説明

治療的使用のためのRNA干渉剤

本発明は、インビボで安定であり、かつ標的RNAと会合した場合にA型へリックスを形成する能力を保持する化学修飾低分子干渉RNA(siRNA)を特徴とする。この特徴を有するsERNAは特にSOD1を標的化するための有効な治療剤である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年1月26日に出願された「RNA Interference Agents for Use in Therapy」と題されたUSSN 60/762,957;2006年1月26日に出願された「Nanotransporters for Efficient Delivery of Nucleic Acid and Other Pharmaceutical Agents」と題されたUSSN 60/762,956;および2006年1月26日に出願された「RNA Interference Agents for Use in Therapy of Metabolic Disorders」と題されたUSSN 60/762,951に対する優先権、およびその恩典を主張する。これらの出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
RNA干渉(RNAi)は、それにより二本鎖RNA(dsRNA)が相同mRNAの配列特異的分解が誘導されるプロセスである。RNAiは最初線虫(Caenorhabditis elegans)で発見された(Fire et al., 1998(非特許文献1))が、同様な現象は植物(翻訳後遺伝子サイレンシング[PTGS])およびアカパンカビ(Neurospora crassa)(quelling)(Hammond et al., 2001(非特許文献2); Sharp, 2001(非特許文献3)に概説されている)において報告されている。dsRNA-誘導サイレンシング現象は進化的に多様な生物、例えば、線虫、植物、真菌およびトリパノソーマに存在することが明らかになった(Bass, 2000(非特許文献4); Cogoni and Macino, 2000(非特許文献5); Fire et al., 1998(非特許文献1); Hammond et al., 2001(非特許文献2); Ketting and Plasterk, 2000(非特許文献6); Matzke et al., 2001(非特許文献7); Sharp, 2001(非特許文献3); Sijen and Kooter, 2000(非特許文献8); Tuschl, 2001(非特許文献9); Waterhouse et al., 2001(非特許文献10))。RNAiが働くメカニズムを明らかにするために、ショウジョウバエ胚溶解物およびS2細胞抽出物における生化学的研究が開始されている(Bernstein et al., 2001(非特許文献11); Tuschl et al., 1999(非特許文献12); Zamore et al., 2000(非特許文献13))。
【0003】
研究はRNAiの領域で広く行われてきたが、そのような系のさらなる研究に対する要望が存在する。さらに、インビボで用いるのに適した試薬の開発、特にヒト治療剤の開発における使用に対する要望が存在する。
【0004】
【非特許文献1】Fire et al., 1998
【非特許文献2】Hammond et al., 2001
【非特許文献3】Sharp, 2001
【非特許文献4】Bass, 2000
【非特許文献5】Cogoni and Macino, 2000
【非特許文献6】Ketting and Plasterk, 2000
【非特許文献7】Matzke et al., 200
【非特許文献8】Sijen and Kooter, 2000
【非特許文献9】Tuschl, 2001
【非特許文献10】Waterhouse et al., 2001
【非特許文献11】Bernstein et al., 2001
【非特許文献12】Tuschl et al., 1999
【非特許文献13】Zamore et al., 2000
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、化学修飾siRNA分子(例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖双方の3'および5'両末端が修飾されたsiRNA分子)をヒト治療用途で用いることができ、siRNA分子のRNAi活性を損なうことなく改良されるという発見に基づく。
【0006】
従って、1つの局面において、本発明は、各々が5'末端および3'末端を有するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む低分子干渉RNA(siRNA)を対象とする。一般に、アンチセンス鎖は、標的特異的RNA干渉(RNAi)を誘導するために、標的mRNA配列に対して十分に相補的な配列を有する。いくつかの局面において、センス鎖またはアンチセンス鎖は、対応する未修飾siRNAと比較してインビボ安定性が増強されるように、5'末端および3'末端双方が化学修飾ヌクレオチドで修飾されている。いくつかの局面において、センス鎖またはアンチセンス鎖は、対応する未修飾siRNAと比較して標的効率が増強されるように、5'および3'末端双方が一つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドで修飾されている。いくつかの態様において、センス鎖またはアンチセンス鎖は、5'末端および3'末端双方が一つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドで修飾されており、標的RNAと会合した場合、アンチセンス鎖はA型へリックス(A-form helix)をとることができる。いくつかの態様において、センス鎖またはアンチセンス鎖は、5'末端および3'末端双方が一つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドで修飾されており、標的RNAと会合した場合、アンチセンス鎖は正常な主溝を有するA型へリックスをとることができる。
【0007】
いくつかの態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、3'末端および5'末端双方が一つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドで修飾されている。いくつかの態様において、siRNAは標的mRNAに対して十分に相補的であり、該標的mRNAは細胞タンパク質のアミノ酸配列を特定する。いくつかの態様において、siRNAは標的mRNAに十分に相補的であり、該標的mRNAはウイルスタンパク質のアミノ酸配列を特定する。
【0008】
いくつかの態様において、本発明のsiRNAは、それぞれ下記式IVに記載のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む:

式中、それぞれのcは独立して末端修飾であり;それぞれのmは0または1の整数であり;
−5'配列−および−3'配列−は、各々独立して2〜10個のヌクレオチドを含み、該ヌクレオチドはプリンおよびピリミジンヌクレオチドであり、約1〜6個のヌクレオチドは修飾されており、およびユニット中の各ヌクレオチド間結合は任意で修飾されており;
−コア配列−はリン酸ヌクレオチド間結合を介して連結された5〜20個の未修飾ヌクレオチドを含み;および
−5'配列−は任意で修飾されたヌクレオチド間結合を介して−コア配列−に連結されており、および−コア配列−は任意で修飾されたヌクレオチド間結合を介して−3'配列−に連結している。
【0009】
いくつかの態様において、−5'配列−は、下記式によって表される:

式中、nは2〜9の整数であり;pは0〜3の整数であり;N1は未修飾ヌクレオチドであり;
それぞれのN2は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる独立して群より選択され、それぞれのN2の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;それぞれのN3は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;および
それぞれのL2およびL3は、独立してリン酸結合または式IIIの結合である。
【0010】
いくつかの態様において、−コア配列−は下記式によって表される:

式中、qは5〜15の整数であり;それぞれのN4は未修飾ヌクレオチドであり;およびそれぞれのL4は、独立してリン酸結合である。
【0011】
いくつかの態様において、−3'配列−は下記式によって表される:

式中、
rは3〜9の整数であり;sは0〜3の整数であり;N7は未修飾ヌクレオチドであり;それぞれのN5は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN5の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;それぞれのN6は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;
それぞれのL5およびL6は、独立してリン酸結合または式IIIの結合であり;および
L7は式IIIの結合である。
【0012】
いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは糖修飾ヌクレオチドである。糖修飾ヌクレオチドは、限定されることなく、2'-フルオロ、2'-アミノおよび2'-チオ修飾リボヌクレオチド、例えば、2'-フルオロ修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、2'-フルオロリボヌクレオチドはセンスおよびアンチセンス両鎖にある。いくつかの態様において、2'-フルオロ修飾リボヌクレオチドは2'-フルオロウリジンまたは2'-フルオロシチジンである。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは2'-デオキシリボヌクレオチド、例えば、2'-デオキシアデノシンまたは2'-デオキシグアノシンである。
【0013】
いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは核酸塩基修飾ヌクレオチドである。
【0014】
いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは骨格修飾ヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート基である。いくつかの態様において、骨格修飾ヌクレオチドはホスホロチオエート基を含有し、センス鎖およびアンチセンス鎖内にある。
【0015】
いくつかの態様において、アンチセンス鎖および標的mRNA配列は100%相補的である。他の態様において、アンチセンス鎖および標的mRNA配列は少なくとも1つのミスマッチを含む。
【0016】
いくつかの態様において、化学修飾ヌクレオチドは、標的mRNA配列と塩基対合した場合、A型へリックス立体配座をとるアンチセンス鎖の能力に影響しない。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、標的mRNA配列と塩基対合した場合に、正常な主溝を含むA型へリックス立体配座をとるアンチセンス鎖の能力に影響しない。
【0017】
siRNAは約10〜50残基の長さ、例えば、約18〜25残基の長さとすることができる。いくつかの態様において、siRNAは化学的に合成される。
【0018】
また、本発明は、本明細書に記載されたsiRNAのいずれかをコードする導入遺伝子、および本明細書に記載されたsiRNAのいずれか、および薬学的に許容される担体を含む組成物も含む。
【0019】
いくつかの局面において、本発明は細胞において標的特異的RNA干渉(RNAi)を活性化する方法を含み、該方法は標的mRNAの分解が起こるのに十分な量の本明細書に記載されたsiRNAのいずれかを該細胞に導入して、それにより細胞において標的特異的RNAiを活性化することを含む。
【0020】
いくつかの態様において、siRNAは、細胞をsiRNAと接触させることによって細胞に導入される。いくつかの態様において、siRNAは、細胞を、siRNAおよび親油性担体を含む組成物と接触させることによって細胞に導入される。いくつかの態様において、siRNAは、細胞を、細胞中で転写された場合にsiRNAを生産することができる核酸配列を含むベクターでトランスフェクトし、または感染させることによって細胞に導入される。いくつかの態様において、細胞に、細胞中で転写された場合にsiRNAを生産することができる核酸配列を含むベクターを注射することによって、siRNAを細胞に導入する。ベクターは導入遺伝子核酸配列を含むことができる。
【0021】
さらに他の局面において、本発明は生物において標的特異的RNA干渉(RNAi)を活性化する方法を含む。該方法は、一般に、標的mRNAの分解が起こるのに十分な量の本明細書に記載されたsiRNAのいずれかを該生物に投与し、それにより、生物において標的特異的RNAiを活性化することを含む。いつくかの態様において、siRNAを静脈内または腹腔内経路によって投与する。
【0022】
また、本発明は、限定されることなく、哺乳動物起源の細胞、マウス起源の細胞、ヒト起源の細胞、胚幹細胞、哺乳動物起源の生物、ネズミ起源の生物、およびヒト起源の生物を含む本発明の方法によって得られた細胞および生物を対象とする。
【0023】
いくつかの態様において、標的mRNAの分解は機能表現型の喪失を生じる。いくつかの態様において、標的mRNAの分解は、該標的mRNAによって特定されたタンパク質が少なくとも約10%または少なくとも約20%減少するようなものである。
【0024】
いくつかの局面において、本発明は、対象において標的mRNAによって特定されたタンパク質の活性に関連する疾病または障害を治療する方法を含む。該方法は、標的mRNAの分解が起こるのに十分な量の本明細書に記載されたsiRNAのいずれかを対象に投与し、それにより、タンパク質に関連する疾病または障害を治療することを含む。いくつかの態様において、該疾病または障害はALSである。
【0025】
いくつかの態様において、標的mRNAは、ヒトの疾病または障害に関与する、または関与すると予測されるタンパク質のアミノ酸配列を特定する。いくつかの態様において、標的mRNAはSOD1のmRNAである。SOD1のmRNAは野生型SOD1のmRNA、突然変異体SOD1のmRNA、例えば、G93A SOD1、または突然変異体および野生型双方のSOD1のmRNAを含む。
【0026】
また、本発明は、一般には、本明細書に記載された任意のsiRNA分子、および細胞または生物における標的特異的RNA干渉(RNAi)を活性化するのに用いるための指示書を含むキットも含む。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、化学修飾RNAi剤、例えば、低分子干渉RNA分子(siRNA)、および該siRNA分子を用いる方法(例えば、調査および/または治療方法)を特徴とする。具体的には、本発明は、センス鎖、アンチセンス鎖または双方の3'末端および5'末端双方が化学的に修飾されているRNAi剤を含む。そのような化学修飾siRNAは、例えば、突然変異体SOD1のmRNAの機能をノックダウンするための、例えば、ノックダウン療法で有用である。
【0028】
本発明がより容易に理解できるように、特定の用語をまず定義する。
【0029】
本明細書で使用される単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、特記されない限り、「少なくとも1つ」および「一つまたは複数」を含むことに留意されたい。従って、例えば、「薬学的に許容される担体」への言及は、2つ以上の担体の混合物ならびに1つの担体等を含む。
【0030】
本明細書において、用語「RNAサイレンシング」とは、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害または「サイレンシング」をもたらす、RNA分子によって媒介された一群の配列特異的調節メカニズム(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング(quelling)、共抑制、および転写抑制)を指す。RNAサイレンシングは、植物、動物および真菌を含む多くのタイプの生物で観察されてきた。
【0031】
用語「区別性RNAサイレンシング」とは、例えば、双方のポリヌクレオチド配列が同一細胞に存在する場合、「第二の」または「非標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害せずに、「第一の」または「標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害するRNA分子の能力を指す。ある態様において、標的ポリヌクレオチド配列は標的遺伝子に対応し、他方、非標的ポリヌクレオチド配列は非標的遺伝子に対応する。他の態様において、標的ポリヌクレオチド配列は標的対立遺伝子に対応し、他方、非標的ポリヌクレオチド配列は非標的対立遺伝子に対応する。ある態様において、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサーエレメント)をコードするDNA配列である。他の態様において、標的ポリヌクレオチド配列は標的遺伝子によってコードされた標的mRNAである。
【0032】
本明細書において、用語「標的遺伝子」は、その発現が実質的に阻害されるか、または「発現停止させる」遺伝子である。このサイレンシングはRNAサイレンシングによって、例えば、標的遺伝子のmRNAの切断、または標的遺伝子の転写抑制によって達成することができる。用語「非標的遺伝子」は、その発現が実質的に阻害されない遺伝子である。1つの態様において、標的および非標的遺伝子のポリヌクレオチド配列(例えば、標的および非標的遺伝子によってコードされたmRNA)は一つまたは複数のヌクレオチドだけ異なり得る。別の態様において、標的および非標的遺伝子は一つまたは複数の多形だけ異なり得る。別の態様において、標的および非標的遺伝子は100%未満の配列同一性を共有し得る。別の態様において、非標的遺伝子は標的遺伝子のホモログ(例えば、オルソログまたはパラログ)であり得る。
【0033】
「標的対立遺伝子」は、その発現が選択的に阻害される、または「発現停止される」対立遺伝子である。このサイレンシングはRNAサイレンシングによって、例えば、siRNAによる標的遺伝子または標的対立遺伝子のmRNAを切断することによって達成することができる。用語「非標的対立遺伝子」はその発現が実質的に阻害されない対立遺伝子である。ある態様において、標的および非標的対立遺伝子は同一標的遺伝子に対応しうる。他の態様において、標的対立遺伝子は標的遺伝子に対応し、および非標的対立遺伝子は非標的遺伝子に対応する。1つの態様において標的および非標的対立遺伝子のポリヌクレオチド配列は一つまたは複数のヌクレオチドだけ異なり得る。別の態様において標的および非標的対立遺伝子は一つまたは複数の対立遺伝子多形だけ異なり得る。別の態様において、標的および非標的対立遺伝子は100%未満の配列同一性を共有し得る。
【0034】
用語「多形」とは、本明細書において、(同じ生物だが)異なる供給源または対象からの同一遺伝子配列を比較した場合に同定または検出される遺伝子配列中の変異(例えば、欠失、挿入、または置換)を指す。例えば、(同じ生物だが)異なる対象からの同一遺伝子配列を比較した場合に多形を同定することができる。そのような多形の同定は当技術分野においてルーチン的であり、該方法は、例えば、乳癌点突然変異を検出するのに用いるものと同様である。同定が、例えば、対象のリンパ球から抽出されたDNAから行うことができ、続いて該多形領域に対する特異的プライマーを用いる多形領域の増幅を行う。または、多形は同一遺伝子の2つの対立遺伝子を比較した場合に同定することができる。
【0035】
生物内の同一遺伝子の2つの対立遺伝子間の配列における変異を、本明細書においては、「対立遺伝子多形」と呼ぶ。多形は、コード領域内のヌクレオチドにおけるものであり得るが、遺伝子暗号縮重のため、アミノ酸配列の変化はコードされない。あるいは、多形配列は特定の位置における異なるアミノ酸をコードすることができるが、アミノ酸の変化はタンパク質の機能に影響しない。多形領域は遺伝子の非コード領域に見出すことができる。
【0036】
本明細書において、用語「RNAサイレンシング剤」とは、標的遺伝子の発現を阻害または「発現停止させる」ことができるRNAを指す。ある態様において、RNAサイレンシング剤は、転写後のサイレンシングメカニズムを通じてmRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳および/または発現)を妨げることができる。RNAサイレンシング剤は小さな(<50 b.p.)の非コードRNA分子、例えば、対合した鎖を含むRNA二重鎖、ならびにそれからそのような小さな非コードRNAを生じさせることができる前駆体RNAを含む。例示的なRNAサイレンシング剤はsiRNA、miRNA、siRNA様二重鎖および二機能性オリゴヌクレオチドならびにその前駆体を含む。1つの態様において、RNAサイレンシング剤はRNA干渉を誘導することができる。別の態様において、RNAサイレンシング剤は転写抑制を媒介することができる。
【0037】
用語「ヌクレオシド」とは、リボースまたはデオキシリボース糖に共有結合したプリンまたはピリミジン塩基を有する分子を指す。例示的なヌクレオシドはアデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンおよびチミジンを含む。さらなる例示的ヌクレオシドは、イノシン、1-メチルイノシン、プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシンおよび2,2N,N-ジメチルグアノシン(「稀な」ヌクレオシドともいう)を含む。用語「ヌクレオチド」とは、糖部分にエステル結合で連結された一つまたは複数のリン酸基を有するヌクレオシドを指す。例示的なヌクレオチドはヌクレオシド一リン酸、二リン酸、および三リン酸を含む。用語「ポリヌクレオシド」および「核酸分子」は相互交換可能に本明細書において用いられ、5'および3'炭素原子の間のホスホジエステル結合によって一緒に連結されたヌクレオチドのポリマーを指す。
【0038】
用語「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」とは、リボヌクレオチドのポリマーを指す。用語「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」とは、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNAおよびRNAは(例えば、それぞれDNA複製またはDNAの転写によって)天然に合成できる。RNAは転写後に修飾することができる。DNAおよびRNAもまた化学的に合成することができる。DNAおよびRNAは一本鎖(すなわち、各々ssRNAおよびssDNA)または複鎖(例えば、二本鎖、すなわち各々dsRNAおよびdsDNA)であり得る。「mRNA」または「メッセンジャーRNA」は、一つまたは複数のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を特定する一本鎖RNAである。この情報は、リボソームがmRNAに結合する場合にタンパク質合成の間に翻訳される。
【0039】
本明細書において、用語「稀なヌクレオチド」とは、稀に起こる天然のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドを含む稀に起こる天然のヌクレオチド、例えば、グアノシン、アデノシン、シトシンまたはウリジンではない天然のリボヌクレオチドを指す。稀なヌクレオチドの例は、限定されることなく、イノシン、1-メチルイノシン、プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシンおよび2.2N,N-ジメチルグアノシンを含む。
【0040】
用語「ヌクレオチドアナログ」または「改変されたヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」とは、非天然のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む非標準ヌクレオチドを指す。同様に、用語「未修飾ヌクレオチド」は、本明細書においては用語「天然のヌクレオチド」と交互に用いられる。好ましいヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドの特定の化学的特性を改変するが、その意図した機能を行うヌクレオチドアナログの能力を保有するようにいずれかの位置において修飾される。好ましい修飾ヌクレオチドの例は、限定されることなく、2-アミノ-グアノシン、2-アミノ-アデノシン、2,6-ジアミノ-グアノシンおよび2,6-ジアミノ-アデノシンを含む。誘導体化することができるヌクレオチドの位置の例は5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジンなど;6位、例えば、6-(2-アミノ)プロピルウリジン;アデノシンおよび/またはグアノシンについての8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンなどを含む。ヌクレオチドアナログはまたデアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-およびN修飾(例えば、アルキル化された、例えば、N6-メチルアデノシン、またはそうでなければ当技術分野において公知の)ヌクレオチド;およびHerdewijn, Antisense Nucleic Acid Drug Dev., 2000 Aug. 10(4):297-310に記載されたもののような他の複素環が修飾されたヌクレオチドアナログを含む。
【0041】
ヌクレオチドアナログはヌクレオチドの糖部分に対する修飾も含むことができる。例えば、2'OH-基はH、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH2、NHR、NR2、COOR、またはORより選択される基によって置換することができ、Rは置換されたまたは置換されていないC1-C6アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。他の可能な修飾は米国特許第5,858,988号および第6,291,438号に記載されたものを含む。
【0042】
ヌクレオチドのリン酸基は、例えば、リン酸基の酸素の一つまたは複数を硫黄で置き換えることによって、(例えば、ホスホロチオエート)、またはヌクレオチドが、例えば、Eckstein, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2000 Apr. 10(2): 117-21, Rusckowski et al. Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2000 Oct. 10(5):333-45, Stein, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2001 Oct. 11 (5):317-25, Vorobjev et al. Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2001 Apr. 11 (2):77-85,および米国特許第5,684,143号に記載されたようなその意図した機能を行うのを可能とする他の置換を行うことによって修飾することもできる。前記の特定の修飾(例えば、リン酸基修飾)は、好ましくは、例えば、インビボまたはインビトロで該アナログを含むポリヌクレオチドの加水分解の速度を減少させる。
【0043】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドアナログの短いポリマーを指す。用語「RNAアナログ」とは、対応する改変されていないまたは未修飾RNAと比較して少なくとも1つの改変または修飾ヌクレオチドを有するが、対応する未改変または未修飾RNAと同一または同様な性質または機能を保有するポリヌクレオチド(例えば、化学的に合成されたポリヌクレオチド)を指す。該オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を備えるRNA分子と比較してRNAアナログの加水分解のより低い速度をもたらす結合で連結されていてもよい。例えば、該アナログのヌクレオチドはメチレンジオール、エチレンジオール、オキシメチルチオ、オキシエチルチオ、オキシカルボニルオキシ、ホスホロジアミデート、および/またはホスホロチオエート結合を含むことができる。例示的なRNAアナログは糖-および/または骨格修飾リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドを含む。そのような改変または修飾は、さらに、(RNAの一つまたは複数のヌクレオチドにおいて)RNAの末端、あるいは内部などへの非ヌクレオチド物質の付加を含むことができる。RNAアナログは、RNAサイレンシング(例えば、RNA干渉)を媒介する能力を有する天然のRNAに十分に類似していれさえすればよい。例示的な態様において、オリゴヌクレオチドはロックト核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)を含む。
【0044】
本明細書において、用語「結合強度」または「塩基対強度」とは、主として当該ヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)間のH結合、ファン・デル・ワールス相互作用などによる、オリゴヌクレオチド二重鎖(例えば、RNAサイレンシング剤の鎖および標的mRNA配列によって形成された二重鎖)の対向鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)の対の間の相互作用の強さを指す。
【0045】
本明細書において、用語「融解温度」または「Tm」とは、二本鎖ポリヌクレオチド分子の集団の半分が解離して一本鎖となる温度を指す。
【0046】
本明細書において、用語「十分な相補性」または「十分な程度の相補性」とは、RNAサイレンシング剤が、それぞれ所望の標的RNAに結合し、かつ標的mRNAのRNAサイレンシングを誘発するのに十分な配列(例えばアンチセンス鎖において、mRNA標的化部分またはmiRNAリクルーティング部分)を有することを意味する。
【0047】
本明細書において、用語「RNA干渉」(「RNAi」)とは、標的RNAの選択的分子内分解をもたらすRNAサイレンシングのタイプを指す。RNAiは天然では細胞中で生じて外来性RNA(例えば、ウイルスRNA)を除去する。天然のRNAiは、他の同様なRNA配列への分解性メカニズムを誘導する遊離dsRNAから切断された断片を介して進行する。RNAiおよび転写抑制の双方はRISCによって媒介される。RNAiおよび転写抑制は共に天然で起こり、あるいはヒトの手によって開始されて、例えば、標的遺伝子の発現を発現停止させることができる。
【0048】
本明細書において、用語「転写抑制」とは、mRNA翻訳の選択的阻害を指す。天然の転写抑制はshRNA前駆体から切断されたmiRNAを介して進行する。RNAiおよび転写抑制は共にRISCによって媒介される。RNAiおよび転写抑制は共に天然で起こるか、あるいはヒトの手によって開始されて、例えば、標的遺伝子の発現を発現停止させることができる。
【0049】
本明細書において、(当技術分野において「短鎖干渉性RNA」ともいわれている)用語「低分子干渉RNA」(「siRNA」)とは、RNAサイレンシング(例えば、RNA干渉または翻訳抑制)を誘導し、または媒介することができる約5〜60の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含むRNA(またはRNAアナログ)を指す。好ましくは、siRNAは約15〜30の間のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ、より好ましくは約16〜25の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、なおより好ましくは約18〜23の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、なおより好ましくは約19〜22の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)(例えば、19、20、21または22のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ)を含む。用語「短鎖」siRNAとは、5〜23のヌクレオチド、好ましくは約21ヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、例えば、19、20、21または22ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。用語「長鎖」siRNAとは、24〜60のヌクレオチド、好ましくは約24〜25のヌクレオチド、例えば、23、24、25または26のヌクレオチドを含むsiRNAを指す。短鎖siRNAは、ある場合には、19よりも少数のヌクレオチド、例えば、16、17または18のヌクレオチド、または5程度の少数のヌクレオチドを含むことができ、但し、より短いsiRNAはRNAiを媒介する能力を保有する。同様に、長鎖siRNAは、ある場合には、26より多いヌクレオチド、例えば、27、28、29、30、35、40、45、50、55、またはさらに60のヌクレオチドを含み、但し、より長いsiRNAは、短いsiRNAへのさらなるプロセシング、例えば、酵素プロセシングなしでRNAiまたは転写抑制を媒介する能力を保有する。
【0050】
本明細書において、当技術分野で「一過性低分子RNA(small temporal RNA)」(「stRNA」)とも呼ばれる「マイクロRNA」(「miRNA」)という用語は、(例えば、ウイルス、哺乳動物、または植物ゲノムによって)遺伝子にコードされ、RNAサイレンシングを誘導または媒介することができる低分子(10〜50ヌクレオチドの)RNAを指す。「miRNA障害」とは、miRNAの異常な発現または活性によって特徴付けられる疾病または障害を指す。
【0051】
本明細書において、RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAi剤の「アンチセンス鎖」という用語は、サイレンシングのために標的化された遺伝子のmRNAの約10〜50ヌクレオチド、例えば、約15〜30、16〜25、18〜23または19〜22ヌクレオチドのセクションに対して実質的に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖または第一の鎖は、標的特異的サイレンシングを誘導するために、所望の標的mRNA配列に対して十分に相補的な配列、例えば、RNAiの機構またはプロセス(RNAi干渉)によって所望の標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な相補性、または所望の標的mRNAの翻訳抑制を誘発するのに十分な相補性を有する。
【0052】
RNAサイレンシング剤、例えば、siRNAまたはRNAi剤の「センス鎖」または「第二の鎖」という用語は、アンチセンス鎖または第一の鎖に対して相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖およびセンス鎖は第一の鎖または第二の鎖とも呼ぶことができ、該第一の鎖または第二の鎖は標的配列に対する相補性を有し、各第二の鎖または第一の鎖は該第一の鎖または第二の鎖に対する相補性を有する。miRNA二重鎖中間体またはsiRNA様二重鎖は、サイレンシングのために標的化された遺伝子のmRNAの約10〜50ヌクレオチドのセクションに対する十分な相補性を有するmiRNA鎖、およびmiRNA鎖とで二重鎖を形成するのに十分な相補性を有するmiRNA*鎖を含む。
【0053】
本明細書において、「ガイド鎖」という用語は、RNAi剤の鎖、例えば、RISC複合体に入り、標的mRNAの切断を誘導するsiRNA二重鎖またはsiRNA配列のアンチセンス鎖を指す。
【0054】
遺伝子操作されたRNA前駆体、または遺伝子操作された核酸分子における「遺伝子操作された」という用語は、前駆体または分子の核酸配列の全てまたは一部がヒトによって作製されまたは選択される点で、前駆体または分子が天然で見出されないことを示す。一旦作製または選択されれば、配列は複製され、翻訳され、転写され、またはそうでなければ細胞内のメカニズムによって処理される。従って、遺伝子操作された核酸分子を含む導入遺伝子からの細胞内で生産されたRNA前駆体は、遺伝子操作されたRNA前駆体である。
【0055】
「単離核酸分子または配列」は、それが由来する生物の天然のゲノム中で隣接して連続するコード配列の双方(1つは5'末端、および1つは3'末端)と隣接して連続しない核酸分子または配列である。従って、該用語は例えば、ベクターへ;自己複製プラスミドまたはウイルスへ;または原核生物または真核生物のゲノムDNAへ組込まれるか、あるいは他の配列から独立した別々の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって作製されたcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在する組換えDNAまたはRNAを含む。それは、さらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0056】
本明細書において、「単離RNA」(例えば、「単離shRNA」、「単離siRNA」、「単離siRNA様二重鎖」、「単離miRNA」、「単離遺伝子サイレンシング剤」、または「単離RNAi剤」)という用語は、組換え技術によって作製された場合に他の細胞物質または培地を実質的に含まない、あるいは化学合成された場合に化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まないRNA分子を指す。
【0057】
本明細書において、「導入遺伝子」という用語は、技術を用いて細胞に挿入され、該細胞から発生する生物のゲノムの一部となる任意の核酸分子を指す。そのような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して部分的にまたは全体が異種(すなわち、外来性)である遺伝子を含むことができ、あるいは生物の内因性遺伝子に対して相同である遺伝子を表すことができる。用語「導入遺伝子」は、一つまたは複数の選択された核酸配列を含む核酸分子、例えば、トランスジェニック動物に対して部分的にまたは全体的に異種、すなわち、外来性であるか、あるいはトランスジェニック動物の内因性遺伝子に相同であるが、天然遺伝子のそれとは異なる位置において動物のゲノムに挿入されるように設計される、トランスジェニック生物、例えば、動物において発現される一つまたは複数の遺伝子操作されたRNA前駆体をコードするDNAも意味する。導入遺伝子は、全てが選択された配列に操作可能に連結した、選択された核酸配列の発現に必要なイントロンのような一つまたは複数のプロモーターおよび任意の他のDNAを含み、エンハンサー配列を含んでもよい。
【0058】
疾病または障害に「関与する」遺伝子は、その正常または異常な発現が、疾病または障害または該疾病もしくは障害の少なくとも1つの症状に影響する、または引き起こす遺伝子を含む。
【0059】
「発現の対立遺伝子特異的阻害」とは、例えば、双方の対立遺伝子が同一細胞に存在する場合に、遺伝子の1つの対立遺伝子の発現を別の対立遺伝子よりも有意に阻害する能力を指す。例えば、対立遺伝子は1、2、3以上のヌクレオチドだけ異なり得る。いくつかの場合において、1つの対立遺伝子は、例えば、優性機能獲得突然変異に相関する疾病などの疾病の原因に関連する。
【0060】
、本明細書において使用される「ポリグルタミン障害」という用語は、コード領域の5'末端における拡大された(CAG)nの繰返しによって特徴付けられる(従って、コードされたタンパク質における拡大されたポリグルタミン領域をコードする)任意の疾病または障害を指す。1つの態様において、ポリグルタミン障害は神経細胞の進行性変性によって特徴付けられる。ポリグルタミン障害の例は、限定されることなく、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型(マシャド-ジョセフ病としても公知である)、および脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、および歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮を含む。
【0061】
「細胞または生物における遺伝子の機能を調べること」というフレーズは、それから生起する発現、活性、機能または表現型を調べ、または研究することを指す。
【0062】
本発明の種々の方法は、値、レベル、特長、特徴、特性等を、本明細書においては「適切な対照」と相互交換可能に言及される「適当な対照」と比較することを含む工程を含む。「適当な対照」または「適切な対照」は、当業者によく知られた、比較目的で有用な任意の対照または標準である。1つの態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は、本明細書に記載したように、RNAi方法を行うに先立って決定された値、レベル、特長、特徴、特性等である。例えば、転写速度、mRNAレベル、翻訳速度、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞特徴または特性、遺伝子型、表現型等は、本発明のRNAi剤を細胞または生物に導入するに先立って決定することができる。
【0063】
別の態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は、例えば、正常な特性を呈する細胞または生物、例えば、対照または正常な細胞もしくは生物において決定された値、レベル、特長、特徴、特性等である。さらに別の態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は予め規定された値、レベル、特長、特徴、特性等である。
【0064】
本明細書において用いる「治療」または「治療する」は、治療剤(例えば、RNAサイレンシング剤またはベクターまたはそれをコードする導入遺伝子)の患者への適用または投与、あるいは疾病または障害、または疾病もしくは障害の症状を治癒し、治し、軽減し、遅延させ、緩和し、変化させ、救済し、寛解し、改善し、または影響を与える目的での、障害を有する患者からの単離された組織または細胞系への治療剤の適用または投与と定義される。「治療」または「治療する」という用語は、本明細書においては、剤の予防的投与という文脈でも用いられる。「有効な用量」または「有効な投与量」という用語は、所望の効果を達成し、または少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。「治療的に有効な用量」という用語は、既に疾病に罹った患者において疾病およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に停止するのに十分な量と定義される。「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
【0065】
他に定義されない限り、本明細書において用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等な方法および材料を本発明の実施または試験で用いることができるが、適した方法および材料は後に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。コンフリクトがある場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、該材料、方法および実施例は例示的なものに過ぎず、限定的であることを意図しない。
【0066】
本発明の種々の局面を以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載する。
【0067】
核酸分子
1つの態様において、核酸分子はナノトランスポーターを介して標的細胞に送達される。本明細書において、用語「核酸分子」とは、5'〜3'炭素原子の間のホスホジエステル結合によって一緒に連結されたヌクレオチドのポリマーを指す。核酸分子は一般に当技術分野において公知であり、限定されることなく、siRNA、化学修飾siRNA、RNAi剤、miRNA、shRNA、アンチセンス分子、リボザイム等を含む。
【0068】
a)siRNA分子の設計
本発明のsiRNA分子はセンス鎖および相補的アンチセンス鎖からなる二重鎖であり、該アンチセンス鎖は、本明細書において定義されたように、標的特異的RNA干渉(RNAi)を誘導するために標的mRNA配列に対して十分な相補性を有し、すなわち、siRNAは、RNAiの機構またはプロセスによる標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な配列を有する。
【0069】
好ましくは、siRNA分子は約10〜50以上のヌクレオチドの長さを有し、すなわち、各鎖は10〜50のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含む。より好ましくは、siRNA分子は各鎖において約16〜30、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のヌクレオチドを有し、鎖の1つが標的領域に対して十分に相補的である。好ましくは、鎖がアニーリングした場合に整列せずに(すなわち、対向鎖で相補的塩基が生じない)、二重鎖の一方または両方の端部で1、2、または3つの残基の突出が生じる鎖の端部において少なくとも1、2、または3の塩基があるように鎖は整列される。好ましくは、siRNA分子が約10〜50以上のヌクレオチドの長さを有し、すなわち、各鎖は10〜50のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含む。より好ましくは、siRNA分子は各鎖において約16〜30、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のヌクレオチドの長さを有し、鎖の1つは標的領域、例えば、機能獲得遺伝子標的領域に対して実質的に相補的であり、および他の鎖は第一の鎖と同一であるか、または実質的に同一である。
【0070】
一般に、siRNAは、当技術分野において公知のいずれかの方法を用いることによって、例えば、以下のプロトコルを用いることによって設計することができる。
【0071】
1.標的mRNAを選択し、一つまたは複数の標的部位を該標的mRNA内で同定する。これらの部位におけるmRNAの切断の結果、mRNAの分解がもたらされ、対応するタンパク質の生産を妨げる。突然変異体遺伝子の他の領域からの多形もまた標的化するのに適している。
【0072】
好ましい態様において、標的配列はAAジヌクレオチド配列を含み;各AAおよび3'隣接の16以上のヌクレオチドは潜在的なsiRNA標的である。別の好ましい態様において、核酸分子は、例えば、標的mRNAの配列の開始コドンの少なくとも50〜100nt下流で開始する標的mRNA配列の領域から選択される。さらに、より低いG/C含有量(35〜55%)を備えるsiRNAは、55%よりも高いG/C含有量を備えるものよりも活性である。従って、1つの態様において、本発明は35〜55%G/C含有量を有する標的配列を含むが、本発明はこの点に関して限定されない。
【0073】
2.siRNAのセンス鎖は選択された標的部位の配列に基づいて設計される。好ましくは、センス鎖は約19〜25のヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを含む。より好ましくは、センス鎖は、21、22または23ヌクレオチドを含む。しかしながら、当業者であれば、19未満のヌクレオチド、または25を超えるヌクレオチドの長さを有するsiRNAもまた、RNAiを媒介するように機能することもできる。従って、そのような長さのsiRNAもまた本発明の範囲内にあり、但し、それらはRNAiを媒介する能力を保有するものとする。より長いRNAi剤は、望ましくない特定の哺乳動物細胞においてインターフェロンまたはPKR応答を誘発することが示されている。好ましくは、本発明のRNAi剤はPKR応答を誘発しない(すなわち、十分に短い長さのものである)。しかしながら、より長いRNAi剤は、例えば、PRK応答を生じることができない細胞型において、あるいはPKR応答が別の手段によってダウンレギュレートされ、または減衰されている状況において有用である。
【0074】
本発明のsiRNA分子は、siRNAがRNAiを媒介できるように、標的部位に対して十分な相補性を有する。一般に、標的遺伝子のRISC媒介切断を行うのに標的遺伝子の一部に対して十分に同一なヌクレオチド配列を含有するsiRNAが好ましい。従って、好ましい態様において、siRNAのセンス鎖は、標的の一部に対して十分に同一な配列を有しなければならないように設計される。例えば、センス鎖は標的部位に対して100%同一性を有することができる。しかしながら、100%同一性は必要とされない。センス鎖および標的RNA配列の間の80%を越える同一性、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらに100%の同一性が好ましい。本発明は、特定の配列変異に耐えてRNAiの有効性および特異性を高めることができる利点を有する。1つの態様において、センス鎖は標的領域に対して4、3、2、1、または0ミスマッチヌクレオチドを有し、他の鎖は第一の鎖に対して同一であるか、または実質的に同一である。さらに、1または2のヌクレオチドの小さな挿入または欠失を備えるsiRNA配列もまた、RNAiを媒介するのに効果的である。あるいは、ヌクレオチドアナログの置換または挿入を備えるsiRNA配列は阻害に有効であり得る。
【0075】
配列同一性は、当技術分野において公知の配列の比較および整列アルゴリズムによって決定することができる。2つの核酸配列の(または2つのアミノ酸配列の)パーセント同一性を決定するには、配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、最適な整列のために第一の配列または第二の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)位置におけるヌクレオチド(またはアミノ酸残基)を比較する。第一の配列における位置が第二の配列における対応する位置と同一の残基によって占められるならば、分子はその位置において同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一位置の数の関数であり(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の合計数×100)、導入されたギャップの数および/または導入されたギャップの長さに対するスコアを任意で不利にする。
【0076】
配列の比較、および2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。1つの態様において、整列は十分な同一性を有する整列した配列のある部分について生じたが、低い程度の同一性を有する部分については生じなかった(すなわち、局所的整列)。配列の比較で利用される局所的整列アルゴリズムの好ましい非限定的例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77におけるように修飾された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはAltschul, et al. (1990) J.Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)に一体化される。
【0077】
別の態様において、整列は適切なギャップを導入することによって最適化され、整列した配列の長さにわたってパーセント同一性が決定される(すなわち、ギャップを含む整列(gapped alignment))。比較目的でギャップを含む整列を得るためには、Gapped BLASTをAltschul, et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているように利用することができる。別の態様において、整列は適切なギャップを導入することによって最適化され、整列した配列の全長にわたってパーセント同一性が決定される(すなわち、全体的整列)。配列の全体的比較で利用される数学アルゴリズムの好ましい非限定的例は、Myers and Miller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に一体化される。アミノ酸配列を比較するのにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティを用いることができる。
【0078】
3.アンチセンス鎖配列は、所望の標的切断部位に対応するヌクレオチドが実質的に鎖の中央となるように設計される。例えば、21-ヌクレオチドsiRNAを選択すれば、標的切断部位に対応するヌクレオチドは、例えば、ヌクレオチド6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16におけるものである(すなわち、センス鎖の5'末端から6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16ヌクレオチド)。22-ヌクレオチドsiRNAについては、標的切断部位に対応するヌクレオチドは、例えば、ヌクレオチド7、8、9、10、11、12、13、14、15または16である。23-ヌクレオチドsiRNAについては、標的切断部位に対応するヌクレオチドは、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16におけるものである。24-ヌクレオチドsiRNAについては、標的切断部位に対応するヌクレオチドは、例えば、9、10、11、12、13、14または16におけるものである。25-ヌクレオチドsiRNAについては、標的切断部位に対応するヌクレオチドは、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16または17におけるものである。中心から外れた位置に対応するヌクレオチドの移動は、いくつかの場合においては、siRNAによる切断の効率を低下させ得る。そのような組成物、すなわち、より有効でない組成物は、第二の(非標的)mRNAのオフ-サイレンシングが検出された場合、使用が望ましい。
【0079】
センス鎖は、siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖との間に相補性が存在するように設計される。例示的な態様においてsiRNAは、鎖が突出末端、例えば、siRNAの一方、または双方の端部における1、2、3、4、5以上のヌクレオチドの突出を有するように設計される。例示的な突出は、デオキシヌクレオチド突出、例えば、dTdTテイルである。
【0080】
4.siRNAのアンチセンス鎖またはガイド鎖は、ルーチン的にはセンス鎖と同一の長さであり、相補的ヌクレオチドを含む。1つの態様において、ガイド鎖およびセンス鎖は十分に相補的であり、すなわち整列またはアニーリングした場合、鎖は平滑末端となる。別の態様において、siRNAの鎖は、1〜4、例えば、2ヌクレオチドの3'突出を有するように対合することができる。突出は、標的遺伝子配列に対応するヌクレオチド(またはその相補体)を含む(それからなる)ことができる。あるいは、突出はデオキシリボヌクレオチド、例えば、dT、あるいはヌクレオチドアナログ、または他の適当な非ヌクレオチド物質を含む(それからなる)ことができる。従って、別の態様において、核酸分子は、TTのような2ヌクレオチドの3' 突出を有することができる。突出ヌクレオチドはRNAまたはDNAいずれかであり得る。
【0081】
5.当技術分野において公知のいずれかの方法を用い、潜在的な標的を適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラット等)と比較し、他のコード配列に対する有意な相同性を備えるいずれの標的配列も考慮から排除する。そのような配列相同性サーチのための1つのそのような方法はBLASTとして公知であり、これは、National Center for Biotechnology Information websiteで入手可能である。
【0082】
6.評価の基準に合う一つまたは複数の配列を選択する。siRNAの設計および使用についてのさらなる一般的な情報は、The Max-Plank-Institut fur Biophysikalishe Chemie websiteで入手可能な「The siRNA User Guide」で見出すことができる。
【0083】
または、siRNAは、機能上は標的配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)を有するアンチセンス鎖またはガイド鎖を含むと定義することができる(例えば、400 mM NaCl、40 mM PIPES pH 6.4、1 mM EDTA、12〜16時間の50℃または70℃ハイブリダイゼーション;続いて洗浄)。さらなる好ましいハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミドで、1×SSCにおける70℃での、または1×SSCにおける50℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.3×SSCにおける70℃での洗浄、あるいは50%ホルムアミドで、4×SSCにおける70℃、または4×SSCにおける50℃でのハイブリダイゼーション、続いて、1×SSCにおける67℃の洗浄を含む。長さが50塩基対未満であると予測されるハイブリッドのためのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)未満の5〜10℃とすべきであり、Tmは以下の方程式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドではTm(℃) = 2(A + T 塩基の数) + 4(G + C 塩基の数)である。長さが18〜49の間の塩基対のハイブリッドでは、Tm(℃) = 81.5 + 16.6(log10[Na+]) + 0.41(%G+C)-(600/N)であり、Nはハイブリッドにおける塩基の数であって、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSC についての[Na+]= 0.165 M)。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件の更なる例は、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook, J., E.F.Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, chapters 9 and 11, and Current Protocols in Molecular Biology, 1995, F.M. Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4に提供される。
【0084】
陰性対照siRNAは、適切なゲノムに対する有意な配列相補性がない以外は、選択されたsiRNAと同一のヌクレオチド組成を有すべきである。そのような陰性対照は、選択されたsiRNAのヌクレオチド配列をランダムに混ぜることによって設計することができ;相同性サーチを行って、陰性対照が適切なゲノム中のいずれかの他の遺伝子に対する相同性を欠如することを保証することができる。加えて、陰性対照siRNAは、塩基ミスマッチの有意な数を配列に導入することによって設計することができる。
【0085】
7.siRNAが突然変異体mRNA(例えば、ハンチンチン突然変異体のmRNA)を破壊する効率を検証するために、siRNAをショウジョウバエベースのインビトロmRNA発現系における突然変異体cDNA(例えば、ハンチンチン突然変異体のcDNA)と共にインキュベートすることができる。32Pで放射標識し、新たに合成された突然変異体mRNA(例えば、突然変異体ハンチンチンmRNA)はアガロースゲル上でオートラジオグラフィーにより検出される。切断された突然変異体mRNAの存在がmRNAヌクレアーゼ活性を示す。適当な対照はsiRNAの省略を含む。あるいは、前述の対照siRNAを利用する。
【0086】
b)miRNA
miRNAは、植物および動物の発生の間に転写または翻訳後レベルでの遺伝子発現を調節することができるほぼ22ヌクレオチドの非コードRNAである。miRNAの1つの共通する特長は、それらが、全て、恐らくDicer、すなわちRNaseIII-タイプの酵素、またはそのホモログによって、pre-miRNAと呼ばれるほぼ70のヌクレオチド前駆体RNAステムループから切り出されることである。
【0087】
miRNA配列は任意の天然miRNA配列と類似している、または同一であり得る(例えば、The miRNA Registry; Griffiths-Jones S, Nuc. Acids Res., 2004参照)。これまでに1000を超える天然miRNAが同定されており、同時にそれらはゲノム中の全ての予測される遺伝子の約1%を含むと考えられる。多くの天然miRNAはpre-mRNAのイントロンにおいて一緒にクラスター化され、pri-mRNAのステムループ構造を形成する候補miRNA遺伝子の能力を予測する相同性ベースのサーチ(Pasquinelli et al., 2000; Lagos-Quintana et al., 2001; Lau et al., 2001;Lee and Ambros, 2001)またはコンピュータアルゴリズム(例えば、MiRScan, MiRSeeker)を用いてインシリコで同定することができる(Grad et al., Mol. Cell., 2003; Lim et al., Genes Dev., 2003; Lim et al., Science, 2003; Lai EC et al., Genome Bio., 2003)。オンライン登録は、全ての公表されたmiRNA配列のサーチ可能なデータベースを提供する(Sanger Institute website;Griffiths-Jones S, Nuc. Acids Res., 2004におけるThe miRNA Registry)。例示的な天然miRNAはlin-4、let-7、miR-10、mirR-15、miR-16、miR-168、miR-175、miR-196およびそれらのホモログ、ならびにヒト、および国際PCT公開第WO 03/029459号に記載されたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、線虫(Caenorhabditis elegans)、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thalania)、マウス、およびラットを含む、特定ののモデル生物からの他の天然miRNAを含む。
【0088】
天然のmiRNAはインビボにて内因性遺伝子によって発現され、Dicerまたは他のRNAse(Lagos-Quintana et al., Science, 2001; Lau et al., Science, 2001; Lee and Ambros, Science, 2001; Lagos-Quintana et al., Curr. Biol., 2002; Mourelatos et al., Genes Dev., 2002; Reinhart et al., Science, 2002; Ambros et al., Curr. Biol., 2003; Brennecke et al., 2003; Lagos-Quintana et al., RNA, 2003; Lim et al., Genes Dev., 2003; Lim et al., Science, 2003)によってヘアピンまたはステムループ前駆体(pre-miRNAまたはpri-miRNA)からプロセシングされる。miRNAは二本鎖としてインビボで一過的に存在することができるが、1つの鎖のみがRISC複合体によって取り込まれて遺伝子サイレンシングを誘導する。特定のmiRNA、例えば、植物miRNAはそれらの標的mRNAに対して完全な、またはほとんど完全な相補性を有し、よって、標的mRNAの切断を誘導する。他のmiRNAはそれらの標的mRNAに対する完全ではない相補性を有し、よって、標的mRNAの翻訳抑制を誘導する。miRNAおよびその標的mRNAの間の相補性の程度は、その作用メカニズムを決定すると考えられる。例えば、miRNAおよびその標的mRNAの間の完全な、またはほとんど完全な相補性は切断メカニズムを予測し(Yekta et al., Science, 2004)、他方、完全ではない相補性は翻訳抑制メカニズムを予測する。特定の態様において、miRNA配列は、その異常な発現または活性がmiRNA障害と相関する天然のmiRNA配列のそれである。
【0089】
天然のmiRNA前駆体(pre-miRNA)は、一般に相補的な2つの部分を含む二重鎖ステムを形成する一本鎖およびステムの2つの部分を連結するループを有する。典型的なpre-miRNAにおいては、ステムは一つまたは複数のバルジ、例えば、ステムの1つの部分において単一ヌクレオチド「ループ」を作り出す過剰なヌクレオチド、および/またはステムの2つの部分の相互に対するハイブリダイゼーションにおいてギャップを作り出す一つまたは複数の不対ヌクレオチドを含む。本発明の短いヘアピンRNA、または遺伝子操作されたRNA前駆体は、これらの天然のpre-miRNAに基づく人工的な構築物であるが、それは所望のRNAi剤(例えば、本発明のsiRNA)を送達するように遺伝子操作されている。pre-miRNAのステム配列を標的mRNAに相補的な配列に置き換えることによって、shRNAが形成される。shRNAは細胞の全遺伝子サイレンシング経路によってプロセシングされ、それにより、効果的にRNAiを媒介する。
【0090】
標的遺伝子の翻訳抑制による転写後遺伝子サイレンシングが望まれる態様において、miRNA配列は標的遺伝子配列に対して部分的相補性を有する。ある態様において、miRNA配列は、標的mRNA内に(例えば、標的mRNAの3'-UTR内に)分散した一つまたは複数の短い配列(相補性部位)に対して部分的相補性を有する(Hutvagner and Zamore, Science, 2002; Zeng et al., Mol. Cell, 2002; Zeng et al., RNA, 2003; Doench et al., Genes & Dev., 2003)。翻訳抑制のメカニズムは協働的であるので、多数の相補性部位(例えば、2、3、4、5、または6)をある態様においては標的化することができる。
【0091】
c)siRNA様分子
本発明のsiRNA様分子は、RNAiまたは翻訳抑制いずれかによって遺伝子サイレンシングを誘導するために標的mRNA配列に対して「十分に相補的」である配列を有する(すなわち、配列を有する鎖を有する)。siRNA様分子はsiRNA分子と同様にして設計されるが、センス鎖および標的RNAの間の配列同一性の程度は、miRNAおよびその標的の間で観察されるものに近似する。一般に、miRNA配列および対応する標的遺伝子配列の間の配列同一性の程度が減少するにつれ、RNAiよりはむしろ転写抑制による転写後遺伝子サイレンシングを媒介する傾向が増加する。
【0092】
RNAiまたは翻訳抑制を媒介するsiRNA様二重鎖の能力は、相補性の部位における標的遺伝子配列およびサイレンシング剤のヌクレオチド配列の間の非同一ヌクレオチドの分布によって予測することができる。翻訳抑制による遺伝子サイレンシングが望まれる1つの態様において、ガイド鎖および標的mRNAによって形成された二重鎖が中央「バルジ」を含有するように少なくとも1つの非同一ヌクレオチドが相補性部位の中央部分に存在する(Doench JG et al., Genes & Dev., 2003)。別の態様において、2、3、4、5、または6の連続的または非連続的非同一ヌクレオチドが導入される。該非同一ヌクレオチドは、それがゆらぎ塩基対(例えば、G:U)またはミスマッチ塩基対(G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U)を形成するように選択することができる。さらなる好ましい態様において、「バルジ」はsiRNA様分子の5'末端からヌクレオチド位置12および13が中央である。
【0093】
d)二機能性オリゴヌクレオチドテザー(tether)
他の態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、miRNAの細胞間動員で有用な二機能性オリゴヌクレオチドテザーを含む。動物細胞は一定範囲のmiRNA、転写または翻訳後レベルにおいて遺伝子発現を調節することができるほぼ22ヌクレオチドの非コードRNAを発現する。RISCに結合したmiRNAを結合させ、それを標的mRNAに動員させることによって、二機能性オリゴヌクレオチドテザーは、例えば、アテローム動脈硬化症プロセスに関与する遺伝子の発現を抑制することができる。オリゴヌクレオチドテザーの使用は、特定の遺伝子の発現を抑制するための現存の技術よりも優れたいくつかの利点を提供する。第一に、本明細書に記載された方法は、(しばしば、豊富に存在する)内因性分子であるmiRNAがRNAサイレンシングを媒介するのを可能とし;従って、本明細書に記載された方法は、外来性分子(例えば、siRNA)を導入してRNAサイレンシングを媒介する必要性を取り除く。第二に、RNA-サイレンシング剤および、特に、連結部分(例えば、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド)は安定、かつヌクレアーゼ活性に対して抵抗性とすることができる。その結果として、本発明のテザーは直接的送達用に設計することができ、細胞内で所望の剤を作るように設計された前駆体分子またはプラスミドの間接的送達(例えば、ウイルス)に対する必要性を取り除く。第三に、テザーおよびそれらの各部分は、特異的mRNA部位および特異的miRNAに適合するように設計することができる。設計は細胞および遺伝子産物特異的とすることができる。第四に、本明細書において開示された方法はmRNAを無傷のままとし、当業者が、細胞それ自身の機構を用いて短いパルスでタンパク質合成をブロックするのを可能とする。この結果、RNAサイレンシングのこれらの方法は高度に調節可能である。
【0094】
本発明の二機能性オリゴヌクレオチドテザー(「連結体」)は、それらがmiRNA(例えば、内因性細胞miRNA)を標的mRNAに動員して、対象とする遺伝子の変調を誘導するように設計される。好ましい態様において、テザーは式T-L-μを有し、TはmRNA標的化部分であり、Lは連結部分であり、およびμはmiRNA動員部分である。いずれの一つまたは複数の部分も二本鎖とすることができる。しかしながら、好ましくは、各部分は一本鎖である。
【0095】
テザー内の部分は式T-L-μに描かれたように(5'〜3'方向に)配置しまたは連結することができる(すなわち、連結部分の5'末端に連結した標的化部分の3'末端、およびmiRNA動員部分の5'末端に連結された連結部分の3'末端)。あるいは、該部分が以下のようにテザーにおいては配置しまたは連結することができる。μ-T-L(すなわち、連結部分の5'末端に連結されたmiRNA動員部分の3'末端、および標的化部分の5'末端に連結された連結部分の3'末端)。
【0096】
mRNA標的化部分は、前記のように、特異的標的mRNAを捕獲することができる。本発明によると、標的mRNAの発現は望ましくなく、従って、mRNAの翻訳抑制が望まれる。mRNA標的化部分は標的mRNAに効果的に結合するのに十分なサイズとすべきである。標的化部分の長さは、部分的には、標的mRNAの長さ、および標的mRNAおよび標的化部分の間の相補性の程度に依存して大いに変化する。種々の態様において、標的化部分は長さが約200、100、50、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5ヌクレオチド未満である。特定の態様において、標的化部分は長さが約15〜約25ヌクレオチドである。
【0097】
miRNA動員部分は、前記のように、miRNAと会合することができる。本発明によると、miRNAは標的mRNAを抑制することができる任意のmiRNAであってもよい。哺乳動物は250を超える内因性miRNAを有すると報告されている(Lagos-Quintana et al. (2002) Current Biol. 12:735-739; Lagos-Quintana et al. (2001) Science 294:858-862; and Lim et al. (2003) Science 299:1540)。種々の態様において、miRNAは当技術分野において認められた任意のmiRNAであってもよい。
【0098】
連結部分は、標的化部分の活性が維持されるように標的化部分を連結することができる任意の剤である。連結部分は、標的化剤がそれらの各標的と十分に相互作用できるように、好ましくは、十分な数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド部分である。連結部分が、細胞mRNAまたはmiRNA配列とほとんどまたは全く配列相同性を有さない。例示的な連結部分は一つまたは複数の2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルチミジン、2'-O-メチルグアノシンまたは2'-O-メチルウリジンを含む。
【0099】
e)区別性RNAサイレンシング剤
他の局面において、前記の任意のRNAサイレンシング剤を、それらが区別性RNAサイレンシングが可能なように設計することができる。例えば、関連配列のRNAの間を区別するRNAサイレンシング剤(例えば、siRNA)を設計することができる。そのような剤は、関連する非標的mRNA(例えば、疾病対立遺伝子に対応する野生型対立遺伝子に関連するmRNA)を実質的に発現停止させずに、標的mRNA(例えば、疾病関連対立遺伝子多形に関連するmRNA)を発現停止させることができる。ある態様において、区別性RNAサイレンシングが可能なRNAサイレンシング剤は、標的mRNA(例えば、一塩基多形(SNP))における対立遺伝子多形とはワトソン-クリック塩基対を形成するが、標的mRNA(例えば、野生型)における対応するヌクレオチドとはワトソン-クリック塩基対を形成せずに、ミスマッチまたはゆらぎ塩基対となるヌクレオチドを含むことによって設計することができる。例えば、RNAサイレンシング剤は、ミスマッチ(例えば、プリン:プリンミスマッチ)またはゆらぎが、単一ヌクレオチドにおいてsiRNAおよび非標的mRNA(例えば、野生型mRNA)の間に存在するように設計することができる。プリン:プリン対合は、例えば、群G:G、A:G、G:AおよびA:A対合から選択される。さらに、単一ヌクレオチドにおけるsiRNAおよび標的mRNA(例えば、突然変異体mRNA)の間のプリン:ピリミジン対合は、単一ヌクレオチド特異性を高める。プリン:ピリミジン対合は、例えば、群G:C、C:G、A:U、U:A、C:A、A:C、U:AおよびA:U対合から選択される。
【0100】
他の態様において、RNAサイレンシング剤は、siRNAが多形を含むmRNAの対立遺伝子-特異的切断を誘導するように、対立遺伝子多形と反対側に位置する修飾塩基の導入によって非標的mRNAおよび標的mRNA間を区別するように設計することができる。該方法は、参照により本明細書に組み入れる国際PCT公開第WO 04/046324号に記載されている。好ましい態様において、修飾塩基は5-ブロモ-ウリジン、5-ブロモ-シチジン、5-ヨード-ウリジン、5-ヨード-シチジン、2-アミノ-プリン、2-アミノ-アリル-プリン、6-アミノ-プリン、6-アミノ-アリル-プリン、2,6-ジアミノプリンおよび6-アミノ-8-ブロモ-プリンからなる群より選択される。例示的な態様において、修飾塩基は5-ブロモ-ウリジンまたは5-ヨード-ウリジンであり、例えば、点突然変異はアデニンである。別の例示的な態様において、修飾塩基は2,6-ジアミノプリンであり、例えば、点突然変異はチミジンである。
【0101】
f)化学修飾低分子干渉RNA(siRNA)分子
1つの局面において、本発明はRNAi剤、例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む低分子干渉RNA(siRNA)を特徴とし、アンチセンス鎖は、標的特異的RNA干渉(RNAi)を誘導するために標的mRNA配列に十分相補的な配列を有し、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は化学修飾ヌクレオチドでの一つまたは複数のヌクレオチドの置換によって修飾される。1つの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は一つまたは複数の内部化学的修飾で修飾される。本明細書において定義されたように「内部」ヌクレオチドは、核酸分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5'末端または3'末端以外のいずれかの位置で起こるものである。内部ヌクレオチドは一本鎖分子内、または二重鎖の鎖または二本鎖分子内にあり得る。1つの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は5'末端および/または3'末端で修飾される。1つの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は5'末端および3'末端双方において修飾される。本明細書において、用語「末端において修飾された」または「末端修飾」とは、5'末端または3'末端に対して言及するのに用いる場合に、最初および最後のヌクレオチドの10ヌクレオチド内のいずれかのヌクレオチド、例えば、最初および最後のヌクレオチドの7ヌクレオチド内のいずれかのヌクレオチドを指す。1つの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は少なくとも1つの内部ヌクレオチドの置換によって修飾される。別の態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のヌクレオチドの置換によって修飾される。別の態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖はヌクレオチドの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上の置換によって修飾される。さらに別の態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖はヌクレオチドのすべての置換によって修飾される。本発明の方法で使用されるRNAi剤内で、1程度と少ないおよび全てのヌクレオチドと多いオリゴヌクレオチドを修飾することができる。いくつかの態様において、RNAi剤は、コスト有効性を維持しつつインビボ安定性および/または生物接近性の所望のレベルを達成するのに必要な少数の修飾ヌクレオチドを含有する。
【0102】
化学的修飾は、例えばRNAi剤を追跡し、RNAi剤を精製し、またはRNAi剤およびそれが会合する細胞成分を精製するのに用いることができる未修飾RNAi剤または標識と比較して、安定性の増大、例えば、インビボ安定性の増大または増強を導く。そのような化学的修飾を用いて、細胞(または細胞抽出物または生物)においてRISC活性/RNAi応答性を高めるためにsiRNAの最初の(起点)鎖を安定化し、第二の鎖の引き続いての受領のためにその細胞内半減期を改善することもでき、RNAi/遺伝子サイレンシングが直ちに進行することができる。修飾はRNAi剤の細胞摂取および/またはRNAi剤の安定のような特性を増強させ、塩基対の間の相互作用を安定化させることができ、およびアンチセンスRNAi剤標的RNA二重鎖の構造的完全性を維持することができる。RNAi剤修飾は、インビボ用途、特に、ヒト治療用途で重要な特性を、RNAi剤のRNAi活性、例えば、ヌクレアーゼに対するsiRNAまたはmiRNA分子の抵抗性を増加させるための修飾を損なうことなく改良されるように設計することもできる。ある態様において、本発明の修飾siRNA分子は、対応する未修飾siRNAと比較して標的RNA阻害の効果を高めることができる。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、標的RNA配列と塩基対合する場合のA型へリックス立体配座、例えば、標的RNA配列と塩基対合する場合に正常な主溝を含むA型へリックス立体配座をとるアンチセンス鎖の能力に影響しない。
【0103】
化学的修飾は、一般には、リボヌクレオチドに対する末端-、糖-、塩基-および/または骨格修飾を含む(すなわち、リン酸糖骨格に対する修飾を含む)。
【0104】
1つの態様において、本発明のRNAi剤は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3または4)末端修飾を含む。例えば、siRNA分子の5'末端における修飾は、例えば、5'-プロピルアミン基または蛍光分子、例えば、Cy3を含む。5'末端の修飾は、以下の図Iに記載されるような5'末端リン酸基を含むこともできる。

式中、各XおよびYは独立してO、S、N、アルキル、置換されたアルキル、またはアルキルハロであり、各ZおよびWは独立してO、S、N、アルキル、置換されたアルキル、O-アルキル、S-アルキル、アルカリル、アラルキル、アルキルハロ、またはアセチルである。いくつかの態様において、W、X、YおよびZは全てがOではない。siRNA分子の3'OH末端に対する修飾は、限定されることなく、3'-ピューロマイシン、3'-ビオチン(例えば、光切断可能ビオチン)、ペプチド(例えば、Tatペプチド)、ナノ粒子、ペプチド模倣物、有機化合物(例えば、蛍光染料のような染料)、またはデンドリマーを含むことができる。末端修飾はセンス鎖、アンチセンス鎖または双方の上であってもよい。いくつかの態様において、5'修飾はセンス鎖上のみにある。
【0105】
別の態様において、本発明のRNAi剤は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)糖修飾ヌクレオチドを含むことができる。例示的な糖修飾は下記式IIによって表される修飾を含んでもよい:

式中、各R3、R4、R5、R6、R7、R8、R10、R11およびR12は独立してH、OH、アルキル、置換されたアルキル、アルカリルまたはアラルキル、F、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、OCN、O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル、O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル、SO-アルキル、アルキル-OSH、アルキル-OH、O-アルキル-OH、O-アルキル-SH、S-アルキル-OH、S-アルキル-SH、アルキル-S-アルキル、アルキル-O-アルキル、ONO2、NO2、N3、NH2、アミノアルキル、アミノ酸、アミノアシル、ONH2、O-アミノアルキル、O-アミノ酸、またはO-アミノアシル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリルであり;R9はO、S、CH2、S=O、CHF、またはCF2であり、およびBはヌクレオシド塩基である。糖修飾ヌクレオチドは、限定されることなく、2'-フルオロ修飾リボヌクレオチド、2'-OMe修飾リボヌクレオチド、2'-デオキシリボヌクレオチド、2'-アミノ修飾リボヌクレオチドおよび2'-チオ修飾リボヌクレオチドを含む。糖修飾ヌクレオチドは、例えば、2'-フルオロ-シチジン、2'-フルオロ-ウリジン、2'-フルオロ-アデノシン、2'-フルオロ-グアノシン、2'-アミノ-シチジン、2'-アミノ-ウリジン、2'-アミノ-アデノシン、2'-アミノ-グアノシンまたは2'-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジンであり得る。1つの態様において、糖修飾ヌクレオチドは2'-フルオロリボヌクレオチドである。いくつかの態様において、2'-デオキシリボヌクレオチドが存在する場合、それはアンチセンス鎖に言及する切断部位の上流、またはアンチセンス鎖に言及する切断部位の下流にある。2'-フルオロリボヌクレオチドはセンス鎖およびアンチセンス鎖中にあり得る。いくつかの態様において、2'-フルオロリボヌクレオチドはあらゆるウリジンおよびシチジンである。他の態様において、2'-フルオロリボヌクレオチドはセンス鎖、アンチセンス鎖または双方の3'および5'末端においてのみ存在する。
【0106】
別の態様において、本発明のRNAi剤は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)核酸塩基修飾ヌクレオチドを含む。本発明で有用な核酸塩基修飾ヌクレオチドは、限定されることなく、5-位置が修飾されたウリジンおよび/またはシチジン(例えば、5-ブロモ-ウリジン、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-アミノ-アリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、5-フルオロ-シチジン、および5-フルオロ-ウリジン)、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、8位置が修飾されたアデノシンおよび/またはグアノシン(例えば、8-ブロモグアノシン)、デアザヌクレオチド(例えば、7-デアザ-アデノシン)、O-およびN-アルキル化ヌクレオチド(例えば、N6-メチルアデノシン)および非ヌクレオチド-タイプの塩基(例えば、デオキシ脱塩基、イノシン、N3-メチル-ウリジン、N6、N6-ジメチル-アデノシン、プソイドウリジン、プリンリボヌクレオシドおよびリバビリン)を含む。
【0107】
別の態様において、本発明のRNAi剤は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)骨格修飾分子を含む。例えば、骨格修飾は下記式IIIによって表される修飾を含んでもよい:

式中、各R1およびR2は独立して本明細書に記載されたいずれかのヌクレオチドであり、各XおよびYは独立してO、S、N、アルキル、または置換されたアルキルであり、各ZおよびWは独立してO、S、N、アルキル、置換されたアルキル、O-アルキル、S-アルキル、アルカリル、アラルキル、またはアセチルである。いくつかの態様において、W、X、Y、およびZはすべてがOではない。例示的な骨格修飾ヌクレオチドはホスホロチオエート基またはホスホロジチオエートを含有する。別の態様において、本発明の骨格の修飾はホスホノアセテートおよび/またはチオホスホノアセテートヌクレオチド間結合を含む(例えば、Sheehan et al., 2003, Nucleic Acids Research, 31, 4109-4118参照)。骨格修飾はセンス鎖、アンチセンス鎖、またはセンスおよびアンチセンス双方の鎖内とすることができる。いくつかの態様において、ヌクレオチド間結合の一部のみが一方または双方の鎖において修飾されている。他の態様においては、ヌクレオチド間結合の全ては一方または双方の鎖において修飾されている。1つの態様において、修飾されたヌクレオチド間結合は一方または双方の鎖の3'および5'末端におけるものである。
【0108】
別の態様において、本発明のsiRNA分子は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)架橋、例えば、センス鎖がsiRNA二重鎖のアンチセンス鎖に架橋している架橋を含むことができる。本発明で有用な架橋は当技術分野において通常公知のもの、例えば、ソラレン、マイトマイシンC、シスプラチン、クロロエチルニトロソ尿素などである。1つの態様において、本発明の架橋はソラレン架橋である。好ましくは、架橋はアンチセンス鎖に言及する切断部位の下流に存在し、より好ましくは、架橋はセンス鎖の5'末端に存在する。
【0109】
別の態様において、本発明のRNAi剤は、アンチセンス鎖および標的mRNA配列が一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)ミスマッチを含む配列を含む。いくつかの態様において、ミスマッチはアンチセンス鎖に言及する切断部位の下流にあり、例えば、アンチセンス鎖の3'末端から1〜6ヌクレオチド内にある。別の態様において、本発明のRNAi剤は、バルジを含むsiRNA分子;例えば、二重鎖siRNAにおける一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)不対塩基である。いくつかの態様において、バルジはセンス鎖にある。
【0110】
任意の前記組合せを任意の組合せで用いて、本発明の修飾されたRNAi剤を提供することもできると理解されるべきである。例えば、いくつかの態様において、本発明はsiRNAを含み、センス鎖は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)ホスホロチオエートヌクレオチド間結合、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、8、9、10以上の)2'-デオキシ、2'-O-メチル、および/または2'-フルオロ糖修飾、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)塩基修飾ヌクレオチド、および/またはセンス鎖の3'末端、5'末端、あるいは3'-および5'-両末端における末端修飾を含む。いくつかの態様において、本発明はsiRNAを含み、アンチセンス鎖は一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)ホスホロチオエートヌクレオチド間結合、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)2'-デオキシ、2'-O-メチル、および/または2'-フルオロ糖修飾、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)塩基修飾ヌクレオチド、および/またはアンチセンス鎖の3'末端、5'末端、または3'-および5'-両末端における末端修飾を含む。なお他の態様において、本発明はsiRNAを含み、センス鎖およびアンチセンス鎖は共に一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)ホスホロチオエートヌクレオチド間結合、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)2'-デオキシ、2'-O-メチル、および/または2'-フルオロ糖修飾、および/または一つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)塩基修飾ヌクレオチド、および/またはセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の一方または双方の3'末端、5'末端、または3'-および5'末端双方における末端修飾を含む。
【0111】
本発明の修飾RNAi剤(すなわち、二重鎖siRNA分子)は5'末端、3'末端、5'および3'末端において、ならびに/または内部残基において、またはその任意の組合せにおいて修飾することができる。RNAi剤の修飾は、例えば、末端修飾、糖修飾、核酸塩基修飾、骨格修飾であり得、ミスマッチ、バルジまたは架橋を含有することができる。また、3'末端、5'末端、または3'および5'ならびに/または内部修飾が含まれ、修飾は、例えば、架橋剤、ヘテロ機能的架橋剤などである。本発明のRNAi剤は、RNAi剤のインビボ薬学的特性を改良する化学部分(例えば、コレステロール)で修飾することもできる。
【0112】
本発明のある局面においては、本発明の化学修飾siRNAは末端修飾siRNAである。すなわち、siRNAはセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の3'末端および5'末端の一方または双方において修飾されている。ある態様において、化学修飾siRNAはセンスアンチセンス鎖双方の3'末端および5'末端双方において修飾されている。いくつかの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3'末端および/または5'末端は、2または3または4の修飾されたヌクレオチドが末端ごとに(例えば、5〜7末端ヌクレオチド内、例えば、二重鎖内に)取り込まれるように末端修飾されている。いくつかの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3'末端および/または5'末端は、2または3または4の2'-フルオロヌクレオチド、例えば、2'フルオロシチジンおよび/または2'フルオロウラシルが末端ごとに(例えば、5〜7末端ヌクレオチド内、例えば、二重鎖内に)取り込まれるように末端修飾されている。いくつかの態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3'末端および/または5'末端は、2または3または4のヌクレオチド間結合が末端ごとに(例えば、5〜7末端ヌクレオチドの間、例えば、二重鎖内に)ホスホロチオエート結合があるように末端修飾されている。いくつかの態様において、修飾は本明細書に記載された任意の修飾を含む。他の態様において、修飾はホスホロチオエート結合を含む。なお他の態様において、修飾は2'糖修飾を含む。なお他の態様において、修飾は2'-フルオロヌクレオチド修飾を含む。なお他の態様において、修飾はホスホロチオエート結合および2'-フルオロヌクレオチド修飾を共に含む。
【0113】
いくつかの態様において、本発明の化学修飾siRNAは、それぞれ下記式IVに記載の2つの鎖を含む:

式中、
それぞれのcは独立して末端修飾、例えば、式Iによる種であり;
それぞれのmは0または1の整数であり;
−5'配列−および−3'配列−は、各々独立して2〜10のヌクレオチドを含み、該ヌクレオチドはプリンおよびピリミジンヌクレオチドであり、約1〜6個のヌクレオチドは修飾されており、例えば、式IIによる修飾であり、ユニット中の各ヌクレオチド間結合は任意で修飾されており、例えば、式IIIによる修飾であり;
−コア配列−はリン酸ヌクレオチド間結合を介して連結された5〜20個の未修飾ヌクレオチドを含み;および
−5'配列−は任意で修飾されていてもよいヌクレオチド間結合を介して−コア配列−に連結しており、および−コア配列−は任意で修飾されていてもよいヌクレオチド間結合を介して−3'配列−に連結している。
【0114】
いくつかの態様において、−5'配列−は下記式によって表される:

式中、
nは2〜9の整数であり;
pは0〜3の整数であり;
N1は未修飾ヌクレオチドであり;
それぞれのN2は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN2の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;
それぞれのNは、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;および
それぞれのL2およびL3は独立してリン酸結合または式IIIの結合である。
【0115】
いくつかの態様において、それぞれのN2の約2個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN2の約3個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN2の約4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN2の約5個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。
【0116】
いくつかの態様において、それぞれのL2またはL3で式IIIの結合はない。他の態様において、それぞれの(一緒にした)L2およびL3の約2〜5個は式IIIの結合である。例えば、それぞれのL2の1つおよびそれぞれのL3の1つ(L2およびL3が一緒になる場合の合計2個)は、式IIIの結合であり得る。いくつかの態様において、それぞれのL2で式IIIの結合はない。他の態様において、それぞれのL2の約1個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL2の約2個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL2の約4個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL2の約5個は式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのL3で式IIIの結合はない。いくつかの態様において、それぞれのL3の約1個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL3の約2個は式IIIの結合である。
【0117】
いくつかの態様において、センス鎖は式IVの鎖であり、cはCy3末端修飾であり、あるいは式Iおよび−5'配列−による末端修飾は下記式によって表される:

式中、nは4〜9の整数であり;pは0であり;N1は未修飾ヌクレオチドであり;それぞれのN2は未修飾プリンヌクレオチドおよび修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN2の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL2は独立してリン酸結合、または式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのN2の約2〜4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。さらなる態様において、nは5〜7の整数であり、それぞれのN2は未修飾プリンヌクレオチドおよび2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN2の約1〜6個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL2の約1〜4個は式IIIの結合である。なおさらなる態様において、nは6であり、それぞれのN2の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL2の約2〜3個は式IIIの結合である。
【0118】
いくつかの態様において、アンチセンス鎖は式IVの鎖であり、cは5'末端リン酸修飾であって、−5'配列−は下記式によって表される:

式中、nは3〜7の整数であり;pは0〜3であり;N1は未修飾ヌクレオチドであり;それぞれのN2は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され、それぞれのN2の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;それぞれのN3は、未修飾プリンヌクレオチドおよび未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;およびそれぞれのL2およびL3は、独立してリン酸結合または式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのN2の約2〜4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。いくつかの態様において、それぞれのN2は、未修飾プリンヌクレオチドおよび2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN2の約1〜6個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL2はリン酸結合である。なおさらなる態様において、nは6であり;pは0であり;およびそれぞれのN2の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドである。なおさらなる態様において、nは3であり;pは3であり;およびそれぞれのN2の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドである。いくつかの態様において、−5'配列−はシード配列であり、siRNAのヌクレオチド2〜7個を含む。
【0119】
いくつかの態様において、−コア配列−は下記式によって表される:

式中、
qは5〜15の整数であり;
それぞれのN4は未修飾ヌクレオチドであり;および
それぞれのL4は独立してリン酸結合である。
【0120】
当業者であれば、−コア配列−は、例えば、siRNAの活性に干渉することなく、一つまたは複数のヌクレオチド修飾またはヌクレオチド間結合修飾で修飾することができることを理解する。従って、いくつかの態様において、−コア配列−は特定の修飾、例えば、1、2、3、4または5ヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合修飾を含むことができる。ある態様において、−コア配列−は約3未満、約2未満、約1未満の修飾を含有する。
【0121】
いくつかの態様において、−3'配列−は下記式によって表される:

式中、
rは3〜9の整数であり;
sは0〜3の整数であり;
N7は未修飾ヌクレオチドであり;
それぞれのN5は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN5の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;
それぞれのN6は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、;
それぞれのL5およびL6は独立してリン酸結合、または式IIIの結合であり;および
L7は式IIIの結合である。
【0122】
いくつかの態様において、それぞれのN5の約2個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN5の約3個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN5の約4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。他の態様において、それぞれのN5の約5個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。
【0123】
いくつかの態様において、それぞれの(一緒になった)L5およびL6の約2〜5個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL5の約1個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL5の約2個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL5の約4個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL5の約5は式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのL6で式IIIの結合はない。いくつかの態様において、それぞれのL6の約1個は式IIIの結合である。他の態様において、それぞれのL6の約2個は式IIIの結合である。
【0124】
いくつかの態様において、センス鎖は式IVの鎖であり、−3'配列−は下記式によって表される:

ここで、rは4〜9の整数であり;sは0であり;N7は未修飾ヌクレオチドであり;それぞれのN5は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され、それぞれのN5の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL5は、独立して、リン酸結合または式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのN5の約2〜4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。さらなる態様において、rは5〜7の整数であり、それぞれのN5は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され、それぞれのN5の約1〜6個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL5の約1〜4個は式IIIの結合である。なおさらなる態様において、rは6であり、それぞれのN5の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;およびそれぞれのL5の約2〜3個は式IIIの結合である。
【0125】
いくつかの態様において、アンチセンス鎖は式IVの鎖であり、−3'配列−は下記式によって表される:

式中、およびrは3〜7の整数であり;sは0〜3であり;N7は未修飾ヌクレオチドであり;それぞれのN5は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され、それぞれのN5の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;それぞれのN6は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され;およびそれぞれのL5およびL6は、独立して、リン酸結合または式IIIの結合である。いくつかの態様において、それぞれのN5の約2〜4個は修飾ピリミジンヌクレオチドである。いくつかの態様において、それぞれのN5は、独立して、未修飾プリンヌクレオチドおよび2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より選択され、それぞれのN5の約1〜6個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドであり;それぞれのL5の約2〜4個は式IIIの結合である。なおさらなる態様において、rは6であり;sは0であり;およびそれぞれのN5の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドである。なおさらなる態様において、rは5であり;sは1であり;およびそれぞれのN2の約2〜4個は2'-フルオロ修飾ピリミジンヌクレオチドである。
【0126】
従って、ある態様において本発明の化学修飾siRNAは、それぞれ下記式Vに記載の2つの鎖を含む:

式中、c、m、n、p、q、r、s、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、L2、L3、L4、L5、L6およびL7は全て前記定義の通りである。例えば、m、n、p、q、rおよびsに関する、および/またはそれぞれの修飾および未修飾N2、N3、N4、N5、N6、L2、L3、L4、L5およびL6の数に関する、本明細書に列挙された値および範囲の間の全ての整数の値および範囲は本発明に包含されることを意味することが理解されるべきである。
【0127】
具体的な修飾は、限定されることなく、図1ならびに以下の表1に示されたものを含む。
【0128】
(表1)例示的な化学修飾siRNA(標的ApoB)

【0129】
いくつかの態様において、本発明のRNAi剤は核局在化/核標的化シグナルを含有することもできる。そのような修飾は、本明細書に記載された他の修飾の任意の組合せを除いて、またはそれに加えて行うことができる。核標的化シグナルは、例えば、NLSシグナル配ペプチドを含む分子への核局在化を行うことができる、当技術分野で認められた任意のシグナルを含む。
【0130】
さらに、RNAiは少なくとも1つの一本鎖RNA中間体を介して進行すると考えられるので、当業者であれば、ss-siRNA(例えば、ds-siRNAのアンチセンス鎖)もまた、本明細書に記載されたように設計することができ、主張する方法論に従って利用することができることを認識する。
【0131】
オリゴヌクレオチドRNAi剤は酵素的にあるいは部分的/全体的有機合成によって製造することができる。1つの態様において、RNAi剤、例えば、siRNAは化学的に調製される。RNAおよびDNA分子を合成する方法、特に、Verma and Eckstein (1998) Annul Rev. Biochem. 67:99-134に記載された化学合成方法は当技術分野において公知である。RNAは、溶媒または樹脂、沈殿、電気詠動、クロマトグラフィーまたはその組合せによる抽出によって混合物から精製することができる。あるいは、RNAを全く精製せずに、または最小の精製にて用いて、試料処理による喪失を回避することができる。あるいは、RNA分子、例えば、RNAiオリゴヌクレオチドは、合成DNA鋳型からの、あるいは組換え細菌から単離されたDNAプラスミドからの酵素転写によって調製することもできる。典型的には、T7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼ(Milligan and Uhlenbeck (1989) Methods Enzymol. 180:51-62)のようなファージRNAポリメラーゼを用いる。RNAは貯蔵のために乾燥し、または水溶液に溶解させることができる。溶液は、アニーリングを阻害し、および/または一本鎖の安定化を促進するために緩衝液または塩を含有することができる。
【0132】
1つの態様において、siRNAはインビボ、インサイチュー、またはインビトロいずれかで合成される。細胞の内因性RNAポリメラーゼはインビボまたはインサイチューにて転写を媒介することができるか、あるいはクローン化RNAポリメラーゼをインビボまたはインビトロにて転写で用いることができる。インビボでの導入遺伝子または発現構築体からの転写では、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化)を用いてsiRNAを転写することができる。阻害は器官、組織、または細胞型における特異的転写;環境条件(例えば、感染、ストレス、温度、化学的インデューサー)の刺激;および/または発生段階または年齢におけるエンジニアリング転写によって標的化できる。組換え構築体からのsiRNAを発現するトランスジェニック生物は、該構築体を接合体、胚幹細胞、または適当な生物に由来する別の多能細胞に導入することによって製造することができる。
【0133】
標的ならびにいずれかの他の調査したRNAおよびタンパク質の発現レベルは、非転写核酸、および転写された核酸またはタンパク質の発現を検出するための広く種々の周知の方法のいずれかによって評価することができる。そのような方法の非限定的例はRNAのRT-PCR、続いての、PCR産物のサイズ分離、核酸ハイブリダイゼーション方法、例えば、ノーザンブロッドおよび/または核酸アレイの使用;核酸増幅方法;タンパク質の検出用の免疫学的方法;タンパク質精製方法;およびタンパク質機能または活性のアッセイを含む。RNA発現レベルは、細胞、組織または生物からmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)を調製することによって、およびアッセイされた核酸の相補体である参照ポリヌクレオチド、またはその断片とmRNA/cDNAとをハイブリダイズすることによって評価することができる。cDNAは、任意で、相補的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに先立って種々のポリメラーゼ鎖反応またはインビトロ転写方法のいずれかを用いて増幅することができ;好ましくは、それは増幅されない。一つまたは複数の転写体の発現は、定量的PCRを用いて検出して、転写体の発現のレベルを評価することもできる。
【0134】
ノックアウトおよび/またはノックダウン細胞または生物
本発明のsiRNA分子(またはそれをコードするベクターまたは導入遺伝子)でのさらなる好ましい使用は、真核細胞、または真核非ヒト生物、好ましくは哺乳動物細胞または生物、最も好ましくはヒト細胞、例えば、HeLaまたは293またはげっ歯類、例えば、ラットおよびマウスのような細胞系で行われる機能分析である。標的mRNA配列に十分相補的な適当なsiRNA分子を投与して、標的特異的RNA干渉を誘導することによって、特異的ノックアウトまたはノックダウン表現型が標的細胞において、例えば、細胞培養において、または標的生物において得ることができる。
【0135】
従って、本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの内因性標的遺伝子の十分にまたは少なくとも部分的に欠陥がある発現を含む標的遺伝子特異的ノックアウトまたはノックダウン表現型を呈する真核細胞または真核非ヒト生物であり、該細胞または生物は、標的遺伝子の発現を阻害することができるsiRNA分子をコードするDNAを含む少なくとも1つのベクターでトランスフェクトする。本発明は、siRNAiの特異性のため、いくつかの異なる内因性遺伝子の標的特異的ノックアウトまたはノックダウンを可能とすることに注意すべきである。
【0136】
細胞または非ヒト生物、特に、ヒト細胞または非ヒト哺乳動物の遺伝子特異的ノックアウトまたはノックダウン表現型は、手法に対する分析において、例えば、遺伝子発現プロフィールおよび/またはプロテオームの分析のような複雑な生理学的プロセスの機能的および/または表現型分析において用いることができる。好ましくは、該分析はオリゴヌクレオチドベースのチップを用いてハイスループット方法によって行われる。
【0137】
mRNA標的
1つの態様において、本発明の標的mRNAは細胞タンパク質(例えば、核、細胞質、膜貫通、または膜結合タンパク質)のアミノ酸配列を特定する。ある態様において、本発明の標的mRNAは細胞外タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質または分泌されたタンパク質)のアミノ酸配列を特定する。本明細書において、フレーズ、タンパク質の「アミノ酸配列を特定する」は、mRNA配列が遺伝子暗号の規則に従ってアミノ酸配列に翻訳されることを意味する。タンパク質の以下のクラスを説明目的で列挙する。発生タンパク質(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害剤、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、ウィングド(Winged)ラセンファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそれらの受容体、成長/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびそれらの受容体);オンコジーンにコードされたタンパク質(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBEA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SRC、TALI、TCL3、およびYES);腫瘍抑制タンパク質(例えば、APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53、およびWTI);および酵素(例えば、ACCシンターゼおよびオキシダーゼ、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP-グルコースピロフォリラーゼ、ATPase、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、カルコンシンターゼ、キチナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリイナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、顆粒結合澱粉シンターゼ、GTPase、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ、インテグラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、フィターゼ、植物成長レギュレーターシンターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、プラナーゼ、レコンビナーゼ、逆転写酵素、RUBISCO、トポイソメラーゼ、およびキシラナーゼ)。
【0138】
本発明の好ましい局面において、本発明の標的mRNA分子は病理学的疾患に関連するタンパク質のアミノ酸配列を特定する。例えば、タンパク質が病原体関連タンパク質(例えば、宿主の免疫抑制、病原体の複製、病原体の伝播、または感染の維持に関与するウイルスタンパク質)、または病原体の宿主への進入、病原体または宿主による薬物代謝、病原体のゲノムの複製または統合、宿主における感染の確立または拡大、または病原体の次世代の組立てを容易とする宿主タンパク質であってもよい。あるいは、タンパク質は腫瘍関連タンパク質または自己免疫疾患関連タンパク質であってもよい。
【0139】
1つの態様において、本発明の標的mRNA分子は内因性タンパク質(すなわち、細胞または生物のゲノムに存在するタンパク質)のアミノ酸配列を特定する。別の態様において、本発明の標的mRNA分子は、組換え細胞または遺伝的に改変された生物で発現された異種タンパク質のアミノ酸配列を特定する。別の態様において、本発明の標的mRNA分子は、導入遺伝子(すなわち、細胞のゲノムにおける異所性部位に挿入された遺伝子構築体)によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を特定した。さらに別の態様において、本発明の標的mRNA分子は、細胞、または該細胞が由来する生物を感染させることができる病原体ゲノムによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を特定する。
【0140】
そのようなタンパク質の発現を阻害することによって、該タンパク質の機能、および該阻害から得ることができる治療的恩典に関する価値ある情報を得ることができる。
【0141】
SOD-1遺伝子
1つの態様において、標的mRNAがSOD1のmRNAである。SOD1は、1つの銅および1つの亜鉛も含有し、ホモダイマーとして細胞質に存在する金属酵素である。銅は酵素活性に必要であり、他方、亜鉛はタンパク質の構造を安定化する(Fridovich, 1986)。SOD1は全ての真核細胞において発現され、マンガン依存性、ミトコンドリアSOD (SOD2)および銅/亜鉛細胞外SOD (SOD3)(I Fridovich, 1986, 「Superoxide dismutases,」 Advances in Enzymology 58:61-97)を含む3つのSOD酵素のファミリーの1つである。SOD1の主な天然の機能はスーパーオキシド不均化であり、超酸化物(O2-)が過酸化水素(H2O2)および酸素に変換される。下流の酵素の(H2O2を水および酸素に変換する)カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼと一緒になって、SOD1は細胞フリーラジカルを解毒する。この機能の重要性は、低下した稔性(Matzuk et al., 1998)、運動軸索変性症(Shefner et al., 1999)、蝸牛有毛細胞(McFadden et al., 2001)、および神経筋肉接合シナプス(Flood et al., 1999)の増大した年齢関連喪失、ならびに軸索負傷(Reaume et al., 1996)、虚血症(Kondo et al., 1997; Kawase et al., 1999)、溶血産物暴露(Matz et al., 2000)および照射(Behndig et al., 2001)のような神経系に対する種々の有毒な攻撃に対する増強された感受性を含むSOD1遺伝子を欠如するマウスにおける多数の異常によって理解される。突然変異体タンパク質の毒性、および野生型の機能的重要性を仮定すれば、ALSについての理想的療法は、野生型SOD1タンパク質の発現と比較した、突然変異体SOD1タンパク質の発現を優先的にブロックするであろう(例えば、ノックダウン)。
【0142】
本発明のいくつかの態様において、siRNAは内因性および突然変異体mRNAの双方をノックダウンする。例えば、図3、5および6に見られるように、内因性SODは化学修飾siRNAならびに未修飾shRNAを用いてノックダウンすることができる。突然変異体の半減期は野生型SOD1の半減期よりも一般に短い(すなわち、突然変異体は野生型よりも安定性は低い)ので、本発明のRNAi剤は突然変異体SOD1の機能を選択的に、あるいは少なくとも部分的に選択的にノックダウンする。突然変異体SOD1のノックダウンはマウスの余命を約20〜35%増加させることが示されており(例えば、図7参照)、ヒトにおける突然変異体SOD1の発現はトランスジェニック動物よりもかなり低いゆえに、いずれかの特定の理論に拘束されるつもりはないが、ヒトにおける突然変異体SOD1のRNAiノックダウンはより劇的であろうと考えられる。従って、ALS患者における30〜50%寿命の獲得は正常なヒト寿命に換算される。
【0143】
いくつかの態様において、本発明のsiRNAはRNAiを介して突然変異体SOD1を優先的にノックダウンする。siRNAのニューロンへの導入の後に、siRNAは部分的にほどかれ、突然変異体および内因性SOD1のmRNA双方内の標的領域に結合し、mRNAヌクレアーゼを活性化する。このヌクレアーゼはSOD1のmRNAを切断し、細胞は部分的に消化されたmRNAから逃れ、従って、翻訳を妨害し、あるいは細胞は部分的に翻訳されたタンパク質を消化する。ニューロンは(正常な対立遺伝子からの)残存する野生型SOD1に生存し;このアプローチは、その生産を排除することによって突然変異体SOD1の破壊を妨げる。
【0144】
ヒトSOD1のmRNA配列を図8に示す。
【0145】
SOD-1突然変異体遺伝子
100より多いSOD1突然変異が同定されている。これらの突然変異のほとんどは、アミノ酸のスーパーオキシドジスムターゼ酵素の鎖において単一のアミノ酸置換を生じる。1型筋萎縮性側索硬化症に罹った米国人患者の50パーセントで起こる最も普通の置換は、(Arg4Valとも書かれる)アミノ酸鎖における4位でのアルギニンのバリンでの置換である。
【0146】
SOD1突然変異は、1型筋萎縮性側索硬化症の症状が始まる年齢、およびどれくらい速く疾病が進行するかに影響する。Arg4Val突然変異の結果、例えば疾病開始から2年未満の生存時間を備える障害の攻撃的形態がもたらされる。37位におけるグリシンのアルギニンでの置換(Gly37Arg)は、より長い生存時間ではなく疾病の早い開始に関連する。加えて、SOD1突然変異と組み合わせた他の因子は、恐らくは、1型筋萎縮性側索硬化症のコースを変化させる。例えば、SOD1遺伝子およびCNTFとして公知の遺伝子双方における突然変異は、疾病の開始を加速するように見える。CNTF突然変異単独では悪い影響を及ぼさないが、SOD1突然変異と組み合わされると、疾病の症状は影響を受けた他のファミリーメンバーと比較して数十年早いように思われる。
【0147】
筋肉の運動を制御する脳および脊髄中の特殊化された神経細胞である運動ニューロンの選択的死滅にどのようにしてSOD1突然変異が導くかは明らかでないままである。スーパーオキシドジスムターゼ酵素は、SOD1遺伝子における変化の結果として新しい(が、依然としてはっきりとしない)毒性機能を獲得すると考えられる。機能不全酵素は、有害なスーパーオキシドラジカルの蓄積、他のタイプの毒性ラジカルの異常な生産、細胞自殺(アポトーシス)の促進、酵素の他の細胞タンパク質とのクランピング、またはそれらが燃え尽き、死滅させる運動ニューロンの継続的刺激(興奮毒性)を介して運動ニューロンの死滅を引き起こしかねない。SOD1に対する例示的突然変異を以下に表2に示す。
【0148】
(表2)SOD1突然変異



【0149】
治療方法
本発明は、障害の危険性がある(またはそれに罹りやすい)、または異常なまたは望まない標的遺伝子発現または活性に関連する障害を有する対象を治療する予防的および治療的方法を共に提供する。「治療」または「治療する」は、本明細書において、疾病または障害、疾病もしくは障害の症状、または疾病に向けての素因を治癒し、治し、軽減し、遅延させ、救済し、変化させ、矯正し、緩和し、改善し、または影響させることを目的として、疾病または障害、疾病もしくは障害の症状、または疾病または障害に向けての素因を有する患者への治療剤(例えば、核酸分子および/または医薬剤)の患者への適用または投与、あるいは患者から単離された組織または細胞系への治療剤の適用または投与と定義される。
【0150】
治療の予防的および治療的方法双方に関して、そのような治療は、薬理ゲノミクスの分野から得られた知識に基づいて、具体的に仕立てまたは修飾することができる。「薬理ゲノミクス」とは、本明細書において、臨床開発中の、および市販の薬物に対する遺伝子配列決定、統計学的遺伝学、および遺伝子発現分析のようなゲノミクス技術の適用を指す。より具体的には、該用語は、どのようにして患者の遺伝子が薬物に対する彼または彼女の応答を決定するかの研究を指す(例えば、患者の「薬物応答表現型」または「薬物応答遺伝子型」)。従って、本発明の別の局面は、本発明の核酸分子および/または医薬剤、あるいはその個体の薬物応答遺伝子型による標的核酸分子および/または医薬剤での個人の予防的または治療的処置を仕立てる方法を提供する。薬理ゲノミクスは、臨床家または医師が、治療から最も恩典を受ける患者に対して予防または治療処置を標的化し、および毒性薬物関連副作用を経験するであろう患者の治療を回避することを可能とする。
【0151】
a)予防的方法
1つの局面において、本発明は、対象に治療剤(例えば、核酸分子、および/または医薬剤)を投与することによって、異常なまたは望まない標的遺伝子発現または活性に関連する疾病または疾患を対象において予防する方法を提供する。異常なまたは望まない標的遺伝子発現または活性によって引き起こされた、またはそれによって寄与された疾病の危険性がある対象は、例えば、本明細書に記載された診断または予後アッセイのいずれかまたは組合せによって同定することができる。予防剤の投与は、疾病または障害が予防され、あるいは別法としてその進行が遅延されるように、標的遺伝子異常の特徴的な症状の発現に先立って行うことができる。標的遺伝子異常のタイプに依存して、例えば、標的遺伝子、標的遺伝子アゴニストまたは標的遺伝子アンタゴニスト剤を、対象を治療するのに用いることができる。適当な剤は、本明細書に記載されたスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0152】
b)治療的方法
本発明の別の局面は、治療目的で、標的遺伝子発現、タンパク質発現または活性を変調する方法に関する。従って、例示的態様において、本発明の変調方法は、標的遺伝子を発現することができる細胞を、標的タンパク質の発現または標的タンパク質の活性の一つまたは複数を変調するように標的遺伝子またはタンパク質に対して特異的な(例えば、該遺伝子によってコードされたmRNAに特異的な、または該タンパク質のアミノ酸配列を特定する)治療剤(例えば、核酸分子および/または医薬剤)と接触させることを含む。これらの変調方法は、(例えば、細胞を標的と共に培養することによって)インビトロによって、あるいは別法として、(例えば、該剤を対象に投与することによって)インビボにて行うことができる。それ自体、本発明は、標的遺伝子ポリペプチドまたは核酸分子の異常なまたは望まない発現または活性によって特徴付けられる疾病または障害に罹った個体を治療する方法を提供する。標的遺伝子活性の阻害は、標的遺伝子が異常に調節されていない、および/または減少した標的遺伝子活性が有益な効果を有する可能性が高いある状況で望ましい。
【0153】
c)薬理ゲノミクス
本発明の治療剤(例えば、核酸分子および/または医薬剤)を個体に投与して、異常なまたは望まない標的遺伝子活性に関連する障害を(予防的または治療的に)処置することができる。そのような治療と組み合わせて、薬理ゲノミクス(すなわち、個体の遺伝子型および外来性化合物または薬物に対するその個体の応答の間の関係の研究)を考慮することができる。治療剤の代謝の差は、薬学的に活性な薬物の用量および血中濃度の間の関係を変化させることによって、ひどい毒性または治療的失敗に導きかねない。従って、医師または臨床家は、治療剤を投与するか否かを決定し、ならびに治療剤での治療の用量および/または治療計画を仕立てるにおいて関連薬理ゲノミクス研究で得られた知識を適用しようと考えることができる。
【0154】
薬理ゲノミクスは、冒された個人における改変された薬物の処分および異常な作用による薬物に対する応答における臨床的に有意な遺伝的変異を取り扱う。例えば、Eichelbaum, M. et al. (1996) Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 23(10-11): 983-985 and Linder, M.W. et al. (1997) Clin. Chem. 43(2):254-266参照。一般に、2つのタイプの遺伝薬理学的疾患を区別することができる。薬物が身体に作用する方法を改変する単一因子として伝達される遺伝的疾患(改変された薬物作用)または身体が薬物に作用する方法を改変する単一因子として伝達される遺伝的疾患(改変された薬物代謝)。これらの遺伝薬理学的疾患は、稀な遺伝的欠陥としてまたは天然の多形として起こり得る。
【0155】
「ゲノム幅関連」として公知の薬物応答を予測する遺伝子を同定する1つの薬理ゲノミクスアプローチは、主として、既に知られた遺伝子関連マーカーからなるヒトゲノム高分解能地図(例えば、その各々が2つの変種を有する、ヒトゲノム上の60,000〜100,000多形または可変部位からなる「二対立遺伝子」遺伝子マーカー地図)に依拠する。そのような高分解能遺伝子地図は、特定の観察された薬物応答または副作用に関連するマーカーを同定するための相II/III薬物試験に参画する統計学的に有意な数の患者の各々のゲノムの地図と比較することができる。あるいは、そのような高分解能地図は、ヒトゲノムにおける数千万の公知の一塩基多形(SNP)の組合せから生じさせることができる。本明細書において「SNP」はDNAのストレッチにおける単一ヌクレオチド塩基で起こる通常の改変である。例えば、SNPはDNAの千塩基毎当たり一回起こり得る。SNPは疾病プロセスに関連し得るが、ほとんど大部分は疾病関連ではない。そのようなそれぞれのSNPに基づく遺伝子地図を仮定すれば、個人は、彼らの個々のゲノム中のSNPの特定のパターンに依存して遺伝子カテゴリーに分類することができる。そのようにして、そのような遺伝子的に同様な個体の中で共通であり得る特性を考慮して、治療計画を遺伝子的に同様な個体の群に仕立てることができる。
【0156】
あるいは、「候補遺伝子アプローチ」といわれる方法を利用して、薬物応答を予測する遺伝子を同定することができる。この方法に従うと、薬物標的をコードする遺伝子が知られていれば(例えば、本発明の標的遺伝子ポリペプチド)、その遺伝子の全ての共通の変種は集団においてかなり容易に同定することができ、遺伝子の1つのバージョン対別のバージョンを有することが特定の薬物応答に関連するかを決定することができる。
【0157】
あるいは、「遺伝子発現プロファイリング」といわれる方法を利用して、薬物応答を予測する遺伝子を同定することができる。例えば、本発明の治療剤を投与した動物の遺伝子発現は、毒性に関連する遺伝子経路にスイッチが入れられたか否かの表示を与えることができる。
【0158】
1より多い前記の薬理ゲノミクスアプローチから生じた情報を用いて、個体としての予防的または治療的処置のための適当な用量および治療計画を決定することができる。この知識は、投与または薬物選択に適用した場合、有害な反応または治療的失敗を回避し、従って、本明細書に記載したように、対象を治療剤で治療した場合に治療的または予防的効率を高めることができる。
【0159】
治療剤は適当な動物モデルにおいて試験することができる。例えば、本明細書に記載したsiRNA(またはそれをコードする発現ベクターまたは導入遺伝子)は、動物モデルで用いて、該剤での治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、治療剤を動物モデルで用いて、そのような剤の作用メカニズムを決定することができる。例えば、剤は動物モデルで用いて、そのような剤での治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、剤を動物モデルで用いて、そのような剤の作用メカニズムを決定することができる。
【0160】
疾病の表示
本発明の組成物は、細胞増殖および/または分化障害、骨代謝に関連する障害、免疫障害、造血障害、心血管障害、肝障害、ウイルス病、疼痛または代謝障害の一つまたは複数を制御するための新規な治療剤として作用することができる。
【0161】
いくつかの態様において、本発明はALSに対する治療剤として作用する。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋運動を制御する中枢神経系における神経細胞が徐々に変性することによって特徴付けられる慢性進行性疾病である。ALS患者においては、運動ニューロンの変性および喪失は、主として、脊髄および脳幹の前角で起こり、程度は変化するが、皮質脊髄路内の下降運動経路において起こる(Deng et al., 1993; Rothstein et al., 1995)。ALSは進行性筋萎縮症、脆弱、麻痺、および、最終的に呼吸器系不全による死亡に導く。
【0162】
ALSは2つの形態で起こる:家族性ALS(FALS)、および散在性ALS(SALS)。FALSは遺伝の常染色体優性パターンを備える全ての症例の5〜10%を含む(Gurney et al., 1994; Rosen et al., 1993)。全てのFALS症例のほぼ20%はSOD1遺伝子における突然変異に関連する。
【0163】
細胞増殖および/または分化障害の例は癌、例えば、癌腫、肉腫、転移性障害、または造血系新形成障害、例えば、白血病を含む。転移性腫瘍は、限定されることなく、前立腺、結腸、肺、胸および肝臓起源のものを含む多数の主な腫瘍タイプから生起することができる。
【0164】
本明細書において、「癌」、「過剰増殖」および「新形成」とは、自律増殖、すなわち、迅速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態または疾患に対する能力を有する細胞を指す。過剰増殖および新形成疾病状態は、すなわち、疾病状態を特徴付けるまたは構成する病理としてカテゴリー化することができ、あるいは非病理、すなわち、疾病状態に関連することを除いて正常からの逸脱としてカテゴリー化することができる。該用語は、組織病理学的タイプまたは侵入の段階に関わらず、全てのタイプの癌性成長または癌遺伝子プロセス、転移性組織または悪性に形質転換された細胞、組織または器官を含むことを意味する。「病理学的過剰増殖」細胞は、悪性腫瘍成長によって特徴付けられる疾病状態で起こる。非病理学的過剰増殖細胞の例は、創傷修復に関連する細胞の増殖を含む。
【0165】
用語「癌」または「新生物」は、冒されている肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸および尿生殖路のような種々の器官系の悪性疾患、ならびにほとんどの結腸癌、腎臓細胞癌、前立腺癌および/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌および食道の癌のような悪性疾患を含む腺癌を含む。
【0166】
用語「癌腫」は当技術分野において認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫、およびメラノーマを含む上皮または内分泌組織の悪性疾患を指す。例示的な癌腫は頸部、肺、前立腺、乳房、頭部および首、結腸および卵巣の組織から形成されるものを含む。該用語は、例えば、癌性および肉腫組織からなる悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」とは、腺組織に由来する、あるいは腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
【0167】
用語「肉腫」は当技術分野において認識されており、間葉由来の悪性腫瘍を指す。
【0168】
増殖性障害のさらなる例は造血系新形成障害を含む。本明細書において、用語「造血系新形成障害」は造血系起源の、例えば、骨髄系、リンパ系または赤血球系、またはその前駆体細胞から生起する過剰形成/新形成細胞が関連する疾病を含む。好ましくは、該疾病はあまり分化していない急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生起する。さらなる例示的な骨髄系障害は、限定されることなく、急性前骨髄白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus, L. (1991) Crit Rev. in Oncol./Hemotol. 11:267-97に概説されている)を含み;リンパ系悪性疾患は、限定されることなく、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含み、これはB-系ALLおよびT-系ALL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞白血病(HLL)およびワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)を含む。悪性リンパ腫のさらなる形態は、限定されることなく、非ホジキンリンパ腫およびその変形、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T-細胞リンパ腫(CTCL)、大腺リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病およびリードシュテルンベルグ病を含む。
【0169】
一般に、本発明の組成物は特定の障害に関連する遺伝子を標的化するように設計される。標的化することができる増殖性障害に関連するそのような遺伝子の例は活性化されたras、p53、BRCA-1、およびBRCA-2を含む。標的化することができる他の特異的遺伝子は筋萎縮性側索硬化症(ALS;例えば、スーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1));ハンチントン病(例えば、ハンチンチン)、パーキンソン病(パーキン)に関連するもの、および常染色体優性障害に関連する遺伝子である。
【0170】
本発明の組成物を用いて、種々の免疫障害、特に、遺伝子の過剰発現または突然変異体遺伝子の発現に関連するものを治療することができる。造血障害または疾病の例は、限定されることなく、自己免疫疾患(例えば、真性糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎)、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身エリテマトーデス、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹皮膚炎を含む)、乾癬、シェーングレン症候群、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性結腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬物発疹、ハンセン病逆反応、らい性結節性紅斑、自己免疫ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳障害、特発性両側進行性感覚神経聴力喪失、無形成性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間質性肺線維症を含む)、移植片対宿主病、移植の症例、およびアトピー性アレルギーのようなアレルギーを含む。
【0171】
心臓または「心血管障害」に関連する障害の例は、限定されることなく、心血管系、例えば、心臓、血管、および/または血液に関連する疾病、障害または状態を含む。心血管障害は動脈圧のアンバランス、心臓の機能不全、または例えば血栓による血管の閉塞によって引き起こされ得る。そのような障害の例は、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈スパズム、鬱血性心不全、冠動脈疾患、弁膜症、不整脈、および心筋障害を含む。
【0172】
本明細書に記載された方法によって治療することができる障害は、限定されることなく、予め存在する線維の崩壊および凝集が伴う細胞外マトリックスの生産および分解の間のアンバランスに由来するもののような、線維組織の肝臓における蓄積を伴う障害を含む。
【0173】
加えて、本発明の分子を用いて、限定されることなく、B型肝炎、C型肝炎、単純疱疹ウイルス(HSV)、HIV-AIDS、ポリオウィルス、および天然痘ウイルスを含むウイルス病を治療することができる。本発明の分子は、ウイルスの発現された配列を標的化し、従って、ウイルスの活性および複製を緩和するように本明細書に記載されたように遺伝子操作する。該分子は、ウイルス感染組織の治療および/または診断で用いることができる。また、そのような分子は、肝細胞癌のようなウイルス関連癌腫の治療で用いることができる。
【0174】
ナノトランスポーター
1つの態様において、本発明はナノトランスポーターに関する。本発明のナノトランスポーターは、少なくとも1つの表面官能基が結合した中心コアを含む。種々の分子は、所望の標的、例えば、細胞または組織への送達用のナノトランスポーターと会合することができる。ナノトランスポーターと会合することができる分子は、限定されることなく、核酸分子および/または医薬剤を含む。
【0175】
1つの態様において、ナノトランスポーターのコアはナノチューブ、例えば、カーボンナノチューブである。本発明で用いるナノチューブは単一壁(「SWNT」)または多壁(「MWNT」)いずれかであり得る。SWNTは、直径が約1ナノメートル、および長さが約1〜約100ミクロンである単一チューブである。MWNTは、その中に埋め込まれた少なくとも1つの他のチューブを備えるチューブである。
【0176】
1つの態様において、ナノトランスポーターのコアはナノ粒子である。本発明のナノ粒子は、限定されることなく、デンドリマーを含む。デンドリマーは、よく規定された人工物を備える高度に分岐されたポリマーである。多くのデンドリマーは商業的に入手可能である。本発明のデンドリマーは、限定されることなく、とりわけ、ポリリシンデンドリマー、ポリアミドアミン(PAMAM):アミン末端および/またはPAMAM:(例えば、Dendritech, Inc., Midland, MIから入手可能な)カルボン酸末端;ジアミノブタン(DAB)-DAB:アミン末端および/またはDAB:カルボン酸末端;およびPEG:OH末端(Frechet et al., JACS 123:5908 (2001))を含む。1つの態様において、ポリリシンデンドリマーまたはその変種が用いられる。
【0177】
本発明の1つの局面において、種々の表面官能基はナノトランスポーターのコアに結合されている。本明細書において、用語「表面官能基」とは、コアへの結合に際して、ナノトランスポーターの機能性を増大させて、例えば、細胞標的化特異性を増加させ、ナノトランスポーターの標的細胞への送達を増大させ、および/または正確な生物学的機能を付与する分子を指す。本発明の表面官能基の例は、限定されることなく、脂質、脂肪酸および誘導体、蛍光および電荷制御分子、および細胞型特異的標的化部分を含む。本発明においては、表面官能基の単一のタイプ、または表面官能基の複数のタイプをナノトランスポーターのコアの表面に存在させることができる。
【0178】
例示的なナノトランスポーターおよび対応する送達複合体は、例えば、その内容を参照によりその全体を本明細書に組み入れる代理人の書類番号UMY-125によって確認される、2007年1月26日に出願された米国出願第11/XXX,XXX号に見出すことができる。
【0179】
RNAi剤を導入する方法
本発明のRNAi剤を導入する物理的方法は、RNAを含有する溶液の注射、RNAによってカバーされる粒子による衝撃、あるいはRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションを含む。ウイルス粒子にパッケージされたウイルス構築体は、細胞への発現構築体の有効な導入、および発現構築体によってコードされたRNAの転写双方を達成する。脂質媒介担体輸送、リン酸カルシウムなどのような化学媒介輸送などのような、核酸を細胞に導入するための当技術分野において公知の他の方法を用いることができる。従って、RNAを、以下の活性の一つまたは複数を行う成分と共に導入することができる。細胞によるRNA摂取の増強、一本鎖のアニーリングの阻害、一本鎖の安定化、またはそうでなければ標的遺伝子の阻害の増大。
【0180】
RNAを細胞に直接的に導入することができる(すなわち細胞内);あるいは腔、間質腔へ、生物の循環へ細胞外導入することができる。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、および脳脊髄液は、RNAを導入することができる部位である。
【0181】
標的遺伝子を備える細胞は動物を含むいずれの生物に由来するものでもよく、またはその生物に含まれるものでもよい。好ましいのは脊椎動物である。脊椎動物の例は、限定されることなく、魚類、哺乳動物、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、げっ歯類、ハムスター、マウス、ラット、霊長類およびヒトを含む。本発明の剤は、ヒトで用いるのに特に適している。
【0182】
特定の標的遺伝子、および送達された二本鎖RNA物質の用量に依存して、このプロセスは標的遺伝子についての機能の部分的または完全な喪失を提供することができる。標的細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%以上における遺伝子発現の低下または喪失は例示的である。遺伝子発現の阻害とは、標的遺伝子からのタンパク質および/またはmRNA産物のレベルの非存在(またはそうでなければ減少)を指す。特異性とは、細胞の他の遺伝子に対する効果を発現することなく標的遺伝子を阻害する能力を指す。阻害の結果は、(実施例にて以下に示すように)細胞または生物の外面的な特性の調査によって、またはRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイでの遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、および蛍光活性化細胞分析(FACS)のような生化学的技術によって確認することができる。
【0183】
遺伝子発現の量の定量化により、本発明に従って処理された細胞または生物と比較して、10%、33%、50%、90%、95%または99%を超える阻害の程度を決定することが可能となる。低用量の注射された物質、およびsiRNAの投与後のより長い時間の結果、より小さなパーセンテージの阻害(例えば、少なくとも10%、20%、50%、75%、90%または95%阻害)での阻害がもたらされ得る。遺伝子発現の定量化は、標的mRNAの蓄積、または標的タンパク質の翻訳のレベルにおける同様な量の阻害を示すことができる。その例として、阻害の効率は、例えば、処理した生物に由来する細胞または試料中の遺伝子産物の量を評価することによって決定することができ;mRNAは、阻害性二本鎖RNAで用いる領域外のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブで検出することができ、あるいは翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列に生起された抗体で検出することができる。
【0184】
RNAは、細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能とする量で導入することができる。高用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)の物質はより効果的な阻害を生じさせることができる;低用量もまた具体的な適用に有用であり得る。
【0185】
薬学的組成物
本発明は、以下に記載する治療的処置のための前記の剤の使用に関する。従って、本発明の剤は、投与に適した薬学的組成物に取り込むことができる。本明細書において、言語「薬学的に許容される担体」は、医薬投与に適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。補充的な活性な化合物もまた組成物に一体化することもできる。
【0186】
薬学的組成物は、その意図した投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例は非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用で用いられる溶液または懸濁液は、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性の調整のための剤を含むことができる。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調整することができる。非経口製剤はアンプル、ディスポーザブルシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックの多数の投与バイヤルに入れることができる。
【0187】
注射使用に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水に可溶性の場合)または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即席製剤のための滅菌粉末を含む。静脈内投与では、適当な担体は生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は滅菌されていなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール等)およびその適当な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって分散液の場合に必要な粒子サイズの維持によっておよび界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロザールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含めるのが好ましい。注射組成物の延長された吸着は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって実現することができる。
【0188】
滅菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、前記列挙の成分の1つまたは組合せと共に適当な溶媒に配合させ、続いて、濾過滅菌することによって調製することができる。一般には、分散液は、基本的な分散媒および前記列記したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに活性な化合物を配合することによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、その従前に滅菌濾過された溶液から有効成分+任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0189】
経口組成物は、一般には、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的では、活性な化合物を賦形剤と共に配合し、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で用いることができる。経口組成物は、マウスウォッシュとしての使用のための流体担体を用いて調製することもできる。医薬上適合する結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは同様に以下の成分、または化合物のいずれかを含有することができる。マイクロクリスタリンセルロース、トラガカントガムまたはゼラチンのようなバインダー;澱粉またはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはトウモロコシ澱粉のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステローテス(Sterotes)のような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味剤;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料のような香味料。
【0190】
吸入による投与では、化合物が、適当な噴霧剤、例えば、二酸化炭素のようなガスを含有する圧縮容器またはディスペンサー、あるいはネブライザーからのエアロゾルスプレー剤の形態で送達される。そのような方法は米国特許第6,468,798号に記載されたものを含む。
【0191】
全身投与は経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与には、浸透させるバリアーに対して適切な浸透剤を製剤中に用いる。そのような浸透剤は一般には当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐薬の使用を通じて達成することができる。経皮投与では、活性な化合物を当技術分野において一般に公知の軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームへと製剤化される。
【0192】
化合物は(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような慣用的な座薬基剤を含む)坐薬、または直腸送達用の停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0193】
化合物は、限定されることなく、McCaffrey et al.(2002), Nature, 418(6893),38-9(水力学トランスフェクション);Xia et al. (2002), Nature Biotechnol., 20(10), 1006-10(ウィルス媒介送達);またはPutnam (1996), Am. J. Health Syst. Pharm. 53(2), 151-160, erratum at Am. J. Health Syst. Pharm. 53(3), 325(1996)に記載された方法を含む当技術分野において公知の方法を用いてトランスフェクションまたは感染によって投与することもできる。
【0194】
いくつかの態様において、siRNA(および他の任意の薬理作用物質)をポンプデバイスを介して直接的に送達することができる。例えば、いくつかの態様において、本発明の化学修飾siRNAは、例えば、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病などのような神経変性病について脊髄への注入によって直接的に送達される。いくつかの態様において、ポンプデバイスを介して送達されたsiRNAを何らかの方法でナノトランスポーターと会合させる。
【0195】
化合物は、DNAワクチンのような核酸剤の投与に適した任意の方法によって投与することもできる。これらの方法は遺伝子銃、バイオインジェクター、および皮膚パッチ、ならびに米国特許第6,194,389号に開示されたミクロ粒子DNAワクチン技術のようなニードルフリー方法、および米国特許第6,168,587号に開示された粉末形態ワクチンでの哺乳動物経皮ニードルフリーワクチン接種を含む。加えて、鼻腔内送達が、とりわけ、Hamajima et al. (1998), Clin. Immunol. Immunopathol., 88(2), 205-10に記載されているように可能である(例えば、米国特許第6,472,375号に記載された)リポソームおよびマイクロカプセル化を用いることもできる。生分解性標的化可能ミクロ粒子送達系もまた(例えば、米国特許第6,471,996号に記載されたように)用いることもできる。
【0196】
1つの態様において、活性な化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤のような、身体からの迅速な排出に対して化合物を保護するであろう担体で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤は、標準的な技術を用いて調製することができる。物質はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得ることもできる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染した細胞に標的化されたリポソームを含む)リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されたように当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0197】
そのような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50 (集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物での標準的な医薬的手法によって決定することができる。毒性および治療効果の間の用量比率は治療指標であって、それは比率LD50/ED50として表すことができる。高い治療指標を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物を用いることができるが、そのような化合物を冒された組織の部位へ標的化する送達系を設計して、感染していない細胞に対する潜在的損傷を最小化し、それにより、副作用を低下させるように注意を払うべきである。
【0198】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトで用いるための用量の範囲で製剤化するのに用いることができる。そのような化合物の用量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む一定範囲の循環濃度内にある。用量は、使用する投与形態および利用する投与の経路に依存してこの範囲内で変化させることができる。本発明の方法で用いるいずれの化合物についても、治療的有効用量は細胞培養アッセイから最初に見積もることができる。用量は、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半減の阻害を達成する化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方することができる。そのような処方を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0199】
本発明の化合物(例えば、siRNA、候補siRNA誘導体、修飾siRNAなど)を含有する組成物の治療上有効量(すなわち、有効用量)は、標的遺伝子によってコードされたポリペプチドの発現を少なくとも30%阻害する量である。阻害のより高いパーセンテージ、例えば、45、50、75、85、90パーセント以上はある態様で好ましい。例示的な用量は、対象または試料重量のキログラム当たり、ミリグラムまたはマイクログラム量の分子を含む(例えば、キログラム当たり約1マイクログラム〜キログラム当たり約500ミリグラム、キログラム当たり約100マイクログラム〜キログラム当たり約5ミリグラム、またはキログラム当たり約1マイクログラム〜キログラム当たり約50マイクログラム)。組成物は約1〜10週間の間、例えば、2〜8週間の間、または約3〜7週間の間、または約4、5または6週間の間、週当たり一回投与することができる。当業者であれば、限定されることなく、疾病または障害の重症度、従前の処置、対象の一般的健康および/または年齢、および存在する他の疾病を含む、対象を効果的に治療するのに必要な用量およびタイミングに影響し得ることを認識する。さらに、治療上有効な量の組成物での対象の治療は、単一の治療、または一連の治療を含むことができる。
【0200】
さらに、組成物の適当な用量は変調する発現または活性に関連する組成物の能力に依存することは理解される。これらの分子の一つまたは複数を動物(例えば、ヒト)に投与して、本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を変調する場合、医師、獣医、または研究者は、例えば、最初に比較的低用量を処方し、引き続いて、適当な応答が得られるまで用量を増加させることができる。加えて、いずれかの特定の対象についての具体的な用量レベルは、使用する特定化合物の活性、対象の年齢、体重、一般的健康、性別、および食生活、投与の時間、投与の経路、排出の速度、いずれかの薬物の組合せおよび変調する発現または活性の程度を含む種々の因子に依存する。
【0201】
薬学的組成物は投与についての指示書と共に容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【0202】
スクリーニングアッセイ
本発明の方法は、潜在的な薬理作用物質を同定し、および/または特徴付ける、例えば、試験物質のコレクションから新しい薬理作用物質を同定し、および/または公知の薬理作用物質の作用および/または副作用のメカニズムを特徴付けるための方法で用いるのにやはり適している。
【0203】
従って、本発明は、(a)標的タンパク質についてコードする少なくとも1つの内因性標的遺伝子を発現することができる真核細胞または真核非ヒト生物、(b)該少なくとも1つの内因性標的遺伝子の発現を阻害することができる少なくとも1つのsiRNA分子、および(c)試験物質または試験物質のコレクションを含み、該試験物質または該コレクションの薬理学的特性が同定および/または特徴付けされることを特徴とする、少なくとも1つの標的タンパク質に作用する薬理作用物質を同定しおよび/または特徴付けるためのシステムに関連する。さらに、前記の該システムは:好ましくは、(d)標的タンパク質、または標的タンパク質の変種または突然変異形態についてコードする少なくとも1つの外因性標的核酸を含み、該外因性標的核酸は、外因性標的核酸が内因性標的遺伝子の発現よりもsiRNA分子によって実質的にあまり阻害されないように、核酸レベルについて内因性標的遺伝子とは異なる。
【0204】
本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー方法;「1-ビーズ1-化合物」ライブラリー方法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー方法において多数のアプローチのいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定され、他方、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用できる(Lam, K.S.(1997) Anticancer Trug Des. 12:145)。
【0205】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、例えば、DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermann et al. (1994). J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al. (1993) Science 261: 1303; Carrell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; および Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233で見出すことができる。
【0206】
化合物のライブラリーは溶液(例えば、Houghten(1992) Biotechniques 13:412-421)中、またはビーズ(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP ‘409)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89: 1865-1869)またはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249:386-390); (Devlin (1990) Science 249:404-406); (Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382); (Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310); (Ladner supra.))上で提示することができる。
【0207】
好ましい態様において、ライブラリーは天然産物ライブラリー、例えば、細菌、真菌または酵母培養によって生産されるライブラリーである。別の好ましい態様においてライブラリーは合成化合物ライブラリーである。
【0208】
限定的であると解釈されるべきでない以下の実施例によって本発明はさらに説明される。
【0209】
実施例
材料および方法
siRNA調製
21-ヌクレオチドRNAをDharmacon (Lafayette, Co)によって2'ビス(アセトキシエトキシ)-メチルエーテル保護オリゴとして化学的に合成される。合成オリゴヌクレオチドは製造業者によって記載されているように脱保護し、アニーリングし、および精製した。成功した二重鎖形成は、20%非変性ポリアクリルアミドゲル電気詠動(PAGE)によって確認した。全てのsiRNAは-80℃にてDEPC(0.1%ジエチルピロカルボオネート)-処理水中に保存した。GFPまたはRFP標的特異的siRNA二重鎖の配列は製造業者の推奨にしたがって設計し、ヒトゲノム配列に対するBLASTサーチに付して、ゲノムの内因性遺伝子が標的化されなかったことを確認した。
【0210】
細胞の培養およびトランスフェクション
Hela細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)、100ユニット/mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を補足したダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM, Invitrogen)中で37℃に維持した。細胞を密集下で規則的に継代し、70%密集におけるトランスフェクションから16時間前に平板培養した。レポータープラスミドおよびsiRNAのリポフェクタミン(Invitrogen)媒介一過性共トランスフェクションを、接着性細胞系について製造業者によって記載されているように二連6-ウェルプレートで行った。1mlの血清-低下OPTI-MEM(Invitrogen)中の0.16〜0.66mgのpEGFP-C1および0.33〜1.33mgのpDsRed1-N1レポータープラスミド(Clontech)、種々の量のsiRNA(1.0nM〜200nM)、および10mlのリポフェクタミンを含有するトランスフェクション混合物を各ウェルに加えた。細胞をトランスフェクション混合物中で6時間インキュベートし、さらに、抗生物質-フリーDMEM中でさらに培養した。細胞をモック実験のためにsiRNA無しの同一条件下で処理した。種々の時間間隔で、トランスフェクトされた細胞をリン酸緩衝化食塩水(PBS,Invitrogen)で2回洗浄し、液体窒素中で素早く凍結させ、レポーター遺伝子アッセイのために-80℃で貯蔵した。
【0211】
実施例1:末端修飾siRNA(tmsiRNA)は、インビトロおよびインビボで標的mRNAを効果的に発現停止させた
SOD1標的の異なる部分に向けられた2つの末端修飾siRNAであるR1およびR2を作製して、それらのRNAサイレンシング特性を評価した。R1(図1A)およびR2(図1B参照)は共にsiRNA二重鎖の両鎖の5'および3'末端に3〜5の修飾ヌクレオチドを含有した。R1およびR2は、SOD1に対して完全に相補的な内部ヌクレオチドを含有し、他方、Mmは内部ヌクレオチド内にミスマッチを含有する。蛍光標識を各末端修飾siRNAの5'末端に結合した。SOD1標的配列が3'UTRおよびRenillaルシフェラーゼ(Rr)構築体に入れられた蛍ルシフェラーゼ(Pp)を、種々のsiRNAと共にHEK293細胞に共トランスフェクトした(修飾されたR1およびR2またはミスマッチ)。対照は、未修飾siRNAではなくルシフェラーゼ構築体でトランスフェクトされた細胞であった。ルシフェラーゼ活性はトランスフェクションから24時間後に測定した。有効性は2つの濃度(20nMおよび100nM)で評価した(図2参照)。これらの結果は、SOD1に対する双方の末端修飾siRNAが、細胞中の未修飾siRNAと同様な効率をもってレポーター遺伝子発現を阻害することを示す。これらのmsiRNAが内因性SOD1をノックダウンできるか否かを決定するために、R1およびR2をHEK293細胞にトランスフェクトし、回収し、内因性SOD1タンパク質レベルをウェスタンブロットによって測定した(図3参照)。R1およびR2もまた、ミニ浸透圧ポンプを用いるクモ膜下腔内注入によって突然変異体SOD1G93Aを発現するトランスジェニックマウスに投与した。R1は0.7mg/日/動物で注入した;R2およびMmは0.4mg/日/動物で注入し;対象「C」はPBSであった。注入から8日後に、脊髄を解剖し、突然変異体SOD1レベルを測定した(図3B参照)。これらの結果により、R2は内因性SOD1のわずかなノックダウンのみを示したが、R1は内因性SOD1の顕著なノックダウンを示したことが示される。さらに、末端修飾siRNA R1は突然変異体SOD1レベルをインビボにて30%ノックダウンした。一緒にすると、これらの結果は、末端修飾R1がインビトロおよびインビボにて突然変異体SOD1に対して長期間RNAiを媒介できることを示す。
【0212】
実施例II:末端修飾siRNAは低毒性プロフィールを有する
HEK293細胞を末端修飾siRNA、R1およびR2、それらの対応する未修飾siRNA、ミスマッチsiRNA、または対照(トランスフェクション剤単独)でトランスフェクトした。細胞を2つの異なる濃度(2nMおよび20nM)でトランスフェクトした。細胞の生存率はトランスフェクションから24時間後に測定した(図4参照)。これらの結果は、末端修飾siRNAが細胞に対して毒性でないことを示す。
【0213】
実施例III:末端修飾siRNAはインビトロで延長されたサイレンシング活性を呈する
ミスマッチsiRNAと比較してR1およびR2によるSOD1のサイレンシングの持続を決定するために、HEK293細胞をトランスフェクトし、デュアルルシフェラーゼアッセイによってサイレンシング活性を測定した(図5参照)。末端修飾siRNA(20nM)を、PpおよびRr構築体をトランスフェクトする7日前にHEK293細胞にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性をPpおよびRrトランスフェクションから24時間後に測定した。これらの結果は、R1がトランスフェクションから7日後にSOD1を効果的にサイレンシングすることを示す。
【0214】
同等物
当業者であれば、ルーチン的実験程度を用いて、本明細書に記載された本発明の特異的態様に対する多くの同等物を認識し、またはそれを確認することができる。そのような同等物は特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0215】
参考文献による取り込み
本出願を通じて引用された全ての文献、特許および特許出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】R1(図1A)、R2(図1B)、およびMm(図1C)と呼ばれる、SOD1を対象とする例示的な末端修飾siRNAを示す。
【図2】デュアルルシフェラーゼアッセイを用いた、宿主細胞における対応する未修飾siRNAと比較した末端修飾siRNAのサイレンシング効率を示す。R1、R2、およびMMは図1中の修飾siRNAを指す。U1およびU2は、それぞれR1およびR2に対応する未修飾siRNAを指す。
【図3】トランスフェクトされたHEK293細胞、およびインビボにおける内因性SOD1に対する末端修飾siRNAのサイレンシング効果を示す(図3A)。図3BはR1およびR2 siRNAの定量的なサイレンシング効果を示す。
【図4】それらの対応する未修飾siRNA、ミスマッチsiRNA、および対照と比較した、末端修飾siRNAでのトランスフェクション後の細胞生存率の結果を示す。
【図5】末端修飾siRNAによる、SOD1の延長されたサイレンシングを示す。
【図6】突然変異体SOD1G93Aに対するshRNAを発現するトランスジェニックマウスが、SOD1G93Aを少なくとも部分的に発現停止させるが、野生型SOD1は発現停止させないことを示す。
【図7】突然変異体SOD1の機能の低下がどのようにしてマウスの生存を延長するかを示す一連のグラフである。
【図8】ヒトSOD1のmRNA配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンチセンス鎖が、標的特異的RNA干渉(RNAi)を誘導するために標的mRNA配列に十分相補的な配列を有し;
(b)鎖が、対応する未修飾siRNAと比較してインビボ安定性が増強されるように、複数の化学修飾ヌクレオチドで両末端が修飾されており;および
(c)アンチセンス鎖が、標的RNAと会合した場合にA型へリックス(A-form helix)を形成する能力を保持する、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む、低分子干渉RNA(siRNA)。
【請求項2】
鎖の5'および3'末端ヌクレオチドの少なくとも3〜6個が修飾されている、請求項1記載のsiRNA。
【請求項3】
鎖の5'および3'末端ヌクレオチドの少なくとも4〜5個が修飾されている、請求項1または2記載のsiRNA。
【請求項4】
センス鎖およびアンチセンス鎖がそれぞれ下記式IVの鎖であり、

式中、
それぞれのcは独立して末端修飾であり;
それぞれのmは0または1の整数であり;
−5'配列−および−3'配列−が各々独立して2〜10ヌクレオチドを含み、該ヌクレオチドはプリンおよびピリミジンヌクレオチドであり、約1〜6ヌクレオチドが修飾されており、およびユニット中の各ヌクレオチド間結合は任意で修飾されており;
−コア配列−はリン酸ヌクレオチド間結合を介して連結された5〜20の未修飾ヌクレオチドを含み;ならびに
−5'配列−は任意で修飾されたヌクレオチド間結合を介して−コア配列−に連結されており、および−コア配列−は任意で修飾されたヌクレオチド間結合を介して−3'配列−に連結されている、
前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項5】
−5'配列−が下記式によって表される、請求項4記載のsiRNA:

式中、
nは2〜9の整数であり;
pは0〜3の整数であり;
N1は未修飾ヌクレオチドであり;
それぞれのN2は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN2の約1〜6個が修飾ピリミジンヌクレオチドであり;
それぞれのN3は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;ならびに
それぞれのL2およびL3は、独立してリン酸結合または式IIIの結合である。
【請求項6】
−コア配列−が下記式によって表される、請求項4記載のsiRNA:

式中、
qが5〜15の整数であり;
それぞれのN4は未修飾ヌクレオチドであり;および
それぞれのL4は独立してリン酸結合である。
【請求項7】
−3'配列−が下記式によって表される、請求項4記載のsiRNA:

式中、
rは3〜9の整数であり;
sは0〜3の整数であり;
N7は未修飾ヌクレオチドであり;
それぞれのN5は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、および修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され、それぞれのN5の約1〜6個は修飾ピリミジンヌクレオチドであり;
それぞれのN6は、修飾プリンヌクレオチド、未修飾プリンヌクレオチド、修飾ピリミジンヌクレオチド、および未修飾ピリミジンヌクレオチドからなる群より独立して選択され;
それぞれのL5およびL6は、独立してリン酸結合または式IIIの結合であり;ならびに
L7は式IIIの結合である。
【請求項8】
修飾ヌクレオチドが2'-フルオロ修飾リボヌクレオチドおよび骨格修飾ヌクレオチドである、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項9】
2'-フルオロ修飾リボヌクレオチドが2'-フルオロウリジンおよび2'-フルオロシチジンである、請求項8記載のsiRNA。
【請求項10】
骨格修飾ヌクレオチオドがホスホロチオエート基を含む、請求項8記載のsiRNA。
【請求項11】
アンチセンス鎖および標的mRNAの配列が100%相補的である、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項12】
アンチセンス鎖および標的mRNAの配列が少なくとも1つのミスマッチを含む、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項13】
修飾ヌクレオチドが、標的mRNA配列と塩基対合する場合にアンチセンス鎖が正常な主溝を含むA型へリックス立体配座をとる能力に影響しない、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項14】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、各々約10〜50残基の長さである、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項15】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、各々約18〜25残基の長さである、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項16】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、各々21残基の長さである、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項17】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、siRNAが突出末端を有するように整列する、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項18】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、siRNAが2-ヌクレオチド突出末端を有するように整列する、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項19】
化学的に合成される、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項20】
標的mRNAに対して十分相補的であり、該標的mRNAが細胞タンパク質のアミノ酸配列を特定する、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項21】
標的mRNAに対して十分相補的であり、該標的mRNAがウイルスタンパク質のアミノ酸配列を特定する、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項22】
SOD1のmRNAを標的とする、前記請求項のいずれか一項記載のsiRNA。
【請求項23】
SOD1突然変異をコードすることが可能な領域においてSOD1のmRNAを標的とする、請求項22記載のsiRNA。
【請求項24】
SOD1のmRNAおよび野生型SOD1のmRNAを標的とする、請求項23記載のsiRNA。
【請求項25】
図1Aまたは表1のsiRNA。
【請求項26】
請求項1記載のsiRNA分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項27】
前記請求項のいずれか一項記載のsiRNAまたは組成物を細胞に導入することを含む、細胞において標的特異的RNA干渉(RNAi)を活性化する方法であって、該siRNAが標的mRNAの分解が起こるのに十分な量で導入され、それにより細胞中の標的特異的RNAiを活性化する、方法。
【請求項28】
siRNAが、細胞をsiRNAと接触させることによって細胞に導入される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
siRNAが、細胞をsiRNAおよび親油性担体を含む組成物と接触させることによって細胞に導入される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
標的mRNAの分解が、該標的mRNAによって特定されたタンパク質を少なくとも10%減少させるものである、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
標的mRNAの分解が、該標的mRNAによって特定されたタンパク質を少なくとも20%減少させるものである、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜26のいずれか一項記載のsiRNAまたは組成物を生物に投与することを含む、生物において標的特異的RNA干渉(RNAi)を活性化する方法であって、該siRNAが、標的mRNAの分解が起こるのに十分な量で投与され、それにより生物において標的特異的RNAiを活性化する、方法。
【請求項33】
siRNAが静脈内または腹腔内経路によって投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
標的mRNAが、ヒトの疾病または障害に関与する、または関与すると予測されるタンパク質のアミノ酸配列を特定する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
疾病がALSである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
標的mRNAの分解が、該標的mRNAによって特定されたタンパク質を少なくとも10%減少させるものである、請求項32〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
標的mRNAの分解が、該標的mRNAによって特定されたタンパク質を少なくとも20%減少させるものである、請求項32〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれか一項記載のsiRNAまたは組成物を対象に投与することを含む、対象において標的mRNAによって特定されるタンパク質の活性に関連する疾病または障害を治療する方法であって、該siRNAが標的mRNAの分解が起こるのに十分な量で投与され、それによりタンパク質に関連する疾病または障害を治療する、方法。
【請求項39】
疾病がALSである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ALSが治療されるように、請求項1〜26のいずれか一項記載のsiRNAまたは組成物を投与することを含む、対象においてALSを治療する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−524430(P2009−524430A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552445(P2008−552445)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002205
【国際公開番号】WO2007/092182
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【Fターム(参考)】