説明

治療薬

本発明は、血管系の細胞、特に平滑筋を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造などの細胞における活性酸素種(ROS)の産生を阻害または減少させるための化合物、組成物、および方法を提供する。また、ROS産生は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物の非血管細胞において阻害されてもよい。本明細書において想定される非血管細胞は、神経細胞、幹細胞、前駆細胞、およびいくつかの癌および腫瘍細胞を含む。より詳細に、本発明は、NADPHオキシダーゼの活性、機能、またはレベルを調整することにより、スーパーオキシド産生および下流のROSの産生を制御することができる薬剤および、さらに具体的には細胞透過薬を提供する。本発明により、特に、細胞外に曝露されるNox4成分の全部または一部などの酵素部分を有するNox4を含むNADPHオキシダーゼの形態に対して選択的な薬剤が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、血管系の細胞、特に平滑筋を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系などの細胞における活性酸素種(ROS)の生成を阻害または減少させるための化合物、組成物、および方法を提供する。また、ROS産生は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物の非血管細胞において阻害されてもよい。本明細書において想定される非血管細胞は、神経細胞、幹細胞、前駆細胞、並びにいくつかの癌および腫瘍細胞を含む。より詳細に、本発明は、NADPHオキシダーゼの活性、機能、またはレベルを調整することにより、スーパーオキシド産生および下流のROSの産生を制御することができる薬剤、並びにさらに具体的には細胞透過薬を提供する。本発明により、特に、細胞外に曝露されるNox4成分の全部または一部などの酵素部分を有するNox4を含むNADPHオキシダーゼの形態に対して選択的な薬剤が可能になる。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
本明細書の著者によって参照された刊行物の書誌的な詳細は、明細書最後に集めてある。
【0003】
本明細書中のいずれの従来技術に対する参照も、この従来技術がいずれの国においても共通の一般的な知識の一部を形成するものとは認められず、または示唆する何らかの形態でもなく、また解釈されるべきでない。
【0004】
次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、およびヒドロキシラジカルなどの活性酸素種(ROS)、並びに親種、スーパーオキシドは、アテローム性動脈硬化症、細胞増殖、高血圧、および再灌流障害の病原に強く関係している。スーパーオキシド産生が、例えば動脈壁においてアテローム性動脈硬化症の全てのリスク因子を増大するだけでなく、ROSも多くの「プロアテローム生成的(proatherogenic)」な細胞反応をインビトロで誘導する。これらは、内皮に由来する一酸化窒素(NO)を不活性化すること[Gryglewski et al., Nature 320: 454-456, 1986; Paravicini et al., Circulation Research 91: 54-61, 2002; Dusting et al., Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 25: S34-41, 1998]、接着分子の発現をアップレギュレートすること[Lo et al., Am. J. Physiol. 264: L406-412, 1993]、血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖および遊走を促進すること[Griendling and Ushio-Fukai, J. Lab. Clin. Med. 132: 9-15, 1998]、およびリポタンパク質を酸化的に修飾すること[Lynch and Frei, J. Lipid Res. 34: 1745-1753, 1993]を含む。これらの観察により、アテローム発生の「酸化的ストレス仮説」に至り、アテローム性動脈硬化症の治療として抗酸化物の潜在的な利点に関心がもたれる火付け役となった。ビタミンEおよびCなどの抗酸化物の高食事摂取量の個体における心臓血管疾患のリスクの減少の疫学的な証拠が存在するが、無作為化された試行では、ハイリスクの心血管イベントの個体において抗酸化物療法の臨床的な利益を何ら証明することができなかった[Yusuf et al., N. Engl.J. Med. 342: 154-160, 2000]。従来の抗酸化物は、なぜ血管疾患に対して効果がないのであろうかについては多くの理由がある。これらは、脂質相に対して、水相の不十分な吸収または区画化、並びにNOおよびリポタンパク質などの重要な生体分子とのこれらの高速反応と比較して抗酸化物とROSの緩徐な反応速度のために、疾患部位での抗酸化物の生物学的利用能が乏しいことを含む。加えて、従来の抗酸化物は、スーパーオキシドの一電子還元を生じさせることによって作用する。これにより、それ自体の権限でプロアテローム生成的な分子であるH2O2並びにHOCl-およびOHなどのさらに損傷を与えるROSの前駆体の形成を生じる。明らかなことに、下流のROSの産生を生じさせることなく迅速にスーパーオキシドを除去するストラテジーを発明する必要がある。
【0005】
血管におけるROSの主な供与源は、スーパーオキシド産生NADPHオキシダーゼであり[Griendling et al., Cir. Res. 86: 494-501, 2000]、貪食細胞の呼吸バーストの原因である酵素に似ている[Babior, Blood 93: 1464-1476, 1999]。NADPHオキシダーゼは、膜結合型チトクロムb558ドメイン、並びに3つのサイトゾルタンパク質サブユニット、p47phox、p67phox、およびスモールGタンパク質(Rac)からなる。チトクロムドメインは、22KDaのサブユニット、並びに基質結合およびNADPHから分子状酸素への電子伝達に必要とされる、より大きなフラビン含有βサブユニットを含むヘテロ二量体のタンパク質である。活性化されたときに、サイトゾル成分は、膜成分に転位置して活性なオキシダーゼ酵素を構築することができる。NADPHオキシダーゼは、動脈周囲のカラーによって誘導される内膜の過形成[Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記]、遺伝子的な高コレステロール血症[Drummond et al., Circulation 104. II-71, 2001]、動脈バルーン傷害[Shi et al., Arterioscler Thromb. Vasc. Biol. 21: 739-745, 2001]、静脈移植術[West et al., Arterioscler Thromb. Vasc. Biol. 21: 189-194, 2001]、および高血圧[Beswick et al., Hypertension 38: 1107-1111, 2001]によってオンになる。また、NADPHオキシダーゼによる血管スーパーオキシド産生の増大は、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症の臨床的な危険因子に、および冠状動脈疾患患者の内皮NO機能障害に関連していた[Guzik et al., Cir. Res. 86: E85-90, 2000]。重要なことに、マウスでのNADPHオキシダーゼのp47phoxサブユニットのターゲッティングされた破壊により、明らかにVSMCのスーパーオキシド産生を減少させ、かつこれらの動物において高コレステロール血症で誘導されるアテローム性動脈硬化症を有意に遅延させる[Barry-Lane et al., J. Clin. Invest. 108: 1513-1522, 2001]。ひとまとめにして、これらのデータは、増大されたNADPHオキシダーゼ活性が、単なるアテローム性動脈硬化症の症状ではなく、疾患の病因の主要原因因子であることの強力な証拠を提供する。
【0006】
最近の研究は、NADPHオキシダーゼのNADPH結合β-サブユニットの性質は、細胞型に応じて異なることを示唆する。従って、gp91phoxは、好中球においてp22phoxと結合するが[Babior, 1999, 前記]、このタンパク質の相同体は、VSMCおよび内皮細胞においてNADPHオキシダーゼ活性に重要な可能性がある(Ago et al., Circulation 109 (2): 227-233, 2004)。VSMCが貪食細胞のものとは異なるNADPHオキシダーゼのアイソフォームを発現することの第1の手掛かりは、VSMCがgp91phoxを欠いているという観察であった[Ushio-Fukai et al., J.Biol. Chem. 271: 23317-23321, 1996]。その後、gp91phoxヌルのマウスに由来するVSMCおよび大動脈は、NADPH(NADPHオキシダーゼの基質)に応答して、さらにスーパーオキシドを産生することができることが示された[Barry-Lane et al., 2001,前記; Souza et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 280: H658-667, 2001]。gp91phoxが好中球オキシダーゼの重要な触媒サブユニットとして作用することを考えると[Babior, 1999, 前記]、他の触媒サブユニットも関与しているに違いないことが示された。
【0007】
最近、Nox1およびNox4と呼ばれる2つの新規のgp91phoxの相同体が、培養ラットVSMCで同定された[Lassegue et al., Circ. Res.88: 888-894, 2001]。また、Nox4は、renoxの名前でも呼ばれてきた。これらのタンパク質は両方とも、NADPHの結合部位、フラビン・アデニン・ジヌクレオチド(FAD)およびヘム部分を含み、これらは、血管NADPHオキシダーゼの重要な触媒サブユニットの強力な候補となっている[Lambeth et al., Trends Biochem. Sci. 25: 459-461, 2000]。Nox4は、ウサギおよびマウス由来のVSMCおよび全血管に発現されているが、Nox1発現は、これらの標品のいずれにおいても検出されなかった[Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記]。同様に、最近単離されたヒトおよびラット動脈でのその他のグループによる研究では、非常に低いNox1:Nox4比(すなわち、<0.5%)を証明しており[Ritchie et al., European Journal of Pharmaology 461: 171-179, 2003]、Nox4は、血管スーパーオキシド産生においてNox1よりも多大な役割を有する可能性が高いことを示唆している。
【0008】
血管系および非血管系の細胞などの特定の細胞におけるNADPHオキシダーゼを特異的にターゲッティングすることにより、ROSの直接および下流の産生を減少させることができる化合物を同定する必要がある。このような化合物は、以下を含む、種々のイベントおよび症状に有用である:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹、および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス(oestoporasis)、および歯周病)および腎不全。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本明細書を通して、文脈が他の意味を要しない限り、「含む」という用語、または「含む」もしくは「含むこと」などの変形は、明記した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を意味するが、任意の他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を意味するわけではないと理解されるであろう。
【0010】
ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列は配列同定子番号(SEQ ID NO:)により参照される。SEQ ID NOs:は、配列同定子の<400>1(SEQ ID NO:1)、<400>2(SEQ ID NO:2)などに数的に対応する。配列同定子の概要は、表1に提供してある。配列表は、本明細書の最後に提供してある。
【0011】
本発明は、一部には、血管系および非血管系の範囲内の種々の細胞によって発現されるNADPHオキシダーゼの重要な触媒サブユニットであるNox4(別名renox)の全部または一部などの、NADPHオキシダーゼの細胞外に曝露された成分の同定に基づく。血管系は、平滑筋を含む血管、および/または内皮細胞を含む血管、および/または外膜線維芽細胞を含む血管を含む。非血管系は、神経細胞、癌細胞、線維芽細胞、並びに幹細胞および前駆細胞を含む。関心対象のNADPHオキシダーゼの形態は、NADPH結合ドメイン含むNox4の全てまたは一部の細胞外発現により、白血球および貪食細胞に存在するgp91phox含有NADPHオキシダーゼのアイソフォームから識別可能であるNox4を含む形態である。NADPHオキシダーゼの白血球および貪食細胞のアイソフォームは、Nox4相同体、すなわちgp91phoxを含む。従って、本発明は、細胞外に曝露されたNox4 NADPH結合部位を含むNADPHオキシダーゼを選択的に阻害する化合物を提供する。特に有用な化合物は、細胞不透過性のNox4アンタゴニストまたは阻害剤を含む。NADPHオキシダーゼのNox4を含む形態を選択的に阻害する能力により、以下のものなどの病態の発症の少なくとも一つの原因であることが提唱されている、血管平滑筋細胞(VSMC)、内皮細胞、および/または外膜線維芽細胞血管などの細胞からの次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、およびヒドロキシラジカルなどのスーパーオキシド産生および下流の活性酸素種(ROS)形成を阻害することができる:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス、および歯周病)および腎不全。
【0012】
従って、本発明は、VSMC-および/または内皮を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造、並びに線維芽細胞、幹細胞、神経細胞、および癌細胞などの特定の細胞の細胞外に曝露されたNox4を含むNADPHオキシダーゼを阻害する化合物を提供する。本発明の化合物は小さなまたは大きな化学的分子、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、脱免役された(deimmunized)キメラ組換え体および合成の免疫相互作用性分子を含む)、並びに核酸分子または共抑制(co-suppression)を誘導する際に有用な、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、センス・オリゴヌクレオチド、もしくは全長センス核酸分子を含むこれらの類似体、またはその他のRNAiを媒介した遺伝子サイレンシング・イベントを含む。「RNAi」に関しては、「siRNA」を含む。また、核酸分子は、C5 プロピニル修飾または完全なホスホロチオネート修飾などを含む修飾がなされてもよい。特に有用な化合物は、細胞不透過性Nox4阻害剤および/またはアンタゴニストである。
【0013】
特に本発明によって想定される有用な化合物は、ベンズアミドおよびアリールスルホナート、並びにスラミン、またはその誘導体、類似体、もしくは相同体などの誘導体または類似体である。その他の有用な化合物は、反応性ブルー-2[1-アミノ-4[[4[[4-クロロ-6-[[n-スルホフェニル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-3-スルホフェニル]アミノ]-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ-2-アントラセン-スルホン酸であって、式中nが3または4である]、およびPPADS[ピリドキサールリン酸-6-アクソ(ベンゼン-2,4-ジスルホン酸)] または4-[[-ホルミル-5-ヒドロキシ-6-メチル-3-[(ホス-ホノオキシ)メチル]-2-ピリジニル]アゾ]-1,3-ベンゼンジスルホン酸を含む。Tempol(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシル)およびDPI(ジフェニレンヨードニウム)、またはこれらの誘導体、類似体、もしくは相同体、並びにヌクレオチドのアンチセンスおよびセンス分子などの遺伝子治療に使用される遺伝子薬の範囲のものも、本発明にしたがった使用のために想定される。その他の有用な化合物は、Nox4-阻害剤相互作用のアゴニストを含む。「アゴニスト」は、スラミンなどのNox4アンタゴニストの阻害力を増強する化合物を含む。
【0014】
本発明は、本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供し、かつ以下の病態の症状もしくは病態と関連した症状を治療または防止し、またはさもなければ改善する方法を想定する:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復後に引き起こされる何らかの傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス、および歯周病)および腎不全。
【0015】
本明細書の全体にわたって使用される配列同定子についての要約を表1に提供してある。
【0016】
(表1)配列同定子の要約

【0017】
本明細書に使用される略語のリストを表2に提供してある。
【0018】
(表2)略語

1 スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、パーオキシナイトライト、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、その他を含む
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、特定の細胞型に対して、特に血管細胞に対して実質的に独特である、NADPHオキシダーゼの小成分を選択的にターゲットとする化合物を提供する。後者の細胞は、平滑筋を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造の細胞を含む。また、本発明は、線維芽細胞、神経細胞、癌細胞、並びに幹細胞および前駆細胞を含む非血管細胞にも適用できる。より詳しくは、本発明は、細胞外に曝露された小成分をターゲットとする化合物を提供する。より具体的には、小成分は、血管平滑筋細胞(VSMC)および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系などの(しかし、限定されない)特定の細胞に存在するNADPHオキシダーゼのNox4成分またはNox4の相同体の全部もしくは一部である。従って、本発明は、Nox4の細胞外に曝露された部分を含むNADPHオキシダーゼを選択的にターゲットとするアンタゴニストを提供する。本発明の化合物は、NADPH結合ドメインが白血球および貪食細胞においてNADPHオキシダーゼ内などの細胞内に位置するときに、これらが相同的なgp91phox成分に対して実質的に影響を及ぼさないという意味で選択的である。好ましい態様において、Nox4の阻害剤および/またはアンタゴニストは、細胞不透過性化合物であり、NADPHオキシダーゼの細胞内化合物をターゲッティングすることができない。
【0020】
本発明を詳細に記載する前に、特に明記しない限り、本発明は、特定の製剤成分、製造法、投与計画に限定されず、それ自体変更してもよいことが理解される。また、本明細書に使用される用語法が特定の態様だけを記載することを目的とし、限定することは企図されないことが理解される。
【0021】
本明細書に使用されるものとして、単数形の形態の「1つ(a, an)」および「その(the)」は、前後関係から明らかに別のことを述べていない限り留意しなければならない、複数の側面を含む。従って、例えば、「溶媒」に対する言及では、単一溶媒、並びに二つ以上の溶媒を含み、「活性薬剤」に対する言及では、単一の活性薬剤、並びに二つ以上の活性薬剤などを含む。
【0022】
本発明を記載し、クレームする際に、以下の用語は、下記に記載の定義に従って使用される。
【0023】
「化合物」、「活性薬剤」、「薬理学的に活性な薬剤」、「医薬」、「活性物」、および「薬物」という用語は、本明細書において、所望の薬理学的、生理的効果を誘導する化学物質をいうために交換可能に使用される。また、本用語は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、類似体などを含む(しかし、これらに限定されない)本明細書に具体的に言及した活性薬剤の薬学的に許容され、および薬理学的に活性な成分を含む。「化合物」、「活性薬剤」、「薬理学的に活性な薬剤」、「医薬」、「活性物」、および「薬物」という用語を使用するときは、これは、活性薬剤自体、並びに薬学的に許容され、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝産物、類似体などを含むことが理解される。「化合物」という用語は、化学物質だけとして解釈されるのではなく、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、および抗体、並びにRNA、DNA、およびこれらの化学的類似体などの遺伝分子にも拡張される。
【0024】
従って、本発明は、脈管構造および非脈管構造系内の生理的および病態生理学的なイベントまたは症状を防止または改善する際に有用な化合物を想定する。「脈管構造」という用語は、平滑筋細胞を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造を含む。本明細書において想定される非血管系は、線維芽細胞、神経細胞、癌細胞、前駆細胞、および幹細胞を含む。
【0025】
脈管構造と関係する症状またはイベントは、1つもしくは複数の器官の全身の脈管構造を含む心血管系のコンパートメントまたは解剖学的区画のいずれかもしくは全てに対する病理変化で特徴づけられ、または含む症状を含む。本明細書において想定される、VSMC-および/または内皮細胞-および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造と関係する症状またイベントは、以下を含む:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス、および歯周病)および腎不全。
【0026】
本発明は、細胞外に曝露されたNox4を含むNADPHオキシダーゼの阻害剤の投与によって、癌を治療する、または癌と関係する系を改善する方法をさらに想定する。本明細書において想定される癌の例は、以下のものを含むが、これらに制限されない:ABL1プロトオンコジーン、エイズに関連した癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、血管拡張性失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、幼児期脳腫瘍、小児癌、小児期白血病、幼児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結直腸癌、皮膚のT細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮体癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、外-肝臓胆管癌(Extra- Hepatic Bile Duct Cancer)、目癌、目:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃(gastric)癌、胃腸癌、胃腸カルチノイド-腫瘍、尿生殖器癌、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞性癌、遺伝性の乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス-細胞-組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リ-フラウメニ症候群、唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳房癌、腎臓の悪性棒状体腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔(mouth)癌、複合内分泌腺新生物、菌状息肉腫、骨髄異形性症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道(oesophageal)癌、口腔(oral cavity)癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵嚢癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムント-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、有棘細胞癌腫(皮膚)、胃(stomach)癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎臓-骨盤-/-輸尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、尿栓球素(Uroplakins)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ヴァルデンストレーム-マクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍。
【0027】
薬剤の「有効な量」または「治療的に有効な量」という用語は、本明細書に使用されるものとして、所望の治療的な効果を提供する薬剤の十分な量を意味する。さらにまた、薬剤の「有効なNox4を阻害する量」または「有効なNADPHオキシダーゼを阻害する量」は、ROS産生によって媒介され、または引き起こされる症状を少なくとも部分的に阻害または改善する薬剤の十分な量である。一つの特に有用な基準は、スーパーオキシド産生および下流のROSの減少である。もちろん、望ましくない効果(例えば、副作用)は、時に所望の治療効果とともに明らかにされ;それ故、開業医は、適切な「有効な量」であることを決定する際に、潜在的なリスクに対する潜在的な利益のバランスをとる。必要とされる正確な量は、被検者の種、年齢、および全身状態、投与様式などに応じて、被検者間で異なると考えられる。従って、正確な「有効な量」を特定することはできないであろう。しかし、いずれの個々の場合にも、適切な「有効な量」は、当該技術分野においてルーチン試験だけを使用して当業者によって決定されるであろう。
【0028】
「薬学的に許容される」キャリア賦形剤または希釈液は、生物学的にまたは他に望ましくなくないものではない物質で構成される薬学的媒体を意味し、すなわち、物質は、有害反応を全くまたは実質的に引き起こすことなく、選択した活性な薬剤と共に被検者に投与されるであろう。キャリアは、賦形剤、並びに希釈液、洗浄剤、着色剤、湿潤剤、または乳化剤、pH緩衝剤、防腐剤、などのその他の添加物を含んでいてもよい。
【0029】
同様に、本明細書において提供される化合物の「薬理学的に許容される」塩、エステル、アミド、プロドラッグ、もしくは誘導体は、生物学的にまたは他に望ましくなくないものではない塩、エステル、アミド、プロドラッグ、もしくは誘導体である。
【0030】
「治療すること」および「治療」という用語は、本明細書に使用されるものとして、症状の重篤さおよび/または頻度の減少、症状および/または根底にある原因の除去、症状および/またはこれらの根底にある原因の発生の予防、並びに損傷の改善または治療をいう。従って、例えば患者を「治療すること」は、障害もいくは疾患を阻害するか、または退行を生じさせることによって、感受性の個体における特定の障害または有害な生理的イベントの予防、並びに臨床的に症候性の個体の治療を含む。従って、例えば血管系の治療を必要とする患者を「治療する」本方法は、症状、疾患、または障害の予防、並びに症状、疾患、または障害を治療することの両方を含む。いずれの場合でも、本発明は、血管系および非血管系の細胞などの種々の細胞によるスーパーオキシドおよび/または下流のROSの産生または産生の可能性を生じる何らかの症状の治療または予防を想定する。
【0031】
「患者」は、本明細書に使用されるものとして、哺乳動物、好ましくはヒト、本発明の薬学的製剤および方法の利益を受けることができる個体をいう。現在記載されている薬学的製剤および方法からの利益を得ることができる哺乳動物のタイプは限定されない。ヒトまたは非ヒト哺乳動物であるかにかかわらず、患者は、個体、被検者、哺乳動物、宿主、またはレシピエントと称してもよい。
【0032】
従って、本発明は、NADPHオキシダーゼの機能、活性、またはレベルを調整することにより、酵素がスーパーオキシドおよび下流のROSを生じることができる範囲に影響を及ぼす化合物を提供する。このようなROSは、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、ヒドロキシラジカルを含む。特に、本発明の化合物は、VSMCおよび内皮細胞などの血管細胞中のNADPHオキシダーゼを、これらの細胞内のNADPHオキシダーゼのNADPH-結合β-サブユニットであるNox4の細胞外に曝露されたNox4を特異的にターゲットとすることによって選択的に阻害する。白血球および貪食細胞などのいくつかの非血管細胞では、NADPH-結合β-サブユニットは、gp9lphoxである。従って、本発明の化合物は、細胞外に曝露されたNox4のレベルを阻害または減少させるが、gp91phoxに対しては実質的にあまり効果を有さないか、または好ましくは全く効果を有さない。これは、本発明の化合物が、血管のイベントに続く平滑筋細胞を含む脈管構造および/または内皮細胞を含む脈管構造および/または線維芽細胞を含む脈管構造におけるROS産生を直接または下流で選択的に阻害することができることを意味する。本化合物は、Nox4に対して選択的であってもよく、またはこれらは不透過性細胞であり、それ故、細胞内Nox4成分もしくはgp91phox成分を阻害することができないという意味で選択的であってもよい。
【0033】
本発明のこの側面の化合物は、大分子または小分子、核酸分子、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、または抗体、またはRNAi-複合体、リボザイム、もしくはDNAザイム(DNAzyme)などのハイブリッド分子であってもよい。
【0034】
本発明のもう一つの側面は、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:4に記載されたか、もしくはこれらに対して少なくとも約50%の類似性を有するアミノ酸の配列を含むポリペプチドと相互作用するか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:3もしくはその相補物に記載されたか、もしくはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:3もしくはその相補物と少なくとも約50%の類似性を有するヌクレオチド配列か、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:3もしくはその相補物に対して低いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む核酸分子と相互作用することができる化合物であって、該化合物は、該ポリペプチドの活性もしくは機能、または該核酸分子の発現のアンタゴニストとして作用する化合物を提供する。
【0035】
SEQ ID NO:2は、ヒトNox4のアミノ酸配列を表す。SEQ ID NO:1は、ヒトNox4をコードするヌクレオチド配列である。
【0036】
マウスNox4をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3によって定義される。対応するアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4によって定義される。
【0037】
図3および4は、それぞれヒトおよびマウスNox4のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。重要なことに、Nox4の予測される細胞外ドメインには、下線を引いてある(それぞれSEQ ID NO:5および7に対応しており、SEQ ID NO:4および6によってコードされる)。
【0038】
従って、本発明のもう一つの側面は、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:7に記載されたか、もしくはこれらに対して少なくとも約50%の類似性を有するアミノ酸の配列を含むポリペプチドと相互作用するか、またはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID NO:6もしくはその相補物に記載されたか、もしくはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID NO:6もしくはその相補物と少なくとも約50%の同一性を有するヌクレオチド配列か、またはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID NO:6もしくはその相補物に対して低いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む核酸分子と相互作用することができる化合物であって、該化合物は、該ポリペプチドの活性もしくは機能、または該核酸分子の発現のアンタゴニストとして作用する化合物を提供する。
【0039】
しかし、本発明は、その他の霊長類、家畜動物、臨床検査動物(laboratory test animal)、伴侶動物、または捕獲された野生動物に由来するものなどのいずれの哺乳動物供与源に由来するNox4のターゲティングにも拡張される。
【0040】
臨床検査動物の例は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、およびハムスターを含む。ウサギ、並びにラットおよびマウスなどの齧歯類動物は、便利な試験系または動物モデルを提供する。家畜動物は、ヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、およびロバを含む。ゼブラフィッシュおよび両生類(ヒキガエルを含む)などの非哺乳動物も、有用なモデルであろう。
【0041】
「類似性」という用語は、本明細書に使用されるものとして、ヌクレオチドまたはアミノ酸のレベルで比較した配列の間の正確な同一性を含む。ヌクレオチドのレベルで非同一がある場合、「類似性」は、異なるアミノ酸を生じるが、それにもかかわらず構造、機能、生化学、および/またはコンフォメーションのレベルで互いに関連した配列間の相違を含む。アミノ酸のレベルで非同一な場合でも、「類似性」は、構造、機能、生化学、および/またはコンフォメーションのレベルで互いに関連するアミノ酸を含む。特に好ましい態様では、ヌクレオチドおよび配列の比較は類似性ではなく同一性のレベルでなされる。
【0042】
二つ以上のポリヌクレオチド間またはポリペプチド間の配列関係を記載するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列類似性」、「配列同一性」、「配列類似性の百分率」、「配列同一性の百分率」、「実質的に類似する」、および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸の残基を含み、かつ少なくとも12、しかし度々15〜18、しばしば30モノマー単位などの少なくとも25以上の長さである。二つのポリヌクレオチドは、(1)二つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)二つのポリヌクレオチド間で差異のある配列をそれぞれ含んでいてもよいため、二つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」上で二つのポリヌクレオチドの配列を比較して、配列類似性の局部領域を同定して比較することによって実施される。「比較ウィンドウ」は、参照配列と比較される通常12個の連続する残基の概念上のセグメントを指す。比較ウィンドウは、二つの配列の最適整列について参照配列(付加または欠失を含まない)と比較されるときに、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューター制御された実行により、観察および選択された任意の種々の方法により作成された最良整列(すなわち、比較ウィンドウ全体で最高の百分率の相同性を得る)によって行ってもよい。例えば、Altschul et al. (Nucl. Acids Res. 25: 3389, 1997)により開示されたプログラムのBLASTファミリーも参照に対して行ってもよい。配列分析の詳細な論議はAusubel et al. (" Current Protocols in Molecular Biology " John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15)のUnit 19.3に見いだすことができる。
【0043】
「配列類似性」および「配列同一性」という用語は、本明細書に使用されるものとして、ヌクレオチドごとに基づいて、もしくはアミノ酸ごとに基づいて、比較ウィンドウ全体で配列が同一である程度、または機能的もしくは構造的に類似する程度を指す。従って、例えば「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウ全体の二つの最適に整列された配列を比較して、同一の核酸塩基(例えば、A, T, C, G, I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala, Pro, Ser, Thr, Gly, Val, Leu, Ile, Phe, Tyr, Trp, Lys, Arg, His, Asp, Glu, Asn, Gln, CysおよびMet)が両配列に存在する位置の数を決定して適合する位置の数を求めて、適合する位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウの大きさ)で割って、その結果に100を乗じて配列同一性の百分率を得ることにより算出される。本発明の目的上、「配列同一性」は、DNASIS コンピューターのプログラム(windowsのVersion 2.5; Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから購入できる)により、ソフトウェアに添付された参照マニュアルで使用されるような標準デフォルトを使用して算出される「適合の百分率」を意味することが理解されるであろう。同様のコメントは、配列類似性についても当てはまる。
【0044】
好ましくは、特定の配列と参照配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)の間の百分率類似性は、少なくとも約60%または少なくとも約70%または少なくとも約80%または少なくとも約90%、または少なくとも約96%、97%、98%、99%以上など、少なくとも約95%以上である。また、50〜100の間の百分率類似性または同一性が想定される。
【0045】
明細書中での低いストリンジェンシーについての言及は、ハイブリダイゼーションにおいて少なくとも約0〜少なくとも約15% v/vのホルムアミド、および少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、並びに洗浄条件として少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、および包含する。一般的に、低いストリンジェンシーは、約25〜30℃〜約42℃である。温度は変更してもよく、ホルムアミドを置換するためおよび/または代替のストリンジェンシー条件を付与するために、より高い温度を使用してもよい。必要であれば、中間のストリンジェンシー(ハイブリダイゼーションにおいて、少なくとも約16% v/v〜少なくとも約30% v/vのホルムアミド、および少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、並びに洗浄条件として少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含み、および包含する)、または高いストリンジェンシー(ハイブリダイゼーションにおいて、少なくとも約31% v/v〜少なくとも約50% v/vのホルムアミド、および少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩、並びに洗浄条件として少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含み、および包含する)などの代替のストリンジェンシー条件を適用してもよい。一般的に、洗浄は、Tm=69.3+0.41(G+C)%(Marmur and Doty, J. Mol. Biol. 5: 109, 1962)で行われる。しかし、二重鎖DNAのTmは不適合塩基対の数が1%増加するごとに1℃ずつ低下する(Bonner and Laskey, Eur. J. Biochem. 46: 83, 1974)。ホルムアミドは、これらのハイブリダイゼーション条件において選択可能である。従って、特に好ましいストリンジェンシーのレベルは、下記のように定義される:低いストリンジェンシーは25〜42℃で6×SSC緩衝液、0.1% w/v SDSであり;中間のストリンジェンシーは、20℃〜65℃の範囲の温度で2×SSC緩衝液、0.1% w/v SDSであり;高いストリンジェンシーは、少なくとも65℃の温度で0.1×SSC緩衝液、0.1% w/v SDSである。
【0046】
「核酸」、「ヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、並びにセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方の混合重合体を含み、化学的もしくは生化学的に修飾されていてもよく、または当業者によって容易に認識されるとおり、非天然の、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。このような修飾は、例えばラベル、メチル化、天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の類似体(モルフォリン環などの)との置換、無荷電の結合(例えば、メチルホスホネート、リン酸トリエステル、ホスホ・アミダート、カルバメート、その他)などのヌクレオチド間の修飾、荷電した結合(例えば、ホスホロチオネート、ホスホロジチオアート、その他)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレン、その他)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾された結合(例えば、α-アノマーの核酸、その他)を含む。また、ポリヌクレオチドを、これらが水素結合およびその他の化学的相互作用を経て指定された配列に結合する能力を模倣した合成分子が含まれる。このような分子は、当該技術分野において既知であり、例えば分子のバックボーンにおいて、ペプチド結合をホスフェート結合に置換したものを含む。
【0047】
本発明は、Nox4遺伝子またはそのmRNAの部分または一部または断片にまで拡張する。「部分または一部または断片」は、少なくとも約8ヌクレオチド、または好ましくは約12〜17ヌクレオチド、またはより好ましくは少なくとも約18〜25ヌクレオチドの最小のサイズを有するものとして定義され、および少なくとも約5000ヌクレオチドの最大サイズを有していてもよい。また、5000ヌクレオチドよりも大きなゲノム同等物を使用してもよい。この定義は、8〜5000ヌクレオチドの範囲の全てのサイズを含む。従って、この定義は、12、15、20、25、40、60、80、100、200、300、400、500、もしくは1000ヌクレオチドの核酸、またはこれらの値の範囲内のいずれかの数のヌクレオチドを有する(例えば、13、16、23、30、28、50、72、121、その他ヌクレオチド)核酸、または500以上のヌクレオチド、または500〜SEQ ID NO:1に示した数の間のいずれかの数のヌクレオチドを有する核酸を含む。本発明は、SEQ ID NO:1またはこれらの相補物もしくは機能的な同等物に由来する少なくとも8ヌクレオチドを有する全ての新規の核酸を含む。
【0048】
本発明は、薬物をスクリーニングする方法であって、例えばNox4ポリペプチドまたはこれらの断片とプロドラッグを接触させることと、および当該技術分野において周知の方法によって(i)薬物とNox4ポリペプチドもしくは断片との間の複合体の存在について、または(ii)Nox4ポリペプチドもしくは断片とリガンドとの間の複合体の存在についてアッセイすることとを含む方法を提供する。このような競合結合アッセイ法において、Nox4ポリペプチドまたは断片は、典型的にはラベルされる。遊離のNox4ポリペプチドまたは断片をタンパク質:タンパク質複合体に存在するものから分離して、遊離の(すなわち、複合体を形成していない)ラベルの量が、Nox4に対する試験される薬剤の結合の程度である。また、遊離のNox4ではなく、結合した量を測定してもよい。また、Nox4以外のリガンドをラベルすること、および試験される薬物の存在下および非存在下でNox4に対して結合するリガンドの量を測定することもできる。
【0049】
薬物のスクリーニングのためのもう一つの技術は、Nox4に対して適切な結合親和性を有する化合物のための高スループットなスクリーニングを提供し、Geysen(国際特許公報番号WO84/03564)において詳述されている。簡単に述べると、大量の異なる小ペプチド試験化合物を、プラスチック・ピンまたはいくつかのその他の表面などの固形基体上で合成する。ペプチド試験化合物をNox4と作用させ、洗浄する。次いで、結合したNox4ポリペプチドを当該技術分野において周知の方法によって検出する。この方法は、非ペプチド(化学的存在物)をスクリーニングするために適応してもよい。従って、この側面は、Nox4アンタゴニストをスクリーニングするためのコンビナトリアル・アプローチに拡張される。
【0050】
上述した薬物スクリーニング技術に使用するために、精製したNox4をプレート上に直接被覆することができる。しかし、固相上にNox4ポリペプチドを固定するために、ポリペプチドに対する非中和性抗体を使用して抗体を捕捉することができる。
【0051】
また、本発明は、競合薬のスクリーニング・アッセイ法であって、Nox4ポリペプチドまたはこれらの断片に対する結合に関して、Nox4ポリペプチドに特異的に結合できる中和抗体が試験化合物と競合するアッセイ法の使用を想定する。
【0052】
このように、抗体は、Nox4ポリペプチドの1つまたは複数の抗原決定基を共有するいずれのペプチドの存在を検出するためにも使用することができる。
【0053】
上記のスクリーニング法は、Nox4だけを使用するアッセイ法に限定されず、前記のものを含む無処理のNADPHオキシダーゼまたは膜調製物などのNox4-タンパク質複合体を研究するためにも適用できる。この複合体の活性に対する薬物の効果が解析される。
【0054】
さらにまた、アッセイ法の範囲は、本明細書の発見に基づいて、Nox4成分の少なくとも一部が細胞外であるか、または外部、内部、もしくはイントラターナル(intraternal)間で平衡して少なくとも存在することが想定される。これは、さらに以下のとおりに考えられる。
【0055】
本発明によれば、選択的にNox4を阻害するために、ベンズアミドおよび/またはアリールスルホナートおよび/または誘導体もしくは類似体、特に硫酸化ベンズアミドおよびアリールスルホナート、並びに誘導体または類似体が提案される。本発明を実施するための1つの特に有用なアリールスルホナートおよび誘導体または類似体は、スラミンおよびその誘導体、類似体、および機能的な相同体である。
【0056】
スラミンに対する参照は、前記Jentsch et al., 1987,によって開示される類似体を含む。これらの類似体の概要を図1に示してある[Jentsch et al., 1987, 前記;米国特許第5,173,509号]。
【0057】
加えて、特異的な活性なスラミンに関連した類似体は、本明細書に包含し、前記Jentsch et al., 1987,のページ2187および2188の表3および4によって開示されており、表3に示すように構造および分子量を有する:
【0058】
(表3)


1 各々のスラミンの類似体(化合物番号2〜57)の合成は、以前に報告されている[Nickel et al., Arzneimittel-Forschung 36 : 1153-57, 1986、およびHolzmann et al., Biomedical Mass Spectrophotometry 12: 659-663, 1985]。A、B、およびCの構造単位は上に定義したとおりである。
2 ナトリウム塩の分子量
3 スラミン(ナトリウム塩)
【0059】
特に、ヒトおよびマウスのNox4のスラミン結合部位は、それぞれ図3および4において強調してある。
【0060】
従って、本発明は、細胞外に曝露されたスラミンまたは図3(ヒト)および図4(マウス)で定義したNADPH結合部位もしくはその他の哺乳動物もしくは非哺乳動物のその機能的同等物と結合し、またはそうでなければ相互作用するいずれの化合物も想定する。
【0061】
スラミンがNox4アンタゴニストとして同定されたことにより、Nox4のスラミン結合部位の位置を決定するためのストラテジーを開発することができる。これにより、スラミン-Nox4相互作用のアゴニスト(すなわち相乗因子)を作製すること、並びにその他の同様のアンタゴニストを同定することができる。
【0062】
一つのアプローチでは、スーパーオキシドまたはその他のROS産生をNADPHで刺激したVSMCで証明する。次いで、同じ条件下において、スラミンの添加によりスーパーオキシドまたはその他のROS産生をブロックすることを示す。次いで、VSMCをフルオレッセインラベルしたスラミンなどのラベルされたスラミンと共にインキュベートして、NADPH刺激したスーパーオキシド(または、その他のROS)産生を、化学発光を使用して測定してラベリングがスラミンの阻害活性を受けなかったことを確認する。この場合、次いで、共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡を使用して高倍率下でVSMCを可視化して、ラベルされたスラミンが、細胞外部位に結合し、原形質膜を透化しなかったことを証明する。
【0063】
エピトープ・タギングも、もう一つのアプローチとなる。スラミンは、NADPHの類似体であり、Nox4サブユニットのNADPH結合部位を占めることによって、NADPHオキシダーゼ活性を阻害するであろう。Nox4のNADPH結合部位は、そのC末端の尾部に位置するので、無処理、対、透過化処理された細胞における、この領域のエピトープ-タギングおよびその後の抗体結合の解析により、原形質膜の細胞内または細胞外の表面上に位置するかどうかの決定をすることができる。
【0064】
総RNAをVSMCから抽出し、ポリdTプライマーを使用して逆転写した。次いで、生じるcDNAをポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によってNox4の全てのコード・ドメインを増幅するための鋳型として使用する。PCR産物をGATEWAY(Reg. Trademark)発現ベクター(Invitroge, CA, USA)またはその他の適切なエピトープを含むベクターのFLAGエピトープからすぐ上流に挿入する。次いで、構築物を適切な細胞に一過性に発現させて、次いで共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡を使用して、FLAGエピトープ(またはその他のエピトープ)に対する抗体の結合を、無処理、対、透過化した細胞において比較する。
【0065】
スラミンに対して同様様式で作用するその他の有用な薬物は、反応性ブルー2(Reactive blue-2)およびPPADSである。反応性ブルー2(バシレン(Basilen)ブルーE-3G、シバクロン(Cibacron)ブルーF3G-A、およびプロシオンブルーH-Bとしても知られる)は、[1-アミノ-4[[4[[4-クロロ-6-[[n-スルホフェニル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-3-スルホフェニル]アミノ]-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ-2-アントラセンスルホン酸であって、nは3または4である]。PPADSは、4-[[-ホルミル-5-ヒドロキシ-6-メチル-3-[(ホスホノオキシ)メチル]-2-ピリジニル]アゾ]-1,3-ベンゼンジスルホン酸である。
【0066】
さらに有用な薬物は、tempol(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシル)などのスーパーオキシド・スカベンジャー、およびスラミン(上記した)、ジフェニレンヨードニウム(DPI)、およびアポシニンなどのNADPHオキシダーゼからのスーパーオキシド形成をブロックする化合物、並びにNox4の細胞外部分と結合することによりROSを除去する分子を含む。
【0067】
また、本発明は、Nox4ポリペプチドを阻害するその他の化合物をスクリーニングするためにも有用である。Nox4ポリペプチドまたはこれらの結合断片は、本明細書および国際公開番号WO97/02048に記載されているものなどの種々の薬物スクリーニング技術のいずれに使用してもよい。
【0068】
Nox4アンタゴニストは、Nox4変種ポリペプチドを含む。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸およびその同等物の重合体を指し、特定の長さの産物をいうのではない。したがってペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。また、この用語は、グリコシル化、アセチル化(aceylation)、リン酸化などのポリペプチドの修飾をいうのでもなく、除外するものでもない。例えば、1つまたは複数のアミノ酸類似体(例えば、非天然のアミノ酸、その他を含む)、置換された結合、並びに当該技術分野において既知のその他の修飾を有するポリペプチド(天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方)を含むポリペプチドが、本定義に含まれる。通常、このようなポリペプチドは、天然のNox4配列に対して少なくとも約40%類似しており、好ましくは90%以上、およびより好ましくは少なくとも約95%類似する。また、Nox4をコードする核酸に対して高いまたは低いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質、およびNox4タンパク質に対する抗血清によって回収される密接に関連したポリペプチドまたはタンパク質も含まれる。
【0069】
置換の変種は、典型的には、タンパク質内の1つまたは複数の部位で、1つのアミノ酸を別のものに交換することを含み、その他の機能または性質の減少を伴わずに、タンパク分解性の切断に対する安定性などのポリペプチドの1つまたは複数の性質を調整するようにデザインしてもよい。アミノ酸置換は、含まれる残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行ってもよい。好ましい置換は、保存されたもの、すなわち1つのアミノ酸は、同様の形状および電荷のものと置換される。保存的置換は、当該技術分野において周知であり、典型的には以下の群の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびチロシン、フェニルアラニン。
【0070】
一定のアミノ酸により、例えば抗体の抗原結合性領域もしくは基質分子に対する結合部位またはNox4ポリペプチドと相互作用するタンパク質に対する結合部位などの構造との相互作用的な結合能に有意な減少を伴わずに、タンパク質構造内のその他のアミノ酸を置換してもよい。タンパク質の生物学的な機能的活性を定義するものは、タンパク質の相互作用能および性質であるので、一定のアミノ酸置換をタンパク質配列およびその基礎をなすDNAコード配列に行って、かつそれにもかかわらず同様の性質を有するタンパク質を得ることができる。このような変化を行う際に、アミノ酸の疎水性親水性指標インデックスを考慮してもよい。タンパク質に対して相互作用性の生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸インデックスの重要性は、一般に当該技術分野において理解されている(Kyte and Doolittle, J. Mol. Biol. 157: 105-132, 1982)。または、同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効率的に行うことができる。タンパク質の相互作用性の生物学的機能を与える際の親水性の重要性は、当該技術分野において一般的に理解される(米国特許第4,554,101号)。ポリペプチドをデザインする際の疎水性インデックスまたは親水性の使用は、米国特許第5,691,198号においてさらに論議されている。
【0071】
相同性が比較されるポリペプチド配列の長さは、通常少なくとも約16アミノ酸、通常少なくとも約20残基、より一般的には少なくとも約24残基、典型的には少なくとも約28残基、および好ましくは約35残基以上である。
【0072】
本発明は、Nox4ポリペプチドの化学的類似体をさらに想定する。また、これらは、一般にNox4活性に拮抗性である。
【0073】
本明細書で想定される類似体は、側鎖に対する修飾、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質合成の間の非天然のアミノ酸および/または誘導体の組み込み、並びにタンパク質分子またはこれらの類似体に対して高次構造上制約を果す架橋剤およびその他の方法の使用を含むが、これらに限定されない。
【0074】
本発明によって想定される側鎖修飾の例は、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化に続くNaBH4による還元;メチルアセトイミダートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアナートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;コハク酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物によるアミノ基のアシル化;並びにピリドキサール-5-ホスフェートでのリジンのピリドキシル化に続く、NaBH4での還元などのアミノ基の修飾を含む。
【0075】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、およびグリオキサールなどの試薬で複素環式縮合物を形成することによって修飾してもよい。
【0076】
カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミドの活性化に続いて、その後の例えば対応するアミドへの誘導体化によって修飾してもよい。
【0077】
スルフヒドリルは、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化などの方法;システイン酸に対する過ギ酸の酸化;その他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、またはその他の置換されたマレイミドとの反応;4-クロロメルクリ安息香酸、4クロロメルクリフェニルスルホン酸、フェニル塩化水銀、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、およびその他の水銀剤を使用する水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアナートによるカルバモイル化によって修飾してもよい。
【0078】
トリプトファン残基は、例えばN-ブロモコハク酸イミドでの酸化または臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルもしくはスルホニルハライドでのインドール環のアルキル化によって修飾してもよい。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンでのニトロ化によって変更して3-ニトロチロシン誘導体を形成してもよい。
【0079】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体でのアルキル化またはジエチルピロカルボネートでのN-カルボエトキシ化によって達成してもよい。
【0080】
ペプチド合成の間の非天然のアミノ酸および誘導体の組み込みの例は、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-アイソマーの使用を含むが、これらに限定されない。本明細書において想定される非天然アミノ酸のリストを表4に示してある。
【0081】
(表4)非従来のアミノ酸のコード




【0082】
架橋剤を使用して、例えばn=1〜n=6、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、並びに通常N-ヒドロキシコハク酸イミドなどのアミノ反応性部分およびマレイミドまたはジチオ部分(SH)またはカルボジイミド(COOH)などのもう一つの基特異的な反応性部分を含むヘテロ二価性試薬と共に、(CH2nスペーサー基を有する二機能性のイミドエステルなどのホモ二機能性の架橋剤を使用して、3D高次構造を安定化することができる。加えて、ペプチドは、例えば、CαおよびNα-メチルアミノ酸の組み込み、アミノ酸のCαとCβの間の二重結合の導入、並びにNおよびC末端の間、2つの側鎖の間、もしくは側鎖とNもしくはC末端との間のアミド結合の形成などの共有結合を導入することによる環状ペプチドまたは類似体の形成によって、高次構造的に拘束することができる。
【0083】
「ペプチド擬態」または「擬態」という用語は、Nox4に対していくらかの化学的類似性を有するが、Nox4ポリペプチドに拮抗する物質をいうことが企図される。ペプチド擬態は、タンパク質二次構造のエレメントを模倣するペプチド含有分子であってもよい(Johnson et al., "Peptide Turn Mimetics" in Biotechnology and Pharmacy, Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York, 1993)。ペプチド擬態の使用の背後にある理論的根拠は、タンパク質のペプチド主鎖が、抗体と抗原、酵素と基質、または足場タンパク質などの分子相互作用を促進するような方法で、主にアミノ酸側鎖を正しい位置に置くように存在するということである。ペプチド擬態は、天然の分子と同様の分子相互作用が可能となるようにデザインされ、それ故、さもなければ天然に存在するNox4と共にROSを作成するかもしれない分子に対して競合する。
【0084】
また、本発明の化合物は、単独で標的Nox4をターゲットとするように選択してもよく、またはNox4および1つもしくは複数のその他のNADPHオキシダーゼ成分をターゲッティングするために一つもしくは複数の化合物を使用してもよい。
【0085】
このような試験に使用されるNox4ポリペプチドもしくは断片は、いずれも溶液中で遊離しているか、固体支持体に付着されているか、または細胞表面上にあるか、いずれであってもよい。薬物スクリーニングの1つの方法では、好ましくは競合結合アッセイ法において、組換えポリヌクレオチドで安定に形質転換されてポリペプチドまたは断片を発現する真核生物または原核の宿主細胞を利用する。このような細胞は、生存形態または固定形態のいずれにおいても、標準的な結合アッセイに使用することができる。例えば、Nox4ポリペプチドもしくは断片と試験される薬剤との間の複合体の形成を測定してもよく、またはNox4ポリペプチドもしくは断片と既知のリガンドとの間の複合体の形成が試験される薬剤によって補助され、または妨害される程度を検査してもよい。
【0086】
また、上記方法およびさらなる下記の方法は、スラミン-Nox4相互作用などのNox4阻害剤相互作用のアゴニストを同定するために適用できる。このようなアゴニストは、阻害作用を増強するために、スラミンまたはその他のNox4阻害剤と組み合わせて使用してもよい。これらのアゴニストは、Nox4を阻害する化合物の増強物質として作用する。
【0087】
アンチセンス・ポリヌクレオチド配列は、当業者であれば周知のように、Nox4座位の発現を防止または減少させる際に有用である。例えば、Nox4座位もしくはNox4領域に由来するその他の配列(特に、Nox4座位に隣接するもの)の全てまたは一部を含むポリヌクレオチド・ベクターは、プロモーターの制御下でアンチセンス配向で配置して、細胞に導入してもよい。細胞内でのこのようなアンチセンス構築物の発現は、Nox4の転写および/または翻訳を妨害すると考えられる。さらにまた、RNAi(すなわち、siRNA)を誘導するための同時抑制および機構を使用してもよい。このような技術は、Nox4発現をポジティブに促進する遺伝子を阻害するために有用であろう。または、アンチセンスまたはセンス分子を直接投与してもよい。この後者の態様において、アンチセンスまたはセンス分子は、組成物中に処方し、次いで標的細胞に対して多くの手段によって投与してもよい。
【0088】
アンチセンスおよびセンス分子のバリエーションは、モルフォリンヌクレオチド誘導体およびホスホロジアミデート結合で構成されるオリゴヌクレオチドであるモルホリノの使用を含む(例えば、Summerton and Weller, Antisense and Nucleic Acid Drug Development 7: 187-195, 1997)。このような化合物を胚に注射して、mRNAによる妨害の効果を観察する。
【0089】
一つの態様において、本発明は、Nox4をコードする核酸分子の機能または効果を調整する際に使用するためのオリゴヌクレオチド、すなわち転写または転写後の遺伝子サイレンシングを誘導するオリゴヌクレオチド、および同様の種などの化合物を使用する。これは、Nox4をコードする1つまたは複数の核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供することによって達成される。本明細書で使用されるものとして、「標的核酸」および「Nox4をコードする核酸分子」という用語は、便宜のために、Nox4をコードするDNA、このようなDNAから転写されるRNA(プレmRNAおよびmRNAまたはこれらの一部を誘導する)、またこのようなRNAに由来するcDNAを含むために使用した。本発明の化合物とその標的核酸のハイブリダイゼーションは、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。従って、いくつかの本発明の好ましい態様の実施に関与すると考えられている好ましい機構は、本明細書において、「アンチセンス阻害」と称される。このようなアンチセンス阻害は、典型的には、オリゴヌクレオチド鎖またはセグメントの水素結合に基づいたハイブリダイゼーションに基づいており、その結果少なくとも1つの鎖またはセグメントが切断され、分解され、またはさもなければ動作不能になる。この点に関して、このようなアンチセンス阻害のためには、特定の核酸分子およびこれらの機能をターゲットとすることが目下のところ好ましい。
【0090】
妨害されるDNAの機能は、複製および転写を含むことができる。複製および転写は、例えば内因性細胞鋳型、ベクター、プラスミド構築物、またはその反対からのものであることができる。妨害されるRNAの機能は、タンパク質翻訳の部位へのRNAの転位置、RNA合成の部位から遠く離れた細胞内の部位へのRNAの転位置、RNAからのタンパク質の翻訳、1つまたは複数のRNA種を産生するRNAのスプライシング、およびRNAに関与するか、もしくはRNAによって促進されるであろうRNAを含む触媒活性または複合体形成などの機能を含むことができる。標的核酸機能に対するこのような妨害の1つの好ましい結果は、Nox4遺伝子の発現の調整である。本発明に関連して、「調整」および「発現の調整」は、遺伝子、例えばDNAもしくはRNAをコードする核酸分子の量またはレベルの増大(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。阻害は、たいてい発現の調整の好ましい形態であり、mRNAは、たいてい好ましい標的核酸である。
【0091】
本発明に関連して、「ハイブリダイゼーション」とは、オリゴマー化合物の相補鎖の対形成を意味する。本発明において、対形成の好ましい機構は、水素結合を含み、これは、オリゴマー化合物の鎖の相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(核酸塩基)との間の、ワトソン-クリック、Hoogsteen、または逆Hoogsteen水素結合であってもよい。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対になる相補的な核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは、種々の状況下で生じさせることができる。
【0092】
アンチセンス化合物は、標的核酸に対する化合物の結合が標的核酸の正常な機能を妨害して活性の減少を生じさせるときに、特異的にハイブリダイズしており、特異的な結合が要求される条件下で、すなわちインビボ・アッセイ法または治療的処置の場合の生理学的条件下で、およびインビトロでのアッセイ法の場合にアッセイ法が行われる条件下で、非標的核酸配列に対するアンチセンス化合物の非特異的な結合を回避するために十分な相補性の程度がある。
【0093】
「相補的な」とは、本明細書に使用されるものとして、オリゴマー化合物の2つの核酸塩基間で正確に対形成する能力をいう。例えば、オリゴヌクレオチド(オリゴマー化合物)の特定の位置の核酸塩基が、標的核酸の特定の位置の核酸塩基と水素結合することができ、該標的核酸は、DNA、RNA、またはオリゴヌクレオチド分子である場合、オリゴヌクレオチドと標的核酸の間の水素結合の位置は、相補的な位置であると考えられる。オリゴヌクレオチドおよびさらなるDNA、RNA、またはオリゴヌクレオチド分子は、それぞれの分子において十分な数の相補的な位置が、互いに水素結合することができる核酸塩基によって占められるときは、互いに対して相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズできる」および「相補的」は、オリゴヌクレオチドと標的核酸の間で安定かつ特異的な結合が生じるように、核酸塩基の十分な数の上の十分な程度の正確な対形成または相補性を示すために使用する用語である。
【0094】
従って、「特異的にハイブリダイズする」および「相補性」は、安定かつ特異的な結合がオリゴヌクレオチドと標的核酸との間で生じるように、十分な数の核酸塩基にわたって十分な程度の正確な対形成または相補性を示すために使用される用語である。
【0095】
本発明によれば、化合物は、アンチセンスオリゴマー化合物、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー、プライマー、プローブ、および少なくとも標的核酸の一部にハイブリダイズされるその他のオリゴマー化合物を含む。従って、これらの化合物は、一本鎖、二本鎖、環状、またはヘアピン・オリゴマー化合物の形態で導入されてもよく、内部もしくは末端の膨隆またはループなどの構造エレメントを含んでいてもよい。一旦系に導入されると、本発明の化合物は、1つもしくは複数の酵素または構造タンパク質の作用を引き出して、標的核酸の修飾を生じさせるであろう。このような酵素の1つの非限定の例は、RNAse H(RNA:DNAの二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼ)である。「DNA様」である一本鎖アンチセンス化合物は、RNase Hを誘発することが当該技術分野において知られている。従って、RNAse H活性により、RNA標的の切断が生じ、これによりオリゴヌクレオチドを媒介した遺伝子発現の阻害の効率が非常に増強する。RNase IIIおよびリボヌクレアーゼLファミリーの酵素などの、その他のリボヌクレアーゼについても同様の役割があると推論されている。
【0096】
アンチセンス化合物の好ましい形態は、一本鎖アンチセンス・オリゴヌクレオチドであるが、多くの種において、二重鎖RNA(dsRNA)分子などの二本鎖構築物の導入により、アンチセンスを媒介した遺伝子またはこれに付随した遺伝子産物の機能の強力かつ特異的な減少を誘導することが示された。この現象は、動植物の両方において生じる。
【0097】
本発明に関連して、「オリゴマー化合物」という用語は、複数の単量体単位を含む重合体またはオリゴマーをいう。本発明に関連して、「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)、またはこれらの擬態、キメラ、類似体、および相同体のオリゴマーまたは重合体をいう。この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖、および共有結合のヌクレオシド間(バックボーン)結合で構成されるオリゴヌクレオチド、並びに同様に機能するに天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば細胞取り込みの増強、標的核酸に対する親和性の増強、およびヌクレアーゼの存在下における安定性の増大などの望ましい性質により、天然の形態以上に好ましいことが多い。
【0098】
オリゴヌクレオチドは、本発明の化合物の好ましい形態であるが、本発明は、本明細書に記載されているものなどのオリゴヌクレオチドの類似体および擬態を含む(しかし、これらに限定されない)、化合物のその他のファミリーを同様に包含する。
【0099】
本発明に従った化合物は、好ましくは約8〜約80の核酸塩基(すなわち、約8〜約80の連結されたヌクレオシド)を含む。当業者であれば、本発明は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80の長さの核酸塩基の化合物を含むことを理解するであろう。
【0100】
オープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」は、翻訳開始コドン〜翻訳終止コドンの間の領域をいうことが当該技術分野において既知であり、効率的にターゲットとされるであろう領域である。本発明の前後関係の範囲内で、一領域は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または終止コドンを含む遺伝子内の領域である。
【0101】
他の標的領域には、翻訳開始コドンから5'方向のmRNA部分をいい、したがって5'キャップ部位とmRNA(または、遺伝子上の対応するヌクレオチド)の翻訳開始コドンとの間のヌクレオチドを含むことが当該技術分野において既知である5'非翻訳領域(5'UTR)、並びに翻訳終止コドンから3'方向のmRNA部分をいい、したがって翻訳終止コドンとmRNA(または、遺伝子上の対応するヌクレオチド)の3'末端との間のヌクレオチドを含むことが当該技術分野において既知である3'非翻訳領域(3'UTR)を含む。mRNAの5'キャップ部位は、5'-5'三リン酸結合を介してmRNAの最も5'の残基に接続された、N7-メチル化されたグアノシン残基を含む。mRNAの5'キャップ領域は、5'キャップ構造自体、並びにキャップ部位に隣接した最初の50ヌクレオチドを含むと考えられる。また、5'キャップ領域をターゲットとすることも好ましい。
【0102】
いくつかの真核生物のmRNA転写物は、直接翻訳されるにもかかわらず、多くは、「イントロン」として既知の1つまたは複数の領域を含み、これは、これが翻訳される前に、転写物から切除される。残りの(従って、翻訳された)領域は、「エキソン」として既知であり、共にスプライスされて連続的なmRNA配列を形成する。また、スプライス部位(すなわち、イントロン-エキソン接合部またはエキソン-イントロン接合部)をターゲットとすることは、異常なスプライシングが疾患に関係するか、または特定のスプライス産物の過剰産生が疾患に関係する場合に特に有用であろう。また、再編成または欠失による異常な融合接合も、好ましい標的部位である。異なる遺伝子源に由来する二つ(またはそれ以上)のmRNAのスプライシングプロセスを経て産生されるmRNA転写物は、「融合転写物」として知られている。また、例えばDNAまたはプレmRNAに対してターゲッティングされるアンチセンス化合物を使用して、イントロンを効率的にターゲットとすることができることも既知である。
【0103】
当該技術分野において既知のとおり、ヌクレオシドは、塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部は、通常複素環塩基である。このような複素環塩基のうちの2つの最も一般的な分類は、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、共有結合性にヌクレオシドの糖部分に結合されたリン酸基を更に含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドについては、リン酸基を糖の2'、3'、または5'ヒドロキシル部分のいずれかに結合することができる。オリゴヌクレオチドを形成する際に、リン酸基は、隣接したヌクレオシドを互いに共有結合性に結合して、直鎖状の重合体化合物を形成する。次に、この直鎖状の重合体化合物のそれぞれの末端をさらに接続させて、環状の化合物を形成することができるが、通常、直線的な化合物が好ましい。加えて、直線的な化合物は、内部の核酸塩基に相補性を有していてもよく、従って、完全にまたは部分的に二本鎖化合物を産生するような方法で折りたたまれていてもよい。オリゴヌクレオチド内において、リン酸基は、一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間バックボーンを形成するものをいう。RNAおよびDNAの正常な結合またはバックボーンは、5'に対する3'のホスホジエステル結合である。
【0104】
本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物の具体例は、修飾されたバックボーンまたは非天然のヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義したように、修飾されたバックボーンを有するオリゴヌクレオチドは、バックボーン内にリン原子を保持するもの、およびバックボーン内にリン原子を有しないものを含む。本明細書の目的のために、時に当該技術分野において言及されるとおり、これらのヌクレオシド間バックボーン内にリン原子を有しない修飾されたオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドであると考えることができる。
【0105】
リン原子をその中に含む好ましい修飾されたオリゴヌクレオチドバックボーンは、例えば以下を含む:ホスホロチオエート、キラルなホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、リン酸トリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、並びに3'-アルキレンホスホナート、5'-アルキレンホスホナート、およびキラルなホスホナートを含むその他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3'-アミノホスホラミダイトおよびアミノアルキルホスホラミダイトを含むホスホラミダイト、チオノホスホラミダイト、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、通常の3'-5'結合を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、並びに反転した極性を有するものであって、1つまたは複数のヌクレオチド間の結合が、3'に対する3'、5'に対する5'、または2'に対する2'の結合であるものを含む。また、反転した極性を有するオリゴヌクレオチドは、最も3'のヌクレオチド間結合において単一の3'に対する3'の結合を含み、すなわち脱塩基性(核酸塩基がなくなっているか、またはこれらの代わりにヒドロキシル基を有するもの)である単一の反転したヌクレオシド残基ヌクレオシド残基が含まれる。また、種々の塩、混合塩、および遊離酸の形態が含まれる。
【0106】
上記した好ましい特徴の多くは、センス核酸分子に適している。
【0107】
本発明は、その他の細胞と比較して特定の標的細胞に独特な、NADPHオキシダーゼのその他の部分などのその他の遺伝子に向けられるアンチセンスおよびその他の核酸分子に拡張する。
【0108】
ポリペプチド活性もしくは遺伝子発現もしくはmRNA翻訳を調整するか、または影響を及ぼす、および/または阻害剤とNox4の間の相互作用をアゴナイズ(すなわち、増強)する物質の同定に続いて、物質をさらに調査してもよい。さらにまた、製剤、すなわち医薬、薬学的組成物、もしくは薬物などの製造もしくは製剤、または組成物に製造され、および/または使用されてもよい。これらは、治療または予防方法において個体に投与してもよい。または、これらはパッチ、徐放性のカプセルもしくはインプラントもしくはステント、またはカテーテルなどの血管または組織に挿入されるその他の装置に組み入れられてもよい。
【0109】
従って、本発明は、従ってNox4活性または遺伝子発現のアンタゴニストを含むステント、カテーテル、パッチ、もしくは徐放性製剤を含む薬学的組成物、医薬、薬物、またはその他の組成物に拡張する。好ましくは、医薬または薬物は、細胞不透過性である。または、Nox4に選択的である。加えて、薬学的組成物は、Nox4阻害剤の相互作用のアゴニストをさらに含んでもよく、またはアゴニストは、別々の組成物中にあってもよい。本発明のもう一つの側面は、アテローム性動脈硬化症または内皮機能障害などの全身の脈管構造のイベントまたは症状の治療または予防のためなど、患者に対してこのような組成物を投与することを含む方法を想定する。また、本発明の化合物は、全身の脈管構造のイベントまたは症状の治療または予防のための医薬の製造に使用してもよい。さらにまた、本発明は、本発明の化合物を薬学的に許容される賦形剤、媒体、またはキャリアと、任意にその他の成分と混合することを含む薬学的組成物を作製する方法を想定する。複数の組成物がNox4阻害剤およびNox4-阻害剤の相互作用のアゴニストなどと共に提供される場合、このような組成物は、同時または経時的に与えられてもよい。経時的な投与は、数ナノ秒、数秒、数分、数時間、または数日以内の投与を含む。好ましくは、数秒または数分以内である。
【0110】
このような組成物は、以下などの治療および/または予防に有用であることが提案される:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹、および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス、および歯周病)および腎不全。
【0111】
また、本製剤は、NADPHオキシダーゼの細胞外に露出された部分(例えば、Nox4の全部または一部)のNox4アンタゴニストまたはアンタゴニストと、コレステロール低下薬、降圧薬、抗糖尿病薬、抗酸化物、および抗不整脈薬から選択される1つまたは複数の薬剤を含む多成分の薬学的組成物の形態であってもよい。また、このような製剤は、複数薬学的パックとも称され、個々の活性薬剤は、共に処方されてもよく、または使用の前に混合されてもよい。または、これらは、互いに数秒、数分、数時間、数日、または数週以内に別々に投与してもよい。
【0112】
従って、本発明のもう一つの側面は、哺乳動物における症状を治療または予防するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に対して本明細書に記載されているとおりの化合物またはこれを含む組成物の有効な量を投与することを含むことを想定する。通常、症状は、Nox4を含むNADPHオキシダーゼによるROS産生を含み、またこれによって生じる。
【0113】
好ましくは、哺乳動物は、ヒト、またはマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ゼブラフィッシュ、もしくは両生類などの臨床検査動物である。本明細書において想定される症状は、以下を含む:アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹、および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス、および歯周病)および腎不全。
【0114】
ポリペプチド機能または遺伝子活性のモジュレーターとして同定された物質は、性質上ペプチドまたは非ペプチドであってもよい。非ペプチドの「小分子」は、多くのインビボでの薬学的使用に好ましいことが多い。従って、物質の擬態または模倣も(特に、ペプチドである場合)、薬学的使用のためにデザインされてもよい。
【0115】
既知の薬学的に活性な化合物に対する擬態をデザインすることは、「リード」化合物に基づいて医薬を開発するための既知のアプローチである。これは、活性化合物を合成するのが困難か、もしくは高価な場合、またはこれが特定の投与方法に不適当な場合、例えばペプチドが消化管内のプロテアーゼによって迅速に分解される傾向があるので、これらが経口組成物に不適当な活性薬剤である場合に望ましいであろう。ターゲット特性についてランダムに多数の分子をスクリーニングすることを回避するために、擬態のデザイン、合成、および試験が一般に使用される。
【0116】
所与のターゲット特性を有する化合物から擬態をデザインする際に、一般にいくつかの工程がとられる。第1に、ターゲット特性を決定することにおいて重大な意味を持ち、および/または重要である化合物の特定の部分が決定される。ペプチドの場合、これは、例えばそれぞれの残基を次々に置換することによって系統的にペプチドのアミノ酸残基を変化させることによって行うことができる。ペプチドのアラニン走査は、このようなペプチドのモチーフを洗練するために一般に使用されている。化合物のアクティブ領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア」として既知である。
【0117】
一旦ファルマコフォアが見いだされると、供与源、例えば分光技術、X線回折データ、およびNMRの範囲からのデータを使用して、その構造がその物性(例えば、立体化学、結合、サイズ、および/または電荷)に従ってモデル化される。計算解析、類似性マッピング(これは、原子間の結合以外に、ファルマコフォアの電荷および/または体積をモデル化する)、およびその他の技術をこのモデル化プロセスに使用することができる。
【0118】
このアプローチの変種では、リガンドおよびその結合パートナーの三次元構造がモデル化される。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが結合によって高次構造を変化する場合に特に有用であろうし、擬態のデザインにこれを考慮してモデルすることができる。ヒトおよびマウスNox4でのNADPH結合部位をそれぞれ図3および4に示してある。モデル化は、直線配列または三次元配置と相互作用する阻害剤を作製するために使用することができる。
【0119】
次いで、ファルマコフォアを模倣する化学基をグラフトすることができる鋳型分子が選択される。鋳型分子およびこれにグラフトされる化学基は、擬態を合成するのが容易で、薬理学的に許容される可能性が高く、およびインビボで分解せず、その一方で、リード化合物の生物活性を保持するように都合よく選択することができる。または、擬態がペプチドに基づいている場合は、ペプチドを環状化してその硬性を増大することによってさらなる安定性を達成することができる。次いで、このアプローチによって見いだされた擬態を、これらがターゲット特性を有するかどうかについて、またはこれらがどんな範囲でそれを示すかを調べるためにスクリーニングすることができる。次いで、インビボまたは臨床での試験のための1つもしくは複数の最終的な擬態にたどりつくように、さらなる最適化または修飾を行うことができる。
【0120】
合理的なドラッグデザインの目標は、例えば、ポリペプチドのより活性なもしくは安定な形態であるか、またはインビボでポリペプチドの機能を増強もしくは妨害する医薬を作るために、関心対象の生物学的に活性なポリペプチドの、もしくはこれらが相互作用する小分子(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤、またはエンハンサー)の構造類似体を作製することである。例えば、Hodgson(Bio/Technology 9: 19-21, 1991)を参照されたい。1つのアプローチでは、最初に、X線結晶学によって、コンピューターモデリングによって、または最も典型的には、アプローチの組み合わせによって、関心対象のタンパク質(すなわち、Nox4)の三次元構造を決定する。また、ポリペプチドの構造に関する有用な情報は、相同タンパク質の構造に基づいてモデル化することによって得てもよい。合理的なドラッグデザインの例は、HIVプロテアーゼ阻害剤の開発である(Erickson et al., Science 249: 527-533, 1990)。加えて、Nox4は、アラニン走査によって解析してもよい(Wells, Methods Enzymol. 202: 2699-2705, 1991)。この技術では、アミノ酸残基をAlaによって置換し、ペプチドの活性に対するその効果を決定した。ペプチドの重要な領域を決定するために、各々のペプチドのアミノ酸残基鎖がこのように解析される。
【0121】
機能的アッセイ法によって選択された標的特異的な抗体を単離すること、次いでその結晶構造を解くことができる。原則として、このアプローチにより、その後のドラッグデザインの基礎にすることができるファルマコフォアを得る。機能的な、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプの抗体(抗ids)を作製することによって、タンパク質結晶学を全くバイパスすることができる。鏡像の鏡像であるので、抗idsの結合部位は、本来の受容体の類似体であると思われる。次いで、抗idを使用して、ペプチドの化学的または生物学的に産生されたバンクのバンクからペプチドを同定し、単離することができる。次いで、選択されたペプチドは、ファルマコフォアとして作用すると考えられる。
【0122】
また、同様の方法は、Nox4に対するその他の化合物の阻害作用を増強する化合物を同定するために使用してもよい。また、増強物質は、本明細書において、Nox4阻害剤のアゴニストとも称されるであろう。
【0123】
従って、Nox4またはNox4遺伝子の発現に対して拮抗する活性を有する薬物をデザインしてもよい。
【0124】
本発明によれば、本方法は、また、野生型または変異体Nox4遺伝子機能を細胞に供給することが提供される。これは、VSMC並びにその他の細胞においてROS産生の効果を強調する動物モデルを作製するときに、特に有用である。または、これは、遺伝子治療アプローチの一部であってもよい。Nox4遺伝子または遺伝子の一部は、遺伝子が染色体外のままであるように、ベクター内で細胞に導入してもよい。こうした状況では、遺伝子は、染色体外の位置から細胞によって発現される。遺伝子の一部が導入され、および変異体Nox4対立遺伝子を有する細胞において発現される場合、遺伝子部分は、Nox4タンパク質の一部をコードするはずである。組換えのため、および染色体外の維持のための両方のために、遺伝子を導入するためのベクターは、当該技術分野において既知であり、いずれの適切なベクターを使用してもよい。電気穿孔法、リン酸カルシウム共沈法、およびウイルス形質導入などのDNAを細胞に導入するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0125】
当該技術分野において既知の遺伝子導入系は、遺伝子操作の実施に有用であろう。これらは、ウイルスおよび非ウイルス性の導入法を含む。多くのウイルスが、遺伝子導入ベクターとして、またはパポーバウイルス

を含む、遺伝子導入ベクターを調製するための基礎として、使用されてきた。
【0126】
非ウイルス遺伝子の導入方法は、リン酸カルシウム共沈法を含む化学的技術、機械的技術、例えば微量注入、リポソームを介した膜融合を媒介した導入、および直接のDNA取込み、並びに受容体を媒介したDNAの導入など、当該技術分野において既知である。ウイルスを媒介した遺伝子導入は、リポソームの送達を使用する直接のインビボでの遺伝子導入と組み合わせて、腫瘍細胞(周囲の非分裂細胞にではない)にウイルスベクターを向けることができる。または、レトロウイルスのベクタープロデューサー株の株化細胞を腫瘍に注射することができる。次いで、プロデューサー細胞の注射により、ベクター粒子の連続供与源を提供する。
【0127】
生物学的および物理的な遺伝子導入方法を組み合わせるアプローチでは、いずれのサイズのプラスミドDNAも、アデノウイルスヘキソンタンパク質に特異的なポリリジン複合抗体と組み合わせられ、生じる複合体は、アデノウイルス・ベクターに結合する。次いで、三分子複合体を使用して細胞に感染させる。アデノウイルス・ベクターは、結合されたDNAが損傷を受ける前に、エンドソームの効率的な結合、内部移行、および分解が可能である。アデノウイルスに基づいたベクターの送達のためのその他の技術については、米国特許第5,691,198号を参照されたい。
【0128】
リポソーム/DNA複合体は、インビボ遺伝子導入を直接媒介することができることが示されている。標準的なリポソーム調製では、遺伝子導入法が非特異的であるが、局在性のインビボでの取り込みおよび発現が、腫瘍沈着において、例えば直接のインサイチューでの投与後に報告されている(Nabel, [1992; 前記])。
【0129】
ポリヌクレオチドがセンスもしくはアンチセンス・ポリヌクレオチドまたはリボザイムまたはDNAzymeをコードする場合、発現により、センスもしくはアンチセンスのポリヌクレオチドまたはリボザイムまたはDNAzymeを産生する。従ってこの文脈において、発現は、タンパク質産物が合成されることは必要ではない。発現ベクター内にクローン化されたポリヌクレオチドに加えて、ベクターは、真核細胞において機能的なプロモーターも含む。クローン化されたポリヌクレオチド配列は、このプロモーターの制御下にある。適切な真核生物プロモーターは、上記したものを含む。また、発現ベクターは、選択マーカーおよび本明細書に記載されたその他の配列などのを配列を含んでいてもよい。
【0130】
変異体Nox4対立遺伝子を有するか、または一方もしくは両方の対立遺伝子が欠失された細胞および動物は、ROS産生におけるNox4の効果を研究するためのモデル系として、および/または阻害化合物としての可能性を有する物質の試験に使用することができる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ゼブラフィッシュ、および両生類は、モデル系として特に有用である。特に有用な挿入は、creによって切除することができるNox4遺伝子に隣接するloxP配列である。試験物質を細胞に適用した後に、ROSが産生される能力が決定される。
【0131】
従って、本発明は、Nox4をコードする遺伝子座内において、または隣接した突然変異を提供する。突然変異は、Nox4コード配列またはその5'もしくは3'非翻訳の領域に対する挿入、欠失、置換、または付加であってもよい。
【0132】
本発明の動物モデルは、Nox4の効果を改善または模倣することができる薬剤をスクリーニングするために有用である。一つの態様において、動物モデルは、低い量のNox4を産生する。このような動物は、低いROS産生を示す。
【0133】
本発明のもう一つの側面は、同じ種の非遺伝子改変動物と比較して低い量のNox4を産生する、遺伝子改変動物を提供する。「低い量」についての言及は、基準化された量よりも低い0量または約10%までを含む。
【0134】
本発明のさらに別の態様は、改変された複数(すなわち、2つ以上)の遺伝子を提供する。複数の遺伝子の例は、二重Nox4およびその他のNADPHオキシダーゼ成分を含む。
【0135】
本発明の動物モデルは、魚を含む動物の形態であってもよく、または例えば移植のために胚の形態であってもよい。胚は、好ましくは凍結状態において維持され、任意に使用のための説明書と共に販売されてもよい。
【0136】
また、遺伝子改変動物は、より大量のNox4を産生してもよい。
【0137】
従って、本発明のもう一つの側面は、Nox4をコードする遺伝子配列を過剰発現する遺伝子改変動物に向けられる。
【0138】
遺伝子改変動物は、トランスジェニック動物、または「ノックアウト」もしくは「ノックイン」動物、並びに条件的欠失変異体を含む。さらにまた、同時抑制は、転写後遺伝子サイレンシングを誘導するために使用してもよい。同時抑制は、RNAiの誘導を含む。
【0139】
ツーハイブリッド・スクリーニングは、特にNox4と関係する生化学的または遺伝的経路のその他のメンバーを同定する際に有用である。ツーハイブリッド・スクリーニングには、便利には、酵母およびサッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)を使用する。Nox4相互作用および阻害剤のスクリーニングは、2つの物理的に分離可能な機能的なドメインで構成される転写因子を利用する酵母ツーハイブリッド系を使用して行うことができる。最も一般に使用されているのは、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインからなる酵母GAL4転写活性化因子である。2つの異なるクローニングベクターを使用して、潜在的な結合タンパク質をコードする遺伝子に対してGAL4ドメインの融合物を別々に生じさせる。融合タンパク質を同時発現し、核にターゲットされ、そして相互作用が生じる場合には、リポーター遺伝子(例えばlacZ)の活性化により検出可能な表現型を生じる。この場合は、例えば酵母(S. cerevisiae)を、cDNA GAL4活性化ドメイン融合物を発現するライブラリーまたはベクターと、Nox4-GAL4結合ドメイン融合物を発現するベクターで同時形質転換する。リポーター遺伝子としてlacZが使用される場合、融合タンパク質の同時発現により青い色を生じる。Nox4と相互作用する小分子またはその他の候補化合物は、細胞の色を減少させる。この系は、Nox4機能を阻害し、それ故に細胞死から酵母を保護する小分子をスクリーニングするために、およびROS産生に関与するNox4の残基を決定するために使用することができる。例えば、Munder et al.(Appl. Microbiol. Biotechnol. 52 (3): 311-320, 1999)およびYoung et al., Nat. Biotechnol. 16 (10): 946-950, 1998)によって開示された酵母ツーハイブリッド系の参照がなされてもよい。次いで、この系によってこうして同定される分子が、動物細胞で再テストされる。
【0140】
また、Nox4またはこれらの一部などのNADPHオキシダーゼの細胞外に曝露された部分に対する抗体も本発明によって想定される。このような抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよいが、脱免疫されたか、またはキメラ抗体が特に好ましい。また、抗体は、免疫相互作用分子をいい、組換えおよび合成の形態を含んでいてもよい。
【0141】
従って、本発明は、1匹の動物、または別の動物において実質的に非免疫原性のトリ生物、または同じもしくは異なる種のトリ生物に由来する免疫相互作用分子(例えば、抗体)を提供するための生化学技術の適用をさらに提供する。生化学的プロセスは、本明細書において、「脱免疫化(deimmunization)」と称される。本明細書において「脱免疫化」についての言及は、相補決定要素領域(CDR)移植、免疫相互作用分子のフレームワーク領域に関する「再構築」、および可変(v)領域の突然変異などのプロセスを含み、全てが特定の宿主(例えば、ヒト被験者)における免疫相互作用分子の免疫原性を減少させることを目的とする。この場合は、好ましい免疫相互作用分子は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体などの抗体である。最も好ましい態様では、免疫相互作用分子は、1匹の動物またはトリ生物に由来するモノクローナル抗体であり、別の動物、または同じもしくはヒトなどの(しかし、これらに限定されない)異なる種に由来するトリ生物において減少した免疫原性を示す。
【0142】
従って、本発明の一つの側面は、免疫相互作用分子の変種であって、該変種は、NADPHオキシダーゼ上の細胞外に曝露されたエピトープに対して特異性を有する部分を含み、かつ該部分は、1匹の動物またはトリ生物から得られる免疫相互作用分子に由来し、該変種は、別の動物、または同じもしくは異なる種に由来するトリ生物において減少した免疫原性を示す変種を提供する。
【0143】
上記したように、免疫相互作用分子の好ましい形態は、抗体および特にモノクローナル抗体である。
【0144】
「実質的に非免疫原性の」についての言及は、親抗体、すなわち脱免疫化プロセスに曝露する前の抗体と比較して減少した免疫原性を含む。「免疫原性」という用語は、宿主動物における体液性および/またはT細胞を媒介した反応を引き起こし、誘導し、またはさもなければ促進する能力をいう。特に便利な免疫原性の基準は、抗体の可変(v)領域に由来するアミノ酸配列がMHCクラスII分子と相互作用することにより、T細胞によって援助される体液性の反応を含むT細胞を媒介する反応を刺激し、または促進する能力を含む。
【0145】
「抗体」とは、抗原と結合し、相互作用し、またはさもなければ会合することができる免疫グロブリン・ファミリーのタンパク質を意味する。従って、抗体は、抗原結合性の分子である。「抗体」は、免疫相互作用分子の例であり、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含む。本発明の好ましい免疫相互作用分子は、モノクローナル抗体である。
【0146】
「抗原」という用語は、免疫応答に反応し、および/または誘導することができる物質をいうために、本明細書において最も広義に使用される。「抗原」についての言及には、抗原決定基またはエピトープを含む。Nox4の細胞外に曝露された部分は、好ましい抗原またはエピトープの例である。
【0147】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に対する結合親和性を有する何らかの分子を意味する。この用語は、免疫グロブリン(例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)、免疫グロブリン断片、および抗原結合活性を示す非免疫グロブリン由来タンパク質のフレームワークに及ぶことが理解される。「抗体」および「抗原結合分子」という用語は、これらの分子の脱免疫された形態を含む。
【0148】
「抗原決定基」または「エピトープ」とは、特定の免疫応答が向けられた抗原性分子の一部を意味し、ハプテンを含む。動物において、典型的には抗原は、同時にいくつか、またはさらに多くの抗原決定基が存在する。「ハプテン」は、抗体と特異的に結合することができる物質であるが、キャリアに結合されないかぎり、免疫応答を誘導することができないか、または十分に誘導しない。ハプテンは、典型的には、単一の抗原決定基またはエピトープを含む。
【0149】
上記したように、本発明の好ましい抗体は、ヒトに使用されるマウスのモノクローナル抗体の脱免疫された形態であるが、本発明は、いずれの供与源に由来する、いずれの宿主に使用するための脱免疫された抗体にも拡張される。動物およびトリ供与源および宿主の例は、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ロバ)、臨床検査動物(例えば、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、家禽鳥(例えば、ニワトリ、カモ、ガチョウ、シチメンチョウ)、および猟鳥(例えば、キジ)を含む。
【0150】
例えばKohlerおよびMilstein(Kohler et al., Nature 256: 495-499, 1975、および Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6 (7): 511-519, 1976、 Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 1991-1997 または Toyama et al., Monoclonal Antibody, Experiment Manual, published by Kodansha Scientific, 1987)によって記載されているように標準的なプロトコルを使用して行うことができる。本質的に、動物には、抗体産生細胞、特に抗体産生体細胞(例えば、Bリンパ球)を産生するための標準的な方法によって抗原含有物(例えば、Nox4を含む試料)またはこれらの画分を免疫する。次いで、これらの細胞は、不死化のために免疫化した動物から取り出すことができる。抗原は、最初にキャリアと結合することを必要とするであろう。
【0151】
「キャリア」とは、典型的には、非免疫原性または十分に免疫原性でない物質(例えば、ハプテン)が天然に、または人工的に連結されて免疫原性が増強されている高分子量の何らかの物質を意味する。
【0152】
抗体産生細胞の不死化は、当該技術分野において周知の方法を使用して行ってもよい。例えば、不死化は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)を使用する形質転換法によって達成してもよい(Kozbor et al., Methods in Enzymology 121: 140, 1986)。好ましい態様において、抗体産生細胞は、モノクローナル抗体の産生のために広く使用されている細胞融合法(Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 1991-1997に記載)を使用して不死化される。この方法では、抗体を産生する能力を有する体細胞の抗体産生細胞、特にB細胞を骨髄腫株化細胞と融合させる。これらの体細胞は、初回刺激を受けた動物、好ましくはマウスおよびラットなどの齧歯類動物のリンパ節、脾臓、および末梢血に由来してもよい。本発明のマウスの例示的な態様において、脾細胞が使用される。しかし、その代わりにラット、ウサギ、ヒツジもしくはヤギの細胞、またはその他の動物種に由来する細胞を使用することもできるであろう。
【0153】
分化した骨髄腫株化細胞は、ハイブリドーマ産生融合法に使用するために、リンパ球性腫瘍から開発された(Kohler and Milsten 前記 1976、 Kozbor et al., Methods in Enzymology 121: 140, 1986 および Volk et al., J. Virol. 42(1): 220-227, 1982)。これらの株化細胞は、少なくとも3つの理由のために開発された。第1は、融合されていない、および同様に無制限に自己増殖する骨髄腫細胞からの融合されたハイブリドーマの選択を容易にするためである。通常、これは、ハイブリドーマの増殖を補助する一定の選択培地中でこれらが増殖できなくなる酵素欠損を有する骨髄腫を使用して達成される。第2の理由は、リンパ球性腫瘍細胞が自分自身の抗体を生じる固有の能力によって生じる。ハイブリドーマによる腫瘍細胞抗体の産生を無くすためには、内因性の免疫グロブリン軽鎖または重鎖を産生することができない骨髄腫株化細胞が使用される。これらの株化細胞を選択する第3の理由は、融合に関するこれらの適合性および効率にある。
【0154】
例えば、P3X63-Ag8、P3X63-AG8.653、P3/NS1-Ag4-1(NS-1)、Sp2/0-Agl4、およびS194/5.XXO.Bu.1を含む多くの骨髄腫株化細胞を融合細胞ハイブリッドを作製するために使用してもよい。P3X63-Ag8およびNS-1株化細胞は、KohlerおよびMilstein(Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6 (7): 511-519, 1976)によって記載されている。Shulman et al., Nature 276: 269-270, 1978は、Sp2/0-Agl4骨髄腫ラ株を開発した。S194/5.XXO.Bu.1株は、Trowbridge, J.Exp. Med. 148 (1): 220-227, 1982によって報告された。
【0155】
抗体産生脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッドを作製するための方法は、通常、細胞膜の融合を促進する薬剤(化学的、ウイルス、または電気的)の存在下において、それぞれ10:1の比率(比率は、約20:1〜約1:1で変更してもよいが)に骨髄腫細胞と体細胞を混合することを含む。融合法は(Kohler et al., Nature 256: 495-499, 1975、 Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6 (7): 511-519, 1976、 Gefter et al., Somatic Cell Genet. 3: 231-236, 1977 および Volk et al., J. Virol. 42 (1): 220-227, 1982)に記載されている。これらの研究者によって使用される融合促進剤は、センダイウイルスおよびポリエチレングリコール(PEG)であった。
【0156】
融合法は、非常に低い頻度でしか生存可能なハイブリッドを生じないので(例えば、体細胞の供与源として脾臓が使用されるときは、おおまかに1x105脾細胞毎に1つのハイブリッドだけが得られる)、残りの非融合細胞、特に非融合骨髄腫細胞から融合細胞ハイブリッドを選択する手段を有することが好ましい。また、その他に生じる融合細胞ハイブリッドの中の所望の抗体産生ハイブリドーマを検出する手段も必要である。通常、融合細胞ハイブリッドの選択は、ハイブリドーマの増殖を補助するが、通常は無制限に分裂し続ける非融合骨髄腫細胞の増殖を防げる培地中で細胞を培養することによって達成される。融合に使用される体細胞は、インビトロでの培養では生存が長期間維持されず、それ故に問題を生じさせない。本発明の実施例では、ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼを欠いている(HPRTネガティブ)骨髄腫細胞を使用した。これらの細胞に対する選択は、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)培地中で行われ、その中では、融合細胞ハイブリッドが脾細胞のHPRTポジティブな遺伝子型であるために生存する。また、遺伝子型的にコンピテントなハイブリッドの増殖を補助する培地中で選択することができる異なる遺伝子欠損(薬物感受性、その他)を有する骨髄腫細胞を使用することもできる。
【0157】
融合細胞ハイブリッドを選択的に培養するためには、数週間が必要とされる。この期間の初めに、所望の抗体を産生するハイブリッドを、同定することが必要であり、その結果、これらはその後にクローン化され、および増殖されるであろう。通常、得られたハイブリッドの約10%は、所望の抗体を産生するが、約1〜約30%の範囲であることもまれではない。例えば、Chou et al.,米国特許第6,056,957号に記載されているように、抗体産生ハイブリッドの検出は、酵素結合免疫アッセイ法およびラジオイムノアッセイ法を含むいくつかの標準的なアッセイ法のいずれか1つの方法によって達成することができる。
【0158】
一旦所望の融合細胞ハイブリッドが選択されて、個々の抗体産生株化細胞にクローン化されれば、それぞれの株化細胞を2つの標準的な方法のいずれで増殖させてもよい。ハイブリドーマ細胞の懸濁液は、組織適合性の動物に注射することができる。次いで、注射された動物では、融合細胞ハイブリッドによって産生される特異的なモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生する。高濃度のモノクローナル抗体を提供するために、血清または腹水液などの動物の体液を抜くことができる。または、個々の株化細胞を実験室培養容器中でインビトロで増殖させてもよい。高濃度の単一の特異的なモノクローナル抗体を含む培地をデカンテーション、濾過、または遠心分離によって収集し、その後に精製することができる。
【0159】
株化細胞を、何らかの適切な免疫検出手段によってこれらの特異性について試験して、関心対象の抗原を検出することができる。例えば、株化細胞を多くのウェルに等分してインキュベートすることができ、それぞれのウェルからの上清を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、間接蛍光抗体法等によって解析する。標的抗原を認識することができるが、非標的エピトープを認識しないモノクローナル抗体を産生する株化細胞が同定され、次いでインビトロで直接培養するか、または組織適合性の動物に注射して腫瘍を形成させて、必要とされる抗体を産生し、収集しおよび精製する。
【0160】
従って、本発明は、第1の工程で、細胞外に曝露されているNox4またはこれらのエピトープと特異的に相互作用するモノクローナル抗体を提供する。
【0161】
次いで、モノクローナル抗体は、通常、脱免疫化手段に供される。このようなプロセスにより、本発明に従って調製されたモノクローナル抗体と同じか、または同様の特異性を有するキメラ抗体の調製を含む多くの形態をとる。キメラ抗体は、軽鎖および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学によって、異なる種に属する免疫グロブリンの可変領域および定常領域の遺伝子から構築された抗体である。従って、本発明によれば、一旦所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが得られたら、種間のモノクローナル抗体を産生するために、1つの種の結合領域をもう一つの種の抗体の非結合領域と結合させる技術が使用される(Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443, 1987)。例えば、非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体に由来するCDRをヒト抗体に融合し、これによりマウスの抗体を「ヒト化」することができる(欧州特許公報第0 239 400号, Jones et al., Nature 321: 522-525, 1986, Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536, 1988 および Richmann et al., Nature 332: 323-327, 1988)。この場合、脱免疫化プロセスは、ヒトに特異的である。より詳細には、CDRは、ヒト定常領域の有無にかかわらずヒト抗体可変領域に融合することができる。CDRを提供する非ヒト抗体は、典型的には「ドナー」と称し、フレームワークを提供するヒト抗体は、典型的には「アクセプター」と称する。定常領域は、存在する必要はないが、これらがある場合には、これらは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。それ故、ヒト化抗体の各部は、おそらくCDR以外は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。従って、「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ドナー抗体は、生じるヒト化抗体が、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原と結合すると思われるので、「ヒト化」のプロセスによって、「ヒト化」されるといえる。本明細書において「ヒト化」抗体についての言及は、特定の宿主に、この場合ヒト宿主に対して脱免疫された抗体についての言及を含む。
【0162】
脱免疫された抗体は、実質的に抗原結合またはその他の免疫グロブリン機能に対する効果を有さないさらなる保存的アミノ酸置換を有していてもよいことが理解される。
【0163】
本発明に従って脱免疫された抗体を産生するために使用してもよい例示的な方法は、例えば(Richmann et al., Nature 332: 323-327, 1988、Chou et al. (米国特許第6,056,957号)、Queen et al. (米国特許第6,180,377号)、Morgan et al., (米国特許第6,180,377号)、およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901, 1987)に記載されている。
【0164】
ROSを阻害する際のこれらの治療的な価値に加えて、抗体は、また、細胞外部分を有するNADPHオキシダーゼの存在を決定する際に使用するために、蛍光マーカーなどのリポーター分子でラベルされていてもよい。適切な蛍光マーカーの例は、表5に一覧を示したものを含む。
【0165】
(表5)


1 Ex:ピークの励起波長(nm)
2 Em:ピークの放出波長(nm)
【0166】
本発明の組成物、薬剤、医薬、核酸分子、およびその他のNox4アンタゴニストは、従来の薬学的配合技術に従って調製される薬学的組成物に処方することができる。例えば、Remington' s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing, Company, Easton, PA, U.S.A.)を参照されたい。組成物は、活性薬剤または活性薬剤の薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。これらの組成物は、活性物質のうちの1つに加えて、薬学的に許容される賦形剤、キャリア、緩衝液、安定剤、または当該技術分野において周知その他の材料を含んでもよい。このような材料は、非中毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨害するべきでない。キャリアは、例えば静脈内、経口、クモ膜下、神経弓、または非経口的な投与のために要求される製剤の形態に応じて、多種多様な形態をとってもよい。
【0167】
経口投与のためには、化合物は、カプセル、ピル、タブレット、ロゼンジ、粉末、懸濁液、もしくはエマルジョンなどの固体または液体製剤に処方することができる。経口剤形の組成物を調製する際には、以下のものなどの通常の薬学的媒体のいずれを使用してもよい:例えば経口液状製剤(例えば、懸濁液、エリキシル、および溶液)の場合の水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤、色素、懸濁剤など;または経口固形製剤(例えば粉末、カプセル、およびタブレット)の場合の澱粉、糖、希釈液、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのキャリア。これらの投与の際に容易であるために、タブレットおよびカプセルは、最も有利な経口投薬単位剤形を代表し、この場合には、固体の薬剤担体が明らかに使用される。必要に応じて、タブレットは、標準的な技術によって糖被覆されたか、または腸溶性であってもよい。活性な薬剤は、これを消化管の通過に安定にし、同時に血液脳関門を通過できるようにするためにカプセル化することができる。例えば、国際特許公開番号WO 96/11698を参照されたい。
【0168】
非経口投与のためには、化合物を薬剤担体に溶解して、懸濁液の溶液のいずれかとして投与してもよい。適切なキャリアの例示には、水、塩類溶液、ブドウ糖溶液、フルクトース溶液、エタノール、または動物、植物、もしくは合成起源の油がある。また、キャリアは、その他の成分、例えば防腐剤、懸濁剤、溶解剤、緩衝液などを含んでいてもよい。化合物がクモ膜下腔内に投与されるときには、これらは、脳脊髄液に溶解してもよい。
【0169】
活性薬剤は、好ましくは治療的に有効な量において投与される。投与される実際の量および割合および投与の時間経過は、治療される症状の性質および重篤さに依存する。治療の処方箋、例えば、用量、タイミング、その他の決定は、一般に開業医または専門家の責任の範囲内であり、典型的には、治療される障害、個々の患者の症状、送達の部位、投与の方法、および開業医に既知のその他の要因を考慮する。技術およびプロトコルの例は、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesにおいて見出される。
【0170】
または、抗体または細胞特異的なリガンドまたは特異的な核酸分子などのターゲティングシステムを使用することによって、一定の細胞タイプにより特異的に活性薬剤を送達するために、ターゲッティング療法を使用してもよい。ターゲティングは、多様な理由のために、例えば薬剤が容認できないほど有毒な場合、またはそれがさもなければまた高用量で必要な場合、またはそれがさもなければ標的細胞に入ることができない場合に好ましいであろう。
【0171】
直接これらの薬剤を投与する代わりに、これらは、標的細胞内で、例えば上記したものなどのウイルスベクターで、または米国特許第5,550,050号、並びに国際特許公開番号WO 92/19195、WO 94/25503、WO 95/01203、WO 95/05452、WO 96/02286、WO 96/02646、WO 96/40871、WO 96/40959、およびWO 97/12635に記載されているものなどの細胞に基づいた送達システムで産生することができる。ベクターは、標的細胞にターゲットとすることができる。細胞に基づいた送達システムは、所望の標的部位で患者の体内に移植され、標的薬剤のコード配列を含むようにデザインされる。または、薬剤は、活性化剤が治療される細胞で産生され、またはターゲッティングされることによって活性型へ転換するための前駆体形態で投与することができる。例えば、欧州特許出願第0425731A号および国際出願公開番号WO 90/07936を参照されたい。
【0172】
好ましい態様において、一旦被検者が脈管構造のイベントを経験したなら、脈管構造NADPHオキシダーゼのアンタゴニストは、単独で、または血餅を阻害するか、もしくは溶解する薬剤、または1つもしくは複数のサイトカインなどのその他の治療薬と組み合わせて直ちに投与される。血管疾患および再灌流損傷の治療または予防のための、薬学的キットまたはマルチパート(すなわち、二成分以上)の薬学的製剤が本発明によって想定される。また、このようなNADPHオキシダーゼ阻害剤は、癌を治療する際に、および特に増殖、分化、および/または自己複製の間の癌細胞、並びに幹細胞または前駆細胞のROS産生を防止するためにも有用である。
【0173】
本発明は、哺乳動物または非哺乳動物のイベントもしくは症状の治療または予防の際の医薬の製造におけるNox4アンタゴニスト(または阻害剤)の使用をさらに想定する。
【0174】
また、本発明は、哺乳動物または非哺乳動物の症状もしくはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、ベンズアミドおよびアリールスルホナート、並びに誘導体または類似体の使用を提供する。
【0175】
本発明は、哺乳動物または非哺乳動物の症状もしくはイベントの治療または予防のための医薬の製造におけるスラミンまたはこれらの誘導体もしくは類似体の使用にさらに向けられる。
【0176】
本発明は、特にNox4に向けられるが、本発明は、別のNox化合物などのNox4の相同体もさらに想定する。
【0177】
加えて、Nox4またはその相同体のアンタゴニストが特に好ましいが、本発明は、キラー癌細胞などのROSの促進が望まれる場合には、アゴニストにも及ぶ。
【0178】
また、本発明は、哺乳動物または非哺乳動物の症状もしくはイベントの治療または予防のための医薬の製造におけるtempolの使用を提供する。
【0179】
また、本発明は、哺乳動物または非哺乳動物の症状もしくはイベントの治療または予防のための医薬の製造におけるDPIの使用を提供する。
【0180】
本発明は、以下の非限定の実施例によってさらに記載される。
【0181】
以下の実施例では、血管疾患の発症におけるNox4 NADPHオキシダーゼサブユニットの役割を調査する。実施例では、Nox4含有NADPHオキシダーゼに由来するROSが、再狭窄、高血圧、およびクモ膜下出血などのアテローム性動脈硬化症および血管リモデリングを含む心血管系の多くの疾患の病原の主な誘因であるという仮説を試験する。実施例では、スーパーオキシドを除去する(tempol)か、またはNADPHオキシダーゼからのその形成を特異的にブロックする(DPI、アポシニン、スラミン)ことのいずれかに狙いを定めた薬理学的アプローチを、インビボでNADPHオキシダーゼのNox4サブユニットの発現を直接抑制するための遺伝的ストラテジー(アンチセンス、ターゲッティングされた遺伝子欠失)と組み合わせる。アテローム発生に対するこれらの介入の効果は、アテローム発生の2つの短期モデル:一方は、ウサギにおいて(動脈周囲のカラー)、および他方は、マウスにおいて(頸動脈結紮)、並びにマウスにおける遺伝的高コレステロール血症で誘導されるアテローム性動脈硬化症の長期モデル(アポリポタンパク質E-ノックアウト・マウス)を使用して評価される。また、クモ膜下出血(大槽への血液注射)および高血圧(アンジオテンシンII-注入)の割合のモデルでの研究中も含まれる。これらのモデルは全て当該技術分野において広く使用されている。
【0182】
実施例1
血管リモデリングおよびアテローム発生においてスーパーオキシドを除去する化合物および特異的なNADPHオキシダーゼ阻害剤の効果
【0183】
アテローム発生におけるNADPHオキシダーゼに由来するスーパーオキシドの役割を決定するために、インビボにおいて証明された有効性を有するスーパーオキシドを除去する化合物の効果を、血管疾患のウサギおよびマウスモデルにおけるROSレベルおよび新生内膜形成に対する3つの構造的および機構的に異なったNADPHオキシダーゼ阻害剤と比較する。阻害剤は以下である。
【0184】
Tempol:tempol(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペラジンオキシル)などの窒素酸化物分子は、生物系のスーパーオキシド産生の検出および定量化のためにスピン・トラッピング薬として長く使用されてきた。しかし、最近、これらの化合物は、高血圧[Schnackenberg et al., Hypertension 33. 424-428, 1999; Beswick et al., Hypertension 37: 781-786, 2001]、糖尿病[Nassar et al., Eur. J. Pharmacol. 436: 111-118, 2002]、および虚血-再灌流傷害[Cuzzocrea et al., Shock 14: 150-160, 2000]を含む血管疾患のいくつかの実験モデルにおいて酸化損傷を減少させるスーパーオキシドの強力なインビボ・スカベンジャーとして認識された。tempolは、一部には、スーパーオキシドをスピン・トラッピングし、したがってH2O2およびOHなどのアテローム生成的な下流のROSの形成を除去することによって作用するので、本明細書において、ビタミンE およびフラボノールなどの従来の抗酸化物を超えるアテローム性動脈硬化症の治療のために治療的な利点を有するはずであることが提案される。
【0185】
ジフェニレンヨードニウム(DPI):DPIは、血管NADPHオキシダーゼ依存的なスーパーオキシド産生の確立されたフラビン・アンタゴニストおよび阻害剤である[Paravicini et al. 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記]。DPIは、マウスVSMCにおいて発現されるNox4含有NADPHオキシダーゼの強力な阻害剤である(図5)。重要なことに、DPIがNADPHオキシダーゼを阻害する濃度(IC50、1nM)は、内皮の一酸化窒素シンターゼを阻害するために必要とされるものよりも2桁以上は低い(例えば、IC50、180-300nM [Stuehr et al., Faseb J. 5: 98-103, 1991; Wang et al., Br. J. Pharmacol. 110: 1232-1238, 1993])。従って、動脈周囲のカラー内に局所投与することによって血管NADPHオキシダーゼ活性を阻害するための選択性を達成することができる。
【0186】
アポシニン:アポシニンは、そのサイトゾルのp47phoxサブユニットに結合し、したがって膜結合型のチトクロームレダクターゼ・ドメインとその会合を妨げることによってNADPHオキシダーゼ活性を阻害するメトキシ置換されたカテコールである[Stolk et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 11: 95-102, 1994]。アポシニンは、培養マウスVSMCに発現されるNox4含有NADPHオキシダーゼの活性を阻害することが示された(図5)。同様に、アポシニンは、NAD(P)Hで刺激されるスーパーオキシド産生を減弱し、ヒトおよびラットから単離された血管内におけるNOの生物学的利用能を増大する[Hamilton et al., Hypertension 40: 755-762, 2002]。重要なことに、DOCA塩による高血圧ラットに対する飲料水を経たアポシニンの投与により、これらの動物における大動脈のスーパーオキシド産生および血圧を有意に減少させることを示し、そのインビボ有効性を証明している[Beswick et al., 2001, 前記]。アポシニンが血管リモデリングおよびアテローム性動脈硬化症を阻害するか否かが評価される。
【0187】
スラミン:スラミンおよび関連したスルホン化されたアリール化合物および/または反応性ブルー2およびPPADSなどのベンズアミド誘導体は、細胞不透過性のNADPH類似体である。これらの化合物は、培養マウスVSMCのNox4含有NADPHオキシダーゼの強力な阻害剤である(図2A)。対照的に、スラミンは、食細胞におけるgp91phox依存的なNADPHオキシダーゼ活性を阻害しない(図2B)[Roilides et al., Antimicrob. Agents Chemother. 37: 495-500, 1993; Heyneman, Vet. Res. Commun. 11: 149-157, 1987]。むしろ、これらの細胞は、NADPHオキシダーゼ活性に対してその阻害作用を及ぼすためには、スラミンに対する透過化処理がなされる必要がある[Heyneman, 1987, 前記]。本発明によれば、この選択性は、gp9lphoxのNADPH結合部位が細胞内に位置することとは反対に、Nox4のNADPH結合ドメインが細胞外に位置するという事実に由来することが提唱される。従って、スルホン化されたベンズアミドおよびアリールスルホナート、並びに誘導体または類似体は、選択的に血管NADPHオキシダーゼ活性を阻害する薬物の分類を代表する。
【0188】
実験モデルを以下に記載する。
【0189】
ウサギ動脈周囲のカラー:DPIは、カラーを経た傷害の部位に動脈周囲に送達して[Gaspari et al., In: The Biology of Nitric Oxide, Part 7, Ed. S. Moncada, L. Gustafson, P. Wiklund and E.A. Higgs, Portland Press, London, pp. 72-73, 2000a]、DPIの全身性の副作用を回避して、局部的な濃度がeNOSに対する効果を回避するように厳しく制御されることを確実にする。全ての医薬の有効性を直接比較するために、tempol、アポシニン、およびスラミンもこのように送達する。それぞれのウサギにおいて、1つの動脈は、tempol(0.1または1mM)、DPI(10または100nM)、アポシニン(0.1または1mM)、またはスラミン(10または100μM)のいずれかを受ける。これらの濃度は、インビトロでVSMC NADPHオキシダーゼ活性の阻害にも有効である(図2Aおよび5)。反対側のカラーのある動脈は、適切な媒体を受けて、動物内対照として作用し、および14日にわたって病変を発症させる。
【0190】
マウス頸動脈結紮:12週間目の雄マウスには:tempol(0.1または1mMの飲料水溶液)[Beswick et al., 2001, 前記]、アポシニン(0.15または1.5mMの飲料水溶液)[Beswick et al., 2001, 前記]、スラミン(30または300 mg.kg-1、i.p.)、または適切な媒体のいずれかを受けさせる。処理の1週後、マウスには、一方に頸動脈結紮および反対側の動脈に偽手術を行う。マウスは、さらに4週間適切な処置を受け続けさせる。
【0191】
apoE-/-マウス:離乳直後(すなわち、4週間目)に、マウスをtempol、アポシニン、スラミン、または適切な媒体を受けるよう割り当てる。用量は、上記の頸動脈結紮研究において最も有効であると考えられるものである。全てのマウスは、6ヶ月間高脂肪食餌で維持し、この期間を通じて媒体、アポシニン、またはスラミン処置を続ける。
【0192】
アンジオテンシンIIで誘導される実験的な高血圧:0日に、ラットを簡単に麻酔し(80mg/kgケタミンipプラス10mg/kgキシラジンip)、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、14日につき300mg/kgである。7日に、ラットを再び麻酔し、塩類溶液またはアンジオテンシンIIを含む別のミニポンプを皮下に移植する。アンジオテンシンIIの投与速度は、7日につき5mg/kgである。14日に、それぞれのラットを再び麻酔し、血圧の測定のためにカニューレを大腿動脈に挿入した。アンジオテンシンIIは、対照ラットの平均動脈圧(約60〜80mmHgの)の大幅な増加を生じさせる。
【0193】
クモ膜下出血:0日に、ラットを簡単に麻酔し(ペントバルビタール50mg/kg ip)塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、7日につき300mg/kgである。5日に、ラットを再び麻酔し、0.3mlの血液を大腿動脈から取りのぞき、大槽を介して脳の腹側の表面周辺の脳脊髄液に注射する。いくつかの対照ラットには、動脈血の代わりに塩類溶液を脳脊髄液に注射する。ラットをさらに2日間回復させて、次いで研究のために7日に再び麻酔する。
【0194】
血管リモデリングおよびアテローム性動脈硬化症は、複雑な多要因のプロセスであり、これらの重篤さの定量化には、血管壁の複数の形態学的、生化学的、および分子パラメーターを測定する必要がある。以下のアッセイ法を行った。
【0195】
血管スーパーオキシド・レベルおよび酸化的ストレス:それぞれの薬物の有効性を評価する際の第1の工程は、血管スーパーオキシドのレベルおよび酸化的ストレスに対するその効果を決定することである。それぞれの化合物は、上記のモデルの全てにおいて血管スーパーオキシド・レベルを減少する。さらに、スーパーオキシドの化学量論の除去(tempol)またはその供与源の遮断(NADPHオキシダーゼ阻害剤)により、H2O2およびその誘導体(HOCl-、OH)の形成を除去し、従って血管壁の全体の酸化的ストレスを減少させる。
【0196】
内皮機能障害:これは、アテローム性動脈硬化症の初期の臨床症状であり、内皮依存的な弛緩薬(例えば、アセチルコリン)に応答して動脈が拡張する能力の減少として現れる(Cai and Harrison, Circ. Res. 87: 840-844, 2000]。内皮機能障害の主な原因は、内皮に由来するNOのスーパーオキシドを媒介した不活性化である[Gryglewski et al., 1986, 前記; Cai and Harrison, 2000, 前記; Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記]。これは、血管保護性の(vasoprotective)NOの生物学的利用能を減少させるだけでなく、強力な酸化種のパーオキシナイトライト(ONOO-)の形成を生じさせる。従って、スーパーオキシドを除去することによって、上記の介入により、病気にかかった動脈の内皮機能を回復し(血管反応性研究)、パーオキシナイトライト形成を減少させる(酸化的ストレスの減少によって反映される)。
【0197】
炎症性マーカー:アテローム性動脈硬化症のもう一つの初期の症状は、細胞接着分子-1(ICAM-1)、血管細胞接着分子-1(VCAM-1)、および単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)の血管発現の増大である。これらのタンパク質のアップレギュレーションは、内皮下の空間内への白血球の付着および遊走を支援する。ROS、および特にH2O2は、血管内のICAM-1、VCAM-1およびMCP-1の発現を増強する[Lo et al., 1993, 前記]。加えて、NOは、通常これらの炎症性マーカーの発現を抑制し、したがって血管疾患でのNO生物学的利用能の減少は、これらのアップレギュレーションに寄与する可能性が高い。スーパーオキシドを除去すること、またはその形成をブロックすることのいずれかによるROS/NOバランスの回復により、血管疾患の全てのモデルにおける炎症性マーカーの発現を抑制する(リアルタイムPCR、免疫染色)。
【0198】
VSMC増殖:上記モデルに形成する新生内膜病変は、主にVSMCで構成されており、培地中で増殖し、内弾性膜(IEL)を越えて遊走する。スーパーオキシドおよびH2O2は、強力なVSMC分裂促進因子であり、これらの細胞の遊走を刺激することができる[Griendling and Ushio-Fukai, 1998, 前記]。また、ROSは、IELを分解するマトリックス・メタロプロテイナーゼを活性化し、新生内膜へのVSMCの通過を容易にする[Belkhiri et al., Lab. Invest. 77. 533-539, 1997]。上記の介入の全てが、血管壁の総ROSレベル(H2O2を含む)を阻害するので、これらは、また、VSMCの増殖およびその後の新生内膜内への遊走を減少させる[ブロモデオキシウリジン(BrdU)の核組み込み]。
【0199】
病変範囲:内皮下の空間への白血球およびVSMCの遊走を制限することによって、NADPHオキシダーゼに由来するスーパーオキシドの阻害は、アテローム性動脈硬化症の上記モデルの全てにおいて病変範囲を全体的に減少させる効果を有する。
【0200】
アンジオテンシンIIで誘導される実験的な高血圧:0日に、ラットを簡単に麻酔し(ケタミン80mg/kg ipプラスキシラジン10mg/kg ip)、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、14日につき300mg/kgである。7日に、ラットを再び麻酔し、塩類溶液またはアンジオテンシンIIを含む別のミニポンプを皮下に移植する。アンジオテンシンIIの投与速度は、7日につき5mg/kgである。14日に、それぞれのラットを再び麻酔し、血圧の測定のためにカニューレを大腿動脈に挿入した。アンジオテンシンIIは、対照ラットの平均動脈圧(約60〜80mmHgの)の大幅な増加を生じさせる。
【0201】
クモ膜下出血:0日に、ラットを簡単に麻酔し(ペントバルビタール50mg/kg ip)、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、7日につき300mg/kgである。5日に、ラットを再び麻酔し、0.3mlの血液を大腿動脈から取り出して、大槽を介して脳の腹側の表面周辺の脳脊髄液に注射する。いくつかの対照ラットには、動脈血の代わりに塩類溶液を脳脊髄液に注射する。ラットをさらに2日間回復させて、次いで研究のために7日に再び麻酔する。
【0202】
全体として、上記の計測では、動脈壁からの過剰なスーパーオキシドを除去することが血管リモデリングおよびアテローム性動脈硬化症を減少させることを示す。
【0203】
実施例2
スーパーオキシド産生および新内膜発生に対する、Nox4に対するアンチセンスの作用
【0204】
ホスホロチオネート保護されたアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ラットおよびウサギでのバルーンカテーテル傷害後のVSMC増殖および再狭窄におけるインビボでの多種多様な遺伝子(例えば、c-myb、c-myc、c-fos、c-jun、トランスフォーミング成長因子-β、Ca2+-カルモデュリン依存性プロティンキナーゼ)の役割を証明するために以前に使用されてきた[Simons et al., Nature 359: 67-70, 1992; Bennett et al., J. Clin. Invest. 93: 820-828, 1994; Merrilees et al., J. Vasc. Res. 31: 322-329, 1994; Villa et al., Circ. Res. 76: 505-513, 1995; Herbert et al., J. Cell Physiol. 170: 106-114, 1997]。これらの研究の全てにおいて、アンチセンス・オリゴヌクレオチドをプルロニックゲルを経て動脈の外膜表面に適用した。重要なことに、インビボでの外膜の適用は、24h以内に血管壁の全ての層にわたってアンチセンスの一様な分布を生じる[Merrilees et al., 1994, 前記; Villa et al., 1995, 前記]。さらに、アンチセンス分子は、損傷を受けた動脈における標的遺伝子の発現を著しく減少させ、一方、対照オリゴヌクレオチド配列(すなわち、センス、非センス)は、効果を有さなかった[Bennett et al., 1994, 前記; Merrilees et al., 1994, 前記; Herbert et al., 1997, 前記]。
【0205】
以下の実験プロトコルを使用した。
【0206】
マウス頸動脈結紮:12週間目の雄のマウスに、一方の頸動脈を結紮するための手術を受けさせる。結紮された動脈の外膜の表面には、添加物を含まないか、Nox4アンチセンス、またはミスマッチの対照オリゴヌクレオチドのいずれかを含む0.25%のF-127プルロニックゲルで被覆する。Nox4 mRNA発現に対する3つのアンチセンス濃度(0.3、1、および3mg/mlを最初に検査する)の効果(リアルタイムPCR)。これらの濃度は、インビボでの傷害された動脈における遺伝子発現の阻害に有効なことが以前に示されたアンチセンス濃度の範囲をカバーする[Simons et al., 1992, 前記; Bennett et al., 1994, 前記; Merrilees et al., 1994, 前記; Villa et al., 1995, 前記; Herbert et al., 1997, 前記]。Nox4発現を阻害する際に最も有効であると考えられるアンチセンス濃度をその後の全ての研究に使用する。4週後に、マウスを屠殺し、これらの結紮された頸動脈および偽手術をした頸動脈を最終測定のために取り除く。
【0207】
ウサギの動脈周囲のカラー:ウサギの動脈周囲のカラーによって誘導されるスーパーオキシド産生および病変進展に対するアンチセンスNox4の効果を検査した。これらの研究において、動脈周囲のカラーは、新生内膜病変を誘導する刺激として、および動脈の外膜表面に対するアンチセンスの直接の局所投与のための媒体として、両方に作用する。ウサギNox4に対して有効なアンチセンスを得るために、マウスVSMCに使用されるものと同様の設計戦略を使用する。Nox4アンチセンスを14日間左動脈に送達し、その一方で、反対側の動脈には媒体(塩類溶液またはオリゴフェクトアミン-下記を参照されたい)を受けさせる。アンチセンス分子は、動脈壁の全ての層全体に分配され、血管細胞のサイトゾルおよび核コンパートメントに局在化されるように確立する。これは、本発明者らが培養VSMCにおいて以前に行ったように、FITCラベルしたアンチセンス分子でインビボ処理した後、カラーのある動脈切片を蛍光イメージングすることによって達成される。アンチセンス分子が細胞内に適切に取り込まれていないと思われる場合は、これらをミニポンプに詰める前に、トランスフェクション試薬(オリゴフェクトアミン)と複合体を形成させる。オリゴフェクトアミンは、マウスVSMCのサイトゾルおよび核コンパートメントへのNox4アンチセンスの移行を容易にする。次いで、カラーのある動脈におけるNox4発現を阻害するために必要とされるアンチセンス濃度を評価するために、最適化実験を行う。最初に、インビトロで遺伝子発現を阻害する際に有効なことが示された濃度の範囲をカバーする3つのアンチセンス濃度(0.3μM、1μM、および3μM)の効果を検査する[Drummond, In: Australian Health and Medical Research Congress, Melbourne, Australia, pp 335, 2002; Bengsston et al., In: Australian Health and Medical Research Congress, Melbourne, Australia, p 1203, 2002]。アンチセンス処理したカラーのある動脈におけるNox4 mRNA発現を上流のカラーのない動脈のセグメントのものと、並びに反対側の媒体処理したカラーのある動脈と比較する。次いで、Nox4阻害の効果を最終測定で決定する。オリゴヌクレオチド処理のいずれの効果もアンチセンス特異的であることを確認するために、同一の研究を一方のカラーのある動脈をスクランブルされたオリゴヌクレオチドで処理したウサギで行う。
【0208】
実施例3
マウスの血管リモデリングおよびアテローム性動脈硬化症に対するターゲッティングされたNox4遺伝子欠失の効果 対 gp91phoxの遺伝子欠失の効果
【0209】
p47phoxのターゲッティングされた欠失により、高コレステロール血症のApoE-/-マウスの下行大動脈のアテローム硬化型の病変領域が減少する[Barry-Lane et al., 2001, 前記]。p47phoxは、NADPHオキシダーゼの血管および細胞イソフォームの両方の必須なサブユニットであるので、これらの酵素(およびどのNoxサブユニット)のうちどちらがマウスのアテローム性動脈硬化症の発症に重要かは不明である。従って、頸動脈結紮およびマウスにおけるアテローム性動脈硬化症のApoE-ノックアウト・モデルの両方で、ターゲッティングされたNox4遺伝子欠失の効果を、アテローム発生でのgp91phox遺伝子欠失と比較している。
【0210】
以下のマウス型を使用する。
【0211】
gp91phox-/-:これらのマウスのF1世代を、最初に、129/SvJxC57BL/6マウスの胚幹細胞におけるgp91phox遺伝子のターゲッティングされた欠失によって、続いて相同組換えによって作製した[Pollock et al., Nat. Genet.9: 202-209, 1995]。次いで、マウスを10世代の間、野生型C57BL/6株に対して戻し交配した[Pollock et al., 1995, 前記]。
【0212】
Nox4-/-:ホモ接合性のNox4欠損マウス(Nox4-/-)は、gp91phox遺伝子欠失のために使用したものと同様のプロトコルを使用して商業的に(Ozgene, WA)作製する[Pollock et al., 1995, 前記]。NADPHオキシダーゼ活性を示さないp47phoxノックアウト・マウスが生存可能であることを考慮すると[Barry-Lane et al., 2001, 前記]、Nox4遺伝子の破壊は、胚の生存に影響を及ぼすはずはない。
【0213】
以下の実験プロトコルを使用する。
【0214】
マウス頸動脈結紮:頸動脈結紮は、年齢がマッチした野生型(Nox4-/-およびgp9lphox-/-マウス)で行う。4週後に、マウスを屠殺し、これらの結紮された頸動脈および偽手術をした頸動脈をNox4およびgp91phox mRNA(リアルタイムPCR)並びにタンパク質(ウエスタンブロット・アッセイ法)発現の測定のために除去する。これらの研究は、これらが、適切な遺伝子がサイレントにされたことを確認するだけでなく、遺伝子欠失がその他のNADPHオキシダーゼサブユニットの発現の代償性の増大を引き起こすかどうかについての情報を提供すると考えられるので必須である。最後に、食作用性NADPHオキシダーゼ活性に対する遺伝子欠失の効果を決定するために、それぞれの株から単離された腹腔マクロファージにおいてスーパーオキシド産生を測定する。
【0215】
また、Nox4ノックアウト・マウスおよび頸動脈結紮を使用して、血管リモデリングに対するスラミンのいずれの有益効果も本当に血管Nox4含有NADPHオキシダーゼの選択的な阻害の結果であることを確認する。これらの研究では、研究において最も有効であることが見いだされたスラミンの用量でNox4-/-マウスを処理する。スラミンがNox4を阻害することによって作用する場合、スーパーオキシド産生、内皮機能、およびその他の最終測定に対するこの薬物のさらなる効果は、すでにNox4-/-マウスにおいて見られるもの以上では観察されないはずである。
【0216】
ApoE-/-マウス:Nox4-/-およびgp9lphox-/-マウスは、ホモ接合性のApoE-/-マウスと交差させて2つの二重-ノックアウト株(すなわち、ApoE-/-/Nox4-/-およびApoE-/-/gp91phox-/-)を作製する。これらの実験のためには、交差させていないApoE-/-マウスは、対照群として役立つ。アテローム発生に対するこの薬物のいずれの有益効果もNox4の選択的な阻害の結果であることを確認するために、ApoE-/-/Nox4-/-マウスの追加の群には、スラミンによって処理したものを含めてある。それぞれの株からのマウスには、6月間高脂肪食餌を与え、その後にこれらを屠殺して、Nox4およびgp91phox mRNA(リアルタイムPCR)並びにタンパク質(ウエスタンブロット・アッセイ法)発現の測定のためにこれらの大動脈を取り出す。
【0217】
血管スーパーオキシド産生は、Nox4遺伝子を欠いているマウスにおいて減少されることが予想される。対照的に、gp91phoxの欠失では、血管スーパーオキシド産生に対して効果を有さないはずであるが、食作用性NADPHオキシダーゼ活性を抑制すると考えられる。従って、Nox4欠損動物は、低レベルの血管オキシダントストレスを示し、血管リモデリングおよびアテローム性動脈硬化症の減少を生じるが、gp91phox欠損動物では生じないと考えられる。
【0218】
実施例4
スーパーオキシド産生におけるNox4の役割
本実施例では、刺激されていないマウスVSMCのNADPHオキシダーゼ依存的なスーパーオキシド産生におけるNox4サブユニットの役割を調査する。
【0219】
マウス
13週齢の雄C57BL6/Jマウスを、動物資源センター(Australia)から購入し、正常な食事ダイエットで維持し、使用した。全ての実験について、マウスをヘパリン処置(250IU、i.p.)およびIsoflo吸入麻酔薬(Abbot)によって麻酔した後に、断頭によって屠殺した。
【0220】
VSMC培養
それぞれの培養について、2匹のマウスからの胸大動脈を単離して、付着する脂肪および結合組織を取り除いた後に、消化培地(すなわち、0.5mg/mlのエラスターゼ、1.0mg/mlのコラゲナーゼ、および1.25mg/mlのトリプシンを含むDMEM)中に配置し、37℃で5分間インキュベートした。次いで、血管の外膜の層を微細な鉗子ではがし、消化培地を血管内腔を通して洗浄し、内皮細胞を除去した。次いで、中央の平滑筋細胞の残りのチューブをリングセグメント(2〜3mm)に切断し、500μLの消化培地を含むミクロ遠心管に移した。37℃で90分間インキュベートした後に、P1000のピペット・チップでVSMCを上下にピペット操作して分散させて、熱で不活性化した10% v/v胎児ウシ血清(FBS、CSL)、2mmol/LのL-グルタミン(CSL)、50U/mlペニシリン、および50μg/mlストレプトマイシン(CSL)を補った5mLのDMEMを含む60mm培養皿にまいた。細胞は、37℃で5% v/v CO2の加湿されたインキュベーター内に維持し、1:4の比率で毎週継代した。継代4〜20回の間の細胞を実験に使用した。
【0221】
アンチセンスのデザインおよび合成
6つのアンチセンス配列を、天然のマウスNox4 mRNA(GenBank Accession No. NM_015760)の翻訳開始コドン周辺で種々の部位を補足するように、Gene Runner Software(Hastings Software, Inc.)を使用してデザインした(表6)。これらのアンチセンス分子のうちの1つについては、+13/+33、スクランブルされた、ミスマッチの対照配列もデザインした。スクランブルされた配列は、アンチセンスと同じ塩基組成を含むが、ランダムな順序であり、一方で、ミスマッチ配列は3つの塩基の位置でアンチセンス配列と異なった(表6)。全てのホスホロチオネート化されたオリゴヌクレオチドは、商業的に合成され、ポリアクリルアミドゲルで精製した(Sigma Genosys)。
【0222】
(表6)リアルタイムPCRのためのプライマーおよびプローブ配列、並びに濃度

【0223】
アンチセンス・トランスフェクション
マウスVSMCを96ウェルビュープレート(ViewPlates)(Packard Bioscienc)(スーパーオキシド測定のために)に、または35mmの培養皿(RNA抽出のために)にまばらにまいた。その結果これらは、トランスフェクション24時間後の時点で30〜50%コンフルエントであった。トランスフェクション時には、細胞を無血清かつ無抗生物質のDMEMで洗浄し、次いで、アンチセンス(0〜1000nmol/L)、ミスマッチ(500nmol/L)、またはスクランブルされた(500nmol/L)オリゴヌクレオチドと複合体形成させた8μL/mLのオリゴフェクトアミン・トランスフェクション試薬(Invitrogen Life Technologies)を含む無血清かつ無抗生物質のDMEM中でインキュベートした。37℃で4時間インキュベーション後、同量の10% v/v FBSを含むDMEMを添加し(すなわち、5% v/vの最終FBS濃度を与える)、細胞をRNA抽出の24時間前、またはスーパーオキシド産生をアッセイする72時間前まで37℃でインキュベートした。
【0224】
ルシゲニンで増強した化学発光によって評価した。スーパーオキシド産生に対する薬剤の効果を検査するために、VSMCを96ウェルビュープレートのウェルにまいて、コンフルエンスに増殖させた。スーパーオキシドをアッセイする24時間前に、常用の細胞培地をL-グルタミンおよび抗生物質に加えて減少されたFBS濃度(5% v/v)を含むDMEMに交換した。いくつかの実験では、この培地をNADPHオキシダーゼ阻害剤、アポシニン(10〜1000μmol/L)、または媒体(DMSO 0.1%)でさらに補った。次の日、細胞培地をDETCA(3mmol/L、Cu2+/Zn2+-スーパーオキシドジスムターゼの阻害剤)および1つまたは複数の以下の薬物を含むKrebs-Hepesプレインキュベーション溶液に交換した:NADPH(3〜3000μmol/L;NADPHオキシダーゼの基質);アポシニン(10〜1000μmol/L);DPI(0.03〜1000nmol/L;フラビン酵素の阻害剤)。37℃で45分プレインキュベーションした後、プレインキュベーション溶液をルシゲニン(5μmol/L)を含む200μLのKrebs-HEPESアッセイ法溶液および適切な医薬療法と置換した。1秒あたりのウェルあたりの平均光子発光をトップカウント(TopCount)単一光子カウンター(Packard Bioscience)で20分間にわたってモニターした。
【0225】
細胞生存度
VSMCでスーパーオキシド産生を測定した後、細胞を250μLのKrebs-Hepesで洗浄し、製造業者の説明書に従って、Krebs-Hepesに溶解した100μLの20%CellTiter96(登録商標)アクオス・ワン・ソリューション細胞増殖アッセイ法(AQueous One Solution Cell Proliferation Assay:Promega)中で3時間インキュベートした。細胞生存度は、490nmでの上清の吸光度を測定することによって評価した。
【0226】
RNA抽出
RNAは、製造業者のプロトコルに従ってRNAwiz(Ambion)を使用して培養し、新たに単離したマウスVSMCから、および新たに単離した全大動脈から抽出した。RNA濃度は、260nmでの吸光度を測定することによって分光光度的に決定した。
【0227】
逆転写(RT)反応 RNA(100〜500ng)を製造業者のプロトコルに従ってTaqMan逆転写試薬(Reverse Transcription Reagents)(PE applied Biosystems)を使用して逆転写した。その後のリアルタイムPCRでのゲノムDNA混入の対照として、逆転写酵素以外は全ての試薬を含む対応するRT反応混合物を全てのRNA試料について調製した。
【0228】
リアルタイムPCR
リアルタイムPCRおよびΔΔCt法を前述したように使用して、「参照」試料と比較したNox4およびNox1のmRNA発現を検査した。[Paravicini et al., 2002, 前記; Winer et al., 1999, 前記]。Nox4のためのプライマーおよび5'-FAMラベルした蛍光プローブは、プライマー・エクスプレス・ソフトウェア(PE Biosystems)およびNox4遺伝子のマウス相同体の公開された配列(表7)を使用してデザインした。マウス配列が記載されていなかったNox1については、遺伝子のヒトおよびラット相同体の間で高い相同性の領域を同定して、再びプライマー・エクスプレス・ソフトウェアでのデザインに使用した(表7)。リアルタイムPCRでのプローブの結合は、一塩基のミスマッチも許容しないので、ラベルしたプローブの代わりにSYBR(登録商標)グリーン(PE Biosystems)をNox1 PCR混合物に使用した。18SリボソームRNAをそれぞれの反応のための内部標準として使用し、商業的に入手可能な齧歯類の18Sプライマーおよび5'-VICラベルしたプローブ(PE Biosystems;表7)によって検出した。
【0229】
Nox4は、1xTaqMan(登録商標)を含むPCR混合物(25μLの最終体積)中で18Sと共に二重に増幅した。18SおよびNox4(表7)のための汎用のPCRマスター混合液(PE Biosystems)、cDNA鋳型(5ng)、並びに最適化されたプライマーおよびプローブ濃度。Nox1のためのPCR混合物は、1x SYBR(登録商標)を含んだ。グリーンマスター混合液(PE Biosystems)、cDNA鋳型(20ng)、および最適化されたプライマー濃度(25μLの最終量のもの)。PCRサーマル・サイクルのパラメーターは、50℃で2分、95℃で10分、並びに95℃を30秒および60℃を1分の40サイクルであった。反応を行って、蛍光をABI Prism 7700 シーケンス検出器(Sequence Detector)(PE Biosystems)でモニターした。
【0230】
(表7)Nox4アンチセンス(ミスマッチおよびスクランブルされたオリゴヌクレオチド配列)

【0231】
統計解析
結果は、独立した実験の平均値の平均±標準誤差(SEM)として表してある。スーパーオキシド産生は、細胞生存度に対して規準化した、ウェルあたりの毎秒のカウント数として、および未処置または媒体処理した対照の割合として表してある。mRNAの量は、「参照」試料と比較した倍数変化として表してある。統計解析は、一元反復測定ANOVAに続いて、チューキー全対多重比較法(Tukey all pairwise multiple comparison procedures)によって行った。相違は、P<0.05で統計学的に有意であるとみなした。
【0232】
マウスVSMCにおけるNADPHオキシダーゼ活性
スーパーオキシド産生は、刺激されていないマウス培養VSMCにおいてかろうじて検出可能であった。しかし、NADPH(NADPHオキシダーゼのための好ましい電子基質)とのこれらの細胞のインキュベーションにより、濃度依存的なスーパーオキシド産生の増加を生じさせた(EC50、5.0±0.6μmol/L;図5A)。NADPH駆動スーパーオキシド産生は、フラビン・アンタゴニストおよびNADPHオキシダーゼ阻害剤であると言われているジフェニレンヨードニウムによって、濃度依存的な様式で阻害された(IC50、1±0.4nmol/L;図5B)。NADPHオキシダーゼのアポシニンの構造的に無関係な阻害剤は、45分後にNADPH駆動スーパーオキシド産生に対して効果を有さなかったが、24時間後にこの反応を50%まで阻害した(図5C)。まとめると、これらのデータは、培養マウスVSMCにNADPHオキシダーゼが存在することの強力な機能的証拠を提供する。
【0233】
Nox4は、マウスVSMCに発現される
NADPHオキシダーゼは、培養マウスVSMCに存在することが確立されたので、リアルタイムRT-PCRを使用してNox4の発現をこれらの細胞において検査した。Nox4 mRNAは、培養マウスVSMCからのRNA抽出物において高度に発現されているように見えた(ΔCt=12.3±0.2;図6A)。重要なことに、18Sと比較したこのNox4発現のレベルは、健常な13週齢のマウスから新たに単離された全大動脈(ΔCt=12.2±0.5)およびVSMC(ΔCt=12.4±0.3)両方で観察されたものと同様であった(図6B)。Nox4とは対照的に、Nox1は、培養VSMCまたは新たに単離したVSMCおよび全大動脈のいずれにおいても検出することができなかった。Nox1の発現は、高レベルのNox1を発現することが既知の組織であるマウス結腸から得られるRNAにおいて容易に検出可能だったので、この後者のネガティブな知見は、プライマーが無効であるためではない点に留意されたい。
【0234】
Nox4アンチセンスは、NADPH駆動スーパーオキシド産生を阻害する
マウスVSMCでのNADPHオキシダーゼ活性におけるNox4の役割を直接評価するために、アンチセンス・アプローチを使用した。天然のNox4 mRNAの翻訳開始コドン周辺の種々の部位に結合するようにデザインした6つのホスホロチオネートアンチセンス分子を試験した。スクリーニングした6つのアンチセンス分子の中で、1つの配列(+13/+33)は、NADPH駆動スーパーオキシド産生の有意な45%の減少を生じさせた(n=4)。この効果のさらなる特徴は、+13/+33アンチセンスがNADPH駆動スーパーオキシド産生の時間および濃度依存的な阻害の両方を生じさせることを証明した(図7)。いくらかの阻害が、12時間後に観察されたが、最大の効果は24時間後に、100nMのアンチセンス濃度で見られた。48時間までに、全てのアンチセンス濃度で阻害の程度が著しく減少し、さらに72時間でこれは完全に消えた。
【0235】
上記の研究における+13/+33アンチセンスの非特異的な作用の可能性を除外するために、第2の実験シリーズにおいて、ミスマッチおよびスクランブルされたオリゴヌクレオチド配列でのNADPH駆動スーパーオキシド産生に対して、その効果を比較した。アンチセンスは、NADPH駆動スーパーオキシド産生の有意な41%の減少を再び生じさせたが、ミスマッチもスクランブルされた配列も、何らの効果も有さなかった(図8)。
【0236】
アンチセンスによるNox4 mRNAのダウンレギュレーション
Nox4アンチセンス処理の後に観察されるNADPH駆動スーパーオキシド産生の阻害は、分子レベルで反映されているかどうかを確認するために、リアルタイムPCRを使用してNox4 mRNA発現に対するアンチセンスの効果を検査した。24時間アンチセンスと共にインキュベートした細胞は、Nox4 mRNA発現の65%の減少を示したが、ミスマッチまたはスクランブルされた配列をトランスフェクトした細胞では、効果が観察されなかった(図9)。また、Nox4アンチセンスでは、Nox1のmRNA発現の代償性の増加を生じさせるようには見えなかった。
【0237】
この実施例は、Nox4がVSMCでのスーパーオキシド産生NADPHオキシダーゼ複合体の重要な成分であることの直接の証拠を提供する。Nox4は、新たに単離された培養マウスVSMCにおいて高レベルで発現されることが見いだされ、配列特異的なアンチセンスでのNox4 mRNA発現のダウンレギュレーションは、これらの細胞におけるNADPHオキシダーゼ活性を著しく減少させた。
【0238】
実施例5
動物モデルおよび方法
ウサギ動脈周囲カラーのモデル:このウサギは、12年以上前から動脈疾患のモデルである

。新生内膜肥厚は、くぼみの後に発生し、サイラスティック・カラーは、総頚動脈周辺に配置される。このモデルの利点は、(1)病変形成が数日以内に生じること、および(2)薬物を全身作用を伴わずに血管損傷の部位に局所投与することができることである。新生内膜病変は、48時間以内に内皮のICAM-1、VCAM-1、およびMCP-1発現をアップレギュレートし、続く白血球の浸潤、コレステロールエステルの蓄積、並びにコラーゲンおよびフィブロネクチンの沈着を含む初期のヒト・アテロームの多くの特徴を示す[Kock et al., Arterioscler. Thromb. 12: 1447-1457, 1992; Kockx et al., Arterioscler. Thromb. 13: 1874-1884, 1993]。新生内膜は、主にVSMCを含み、IELを越えて移動する前に培地中で複製する[Kockx et al., 1993, 前記]。加えて、カラーのある動脈は、5-ヒドロキシトリプタミンの収縮薬作用に対する過感受性を含むヒト・アテロームに似た機能的変化[Dusting et al., 1990, 前記; Kockx et al., 1992, 前記]およびアセチルコリンに対する弛緩の障害[Dusting et al., 1990, 前記; Arthur et al., 1994, 前記; De Meyer et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 29(12):: S205-207, 1992; Yin et al., 1998, 前記; Gaspari et al., 2000a, 前記; Gaspari et al., 2000b, 前記; Paravicini et al., 2002, 前記]を被る。重要なことに、本発明者らは、NADPHオキシダーゼ活性が、カラーのある動脈において増大され、これが内皮の機能障害に関与することを示した。
【0239】
マウス頸動脈結紮:これは、広く使われている動脈リモデリングのマウスモデルであり、これにより新生内膜病変が、頸動脈のその二分枝のすぐ近位の完全な結紮によって短期間(週)にわたって誘導される[Kumar and Linder, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17: 2238-2244, 1997]。また、マウスモデルであるので、これは、アテローム発生の特異的な遺伝子の役割を決定することを目的とした研究に受け入れられる。総頚動脈のうちの1つの結紮による血流の停止は、VSMC増殖および結紮の近位にVSMCリッチな新生内膜基部の形成を生じる[Kumar and Linder, 1997, 前記]。初期の局部的な炎症は、血管壁の全体にわたって接着分子の発現増加および白血球の蓄積によって明らかにされる[McPherson et al., Arterioscler. Thromb.Vasc. Biol. 21: 791-796, 2001]。内皮は、傷害の進展を通じて無傷のままであることが十分に確立されているが[Kumar and Linder, 1997, 前記]、内皮の機能またはNADPHオキシダーゼ活性が、このモデルにおいて変更されるどうかは、研究で検査されていない。
【0240】
アポリポタンパク質E欠損マウス:NADPHオキシダーゼは、アテローム硬化型の血管の過剰なスーパーオキシド産生の主要な供与源である[Drummond et al., 2001, 前記; Jiang et al., European Journal of Pharmacology 424: 141-149, 2001]。さらに、これは、極小の脂肪病変があるときでさえも、大動脈の内皮依存的な血管緊張低下の不全に関与する[Jiang et al., 2001, 前記]。病変は、大動脈弓、頚動脈の、鎖骨下の、腸間膜の、腎臓の、および腸骨の動脈の枝分かれ部位に、並びに単球が内皮に付着して内皮下の空間に遊走する5週間目からの冠状動脈血栓および肺動脈に発症する[Breslow, Science 272: 685-688, 1996]。10〜15週には、脂肪線条は、泡沫細胞およびVSMCからなり、IELを越えて新生内膜に遊走する前に中央の層で分かれるものと思われる[Breslow, 1996, 前記]。20週までに、病変は、壊死性の核、並びに弾性繊維およびコラーゲンによって囲まれたVSMCの線維性被膜からなるヒト繊維のプラークと同様になる[Breslow, 1996, 前記]。このモデルの主な利点は、(1)ヒト・アテローム性動脈硬化症の大部分の段階が表されること、(2)アテローム性動脈硬化症を高脂肪食餌によって促進することができること、および(3)大動脈セグメントが、過剰なNADPHオキシダーゼ駆動スーパーオキシドが原因となる役割を果たす内皮細胞性機能障害を示すことである。
【0241】
血管スーパーオキシドおよびROSの発光検出:ルシゲニンおよびルミノールで増強した化学発光を、前述したように血管スーパーオキシド産生および一般的なオキシダントストレスの定量的計測としてそれぞれ使用する[Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記]。ルシゲニンは、血管組織のスーパーオキシドを検出するための実証された技術である[Skatchkov et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 254: 319-324, 1999]。さらに、ニトロブルーテトラゾリウムを使用して、5μMのルシゲニンに曝露されたVSMCから産生されるスーパーオキシド・シグナルは、曝露されていない細胞のものよりも少しも高くない。同様に、ルミノールは、以前に血管パーオキシナイトライトおよびH2O2形成を測定するために使用されており[Laursen et al., Circulation 103: 1282-1288, 2001]、したがって、それ自体が血管オキシダントストレスの便利な指標である。ルシゲニン・アッセイ法に使用するための動脈の環状セグメントは、ジエチルジチオカルバミン酸中で45分間プレインキュベート(DETCA;3mM)して、内因性のCu2+/Zn2+スーパーオキシドジスムターゼを不活性化する。これらのDETCA処理した動脈をNADPHオキシダーゼのための十分な基質有効性を確実にするために、NADPH(100μM)と共にさらにプレインキュベートする。次いで、動脈セグメントは、ルシゲニン(5μM)またはルミノール(100μM)、並びに適切な基質処理を含むOpaque 96ウェルプレートの別々のウェルに移す。1秒あたりのそれぞれのウェルからの光子発光を単一光子カウンター(Single Photon Counter)を使用して測定し、血管サイズの違いを説明するために、乾燥組織重量に対して規準化する。
【0242】
血管スーパーオキシドおよびROSの蛍光検出:以前に記載されているように[Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記; Tarpey and Fridovich, Cir. Res. 89: 224-236, 2001]、ジヒドロエチジウム(DHE)および還元2'-7'-ジクロロフルオレセインジアセタート(DCFH-DA)を使用して、発光結果を確認し、血管スーパーオキシド産生およびオキシダントストレスをそれぞれ局在化させる。血管セグメント(頸動脈および大動脈)をOCTで凍結させ、20μmの切片に切断し、ゼラチン被覆したスライド上にマウントする。切片を10μlのDHE(2μM)またはDCFH-DA(5μM)で処理した後、カバーガラスをして暗がりで45分間37℃でインキュベートする。次いで、切片を励起して(DHEについて568nm;DCFH-DAについて498nm)、および放射光(DHEについて585nm;DCFH-DAについて522nm)を視覚化し、共焦点顕微鏡を使用して撮像する。
【0243】
食作用性NADPHオキシダーゼ活性:マウスには、屠殺の24時間前に、チオグリコラート(1mLの4%のw/v溶液)の腹腔内注射を投与し、腹腔にマクロファージを動員させる。屠殺時に、これらの細胞を洗浄によって集め、ルシゲニンで増強した化学発光(ルシゲニン)によってホルボールエステルで刺激されたスーパーオキシド産生(すなわち、食作用性のNADPHオキシダーゼ活性)を測定する[Kirk et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 20: 1529-1535, 2000]。
【0244】
mRNA発現のリアルタイムPCR測定:リアルタイムPCRおよびΔΔCt法は、前述したように血管組織(頸動脈および大動脈)のmRNA発現を測定するために使用する[Paravicini et al., 2002, 前記; Dusting et al., 1998, 前記; Winer et al., Anal. Biochem. 270: 41-49, 1999]。プライマー並びにNox4、gp91phox、ICAM-1、VCAM-1およびMCP-1のための5'-FAMラベルされた蛍光プローブは、それぞれの遺伝子のウサギおよびマウス相同体の公開されたmRNA配列からプライマー・エクスプレス・ソフトウエア(Primer Express Software)によってデザインした。18s rRNAは、商業的に入手可能な齧歯目の18sプライマーおよび5'-VICラベルしたプローブを使用してそれぞれの反応の内部標準として使用する。Nox4、p91phox、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP-1は、それぞれタックマン・ユニバーサル・PCRマスター・ミックス(Taqman Universal PCR master mix)、cDNAテンプレート、並びに最適化された濃度のプライマーおよびプローブを含むPCR混合物中で18sと共に二重鎖に増幅する。リアルタイムPCRを行って、蛍光をABI Prism 7700 配列検出器でモニターする。
【0245】
ウェスタンブロットアッセイ法:これは、前述したようにウサギおよびマウス動脈において、各々のタンパク質(全て公共に利用できる)に対する一次抗体、西洋わさびペルオキシド結合二次抗体、およびECL検出系を使用して、Nox4、gp91phox、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP-1のタンパク質発現を定量化するために使用される[Sun et al., European Journal of Pharmacology 320: 29-35, 1997]。
【0246】
免疫染色:ICAM-1、VCAM-1、およびMCP-1の局在化および発現は、それぞれマウス・モノクローナル抗ICAM-1(1:200希釈)、抗VCAM-1(1:200希釈)、および抗-MCP-1(1:50希釈)抗体で動脈の新しい凍結切片を免疫染色することによって検査する。ビオチン化したヤギ抗マウス二次抗体(SantaCruz)およびストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシドを、呈色基質としての3,3'-ジアミノベンズアミンと共に、全ての染色を実行するために使用する。
【0247】
VSMC増殖:動物には、安楽死の24時間および6時間前に、2回のBrdUの皮下注射を受けさせる(ウサギ30mg.kg-1 i.p.:マウス0.1mg.kg-1 s.c.)[Kumar and Lindner, 1997, 前記]。動脈は取り出して、OCT中でスナップ凍結させ、ゼラチン被覆したスライド上にマウントするために4μmの切片に切断する。培地および内膜のVSMC増殖の程度は、BrdUに対するマウス・モノクローナル抗体(1:200希釈)で血管を染色することによって決定する[Kumar and Lindner, 1997, 前記]。それぞれの層について、合計の核および染色された核の数を培地および内膜において別々に計数して、BrdUラベリング指標を算出することができる[すなわち、(染色された核/合計の核)x100]。
【0248】
病変サイズは、以下の通りに定量化した。
【0249】
ウサギ頸動脈:1mmの環状セグメントを、全てのカラーのある動脈の中央から単離し、次いで固定して、スライドにマウントし、前述したように新生内膜形成を定量化することができる[内膜:媒体の比率(IMR)として表した][Dusting et al., 1990, 前記; Arthur et al., 1994, 前記; Dusting et al., 1995, 前記; Arthur et al., 1997, 前記; Yin and Dusting, 1997, 前記; Yin et al., 1998, 前記; Gaspari et al., 2000a, 前記; Gaspari et al., 2000b, 前記; Paravicini et al., 2002, 前記]。
【0250】
マウス頸動脈結紮:安楽死の後、マウスを4% v/vパラホルムアルデヒドで灌流固定する。結紮した頸動脈および偽手術をした頸動脈を切除して、エタノール中で浸漬固定し、同じパラフィン・ブロックに埋める。結紮した頸動脈を結紮から始まって大動脈弓の方へ4μmの切片に切断する。規準化された基準点は、結紮が血管を歪めずに、弾力的な薄膜が無傷のままである位置(すなわち、結紮から0.05mm〜0.13mmの間)にセットされる。基準点から0.2、0.3、および0.4mmの横断面のIMRをMCIDを使用して測定する。
【0251】
ApoE-/-マウス:全大動脈を単離して、腹側の壁に沿った切開を経て切り開く[Jiang et al., 2001, 前記]。組織を60% v/vイソプロパノールでリンスして、オイルレッドO(0.5%)で室温で10分間染色する。染色後、組織を60% v/vのイソプロパノールでリンスして、10% v/vの中性ホルマリン緩衝液中に保存する。次いで、大動脈の正面表面を撮像し、病変領域(赤く染色された)をMCID画像解析ソフトウェアを使用して定量化した。
【0252】
インビトロでの血管反応性研究:これは、前述したように、大動脈および頸動脈のリングセグメント(〜3mm)のNOの生物学的利用能を定量化するために使用する[Yin et al., 1998, 前記; Gaspari et al., 2000a, 前記; Gaspari et al., 2000b, 前記; Paravicini et al., 2002, 前記; Drummond et al., Br. J. Pharmacol. 129: 811-819, 2000]。ウサギ頸動脈環を従来の臓器用浴槽(organ bath)に準備して、2つのステンレス鋼線フック(250μm)によって懸濁し、一方を等力トランスデューサー(isometric force transducer)に、および他方をマイクロメートルで調節可能な支持体に接続する。マウス頸動脈および大動脈セグメントを40μmのステンレス鋼線を使用してマルヴェイニー-アルペルン様式のミオグラフ(Mulvany-Halpern style myograph)に懸濁する。全ての血管を20分間平衡化して、最適な静止直径に張力をかけ、等張性の125mMのK+イオン溶液(KPSSmax)で最大に収縮させた。血管緊張低下反応に対するプロスタサイクリンおよびEDHFの潜在的な寄与を除くために(すなわち、NOを媒介した反応を単離するために)、全ての環をインドメタシン(3μM)、カリブドトキシン(10nM)、およびアパミン(100nM)で処理する。次いで、環をU46619で〜50%のKPSSmaxに収縮させ、内皮の血管拡張機能を評価するために、アセチルコリンの濃度を増加させて弛緩させる。ACh反応の相違がNOの生物学的利用能の変化によるものであり、受容体の密度/機能の変化ではないことを確認するために、環を再び収縮させて、Ca2+イオン透過孔(A23187)で2回弛緩する。最後に、環を内皮非依存的弛緩薬(イソプレナリン)で弛緩する。
【0253】
統計解析:ウサギにおいて、カラーのある動脈のエンドポイント計測(薬物および媒体で処理したもの)は、同じ動脈の近位のカラーのない切片での同じ計測と比較して、現されている。これらの計測での特定の薬物、対媒体の効果は、対応のあるスチューデントt検定によって動物内で比較される。異なる薬物の有効性を比較するために、および濃度解析を一元配置ANOVAの後にチューキー・クレイマー検定によって動物全体に行う。同様に、結紮モデルにおいて、結紮した動脈のエンドポイント計測は、反対側の偽操作した動脈の同じ計測と比較して、現されている。これらの計測に対する薬物またはアンチセンスの効果は、一元配置ANOVAの後にチューキー・クレイマー検定によって媒体処理した動物のものに対して比較し戻す。最後に、ApoE-/-マウスでのエンドポイント計測に対する薬物またはターゲッティングされた遺伝子欠失の効果も、一元ANOVAの後にチューキー・クレイマー検定によって動物全体に比較する。P<0.05の値は、有意であるとみなされる。
【0254】
動脈圧の測定:ラットを簡単に麻酔し(ケタミン80mg/kg ipプラスキシラジン10mg/kg ip)、塩類溶液を満たしたカニューレを大腿動脈に挿入する。カニューレは、圧力トランスデューサーおよびチャートレコーダに接続する。動脈圧が安定であることが観察されるときに(5分以内で)平均動脈圧を算出して記録する。
【0255】
アンジオテンシンIIで誘導される実験的な高血圧:0日に、ラットを簡単に麻酔し(ケタミン80mg/kgipプラスキシラジン10mg/kg ip)、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、14日につき300mg/kgである。7日に、ラットを再び麻酔し、塩類溶液またはアンジオテンシンIIを含む別のミニポンプを皮下に移植する。アンジオテンシンIIの投与速度は、7日につき5mg/kgである。14日に、それぞれのラットを再び麻酔し、血圧の測定のためにカニューレを大腿動脈に挿入した。アンジオテンシンIIは、対照ラットの平均動脈圧(約60〜80mmHgの)の大幅な増加を生じさせる。
【0256】
クモ膜下出血:0日に、ラットを簡単に麻酔し(ペントバルビタール50mg/kg ip)塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧ミニポンプを皮下に移植する。スラミンの投与速度は、7日につき300mg/kgである。5日に、ラットを再び麻酔し、0.3mlの血液を大腿動脈から取り出して、大槽を介して脳の腹側の表面周辺の脳脊髄液に注射する。いくつかの対照ラットには、動脈血の代わりに塩類溶液を脳脊髄液に注射する。ラットをさらに2日間回復させて、次いで研究のために7日に再び麻酔する。
【0257】
インビボでの大脳動脈反応の測定:ラットをペンタバルビタール(50mg/kg ip)によって麻酔し、麻酔を補足的なペントバルビタール(時間あたり10〜20mg/kg iv)によって維持する。脳幹腹側の表面上の脳底動脈を頭蓋ウインドウ・アプローチを使用し、外科的に曝露させる。脳底動脈直径をコンピューターによって動作するイメージ・トラッキング装置を使用して連続的に測定する。内皮依存的な血管拡張薬アセチルコリンを3〜5分間で1マイクロモルの安定した濃度で脳底動脈を通じて灌流し、直径の増大を測定する。次いで、アセチルコリンの濃度を同様の方法で10マイクロモルまで、次いで100マイクロモルまで増大し、直径の増大を記録する。最後に、動脈の最大直径能力を100マイクロモルのニトロプルシドナトリウムさらに10マイクロモルのニモジピンの組み合わせに対する反応を測定することによって記録する。次いで、アセチルコリンに対する反応は、この最大反応のパーセントとして表してある。例えば実験的なクモ膜下出血に続き、障害された内皮の機能を、対照動物の反応と比較してアセチルコリンに対してより弱い血管拡張反応によって確認する。
【0258】
実施例6
脂肪を与えたApoE変異体マウスの大動脈におけるアテローム硬化型の病変形成に対する慢性のスラミン治療の阻害効果
12週齢のApoE変異体マウスには、高脂肪食事をさらに4ヶ月間摂取させた。この4ヶ月の間に、マウスには、毎週、塩類溶液またはスラミンの皮下注射を与えた。特に、マウスには、最初に300mg/kgのスラミンの2週毎の注射を投与した。4週後に、25mg/kgの用量のスラミンを投与し、次いで15mg/kgの用量のスラミンをさらに11週間、毎週投与した。治療期間の終わりに、マウスを過剰量の麻酔によって屠殺し、大動脈を除去して、外膜の表面上に付着した脂肪をきれいにし、次いで全長に沿って長軸方向に切断した。アテローム硬化型の病変をオイルレッドOで染色して、血管をホルマリン中で固定した。次いで、大動脈の正面表面を撮影し、病変領域(赤く染色された)を定量化して、総大動脈、胸大動脈、腹大動脈、および大動脈弓の各々について、総管腔表面領域のパーセントとして表した。本知見は、スラミンで処理したマウスからの大動脈が、塩類溶液処理した対照マウスからの血管よりも著しく小さな病変領域(総大動脈、胸大動脈、または腹大動脈とみなされるかどうか)を含んだことを示す。従って、スラミンによるNox4含有NADPHオキシダーゼの慢性阻害は、アテローム硬化型の病変製剤を阻害する。
【0259】
実施例7
クモ膜下出血後のインビボでのラット脳底動脈のアセチルコリンで誘導される拡張物質反応に対する慢性スラミン処理の効果
0日に、ラットを簡単に麻酔して、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧性ミニポンプを皮下に移植した。スラミンの投与速度は、7日につき300mg/kgであった。5日に、ラットを再び麻酔して、0.3mlの血液を大腿動脈から抜いて、大槽を介して脳の腹側表面周辺の脳脊髄液に注射した。数匹のラットでは、動脈血の代わりに塩類溶液を脳脊髄液に注射した。ラットをさらに2日間回復させて、次いで7日目に再び麻酔した。次いで、脳幹腹側の表面上の脳底動脈を頭蓋ウインドウ・アプローチを使用し、外科的に曝露させる。脳底動脈直径をコンピューターによって動作するイメージ・トラッキング装置を使用して連続的に測定する。アセチルコリンを3〜5分間で1マイクロモルの安定した濃度で脳底動脈を通じて灌流し、直径の増大を測定する。次いで、アセチルコリンの濃度を同様の方法で10マイクロモルまで、次いで100マイクロモルまで増大し、直径の増大を記録する。最後に、動脈の最大直径能力を100マイクロモルのニトロプルシドナトリウムさらに10マイクロモルのニモジピンの組み合わせに対する反応を測定することによって記録する。次いで、アセチルコリンに対する反応をこの最大反応のパーセントとして表す。濃度応答曲線をグラフで示して、統計学的に比較した。アセチルコリンに対する反応は、0および5日に塩類溶液のみを受けたラットの反応と比較して、塩類溶液で前処理して、クモ膜下出血に供した動物において実質的に減少していたことが判明した。重要なことに、アセチルコリンに対する反応は、スラミンで前処理した動物ではクモ膜下出血後に減退しなかった。したがって、スラミンによるNox4含有NADPHオキシダーゼの慢性的阻害は、クモ膜下出血後の大脳動脈での内皮機能の障害を防止する。
【0260】
実施例8
クモ膜下出血後のインビトロでのラット脳底動脈によるNADPH誘導スーパーオキシド産生に対する慢性スラミン処理の阻害効果
0日に、ラットを簡単に麻酔して、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧性ミニポンプを皮下に移植した。スラミンの投与速度は、7日につき30または300mg/kgであった。5日に、ラットを再び麻酔して、0.3mlの血液を大腿動脈から抜いて、大槽を介して脳の腹側表面周辺の脳脊髄液に注射した。数匹のラットでは、動脈血の代わりに塩類溶液を脳脊髄液に注射した。ラットをさらに2日間回復させて、次いで7日目に再び麻酔した。
【0261】
脳を取り出して、脳底動脈を単離し、5マイクロモル濃度のルシゲニン、100マイクロモル濃度のNADPH、および3ミリモル濃度のジエチルジチオカルバミン酸と共にインキュベートした。スーパーオキシド産生は、ルシゲニンで増強された化学発光を使用して測定した。塩類溶液含有ミニポンプを移植されたラットでは、脳脊髄液への血液の注射により、脳底動脈からも高いスーパーオキシド産生を生じたことが見いだされた。対照的に、どちらの用量のスラミンで前処理したラットからの脳底動脈によるスーパーオキシド産生も、操作されていない対照ラットで測定されるレベルと異ならなかった。
【0262】
従って、スラミンによるNox4含有NADPH-オキシダーゼの慢性的な阻害は、クモ膜下出血後の大脳動脈による過剰なスーパーオキシド産生を防止する。
【0263】
実施例9
アンジオテンシンIIの注入によって引き起こされる高血圧に対する慢性的スラミン処理の阻害効果
0日に、ラットを簡単に麻酔して、塩類溶液またはスラミンのいずれかを含む浸透圧性ミニポンプを皮下に移植した。スラミンの投与速度は、14日につき300mg/kgであった。7日に、ラットを再び麻酔して、塩類溶液またはアンジオテンシンIIを含むもう一つのミニポンプを皮下に移植した。アンジオテンシンIIの投与速度は、7日につき5mg/kgであった。14日に、それぞれのラットを再び麻酔して、血圧の測定のためにカニューレを大腿動脈に挿入した。アンジオテンシンIIは、塩類溶液で前処理したラットの血圧中の大きな増加を生じさせた。対照的に、アンジオテンシンIIによる血圧中の増加は、スラミンで前処理したラットにおいて約60%まで防げられた。
【0264】
従って、スラミンによるNox4含有NADPH-オキシダーゼの慢性的な阻害は、アンジオテンシンIIによって引き起こされる高血圧を阻害する。
【0265】
実施例10
膜領域および外膜領域の形態の予測
本実施例では、そのアミノ酸配列に基づいてマウスNox4の膜貫通ドメインおよび形態を予測するためにPSORTソフトウェアを利用する(genebankアクセッション番号NP_056575)(http://psort.nibb.ac.jp/)。本実施例では、Nox4のNADPH結合部位が細胞外に位置することを示す。
【0266】
タンパク質局在化シグナルおよび局在化部位(PSORT)ソフトウエアプログラムを使用して、NADPH結合の割れ目を含むgp91phoxおよびNox4のC末端部の形態を予測した(Lambeth et al., Trends Biochem Sci., 25: 459-61, 2000)。NADPHオキシダーゼサブユニットgp91phox(genebankアクセッション番号AAB05997)およびNox4(genebankアクセッション番号NP_056575)のマウス相同体のアミノ酸配列は、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)から得た。
【0267】
Nox4は、膜貫通ドメインであると予測される5つの疎水性部分を有することが見いだされた(表8;図11A)。また、PSORTは、Nox4上にいずれのN末端のシグナルペプチドを検出することもできなかった。そのうえ、第1の膜貫通ドメインのよりポジティブな末端(NまたはC末端)がたいていサイトゾル側にあることを言う「ポジティブ・インサイド・ルール(Positive Inside Rule)」に基づいて(Hartman et al., Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 86; 5786-90, 1989)、Nox4のN末端は細胞内にあるが、C末端部は細胞外にあることが予測される(図11A)。Nox4のNADPH結合部位は、アミノ酸位425〜442、459〜468、515〜534、および541〜552(Lambeth 前記)にあることが予測される。これは第5膜貫通ドメインを越えてC末端部に大部分のNADPH結合部位が配置してあり、したがって、これが細胞外に位置することを示唆する(図11C)。比較のために、本発明者らもまた、マウスgp91phoxの膜トポロジーを解析し、5つの膜貫通ドメインを有することが予測された(表8;図11B)。しかし、Nox4とは異なり、NADPH結合部位を含むgp91phoxのC末端部(アミノ酸位置403〜420、441〜450、505〜514、および531〜5421)は、細胞内にあることが予測される(図11C)。
【0268】
この実施例で概説した実験およびその他の実施例は、Nox4のNADPH結合部位が原形質膜の細胞外面上に位置することの証拠を提供する。PSORTソフトウェアを使用する形態予測では、Nox4のNADPH結合部位が細胞外に位置することを示す。PSORTでは、Nox4が第1膜貫通ドメインを表す切断できないシグナル・アンカー配列を含むことを予測した。「ポジティブ・インサイド・ルール」(Hartmann 前記)に基づいて、そのC末端側よりも正に荷電しているN末端側の第1膜貫通は、細胞内部にあることが予測される。また、PSORTでは、Nox4が合計5膜貫通の内外にまたがる領域を有することが予測されたことを考慮すると、NADPH結合部位を含むC末端は、細胞外に位置すると考えられる。対照的に、第1膜貫通ドメインのC末端側が、N末端側よりも正に荷電されているgp91phoxは、細胞の外側にそのN末端を有することが予測される。従って、予測される5つの膜貫通の内外にまたがる領域については、NADPH結合部位を含むgp91phoxのC末端が細胞内にあるはずである。gp91phoxのための細胞内NADPH結合部位は、なぜスラミンおよび反応性ブルー2が無処理のJ774マウス・マクロファージのNADPHオキシダーゼを阻害する際に効果がなかったかの理由の説明を提供する。
【0269】
(表8)PSORTによるNox4およびgp91phox触媒サブユニットの膜貫通ドメインの予測

【0270】
実施例11
スラミンがマウス血管平滑筋細胞の原形質膜を透過しないことの証明
60mmの直径培養皿において、10% v/v胎児ウシ血清を補ったダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)中で事前にコンフルエンスに培養したマウス血管平滑筋細胞(VSMC)をトリプシン処理して、Thermanox(Reg. Trademark)(Nunc,I1, USA)またはゼラチン被覆したガラス組織培養カバーガラスを含む60mmの培養皿に1:4の比率でプレートにまく。VSMCを3日間培養させる(すなわち、これらが約50%コンフルエントになるまで)。細胞をKrebs-Hepes緩衝液で一度洗浄し、フェノールレッド(DMEM中に存在する)の全ての跡を除き、次いで同じ緩衝液中で37℃において〜2時間インキュベートする。次に、VSMCをスラミン(100μM)で45分間処理し、この濃度およびインキュベーション期間で同様に、VSMCのNADPH駆動スーパーオキシド産生を消失させるためには十分である(例えば、図2Aを参照されたい)。次いで、細胞を含むカバーガラスを培養皿から取り出して、逆転位置に顕微鏡スライド上に配置する。細胞を湿性に保つために、スラミン(100μM)を含むKrebs-Hepesの20μlの液滴をカバーガラスにおく前にスライドに添加する。次いで、スライドをUVレーザーと組み合わせた共焦点顕微鏡、または水銀灯と組み合わせた蛍光顕微鏡のいずれかのステージ上に配置する。スラミンの固有の蛍光性質を使用してVSMC調製物中でのその区分化を視覚化する。スラミンは、波長315または330nmの光によって励起され、発光は、350-450nmの範囲で測定される(Fleck et al., J. Biol. Chem. 278: 47670-77, 2000)。VSMCによるplanar-(Z-)切片を撮影することによって、強度の蛍光が原形質膜周辺で示され、スラミンが細胞外結合部位の、おそらくNox4に結合することを示している。それぞれの細胞のまわりの「鈍い白熱光」(すなわち、浴溶液中のスラミン)は、細胞外位置を表す。対照的に、「鈍い白熱光」、および強度の蛍光の何らかのスポットの両方ともを欠いた細胞の細胞内コンパートメントは、スラミンが十分な細胞内透過を達成せずに、いずれの細胞内結合部位とも有意な相互作用をしていないことを示す。
【0271】
当業者であれば、本明細書において記載されている本発明が具体的に記載されているもの以外のバリエーションおよび修飾にも受け入れられることを認識するであろう。本発明は、全てのこのようなバリエーションおよび修飾を含むことが理解されるはずである。また、本発明は、本明細書で言及し、もしくは示した工程、特徴、組成物、および化合物の全てを個々に、またはひとまとめにして、および該工程または特徴のいずれか2つ以上の組み合わせのいずれかおよび全てを含む。
【0272】
参考文献









【図面の簡単な説明】
【0273】
【図1】スラミンの化学構造およびスラミン類似体の構造的な特徴の図表の表示である[Jentsch et al., J. Gen. Virol 68: 2183-2192, 1987;米国特許第5,173,509号]。
【図2】Nox4含有血管NADPH-オキシダーゼの選択的阻害剤としてのスラミンの効果を示すグラフ図である。スラミン(≦100μM)は、完全にはマウス血管平滑筋細胞(VSMC,a)および内皮のNox4含有NADPHオキシダーゼの100μM NADPHで駆動される活性を阻害するが、マウス・マクロファージ細胞株J774(b)(*P<0.05対、対照)では、gp91phox含有NADPHオキシダーゼに対してほとんど効果を有さない。
【図3】ヒトNox4のmRNAおよび対応するアミノ酸配列の表示である。強調された領域は、推定上のスラミン結合部位[http://www.biochem.emory.edu/labs/dlambe/noxfamilypage.html#noxfamily]を構成するアミノ酸をコードし、または含み;下線を引いた配列は、予測される細胞外C末端ドメインをコードし、または含む。
【図4】マウスNox4のmRNAおよび対応するアミノ酸配列の表示である。強調された領域は、推定上のスラミン結合部位[http://www.biochem.emory.edu/labs/dlambe/noxfamilypage.html#noxfamily]を構成するアミノ酸をコードし、または含み;下線を引いた配列は、予測される細胞外C末端ドメインをコードし、または含む。
【図5】図5A-Cは、培養マウスVSMCのNADPH依存的なスーパーオキシド産生の特性を示すグラフ図である。(A)では、スーパーオキシド産生を、NADPHの濃度の増加と共に45分のインキュベーション後に測定した。(B)では、VSMCを、単独または媒体の存在下(DMSO 0.1%)もしくはDPIの濃度を増大して、100μM NADPHと共に45分間インキュベートした。(C)では、VSMCを5% v/v FBSを含むDMEM溶液中で、媒体(DMSO 0.1%)またはアポシニン濃度を増大して24時間インキュベートした。次いで、細胞を媒体またはアポシニンの非存在下または存在下において100μM NADPHと共に45分間処理した。全ての実験において、スーパーオキシドは、5μmol/Lルシゲニンで増強した化学発光によって測定した。値(4〜8実験からの平均±SEM)は、生細胞あたりの毎秒のカウント数として(A)、またはNADPH(B&C)単独で処理した細胞で得られた生細胞あたりの毎秒のカウント数の割合として現してある。*P <0.05 対 媒体。
【図6】図6Aおよび6Bは、培養マウスVSMCのNox4 mRNA発現を示すグラフ図である。総RNA(培養マウスVSMCから、または新たに単離したマウスVSMCおよび全大動脈から抽出した)を逆転写し、次いで5ngのcDNAをNox4の発現を検査するためのリアルタイムPCRに使用した。(A)では、上部パネルは、単一のVSMC培養で測定した(注:反応は三回行った)、FAM(Nox4)依存的な蛍光強度 対 PCRサイクル数の代表的なトレースである。下部パネルは、同じ反応における、VIC(18S)依存的な蛍光 対 PCRサイクル数を示す。また、ゲノムDNA混入の対照として、逆転写(-RT)されていない同じRNA試料を鋳型として使用してリアルタイムPCRを行った。(B)培養VSMC対新たに単離したVSMCおよび全大動脈の「参照」試料と比較したNox4発現のグループ化のデータを示す。値は、4〜8実験の平均±SEMである。18S rRNAと比較したNox4の発現を検査するために、5ngのcDNAをそれぞれのリアルタイムPCR反応に使用した。
【図7】培養マウスVSMCのNADPHで駆動されるスーパーオキシド産生に対するNox4アンチセンスの時間および濃度依存的な効果を示す最適化実験を示すグラフ図である。VSMCを、Nox4アンチセンス(配列+13/+33)の濃度を増加させて最高72時間インキュベートした。次いで、細胞をNADPH(100μmol/L)と共に45分間インキュベートし、スーパーオキシドを5μmol/Lルシゲニンで増強した化学発光を使用してアッセイした。値(4実験からの平均±SEM)は、生細胞あたりの毎秒のカウント数を、トランスフェクション試薬単独で処理した細胞で得られたものと同じ値の割合として基準化したものである。
【図8】培養マウスVSMCのNADPHで駆動されるスーパーオキシド産生に対する+13/+33のNox4アンチセンス配列の特異的なアンチセンス効果を示すグラフ図である。VSMCをトランスフェクション試薬単独(8μL/mL;白バー)、または500nmol/Lアンチセンス(黒バー)、ミスマッチ(斜線バー)、もしくはスクランブルされたオリゴヌクレオチド(垂直線)の存在下において、24時間インキュベートした後、NADPH(100μmol/L)で45分間処理した。次いで、スーパーオキシド産生を5μmol/Lルシゲニンで増強された化学発光を使用してアッセイした。値(8回の別々の実験からの平均±SEM)は、生細胞あたりの毎秒のカウント数を、未処置の細胞で得られたものと同じ値の割合として基準化したものである。*P<0.05、***P<0.001。
【図9】培養マウスVSMCのNox4 mRNA発現に対する+13/+33のNox4アンチセンス配列の特異的なアンチセンス効果を示すグラフ図である。VSMCをトランスフェクション試薬単独(8μL/mL;白バー)、または500nmol/Lアンチセンス(黒バー)、ミスマッチ(斜線バー)、もしくはスクランブルされたオリゴヌクレオチド(垂直線)の存在下において、24時間インキュベートした。次いで、RNAを抽出してcDNAに逆転写し、その5ngをNox4発現を測定するためのその後のリアルタイムPCRの鋳型として使用した。Nox4発現は、それぞれの試料(ΔCt)の18Sの発現に対して規準化した。次いで、それぞれの試料で得られたΔCt値を、「参照」試料(ΔΔCt)で得られたΔCtを減算することによってさらに規準化し、この値を最終的に式2-ΔΔCtに使用した。値(平均±SEM)は、7回の別々の実験からのものである。***P<0.001。
【図10】図10Aおよび10Bは、マウス血管平滑筋細胞におけるNADPHで刺激したスーパーオキシド産生に対する、反応性ブルー2およびPPADsの効果を示すグラフ図である。細胞を、単独または反応性ブルー2(A)もしくはPPADS(B)の濃度を増大させて存在させ、100μM NADPHと共に45分間インキュベートした。次いで、スーパーオキシド産生を5μMルシゲニンで増強された化学発光によって測定した。値(4〜6回の実験からの平均±SEM)は、未処置の細胞で得られたカウント/秒/生細胞の割合として現してある。
【図11】(A)Nox4および(B)gp9lphoxの膜貫通ドメインおよび形態のPSORT予測結果を示す。(C)Nox4およびgp91phoxの予測されるモデルを示す模式図。NADPH結合部位(白バー)は、主にNox4については細胞外にあるが、gp91phoxについては細胞内にあることに留意。(A)の左手パネルは膜トポロジーの概要を示し、一方、右手のパネルは、疎水性プロットを示す(膜ドメインは、四角で囲った)。
【図12】アテローム硬化型の病変形成に対するスラミンの効果を示すグラフ図である。12週目からApoE-/-マウスに対してスラミンを長期にわたって投与(4月間で週あたり15mg/kg、n=5)し、高脂肪食餌を与えると、全大動脈にわたって(a)、並びに特に胸および腹部大動脈セグメント(b)において、媒体(塩類)処理したマウス(n=6)よりも小さな病変領域を生じる。大動脈弓(b)の病変サイズに対しては効果がなかった。(*P<0.05対媒体処理)。
【図13】クモ膜下出血(SAH)の後の、大脳動脈NADPH-オキシダーゼ活性の増加に対するスラミンの効果を示すグラフ図である。スラミンの長期にわたる投与は(7日にわたって30〜300mg/kg)、対照スプレーグ-ドーリー・ラット(CON、n=17対SUR、n=5)から単離した脳底動脈による、NADPH(100μM)で駆動されるスーパーオキシド産生に対して効果を有さない。対照的に、SAHに供したラットでは、インビボでのスラミン処理により、SAH(SAH、n=9対SAH + SUR、n=13)の2日後にインビトロで観察されるスーパーオキシド産生の増加を防止する。(*P<0.05対他の全ての群)。
【図14】クモ膜下出血(SAH)の後、インビボでの大脳動脈の内皮依存的な拡張の障害に対するスラミンの効果を示すグラフ図である。通常対照ラットではアセチルコリン(CON、n=7)に応答して生じる、インビボでのラット脳底動脈の直径の濃度依存的な増大は、SAH(SAH、n=8)の2日後にラットにおいて著しく障害される。対照的に、スラミンの長期にわたる投与では(7日にわたって300mg/kg s.c.)、SAH(SAH + SUR(n=8))の後のインビボでのアセチルコリンへの反応の任意の有意な減少を防止する(*P<0.05対SAH)。
【図15】アンジオテンシンIIで誘導される高血圧に対するスラミンの効果を示すグラフ図である。スラミン(2週間で週あたり150mg/kg s.c.)の長期的投与では、ケタミン-キシラジン麻酔法(CON、n=4対SUR、n=4)下で測定される対照ラットの平均動脈血圧に対して効果を有さなかった。アンジオテンシンII単独の長期的投与では(1週にわたって5mg/kg s.c.)、顕著な高血圧を生じさせたが(Ang II(n=7);*P<0.05対CON)、アンジオテンシン投与の1週前、更に1週間のスラミンでの長期的治療では、よりわずかな動脈圧の増大を生じた(Ang II + SUR(n=8);*P<0.05対Ang II)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の細胞のNADPHオキシダーゼ活性を阻害する単離された化合物であって、該NADPHオキシダーゼが、細胞外NADPH結合ドメインを含む化合物。
【請求項2】
化合物がスーパーオキシド、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、および/またはヒドロキシルラジカルの生成を阻害するか、または減少させる、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物がNADPHオキシダーゼの細胞外に曝露されたNADPH結合βサブユニットと相互作用するか、または結合する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
NADPH結合βサブユニットがNox4である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Nox4の全てまたは一部が細胞膜の外側に存在する、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
細胞が平滑筋を含む脈管構造、内皮細胞を含む脈管構造、外膜線維芽細胞を含む脈管構造および非脈管構造系の細胞から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
化合物がベンズアミドまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項8】
化合物がアリールスルホナートまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項9】
アリールスルホナートまたは誘導体もしくは類似体が、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
スラミンの誘導体が図1に開示された誘導体から選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
化合物がジフェニレンヨードニウム(DPI)または4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニキシル(tempol)または誘導体もしくは類似体もしくは相同体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項12】
化合物がアポシニン、反応性ブルー2(Reactive blue-2)、もしくはPPADS、またはこれらの類似体もしくは誘導体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項13】
化合物がスーパーオキシド・スカベンジャーである、請求項1または4記載の化合物。
【請求項14】
化合物が、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID N0:6もしくはSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID N0:6もしくはSEQ ID NO:8と少なくとも約60%の同一性を有するアミノ酸配列と結合する、請求項1または4記載の化合物。
【請求項15】
化合物が、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、非タンパク質性化学分子、または合成分子である、請求項1または14記載の化合物。
【請求項16】
化合物が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID N0:3もしくはSEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:7に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、またはこれらの相補的な形態に対して少なくとも約60%の同一性を有するヌクレオチド配列、または低いストリンジェンシーの条件下でSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID N0:3もしくはSEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:7またはこれらの相補的な形態とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列と結合する、請求項1または14の化合物。
【請求項17】
化合物が、ヌクレオチドのアンチセンス分子またはその化学的に修飾された形態もしくは類似体である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
化合物が、ヌクレオチドのセンス分子またはその化学的に修飾された形態もしくは類似体である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物と、1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリア、希釈液、および/または賦形剤とを含む組成物。
【請求項20】
哺乳動物の症状またはイベントの治療または予防のための方法であって、該方法が、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物または請求項19記載の組成物の有効な量を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物が臨床検査動物(laboratory test animal)である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
症状またはイベントが、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス(oestoporasis)、および歯周病)および腎不全を含む、請求項20または21または22記載の方法。
【請求項24】
癌がABL1プロトオンコジーン、AIDSに関連した癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、血管拡張性失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、幼児期脳腫瘍、小児癌、小児期白血病、幼児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結直腸癌、皮膚のT細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮体癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、外-肝臓胆管癌(Extra- Hepatic Bile Duct Cancer)、目癌、目:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃(gastric)癌、胃腸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞性癌、遺伝性の乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス-細胞-組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リ-フラウメニ症候群、唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳房癌、腎臓の悪性棒状体腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔(mouth)癌、複合内分泌腺新生物、菌状息肉腫、骨髄異形性症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道(oesophageal)癌、口腔(oral cavity)癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵嚢癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムント-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、有棘細胞癌腫(皮膚)、胃(stomach)癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎臓-骨盤-/-輸尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、尿栓球素(Uroplakins)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ヴァルデンストレーム-マクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
全身性の脈管構造の症状またはイベントが、アテローム性動脈硬化症または内皮機能障害である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
投与される化合物の量が、VSMCおよび/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系からのスーパーオキシドおよび/または下流のROSの形成を阻害または減少させるために有効である、請求項20記載の方法。
【請求項27】
投与される化合物の量が、VSMCおよび/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系において、またはこれらによって、スーパーオキシド、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、および/またはヒドロキシルラジカルの形成を阻害または減少させるために有効である、請求項20記載の方法。
【請求項28】
化合物が、核酸分子またはその化学的に修飾されたか、もしくは類似体の形態である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
化合物が、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項20記載の方法。
【請求項30】
化合物が、tempolもしくはDPIまたはこれらの誘導体もしくは類似体である、請求項20記載の方法。
【請求項31】
化合物が、反応性ブルー2、もしくはPPADS、またはこれらの類似体もしくは誘導体である、請求項20記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、ベンズアミドおよび/またはアリールスルホナート並びに誘導体または類似体の使用。
【請求項33】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、Nox4阻害剤の使用であって、Nox4の全てまたは一部が細胞外に曝露される使用。
【請求項34】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項35】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、tempolの使用。
【請求項36】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、DPIの使用。
【請求項37】
Nox4をコードする遺伝子座内に、または隣接して突然変異を含む非ヒト動物モデル。
【請求項38】
突然変異が、Nox4コード配列またはその5'もしくは3'非翻訳領域に対する挿入、欠失、置換、または付加である、請求項37記載の動物モデル。
【請求項39】
突然変異がNox4遺伝子に隣接するloxP挿入である、請求項37記載の動物モデル。
【請求項40】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物を含む第1の部分、または哺乳動物または非哺乳動物の症状またはイベントの症状または効果を改善する際に有用な1つもしくは複数の治療薬を含む少なくとも第2またはそれ以上のパートを含む複数パートの薬学的パック。
【請求項41】
Nox4阻害剤の相互作用のアゴニストを含むパートをさらに含む、請求項40記載の複数パートの薬学的パック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の細胞のNADPHオキシダーゼ活性を阻害する単離された細胞不透過性の化合物であって、該NADPHオキシダーゼが、細胞外NADPH結合ドメインを含む化合物。
【請求項2】
化合物がスーパーオキシド、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、および/またはヒドロキシルラジカルの生成を阻害するか、または減少させる、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物がNADPHオキシダーゼの細胞外に曝露されたNADPH結合βサブユニットと相互作用するか、または結合する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
NADPH結合βサブユニットがNox4である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Nox4の全てまたは一部が細胞膜の外側に存在する、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
細胞が平滑筋を含む脈管構造、内皮細胞を含む脈管構造、外膜線維芽細胞を含む脈管構造および非脈管構造系の細胞から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
化合物がベンズアミドまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項8】
化合物がアリールスルホナートまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項9】
アリールスルホナートまたは誘導体もしくは類似体が、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
スラミンの誘導体が図1に開示された誘導体から選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
化合物がジフェニレンヨードニウム(DPI)または4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニキシル(tempol)または誘導体もしくは類似体もしくは相同体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項12】
化合物がアポシニン、反応性ブルー2(Reactive blue-2)、もしくはPPADS、またはこれらの類似体もしくは誘導体である、請求項1または4記載の化合物。
【請求項13】
化合物がスーパーオキシド・スカベンジャーである、請求項1または4記載の化合物。
【請求項14】
化合物が、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID N0:6もしくはSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:4もしくはSEQ ID N0:6もしくはSEQ ID NO:8と少なくとも約60%の同一性を有するアミノ酸配列と結合する、請求項1または4記載の化合物。
【請求項15】
化合物が、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、非タンパク質性化学分子、または合成分子である、請求項1または14記載の化合物。
【請求項16】
化合物が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID N0:3もしくはSEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:7に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、またはこれらの相補的な形態に対して少なくとも約60%の同一性を有するヌクレオチド配列、または低いストリンジェンシーの条件下でSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID N0:3もしくはSEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:7またはこれらの相補的な形態とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列と結合する、請求項1または14の化合物。
【請求項17】
化合物が、ヌクレオチドのアンチセンス分子またはその化学的に修飾された形態もしくは類似体である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
化合物が、ヌクレオチドのセンス分子またはその化学的に修飾された形態もしくは類似体である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物と、1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリア、希釈液、および/または賦形剤とを含む組成物。
【請求項20】
哺乳動物の症状またはイベントの治療または予防のための方法であって、該方法が、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物または請求項19記載の組成物の有効な量を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物が臨床検査動物(laboratory test animal)である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
症状またはイベントが、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、I型およびII型糖尿病の心血管合併症、内膜の過形成、心冠疾患、大脳、冠状動脈もしくは動脈の血管攣縮、内皮の機能障害、鬱血性心不全を含む心不全、敗血症、末梢血管疾患、再狭窄および血管形成術後の再狭窄、脳卒中、臓器移植後の血管合併症、ウイルスおよび細菌感染症によって生じる心血管合併症、並びに以下のものを含む別の症状に非依存的、または二次的であろう何らかの症状:心筋梗塞、高血圧、アテローム硬化型プラークの形成、血小板凝集、アンギナ、動脈瘤、一過性脳虚血発作、異常な酸素の流れおよび/または送達、萎縮または器官損傷、肺塞栓、内皮機能障害を含む血栓性もしくは全身性の動脈または静脈の症状、深部静脈血栓または循環系の血管に対する損傷またはステントの失敗またはステント、ペースメーカー、もしくはその他の人工器官によって生じる外傷を含む血栓性のイベント、並びに血流および酸素送達の回復による虚血後に引き起こされる任意の傷害を含む再灌流障害、壊疽(癌および/または異常な腫瘍)、幹細胞または前駆細胞の増殖、呼吸器疾患(例えば、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、および成人呼吸窮迫症候群)、皮膚病(乾癬、湿疹および皮膚炎)、および骨代謝の種々の障害(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、エストポラシス(oestoporasis)、および歯周病)および腎不全を含む、請求項20または21または22記載の方法。
【請求項24】
癌がABL1プロトオンコジーン、AIDSに関連した癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、血管拡張性失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、幼児期脳腫瘍、小児癌、小児期白血病、幼児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結直腸癌、皮膚のT細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮体癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、外-肝臓胆管癌(Extra- Hepatic Bile Duct Cancer)、目癌、目:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃(gastric)癌、胃腸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞性癌、遺伝性の乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス-細胞-組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リ-フラウメニ症候群、唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳房癌、腎臓の悪性棒状体腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔(mouth)癌、複合内分泌腺新生物、菌状息肉腫、骨髄異形性症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道(oesophageal)癌、口腔(oral cavity)癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵嚢癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムント-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、有棘細胞癌腫(皮膚)、胃(stomach)癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎臓-骨盤-/-輸尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、尿栓球素(Uroplakins)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ヴァルデンストレーム-マクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
全身性の脈管構造の症状またはイベントが、アテローム性動脈硬化症または内皮機能障害である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
投与される化合物の量が、VSMCおよび/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系からのスーパーオキシドおよび/または下流のROSの形成を阻害または減少させるために有効である、請求項20記載の方法。
【請求項27】
投与される化合物の量が、VSMCおよび/または内皮細胞を含む脈管構造および/または外膜線維芽細胞を含む脈管構造および/または非血管系において、またはこれらによって、スーパーオキシド、次亜塩素酸塩、過酸化脂質、パーオキシナイトライト、過酸化水素、および/またはヒドロキシルラジカルの形成を阻害または減少させるために有効である、請求項20記載の方法。
【請求項28】
化合物が、核酸分子またはその化学的に修飾されたか、もしくは類似体の形態である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
化合物が、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項20記載の方法。
【請求項30】
化合物が、tempolもしくはDPIまたはこれらの誘導体もしくは類似体である、請求項20記載の方法。
【請求項31】
化合物が、反応性ブルー2、もしくはPPADS、またはこれらの類似体もしくは誘導体である、請求項20記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、ベンズアミドおよび/またはアリールスルホナート並びに誘導体または類似体の使用。
【請求項33】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、Nox4阻害剤の使用であって、Nox4の全てまたは一部が細胞外に曝露される使用。
【請求項34】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、スラミンまたはその誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項35】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、tempolの使用。
【請求項36】
哺乳動物または非哺乳動物における症状またはイベントの治療または予防のための医薬の製造における、DPIの使用。
【請求項37】
Nox4をコードする遺伝子座内に、または隣接して突然変異を含む非ヒト動物モデル。
【請求項38】
突然変異が、Nox4コード配列またはその5'もしくは3'非翻訳領域に対する挿入、欠失、置換、または付加である、請求項37記載の動物モデル。
【請求項39】
突然変異がNox4遺伝子に隣接するloxP挿入である、請求項37記載の動物モデル。
【請求項40】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物を含む第1の部分、または哺乳動物または非哺乳動物の症状またはイベントの症状または効果を改善する際に有用な1つもしくは複数の治療薬を含む少なくとも第2またはそれ以上のパートを含む複数パートの薬学的パック。
【請求項41】
Nox4阻害剤の相互作用のアゴニストを含むパートをさらに含む、請求項40記載の複数パートの薬学的パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−520326(P2006−520326A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501385(P2006−501385)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000254
【国際公開番号】WO2004/075884
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
WINDOWS
【出願人】(505325039)ハワード フローリー インスティチュート オブ エクスペリメンタル フィジオロジー アンド メディシン (1)
【Fターム(参考)】