説明

治療薬の眼内輸送のための組成物および方法

【課題】血液網膜関門(BRB)である網膜色素上皮(RPE)を横切る膜輸送体標的化治療薬およびその製造方法ならびに使用方法の提供。
【解決手段】ジカルボン酸塩、グルコース、モノカルボン酸、ヌクレオシド、有機アニオンおよび有機カチオンなどを標的化輸送体として、眼疾患の治療のために膜標的化生物活性物質またはこのような生物活性物質のプロドラッグを設計することによるこのような障害の成功的治療のための、眼科的に有効な生物活性剤、特に眼の後部区域の疾患、障害および症状に有益な効果を有する活性剤のデリバリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
哺乳動物の眼は、強膜(眼の外面の上部な白い部分)および角膜(瞳孔および虹彩を覆う透明な外側の部分)などの外膜を含む複雑な器官である。
【背景技術】
【0002】
前部から後部への内部断面において、眼は、これらに限定されるものではないが、角膜、前眼房(房水と呼ばれる水様の透明な液体で満たされ、角膜によって正面に、および水晶体によって後方に結合した空洞特徴物)、虹彩(周囲の光に反応して開閉しうるカーテン様特徴物)、水晶体、後眼房(硝子体液と呼ばれる粘度の液体で満たされている)、網膜(光感受性神経からなる眼の後部の最も奥の被膜)、脈絡膜(眼の細胞に血管を提供する中間層)および強膜といったような特徴物(feature)を含む。後眼房は、眼の容積の約2/3を占め、前眼房およびその関連特徴物(水晶体、虹彩など)は、眼の容積の約1/3を占める。
【0003】
眼の前部表面への治療薬のデリバリーは、点眼薬などの局所的手段によって、比較的日常的に達成される。しかし、眼の内部または後部へのこのような治療薬のデリバリーは、角膜の内部でさえも、独特の挑戦が存在する。近年では、後部強膜、眼球血管膜、硝子体、脈絡膜、網膜および視神経頭(ONH)などの眼の後部区域の疾患を治療するのに用いる薬物が利用可能になってきている。これらの新しい作用剤として、プロテインキナーゼ阻害剤などの抗血管形成剤、ブリモニジンおよびメマンチンなどの神経保護剤およびプロスタグランジン、アルファ−およびベータ−アドレナリン作動薬(アルファ2アドレナリンアゴニストブリモニジンなど)およびビマトプロストなどのプロスタミドなどの抗緑内障薬ならびにデキサメタゾンおよびトリアムシノロンなどの副腎皮質ホルモンが挙げられる。
【0004】
しかし、このような作用剤の効果的な使用における主な制限的要素は、実際に、罹患組織に作用剤をもたすことである。このような方法を開発するための切迫感が、視力の損失および失明の主要原因が後部区域関係の疾患であるという事実から推察されうる。これらの疾患として、加齢性黄斑変性症(ARMD)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)および眼内炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。房水の流れ(および従って眼内圧(IOP))に影響を及ぼす前眼房の状態として考えられることが多い緑内障は、後部区域の要素も有する;実際に、緑内障のある型は、高眼内圧を特徴とせず、主として網膜変性のみを特徴とする。
【0005】
一般に、そして親水性、血液の供給、特異的活性および薬物の性質などの因子にある程度応じて、局所的薬物デリバリーは、眼の角膜、前眼房、虹彩、水晶体および毛様体などの前部区域特徴物に治療的濃度の薬物をデリバリーすることができるが、硝子体液、網膜色素上皮、網膜および脈絡膜などの後部区域特徴物へのドラッグデリバリーは、有効性が低い。局所的デリバリーのための薬物投与の通常の経路は、全身投与または直接眼内配置である。理論的に、眼に局所的に適用された薬物は、結膜および強膜を通って拡散し、次いで、虹彩経路または網膜色素上皮(RPE)を通って眼を貫通することができる。これは、非常に大きな拡散経路長を創り出し、組織は、脈絡膜血流および結膜およびRPEの抵抗をともなうかなりの関門を張る。実際に、局所的に適用された点眼薬は、後部区域の組織において治療的濃度に達しない。
【0006】
角膜上皮、網膜血管内皮細胞および網膜色素上皮(RPE)はすべて、小さい親水性化合物の自由な細胞間移動を妨げる、細胞間の「密着結合」を含む。網膜血管系のRPEおよび内皮細胞は、血液脳関門といくつかの点で類似している「血液網膜関門」を含む。
【0007】
網膜色素上皮は、外側の血液網膜関門(BRB)を意味する。RPEは、「密着した」イオン輸送関門であり、脈絡膜からRPEを横切る溶質、特に極性溶質の傍細胞輸送を制限する。網膜血管の内皮それ自体が、内部の血液網膜関門を含み、薬物の全身的貫通に対するかなりの抵抗性を提供する。したがって、BRBを横切る薬物は、都合のよい膜分配係数を持つべきであるか、またはRPEもしくは網膜血管内皮上に存在する活性膜輸送体の1つに対する基質であるべきであるか、のいずれかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この後者の目標のために、形質膜表面にある担体介在膜輸送タンパク質が、RPEが脈絡毛細管枝(網膜の下にある衝動脈のネットワーク)と末梢網膜との間で選択的に栄養素、代謝産物および生体異物を輸送するのを可能にする。これらの特殊化した膜輸送体として、アミノ酸、ペプチド、ジカルボン酸塩、グルコース、モノカルボン酸、ヌクレオシド、有機アニオンおよび有機カチオン輸送体が挙げられる。
【0009】
Mitraらの米国特許公開公報第2005/0043246号は、眼組織へのアシクロビルおよびガンシクロビルのトリおよびジペプチド複合体の標的化デリバリーのためのペプチド輸送システムを用いて議論している。この参考文献および本明細書に引用するその他のすべての刊行物は、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される。
【0010】
一般に、担体介在膜輸送の探索は、薬学界において急速に発達し、拡大している。膜輸送体が、薬物吸収および廃棄において重要な役割を果たすことはますます明らかとなっている。膜輸送体は、細胞の内外に化合物を輸送するそれらの能力を介して、栄養素のデリバリーおよび細胞の解毒過程における補助において極めて重要な役割を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
広い態様において、本発明は、眼疾患の治療のために膜標的化生物活性物質またはこのような生物活性物質のプロドラッグを設計することによるこのような障害の成功的治療のための、眼科的に有効な生物活性剤、特に眼の後部区域の疾患、障害および症状に有益な効果を有する活性剤をデリバリーするための膜輸送体を利用する方法および組成物に関する。角膜、結膜およびRPEなどの堅い眼上皮(例示であって制限ではない)において膜輸送体を標的化することにより、これらの関門を横切る吸収を大きく増加し、したがって、眼のバイオアベイラビリティを増加することができる。1つの実施態様において、標的化輸送体は、ジカルボン酸塩、グルコース、モノカルボン酸、ヌクレオシド、有機アニオンおよび有機カチオンを含む。
【0012】
もう1つの実施態様において、本発明は、眼の状態、疾患または障害の治療的処置に有用な新規な化合物に関する。このような化合物は、膜輸送体担体基質に結合した眼科的活性物質を含む。たとえば、この実施態様の1つの態様において、眼科的活性化合物は、ヌクレオシド膜輸送体を介する膜貫通輸送のためにヌクレオシドに結合する。本発明のもう1つの態様において、眼科的活性化合物は、アミノ酸膜輸送体を介する膜貫通輸送のためにアミノ酸に結合する。
【0013】
本発明の1つの態様において、生理活性物質は、エステルまたは他の加水分解性結合をもつ担体基質に結合する。このようにして、該物質は、所望の標的細胞または組織内の位置で放出され、作用の正確な部位で活性化されるようになる。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、硝子体液、RPE、網膜、脈絡膜、視神経および強膜など(限定的ではない)の眼の後部区域内の位置に選択的に標的化された治療的活性剤の設計に加えるための部分としての眼の膜輸送基質の使用に関する。標的化輸送体包含膜が、結膜およびRPE膜であるのが好ましい。
【0015】
本発明の特定の態様において、治療的活性物質は、局所投与されるのが好ましい。本発明のこの態様は、「トロイの木馬」、すなわち、別の方法で相対的に貫通できない細胞膜および組織を横切る治療薬の活性輸送のための膜輸送体基質に結合した生物活性物質を含む複合体も包含する。
【0016】
しかし、本発明の他の態様において、治療的活性物質は、眼内または結膜下注射、眼内インプラントの植え込みまたは全身投与などの他の手段(限定的ではない)によって投与される。
【0017】
本発明の1つの態様において、本発明において記載した複合体は、プロドラッグとして設計される。本願において用いる「プロドラッグ」は、治療的活性物質と比べて治療的に不活性であるかまたはわずかに活性がある、組織不安定結合で生物活性物質に結合した膜輸送体基質を含む複合体である。組織不安定結合は、標的組織または作用部位内またはその近くに置かれたときの切断に適している、好ましくは加水分解性結合であり、最も好ましくはエステル結合である。したがって、これらのプロドラッグは、体内で親化合物に生変換される。
【0018】
本明細書の開示を考慮すると、当業者は、流出輸送体(これらの輸送体は、結膜または網膜を横切る化合物のバイオアベイラビリティを増加よりもむしろ減少させる)もまた存在することに気付く。本発明は、これらの輸送メカニズムのインヒビターをもつ化合物のデリバリーをさらに教示する。
【0019】
生理活性物質
本発明に有用な生物活性物質として、レチノイド、プロスタグランジン、プロテインキナーゼインヒビター(チロシンキナーゼインヒビターなど)、αまたはβアドレナリン受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト、ドーパミンアゴニスト、コリンアゴニスト、炭酸脱水酵素インヒビター、グアニル酸シクラーゼアクチベーター、カンナビノイド、エンドセリン、アデノシンアゴニスト、抗血管新生化合物、血管新生抑制化合物および神経保護剤が挙げられる。
【0020】
さらに詳しくは、生物活性物質として、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)または解熱剤;抗ヒスタミン剤、抗生物質、ベータ遮断薬、副腎皮質ステロイドなどのステロイド、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制剤、抗ウイルス薬および抗酸化剤が挙げられる。
【0021】
非ステロイド系抗炎症薬、鎮痛剤および解熱剤の非限定的例として、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、ジフルニサル、メフェナム酸およびその類縁体が挙げられる。
【0022】
本明細書で用いる用語「類縁体(derivative)」は、サブスタンスをマテリアルの代わりに用いる場合にマテリアルに実質的に類似する機能性または活性、たとえば、治療的有効性を有するために類縁体として同定される、マテリアルに十分に構造的に類似しているいずれかのサブスタンスを意味する。本明細書に開示するいずれかの類縁体の機能性は、当業者に周知の従来のルーチン法を用いて決定することができる。
【0023】
神経保護化合物として、(R,S)−アルファ−メチル−4−カルボキシフェニルグリシン、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブチレート、(2S、3S、4S)−アルファ−カルボキシプロピル−グリシン、(1S、3R)−1−アミノシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸、ニモジピン、ニカルジピン、ジコノチド、ジゾシルピン、エリプロジル、セレスタット、D(−)−アミノ−5−ホスホノペンタン酸、セルフォテル、(+,−)−6−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)メチルデカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、cis−(+,−)−4−[(2H−テトラゾール−5−イル)メチル]ピペリジン−2−カルボン酸、メマンチン、レマセミド、デキサナビノール、シンナビジオール、[2,3−ジオキソ−7−(1H−イミダゾール−1−イル)6−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−キノキサリニル]酢酸一水和物、7−クロロ−3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2,4−ベンゾチアジアジン S,S−ジオキシド、GV150525A、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、ACPCM、ACPCE、R(+)−3−アミノ−1−ヒドロキシピロリド−2−オン、R−cis−ベータ−メチル−3−アミノ−1−ヒドロキシピロリド−2−オン、イフェンプロジル、NPS−1506、1,2−ジヒドロフタラジン、リコシトネル、クロメチアゾール、MDL−27192、セレシン、アスコルビン酸、ニトロアルギニン、ルベルゾール、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、アルファ−フェニル−n−t−ブチル−ニトロン、AEOL 10150または10113メタロポルフィリン、Z−Leu−アミノ酪酸−CONH(CH2)2のL,L異性体、AK295、Z−Leu−アミノ酪酸−CONH(CH2)3−モルホリン、N−ベンジルオキシカルボニル−Val−Phe、z−VAD−CHO、z−DEVD、シトコリン、TAK−147、エタネルセプト、LY−287041、アトロピンおよびプラリドキシムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
抗ヒスタミン剤の例として、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、エクスクロルフェニラミン、メトジラジンおよびトリメプラジン、ドキシルアミン、フェニラミン、ピリラミン、クロルサイクリジン、トンジルアミンおよびこれらの作用剤それぞれの類縁体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
抗生物質の例として、セファゾリン、セフラジン、セファクロル、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロシン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドキシル、セフラジン、セフロキシム、アモキシシリン、シクラシリン、アンピシリン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ガトフロキサシン、モキシフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメタート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムおよびそれらの類縁体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
ベータ遮断薬(βアドレナリン受容体アンタゴニスト)の例として、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロールおよびそれらの類縁体が挙げられる。
【0027】
副腎皮質ステロイドの例として、コルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール、フルアザコルト、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロンおよびフルオシノニド、それらの類縁体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
抗悪性腫瘍薬の例として、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキセート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその類縁体、フェンステリン、タキソールおよびその類縁体、タキソテレおよびその類縁体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミドおよびフルタミドならびにそれらの類縁体が挙げられる。
【0029】
免疫抑制剤の例として、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの類縁体が挙げられる。
【0030】
抗ウイルス薬の例として、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、ガンシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジンおよびそれらの類縁体が挙げられる。ある実施態様では、好ましい抗ウイルス化合物は、ナシクロビルまたはガンシクロビルを含まない。
【0031】
抗酸化剤の例として、アスコルビン酸塩、アルファトコフェロール、マンニトール、還元グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン、リコピン、N−アセチル−システイン、カルノシン、ガンマグルタミルシステイン、ケルシチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、クエン酸塩、イチョウ抽出物、茶カテキン、コケモモ抽出物、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテートおよびそれらの類縁体が挙げられる。
【0032】
他の生物活性物質として、スクアラミン、炭酸脱水酵素インヒビター、プロテインキナーゼインヒビター、α1およびα2アドレナリンアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、抗寄生虫薬、抗菌薬およびそれらの類縁体が挙げられる。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、生理活性物質または生物活性物質は、プロスタグランジン、プロスタミド、チロシンキナーゼインヒビター、糖質コルイチコイド、アンドロゲン性ステロイド、エストロゲン性ステロイドまたは非エストロゲン性ステロイド、細胞内接着分子インヒビターまたはアルファ−2−アドレナリン受容体アゴニストを含む。1つの特定の実施態様において、生物活性物質は、トリアムシノロンアセトニドである。1つの他の実施態様において、生物活性物質は、メマンチン、チロシンキナーゼインヒビターまたはビマトプロストを含む。
【0034】
プロスタグランジンは、網膜血流に影響を及ぼし、眼の炎症、角膜血管新生および血液網膜関門および血液房水関門の破壊において役割を有する;もう1つの実施態様において、治療薬は、プロスタグランジンまたはプロスタミドである。
【0035】
プロテインキナーゼ、特にチロシンキナーゼは、血管新生の進行、特にこれに限定されるものではないが、VEGF経路を経る新生の進行に関与することが知られている。したがって、チロシンキナーゼインヒビターは、異常な血管新生、特に眼の血管新生の治療的処置において有益な手段である。
【0036】
本明細書に特に記載した化合物または化合物のクラス以外の生物活性化合物が、本発明方法に有用であり、また、このような化合物が、本発明方法にしたがって眼の後部区域へ有利にデリバリーされうることは、当業者には当然のことである。
【0037】
治療指標
本発明は、一般に、眼の後部区域を治療する方法に関する。好ましくは、眼の後部区域は、ブドウ膜、硝子体、網膜、脈絡膜、視神経および網膜色素上皮(RPE)を含むがこれらに限定されるものではない。本発明に関連する疾患または状態は、眼の後部における活性薬物の作用によって予防または治療されうる疾患または状態を含む。決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、本発明によれば、眼の後部における活性薬物の作用によって予防または治療されうる疾患または状態として、黄斑浮腫、非滲出性加齢性黄斑変性症(ARMD)、滲出性加齢性黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、急性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫などの黄斑症/網膜変性症;急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網膜脈絡膜炎、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多発性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(mewds)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、蛇行性脈絡膜炎、網膜か線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群などのブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎;網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、眼虚血症候群、網膜動脈毛細血管瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、半網膜(hemiretinal)静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、フロステッド(frosted)分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症およびその他の異常血色素症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症およびイールズ病などの血管病/滲出性疾患;交感性眼炎、ブドウ膜網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置に起因する状態、光線力学的療法に起因する状態、光凝固、手術中の血流低下、放射線網膜症および骨髄移植網膜症などの外傷性/外科的状態;増殖性硝子体網膜症および網膜上膜ならびに増殖性糖尿病性網膜症などの増殖性障害;眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外層網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、びまん性片側性亜急性視神経網膜炎およびハエウジ症などの感染性障害;網膜色素変性症、関連性網膜ジストロフィーを伴う全身性障害、先天性停止性夜盲、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、ソースビー眼底変性症、良性中心性黄斑症、ビエッティクリスタリンジストロフィー(Bietti's crystalline dystrophy)および弾力線維性仮性黄色腫などの遺伝病;網膜剥離、黄斑円孔および巨大網膜裂孔などの網膜裂孔/網膜円孔;腫瘍関連網膜疾患、網膜色素上皮の先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の混合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫および眼内リンパ腫瘍などの腫瘍;および点状内部脈絡膜症、急性後部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変性および急性網膜色素上皮炎などの眼の後部に影響を及ぼす種々雑多な他の疾患が挙げられる。疾患または状態が、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、加齢黄斑変性(ARMD)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜剥離、網膜劣孔、ブドウ膜炎またはサイトメガロウイルス網膜炎であるのが好ましい。
【0038】
局所投与
眼の前部構造への局所的ドラッグデリバリーは、重要な解剖学的および生理学的障害物を提供する。注入された薬物の角膜透過性の低さや前角膜クリアランスの迅速さが、通常、房水への吸収を、適用された用量のわずか2、3パーセントにしてしまう。通常の房水の代謝回転は、吸収された薬物の房水濃度を持続的に低下する。さらに、虹彩水晶体隔壁が、薬物が眼の後部に到達するのを妨げる。水晶体を通っての後部室への薬物の拡散は、通例、実行可能であると考えられていない。
【0039】
したがって、局所投与された点眼薬の後部区域貫通の最も有りそうな経路は、結膜および強膜を通る経路である。後部ドラッグデリバリーのための結膜/強膜経路を通る薬物貫通に対する3つの主要な組織関門は、結膜および強膜それら自体およびRPE−脈絡膜である。
【0040】
強膜は、分子量70 kDaまでの溶質に対して透過性であることが判っている;しかし、いったん化合物が結膜および強膜を貫通すると、後部室内へさらに拡散するか、またはRPEを通って後部区域に入らなければならない。
【0041】
強膜とは異なって、結膜およびRPEは、それぞれ多層および単層細胞の強い上皮関門を含む。結膜は、連続的基底膜に乗った2〜7細胞層の重層円柱上皮によった内張されており、RPEは、脈絡膜から神経網膜をの外表面を分離する強く結合した立方単層上皮からできている。これらの上皮関門を横切る薬物輸送は、受動的(傍細胞または経細胞)および能動的(担体介在膜輸送体を伴う経細胞)手段によって起こることができる。
【0042】
強膜へ、およびそれに続く網膜内への化合物の拡散は、結膜および網膜色素上皮関門によって制限される。しかし、もし、これらの関門が打開されるならば、後部区域への有効な局所的眼デリバリーを達成することができる。たとえば、結膜およびRPE輸送体を標的化することによって、これらの組織がもたらす受動的拡散に対する関門を回避することができる。
【0043】
本願は、1つには、本発明の輸送体システムを標的化する生物活性物質のプロドラッグおよび類縁体に関する。プロドラッグは、既知の活性薬物の不活性であるかまたはわずかに活性がある類縁体であり、増強されたデリバリー特性を有することが多い。それは、生体系内で酵素的および/または化学的不安定性という理由によって親化合物に変換される。本発明は、膜輸送体に標的化される、その標的組織が眼の後部に含まれるプロドラッグなどのすべての化合物に適用される。プロドラッグ誘導体化に影響を受けやすい親化合物の官能基は、カルボン酸、ヒドロキシル基、アミン基、スルフヒドリル基またはプロドラッグ誘導体化に影響を受けやすいことが判っているいずれかの他の官能基を包含することができる。プロドラッグは、生物活性物質に含まれるヒドロキシル含有基のエステルを含んでもよい。ヒドロキシル含有化合物の他のプロドラッグとして、リン酸エステル、ジカルボン酸のヘミエステル、アシルオキシアルキル、マンニッヒ塩基およびエーテルが挙げられる。
【0044】
本発明は、それら自身の固有活性を有し、それら自体がたとえば、結膜およびRPE輸送体などに対する基質である、生物活性物質の誘導体(基質および生物活性物質を含む複合体など、これらに限定されるものではない)にも適用される。プロドラッグとは異なって、このような類縁体は、不活性ではなく、親化合物に変換されなくてもよい。
【0045】
直接眼内投与
局所投与は一般に、薬物の眼への眼内または結膜下投与よりも外傷性が少ないが、いくつかの場合、本発明組成物を、眼の後部区域へ、直接(または局所投与が許すよりもより直接的に)デリバリーすることが必要である。
【0046】
眼の後部室に含まれる硝子体液は、非常に粘度がある。したがって、実質的に低粘度の液体または懸濁液の後部区域への注入は、眼内に、2つの少々混ざらない相あるいは層の存在がもたらされ、その結果、後部室の底における注入された液体または懸濁液の「貯留」および後部区域の組織への一様でない投与がもたらされうる。
【0047】
これを防ぐために、
本発明の治療薬、プロドラッグおよび/または複合体を、硝子体液の粘度に近似する粘度などの相対的に高い粘度を有する粘度製剤に懸濁させてもよい。このような粘度製剤は、粘度誘発成分を含む。本発明治療薬は、水性注射液、懸濁液、乳剤、溶液剤、ゲルまたは徐放性あるいは持続放出性インプラント(生分解性または非生分解性)として(これらに限定されるものではない)、硝子体内投与してもよい。
【0048】
粘度誘発成分は、ポリマー成分および/または眼科手術手順に有用な素材などの少なくとも1つの粘弾性剤を含むのが好ましい。
有用な粘度誘発成分の例として、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、多糖、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
現在有用な粘度誘発性分の分子量は、約10,000ダルトン以下〜約200万ダルトン以上などの約200万ダルトン以下の範囲であってよい。1つの特に有用な実施態様において、粘度誘発性分の分子量は、約100,000ダルトンまたは約200,000ダルトン〜約100万ダルトンまたは約150万ダルトンの範囲である。
【0050】
1つの非常に有用な実施態様において、粘度誘発成分は、たとえば、好ましくはヒアルロン酸アルカリ金属塩、ヒアルロン酸アルカリ土類金属塩およびその混合物から選ばれる、より好ましくはヒアルロン酸ナトリウム塩およびその混合物から選ばれるヒアルロン酸金属塩成分などのポリマーヒアルロン酸塩成分である。このようなヒアルロン酸塩成分の分子量は、約50,000ダルトンまたは約100,000ダルトン〜約130万ダルトンまたは約200万ダルトンの範囲であるのが好ましい。
【0051】
1つの実施態様において、本発明組成物は、約0.05%〜約0.5%(w/v)の範囲の量で、ポリマーヒアルロン酸塩成分に含まれるか、またはそれを含む。さらに有用な実施態様において、ヒアルロン酸塩成分は、本発明組成物の約1%〜約4%(w/v)の量で存在する。後者の場合においては、非常に高いポリマー粘度が、いずれかの懸濁した薬物の沈降速度を遅くするゲルを形成し、注入された製剤の貯留を防止する。
【0052】
請求の範囲に記載されている発明のこの態様の治療薬として、本明細書に特に記載されたものを含む、塩、プロドラッグ、複合体または治療に有用な作用剤の前駆体のいずれかまたはすべてが挙げられる。
【0053】
いくつかの態様において、少なくとも1つのこのような治療薬が、本明細書中の他の個所に記載された輸送体−標的化メカニズムに調和して、形質膜を横切って輸送されることができる限り、本発明組成物の治療成分は、1種以上の治療薬を含んでもよい。言い換えれば、本発明組成物の治療成分は、第1治療薬および第2治療薬または治療薬の組み合わせを包含することができる。治療薬の例として、前述の治療薬のいずれかの組み合わせが挙げられる。このような組成物中の1種以上の治療薬は、粒子または結晶として形成されるか、またはそれら中に存在することができる。
【0054】
粘度誘発成分は、組成物の粘度を増加する、都合よく実質的に増加するのに有効な量で存在する。本発明をいずれかの特定の理論に限定することを望むものではないが、たとえば、せん断速度0.1/秒で少なくとも約100 cpsなどの水の粘度に十分過剰な値に組成物の粘度を増加すると、ヒトまたは動物の眼の後部区域に配置(たとえば、注入)するのに非常に有効な組成物が得られることが考えられる。後部区域への本発明組成物の都合のよい配置または注入可能性に加えて、本発明組成物の相対的に高い粘度が、再懸濁処理を必要とすることなく、たとえば、少なくとも約1週間などの期間を延長するための組成物において実質的に均一な懸濁液中に治療成分(たとえば、副腎皮質ステロイド含有粒子を含む)を維持する本発明組成物の能力を増強すると考えられる。本発明組成物の相対的に高い粘度は、本発明組成物が、本明細書の他の個所で議論したように、副腎皮質ステロイド成分の増加された量または濃度を有すること、たとえば、このような副腎皮質ステロイド成分を、期間を延長するための実質的に均一な懸濁液中に維持する能力をもつことを少なくとも補佐するというさらなる利点を有することもできる。
【0055】
本発明のこの態様の組成物が、せん断速度0.1/秒で、少なくとも約10 cpsまたは少なくとも約100 cpsまたは少なくとも約1000 cps、より好ましくは少なくとも約10,000 cpsおよびさらにより好ましくは少なくとも約70,000 cps以上、たとえば、約200,000 cpsまたは約250,000 cps以下、または約300,000 cps以上などの粘度を有するのが都合がよい。特定の実施態様において、本発明組成物は、上述のように相対的に高い粘度を有するのみならず、好ましくは27ゲージの針で、あるいは30ゲージの針でも、ヒトまたは動物の眼の後部区域に、有効に配置(たとえば、注入など)されることができる能力を有するかまたはそのように構築されるかまたはそのように作り上げられる。
【0056】
たとえば、27ゲージ針などの細い隙間を通って、このような通過中に本発明組成物の粘度が実質的に低下されるような高せん断条件下で、粘性製剤が眼の後部区域を通過するか、または該区域内に注入されるように、粘度誘発成分がせん断弱化(thinning)成分であるのが好ましい。このような通過の後、本発明組成物は、眼内で懸濁液中に副腎皮質ステロイド成分粒子を維持するためのその注入前の粘度を実質的に回復する。
【0057】
本発明によれば、いずれかの眼科的に許容しうる粘度誘発成分を用いることができる。多くのこのような粘度誘発成分が、眼上または眼内で用いられる眼科用組成物において、提案および/または使用されている。粘度誘発成分は、組成物に所望の粘度を提供するのに有効な量で存在する。粘度誘発成分が、組成物の約0.5%または約1.0%〜約5%または約10%または約20%(w/v)の範囲の量で存在するのが都合がよい。使用される粘度誘発成分の特定の量は、たとえば、使用される特定の粘度誘発成分、使用される粘度誘発成分の分子量、製造される本発明組成物に望ましい粘度および/または同様の因子など(これらに限定されるものではない)の多くの因子によって決まる。
【0058】
本発明のもう1つの実施態様において、輸送体標的化眼科的および生物学的活性剤を、生物活性物質および輸送体基質、ならびに眼の後部区域への投与に適した生体適合性ポリマーを含む治療薬を含む、本質的に治療薬からなる、または治療薬からなる組成物において眼内デリバリーすることができる。たとえば、組成物は、限定的ではないが、眼内インプラントを包含することができる。いくつかの眼内インプラントが、米国特許番号6,726,918;6,699,493;6,369,116;6,331,313;5,869,079;5,824,072;5,766,242;5,632,984;および5,443,505などの刊行物に記載されている。これらはすべて、全体として参照することにより本発明に援用される。
【0059】
治療薬と組み合わせたポリマーをポリマー成分であると理解してもよい。いくつかの実施態様において、粒子は、D,L−ポリラクチド(PLA)またはラテックス以外の物質を含むことができる(カルボン酸塩修飾ポリスチレンビーズ)。いくつかの実施態様において、ポリマー成分は、多糖を含んでもよい。たとえば、ポリマー成分は、ムコ多糖を含んでもよい。少なくとも1つの特定の実施態様において、ポリマー成分は、ヒアルロン酸である。
【0060】
しかし、さらなる実施態様において、ポリマー成分は、天然源であろうと合成されたものであろうと、哺乳動物の身体において有用ないずれかのポリマー物質を含むことができる。本発明の目的に有用なポリマー物質のさらなるいくつかの例として、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチル セルロース、デキストリン、シクロデキストリン、アルギニン酸塩、ヒアルロン酸およびキトサンなどの炭水化物ベースポリマー、ゼラチン、コラーゲンおよび糖タンパク質などのタンパク質ベースポリマー、ならびに生体侵食性ポリラクチド−コグリコリド(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリホスファゼンおよびポリオルトエステルなどのヒドロキシ酸ポリエステルが挙げられる。ポリマーは、本発明において、架橋、混和または共重合体として使用することもできる。他のポリマー担体として、アルブミン、ポリ無水物、ポリエチレングリコール、ポリビニルポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ピロリドンおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0061】
非侵食性ポリマーのいくつかの例として、シリコン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチルビニルアセテート誘導体、アクリル樹脂、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋ポリビニルピロリドン、ポリスチレンおよび酢酸セルロース誘導体が挙げられる。
【0062】
これらのさらなるポリマー物質は、本明細書に開示した輸送体標的化治療薬のいずれかとともに有用である。たとえば、限定的ではないが、PLAまたはPLGAの粒子をヌクレオシド−トリアムシノロン複合体にカップリングすることができる。後者は、ヌクレオシド輸送体システムに対して標的化するように設計される。この不溶性三者複合体は、長期間でゆっくりと侵食され、輸送体標的化トリアムシノロン複合体を継続的に放出する。いったん、この複合体がRPE、網膜または他の標的組織に到達すると、形質膜を通って、その活性を発揮することができる標的組織または細胞中に輸送される。
【0063】
製剤ビヒクル
投与モードまたは治療薬の剤形(たとえば、局所、注射用またはインプラント用剤としての溶液、懸濁液など)にかかわらず、本発明の輸送体標的化治療用組成物は、医薬的に許容しうるビヒクル成分で投与される。治療薬または作用剤を、組成物の製造中に医薬的に許容しうるビヒクル成分と組み合わせてもよい。言い換えれば、本明細書に開示した組成物は、治療成分および有効量の医薬的に許容しうるビヒクル成分を含むことができる。少なくとも1つの実施態様において、ビヒクル成分は、水性である。たとえば、組成物は、水を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施態様において、治療薬は、ビヒクル成分中で投与され、有効量の少なくとも1つの粘度誘発性分、再懸濁化成分、保存成分、等張化成分および緩衝成分を含んでもよい。いくつかの実施態様において、本明細書に開示する組成物は、追加された保存成分を含まない。他の実施態様において、組成物は、任意に、追加された保存成分を含む。さらに、組成物は、懸濁化成分を含まなくてもよい。
【0065】
輸送体標的化眼科的作用剤(またはこのような作用剤を含むインプラントまたは粒子)の局所または眼内投与のための製剤は、多量の液体水を含むのが好ましい。本発明組成物は、たとえば、眼に用いる前に、滅菌型で製剤するのが好ましい。上記の緩衝成分は、もし眼内製剤に存在するならば、組成物のpHをコントロールするのに有効な量で存在する。製剤は、緩衝成分に加えて、あるいはその代わりに、組成物の張度または浸透圧をコントロールするのに有効な量で、少なくとも1つの等張化成分を含むことができる。実際に、同じ成分が、緩衝成分および等張化成分の両方として働くことができる。本発明組成物は、緩衝成分および等張度分の両方を含むのがさらに好ましい。
【0066】
緩衝成分および/または等張化成分は、もしいずれかが存在するならば、慣例および眼科業界で公知のものから選ぶことができる。このような緩衝成分の例として、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液など、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リン酸緩衝液が、特に有用である。有用な張度成分として、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、その他の適当な眼科的に許容しうる張度成分およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。非イオン性張度成分は、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセロールなどの糖に由来するポリオールを含んでもよい。
【0067】
使用する緩衝成分の量が、組成物のpHを約6〜約8、より好ましくは約7〜約7.5の範囲に維持するのに十分であるのが好ましい。使用する張度成分の量が、本発明組成物に、それぞれ約200〜約400、より好ましくは約250〜約350 mOsmol/kgの範囲の浸透圧を提供するのに十分であるのが好ましい。本発明組成物が実質的に等張であるのが都合がよい。
【0068】
本発明組成物は、1つ以上の有用な特性および/または利点を本発明組成物に提供するのに有効な量の1つ以上の他の成分を含むことができる。たとえば、本発明組成物は、実質的に追加の保存成分を含まなくてよいが、いくつかの実施態様においては、本発明組成物は、有効量の保存成分、好ましくは、組成物が配置される眼の後部区域にある組織に、ベンジルアルコールに比べて、より適合するかまたはより都合のよいような成分を包含する。このような保存成分の例として、塩化ベンザルコニウム(“BAC”または“BAK”)およびポロキサマーなどの第4級アンモニウム保存剤;ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などのビグアニド保存剤;メチルおよびエチルパラベン;ヘキセチジン;安定化二酸化塩素、金属亜塩素酸塩などの亜塩素酸成分;他の眼科的に許容しうる保存剤など、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明組成物中の保存成分の濃度は、もし存在するならば、組成物を保存するのに有効な濃度であり、(使用する特定の保存剤の性質に応じて)、組成物の約0.00001%〜約0.05%(w/v)または約0.1%(w/v)の範囲で用いられることが多く、一般的である。
【0069】
能動および促進輸送
形質膜表面における特異的担体介在膜輸送タンパク質は、RPEが、脈絡膜毛細管と末梢網膜の細胞との間で、栄養素、代謝産物および生体異物を選択的に輸送するのを可能にする。これらの特殊化した膜輸送体として、アミノ酸、ペプチド、ジカルボン酸塩、グルコース、モノカルボン酸、ヌクレオシド、有機アニオンおよび有機カチオン輸送体が挙げられる。同様に、角膜、結膜およびRPEなどの堅い眼上皮上で膜輸送体を標的化することによって、これらの関門を横切る吸収を大きく増加することができ、したがって、眼のバイオアベイラビリティを増加することができる。
【0070】
異なる種に、結膜および網膜/RPEにおける膜輸送体の分子および機能的証拠が報告されている。これらの輸送体は、後部眼組織へのドラッグデリバリーを増強するための部位特異的標的化を提供することができる。これらの膜輸送体として、アミノ酸、ペプチド、グルコース、モノカルボン酸、ヌクレオシドおよび有機カチオン輸送体が挙げられる。多剤耐性タンパク質(P−gp)および多剤耐性関連タンパク質(MRP)ポンプといったような排出ポンプなどの膜関門は、バイオアベイラビリティにも影響を及ぼす。
【0071】
第1表

【0072】

【0073】
参考文献の番号は、以下の文献に対応する。これらは、全体として参照することにより本発明に援用される。
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100. Greenwood J. Characterization of a rat retinal endothelial cell culture and the expression of P-glycoprotein in brain and retinal endothelium in vitro. J Neuroimmunol. 39(1-2) (1992) 123-32.
134. Ueda H, Horibe Y, Kim KJ, Lee VH., Functional characterization of organic cation drug transport in the pigmented rabbit conjunctiva. Invest Ophthalmol Vis Sci. 41 (3) (2000) 870-6.
【0074】
本発明の輸送体標的化方法および組成物を用いてより効果的に治療しうる眼の後部区域に影響を及ぼす状態として、網膜色素上皮(RPE)および/またはグリア遊走の低減化またはコントロールが有効である状態、およびそれらに関連する疾患または状態が挙げられる。したがって、本明細書に開示する組成物のいくつかは、網膜色素上皮またはグリア細胞の遊走または増殖が、該疾患または状態の原因を引き起こすかまたは寄与する疾患または状態を治療するのに用いることができる。関係は、直接的または間接的であり、網膜色素上皮またはグリア細胞の遊走または増殖は、疾患または状態の根本的原因でありうるか、あるいはもう1つの根本的な疾患または状態の症状でありうる。決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、開示する方法によって治療されうる疾患または状態のタイプの例を以下に示す:非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜血管新生、急性黄斑網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット病、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、ブドウ膜網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザーに起因する状態、光線力学的療法に起因する状態、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、網膜動脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜障害および網膜色素変性症。
【実施例】
【0075】
実施例1:アミノ酸輸送体
Na1共役Lアルギニン輸送システムが、ウサギ結膜において特徴決定されている。この輸送システムの輸送システムは、指向性(粘膜から漿膜へ)を示し、過剰の塩基性アミノ酸、大型中性アミノ酸および一酸化窒素シンターゼ(NOS)インヒビターによって阻害される。アミノ酸輸送システムB0,+もまた、NOSインヒビターの結膜輸送において存在する。GABA、グルタミン酸塩、グリシン、タウリン、トリプトファンおよびプロリンなどの他のアミノ酸輸送体が、網膜/RPEの細胞の表面において特徴決定されている。
【0076】
この知識を武器にして、非限定的例としてのFDA承認眼科用剤ビマトプロストおよびチロシンキナーゼインヒビター化合物1のアミノ酸プロドラッグを合成することができる。
【0077】
a)従来の方法論および材料を用いる当業者であれば、チロシンキナーゼインヒビター化合物1のグリシルエステルを合成することができる。これおよび類似のチロシンキナーゼインヒビターの構築は、米国特許出願番号11/180,496(これは、全体として参照することにより本発明に援用される)に見出すことができる。プロドラッグの構造は以下の通りである:
グリシルエステル化合物1

【0078】
b)同様に、従来の方法論および材料を用いる当業者であれば、プロスタミドであるビマトプロストのグリシルエステルも合成することができる。プロドラッグの構造は、以下の通りである:
ビマトプロストのグリシルエステル

【0079】
c)従来の方法論および材料を用いる当業者であれば、チロシンキナーゼインヒビター化合物1のトリプトフィルエステルを合成することができる。プロドラッグの構造は、以下の通りである:
化合物1のトリプトフィルエステル

【0080】
d)従来の方法論および材料を用いる当業者であれば、ビマトプロストのトリプトフィルエステルを合成することができる。プロドラッグの構造は、以下の通りである:
ビマトプロストのトリプトフィルエステル

【0081】
当然のことながら、これらのプロドラッグ化合物は、1つ以上のアミノ酸輸送体を用いて細胞膜を横切って輸送されうるように、および細胞内に含まれるエステラーゼによって加水分解されて、治療的部分またはその作用の部位の近くを曝しうるように設計される。
【0082】
実施例2:ペプチド輸送体
ペプチド輸送体は、種々の上皮を横切るβ−ラクタム抗生物質、抗がん剤、レニンインヒビターおよ数種のアンギオテンシン変換酵素インヒビターなどの種々のペプチド様またはペプチド模倣薬物の輸送に、重要な薬理学的および薬物動態学的関連を有する。1つのモデルジペプチドであるグリシルサルコシンが、RPEに存在することが明らかにされている。プロトン駆動担体介在ジペプチド輸送体が、初代培養ウサギ結膜上皮において機能的に同定されている。
【0083】
どのような限定も無い非限定的例として、従来の有機化学合成技術を用いる当業者であれば、ビマトプロストおよびチロシンキナーゼインヒビター化合物1のグリシルサルコシンエステルを合成することができる。
【0084】
a)化合物1のグリシルサルコシンエステル

【0085】
b)ビマトプロストのグリシルサルコシンエステル

【0086】
実施例3:モノカルボン酸輸送体
酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩およびケトン体などのモノカルボン酸塩は、H−共役、Na共役またはアニオン交換担体介在モノカルボン酸輸送体によって輸送される。着色ウサギ結膜におけるNa依存性モノカルボン酸塩輸送体の存在が明らかにされている。この輸送体は、涙から強膜方向を好む方向性を示す。
【0087】
モノカルボン酸は、涙を横切って強膜の方向に輸送される。しかし、RPEでは、モノカルボン酸は、RPEから脈絡膜の方向に輸送される。したがって、結膜の貫通においてプロドラッグが容易な加水分解を受けることが重要である。本明細書に開示する他の実施例と同様に、エステルは、この目的のために良好なプロドラッグである。
【0088】
どのような限定も無い非限定的例として、従来の有機化学合成技術を用いる当業者であれば、ビマトプロストおよびチロシンキナーゼインヒビター化合物1のコハク酸エステルを合成することができる。
【0089】
a)化合物1のコハク酸エステル

【0090】
b)ビマトプロストのコハク酸エステル

【0091】
実施例4:有機酸輸送体
本発明のさらなる実施態様は、硝子体半減期を延長するために硝子液内へプロベネシドとともに共投与されうる有機酸輸送体のための基質である薬物を含む。この実施態様ならびに他の実施態様において、インプラントおよびマイクロスフェアの形態で、薬物をプロベネシドまたはその他の有機酸輸送体のインヒビターとともに製剤することもできる。
【0092】
実施例5:ヌクレオシド輸送体
ヌクレオシド輸送体は、ウサギの着色結膜上皮に存在し、涙から強膜方向で、ヌクレオシド結合分子の輸送体を介在する。Na−依存性およびNa−依存性ヌクレオシドは、ウサギ結膜の涙に局在化しているようにみえる過程を輸送する。ヌクレオシド輸送体は、ウサギ網膜およびヒトRPE細胞系においても同定された。この輸送体の関与は、傍細胞拡散によるものよりも10〜100倍以上吸収される薬物を多くすることができる。これは、非環式シトシンヌクレオシド類縁体であるシドフォビルの場合に明らかにされた。
【0093】
a)非限定的例として、ビマトプロストおよびチロシンキナーゼインヒビター化合物1のウリジンプロドラッグを合成することができる:
化合物1のウリジンジエステル

【0094】
b)ビマトプロストのウリジンジエステル

【0095】
実施例6:有機カチオン輸送体
有機カチオンの輸送は、基質特異的ナトリウム依存性輸送体によって、およびより特異性の少ないナトリウム非依存性輸送体によって介在される。有機カチオン輸送体の2つの主要ファミリーが、同定されている:有機カチオン輸送体(OCT) および有機カチオン/カルニチン輸送体(OCTN)。有機カチオン輸送体(OCT)を特徴決定するために通例用いられる基質であるグアニジンへの着色ウサギ結膜の透過性が評価されている。漿膜から粘膜の方向とは対照的に、グアニジンの透過性が、粘膜から漿膜方向において5.4倍大きいことが明らかにされた。
【0096】
結膜上皮細胞における促進性の担体介在システムが、OCT1、OCT2およびOCT3と類似する担体として仮定される。有機カチオンは、涙を横切って強膜の方向に輸送される。しかし、RPEでは、有機カチオンは、RPEから脈絡膜の方向に輸送される。したがって、この組織において、結膜の貫通においてプロドラッグが容易な加水分解を受けることが重要である。エステルは、この目的のために良好なプロドラッグである。
【0097】
以下の非限定的例は、慣例の化学技術を用いる当業者であれば、合成することができる:
a)化合物1のリシルエステル

【0098】
b)ビマトプロストのリシルエステル
ビマトプロストをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF):ピリジンの1:1溶液および5倍過剰の塩化リシンに室温にて懸濁することによって、ビマトプロストのリシンエステルを合成する。薄層クロマトグラフィー(TLC)によって完了が確認されるまで室温にて2〜3日間反応を行う。ピリジンおよびDMFを減圧除去し、生成物を酸塩化物から沈澱させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって沈澱を精製し、ベンゼン−メタノール混合物から再結晶して、精製生成物を得る。

【0099】
実施例7:黄斑変性の治療のための化合物1の局所製剤の使用
65歳の男性は、左眼に進行した(滲出型)加齢性黄斑変性を呈している。網膜散瞳(dilated)検査は、黄斑の下にある微細血管および網膜浮腫の両方の存在を特徴とする発生期の血管新生および浮腫を示す。
【0100】
患者は、上記実施例6で記載したチロシンキナーゼインヒビター化合物1のリシンエステルの局所製剤の1日3回投与を含む処方計画を与えられる。製剤は、房水の張度と比べてわずかに高張であり、pH7.2に緩衝されている。製剤は、1日に患者の左眼に約0.5 μgのリシルエステル/TKIプロドラッグをデリバリーするように製剤される。
【0101】
治療の2か月後、患者の左眼を散瞳網膜検査に付す。浮腫は、約3分の1〜約4分の1の大きさに縮小していた。黄斑の血管新生浸潤も視力の低下も、治療の開始から著しくは進行していなかった。
【0102】
治療の開始から6か月後に行ったもう1度の全網膜検査は、視力が有意に向上し、黄斑浮腫が今や消失し、形態学的および機能的に正常な外見の網膜組織を残して、黄斑の下にかつてあった微細血管が後退したことを示す。患者は、顕著に視界のかすみおよびゆがみがなくなったことを報告する。
【0103】
実施例8
73歳の女性は、中心視野のかすみを訴えている。彼女の眼の散瞳検査は、右眼に嚢胞性黄斑浮腫の存在を示す。
【0104】
患者に、後部区域において膜結合グルコース輸送体を利用するように設計された抗炎症薬を眼内注入する。この化合物は、以下の構造を有するデキサメタゾンのD−グルコピラノシルエステルである。

【0105】
このプロドラッグは、米国特許番号6,726,918(これは、全体として参照することにより本発明に援用される)に記載の生体侵食性一体型ポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)インプラントに入っている。インプラントは、少量(約200 μL)のpH約7.2および浸透圧約400 mOSM/kgの1.0(w/v)%ヒアルロン酸溶液に入れて注入され、約0.05 μgのプロドラッグを48時間以内に網膜組織にデリバリーし、少なくとも3週間にわたって後部区域に約0.03 μg/mlのプロドラッグを継続的に放出するように設計されている。
インプランテーション後、患者の右眼に、1日2回0.15%(w/v)酒石酸ブリモニジンを局所投与し、その後2週間眼内圧をモニターする。
1か月後、散瞳後、患者の右眼を検査する。患者の網膜から膿疱性黄斑浮腫の痕跡は消滅し、患者の視力に焦点の明瞭さが回復していた。
【0106】
実施例9:
10年前に鎌状赤血球症と診断されている36歳の患者は、両目に視覚のかすみを示している。散瞳下での網膜検査により、両眼に、黄斑虚血の部位およびその結果生じる血管新生葉状体または「ウミウチワ(sea fans)」の形状での網膜血管新生の部位が明らかとなる。さらに、黄斑浮腫の部位が視認できる。
【0107】
患者に、0.1%(w/v)ビマトプロストのスクシニルエステルの眼内注射を処置する。

【0108】
プロドラッグを、pH7.2の1%(w/v)ヒアルロン酸溶液200 μl中でデリバリーする。
眼内注射の1か月後、患者に再度、散瞳下網膜検査を行う。網膜血管新生および浮腫の領域は、縮小しており、視力の喪失の進行は止まっていた。インプラント処理の2か月後、血管新生の領域は、さらに減少し、浮腫の領域は、消失した。患者は、有意に回復した視力を報告している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜輸送体の基質に共有的に結合した生物活性物質を含む、眼の後部区域における増強された有効性を有する治療薬を含む眼科用組成物であって、生物活性物質が神経保護剤であり、膜輸送体の基質がジカルボン酸塩である組成物。
【請求項2】
局所投与用に製剤される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硝子体内注入物として製剤される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
眼内インプラントとして製剤される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
生物活性物質および基質が、組織不安定結合で結合する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組織不安定結合が、加水分解可能なエステル結合を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
生物活性物質が、ブリモニジンである請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2013−14600(P2013−14600A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194322(P2012−194322)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2008−531128(P2008−531128)の分割
【原出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】