説明

治療装置

治療装置であって、撮像ゾーン内の磁気共鳴撮像データの組を獲得するよう適合された磁気共鳴撮像システムであって、上記磁気共鳴撮像システムは、磁場を発生させる手段と、上記撮像ゾーン内の上記磁場の上記磁場線でビームが一角度を囲むように、被験者内の標的ゾーンに向けて、荷電粒子ビームを誘導するよう適合された誘導手段であって、上記角度は、0度以上30度以下であり、上記撮像ゾーンは上記標的ゾーンを含む誘導手段と、前記磁気共鳴撮像データの組を使用して前記被験者内の前記標的ゾーンの位置を判定するゾーン判定手段とを備える治療装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者内の標的ゾーンへの荷電粒子の誘導に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム治療では、高エネルギ荷電粒子ビームが被験者の標的ゾーンに向けられる。荷電粒子を備えた前述のビームと物質との相互作用の主要な機構はクーロン力による。クーロン衝突の断面は、2つの粒子の相対速度が減少するにつれて増加する。荷電粒子ビームは、被験者を通って進むにつれ、エネルギを一層速く喪失する。この効果は、粒子ビームのエネルギの大半が、ビーム経路の終端近くに付与されることである。したがって、ブラッグ・ピークと呼ばれるビーム経路の終端に付与された大きなエネルギ・ピークが存在している。
【0003】
この理由で、荷電粒子ビーム治療は、被験者に対する総線量を最小にする一方で、腫瘍標的に対する高線量の非常に高い精度の供給を可能にする。しかし、ビームの経路内の解剖学的構造のわずかな移動も、元の線量計画からの、供給された線量のかなりの逸脱につながり得る。したがって、リアルタイム撮像を使用して、標的を追跡し、標的及び器官の動きにビームを適合させることが望ましい。
【0004】
荷電粒子ビーム治療の場合、ビームの供給中のリアルタイムMRIは実行できない。MRIに関連付けられた強い磁場が、荷電粒子の経路を標的に向けて劇的に影響を及ぼすからである。
【0005】
静磁場が、被験者の体内の画像を生成するための手順の一部として原子の核スピンをアラインさせるために磁気共鳴撮像(MRI)スキャナによって使用される。MRIスキャンの間、送信器コイルによって生成される無線周波数(RF)パルスは、局所磁場に対する擾乱をもたらし、核スピンによって発せられるRF信号は受信器コイルによって検出される。前述のRF信号は、MRI画像を構成するために使用される。前述のコイルはアンテナと表すことも可能である。更に、送信器及び受信器コイルは、両方の機能を行う単一のトランシーバ・コイルに一体化することも可能である。トランシーバ・コイルという語の使用も、別個の送信器コイル及び受信器コイルが使用されるシステムを表す。
【0006】
米国特許第6675078号明細書及び対応する欧州特許第1121957号明細書は、プロトン・ビーム治療をMRIと組み合わせる治療装置を開示している。MRIは、プロトン・ビーム治療を標的化し、ゲート制御するために使用される。
【0007】
PCT特許出願99/32189号明細書は、MRI及び放射線治療システムの組合せに関する。前述の開示されたシステムは、磁気共鳴撮像システム、放射線治療ビームの誘導システムとともに回転する磁場を発生させるガントリ搭載コイル組を有しており、照射領域に対する放射線治療の影響を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、請求項1記載の治療装置を提供する。本発明の実施例は従属クレームに記載している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例によれば、治療装置は、マグネットの上部における開口部を通って入る、固定の荷電粒子誘導手段と組み合わせた垂直場MRIスキャナを備える。垂直場MRIスキャナは、高磁場オープンMRIスキャナとしても知られている。この構成は、MRIマグネットの磁場により、荷電粒子経路の曲率を削減する。一実施例では、荷電粒子ビームは、マグネットの垂直軸に対して約20度の角度で配向させる。このことは、荷電粒子ビーム線上の複雑な回転システムの必要なしに、垂直軸を中心に被験者支持部を回転させることにより、複数場治療の適用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例による、治療装置の実施例を示す、理想化した断面図である。
【図2】本発明の実施例による、治療装置の実施例を示す断面透視図である。
【図3】本発明の実施例による、治療装置の実施例を示す断面透視図である。
【図4】1.0テスラの磁気共鳴撮像システムの磁場内の算出されたプロトン・ビーム軌道を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例は、撮像ゾーンにおける磁気共鳴撮像データの組を獲得するよう適合された磁気共鳴撮像システムを備えた治療装置を提供し、磁気共鳴撮像システムは磁場を発生させる手段を備える。治療装置は更に、撮像ゾーン内の磁場の一角度の磁場線をビームが囲むように、被験者内の標的ゾ―ンに荷電粒子のビームを誘導するよう適合された誘導手段を更に備え、上記角度は、0度以上30度以下であり、撮像ゾーンは標的ゾーンを含む。治療装置は、磁気共鳴撮像データの組を使用して被験者内の標的ゾーンの場所を判定するゾーン判定手段を更に備える。
【0012】
撮像ゾーン内の磁場線に対して粒子ビームが形成する角度を制限することにより、荷電粒子のビームの軌道に対する磁場の影響が軽減される。これは、磁場線に並列の速度成分が、磁場によって影響を受けないからである。磁場線に対して垂直の速度成分は、磁場線の周りに歳差運動をもたらし、磁場線の周りに、スパイラルに似た軌道をもたらす。
【0013】
ビームが通過するマグネットの他の部分内、及び撮像ゾーン内の磁場の方向及び強度は、高い精度で知られており、荷電粒子の軌道は高い信頼度で予測することが可能である。
【0014】
誘導手段は、粒子加速器からの荷電粒子のビームを誘導することが可能である。使用することが可能な荷電粒子加速器の例には、サイクロトロン、シンクロトロン、又は線形加速器がある。誘導手段は、磁気共鳴撮像システムに向けて高エネルギ粒子を誘導するためのシステムを備え得る。誘導手段は、荷電粒子のビームを備える荷電粒子の軌道を変えるための荷電粒子光学系も備え得る。ゾーン判定手段は、磁気共鳴撮像データをセグメント化し、標的ゾーンの位置を判定し、標的ゾーンを囲み、ビ―ム経路に存在している被験者内の構造の位置を判定することができるコンピュータ・プログラム・プロダクトとして実現することが可能である。誘導手段は、荷電粒子ビームの軌道を偏向するために、帯電板及び帯電物体、並びに荷電粒子ミラーを含み得る。
【0015】
磁気共鳴撮像データを獲得するために使用されるパルス系列は、標的ゾーンを位置特定するよう合わせ、更に、荷電粒子ビームによって容易に損傷し得る高リスク器官を位置特定するよう合わせることが可能である。
【0016】
別の実施例では、ビームを備えた荷電粒子は、粒子ビームのブラッグ・ピークが標的ゾーン内にあることが必要である運動エネルギ以上の運動エネルギを有する。ブラッグ・ピークは、荷電粒子ビームからのエネルギの大半が付与される場所である。この実施例は効果的である。荷電粒子は、標的ゾーンに達するのに十分なエネルギを有しているからである。
【0017】
別の実施例では、ビーム制御手段は、ブラッグ・ピークが標的ゾーン内にあるようにビームのブラッグ・ピークの位置を調節するために、調節可能な減衰器を更に備える。この実施例は効果的である。減衰器は、荷電粒子ビームを備える粒子のエネルギを変えることができるからである。これは、粒子がどの程度深く、被験者に入り込むことが可能であるかに影響を及ぼし、エネルギの大半がどこに付与されるかを定める。減衰器を使用することは効果的である。荷電粒子ビームのエネルギを非常にすばやく調節することが可能であり、被験者の外部及び内部の動きを補償するために使用することが可能である。標的ゾーン内にエネルギの大半を付与することは重要である。粒子ビームによるエネルギの付与は局所化され、標的ゾーンの外部の領域にビームが向けられた場合、被験者は傷つき得るからである。
【0018】
別の実施例では、治療装置は、算出された軌道が標的ゾーンに達するように磁場を表す磁場データを使用してビームの軌道を算出する軌道算出手段と、ビームが、算出された軌道をたどるように、算出された軌道を使用して誘導手段を制御するよう適合された制御手段とを更に備える。
【0019】
磁気共鳴撮像システムは、磁場を発生させる手段を備える。これは超伝導マグネットであり得る。磁気共鳴撮像に使用される大きな磁場の影響は、磁場が、磁場内の荷電粒子の軌道を偏向することである。しかし、磁場データを使用すれば、磁場内の荷電粒子ビームの軌道は厳密に算出することが可能である。これは、誘導手段が、被験者内の標的ゾーンに荷電粒子のビームを誘導することを可能にする。
【0020】
この実施例は効果的である。磁場データの知識を使用して、荷電粒子の軌道を算出することが可能であるからである。このようにして、荷電粒子ビームは、厳密に標的ゾーンに向けることが可能である。このことにより、粒子ビームが、標的ゾーン外の領域に向けられ、被験者を傷つける確率が減少する。
【0021】
磁場データは、磁場を発生させる手段の設計の知識から算出される磁場データであり得るか、又は、直接測定し、後に再び呼び出すために、例えば、ルックアップ・テーブルに記憶し得る。これは、磁場データを使用し、次いで、小さな時間ステップでビーム内の荷電粒子の軌道を算出することによって実現することが可能である。基本的には、粒子の動きの式は時間上で積分される。
【0022】
制御手段はコンピュータとして、又はコントローラとして実現することが可能であり、算出手段によって算出された軌道をビームの軌道がたどるように誘導手段を制御するよう適合させることが可能である。
【0023】
別の実施例では、軌道算出手段は、被験者内のビームを備える荷電粒子のエネルギ喪失を算出するよう適合され、軌道算出手段は、エネルギ喪失を使用して、算出された軌道を調節する。これは効果的である。荷電粒子ビームは、物質を通って流れるにつれ、徐々にエネルギを喪失する。このエネルギの変動は、磁場内の荷電粒子の軌道に影響を及ぼす。粒子の速度が遅いほど、一定の磁場内に、より大きな曲率が存在し、これを考慮に入れると、軌道が高精度で算出されることを可能にする。
【0024】
別の実施例では、誘導手段は、ビームが撮像ゾーン内の磁場の磁場線で5度以上25度以下の角度を囲むように更に適合され、角度は好ましくは15度以上20度以下である。軌道算出手段は、ビームを標的ゾーンに向けるビームの算出された2つ以上の軌道を算出するよう適合され、ビーム制御手段は、標的ゾーンの外部の被験者の一部分の、ビームに対する露出を最小にするために、2つ以上の算出されたビーム軌道間で切り換えるよう適合される。
【0025】
この実施例は効果的であり得る。粒子ビームが磁場線と、わずかな角度をなす場合、軌道は、円形状に磁場線の周りを螺旋状に進むからである。これは、ビームの軌道及びエネルギが変えられた場合、標的ゾーンに対する2つ以上の軌道を求めることが可能であることを意味している。これは効果的である。粒子ビームにより、標的ゾ―ンに向けた、被験者を介した2つ以上の経路を求めることが可能であるからである。これは、標的ゾーン外の領域によって受けた照射線量を削減するために使用することが可能である。放射線線量は、被験者のより大きな部分にわたって分散させ得、それにより、意図していない損傷の可能性が削減される。
【0026】
別の実施例では、MRIシステムは、周期的な間隔で磁気共鳴撮像データの組を獲得するよう適合される。これは効果的である。MRIデータは、反復して獲得し、標的ゾーンの動き、被験者の動き、及び被験者内の内部の動きを追跡するために使用することが可能であるからである。この実施例では、ゾ―ン判定手段は、周期的な間隔で獲得された磁気共鳴撮像データの組を使用して標的ゾーンの動きを監視するよう更に適合される。これは、荷電粒子ビームによって損傷し得る周囲の器官の位置、及びゾーン判定手段の位置を検出することができるセグメンテーション・アルゴリズムによって実現することが可能である。
【0027】
ゾーン判定手段は、周期的な間隔で獲得される磁気共鳴撮像データの組を使用してビーム軌道に沿って被験者の内部の動きを監視するよう更に適合される。これは、ビーム軌道に対して垂直の内部の動き及び平行の内部の動きを含む。これは効果的である。粒子ビームの軌道に影響を及ぼし得る被験者内の内部の動きが存在し得るからである。例えば、粒子ビームが軟組織、又は肋骨などの骨材を通って進んでいる場合、粒子ビームの減衰は異なる。軌道算出手段は次いで、この情報を使用して、粒子ビームを標的ゾーンに向ける軌道を適切に算出することが可能である。この理由で、軌道算出手段は、軌道の算出中に使用されるビーム軌道に沿った被験者の動き、及び標的ゾーンの動きを補償するよう適合される。MRIデータが獲得される間隔は、補償すべき移動の速度によって求められる。例えば、膀胱の充満を補償するために、MRIデータは、呼吸が補償された場合よりも遅い速度で獲得される。
【0028】
別の実施例では、誘導手段は、ビーム軌道を調節する荷電粒子光学系、及びビームを備える荷電粒子のエネルギを調節する調節可能な減衰器を備える。荷電粒子光学系は、大きな電圧電位まで増加させることが可能な構造、電極、磁石、及び電磁石を含み得る。これらは、荷電粒子ビームの軌道を偏向又は調節するために使用することが可能な磁場又は電場を発生させる。
【0029】
調節可能な減衰器は、ビームを含む荷電粒子の経路を中断する物体として実現することが可能である。荷電粒子は主に、クーロン力を使用して、それを通って進むその物質と相互作用する。その結果、荷電粒子の速度が遅くなるにつれ、囲んでいる物質とのその相互作用は、より可能性が高くなる。減衰器の効果は、ビームを含む荷電粒子のエネルギを低減することである。この効果は、荷電粒子ビームが被験者に入り込むことが可能な深さを低減することである。減衰器は、荷電粒子ビーム源と、ビームが被験者に入る直前との間のどこにでも配置し得る。減衰器が、誘導手段の手前、又は誘導手段内にある場合、荷電粒子ビームのエネルギは変動し、エネルギにおけるこの変動は、補償する必要があり、誘導手段は、荷電粒子のビームがそれを通るその正しい軌道を有していることを確実にするためにエネルギの変動に適合することができる必要がある。
【0030】
減衰器を被験者近くに配置することは、誘導手段の多くの部分が、粒子ビームの変動するエネルギに適合可能でなくてよいという利点を有する。欠点は、プロトンなどの荷電粒子が、減衰器が放射性を有することになる核反応をもたらし得る確率が存在していることである。しかし、これは、使用されている荷電粒子のタイプに依存し、減衰器として使用される材料にも依存する。
【0031】
別の実施例では、誘導手段は、磁場を発生させる手段に対して移動させるよう適合される。この実施例は効果的である。誘導手段を別々の場所に移動することが可能であり、このようにして、同じ標的ゾーンに対する種々の軌道を求めることが可能であるからである。このことにより、より大きな領域にわたる標的ゾーン内でなく、被験者が放射線量を受けることが可能になる。このことにより、被験者に対する損傷の可能性が低減する。
【0032】
別の実施例では、治療装置は、治療装置の動作中に被験者の位置を調節するよう適合された被験者支持部を更に備える。この実施例は効果的である。被験者支持部は、治療中に、粒子ビームに対して、被験者の位置を変えることが可能であるからである。
【0033】
別の実施例では、誘導手段の向きは、磁場を発生させる手段に対して固定しており、被験者支持部は、治療装置の動作中の回転運動に更に適合される。
【0034】
この実施例は効果的である。被験者支持部の回転運動は、ビーム内の種々の位置に被験者を移動させることができるからである。これは、被験者の部位全てにビームで達することを可能にし、更に、ビームが被験者を通って標的ゾーンに達するための複数の経路を可能にする。
【0035】
別の実施例では、ゾーン判定手段は、治療を計画するための計画データを受け取るよう更に適合される。ゾーン判定手段は、更に、磁気共鳴撮像データの組を使用して所定の基準を計画データが満たしているかを確認するよう適合される。荷電粒子ビームによって治療が行われる場合、医師は、通常、X線によるコンピュータ断層撮像や磁気共鳴撮像などの医療撮像システムを使用して被験者の3次元画像を得て、次いで、この3次元データに基づいて被験者の治療を計画する。この実施例は、計画データが所定の基準を満たしているかを確認し、被験者の解剖学的構造が、計画データが生成された際に使用された解剖学的構造に実際に近いかを判定する。
【0036】
粒子加速器の費用が高いことにより、治療装置の一部である別の医療撮像システムを使用して1つの場所において計画データを生成することが可能である場合がある。更に、被験者の内部の解剖学的構造が変わっていることがあり得る。計画は医師によって行われたからである。例えば、個人が、より多くの脂肪を有し得る。又は、前立腺を治療する場合、計画中よりも多くの液体又は少ない液体で前立腺を満たし得る。計画データは、所定の基準との比較によって検証することが可能である。計画データが所定の基準を満たさなかった場合、荷電粒子ビームの生成の一時停止の動作、計画データが正確でない旨のオペレータへの警告の動作、計画データの調節の動作、及び、オペレータからの、計画データの訂正の受け取りの動作のうちの少なくとも1つを行うことが可能である。計画データが正確でない場合、荷電粒子のビームの発生を停止させることが有益である。このことは、荷電粒子が、意図されていない被験者の部位を横切ることを妨げるからである。計画データが正確でない旨をオペレータに警告することは効果的である。その場合、治療が適切に進まないほど、被験者の解剖学的構造と、計画中に使用される解剖学的構造との間に十分な相違が存在しているということをオペレータが分かっているからである。ゾーン判定手段はセグメンテーション・アルゴリズムを使用して実現することが可能であり、計画データは、セグメント化されたMRI画像を使用して調節することが可能である。これは効果的である。解剖学的構造におけるわずかな変動が、システムにより、自動的に補償することが可能であるからである。更に、運動及び呼吸は、治療計画において補償することが可能である。例えば、呼吸による、ビーム経路内外の肋骨の運動は、治療中にエラーをもたらし得る。しかし、MRI画像を使用すれば、この運動は補償することが可能であり、治療計画を調節することが可能である。
【0037】
計画データに対する訂正を受け取ることは効果的である。熟練オペレータ又は医師は次いで、計画データに対して訂正を手作業で行うことが可能であるからである。
【0038】
別の実施例では、磁気共鳴撮像システムは、画像ゾーン内の荷電粒子の軌道を測定するよう適合される。ビーム制御手段は、測定された軌道を使用してビーム軌道を調節するよう適合される。この実施例は特に効果的である。磁気共鳴撮像システムは、荷電粒子ビームがとる経路を直接、測定することができるからである。この情報は次いで、ビーム軌道を調節するためにビーム制御手段によって使用される。これは、算出された軌道の検証を提供し、更に、被験者の標的ゾーン外の領域が粒子ビームによって照射されない可能性を低減する。粒子ビームの軌道は、別々のいくつかの手法を使用して磁気共鳴撮像によって測定することが可能である。
【0039】
手法1:MRラーモア周波数、又はラーモア周波数の副高調波でビームを律動的に送ることにより、MR励起の手段として治療荷電粒子ビームを使用する
手法2:BOLDに似たMR系列との組合せで、二乗平均平方根(RMS)ビーム電流のディフェージング効果を使用する
手法3:ビーム相互作用生成物の常磁性挙動によるディフェージング効果を使用する。
【0040】
プロトン・ビームの検出の可能性を示す推定は以下の前提を使用して行われる。
【0041】
プロトン・ビームは非常に狭く、側方の寸法は、最大、ブラッグ・ゾーン1mm未満、好ましくはブラッグ・ゾーン0.1mm未満である。
【0042】
ビームは短いパルスを含み、反復周波数は50乃至100MHzの範囲内にあり、ピーク・ビーム電流は100マイクロアンペア程度である。
【0043】
RMSビーム電流は、0.1マイクロアンペアのレベルに達し得る(臨床治療システムにおける電流レベルは0.01−0.02マイクロアンペアである)。
【0044】
一治療セッションに必要なプロトン・パルス列の持続時間は、分程度である。
【0045】
前述の前提を使用すれば、ビーム電流は、その軌道周りで循環する磁場を発生させる。磁場は、1/rで低下する(rは、ビームの中心までの距離である)。半径0.1mmでは、0.1マイクロアンペアの電流によるB場は1.3ナノテスラである。100マイクロアンペアの場合、0.1mmでの磁場は1.3マイクロテスラである。
【0046】
手法1の例:
プロトン加速器からくるパルスは、100MHz程度の非常に安定した高い反復周波数を有する(これは、プロトンを生成するシンクロトン又はサイクロトンの設計パラメータである)。MRIシステム及びプロトン加速器は、ビーム・パルス反復周波数がMR共鳴周波数にちょうど等しいように互いにマッチングすることが可能である、その場合、プロトン・ビーム周りの磁場は、定常MR励起パルスとして組織プロトンに作用する。ビームRF場のMR効果は、加速器のパルス反復周波数をわずかに修正することにより、又は、(勾配コイル・システムに組み入れられたB0コイルを使用して)MRバックグランド・マグネットの磁場にわずかなオフセット磁場を加えることによって、オン及びオフを切り換えることが可能である。ビーム場のMR励起効果は、多くのやり方で画像における可視の効果に変換し得る。1つのやり方は、唯一のMR励起としてビーム場を使用し、結果として生じるMR信号を使用して画像を作成することである。前述の撮像は非常にすばやく行うことが可能である。ビームに非常に近いボクセルのみが信号を発するからである。基本的には、ビームは3つの投影から再構成することが可能である。あるいは、ビーム関連RF場の効果は、ビームが通って進むボクセルからくる信号を変調して、(逆回復系列などの)RFプレパルスとして使用することが可能である。ビームが通って進むボクセルからのRF信号の生成を抑制して、飽和パルスとしてビームRF場を使用することも考えられる。MR励起効果は、プロトン・パルスの反復周波数がラーモア周波数の位相同期副高調波である場合にも生じる。一般に、プロトン・パルスの列の周波数スペクトルが、ラーモア周波数における周波数成分を含む場合、このプロトン・パルス列はMR励起をもたらす。
【0047】
ビームを撮像するよう適合された治療装置は、
MR共鳴及びプロトン・ビーム・パルス反復に対して同一の周波数、
サブシステム間の正確な周波数ロック、及び
MRスキャナの合計B0場、又は加速器周波数を変調することにより、MR共鳴とオフ共鳴との間で切り換えるための手段
の、設計上の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。
【0048】
手法2の例:
RMSビーム電流は、ビームが通って進むボクセル内の共鳴周波数を変調するビーム周りにRMS磁場を発生させる。平均ビーム電流0.1マイクロアンペアでは、ビームの中心から0.1mmにおける周波数オフセットは約0.05Hzである。血中酸素濃度依存(BOLD)コントラスト・ファンクショナル撮像などのMR検出手法を使用して、この周波数オフセットを視覚化することが可能である。この手法を使用したビームの視覚化には、周期的にプロトン・ビームの送信を中断し、送信されるプロトン・ビームがあるMR画像、及び送信されるプロトン・ビームがないMR画像を比較することが関係する。プロトン・ビームの可視性を向上させるために、MRディフェージング効果が必要な時間中にRMSビーム電流を増加させることが可能である。例えば、平均電流を、大半の時間の間、0.02マイクロアンペアのレベルに維持する一方、MR獲得ウィンドウの開始と、RF励起パルスとの間の間隔において0.2−1.0マイクロアンペアに増加させることが可能である。この場合、ビーム電流の増加させた振幅の部分のデューティ・サイクルは5%程度であり得る。プロトン供給システムの前述の制限された高振幅動作は、部品の加熱により、電流が制限される場合、おそらく許容可能であろう。
【0049】
手法3の例:
プロトンは組織のイオン化をもたらす。そうして形成されたフリー・ラジカルは常磁性になり、組織のT2緩和時間の局所の減少をもたらす。したがって、この効果は、T2感応性撮像系列を使用して視覚化することが可能である。
【0050】
別の実施例では、荷電粒子ビームは、プロトン、炭素核、及び原子核のうちの少なくとも1つを備える。プロトン、炭素核、及び別の原子核は、荷電粒子ビームは、十分なエネルギを有している場合に、それらの大きな質量で被験者に深く入り込むことができる。
【0051】
別の実施例では、磁場を発生させる手段は、少なくとも第1のサブマグネット及び第2のサブマグネットを含み、撮像ゾーンが第1のサブマグネットと第2のサブマグネットとの間にあるように第1のサブマグネット及び第2のサブマグネットが配置され、第1のサブマグネットは第1の中央領域を囲み、第2のサブマグネットは第2の中央領域を囲み、磁場を発生させる手段の磁場線は第1の中央領域及び中央領域を通って進む。この実施例は効果的である。被験者を受容するよう適合された大きな領域が2つのサブマグネット間に存在し得るからである。
【0052】
別の実施例では、第1のサブマグネットは、第1のマグネットの中央領域を囲む第1の中央表面と交差する磁場を発生させる手段から離れる側の方を向く外部表面を有しており、ビームが進むことを可能にする、第1の中央表面と上記外部表面との間の斜切表面が存在している。この実施例は効果的である。上記粒子ビームを、撮像ゾーン内の磁場線に対して、より大きな角度で発射することを可能にするからである。
【0053】
本発明の好適な実施例を以下に、例示の目的でのみ、かつ、図面を参照して説明する。
当該図中で同じ符号を付した構成要素は、同じ構成要素であるか、又は同じ機能を行う。更に、最終2桁が同じ符号も、同じ構成要素、又は同じ機能を行う構成要素を表す。機能が同一の場合、先行して記載している構成要素は、必ずしも後の図で記載する訳でない。
【実施例】
【0054】
図1は、本発明の実施例による、治療装置の実施例の、理想化した断面図を示す。前述の図は、荷電粒子110のビームを誘導するよう適合された誘導手段108及びMRIシステム100を示す。MRIシステム100は第1のサブマグネット134及び第2のサブマグネット136を備える。前述の2つのサブマグネット134、136は円柱状であり、磁場線は、サブマグネット134及び136の中心を通って進む。磁場線104が事実上、互いに平行である撮像ゾーン106が存在している。この領域内で、被験者116のMRI画像を作成することが可能である。MRI画像を獲得するために、トランシーバ・コイル112が使用される。トランシーバ・コイル112はRFトランシーバ114に接続され、上記トランシ―バ114はコンピュータ122のハードウェア・インタフェース124と通信する。MRIデータの空間符号化が勾配コイル148によって行われる。この実施例では、サブマグネット134、136に隣接した勾配コイル148が存在している。第1のサブマグネット134に対する勾配コイル148は、誘導手段108のビーム管を受容するよう適合された開口部158を有する。この開口部は、荷電粒子ビーム110が勾配コイル148を通って進むことを可能にする。別の実施例では、勾配コイル148の隣に搭載されたRFコイル112が存在している。他の実施例では、RFコイル112が、被験者116に載せてあることがあり得、又は、RFコイル112を受容するよう適合されたホルダによって保持され得る。
【0055】
コンピュータ122は、マイクロプロセッサ126及びユーザ・インタフェース132を更に備える。ユーザ・インタフェース132は、命令を受け取り、データをオペレータに向けて表示するよう適合させる。マイクロプロセッサ126はコンピュータ・プログラム・プロダクト128を実行するよう適合される。コンピュータ・プログラム・プロダクトは、MRIシステム100、誘導手段108、及び粒子加速器を制御し、実行させるよう適合することが可能である。コンピュータ・プログラム・プロダクトは、ゾーン判定手段130を備える。ゾーン判定手段130は、MRIデータをセグメント化し、被験者116の解剖学的構造並びに内部器官、及び標的ゾーン120の位置を判定するよう適合されたセグメンテーション・モジュールとして実現することが可能である。
【0056】
誘導手段108は、撮像ゾーン106内の標的ゾーン120において、荷電粒子110のビームを発射する。撮像ゾーン106内では、粒子ビーム110の軌道が一角度118をなす。磁場線104に対して粒子ビーム110の軌道がなす角度118、及び磁場の強度は、粒子ビームが磁場によってどれだけ偏向されるかを定める。この図では、磁場線104が第1の中央領域138及び第2の中央領域140を通って進むことがこの図で分かる。
【0057】
図2は、本発明の実施例による、治療装置の実施例の断面透視図を示す。治療装置は、磁気共鳴撮像システム200を備える。磁気共鳴撮像システムは第1のサブマグネット234及び第2のサブマグネット236を備える。サブマグネット234、236は、冷却槽244及び超伝導コイル246を有する。超伝導コイル246は、磁場を発生させるために使用される。第1のサブマグネット234は第1の中央領域238を有し、第2のサブマグネット236は第2の中央領域240を有する。磁場線は前述の2つの中央領域238、240を通って進む。2つのサブマグネット234、236間には、2つのコールド・サポート242が存在している。コールド・サポート242は、2つのサブマグネット234、236間の機械的な剛接続、及び超伝導の電気接続を提供するよう適合される。平行移動及び回転の動きに適合され、粒子ビーム210が被験者の何れかの部分に達することができるように被験者を移動させるよう適合される被験者支持部202が存在している。平行移動及び並列の動きの組合せを有することにより、粒子ビームは同じ標的ゾーンに達することが可能な複数の軌道を有する。これは効果的である。標的ゾーン外の被験者に対する放射線量を被験者のより大きな部分にわたって分散させることを可能にするからである。このことにより、被験者に対する損傷の可能性が低減する。
【0058】
磁気共鳴撮像データを獲得するために、磁気共鳴撮像システム200は、更に、無線周波数コイル212及び磁場勾配コイル248を有する。第1のサブマグネット234に隣接した勾配コイル248及び無線周波数コイル212は、粒子ビームが、当たることなく、通って進むことができるように適合される。この実施例では、誘導手段は、勾配コイル248及びRFコイル212を通って突出する。誘導手段は、粒子ビーム210の軌道を調節するよう適合される。第1のサブマグネット234は、磁場250を発生させる手段から離れる側の方を向く外部表面及び第1の中央表面242を有する。第1の中央表面252と、磁場250を発生させる手段から離れる側の方を向く外部表面との間に、斜切表面254が存在している。この斜切表面254は、誘導手段208が、撮像ゾーン内の磁場線と、より大きな角度をなすことを可能にする。
【0059】
図2に示す実施例は、荷電粒子ビーム治療システムの誘導手段208、及びフィリップス社パノラマ高磁場オープンMRIシステムに類似した高磁場オープンMRIシステムを組み合わせることによって構築することが可能である。マグネットは、アクティブな遮蔽を有する、鉄を含まない軸対称超伝導コイル・システムであり得、主磁場の強度は、約1テスラであり、高品質の高速撮像を可能にし得る。マグネットのクライオスタット238内の中央の穴は、荷電粒子誘導手段208がスキャナの被験者空間に突き出ることを可能にする。ビーム管208を通すために、勾配コイル248及びRFコイル212は、中央領域内に穴を含むよう適合し得る。荷電粒子誘導手段が、マグネットの垂直軸に対して一角度で配向されている場合、垂直軸を中心に被験者テーブルを回転させることにより、2つ以上の場を使用して照射を行うことが可能である。マグネットに対して固定の位置に荷電粒子ビーム線をおくことは、回転する荷電粒子ガントリと比較してシステムの構成を大いに単純にする。荷電粒子ビーム・システムと、MRIマグネットを互いに固定することは、荷電粒子ビームの軌跡の制御を単純にし、治療システムのロバスト性を向上させる。
【0060】
荷電粒子ビーム走査マグネットは好ましくは、MRIシステムと荷電粒子ビーム走査システムとの間の磁気干渉を最小にするために、マグネットから特定の距離だけ離れて配置される。ビーム走査マグネットにより、差を補償することが可能であるほど、30MeVプロトンと300MeVプロトンとの間のビーム軌道における開きはわずかである。よって、プロトン・ビーム線も被験者支持部202も、歪んでいないビーム軌道と一致している直線に沿って、被験者における種々の深度に配置されているボクセルの線を照射させるよう機械的に移動させる必要がある。
【0061】
上半分及び下半分は、少なくとも1つの剛コ―ルド・サポート242によって相互接続することが可能である。単一のサポートは、被験者支持部202が、ほぼ、どの向きにも回転することを可能にする。2つのコールド・サポート242が使用される場合、プロトン誘導手段208に対するその角度位置は、コールド・サポート242に干渉しない被験者サポート位置の数を最大にするように選び得る。
【0062】
第1のサブマグネット234の上板250は好ましくは、誘導手段208がMRIシステム200に入る第1のサブマグネット234内の中央穴238の長さを最小にする、円錐形状であり得る凹み254を有する。この斜切表面254は、荷電粒子誘導手段208又はMRIシステム200に属する補助機器を配置するためにも使用することが可能である。マグメントの上にある領域におけるMRIマグネット234の浮遊場を削減するために、(直径が大きな2つのコイルを含む)標準的なパノラマ・マグネットの単純なアクティブ遮蔽構成は、より小さな直径における、より小さな更なる遮蔽コイルを組み入れることによって精緻化することが可能である。
【0063】
超伝導マグネット・コイル246及び荷電粒子ビーム210の相対位置は好ましくは、高エネルギ荷電粒子に直接露出した超伝導巻線がないように選択される。これは、サブマグネット234、236を荷電粒子照射によって急冷することが可能であるというリスクを最小にする。システムの放射線活性化を避けるために、荷電粒子ビームの近端側における構成材料の量は、できる限り最小にすべきである。
【0064】
病変の照射には、照査ゾーンの深度を制御する荷電粒子エネルギの調節、荷電粒子の短距離の側方分布のための荷電粒子ビームのわずかな側方変位、(複数場治療である)治療する対象の病変と被験者の表面との間の健康組織におけるエネルギ付与を削減するための(側方変位及びエネルギ調節に関する)被験者支持部202の回転、及び荷電粒子エネルギのより大きな規模の側方分布のための水平面における2つの方向での被験者支持部202の平行移動が関係する。
【0065】
本発明の実施例は、
スキャナの磁場を考慮に入れ、荷電粒子エネルギ及び被験者の位置に応じた、厳密なビ―ム軌道の予測、
治療が施される間に被験者の高速MRI画像に基づいたビーム・ステアリング・パラメータのリアルタイム更新(好ましくは、前述のビーム補正は、ビーム走査マグネット、及び荷電粒子エネルギの調節によって行われる)、及び、
NMR励起プロトン・スピンの位相に対する、荷電粒子ビームによって発生する磁場の効果を利用することによる、荷電粒子ビームの視覚化
の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。
【0066】
既存のプロトン治療システムにおいて使用されるものなどのサイクロトロン若しくはシンクロトロンにより、又は、他のタイプの荷電粒子加速器(例えば、直線加速器、高エネルギのパルス・レーザ、線形加速器)によって生成することができる。加速器によって生成されるビームは、MRIスキャナで装備されていてもいなくてもよい複数の治療ステーションにわたり、任意的にビーム・スイッチを組み入れ、曲げマグネット、及び、ビームを分布させるビーム集束を組み入れたビーム線システムにより、治療ステーションに供給される。加速器は、器官の動きの作用の補償の一部として、荷電粒子のエネルギをすばやく調節することができる。加速器からくる荷電粒子のエネルギをすばやく調節することが可能でない場合、治療システムは、プロトンを被験者に向けて誘導するノズルにおいて高速調節器を組み入れ得る。前述の調節器は、高速機械アクチエータによって位置が制御される、減衰材料のウェッジ形状のスラブを含み得る。荷電粒子ビームの経路内のスラブの一部の厚さはその場合、誘導手段208からの被験者側出口と、加速器との間の荷電粒子エネルギの削減を定める。
【0067】
図3は、本発明の実施例による治療装置の実施例の断面透視図を示す。本発明のこの実施例は、図2に示すものと同一である。この結果、この図中の物体を識別するために同じ符号を使用する。この図と図2との間の唯一の差は、被験者支持部302の位置が、図2中の被験者支持部202の位置に対して移動しているという点である。この図は、被験者の別々の領域を荷電粒子ビームで治療することが可能であるように被験者支持部をどのようにして移動させるかを表す。
【0068】
図4は、1テスラ磁気共鳴撮像システムの磁場内の算出されたプロトン・ビーム軌道を示す。この図は、磁気共鳴撮像システムの超伝導コイル446の構成を示す。この図中の超伝導コイルの構成は、図2及び図3の実施例に示す超伝導コイルの構成と同様である。一様な磁場460の領域はこの図に示す。この領域内では、磁気共鳴撮像データを獲得することが可能である。マグネットの対称の軸、及びマグネットの中心からの変位は、x軸462に沿った変位、y軸464に沿った変位、及びz軸466に沿った変位において示す。10MeVプロトン・ビーム468、30MeVプロトン・ビーム470、100MeVプロトン・ビーム472、及び300MeVプロトン・ビーム474の軌道を示す。
【0069】
参照符号リスト
100 磁気共鳴撮像システム
104 磁場線
106 撮像ゾーン
108 誘導手段
110 荷電粒子ビーム
112 トランシーバ・コイル
114 RFトランシーバ
116 被験者
118 磁場線と粒子ビームとの間の角度
120 標的ゾーン
122 コンピュータ
124 ハードウェア・インタフェース
126 マイクロプロセッサ
128 コンピュータ・プログラム・プロダクト
130 ゾーン判定手段
132 ユーザ・インタフェース
134 第1のサブマグネット
136 第2のサブマグネット
138 第1の中央領域
140 第2の中央領域
148 勾配コイル
156 勾配増幅器
158 開口部
200 磁気共鳴撮像システム
202 被験者支持部
208 誘導手段
210 荷電粒子ビーム
212 RFトランシーバ・コイル
234 第1のサブマグネット
236 第2のサブマグネット
238 第1の中央領域
240 第2の中央領域
242 コールド・サポート
244 冷却槽
246 超伝導コイル
248 勾配コイル
250 磁場を発生させる手段から離れる側の方を向く外部表面
252 第1の中央表面
254 斜切表面
302 被験者支持部
446 超伝導コイル
460 一様な磁場の領域
462 x軸に沿った変位
464 y軸に沿った変位
466 z軸に沿った変位
468 10MeVプロトン軌道
470 30MeVプロトン軌道
472 100MeVプロトン軌道
474 300MeVプロトン軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療装置であって、
撮像ゾーン内の磁気共鳴撮像データの組を獲得するよう適合された磁気共鳴撮像システムであって、磁場を発生させる手段を備える磁気共鳴撮像システムと、
前記撮像ゾーン内の前記磁場の磁場線でビームが一角度を囲むように、被験者内の標的ゾーンに向けて、荷電粒子ビームを誘導するよう適合された誘導手段であって、前記角度は、0度以上30度以下であり、前記撮像ゾーンは前記標的ゾーンを含む誘導手段と、
前記磁気共鳴撮像データの組を使用して前記被験者内の前記標的ゾーンの位置を判定するゾーン判定手段と、
算出された軌道が前記標的ゾーンに達するように前記磁場を表す磁場データを使用して前記ビームの軌道を算出する軌道算出手段と、
前記ビームが前記算出された軌道をたどるように前記算出された軌道を使用して前記誘導手段を制御するよう適合された制御手段と
を備える治療装置。
【請求項2】
請求項1記載の治療装置であって、前記軌道算出手段は、前記被験者内の前記ビームのエネルギ喪失を算出するよう適合され、前記軌道算出手段は、前記エネルギ喪失を使用して、前記算出された軌道を調節する治療装置。
【請求項3】
請求項2記載の治療装置であって、前記誘導手段は、粒子ビームのブラッグ・ピークが前記標的ゾーン内にあるように、必要な運動エネルギ以上の運動エネルギを有する荷電粒子を備える荷電粒子ビームを誘導するよう適合され、前記ビーム誘導手段は、前記ブラッグ・ピークが前記標的ゾ―ン内にあるように前記ビームの前記ブラッグ・ピークの位置を調節する調節可能な減衰器を更に備える治療装置。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の治療装置であって、前記誘導手段は、前記撮像ゾーン内の前記磁場の磁場線との間の5度以上25度以下の角度をビームが囲むように更に適合され、前記角度は好ましくは15度以上20度以下であり、前記軌道算出手段は、前記標的ゾーンに前記ビームを向ける前記ビームの算出された2つ以上の軌道を算出するよう適合され、ビーム制御手段は、前記ビームに前記標的ゾーン外の前記被験者の一部分の露出を最小にするために治療中に、前記2つ以上の算出された軌道間で切り換えるよう適合される治療装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の治療装置であって、前記磁気共鳴撮像システムは、周期的な間隔で前記磁気共鳴撮像データの組を獲得するよう適合され、前記ゾーン判定手段は、周期的な間隔で獲得された前記磁気共鳴撮像データの組を使用して前記標的ゾーンの動きを監視するよう更に適合され、前記ゾーン判定手段は、周期的な間隔で獲得された前記磁気共鳴撮像データの組を使用して前記ビームの軌道に沿って前記被験者の内部の動きを監視するよう更に適合され、前記軌道算出手段は、前記標的ゾーンの動きを補償するために前記算出された軌道の前記算出を調節するよう適合され、前記ビーム制御手段は、前記算出された軌道に対する調節を使用して前記ビーム軌道を調節するよう適合された治療装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の治療装置であって、前記誘導手段は、前記ビーム軌道を調節するための荷電粒子光学系を備え、前記誘導手段は、前記ビームを備える前記荷電粒子のエネルギを調節する調節可能な減衰器を更に備える治療装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の治療装置であって、前記誘導手段は、前記磁場を発生させる手段に対して移動するよう適合された治療装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の治療装置であって、前記治療装置は、前記治療装置の動作中に前記被験者の位置を調節するよう適合された被験者支持部を更に備える治療装置。
【請求項9】
請求項8記載の治療装置であって、前記誘導手段の向きは、前記磁場を発生させる手段に対して固定しており、被験者支持部は、前記治療装置の動作中の回転運動に更に適合される治療装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の治療装置であって、前記ゾーン判定手段は、前記治療装置を使用して治療を計画するために計画データを受け取るよう更に適合され、前記ゾーン判定手段は、前記磁気共鳴撮像データの組を使用して所定の基準を前記計画データが満たすかを確認するよう適合され、前記ゾーン判定手段は、前記計画データが所定の規準を満たさない場合に、荷電粒子ビームの生成の一時停止、計画データが正確でない旨のオペレータへの警告、計画データの調節、オペレータからの、前記計画データに対する訂正の受け取りのうちの少なくとも1つを行うよう適合された治療装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちの何れか一項に記載の治療装置であって、前記磁気共鳴撮像システムは、前記撮像ゾーン内の荷電粒子の軌道を測定するよう適合され、前記ビーム制御手段は、前記測定された軌道を使用して前記ビームの軌道を調節するよう適合された治療装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちの何れか一項に記載の治療装置であって、前記誘導手段は、プロトン、炭素核、及び原子核のうちの少なくとも1つを備える荷電粒子ビームを誘導するよう適合された治療装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちの何れか一項に記載の治療装置であって、前記磁場を発生させる手段は、少なくとも第1のサブマグネット及び第2のサブマグネットを備え、前記第1のサブマグネット及び前記第2のサブマグネットは、前記撮像ゾーンが、前記第1のサブマグネットと前記第2のサブマグネットとの間にあるように構成され、前記第1のサブマグネットは第1の中央領域を囲み、前記第2のサブマグネットは第2の中央領域を囲み、前記磁場を発生させる手段の磁場線は、前記第1の中央領域及び前記第2の中央領域を通って進む治療装置。
【請求項14】
請求項13記載の治療装置であって、前記第1のサブマグネットは、第1のマグネットの中央領域を囲む第1の中央表面と交差する、前記磁場を発生させる手段から離れる側の方を向く外部表面を有しており、前記ビームが進むことを可能にする、前記第1の中央表面と上記外部表面との間の斜切表面が存在している治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−511369(P2012−511369A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540265(P2011−540265)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055169
【国際公開番号】WO2010/067227
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】