説明

治療製剤

医薬上許容される担体と一緒に一種以上のエポチロンを含む製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は35 U.S.C. 119のもとに2003年10月9日に出願された米国特許出願第10/683,952号、及び2003年10月9日に出願されたPCT出願PCT/US03/032055(これらの夫々が本明細書にそのまま含まれる)の優先権を主張する。
本発明は治療物質の製剤化及び送出に関する。更に特別には、本発明は高増殖性疾患、特に癌の治療のための製剤及び方法に関する。本発明は薬理学及び医療化学の分野に関連を有する。
【背景技術】
【0002】
エポチロンとして知られているポリケチドのクラスがパクリタキセルと同様の作用の様式を有する潜在的な治療薬化合物の源として出現していた(Bollagら, 1995; Service, 1996; Winkler及びAxelsen, 1996; Bollag, 1997; Cowden及びPaterson, 1997)。エポチロン及びエポチロン類似体の関心は或る種のエポチロンがパクリタキセルに対する耐性を発生した腫瘍に対し活性であるという観察(Harrisら, 1999a)だけでなく、望ましくない副作用についての低下された潜在性(Muhlradt及びSasse, 1997)により増大していた。治療効力について研究されているエポチロン及びエポチロン類似体の中に、エポチロンB1(Ozaら, 2000)並びに半合成エポチロンB類似体、“アザエポチロンB”(Colevasら, 2001; Leeら, 2001; McDaidら, 2002; Yamaguchiら, 2002)としてまた知られているBMS-247550 2、及びBMS-310705 3がある。
【0003】
【化1】

【0004】
“エポチロンD”としてまた知られている、デスオキシエポチロンB4は治療効力について研究されているパクリタキセルと比較して有望な抗腫瘍特性を有する別のエポチロン誘導体である(Suら, 1997; Chouら, 1998a; Chouら, 1998b; Harrisら, 1999b; Chouら, 2001; Danishefskyら, 2001b; Martin及びThomas 2001; Danishefskyら, 2002)。この化合物はまた、おそらく高度に反応性のエポキシド部分の欠如のために、12,13-エポキシドを有するエポチロン、例えば、エポチロンB又はBMS-247550よりも小さい毒性を示した。
【0005】
【化2】

【0006】
一般に、薬理学者及び医師は治療製剤が患者コンプライアンス及び投与の容易さを高めるために良好な経口利用能を有することを好む(DeMario及びRatain 1998)。マウスで経口活性を示す製剤がBMS-247550及びBMS-310705について記載されていた(Lee 2002a;b)。しかしながら、これらの化合物はエポチロンDで見られるラクトン酸素及びオレフィンの構造の組み合わせを欠いている。
或るマウスに経口送出されたエポチロンDのポリエチレングリコール-400:エタノール(10:1)製剤(50mg/kgの用量)の単一の論文は腫瘍サイズに関する認められる効果を示さなかった(Chouら, 1998b)。不運なことに、エポチロンDは不十分な水溶性を有し、現在のエポチロンD製剤は溶解性を高めるためにトレード名クレモフォー(登録商標)(BASFアクチエンゲゼルシャフト)として販売されるヒマシ油誘導体可溶化剤を含む。これらの製剤は静脈内送出にのみ適している。現在のエポチロンD製剤は臨床使用及び治療使用に許されているが、クレモフォー(登録商標)は患者の不快及び毒性と関連していた。静脈内送出のためのエポチロンBのクレモフォー(登録商標)を含まない製剤が記載されていた(Van Hoogevest 1999)。それ故、クレモフォー(登録商標)を必要とせず、更に好ましくは、経口送出し得るエポチロンDの増強された製剤を提供することが好ましいであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一局面において、本発明は典型的には、必ずではないが、哺乳類、好ましくはヒトの高増殖性疾患を治療するための医薬組成物を提供する。一実施態様において、本発明はエポチロン及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供し、その担体の実施態様が以下に大いに詳しく記載されるであろう。エポチロンは治療有効濃度で提供され、医薬組成物は治療有効量のエポチロンを経口投与により送出するのに有効である。
本発明により提供される医薬組成物の特別な実施態様において、本発明の医薬組成物は少なくとも一種のシクロデキストリンを含み、更に特別な実施態様において、シクロデキストリンはヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。本発明の別の実施態様において、シクロデキストリンはスルホアルキルシクロデキストリンであり、更に特別な実施態様において、スルホアルキルシクロデキストリンはスルホプロピル-β-シクロデキストリンである。
本発明の別の実施態様において、エポチロン及びシクロデキストリンは凍結乾燥形態で提供され、これは、或る実施態様において、凍結乾燥物“ケーキ”である。
別の実施態様において、本発明の化合物及び組成物はその他の治療薬又は処置と組み合わせて使用される。特別な実施態様において、その他の治療薬として、その他の坑増殖性薬剤、坑増殖性化合物の坑増殖性活性を高める薬剤(例えば、Hsp90のインヒビター)、及び坑増殖性薬剤の望まれない副作用を軽減する薬剤が挙げられる。
本発明の別の局面において、提供される医薬組成物は癌を治療するのに使用される。特別な実施態様において、エポチロンを含む組成物はエポチロンに感受性の癌を治療するのに使用される。
別の実施態様において、提供される医薬組成物は細胞高増殖を特徴とする非癌疾患(例えば、乾癬、再狭窄、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、アテローム硬化症等)を治療するのに使用される。
別の局面において、本発明はこのような治療を要する患者に治療有効用量レベルのエポチロンを与えるのに有効な医薬組成物を提供する。特別な実施態様において、組成物は約0.1mg/m2〜約200mg/m2の用量レベルを与えるのに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一局面において、本発明は典型的には、必ずではないが、哺乳類、好ましくはヒトの高増殖性疾患を治療するための医薬組成物(また単に“組成物”と称される)を提供する。一実施態様において、本発明はエポチロン及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供し、その担体の実施態様が以下に大いに詳しく記載されるであろう。エポチロンは治療有効濃度で提供され、医薬組成物は治療有効量のエポチロンを経口投与により送出するのに有効である。或る実施態様において、医薬組成物は経口投与に適した物理的形態、例えば、軟質ゲルキャップで提供される。
本明細書に使用される“エポチロン”という用語はあらゆるエポチロン、例えば、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、4-デスメチルエポチロンD、アザエポチロンB、21-アミノエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、9,10-デヒドロ-26-トリフルオロ-エポチロンD、11-ヒドロキシエポチロンD、19-オキサゾリルエポチロンD、10,11-デヒドロ-エポチロンD、19-オキサゾリル-10,11-デヒドロ-エポチロンD、9,10-デヒドロエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、26-トリフルオロ-9,10-デヒドロエポチロンB又はD、並びにこれらの類似体及び誘導体(これらに限定されない)を表すのに使用される。こうして、本発明の医薬組成物中に使用されるエポチロンはあらゆるエポチロン、更に特別には、有益な治療特性を有するあらゆるエポチロン(Hoefleら, 1993; Nicolaouら, 1998; Reichenbachら, 1998; Danishefskyら, 1999a; Danishefskyら, 1999b; Hoefleら, 1999; Nicolaouら, 1999a; Nicolaouら, 1999b; Viteら, 1999a; Viteら, 1999b; Viteら, 1999d; c; Hoefleら, 2000a; Hoefleら, 2000b; Danishefskyら, 2001a; Danishefskyら, 2001b; Santiら, 2001; Avery 2002; Danishefskyら, 2002; Nicolaouら, 2002a; Nicolaouら, 2002b; Wessjohann及びScheid 2002; Whiteら, 2002)であってもよい。
【0009】
このようなエポチロンは全化学合成方法、部分化学合成方法、又は化学生合成方法並びに有機化学分野、医療化学分野、及びバイオテクノロジー分野の当業者に知られている物質のあらゆる組み合わせを使用して得られる(Hoefleら, 1993; Hoefle及びKiffe 1997; Hofle及びKiffe 1997; Schinzerら, 1997; 1998; Hofle及びSefkow 1998; Mulzer及びMantoulidis 1998; Nicolaouら, 1998; Reichenbachら, 1998; Schinzerら, 1998; Wessjohann及びGabriel 1998; Wessjohann及びKalesse 1998; Altmannら, 1999; Danishefskyら, 1999a; Danishefskyら, 1999b; Hoefleら, 1999; Hofmannら, 1999; Kim及びBorzilleri 1999; Kim及びJohnson 1999; Klarら, 1999a; b; Mulzer及びMantoulidis 1999; Nicolaouら, 1999a; Nicolaouら, 1999b; Schuppら, 1999; Viteら, 1999a; Viteら, 1999b; Viteら, 1999d; c; Beyer及びMueller 2000; Borzilleriら, 2000; Buchmannら, 2000; Cabral 2000; Georgら, 2000; Gustafsson及びBetlach 2000; Hoefleら, 2000a; Hoefleら, 2000b; Hofleら, 2000; Julienら, 2000; Kim及びJohnson 2000; Liら, 2000; Mulzerら, 2000; Arslanianら, 2001; Danishefskyら, 2001a; Danishefskyら, 2001b; Kim及びJohnson 2001; Klarら, 2001; Kumarら, 2001; Lee 2001; Liら, 2001); (Mulzer及びMartin 2001; Santiら, 2001; Strohhaecker 2001; Viteら, 2001; Avery 2002; Danishefskyら, 2002; Dimarcoら, 2002; Hoefle及びGlaser 2002; Julienら, 2002; Khosla及びPfeifer 2002; Koch及びLoiseleur 2002; Kuesters及びUnternaehrer 2002; Liら, 2002; Nicolaouら, 2002a; Nicolaouら, 2002b; Santiら, 2002a; Santiら, 2002b; Santiら, 2002c; Smithら, 2002; Wessjohann及びScheid 2002; Wessjohannら, 2002; Whiteら, 2002)。有益な治療特性を有するエポチロンの特別な例として、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、4-デスメチルエポチロンD、アザエポチロンB、21-アミノエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、9,10-デヒドロ-26-トリフルオロ-エポチロンD、11-ヒドロキシエポチロンD、19-オキサゾリルエポチロンD、10,11-デヒドロ-エポチロンD、19-オキサゾリル-10,11-デヒドロ-エポチロンD、9,10-デヒドロエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、並びにこれらの類似体及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
本発明により提供される医薬組成物の更に特別な実施態様において、本発明の医薬組成物は少なくとも一種のシクロデキストリンを含む。本明細書に使用される“シクロデキストリン”という用語は天然シクロデキストリン(例えば、α,β,γ-シクロデキストリン等)だけでなく、天然シクロデキストリンの誘導体化形態、例えば、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシエチル化シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル化シクロデキストリン)、スルホアルキル化シクロデキストリン(例えば、スルホプロピル化シクロデキストリン及びスルホブチル化シクロデキストリン)、及びその他の化学的に誘導体化されたシクロデキストリンの両方を含むことを意味する。特別な実施態様において、シクロデキストリンはヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。担体がヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む更に特別な実施態様はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが少なくとも約4.6%の置換度、更に特別には少なくとも約6.5%の置換度を有するものを含む。本発明の医薬組成物の更に特別な実施態様は担体が約4.6%〜約6.5%の置換度を有するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むものである。本発明の別の実施態様において、シクロデキストリンはスルホプロピル-β-シクロデキストリンである。
一実施態様において、医薬組成物中に使用されるエポチロンはエポチロンDである。更に特別な実施態様において、本発明の医薬組成物はエポチロンD及びヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。エポチロンD及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む医薬組成物の更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは少なくとも約4.6%の置換度、更に特別には、少なくとも約6.5%の置換度を有する。本発明の医薬組成物の更に特別な実施態様はエポチロンがエポチロンDであり、かつ担体が約4.6%〜約6.5%の置換度を有するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むものである。エポチロンD及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む本発明の医薬組成物の中で、更に特別な実施態様はエポチロンD及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンがエポチロンD約10mg対ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gの重量比で組み合わされるものを含む。
【0011】
本発明の別の実施態様において、エポチロン及びシクロデキストリンが凍結乾燥形態で提供され、或る実施態様において、それは凍結乾燥物“ケーキ”である。このような実施態様は製薬分野の当業者に良く知られている物質及び技術を使用してつくられる(Gennaro 2000)。一つの特別な実施態様において、エポチロン及びヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンが凍結乾燥されるアルコール-水溶液中で合わされる。更に特別な実施態様はエポチロンD及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンがアルコール-水溶液中で合わされ、次いでそれが凍結乾燥されるものを含む。更に特別な実施態様において、エポチロンD約10mg及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gが60%のtert-ブタノール-水溶液中で合わされ、次いでそれが凍結乾燥される。更に特別な実施態様において、エポチロンD約10mg及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gが60%のtert-ブタノール-水溶液中で合わされ、次いでそれが凍結乾燥されて“ケーキ”を生成する。
驚くことに、上記された、本発明により提供される凍結乾燥物は、医薬上有益な担体、特にクレマフォー(登録商標)を含む担体よりも良く寛容されると予想される医薬上有益な担体中の有益な溶解性を有するとわかった。こうして、別の局面において、本発明は実質的な量のクレマフォー(登録商標)を欠いている医薬上許容される担体中に、上記のエポチロン及びヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンを含む有益な医薬組成物を提供する。本発明の更に特別な実施態様は水、エタノール、及び少なくとも一種のグリコールを含む混合物を使用して上記凍結乾燥物の再生から得られる医薬組成物を含む。本明細書に使用される“グリコール”という用語はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(トレード名トゥイーン80として販売される)の如き分子を含むことを意味する。種々の鎖長及び分子量のグリコール(例えば、ポリエチレングリコール1000、その他のトゥイーン化合物)がこの定義内に含まれることが理解される。治療上の使用について、再生混合物中に使用される水は注射に適している純度の水である。
【0012】
或る実施態様において、凍結乾燥物を再生するのに使用される混合物は水、エタノール及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(トゥイーン80)を含む。更に特別な実施態様において、その混合物は少なくとも約10%の水(%v/v)、更に特別には少なくとも約40%の水(%v/v)、更に特別には、少なくとも約60%の水(%v/v)を含む。或る実施態様において、凍結乾燥物の再生のための混合物は約60%の水〜約70%の水(%v/v)、更に特別には約60%の水〜約65%の水(%v/v)、特別な実施態様において、約62.5%の水(%v/v)を含む。
上記濃度の水を有する再生混合物の或る実施態様において、その混合物は約25%(%v/v)〜約10%(%v/v)、更に特別には約20%(%v/v)〜約15%(%v/v)の濃度のトゥイーン80を更に含む。一つの特別な実施態様において、トゥイーン80は約15%(%v/v)の濃度で用意される。
或る実施態様において、丁度記載された再生混合物は丁度記載された濃度の水及びその濃度のトゥイーン80を含み、混合物の残りはエタノールである。好適な再生混合物の例は10/65/25、20/55/25、40/35/25、62.5/12.5/25、60/20/20、及び60/25/15の水/エタノール/トゥイーン80濃度(%v/v)を含む。別の実施態様において、再生混合物は比40/10/50(%v/v)のプロピレングリコール/エタノール/水である。
【0013】
上記再生混合物は上記の一種以上のエポチロン及びヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン又はスルホアルキル-β-シクロデキストリンの組み合わせのいずれかを使用して生成された凍結乾燥物との使用に適している。更に特別な実施態様はエポチロンDを含む凍結乾燥物の再生から得られる組成物を含む。更に特別な実施態様はエポチロンがエポチロンDであり、かつヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンがヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである凍結乾燥物の再生から得られる組成物を含む。更に特別な実施態様はエポチロンがエポチロンDであり、かつスルホアルキル-β-シクロデキストリンがスルホプロピル-β-シクロデキストリンである凍結乾燥物の再生から得られる組成物を含む。
本発明の或る実施態様は60%のtert-ブタノール-水溶液中で合わされたエポチロンD約10mg及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gから生成された凍結乾燥物、及び10/65/25、20/55/25、40/35/25、62.5/12.5/25、60/20/20、及び60/25/15の水/エタノール/トゥイーン80組み合わせ(%v/v)を含む再生混合物の再生から得られる組成物を含む。更に特別な実施態様において、凍結乾燥物が60%のtert-ブタノール-水溶液中で合わされたエポチロンD約10mg及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gから生成され、かつ再生混合物が62.5/12.5/25、60/20/20、又は60/25/15の水/エタノール/トゥイーン80組み合わせ(%v/v)である。更に特別な実施態様は60%のtert-ブタノール-水溶液中で合わされたエポチロンD約10mg及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン約0.4gから生成された凍結乾燥物、及び62.5/12.5/25の水/エタノール/トゥイーン80組み合わせ(%v/v)を含む再生混合物の再生から得られる組成物である。
【0014】
本発明の別の実施態様において、医薬組成物中に使用されるエポチロンは9,10-デヒドロエポチロンDである。本発明の更に特別な実施態様において、医薬組成物は9,10-デヒドロエポチロンD及びヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。9,10-デヒドロエポチロンD及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む医薬組成物の更に特別な実施態様において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは少なくとも約4.6%の置換度、更に特別には、少なくとも約6.5%の置換度を有する。本発明の医薬組成物の更に特別な実施態様はエポチロンが9,10-デヒドロエポチロンDであり、かつ担体が約4.6%〜約6.5%の置換度を有するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むものである。
本発明の別の実施態様において、エポチロンが医薬上許容される担体に溶解されたエポチロンを含む、注射濃厚液として提供され、注射濃厚液が投与の前に希釈される。本発明の特別な実施態様において、注射濃厚液を生成するのに使用される医薬上許容される担体はアルコール、例えば、エタノールを含む。本発明の更に特別な実施態様において、注射濃厚液を生成するのに使用される医薬上許容される担体はグリコール、例えば、プロピレングリコールとともにアルコールを含む。特別な実施態様において、注射濃厚液はエタノール及びプロピレングリコールを含む医薬上許容される担体に約0.1mg/mL〜約50mg/mLの濃度で溶解された9,10-デヒドロエポチロンDを含む。更に特別な実施態様において、注射濃厚液は約50-90%(v/v)のエタノール及び約10-50%(v/v)のプロピレングリコールを含む医薬上許容される担体に約0.1mg/mL〜約50mg/mLの濃度で溶解された9,10-デヒドロエポチロンDを含む。更に特別な実施態様において、注射濃厚液は約70%(v/v)のエタノール及び約30%(v/v)のプロピレングリコールを含む医薬上許容される担体に約0.1mg/mL〜約50mg/mLの濃度で溶解された9,10-デヒドロエポチロンDを含む。更に特別な実施態様において、注射濃厚液は約70%(v/v)のエタノール及び約30%(v/v)のプロピレングリコールを含む医薬上許容される担体に約1mg/mL〜約10mg/mLの濃度で溶解された9,10-デヒドロエポチロンDを含む。更に特別な実施態様において、注射濃厚液は約70%(v/v)のエタノール及び約30%(v/v)のプロピレングリコールを含む医薬上許容される担体に約5mg/mLの濃度で溶解された9,10-デヒドロエポチロンDからなる。
【0015】
上記注射濃厚液は投与の前に好適な希釈剤中に希釈される。本発明の或る実施態様において、これらの希釈剤は注射用の水に溶解された、上記リストから選ばれた、一種以上のシクロデキストリンを含む。特別の実施態様において、希釈剤は注射用の水に溶解されたヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンを含む。本発明の更に特別な実施態様において、希釈剤は約10mg/mL〜約1000mg/mLの濃度の注射用の水に溶解されたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。本発明の更に特別な実施態様において、希釈剤は約50mg/mL〜約500mg/mLの濃度の注射用の水に溶解されたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。本発明の更に特別な実施態様において、希釈剤は約50mg/mL〜約250mg/mLの濃度の注射用の水に溶解されたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。本発明の更に特別な実施態様において、希釈剤は約133mg/mLの濃度の注射用の水に溶解されたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。本発明の或る実施態様において、注射濃厚液は希釈剤中に約2倍(v/v)〜約20倍(v/v)に希釈される。本発明の特別な実施態様において、注射濃厚液は希釈剤中に約5倍(v/v)〜約15倍(v/v)に希釈される。本発明の更に特別な実施態様において、注射濃厚液は希釈剤中に約10倍(v/v)に希釈される。
こうして、本発明の或る実施態様は担体がアルコール、グリコール、及びシクロデキストリンを含む、医薬上許容される担体に溶解されたエポチロンを含む医薬組成物を提供する。特別な実施態様において、本発明は担体がアルコール、グリコール、及びシクロデキストリンを含む、医薬上許容される担体に溶解された9,10-デヒドロエポチロンを含む医薬組成物を提供する。更に特別な実施態様において、本発明は担体がエタノール、プロピレングリコール、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む、医薬上許容される担体に溶解された9,10-デヒドロエポチロンを含む医薬組成物を提供する。更に特別な実施態様において、本発明は担体が実質的にエタノール、プロピレングリコール、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる、医薬上許容される担体に溶解された9,10-デヒドロエポチロンからなる医薬組成物を提供する。更に特別な実施態様において、本発明は担体が実質的に注射用の水中の約7%(v/v)のエタノール、約3%(v/v)のプロピレングリコール、及び約12%(w/v)のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる、医薬上許容される担体に溶解された約0.5mg/mLの9,10-デヒドロエポチロンからなる医薬組成物を提供する。
作用のいかなる特別な理論により束縛されたくないが、治療有効な組成物を生成するための本明細書に記載された水性再生混合物の一種中のヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン凍結乾燥物の組み合わせの有効性は凍結乾燥物中のヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンとエポチロンの間の錯体、更に特別には、凍結乾燥物中のヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリンとエポチロンの間の包接錯体の形成と合致する。こうして、或る実施態様において、本発明はエポチロンD−ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン錯体、更に特別には、エポチロンD−ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン包接錯体を含む。上記錯体及び包接錯体は凍結乾燥物及び/又は再生溶液中に生成し得る。
【0016】
本発明の組成物の治療適用
本明細書に記載された組成物はエポチロン媒介疾患、即ち、患者、例えば、哺乳類、更に特別にはヒトへのエポチロンの投与に有利に応答する疾患を治療するのに治療有効量のエポチロンを送出するのに有効である。こうして、本発明はまたエポチロン媒介疾患の治療方法を含む。エポチロン媒介疾患の例として、高増殖性疾患、例えば、頭及び首の癌(これらは頭、首、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺の腫瘍、及びパラガングリオーマを含む);肝臓及び胆管樹の癌、特に肝細胞癌腫;腸の癌、特に結腸直腸癌;卵巣癌;小細胞肺癌及び非小細胞肺癌;乳癌肉腫、例えば、繊維肉腫、悪性繊維性組織球腫、胎児性黄紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経繊維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫;中枢神経系の腫瘍、特に脳の癌;リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫、リンパプラスマ細胞様リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、外とう細胞リンパ腫、B系列大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞形成手術大細胞リンパ腫を含む癌が挙げられるが、これらに限定されない。臨床上、本明細書に記載された方法の実施及び組成物の使用は癌増殖のサイズ又は数の減少及び/又は関連症候の軽減(適用可能な場合)をもたらすであろう。病理学的には、本明細書に記載された方法の実施及び組成物の使用は病理学的に適切な応答、例えば、癌細胞増殖の抑制、癌もしくは腫瘍のサイズの減少、更なる転移の阻止、及び腫瘍血管形成の抑制を生じるであろう。
【0017】
本発明の方法及び組成物は治療薬と組み合わせて使用し得る。換言すれば、本発明の化合物及び組成物は一種以上のその他の所望の治療薬又は医療処置と同時、その前、又はその後に投与し得る。組み合わせ養生法における治療薬及び処置の特別な組み合わせは治療薬及び/又は処置の適合性並びに得られる所望の治療効果を考慮するであろう。こうして、本明細書に記載された組成物はその他の治療方法、例えば、手術及び/又は放射線と組み合わされ得る。また、本明細書に記載された組成物はその他の腫瘍崩壊薬、例えば、5-フルオロウラシル又は5'-デオキシ-5-フルオロ-N-〔(ペンチルオキシ)カルボニル〕-シチジン(トレード名キセロダ(登録商標)(ロシェ)として販売される)と組み合わせて使用し得る。その他の抗癌剤の例示の例として、(i)アルキル化薬、例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド、(ii)坑代謝薬、例えば、メトトレキセート、(iii)微小管安定剤、例えば、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、及びジスコデルモリド、(iv)血管形成インヒビター、及び(v)細胞傷害性抗生物質、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、及びマイトマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。その他の抗癌処置の例示の例として、(i)手術、(ii)放射線治療、及び(iii)光力学的治療が挙げられる。
別の実施態様において、本発明の化合物及び組成物は本発明の化合物又は組成物からの潜在的な副作用、例えば、下痢、悪心及び嘔吐を軽減するための薬剤又は処置と組み合わせて使用される。下痢は坑下痢薬、例えば、オピオイド(例えば、コデイン、ジフェノキシレート、ジフェノキシン、及びロエラミド)、ビスマスサブサリチレート、及びオクトレオチドで治療し得る。悪心及び嘔吐は鎮吐薬、例えば、デキサメタゾン、メトクロプラミド、ジフェニルヒドラミン、ロラゼパム、オンダンセトロン、プロクロルペラジン、チエチルペラジン、及びドロナビノールで治療し得る。
【0018】
本発明の別の局面において、本発明の化合物は細胞高増殖を特徴とする非癌疾患を治療するのに使用される。このような疾患の例示の例として、萎縮性胃炎、炎症性溶血性貧血、移植片拒絶、炎症性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、小児脂肪便症、脱髄鞘神経障害、皮膚筋炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)、多発性硬化症、心筋炎、筋炎、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、尋常性天疱瘡、原発性腎炎、乾癬、手術癒着、狭窄又は再狭窄、強膜炎、硬皮症、湿疹(アトピー性皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)、歯周疾患(即ち、歯周炎)、多発性のう胞腎疾患、及びI型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。その他の例として、脈管炎(例えば、巨細胞動脈炎(一時性動脈炎、タカヤス動脈炎)、結節性多発動脈炎、アレルギー性血管炎及び肉芽腫症(チャーグ-ストラウス病)、多発血管炎オーバーラップ症候群、過敏性脈管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、血清病、薬物誘発脈管炎、感染性脈管炎、腫瘍性脈管炎、結合組織疾患と関連する脈管炎、補体系の先天性欠陥と関連する脈管炎、ウェーグナー肉芽腫症、カワサキ病、中枢神経系の脈管炎、バージャー病及び全身性硬化症);胃腸道疾患(例えば、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、原発性硬化性胆管炎、突発性を含むあらゆる原因の良性狭窄(例えば、胆管、食道、十二指腸、小腸又は結腸の狭窄);呼吸道疾患(例えば、喘息、過敏性肺炎、アスベスト肺、けい肺及びじん肺のその他の形態、慢性気管支炎及び慢性閉塞性気道疾患);鼻涙管疾患(例えば、突発性を含むあらゆる原因の狭窄);及びエウスタキオ管疾患(例えば、突発性を含むあらゆる原因の狭窄)が挙げられる。
【0019】
このような疾患の治療方法はそれらを患っている対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。その方法は必要により反復されてもよい。本発明の方法が三つの例示の非癌疾患に関して以下に大いに詳しく記載される。
一実施態様において、本発明の化合物は皮膚に蓄積して高められた、りん片状病変を形成するケラチノサイトの細胞高増殖を特徴とする症状である、乾癬を治療するのに使用される。その方法は乾癬を患っている対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。その方法は病変の数もしくは重度を低減し、又は病変を排除するために必要により反復されてもよい。臨床上、その方法の実施は皮膚病変のサイズもしくは数の減少、皮膚の症候(痛み、冒された皮膚の灼熱及び出血)の減少及び/又は関連症候(例えば、関節の赤み、熱、膨化、下痢、腹痛)の減少をもたらすであろう。病理学上、その方法の実施は下記の少なくとも一つをもたらすであろう:ケラチノサイト増殖の抑制、皮膚炎症の軽減(例えば、吸引因子及び成長因子、抗原提示、反応性酸素種及びマトリックスメタロプロテイナーゼの生成に影響することによる)、及び皮膚血管形成の抑制。
別の実施態様において、本発明の化合物は脳中の進行性髄鞘脱落を特徴とする症状である、多発性硬化症を治療するのに使用される。髄鞘の損失に関係する正確なメカニズムは理解されていないが、髄鞘破壊の領域に星状細胞増殖及び蓄積の増大がある。これらの部位に、髄鞘の破壊の少なくとも部分的な原因であるマクロファージ様活性及び増大されたプロテアーゼ活性がある。その方法は多発性硬化症を患っている対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。その方法は星状細胞増殖を抑制し、かつ/又は運動機能の損失の重度を少なくし、かつ/又はその疾患の慢性の進行を阻止もしくは弱化するために必要により反復されてもよい。臨床上、その方法の実施は視覚の症候(視覚損失、二重視)、歩行障害(衰弱、軸不安定、知覚損失、痙直、反射亢進、器用さの損失)、上肢機能不全(衰弱、痙直、知覚損失)、膀胱機能不全(切迫、失禁、躊躇、不完全な空化)、鬱病、情緒不安定、及び認識障害の改善をもたらすであろう。病理学上、その方法の実施は下記の一つ以上、例えば、髄鞘損失、血液-脳関門の破壊、単核細胞の脈管周囲の浸潤、免疫異常、神経膠瘢痕形成及び星状細胞増殖、メタロプロテイナーゼ生成、並びに損なわれた伝達速度の軽減をもたらすであろう。
【0020】
別の実施態様において、本発明の組成物は時折冒された関節の破壊及び強直をもたらす多系の慢性の、再発性の、炎症性疾患である、慢性関節リウマチを治療するのに使用される。慢性関節リウマチは関節空間に延びる絨毛突起を形成する滑膜の著しい肥大、滑膜細胞ライニングの多層化(滑膜細胞増殖)、白血球細胞(マクロファージ、リンパ球、プラズマ細胞、及びリンパ系小胞;“炎症性滑膜炎”と称される)による滑膜の浸潤、及び滑膜内の細胞壊死によるフィブリンの付着を特徴とする。このプロセスの結果として形成された組織がパンヌスと称され、最終的にパンヌスが成長して関節空間を充満する。パンヌスは滑膜炎の発生に必須である血管形成のプロセスにより新しい血管の広範な網状構造を発生する。パンヌス組織の細胞からの消化酵素(マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ストロメリシン))及び炎症プロセスのその他の媒介物質(例えば、過酸化水素、スーパーオキサイド、リソソーム酵素、及びアラキドン酸代謝の産物)の放出が軟骨組織の進行性破壊をもたらす。パンヌスは関節軟骨を侵食して軟骨組織の侵食及び断片化をもたらす。最終的に、繊維強直そして最終的には関係する関節の、骨強直による肋軟骨下の骨の侵食がある。
別の実施態様において、本発明の組成物は、特にその遮断阻害が血管内ステントで治療し得る患者の、アテローム硬化症及び/又は再狭窄を治療するのに使用される。アテローム硬化症は動脈壁中の正常な血管平滑筋細胞(“VSMC”)(これらは通常血流を調節する血管トーンを調節する)の幾つかが、それらの性質を変化し、“癌のような”挙動を発生する慢性血管損傷である。これらのVSMCは異常増殖性の、分泌物質(成長因子、組織分解酵素及びその他のタンパク質)(それらはそれらが内部血管ライニングを侵食し、その中に広がり、血流を遮断し、その血管を異常に局所の血液凝固により完全に遮断され易くすることを可能にする)になる。正しい処置後の狭窄又は動脈狭窄の再発である、再狭窄は、アテローム硬化症の促進された形態である。また、本発明の組成物はステントに治療有効量のエポチロンを含む被覆物を与え、アテローム硬化症を患っている対象中の疾患動脈にステントを送出するのに使用し得る。化合物によるステントの被覆方法が、例えば、米国特許第6,156,373号及び同第6,120,847号により記載されている。臨床上、本発明の実施は下記の一つ以上をもたらすであろう:(i)増大された動脈血流、(ii)疾患の臨床兆候の重度の軽減、(iii)再狭窄の速度の低下、又は(iv)アテローム硬化症の慢性進行の阻止/弱化。病理学上、本発明の実施はステント移植の部位で下記の少なくとも一つを生じるであろう:(i)炎症応答の軽減、(ii)マトリックスメタロプロテイナーゼのVSMC分泌の抑制、(iii)平滑筋蓄積の抑制、及び(iv)VSMC表現型逆分化の抑制。
【0021】
用量レベル及び投与
一実施態様において、本発明の組成物は用量レベルのエポチロン、特にエポチロンD、又はエポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、4-デスメチルエポチロンD、アザエポチロンB、21-アミノエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、9,10-デヒドロ-26-トリフルオロ-エポチロンD、11-ヒドロキシエポチロンD、19-オキサゾリルエポチロンD、10,11-デヒドロ-エポチロンD、19-オキサゾリル-10,11-デヒドロ-エポチロンD、9,10-デヒドロエポチロンB、9,10-デヒドロエポチロンD、26-トリフルオロ-9,10-デヒドロエポチロンD、及び26-トリフルオロ-9,10-デヒドロエポチロンBからなる群から選ばれたエポチロンを与えるのに有効であり、その用量は細胞増殖を特徴とする癌又は非癌疾患を患っている対象に投与されるべきであり、約0.1mg/m2から約200mg/m2までのオーダであり、これらは巨丸剤(経口投与又は静脈内投与を含む、あらゆる好適な投与の経路の)又は必要に応じて毎週、2週毎、又は3週毎の連続注入(例えば、1時間、3時間、6時間、24時間、48時間又は72時間)として投与されてもよい。しかしながら、特別な患者に特別な投薬レベルは種々の因子に依存することが理解されるであろう。これらの因子として、使用される特別な化合物の活性;対象の年齢、体重、全般の健康、性別、及び食事;投与の時期及び経路並びに薬物の排泄の速度;薬物組み合わせが治療に使用されるか否か;並びに治療される症状の重度が挙げられる。
別の実施態様において、用量レベルは必要に応じて、また寛容されるのに応じて3週毎に1回で約10mg/m2から約150mg/m2まで、好ましくは約10mg/m2から約75mg/m2まで、更に好ましくは約15mg/m2から約50mg/m2までである。別の実施態様において、用量レベルは必要に応じて、また寛容されるのに応じて2週毎に1回で約1mg/m2から約150mg/m2まで、好ましくは約10mg/m2から約75mg/m2まで、更に好ましくは約25mg/m2から約50mg/m2までである。別の実施態様において、用量レベルは必要に応じて、また寛容されるのに応じて毎週1回で約1mg/m2から約100mg/m2まで、好ましくは約5mg/m2から約50mg/m2まで、更に好ましくは約10mg/m2から約25mg/m2までである。別の実施態様において、用量レベルは必要に応じて、また寛容されるのに応じて毎日1回で約0.1mg/m2から約25mg/m2まで、好ましくは約0.5mg/m2から約15mg/m2まで、更に好ましくは約1mg/m2から約10mg/m2までである。
【0022】
別の実施態様において、用量レベルは必要に応じて、また寛容されるのに応じて3週毎に1回で約0.1mg/m2から約50mg/m2まで、好ましくは約0.1mg/m2から約25mg/m2まで、更に好ましくは約0.5mg/m2から約25mg/m2までである。
毒性限界が超えられないことを確実にするために、末梢神経障害(これは肢のしびれ、眩暈等として発現し得る)を含む、副作用が監視される。監視は注入後の或る適切な時期に始まるべきである。一般に、用量が低い程、治療と監視の間の間隔が長い。例えば、注入当り9〜60mg/m2の用量レベルでは、監視は典型的には5日目に始まり、15日目まで続くであろう。しかしながら、一層高い用量、例えば、90〜120mg/m2では、監視は注入が終了された後の日に始まるべきである。その他の副作用として、はきけ及び嘔吐、疲労、発疹、脱毛症、及び生存徴候の変化、例えば、起立性低血圧が挙げられるかもしれない。骨髄機能低下がまた監視されるべきであるが、骨髄機能低下はこの薬物では一般に見られない。骨髄機能低下は貧血、好中球減少、血小板減少等として発現し得る。
一般に、薬物速度論が有利である。薬物速度論は用量依存性ではなく、用量に関するAUCの依存性は9mg/m2から150mg/m2まで線形であった。エポチロンDの半減期は9.6±2.2時間の平均値であり、分布の容積(VZ)は172±74Lであり、良好な薬物浸透を示す。これはパクリタキセルに関する値(これは140±70Lである)よりも平均で若干高い。これらの薬物速度論パラメーターは最初の注入と較べて第二の注入について変化しない。
薬物の有効性は中間期細胞中の微小管の結束を測定することにより監視し得る。これはパクリタキセル又はエポチロンの如き微小管安定剤の有効性の妥当なインジケーターと考えられる。束形成は免疫蛍光又はウェスタンブロッティングにより容易に測定し得る。典型的な測定において、全血が患者から集められ、単核細胞(PBMC)が束形成の評価のために単離される。用量が18mg/m2程度に低い場合に、かなりの量の束形成が得られ、これは用量につれて増大する。120mg/m2で、微小管の殆どが結束される。
【実施例】
【0023】
下記の実施例は本発明の或る局面を説明し、当業者が本発明を実施することを助ける。これらの実施例は本発明の範囲を如何なる様式でも何ら限定しない。
実施例1
エポチロンD−ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン凍結乾燥物の生成
エポチロンD10ミリグラム(“mg”)及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(“HPβCD”)0.4グラム(“g”)の組み合わせを60%のtert-ブタノール-水に溶解して溶液1ミリリットル(“mL”)をつくった。エポチロンD10mg及びマンニトール10mgを60%のtert-ブタノール-水に溶解した第二溶液を調製した。60%のtert-ブタノール-水中のエポチロンD10mg及びマンニトール10mgの第三溶液をまた調製した。10mg/mLのエポチロンDを含む製剤溶液を凍結乾燥のための8mLのガラスバイアルに注入した。
市販の凍結乾燥装置を使用して、3種の溶液の夫々を凍結乾燥して優れた凍結乾燥物ケーキを生成した。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むケーキはその他の2種のケーキよりも硬質であり、かつ平滑ではないことが明らかであった。
実施例2
エポチロンD−ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン凍結乾燥物の再生及び通常生理食塩溶液中の溶解性
節0に記載されたようにつくられた凍結乾燥物の溶解性を周囲温度(即ち、約20℃〜約25℃の温度)で種々の再生溶媒について測定した。エポチロンD約1mgをガラス試験管に入れた。100マイクロリットル(“μL”)、900μL、及び9.0mLの容積の溶液をつくるための再生溶媒の連続希釈を試験管について行なった。再生組成物の夫々の添加後に、溶液を30秒にわたって激しく振とうした。凍結乾燥物の溶解後に、通常生理食塩溶液による希釈後の溶解性を測定した。
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを使用してつくられた凍結乾燥物のみが望ましい溶解性(即ち、約1mg/mLより大きい溶解性)を示した。種々の再生溶媒に関する結果を表1に示す(“WfI”は水であり、“PG”はプロピレングリコールであり、“EtOH”はエタノールであり、かつ“PEG400”はポリエチレングリコール400である。記号“D”は溶解を示し、文字“P”は沈殿を示す)。
【0024】
表1

【0025】
結果は最良の結果が3成分溶媒系:WfI/EtOH/トゥイーン80=60/25/15(%v/v)(これは沈殿しないで100倍程度に大きく通常生理食塩溶液中に希釈し得る)で得られることを示す。トゥイーン80の量が約20容積%より多く、又は10容積%より少なかった組成物は、それ程有利ではない希釈性能を示した。
実施例3
エポチロンDの経口活性
夫々5匹のラットの、3種の試験グループがエポチロンDのi.v.用量(10mg/kg)、20mg/kgのエポチロンDの経口用量、又は40mg/kgのエポチロンDの経口用量を受け取った。血液サンプルを投薬後の24時間の期間にわたってラットから集めた。20mg/kg及び40mg/kgの経口用量における絶対生物学的利用能は夫々7-10%及び10-20%の範囲であった。半減期はi.v.グループについて8時間であり、また経口グループについて5.6-6時間であった。予想されたように、Cmaxは有意に高く、クリアランスはi.v.投薬で速かった。
同様の研究において、3匹のビーグル犬はエポチロンDの単一の2mg/kgのi.v.用量続いて1週間隔で1:10に希釈されたi.v.投薬と同じビヒクル(30%のプロピレングリコール、20%のクレモフォー(登録商標)、及び50%のエタノール)中の強制飼養により投与されたエポチロンDの2mg/kg及び4mg/kgの経口用量を受けた。血液サンプルを投薬前、注入の終了時、又は投薬後48時間にわたる経口投与後の投薬直後に集めた。血液学及び血液化学を監視して動物が夫々の投薬前に回復したことを確実にした。i.v.エポチロンDを受ける犬はかなりの過敏性反応を経験したが、経口投薬が良く寛容された。
2ng/mL-500ng/mLの範囲にわたって有効化されたLC/MS/MSアッセイを使用して犬からの血漿サンプルを分析し、Kineticaバージョン4.1.1(インナフェース社、フィラデルフィア、PA)を使用してデータを分析した。非区画分析を使用して薬物速度論パラメーターを計算し、2区画血管外モデルを使用してモデル化した。2mg/kg及び4mg/kgの経口用量について計算したAUCは夫々9,856±3,879ng*時間/mL及び15,486±8,060ng*時間/mLであり、経口生物学的利用能は>50%であった。経口投薬による平均半減期は9.13時間であり、半減期は4mg/kgの用量で若干長かった(2mg/kgの用量について10.9時間対6.4時間)。経口投薬による平均クリアランスは0.27L/時間/kgであり、Vssは2.57L/kgであり、かつMRTは9.81時間であった。クリアランス、Vss、MRT、及び半減期はi.v.投薬で観察されたのと実質的に同じであった。
これらのデータはエポチロンDが良好な経口生物学的利用能を有することを実証し、癌患者又はその他の高増殖性症状もしくは疾患を患っている患者への経口投与が実現可能であることを示唆する。
【0026】
実施例4
9,10-デヒドロエポチロンDの生成
トランス-9,10-デヒドロエポチロンDを70%(v/v)のエタノール及び30%(v/v)のプロピレングリコールに5mg/mLの濃度で溶解することにより、注射濃厚液を調製した。注射濃厚液(2mL+0.2mL超過充填)を5mLの型Iガラス血清バイアル(22mmの口)に無菌充填し、20mmのテフロン(登録商標)被覆ストッパーで閉じ、白色ラッカーで塗られたフリップオフ・クリンプシールでシールした。無菌の、乾燥窒素を使用して夫々のバイアルへの注射濃厚液の充填中に空気を置換した。
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを注射用の水に133mg/mLの濃度で溶解することにより、希釈剤を調製した。希釈剤(18mL)を20mLの型Iガラス血清バイアル(22mmの口)に無菌充填し、20mmのテフロン(登録商標)被覆ストッパーで閉じ、白色ラッカーで塗られたフリップオフ・クリンプシールでシールした。
トランス-9,10-デヒドロエポチロンDの非経口投薬形態を、注射濃厚液2mLを除去し、それを希釈剤18mLを含むバイアルに添加することにより調製した。トランス-9,10-デヒドロエポチロンD0.5mg/mLを含む得られる溶液を穏やかに混合した。非経口投薬形態を食塩溶液(0.9%w/vのNaCl)中で更に希釈して一層低いトランス-9,10-デヒドロエポチロンD濃度の注射溶液を得てもよい。典型的には、これらの希釈液は約0.05mg/mLから約0.1mg/mLまでの範囲であるが、治療上の要望に応じて変化してもよい。
【0027】
参考文献
下記の文献があらゆる目的のために参考として本明細書にそのまま含まれる。








【0028】





【0029】




【0030】




【0031】




【0032】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬上許容される担体と一緒に9,10-デヒドロエポチロンを含む医薬組成物であって、9,10-デヒドロエポチロンが患者への投与後に治療上許容される濃度で与えられることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
9,10-デヒドロエポチロンが9,10-デヒドロ-12,13-デスオキシエポチロンである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
9,10-デヒドロエポチロンが9,10-デヒドロエポチロンDである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
9,10-デヒドロエポチロンがトランス-9,10-デヒドロ-エポチロンDである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
組成物が少なくとも一種のシクロデキストリンを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
シクロデキストリンがβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及びスルホプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選ばれる、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
シクロデキストリンがヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物が更にグリコールを含む、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項9】
グリコールがプロピレングリコールである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
組成物が更にエタノールを含む、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物が更にエタノールを含む、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬上許容される担体がシクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコールを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬上許容される担体中にトランス-9,10-デヒドロエポチロンDを含む医薬組成物であって、医薬上許容される担体がヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、エタノール、及びプロピレングリコールを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
医薬上許容される担体が約5%w/v〜約20%w/vのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、約5%v/v〜約20%v/vのエタノール、及び約1%v/v〜約10%v/vのプロピレングリコールを含む、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬上許容される担体が約12%w/vのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、約7%v/vのエタノール、及び約3%v/vのプロピレングリコールを含む、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬上許容される担体が水中の実質的に約12%w/vのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、約7%v/vのエタノール、及び約3%v/vのプロピレングリコールからなる、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬上許容される担体中に9,10-デヒドロエポチロンを含む注射濃厚液であって、9,10-デヒドロエポチロンが注射濃厚液の希釈及び患者への投与後に治療上許容される濃度で与えられることを特徴とする注射濃厚液。
【請求項18】
医薬上許容される担体がエタノール及びプロピレングリコールを含む、請求項17記載の注射濃厚液。
【請求項19】
医薬上許容される担体が約10%v/v〜約50%v/vのプロピレングリコールと一緒に約50%v/v〜約90%v/vのエタノールを含む、請求項17記載の注射濃厚液。
【請求項20】
医薬上許容される担体が約70%v/vのエタノール及び約30%v/vのプロピレングリコールを含む、請求項17記載の注射濃厚液。

【公表番号】特表2007−524655(P2007−524655A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534412(P2006−534412)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033339
【国際公開番号】WO2005/034964
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】