説明

治療組成物又は美容組成物を局所的に塗布する装置及び方法

本発明は、局所的な治療組成物又は美容組成物を安全に再構成し、投与する装置及び方法に関する。本発明による局所塗布装置は、特に、毒性の高い物質を保存、再構成し、投与又は塗布するのに十分に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月30日に出願された米国暫定出願第61/256,837号の優先権の便宜を主張する。本出願は、同じく2009年10月30日に出願された「薬瓶間移送システム」と題する米国暫定出願第61/280,169号の優先権の便宜も主張する。これら2つの暫定出願の内容は、本明細書で参照としてそのまま組み込まれている。
【0002】
本発明は、局所的な治療組成物又は美容組成物を安全に再構築し、投与する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの治療組成物又は美容組成物は、2つ以上の個別の成分として分配され、保存され、投与の直前に、それらの成分が混合される。例えば、ワクチンは、冷凍乾燥された粉末として分配され、注入直前に希釈剤と再構成され得る。注入可能な組成物の再構成は、通常、液体希釈剤を注射器内に引き込み、冷凍乾燥された活性成分を含む薬瓶の貫通可能な封止膜に注射針を挿入し、次に、希釈剤を薬瓶に注入することを含む。注入可能な組成物は、完全に再構成された後に、注射器内に引き込まれる。次に、注射器の針は、薬瓶から引き出され、注入可能な組成物内に含まれる治療剤又は美容剤を必要とする被験体に挿入される。
【0004】
経皮搬送技術の最近の進歩で、以前は注射によってしか投与できなかった治療剤又は美容剤を局所的に投与することが可能になった(例えば、本明細書に参照としてそのまま全部組み込まれている、米国特許出願第09/910,432号、第11/072,026号、及び第11/073,307号を参照すること)。注入可能な組成物のように、局所組成物は、2つ以上の個別の成分として分配され、保存され、それらの成分は、投与直前に混合され得る。しかしながら、少なくとも幾つかの事例では、針付き注射器が、冷凍凍結活性剤に希釈剤を添加するのに適した装置ではない場合があり、局所組成物を再構成し、投与することが複雑になり得る。例えば、局所製剤は、注射製剤用の最大許容濃度よりも高い濃度の活性剤を含み得る。従って、針付き注射器でそのような局所製剤を再構成することで、臨床医が、混乱して、再構成後の局所製剤を注射器で誤って注入し、その活性剤を偶発的に過剰投与することになり得る。
【0005】
ボツリヌス毒素は、注射又は局所投与のうちのいずれかにより投与され得る治療剤又は美容剤の例である。例えば、米国特許出願第11/072,026号を参照すること。ボツリヌス毒素(ボツリン毒素又はボツリヌス神経毒素としても知られている)は、グラム陽性細菌であるボツリヌス菌により生成される神経毒素である。その毒素は、シナプス伝達又は神経筋接合部の両端でのアセチルコリンの放出を妨げることにより、神経を麻痺させ、他の点でも同様に作用すると考えられている。ボツリヌス毒素は、主に、通常、筋肉を痙縮又は収縮させる信号を阻止し、その結果、麻痺することになる。ボツリヌス毒素のこれらの特性は、片側顔面痙攣、成人発症性痙性斜頚、裂肛、眼瞼痙攣、脳性小児まひ、痙性斜頚、偏頭痛、斜視、顎関節症、及び様々な種類の筋痙攣及び痙縮を含む、様々な容態を治療するのに利用されている。更に最近では、ボツリヌス毒素の筋肉麻痺効果は、皺、眉間のしわ、及び顔面筋の痙縮又は収縮の他の結末を処置する等の、治療上及び美容上の顔面塗布に利用されている。
【0006】
ボツリヌス毒素A型は、血清に関する8つの天然型ボツリヌス毒素のうちの1つであり、人に知られている最も致死的な天然の生物剤と言われている。それにもかかわらず、ボツリヌス毒素A型の筋肉麻痺効果は、様々な治療及び美容目的に利用されている。慣例では、ボツリヌス毒素A型は、注射により、治療が必要とされる領域に投与される。ボツリヌス毒素A型は、ボツリヌス毒素とアルブミン等の様々な安定剤との凍結乾燥混合物として、市場で入手することができる。投与の直前に、ボツリヌス毒素は、凍結乾燥されたボツリヌス毒素を含む薬瓶内に、注射器を介して液体希釈剤を、通常は生理食塩水を注入することにより再構成される。次に、再構成された混合物は、注射器内に引き込まれる。この一連の工程は、臨床医にとって比較的安全であり、なぜなら、ボツリヌス毒素混合物は、注入可能なボツリヌス毒素組成物を投与するまで、注射器又は薬瓶のいずれかの中に含まれるからである。
【0007】
しかしながら、ボツリヌス毒素は、極めて毒性があるために、針付き注射器を利用して、ボツリヌス毒素の凍結乾燥された局所製剤を再構成することは、危険であり得る。例えば、局所ボツリヌス毒素製剤は、注入可能なボツリヌス毒素製剤の最大許容レベルよりも更に高い濃度の毒素を含み得る。従って、注射器で局所ボツリヌス毒素製剤を再構成することで、再構成された局所製剤が患者に不注意に注入され、ボツリヌス毒素を偶発的に過剰投与し、致命的になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第09/910,432号
【特許文献2】米国特許出願第11/072,026号
【特許文献3】米国特許出願第11/073,307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、治療剤又は美容剤を含む局所組成物を安全に再構成し、投与することを可能にし得る、改良された装置及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、治療活性剤又は美容活性剤を含む局所組成物を安全に再構成する装置及び方法を提供する。治療活性剤又は美容活性剤が、毒性、分解の影響の受けやすさ、又は他の理由のために取り扱い難い、組成物を含む、様々な局所組成物を、本明細書で開示される装置及び方法により、安全に再構成することができる。
【0011】
本発明の一目的は、治療剤又は美容剤として作用する麻痺剤を局所的に投与するための局所塗布装置を提供することである。塗布装置として、貫通可能な封止膜により薬瓶内に密閉されている固体状の治療組成物又は美容組成物を含む薬瓶を受容する薬瓶ソケットが挙げられる。ある好ましい実施形態では、固体状の治療組成物又は美容組成物は、本明細書に定義されるような、麻痺剤を含む。薬瓶ソケットは、薬瓶を薬瓶ソケット内に挿入した後に、薬瓶が薬瓶ソケットから取り外されるのを妨げるように設定される。塗布装置は、希釈剤を収容して固体状の治療組成物又は美容組成物を再構成するための、体積が調節可能なカートリッジを更に含む。カートリッジは、貫通可能な封止膜と前記カートリッジの開口端を密閉するプランジャとを有する第1末端を含む。塗布装置は、第1末端と第2末端とを有する筐体も含み、その第1末端は、開口孔付きの分与先端部を含み、更に、薬瓶ソケットに取り外し可能に接続されるのに適しており、その第2末端は、カートリッジを受容するのに適している。その筐体は、カートリッジと薬瓶ソケットとの間に位置する針接続口も含み、その針接続口は、薬瓶の貫通可能な封止膜に向かって尖っている第1移送針と、カートリッジの貫通可能な封止膜に向かって尖っている第2移送針とを含む。加えて、局所塗布装置は、カートリッジと針接続口とを薬瓶ソケットに向かって移動させるために、カートリッジソケットの第2末端内に挿入されるように設定される作動蓋を含む。従って、薬瓶が薬瓶ソケット中に保持される時に、第1移送針及び第2移送針が、それぞれ、薬瓶及びカートリッジの貫通可能な封止膜を突き刺すことにより、薬瓶は、カートリッジに流体的に接続される。塗布装置は、カートリッジの摺動可能な封止膜に取り付けられる摺動可能なプランジャ棒も含む。摺動可能なプランジャ棒は、固体状の治療組成物又は美容組成物を含む薬瓶内に希釈剤を押しやることにより、再構成された局所組成物を作り出すように設定される。摺動可能なプランジャ棒は、その上、再構成された局所組成物をカートリッジ内に引き込むように設定される。再構成された組成物をカートリッジ内に引き込んだ後、局所塗布装置から薬瓶ソケットと薬瓶を取り外すことにより、分与部材が露出される。好ましい実施形態では、その分与部材は、針を受容しないことにより、再構成された局所組成物を不注意に注入するのを妨げるように設定される。
【0012】
本発明の別の目的は、麻痺剤用の局所塗布装置を提供することであり、局所塗布装置は、第1及び第2開口端を有する筐体を含み、第1開口端は、再構成される固体状の治療剤又は美容剤を含む薬瓶を受容するのに適している薬瓶ソケットに取り外し可能に接続されるように設定され、第2開口端は、カートリッジを受容するのに適している。カートリッジでは、プランジャが、そのカートリッジの開口端を密閉し、隔壁が、プランジャとは反対側のカートリッジの末端に位置する。カートリッジは、麻痺剤と、麻痺剤を再構成する希釈剤とで充填される。局所塗布装置は、筐体内に備え付けられた針接続口を更に含む。その針接続口の中には、第1突き刺し端と第2突き刺し端とを有する針が備え付けられている。針接続口の突き刺し端のうちの1つは、カートリッジの中身と、筐体の遠位端に取り付けられている分与部材との間に、流体接続を設ける。局所塗布装置は、(薬瓶を薬瓶ソケット中に保持する時に)薬瓶の隔壁及びカートリッジの隔壁に針を通して、それらの隔壁の間で成分を移送するのを可能にするための作動蓋も含む。
【0013】
本発明の別の態様は、麻痺剤を局所に塗布する方法を提供することである。その方法は、本明細書に記載されるような局所塗布装置の作動蓋を押して、薬瓶ソケット中に保持された薬瓶の隔壁及びカートリッジの隔壁に針を通すことにより、流体接続を設けることを含む。本方法は、プランジャを押して薬剤を薬瓶内に押しやり、任意選択で薬瓶を振ることにより、再構築された麻痺剤組成物を作り出し、次に、プランジャを引いて、再構成された麻痺剤をカートリッジ内に引き込むことも含む。本方法は、薬瓶ソケットと薬瓶とを取り除いて分与部材を露出させ、プランジャを押して、分与部材から、治療が必要とされる患者の領域上に再構成された麻痺剤組成物を分与することも含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による局所塗布装置の展開図である。
【図2】ある部品の内部構造が点線で示されている、図1の局所塗布装置の拡大展開図である。
【図3】作動前の局所塗布装置の断面図である。
【図4】局所塗布装置の操作を示している断面図である。
【図5】局所塗布装置の操作を示している断面図である。
【図6】局所塗布装置の操作を示している断面図である。
【図7】カートリッジ部分からの薬瓶ソケットの取り外しを示している断面図である。
【図8】図8は、塗布準備のできた組成物を備えたカートリッジ及び筐体の斜視図である。
【図9】異なる塗布装置先端部である。
【図10】異なる塗布装置先端部である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、局所投与用の固体組成物を安全に再構成する装置及び方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明による装置及び方法により、針が露出された注射器を利用せずに、薬瓶内に保存された固体組成物を再構成することができる。この方法では、注射用に調合されていない局所組成物を患者に不注意に注射する可能性が、最小限にされる。加えて、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、局所塗布装置は、薬瓶が局所塗布装置に取り付けられた後に、薬瓶が容易に取り外されるのを妨げるように設定されており、利用者が、針を備えた注射器で再構成プロセスを完了しようとする試みを阻止する。
【0016】
局所塗布装置
図1は、本発明の模範的実施形態による局所塗布装置10を示す。様々な部品を記述する際に、用語「近位」及び「遠位」が利用される。各々の事例では、用語、近位は、利用者の手に最も近い末端を指すのに対し、用語、遠位は、利用者の手から外れた最も遠くの末端を指す。
【0017】
参照番号12で一般に表される薬瓶は、薬瓶12を受容するように設計された薬瓶ソケット14も含む局所塗布装置に接続される。局所塗布装置10は、参照番号16(図3)で一般に表される針接続口も含む。筐体18は、カートリッジ20の周りで延びるように設計される。局所塗布装置10の近位端は、作動蓋22を含む。プランジャ24は、開口端カートリッジ20内に適合するように設計されるのに対し、プランジャ棒26は、本明細書の以下に考察されるように、プランジャ24と嵌合することができる。
【0018】
薬瓶12は、当業者に周知のどんな従来の薬瓶であってもよく、代わりに、ある用途では、ある特定の部品をその薬瓶に利用することが望まれる場合、規格外の寸法あってもよい。薬瓶12は、本体部分30を含み、限定された頸部32上に、突き刺し可能な隔壁34が延びている。好ましい実施形態では、薬瓶12の作製に用いられる材料によって、乾燥された活性剤は、再構成前又は再構成中のどちらでも、あまり劣化又は変性しない。
【0019】
図1に示されるように、薬瓶ソケット14は、薬瓶ソケット14の遠位端で薬瓶12を受容するように設定される。この図示された実施形態では、薬瓶ソケット14は、複数の下位外壁部38を有する全体的にやや三角形構造のものである。それらの下位外壁部の各々は、構造がやや弓形であり、上位壁部44に適合するように、遠位端から内に向かって細くなる。下位壁部38は、下位本体を定め、そこには、複数の内部脚40が与えられる。それらの内部脚の各々は、薬瓶12を捉えるための内に向かって延びる出縁を有し、内部脚40と下位外壁部38との間に延びる肋材42を用いて、その壁から離して置かれている。
【0020】
薬瓶ソケット14は、上位壁部44も含み、その上位壁部は、その近位端に、雌型の溝が切られた開口部46を定める。複数の出縁48は、図2に見られ得るように、下に向かって延びている。
【0021】
針接続口16は、遠位部材52と近位部材54とを含み、それらの部材は、互いに嵌合する。遠位部材52は、突き刺し先端部58を有する突き刺し部材56を含む。好ましい実施形態では、突き刺し部材56のゲージは、18〜25ゲージの範囲、18〜23ゲージの範囲、又は、18〜21ゲージの範囲である。適切なゲージは、当業者により、局所組成物の粘性、毒性、及び他の因子の考察に基づいて容易に確定することができる。その近位端では、遠位部材52が管状末端60を有する。複数の留め具62が、遠位部材52の円周上に延びている。
【0022】
近位部材54は、管状部66を有する本体部分64を含み、その管状部は、遠位部材52の管状末端60と嵌合するように設計されている。突き刺し部材68は、本体部分64に固定され、突き刺し先端部70を有する。
【0023】
近位部材54は、一組の脚72も含み、環状リング74が、本体64の中央付近に位置する。
【0024】
カートリッジ20は、開口端がプランジャ24を収容するように設計された本体78を含む。突き刺し隔壁82は、本体78の頂部で、頸部80に隣接して配置される。図示される実施形態では、筐体18は、複数の壁部86を含み、図示される実施形態では、そのような壁部86が3つある。各々の壁部86には、内部が見えるように、裂溝88が与えられている。筐体18は、その上、その遠位端に、複数の雄型の溝90を含む。筐体18は、裾広がりの近位端92も有する。
【0025】
作動蓋22は、近位端壁104と側壁106とを有する。第1組の突起110は、作動蓋を作動した時に、筐体18に嵌合するように設計されているのに対し、第2組の突起112は、作動前に、筐体18に嵌合するように設計されている。
【0026】
プランジャ棒26は、ねじ込みでプランジャ24と嵌合するための雄型の溝116を備えている。
【0027】
操作中は、薬瓶12と薬瓶ソケット14は、ユニットとして与えられ、薬瓶は、薬瓶ソケット中に挿入され、取り外しできないように保持される。同様に、カートリッジ20は、筐体18内に備え付けられ、作動蓋22は、筐体18の近位端に挿入される。作動蓋18は、取り外しできない位置に保持される。筐体18は、それぞれの溝90、46を用いて、ねじ込みで薬瓶ソケット14と嵌合する。
【0028】
図3に示されるように、作動蓋22は、筐体18の外に延びている。利用するには、図4及び図5に示されるように作動蓋22を押し下げ、それにより、薬瓶12の隔壁34及びカートリッジ20の隔壁82に穴が開くことになる。次に、プランジャ棒26は、プランジャ24と、それらの各々のネジ溝を用いて嵌合し、プランジャ24上に圧力が加えられ、希釈剤120は、薬瓶12内の成分122と混合するように移送される。この位置は、図6に示されている。
【0029】
この時点では、成分が混合されるのを確実にするために、薬瓶12を緩やかに振られてもよい。続いて、図7に示されるように、混合物122は、カートリッジ20内に吸い上げられる。次に、筐体は、薬瓶ソケット14から取り除かれ、次に、混合物124は、必要に応じて分与される。図示された実施形態では、管状部66は、分与部材を成しており、具体的に、混合物124を局所的に分与するように設計されている。混合物が注射されないことを確実にするために、部材66は、寸法が規格外の部材、及び/又は、針を受容するように設計されていない構造の部材であり得る。しかしながら、ある用途では、針の取り付けが望ましい場合もあり、適切な構造が与えられ得る。幾つかの好ましい実施形態では、分与部材66は、直径が18〜25ゲージの範囲、より好ましくは、18〜23ゲージの範囲、最も好ましくは、18〜21ゲージの範囲である穴を含む。直径の適切な選択は、当業者により、局所組成物の粘性、毒性、及び他の因子に基づいて容易に確定され得る。
【0030】
図9及び図10は、局所塗布に利用され得る異なる分与先端部を示す。
【0031】
治療及び利用組成物
本発明に従って局所塗布装置により分与される治療又は美容局所組成物は、特に限定されず、被験体の身体の表面領域に局所塗布された後に治療効果又は美容効果を作り出す能力のある、いずれかの活性剤を含み得る。本発明による局所塗布装置は、特に、毒性の高い物質を保存し、再構成し、投与するのに十分に適している。本発明による局所治療組成物に適した活性剤の限定されない実例として、鎮痛薬、抗喘息薬、抗生物質、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、鎮吐剤、血圧降下剤、勃起不全治療剤、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗HIV薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、避妊薬、妊娠促進薬、抗血栓薬、血栓形成促進薬、ホルモン類、ワクチン類、免疫抑制剤、ビタミン類等が挙げられる。適切な美容剤の限定されない実例として、例えば、上皮成長因子(EGF)、同様に、ヒト成長ホルモン、抗酸化剤、及びボツリヌス毒素が挙げられる。ある特定の好ましい実施形態では、本発明による局所組成物として、インスリン、ボツリヌス毒素、VEGF、EGF、VEGFに対する抗体、又はTGF−β1が挙げられる。
【0032】
一般的に言えば、本発明による局所塗布装置は、治療剤又は美容剤を、それを必要とする身体いずれかの領域に局所投与するのに利用され得る。ある好ましい実施形態では、治療される身体の領域は、顔面、腋窩、手のひら、手、足、腰、首、脚、鼠蹊部、腕、肘、膝、骨盤、臀部及び胴から成る群から選択される。
【0033】
ある好ましい実施形態では、本発明による局所塗布装置は、麻痺剤を含む局所組成物を投与するのに利用される。一般的に言えば、麻痺剤は、神経筋又は神経腺接合の両端での神経パルス伝達を妨げ得る、神経伝達物質の神経細胞開口分泌を阻止又は低減し得る、若しくは、神経細胞のナトリウム経路電位ゲートでの活性電位を変化させ得る、いずれかの製剤であり得る。本発明により考察される麻痺物質の限定されない実例として、ボツリヌス毒素(血清型A、B、C、D、E、F、及びGを含む)、破傷風毒素、サキシトキシン、及びテトロドトキシン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
幾つかの実施形態では、美容効果を作り出すために、麻痺物質を局所的に投与する。例えば、麻痺物質(例えば、ボツリヌス毒素A型神経毒素等)を顔面に塗布し、マリオネットライン、鼻唇溝、目じりの小皺、眉の小皺、眉間の皺、及びそれらの組み合わせを含む、皺の現れを低減する。
【0035】
他の実施形態では、被験体に治療効果を与えるために、麻痺物質を局所的に投与する。例えば、麻痺物質は、コリン作動性神経パルスを減衰させることにより、腺からの出力を抑制することを可能にする物質である。ある限定されない実施形態では、麻痺物質は、多汗又はざ瘡を治療するために、それぞれ、汗腺又は皮脂腺の過剰分泌を低減するように投与されるボツリヌス毒素を含む。より一般的に、本発明は、本発明の局所塗布装置を利用し、局所ボツリヌス毒素組成物を投与して、ボツリヌス毒素が容態を改善することが知られている、いずれかの適応症を治療することも考察する。そのような適応症の限定されない実例として、片側顔面痙攣、成人発症性痙性斜頚、裂肛、眼瞼痙攣、脳性小児まひ、痙性斜頚、偏頭痛、斜視、顎関節症、及び様々な種類の筋痙攣及び痙縮が挙げられる。
【0036】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明による局所塗布装置により塗布される局所組成物は、ボツリヌス毒素を含む。用語「ボツリヌス毒素」は、本明細書で用いられる場合、バクテリアにより又は遺伝子組換え技術により作り出される、いずれかの周知の型のボツリヌス毒素、並びに、遺伝子組換え異形又は融合蛋白質を含む、続いて創出され得る、いずれかの種類のものを指すことを意味する。ボツリヌス毒素は、C.ボツリヌスのいずれかの種類の血清型(例えば、血清型A、B、C、D、E、F、又はG)から得られ得る。ある好ましい実施形態では、ボツリヌス毒素は、外来性安定剤により安定化されている単離ボツリヌス毒素分子(例えば、ボツリヌス毒素A型神経毒素)として存在する。「アルブミンを含まないボツリヌス毒素製剤」と題し、本明細書に参照としてそのまま組み込まれている、米国暫定出願第61/220,433号を参照すること。代わりに、ボツリヌス毒素は、C.ボツリヌス細菌によりボツリヌス毒素と共に通常発現される無毒性で赤血球凝集素のない蛋白質及び無毒性赤血球凝集素蛋白質のうちの1つ以上により、少なくとも一部分で安定化された錯体形態で存在し得る。ある実施形態では、ボツリヌス毒素は、アルブミン等の外来性安定剤により安定化される。本発明は、市販のボツリヌス毒素製剤を再構成し、投与するのに局所塗布装置を利用することを具体的に考察する。その製剤の限定されない実例として、ボトックス(商標)、ディスポート(商標)及びクセノミン(商標)が挙げられる。
【0037】
代わりに、本発明の塗布装置に利用されるボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素誘導体、即ち、ボツリヌス毒素活性があるが、自然発生の又は遺伝子組換えの未変性ボツリヌス毒素に関連する、いずれかの部位に又はいずれかの鎖に1つ以上の化学的又は機能性変質を含む、化合物であり得る。例えば、ボツリヌス毒素は、修飾された神経毒素(例えば、未変性又は遺伝子組換えで生成された神経毒素、若しくは、その誘導体又は断片と比較して、そのアミノ酸類のうちの少なくとも1つが削除、変更又は置換された神経毒素)であってもよい。例えば、ボツリヌス毒素は、例えば、その特性を増強する又は望まれない副作用を軽減するが、望ましいボツリヌス毒素活性を尚も保つ方法で、変更されているものであってもよい。ボツリヌス毒素は、上記のような細菌により生成される、いずれかのボツリヌス毒素錯体であってもよい。代わりに、ボツリヌス毒素は、遺伝子組換え又は合成化学技術を利用して調製される毒素(例えば、異なるボツリヌス毒素血清型の副次単位又は領域から調製されるような、遺伝子組換えペプチド、融合蛋白質、又は混成神経毒素(例えば、米国特許第6,444,209号)であってもよい。ボツリヌス毒素は、必要な毒素活性を有するように示されている、分子全体の一部分であってもよく、そのような事例では、それ自体で、若しくは、組み合わせ又は共役分子の一部として利用されてもよく、例えば、融合蛋白質である。加えて、ボツリヌス毒素は、それ自体では無毒であり得るボツリヌス毒素前駆体の形態であってもよく、例えば、蛋白質分解切断で毒性になる無毒の亜鉛蛋白質分解酵素である。
【0038】
本発明により考察される治療組成物又は美容組成物は、通常、本明細書に記載の方法を利用して、固体状態で保存される。例えば、組成物は、希釈剤により再構成される前に長期間にわたり薬瓶中に保存され得る粉末に、凍結乾燥され得る。
【0039】
本発明の治療組成物又は美容組成物を再構成する希釈剤として、固体状の治療組成物又は美容組成物を再構成する能力のあり、医薬上又は美容上許容されるいずれかの希釈剤が挙げられる。ある実施形態では、希釈剤は、単に水、生理食塩水、又は医薬上許容される緩衝液である。そのような緩衝液の限定されない実例として、クエン酸、酢酸、琥珀酸、酒石酸、マレイン酸、及びヒスチジンの塩類を含む緩衝液が挙げられる。適切な緩衝液濃度の限定されない実例として、0.400%〜0.600%、0.450%〜0.575%、又は0.500%〜0.565%の範囲の緩衝液濃度が挙げられる。本発明は、緩衝塩類の混合物を含む希釈剤も考察し、その緩衝塩の限定されない実例として、クエン酸塩/酢酸塩、クエン酸塩/ヒスチジン、クエン酸塩/酒石酸塩、マレイン酸塩/ヒスチジン、又は琥珀酸塩/ヒスチジンが挙げられる。ある好ましい実施形態では、緩衝液は、燐酸塩緩衝液である。
【0040】
幾つかの好ましい実施形態では、希釈剤は、組成物の局所塗布をより容易にし、より正確にするように組成物の粘性を増加させる能力のある、粘性調整剤も含む。例えば、粘性調整剤は、ゲル化剤であってもよい。粘性調整剤は、再構成組成物が乾燥することを妨げるように選択されてもよいこれによりボツリヌス毒素等の、ある活性剤の活性が減少し得る。特に、好ましい粘性調整剤は、変化せず、活性剤の活性又は投与の際の局所組成物の通過効率に悪影響を及ぼさないものである。粘性調整剤は、セルロース系ゲル化剤を含んでもよく、その限定されない実例は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロースである。ある好ましい実施形態では、治療組成物又は美容組成物は、2〜4%のHPCを含む。代わりに、粘性調整剤は、ポリアルコールであってもよく、その限定されない実例は、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0041】
幾つかの実施形態では、希釈剤は、ポロキサマを含み、その限定されない実例として、101、ポロキサマ105、ポロキサマ108、ポロキサマ122、ポロキサマ123、ポロキサマ124、ポロキサマ181、ポロキサマ182、ポロキサマ183、ポロキサマ184、ポロキサマ185、ポロキサマ188、ポロキサマ212、ポロキサマ215、ポロキサマ217、ポロキサマ231、ポロキサマ234、ポロキサマ235、ポロキサマ237、ポロキサマ238、ポロキサマ282、ポロキサマ284、ポロキサマ288、ポロキサマ331、ポロキサマ333、ポロキサマ334、ポロキサマ335、ポロキサマ338、ポロキサマ401、ポロキサマ402、ポロキサマ403、及びポロキサマ407が挙げられる。ある好ましい実施形態では、ポロキサマは、10〜30%、又は13〜25%、又は14〜21%、又は15〜17%の範囲、または16〜16.5%の濃度でさえも存在する。
【0042】
ある好ましい実施形態では、本発明による局所組成物は、治療活性剤又は美容活性剤の経皮移送を促す担体を更に含む。例えば、その担体は、正荷電担体分子であってもよく、その分子には、正荷電効率基(efficiency group)が結合されている。ある好ましい実施形態では、局所移送は、送達される治療活性剤又は美容活性剤の共有結合修飾のない担体により増強される。
【0043】
「正荷電」とは、少なくともある溶液相条件の下で、より好ましくは、少なくともある生理上適した条件の下で、担体が正電荷を有することを意味する。更に具体的には、「正荷電」は、本明細書で用いられる場合、検討対象の基が、第四級アミンのように、全てのpH条件の下で変化する機能性を含む、又は、第一級アミン類の事例でpHが変化するように、ある溶液相条件の下で正電荷を獲得し得る機能性を含むことを意味する。更に好ましくは、「正荷電」は、本明細書で用いられる場合、生理上適した条件で陰イオンと結合するように振る舞う、それらの基を指す。複数の正荷電部分を有するポリマーは、当業者に明らかであるように、ホモポリマーである必要はない。正荷電部分の他の実例は、当該技術分野で十分に知られており、当業者に明らかなように、容易に用いられ得る。
【0044】
一般的に、正荷電担体は、「正荷電主鎖」を含み、その主鎖は、通常、原子の直鎖であり、生理的pHで正電荷を運ぶ鎖内の基、又は、その主鎖から延びる側鎖に結合した正電荷を運ぶ基のいずれかを有する。好ましくは、正荷電主鎖自体は、酵素上の又は治療上の生体活性が定められていない。直線状の主鎖は、炭化水素主鎖であり、幾つかの実施形態では、窒素、酸素、硫黄、珪素及び燐から選択された異種原子が割り込む。大部分の主鎖原子は、通常、炭素である。加えて、主鎖は、繰り返し単位のポリマー(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミン等)であることが多いが、異種ポリマーであってもよい。実施形態の一群では、正荷電主鎖は、数多くのアミン窒素原子が、正電荷を運ぶアンモニウム基(四置換)として存在する、ポリプロピレンアミンである。別の実施形態では、正荷電主鎖は、非ペプチドポリマーであり、約10,000〜約2,500,000、好ましくは、約100,000〜約1,800,000、最も好ましくは、約500,000〜約1,400,000の分子量を有するポリアルキレンイミン、例えば、ポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミン等の異種又は同種ポリマーであり得る。実施形態の別の群では、主鎖は、正荷電基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基、又はアミジニウム基)を含む複数の側鎖部分を繋ぎ留めている。この群の実施形態での側鎖部分は、主鎖に沿って離間して位置し、その間隔は、一定であるか又は変化し得る。加えて、側鎖の長さは、同じ又は異なり得る。例えば、実施形態の一群では、側鎖は、1〜20個の炭素原子を有し、上記の正荷電基のうちの1つの中の(主鎖から離れた)遠位端で終わる直線炭化水素鎖又は分岐炭化水素鎖であり得る。本発明の全ての態様では、担体と治療活性剤又は美容活性剤との間の関連は、非共有相互作用によるものであり、その限定されない実例として、イオン相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス力、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
実施形態の一群では、正荷電主鎖は、複数の正荷電側鎖基(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニン等)を有するポリペプチドである。好ましくは、ポリペプチドは、約10,000〜約1,500,000、より好ましくは、約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。当業者は、アミノ酸が本発明のこの部分に利用される場合、側鎖が、結合中心でD又はL形(R又はS構造)のいずれかを有し得ることを理解するであろう。代わりに、主鎖は、ペプトイド等のペプチドの類似物であり得る。例えば、ケスラー、応用化学インターナショナル英語版32:543(1993年)、ツカーマンら、化学小論文・マクロ分子化学、4:80(1992年)、及びサイモンら、米国国際学術科学予稿集、89:9367(1992年)を参照すること。簡潔には、ペプトイドは、側鎖が、α−炭素原子ではなく主鎖窒素原子に結合する、ポリグリシンである。上記のように、側鎖の一部分は、通常、正荷電主鎖成分を与えるように正荷電基で終結する。ペプトイドの合成は、例えば、米国特許第5,877,278号で記載され、本明細書に参照としてそのまま組み込まれている。ペプトイド主鎖構造を有する正荷電主鎖は、本明細書で用いられる場合、自然発生の側鎖をα−炭素位置に有するアミノ酸で構成されていないので、「非ペプチド」と見なされる。
【0046】
例えば、ペプチドのアミド結合が、エステル結合等の代用物、チオアミド類(−CSNH−)、逆チオアミド類(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH−)又は逆メチレンアミノ(−CHNH−)基、ケトメチレン(−COCH−)基、ホスフィン酸塩(−PORCH−)、ホスホンアミダート及びホスホンアミダートエステル(−PORNH−)、逆ペプチド(−NHCO−)、トランスアルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CHCH−)、チオエーテル(−CHS−)、ヒドロキシメチレン(−CH(OH)CH−)、メチレンオキシ(−CHO−)、テトラゾール(CN)、スルホンアミド(−SONH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSONH−)、逆スルホンアミド(−NHSO−)に交換される、ポリペプチドの立体的又は電子的擬態物を用いながら、様々な他の主鎖を利用することができ、例えば、フェルチャーら((1998年)化学報告、98:763)により検討され、本明細書に引用される参照として詳述されるような、マロン酸塩及び/又はgem−ジアミノアルキル副次単位を有する主鎖を利用することができる。上述の置換物の多くにより、ほぼ、α−アミノ酸から形成される主鎖と比較して、等配電子のポリマー主鎖になる。
【0047】
上に与えられる各々の主鎖には、正荷電基を運ぶ側鎖基が追加され得る。例えば、スルホンアミドが連結された主鎖(−SONH−及び−NHSO−)では、側鎖基が、窒素原子に結合され得る。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)結合では、側鎖基が、ヒドロキシ置換基に結合され得る。当業者は、他の結合化学現象を容易に適用し、標準的な合成方法を用いて正荷電側鎖基を与えることができる。
【0048】
一実施形態では、正荷電主鎖は、効率基を有するポリペプチドである。効率基は、本明細書で用いられる場合、組織又は細胞膜を通り抜けるように正荷電主鎖の移動させるのを促す効果を有する、いずれかの媒介物である。効率基の限定されない実例として、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT又はそれらの断片、ショウジョウバエの蛋白質転写領域又はその断片が挙げられ、その下付文字n1は、0〜20、より好ましくは、0〜8、更により好ましくは、2〜5の整数であり、下付文字n2は、独立して、約5〜約25、より好ましくは、7〜17、最も好ましくは、約7〜約13の奇数である。HIV−TAT断片が、(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)式を有する、それらの実施形態が、更に好ましく、下付文字p及びqは、各々が、独立して、0〜20の整数であり、断片は、断片のC末端又はN末端のうちのいずれかを介して主鎖に結合される。好ましいHIV−TAT断片は、下付文字の各々が、0〜8、より好ましくは、2〜5の整数である、断片である。幾つかの実施形態では、担体は、アミノ酸配列RKKRRQRRR−G−(K)15−G−RKKRRQRRRを有する。
【0049】
別の好ましい実施形態では、正荷電効率基は、ショウジョウバエ(Antp)蛋白質転写領域(PTD)、又は活性を保持しているその断片である。(例えば、コンソールら、生体化学学術誌、278:35109(2003年)を参照すること。その内容は、参照としてそのまま組み込まれている。)好ましくは、正荷電担体は、担体の全重量との比で、少なくとも約0.05%、より好ましくは、約0.05〜45重量%、最も好ましくは、約0.1〜約30重量%の量の側鎖正荷電効率基を含む。式−(gly)n1−(arg)n2を有する正荷電効率基では、最も好ましい量は、約0.1〜約25%である。
【0050】
別の実施形態では、主鎖部分は、ポリリジンであり、正荷電効率基が、リジン側鎖アミノ基に結合されている。幾つかの実施形態では、ポリリジンは、約10,000〜約1,500,000、好ましくは、約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは、約100,000〜約1,000,000の範囲の分子量を有し得る。他の実施形態では、ポリリジンは、約500〜約5000、約1000〜約4000,約1500〜約3500、又は約2000〜約3000の範囲の分子量を有し得る。ポリリジンは、いずれかの市販の(シグマ化学社、セントルイス、ミズーリ州、米国)ポリリジンであってもよく、例えば、分子量が70,000超過のポリリジン、分子量が70,000〜150,000のポリリジン、分子量が150,000〜300,000のポリリジン及び分子量が300,000超過のポリリジンである。適切なポリリジンの選択は、組成物の残りの成分に依存し、組成物に総体的な正味の正電荷を与えるのに十分であり、幾つかの実施形態では、好ましくは、負荷電成分の結合長の1〜4倍の長さを与える。好ましい正荷電効率基又は効率基として、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−、arg−arg−arg−arg−arg(−GlyArg)又はHIV−TATが挙げられる。別の好ましい実施形態では、正荷電主鎖は、例えば、分子量が約1,000,000である、ポリエチレンイミン等の長鎖ポリアルキレンイミンである。
【0051】
別の実施形態では、その担体は、正荷電分岐基がリジン側鎖アミノ基に結合されている、ポリリジンである。この特定の実施形態に利用されるポリリジンは、いずれかの市販の(例えば、シグマ化学社、セントルイス、ミズーリ州、米国)ポリリジンであり、例えば、分子量が70,000超過のポリリジン、分子量が70,000〜150,000のポリリジン、分子量が150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000超過のポリリジンである。しかしながら、好ましくは、ポリリジンは、分子量が、少なくとも約10,000である。好ましい正荷電分岐基又は効率基として、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−Glyarg)、HIV−TAT又はその断片、及びショウジョウバエPTD又はその断片が挙げられる。
【0052】
本発明の他の実施形態では、担体は、比較的短いポリリジン又はポリエチレンイミン(PEI)主鎖(直線であっても、分岐であってもよい)であり、正荷電分岐基を有する。そのような担体は、移送効率を劇的に減少させる、治療組成物中の主鎖及びボツリヌス毒素の制御不能の凝集体を最小限にするのに有用である。担体が、比較的短い直線ポリリジン又はPEI主鎖である場合、主鎖は、分子量が、75,000未満、より好ましくは、30,000未満、最も好ましくは、25,000未満である。担体が、比較的短い分岐ポリリジン又はPEI主鎖である場合、分子量が、60,000未満、より好ましくは、55,000未満、最も好ましくは、50,000未満である。
【0053】
幾つかの実施形態では、局所製剤は、取り扱い、移送又は保存しやすくするために固体形態で調製されている。固体形態は、当該分野で周知のいずれかの方法により調製され得る。そのような方法の限定されない実例として、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥又は噴霧乾燥により調製された粉末形態が挙げられ、特に、凍結乾燥及び真空乾燥が好ましい。
【0054】
幾つかの実施形態では、本発明の局所製剤は、非イオン性界面活性剤を含む。一般に、本発明は、治療剤又は美容剤(例えば、ボツリヌス毒素)を安定化させる能力を有し、医薬分野での利用に適している、いずれかの非イオン性界面活性剤の利用を考察する。ある実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベートであり、その限定されない実例として、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、及びポリソルベート80が挙げられる。他の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステルであり、その限定されない実例として、スパン20、スパン60、スパン65、及びスパン80が挙げられる。本発明は、非イオン性界面活性剤として、トリトンX−100又はNP−40を利用することも考察する。加えて、本発明は、異なる非イオン性界面活性剤が組み合わせで利用される、実施形態を考察する。ある好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート類、ポロキサマ類、及びポリソルビタン類から成る群から選択され、特に、ポリソルベート類及びソルビタン類が好ましい。好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤の濃度は、0.005%〜0.5%の範囲、又は0.01%〜0.2%の範囲、0.02%〜0.1%の範囲又は0.05〜0.08%の範囲である。本発明は、非イオン性界面化成剤の濃度が0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、又は0.15%である、製剤も考察する。
【0055】
治療活性剤又は美容活性剤が、蛋白質性材料である場合、局所組成物中に非還元糖を含ませることにより、凍結乾燥前、その間、又はその後に活性剤を安定化させることが望ましいことが多い。一般的に言えば、非還元糖は、ガラス遷移温度が60℃よりも上である、いずれかの糖であってもよい。ある特定の好ましい実施形態では、非還元糖は、二糖類であり、その限定されない実例として、トレハロース及び蔗糖が挙げられる。他の実施形態では、非還元糖は、三糖類であり、その限定されない実例として、ラフィノースが挙げられる。一般に、本発明の局所製剤中の非還元糖の濃度は、10%〜40%、好ましくは、10%〜25%、より好ましくは、15%〜20%、最も好ましくは、15%〜20%の範囲である。ある好ましい実施形態では、非還元糖の濃度は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%である。
【0056】
ある実施形態では、本発明の局所製剤は、凍結乾燥形態の局所製剤を取り扱い易くする充填剤を含む。好ましくは、充填剤は、凍結乾燥条件下で結晶化し、固体状態である場合、他の賦形剤と混合しない。そのような充填剤の限定されない実例として、ソルビトール、マンニトール、グリシン、アルギニン、及びヒスチジンが挙げられる。充填剤の濃度は、1%〜10%、2%〜6%、3%〜5%又は4%〜4.5%の範囲であり得る。充填剤が利用される場合、非還元糖の濃度は、10%〜40%の範囲から0.5%〜3.0%の範囲へ低減され得る。更に、好ましい実施形態では、非還元糖対充填剤の比率は、0.07〜2.0の範囲、好ましくは、0.4〜0.6の範囲である。従って、単なる例として、製剤は、充填剤としてマンニトールを、非還元糖としてトレハロースを含んでもよく、マンニトールは、1.5%〜7.5%の濃度範囲で存在し、トレハロースは、0.5%〜3.0%の濃度範囲で存在する。
【0057】
本発明の多くの修正及び変更が、当業者に明らかなように、その趣旨及び範囲から逸脱せずに行われ得る。本明細書に記載される特定の実施形態は、単なる例として提供され、本発明は、付属請求項の事項によってのみ限定され、そのような請求項には、均等物の全範囲の権利が与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻痺剤用の局所塗布装置であって、前記局所塗布装置が、
薬瓶ソケットと、
第1開口端と第2開口端とを有し、前記第1開口端が、前記薬瓶ソケットに取り外し可能に接続されている、筐体と、
前記筐体内に備え付けられた針接続口と、
前記針接続口に備え付けられた第1突き刺し端及び第2突き刺し端を有する針と、
頸部と底部とを有し、前記薬瓶ソケットに挿入されており、取り外し可能に接続された薬瓶ソケット中に取り外し不可能に保持されている、薬瓶と、
プランジャがその開口端を密閉している、カートリッジと、
前記カートリッジの反対側に位置する隔壁と、
前記薬瓶の隔壁及び前記カートリッジの隔壁に前記針を通し、前記薬瓶と前記カートリッジとの間で成分を移送するのを可能にする、作動蓋と
を含み、
前記薬瓶が、固体形態の麻痺剤を含み、前記カートリッジが、前記麻痺剤を再構成するための希釈剤を含む、局所塗布装置。
【請求項2】
麻痺物質が、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、サキシトキシン、及びテトロドトキシンから成る群からの毒素を含む、請求項1に記載の局所塗布装置。
【請求項3】
麻痺剤が、ボツリヌス毒素を含む、請求項2に記載の局所塗布装置。
【請求項4】
麻痺剤が、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F、又はGを含む、請求項3に記載の局所塗布装置。
【請求項5】
麻痺剤が、ボツリヌス毒素A型を含む、請求項1に記載の局所塗布装置。
【請求項6】
希釈剤が、粘性調整剤を含む、請求項1に記載の局所塗布装置。
【請求項7】
粘性調整剤が、ポロキサマ、ポリアルコール、及びヒドロキシアルキルセルロースから成る群から選択される、請求項1に記載の局所塗布装置。
【請求項8】
粘性調整剤がポロキサマである、請求項7に記載の局所塗布装置。
【請求項9】
ポロキサマが、ポロキサマ101、ポロキサマ105、ポロキサマ108、ポロキサマ122、ポロキサマ123、ポロキサマ124、ポロキサマ181、ポロキサマ182、ポロキサマ183、ポロキサマ184、ポロキサマ185、ポロキサマ188、ポロキサマ212、ポロキサマ215、ポロキサマ217、ポロキサマ231、ポロキサマ234、ポロキサマ235、ポロキサマ237、ポロキサマ238、ポロキサマ282、ポロキサマ284、ポロキサマ288、ポロキサマ331、ポロキサマ333、ポロキサマ334、ポロキサマ335、ポロキサマ338、ポロキサマ401、ポロキサマ402、ポロキサマ403、及びポロキサマ407から成る群から選択される、請求項8に記載の局所塗布装置。
【請求項10】
粘性調整剤が、ポリアルコールである、請求項8に記載の局所塗布装置。
【請求項11】
ポリアルコールが、ポリエチレングリコールである、請求項10に記載の局所塗布装置。
【請求項12】
粘性調整剤が、ヒドロキシアルキルセルロースである、請求項7に記載の局所塗布装置。
【請求項13】
粘性調整剤が、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群から選択される、請求項12に記載の局所塗布装置。
【請求項14】
麻痺剤用の局所塗布装置であって、前記局所塗布装置が、
第1開口端と第2開口端とを有し、前記第1開口端が、薬瓶を収容するのに適している薬瓶ソケットに取り外し可能に接続されるように設定されている、筐体と、
前記筐体内に備え付けられた針接続口と、
前記針接続口に備え付けられた第1突き刺し端及び第2突き刺し端を有する針と、
プランジャがその開口端を密閉している、カートリッジと、
前記カートリッジの反対側に位置する隔壁と、
前記薬瓶の隔壁及び前記カートリッジの隔壁に前記針を通し、前記薬瓶と前記カートリッジとの間で成分を移送するのを可能にする、作動蓋と
を含み、
前記カートリッジが、麻痺剤と、前記麻痺剤を再構成するための希釈剤とを含み、
前記針接続口が、前記カートリッジの中身と、前記筐体の遠位端に接続される分与部材を流体的に接続する、局所塗布装置。
【請求項15】
麻痺剤を局所塗布する方法であって、前記方法が、
請求項1による局所塗布装置の作動蓋を押して、薬瓶ソケット中に保持された薬瓶の隔壁及びカートリッジの隔壁に針を通すことにより、流体接続を設けることと、
プランジャを押して薬剤を前記薬瓶内に押しやり、任意選択で前記薬瓶を振ることにより、再構築された麻痺剤組成物を作り出すことと、
前記プランジャを引いて、前記再構成された麻痺剤を前記カートリッジ内に引き込むことと、
前記薬瓶ソケット及び薬瓶を取り除いて分与部材を露出させることと、
前記プランジャを押して、前記再構成された麻痺剤組成物を、前記分与部材から、治療が必要とされる患者の領域上に分与することと
を含む、方法。
【請求項16】
麻痺剤が、ボツリヌス毒素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素A型神経毒素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
希釈剤が、水、生理食塩水、又は医薬上許容される緩衝液である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
希釈剤が、粘性調整剤を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
粘性調整剤がポロキサマである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポロキサマが、ポロキサマ101、ポロキサマ105、ポロキサマ108、ポロキサマ122、ポロキサマ123、ポロキサマ124、ポロキサマ181、ポロキサマ182、ポロキサマ183、ポロキサマ184、ポロキサマ185、ポロキサマ188、ポロキサマ212、ポロキサマ215、ポロキサマ217、ポロキサマ231、ポロキサマ234、ポロキサマ235、ポロキサマ237、ポロキサマ238、ポロキサマ282、ポロキサマ284、ポロキサマ288、ポロキサマ331、ポロキサマ333、ポロキサマ334、ポロキサマ335、ポロキサマ338、ポロキサマ401、ポロキサマ402、ポロキサマ403、及びポロキサマ407から成る群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
再構成された麻痺剤が正荷電担体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
正荷電担体が、ポリリジン又はポリアルキルイミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
正荷電担体が、アミノ酸配列、RKKRRQRRR−G−(K)15−G−RKKRRQRRRを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
治療を必要とする患者の領域が、顔面、腋窩、手のひら、手、足、腰、首、脚、鼠蹊部、腕、肘、膝、骨盤、臀部及び胴から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
治療を必要とする患者の領域が顔面であり、再構成された麻痺組成物が、ボツリヌス毒素A型を含み、前記再構成された麻痺組成物が、皺の現れを低減するのに利用される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
皺が、マリオネットライン、鼻唇溝、目じりの小皺、眉の小皺、眉間の皺、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項26に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−509248(P2013−509248A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536925(P2012−536925)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053959
【国際公開番号】WO2011/053554
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(509168461)ルバンス セラピュティックス インク. (9)
【氏名又は名称原語表記】REVANCE THERAPEUTICS,INC.
【出願人】(512094889)ドゥオジェクト メディカル システムズ, インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】DUOJECT MEDICAL SYSTEMS, INC.
【Fターム(参考)】