説明

治療薬と逆作用剤を含む経口用製剤

【課題】治療薬及び逆作用剤を用いて、治療薬が好ましくない副作用を示さず、その有効性のみを発揮し得る経口用製剤を提供する。
【解決手段】有効量の治療薬を含む第1組成物と有効量の逆作用剤を含む第2組成物からなる経口用製剤。第1組成物において、治療薬は非被覆であるか、あるいは酸可溶外層と塩基可溶内層を有するコーティングにより被覆されている。また、第2組成物において、逆作用剤は、胃腸管内で実質的に不溶のコーティングにより被覆され、もしくは、塩基可溶外層と酸可溶内層により被覆され、最終製剤は、上記第1組成物及び第2組成物を含む経口用カプセル製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、開示が参照して本明細書に組み込まれる、2001年8月6日出願の米国特許
仮出願第60/309,791号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、総じて治療薬と逆作用剤を含む経口用製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの治療薬は、クオリティ・オブ・ライフを改善するのに極めて効果的であるが、乱
用のおそれがあるために、薬物乱用者を誘引しうる。例えば、オピオイドは、ガンの痛み
と術後の痛みといった、激しいおよび/または慢性的な痛みを制御しうる優れた鎮痛剤で
あるが、薬物使用者による乱用を起こし易い。
【0004】
オピオイドは、オピオイドアゴニストとしても知られているが、アヘン様あるいはモル
ヒネ様性質を呈する一群の薬剤である。オピオイドは主として中程度ないし強力な鎮痛剤
として使用されると同様に、他の薬理学的効果ももたらす。
【0005】
当業界では従来、オピオイド鎮痛薬の乱用の可能性を制御する試みがなされていた。例
えば、徐放性製剤は、活性成分が何時間にもわたって作用することが可能となり、このよ
うな徐放性のために、オピオイドの不正乱用は抑制される傾向にある。なぜなら、薬物乱
用者は、「バースト」として知られている即時放出オピオイドによりもたらされる急速な
陶酔ラッシュを好む傾向があるためである。しかしながら、薬物乱用者は、元来の薬剤の
形態を、例えば錠剤を砕く、あるいは溶解することにより、制御された放出設計を破壊し
て、バーストをもたらす鼻から吸入可能であるか、および/または注射可能なオピオイド
を利用しうる。従って、経口投与されるオピオイドが合法的に必要な患者に使用可能であ
るようにする一方で、オピオイド乱用を抑止する更に効果的な方法が重要に必要である。
【0006】
この問題に関する先行技術の研究方法には、オピオイドをオピオイドアンタゴニストと
組み合わせることが包含される。経口投与する場合、これらの組み合わせにより、アンタ
ゴニストの作用は最少としてオピオイドの薬理学的作用がもたらされる。しかしながら、
非経口投与の場合、このアンタゴニストはこのオピオイドに対して極めてアンタゴニスト
的であり得る。このような組み合わせの特別な例には、ナロキソンとモルフィンまたはオ
キシモルフォン(レーウェンスタインらへの米国特許第3,493,657号);メタドンとナロ
キソン(パッチャーらへの米国特許第3,773,955号);メタドールまたはアセチルメタド
ールとナロキソン(パッチャーらへの米国特許第3,966,940号);オキシコドンとナロキ
ソン(ゴードンらへの米国特許第4,457,933号);およびブプレノルフィンとナロキソン
(ルイスらへの米国特許第4,582,835号)を含む組成物が包含される。また、ペンタゾシ
ンハイドロクロリドとナロキソンの組み合わせは、米国でTALWIN NX(Sanofi-Winthrop)と
して販売されており;チリジンとナロキソンの組み合わせのVALORON Nは、激しい痛みの
を管理するのに1978年からドイツで入手可能であり;そして、ブプレノルフィンとナロキ
ソンの組み合わせのTEMGESIC NXは1991年からニュージランドで入手できるようになって
いる。
【0007】
パレルモらへの米国特許第6,228,863号は、これらを分離するのに少なくとも2工程が
必要とされるようなアゴニストとアンタゴニストを組み合わせることにより、このオピオ
イドの乱用の可能性を低減させるオピオイドアゴニストとオピオイドアンタゴニストの経
口用製剤を開示する。
【0008】
ローズらによる米国特許第5,935,975号は、この薬剤またはこの薬剤のアゴニストとこ
の薬剤のアンタゴニストの組み合わせ投与による薬剤依存を治療する方法を開示している

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、当業界では、乱用の防止に効果的であり、そして治療薬の送達に有用な
更に進歩した経口用製剤が必要であることが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、この第1組成物が有効
量の治療薬を含み、そしてこの第2組成物が逆作用剤を含み、この第2組成物が酸可溶内
層と塩基可溶外層により被覆されている経口用製剤に関する。
【0011】
本発明は、更に、第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、この第1組成物
が治療薬を含み、塩基可溶内層と酸可溶外層により被覆され、そしてこの第2組成物が逆
作用剤を含み、酸可溶内層と塩基可溶外層により被覆されている経口用製剤に関する。
【0012】
本発明は、更に、本発明の経口用製剤を必要とする患者に投与することを含む、痛みを
治療あるいは予防するための方法に関する。一つの実施形態においては、この方法は、第
1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、この第1組成物が有効量の治療薬を含
み;この第2組成物が有効量の逆作用剤を含み;この有効量の治療薬が患者の小腸内で放
出され;そして有効量未満の量のこの逆作用剤が前記患者の胃腸管内で放出される経口用
製剤をそれを必要とする患者に投与することを含む。
【0013】
本発明は、更に、第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、この第1組成物
が治療薬を含み、そしてこの第2組成物が逆作用剤を含み、この第2組成物が酸可溶内層
と塩基可溶外層により被覆されている経口用製剤を製造する方法であって、この明細書で
述べられている経口用製剤を製造する段階を含む方法に関する。
【0014】
本発明は、更に、第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、この第1組成物
が治療薬を含み、塩基可溶内層と酸可溶外層により被覆され、そしてこの第2組成物が逆
作用剤を含み、酸可溶内層と塩基可溶外層により被覆されている経口用製剤を製造する方
法であって、この明細書で述べられている経口用製剤を製造する段階を含む方法に関する

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の経口用製剤は第1組成物と第2組成物を含む。第1組成物は治療薬を含み、そ
して第2組成物は逆作用剤を含む。
【0016】
この明細書で使用される用語「治療薬」は、患者に投与される場合、有益な効果を有す
ることを目的とするいかなる薬剤も意味する。
【0017】
この明細書で使用される用語「逆作用剤」は、(A)陶酔あるいは毒性効果などの治療
薬の1つ以上の薬理学的効果を低下させるかあるいは消滅させる、あるいは(B)嘔吐な
どの望ましくない生理的な反応を生じる薬剤を意味する。
【0018】
本発明の経口用製剤の第1の実施形態においては、第2組成物は胃腸管内で実質的に不
溶である層により被覆される。このように、本発明の経口用製剤を目的として患者に経口
投与する場合、治療薬のみが患者の胃腸管内で放出され、そして逆作用剤は放出されない
。しかしながら、第2組成物上のコーティングが損傷を受けるように経口用製剤が改ざん
された場合には、治療薬のみならず、逆作用剤も投与時に放出される。
【0019】
第2の実施形態においては、第2組成物は、患者に経口投与した場合に溶解しない塩基
可溶外層と酸可溶内層により被覆される。
【0020】
本発明の経口用製剤の第3の実施形態においては、第1組成物と第2組成物の両方は少
なくとも2つの層、酸可溶層と塩基可溶層を含むコーティングを有するが、第1組成物上
のコーティング中の層の順序は第2組成物上のコーティング中の層の順序と異なる。第1
組成物を被覆するコーティングは、酸可溶外層と患者に経口投与した場合に溶解する塩基
可溶内層を含む。他方、第2組成物を被覆するコーティングは、患者に経口投与した場合
に溶解する塩基可溶外層と患者に経口投与した場合に溶解しない酸可溶内層を含む。
【0021】
患者に経口投与した場合、経口用製剤は最初に胃を通過するが、その酸性環境により、
第1組成物の酸可溶外層が溶解され、次に小腸に入り、ここではその塩基性環境により、
第1組成物の塩基可溶内層が溶解される。ここで、治療薬は身体を通過して吸収可能とな
る。これに対して、第2組成物は、胃の酸性環境中で実質的に不溶である塩基可溶外層に
より被覆される。それゆえ、第2組成物は、塩基可溶外層と酸可溶内層が損なわれないま
ま胃を通過する。第2組成物が小腸に入ると、この塩基可溶外層は溶解し、小腸の酸性環
境中で実質的に不溶である酸可溶内層が露出するが、逆作用剤は身体を通過しては吸収不
能である。このように、本発明の経口用製剤を目的どおり、患者、例えばヒトに経口投与
すると、治療薬のみが胃腸管内で放出されて、患者により吸収され;逆作用剤は放出され
ないため、身体の中への吸収には利用できない。ここで、治療薬のみが身体による吸収に
利用可能となるので、治療薬は逆作用剤がなく単独で投与されたように作用する。
【0022】
しかしながら、本発明の経口用製剤を開封する、例えば特に溶剤中で熱(例えば、約4
5℃〜約50℃以上)をかけて噛む、砕く、磨くあるいは溶解すると、治療薬のみならず
、逆作用剤も身体中へ吸収可能となる。次に、逆作用剤は、治療薬の効果を低下させるか
、あるいは患者において好ましくない効果を顕在化させることによりその効果を及ぼしう
る。このように、逆作用剤が治療薬のアンタゴニストである場合には、治療薬の効果は逆
作用剤の作用により劇的に低下するか、あるいは消滅することもある。例えば、治療薬が
オピオイドアゴニストであり、逆作用剤がオピオイドアンタゴニストであり、そしてこの
経口用製剤が開封される場合、オピオイドアンタゴニストが生体利用可能となり、オピオ
イド受容体結合を妨げ、オピオイドアンタゴニストの薬理学的効果を低下させる。従って
、本発明の製剤を目的どおり、すなわち損傷のない製剤として経口的に摂取する患者のみ
が治療薬の完全な薬理学的な効果を享受しうる。逆作用剤が催吐剤である場合に、経口用
製剤を開封する場合、催吐剤は嘔吐を誘起するため、使用者は製剤を開封する気にならな
い。更には、この逆作用剤が嘔吐を誘発する場合には、本発明の経口用製剤は、使用者が
それを開封する気にならないのみならず、被験者の身体から治療薬を除去するのに効果的
でありうる。開封すれば、逆作用剤はその望ましくない効果を及ぼすために、本発明の経
口用製剤中に存在する場合、治療薬を乱用することは望まなくなる。
【0023】
本発明の一つの実施形態においては、第1組成物は被験者に経口投与した後に、徐放さ
れることを目的としている。これにより、一部の薬物乱用者が求めるバーストが防止され
る。例えば、治療薬が全部一度に放出されないようにゆっくりと溶解する徐放性コーティ
ングにより第1組成物を更に被覆することにより、第1組成物を徐放性製剤として配合し
うる。第1組成物を酸可溶外層と塩基可溶内層により被覆する実施形態においては、徐放
性コーティングは最内層である。別の実施形態においては、治療薬を経時的にゆっくりと
放出するように治療薬をマトリックスの中に取り入れることにより、第1組成物を徐放性
製剤として配合しうる。被験者に経口投与した場合、徐放を目的とする治療薬は、徐放で
なくむしろ一度に放出されると副作用を起こす場合がある。被覆された第2組成物は治療
薬の即時放出を起こす開封を防止する。
【0024】
図1は、被覆された第1組成物10の実施形態の断面図を示す。第1組成物14は最も
内側の徐放性コーティング13(任意の)、塩基可溶内層12、および酸可溶外層11に
より被覆されている。
【0025】
図2は、被覆された第2組成物20の実施形態の断面図を示す。第2組成物24は酸可
溶内層23、塩基可溶外層22および胃腸管内で実質的に不溶である最外側の層21(任
意)により被覆されている。
【0026】
1:治療薬
いかなる種類の治療薬も本発明の経口用製剤中で使用可能である。一つの実施形態にお
いては、この経口用製剤は、潜在的な毒性または製剤の開封による薬剤の非放出制御に関
連する過量が存在する状況において使用される。有用な治療薬の例は、鎮痛薬、抗炎症薬
、駆虫薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固薬、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗癲癇
薬、抗真菌剤、抗痛風薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗
腫瘍薬、勃起不全改善剤、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠
薬、神経弛緩薬、β−ブロッカー、心臓イオノトロピー剤、コルチコステロイド、利尿薬
、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解剤、脂質調
整剤、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋肉弛緩
剤、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、タンパク質分解酵素阻害剤、性ホルモン、興奮剤、筋肉
弛緩剤、抗骨粗しょう症薬、抗肥満薬、認識増進剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺
肥大薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸を包含するが、これに限定されない。この第1組成物
は1つ以上の治療薬を含むことができる。
【0027】
語句「治療薬」は、また、この治療薬のすべての薬学的に許容し得る塩を包含すること
も意味する。薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩な
どの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、およびその類似物などのアルカリ土類金属
;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノール
アミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、およ
びその類似物などの有機アミン塩;ヒドロクロリド塩、ヒドロブロミド塩、サルフェート
塩、ホスフェート塩、およびその類似物などの無機酸塩;ホルメート塩、アセテート塩、
トリフルオロアセテート塩、マレエート塩、タートレート塩、およびその類似物などの有
機酸塩;メタンスルホネート塩、ベンゼンスルホネート塩、p−トルエンスルホネート塩
、およびその類似物などのスルホネート塩;およびアルギネート塩、アスパルギネート塩
、グルタメート塩、およびその類似物などのアミノ酸塩を包含するが、これらに限定され
ない。
【0028】
別の実施形態においては、この治療薬は乱用の可能性がある。薬剤乱用の可能性は、次
のことを包含する多くの因子により明らかである。(1)薬剤の使用中止により、薬剤を
求める挙動をもたらすのに充分な痛みを引き起こす肉体的依存性を生じる薬剤の能力;(
2)薬剤の使用中止により誘起される禁断症状を抑制する能力;および(3)この薬剤が
モルフィンと他のオピオイドにより生じる陶酔に類似の陶酔を誘起する程度。
この明細書で使用される用語「乱用のおそれがある治療薬」は、上記に示した要素の少
なくとも一つを有する治療薬を指す。乱用のおそれがある治療薬の例は、オピオイド、ベ
ンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、およびメチルフェニデートとアンフェタミンなどの
興奮剤を包含するが、これに限定されない。
【0029】
用語「オピオイド」は、オピオイド受容体のいくつかの亜種のいずれかに場合によって
は立体特異的に結合し、アゴニスト作用を生じる物質を指す。オピオイドは、アルフェン
タニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジ
トラミド、ブプレノルフィン、ブトールファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモル
フィン、デクストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデ
イン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブ
テン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチ
ルメチルチアムブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエト
ルフィン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロモルホドン、ヒドロキ
シペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボールファノール、レボフェナシルモルフ
ァン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン
、モルフィン、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボールファノール、ノ
ルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルフィン、ノルピパノン、アヘン、オ
キシコドン、オキシモルホン、PANTOPON、パパベレタム、鎮痛剤、ペンタゾシン、フェナ
ドキソン、フェンジメトラジン、フェンジメトラゾン、フェノモルファン、フェナゾシン
、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロ
ペリジン、プロポキシフェン、プロピルヘキセドリン、スフェンタニル、チリジン、トラ
マドール、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物を包含するが、これに
限定されない。
【0030】
ある実施形態においては、このオピオイドアゴニストは、ヒドロコドン、モルフィン、
ヒドロモルホン、オキシコドン、コデイン、レボールファノール、メペリジン、メタドン
、オキシモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニルとこれらの誘導体、ジピパノン、ヘ
ロイン、トラマドール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ブトールファノール、レ
ボールファノール、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群か
ら選択される。一つの実施形態においては、このオピオイドアゴニストはオキシコドンま
たはヒドロコドンである。
【0031】
用語「ベンゾジアゼピン」は、ベンゾジアゼピンの誘導体であり、そして中枢神経系を
抑制しうる薬剤を指す。ベンゾジアゼピンは、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジ
アゼポキシード、クロラゼペート、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパ
ム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、
テマゼパム、トリアゾラム、メチルフェニデート、薬学的に許容し得るこれらの塩、およ
びこれらの混合物を包含するが、これに限定されない。
【0032】
バルビツール酸塩は、バルビツール酸(2,4,6−トリオキソヘキサヒドロピリミジ
ン)から誘導される鎮静−催眠薬剤を指す。バルビツール酸塩は、アモバルビタール、ア
プロバルボタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メトヘキシタール、メホバルビ
タール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール
、およびこれらの混合物を包含するが、これに限定されない。
【0033】
興奮剤は中枢神経系を刺激する薬剤を指す。興奮剤は、アンフェタミン、アンフェタミ
ン、デキストロアンフェタミンの樹脂複合体、デキストロアンフェタミン、メタアンフェ
タミン、メチルフェニデート、これらの薬学的に許容し得る塩、およびこれらの混合物な
どのアンフェタミンを包含するが、これに限定されない。
【0034】
乱用のおそれがある治療薬の他の例は、ドロナビノール、グルテチミド、メチルフェニ
デート、ナビロン、タンパク質同化性ステロイド、メチルプリロン、エトクロロビノール
、エチナメート、フェンフルラミン、メプロバメート、ペモリン、レボメタジル、ベンズ
フェタミン、クロルフェンテルミン、ジエチルプロピオン、フェンテルミン、メブタメー
ト、クロルテルミン、フェニルアセトン、ドロナビノール、ナビロン、ベンフェタミン、
抱水クロラール、エトクロロビノール、パラアルデヒド、ミダゾラム、およびデトロプロ
ポキシフェンを包含する。
【0035】
この治療薬は腸への送達を目的とする薬剤であってもよい。腸への送達を目的とする治
療薬は、腸領域で局所的に作用して、過敏性腸疾患症候群、過敏性腸疾患、クローン病、
便秘、術後アトニー、胃腸感染症などの腸疾患を治療する薬剤とリンパ組織に抗原性物質
を送達する治療薬を包含するが、これに限定されない。腸疾患の治療用の薬剤は、5-ASA
;ヒドロコルチゾンとブデソナイドなどのステロイド;緩下薬;オクトレオチド;シサプ
リド;抗コリン作用薬;オピオイド;カルシウムチャネル遮断薬;大腸の細胞へ送達する
ためのDNA;グルコサミン;RidogrelなどのトロンボキサンA2合成酵素阻害剤;オンダセ
トロンなどの5HT3アンタゴニスト;Cloitrium difficileなどの感染性細菌に対する抗体
;および例えば、HIVの予防用抗ウイルス薬を包含するが、これに限定されない。
【0036】
かわりに、この治療薬は全身的に活性であり、そして吸収が腸領域で改善される薬剤で
ありうる。このような薬剤は、ヘパリン;インスリン;カルシトニン;ヒト成長ホルモン
(HGH);成長ホルモン放出ホルモン(GHRH);インターフェロン;ソマトスタチンとオクト
レオチドとバプレオチドなどのこれらの類似物;エリスロポエチン(EPO);顆粒球コロニ
ー刺激因子(GCSF);副甲状腺ホルモン(PTH);黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)とこ
れらの類似物;心房性ナトリウム利尿因子(ANF);バソプレシン;デスモプレシン;カル
シトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP);および鎮痛薬などの極性化合物を包含する。
【0037】
2:逆作用剤
この治療薬の薬理学的効果を低下させる、あるいは消滅させる逆作用剤は、(1)薬剤
使用中止が薬剤を求める挙動をもたらすのに充分な痛みを引き起こす肉体的依存性を生じ
る薬剤の能力;(2)薬剤からの使用中止により引き起こされる禁断症状を抑制する能力
;および(3)この薬剤がモルフィンと他のオピオイドにより生じる陶酔に類似の陶酔の
誘起を包含するが、これに限定されない薬剤でありうる。
治療薬の薬理学的効果を低下させる、あるいは消滅させる逆作用剤は、治療薬アゴニス
トのアンタゴニストを包含するが、これに限定されない。オピオイドアゴニストを本発明
の経口用製剤中の治療薬として使用する場合には、オピオイドアンタゴニストを逆作用剤
として使用しうる。同様に、ベンゾジアゼピンを本発明の経口用製剤中の治療薬として使
用する場合には、ベンゾジアゼピンアンタゴニストを逆作用剤として使用しうる。バルビ
ツール酸塩を本発明の経口用製剤中の治療薬として使用する場合には、バルビツール酸塩
アンタゴニストを逆作用剤として使用しうる。アンフェタミンを本発明の経口用製剤中の
治療薬として使用する場合には、アンフェタミンアンタゴニストを逆作用剤として使用し
うる。治療薬が正常の治療範囲以上に投与した時に毒性である場合、すなわち、過量の潜
在性が存在する場合には、この毒性の治療薬の解毒剤を逆作用剤として使用しうる。
【0038】
語句「逆作用剤」はこの逆作用剤の薬学的に許容し得るすべての塩を網羅することも意
味する。薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩などの
金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、および類似物などのアルカリ土類金属;トリエ
チルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩
、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、および類似物
などの有機アミン塩;ヒドロクロリド塩、ヒドロロブロミド塩、サルフェート塩、ホスフ
ェート塩、および類似物などの無機酸塩;ホルメート塩、アセテート塩、トリフルオロア
セテート塩、マレエート塩、タートレート塩、および類似物などの有機酸塩;メタンスル
ホネート塩、ベンゼンスルホネート塩、p−トルエンスルホネート塩、および類似物など
のスルホネート塩;およびアルギネート塩、アスパルギネート塩、グルタメート塩、およ
び類似物などのアミノ酸塩を包含するが、これに限定されない。
【0039】
本発明の逆作用剤として使用可能であるオピオイドアンタゴニストは、ナロキソン、ナ
ルトレキソン、ナルメフェン、シクラザシン、およびレバルロルファン、ならびにこれら
の混合物を包含するが、これに限定されない。ある実施形態においては、このオピオイド
アンタゴニストはナロキソンまたはナルトレキソンである。
【0040】
本発明の逆作用剤として使用可能であるベンゾジアゼピンアンタゴニストは、フルマゼ
ニルを包含するが、これに限定されない。
【0041】
本発明の逆作用剤として使用可能であるバルビツール酸塩アンタゴニストは、この明細
書に述べるアンフェタミンを包含するが、これに限定されない。
【0042】
本発明の逆作用剤として使用可能である興奮剤アンタゴニストは、この明細書に述べる
ベンゾジアゼピンを包含するが、これに限定されない。
【0043】
本発明の別の実施形態においては、この逆作用剤は嘔吐などの望ましくない生理的な反
応を生じる薬剤である。このタイプの逆作用剤はオピオイド、ベンゾジアゼピン、バルビ
ツール酸塩、および興奮剤を含むいかなる種類の治療薬とも使用可能である。本発明での
逆作用剤としての使用に好適な催吐剤の例は、イペカックとアポモルフィンを含めて、投
与後嘔吐を安全かつ有効に誘起するいかなる薬剤も包含するが、これに限定されない。
【0044】
4:コーティング
4.1:胃腸管内で不溶のコーティング
胃腸管内で実質的に不溶な有用なコーティングの例は、疎水性材料を含むコーティング
を包含するが、これに限定されない。一つの実施形態においては、胃腸管内で実質的に不
溶であるコーティングはセルロースポリマーを含む。ある実施形態においては、このセル
ロースポリマーは、セルロースエーテル、セルロースエステル、またはセルロースエステ
ルエーテルである。一つの実施形態においては、このセルロースポリマーは、ゼロから3
を含むアンヒドログルコース単位上の置換度、D.Sを有する。「置換度」とは、置換基
により置換されるセルロースポリマーのアンヒドログルコース単位上に存在するヒドロキ
シル基の平均の数を意味する。代表的なセルロースポリマーは、セルロースアシレート、
セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロー
スジアセテート、セルローストリアセテート、モノ、ジ、およびトリセルロースアルカニ
レート、モノ、ジ、およびトリセルロースアロイレート、およびモノ、ジ、およびトリセ
ルロースアルケニレートから選択されるポリマーを包含するが、これに限定されない。例
示のセルロースポリマーは、約21%までのアセチル含量を有するセルロースアセテート
;約32〜39.8%までのアセチル含量を有するセルロースアセテート;約1〜2のD
.S.と約21〜35%のアセチル含量を有するセルロースアセテート;および約2〜3
のD.S.と約35〜44.8%のアセチル含量を有するセルロースアセテートを包含す
る。一つの実施形態においては、このセルロースポリマーは、エチルセルロース、セルロ
ースアセテート、セルロースプロピオネート(低、中、あるいは高分子量)、セルロース
アセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフ
タレート、またはセルローストリアセテートである。一つの実施形態においては、このエ
チルセルロースは約44〜55%のエトキシ含量を有する。
【0045】
更に特定のセルロースポリマーは、約1.8のD.S.、約39.2〜45%のプロピ
ル含量および約2.8〜5.4%ヒドロキシル含量を有するセルロースプロピオネート;
約1.8のD.S.、約13〜15%のアセチル含量、および約34〜39%のブチリル
含量を有するセルロースアセテートブチレート;約2〜29%のアセチル含量、約17〜
53%のブチリル含量、および約0.5〜4.7%のヒドロキシル含量を有するセルロー
スアセテートブチレート;約2.9〜3のD.S.を有するセルローストリアシレート、
例えばセルローストリアセテート、セルローストリバレレート、セルローストリラウレー
ト、セルローストリパルミテート、セルローストリスクシネート、およびセルローストリ
オクタノエート;約2.2〜2.6のD.S.を有するセルロースジアシレート、例えば
セルロースジスクシネート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、
セルロースジペンタノエートとセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート
オクタノエートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロー
スのコエステルを包含する。
【0046】
胃腸管内で実質的に不溶であるコーティングにより第2組成物を被覆するのに有用な更
なるセルロースポリマーは、アセトアルデヒドジメチルセルロースアセテート、セルロー
スアセテートエチルカーバメート、セルロースアセテートメチルカーバメート、およびセ
ルロースアセテートジメチルアミノセルロースアセテートを包含するが、これに限定され
ない。
【0047】
アクリルポリマーも胃腸管内で実質的に不溶であるコーティングにより第2組成物を被
覆するのに有用である。アクリルポリマーは、アクリルおよびメタクリルモノマー1モル
当り約0.02〜0.03モルのトリ(低級アルキル)アンモニウム基を含有するアクリ
ル酸およびメタクリル酸エステル(例えば、アクリル酸低級アルキルエステルとメタクリ
ル酸低級アルキルエステルのコポリマー)から合成されるコポリマーを含むアクリル樹脂
を包含するが、これに限定されない。一つの実施形態においては、このアクリル樹脂は、
Eudragit RS 30D(Rohm Tech Inc.(Fitchburg,MA.製))である。Rudragit RS 30Dは、エチ
ルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MM)およびトリメチルアンモニオエチルメタ
クリレートクロリド(TAM)の水不溶性コポリマーであり、ここで残りの成分(EAとMM)の対
するTAMのモル比は1:40である。EUDRAGIT RSなどのアクリル樹脂の水性懸濁液を使用
して、本発明の逆作用剤を被覆しうる。
【0048】
本発明のある実施形態においては、このアクリルポリマーは、アクリル酸およびメタク
リル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、
シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル
酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポ
リ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリ
レートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポ
リマーから選択される。
【0049】
セルロースポリマーまたはアクリルポリマーを胃腸管内で実質的に不溶であるコーティ
ングとして使用する場合には、好適な可塑剤、例えば、アセチルトリエチルサイトレート
および/またはアセチルトリブチルサイトレートをこのポリマーと混和してもよい。胃腸
管内で実質的に不溶であるコーティングは、このコーティングの分野で周知の着色剤、タ
ルク、および/またはステアリン酸マグネシムなどの添加物も含有してもよい。
【0050】
胃腸管内で実質的に不溶であるコーティングにより第2組成物を被覆するのに有用なポ
リマーは、また、ポリ(乳酸/グリコール酸)(「PLGA」)コポリマー、ポリラクチ
ド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリホス
ファゼン、ポリサッカライド、タンパク質性ポリマー、ポリエステル、ポリジオキサノン
、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリ(ヒドロキシブ
チレート)、ポリホスホエステル、およびこれらの混合物も包含するが、これに限定され
ない。
【0051】
ある実施形態においては、このポリマーは、約2,000〜約500,000ダルトンの分子量を有
するポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマー、乳酸とグリコール酸のコポリマーを含む。
乳酸:グリコール酸の比は約100:0〜約25:75であり、一つの実施形態において
は、約65:35からである。開示が引用により本明細書に明確に組み込まれるルドウッ
ヒらへの米国特許第4,293,539号に記載されている方法により、ポリ(乳酸/グリコール
酸)を製造してもよい。
【0052】
胃腸管内で実質的に不溶であるコーティングは、胃腸管内では第2組成物から逆作用剤
の放出を妨げるのに充分な厚さがある。胃腸管内で実質的に不溶である溶出物の多くは、
水性の環境中でゆっくり生分解されるか、あるいは溶解され、そして充分な時間の後、逆
作用剤を最終的に放出する。従って、このコーティングは、逆作用剤が胃腸管内に存在す
る時間の間は逆作用剤を放出しない充分な厚さでなければならない。このコーティングの
厚さは使用されるコーティング組成物の特性に依存する。
【0053】
4.2:酸可溶層
種々の実施形態においては、本発明で有用なコーティングは酸可溶層を含む。用語「酸
可溶層」は約5.0未満のpH値で実質的に可溶であり、約5.5を超えるpH値で実質
的に不溶である層を指す。一つの実施形態においては、酸可溶層は約4.0未満のpH値
で実質的に可溶であるが、約4.5を超えるpH値で実質的に不溶である。別の実施形態
においては、この酸可溶層は約3.0未満のpH値で実質的に可溶であるが、約3.5以
上のpH値で実質的に不溶である。酸可溶層は、通常、酸可溶ポリマーを含む。
【0054】
この明細書で使用される語句「実質的に可溶な」は、層の記載に使用される場合、この
層が被覆するものの一部、例えば、酸可溶層、塩基可溶層、第1組成物、または第2組成
物が胃腸管環境で有効量で利用可能である程度に可溶であることを意味する。
【0055】
この明細書で使用される語句「実質的に不溶な」は、層の記載に使用される場合、この
層が溶解しないか、あるいはこの層が被覆するものの一部、例えば、酸可溶層、塩基可溶
層、第1組成物、または第2組成物が胃腸管環境で利用可能とならないか、あるいは有効
量未満しか胃腸管環境で利用可能とならない程度にしか溶解しないことを意味する。
【0056】
一つの実施形態においては、この酸可溶ポリマーはジメチルアミノエチルアンモニウム
官能基を有する。このようなポリマーはRohm Pharma GmbH(Weiterstat,Germany)からEUDR
AGIT E100またはEudragit EPOとして市販されている。他の好適な酸可溶ポリマーの例は
、A.T.Florenceにより編集されたMaterials Used in Pharmaceutical Formulations」,So
ciety of Chemical Industries,1984に記載されている。
【0057】
4.3:塩基可溶層
種々の実施形態においては、本発明のコーティングは塩基可溶層を含む。用語「塩基可
溶層」は約5.5を超えるpH値で実質的に可溶であり、約5.0未満のpH値で実質的
に不溶である層を指す。一つの実施形態においては、塩基可溶層は約6.5を超えるpH
値で実質的に可溶であり、約6.0未満のpH値で実質的に不溶である別の実施形態にお
いては、この塩基可溶層は約7.5以上のpH値で実質的に可溶であるが、約7.0未満
のpH値で実質的に不溶である塩基可溶層は一般に塩基可溶層ポリマーを含む。一つの実
施形態においては、この塩基可溶ポリマーはメタアクリル酸とカルボン酸官能基を有する
メタクリレートのアニオン性コポリマーである。このようなポリマーは、Rohm Pharma Gm
bH(Weiterstat,Germany)からEUDRAGIT L 100-55、EUDRAGIT L30D-55、EUDRAGIT L、また
はEUDRAGIT S 100として市販されている。他の好適な塩基可溶ポリマーの例は、A.T.Flor
enceにより編集されたMaterials Used in Pharmaceutical Formulations,Society of Che
mical Industries,1984に記載されている。
【0058】
4.4:徐放性製剤
一つの実施形態においては、治療薬は経時的に徐放される。この明細書に記載されてい
るものを含め当業者に既知の好適な放出制御性製剤は、本発明の経口用製剤についての使
用に容易に選択可能である。経口投与に好適な単一の単位製剤、例えば放出制御に適合さ
れる錠剤、カプセル、ゲルキャップ(gelcap)、キャプレット(caplet)、および類似物は本
発明に包含される。
【0059】
第1組成物からの治療薬の放出制御性は、種々の誘導因子、例えばpH、温度、酵素、
水、または他の生理学的条件または化合物により活性化される。治療薬の放出制御は、例
えば治療薬を放出制御性成分により被覆するか、あるいは放出制御性成分を混和すること
により得られる。本発明の文脈における用語「放出制御性成分」は、本発明の経口用製剤
の第1組成物から治療薬の放出制御を容易にするポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル
、透過膜、リポゾーム、ミクロスフェア、または類似物、またはこれらの組み合わせを含
む化合物または化合物の混合物としてこの明細書で定義される。
【0060】
上述のように、本発明の一つの実施形態においては、治療薬は治療薬を徐放性コーティ
ングにより被覆することにより放出制御用に配合される。用語「徐放性コーティング」は
、薬剤のゆっくりとした放出を経時的に可能せしめる1つ以上の材料でできたコーティン
グを指す。一つの実施形態においては、徐放性コーティングは、pHに無関係の層、すな
わちpHにより影響を受けない規定の透過性を有するコーティングである。用語「pHに
無関係の層」は、例えば、USP Paddle Methodなどの特定の方法を900ml緩衝水溶液
中100rpmで用いて測定した場合、任意の与えられた時間において例えばpH1.6
で放出される薬剤の量と任意の他のpH、例えばpH7.2で放出される量の間の差が1
0%(重量)以下であることを意味する。
【0061】
当業者に既知のいかなる徐放性コーティングも本発明の経口用製剤で使用可能である。
徐放性コーティングは当分野で周知の(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,
第18版.Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990,p.1670を参照のこと)。通常、この徐放
性コーティングは、水不溶性材料、例えばワックスまたはワックス様物質、脂肪アルコー
ル、シェラック、ザイン、硬化植物油、水不溶性セルロース、アクリル酸および/または
メタクリル酸のポリマー、または当分野で既知の任意の他の遅消化性あるいは遅溶解性固
体を含む。本発明で有用なコーティング製剤は、平滑かつ滑らかで、強力な連続フィルム
を製造し、顔料と他のコーティング添加物を支持し、非毒性で、不活性で、そして不粘着
でなければならない。一般に、このフィルムコーティングは、例えば錠剤または顆粒形態
では、第1組成物に塗布されて、約2〜約25パーセントレベルでの重量が増加する。し
かしながら、このフィルムコーティングは、製剤中に包含される治療薬の物理的性質と所
望の放出速度に依存して多少があってもよい。
【0062】
一つの実施形態においては、この徐放性コーティングは疎水性ポリマーを含む。別の実
施形態においては、この疎水性ポリマーは、アルキルセルロース、例えば、エチルセルロ
ース、アクリルポリマーなどの水不溶性のセルロース、またはこれらの混合物を含む。
【0063】
別の実施形態においては、この徐放性コーティングはアクリルポリマーを含む。薬学的
に許容し得るいかなるアクリルポリマーも使用しうる。例えば、このアクリルポリマーを
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルの1つ以
上から形成されるアクリレートまたはメタクリレートとしうる。広範囲のpH値にわたっ
て可溶であるか、あるいは溶解抵抗性のあるポリマーを得ることが可能となるように、こ
れらのポリマーをカチオン性、アニオン性、あるいは非イオン性としうる。本発明の目的
に有用ないくつかのアクリルポリマーは、商品名EUARAGIT(Rohm Pharma GmbH (Weitersta
t, Germany)から市販されている)で販売されている。好適なアクリルポリマーの例は、
アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートポリマー、メチルメタ
クリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレートポリマー、シアノエチルメタクリ
レートポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ
(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレー
ト)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポ
リ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーを包含するがこ
れに限定されない。
【0064】
このアクリルポリマーは1以上のアンモニオメタクリレートコポリマーを含みうる。ア
ンモニオメタクリレートコポリマーは当分野で周知であり、低含量の4級アンモニウム基
を持つアクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーである。与えられた
治療薬に対して望ましい溶解プロフィールを得るためには、異なる物理的性質を有する2
つ以上のアンモニオメタクリレートコポリマーを取り入れることが必要である。例えば、
中性(メタ)アクリルエステルに対する4級アンモニウム基のモル比を変えることにより
、得られるコーティングの透過性を改変しうることが知られている。当業者であれば、モ
ノマーを組み合わせて、治療薬を所望の放出速度で放出するコポリマーを提供する方法を
容易に知りうる。4級アンモニウム官能基を有するアクリレートとメタクリレートのコポ
リマーは、EUDRAGIT RSとEUDRAGIT RLとしてRohm Pharma GmbH (Weiterstat,Germany)か
ら市販されている。
【0065】
本発明での使用に好適な他のポリマーは、ヒドロキシアルキルセルロース;ポリ(乳酸
/グリコール酸)(「PLGA」);ポリラクチド;ポリグリコリド;ポリ無水物;ポリオル
トエステル;ポリカプロラクトン;ポリホスファゼン;ポリサッカライド;タンパク質性
ポリマー;ポリエステル;ポリジオキサノン;ポリグルコネート;ポリ乳酸−ポリエチレ
ンオキシドコポリマー;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリホスホエステル;およびこ
れらの混合物を包含するが、これに限定されない。
【0066】
疎水性ポリマーの水性分散液中に有効量の可塑剤を包含することによって、このフィル
ムの物理的性質を更に改善しうる。例えば、エチルセルロースは比較的高いガラス転移温
度(「Tg」)を有し、通常のコーティング条件下では可撓性のあるフィルムを形成しな
いために、コーティング材料として使用する前にエチルセルロースを可塑化することがし
ばしば必要である。
【0067】
可塑剤の適合性は、ポリマーに対する親和性または溶媒和強度とポリマー−ポリマーの
接触を妨げる有効性に関係する。このような活性は、分子の剛性を軽減することによりポ
リマーに所望の可撓性を付与する。ポリマーに対する可塑剤の適合性を決める場合の重要
なパラメーターはポリマーのTgに関する。Tgはポリマーの物理的性質の基本的な変化
が起こる温度または温度範囲に関する。この変化は状態変化に反映されず、むしろポリマ
ーの巨大分子の運動性の変化に反映される。Tg未満では、ポリマー鎖の運動性は厳しく
制約される。かくして、与えられたポリマーに対して、Tgが室温を超えると、ポリマー
は室温でガラスとして挙動し、硬く、曲げにくく、そしてむしろ脆い;被覆製剤はある量
の外部応力を受けることもあるので、これらはフィルムコーティングを制約する性質であ
る。好適な可塑剤をポリマーマトリックスの中に組み込むことによって、Tgは有効に低
下し、フィルムは外周条件下で柔軟に、曲げ易く、そしてしばしば強力となり、かくして
機械的応力に抵抗する能力が改善される。好適な可塑剤の他の局面は、特にエチルセルロ
ースに対する良好な「膨潤剤」として作用し、そしてこのコーティングの水中での溶解性
プロフィールを改善する能力を包含する。
【0068】
エチルセルロースに対する好適な可塑剤の例は、他の可塑剤(アセチル化モノグリセリ
ド、フタレートエステルおよびヒマシ油などの)が使用可能であるが、ジブチルセバケー
ト、ジエチルフタレート、トリエチルサイトレート、およびトリブチルサイトレートを包
含する。一つの実施形態においては、トリエチルサイトレートはエチルセルロースの水性
分散液用の可塑剤である。
【0069】
本発明で有用なアクリルポリマーに好適な可塑剤の例は、クエン酸エステル、例えばト
リエチルサイトレート、トリブチルサイトレート、ジブチルフタレート、および1,2−
プロピレングリコールを包含するが、これに限定されない。EUDRAGIT RL/RSラッカー溶液
などのアクリルフィルムからフィルムの弾性を増大するのに好適な他の可塑剤は、ポリエ
チレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルフタレート、ヒマシ油、およびトリ
アセチンを包含する。この可塑剤は、通常、第1組成物の被覆に使用される水性あるいは
非水性溶剤中のポリマー溶液に添加される。
【0070】
一般に、コーティング溶液中に包含される可塑剤の量は、コーティングの濃度を基準と
している。一つの実施形態においては、エチルセルロースのコーティング溶液中に包含さ
れる可塑剤の量は、エチルセルロースの約1〜約50重量パーセントである。別の実施形
態においては、アクリルポリマーの水性分散液のコーティング溶液中に包含される可塑剤
の量は約20%である。特別なコーティング溶液に対する可塑剤の必要な濃度と塗布の方
法は、当業者ならば過度の実験なく容易に決定しうる。
【0071】
本発明での使用で好適なエチルセルロースの市販の水性分散液は、AQUACOAT(FMC Corp.
(Philadelphia,Pa.,U.S.A.)から市販されている)である。AQUACOATは、エチルセルロー
スを水非混和性有機溶剤中に溶解し、次にこの有機溶剤を水中に界面活性剤と安定剤の存
在下で乳化することにより調製される。均質化して、サブミクロンの液滴を生成した後、
有機溶剤を真空下で蒸発させて、擬ラテックスを形成する。可塑剤は製造段階時にはこの
擬ラテックス中に取り入れられず;それゆえ、この擬ラテックスをコーティングとして使
用する前に、AQUAGOATを好適な可塑剤と緊密に混合することが必要である。
【0072】
本発明での使用で好適なエチルセルロースの別の市販の水性分散液はSURELEASE (Colo
rcon, Inc. (West Point,Pa.,U.S.A.)から市販されている)である。
【0073】
一つの実施形態においては、アクリルコーティングはEUDRAGITなどの水性分散液の形で
使用されるアクリル樹脂ラッカーを含む。更なる実施形態においては、このアクリルコー
ティングは、Rohm Pharma GmbH(Weiterstat,Germany)から商品名EUDRAGIT RL 30Dおよ
びEUDRGIT RS 30Dで市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。これら
の材料は、低含量の4級アンモニウム基を有するアクリルおよびメタクリルエステルのコ
ポリマーであり、アンモニウム基:残りの中性の(メタ)アクリルエステルのモル比はET
DRAGIT RL 30Dで1:20であり、そしてETDRAGIT RS 30D中で1:40である。これらの
材料の平均分子量は約150,000である。コード表示のRL(高透過性)およびRS
(低透過性)はこれらの試薬の透過性を指す。EUDRAGIT RL/RS混合物は水中および消化液
中で実質的に不溶である。しかしながら、これから形成されるコーティングは水溶液と消
化液中で膨潤性かつ透過性である。望ましい溶解プロフィールを有する放出制御性製剤を
最終的に得るために、本発明で有用なEUDRAGZT RL/RS懸濁液はいかなる所望の比でも一緒
に混合可能である。例えば100%EUDRAGIT RL;50%EUDRAGIT RL、50%EITDRAGIT RS;および
10%FUDRAGIT RL、90%Eudragit RS(各々、Rohm Pharma GmbH (Weiterstat, Germany)か
ら市販されている)から誘導されるコーティングから望ましい放出制御性製剤を得ること
ができる。
【0074】
この徐放性コーティングは疎水性材料と親水性材料の混合物も含むことができる。親水
性材料に対する疎水性材料の比は、他の因子のなかで、治療薬の必要とされる放出速度と
選ばれる材料の溶解性特性により決められる。親水性材料は、水溶性セルロース、例えば
ポリビニルピロリドンとヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含するが、これに限定
されない。この徐放性コーティングに有用な疎水性材料と親水性材料の組み合わせの例は
、シェラックとポリビニルピロリドンの組み合わせとエチルセルロースとヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースの組み合わせを包含するが、これに限定されない。
【0075】
一方、この治療薬を放出制御性マトリックス中に分散しうる。この明細書で使用される
語句「放出制御性マトリックス」は、治療薬を経時的に徐放するマトリックスを意味する
。いかなる放出制御性マトリックスも本発明の経口用製剤で使用可能である。ある放出制
御性マトリックスが経口用製剤に既知である(例えば、Remingtons Pharmaceutical Scie
nces,第18版.Mack Publishing Co.,Easton.PA,1990,p.1684-1685を参照のこと)。
有用な放出制御性マトリックスの他の例は、その内容が参照して本明細書に明確に取り入
れられる、ヒーフィールドらへの米国特許第6,143,328号;ドリツェンらへの第6,063,405
号;ラデバウ(Radebaugh)らへの第5,462,747号;レンチャー(Rencher)らへの第5,451
,409号;クイン(Cuine)らへの第5,334,392号;および各々がオシュラックらへの第5,26
6,331号、第5,549,912号、第5,508,042号、第5,656,295号、第5,324,351号、第5,356,467
号、および第5,472,712号に記載されている。オピオイドに特に有用な放出制御性マトリ
ックスは、ヒーフィールドらへの米国特許第6,143,328号とオシュラックらへの第5,266,3
31号、第5,549,912号、第5,508,042号、第5,656,295号、第5,324,351号、第5,356,467号
、および第5,472,712号に記載されている。
【0076】
この放出制御性マトリックスを場合によっては親水性材料と組み合わせて、可融性疎水
性材料としうる。この疎水性の可融性材料を、例えば疎水性ポリマーまたは天然あるいは
合成のワックスまたはオイル、例えば一つの実施形態においては、約35〜100℃の、
別の実施形態においては約45〜90℃の融点を有する硬化植物油または水素化ヒマシ油
としうる。この親水性材料を親水性ポリマー;ポリエチレングリコールなどの水溶性可融
性材料;または水溶性粒状材料、例えばジカルシウムホスフェートまたはラクトースとし
うる。
【0077】
例えば、乾式あるいは湿式顆粒化を用いて製剤することにより、あるいは治療薬を可融
性成分以外の成分とブレンドすることにより、放出制御性マトリックス中に分散された治
療薬を製造しうる。放出制御性マトリックス中に包含するのに好適な非可融性材料は、次
のものを包含するが、これに限定されない。
【0078】
(a)親水性あるいは疎水性ポリマー、例えばガム、セルロースエーテル、タンパク質
由来の物質、ナイロン、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルクロリド、デン粉、ポリビ
ニルピロリドン、およびセルロースアセテートフタレート。これらのポリマーのうち、セ
ルロースエーテル、例えばアルキルセルロース(例えば、エチルセルロース)などの置換
セルロースエーテル、C1−C6ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロ
ピルセルロースとヒドロキシエチルセルロース)、およびアクリル樹脂(例えば、メタク
リル酸コポリマーなどのメタクリレート)が一つの実施形態で使用される。この放出制御
性マトリックスは、1%と80%(重量)のこの疎水性および/または親水性ポリマーを
好都合に含有しうる。
【0079】
(b)消化性の、長鎖(C8−C50、一つの実施形態においてはC8−C40の)置換ある
いは非置換の炭化水素、例えば、脂肪酸;硬化植物油;脂肪アルコール、例えばラウリル
、ミリスチル、ステアリル、セチルまたは一つの実施形態においては、セトステアリルア
ルコール;脂肪酸のグリセリルエステル、例えば、グリセリルモノステアレート;鉱物油
;およびビーズワックス、グリコワックス、カスターワックス、およびカルナウバワック
スなどのワックス。約25℃と90℃の間の融点を有する炭化水素が一つの実施形態にお
いては使用される。これらの長鎖炭化水素材料のうち、脂肪(脂肪族)アルコールが一つ
の実施形態においては有用である。この放出制御性マトリックスは、60%(重量)まで
の少なくとも1つの消化性の長鎖炭化水素を含有してもよい。
【0080】
(c)ポリアルキレングリコール。この放出制御性マトリックスは60%(重量)まで
の少なくとも1つのポリアルキレングリコールを含有してもよい。
【0081】
本発明の経口用製剤での使用に好適な放出制御性マトリックスは、1つ以上のセルロー
スエーテルまたはアクリル樹脂、1つ以上のC12−C36%、一つの実施形態においては、
1つ以上のC12−C22の脂肪族アルコール、および/または1つ以上の硬化植物油を含む
。特に好適なマトリックスは、1つ以上のアルキルセルロース、1つ以上のC12−C36
一つの実施形態においては、C12−C22の脂肪族アルコール、および場合によっては1つ
以上のポリアルキレングリコールを含む。別の実施形態においては、このマトリックスは
、約0.5%と60%の間の、そして別の実施形態においては1%と50%(重量)の間
のこのセルロースエーテルを含有する。
【0082】
このアクリル樹脂は、例えばメタクリレート、例えばメタクリル酸コポリマーUSNF Typ
e A(EUDRAGIT L)、Type B(EUDRAGIT S)、Type C(EUDRAGIT L 100-55)、EUDRAGIT NE 30D
、EUDRAGIT E、EUDRAGIT RL、またはEUDRAGIT RS(Rohm Pharma GmbH(Weiterstat、German
y)から市販されている)である。一つの実施形態においては、このマトリックスは、約0
.5%と60重量%の、そして、別の実施形態においては1%と50重量%のこのアクリ
ル樹脂を含有する。
【0083】
ポリアルキレングリコールの不在下では、このマトリックスは、一つの実施形態におい
ては、約1%と40%の間の、別の実施形態においては約2%(重量)と36%の間のこ
の脂肪族アルコールを含有する。ポリアルキレングリコールが経口用製剤中に存在する場
合、脂肪族アルコールとポリアルキレングリコールの合体した重量は、一つの実施形態に
おいては、約2%と40%の間、別の実施形態においては約2と36%(重量)の間のこ
のマトリックスを構成する。
【0084】
このポリアルキレングリコールは、例えば、ポリプロピレングリコールまたは一つの実
施形態においては、ポリエチレングリコールであってもよい。この少なくとも1つのポリ
アルキレングリコールの数平均分子量は、一つの実施形態においては、200と15,0
00の間、そして別の実施形態においては400と12,000の間である。
【0085】
融解顆粒化、湿式顆粒化、乾式ブレンディング、乾式顆粒化、および共沈澱を包含する
が、これに限定されない慣用の医薬的な方法を使用して、治療薬をマトリックスの成分に
分散することにより、治療薬を含有する放出制御性マトリックスを容易に製造しうる。
【0086】
放出制御性製剤は、摂取され、胃液および/または腸液に曝されるとこの治療薬を徐放
する。
【0087】
4.5:コーティング法
一つの実施形態においては、第1および第2組成物は、顆粒、微細な顆粒、ピル、ビー
ズ、カプセル、錠剤、または粉末などの固体であるが、これに限定されない。これらの固
体を製造する方法は当分野で周知である。この組成物は、結合剤(例えば、予備ゼラチン
化されたトウモロコシデン粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシ
ウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシム、タルクまたはシリカ);崩壊補助剤
(例えば、ジャガイモデン粉またはナトリウムデン粉グリコレート);または湿潤剤(例
えば、ナトリウムラウリルサルフェート)などのいかなる慣用の薬学的に許容し得る賦型
剤も更に含むことができる。このような組成物は、所望ならば、少量の乳化剤またはpH
緩衝剤も含有しうる。一つの実施形態においては、第1のおよび/または第2組成物は、
疎水性材料を含んで、徐放性の組成物を提供する。有用な疎水性材料の例は上記の4.4
に開示されている。当分野で既知の慣用の方法、例えば、湿式顆粒化、融解押し出し、お
よび圧縮による錠剤化を使用することにより、固体組成物を製造しうる。
【0088】
この固体組成物は、1つ以上のコーティング混合物を塗布することにより層で被覆され
る。コーティング混合物は、任意の慣用の手段によって、例えば上記に挙げたポリマーと
場合によっては可塑剤を好適な溶剤または溶剤の混合物、例えば水、メタノール、エタノ
ール、イソプロパノール、アセトン、エチルアセテート、エチレンクロリド、またはこれ
らの混合物中で混合することにより製造される。可塑剤の例は、クエン酸エステル、例え
ばトリエチルサイトレート、トリブチルサイトレート、ジブチルフタレート、および1,
2−プロピレングリコールなどの;ポリエチレングリコール;ヒマシ油;およびトリアセ
チンを包含するが、これに限定されない。このコーティング混合物が水性分散液である場
合には、少量のタルク、グリセロールモノステアレート、またはコロイド状二酸化ケイ素
を添加して、水性分散液が加工時に粘着する傾向を低減させてもよい。このコーティング
混合物は、コーティング分野で周知の着色剤および/またはステアリン酸マグネシムなど
の添加物も含有しうる。
【0089】
例えば、スプレーまたは浸漬などの当業者に使用可能ないかなる手段によってもこのコ
ーティング溶液を固体組成物に塗布しうる。当業者に慣用のコーティング装置を使用して
、この固体組成物を被覆しうる(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,第18
版.Mack Publishing Co.(Easton,PA),1990を参照のこと)。慣用のコーティング装
置は、遠心流動化タイプのコーティング−顆粒化装置、パンコーティング装置、および流
動床顆粒化コーティング装置を包含するが、これに限定されない。例えば、下部から注入
されるエアジェットが被覆される材料を流動化し、ポリマーコーティングを散布しながら
乾燥を行う、Wuster流動床系を使用しうる。固体組成物を1つ以上のコーティング
により被覆する場合、第1のコーティング溶液を塗布し、次に乾燥させ、その後第2のコ
ーティング溶液を塗布する。一つの実施形態においては、コーティング溶液を塗布して、
加速された貯蔵条件への暴露により実質的に影響を受けない溶解プロフィールを有する製
剤を提供する。
【0090】
この明細書で使用される語句「加速された貯蔵条件」は、規制当局の承認、例えば米国
における承認に対するFDAと有効期限を入手する目的で経口用製剤が暴露される高温お
よび/または高相対湿度の貯蔵条件を意味する。例えば、FDAガイドラインで使用され
る一般に受け入れられている試験は、40℃および75%相対湿度における薬剤製品(す
なわち、その容器と包装)の貯蔵に関する。薬剤製品がこれらの条件下で化学的に劣化せ
ずに、また溶解および物理的特性が不変のまま保たれる貯蔵可能である時間の長さは、こ
の薬剤製品の有効期限を決めるのに使用される。例えば、化学的劣化および溶解または外
観の変化を示さない3ヶ月の貯蔵によって、薬剤製品は2年の有効期限を認められるとい
う結果を得ることができる。他の一般に受け入れられている加速試験は、薬剤製品を37
℃および90%相対湿度で1ヶ月以上、一つの実施形態においては3ヶ月の貯蔵にかける
試験を包含する。
【0091】
5:経口用製剤
5.1:投与単位当りの量
本発明の経口用製剤においては、投与単位当りの治療薬の量は、特定の適応症に対して
の有効量であり、逆作用剤の量に無関係である。例えば、治療薬がオピオイドアゴニスト
であるならば、本発明の経口用製剤中のオピオイドアゴニストの量は、概ね約75ng〜
約1000mg、一つの実施形態においては、約75ng〜約750mgである。当業者
ならば、特定の適応症に必要とされる治療薬の量を過度の実験を行わずに容易に決めうる

【0092】
本発明の経口用製剤中の逆作用剤の量は、逆作用剤が目的の逆作用を与えうるものであ
る。逆作用剤がこの治療薬の薬理学的効果を低下させるか、あるいは消滅することを目的
とする場合には、経口用製剤中の逆作用剤の量は、両方の剤が放出される場合に治療薬の
効果を低下させるか、あるいは消滅させるのに少なくとも充分なものである。
【0093】
本発明においては、この明細書で使用される語句「治療薬の効果を低下させるか、ある
いは消滅させる」は、可能性のある薬物乱用者を誘惑する治療薬の効果が消滅するか、あ
るいは減少することを意味する。例えば、逆作用剤は治療薬の陶酔効果を低下しうる。
【0094】
逆作用剤がオピオイドアンタゴニストである場合には、本発明の経口用製剤中に存在す
るオピオイドアンタゴニストの量は約10ng〜275mgである。オピオイドアンタゴ
ニストのシクラゾシンおよびナルトレキソンは、経口投与される場合、24時間に近い長
時間の作用と共に効能の大部分を保持する。従って、100mg未満の量のこれらのオピ
オイドアンタゴニストが本発明の経口製剤で通常使用される。
【0095】
逆作用剤が嘔吐などの望ましくない生理学的反応を生じることを目的とする場合には、
経口用製剤中の逆作用剤の量は、放出時にこのような効果を生じるのに少なくとも充分な
ものである。
【0096】
安全面の理由により、経口用製剤中に存在する逆作用剤の量は、完全に放出されてもヒ
トに有害であってはならない。当業者ならば、有害化せずに目的とする逆作用を顕在化す
るのに必要な逆作用剤の量を過度の実験を行わずに容易に決めることができる。
【0097】
本発明のある実施形態においては、経口用製剤中の治療薬と逆作用剤の比は重量で約1:
1〜約50:1であり、一つの実施形態においては、重量で約1:1〜約20:1である
。ある他の実施形態においては、この比は重量で約1:1〜約10:1である。本発明の
別の実施形態においては、治療薬はオキシコドンまたはヒドロコドンを含み、約15〜4
5mgの量で存在し、そして逆作用剤はナルトレキソンを含み、約0.5〜5mgで存在
する。
【0098】
別の実施形態においては、第1組成物は徐放性コーティングを有し、治療薬はオピオイ
ドアゴニストであり、そして逆作用剤はオピオイドアンタゴニストである。オピオイドア
ゴニストがヒドロコドンである実施形態においては、徐放性の経口用製剤は投与単位当り
約5mg〜約80mgのヒドロコドンの鎮痛薬投与量を包含しうる。オピオイドアゴニス
トがヒドロモルホンである経口用製剤においては、これを投与単位当り約2mg〜約64
mgのヒドロモルホンヒドロクロリドの量で包含してもよい。別の実施形態においては、
オピオイドアゴニストはモルフィンであり、そして本発明の経口用製剤は約2.5mg〜
約800mgのモルフィンを含む。更に別の実施形態においては、オピオイドアゴニスト
がオキシコドンであり、そして経口用製剤は投与単位当り約2.5mg〜約800mgの
オキシコドン、別の実施形態においては約20mg〜約30mgオキシコドンを含む。放
出制御性オキシコドン製剤は当分野で既知である。オピオイドアゴニストを投与単位当り
約25mg〜800mgのトラマドールの量のトラマドールとしうる。製剤は1つ以上の
オピオイドアゴニストを含有しうる。
【0099】
5.2:経口用製剤の実施形態
一つの実施形態においては、第1組成物と第2組成物を上記の4に説明したように被覆
して、第1の被覆組成物と第2の被覆組成物を提供する。上述したように、治療剤を含む
第1組成物は、酸可溶外層、塩基可溶内層および、最内側の徐放出性コーティングにより
被覆され;そして場合によっては逆作用剤を含むこの第2組成物は、酸可溶内層、塩基可
溶外層、および場合によっては、胃腸管内で実質的に不溶な層により被覆される。次に、
第1組成物と第2組成物を組み合わせて、本発明の経口組成物の単位投与を提供する。一
つの実施形態においては、第1組成物と第2組成物は、大きさ、形態および色の点で類似
し、容易に相互に見分けられない。例えば、第1組成物と第2組成物を当業者に周知の方
法を用いてカプセルまたは錠剤の中に合体および組み入れられる粉末、顆粒、またはビー
ズとしうる。カプセルは硬くとも、あるいは柔らかくともよく、例えば、ゼラチンである
。カプセルは薬学的に許容し得る賦型剤も含有しうる。
【0100】
図3は、第1の部分33と第2の部分34を有し、そして第1組成物31の粉末、顆粒
、またはビーズと第2組成物32の粉末または顆粒を含有する、カプセル30の断面図を
示す。
【0101】
図5は、錠剤50の形態の本発明による製剤の断面図を示す。第1組成物は粉末または
顆粒51の形態のものであり、そして被覆された第2組成物は粉末、顆粒、またはビーズ
52の形態のものである。第1組成物と被覆された第2組成物を薬学的に許容し得るマト
リックス53と混合し、そして錠剤に圧縮する。
【0102】
別の実施形態においては、カプセルまたは錠剤は、酸可溶外層無しおよび塩基可溶内層
無しの第1組成物と塩基可溶外層と酸可溶内層により被覆された第2組成物を含有する。
【0103】
図6は、被覆されていない第1組成物64と塩基可溶の外側の層と酸可溶の内側の層6
5により被覆された第2組成物の混合物であるコアを含む錠剤の形態の本発明の経口用製
剤の別の実施形態を図示する。次に、コアを塩基可溶内層62と酸可溶外層61と任意の
最内側の徐放性コーティング63により被覆する。別法として、第2組成物を胃腸管内で
実質的に不溶である層により被覆しうる。
【0104】
本発明の経口用製剤の別の実施形態は図4に示すような2層錠剤40である。第1組成
物45の固体核を最内側の徐放性コーティング43(任意)、塩基可溶内層42、および
酸可溶外層41により被覆する。第2組成物44の固体核を酸可溶内層46、塩基可溶外
層47、および胃腸管48中で実質的に不溶である最外側の層(任意)により被覆する。
次に、慣用の錠剤化装置と標準的な方法を用いて、2つの被覆された核を2層錠剤40に
圧縮して、2層化錠剤を提供する。この圧縮された2層錠剤を場合によっては更なるコー
ティングにより被覆して、均一な外観の錠剤を提供しうる。一つの実施形態においては、
この更なるコーティングは、錠剤を嚥下した後に胃中で溶解するコーティングである。
【0105】
2層錠剤の別の実施形態においては、第1組成物は非被覆、すなわち酸可溶外層または
塩基可溶内層により被覆されていないが、第2組成物が塩基可溶外層と酸可溶内層により
被覆されている。
【0106】
経口投与70の更に別の実施形態を図7に示す。第2組成物77の固体核を最酸可溶内
層76と塩基可溶外層75により被覆する。この組成物を第1組成物74の層、任意の最
内側のpHに無関係な層73、塩基可溶内層72、および酸可溶外層71により更に被覆
する。経口投与形70は錠剤または顆粒であってもよい。
実施例
【0107】
次の予言的な実施例は、本発明の理解を助けるために述べられるものであり、そして勿
論、この明細書で述べられ、そして請求されている本発明を特に限定するものと解釈され
るべきでない。現在既知であるか、あるいは当業者の視野内にある今後開発されるすべて
の同等物の置換を含めて、本発明のこのようなバリエーション、および調合の変化または
実験的な設計の小さな変化は、この明細書に組み込まれる本発明の範囲内に入るものと考
えられる。
【実施例1】
【0108】
カプセル
(1)オキシコドン顆粒とナルトレキソンHCl顆粒の製造
【表1】

【0109】
トリアセチンと混合することにより、EUDRAGIT RS 30Dを可塑化する。次に、流動床顆
粒化機を用いて、この分散物をオキシコドンHClまたはナルトレキソンHCl、スプレ
ー乾燥のラクトース、およびプロビドンと合体する。得られる混合物を顆粒化する。必要
ならば、この顆粒を乾燥する。次に、この顆粒を篩によりふるい分けして、適切なサイズ
の顆粒を提供する。
【0110】
(2)コーティング
15.0gのEUDRAGIT E100を200mlのエタノール中に分散して、透明な溶液を調
製することにより、酸可溶のコーティング溶液を作製し、そして4gの可塑剤のトリエチ
ルサイトレートをこの溶液に添加する。
【0111】
15.0gのEUDRAGIT Lを200mlのエタノール中に分散して、透明な溶液を提供す
ることにより、塩基可溶のコーティング溶液を作製する。
【0112】
このオキシコドンHCl顆粒を塩基可溶のコーティング溶液により被覆し、乾燥する。次
に、乾燥後、この塩基可溶のコーティングにより被覆されたオキシコドンHCl顆粒をこの
酸可溶のコーティング溶液によりスプレーコートし、そして得られた顆粒を乾燥する。
【0113】
このナルトレキソンHCl顆粒をこの酸可溶のコーティング溶液によりスプレーコートし
、乾燥する。次に、乾燥後、この酸可溶のコーティングにより被覆されたナルトレキソン
HCl顆粒をこの塩基可溶のコーティング溶液によりスプレーコートし、そして得られた
顆粒を乾燥する。
【0114】
(3)カプセル化
この被覆されたオキシコドンHCl顆粒とこの被覆されたナルトレキソンHCl顆粒を一緒に
混合して、混合物を調製し、そしてゼラチンカプセルをこの混合物により充填する。
【実施例2】
【0115】
錠剤
ステアリルアルコールを融解し、そしてこの融解ステアリルアルコール(単位当り25
.00mg)を実施例1で得られた被覆された顆粒と混合して、これらをワックスする。
このワックスされた顆粒を流動床乾燥器中で冷却し、そして次にタルク(単位当り2.5
0mg)とステアリン酸マグネシム(単位当り1.25mg)とブレンドして、ブレンド
を提供する。錠剤プレスを用いてこの得られたブレンドを錠剤に圧縮する。
【0116】
本発明の範囲は、本発明のいくつかの局面の例示として意図されている実施例で開示さ
れている特定の実施形態により限定されるべきでなく、そして機能的に同等である任意の
実施形態は本発明の範囲内である。実際、この明細書で示され、そして述べられたものに
加えて、本発明の種々の改変は、当業者には明白であり、付随の特許請求の範囲内に入る
と意図されている。
【0117】
多数の参考文献を引用したが、これらの全開示は参照して本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の経口用製剤で有用な第1組成物の被覆された顆粒の断面図を示す。
【図2】本発明の経口用製剤で有用な第2組成物の被覆された顆粒の断面図を示す。
【図3】第1組成物の被覆された顆粒と第2組成物の被覆された顆粒を収めたカプセルである本発明の第1の実施形態の断面図を示す。
【図4】2層錠剤である本発明の第2の実施形態の断面図を示す。
【図5】第1組成物の被覆された顆粒と第2組成物の被覆された顆粒を収めた錠剤である本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
【図6】第1組成物を第1組成物中に分散された被覆された第2組成物の顆粒と共に収めた錠剤である、本発明の第4の実施形態の断面図を示す。
【図7】逆作用剤の被覆された組成物が治療薬により更に被覆され、そして次に治療薬が被覆されている錠剤である、本発明の第5の実施形態の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、前記第1組成物が有効量の治療薬を含み、そして前記第2組成物が有効量の逆作用剤を含み、該逆作用剤は、前記治療薬の1つ以上の薬理学的効果を低下させるかまたは消滅させる、あるいは望ましくない生理的な反応を生じる薬剤であり、前記第2組成物が、(i)5.0未満のpH値で可溶であるが、5.5を超えるpH値で不溶である酸可溶内層と(ii)5.5を超えるpH値で可溶であるが、5.0未満のpH値で不溶である塩基可溶外層により被覆され、前記治療薬が、鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固薬、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗真菌剤、抗痛風薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗腫瘍薬、勃起不全改善剤、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、神経弛緩薬、β−ブロッカー、心臓イオノトロピー剤、コルチコステロイド、利尿薬、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解剤、脂質調整剤、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋肉弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、タンパク質分解酵素阻害剤、性ホルモン、興奮剤、筋肉弛緩剤、抗骨粗しょう症薬、抗肥満薬、認識増進剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺肥大薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、前記経口用製剤。
【請求項2】
前記第1組成物と前記第2組成物がカプセル内に収められた粉末、顆粒、またはビーズの形態である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項3】
前記第1組成物と前記第2組成物が、薬学的に許容し得るマトリックス中に分散された顆粒または粉末の形態である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項4】
前記第1組成物を含む第1層と前記第2組成物を含む第2層とを有する2層錠剤の形態である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項5】
前記2層錠剤が胃中で溶解するコーティングにより更に被覆されている、請求項4に記載の経口用製剤。
【請求項6】
前記逆作用剤が前記治療薬のアンタゴニストであり、前記アンタゴニストは、前記治療薬の効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項7】
前記酸可溶層が、ジメチルアミノエチルアンモニウム官能基がついたカチオン性ポリマーを含む請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項8】
前記塩基可溶層がメタクリル酸のまたはカルボン酸官能基がついたメタクリレートのアニオン性ポリマーを含む請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項9】
前記第1組成物が、ポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、リポゾーム、ミクロスフェア、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される放出制御製剤である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項10】
前記第1組成物が、ワックス、脂肪アルコール、シェラック、ゼイン、硬化植物油、水不溶性セルロース、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される徐放性コーティングにより被覆されている、請求項9に記載の経口用製剤。
【請求項11】
前記治療薬が、ベンゾジアゼピンまたはバルビツール酸塩である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項12】
前記治療薬がベンゾジアゼピンであり、そして前記逆作用剤がベンゾジアゼピンアンタゴニストであり、該ベンゾジアゼピンアンタゴニストは、前記ベンゾジアゼピンの効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項11に記載の経口用製剤。
【請求項13】
前記ベンゾジアゼピンアンタゴニストがフルマゼニルである、請求項12に記載の経口用製剤。
【請求項14】
前記治療薬がバルビツール酸塩であり、そして前記逆作用剤がバルビツール酸塩アンタゴニストであり、該バルビツール酸塩アンタゴニストは、前記バルビツール酸塩の効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項11に記載の経口用製剤。
【請求項15】
前記バルビツール酸塩がアモバルビタール、アプロバルボタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メトヘキシタール、メホバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の経口用製剤。
【請求項16】
前記治療薬が、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタアンフェタミン、メチルフェニデート、これらの薬学的に許容し得る塩、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項17】
前記治療薬がドロナビノール、グルテチミド、メチルフェニデート、ナビロン、タンパク質同化性ステロイド、メチルプリロン、エトクロロビノール、エチナメート、フェンフルラミン、メプロバメート、ペモリン、レボメタジル、ベンズフェタミン、クロルフェンテルミン、ジエチルプロピオン、フェンテルミン、メブタメート、クロルテルミン、フェニルアセトン、ドロナビノール、ナビロン、ベンフェタミン、抱水クロラール、エトクロロビノール、パラアルデヒド、ミダゾラム、デトロプロポキシフェン、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項18】
前記治療薬が5−ASA、ステロイド、緩下薬、オクトレオチド、シサプリド、抗コリン作用薬、カルシウムチャネル遮断薬、大腸の細胞へ送達するためのDNA、グルコサミン、トロンボキサンA2合成酵素阻害剤、5HT3アンタゴニスト、感染性細菌に対する抗体、抗ウイルス薬、ヘパリン、インスリン、カルシトニン、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、ソマトスタチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレシン、デスモプレシン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、および鎮痛薬からなる群から選択される、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項19】
治療薬と逆作用剤の比が1:1〜50:1である、請求項1に記載の経口用製剤。
【請求項20】
第1組成物と第2組成物を含む経口用製剤であって、前記第1組成物が有効量の治療薬を含み、(i)5.5を超えるpH値で可溶であるが、5.0未満のpH値で不溶である塩基可溶内層と(ii)5.0未満のpH値で可溶であるが、5.5を超えるpH値で不溶である酸可溶外層により被覆され、そして前記第2組成物が有効量の逆作用剤を含み、該逆作用剤は、前記治療薬の1つ以上の薬理学的効果を低下させるかまたは消滅させる、あるいは望ましくない生理的な反応を生じる薬剤であり、(iii)5.0未満のpH値で可溶であるが、5.5を超えるpH値で不溶である酸可溶内層と(iv)5.5を超えるpH値で可溶であるが、5.0未満のpH値で不溶である塩基可溶外層により被覆され、前記治療薬が、鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固薬、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗真菌剤、抗痛風薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗腫瘍薬、勃起不全改善剤、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、神経弛緩薬、β−ブロッカー、心臓イオノトロピー剤、コルチコステロイド、利尿薬、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解剤、脂質調整剤、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋肉弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、タンパク質分解酵素阻害剤、性ホルモン、興奮剤、筋肉弛緩剤、抗骨粗しょう症薬、抗肥満薬、認識増進剤、抗尿失禁薬、栄養油、抗良性前立腺肥大薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、前記経口用製剤。
【請求項21】
前記第1組成物と前記第2組成物がカプセル内に収められた粉末、顆粒、またはビーズの形態である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項22】
前記第1組成物と前記第2組成物が薬学的に許容し得るマトリックス中に分散された顆粒または粉末の形態である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項23】
前記第1組成物を含む第1層及び前記第2組成物を含む第2層を有する2層錠剤の形態である請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項24】
前記2層錠剤が胃中で溶解するコーティングにより更に被覆されている、請求項23に記載の経口用製剤。
【請求項25】
塩基可溶内層と酸可溶外層により被覆されたコアを含む錠剤の形態であって、前記コアが前記治療薬に分散された酸可溶内層と塩基可溶外層により被覆された第2組成物を含む請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項26】
酸可溶内層、塩基可溶外層、前記第1組成物の層、塩基可溶内層、および酸可溶外層をこの順に被覆した第2組成物を中心に含む錠剤の形態である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項27】
前記逆作用剤が前記治療薬のアンタゴニストであり、前記アンタゴニストは、前記治療薬の効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項28】
前記逆作用剤が緩下薬である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項29】
各酸可溶層が、ジメチルアミノエチルアンモニウム官能基がついたカチオン性ポリマーを含む請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項30】
各塩基可溶層がメタクリル酸またはカルボン酸官能基がついたメタクリレートのアニオン性ポリマーを含む請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項31】
前記第1組成物が放出制御性製剤である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項32】
前記第1組成物が徐放性コーティングにより被覆されている、請求項31に記載の経口用製剤。
【請求項33】
前記徐放性コーティングがワックス、脂肪アルコール、シェラック、ゼイン、硬化植物油、水不溶性セルロース、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の経口用製剤。
【請求項34】
前記第1組成物が放出制御性マトリックス中に分散されている、請求項31に記載の経口用製剤。
【請求項35】
前記治療薬が、ベンゾジアゼピンまたはバルビツール酸塩である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項36】
前記治療薬がベンゾジアゼピンであり、そして前記逆作用剤がベンゾジアゼピンアンタゴニストであり、該ベンゾジアゼピンアンタゴニストは、前記ベンゾジアゼピンの効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項35に記載の経口用製剤。
【請求項37】
前記ベンゾジアゼピンがアルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシード、クロラゼペート、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパン、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載の経口用製剤。
【請求項38】
前記逆作用剤がフルマゼニルである、請求項35に記載の経口用製剤。
【請求項39】
前記治療薬がバルビツール酸塩であり、そして前記逆作用剤がバルビツール酸塩アンタゴニストであり、該バルビツール酸塩アンタゴニストは、前記バルビツール酸塩の効果を劇的に低下させるかあるいは消滅させる、請求項35に記載の経口用製剤。
【請求項40】
前記バルビツール酸塩がアモバルビタール、アプロバルボタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メトヘキシタール、メホバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載の経口用製剤。
【請求項41】
前記治療薬がドロナビノール、グルテチミド、メチルフェニデート、ナビロン、タンパク質同化性ステロイド、メチルプリロン、エトクロロビノール、エチナメート、フェンフルラミン、メプロバメート、ペモリン、レボメタジル、ベンズフェタミン、クロルフェンテルミン、ジエチルプロピオン、フェンテルミン、メブタメート、クロルテルミン、フェニルアセトン、ドロナビノール、ナビロン、ベンフェタミン、抱水クロラール、エトクロロビノール、パラアルデヒド、ミダゾラム、デトロプロポキシフェン、薬学的に許容し得るこれらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項42】
前記治療薬が5−ASA、ステロイド、緩下薬、オクトレオチド、シサプリド、抗コリン作用薬、カルシウムチャネル遮断薬、大腸の細胞へ送達するためのDNA、グルコサミン、トロンボキサンA2合成酵素阻害剤、5HT3アンタゴニスト、感染性細菌に対する抗体、抗ウイルス薬、ヘパリン、インスリン、カルシトニン、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロン、ソマトスタチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、バソプレシン、デスモプレシン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、および鎮痛薬からなる群から選択される、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項43】
治療薬と逆作用剤の比が1:1〜50:1である、請求項20に記載の経口用製剤。
【請求項44】
前記治療薬の有効量は患者の小腸中で放出され;及び前記逆作用剤の有効量未満の量は前記患者の胃腸管内で放出される、請求項1または20に記載の経口用製剤。
【請求項45】
痛みを治療あるいは予防するための医薬の製造における、請求項1に記載の経口用製剤の使用。
【請求項46】
痛みを治療あるいは予防するための医薬の製造における、請求項20に記載の経口用製剤の使用。
【請求項47】
有効量の治療薬を含む第1組成物および有効量の逆作用剤を含む第2組成物を提供する工程と、
前記第2組成物を酸可溶内層と塩基可溶外層により被覆する工程と、
前記第1組成物と前記第2組成物を組み合わせて経口用製剤を提供する工程と、を含む、請求項1に記載の経口用製剤を製造する方法。
【請求項48】
有効量の治療薬を含む第1組成物および有効量の逆作用剤を含む第2組成物を提供する工程と、
前記第2組成物を酸可溶内層と塩基可溶外層により被覆する工程と、
前記第1組成物と前記第2組成物を組み合わせて経口用製剤を提供する工程と、を含む、請求項20に記載の経口用製剤を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−132711(P2009−132711A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295477(P2008−295477)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【分割の表示】特願2003−518547(P2003−518547)の分割
【原出願日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】