に配置されている)によりヘリックス形状に拘束される両親媒性アミノ酸配列ドメイン(この場合、PYY25-30からなる)にN末端で融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるペプチドである。C-2 PYYでは、PYYの残基5〜24の配列は、8-アミノオクタン酸で置換されている。C-2 PYYは、C-2 NPYと、3位(Serの代わりにIle)、28位(Ileの代わりにLeu)、及び31位(Ileの代わりにVal)で異なり、このことにより、C-2 PYYはPYYのC末端部分及びN末端部分の完全な模擬体となり、よりずっと小さなペプチド(36残基の代わりに16残基)がY2選択性アゴニストとなる様式で提示される。重要なことに、C2-PYYは、Y2レセプターに対し、C2-NPYより高い効力を有する。
【0114】
レセプター認識プロフィール − C2-PYYは、Y2レセプターを、PYY3-36より約10倍高いEC50で活性化する(下記の表2)。しかし、Y1レセプターを74nMのEC50で刺激するPYY3-36とは対照的に、C2-PYYは、1μMでさえY1レセプターを刺激しない。重要なことに、C2-PYYはまた、1μMの濃度でさえY4レセプターもY5レセプターもいずれも刺激しない。特に、後者の観察は驚くべきことである。なぜならば、これは、PP折り畳みペプチドアナログについて観察した最も低い効力であるからである。したがって、C2 PYYは、Y1レセプターに対する選択性がPYY3-36より少なくとも10倍(10-fold)良好でありY4レセプターに対してもY5レセプターに対してさえも高度に選択性である1桁のナノモル濃度で有効なY2アゴニストである。
【0115】
タンパク質安定性 − C-2 NPYは、天然に存在するPP折り畳みに対する設計のために、余分のジスルフィド橋架けに起因する構造的に拘束される様式でこの構造の末端部を模擬している環状ペプチドである。
【0116】
N-アセチル-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:34)、[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:18)
これらペプチドは、新規なタイプ(c)の高度Y2選択性アゴニスト、すなわち、共有結合性分子内連結(N末端ポリプロリンヘリックスドメインに対応するPYY1-4又はNPY1-4セグメントに導入されたCys2とαヘリックスドメインに導入されたD-Cys27との間に配置されている)によりヘリックス形状に拘束される両親媒性アミノ酸配列ドメイン(この場合、PYY25-30又はNPY25-36からなる)にN末端で融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるペプチドである。これらPP折り畳み模擬体では、残基5〜24の配列は8-アミノオクタン酸残基で置換されている。これらペプチドは、例示が以下:Ac-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(Tyr1がN末端をブロックするアセチル化基で置換されている[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYYに相当)及び[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(よりPYY様にするために2つの残基が置換されている[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPYに相当)であるようなペプチドの一群の代表である。このような改変を通じて、その中から臨床使用に特に適切なペプチドを選定することができる一群のY2選択性ペプチドが製造される。
【0117】
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)
このペプチドは、高いタンパク質安定性についても設計されているタイプ(c)の高度Y2選択性アゴニストである。C-2 NPY構築物及びC-2 PYY構築物と同様に、分子内ジスルフィド橋架けが2位のCysと27位のD-Cysとの間に導入されているが、これら残基はPP折り畳み構造を安定化するために完全長PYY分子に導入されている。したがって、[Cys2,D-Cys27]PYYは、N末端ポリPro配列と両親媒性ヘリックスセグメントとの間に安定化性分子内結合を有する一群のY2選択性アゴニストペプチドの代表である。この群の他のメンバーでは、ジスルフィド橋架けは、他の残基間に作ることができるか、又は別のタイプの共有結合性分子内連結、例えば[Glu2-Lys30]PYYにおける、Glu2のγ-カルボキシル基とLys30のεアミノ基との間の例えばラクタム橋架けが確立され得る。[Cys2,D-Cys27]PYYは、活性であり、例えばN末端がアセチル化されてもいる(アミノペプチダーゼによるペプチドの分解を更に予防する改変である)。[Cys2,D-Cys27]PYYは新規な化合物である。
【0118】
レセプター認識プロフィール − [Cys2,D-Cys27]PYYは、PYY3-36と同様な効力(EC50
= 0.33nM)でY2レセプターを刺激する(下記表2)一方、1μMを超える効力でY1レセプターを刺激する(これはPYY3-36より20倍(20 fold)以上弱いY1レセプターに対する効力である)。Y4レセプターに対して、[Cys2,D-Cys27]PYYは、1μMより大きなEC50を有する。したがって、[Cys2,D-Cys27]PYYは、Y1レセプターに対する選択性指数が約10.000である(これはPYY3-36より50〜100倍良好である)ナノモル未満の濃度で有効なY2選択性アゴニストである。
【0119】
タンパク質安定性 − PP折り畳み安定化性分子内ジスルフィド橋架けに起因して、[Cys2,D-Cys27]PYYは、PP折り畳みを安定化している疎水性コアの重要な部分であるPro2が除去されているPYY3-36より安定化されており、PYY1-36自体より尚更に安定である。ジスルフィド橋架けは、基本的に、PP折り畳みが「開かれる」ことを防止し、PP折り畳みは、当該ペプチドをエンドプロテアーゼが該ペプチドに接近することが困難であるコンホメーションに保持する。CysでのPro2の置換は、そうでなければPYY1-36がその極めて良好な基質であるジペプチジルペプチダーゼIVによる分解に対して当該ペプチドを全体的に耐性にするという追加の利点を有した。この増大した安定性は、N末端がアセチル化された形の[Cys2,D-Cys27]PYYで尚更に増大している。
【0120】
インビボレセプター選択性 − 用量増大研究において、[Cys2,D-Cys27]PYYを、麻酔したイヌに静脈内注入により連続30分の注入期間で0.3、1、3、10、30及び100μg/kgの用量で投与した。[Cys2,D-Cys27]PYYの血漿レベルをラジオイムノアッセイにより測定した。これによって線形の用量関係が示された。最高用量で、32nMの血漿レベルがイヌで得
られた。にもかかわらず、血圧に対しても心拍に対してもいずれに対しても用量依存性効果は観察されなかった。Y1レセプター及びY2レセプターの両方に対してアゴニストであるPYY及びNPYが、よりずっと低い血漿レベルで、血圧を上昇させることは周知である。したがって、これら実験は、[Cys2,D-Cys27]PYYがインビボでも、測定可能なY1レセプター活性を有しない高度に選択性であるペプチドであることを示している。
【0121】
急性食物摂取に対するインビボ効果 − PYY3-36、[Cys2,D-Cys27]PYY又は生理食塩水のいずれかを、8匹のマウスの群に、動物当たり3若しくは30μg(PYY3-36)又は10及び100μg([Cys2,D-Cys27]PYY)の用量で、16時間の絶食後に皮下注射により投与した。図4にマウスの累積の食物摂取量を示す。PYY3-36は、30μgの用量で、最初の2時間の間食物摂取を阻害したが、その効果はその後の2〜6時間にわたって徐々に消失した。[Cys2,D-Cys27]PYYは、マウスにおいて、食物摂取に対して、PYY3-36より顕著で長期持続性の抑制性効果を有した。したがって、10μgの用量でさえ、より効果的な食物摂取の阻害が観察され、その効果は8時間以上持続した(図4)。したがって、[Cys2,D-Cys27]PYYは、インビトロシグナル伝達アッセイを通じて示されたようにY2レセプターに対してPYY3-36と同等な効力であるが、インビボでマウスにおいて急性食物摂取に対してより強力であり、より延長された効果を有するようであった。この効果は、ジスルフィド橋架けにより安定化した[Cys2,D-Cys27]PYYペプチドに本来備わっている増大したタンパク質安定性に関係し得る可能性がある。
【0122】
[Cys2,N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:38)
[Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:29)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:28)
これらのペプチドは、(エンドペプチダーゼ分解を防止するために)分子内ジスルフィド橋架けでタンパク質化学的に安定化されている高度Y2選択性アゴニストであり、N末端がアセチル化されてアミノペプチダーゼ分解を防止することができ(このペプチドは天然にC末端がアミド化されており、このことはカルボキシペプチダーゼ分解を防止する)、γ-グルタミン酸スペーサーを通じて13位(レセプター認識部位から遠く離れたPP折り畳みループ中)に導入されたLysのεアミノ基で長鎖脂肪酸でアルキル化されている(このことが循環中でアルブミンへの改変されたペプチドの結合を確実にし、そのことによってペプチドの長期の作用を提供する)ペプチドのファミリーの代表的メンバーである。
【0123】
同様な特性、すなわちアルブミンへの結合は、異なる鎖長及び飽和度を有する他の長鎖脂肪酸でのアルキル化により得ることができる(Kurtzhals, P.ら、Biochem. J. 1995, 312: 725-31)。また、長鎖脂肪酸でのペプチドのアルキル化が他の導入アミノ酸又は改変アミノ酸の改変、例えばCysの改変により実施できること、及びアルブミン結合部分がペプチド中に含まれる非天然アミノ酸残基の統合部分であり得ることは明白である。アルキル化されたアミノ酸は、与えられた例では、PYYの13位に配置されるが、これはペプチドのレセプター認識を損なわない該ペプチド中の任意の位置、好ましくは1〜13位に配置することが可能である(下記の一般的説明を参照)。
【0124】
レセプター認識プロフィール − 表1及び表2に示されるように、[Cys2,D-Cys27]PYYの13位でのLys残基の導入及びLys13のεアミノ基への長アルキル鎖の付着は、この環状ペプチドのY2レセプターに関する高親和性を変化させない。すなわち、[Cys2,D-Cys27]PYYについてはIC50 = 0.79nM及びEC50 = 0.48;[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYYについてはIC50 =
0.60nM及びEC50 = 1.9nM、並びに[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYYについてはIC50 = 0.90nM及びEC50 = 0.68nM。
【0125】
N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:35)
このペプチドは、(エンドペプチダーゼ分解を防止するために)分子内ジスルフィド橋架けでタンパク質化学的に安定化され、N末端がアセチル化されてアミノペプチダーゼ分解を防止し(このペプチドは天然にC末端がアミド化されており、このことはカルボキシペプチダーゼ分解を防止する)、Tyr1のαアミノ基で長鎖脂肪酸でアルキル化されている(このことは、循環中でもアミノペプチダーゼによる攻撃を防ぐ他に、アルブミンへの改変されたペプチドの結合を確実にし、そのことによってペプチドの長期の作用を提供する)高度Y2選択性アゴニストであるペプチドのファミリーの代表的メンバーを表す。
【0126】
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:30)
このペプチドは、組織中のGAGへのインビボ結合を獲得するために、すなわち標的組織における長期持続性の局所Y2レセプター(Y2選択性及びY5選択性を組み合せて有するペプチド群に属する場合には、及びY5レセプター)曝露及び/又は身体中への進入部位(例えば皮下注射の部位)での延長された保持に起因する延長され維持された放出を得るために、GAG結合モチーフで改変されている一群のY2選択性ペプチドの代表である。この具体的場合には、GAG結合モチーフ−Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala配列の線状トリマー形態−は[Cys2,D-Cys27]PYYペプチド「背景」の13位に導入されたLysのεアミノ基に結合されている(図3A参照)。このペプチド−分析目的用フルオレセイン基を用いてGAG結合モチーフのN末端部分にてキャップした−の合成は下記に記載する。
【0127】
レセプター認識プロフィール − 上記のように、Lys13の導入は、安定化された環状[Cys2,D-Cys27]PYYペプチドの高いY2レセプター親和性及び効力も、Y1レセプター及びY4レセプターに対するY2レセプターの高い選択性も変化させなかった(表1及び2)。重要なことには、Lys13のεアミノ基への24残基GAG結合モチーフ[Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala]3の付着は、高Y2レセプター親和性(IC50 = 0.21nM)にも効力(EC50 = 0.37nM)にも、高いY2レセプター選択性にも影響しなかった(表1及び2を参照)。
【0128】
ヘパリン結合 − 図5に示されるように、蛍光タグを付した形の[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYYは、ほとんど完全に、HiTrapヘパリン-セファロースに吸収され、マトリックスが2モル又は3モルのNaClに曝露されたとき最初に溶出した。このことは、このGAGモチーフ改変ペプチドがヘパリンで代表されるGAGに対して非常に高い親和性を有することを示している。このタイプの親和性でヘパリンに結合するこのタイプのペプチドモチーフは、高分子量ポリリジンと同様に確実にインビボで細胞外マトリクスに保持されること、すなわち、これは4時間の灌流期間の間に洗い流されないことが以前に示されていることに留意すべきである(Sakharovら、FEBS Lett 2003, 27: 6-10)。したがって、[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYYは、高親和性GAG結合モチーフで修飾され、そのことにより例えば動脈内注射−例えば冠動脈内又は大腿動脈内注射後−の標的組織における長期持続性局所レセプター曝露が得られる一群のY2選択性ペプチドの代表である。
【0129】
N-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:27)及び[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:36)
このペプチド−[Cys2-DCys27]PYY2-36−は、高いタンパク質安定性についても設計されているタイプ(c)の高度Y2選択性アゴニストである。[Cys2-DCys27]PYYと同様に、分子内ジスルフィド橋架けが2位のCysと27位のD-Cysとの間に導入されているが、これら残基はPP折り畳み構造を安定化するためにPYY2-36に導入されている。Tyr1は、存在しないか、又はN末端アセチル化で置換されているかのいずれかである。[Cys2,D-Cys27]PYY2-36及びそのN末端がアセチル化された形態は、Y2選択性を保存する一方で上記のような他の有益な特性を付加する位置で、他のY2選択性ペプチドについて提示されているような種々のモチーフにより−例えば、Lys13又は本明細書中の他の箇所に示したような別の位置の他の残基のような付着部位の導入により−改変することができる。[Cys2,D-Cys27]PYY2-3
6及びこのN末端がアセチル化された形態は新規化合物である。
【0130】
N-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36は、[Cys2-DCys27]PYYのものと非常に同様なY1、Y2及びY4レセプター認識特性を有する。
【0131】
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:32)、[Cys2,Ile3,D-Cys27,Leu28,Val31]NPY(配列番号:33)、[Cys2,Ile3,Nle17,D-Cys27,Nle28,Val31]NPY(配列番号:34)
これらは全て、タイプ(c)の高度Y2選択性アゴニストであり、[Cys2-DCys27]PYYと同様に、2位のCysと27位のD-Cysとの間に導入された分子内ジスルフィド橋架けを有するが、これら残基はNPYに導入されており、種々のペプチドで、当該ペプチドをよりPYY様にするがNPYの一般的なPP折り畳みを維持するためにC末端及び/又はN末端の端部でアミノ酸残基が置換されている。このアナログの幾つかでは、Met残基が、ペプチドの酸化可能性を回避するために、Leu残基又はNle残基で置換されている。
【0132】
[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19)
分子内ラクタム橋架けにより安定化されたこの環状ドデカペプチドPYYアナログは、タイプ(c)の高度Y2選択性アゴニストであり、PYY3-36のように34残基である代わりに僅か12残基から構成されており、安定化性分子内連結がαヘリックスドメイン中の残基とC末端Y2認識アミノ酸配列中の残基との間に作られている。PYYのLeu28(実際のドデカペプチドの4位)はLys残基で置換され、Thr32(実際のドデカペプチドの8位)はGlu残基で置換され、これら残基の側鎖中のアミノ基及びカルボキシル基は、ラクタム橋架けの形成により結合している。NPYの同様なアナログは、NPYと同様な効力を有するY2選択性アゴニストであることが記載されている(Ristら、1996 FEBS Lett 394: 169-173)。
【0133】
レセプター認識プロフィール − [Lys28,Glu32]PYY25-36は、Y2レセプターに対してPYY3-36と同様な効力を有するが、基本的にはY1レセプターにより認識されず、基本のPYY構造に起因してY4レセプターによっても認識されない。
【0134】
タンパク質安定性 − [Lys28,Glu32]PYY25-36は、設計に起因して、ヘリックス安定化性の分子内ラクタム橋架けのために構造的に拘束される様式でPYY分子の末端部を模擬している環状の構造的に規則正しい(structurally ordered)ペプチドである。
【0135】
[Lys]6-PYY25-36(配列番号:11)
このPYYアナログは、6つのLys残基からなるαヘリックス誘導性配列とのN末端での融合により改変されているタイプ(a)の高度Y2選択性アゴニストである。これら残基のヘリックス誘導特性及びPYYのαヘリックスドメイン−この場合には残基25〜30−のαヘリックス構造をとる一般的性向に起因して、ヘリックス誘導性配列は、Y2レセプター認識のために最適な様式でPYY25-36を提示する。
【0136】
レセプター認識プロフィール − [Lys]6-PYY25-36は、Y2レセプターに関して高親和性を有し(IC50 = 4.1nM)、Y1レセプター(IC50 = 520nM)及びY4レセプター(IC50 = 213nM)によっては貧弱にしか認識されない。
【0137】
タンパク質安定性 − [Lys]6-PYY25-36は、このサイズのペプチド一般より安定にするヘリックス構造をとる強力な性向を有する。
【0138】
臨床適応症
本発明に係るY2特異的アゴニストは、Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療に価値がある。このような症状としては、そのためにエネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節、或いは脈管形成の誘導が指示される症状が挙げられる。そのような使用のためには、
アゴニストは、ペプチダーゼに対する安定性、血清タンパク質結合特性を付与する改変又はモチーフ、或いは血清及び/又は組織の半減期を延長するためのPEG化を含んでなるアゴニストであり得る。特に、脈管形成の誘導のためには、アゴニストは、組織半減期及びYレセプター曝露を延長するためのGAG結合モチーフを含んでなり得る。
【0139】
脈管形成の誘導が指示される疾患又は症状としては、末梢血管疾患、冠血管疾患、心筋梗塞、卒中、前記のいずれかが主因と考えられる症状、創傷治癒、及び組織修復が挙げられる。
【0140】
エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節が指示される疾患又は症状としては、肥満及び過体重、並びに肥満及び過体重が主因として考えられる症状、例えば過食症、神経性大食症、X症候群(Syndrome X)(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、或いは胸部、前立腺又は結腸のガンが挙げられる。
【0141】
1.肥満及び過体重
PYY3-36は、種々のげっ歯類において食欲、食物摂取及び体重を減少させることが示されており(Batterhamら、Nature 2002, 418: 595-7;Challisら、BBRC Nov. 2003, 311: 915-9)、またヒトにおいて食欲及び食物摂取を減少させることが示されている(Batterhamら、2002)。レセプターノックアウト動物における研究を含む動物データは、PYY3-36の効果が、Y2レセプターを通じて、並びに弓状核のNPY/AgRP及びPOMCニューロンを通じて媒介されていることを強く示している。興味深いことに、この効果は非常に長く持続し、例えば単回の腹腔内PYY3-36注射の24時間後まで見られる。食欲などに対するこのような長期持続性効果は、特にAgRPのICV注射からも周知である。PYYレベル及びPYY食物応答は、肥満である対象でより低く、BMIと逆に相関する。重要なことに、PYY3-36の90分間の注入は同様な長期持続性様式で肥満である対象における食物摂取を減少させるので、肥満である対象はPYYのこの効果に対して耐性ではない(Batterhamら、2003, NEJM 349: 941-48)。
【0142】
故に、本発明に係るY2選択性アゴニストは、エネルギー摂取を調節するために、対象における、例えばヒトを含む哺乳動物における使用に適切である。したがって、本発明は、エネルギー摂取、食物摂取、食欲、及びエネルギー消費を変化させるための方法に関する。対象に美容上又は治療上の有効量の本アゴニストを投与することによりエネルギー摂取又は食物摂取を減少させる方法が本明細書中に開示される。1つの実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物の量、総重量又は総体積のいずれかの減少を生じる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物成分の摂取の減少、例えば脂質、炭水化物、コレステロール、又はタンパク質の摂食の減少を生じてもよい。本明細書中に開示されるいずれの方法においても、本明細書中で詳細に議論されている好ましい化合物が投与され得る。更なる実施形態では、治療有効量の本アゴニストを投与することにより食欲を減退させる方法が本明細書に開示される。食欲は当業者に公知の任意の手段により測定することが可能である。
【0143】
例えば、減少した食欲は、精神学的評価により評価することができる。このような実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、知覚される空腹、満腹、及び/又は充足の変化を生じる。空腹は、当業者に公知の任意の手段により評価することができる。1つの実施形態では、空腹は、精神学的アッセイを用いて、例えば質問表を使用する空腹感及び感覚認知の評価のようなアッセイにより評価される。
【0144】
更なる実施形態では、対象においてエネルギー代謝を変化させる方法が本明細書に開示される。この方法は、治療有効量の本アゴニストを対象に投与し、そのことによりエネルギー消費を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理学的プロセスにおいて燃焼する。身体は、直接、又はそのプロセスの効率を改変することにより、又は起こっているプロセスの数及び性質を変えることにより、エネルギー消費の割合を変更することができる。例えば、消化の間、身体はエネルギーを消費して食物を腸を通って移動させ、食物を消化し、細胞内では、より多くの又はより少ない熱を生み出すために細胞代謝の効率を変更することができる。更なる実施形態では、食物摂取を変更し、協調的に及び相互的にエネルギー消費を変更する本出願に記載される弓状回路の任意及び全ての操作の方法が本明細書に開示される。エネルギー消費は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率、及びカロリー利用の結果である。したがって、この実施形態では、末梢投与は、増大したエネルギー消費、及びカロリー利用の減少した効率を生じる。1つの実施形態では、治療有効量の本発明に従うレセプターアゴニストが対象に投与され、そのことによりエネルギー消費を増大させる。
【0145】
治療的使用及び美容的使用の両方に関連する幾つかの実施形態では、体重制御、及び肥満の処置、減少又は予防のために、詳細には以下:体重増加を予防し及び減少させること;体重損失を誘導し及び促進すること;及びボディ・マス・インデックスにより測定される肥満を減少させることの任意の1つ又はそれ以上のために、Y2選択性アゴニストを使用することが可能である。上記のように、本発明はまた、食欲、満腹及び空腹の任意の1つ又はそれ以上を制御するため、詳細には以下:食欲を減退させ、抑制し、及び阻害すること;満腹及び満腹の感覚を誘導し、増大させ、増強し、及び促進すること;並びに空腹及び空腹の感覚を減少させ、阻害し、及び抑制することの任意の1つ又はそれ以上のためのY2選択性アゴニストの使用に関する。本開示は更に、所望する体重、所望するボディ・マス・インデックス、所望する外観及び良好な健康状態の任意の1つ又はそれ以上を維持することにおけるY2選択性アゴニストの使用に関する。
【0146】
更なる又は代替の観点では、本発明は、減少したエネルギー代謝、摂食障害、食欲障害、過体重、肥満、過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、又はそれらに関連する合併症若しくは危険(糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、卒中、心筋梗塞、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、胸部、前立腺及び結腸のガンを含む)の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、対象、例えばヒトを含む哺乳動物に、有効用量の1又はそれ以上の本明細書中に記載のようなY2選択性アゴニストを投与することを含んでなる。
【0147】
2.治療的脈管形成
血管平滑筋細胞の増殖、心室心筋細胞の肥大並びに内皮細胞の増殖及び移動に対する効果についての多くのインビトロ研究は、NPYが血管形成因子として作用し得ることを示唆している(Zukowska-Grojecら、1998 Circ.Res. 83: 187-95)。重要なことに、マウス角膜マイクロポケットモデル及びヒヨコ絨毛尿膜(CAM)アッセイの両方を使用するインビボ研究により、NPYは、他には線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)でのみ観察され例えば血管内皮増殖因子(VEGF)血管原性構造では観察されない血管拡張を示す血管樹状構造を生じる強力な血管形成因子であることが確証されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。発達中のヒヨコ胚では、NPYは既存の血管からの血管発芽を誘導した。NPYのこの効果は、Y2レセプターノックアウト動物では観察されなかった。このことは、Y2レセプターがNPYの血管形成効果を担っていることを示している(Ekstrandら、2003)。この考えは、Y2レセプターが、虚血血管で高度にアップレギュレートされ、内因性のY2選択性リガ
ンドPYY3-36を生じる酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-IVもまたアップレギュレートされるという観察により支持されている。
【0148】
例えば末梢脈管で及び冠血管における、種々の心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症において、脈管形成の誘導が有益であると企図される。また、脈管形成の誘導は、心筋梗塞後の再灌流を確保するために有益であると考えられている。特に、FGF-2は、心血管疾患の患者における脈管形成の誘導のための効率的な薬剤であると提案されている。しかし、ほとんどの他の血管形成因子と同様に、FGF-2は増殖因子であり、脈管形成を提供することによって腫瘍増殖もまた刺激する能力を有する。上記のように、Y2レセプターを通じて作用するNPYは、FGF-2により誘導されるものと同様なタイプの新生血管形成を誘導する。しかし、NPYはニューロペプチドであり、古典的な増殖因子ではなく、腫瘍増殖の誘導に関係付けられていない。したがって、Y2アゴニストは、治療的脈管形成のために有用な薬剤である。しかし、本アゴニストはY1レセプター作働作用を示さないことがこの使用に特に重要である。なぜならば、この作用は望まない心血管効果を与えるからである。このことは、本発明に係る全てのペプチドが、Y2選択性レセプターアゴニストであるか又は脈管形成の誘導に関してもまた特に有用な治療薬であることを意味する。これらは、上記のようなGAG結合モチーフを付着するように改変されている場合、特に有用である。更なる詳細な説明のために:FGF-2の作用は、他のほとんどの古典的増殖因子の作用と同様に、部分的に、細胞外マトリクス中のグリコサミノグリカン(GAG)への結合により媒介されるか又は制御される。GAGへのこの結合は、この血管形成因子が適切な空間的及び時間的様式で作用すること、及びそれが迅速に組織から洗い流されないことを確保する。このことは、治療用脈管形成における小さなペプチド及びペプチド模擬体、例えば本発明に記載されているものの使用のために、特に重要である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、本ペプチドは、投与後に最適な脈管形成を引き起こすために、細胞外マトリクス中のGAGへ付着することを確保する1又はそれ以上のGAG結合モチーフを組み込んでいる。これは、例えば、静脈内投与又は動脈内投与より、或いは冠動脈疾患の間及び/又は急性心筋梗塞後に心臓脈管形成を誘導するために例えば冠動脈への直接投与によることができる。同様に、本化合物は、末梢血管疾患の治療のために、動脈内注射により、大腿動脈に投与することが可能である。これはまた、改善された創傷治癒を促進するために、例えば皮膚病巣への局所限局投与によることができる。脈管形成の誘導において効率的な延長されたYレセプター曝露はまた、血清アルブミン結合モチーフで改変された本発明に従うペプチドを使用することにより得ることができる。
【0149】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、Y2選択性アゴニストは、当該ペプチドの安定性も、該ペプチドの効力及び選択性も損なわない位置に配置されるGAG結合モチーフを含んでなる。本発明の具体的実施形態は、1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなるPYY3-36に関する。
【0150】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は、治療上有効なキャリア中に、ヘパリンと組み合せて、GAG結合モチーフを含んでなる治療有効量のY2及び又はY4選択性アゴニストを含んでなる。
【0151】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、特に、脈管形成、例えば間欠跛行、冠動脈疾患及び心筋梗塞のような症状を有する、末梢血管疾患を含む心血管疾患のような疾患又は症状に関係する脈管形成を誘導するため;皮膚における創傷治癒、胃腸管における炎症性症状を含む炎症性症状、例えば潰瘍、結腸炎、炎症性腸疾患、クローン病などを含む組織修復プロセスを誘導するために、脈管形成系における攪乱を改変するY2選択性レセプターアゴニストの使用に関する。
【0152】
具体的実施形態は、心臓又は血管において、或いは組織、例えば胃腸粘膜を含む粘膜組
織及び皮膚において、脈管形成を誘導するために、本レセプターアゴニストを使用することである。
【0153】
3.創傷治癒
遺伝子の欠失によりY2レセプターが選択的に除去されている動物において、創傷治癒が損なわれること、及び関連する新生血管形成が損なわれることが報告されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。したがって、本発明のY2選択性アゴニストは創傷治癒を改善するために有用である。本ペプチドは、この適応症のためには、非経口投与を含む種々の方法で投与することができる。しかし、好ましい投与経路は、例えば、溶液、懸濁液、散剤、固着剤(stick)、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、ヒドロゲル、経皮送達系(パッチ及びプラスターを含む)などの形態での局所適用である。局所投与のためには、本ペプチドはそのまま使用することができる。しかし、本発明の好ましい実施形態において、本ペプチドは、組織でのGAGへの結合により当該ペプチドの長期持続性の局所効果を確実にするために、本明細書に記載されるGAG結合モチーフの1つ又はそれ以上で改変されている。
【0154】
4.炎症性腸疾患
PYYは、以前に、炎症性腸疾患の予防及び/又は治療について記載されている;Amylin Pharmaceuticals, IncのWO 03/105763(これは参考として本明細書中に援用される)を参照。したがって、本発明に係るアゴニストは、炎症性腸疾患の治療又は予防にも同様に効果的である。したがって、本発明はまた、このような医学的使用のための本明細書に記載のアゴニストの使用に関する。興味深い実施形態では、本ペプチドは1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなる(上記参照)。
【0155】
5.骨粗鬆症
Y2ノックアウト動物における幾つかの研究は、海綿質形成に対する非常に強い効果を示している(例えばSainsburyら、Mol.Cell.Biol. 2003, 23: 5225-33)。Y2レセプターはまた骨形成にも関与している(Baldockら、2002 J.Clin.Invest 109: 915-21を参照)。したがって、本Y2選択性アゴニストは骨粗鬆症の治療に有用である。特に、1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなるペプチドは、骨粗鬆症又は関連疾患における使用に適切であると考えられる。
【0156】
人口の或る亜群では、Y2アゴニストは、Y2遺伝子における遺伝的多様性、例えば多形性に起因して、意図する作用を有しないことがある。これらレセプターにおける機能損失変異は、肥満に関連している可能性が高い。したがって、本発明の好ましい実施形態において、これら遺伝子における多形性/変異について及びそのような多形性の同定について探索するために、処置すべき対象のY2遺伝子の分析が行われる。この様な分析に基づいて、対象の最適な治療をなすことができる。例えば、正常な遺伝子型又はY2アゴニストの機能に影響しない多形性を有する対象のみを、本アゴニストで治療すべきである。別の可能性は、薬物の最適な効果を確実にするために、損傷したレセプターを発現する対象でY2アゴニストの用量を増加させることである。対象の肥満がY2レセプターの機能の損傷により引き起こされている場合、−例えば大用量の−Y2アゴニストでの治療は、例えば異型接合体の患者において、−該当するレセプター機能の少なくとも幾つかが依然として残っているという条件で−代償療法の形態であると主張され得る。
【0157】
本発明の1つの実施形態において、これら化合物が処置すべき対象において意図する効果を有することを確実にするために慢性治療を開始する前にY2アゴニストを投与する急性試験が実施されてもよい。これら手段により、Y2アゴニストでの治療に感受性である対象のみがこれら化合物で治療されることが確実となる。
【0158】
Y4選択性アゴニスト及び他の薬剤との組合せでのY2選択性アゴニストの使用
出願人の同時係属中の同日出願の国際特許出願は、Y4選択性アゴニスト及び治療におけるその使用を開示している。本願の付録に、その出願に従うY4アゴニストに必要とされる構造的特徴が簡潔にまとめ、Y4選択性アゴニストの具体例を挙げる。下記に簡潔に議論するように、本発明のY2アゴニストは、Y4特異的アゴニストと共に、治療に使用してもよい。
【0159】
2つの化合物、それぞれY2選択性アゴニスト及びY4選択性アゴニストでの組合せ治療により、最大の有益な効果を得るために、これら化合物の各々を、自由に、すなわち互いに独立して、投薬することが可能である。換言すれば、例えば、最小限の副作用のみが例えば末梢心血管Y2レセプター又は嘔吐の発生により得られることを高い確率で確実にするために最大用量未満のY2選択性化合物を投与する一方で、同時にY4レセプター経路(より広い治療窓を有する)を通じて全ての対象において非常に強い効果を確実にするために、最大用量の又は最大を超える用量でさえのY4アゴニストを投与することが可能である。Y2レセプター経路のこの同時の−部分的−刺激は、Y4アゴニスト刺激単独より効率的な食欲調節及びエネルギー消費に対する効果を確実にする。例えば、Y2アゴニストは、Y4アゴニストより顕著な胃内容排出に対する効果を有し得る。そして、Y4レセプターの同時刺激は、より低く安全な用量のY2アゴニスト(単独では効率的ではない)の使用を可能にする。
【0160】
2つの個々の化合物がY2レセプター及びY4レセプターの組合せ刺激を得るために使用される場合、投与レジメンは、上記のように合わせることができる。したがって、本発明の具体的な実施形態において、Y2アゴニストとY4アゴニストとの組合せは、Y2の用量とY4の用量との比が約0.1:10〜約10:0.1、例えば約0.1:1〜約1:0.1、約0.2:1〜約1:0、約0.3:1〜約1:0.3、約0.4:1〜約1:0.4、又は約0.5:1〜約1:0.5、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6などであるように投与する。上記のように、興味深い実施形態は、最大効果が最小の副作用(あれば)を伴って達成されるようにY2の量とY4の量との間のバランスが調整されている、Y2アゴニストとY4アゴニストとの組合せである。したがって、そのような組合せでのY2アゴニストの濃度は、Y4アゴニストの濃度より小さいと考えられる。このために、上記のような濃度及び比は、それぞれモル濃度及びモル比に関する。
【0161】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、Y2選択性アゴニストは、肥満の治療のためにY4選択性アゴニストと併せて投与される。
【0162】
これら化合物は、同じ投与経路により、又は異なる投与経路により投与することが可能である。投与経路は、原理的には、任意の経路、例えば本明細書に記載のような経路であり得、非経口経路及び局所経路が最も興味深い。したがって、本発明の1つの実施形態において、Y2アゴニスト及びY4アゴニストは共に、例えば局所経路、例えば鼻投与により又は皮下注射により投与され、別の実施形態では、Y2アゴニストは鼻投与により投与され、Y4アゴニストは皮下注射により投与されるか、又はその逆である。投与経路の他の適切な組合せも本発明の範囲内である。
【0163】
組合せの治療で使用するY2アゴニスト及びY4アゴニストは、同じ医薬組成物に(例えば、医薬組成物中で混合物で)含有されてもよく、特別の使用指示書を伴って、同時の、逐次の、又は個別化された投与のために別々の医薬組成物で提供されてもよい。したがって、このような組成物は、随意に使用指示書を伴い、Y2アゴニスト及びY4アゴニストが同じ容器又は個別の容器に含まれてなるキットの形態で提供されてもよい。
【0164】
本発明のY2選択性アゴニストは、肥満、糖尿病及び関連する疾患の治療において、食欲及びエネルギー消費を標的する種々の他の薬物の使用と組合せてもよい。このような薬物
としては、GI管リパーゼインヒビター、神経伝達物質再取込みインヒビター、カンナビノイドレセプターアンタゴニスト及び逆アゴニスト、並びに他のタイプの神経伝達物質−5HTレセプターを含むがこれに限定されない−及び/又はホルモン−GLP-1、MC4、MC3を含むがこれらに限定されない−のレセプターアゴニスト又はアンタゴニストのような薬物が挙げられるが、これらに限定されない。Y2選択性アゴニストは、GI管とCNSとの間の連絡における恒常性調節機構−すなわち、通常、腸からの満腹媒介ホルモンPYYにより標的されているY2レセプター−を標的しているという事実に起因して、組合せのY2選択性アゴニストでの治療を、食欲及びエネルギー消費の調節における中枢の快楽機構、例えば報酬系の一部である、例えばCB1レセプターを標的する薬物での治療と組み合せることは特に有益である。したがって、肥満及び関連する疾患の治療における、CB1アンタゴニストとの組合せでのY2選択性アゴニストの使用は、本発明の好ましい実施形態である。
【0165】
投薬
本発明に従うY2レセプターアゴニストの治療有効量は、用いる具体的アゴニスト、治療すべき対象の年齢、体重及び状態、治療すべき症状又は疾患の重篤度及びタイプ、投与の方式、並びに適用する組成物の強度に依存する。
【0166】
例えば、Y2レセプターアゴニストの治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重から約1g/kg体重まで、例えば約1μgから約5mg/kg体重まで、又は約5μgから約1mg/kg体重まで変えることができる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストは、対象に0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、又は約72pmol/kg体重で投与する。
【0167】
1つの具体的な、限定的でない例では、約5〜約50nmolが皮下注射として投与され、例えば約2〜約20nmol、又は約1.0nmolが皮下注射として投与される。正確な用量は、使用する具体的化合物(例えば本レセプターアゴニスト)の効力、対象の年齢、体重、性別及び生理学的状態に基づいて、当業者により容易に決定される。アゴニストの用量は、PYY3-36の治療有効用量とモル等価であり得る。
【0168】
量は、日々の、1日おきの、週ごとの、1週間おきの、毎月の、又は他の任意の適切な頻度の投与のために、1つの用量又は幾つかの用量に分割することができる。通常、投与は1日に1回又は2回である。
【0169】
投与方法
本発明に従うY2レセプターアゴニスト並びに美容組成物又は医薬組成物は、任意の経路(経腸投与(例えば経口投与)又は非経口経路を含む)により投与することができる。具体的実施形態では、非経口経路が好ましく、これには、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内の注射及び注入、並びに舌下、経皮、局所、経粘膜(鼻経路を含む)による投与、又は吸入による投与(例えば肺吸入)が挙げられる。具体的な実施形態において、皮下及び/又は鼻の投与経路が好ましい。
【0170】
本レセプターアゴニストは、適切なビヒクル中に分散されたそのもので投与することができ、或いは、適切な医薬組成物又は美容組成物の形態で投与することができる。このような組成物もまた本発明の範囲内である。以下で、適切な医薬組成物を記載する。当業者は、そのような組成物が美容的使用にも適切であり得ることを理解している。或いは、当業者は、適切な美容上許容される賦形剤の使用により医薬組成物を美容組成物に調整する方法を理解している。
【0171】
医薬組成物
本発明に従うレセプターアゴニスト(「化合物」とも称する)は、医薬品又は化粧品における使用のためには、通常、具体的化合物又はその誘導体を1又はそれ以上の生理学的
又は医薬的に許容される賦形剤と共に含んでなる医薬組成物の形態で提供される。
【0172】
本化合物は、哺乳動物、例えば人を含む動物に、任意の簡便な投与経路、例えば経口経路、口腔粘膜経路、鼻経路、眼経路、肺経路、局所経路、経皮経路、膣経路、直腸経路、眼経路、非経口経路(とりわけ、皮下経路、筋肉内経路、及び静脈内経路を含む、上記参照)のような投与経路により、個々の目的に効果的である用量で投与してもよい。当業者は、適切な投与経路を選択する方法を理解している。上記のように、非経口投与経路が好ましい。特定の実施形態では、本レセプターアゴニストは、皮下に及び/又は鼻に投与される。皮下注射が容易に自己投与できることは当該分野で周知である。
【0173】
特定の投与経路に適切な組成物は、医療実務者により各患者個人個人について容易に決定される。種々の医薬的に許容されるキャリア及びそれらの製剤は、標準的な製剤専門書、例えばE. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0174】
本発明に従う化合物を含んでなる医薬組成物は、固体、半固体、又は流体の組成物の形態であり得る。非経口使用のためには、本組成物は、通常、流体組成物の形態であり、移植のためには半固体の形態か又は固体形態である。
【0175】
滅菌溶液又は分散液である流体組成物は、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内又は皮下の注射又は注入により利用することができる。本化合物はまた、投与の前又は投与時に、例えば滅菌水、生理食塩水又は他の適切な滅菌注射可能媒体を用いて溶解又は分散され得る滅菌固体組成物として製造されてもよい。
【0176】
流体形態の組成物は、溶液、エマルジョン(ナノエマルジョンを含む)、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、混合液、スプレー、又はエアロゾルであり得る(最後の2つのタイプは鼻投与に特に該当する)。
【0177】
溶液又は分散液用の適切な媒体は、通常、水又は医薬的に許容される溶媒、例えば油(例えばごま油又はピーナッツ油)のような溶媒又は例えばプロパノール又はイソプロパノールのような有機溶媒をベースにする。本発明に従う組成物は、医薬的に許容される賦形剤、例えばpH調整剤、例えば組成物の等張性を生理学的に許容されるレベルに合わせるための浸透圧的に活性な薬剤、粘性調整剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤などを更に含んでなり得る。好ましい媒体は水である。
【0178】
鼻投与用の組成物はまた、適切な非刺激性ビヒクル、例えばポリエチレン グリコール、グリコフロール(glycofurol)などのようなビヒクル、並びに当業者に周知の吸収増強剤(例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照)を含有してもよい。
【0179】
非経口投与のためには、1つの実施形態において、本レセプターアゴニストは、一般には、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、又はエマルジョン)の所望の純度の当該レセプターアゴニストを、医薬的に許容される賦形剤又はキャリア(すなわち、用いる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、組成物の他の成分と適合性であるもの)と混合することにより製剤することができる。
【0180】
一般に、製剤は、本レセプターアゴニストを均一に及び親密に液体キャリア又は微細に分割した固体キャリア又はその両者と接触させることにより製造する。次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形する。キャリアは、好ましくは非経口キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張性の溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば不揮発性油及びエチルオレエート、並びにリポソームもまた本明細書中に
おいて有用である。本明細書に記載のペプチドの両親媒性に起因して、適切な形態としては、ミセル状製剤、リポソーム、及び1又はそれ以上の適切な脂質、例えばリン脂質などを含んでなる他のタイプの製剤なども挙げられる。
【0181】
好ましくは、これらは、水性キャリア中、例えば、約3.0〜約8.0のpH、好ましくは約3.5〜約7.4のpH、3.5〜6.0のpH、又は3.5〜約5のpHの等張性緩衝溶液中に懸濁する。有用な緩衝液物質としては、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸、及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液などが挙げられる。
【0182】
本組成物は、より少ない頻度の投与レジメンを得るために、投与後の本レセプターアゴニストが制御又は延長された送達をされるように設計されてもよい。通常、1〜2の日々の投与を含む投薬レジメンが適切であると考えられるが、他の投薬レジメン、例えばより頻繁な投薬レジメン及びより頻度の少ない投薬レジメンもまた本発明の範囲に含まれる。本レセプターアゴニストの延長された送達を達成するためには、投与部位でデポー(これから本レセプターアゴニストが循環系中にゆっくりと放出される)を形成するために例えば脂質又は油を含む適切なビヒクルを用いてもよいし、又はインプラントを使用してもよい。この点に関して適切な組成物としては、その中に本レセプターアゴニストが組み込まれているリポソーム及び生物分解性粒子が挙げられる。
【0183】
固体組成物が必要とされる状況では、固体組成物は、錠剤、例えば従来型の錠剤、沸とう錠、コーティング錠、融解錠(melt tablet)又は舌下錠、ペレット、散剤、顆粒剤(granules、granulates)、粒子状物質(particulate material)、固体分散剤又は固溶体の形態であってもよい。
【0184】
半固体形態の組成物は、チューインガム、軟膏、クリーム、リニメント剤、パスタ剤、ゲル又はヒドロゲルであり得る。
本発明に従う医薬組成物の他の適切な剤形は、膣坐剤(vagitory)、坐剤、プラスター剤、パッチ剤、錠剤、カプセル剤、薬袋剤(sachet)、トローチ剤、デバイスなどであり得る。
剤形は、本化合物を自由に又は制御された様式(例えば錠剤に関しては適切なコーティングによる)で放出するように設計されてもよい。
【0185】
本医薬組成物は、治療有効量の本発明に従う化合物を含んでなり得る。
本発明の医薬組成物中の本発明の化合物の含有量は、例えば、医薬組成物の約0.1〜約100% w/wである。
本医薬組成物は、医薬製剤の当業者に周知の任意の方法により製造され得る。
【0186】
医薬組成物において、本化合物は、通常、医薬賦形剤、すなわち治療上不活性な物質又はキャリアと組み合わされる。
キャリアは、所望の剤形及び投与経路に依存して、幅広い種々の形態をとり得る。
医薬的に許容される賦形剤は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、流動促進剤(glidant)、溶媒、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、増強剤、香料、着色料、pH調整剤、緩染剤、湿潤剤、表面活性剤、防腐剤、抗酸化剤などであり得る。詳細は、薬学ハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Science又はPharmaceutical Excipient Handbookに見出すことができる。
【実施例】
【0187】
以下の実施例は、本発明の幾つかの具体的アゴニストの製造及び活性を記載する。
合成
略号
Fmoc: フルオレニル-9-メトキシカルボニル
DMF: ジメチルホルムアミド
Pbf: 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
Trt: トリフェニルメチル
Boc又はtBoc:ブトキシカルボニル
Dde: 1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル
HCTU: 1H-ベンゾトリアゾリウム1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5クロロ-,ヘキサフルオロホスフェート(1-),3-オキシド
TFA: トリフルオロ酢酸
MALDI: マトリクス支援レーザイオン化
NHS: N-ヒドロキシスクシンイミド
【0188】
本発明のペプチド性アゴニストは、自動化ペプチド合成機又は伝統的なベンチ合成のいずれかを用いて、固相ペプチド合成により合成されてもよい。固相支持体は、例えば、クロロトリチル(Cl)樹脂又はWang(OH)樹脂であり得る。これらは共に商業的に容易に入手可能である。これら樹脂の活性基は、N-Fmocアミノ酸のカルボキシル基と容易に反応し、そのことによってポリマーに共有結合的に結合する。樹脂に結合したアミンは、ピペリジンへの曝露により脱保護され得る。次いで、第2のN保護アミノ酸が、その樹脂-アミノ酸にカップリングされ得る。所望の配列が得られるまでこれらの工程を繰り返す。合成の最後に、樹脂結合保護ペプチドを脱保護し、トリフルオロ酢酸(TFA)で樹脂から切断し得る。樹脂結合アミノ酸鎖への新たなアミノ酸のカップリングを容易にする試薬の例は:テトラ-メチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1H-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)である。
【0189】
固相化学よりむしろ溶液化学によるペプチド合成もまた実現可能である。
例えば上記のようなGAG結合モチーフ又は他のモチーフを導入するための、ペプチド鎖中のアミノ酸の側鎖アミノ基又はカルボキシル基の改変は、反応に関与しない他の反応性側鎖基の選択的な保護及び脱保護という単純なことにすぎない。
【0190】
本明細書中で言及するペプチドは、固相合成により、PAL Peg-PS樹脂(アミド樹脂(amide resin Applied Bioscience、Warrington、UK GEN913401)上で、5×試薬過剰でのFmoc化学を使用して製造する。カップリングは、溶媒DMF、HCTUスルーアウト(throughout)により実行した。Fmoc除去は、DMF中の20%ピペリジンで10〜15分間実施した。しかし、これらペプチドは、好都合なことに、種々の他の標準的なペプチド合成法、例えばtBOC化学及び固相状態に代わる溶液化学などにより合成され得る。合成は以下の記載により説明されるが、本発明に係る他のペプチドも同様な方法により製造された:
【0191】
[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY及びそのアナログの合成
以下に、環状Y2選択性ペプチド[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:39)の合成及びGAG結合モチーフ、血清タンパク質結合モチーフ又はポリエチレングリコール部分のいずれかがLys13のεアミノ基に付着しているアナログの合成を記載する。
【0192】
一般に、側基保護は、以下を除いて標準的なFmocであった:
Arg = Fmoc Arg(Pbf)-OH
Asn、Gln = Fmoc Asn(Trt)-OH
Thr、Ser、Asp、Glu、Tyr = tButyl
Lys = Fmoc Lys(tBoc)-OH
Ala-Ser 22-23 = Fmoc AlaSer 偽プロリン
【0193】
[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYYの場合、選択的な脱保護を得るために、以下の特別な保護基を使用した:
Tyr 1 = tBoc Tyr (tBu)-OH
Lys 13 = Fmoc Lys(Dde)-OH
Cys 27 = Fmoc DLys(Trt)-OH
【0194】
このペプチドは、固相合成により、PAL Peg-PS樹脂(切断に際して生物学的に重要なカルボキシアミド基を生じる樹脂)上で、5倍モルの試薬過剰でのFmoc化学を使用して合成した。カップリングは、DMFを溶媒として使用するHCTUスルーアウトにより実施した。各カップリング工程後のFmoc除去は、DMF中20%ピペリジンで10〜15分間実施した。カップリングは、定量的ニンヒドリンアッセイにより各工程後に確認した。或る場合には、二重カップリングを実施し得る。
【0195】
完全長ペプチドの合成後、ペプチドを依然として樹脂に付着させたままで、Lys13のεアミノ基上の保護基を、DMF中2%ヒドラジンでの15〜20分間の処理により選択的に除去した。
続いて、樹脂を異なるバッチに分割して、非誘導体化ペプチド及び3つの異なるモチーフ改変ペプチドを作製した:
【0196】
1.[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:39)−「マザーペプチド」−を樹脂から切断し、95%トリフルオロ酢酸:2.5%水:2.5%トリプロピルシランでの2〜3時間の処理により脱保護した。
酢酸アンモニウム(pH8.5〜9)中に1mg/ml未満のペプチドを溶解し、エルマンアッセイにより遊離チオールが検出できなくなるまで24〜48時間撹拌することによる空気酸化によって、Cys2とD-Cys27との間の分子内安定化性ジスルフィド橋架けを生成した。
ペプチドを、逆相HPLC:Vydac 300Åカラム、250mm×10mmカラムにより精製し、20分間にわたって(2ml/分)、30〜80%の緩衝液Bの勾配中、(緩衝液A = 水中0.05%TFA;緩衝液B = 60%MeCN:40%水:0.05%TFA)で溶出させた。OD 215nMを測定し、特定ペプチドを含有する溶出液を集めて凍結乾燥した。
ペプチドの構造を質量分析、アミノ酸分析により、そして多くの場合にはアミノ酸配列分析によっても確認した。
【0197】
2.[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:28) − 血清アルブミン結合モチーフを付着するために、ペプチドを依然として樹脂に付着させたままで、保護されたアミノオクタン酸を2回使用し、続いて保護されたγグルタミン酸を使用するペプチド合成によって、保護性Dde基の除去後のLys13の遊離εアミノ基に8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル基を連結した。
「マザーペプチド」について上に記載したように、このモチーフ改変ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、そして精製した。
【0198】
3.フルオレセイン-[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:30) − GAG結合モチーフを付着するために、樹脂に依然として付着している[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYYペプチドに対して、上記で一般的に記載した標準的なFmoc化学を用いて、Dde基の除去後にLys13の遊離εアミノ基を使用するペプチド合成により、該モチーフを段階的に構築した:このようにして付着したGAG結合配列は、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaであった。インビトロ及びインビボでの分析目的に、フルオレセインタグ基を5,6異性
体として−NHSエステル、10倍過剰を72時間にわたって−最後のGAG結合配列のN末端に付加した。
「マザーペプチド」について上に記載したように、GAG結合モチーフ改変ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、そして精製した。
【0199】
4.[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:37)
−Y2選択性ペプチドにポリエチレングリコール部分を付着するために、樹脂に依然として付着している[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYYペプチドに対して、Dde基の除去後にLys13の遊離εアミノ基を使用するペプチド合成により、保護された21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサン酸を、続いて保護されたγ-グルタミン酸を結合した。
「マザーペプチド」について上に記載したように、PEG化ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、そして精製した。
【0200】
上記方法を用いて、本発明の以下のアゴニストを実施例として合成する:
PYY2-36(配列番号:4)
NPY2-36(配列番号:5)
[D-Ala1]PYY(配列番号:6)
[D-Ala2]PYY(配列番号:7)
[Ala28]PYY(配列番号:8)
[Ala30]PYY(配列番号:9)
[Ala31]PYY(配列番号:10)
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)
[Cys2,D-Cys27]NPY(配列番号:14)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:15)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPY(配列番号:17)
[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:18)
[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19)
[Glu28,Lys32]PYY25-36(配列番号:20)
Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-PYY25-36(配列番号:21)
[D-Ala2]PYY2-36(配列番号:22)
[Lys4,Leu17,Gln34]PP(配列番号:23)
[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP(配列番号:24)
[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:25)
[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:26)
N-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:27)
[Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:29)
[Cys2,N-PEG5000-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:31)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Leu28,Val31]NPY(配列番号:32)
[Cys2,Ile3,Nle17,D-Cys27,Nle28,Val31]NPY(配列番号:33)
N-アセチル-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:34)
N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:35)
【0201】
ペプチドの化学分析:
上記の方法により合成した本発明のペプチドの幾つかについての分析データを、使用し
た方法及び達成した結果を説明することにより下記に詳細に示す:
【0202】
データ
【表2】

【0203】
分析HPLC法A
カラム = Vydac C18 ペプチド-タンパク質カラム、250×4.6mm
緩衝液A = 0.05% TFA(水中)
緩衝液B = 0.05% TFA(100% MeCN中)
勾配 = 20分間で0%B〜60%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 215nm
質量分析 = MALDI-TOF(マトリクスとしてゲンチシン酸又は□シアノヒドロキシ桂皮酸)
【0204】
分析HPLC法B
カラム = Hypersil ODS-2、250×4.6mm
緩衝液A = 0.1% TFA(100% MeCN中)
緩衝液B = 0.1% TFA(100%水中)
勾配 = 25分間で24%A〜35%A
流量 = 1.00mL/分
波長 = 220nm
質量分析 = ESI [ネブライザーガスフロー:1.5L/分;CDL -20.0v;CDL temp:250℃;Block temp:200℃;プローブバイアス:+4.5kv;検出器:1.5kv;T. フロー:0.2mL/分;B. conc:50% H20/50% CAN.]
【0205】
分析HPLC法C
カラム = Vydac C18 218TP54、250×4.6mm
緩衝液A = 20mLのMeCN及び2mLのTFA(水中)(総容量2000mL)
緩衝液B = 2mLのTFA(水中)(総容量2000mL)
勾配 = 27分にわたって25%B〜75%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 215nm
注入容量 = 10μL
【0206】
生物学的アッセイ及び結果
I.ペプチド親和性及び効力を決定するためのインビトロアッセイ
ヒトY2レセプター親和性アッセイ
ヒトY2レセプターに対する試験化合物の親和性は、標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション法を用いてヒトY2レセプターで一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において、125I-PYY結合を使用する競合結合アッセイで決定する。
トランスフェクションの1日後に、放射性リガンドの5〜8%の結合を目的として、トランスフェクトしたCOS-7細胞を培養プレートにウェル当たり40×103細胞の密度で移す。トランスフェクションの2日後、25pMの125I-PYY(Amersham、Little Chalfont、UK)を用いて競合結合実験を3時間4℃にて行う。結合アッセイは、1mM CaCl2、5mM MgCl2、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン並びに100μg/mlバシトラシンを補充した0.5mlの50mM Hepes緩衝液(pH7.4)中で行う。非特異的結合は、1μMの未標識PYYの存在下での結合として決定する。細胞を0.5mlの氷冷緩衝液中で2回洗浄し、0.5〜1mlの溶解緩衝液(3M酢酸中8M尿素、2% NP40)を加え、結合した放射能をガンマカウンターでカウントする。測定は2連(in duplicate)で行う。定常状態の結合は、これら条件下での放射性リガンドで達成される。
標準的な薬理学的データを扱うソフトウェアPrism 3.0(graphPad Sofware、San Diego、USA)を用いてEC50値を算出した。
【0207】
ヒトY4レセプター親和性アッセイ
ヒトY4形質転換COS-7細胞を使用し、競合アッセイに125I-PPを使用し、PPを非特異的結合の決定に使用する以外はY2親和性アッセイについてと同様なプロトコル。
【0208】
ヒトY1レセプター親和性アッセイ
ヒトY1形質転換COS-7細胞を使用し、ウェルあたり1.5×106細胞の密度で培養プレートに移し、競合アッセイに125I-NPYを使用し、NPYを非特異的結合の決定に使用する以外はY2親和性アッセイについてと同様なプロトコル。
【0209】
ヒトY5レセプター親和性アッセイ
ヒトY5形質転換COS-7細胞を使用し、ウェルあたり5×105細胞の密度で培養プレートに移し、競合アッセイに125I-NPYを使用し、NPYを非特異的結合の決定に使用する以外はY2親和性アッセイについてと同様なプロトコル。
【0210】
上記親和性アッセイにおいて、NPY、PYY、PYY3-36、PP及び本発明の幾つかの他のアゴニストを試験した結果を表1に示す:
【表3】

【0211】
ヒトY2レセプター効力アッセイ
ヒトY2レセプターに対する試験化合物の効力を、ヒトY2レセプター及び無差別Gタンパク質、Y2レセプターがGq経路を通じて共役してイノシトールリン酸代謝回転の増加を導くことを確実にするGqi5で一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において用量-応答実験を実施することにより決定する。
ホスファチジルイノシトール代謝回転 − トランスフェクションの1日後、COS-7細胞を、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン及び0.01mg/mlゲンタマイシンを補充したウェルあたり1mlの培地中で5μCiの[3H]-myo-inositol(Amersham、PT6-271)と24時間インキュベートする。細胞を、140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mM CaCl2、10mMグルコース、0.05%(w/v)ウシ血清を補充した緩衝液(20mM HEPES、pH7.4)中で2回洗浄し;10mM LiClを補充した37℃の0.5ml緩衝液中で30分間インキュベートする。種々の濃度のペプチドで45分間37℃にての刺激後、細胞を10%氷冷過塩素酸で抽出し、続いて氷上で30分間インキュベートする。得られる上清をHEPES緩衝液中のKOHで中和し、生成された[3H]-イノシトールリン酸をBio-Rad AG 1-X8アニオン交換樹脂上で精製し、ベータカウンターでカウントする。測定は2連で行う。EC50値を、標準的な薬理学的データを扱うソフトウェアPrism 3.0(graphPad Sofware、San Diego、USA)を用いて算出した。
【0212】
ヒトY4レセプター効力アッセイ
ヒトY4形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0213】
ヒトY1レセプター効力アッセイ
ヒトY1形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0214】
ヒトY5レセプター効力アッセイ
ヒトY5形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0215】
上記効力アッセイにおいて、NPY、PYY、PYY3-36、PP及び4つの本発明のアゴニストを試験した結果を表2に示す:
【表4】

【0216】
II.タンパク質安定性を決定するためのインビトロアッセイ
多くの本発明のペプチドについての重要な尺度は、タンパク質安定性、特に、例えばPYY3-36と比較して増加した安定性又は完全長PYY及びPPと比較してさえ増加した安定性を有するように設計されているペプチドとして酵素による分解に対する安定性に関するタンパク質安定性である。
【0217】
PP折り畳みの安定性 − これは、例えば記載(O'Hare, M. & Schwartz, T.W. 1990 In Degradation of Bioactive Substances: Physiology and Pathophysiology. J.Henriksen編, CRC Press, Boca Raton, Fl.)されているように比較的可橈性であるループ領域で切断する、エンドペプチダーゼによる分解に対するペプチドの安定性として決定する。モデル酵素として、エンドプロテイナーゼAsp-N(Pierce)を使用する。この酵素はAsp残基のN末端で、例えばPP中の残基9と残基10(Asp)との間で切断する。ペプチドを、室温の0.01M Tris/HCl緩衝液(pH7.5)中で、製造業者により指示されるような有効な用量のエンドペプチダーゼAsp-Nとインキュベートし、24時間にわたって種々の期間後にサンプルを取り出す。サンプルをHPLCにより分析し、ペプチドの徐々の分解を時間とともに追跡する。ペプチドを、安定性について、PYY、PYY13-36及びPPと比較する。
【0218】
アミノペプチダーゼに対する安定性 − これは、エンドペプチダーゼについて上記と同様ではあるが、代わりにアミノペプチダーゼN及びジペプチジルペプチダーゼIVを使用して決定する。これらアミノペプチダーゼに対して耐性であるように幾つかのペプチド、例えばPYY2-36、N末端がアセチル化されたそのペプチド誘導体、及びN末端にアルブミン結合部分を有してアルキル化されたそのペプチド誘導体を特別に設計する。ペプチドを、安定性に関して、PYY、PYY3-36及びPPと比較する。
【0219】
III.グルコサミノグリカン(GAG)への結合を決定するためのインビトロアッセイ
GAGに結合する試験化合物の能力を、固定化したヘパリンを使用するインビトロアッセイ、すなわち、例えば、HiTrapヘパリン-セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)又はヘパリンHPLCカラム(これらは2mM DTT及び1mM MgEDTAを含有する50mMリン酸ナトリウム(pH7.3)中の0〜0.5M NaClの50分間の線形勾配で1ml/分の流量にて溶出される)のいずれかでモニターする。再生のために、カラムを緩衝液A
中1M NaClで51〜55分洗浄した。当初の分析目的のためにNaClの階段状勾配を使用することができる。
【0220】
IV.食欲、食物摂取及び体重に対するペプチドの効果を決定するためのインビボ研究
マウスにおける急性食物摂取に対する、Y1選択性アゴニスト及びY4選択性アゴニストを超えるY2選択性アゴニストの効果
ddy系統のマウス(34〜37g及び8〜9週齢)(Japan SLC、Shizuuoka、Japan)を使用した。マウスを調節された環境(22℃、55%湿度)下、AM7時に点灯する12時間の明暗サイクルで個別に飼育した。食餌及び水は、実験直前以外は自由摂取とした(下記参照)。実験開始の1週間前の間に皮下注射に対してマウスを慣れさせた。実験では各マウスを1回使用した。投与直前に、ペプチドを生理学的食塩水に希釈し、100μL容量で皮下投与した。結果は平均±SEとして表す。分散分析の後にBonferroni検定を使用して群間の差を評価した。
【0221】
マウスを、実際の試験の前16時間、水は自由に摂取させるが絶食させ、翌日のAM10時に実験を開始した。標準的な食餌を使用し(CLEA Japan, Inc.、Tokyo、Japan)、投与後、最初に予め測定した食物から食べ残された食物を減算し、こぼれた食物を確認することにより食物摂取を測定した。各群8匹の動物に、生理食塩水、3μgのPYY3-36、30μgのPYY3-36、10μgの試験化合物、又は100μgの試験化合物のいずれかを投与した。
試験化合物として[Cys2,D-Cys27]-PYY(配列番号:13)についての結果を図4に示す。
【0222】
【表5−1】

【0223】
【表5−2】

【0224】
【表5−3】

【0225】
【表5−4】

【0226】
【表5−5】

【0227】
【表5−6】

【0228】
< 付録 >
本出願人の同時係属中の国際特許出願「治療的介入のためのY4選択性レセプターアゴニスト(Y4 Selective receptor agonists for Therapeutic Interventions)」は、種々の治療処置及び美容処置、例えば肥満及び過体重並びにこれらが主因と考えられる症状(例
えば下痢及び腸の分泌過多)の治療のためのY4選択性アゴニストの使用を記載している。
【0229】
この出願によるY4レセプターアゴニストは、
(a)(i)-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、R1及びR1は独立して水素又はC1〜C6アルキルであり、XはVal、Ile、Leu又はAlaであり、X3はGln以外の残基である)又はThrがHis又はAsnにより置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheにより置換され;及び/又はArgがLysにより置換されているその保存的置換変形体により表されるC末端Y4レセプター認識アミノ酸配列、及び
(ii)H2N-X1-Pro-X2-(Glu又はAsp)-(式中、X1は存在しないか、又は任意のアミノ酸残基であり、X2はLeu、Ile又はSerである)又はその保存的置換体により表されるN末端Yレセプター認識アミノ酸配列
を有するPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるY4レセプターアゴニストであるか、
【0230】
或いは
(b)上記(i)で規定されたC末端Y4レセプター認識配列、及び任意に上記(ii)に規定されるY4レセプター認識アミノ酸配列で始まるN末端配列を含んでなり、
該C末端Y4レセプター認識配列は、該ヘキサペプチド配列のN末端に隣接して少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合されており、
該少なくとも1つのαヘリックスターンは、共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束されているY4レセプターアゴニストであるか、
【0231】
或いは
(c)各々が上記(i)に規定される配列の最後の4つの残基を含んでなる2つの共有結合的に連結したC末端Y4レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるY4レセプターアゴニストである。
【0232】
タイプ(a)、(b)又は(c)の本発明のアゴニストに存在する好ましいC末端Y4レセプター認識アミノ酸配列の1つのセットは、-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、X及びX3は上記のように定義され、R1及びR2は各々水素である)で表される。また、好ましくは、残基X3はAsnであるべきではなく、Lys、Arg、Asp又はGluは好ましくはX3残基としては避けられる。現時点では、X3はProであることが好ましい。しかし、X3はまた、His、又は4-ヒドロキシプロリン、アゼチジン-2-カルボン酸、アゼチジン-3-カルボン酸、アザプロリン、及び1-アミノシクロブタンカルボン酸から選択される非天然Proアナログであってもよい。このアゴニストのC末端Y4レセプター認識アミノ酸配列では、1つの好ましい残基XはLeuである。
【0233】
6残基のC末端Y4認識配列は、-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、残基XAは非塩基性及び非酸性である)で表されるC末端ヘプタペプチドの最後の残基であり得る。この場合、該非塩基性且つ非酸性のアミノ酸残基XAは、例えばLeu又はMetであり得る。
【0234】
更に、前記段落のC末端ヘプタペプチド配列は、それ自体が、-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、配列-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は上記のとおりであり、XCはArg又はLysであり、XBはIle、Leu又はValである)で表されるC末端ウンデカペプチドの最後の残基であってもよい。このようなウンデカペプチド配列の例としては、-Arg-Tyr-Ile-Asn-(Leu又はMet)-Leu-Thr-Arg-(Pro又はHis)-Arg-Tyr-C(=O)NH2が挙げられる。
【0235】
C末端ウンデカペプチド配列の別の例は、-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C
(=O)NR1R2(式中、XCはHis、Asn、又はGlnであり、XBはIle、Leu又はValである)で表される。このような配列の例は、-His-Tyr-(Ile又はLeu)-Asn-Leu-(Val/Ile)-Thr-Arg-(Pro又はHis)-Arg-Tyr-C(=O)NH2である。
【0236】
タイプ(a)、(b)又は(c)のPP折り畳み模擬体アゴニストの1つのセットでは、Y4レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるC末端配列は、そのN末端で、該エピトープのN末端に隣接して少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合していてもよく、及び少なくとも2つのアミノ酸のN末端アミノ配列。前記C末端及びN末端のアミノ酸配列は、リンカー基にペプチド結合により結合しており、該リンカー基は、任意に1又はそれ以上の二重結合又は三重結合を含有していてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。例えば、リンカー基のペプチド結合は、式NH2(CH2)nCO2H(式中、nは2〜12、特に6、7、8、9又は10である)のアミノ酸のそれぞれカルボキシル基及びアミノ基と形成していてもよい。したがって、アゴニストは、記載のようなCys-Cys橋架けを有するが天然型ペプチドの5〜24に相当するアミノ酸残基が6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸)、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、及びアミノデカン酸からなる群より選択される6〜10炭素原子の炭素鎖を有するアミノカルボン酸で置換されているNPY、PPY又はPPのアナログであり得る。具体的な実施形態において、8-アミノオクタン酸(本明細書中で時に「Aoc」と略称される)が好ましい。このようなアゴニストの例は[Cys2,Aoc5-24,Dcys27]-PP(配列番号:9)である。
【0237】
タイプ(a)及び(b)アゴニストのN末端Y4レセプター認識アミノ酸配列では、残基X1はAlaであってもよいし、存在しなくてもよい。更に、このアゴニストのN末端Y4レセプター認識アミノ酸配列では、残基X2はLeu、Ile、又はSerであり得る。
このようなN末端配列の具体例は、H2N-Ala-Pro-Leu-Glu-、及びH2N-Pro-Leu-Glu-である。
同時係属中の国際特許出願に従うY4選択性アゴニストの具体例は以下ものである。
【0238】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有し、及び
NPYのTyr1に相当するチロシン残基を有さず、及び/又は
NPYのPro2に相当するプロリン残基を有さず、及び/又は
NPYのSer3に相当するセリン残基も、アスパラギン残基も、グルタミン残基も、スレオニン残基も、ロイシン残基も、イソロイシン残基も、バリン残基も、メチオニン残基も、トリプトファン残基も、チロシン残基も、フェニルアラニン残基も有さず、
NPYのLys4に相当するリジン残基もアルギニン残基も有さず、及び/又は
NPYのLeu24に対応する位置にロイシン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのArg25に対応する位置にアルギニン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのHis26に対応する位置にヒスチジン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのIle28に対応する位置にイソロイシン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのAsn29に対応する位置にアスパラギン以外の残基を有し、及び/又は
NPYのLeu30に対応する位置にロイシン又はメチオニン以外の残基を有する
PYY、NPY、PYY模擬体及びNPY模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
(b)C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を有し、及び
PPのPro2に対応する位置にプロリンを有さず、及び/又は
PPのLeu3に対応する位置にロイシンを有さず、及び/又は
PPのGlu4に対応する位置にグルタミン酸を有さない
PP及びPP模擬体から選択されるPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
(c)(i)N末端で両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合したC末端Y2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなり、該両親媒性アミノ酸配列ドメインは該Y2レセプター認識配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなり、該ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束され、(ii)NPY又はPYYと類似するN末端構造を有する場合には前記(a)で挙げた改変の1以上を有し、PPと類似するN末端構造を有する場合には前記(b)で挙げた改変の1以上を有する、
Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるPYY3-36以外のYレセプターアゴニストの、Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療用組成物の製造における使用。
【請求項2】
前記アゴニストがタイプ(a)であり、NPYのTyr1に対応する位置にTyr、Trp又はPhe以外の残基を、及び/又はNPYのPro2に対応する位置にPro以外の残基を、及び/又はNPYのSer3に対応する位置にIle、Leu、Val、Phe、Trp、Tyr、Ser、Thr、及びAsn以外の残基を、及び/又はNPYのLys4に対応する位置にリジン及びアルギニン以外の残基を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アゴニストがタイプ(b)であり、PPのPro2に対応する位置にPro、Tyr、Phe、及びTrp以外の残基を、及び/又はPPのLeu3に対応する位置にIle、Leu、Met、及びVal以外の残基を、及び/又はPPのGlu4に対応する位置にGlu又はAsp以外の残基を有する請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記アゴニストがタイプ(c)であり、PP折り畳み構造を有し、該構造において、前記ヘリックスターン拘束性分子内連結が、前記両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、該両親媒性ドメインに逆平行に伸びるPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分の連結点まで伸びている請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記ヘリックスターン拘束性分子内連結が、前記両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、4つのN末端残基のうちの1つまで伸びる請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックスターン拘束性分子内連結がジスルフィド連結であるか又はラクタム連結である、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記アゴニストにおいて、該アゴニスト中の前記ヘリックスターン拘束性分子内連結が、前記ヘリックスターン中のLys残基とGlu残基との間に形成されているか、又は該ヘリックスターン中のLys残基又はGlu残基と前記C末端Y2認識配列中のGlu残基又はLys残基との間に形成されているラクタム連結である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記アゴニストにおいて、該アゴニスト中の前記共有結合性分子内連結が、前記αヘリックス中のL-又はD-Cys残基と、前記両親媒性ドメインに逆平行に伸びるPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分に位置するCys残基との間に形成されているジスルフィド連結である、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記アゴニストにおいて、前記C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列が、-X-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、Xは塩基性残基でも酸性残基でもなく、R1及びR1は独立して水素又はC1-C6アルキルである)、又はThrがHis又はAsnに置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheに置換され、及び/又はArgがLysに置換されているその保存的置換変形体である請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記アゴニストにおいて、前記C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列が-Ile-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2である請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記アゴニストにおいて、前記C末端Y2レセプター認識アミノ酸配列が-Ala-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2である請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記アゴニストが、N末端で両親媒性アミノ酸配列ドメインと融合したY2レセプター認識アミノ酸配列を含んでなるC末端配列、及び少なくとも2つのアミノ酸のN末端アミノ配列を有し、該両親媒性アミノ酸配列ドメインが該エピトープのN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなり、該C末端アミノ酸配列及びN末端アミノ酸配列が式NH2(CH2)nCO2H(式中、nは2〜12である)のアミノ酸のそれぞれカルボキシル基及びアミノ基とのペプチド結合により結合している請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記アゴニストにおいて、nが6、7、8、9又は10である請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記アゴニストが、
PYY2-36(配列番号:4)
NPY2-36(配列番号:5)
[D-Ala1]PYY(配列番号:6)
[D-Ala2]PYY(配列番号:7)
[Ala28]PYY(配列番号:8)
[Ala30]PYY(配列番号:9)
[Ala31]PYY(配列番号:10)
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)
[Cys2,D-Cys27]NPY(配列番号:14)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:15)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPY(配列番号:17)
[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:18)
[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19)
[Glu28,Lys32]PYY25-36(配列番号:20)
[D-Ala2]PYY2-36(配列番号:22)
[Lys4,Leu17,Gln34]PP(配列番号:23)
[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP(配列番号:24)
[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:25)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Leu28,Val31]NPY(配列番号:32)
[Cys2,Ile3,Nle17,D-Cys27,Nle28,Val31]NPY(配列番号:33)
[Cys2,D-Cys27]PYY2-36(配列番号:36)
及びこれらの保存的置換アナログから選択される請求項1に記載の使用。
【請求項15】
前記アゴニストが[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)又はその保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項16】
前記アゴニストが[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)又はその保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記アゴニストが[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:13)又はその保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項18】
前記アゴニストがアミノペプチダーゼ活性に対する耐性を付与するためにN末端にてアシル化されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記アゴニストがN末端にて2〜24の炭素原子を有する炭素鎖でアシル化されている、例えばN-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:35)である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記アゴニストがN末端にてアセチル化されている、例えばN-アセチル-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:34)又はN-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:27)である請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記アゴニストがPYY3-36であるか若しくは請求項1〜20のいずれか1項に規定されるものであり、且つ血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフを含んでなるか又はPEG化されている請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記アゴニストにおいて、前記血清アルブミン結合モチーフが親油性基である請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基が、任意に置換されていてもよい飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基を含んでなる請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基が該アゴニストの主鎖に対して側鎖であるか又は側鎖の一部である請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が、エーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合を介して前記主鎖中の残基に接続している請
求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH-(式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH-(式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH-(式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO-(式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3(式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格からなる群より選択される請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が、該アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基である請求項24に記載の使用。
【請求項28】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が、該アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するテトラデカノイル基である請求項24に記載の使用。
【請求項29】
前記アゴニストが
Lys13-テトラデカノイル-[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY、
Lys4-テトラデカノイル-[Cys2,D-Cys27]PYY、
[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:26)、
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:28)、
[Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:29)
又はこれらの保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項30】
前記アゴニストがLys13-テトラデカノイル-[Lys13]PYY3-36若しくはLys4-テトラデカノイル-PYY3-36又はそれらの保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項31】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストの主鎖に対して側鎖であるか又は側鎖の一部であるアミノ酸配列である請求項21に記載の使用。
【請求項32】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがコンカテマー又はデンドリマーである請求項31又は32に記載の使用。
【請求項34】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端と[Cys2,Lys13,D-Cys2
7]PYY(配列番号:39)中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項31〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端と[Cys2,Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:39)中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項31〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端と[Lys13]PYY3-36中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項31〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項21に記載の使用。
【請求項38】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項37又は38に記載の使用。
【請求項40】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列[XBBBXXBX]n(式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項37又は38に記載の使用。
【請求項41】
前記アゴニストが[XBBBXXBX XBBBXXBX]PYY25-36又は[XBBBXXBX XBBBXXBXXBBBXXBX]PYY25-36(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)である請求項37に記載の使用。
【請求項42】
前記ペプチドがAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-PYY25-36(配列番号:21)又は[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:30)である請求項37に記載の使用。
【請求項42】
前記アゴニストにおいて、前記PEGが最大で約20kDaの分子量を有するポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドである請求項21に記載の使用。
【請求項43】
前記アゴニストがLys4でPEG化された[Cys2,DCys27]PYY若しくはLys13でPEG化された[Cys2,Lys13,DCys27]PYYであるか、又は[Cys2,N-PEG5000-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:31)であるか、又は[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:37)である請求項20又は41に記載の使用。
【請求項44】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックス誘導ペプチドが該アゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項
21に記載の使用。
【請求項45】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックス誘導ペプチドが該アゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項21に記載の使用。
【請求項46】
前記ヘリックス誘導ペプチドがAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Met、Orn、及び式-NH-C(R1)(R2)-CO-(式中、R1は水素であり、R2は任意に置換していてもよいC1-C6アルキル、フェニル又はフェニルメチルであるか、又はR1及びR2はこれらが付着しているC原子と一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル環を形成する)のアミノ酸残基からなる群より選択される4〜20アミノ酸残基を有する請求項44又は45に記載の使用。
【請求項47】
前記ヘリックス誘導ペプチドが4、5又は6つのLys残基を含んでなる請求項44又は45に記載の使用。
【請求項48】
前記アゴニストがLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)である請求項44又は45に記載の使用。
【請求項49】
前記アゴニストにおいて、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基が、PYY若しくはPPの以下:1位、3位、4位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当する主鎖炭素、又はNPYの以下:1位、3位、4位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当する主鎖炭素の側鎖であるか若しくは側鎖の一部を形成している請求項22〜36、42及び43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記アゴニストがタイプ(c)であり、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基がPYY、NPY又はPPの以下:2位、5位、8位、9位、13位、14位、20位及び24位のいずれかに相当する主鎖炭素の側鎖であるか又は側鎖の一部を形成している請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記アゴニストが請求項12に記載のとおりであり、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基が、前記主鎖-(CH2)n-リンカー基上の側鎖であるか又は側鎖の一部を形成している請求項49に記載の使用。
【請求項52】
請求項16〜51のいずれか1項に規定されるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項53】
請求項16〜51のいずれか1項に規定されるように改変されたPYY3-36。
【請求項54】
PYY2-36(配列番号:4)
NPY2-36(配列番号:5)
[D-Ala1]PYY(配列番号:6)
[D-Ala2]PYY(配列番号:7)
[Ala28]PYY(配列番号:8)
[Ala30]PYY(配列番号:9)
[Ala31]PYY(配列番号:10)
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)
[Cys2,D-Cys27]NPY(配列番号:14)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:15)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]NPY(配列番号:17)
[Cys2,Ile3,Aoc5-24,D-Cys27,Val31]NPY(配列番号:18)
[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:19)
[Glu28,Lys32]PYY25-36(配列番号:20)
Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-PYY25-36(配列番号:21)
[D-Ala2]PYY2-36(配列番号:22)
[Lys4,Leu17,Gln34]PP(配列番号:23)
[Lys4,Leu17,Leu30,Gln34]PP(配列番号:24)
[Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:25)
[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys4,Nle17,Nle30,Gln34]PP(配列番号:26)
N-アセチル[Cys2-DCys27]PYY2-36(配列番号:27)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:28)
[Cys2,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:29)
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:30)
[Cys2,N-PEG5000-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:31)
[Cys2,Ile3,D-Cys27,Leu28,Val31]NPY(配列番号:32)
[Cys2,Ile3,Nle17,D-Cys27,Nle28,Val31]NPY(配列番号:33)
N-アセチル-desTyr1[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:34)
N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:35)
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:36)
[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27]PYY(配列番号:37)
及びこれらの保存的置換アナログからなる群より選択されるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項55】
[Cys2,D-Cys27]PYY(配列番号:13)又はその保存的置換アナログであるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項56】
[Lys4,Gln34]PP(配列番号:12)又はその保存的置換アナログであるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項57】
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PYY(配列番号:16)又はその保存的置換アナログであるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項58】
請求項16〜51のいずれか1項に規定のように改変された請求項54〜59のいずれか1項に記載のYレセプターアゴニスト。
【請求項59】
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-PYY25-36(配列番号:11)又はその保存的置換アナログであるY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項60】
その必要がある患者に有効量の請求項1〜59のいずれか1項に記載のY2選択性レセプ
ターアゴニストを投与することを含んでなるY2レセプターの活性化に応答性の症状を治療する方法。
【請求項61】
前記治療される症状がエネルギー摂取若しくはエネルギー代謝の調節又は脈管形成の誘導が指示される症状である請求項1〜50のいずれか1項に記載の使用又は請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストがGAG結合モチーフを含んでなる請求項61に記載の使用又は方法。
【請求項63】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストが血清結合モチーフを含んでなる請求項61に記載の使用又は方法。
【請求項64】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストがPEG化されている請求項61に記載の使用又は方法。
【請求項65】
前記治療される症状が末梢血管疾患、冠血管疾患、心筋梗塞、卒中、前記のいずれかが主因であるとされる疾患、創傷治癒又は組織修復である請求項61〜64のいずれか1項に記載の使用。
【請求項65】
前記治療される症状が肥満若しくは過体重、肥満若しくは過体重が主因であるとされる症状である請求項61に記載の使用又は方法。
【請求項66】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストが血清結合モチーフを含んでなる請求項65に記載の使用又は方法。
【請求項67】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストがPEG化されている請求項65に記載の使用又は方法。
【請求項68】
前記治療される症状が過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病若しくはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、又は胸部、前立腺若しくは結腸のガンである請求項65〜67のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項69】
前記アゴニストが絶食状態の患者に投与される請求項65〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記アゴニストが皮下、筋肉内、静脈内、鼻、経皮又は口腔粘膜投与を含む非経口経路を介して患者に投与される請求項60〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
1以上の請求項1〜59のいずれか1項に規定のY2選択性レセプターアゴニストを医薬的に許容される賦形剤と共に含んでなる医薬組成物。
【請求項72】
1以上の請求項1〜59のいずれか1項に規定のY2選択性レセプターアゴニストを美容上許容される賦形剤と共に含んでなる美容組成物。

【公表番号】特表2007−531713(P2007−531713A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503301(P2007−503301)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002981
【国際公開番号】WO2005/089789
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506312478)7ティーエム ファーマ エイ/エス (12)
【氏名又は名称原語表記】7TM PHARMA A/S
【住所又は居所原語表記】Fremtidsvej 3,DK−2970 Hoersholm,DENMARK
【Fターム(参考)】