説明

治療薬の標的化送達のための多重特異的非共有結合複合体の使用

本発明は、多重特異性ターゲッティングタンパク質とハプテン‐酵素共有結合体を含む非共有結合複合体を投与することを含んでなる、被験体において標的細胞、組織もしくは病原体を治療するための方法に関する。本発明はさらに、該複合体を製造するための非共有結合複合体または成分を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、被験体へ治療薬を送達するための方法、組成物およびキットに関する。
【0002】
背景技術
治療薬をin vivoで罹患組織へ選択的に送達することは、依然として治療成果の向上を目的とした主要な取り組みである。本発明の以下の考察の多くは抗癌治療に関して説明されているが、薬物またはプロドラッグを用いた治療に従う病態であればどれでも同じように対応できよう。癌の場合、標準的な化学療法は概して、大部分の正常細胞よりも増殖の速い罹患細胞による有毒薬物の取り込みが高いことに依存してきた。しかし、これは限定された有用性に過ぎないことが分かり、癌に対する確たる治療効果を得られる前に正常細胞に毒性が達することもしばしばある。一般的に、最も速く分裂する正常細胞が化学療法薬の副作用を最も受けやすい。
【0003】
抗癌剤療法から得られる治療成果を改善しようとする、いくつかの異なるアプローチがなされている。その1つは、薬物の混合物または「カクテル」の使用であり、成分となる薬物は細胞代謝の異なる態様への効果から選択されることが多い。2番目は、リポソームなどの担体への薬物の封入または長期循環する高分子への薬物の付着である。このアプローチは血清中の薬物の半減期を延ばし、一般に、投与された薬物の、より多くの部分を標的部位へ堆積させることを可能にする。3番目のアプローチは、薬物がモノクローナル抗体またはペプチドなどの特異性ターゲッティング剤へ付着されるという点で、2番目のアプローチの発展形と考えられる。これらのターゲッティング剤は、標的細胞によってアップレギュレートされているかまたは特異的に産生された抗原または受容体のそれぞれとそれらを結合することによって標的に特異的に固着することができる。
【0004】
前述のアプローチでの欠点は、高分子、ペプチドまたはモノクローナル抗体(MAb)とのコンジュゲーションの際に薬物が効力を失う傾向があることである。安定なバイオコンジュゲートを形成しながら薬物の活性を保存しようとする、薬物コンジュゲーションの方法が多数の論文に記載されている。残念ながら、多くの薬物−担体結合体もin vivoの血清環境の攻撃を受けると解離する。さらに、腫瘍の薬物の取り込みが減少する一方で正常組織に対し非特異的な毒性が増加する場合が多い。
【0005】
毒性が少なく、より効率的かつ効果的な方法で薬物を罹患部位へ送達する一つの発展した方法は、抗体向性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)の使用である。例えば、米国特許第5,632,990号(Bagshawe)参照。当初、ADEPTは抗体と酵素の結合体の使用に頼ってこれを罹患部位へ局在させていた。このようなアプローチには、コンジュゲーションの際の抗体および/または酵素活性の損失、ならびに長期循環MAbによる血流中で循環するMAb−酵素結合体の残存レベルが高いことをはじめとするいくつかの欠点があった。後者は今度はプロドラッグの投与の際に循環中の酵素活性過剰という結果を招き、プロドラッグは血流中で酵素によって切断され、高レベルの有効な薬物および高レベルの非特異的な薬物毒性を生じる。
【0006】
後に、二重特異性抗体(bsAb)の使用がADEPT法への適用に提案された。このアプローチでは、1つのアームで疾病関連抗原、そして第2のアームで酵素上のエピトープの双方をターゲッティングする二重特異性抗体を被験体へ与え、しばらくした後に目的の酵素を、そして最後に該酵素がそれに対して活性となったプロドラッグを与える。本発明は、クリアリング剤を含まない三段階の送達系を含む。このADEPT法の実施上、第二の捕捉段階で直面する問題、すなわち、おそらくはこの抗体−抗原複合体の親和性が低いことによる、酵素エピトープに対するbsAbの第2のアームによる問題から、bsAbと該酵素を共に混合し、単一の複合体として投与し、その後プロドラッグを投与するというプロトコールに至った。この変更されたアプローチはクリアリング剤を含まない二段階の送達系からなる。しかし、この改良されたADEPT法には、最終的に患者へ広く適用することを妨げる問題が多く残っている。これらには、bsAbのターゲッティングアームの有用性、bsAb製剤の問題点、bsAbの第2のアーム(抗酵素エピトープ)の結合親和性、プロドラッグの選択、該酵素によるプロドラッグ切断の効率、ならびに特に、プロドラッグ投与時の非標的組織での活性酵素の存在、が挙げられる。後者は正常組織においてプロドラッグの望ましくない切断をもたらし、その結果、組織中での有効薬の生成により望ましくない毒性がもたらされる。特に問題なのは、活性酵素による循環中で薬物からプロドラッグへ切断を受けることである。
【0007】
従って、bsAbおよび酵素の必要以上の解離がなく、また治療薬の効力に悪影響を与えることなく、ADEPTアプローチを用いて治療薬を罹患部位へ選択的に送達することのできる方法および組成物に継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは驚くべきことに、多重特異性ターゲッティングタンパク質 (例えば、二重特異性モノクローナル抗体)をハプテン−酵素共有結合体と予め混合すした場合、生じた混合物を用いて、多重特異性抗体のターゲッティングするアームによって該酵素を罹患部位に特異的に局在させることができることを発見した。多重特異性抗体の第2の「ハプテン結合」アームとハプテン−酵素結合体との間で結合している複合体の強度は、ADEPTの成功に好適な位置および濃度で該酵素を保持するのに十分である。bsAb/ハプテン−酵素の非共有結合複合体は長期間循環中に留まり、bsAbのハプテン結合アームとハプテン−酵素結合体との間の結合の安定性を示す。bsAbの第2のアームは特定の酵素の定義されていないエピトープよりも注意深く選択されたハプテンに対して作られるため、bsAbの第2のアームが最適な結合特性を有するよう注意深く選別することができる。さらに、ハプテンを異なる酵素に対するものに置き換えれば同じ認識ハプテンが認識されるので、同じ第2のアームを含むbsAbは異なる酵素と共に用いてよい。このような非共有結合複合体は、ADEPTを用いる疾病組織標的への治療薬の送達のための優れた一般法の一例を表す。この新規なADEPT方法論は、薬物−担体共有結合体を用いて前述の問題、ならびにADEPTの概念の初期の見解に関して見られた問題を回避するのに適用され得る。
【0009】
一つの態様では、本発明は、哺乳類などの被験体において標的細胞、組織または病原体を治療する方法に関し、順に、
a)治療上有効な量の非共有結合複合体を前記被験体へ投与し、それにより標的組織局在複合体を形成すること、
ここで、前記非共有結合複合体は、少なくとも1つの標的結合部位と1つのハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および1つのハプテン−酵素共有結合体を含み、
前記の少なくとも1つの標的結合部位は、標的細胞、組織もしくは病原体上、または前記標的細胞、組織もしくは病原体によって産生されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合可能であり、かつ
前記ハプテン結合部位は該ハプテン−酵素共有結合体と非共有結合している、
b)所望により、クリアリング剤を投与すること、ならびに
c)該標的組織局在複合体によって有効な薬物へと変換され得る化学療法薬またはプロドラッグを投与すること、
を含む。より具体的には、該化学療法薬は、標的組織に局在する複合体すなわち酵素によって有効な薬物へ変換される。
【0010】
また別の態様では、本発明は、好適な容器中に、
a)ハプテン−酵素結合体と予め混合した、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および
b)化学療法プロドラッグ
を含む、キットに関する。
【0011】
また別の態様では、本発明は、個別の好適な容器中の、
a)少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、
b)ハプテン-酵素結合体、および
c)化学療法プロドラッグ、
を含み、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む前記多重特異性ターゲッティングタンパク質および前記ハプテン-酵素結合体が使用直前に混合される、キットに関する。
【0012】
また別の態様では、本発明は、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質と、ハプテン−酵素共有結合体とを混合することを含む、標的細胞、組織、または病原体へ局在しうる安定な非共有結合複合体を作出する方法であって、
前記の少なくとも1つの標的結合部位が、前記標的罹患細胞、組織もしくは病原体上、または前記標的罹患細胞、組織もしくは病原体によって産生されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合可能であり、かつ
前記ハプテン結合部位が前記ハプテン−酵素結合体と安定的に非共有結合可能であり、それにより安定な非共有結合複合体を作出する方法に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、治療上有効な量の非共有結合複合体を投与することを含む、被験体の治療方法に関し、前記非共有結合複合体は前記被験体への投与前に前記多重特異的ターゲッティングタンパク質とハプテン−酵素結合体を予め混合して得られる。
【発明の具体的説明】
【0014】
本明細書において「被験体」とは、いずれの哺乳類も意味する。一実施形態では、該哺乳類はヒトである。
【0015】
I.非共有結合複合体:多重特異性ターゲッティングタンパク質およびハプテン−酵素結合体
本明細書において「ターゲッティングタンパク質」とは、二重特異性抗体などの多重特異性結合タンパク質、または組換え産生された抗原結合分子であり、ここでは同一または異なる自然抗体、一本鎖抗体または抗体フラグメントの、特異性の異なる2以上のセグメントが結合している。ターゲッティングタンパク質の結合価とは、特定の抗原またはエピトープに対し該ターゲッティングタンパク質が有する結合アームまたは結合部位の総数を意味する。従って、ターゲッティングタンパク質が抗原またはエピトープに対して有する結合アームまたは結合部位の総数に応じて、ターゲッティングタンパク質は一価にも、二価にも、三価にも、または多価にもなりうる。多価のターゲッティングタンパク質は抗原との結合に際して複数の相互作用があり、従って、前記抗原との結合力が高まるるという利点をする。
【0016】
ターゲッティングタンパク質の特異性とは、ターゲッティングタンパク質が何個の抗原またはエピトープと結合することができるかを意味する。従って、ターゲッティングタンパク質は、単一特異性、二重特異性、三重特異性または多重特異性であり得る。多重特異性ターゲッティングタンパク質は、個別の抗原との結合に際して複数の相互作用があり、従って細胞標的との結合力が高まるという利点を有する。これらの定義を用いると、自然抗体(例えば、IgG)は、2つの結合アームを有するので二価であるが、1つの抗原と結合するので単一特異性である。(標的細胞に対して)単一特異性の多価ターゲッティングタンパク質は1つのエピトープに対し1以上の結合部位を有するが、同じ抗原上の同じエピトープとだけ結合する。単一特異性多価ターゲッティングタンパク質のもう1つの例は、同じ抗原に反応する2つの結合部位を有するダイアボディーである。ターゲッティングタンパク質は、同じ抗体成分の複数のコピーを含む、異なる抗体成分の多価と多重特異性の双方の組合せを含んでよい。
【0017】
多価標的結合タンパク質の例は、特許出願番号60/220,782号に記載されている。多価標的結合タンパク質は、化学リンカーによる数個のFab様フラグメントの架橋により作出されている。米国特許第5,262,524号;同5,091,542号およびLandsdorp et al. Euro. J. Immunol. 16: 679-83(1986)参照。多価標的結合タンパク質は、数個の一本鎖Fv分子(scFv)の共有結合により単一のポリペプチドを形成することによっても作出されている。米国特許第5,892,020号参照。基本的にscFv分子集合体である多価の標的結合タンパク質は、米国特許第6,025,165および同5,837,242に開示されている。3つのscFv分子を含む三価の標的結合タンパク質は、Krott et al. Protein Engineering 10(4): 423-433(1997)に記載されている。
【0018】
本発明の好ましい態様では、多価多重特異性ターゲッティングタンパク質は二重特異性抗体である。このようなターゲッティングタンパク質はFab’×Fab’フラグメントによって例示され、第1のFab’フラグメントは抗腫瘍細胞エピトープと結合し、第2のFab’フラグメントは低分子量ハプテンと結合する。この実施形態では、2つの明確な特異性Fab’フラグメントを、市販のクロスリンカーおよび当技術分野で周知の方法を用いて、そのヒンジ領域チオール基を介して連結することができる。2番目のターゲッティングタンパク質はF(ab’)×Fab’フラグメントによって例示され、二価のF(ab’)フラグメントは抗腫瘍細胞エピトープと結合し、一価のFab’フラグメントは低分子量ハプテンと結合する。同様に、3番目のターゲッティングタンパク質は完全なIgG×Fab’フラグメントによって例示され、二価のIgGは抗腫瘍細胞エピトープと結合し、一価のFab’フラグメントは低分子量ハプテンと結合する。抗標的細胞アームおよび抗ハプテンアーム双方のその他の特異性および価数の組み合わせは容易に認識され得る。
【0019】
本発明の好ましい一つの態様では、多価の多重特異性(標的細胞およびハプテンに対する)ターゲッティングタンパク質は、二価の抗抗原および一価の抗ハプテン二重特異性抗体である。標的細胞に対して二価であるほうが、組成物が細胞表面上に残存する、または長時間細胞と会合する能力をより良く保持する。ハプテンに対して一価であることはハプテン−酵素結合体に起こりうる架橋の数を制限し、従って最終的な分子サイズを調節する。このような物質の具体的な例は、抗CEA×抗インジウム−DTPA F(ab’)×Fab’二重特異性抗体であり、ここで、CEAは癌胎児性抗原をさし、DTPAはジエチレントリアミン5酢酸をさす。さらなる例を下に考察する。
【0020】
疾病を標的とする抗体アームの標的結合部位は、標的罹患細胞、組織もしくは病原体上、または標的罹患細胞、組織もしくは病原体によって形成されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合しうる。本発明の好ましい態様では、病原体は、ウイルス、真菌、寄生虫および細菌からなる群から選択される。本発明の一つの態様で意図される相補的結合部分としては、限定されるものではないが、腫瘍関連抗原(TAA)が挙げられ、前記抗原は、AFP(α胎児タンパク)、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、EGP−1、EGP−2、CD37、CD74、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD30、CD74、CD80、HLA−DR、Ia、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、葉酸受容体、VEGFR、壊死抗原、IL−2、T101およびMAGEからなる群から選択される。特異性ターゲッティング抗体としては、限定されるものではないが、MN−14(抗癌胎児性抗原)、Mu−9(抗結腸特異的抗原−P)、LL2(抗CD22)、LL1(抗CD74)、hA20(抗CD20)RS7(抗上皮糖タンパク質)が挙げられる。このような抗体は、対応するネズミ抗体と同じCDRを含むキメラ、ヒト化およびヒト抗体を包む。米国特許第5,874,540号;同5,789,554号および同6,187,287号参照。係属中の米国特許出願第10/116,116号;同09/337,756号;60/360,259号;および60/356,132号も参照。
【0021】
多重特異性ターゲッティングタンパク質はまた、ハプテン結合部位またはアームと呼ばれるアームを有する。このハプテン結合部位は一般に抗体またはハプテン結合抗体フラグメントであり、所定の低分子量ハプテンに対して作られている。このような低分子量ハプテンとしては、DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸)およびHSG(ヒスタミンスクシニルグリシン部分)などの物質が挙げられる。
【化1】

【0022】
抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて一般に低分子量ハプテンと免疫原(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、またはその他の外来タンパク質)との結合後に作製する。多重特異性ターゲッティングタンパク質のハプテン結合部位を含み得る抗体の具体的な例としては、MAbs734(抗ジエチレントリアミン5酢酸−インジウム複合体;抗DTPA)、679(抗ヒスタミニルスクシニルグリシル;抗HSG)およびLG1(抗DOTA)が挙げられる。
【0023】
本明細書中に開示のMAbの他に、当業者に公知の標準のmAb作製法によっていずれのハプテンまたは薬物に対しても作ることのできるその他のMAbも評価されうる。例えば、HSGなどのハプテンをキーホールリンペットヘモシアニンなどの免疫原刺激物質またはアジュバントへ付着させ、該結合体を免疫力のある動物へ注射することができる。複数回の注射を行うこともしばしばある。当然のことながら、このようなアプローチは、HSGなど当該のハプテンに対して若干特異性の異なる数個の異なる抗体をもたらし得る。MAbはHSG構造の異なる下位区分、または異なる立体配置を認識することができる。リジンのイプシロン(ε)位のアミノ基へ付着した場合のみHSG部分を認識するなど、単にHSG分子自体よりも少し詳しく認識するMAbを得てもよく、実際には、最初に後者の免疫元タンパク質上のイプシロン(ε)位のリシルアミノ基へHSGを付着させることによってKLH(例)と結合させる。網羅しようとするものではないが、これらの一般的な手順および結果は当技術分野で周知である。次にこれらの免疫性を与えられた動物由来の抗体産生脾臓細胞を単離し、その後骨髄腫細胞系統と融合させて抗ハプテン抗体を分泌するハイブリドーマを作製することも周知の技術である。Kohler G. and Milstein C., Eur. J. Immunol. 6:511-9 (1976); Kohler G. et al., Eur. J. Immunol. 6:292-5 (1976); およびKohler G. and Milstein C. Nature 256:495-7 (1975)参照。
【0024】
多重特異性ターゲッティングタンパク質は、周知の反応によって異なる特異性を有する抗体から化学的に製造することができる。一般的に、1つのMAbは架橋剤との反応によって活性化し、後者は第1のMAbのリジン、還元システイン、または酸化炭水化物残基で反応するよう選択されている。精製後、活性化した第1のMAbを第2のMAbと混合する、これは次に当初の架橋剤の2つ目の機能と、特に第2のMAbリジン、還元システインまたは酸化炭水化物残基を介して特異的に反応する。多重特異性ターゲッティングタンパク質も体細胞的に、クアドローマ技術によって製造することができる。クアドローマ技術とは、二重特異性抗体の双方のアームを発現する細胞系統を、bsMAbを分泌するよう培養中で産生し増殖させる技術である。最後に、bsMAbも現代の分子生物学の技術によって便宜に産生することができる。例えば、Colman, A., Biocherm. Soc. Symp. 63: 141-147 (1998);米国特許第5,827,690号;および米国公開特許公報番号20020006379参照。
【0025】
上記に例示した種類のbsAbは、関連するbsAbのアームが何に対して作られたかに応じて、適切なプロドラッグの投与後に、数種類の異なるハプテン−酵素結合体と予め混合でき、そして有効な治療薬を製造および送達できる。好ましい実施形態では、ハプテン−酵素共有結合体に含まれる酵素は、エステラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミダーゼ、グルコロニダーゼおよびガラクトシダーゼからなる群から選択される。最も好ましくは、エステラーゼは、ラット、マウス、ウサギ、ブタおよびヒトカルボキシルエステラーゼからなる群から選択されるカルボキシルエステラーゼである。酵素は当技術分野で周知の組換え技術によって産生してよい(Wolfe, et al.1999)。酵素は、酵母、細菌、植物、昆虫または動物細胞中で産生されてよい。酵素は、その触媒特性が向上するよう修飾されているのが好ましい(Wolfe et al,1999)。その修飾は部位特異的突然変異誘発によってなされてよい。部位特異的突然変異誘発の一般的考察に関しては、米国特許第5,352,594号および同5,912,161号参照。いずれの場合も、突然変異誘発の望ましい効果は、該酵素のミカエリス定数を小さくし、より低いプロドラッグ基質濃度でより効率的な酵素活性を可能にすることである。多重特異性ターゲッティングタンパク質は、その抗原標的およびそのハプテン標的の双方とそれぞれ標的結合部位およびハプテン結合部位を介して、解離定数10−7、より好ましくは10−9で結合するのが好ましい。
【0026】
ハプテンはいくつかの方法で酵素へ付着させることができる。例えば、DTPAハプテンは酵素上の特定の個別の位置で酵素カルボキシルエステラーゼと結合させて、ハプテン−酵素共有結合対を得ることができる。最も簡単には、市販の前駆物質DTPA二無水物を、pH7〜9の適当なバッファー中の酵素溶液へ加える。1〜16時間の反応の後、適当なモル過剰のDTPA二無水物を用いて、後者のリシル残基と前駆物質の1つの無水基との反応によって1以上のDTPAユニットを酵素へ付着させる。DTPA−酵素結合体は、硫酸アンモニウム沈殿法、ダイアフルトレーションまたはサイズ排除もしくはイオン交換クロマトグラフィーなどの当該の分離をもたらす標準法によって、反応を起こしていない加水分解されたDTPAおよびバッファー成分から分離される。bsAb−ハプテン−酵素結合体を得るには、次にハプテン−酵素共有結合体を、MN−14×734bsAb(抗CEA×抗DTPA)などのbsAbと混合して、非共有結合複合体を得る。ここで、標的細胞上の相補結合部分と結合可能な標的結合部位はMN−14である。その代表的な複合体はMN−14×734bsAb/DTPA−カルボキシルエステラーゼである。このbsAbとハプテン−酵素結合体は、5:1から1:5の割合で、より好ましくは2:1から1:2の割合で混合すればよい。複合体は使用直前に作製するか、または事前に作製し、必要となるまで適切な条件下で保存することができる。これは出荷や今後の使用のために凍らせてもよく、または凍結乾燥によって長期保存用に製剤してもよい。このような方法は当技術分野で周知である。
【0027】
ハプテン−酵素結合体はまた、1回の化学反応で2つのハプテン認識ユニットを酵素へ付着させるよう設計された別のアプローチを用いて作製してもよい。このアプローチでは、かかる2つのハプテン認識ユニットを含む中間体を、これもやはり活性化および酵素との結合のための基を組み込む短ペプチド担体主鎖と結合させる。この物質の一般式は、X−ペプチド(−X)−(反応基)であり、式中、ペプチドは2〜10アミノ酸残基長、好ましくは2〜5アミノ酸残基長であり、最も好ましくは3〜4アミノ酸残基長で、X部分は、In−DTPA、DOTA、またはHSGサブユニットに例示される既に述べた認識ハプテン残基であり、かつ反応部分は二価の認識結合体の残部からの干渉なく酵素と結合できる機能を含む。このような構造の例は、Ac−NH−Lys(HSG)−Tyr−Lys(HSG)−COOHであり、2リシル残基と1チロシル残基からなるトリペプチドで、互いにアミド結合によって結合し、そのαアミノ基上でアセチル残基などの反応を起こしていない基により遮断されている。このアミノ酸はLまたはD型コンホメーションであってよい。各リシル残基は、そのイプシロン(ε)アミノ基を介してHSG認識ユニットに付着する。この例での反応部分は、無水物、活性エステルまたはその他の酵素上の遊離アミノ基と結合する当該の活性化剤を介してさらに活性化し得るカルボキシル基である。
【0028】
このような構造の同様な第2の例は、4(4−N−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシアミド−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−CONHであり、2リシル残基と1チロシル残基からなるトリペプチドで、互いにアミド結合によって結合し、そのカルボキシル末端基上でアミド残基などの反応を起こしていない基により遮断されている。このアミノ酸はLまたはD型コンホメーションであってよい。各リシル残基はDTPA認識ユニットに付着する。この例での反応部分は、酵素上で遊離チオール基と結合し得るマレイミド基であり、該遊離チオール基は内生的に存在するか、またはTraut試薬などのチオール化剤を用いる該酵素の事前の反応によってそこに置かれる。
【0029】
本発明の状況の範囲内で、さらに多くのこのような組成物が有用であると考えられる。例えば、米国公開特許公報番号20020006379および係属中の米国特許第09/337,756号参照。
【0030】
投与、疾病部位への局在化、およびbsAb/ハプテン−酵素複合体の正常組織からの実質的クリアランスの後、当該の酵素に対する薬物またはプロドラッグ基質を与えてよい。例えば、CEA発現腫瘍を用いて、DTPA−カルボキシルエステラーゼと予め複合させた上記のMN−14×734bsAbを与え、CEA発現腫瘍部位へ局在させ、正常組織をクリアリングしてから、プロドラッグCPT−11(イリノテカン)(カルボキシルエステラーゼに対する基質)を与える。腫瘍に局在した非共有結合bsAb−ハプテン−酵素複合体は、その後投与されたプロドラッグを腫瘍部位で特異的に活性化させる。種々の化学療法薬または化学療法薬のプロドラッグを、被験体の治療のための本発明の好ましい実施形態の実践に用いてよい。このような化学療法薬としては、限定されるものではないが、アドリアマイシン、アクチノマイシン、カリーチアマイシン、エピシロン種、マイタンシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソールおよびその他のタキサン類、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(SFU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン類、ネオマイシン、およびポドフィロトキシン類が挙げられる。シトシンアラビノシド、アメトプテリンなどの代謝拮抗物質;アントラサイクリン類;ビンカアルカロイド類およびその他のアルカロイド類;抗生物質、デメコルシン;エトプシド;ミトラマイシン;ならびにその他の抗腫瘍アルキル化剤もまた本発明での使用に意図される。
【0031】
好ましい実施形態の好ましいプロドラッグは、カンプトテシン、ドキソルビシン、タキソール、アクチノマイシン、マイタンシン、カリーチアマイシンおよびエポシロンからなる群から選択される薬物に由来するものである。
【0032】
「プロドラッグ」とは、in vivoで親薬物へ変換される物質をさす。プロドラックは、状況によって、親薬物よりも投与が容易なために有用であることが多い。例えば、プロドラッグは経口投与によって生体内で利用可能となるのに対して、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物中の可溶性を親薬物よりも高めてもよい。プロドラッグは、酵素の作用および代謝の加水分解をはじめとする種々の機構によって親薬物へと変換され得る。Harper, "Drug Latentiation" in Jucker, ed. Progress in Drug Research 4:221-294 (1962); Morozowich et al., "Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design" in E. B. Roche ed. Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs APHA Acad. Pharm. Sci. (1977); Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application, E. B. Roche ed.、APHA Acad. Pharm. Sci. (1987); Design of Prodrugs, H. Bundgaard, Elsevier (1985); Wang et al. "Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug" in Curr. Pharm. Design. 5(4):265-287 (1999); Pauletti et al. (1997) Improvement in peptide bioavailability: Peptidomimetics and Prodrug Strategies, Adv. Drug. Delivery Rev. 27:235-256; Mizen et al. (1998) "The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β-Lactam antibiotics, "Pharm. Biotech. 11,:345-365; Gaignault et al. (1996)"Designing Prodrugs and Bioprecursors I. Carrier Prodrugs," Pract. Med. Chem. 671-696; Asgharnejad, "Improving Oral Drug Transport", in Transport Processes in Pharmaceutical Systems, G.L. Amidon, P. I. Lee and E. M. Topp, Eds., Marcell Dekker, p. 185-218 (2000); Balant et al., "Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration", Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet., 15(2): 143-53(1990); Balimane and Sinko, "Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues", Adv. Drug Delivery Rev., 39(1-3): 183-209(1999); Browne, "Fosphenytoin (Cerebyx)", Clin. Neuropharmacol. 20(1): 1-12 (1997); Bundgaard, "Bioreversible derivatization of drugs - principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs", Arch. Pharm. Chemi 86(1): 1-39(1979); Bundgaard H. "Improved drug delivery by the prodrug approach", Controlled Drug Delivery 17: 179-96 (1987); Bundgaard H. "Prodrugs as a means to improve the delivery of peptide drugs", Adv. Drug Delivery Rev. 8(1): 1-38 (1992); Fleisher et al. "Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs", Adv. Drug Delivery Rev. 19(2): 115-130 (1996); Fleisher et al. "Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting", Methods Enzymol. 112 (Drug Enzyme Targeting, Pt. A): 360-81, (1985); Farquhar D, et al., "Biologically Reversible Phosphate- Protective Groups", J. Pharm. Sci., 72(3): 324-325 (1983); Freeman S, et al., "Bioreversible Protection for the Phospho Group: Chemical Stability and Bioactivation of Di(4-acetoxy-benzyl) Methylphosphonate with Carboxyesterase," J. Chem. Soc., Chem. Commun., 875-877 (1991); Friis and Bundgaard,"Prodrugs of phosphates and phosphonates: Novel lipophilic alpha-acyloxyalkyl ester derivatives of phosphate- or phosphonate containing drugs masking the negative charges of these groups", Eur. J. Pharm. Sci. 4: 49-59 (1996); Gangwar et al., "Pro-drug, molecular structure and percutaneous delivery", Des. Biopharm. Prop. Prodrugs Analogs, [Symp.] Meeting Date 1976, 409-21. (1977); Nathwani and Wood, "Penicillins: a current review of their clinical pharmacology and therapeutic use", Drugs 45(6): 866-94 (1993); Sinhababu and Thakker, "Prodrugs of anticancer agents", Adv. Drug Delivery Rev. 19(2): 241-273 (1996); Stella et al., "Prodrugs. Do they have advantages in clinical practice?", Drugs 29(5): 455-73 (1985); Tan et al. "Development and optimization of anti-HIV nucleoside analogs and prodrugs: A review of their cellular pharmacology, structure-activity relationships and pharmacokineties", Adv. Drug Delivery Rev. 39 (1-3): 117-151 (1999); Taylor, "Improved passive oral drug delivery via prodrugs", Adv. Drug Delivery Rev., 19(2): 131-148(1996); Valentino and Borchardt, "Prodrug strategies to enhance the intestinal absorption of peptides", Drug Discovery Today 2(4): 148-155 (1997); Wiebe and Knaus, "Concepts for the design of anti-HIV nucleoside prodrugs for treating cephalic HIV infection", Adv. Drug Delivery Rev.: 39 (1-3): 63-80 (1999); Waller et al., "Prodrugs", Br. J. Clin. Pharmac. 28: 497-507(1989)参照。
【0033】
クリアリング剤は所望により、非共有結合多重特異性抗体−ハプテン−酵素複合体を被験体へ投与した後に加えてよい。クリアリング剤は、多重特異性ターゲッティングタンパク質/ハプテン−酵素複合体のエピトープに対して向けられる抗体であるのが好ましい。クリアリング剤は、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体、炭水化物で誘導体化された抗イディオタイプ抗体またはガラクトシル化された抗イディオタイプ抗体であるのが最も好ましい。
【0034】
非タンパク質性高分子もまた、本発明で有用な薬物またはプロドラッグの付着する主鎖としての役割を果たし得る。高分子材料は、有効な薬物を解毒し、可溶化するのに役立つ。例えば、(Lys)−(Glu)(タキソール)(式中、mは10〜500の整数、nは10〜500の整数、およびyは1〜50の整数)からなる共重合体をこの方法に適用し、多重特異性抗体−ハプテン−酵素複合体の注射、局在、クリアランス後に与えることができる。この場合、当該の酵素は、複数のグルタミン酸ユニットのタキソールとγ−カルボキシル基との間のエステル結合を切断しうるエステラーゼを含むと思われる。この種のプロドラッグは、循環中で長期間有効な薬物を担持する高分子材料の有用性を基にしている。A'uzenne et al., Clin Cancer Res. 8: 573 (2002) and Li et al., Cancer Res., 1998参照。カンプトテシンなどのその他の薬物を同様の方法で用いてもよく、またポリ−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)などのその他の高分子を担体として適用してもよい。本発明はまた、非天然アミノ酸類、例えばD−アミノ酸類の非タンパク質性高分子への組み込みも意図する。本発明はさらに、非天然アミノ酸類から構築されたものなどその他の主鎖構造も意図する。例えば、米国公開特許公報番号20030026764参照。
【0035】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質と、ハプテン−酵素共有結合体を予め混合することを含む、安定な標的組織局在複合体の作製方法に関し、
前記の少なくとも1つの標的結合部位は、標的細胞、組織もしくは病原体上、または前記標的細胞、組織もしくは病原体によって産生されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合可能であり、かつ
前記ハプテン結合部位が、ハプテン−酵素結合体と安定的に非共有結合可能であり、それによって安定な組織標的局在複合体を形成する。
【0036】
II.製剤およびキット
多重特異性ターゲッティングタンパク質および非共有結合複合体を含むハプテン−酵素共有結合体はまた、医薬上許容される担体または賦形剤を含むのが好ましい。医薬上許容される担体は、生物に有意な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性および特性を抑制しない担体または希釈剤である。賦形剤は、化合物の投与をさらに促進するため医薬組成物に付加された不活性物質である。賦形剤の例としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類およびデンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油ならびにポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明の一つの態様は、個別にまたは共に好適な容器中に、
a)ハプテン−酵素結合体と予め混合した、標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および
b)化学療法プロドラッグ
を含む、キットに関する。
【0038】
本発明の別の態様は、個別に、好適な容器中に、
a)少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、
b)ハプテン−酵素結合体、および
c)化学療法プロドラッグ、
を含み、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む前記多重特異性ターゲッティングタンパク質と前記ハプテン−酵素結合体とは使用直前に混合される、キットに関する。
【0039】
キットは、非共有結合複合体および医薬上許容される担体または賦形剤を含んでよい。同様に、キットは医薬上許容される担体または賦形剤中のプロドラッグを含んでよい。本発明の好ましい実施形態では、キットは抗CEA×抗インジウム−DTPA−F(ab’)などの二重特異性抗体を含む。該二重特異性抗体を等モル量の該酵素−ハプテン結合DTPA−カルボキシルエステラーゼと混合する。該キットは約1〜10,000mgの混合物を含み得る。該キットは滅菌溶液として−20〜−80℃で凍らせて保存することができる、または長期保存用に凍結乾燥して粉末形態にすることができる。一実施形態では、これらの製剤には予め形成された多重特異性抗体−ハプテン−酵素結合体を含む単一のバイアルキット、または多重特異性抗体およびハプテン−酵素をそれぞれ含む2本の個別のバイアルをその後投与前に混合するキットを含み得る。製剤および安定性の観点から、該ハプテン−酵素は長期保存には別々にしておいてよく、このような判断は、各個別の技術適用について経験的になされる必要がある。
【0040】
III.用量
被験体へ与えられる場合に、被験体において標的細胞、組織もしくは病原体を治療するために必要な量の非共有結合複合体が、「治療上有効な」量である。標的細胞、組織または病原体を治療するためには、被験体の体重キログラムあたり約0.001〜約10,000μmolの非共有結合複合体を与えるのが望ましい。この用量は、どのような好適な手段によっても約1分から約4時間の時間にわたって、ただし化学療法薬またはプロドラッグの投与の前に投与してよい。本発明の非共有結合複合体は、生理学的に許容されるいずれの液体中に溶解して投与可能な量を製造してもよい。このような非共有結合複合体の溶液は非共有結合複合体を標準的な生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(pH約5〜約8)、酢酸緩衝生理食塩水(pH約4〜約7)、リン酸緩衝液(pH約5〜約8)、または酢酸緩衝液(pH約4〜約7)へ溶解することによって製造するのが好ましい。0.02〜2モルの範囲の緩衝濃度が許容され得る。
【0041】
非共有結合複合体を被験体へ投与した後に与えられる場合、被験体において標的細胞、組織もしくは病原体を治療するのに必要な量の化学療法薬もしくはプロドラッグが、「治療上有効な」量である。標的細胞、組織もしくは病原体を治療するためには、被験体の体重キログラムあたり約0.001〜約10,000μmolの非共有結合複合体を与えるのが望ましい。この用量は、どのような好適な手段によっても約1分から約4時間の時間にわたって、但し非共有結合複合体の投与の後に投与してよい。本発明の好ましい態様の化学療法薬またはプロドラッグは、投与可能な量を製造するために生理学的に許容されるいずれの液体中に溶解してもよい。このような非共有結合複合体の溶液は非共有結合複合体を標準的な生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(pH約5〜約8)、酢酸緩衝生理食塩水(pH約4〜約7)、リン酸緩衝液(pH約5〜約8)、または酢酸緩衝液(pH約4〜約7)へ溶解することによって製造するのが好ましい。薬物またはプロドラッグは、独立した活性物として与えられる場合に通常投与される方法で投与してよい。例えば、疎水性薬物またはプロドラッグは、デキストロース溶液中または発色団との混合物として与えてよい。
【0042】
非共有結合複合体および化学療法薬またはプロドラッグの好適な投与経路としては、限定されるものではないが、経口、経直腸、経粘膜もしくは経腸投与または筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が挙げられる。好ましい投与経路は非経口投与である。あるいは、bsAb/酵素−ハプテン複合体および該薬物またはプロドラッグを全身へではなく、例えば、直接に固形腫瘍への化合物の注射によって局所に投与してよい。
【0043】
当業者であれば、被験体への投与の前の多重特異的ターゲッティングタンパク質とハプテン−酵素結合体との事前混合は投与直前になされ得るか、または前もって十分になされ得ることが理解されよう。
【0044】
IV.治療(処置)
別の態様では、本発明は、治療上有効な量の非共有結合複合体を投与することを含む、被験体を治療する方法に関し、前記非共有結合複合体は被験体への投与の前に前記多重特異的ターゲッティングタンパク質とハプテン−酵素結合体を予め混合することによって得られる。本発明の好ましい実施形態の予め混合された多重特異的ターゲッティングタンパク質およびハプテン−酵素結合体を用いて治療される疾病は、限定されるものではないが、悪性腫瘍である。これには全ての固形および非固形腫瘍癌を含む。後者の場合、B細胞癌、またはT細胞癌を治療できる(例えば、非ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫または慢性リンパ性白血病)。同様に、固形腫瘍を本組成物および方法で治療してよい。このようなものには、限定されるものではないが、腺癌および肉腫が挙げられる。内胚葉に由来する消化器系上皮の腫瘍な癌、ならびに乳房、前立腺、および肺の癌が意図され、このアプローチを用いて治療可能である。好ましい適用では、AFP(α胎児タンパク)、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、EGP−1、EGP−2、CD37、CD74、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD30、CD74、CD80、HLA−DR、Ia、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、葉酸受容体、VEGFR、壊死抗原、IL−2、T101およびMAGEなどの抗原を発現する疾病を、多重特異性抗体上の適当な抗原-ターゲッティング抗体アームで標的化できる。特異性ターゲッティング抗体としては、限定されるものではないが、MN−14(抗癌胎児性抗原)、Mu−9(抗結腸特異的抗原−P)、LL2(抗CD22)、LL1(抗CD74)、hA20(抗CD20)RS7(抗上皮糖タンパク質−1)が挙げられる。このような抗体は、同じCDRを対応するネズミ抗体として含むキメラ、ヒト化およびヒト抗体を包含する。
【0045】
癌以外のその他の疾病も、これらの多重特異性抗体/ハプテン−酵素結合体を用いてターゲッティングできる。例えば、抗−CD19、20、22および74抗体を用いて、免疫調節不全疾患、ならびに急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫介在性血小板減少症などの第3群自己免疫疾患、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、(repeat)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化性肺胞炎をはじめとする関連する自己免疫疾患を治療できる。
【0046】
以下の例は本発明の方法、組成物および使用の例示するためのものであり、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1
カルボキシルエステラーゼ−DTPA結合体の製造
2本のバイアルのウサギ肝臓カルボキシルエステラーゼ(約8.5mgタンパク質含量/バイアル)を2.3mLの50mMリン酸カリウムバッファーpH7.5で再構成し、この溶液を0.1mLの0.1M DTPA保存溶液、pH6.7を用いてDTPA中4.2mMとする。得られた溶液のpHを7.7〜7.8の範囲内に調整し、次に10mgの環状DTPA二無水物と反応させる。室温にて1時間攪拌した後、反応混合物を、0.1Mリン酸ナトリウムpH7.3中で平衡化した2本の連続SECカラムに通す。溶出液を、4mL/分の流速で溶離剤として0.2Mリン酸ナトリウム、pH6.8を用いてTSK G3000SWカラムでの分取HPLCによってさらに精製する。精製した結合体をリン酸ナトリウム、pH6.8中0.1Mとし、濃縮する。金属結合アッセイにより測定されたDTPA対カルボキシルエステラーゼのモル置換比は、2.95対1〜4.43対1の範囲内であると推定される。
【0048】
実施例1A
hMN−14IgG×734Fab’二重特異性抗体の製造
HMN−14IgG(8.45mg、MW 150K)を、周囲温度にて45分間、pH7.21で1.8倍モル過剰のスルホ−SMCCで誘導体化した。この生成物を0.1Mリン酸ナトリウム、pH6.5中でSephadex G50/80の遠心分離SEカラム(「スピンカラム」)によって精製した。マレイミド含量を、既知過剰量の2−メルカプトエタノールと反応させ、その後エルマンアッセイによって未使用のチオールを測定することによりIgGモルあたり0.93モルと測定した。個別に、734F(ab’)を20mM Hepesバッファー−150mM塩化ナトリウム−10mM EDTA、pH7.3中の0.1Mシステイン(システインの100倍モル過剰)で還元した。還元はアルゴン流下で37℃(浴)にて50分間実施した。還元した材料を、0.1Mリン酸ナトリウム−5mM EDTA、pH6.5中のSephadex G50/80のスピンカラム2本によって連続して精製した。次にhMN−14−マレイミドを2倍過剰の734Fab’と反応させ、周囲温度で1時間インキュベートした。次にこの結合体を40倍モル過剰のN−エチルマレイミドと40分間反応させた。この材料に対し、0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.3中の「スピンカラム」Sephadex G50/80にて予備精製を行った。この精製からの溶出液を3mLのDTPA−Affigelのカラムへ適用し、これを0.2Mリン酸ナトリウムpH6.8および0.1M EDTA、pH3.8で連続して溶出した。プールしたEDTA画分を、2回バッファー交換をして0.2Mリン酸ナトリウムpH6.8で透析した。この試料を、4mL/分にて0.2Mリン酸ナトリウムpH6.8をランニングバッファーとして用いて分取SE HPLCカラム(TSKG3000SW)に付した主な生成物を分離し、SE HPLCにより純粋であると分かった(分析SE HPLC上の保持時間9.58分、0.2Mリン酸ナトリウム流速1mL/分)。回収:7.69mg。MALDI質量スペクトル分析による分子量は196,803であった。
【0049】
実施例2
インジウム標識したカルボキシルエステラーゼ−DTPA結合体およびbsMAb hMN−14×734(IgG×Fab’)を含む、予め混合した複合体の体内分布
この実施例は、予め混合した複合体hMN−14×734 Fab’(hMN−14はMN−14(癌胎児性抗原;抗CEA)のヒト化抗体)とインジウム−DTPA−カルボキシルエステラーゼ結合体の体内分布を実証するものである。カルボキシルエステラーゼ−DTPAは、市販の酢酸インジウム(In−111)を用いてタグ付けのためにインジウム−111放射性核種で放射性標識した。要するに、塩化インジウム(In−111)を0.5M酢酸ナトリウム、pH6.1の量で3回緩衝化し;0.12mgのCE−DTPAを酢酸インジウム(In−111)の0.25mCiと混合し、40分間インキュベートした。次に−0.01mLの冷酢酸インジウムを加えた[酢酸インジウム:0.005mLの1.97×10−2M塩化インジウム、0.045mLの水および0.15mLの0.5M酢酸ナトリウム、pH6.1]。20分後、溶液をEDTA中10mMとし、10分間インキュベートした。ITLC分析はカルボキシルエステラーゼに関して98%の放射能を示した。予め混合したhMN−14×734Fab’/In−111−In−DTPA−カルボキシルエステラーゼ複合体を、GW−39ヒト腫瘍異種移植片を有するハムスターおよびヌードマウスへ投与する。表1〜6は、カルボキシルエステラーゼ−DTPA結合体と対応する二重特異性抗体との間の結合がin vivoで安定していることを示し、In−111/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼ結合体が効果的に局在し、hMN−14×734(IgG×Fab’)bsAbとの錯化によって腫瘍部位で保持され得ることを示す。
【0050】
実施例3
インジウム(In)−DTPAカルボキシルエステラーゼ結合体とbsMAb hMN−14×734(IgG×Fab’)を含む、予め混合した複合体を用いるADEPT療法
雄ハムスター(体重:〜75g)に、この動物の右大腿へ20%v/v GW−39腫瘍細胞懸濁液の筋肉内注射によってGW−39ヒト腫瘍異種移植片を与える。3日後、2:1で予め混合したmMN−14F(ab)×m734Fab’とインジウム−DTPA−カルボキシルエステラーゼの複合体を、体重kgあたり200酵素ユニットに相当する、bsAb0.75mgの量で投与する。bsAb/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼの注射後5日に、プロドラッグCPT−11の最大耐容量(8mg/体重〜75g;事前に決定)を与える。正の対照群にCPT−11のみを与え、未処置群もこの研究に含める。未処置動物の腫瘍増殖は腫瘍細胞の移植後34週で制御不能となり、動物は人道的な理由で犠牲にする。bsAb/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼおよび正の対照(CPT−11単独)の平均腫瘍容積は5週で同様であり、腫瘍細胞の移植後9週まで同様である。しかし、bsAb/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼ処置群は翌5週にわたり増殖阻害を示し続けるが、CPT−11単独を与えられた群の平均腫瘍容積はこの同じ期間中に増加する。14週でのbsAb/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼ処置群の相対平均腫瘍容積は、9週での正の対照、CPT−11単独で処置された動物の平均腫瘍容積と同様である。このことはbsAb/In−DTPA−カルボキシルエステラーゼのプレターゲッティングを用いるADEPTアプローチを適用した場合、腫瘍増殖制御において5週分の効果を証明する。
【0051】
実施例4
カルボキシルエステラーゼ−IMP222(「CE−IMP222」)の製造
IMP222は、ジ−DTPAを含有するペプチドでマレイミドの付加されたカルボキシルエステラーゼとのコンジュゲーションに利用可能なシステインチオールを含む。IMP222:Ac−Cys−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NS2。カルボキシルエステラーゼ(0.0245μmol)を、0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.3中の17.5倍モル過剰のスルホ−SMCC[スルホスクシンイミジル4(N−マレイミドメチル)−1−シククロヘキサンカルボキシレート]を用いて周囲温度にて45分間誘導体化した。生成物を0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.3中のSephadex G50/80の2mL遠心分離SEカラム(「スピンカラム」)で精製した。この生成物の溶液をEDTA中1mMとし、0.1Mリン酸ナトリウム−5mM
【0052】
EDTA、pH6.5中に含まれる20倍モル過剰のIMP−222と周囲温度にて45分間反応させた。生成物を0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.3中のSephadexG50/80の「スピンカラム」によって精製した。放射性インジウムと混合した過剰の酢酸インジウムを用いる金属結合分析は、2回の測定で平均4.5DTPA/結合体、または結合体あたり平均2.25IMP222部分となった。酢酸インジウムでの試験標識はITLCによる検定と同様に94%の組み込みとなった。この材料は、HPLCピークが複合体のより分子量の大きい領域へ移動することから判断して、5倍モル過剰のF6×734Fab’Fab’二重特異性抗体と混合することによって完全に複合体化した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
以上の記載から、当業者であれば本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、その精神および範囲から逸脱することなく、過度な実験を行わずとも本発明に種々の変更および修正を行って種々の使用および条件へ適用することができる。本明細書中に引用された総ての特許、特許出願および出版物は、引用することによりそのまま本明細書の一部とする。
【0060】
参考文献
【表7】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)標的組織局在複合体を形成する、治療上有効な量の、非共有結合複合体、
[ここで、前記非共有結合複合体は、少なくとも1つの標的結合部位および1つのハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質と、ハプテン−酵素共有結合体とを含んでなり、
前記の少なくとも1つの標的結合部位は、標的罹患細胞、組織もしくは病原体上、または前記標的罹患細胞、組織もしくは病原体によって産生されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合可能であり、かつ
前記ハプテン結合部位は該ハプテン−酵素共有結合体と非共有結合している]、
b)所望により、クリアリング剤、および
c)該標的組織局在複合体によってより有効な薬物へ変換されうる、化学療法薬またはプロドラッグ、
の、疾病に罹患している被験体において前記標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための、順次使用。
【請求項2】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、多重特異性抗体または多重特異性抗体フラグメントである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が多価である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記多価多重特異性ターゲッティングタンパク質が、抗CEA×抗インジウムDTPA F(ab’)×Fab’である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、少なくとも二重特異性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記複合体が、静脈内、膀胱内、動脈内、腫瘍内または腹腔内での使用のためのものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記複合体が、細胞の腫瘍関連抗原と結合する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記細胞の腫瘍関連抗原が、AFP、EGP−1、EGP−2、CD37、CD74、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD30、CD37、CD74、CD80、HLA−DR、HCG、Ia、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、葉酸受容体、VEGFR、壊死抗原、IL−2、T101およびMAGE9から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ハプテン−酵素結合体が、少なくとも1つのハプテンを含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項の使用。
【請求項10】
前記ハプテンが、HSG、DTPA、インジウム‐DTPA、DOTA、インジウム‐DOTA、イットリウム‐DOTA、フルオレセインまたはビオチンからなる群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
2つのハプテンが、2〜10アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
2つのハプテンが、2〜5アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
2つのハプテンが、3アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記ハプテンが、単一の反応部位を介して該酵素に付着している、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
前記酵素が、エステラーゼ、アミダーゼ、グルクロニダーゼまたはガラクトシダーゼである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記酵素がカルボキシルエステラーゼである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記カルボキシルエステラーゼが、ラット、マウス、ウサギ、ブタまたはヒトカルボキシルエステラーゼである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記酵素が組み換え技術によって産生される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記酵素が、酵母、細菌、植物、昆虫細胞または動物において産生される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記酵素が、その触媒特性を高めるよう修飾されている、請求項15〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記酵素が部位特異的突然変異誘発により修飾される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記修飾が、酵素−基質触媒作用の速度を増加させ、かつ/または前記酵素のミカエリス定数を小さくする、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、その抗原標的およびそのハプテン標的の双方と少なくとも10−7、より好ましくは少なくとも10−9の解離定数で結合する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、ネズミ、キメラ、ヒト化、ヒト、またはこのリスト由来のタンパク質性成分の混合物である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記任意のクリアリング剤が、該多重特異性ターゲッティングタンパク質/ハプテン−酵素複合体のエピトープに対する抗体である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記任意のクリアリング剤が、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
炭水化物で誘導体化された、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体をさらに含んでなる、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
ガラクトシル化された、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体をさらに含んでなる、請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記化学療法プロドラッグが、多重特異性ターゲッティングタンパク質によって産生された有効な薬物よりも高い水溶性を有する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記化学療法プロドラッグが、カンプトテシン、ドキソルビシン、タキソール、アクチノマイシン、マイタンシン(maytansine)、カリーチアマイシン(calicheamicin)またはエピシロン(epithilone)種の薬物のプロドラッグである、請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記化学療法プロドラッグがSN−38のプロドラッグである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記化学療法プロドラッグがCPT−11である、請求項30に記載の使用。
【請求項33】
前記病原体が、ウイルス、真菌、寄生虫または細菌である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記被験体が哺乳類である、請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記哺乳類がヒトである、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
疾病に罹患している被験体において標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための医薬組成物を製造するための、請求項1〜35のいずれか一項に記載の使用であって、
前記医薬組成物が、好適な容器中に、
a)ハプテン−酵素結合体と予め混合した、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および
b)化学療法プロドラッグ
を含んでなり、ここでa)および/またはb)が所望により医薬上許容される担体を含んでなる、使用。
【請求項37】
疾病に罹患している被験体において標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための医薬組成物を製造するための、請求項1〜35のいずれか一項に記載の使用であって、
前記医薬組成物が、好適な容器中に、
a)少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、
b)ハプテン−酵素結合体、および
c)化学療法プロドラッグ
を含んでなり、前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が少なくとも1つの標的結合部位およびハプテン結合部位を含んでなり、前記ハプテン−酵素結合体が使用直前に混合され、かつ
a)、b)および/またはc)が所望により医薬上許容される担体をんでなる、使用。
【請求項38】
好適な容器中に、
a)ハプテン−酵素結合体と予め混合した、少なくとも1つの標的結合部位およびハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および
b)化学療法プロドラッグ
を含んでなる、キット。
【請求項39】
個別の好適な容器中に、
a)少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、
b)ハプテン−酵素結合体、および
c)化学療法プロドラッグ
を含んでなり、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む前記多重特異性ターゲッティングタンパク質と、前記ハプテン−酵素結合体とが使用直前に混合される、キット。
【請求項40】
a)、b)および/またはc)が医薬上許容される担体をさらに含んでなる、請求項38または39に記載のキット。
【請求項41】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、多重特異性抗体または多重特異性抗体フラグメントである、請求項38〜40のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が多価である、請求項38〜41のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
前記多価多重特異性ターゲッティングタンパク質が、抗CEA×抗インジウムDTPA F(ab’)×Fab’である、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が少なくとも二重特異性である、請求項38〜42のいずれか一項に記載のキット。
【請求項45】
前記複合体が、静脈内、膀胱内、動脈内、腫瘍内または腹腔内での使用のためのものである、請求項38〜44のいずれか一項に記載のキット。
【請求項46】
前記複合体が細胞の腫瘍関連抗原と結合する、請求項38〜45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
前記細胞の腫瘍関連抗原が、AFP、EGP−1、EGP−2、CD37、CD74、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD30、CD37、CD74、CD80、HLA−DR、HCG、Ia、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、葉酸受容体、VEGFR、壊死抗原、IL−2、T101およびMAGE9から選択される、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記ハプテン−酵素結合体が少なくとも1つのハプテンを含んでなる、請求項38〜47のいずれか一項に記載のキット。
【請求項49】
前記ハプテンが、HSG、DTPA、インジウム‐DTPA、DOTA、インジウム‐DOTA、イットリウム‐DOTA、フルオレセインまたはビオチンからなる群から選択される、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
2つのハプテンが、2〜10アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項48に記載のキット。
【請求項51】
2つのハプテンが、2〜5アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項48に記載のキット。
【請求項52】
2つのハプテンが、3アミノ酸残基長のペプチドによって連結されている、請求項48に記載のキット。
【請求項53】
前記ハプテンが、単一の反応部位を介して該酵素に付着している、請求項48に記載のキット。
【請求項54】
前記酵素が、エステラーゼ、アミダーゼ、グルクロニダーゼまたはガラクトシダーゼである、請求項38〜53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
前記酵素がカルボキシルエステラーゼである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記カルボキシルエステラーゼが、ラット、マウス、ウサギ、ブタまたはヒトカルボキシルエステラーゼである、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記酵素が組み換え技術によって産生される、請求項54〜56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項58】
前記酵素が、酵母、細菌、植物、昆虫細胞または動物において産生される、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記酵素が、その触媒特性を高めるよう修飾されている、請求項54〜58のいずれか一項に記載のキット。
【請求項60】
前記酵素が部位特異的突然変異誘発により修飾される、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
前記修飾が、酵素−基質触媒作用の速度を増加させ、かつ/または該酵素のミカエリス定数を小さくする、請求項59または60に記載のキット。
【請求項62】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、その抗原標的およびそのハプテン標的の双方と少なくとも10−7、より好ましくは少なくとも10−9の解離定数で結合する、請求項38〜61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が、ネズミ、キメラ、ヒト化、ヒト、またはこのリスト由来のタンパク質性成分の混合物である、請求項38〜62のいずれか一項に記載のキット。
【請求項64】
前記任意のクリアリング剤が、多重特異性ターゲッティングタンパク質/ハプテン−酵素複合体のエピトープに対する抗体である、請求項38〜63のいずれか一項に記載のキット。
【請求項65】
前記任意のクリアリング剤が、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体である、請求項38〜63のいずれか一項に記載のキット。
【請求項66】
炭水化物で誘導体化された、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体をさらに含んでなる、請求項63に記載のキット。
【請求項67】
ガラクトシル化された、多重特異性ターゲッティングタンパク質に対する抗イディオタイプ抗体をさらに含んでなる、請求項63に記載のキット。
【請求項68】
前記化学療法プロドラッグが、多重特異性ターゲッティングタンパク質によって産生される有効な薬物よりも高い水溶性を有する、請求項38〜67のいずれか一項に記載のキット。
【請求項69】
前記化学療法プロドラッグが、カンプトテシン、ドキソルビシン、タキソール、アクチノマイシン、マイタンシン、カリーチアマイシンまたはエピシロン種の薬物のプロドラッグである、請求項38〜68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
前記化学療法プロドラッグがSN‐38のプロドラッグである、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
前記化学療法プロドラッグがCPT‐11である、請求項69に記載のキット。
【請求項72】
前記病原体が、ウイルス、真菌、寄生虫または細菌である、請求項38〜71のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質と、ハプテン−酵素共有結合体とを混合することを含んでなる、標的細胞、組織、または病原体へ局在しうる安定な非共有結合複合体を作出する方法であって、
前記の少なくとも1つの標的結合部位が、前記標的細胞、組織もしくは病原体上、または前記標的細胞、組織もしくは病原体によって産生されたまたはそれらと会合した分子上の少なくとも1つの相補的結合部分と結合可能であり、かつ
前記ハプテン結合部位が前記ハプテン−酵素結合体と安定的に非共有結合可能であり、それにより安定な非共有結合複合体を作出する、方法。
【請求項74】
疾病に罹患している被験体において標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための、治療上有効な量の非共有結合複合体の使用であって、
該非共有結合複合体が被験体への投与前に前記多重特異的ターゲッティングタンパク質とハプテン−酵素結合体とを予め混合することにより得られる、使用。
【請求項75】
前記被験体が哺乳類である、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記哺乳類がヒトである、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
疾病に罹患している被験体において標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための医薬組成物を製造するための、請求項74〜76のいずれか一項に記載の使用であって、
該医薬組成物が、好適な容器中に、
a)ハプテン−酵素結合体と予め混合した、少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、および
b)化学療法プロドラッグ
を含んでなり、ここで、a)および/またはb)が所望により医薬上許容される担体を含んでなる、使用。
【請求項78】
疾病に罹患している被験体において標的罹患細胞、組織または病原体を治療するための医薬組成物を製造するための、請求項74〜76のいずれか一項に記載の使用であって、
該医薬組成物が、好適な容器中に、
a)少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含む多重特異性ターゲッティングタンパク質、
b)ハプテン−酵素結合体、および
c)化学療法プロドラッグ
を含んでなり、前記多重特異性ターゲッティングタンパク質が少なくとも1つの標的結合部位とハプテン結合部位を含んでなり、該ハプテン−酵素結合体が使用直前に混合され、かつ
a)、b)および/またはc)が所望により医薬上許容される担体を含んでなる、使用。

【公表番号】特表2006−514627(P2006−514627A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552884(P2004−552884)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004994
【国際公開番号】WO2004/045642
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】