説明

治療的介入のためのY4選択性レセプターアゴニスト

[Ala30]PP2-36、[Thr30]PP2-36、[Asn30]PP2-36、[Gln30]PP2-36、[Glu10]PP2-36、[Glu10,Leu17,Thr30]PP2-36、[Nle17,Nle30]PP2-36、[Glu10,Nle17,Nle30]PP2-36、それらのPP1-36等価物、並びに本明細書に記載のそれらのアナログ及び誘導体からなる群より選択されるY4レセプターアゴニストペプチドは、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターの選択性アゴニストであり、治療、例えば、肥満及び過体重、これらが主因とされる症状の治療、並びに下痢又は腸の過剰分泌の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターの選択性アゴニストとして作用するペプチド又はペプチド性化合物に関し、また、Y4レセプターの活性化に応答性の症状の治療、例えば肥満及び過体重、及びこれらが主因とされる症状の治療、並びに下痢及び腸分泌過多の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
PP折り畳みファミリーのペプチド − NPY(ニューロペプチドY)(ヒト配列−配列番号:1)、PYY(ペプチドYY)(ヒト配列−配列番号:2)、及びPP(膵ポリペプチド)(ヒト配列−配列番号:3)は、天然に分泌される、相同な36アミノ酸の、C末端がアミド化されたペプチドであり、これらは共通の三次元構造−PP折り畳み(PP-fold)(これは希水溶液中でさえも驚くほど安定であり、当該ペプチドのレセプター認識に重要である)−により特徴付けられる。
【0003】
NPYは、ヒトにおいて多くの異なるレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4、及びY5)を通じて作用する中枢神経系及び末梢神経系の両方の種々の部分で複数の作用を有する非常に広範に散在するニューロペプチドである。主要なNPYレセプターは、概してNPYニューロンの「作用」を伝えるシナプス後レセプターであるY1レセプター、及び概してシナプス前の抑制性レセプターであるY2レセプターである。これは、NPYニューロン−これはメラノコルチンレセプターアンタゴニスト/逆アゴニストAgRP(アグーチ関連ペプチド)も発現する−が弓状核の刺激性分枝における一次「感覚」ニューロンとして作用する視床下部でも当てはまる。したがって、食欲及びエネルギー消費を制御するこの「センサー核(sensor nucleus)」では、NPY/AgRPニューロンが、抑制性POMC/CARTニューロンと共に、身体のホルモン状態及び栄養状態を監視している。なぜなら、これらのニューロンは、レプチン及びインスリンのような長期レギュレーター、並びにグレリン及びPYYのような短期レギュレーターの両方の標的であるからである(下記参照)。刺激性NPY/AgRPニューロンは、例えば室傍核−これもまた視床下部である−に投射する。そこでは、シナプス後の標的レセプターはY1レセプター及びY5レセプターであると考えられている。NPYの脳室内(ICV)注射に際してげっ歯類は文字通り破裂するまで食べるので、NPYは食物摂取の増大に関して公知の最も強力な化合物である。NPY/AgRPニューロンからのAgRPは、主としてメラノコルチンレセプタータイプ4(MC-4)に対してアンタゴニストとして作用し、このレセプターに対するPOMC由来ペプチド−主にaMSH−の作用を遮断する。MC4レセプターシグナルは食物摂取のインヒビターとして作用するので、AgRPの作用は、−ちょうどNPY作用のように−食物摂取の刺激性シグナル(すなわち、抑制の抑制)である。NPY/AGRPニューロン上に、抑制性−シナプス前−Y2レセプターが見出されている。このレセプターは、局所的に放出されるNPY及び腸ホルモンPYY−別のPP折り畳みペプチド−の両方の標的である。
【0004】
PYYは、食事の間に−食事のカロリー含量に比例して−遠位小腸及び結腸の腸内分泌細胞から放出され、末梢ではGI管機能に対して作用し、中枢では満腹シグナルとして作用する。末梢では、PYYは、例えば上部GI管の自動運動性、胃酸及び膵外分泌性分泌に対してインヒビター−「回腸遮断(illeal break)」−として機能すると考えられる。中枢では、PYYは、主として、弓状核(血液からアクセスされると考えられている)のNPY/AgRPニューロン上のシナプス前抑制性Y2レセプターに対して作用すると考えられる(Batterhamら、2002 Nature 418: 650-4)。このペプチドはPYY1-36として放出されるが、或る割合−約50%−は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(3つの全てのPP折り畳みペプチド−PP、PYY、及びNPY−と同様にPro又はAlaが2位に見出されるペプチドのN末端からジペプチドを取り除く酵素)による分解産物であるPYY3-36として循環する(Eberleinら、1989 Peptides 10: 797-803)。したがって、循環中のPYYは、PYY1-36(これはY1レセプター及びY2レセプターの両方に対して作用し、Y4及びY5にも種々の親和性で作用する)とPYY3-36(これはY2レセプターに関する親和性より低い親和性をY1レセプター、Y4レセプター及びY5レセプターに対して有する)の混合物である。
【0005】
PPは、特に食物摂取により誘発される迷走神経のコリン作動性刺激によってほぼ独占的に支配される膵島の内分泌細胞から放出されるホルモンである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。PPは胃腸管に対して種々の効果を有するが、これらのいずれも単離した細胞及び器官では観察されず、全てが無傷の迷走神経供給に依存しているようである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。このことと一致して、PPレセプター(Y4レセプターと呼ばれる)は脳幹に位置し、迷走運動ニューロン−この活性化はPPの末梢効果を生じる−及び孤束核(NTS)−この活性化は満腹ホルモンとしてのPPの効果を生じる−で強力に発現する(Whitecombら、1990 Am.J.Physiol. 259: G687-91;Larsen & Kristensen 1997 Brain Res.Mol.Brain Res 48: 1-6)。血液脳関門は末梢からの種々のホルモンが感知されるこの領域で「漏れやすい(leaky)」ので、血液からのPPは脳のこの領域に自由に出入りできることに留意すべきである。最近、食物摂取に対するPPの効果の一部は、弓状核のニューロン−特にPOMC/CARTニューロン−に対する作用を通じて媒介されていると主張されている(Batterhamら、2004 Abstract 3.3 International NPY Symposium in Coimbra, Portugal)。PPはY4レセプターを通じて作用し、このレセプターに対してナノモルの親和性を有するPYY及びNPYとは対照的にPPはナノモル未満の親和性を有する(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。PPはまた、Y5レセプターに対して相当の親和性を有するが、このことは、このレセプターが特に発現しているCNSの細胞へのアクセスを欠いているため、及びPPに関する比較的低い親和性のために、循環PPに関しては生理学的に重要である可能性は低い。
【0006】
PP折り畳みペプチドレセプター
ヒトには、4つの十分に確立されたタイプのPP折り畳みペプチドレセプター:Y1、Y2、Y4、及びY5が存在し、これらは全て類似する親和性でNPY1-36及びPYY1-36を認識する。かつては、PYYよりNPYを嗜好するとされたY3レセプタータイプが示唆されたが、今日ではこれは真のレセプターサブタイプとして受け入れられていない(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。Y6レセプターサブタイプがクローニングされており、これは、ヒトで、TM-VII並びにレセプターテイルを欠く切断形態で発現され、その結果少なくともそのままでは機能的レセプター分子を形成しないようである。
【0007】
Y1レセプター − 親和性研究により、Y1はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。
Y2レセプター − 親和性研究により、Y2はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。
Y4レセプター − 親和性研究により、Y4はPPに血漿中で見出される濃度に相当するナノモル未満の親和性で結合する一方、NPY及びPYYはよりずっと低い親和性で認識されることが示唆されている。
【0008】
Y5レセプター − 親和性研究により、Y5はNPY及びPYYに等しく親密に結合し、PPにもより低い(が、このホルモンの通常の循環レベルを下回る)親和性で結合する。PYY3-36もまた、Y5レセプターによって十分に認識されるが、このレセプターは、このペプチドが末梢に投与されたときに容易に該レセプターにアクセスできないCNSにおいてかなりの程度で発現される。
【0009】
PP折り畳みペプチド及びこれらのアナログは、動物モデル及びヒトでこれらペプチドの或る種のものの証明された効果、並びに、肥満のヒトがPP及びPYYの低い基礎レベル及びこれらペプチドのより低い食事応答を有している事実に基づいて、肥満及び付随する疾患(例えばプラーダー‐ヴィリ症候群を含む)の治療における使用について示唆されている(Holst JJら、1983 Int.J.Obes. 7: 529-38;Batterhamら、1990 Nature)。1970年代半ばから、PPがげっ歯類において食物摂取に影響し得ることは知られていた。1993年に、PPの注入は、プラーダー‐ヴィリ症候群を有する中程度に肥満の患者において、食物摂取を減少させることが報告された(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)。最近、PPのこの効果は健常なヒト対象におけるPPの注入によって確証されており、この患者では、24時間にわたって食欲の長期持続性抑制及び減少した食物摂取が観察された(Batterhamら、2003, Clin.Endocrinol.Metab. 88: 3989-92)。
【0010】
したがって、Y4レセプター調整に応答性の症状、例えば肥満及び腸分泌過多の治療のためには、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体(アゴニストとして作用し且つ標的として意図されるY4レセプターに特異的であり且つレセプター結合に重要なPP折り畳み構造の要素が安定的に保存される)を使用することが望ましい。特に、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターに対して選択性である薬剤を使用することが極めて望ましい。このことは特に重要である。なぜならば、Y1レセプターの活性化は望まない心血管及び腎の副作用、例えば血管収縮及びナトリウム排泄増加を引き起こす可能性が大きいと予測されるからである。更に、Y2レセプターの活性化もまた、副作用を引き起こし得る。真に効率的な脈管形成性Yレセプタープロフィールは何であるかは依然として不明であるが、Y2アゴニスト、例えばNPY3-36は、見かけ上、例えば虚血後肢モデルにおいて、すなわち、例えば非手術ペレット(inoperated pellet)から放出されるような定常曝露で高用量で投与したときに、血行再建を誘導することができる(Zukowska Zら、Trends Cardiovasc Med. 2003, 13: 86-92)。NPYに対する脈管形成応答はY2レセプターノックアウト動物で減少する;しかし、この広範囲YレセプターアゴニストNPYに対する応答は、実際には、消失せず、Y2レセプター及びY5レセプターは共に、虚血血管でアップレギュレートされる(Leeら、J.Clin.Invest. 2003, 111: 1853-62)。いずれにせよ、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体は、Y2レセプターの活性化を通じて、例えば糖尿病患者で網膜症を悪化するというような副作用を引き起こし得、或るガンの増殖に関連する新生血管形成を助ける可能性があり得る。したがって、効果的でY1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターに選択性であるアゴニストの使用は、Y4レセプター活性化を受け易い疾患及び症状で特に有用である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人の同時継続中の国際出願第PCT/EP2005/002983号(この内容は参照により本明細書に組み込む)は、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターに対して選択性であるYレセプターアゴニストの1つのクラス及び当該クラスの幾つかの具体的メンバーに関する。
本発明は、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターに対して高度に選択性である具体的ペプチドに関する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明によれば、以下:
(i)[Ala30]PP2-36 (配列番号:4)及び[Ala30]PP (配列番号:5)
(ii)[Thr30]PP2-36 (配列番号:6)及び[Thr30]PP (配列番号:7)
(iii)[Asn30]PP2-36 (配列番号:8)及び[Asn30]PP (配列番号:9)
(iv)[Gln30]PP2-36 (配列番号:10)及び[Gln30]PP (配列番号:11)
(v)[Glu10]PP2-36 (配列番号:12)及び[Glu10]PP (配列番号:13)
(vi)[Glu10,Leu17,Thr30]PP2-36 (配列番号:14)及び[Glu10,Leu17,Thr30]PP (配列番号:15)
(vii)[Nle17,Nle30]PP2-36 (配列番号:16) [Nle17,Nle30]PP (配列番号:17)
(viii)[Glu10,Nle17,Nle30]PP2-36 (配列番号:18)及び[Glu10,Nle17,Nle30]PP (配列番号:19)
並びに、これらの
(a)(i)〜(iv)の場合には30位以外、(v)の場合には10位以外、(vii)の場合には17位及び30位以外、(vi)及び(viii)の場合には10位、17位及び30位以外の1又はそれより多い位置で保存的に置換され;及び/又は
(b)N末端アシル化、PEG化、又は血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフに共有的にカップリングされた(該共有的カップリングは、本ペプチドの残基に対して、又は本ペプチド中で置換された、該共有結合のための官能基を提供する残基に対してである)、
アナログ
からなる群より選択されるペプチドが提供される。
【0013】
本明細書中で使用する表記 PP は、PP配列(配列番号:3)をいう。よって、ペプチド[Ala30]PP (配列番号:5)は、30位でロイシンに代えてアラニンに置換されているヒトPP配列(配列番号:3)を有する。
本明細書中で使用する表記 PP2-36 は、最初のN末端アミノ酸(Ala)が欠失したPP配列(配列番号:3)をいう。しかし、PP2-36の位置の番号付けでは、完全長PP (配列番号:3)を参照する。よって、ペプチド[Ala30]PP2-36 (配列番号:4)は、Ala1を欠失し、配列番号:3の30位でロイシンに代えてアラニンに置換されているヒトPP配列(配列番号:3)を有する。
【0014】
本発明の8組のペプチド及びそれらのアナログは、本明細書に記載の効力アッセイにより測定したとき、Y1レセプター及びY2レセプターよりY4レセプターに対して高度に選択性であるYレセプターアゴニストである。本発明のペプチドは、短縮型PP2-36背景(background)における規定の置換が、完全長PP背景における同一置換と本質的に同じ、Y1及びY2よりY4に対する選択性を生じるので、8組に分類される。
【0015】
PP配列では、Asp10は、溶液中で環化して環状イミデートを特に形成し易く、この環は開環して、同時に立体化学的な乱雑さを伴うα-及びβ-アスパルテートの混合物を形成する。本発明のペプチドの組(v)、(vi)及び(viii)では、この残基はGluで置換している。この置換は、当該ペプチド内での特別な静電ポテンシャル分布を保存し、そのことにより該ペプチドの全体的な安定性及び溶解性を保存する。10位のGluは、同様な環化/開環を受けてγ-Gluを形成することはないので、Asp10対応物と比較して、医薬品としての該ペプチドのバルク安定性及び溶液安定性の向上という有益な効果を有する。溶液安定性の向上により、合成収率が増大し、近縁のβ-Asp不純物から所望する生成物の、面倒で、高価な、無用物を生じる精製の必要が減少する。
【0016】
通常のPP配列中のMet17残基及びMet30残基は、溶液での貯蔵に際して酸化を受けるおそれがある。上記の全てのペプチドにおいて、Met30は、この変化の傾向にない残基で置換されている。本発明のペプチドの組(vii)及び(viii)において、Met17は、この位置での酸化を防止し脂肪族側鎖構造を保存するNleで置換されている。なぜなら、NleはMetの生物学的同配体(bio-isostere)であるからである。
【0017】
通常のPP配列におけるAla1-Pro2モチーフの存在により、当該ペプチドは、β-ケトピペラジン分解経路へ向かう本来の不安定性を付与される。この経路では、末端アミノ官能基は、ターン誘導性Proにより安定化される6つの状態からなる遷移状態(6 membered transition state)を介して「口を閉じ戻し(bite back)」、プロリンカルボキサミド官能基の部位で分子内アミノ基転移を受け、β-ケトピペラジン及びPP3-36の形成に至る。この経路は、Ala1-Pro2配列を含有するペプチドの、凍結乾燥物(lyophilate)の貯蔵に際して形成される分解産物及び溶液中での有意な分解を導く。よって、本発明の好ましい実施形態では、これは、PP配列から、すなわち上記のPP2-36の全てのアナログからAla1を除去することにより防止される。このことは、溶液中及び凍結乾燥物としての両方でこれらペプチドの安定性を向上させ、したがって医薬としての性質を向上させるという有益な効果を有する。
【0018】
上記に示した種々の安定性向上改変は、単独で又は一緒になって、これらペプチドの医薬的性質における有意な利点を示す。これらペプチドの凍結乾燥物及び溶液の、合成の間の向上した安定性(より高い収率及びより少ない精製が導かれる)及び延長した保管期間は、原材料、溶媒、設備の使用を減少させ、したがって不要製品の製造をも減少させることにより、本発明のペプチドの製造の環境負荷を有意に軽減する(そして、再生産の必要性を軽減する)。
【0019】
本明細書中で、アミノ酸への言及は、一般名又は略称により、例えばバリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、システイン(Cys)、及びプロリン(Pro)によりなされる。立体異性体型を特定せずに一般名又は略称で言及する場合、問題のアミノ酸は、L体として理解されるべきである。
【0020】
本明細書中で使用される用語「保存的置換」は、1又はそれより多いアミノ酸が生物学的に類似する別の残基により置換されることを指称する。例としては、類似する特徴を有するアミノ酸残基同士(例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸)の置換が挙げられる。本発明における使用に適切な保存的アミノ酸置換の限定的でない例としては、下記の表に記載のもの、及び元の残基に類似する特徴を有する非天然αアミノ酸による同類置換(analogous substitution)が挙げられる。例えば、本発明の好ましい実施形態において、Met残基は、Metの生物学的同配体であるが−Metとは対照的に−容易には酸化されないノルロイシン(Nle)で置換される。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質では通常は見出されない残基での保存的置換の別の例は、Arg又はLysの、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又はその他の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関する更なる情報については、例えばBowieら、Science 247, 1306-1310, 1990を参照。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の保存的置換アナログは、例えば10までの保存的置換を有していてもよく、別の実施形態では5までの保存的置換を、なお別の実施形態では3又はそれより少ない保存的置換を有していてもよい。
【0023】
N-アシル化アナログ
本発明のPP2-36の種々のアナログ中のように、PP配列からAla1を除去することにより、新たなN末端プロリン残基に起因して、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)及びその他のアミノペプチダーゼ(特にアミノペプチダーゼP)に対する感受性が消失する。加えて、本発明に係る8組全てのY4選択性アゴニストは、その他のアミノペプチダーゼに対する耐性を付与するためにN末端でアシル化されてもよい。例えば、アシル化は、2〜24炭素原子を有する炭素鎖を用いるものであってもよく、N末端アセチル化は特定の例である。
【0024】
共有結合性機能モチーフを有するアナログ
薬物動態学、薬力学、及び代謝特性の改善を目的として、種々の改変が本発明の8組のアゴニストになされ得る。このような改変としては、アゴニストを、それ自体はペプチド又はタンパク質医薬分野で公知の機能集団(functional groupings)(モチーフとしても知られる)に連結することが含まれ得る。本発明に係るアゴニストの場合に特に有益な3つの特定の改変は、血清アルブミン結合モチーフ又はグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフとの連結、又はPEG化である。
【0025】
血清アルブミン結合モチーフ
血清アルブミン結合モチーフは、代表的には、投与の際に体内で延長された滞留を可能にするため又は他の理由で組み込まれる親油性基であり、これは、種々の公知の方法で、ペプチド性又はタンパク質性の分子に、例えばi)共有結合性連結を介して、例えば側鎖アミノ酸残基上に存在する官能基に、ii)当該ペプチド又は適切な誘導体化ペプチド中に挿入された官能基を介して、iii)当該ペプチドの一体化部分(integrated part)として、カップリングされ得る。例えば、WO 96/29344 (Novo Nordisk A/S)及びP. Kurtzhalsら、1995 Biochemical J. 312: 725-31は、本発明に係るアゴニストの場合に用いることができる多くの適切な親油性改変を記載している。
【0026】
適切な親油性基には、任意に置換されていてもよい、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基が挙げられる。このような基は、例えばアゴニストの主鎖中のアミノ酸残基の側鎖への又はPP折り畳み模擬体アゴニストの主鎖中の非ペプチド性リンカー基の主鎖炭素若しくは主鎖炭素からの分枝へのエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合により、アゴニストの主鎖に対する側鎖を形成していてもよいし、そのような側鎖の一部を形成していてもよい。親油性基の付着のための化学ストラテジーは、重要でないが、親油性基を含む以下の側鎖が、アゴニストの主鎖炭素又はそれからの適切な分枝に連結され得る例である:
【0027】
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH- (式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH- (式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH- (式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO- (式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3 (式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格。
【0028】
1つの化学合成ストラテジーにおいて、親油性基含有側鎖は、アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基、例えばテトラデカノイル基である。
【0029】
記載のように、改善された血清結合性特徴を提供するために使用されるアゴニストの改変は、一般に(特には上記に列挙した具体的アゴニストの場合に)適用され得るストラテジーである。したがって、適切な改変アゴニストとしては、[N-(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Ala30]PP2-36及び[Glu10,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Leu17,Thr30]PP2-36並びにこれらの保存的置換アナログが挙げられる。
【0030】
GAG結合
上記の親油性血清結合モチーフの場合と同様に、本発明に係るアゴニストは、アゴニストの主鎖に対する側鎖として又はそのような側鎖の一部としてGAG結合モチーフを組み込むことによって改変されていてもよい。この方法での組込みのための公知のGAG結合モチーフとしては、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)が挙げられる。複数、例えば3つのこのような配列が、コンカテマー(直鎖)又はデンドリマー(分枝鎖)の様式で組み込まれていてもよい。具体的コンカテマーGAGモチーフとしては、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala及びAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaが挙げられる(この両方が、例えばコンカテマーGAG結合モチーフのC末端とアゴニストの主鎖アミノ酸の側鎖中のアミノ基、例えばアゴニスト[Lys13,Ala30]PP2-36又は[Glu10,Lys13,Leu17,Thr30]PP2-36のεアミノ基との間に形成されるアミド結合を通じてカップリングされ得る)。
【0031】
主鎖残基に対する側鎖として又はそのような側鎖の一部としてアゴニストに付着する代わりに、GAGモチーフは、アゴニストのC末端又は(好ましくは)N末端に、直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結していてもよい。ここでまた、GAG結合モチーフは、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、例えば配列[XBBBXXBX]n (式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなってもよい。このようなコンカテマー反復は、GAGに結合すると、αヘリックスを形成する傾向にあり、その結果、C末端ヘキサペプチド/最後のαヘリックスターンと融合すると、当該ターンを安定化することができ、そのことによりY4レセプター認識に最適な方法でこの組合せ構造を提示することができる。このタイプのアゴニストの具体例は、[XBBBXXBX-XBBBXXBX]PP又は[XBBBXXBX-XBBBXXBX-XBBBXXBX]PP (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、特には、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-[Ala30]PP2-36である。
【0032】
本発明に係るY4選択性アゴニストは、とりわけ、延長した曝露が望ましい適応症において有用である。このような適応症のためには、具体的には、アゴニストは、好ましくは、上記のようなグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフを含んでなる。このようなモチーフにより、確実に、アゴニストは細胞外マトリクス中のGAGに結合し、そのことにより、その組織中のY4レセプターの延長された局所的曝露を確実にする。成長因子、ケモカインなどがパッチ状の塩基性アミノ酸(これがGAGの酸性糖鎖と相互作用する)を介してGAGに結合する。成長因子上のこれらの正に荷電したエピトープは、通常、塩基性残基の側鎖から構成されている。塩基性残基の側鎖は、必ずしも配列中で連続して位置していないが、二次構造要素(例えばαヘリックス又はターン)により、又は当該タンパク質の三次元構造全体により近接して提示されることが多い。上記のような或る種のGAG結合性直線配列、例えばXBBXBX及びXBBBXXBX (式中、Bは塩基性残基を表す)が記載されている(Hilemanら、Bioassays 1998, 20: 156-67)。これらセグメントは、GAGへの結合に際してαヘリックスを形成することが円偏光二色性により示されている。このような配列が、例えばコンカテマー又はデンドリマーの構築物(ここでは、例えば3つのこのような配列、例えば各々ARRRAARA配列が提示されている)で配置されている場合、得られる24マーペプチド、例えば、ARRRAARA-ARRRAARA-ARRRAARAにより、高分子量ポリリジンに類似する細胞外マトリクス中での保持が確実にされる。すなわち、これは、4時間の灌流期間の間に洗い流されない(Sakharovら、FEBS Lett 2003, 27: 6-10)。
【0033】
よって、成長因子及びケモカインは、当然、2つのタイプの結合モチーフを有して構築される:1つは、シグナル伝達の達成を介するレセプターの結合モチーフであり、1つは、付着及び長期持続局所活性の達成を介するGAGの結合モチーフである。PYY及びNPYのようなペプチドはニューロペプチド及びホルモンであり、これらは組織からかなり迅速に洗い流され、長期持続性局所活性に最適化されていない。GAG結合モチーフを本発明に従うY4選択性アゴニストに付着させることにより、成長因子及びケモカインに類似する二機能性分子が、PP折り畳みペプチド部分のレセプター結合エピトープ及びGAG結合モチーフの両方を有して構築される。このようなアゴニストの例は、[N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,Ala30]PP2-36である。
【0034】
PEG化
PEG化において、ポリアルキレンオキシド基は、投与後の身体内での実効半減期を改善するために、ペプチド性又はタンパク質性の薬物に共有結合的にカップリングされる。この用語は、このようなプロセスで使用される好ましいポリアルキレンオキシドに由来する。すなわち、この用語は、エチレングリコール−ポリエチレングリコール、又は「PEG」に由来する。
【0035】
適切なPEG基は、任意の好都合な化学により、アゴニストに、例えば当該アゴニストの主鎖アミノ酸残基を介して、付着されてもよい。例えば、例えばPEGのような分子に関しては、頻繁に使用される付着基は、リジンのε-アミノ基又はN末端アミノ基である。その他の付着基としては、遊離カルボン酸基(例えば、C末端アミノ酸残基のもの又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸残基のもの)、適切に活性化されたカルボニル基、メルカプト基(例えば、システイン残基のもの)、芳香族酸残基(例えば、Phe、Tyr、Trp)、ヒドロキシ基(例えば、Ser、Thr又はOH-Lysのもの)、グアニジン(例えばArg)、イミダゾール(例えばHis)、及び酸化した炭水化物部分が挙げられる。
【0036】
アゴニストは、PEG化されている場合、通常、1〜5のポリエチレングリコール(PEG)分子、例えば、1、2又は3のPEG分子を含んでなる。各PEG分子は、約5kDa(キロダルトン)〜約100kDaの分子量、例えば約10kDa〜約40kDaの分子量、例えば約12kDaの分子量、好ましくは上限約20kDaの分子量を有し得る。本発明の特定の実施形態では、PEG 40kDa(別名としてPEG40000とも呼ばれる)がPEG化剤である。
【0037】
適切なPEG分子は、Shearwater Polymers, Inc.及びEnzon, Incから入手可能であり、SS-PEG、NPC-PEG、アルデヒド-PEG、mPEG-SPA、mPEG-SCM、mPEG-BTC、SC-PEG、トレシル化mPEG(米国特許第5,880,255号)、又はオキシカルボニル-オキシ-N-ジカルボキシイミド-PEG(米国特許第5,122,614号)から選択してもよい。
本発明のPEG化アゴニストの特定の例は、[N-PEG5000-Lys13,Ala30]PP2-36及び[Glu10,N-PEG5000-Lys13,Leu17,Thr30]PP2-36及び[N-PEG20000Lys13]PP2-36、[N-PEG2000Lys13]PP2-36及び[N-PEG40000Lys13]PP2-36である。
【0038】
血清アルブミン、GAG、及びPEG
アゴニストに対する改変が血清結合、GAG結合、又はPEG化を介する向上した安定性を促進するための基の付着である場合、血清アルブミン結合モチーフ若しくはGAG結合モチーフ又はPEG基は、以下の位置:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位及び32位のいずれかに相当するアゴニストの主鎖炭素の側鎖であってもよいし、又はそのような側鎖の一部を形成していてもよい(しかし、ペプチド[Glu10]PP2-36及び[Glu10,Leu17,Thr30]PP2-36の場合には、10位は利用可能でない)。
【0039】
より大きな生体分子との接合
Y4選択性レセプターアゴニストは、例えばアルブミン又は有益な薬力学的特性若しくは他の型の特性(例えば、減少した腎排泄のような特性)を提供する別のタンパク質若しくはキャリア分子と連結された融合タンパク質として使用し得る。当該分野で公知の共有結合性付着に使用できる多数の化学的改変及びリンカーが存在する。同様に、使用可能な多数のタンパク質又はキャリアが存在する。特に、Y4選択性ペプチドアゴニストのアルブミンへの共有結合性付着が好ましく、それは、種々のモチーフを伴う改変に関して本明細書中の他で指摘したPP折り畳み構造中の位置の1つにおいてである。このような融合タンパク質は、種々の半合成技法(ペプチドを本明細書中に記載のようなペプチド合成により作り、生体分子を組換え技術により作ってもよい)により製造することができる。融合タンパク質はまた、全体が、例えばGly-Lys-Arg配列により伸長された前駆体分子(これは、真核細胞で分泌性タンパク質として発現すると生合成酵素により切断され、GlyはC末端Y4レセプター認識配列のC末端Tyr残基上のカルボキシアミドに転換される)として発現される組換え分子として作られてもよい。
【0040】
ヘリックス誘導性ペプチド
本発明に係るアゴニストのN末端のアシル化は、アミノペプチダーゼの作用に対してアゴニストを安定化する手段として言及されている。別の安定化改変として、4〜20アミノ酸残基の安定化ペプチド配列をN末端及び/又はC末端、好ましくはN末端で共有結合性に付着することが挙げられる。このようなペプチド中のアミノ酸残基は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Metなどからなる群より選択される。興味深い実施形態において、N末端ペプチド付着は4、5又は6のLys残基を含んでなり、例えばLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-[Ala30]PP2-36である。これらは、PP折り畳みペプチドアゴニストのN末端で連結することができる。このような安定化ペプチド伸長の一般的な記載は、WO 99/46283 (Zealand Pharmaceuticals)(参照により本明細書中に組み込まれる)に与えられる。
【0041】
本発明に係るレセプターアゴニストは、周知の方法、例えば合成法、半合成法及び/又は組換え法のような方法により製造されてもよい。このような方法としては、標準的なペプチド製造技法、例えば、溶液合成、及び固相合成のようなペプチド製造技法が挙げられる。当該分野の教科書及び一般的知識に基づいて、当業者は、本アゴニスト及びその誘導体又は改変体を取得するための手順を理解する。
【0042】
臨床適応症
本発明に係るY4特異的アゴニストは、Y4レセプターの活性化に応答性の症状の治療に価値がある。このような症状としては、エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節が指示される症状が挙げられる。そのような使用のためには、アゴニストは、ペプチダーゼに対する安定性、血清タンパク質結合特性を付与する改変又はモチーフ、血清及び/又は組織での半減期を延長するためのPEG化又はGAG結合モチーフを含んでなるアゴニストであり得る。
【0043】
エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節が指示される疾患又は症状としては、肥満及び過体重、並びに肥満及び過体重が主因とされる症状、例えば過食症、神経性大食症、X症候群(Syndrome X)(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、或いは胸部、前立腺又は結腸のガンが挙げられる。
【0044】
Y4選択性アゴニストはまた、下痢又は腸瘻(intestinal stomia)からの過剰分泌の治療に、及び悪心又は嘔吐の治療に、又は制吐剤若しくは鎮吐剤として、又は悪心及び/又は嘔吐を引き起こし易い薬物との同時治療に価値を有する。
【0045】
1.肥満及び過体重
PPが食物摂取の制御に関与し得ることは1970年代に既に示唆されている。最近、PPが、事実、末梢に投与されたとき強力で効率的な摂食抑制性ペプチドであることを非常に明らかに示す多くのげっ歯類研究の証拠が蓄積されている(Asakawaら、Peptides 1999, 20; 1445-8;Katsuuraら、Peptides 2002, 23: 323-9;Asakawaら、Gastroenterology 2003, 124: 1325-36)。PPは、Y4ノックアウト動物において食欲、食物摂取などに対して効果を有しないので、PPがY4レセプターを通じて作用して食欲及び食物摂取を減少させる可能性が非常に高い(Batterhamら、2004 Coimbra(ポルトガル)におけるInternational NPY symposiumの要旨集S3.3)。PPはまた、食餌により誘導された肥満動物において、食物摂取に対する効果を有している。PPレセプターは、特には脳幹において、最後野中及び迷走運動ニューロンで見出されている。ここは、血液脳関門が効率的でない領域であり、PPのような循環しているホルモンがニューロンにアクセスすることが可能である。よって、脳幹のNTSのY4レセプターが主要な標的であり、これを通じてPPが食欲及び食物摂取を抑制するように作用する可能性が非常に高い。しかし、最近の証拠は、PPが、弓状核のYレセプターを通じておそらくPOMCニューロンに対しても、多分NPY/AgRPニューロンに対しても作用し得る可能性も指摘している(Batterhamら、Coimbra NPY meeting abstract S3.3)。低レベルのPPが肥満の対象で、特にプラーダー‐ヴィリ症候群で見出されている(Zipfら、J.C.E.M.1981, 52: 1264-6;Holstら、1983, Int.J.Obes. 7: 529-38;Glaserら、Horm.Metab. 1988, 20: 288-92)。高PPレベルは神経性食欲不振の患者で見出される。重要なことには、ヒトにおけるPPの注入は、24時間までの間、食欲及び食物摂取を減少させる(Batterhamら、JCEM 2003, 88: 3989-92)。よって、食物摂取に対するPPの効果は、循環中のPPレベルが正常レベルに回復した後に観察された。食欲などに対するこのような長期持続性効果は、他の化合物から、例えばAgRPのICV注射からも周知である。重要なことに、PPの注入は、中程度に肥満したプラーダー‐ヴィリ症候群の患者において食物摂取を減少させることが示されている(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)。
【0046】
故に、本発明に係るY4選択性アゴニストは、エネルギー摂取を調節するために、対象(例えばヒトを含む哺乳動物)における使用に適切である。したがって、本発明は、エネルギー摂取、食物摂取、食欲、及びエネルギー消費を変化させるための方法に関する。対象に美容上又は治療上の有効量の本アゴニストを投与することによりエネルギー摂取又は食物摂取を減少させる方法が本明細書中に開示される。1つの実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物の量、総重量若しくは総体積のいずれか、又はカロリー含量の減少を生じる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物成分の摂取の減少、例えば脂質、炭水化物、コレステロール、又はタンパク質の摂食の減少を生じてもよい。本明細書中に開示されるいずれの方法においても、本明細書中で詳細に議論されている好ましい化合物が投与され得る。更なる実施形態では、治療有効量の本アゴニストを投与することにより食欲を減退させる方法が本明細書に開示される。食欲は当業者に公知の任意の手段により測定することが可能である。
【0047】
例えば、減少した食欲は、精神学的評価により評価することができる。このような実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、知覚される空腹、満腹、及び/又は充足の変化を生じる。空腹は、当業者に公知の任意の手段により評価することができる。1つの実施形態では、空腹は、精神学的アッセイを用いて、例えば質問表を使用する空腹感及び感覚認知の評価のようなアッセイにより評価される。
【0048】
更なる実施形態では、上部GI管の運動性を減少させるため、例えば胃排出を減少させるための方法が本明細書に開示される。PP(原型のY4アゴニスト)は胃排出を減少させることが知られている。この方法は、治療有効量の本発明のY4選択性アゴニストを対象に投与し、そのことによりGI管の運動性を減少させることを含む。胃排出を減少させる化合物は、対象がより充足感又は満足感を感じるので、食物摂取の減少にも有益な効果を有することは周知のことである。
【0049】
更なる実施形態では、対象においてエネルギー代謝を変化させる方法が本明細書に開示される。この方法は、治療有効量の本発明のアゴニストを対象に投与し、そのことによりエネルギー消費を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理学的プロセスにおいて燃焼する。身体は、直接、そのプロセスの効率を変調させることにより、又は起こっているプロセスの数及び性質を変えることにより、エネルギー消費の速度(rate)を変更することができる。例えば、消化の間、身体はエネルギーを消費して食物を腸を通って移動させ、食物を消化し、細胞内では、より多くの又はより少ない熱を生み出すために細胞代謝の効率を変更することができる。更なる実施形態では、食物摂取を変更し、協調的に及び相互的にエネルギー消費を変更する本出願に記載される弓状回路の任意及び全ての操作の方法が本明細書に開示される。エネルギー消費は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率、及びカロリー利用の結果である。よって、この実施形態では、末梢投与は、エネルギー消費の増大、及びカロリー利用効率の減少を生じる。1つの実施形態では、治療有効量の本発明に従うレセプターアゴニストが対象に投与され、そのことによりエネルギー消費を増大させる。
【0050】
治療的使用及び美容的使用の両方に関連する幾つかの実施形態では、体重制御、及び肥満の処置、減少又は予防のために、詳細には以下:体重増加を予防し及び減少させること;体重損失を誘導し及び促進すること;及びボディ・マス・インデックスにより測定される肥満を減少させることの任意の1つ又はそれ以上のために、本発明のY4選択性アゴニストを使用することが可能である。上記のように、本発明はまた、食欲、満腹及び空腹の任意の1つ又はそれ以上を制御するため、詳細には以下:食欲を減退させ、抑制し、及び阻害すること;満腹及び満腹の感覚を誘導し、増大させ、増強し、及び促進すること;並びに空腹及び空腹の感覚を減少させ、阻害し、及び抑制することの任意の1つ又はそれ以上のための、本発明のY4選択性アゴニストの使用に関する。本開示は更に、所望する体重、所望するボディ・マス・インデックス、所望する外観及び良好な健康状態の任意の1つ又はそれ以上を維持することにおける本発明のY4選択性アゴニストの使用に関する。
【0051】
更なる又は代替の観点では、本発明は、減少したエネルギー代謝、摂食障害、食欲障害、過体重、肥満、過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、又はそれらに関連する合併症若しくは危険(糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、卒中、心筋梗塞、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、胸部、前立腺及び結腸のガンを含む)の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、対象(例えばヒトを含む哺乳動物)に、有効用量の1又はそれ以上の本明細書中に記載のようなY4選択性アゴニストを投与することを含んでなる。
【0052】
2.腸分泌過多
PPは、小腸及び大腸の両方に対して強力な抗分泌性効果を有することが知られており、これは、上皮細胞に位置するY4レセプターにより媒介されているようである(Cox & Tough 2001 Br.J.Pharmacol. 135: 1505-12)。PYY−Y1レセプター及びY2レセプターを活性化する別のPP折り畳みペプチド−の末梢投与が、回腸フィステル形成術を受けたヒト対象において、血管作用性腸ペプチドにより誘導される腸分泌の長期持続性減少を引き起こし得ることがインビボで示されている(Playfordら、1990 Lancet 335: 1555-57)。PYYは下痢に対する治療薬であり得ると結論付けられた。しかし、例えばY1及びY2組合せアゴニスト、NPY及びPYYペプチドのナトリウム排泄増加効果及び高血圧効果はこれを予防した。このような副作用は、本発明のY4選択性レセプターアゴニストには該当しない。よって、本発明のY4選択性アゴニストは、分泌過多により直接引き起こされるか否かにかかわらず、種々の形態の下痢を含むGI管の分泌過多に対する治療又は保護に特に有用である。なぜならば、腸分泌の抑制は、下痢の原因を除去するか又はその症状を除去するかのいずれかするからである。1つの特に興味深い適応症は、回腸フィステル形成術をうけた患者(この患者はしばしば大量の体液を失いつつある)で観察される分泌過多である。本発明のY4選択性アゴニストは、小腸の回腸フィステル形成術に関連する過剰分泌に対する治療又は保護に特に有用である。
【0053】
3.嘔吐及び悪心
食欲を制御するための薬剤として示唆されている(例えばPYY及びCB1アンタゴニストのような)多くのペプチド及び他のタイプの化合物は、催吐性であることが知られている。例えば、事実、PYYは、イヌに嘔吐を引き起こす腸抽出物における生物学的に活性な物体として1989年に「再」発見された(Harding及びMcDonald、1989 Peptides 10: 21-24)。PYYは同定された最も強力な循環性の催吐性ペプチドであり、この効果は漏れ易い血液脳関門を有すると知られている最後野により媒介されていると結論付けられた。PYY3-36がヒト対象の末梢に投与されたとき嘔吐を引き起こし得ることもまた報告された(2004年6月29日のNastech報道発表)。興味深いことに、類似用量で与えられたPPは、これらのイヌで嘔吐を引き起こさなかった(Harding及びMcDonald 1989)ことが注目された。よって、脳幹の最後野にも位置するY4レセプターを通じて作用するPPは、嘔吐を引き起こさない。重要なことには、大用量のY2-Y4組合せアゴニストペプチド−これはY2レセプターに関してPYYと類似するインビトロ効力を有する−は、動物、例えばカニクイザル(cyno monkey)に、該動物の嘔吐もGI管副作用の証拠も観察されずに12〜13.000nMの非常に高い血漿レベルに達するように投与することが可能である。この嘔吐の欠如は驚くべきことである。なぜならば、Y2レセプターに対する類似の効力を有するPYY3-36は、確かに、よりずっと低い用量で投与される場合、ヒト及びおそらく動物において嘔吐を引き起こすからである。よって、驚くべきことに、Y2-Y4組合せ選択性アゴニストは、Y2選択性アゴニストのPYY3-36化合物が引き起こすのと同じ程度には、嘔吐を引き起こさない。明らかなことは、Y4レセプター活性化−おそらくは最後野における−は、Y2活性化の催吐効果(この場合、Y2レセプターに対して作用する当該化合物によって引き起こされる効果)を防ぐ。よって、本発明のY4選択性化合物は、嘔吐及び悪心に対する治療又は保護に特に有用である。これは、別の食欲抑制剤、例えばY2アゴニストタイプ、CB1アンタゴニスト/逆アゴニストタイプの又は嘔吐及び悪心をしばしば引き起こす他のタイプの食欲抑制剤の治療と関連する嘔吐及び悪心である。Y4選択性化合物の食欲抑制効果は、同時に相加的であるか又は相乗的でさえもある可能性が非常に高いことに留意すべきである。よって、本発明のY4選択性アゴニストを別の食欲抑制剤又は他のタイプの抗肥満薬と同時に投与することにより、2つのゴールが達成される:1)完全に又は部分的に相加的な抗肥満効果が得られるという有益な効果、2)Y4選択性化合物は当該他の抗肥満薬の催吐効果を消失させるか又は減少させるという有益な効果。
【0054】
本発明のY4選択性化合物はまた、妊娠に関連する嘔吐及び悪心に対する治療又は保護に特に有用である。この特別な適応症のためには、Y4選択性化合物が天然のPP折り畳みペプチドに近いアナログであり、一般に無視し得る副作用を有すると期待されることが重要である。特に、これらペプチドが母体の循環から胎児の循環中へ胎盤を通過しないという事実が重要である。なぜならば、このことにより胎児は最小限にしか曝露されず、よって発育上の副作用を引き起こす危険が非常に低くなるからである。
本発明のY4選択性化合物及びPP自体はまた、アルコール不耐症に関連する嘔吐及び悪心に対する治療又は保護に有用である。
【0055】
4.過敏性腸疾患
Y4レセプターの天然リガンドであるPPの分泌及び機能は、自律神経系の活性に高い相関を有する(Schwartz 1983, Gastroenterology 85:1411-25)。よって、例えばPPの血漿レベルの変動は、GI管の運動性及び分泌の変動、並びにホルモン/神経伝達物質モチリンの分泌に密接に相関する。PPは副交感神経系の活性化を通じて、及び中枢神経系の迷走制御中枢(例えば脳幹の迷走運動神経)を通じて働き、それによってGI管への遠心性迷走線維における活性を制御することが知られている。過敏性腸疾患は、特にGI管の運動性及び機能における機能不全(疼痛などを導く)、及び自律神経系を通じてのこの制御における機能不全に関連すると考えられているので、過敏性腸疾患の治療におけるY4選択性アゴニストの使用は、本発明の好ましい実施形態である。
【0056】
肥満及び関連疾患の治療又は予防のためのY4アゴニストの投与に関する追加コメント
食事の間、大量のレパートリーの胃腸ホルモン及び神経伝達物質系が、注意深く協調し、逐次的な、重複した様式で活性化される。更に、食物成分は、GIホルモンの分泌及び種々の求心性ニューロン経路の活性のみに影響するわけでなく、これら食物成分は、それらが吸収された後に、種々のホルモン及びCNSの中枢に直接影響もする。よって、食物摂取及びエネルギー消費の調節は、高度に複雑で多面的なプロセスである。この観点から、或るホルモン、例えばPPが、例えば食事の間に達成される血漿レベルの僅か3〜4倍を生じる様式で投与されたときに、事実、実質的に前記系に影響し得ることは驚くべきことである。
【0057】
明白なことに、本化合物−Y4選択性アゴニスト−の投与は、主に、該化合物が絶食状態で記載されるような有効用量で与えられた場合、意図する効果を有する。種々のホルモン及びニューロン系がGI管における食物成分の存在又は食事への期待に起因して活性である状況でY4アゴニストが与えられると、効果が見られないか又はより小さな効果が観察される。よって、本発明の好ましい実施形態では、Y4選択性アゴニストは、絶食状態で、有効用量で皮下、鼻又は本明細書の他の箇所に記載のその他の手段のいずれかにより投与される。本発明に関しては、用語「絶食状態」とは、対象がY2レセプターアゴニストの投与前少なくとも2時間以内、例えば投薬の少なくとも3時間以内、少なくとも4時間以内、少なくとも5時間以内、少なくとも6時間以内、少なくとも7時間以内、少なくとも8時間以内、少なくとも9時間以内、少なくとも10時間以内、少なくとも11時間以内、少なくとも12時間以内に飲食していないことを意味する。
【0058】
人口の或る亜群では、Y4アゴニストは、Y4レセプター遺伝子における遺伝的多様性、例えば多形性に起因して、意図する作用を有しないことがある。これらレセプターにおける機能損失変異は、肥満に関連している可能性が高い。よって、本発明の好ましい実施形態では、これら遺伝子における多形性/変異についての探索及びそのような多形性の同定のために、処置すべき対象のY4遺伝子の分析が行われる。このような分析に基づいて、対象の最適な治療をなすことができる。例えば、正常な遺伝子型又はY4アゴニストの機能に影響しない多形性を有する対象のみを、本アゴニストで治療すべきである。別の可能性は、薬物の最適な効果を確実にするために、損傷したレセプターを発現する対象でY4アゴニストの用量を増加させることである。対象の肥満がY4レセプターの機能の損傷により引き起こされている場合、例えば大用量の、Y4アゴニストでの治療は、例えば異型接合体の患者において、該当するレセプター機能の少なくとも幾つかが依然として残っているという条件で、代償療法の形態であるということができる。
【0059】
本発明の1つの実施形態では、慢性治療を開始する前に、Y4アゴニストが処置すべき対象で意図する効果を有することを確実にするためにこれら化合物を投与する急性試験を実施してもよい。これら手段により、確実に、Y4アゴニストでの治療に感受性である対象のみがこれら化合物で治療される。
【0060】
投薬
本発明に従うY4レセプターアゴニストの治療有効量は、用いる具体的アゴニスト、治療される対象の年齢、体重及び状態、治療される症状又は疾患の重篤度及びタイプ、投与の方式、並びに適用する組成物の強さに依存する。
【0061】
例えば、Y4レセプターアゴニストの治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重から約1g/kg体重まで、例えば約1μgから約5mg/kg体重まで、又は約5μgから約1mg/kg体重まで変えることができる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストは、対象に0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、又は約72pmol/kg体重で投与する。
【0062】
1つの具体的な、限定的でない例では、約5〜約50nmolが皮下注射として投与され、例えば約2〜約20nmol、又は約1.0nmolが皮下注射として投与される。正確な用量は、使用する具体的化合物(例えば本レセプターアゴニスト)の効力、対象の年齢、体重、性別及び生理学的状態に基づいて、当業者により容易に決定される。アゴニストの用量は、PYY3-36の治療有効用量とモル等価であり得る。
【0063】
量は、日々の、1日おきの、週ごとの、1週間おきの、毎月の、又は他の任意の適切な頻度での投与のために、1つの用量又は幾つかの用量に分割することができる。通常、投与は1日に1回又は2回である。
【0064】
投与方法
本発明に従うY4レセプターアゴニスト並びに美容組成物又は医薬組成物は、任意の経路(経腸経路(例えば経口投与)又は非経口経路を含む)により投与することができる。具体的実施形態では、非経口経路が好ましく、これには、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内の注射及び注入、並びに舌下、経皮、局所、経粘膜(鼻経路を含む)による投与、又は吸入による投与(例えば肺吸入)が挙げられる。具体的な実施形態では、皮下及び/又は鼻の投与経路が好ましい。
【0065】
中枢に投与される場合、天然のY4選択性ペプチドPPは、ICV投与されたNPY及びPYYと同様に、摂食行動を引き起こし得る(おそらく、循環ホルモン又は末梢投与ペプチド化合物は通常到達しない中枢レセプターの活性化に起因する)。よって、増大した摂食行動を回避すべき場合には、本発明のY4選択性アゴニストは末梢に投与することが好ましい。
【0066】
本レセプターアゴニストは、適切なビヒクル中に分散されたそれ自体で投与することができ、或いは、適切な医薬組成物又は美容組成物の形態で投与することができる。このような組成物もまた本発明の範囲内である。以下で、適切な医薬組成物を記載する。当業者は、そのような組成物が美容的使用にも適切であり得ることを理解している。或いは、当業者は、適切な美容上許容される賦形剤の使用により医薬組成物を美容組成物に調整する方法を理解している。
【0067】
医薬組成物
本発明に従うレセプターアゴニスト(「化合物」とも称する)は、医薬品又は化粧品における使用のためには、通常、具体的化合物又はその誘導体を1又はそれ以上の生理学的又は薬学的に許容される賦形剤と共に含んでなる薬学組成物の形態で提供される。
【0068】
本化合物は、動物(哺乳動物(例えばヒト)を含む)に、任意の好都合な投与経路、例えば経口経路、口腔粘膜経路、鼻経路、眼経路、肺経路、局所経路、経皮経路、膣経路、直腸経路、眼経路、非経口経路(とりわけ、皮下経路、筋肉内経路、及び静脈内経路を含む。上記参照)のような投与経路により、個々の目的に効果的である用量で投与してもよい。当業者は、適切な投与経路を選択する方法を理解している。上記のように、非経口投与経路が好ましい。特定の実施形態では、本レセプターアゴニストは、皮下に及び/又は鼻に投与される。皮下注射が容易に自己投与できることは当該分野で周知である。
【0069】
特定の投与経路に適切な組成物は、医療実務者により各患者個人個人について容易に決定される。種々の医薬的に許容されるキャリア及びそれらの処方は、標準的な製剤専門書、例えばE. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0070】
本発明に従う化合物を含んでなる医薬組成物は、固体、半固体、又は流体の組成物の形態であり得る。非経口使用のためには、本組成物は、通常、流体組成物の形態であり、移植のためには半固体の形態か又は固体形態である。
【0071】
滅菌溶液又は分散液である流体組成物は、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内又は皮下の注射又は注入により利用することができる。本化合物はまた、投与の前又は投与時に、例えば滅菌水、生理食塩水又は他の適切な滅菌注射可能媒体を用いて溶解又は分散され得る滅菌固体組成物として製造されてもよい。
【0072】
流体形態の組成物は、溶液、エマルジョン(ナノエマルジョンを含む)、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、混合液、スプレー、又はエアロゾルであり得る(最後の2つのタイプは鼻投与に特に該当する)。
【0073】
溶液又は分散液用の適切な媒体は、通常、水、或いは医薬的に許容される溶媒、例えば油(例えばごま油又はピーナッツ油)のような溶媒又は例えばプロパノール若しくはイソプロパノールのような有機溶媒をベースにする。本発明に従う組成物は、医薬的に許容される賦形剤、例えばpH調整剤、(例えば組成物の等張性を生理学的に許容されるレベルに合わせるための)浸透圧的に活性な薬剤、粘性調整剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤などを更に含んでなり得る。好ましい媒体は水である。
【0074】
鼻投与用の組成物はまた、適切な非刺激性ビヒクル、例えばポリエチレングリコール、グリコフロール(glycofurol)などのようなビヒクル、並びに当業者に周知の吸収増強剤(例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照)を含有してもよい。
【0075】
非経口投与には、1つの実施形態で、本レセプターアゴニストは、一般には、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、又はエマルジョン)で所望純度の当該レセプターアゴニストを、医薬的に許容される賦形剤又はキャリア(すなわち、用いる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、組成物の他の成分と適合性であるもの)と混合することにより製剤化することができる。
【0076】
一般に、製剤は、本レセプターアゴニストを均一に及び親密に液体キャリア又は微細に分割した固体キャリア又はその両者と接触させることにより製造する。次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形する。キャリアは、好ましくは非経口キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張性の溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば不揮発性油及びエチルオレエート、並びにリポソームもまた本発明において有用である。本明細書に記載のペプチドの両親媒性に起因して、適切な形態としては、ミセル状製剤、リポソーム、及び1又はそれ以上の適切な脂質、例えばリン脂質などを含んでなる他のタイプの製剤なども挙げられる。
【0077】
好ましくは、これらは、水性キャリア中、例えば、約3.0〜約8.0のpH、好ましくは約3.5〜約7.4のpH、3.5〜6.0のpH、又は3.5〜約5のpHの等張性緩衝溶液中に懸濁する。有用な緩衝液物質としては、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸、及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液などが挙げられる。
【0078】
本組成物は、より少ない頻度の投与レジメンを得るために、投与後の本レセプターアゴニストが制御又は延長された送達をされるように設計されてもよい。通常、日に1〜2の投与を含む投薬レジメンが適切であると考えられるが、他の投薬レジメン、例えばより頻繁な投薬レジメン及びより頻度の少ない投薬レジメンもまた本発明の範囲に含まれる。本レセプターアゴニストの延長された送達を達成するためには、投与部位でデポー(ここから、本レセプターアゴニストが循環系中にゆっくりと放出される)を形成するために例えば脂質又は油を含む適切なビヒクルを用いてもよいし、又はインプラントを使用してもよい。この点に関して適切な組成物としては、その中に本レセプターアゴニストが組み込まれているリポソーム及び生物分解性粒子が挙げられる。
【0079】
固体組成物が必要とされる状況では、固体組成物は、錠剤、例えば従来型の錠剤、沸とう錠、コーティング錠、融解錠(melt tablet)又は舌下錠、ペレット、散剤、顆粒剤(granules、granulates)、粒子状物質(particulate material)、固体分散剤又は固溶体の形態であってもよい。
【0080】
半固体形態の組成物は、チューインガム、軟膏、クリーム、リニメント剤、パスタ剤、ゲル又はヒドロゲルであり得る。
本発明に従う医薬組成物の他の適切な剤形は、膣坐剤(vagitory)、坐剤、プラスター剤、パッチ剤、錠剤、カプセル剤、薬袋剤(sachet)、トローチ剤、デバイスなどであり得る。
剤形は、本化合物を自由に又は制御された様式(例えば錠剤に関しては適切なコーティングによる)で放出するように設計されてもよい。
【0081】
本医薬組成物は、治療有効量の本発明に従う化合物を含んでなり得る。
本発明の医薬組成物中の本発明の化合物の含有量は、例えば、医薬組成物の約0.1〜約100% w/wである。
本医薬組成物は、医薬製剤の当業者に周知の任意の方法により製造され得る。
【0082】
医薬組成物において、本化合物は、通常、医薬賦形剤、すなわち治療上不活性な物質又はキャリアと組み合わされる。
キャリアは、所望の剤形及び投与経路に依存して、幅広い種々の形態をとり得る。
医薬的に許容される賦形剤は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、流動促進剤(glidant)、溶媒、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、増強剤、香料、着色料、pH調整剤、緩染剤、湿潤剤、表面活性剤、防腐剤、抗酸化剤などであり得る。詳細は、薬学ハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Science又はPharmaceutical Excipient Handbookに見出すことができる。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は、本発明の幾つかの具体的アゴニストの製造及び活性を記載する。
合成
本発明のペプチド性アゴニストは、自動化ペプチド合成機又は伝統的なベンチ合成のいずれかを用いて、固相ペプチド合成により合成され得る。固相支持体は、例えば、クロロトリチル(Cl)樹脂又はWang(OH)樹脂であり得る。これらは共に商業的に容易に入手可能である。これら樹脂の活性基は、N-Fmocアミノ酸のカルボキシル基と容易に反応し、そのことによってポリマーに共有結合的に結合する。樹脂に結合したアミンは、ピペリジンへの曝露により脱保護され得る。次いで、第2のN保護アミノ酸が、その樹脂-アミノ酸にカップリングされ得る。所望の配列が得られるまでこれらの工程を繰り返す。合成の最後に、樹脂結合保護ペプチドを脱保護し、トリフルオロ酢酸(TFA)で樹脂から切断し得る。樹脂結合アミノ酸鎖への新たなアミノ酸のカップリングを容易にする試薬の例は:テトラ-メチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1H-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)である。
【0084】
固相化学よりむしろ溶液化学によるペプチド合成もまた実施可能である。
【0085】
本明細書中で言及するペプチドは、固相合成により、PAL Peg-PS樹脂(アミド樹脂(amide resin Applied Bioscience、Warrington、英国 GEN913401)上で、5×試薬過剰でのFmoc化学を使用して製造した。カップリングは、溶媒DMF、HCTUスルーアウト(throughout)により実行した。Fmoc除去は、DMF中の20%ピペリジンで10〜15分間実施した。しかし、これらペプチドは、好都合なことに、固相状態に代えて、種々の他の標準的なペプチド合成法、例えばtBOC化学及び溶液化学などにより合成され得る。合成は以下の記載により説明されるが、本発明に係るその他のペプチドも同様な方法により製造される:
【0086】
[Ala30]PP2-36(配列番号:4)の合成
一般に、側基保護は、以下を除いて標準的なFmocであった:
Arg = Fmoc Arg(Pbf)-OH
Asn、Gln = Fmoc Asn(Trt)-OH
Thr、Ser、Asp、Glu、Tyr = tButyl
Ala-Ser 22-23 = Fmoc AlaSer 偽プロリン
【0087】
このペプチドは、固相合成により、PAL Peg-PS樹脂(切断に際して生物学的に重要なカルボキシアミド基を生じる樹脂)上で、5倍モルの試薬過剰でのFmoc化学を使用して合成した。カップリングは、DMFを溶媒として使用するHCTUスルーアウトにより実施した。各カップリング工程後のFmoc除去は、DMF中20%ピペリジンで10〜15分間実施した。カップリングは、定量的ニンヒドリン(Kaiser)アッセイにより各工程後に確認した。或る場合には、二重カップリングを実施し得る。
この樹脂は、ペプチドの別のバッチを製造するために幾つかの部分に分割することができる。
【0088】
TFA、シラン及び水94:3:3で樹脂からペプチドを切断する。窒素流により溶媒を除去し、残渣をエーテルで洗浄し、風乾し、10%酢酸中に溶解し、凍結乾燥した。
精製方法の1つの例では、粗製物質を、ACE 300A C18カラム(代表的には250mm×10mm)、フロー2ml/分を用いる逆相HPLCにより精製し、215nmで検出する。
緩衝液A = 水中0.05% TFA
緩衝液B = 60% MeCN + 0.05% TFA及び水
【0089】
本明細書中に挙げられた配列に使用した代表的なグラジエントは、20分間にわたる20%〜90%緩衝液Bのグラジエントであり、主要ピークを回収する。ペプチドの同一性は、例えばMALDI TOFイオン化技法を用いる質量分析により確証する(エレクトロスプレー又は大気圧化学イオン化技法が、使用できるイオン化技法の他の例である)。純度は、例えば分析的HPLC法Aにより検査する。生成物を含有する画分をプールし、凍結乾燥して、ペプチド生成物のトリフルオロ酢酸塩を生じさせる。
【0090】
上記のように、本発明に係る他のペプチドは、上記の方法により又はペプチド合成の分野において周知の軽微な変更を伴う上記方法により作られる。例えば:
【0091】
[Thr30]PP2-36 (配列番号:6)の合成
一般に、側基保護は、以下を除いて標準的なFmocである:
Arg = Fmoc Arg(Pbf)-OH
Asn、Gln = Fmoc Asn(Trt)-OH
Thr、Ser、Asp、Glu、Tyr = tButyl
Ala-Ser 22-23 = Fmoc AlaSer 偽プロリン
【0092】
PP2-36をベースにするペプチドの分析データのまとめ:
【表2】

【0093】
分析HPLC法A
カラム = Vydac C18 ペプチド-タンパク質カラム、250×4.6mm
緩衝液A = 0.05% TFA (水中)
緩衝液B = 0.05% TFA (100% MeCN中)
グラジエント = 20分間で0%B〜60%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 215nm
質量分析 = MALDI-TOF(マトリクスとしてゲンチシン酸又はαシアノヒドロキシ桂皮酸)
【0094】
代わりのHPLC分析法を使用することができる。例えば:
分析HPLC法B
カラム = Phenomenix Jupiter C18 C18、250×4.6mm及びガードカートリッジ
緩衝液A = 0.05% TFA (水中)
緩衝液B = 0.05% TFA (100% MeCN中)
グラジエント = 30分間で0%B〜100%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 220nm
【0095】
生物学的アッセイ及び結果
I.ペプチド効力を決定するためのインビトロアッセイ
ヒトY2レセプター効力アッセイ
ヒトY2レセプターに対する試験化合物の効力を、ヒトY2レセプター及び無差別Gタンパク質Gqi5(これは、Y2レセプターがGq経路を通じて共役してイノシトールリン酸代謝回転の増加を導くことを確実にする)で一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において用量-応答実験を実施することにより決定する。
【0096】
ホスファチジルイノシトール代謝回転 − トランスフェクションの1日後、COS-7細胞を、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン及び0.01mg/mlゲンタマイシンを補充したウェルあたり1mlの培地中で5μCiの[3H]-myo-inositol(Amersham、PT6-271)と24時間インキュベートする。細胞を、140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mM CaCl2、10mMグルコース、0.05%(w/v)ウシ血清を補充した緩衝液(20mM HEPES、pH7.4)中で2回洗浄し;10mM LiClを補充した37℃の0.5ml緩衝液中で30分間インキュベートする。種々の濃度のペプチドで45分間37℃にての刺激後、細胞を10%氷冷過塩素酸で抽出し、続いて氷上で30分間インキュベートする。得られる上清をHEPES緩衝液中のKOHで中和し、生成された[3H]-イノシトールリン酸をBio-Rad AG 1-X8アニオン交換樹脂上で精製し、ベータカウンターでカウントする。測定は2連(in duplicates)で行う。EC50値を、標準的な薬理学的データを扱うソフトウェアPrism 3.0 (graphPad Sofware、San Diego、米国)を用いて算出した。
【0097】
ヒトY4レセプター効力アッセイ
ヒトY4形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
ヒトY1レセプター効力アッセイ
ヒトY1形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0098】
ヒトY5レセプター効力アッセイ
ヒトY5形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
上記効力アッセイにおいて、NPY、PYY、PYY3-36、PP、PP2-36及び本発明の8つのアゴニストを試験した結果を表2に示す:
【0099】
【表3】

【0100】
グリコサミノグリカン(GAG)への結合を決定するためのインビトロアッセイ
HiTrapヘパリン-セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、スウェーデン)又はヘパリンHPLCカラム(これらは2mM DTT及び1mM MgEDTAを含有する50mMリン酸ナトリウム(pH7.3)中の、50分間で0〜0.5M NaClの線形グラジエントで1ml/分の流量にて溶出される)のいずれかを使用して、固定化したヘパリン、すなわち、親和性マトリクスとしてのヘパリンアガロースを使用するインビトロアッセイで、試験化合物がGAGに結合する能力をモニターする。再生のために、カラムを緩衝液A中1M NaClで51〜55分洗浄した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1−1】
【図1−2】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(i)[Ala30]PP2-36 (配列番号:4)及び[Ala30]PP (配列番号:5)
(ii)[Thr30]PP2-36 (配列番号:6)及び[Thr30]PP (配列番号:7)
(iii)[Asn30]PP2-36 (配列番号:8)及び[Asn30]PP (配列番号:9)
(iv)[Gln30]PP2-36 (配列番号:10)及び[Gln30]PP (配列番号:11)
(v)[Glu10]PP2-36 (配列番号:12)及び[Glu10]PP (配列番号:13)
(vi)[Glu10,Leu17,Thr30]PP2-36 (配列番号:14)及び[Glu10,Leu17,Thr30]PP (配列番号:15)
(vii)[Nle17,Nle30]PP2-36 (配列番号:16) [Nle17,Nle30]PP (配列番号:17)
(viii)[Glu10,Nle17,Nle30]PP2-36 (配列番号:18)及び[Glu10,Nle17,Nle30]PP (配列番号:19)
並びに、これらの、
(a)(i)〜(iv)の場合には30位以外、(v)の場合には10位以外、(vii)の場合には17位及び30位以外、(vi)及び(viii)の場合には10位、17位及び30位以外の1又はそれより多い位置で保存的に置換され;及び/又は
(b)N末端アシル化、PEG化、又は血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフに共有結合的カップリングされた(ここで、共有結合的カップリングは、ペプチドの残基に対して、又はペプチド中で置換され該共有結合のための官能基を提供する残基に対してである)、
アナログ
からなる群より選択されるY4レセプターアゴニストペプチド。
【請求項2】
N末端にてアシル化された請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
N末端にて2〜24の炭素原子を有する炭素鎖、例えばN末端N(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル基を有する炭素鎖でアシル化された請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
N末端にてアセチル化された請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフを含んでなるか、又はPEG化された請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
親油性基である血清アルブミン結合モチーフを含んでなる請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
前記親油性基が、任意に置換されていてもよい飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基を含んでなる請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
前記親油性基がペプチド主鎖に対する側鎖であるか又はその一部である請求項6又は7に記載のペプチド。
【請求項9】
前記親油性基含有側鎖がエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合を介して前記主鎖中の残基に接続している請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記親油性基含有側鎖が
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH- (式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH- (式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH- (式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO- (式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3 (式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格
からなる群より選択される請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基である請求項8に記載のペプチド。
【請求項12】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するテトラデカノイル基である請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基のアシル化により形成されている請求項7に記載のペプチド。
【請求項14】
前記GAG結合モチーフがペプチド主鎖に対する側鎖であるか又はその一部であるアミノ酸配列である請求項5に記載のペプチド。
【請求項15】
前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
前記GAG結合モチーフがコンカテマー又はデンドリマーである請求項14又は15に記載のペプチド。
【請求項17】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端とペプチドのLys13置換基のεアミノ基との間で形成されたアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項14〜16のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項18】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端とペプチド中のLys13置換基のεアミノ基との間に形成されたアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項14〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記GAG結合モチーフがペプチドのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結した請求項5に記載のペプチド。
【請求項20】
前記GAG結合モチーフがペプチドのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結した請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項19又は20に記載のペプチド。
【請求項22】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列[XBBBXXBX]n (式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項19又は20に記載のペプチド。
【請求項23】
前記GAG結合モチーフが、ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基の(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Ala-Arg-Ala)3アシル化である請求項15に記載のペプチド。
【請求項24】
前記PEGが最大で約20kDaの分子量を有するポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドである請求項5に記載のペプチド。
【請求項25】
ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基へのPEG付加化合物である請求項5に記載のペプチド。
【請求項26】
前記ヘリックス誘導ペプチドがアゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項5に記載のペプチド。
【請求項27】
前記ヘリックス誘導ペプチドがアゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項5に記載のペプチド。
【請求項28】
前記ヘリックス誘導ペプチドがAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Met、Orn、及び式-NH-C(R1)(R2)-CO- (式中、R1は水素であり、R2は任意に置換していてもよいC1-C6アルキル、フェニル又はフェニルメチルであるか、或いはR1及びR2はこれらが付着しているC原子と一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル環を形成する)のアミノ酸残基からなる群より選択される4〜20アミノ酸残基を有する請求項26又は27に記載のペプチド。
【請求項29】
前記ヘリックス誘導ペプチドが4、5又は6つのLys残基を含んでなる請求項26又は27に記載のペプチド。
【請求項31】
N末端Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys配列を有する請求項26に記載のペプチド。
【請求項32】
Y4レセプターの活性化に応答性の症状の治療用医薬の製造における請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項33】
その必要がある患者に有効量の請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチドを投与することを含んでなるY4レセプターの活性化に応答性の症状を治療する方法。
【請求項34】
前記治療される症状がエネルギー摂取若しくはエネルギー代謝の調節、腸分泌の制御、胃腸管運動性の減少、又は胃排出の速度の減少が指示される症状である請求項32に記載の使用又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療される症状が肥満若しくは過体重、又は肥満若しくは過体重が主因とされる症状である請求項34に記載の使用又は方法。
【請求項36】
前記治療される症状が炎症性腸疾患、過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病若しくはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、又は胸部、前立腺若しくは結腸のガンである請求項35に記載の使用又は方法。
【請求項37】
前記アゴニストが絶食状態の患者に投与される請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療される症状が下痢又は腸瘻からの過剰分泌である請求項32に記載の使用又は請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記治療される症状が悪心又は嘔吐である請求項32に記載の使用又は請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記治療される悪心又は嘔吐の症状が別の薬剤での治療から生じるものであるか又は生じると予期されるものである請求項39に記載の使用又は方法。
【請求項41】
前記Y4選択性レセプターアゴニストがGAG結合モチーフを含んでなる請求項32〜40のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項42】
前記Y4選択性レセプターアゴニストが血清結合モチーフを含んでなる請求項32〜40のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項43】
前記Y4選択性レセプターアゴニストがPEG化されている請求項32〜40のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項44】
前記アゴニストが皮下、筋肉内、静脈内、鼻、経皮又は口腔粘膜投与を含む非経口経路を介して患者に投与される請求項32〜43のいずれか1項に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2009−508885(P2009−508885A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531540(P2008−531540)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010314
【国際公開番号】WO2007/038942
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(506312478)7ティーエム ファーマ エイ/エス (12)
【氏名又は名称原語表記】7TM PHARMA A/S
【住所又は居所原語表記】Fremtidsvej 3,DK−2970 Hoersholm,DENMARK
【Fターム(参考)】