治療適用および/または診断適用のための充填可能なポリホスファゼン含有粒子、ならびにその調製方法および使用方法
治療手順および/または診断手順に使用される粒子が提供される。上記粒子には、粒子全体にわたって存在する、または粒子の外部コーティングに存在するポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体が含まれる。また、上記粒子には、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを有するコアも含めることができる。また、硫酸バリウムが粒子のコアにコーティングとして加えられても、粒子のコア内に吸収されてもよい。上記粒子は、哺乳動物中の血管の少なくとも一部を閉塞することによって哺乳動物組織への血流を最小限にするため、または少なくとも1種類の粒子を局所領域と接触させることによって哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達するために使用することができる。さらに、上記粒子は、経口投与のための活性物質を含む徐放処方物、哺乳動物の血流中に注入するトレーサー粒子、または超音波画像化に使用する上で有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年5月24日に出願された米国仮特許出願第60/684,307号、および2004年10月25日に出願された米国仮特許出願第60/621,729号の米国特許法第119条(e)項による優先権の利益を有し、これらの全ての開示は、本明細書に参考として組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
微粒子およびナノ粒子を含む小粒子は、診断および治療手順において多くの医学的用途を有する。医学的用途において使用される先行技術の粒子の殆どは、接触する組織の炎症や有害な免疫反応の誘起を含む多くの不利な点によって特徴付けられる。
【0003】
さらに、先行技術の粒子を調製するために使用される材料の多くは、哺乳動物の体内で比較的急速に分解され、その結果、長期間にわたる無傷の粒子の存在が必要となる特定の手段において、それらの有用性が損なわれる。さらに、先行技術の材料の分解は、患者において有害な反応を引き起こす有毒または刺激性の化合物を遊離する可能性がある。
【0004】
特定のタイプの先行技術の粒子にとっては、治療する身体の部位に注射するために粒子を送達懸濁液に取り込むに当たって、所望の懸濁特性を達成することが困難であることが当該分野において問題となっている。多くの場合、粒子は溶液中で沈殿するか、または「浮遊する」傾向にあるため、均一に懸濁されず、均一な送達を行うことができない。さらに、粒子は送達溶液中で凝集または凝塊形成する、および/または送達装置の一部に付着する傾向にあり、これらの接着力/引力の分を補う必要がある。
【0005】
安定した分散を達成するには、粒子の引力相互作用の破壊をもたらす界面活性物質を含めた適切な分散剤を加えることが知られている。粒子の相互作用の特性によって、以下の材料、即ち、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)80、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム等の陽イオン性、陰イオン性または非イオン性界面活性物質、血清アルブミン等の種々の天然のタンパク質、その他いずれかの高分子界面活性物質が、送達組成物中で使用されることがある。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖またはデキストリン等の増粘剤が、沈殿による粒子の沈降を防止し、溶液の粘度を増加させるために使用することも可能である。浮力を達成するために、密度添加剤を使用してもよい。
【0006】
また、水性懸濁液中で清澄で透明な高分子アクリレートヒドロゲルを使用する際に、懸濁の度合を測定するため、溶液中で微小粒子を可視化することも困難である。粒子状で不活性沈殿物である硫酸バリウムを使用する試みが、骨用セメントのため、およびX線検査時に製品を可視化するシリコーンのため、並びに高分子アクリレート粒子に放射線不透過性を与えるための添加剤として知られている。非特許文献1を参照されたい。また、硫酸バリウムは流動化を向上させるものとして知られており、湿った凝集粒子に抗固着性質を付与する無機充填材としてしばしば使用されている。微小粒子を可視化を向上させるその他の先行技術の試みには金の使用が含まれ、例えばEmbosphere Gold(登録商標)は少量の金を使用してアクリレート微小粒子に赤紫色の色を与えている。
【非特許文献1】Jayakrishnan et al.,Bull.Mat.Sci.,(1989)Vol.12,No.1,pp.17−25
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当該技術分野では、哺乳動物システムの自然のシステムによって分解されず、生体適合性を有し、抗凝集性を有し、使用中に懸濁液内で容易に可視化され、および/または許容される物理的および懸濁特性を実証する、様々な治療および診断手順等の特定用途のために優先的な、通常は球形をした形状となるように形成することができる小粒子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、治療手順および/または診断手順に使用するための粒子を含む。上記粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む。
【0009】
また、哺乳動物の組織への血流を最小限にする方法であって、少なくとも1種類の粒子を使用して上記哺乳動物中の血管の少なくとも一部を閉塞することを含み、上記粒子がポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む方法も含まれる。
【0010】
さらに、本明細書には、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の粒子並びに活性物質を上記局所領域に接触させて、有効量の上記活性物質が上記局所領域に接触するようにすることを含む方法が開示されている。
【0011】
また、本発明には、経口投与用の活性物質の徐放処方物であって、上記処方物がポリマーカプセルおよび活性物質を含み、上記ポリマーカプセルがポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む処方物が含まれる。
【0012】
さらに、本発明は、哺乳動物中の血管を通った粒子の通過を追跡する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体並びに造影剤を含む、少なくとも一種類のトレーサー粒子を哺乳動物の血流に注入し、当該粒子の経路を画像化することを含む方法を含む。
【0013】
また、本明細書には、向上した超音波画像化方法が開示されている。上記方法は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む、少なくとも1種類の中空マイクロカプセルを超音波被験体の領域に投与し、超音波を使用して上記被験体領域を画像化することを含む。
【0014】
また、本発明は、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の粒子並びに活性物質を上記局所領域に接触させて、有効量の上記活性物質が上記局所領域に接触するようにし、上記粒子が密度を増加させる物質を含む方法を含む。
【0015】
さらに、アクリルベースのポリマーから形成される粒子の凝塊形成および/または凝集を最小限にする方法であって、上記粒子のコアおよび/または表面に硫酸バリウムを提供することを含む方法が開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書には、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を使用して製造され得る粒子、並びに当該粒子の製造方法が開示されている。さらに、本明細書には、本明細書に開示される粒子を使用した治療および/または診断方法および手順(上記粒子を使用した塞栓形成法を含む)、上記粒子を使用した活性物質の(経口または局所)送達方法、上記粒子を使用して身体を通過する血液またはその他の体液を追跡または可視化する方法、および上記粒子を使用する向上した超音波(断層撮影)方法が開示される。
【0017】
また、胃腸系への活性物質の局所送達および/または活性物質の全身送達のための粒子を含む経口投与のための徐放性薬物送達処方物、並びに活性物質の局所送達のために皮下または静脈に注射することのできる徐放性薬物送達処方物が含まれる。
【0018】
本発明の全ての方法、組成物および処方物は、本明細書に開示される少なくとも1種類の粒子を利用する。本明細書で使用される「粒子」は、後述する特定の方法および用途での使用に適したいずれかの直径を有する、概ね球形または楕円形の粒子、中空または固体を意味し、微粒子、ナノ粒子、ビーズ、および当該技術分野で公知である同様の性質のその他の物体を含む。
【0019】
本明細書に開示される一実施態様による本発明の好ましい粒子は、その全部または一部が、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]またはポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]の誘導体として知られる特定のポリホスファゼンポリマーを含む。上記特定ポリマーの使用は、無機ポリマー主鎖を含むという点で少なくとも部分的に無機的であり、且つ哺乳動物(ヒトおよび動物を含む)に導入した時に特異的または非特異的免疫システムを引き起こさないという点で生体適合的でもある粒子もたらす。また、本発明の範囲には、制御された薬物送達媒体として、または血管およびその他の器官を可視化するトレーサー粒子としての当該粒子の使用も含まれる。
【0020】
上記粒子は、血管を閉塞する上で十分に大きなサイズで、並びにこれよりも小さな管を容易に通過する上で十分に小さなサイズで調製することができるため、例えば可視化または薬物送達等の目的の種々の治療手順および/または診断手順において有用である。さらに、上記ポリマーの生体適合的性質のため、上記粒子は、異物が哺乳動物の身体に取り込まれた時に通常発生する免疫反応、例えば「移植片拒絶」または「アレルギー性ショック」、並びに免疫システムのその他の有害な反応の回避または排除を促進する。さらに、本発明の粒子は、インビボにおける生分解の減少を呈するため、生物学的環境における粒子の長期的な安定性を向上させることが明らかになっている。さらに、粒子中のポリマーによって何らかの分解が起こる状況では、上記分解から遊離する生成物に無毒量のリン、アンモニアおよびトリフルオロエタノールのみが含まれ、これは、有利なことに、哺乳動物組織と接触した際に抗炎症反応を促進することが知られている。
【0021】
本発明の各粒子は、ポリマー、ポリ[ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]またはその誘導体(本明細書中ではさらに「ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]」または「PTFEP」とも呼ばれる)で一部が形成される。上記の好ましいポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]ポリマーは、以下に示す式(I)によって表わされるモノマーの繰り返しによって構成される:
【0022】
【化1】
式中のR1〜R6は全てトリフルオロエトキシ(OCH2CF3)基であり、nは少なくとも約100からより大きな分子長まで変化する可能性があり、好ましくはnが約4,000〜約300,000であり、さらに好ましくはnが約4,000〜約3,000であり、最も好ましくはnが約13,000〜約30,000である。また、本発明の粒子の調製においては、上記ポリマーの誘導体も使用することができる。「誘導体」とは、1以上のR1〜R6官能基または主鎖原子が異なる原子または官能基によって置換されている式(I)の構造を有するモノマーによって構成されるポリマーであって、ポリマーの生物学的不活性が殆ど変わらないポリマーを意味する。具体的な官能基には、エトキシ(OCH2CH3)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ(OCH2CF2CF3)、2,,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピルオキシ(OCH(CF3)2)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ(OCH2CF2CF2CF3)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルオキシ(OCH2(CF2)7CF3)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルオキシ(OCH2CF2CHF2)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルオキシ(OCH2CF2CF2CF3)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチルオキシ(OCH2(CF2)7CHF2)が含まれる。さらに、いくつかの実施態様では、1%以下のR1〜R6基が、さらに弾性のホスファゼンポリマーを得るための架橋を補助するアルケノキシ基であることもあり、これらには、OCH2CH=CH2、OCH2CH2CH=CH2またはアリルフェノキシ基が含まれる。
【0023】
本発明の粒子を調製するために使用されるポリマーの分子量は、上記式に基づく分子量を有することが好ましく、さらに好ましくはポリマーが少なくとも約70,000g/モルの分子量、さらに好ましくは少なくとも約1,000,000g/モルの分子量、さらに好ましくは少なくとも約3×106g/モル〜約20×106g/モルの分子量を有する。最も好ましくは、少なくとも約10,000,000g/モルの分子量を有するポリマーである。
【0024】
本発明によって形成される粒子の直径は、粒子が使用される最終応用によって必然的に変化する。当該粒子の直径は、好ましくは約1μm〜約5,000μmであり、約1μm〜約1,000μmの直径が最も好ましい。その他のよくあるサイズには、約200μm〜約500μm、約1μm〜約200μm、および約500μm以上が含まれるが、種々の組み合わせの粒子サイズ、並びに約1μm〜約5,000μmという広い範囲内の種々の範囲が本開示の範囲内にあることが、本開示に基づき理解されるはずである。1種類以上の粒子を含むことが好ましい粒子を使用した方法では、全ての粒子が同じ直径または形状をしている必要はない。しかし、本発明によれば、以下の模範的な範囲を有する、正確に測定された粒子を調製することが可能である:
100μm±25μm
250μm±50μm
400μm±50μm
500μm±50μm
700μm±50μm
900μm±50μm。
また、前述のような種々の範囲、例えば500〜700μmの範囲の粒子も、配合用途のために調製および混合できる可能性があることも、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
また、上記粒子は、調製時または治療および/または診断用途のいずれかにおいて、ポリマーまたは粒子の性質を向上、変化またはその他により修正するために作用するその他の化合物が含まれることもある。例えば、ペプチド、タンパク質、ホルモン、炭水化物、多糖類、核酸、脂質、ビタミン、ステロイド等の活性物質、および有機または無機物質が粒子に取り込まれることもあれば、デキストラン、その他の糖類、ポリエチレングリコール、グルコース等の賦形剤、並びに例えばグルタミン酸キトサンを含む種々の塩が粒子に取り込まれることもある。
【0026】
さらに、希望に応じて、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体以外のポリマーを粒子に含ませてもよい。ポリマーの具体例には、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸コポリマー)、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、およびポリウレタンが含まれる。その他のポリマーには、ポリアクリレート、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アシル置換アセチルセルロースおよびその誘導体、分解性または非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、およびポリエチレンオキシドが含まれる。また、本明細書に開示されるように、すでに形成された粒子のマトリックス中に追加の化合物を含有、拡散、挿入または封入する方法、または粒子の調製時にポリマー溶解物またはポリマー溶媒に追加の化合物を加える方法を含めた、当該技術分野で公知であるいずれかの方法によって、選択された化合物を取り込むことも可能である。
【0027】
化合物が付加された、または付加されていない粒子は、前述のようなポリマーを含めた、一つ以上のさらなるポリマー層でコーティングされることもある。さらに、PTFEPまたはその誘導体は、本明細書に開示される粒子の形成に使用される、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるその他の適切なポリマーまたはコポリマーで形成された粒子上に、当該コーティングを形成するために使用することができる。好ましくは、微小粒子等の粒子をコーティングする場合、PTFEPは、以下にさらに詳細に示すようなアクリルベースのポリマーで形成された微小粒子において、コーティングとして使用される。
【0028】
コーティングが有益とされるのは、例えば、粒子が徐放性の、経口投与用薬物送達処方物(腸溶コーティング)で使用される場合、または粒子が毒性を有する可能性がある造影剤(非生分解性コーティング)によって加えられる場合である。
【0029】
上記微粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]を含む粒子の調製に適した、当該技術分野で公知であるいずれかの方法によって調製するも可能である。本明細書の一実施態様による方法では、「ポリマー溶液」が1種類以上のポリマー溶液並びにPTFEPおよび/またはその誘導体を、ポリマーが溶解するまで混合することによって調製される。
【0030】
上記ポリマー溶液の調製での使用に適した溶媒には、ポリマーPTFEPおよび/またはその誘導体が溶解できるいずれかの溶媒が含まれる。模範的な溶媒には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルエーテル、ヘキサフルオロベンゼン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
上記ポリマー溶液は、PTFEPおよび/またはその誘導体ポリマーを、ポリマー約1重量%からポリマー20重量%濃度、好ましくはポリマー約5重量%から10重量%の濃度で含有する。当該ポリマーを最終粒子に含めることを望む場合は、前述のようなその他のポリマーを上記溶液中に存在させるか、または第二の溶液粉末の形状またはその他の形状で容器中に加えることも可能である。
【0032】
上記工程の実施に当たっては、続いて上記ポリマー溶液が、好ましくは滴またはエアゾールの形状で、非溶媒を含む容器中に分注される。「非溶媒」とは、PTFEPポリマーを殆ど溶解しない有機または無機溶媒であって、融点がポリマーが溶解している溶媒(ポリマー溶媒)の融点よりも低いために、インキュベーション工程の過程で溶媒が解けるよりも前に非溶媒が解けるものを意味する。好ましくは、この非溶媒とポリマー溶媒の融点の差は約10℃であり、さらに好ましくは約15℃であり、最も好ましくは約20℃以上である。特定の条件下では、ポリマー溶媒と非溶媒の融点の差が15℃以上の場合に、得られる粒子の構造的な完全性が向上する可能性があることが明らかになっている。しかし、非溶媒の融点は、ポリマー溶媒の融点よりもわずかに低ければ十分である。
【0033】
非溶媒/ポリマー溶媒の配合を、約1〜5日間、または上記ポリマー溶媒が粒子から完全に除去されるまでインキュベーションする。理論に束縛されることを望むわけではないが、ポリマーが少なくともゲル化するように、インキュベーションの間、上記非溶媒は、粒子由来の微視的なポリマー溶液の液滴からポリマー溶媒を抽出する機能を有すると仮定される。上記インキュベーション期間が経過するにつれて、液滴は小さくなり、溶媒はさらに抽出され、ゲル化されたポリマーコアを含む硬化した外側の高分子シェルをもたらし、最終的にはインキュベーションが完了すると、残りの溶媒が完全に除去される。上記インキュベーション期間に高分子液滴が概ね球形を維持するようにするため、上記インキュベーション期間の全てではなくとも殆どの間、液滴を凍結しておくか、または概ねゲル状態にしておく必要がある。そのため、非溶媒の温度は、凍結濃縮工程の間、溶媒の融点以下に維持してもよい。
【0034】
図1に示すように、(a)と表示された容器では、ポリマー溶液液滴が、シリンジまたはその他の装置のいずれかを使用して、調整された速度で、液体窒素の最上層に分注されることが示されている。上記窒素層は、凍結されたポリマー溶液液滴から溶媒を抽出する役割を最終的に果たす、選択された非溶媒を含む最下層の上に位置する。上記非溶媒層は、ポリマー溶液の分注の前に液体窒素を使用して前もって凍結されている。(b)と表示された容器は、凍結された高分子液滴が沈むであろう、凍結した非溶媒の結露の開始を示す。(c)と表示された容器は、非溶媒内でインキュベーションした高分子溶液液滴が相当量の溶媒を消耗した、約3日間のインキュベーションの後の凍結濃縮を示す。成果物は、硬化した外側シェルを有するビーズ形状のゲル化したポリマー粒子である。説明でも明らかなように、非溶媒の一部の蒸発によって容器中の非溶媒の高さはわずかに低下する。この工程の間にビーズのサイズがどの程度減少するかは、ポリマー溶液中のポリマーの初期濃度による。
【0035】
本発明によるPTFEP含有粒子の調製方法の一実施態様では、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの方法を使用して、当該粒子を形成することができる。これを達成する模範的な好ましい2つの方法には、(i)ポリマー溶液を追加する前に、前述の方法の実施態様で容器に存在する非溶媒を、凝固点の近くまでまたは凝固点まで冷却して、ポリマー液滴が予め冷却した非溶媒と接触した時に凍結するようにする方法;または(ii)予め凍結させた非溶媒層の上に配置された、窒素等の液体ガスと接触することによってポリマー液滴を凍結させる方法が含まれる(図2を参照)。方法(ii)においては、窒素が蒸発した後、非溶媒をゆっくりと解凍し、凍結した状態の微粒子が液体の冷却された非溶媒中に沈んで、抽出工程(ポリマー溶媒の除去)が実施されることになる。
【0036】
この一般的な方法を修正することによって、中空、概ね中空、または多孔性の粒子を調製することができる。例えば、例えばインキュベーションの最終段階に減圧を適用することによって、ビーズからの溶媒の除去を急速に行うと、多孔性ビーズが得られる。
【0037】
本発明の粒子は、いずれかの所望のサイズで調製することができ、「微粒子」は、圧縮空気または超音波ノズルのいずれか、例えば、Sonotek 8700−60msまたはLechler US50超音波ノズル(それぞれ、Sono[.tek] Corporation[米国ニューヨーク ミルトン]製、およびLechler GmbH[ドイツ メッツィンゲン]製)を使用してポリマーエアゾールにポリマー溶液を噴霧することによって、得ることができる。これよりも大きな粒子の場合は、シリンジまたはその他の液滴生成装置を使用して非溶媒溶液に液滴を分注することによって、得ることができる。さらに、当業者に公知の通り、濃度が高いほど球形の直径が大きくなることから、粒子のサイズは、ポリマー溶液中のポリマーの初期濃度の増減によって変更または修正することもできる。
【0038】
本明細書に開示される粒子の別の実施態様では、PTFEPのシェルと共に、アクリルポリマーまたはコポリマーをベースした、標準的なおよび/または好ましいコアを上記粒子が含むことができる。当該粒子は好ましい球形をもたらすことでき、塞栓形成のための造影剤の懸濁液中で使用する比重を向上させることができる。本明細書に開示される、PTFEPシェルを有する、アクリルポリマーをベースとしたポリマーは、概ね球形であり、機械柔軟性および圧縮率、並びに比重特性の向上を呈する。上記コアポリマーは、本明細書に参考文献として組み入れられる、B. Thanoo et al., “Preparation of Hydrogel beads from Crosslinked Poly(Methyl Methacrylate) Microspheres by Alkaline Hydrolysis,” J. Appl. P. Sci., Vol.38, 1153−1161 (1990)に記載されるような、当該技術分野で公知であるいずれかの許容された手法を使用して形成することができる。かかるアクリルベースのポリマーは、好ましくは、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ヘキサメチル(HMMA)またはメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、およびそれらの誘導体、上記アクリル酸誘導体の変異体またはコポリマーを含むが、これらに限定されない非加水分解性の前駆体を重合することによって形成される。最も好ましくは、MMAである。上記ポリマーは、水和したまたは部分的に水和した(ヒドロゲルの)状態でコア内に存在しなければならない。当該ポリマーは、向上した生分解性等の適切なヒドロゲル特性および構造を呈するため、並びに水による分解に対する耐性を備えることによってポリマー構造の機械安定性を保持することを補助するため、好ましくは架橋される。
【0039】
好ましくは、上記コアプリポリマーは、懸濁またはエマルション重合タイプである分散重合によって形成される。エマルション重合は、約10nm〜約10μmの概ね球形の粒子をもたらす。懸濁重合は、同様の粒子であるが、サイズが約50〜約1200μmの粒子をもたらす。
【0040】
懸濁重合は、水溶液相またはさらに好ましくはモノマー相に可溶化することができる熱開始剤を使用して開始することができる。上記モノマー相の組成物中での使用に適した開始剤には、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、または当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる、ペルオキシドをベースした開始剤が含まれ、最も好ましい開始剤はラウロイルペルオキシドである。開始剤は、好ましくはモノマー重量をベースとした約0.1〜約5重量%の量で、さらに好ましくはモノマー重量をベースとした約0.3〜約1重量%の量で存在する。前述の通り、架橋コモノマーは、上記水和ポリマーの形成に使用するのが好ましい。重合粒子コアの調製に使用される、アクリルをベースとした主成分モノマーと共に使用する、適切な架橋コモノマーには、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)等のグリコールをベースした種々の材料が含まれ、最も好ましくは、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGMDA)である。また、希望に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。MA重合用の連鎖移動剤も、適切なものであればいずれでも使用することができる。本明細書における好ましい実施態様では、特定の重合反応に許容される量で、ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤として使用することもできる。
【0041】
上記水相組成物は、好ましくは界面活性物質/分散剤、および錯化剤を含み、任意のバッファーが必要である。界面活性物質/分散剤は、本明細書で使用されるモノマー、例えばCyanamer(登録商標)370M、並びに4/88、26/88、40/88等のポリアクリル酸および部分加水分解ポリビニルアルコール界面活性物質と適合しなければならない。分散剤は、分散液中の水の量をベースとした約0.1〜約5重量%の量で、さらに好ましくは、分散液中の水の量をベースとした約0.2〜約1重量%の量で存在しなければならない。任意のバッファー溶液は、適切なpHを維持することが必要な場合に使用することができる。好ましいバッファー溶液には、リン酸ナトリウム(Na2HPO4/NaH2PO4)が含まれる。適切な錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、これは、約10〜約40ppm、さらに好ましくは約20〜約30ppmのEDTA濃度で水相に加えることができる。上記水相組成物においては、モノマーと水の比率が約1:4〜約1:6であることが好ましい。
【0042】
上記重合は、好ましくは約60℃〜約80℃の周囲条件で、約1〜2時間のゲル化時間で行わなければならない。粒子の形成には、100〜500rpmの速度による撹拌が好ましく、これよりも速度が遅いと粒子のサイズが大きくなり、速度が早いと粒子のサイズが小さくなる。
【0043】
微粒子等のPMMA粒子が形成されると、当該粒子は、PMMA 1モルにつき約1〜10モル過剰の水酸化カリウムを使用する等、当該技術分野で標準的な加水分解条件に曝されることが好ましい。当該水酸化カリウムは、エチレングリコールにおける約1〜15%の水酸化カリウム濃度にてもたらされる。続いて溶液は、好ましくは約150〜185℃の温度で数時間加熱される。反応量および費用を最小限にするには、PMMA 1モルにつき約5モル過剰以下、さらに好ましくは3モル過剰以下の水酸化カリウムである、より少量の水酸化ナトリウムが使用されることが好ましい。また、当該加水分解反応を行うためには、エチレングリコールにおける約10〜15%、さらに好ましくは約14〜約15%の水酸化カリウム濃度が使用されることも好ましい。全体の反応時間を減らすには、より高温での加熱条件が使用されることは、当業者によって理解されるであろう。反応時間は、得られる粒子の全体直径によって変化する。例えば、以下の条件によって、35%の圧縮率および所望の安定性を有する粒子がもたらされる。即ち、溶液は、直径約200〜300μmの場合約7.5〜約8.5時間、直径約300〜355μmの場合約9.5〜約10.5時間、直径約355〜400μmの場合約11.5〜約12.5時間、直径約400〜455μmの場合約13.5〜約14.5時間等で加熱しなければならない。粒子サイズは、例えば撹拌速度や水相とモノマーの比率を変更する等、重合工程を変更することによって調整することができる。さらに、界面活性物質と分散剤の比率を大きくすることによって、より小さなサイズを達成することができる。
【0044】
加水分解の後、粒子は反応混合物から分離され、pHは、さらなる工程または意図する用途に適した範囲に調整することができる。生理学的用途を意図する場合は、粒子コアのpHを約1.0〜約9.4、好ましくは約7.4に調整することができる。ヒドロゲルコア材料のサイズ、膨潤比および弾性はpH値に依存するため、粒子の凝塊形成および/または構造損傷を防止するべく乾燥時に有益な効果を有するように、より低いpHを使用することも可能である。粒子は、好ましくは、意図する用途に応じて異なるサイズ分画にふるい分けられる。また、粒子の乾燥は、約40〜80℃の温度で数時間から約1日の間オーブンを使用することを含む、いずれかの標準的な乾燥工程を使用して行われるのが好ましい。
【0045】
親水性ヒドロゲル粒子に所望の表面特性を与えるには、PTFEPコーティングを受けるための接着力を与えるため、ヒドロゲルの表面を、テトラアルキルアンモニウム塩、多価アルコールおよび類似の物質等の適切なイオン性または非イオン性界面活性物質で処理することも可能である。接着特性のより恒久的な変化は、ポリメタクリル酸基を適切な反応物質と反応させることによって粒子表面に疎水性を与えることによりもたらされる。適切な反応物質には、疎水性アルコール、アミドおよびカルボン酸誘導体が含まれるが、これらに限定されない。さらに好ましくは、トリフルオロエタノール等のハロゲン化アルコールが含まれる。上記コーティングが塗布されると、当該表面処理によってコアからのコーティングの層間剥離も防止されようになる。好ましい表面処理には、塩化チオニルとの最初の処理に続く、トリフルオロエタノールとの反応が含まれるが、これらに限定されない。また、トリフルオロエタノール等の硫酸と疎水性アルコールの混合物中で粒子を懸濁することによっても表面を処理することができる。当該処理が好ましいとされるのは、コーティングの層間剥離を最小限にするという点から、粒子がコーティングされる場合である。
【0046】
また、最も好ましくは、上記PMAコア粒子が、硫酸バリウムの表面層でコーティングされ、および/または硫酸バリウムが注入されてもよい。上記硫酸バリウムは放射線不透過性であり、使用中に完成粒子を可視化する上で役立つ。また、硫酸バリウムは、特に乾燥時の凝塊形成を減らし、PTFEP外部コーティングによるPMA粒子の流動層コーティングを可能にするように、粒子の流動化特性を向上させ、それによりPTFEP外核と重合性アクリレートコア粒子との接着力を向上させる。コア粒子が膨脹した時でさえ、流動化を可能にすることによって、硫酸バリウムは全体のコーティングおよび接着特性も向上させる。また、PTFEPによる膨潤状態でさえもコア粒子のコーティングを可能にすることによって、硫酸バリウムは、乾燥状態で粒子をコーティングした後、コア粒子が膨潤しPTFEPのシェル上で力を及ぼす懸濁液に粒子を曝す場合と比べて、PTFEPシェルにひびが入るか、または破裂する可能性も減少させる。コア粒子上の硫酸バリウムのコーティングは、好ましくはPMAビーズのヒドロゲル表面上の不透明なコーティングを形成する形で硫酸バリウムを接着することによって塗布される。さらに、硫酸バリウムは、粒子サイズを限定する静電効果を減らす上でも役立つ。さらなる湿度の吸収を可能にすることによって、硫酸バリウムは静電状態を弱める傾向がある。
【0047】
PMA粒子に単に軽く付着した硫酸バリウム結晶は、PMA粒子上に十分な量のアミノシラン接着促進剤を噴霧することによって、粒子表面に共有結合的に架橋するか、または化学的にグラフトすることも可能である。これは、粒子の水和後の溶液中の硫酸バリウム微粒子物質を効果的に減らす上で役立つ。具体的な粒子には、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、および同様のシランをベースした接着促進剤が含まれる。
【0048】
本明細書に開示される通りに作製された微小粒子の可視化を向上させるさらに別の方法には、ヒドロゲルコア粒子の内部に水溶性有機染料を吸収させることが含まれる。具体的な染料は、好ましくはヒトへの使用が認められたFDA染料であり、これらは、体内で安全且つ無毒であるものとして公知であるかまたは開発されることになり、並びに許容されるコントラストを提供できるものである。有機染料には、D&Cバイオレットno.2等の染料、並びに好ましくはコンタクトレンズおよび吸収性縫合糸等の医療用具として承認されているその他の染料が含まれる。硫酸バリウムは、結晶サイズが小さいために光の回折によって粒子を可視化する無機充填材および微粒子顔料として作用するのに対して、染料は、粒子中に含浸されると、可視の色スペクトルの相補的な部分を吸収する。
【0049】
続いて、コアヒドロゲルポリマーを形成するための前述の方法に従って作製された微小粒子を含む粒子は、PTFEPおよび/またはその誘導体でコーティングされる。コーティング工程は、溶媒流動層および/または噴霧法を含め、いずれか適切なものを使用することができる。しかし、好ましい結果を達成するには、粒子が気流を通過し、気流内で回転している間に噴霧を介してコーティングされる流動層法を使用することもできる。上記PTEFPまたは誘導体ポリマーは、ノズルの目詰まりを回避するため、希釈した溶液内で提供され、噴霧される。
【0050】
当該溶液に使用される具体的な溶媒には、酢酸エチル、アセトン、ヘキサフルオロベンゼン、メチルエチルケトンおよび類似の溶媒、およびそれらの混合物および組み合わせが含まれ、最も好ましくは酢酸エチルのみまたは酢酸エチルと酢酸イソアミルの混合物である。標準的な好ましい濃度は、溶液における約0.01〜約0.3重量%、さらに好ましくは約0.02〜0.2重量%、最も好ましくは約0.075〜約0.2重量%のPTFEPまたはその誘導体の濃度である。ヒドロゲルのタイプは、粒子コーティング法のように変更できることが本開示に基づき理解されるはずであるが、本明細書に開示される処理法および用途で有用なコアは、本明細書に開示されるように形成された後、PTFEPおよび/またはその誘導体によりコーティングされることが好ましい。
【0051】
先に考察した通り、上記粒子は、塞栓形成、薬物送達、画像化(超音波)およびトレーサー粒子等の種々の医学および治療用途に使用することができる。例えば、一実施態様では、本発明に、哺乳動物の特定組織への血流を最小限にする方法が含まれる。通常塞栓形成と呼ばれるこの工程には、本発明の1種類以上の粒子を使用して、血管の少なくとも一部または血管全体を閉塞または遮断することが含まれる。当該手順は、例えば腫瘍組織等の好ましくない血管組織に伴う疾患および症状、または子宮内膜症等の特定細胞の非制御増殖に伴う疾患の治療において特に有用である。当該手順において、粒子は前述の手順に従って調製され、カテーテル、シリンジまたは外科切開等の、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる、侵襲的または非侵襲的な医療行為によって血管に挿入することができる。上記塞栓形成は、血管の一部のみを閉塞するか、または血管全体を閉塞するように、実施することができる。上記方法では、希望に応じて、本明細書に開示されるような、細胞増殖抑制剤、抗炎症剤、抗細胞分裂剤、または細胞増殖活性物質、またはその他の好ましい活性物質等の活性物質を加えた粒子を使用することもできる。本発明に基づく塞栓形成粒子は、光学的可視性の向上、放射線不透過性の改善、および約1.17g/cm3という最適な比重の実現が実証されている。本発明における塞栓形成粒子は、粒子サイズ、局所薬物送達のために埋め込まれた医薬品、および制御された薬物溶出特性に関して先に述べた通り、マーカーとして異なる染料と共に使用することも可能である。
【0052】
塞栓形成治療において使用するに当たっては、粒子の送達に有益な特性を保証するために、粒子密度を考慮することが好ましい。密度が不一致の送達媒体を使用すると、カテーテルをベースしたシステムの目詰まりが起こることがある。さらに、手術時に十分なレベルの蛍光コントラストを達成するには、送達媒体に特定の最小量の造影剤を含めることが好ましい。一般的に、ポリメタクリレートヒドロゲルの密度は、平衡含水率曲線に応じて1.05g/cm3〜1.10g/cm3となっている。最も一般的な、1mL当たり300mgのヨウ素を含むヨウ素化非イオン性造影剤媒体は、1.32〜1.34g/cm3の密度を有する。本明細書で使用される「浮力」とは、懸濁している媒体と粒子密度が殆ど同じ場合に生じる、溶液中で粒子が殆ど自由に浮遊することができる能力を意味する。本明細書に開示される通りに本発明に従って形成されたコーティング粒子は、送達媒体中に約30%の造影剤がある場合に浮力に達することができるが、当該レベルは、本明細書に開示される手法に従って、かかる好ましい使用のために調整することができる。
【0053】
上記粒子の密度を増加させる1つの方法は、重水または酸化ジューテリウム(D2O)の使用である。粒子を膨張させるために重水を使用すると、D2OがH2Oに置換され、それにより良い分散および浮力レベルを達成するために粒子重量が増加する。通常は、これにより、当該手法を使用して造影剤の量が少なくとも約5%増える能力がもたらされる。しかし、上記粒子が造影剤水溶液と接触すると、時間と共に幾らかの平衡化効果が生じる。従って、この目的のためにD2Oを使用する時には、懸濁時間を最小限に保つことが好ましく、またはD2Oも使用した溶液内で上記造影剤が提供されることがさらに好ましい。
【0054】
また、pH 1の粒子は水酸化セシウムを使用して中和することができ、および/または最終的に中和された粒子は塩化セシウムで平衡化することができる。当該化合物は、ポリメタクリル酸のセシウム塩が形成されるか、ポリメタクリル酸が拡散して塩化セシウムが濃縮されるように、粒子中にセシウムを拡散する。
【0055】
セシウムは粒子の密度を増加させ、その結果、さらに多量の造影剤を添加する性能が向上する。標準的な浮力レベルは、塞栓形成で要求されるように、約45〜約50%の造影剤を送達媒体に加えられるように、セシウム法を使用して調整することができる。セシウム塩は無毒であり、蛍光透視法を使用して粒子を見えるようにする。132.9g/モルのセシウムの原子量は、ヨウ素の原子量よりもわずかに大きいため、全体密度を増加させ、造影剤がなくてもX線コントラスト可視性を向上させること含めた有利な効果をもたらす。放射性アイソトープのセシウムが好ましい特定の癌治療では、当該活性物質を、塞栓溶液中で粒子に浮力を与える代替のセシウム源として使用することができる他、活性治療源として使用することができる。
【0056】
密度および/または溶液中での浮力が適用可能な特性である、塞栓形成またはその他の用途に使用する微粒子等の粒子の密度を向上させる前述の手法は、本明細書に開示される好ましい粒子に応用することができ、および/またはその他の同様の粒子に応用することもできる。上記開示は本明細書の好ましい粒子のセシウムおよびまたはD2O処理に限定されることはなく、当該手法はその他のアクリルをベースしたヒドロゲルおよびその他のポリマー粒子等のその他の粒子と広く関連することが理解されるはずである。
【0057】
前述の通り、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの技術を使用して、硫酸バリウムは、コア粒子と好ましいPTFEPコーティングの間に使用するか、または上記コア粒子の内部に導入することができる。また、有機染料も、同様に粒子コア中に含めることもできる。これらの材料、特に硫酸バリウムは、密度の増加並びに放射線不透過性の実現にも貢献する。前述のD2Oまたはセシウム化合物によって提供される一般的な密度の増加に加えて、上記硫酸バリウムは、殆どおよび/または完全な水和時においても利益をもたらし、懸濁液中の粒子の等張性を維持することが可能になる。従って、硫酸バリウム粉末コーティングは、生理的浸透圧に対する影響がない不活性沈殿物を提供することができる。
【0058】
特定のコア粒子およびコーティングの組み合わせに最も有益な効果を与えるために、前述の種々の浮力添加剤を単独でまたは組み合わせて使用できることが、本開示に基づき理解されるはずである。
【0059】
本発明にはまた、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法が含まれる。上記方法には、有効量の活性物質が上記部位に局所的に放出されるように、先に述べた本発明の少なくとも1種類の粒子を局所領域に接触させることが含まれる。この方法により治療できる可能性がある疾患または症状には、活性物質の局所または局所領域投与が薬物の全身吸収に比べて何らかの利点を達成するいずれのものも含まれる。適切な活性物質には、NSAIDS、ステロイド、ホルモン、並びに核酸、潰瘍、クローン病、潰瘍性結腸炎および過敏性大腸炎等の消化管の疾患の治療に使用される物質が含まれる。その他の活性物質には、タクロリムス、シロリムス、パクリタクセル、シス−/カルボプラチン、抗腫瘍薬、ドキソルビシンおよび/または細胞接着を阻害するavβ3インテグリン遮断薬等の受容体遮断薬が含まれる。
【0060】
局所領域に活性物質を送達するために開発された粒子の直径が約1〜約1,000μmである場合、薬物を加えた微粒子は、不注意な閉塞を起こすことなく、送達器具としてシリンジおよび/またはカテーテルを使用して哺乳動物の体内の局所領域に投与することができる。例えば、造影剤を使用して、鼠径部動脈にカテーテルを挿入し、局所投与したい部位に到達するまでその動きを観察することができる。そして、適切な注射媒体内の粒子の懸濁液をカテーテルを通じて注入して、身体の特定部位のみが薬物を加えたビーズ(粒子)による治療を受けることが保証される。当業者に理解されることとして、注射媒体には、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる医薬として許容された媒体、例えば生理食塩水、PBSまたはその他全ての適切な生理的媒体が含まれる。本明細書に開示されるさらなる実施態様によると、本発明には、粒子および造影剤をはじめとした、粒子が溶液中で殆ど分散されている、注入可能な分散液が含まれる。好ましい一実施態様では、上記粒子が蛍光透視法により検出可能となっている。
【0061】
本発明のポリマー粒子は、経口投与のための活性物質の徐放性処方物を調製するために使用することもできる。上記処方物は、前述の通り活性物質が加えられた粒子を含む。使用される上記ポリマー粒子は、中空、概ね中空または固体であってもよい。上記粒子は、スプレー液滴よりミクロサイズの粒子を製造する、即ちポリマー溶解物を錠剤化(pastillation)する前にポリマー溶液中の活性物質を分散または溶媒化(solvation)するか、または凍結濃縮法を行うことによって、上記粒子に活性物質を追加することができる。また、追加されていないポリマー粒子を調製して、活性物質を含む溶液に浸漬することができる。続いて、活性物質がポリマーマトリクス中に拡散する上で十分な時間の間、粒子を上記溶液中でインキュベートする。粒子を乾燥させた後、活性物質はポリマー粒子中に保持される。この追加メカニズムを使用した場合、インキュベーション媒体中の薬物濃度を調整し、平衡条件に達した時にインキュベーション媒体から粒子を除去することによって、薬物の追加を調整することができる。
【0062】
さらに、活性物質は、特に粒子が閉塞または塞栓形成法で使用されている場合に、相乗的な方法で粒子の作用を補完するように選択できることが想定される。例えば、腫瘍組織への血流を最小限にする場合は、閉塞に使用した粒子に細胞増殖抑制剤または抗有糸分裂阻害剤を加えることができる。
【0063】
また、哺乳動物の体内の血管またはその他の空洞を通る粒子の動きを追跡する方法も提供される。上記方法には、血管、空洞、または当該空洞または血管に隣接する導管に、少なくとも1種類のトレーサー粒子を注入することが含まれ、上記トレーサー粒子は前述の方法によって調製された少なくとも1種類の粒子である。
【0064】
上記トレーサー粒子には、身体の空洞、血管および/またはその他の局所を通過する粒子の可視化を補助する造影剤が含まれてもよい。一般的に、この用途においては、より小さな粒子が好ましく、特に粒子を血流に注入する場合は、例えば、約1〜約10μmの範囲の粒子が好ましい。しかし、上記粒子は、この目的のために、上記方法が適用される血管、身体の空洞、または隣接する空洞または導管を閉塞するほど大きなものでない限り、いかなるサイズのものでも構わない。
【0065】
上記粒子に造影剤が加えられると、使用した造影剤によりX線装置またはその他のいずれかの造影法を使用して、その動きを可視化することができる。しかし、上記粒子に造影剤が含まれない場合、粒子の流れは、コンピュータ断層撮影法に基づく19F−NMRを使用して可視化することができる。
【0066】
希望に応じて、造影剤を含むトレーサー粒子をポリマーコーティング法によってコーティングすることも可能である。上記ポリマーコーティング法には、いずれかのホスファゼンポリマーを含めた、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかのポリマーが含まれてもよい。造影剤に毒性または毒性の懸念がある場合、1種類以上のコーティングが非生分解性を備えていることが好ましい。
【0067】
本発明にはまた、向上した超音波画像化(断層撮影)法を実施する方法も含まれる。これを行うには、少なくとも1種類の中空のマイクロカプセルを、可視化した超音波被験体領域に投与しなければならない。当該投与は、シリンジ、カテーテルまたはその他の侵襲性または非侵襲性医療装置、および/または外科切開を含めた、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの手段によって達成することができる。当該方法においては、中空または概ね中空である粒子、即ち、粒子全体の容積の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%に相当する内部空洞を有する粒子を使用することが好ましい。上記中空粒子は、画像化したい超音波被験体部分に投与される。理論に束縛されることを望むわけではないが、上記粒子は、周囲の組織と比べて急激な密度の変化による超音波「エコー」の上昇により、超音波画像を増強することが推測される。上記粒子の中空の空洞は、超音波を反映するように作用し、それによって画像を増強する。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、ポリマー溶媒である酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下し、上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0069】
(実施例2)
直径約350〜450μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、1%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0070】
(実施例3)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が12×106g/モルのPTFEPポリマーを、メチルイソブチルケトンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を、エタノール/ペンタン比1:9(v/v)の混合物150mLの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0071】
(実施例4)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が9×106g/モルのPTFEPポリマーを、イソアミルケトンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0072】
(実施例5)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が16×106g/モルのPTFEPポリマーを、シクロヘキサノンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を、エタノール/ジエチルエーテル比1:1(v/v)の混合物150mLの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0073】
(実施例6)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのヘキサンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0074】
(実施例7)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのエタノールの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。粒子は著しくゲル状になっており、乾燥後は楕円形になっていた。
【0075】
(実施例8)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのジエチルエーテルの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。乾燥後に得られた粒子は緻密で均一な球形であった。
【0076】
(実施例9)
図6に示すような2Lの凍結容器に、非溶媒としてジエチルエーテル100mLを充填した。上記凍結容器は、以下の表1に示すような特徴および標準寸法を有していた。
【0077】
【表1】
液体窒素は、非溶媒が凍るまでゆっくりと加えた。続いて、非溶媒層から垂直に測定した時に液体窒素量が約5〜10cm上昇するまで、上記容器に追加の液体窒素を充填した。
上記容器を絶縁蓋で閉じ、テフロン(登録商標)チューブを介してシリンジポンプに連結されたシリンジ針を、上記蓋の小さな開口部に差し込んだ。
【0078】
図7に示すシリンジポンプは、5〜40mg/mLの酢酸エチルポリマー溶液の5〜15mLを上記凍結容器にゆっくりと分注するために使用された。上記シリンジポンプは、以下の特徴、即ち、ポンプハウジング(J)、シリンジ(K)、並びにテフロン(登録商標)チューブを取り付けたテフロン(登録商標)分注器を有する。ポンプの速度は、1時間当たり約10mLの分注量に調整された。並行する複数の容器に上記分注量を分注するため、1個の入口と1〜8個の出口を有するテフロン(登録商標)シリンダーが使用された(非溶媒と溶媒の容量比は10%(V/V)以下のままであることが好ましく、それ以上になると、粒子が互いに接着する可能性がある)。上記ポリマー溶液の容器への分注が完了したら、さらに100mLの非溶媒を液体窒素の上にゆっくりと注いだ。
【0079】
尚、この工程を実施するに当たっては、分注に使用する針の先端がG33サイズ等のように小さいことが好ましい。さらに、重力により落下した液滴が液体窒素の表面に当たった時にすぐに沈むように、滴下距離は5cm以上にしなければならない。
【0080】
容器中の液体窒素は、約1日かけてゆっくりと蒸発させた。すると、非溶媒がゆっくりと溶け始め、まだ凍っているポリマー溶液の液滴が、冷却された非溶媒に沈んだ。そして、日を改めてインキュベーションを行った後、今やゲル化したポリマービーズ(粒子)を簡単なろ過によって容器から抽出した。上記ビーズを室温で約30分間乾燥させると、本明細書に開示されるいずれかの用途で使用する準備が整った。
【0081】
(実施例10)
実施例1の方法によって調製された微粒子の形状および表面形状を、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡によって調べた。当該解析の結果を図3Aおよび3Bに示す。図3Aには、倍率4倍の光学顕微鏡を使用して観察された微粒子を示す。図3Bには、倍率100倍の走査型電子顕微鏡を使用して観察された微粒子を示す。
【0082】
未添加の粒子の表面形状は、ガラス転移温度を超えた半結晶性ポリマーでは一般的なことが分かる。非晶質および結晶領域は、試料表面の全体にわたって広くみられる。表面の性質は、直径ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の孔を有する微少孔である。
【0083】
また、ウシインシュリンを加えた粒子も走査型電子顕微鏡(倍率100倍)を使用して解析した。これらの結果を図4Aおよび図4Bに示す。
【0084】
(実施例11)
好ましいコア粒子を得るため、PMMAと3種類の異なる架橋性モノマー(EDGMA、DEGDMAおよびTEGDMA)、異なるラジカル開始剤(ベンゾイルペルオキシド(BPO)およびラウロイルペルオキシド(LPO))、錯化剤であるEDTA、種々の分散剤(Cyanamer 370M、ポリアクリル酸(PAA))および種々のポリビニルアルコールの組み合わせを変えて使用し、いくつかの重合を行った。いくつかの重合においては、リン酸ナトリウムバッファー溶液(Na2HPO4/NaH2PO4)を使用した。選択した分散剤のタイプおよび濃度により、反応手順によっては失敗に終わったものも認められた。当該分散剤の失敗は、発熱反応の早期の発生、水相および有機相の融合、およびガラス相の早すぎる開始の形で示された。実施例は成功したもののみ示す。以下の表2には、成功した実験を、当該試料(1〜6)の成分、濃度および反応条件を含めて示す。
【0085】
【表2】
(実施例12)
本明細書に開示される手順によって形成されたヒドロゲル微小粒子を、塞栓形成用途に使用するため、浮力および懸濁特性について評価した。上記微小粒子には、修飾されていないポリメタクリル酸カリウム塩ヒドロゲル粒子を使用した試料(試料A);トリフルオロエチルエステル化ポリメタクリル酸カリウム塩ヒドロゲルを使用した試料(試料B);および粒子がPTFEPでコーティングされていることを除いて試料Bと同じヒドロゲルを使用した試料(試料C)が含まれた。そして、5個のリン酸バッファー生理食塩錠剤(Fluka(登録商標))をミリQ超純水999.5mlに溶解することによって、0.05容量%のTween(登録商標)20を含むpH 7.4の等張リン酸バッファー生理食塩溶液を調製した。上記溶液にTween(登録商標)20界面活性物質0.5mlが加えられ、続いて評価のため、上記等張バッファー生理食塩水中にImeron300(登録商標)造影剤を20〜50容量%含む溶液を調製した。
【0086】
次に、調製した造影剤溶液を4mLのガラス瓶にそれぞれ2mLずつ入れ、前期ガラス瓶に50〜80mgの水和ヒドロゲル試料A〜Cを加えた。最初に、100mgの乾燥ヒドロゲル微小粒子に900mgの等張リン酸バッファー生理食塩溶液またはD2Oを加えることによって、各試料を水和し、膨脹した1mLのヒドロゲルを得た。そして直後に浮力特性を測定した後、浮力平衡が達成されるおよび/または超えるまで10分毎に測定した。
【0087】
全ての粒子は、30〜40%の造影剤を含有する造影剤溶液中で、5分以内に平衡密度に達した。D2Oにより膨脹させた粒子は、最初の10分以内は重量があるものの、浸漬から15〜20分後には時間と共に粒子からD2Oが拡散した。D2Oに代わる追加の水を加えないと、D2Oで水和させた微小粒子は、適切な浮力によって達成可能な造影剤の割合を最大5%増加させることが可能となった。40〜50%の割合で造影剤を加えると、粒子は時間と共に浮遊し始めた。
【0088】
試料Cについては、溶液中31±1容量%の造影剤において、平衡浮力(整合した密度)が達成された。試料Aおよび試料Bについては、一般的に膨脹パターンおよびそれに続く密度が、架橋剤含量、pH、イオン強度および使用される陽イオンの原子価によって左右される。しかし、本明細書においては、ポリメタクリル酸ヒドロゲル材料が持つスポンジ様特性によって、膨脹が浮力に影響を与えないとみなされた。試料Cのように当該材料をPTFEPでコーティングすると、膨脹の遅れが観察され、浮力平衡が達成されるのがより遅くなった。
【0089】
(実施例13)
続いて、かかる時間の遅れを考慮に入れ、さらに好ましい密度を達成し、上記粒子の蛍光透視可視性を向上させるため、実施例12の試料Bおよび試料Cで使用されたタイプの微小粒子についてセシウム処理を作用させた。
【0090】
試料Bおよび試料Cは、100mgを30重量%の塩化ナトリウム溶液中で、それぞれ10分間水和させた。平衡に達したら上清の液体を静かに捨て、脱イオン水で微小粒子を洗浄した。続いて、上記微小粒子をさらに10分間平衡化され、上清の液体を静かに捨て、界面活性物質を含まないpH 7.4の等張リン酸バッファー溶液3mLに懸濁した。次に、Imeron(登録商標)300を20〜50容量%の間で変化させた造影剤溶液を使用して、浮力に対する効果を評価した。本実施例においては、試料Bおよび試料Cの微小粒子0.1gが使用され、4.0mLの等張リン酸バッファー/Tween(登録商標)20溶液を含む初期バッファー溶液に3.5mLのImeon300造影剤が加えられた。
【0091】
塩化セシウムを使用した平衡手順により、密度が増加した粒子が得られた。いずれの微小粒子試料も、Tween(登録商標)20界面活性物質の有無に関係なく、造影剤濃度45〜50%のImeron(登録商標)300造影剤溶液中で最終的な浮力を示した。飽和の条件は、粒子の初期pH、手順で使用されたpHおよび粒子中のメタクリル酸基に応じた飽和状態により異なると考えられる。3.6未満のpHでは、水素イオンと陽イオンの間の一定した交換が認められた。その結果、セシウムの量を加減した約3.6以上および6.6未満のpHで有利な結果が得られた。上記の好ましい範囲内では、浮力が変化し得る。7.4のpHの試験を基づいた合理的な中性のレベルでは、上記微小粒子を造影剤バッファー溶液中で一晩保存した後でも、浮力は失われなかった。
【0092】
(実施例14)
さらなる圧縮率および機械特性の試験を、実施例12の試料Bおよび/または試料Cの微粒子で実施した。さらなる評価に使用された圧力試験台を図8に示す。0〜250mm/時の可変送り速度を提供するモーター4、およびギヤボックス6を有する自動化シリンジプランジャー2には、さらに0〜500Nの力を測定することができるLorenz社の圧力変換器が装備されていた。上記シリンジプランジャー2は、図示の通りシリンジ本体10と結合していた。変換器のデジタル出力は、パーソナルコンピュータを使用して記録された。上記シリンジ本体10には、造影剤濃度約30〜32容量%の等張リン酸バッファー/界面活性物質(Tween(登録商標)20)溶液5mLが充填されていた。微小粒子を56mgの乾燥質量でシリンジに入れた後、上記シリンジ内容物を、シリンジの遠心端14に取り付けられたマイクロカテーテル12に注入した。上記マイクロカテーテルは、管腔直径が533μmであった。そして、上記カテーテルからシャーレ16(微小粒子溶液を入れるために表示)に微小粒子を押し出す際に必要な力を、圧力として測定し、記録した。
【0093】
特定の計算を行うに当たっては、以下の情報が、塞栓形成における微粒子の一般的な使用をベースとして適用された。一般的には、塞栓形成に使用するガラス瓶が9.8mlの注射液中に0.2gの塞栓形成粒子を含むように(上清液8mLにて水和微小粒子2mL)、当該標準微粒子に約90%の水分が含有される。標準的な調製手順には、単一のガラス瓶の内容物に8mLのImeron(登録商標)300を加えることが含まれる。これにより、注射溶液中に8ml/(9.8mL+8mL)=44.9容量%の造影剤を含む平衡濃度がもたらされる。上記溶液は、通常の場合、最終送達のために1mLシリンジに調製される。従って、注射密度は以下の通りとなる:
ρ=VEmb/VTot=2mL/18mL=0.111塞栓形成剤/容量画分。
【0094】
試料Cの微粒子は、通常の塞栓形成粒子とほぼ同じ平衡含水率を示した。通常の外科手術手順に望まれるのと同じ注射密度を達成するため、前述の通り、等張リン酸バッファーおよび界面活性物質中に31容量%の造影剤を含む溶液5mlに、56mgの試料Cの微粒子を加えた。
【0095】
試料Bおよび試料Cの微粒子を、7.4のpHにて、管腔直径が同じ別のマイクロカテーテルで評価した。水平および垂直の両方向における注射は、異なる浮力レベルの下で、および異なる膨脹レベルにて行われた(pH 7.4ではなくpH 6.0をベースとした)。評価の結果、微粒子の直径がマイクロカテーテルの内径以下にある限り、微粒子は基準溶液と同じ様に追加の摩擦力なくカテーテルを通過したことが実証された。微粒子の直径が管腔直径と同じに達すると、約1.0〜1.4kg重量までの増加が測定された。およそ20%の圧縮では、カテーテル内で摩擦力を上回るために約1.5〜2.3kgの力が必要であった。中から高程度の注入圧の目安としては、5kg以上の力がかけられた。また、粒子が注射媒体よりも重い時には、垂直位に注射すると目詰まりが観察され、水平位に微小粒子を注射すると、重大な目詰まりは軽減され、時間と共により大量の微小粒子を注射することが可能となった。
【0096】
さらに、当該注射圧が注射媒体自体と同じになるように、水平方向の注射とより低いpH(膨脹の減少)を組み合わせて使用すると、注射圧が最小限に低減された。また、試料Cの微小粒子の注射は、生理的pHにて良好な注射圧パターンを示した。カテーテルの入口は目詰まりせず、カーブにおける各ピークは、カテーテルを通過する単一または複数の微小粒子のいずれかと一致した。
【0097】
種々のカテーテルシミュレーション試験の結果、本発明が、塞栓形成用の注射媒体の密度と殆ど一致する密度を有する注射用微小粒子を形成するために使用できることが示されている。さらに、粒子の圧縮率は、シリンジプランジャーに対する約5kg以上の力なしで注射できる程度が可能となっている。そして、注射媒体のpHは約6まで下げることができ、または試料Bおよび試料Cの微小粒子がカテーテルを通過しやすくするため、水平に注射することができる。血流に入ると、粒子はpH 7.4の環境にて本来のサイズに膨張することができる。
【0098】
試料Cの微小粒子では、追加の膨張試験を行い、イオン濃度が低い時に膨張が増大することが観察された。そして、溶液の濃度が高くなるにつれて、膨張は減少した。試料Cの微小粒子をバッファー溶液にて連続して希釈すると、微小粒子のサイズが17%〜20%上昇した。また、等張リン酸バッファー溶液中に混合すると、微小粒子は最初にサイズが83.8〜97%増大する。それに対し、脱イオン水に混合すると、サイズは約116.2〜約136.6%増大し、これは微小粒子が乾燥粒子であることを意味する。
【0099】
試料Cの微小粒子の圧縮率を評価するさらなる試験では、図8のシリンジ圧力試験台が使用されたが、試料Cの微小粒子のリン酸バッファー溶液懸濁液を含むシリンジに連結されたポリエチレンチューブに付属の先細りのピペットを通過する微小粒子を評価するに当たって、光学顕微鏡が使用された。内径490μmまで狭くなるピペットは、測定時に光のひずみを回避し、ピペットから排出された液体を回収するため、最も狭い部分がリン酸バッファー溶液に浸るように、シャーレに取り付けられた。そして、圧縮前および圧縮時に、ピペットを通過する微小粒子の光学顕微鏡写真を撮影した。微小粒子を観察するに当たっては、いずれの微小粒子も破砕されず、狭い部位を通過した後にも破片または層剥離が形成されなかった。狭い部位には意図的に大きすぎるものが選択された微粒子(圧縮率約40%)は破損または破裂しなかったものの、上記の狭い部位で目詰まりした。微小粒子がカテーテルを通過できる間の微小粒子に対する合理的な力の量に基づく最大圧縮率は約38.7%であった。これらの評価に基づき、試料Cの微小粒子は、分解して患者に損傷の危険性をもたらすよりも、カテーテルを目詰まりさせるほどに大きな粒子をもたらす特性を示している。以下の表3に示す通り、試験の結果からは、塞栓形成用途に使用する試料Cの微小粒子において、提示される好ましい使用パラメータが得られた。
【0100】
【表3】
さらに、試料Cの微粒子を機械および熱応力安定性試験にかけた。Terumo Progreat Trackerカテーテルを通過した微小粒子は、脱イオン水で洗浄し、残留するバッファー溶液および造影剤を除去した。上記微小粒子を60℃で12時間脱水し、表面解析のためにSEMに移した。そして、ミリQ超純水中で同様の水和/脱水を行い、但しカテーテルを通過していない元のロットの微小粒子から採取した粒子と上記微小粒子を比較した。図9Aおよび9Bには、水和/脱水サイクル直後の試料Cの表面、および模範的な試料Cの微小粒子のフィルム厚をそれぞれ示す。カテーテルを通過した後の各種倍率(図10A、図10B、図10Cおよび図10D)によるSEMでは、コーティングが層間剥離していないことが示されている(図10A)。微小粒子の中には、コーティングフィルムにいくらかの広がりが見られるものもあった(図10Bおよび図10C)。一方、図10Dに示すようなより近い倍率では、コーティング層の形状が依然として無傷であることが示されている。
【0101】
殺菌装置は、2Lの脱イオン水と、等張リン酸バッファー/界面活性物質(Tween(登録商標)20)溶液3.3mg中に試料Cの微小粒子56mgをそれぞれ含む10個のガラス瓶で満たし、電源を投入した。上記滅菌装置の起動後、約15分で水の沸点に達し、水蒸気によって空気を除去するため、上記温度を3分間維持した。続いて、上記容器を密閉し、圧力および温度をそれぞれ125℃および1.2バールに上昇させた。これには約10分を要した。次に、上記温度を15時間維持した後、冷却のために上記容器の電源を切断した。容器の排出を行ってから約30分で温度が60℃に達し、試料を回収し、容器をしっかりと閉じた。次に、試料ガラス瓶を開け、上清液体を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄した。脱水が終了したら、上記微小粒子をSEMによる測定にかけた。測定の結果、当該熱応力下では、微小粒子のコーティングにわずかな層間剥離しか見られないことが示された(図11Aにおける強調された白色の対比部分を参照)。当該微粒子の全体における割合は、わずかに約5〜10%であった。これを詳しく観察すると、発生した層間剥離は、PTFEPコーティングにおける結晶−非晶質ドメインの境界に沿って発生しているように思われた(図11Bを参照)。殆どの微粒子は微細な欠陥(わずかな円形パッチの欠損等)を示した程度であったが、微小粒子の外部コーティングが損傷することはなかった(図11Cおよび11Dを参照)。
【0102】
(実施例15)
微小粒子は本明細書の好ましい実施態様に従って形成され、重量平均分子量が約85,000〜124,000であり、約87〜89%で加水分解されているPVA約23g、並びに水1000gを使用して、ポリビニルアルコール(PVA)の脱イオン水溶液を調製した。そして、脱イオン水900g、リン酸水素二ナトリウム4.53g、リン酸二水素ナトリウム0.26g、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.056gを使用して、リン酸バッファー溶液を調製した。メタクリル酸メチル(MMA)モノマーは、使用前に減圧蒸留した。
【0103】
重合は、KPG社の機械撹拌装置を備えた、2,000mLの三ツ口の丸底フラスコを使用して行った。上記フラスコはまた、温度計、還流凝縮器および排気弁と共に窒素入口も備えていた。重合工程ではさらに、上記で調製したPVA溶液100mL、リン酸バッファー溶液900mL、ジラウロイルペルオキシド0.65g、メタクリル酸メチルエステル200.2gおよびトリエチレングリコールジメタクリレート2.86gを使用した。
【0104】
最初に、PVA溶液およびバッファー溶液を反応フラスコに入れ、蒸留したMMAおよびトリエチレングリコールジメタクリレートを導入し、続いてジラウロイルペルオキシドを同じフラスコに加え、固体が完全に溶解するまで上記成分を撹拌した。そして、上記反応フラスコにアルゴンガスを充填し、撹拌速度を150rpmに設定して、大部分の粒子サイズが300〜355μmの範囲内にある粒子を生成した。撹拌は約5分間続けた。次に、攪拌機を100rpmに設定し、アルゴンの流れを中断した。さらに、上記反応フラスコを70℃に加熱した水浴に入れ、ほぼこの温度に約2時間維持した。その後、水浴の温度を73℃に上げて、1時間維持した後、水浴の温度をさらに85℃まで上昇させ、さらに1時間維持した。撹拌および加熱を中断したら、溶液をろ過し、得られたポリメチルアクリル酸の微小粒子を70℃のオーブンで約12時間乾燥させた。続いて、上記微小粒子をふるいにかけ、100〜150μm、150〜200μm、200〜250μm、250〜300μm、300〜355μm、355〜400μm、および400〜450μmのサイズ分画で回収したところ、最大の収量は300〜355μmであった。
【0105】
このようにして形成されたPMMA微小粒子を加水分解した。250〜300μmの微小粒子100g分、水酸化カリウム150gおよびエチレングリコール1400gを、還流凝縮器と共に乾燥管が接続された200mLのフラスコに加え、上記混合物を165℃にて8時間加熱し、完全に加水分解を行った。その後、上記混合物を室温に冷却し、溶液を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄した。その他の校正したサイズの微小粒子についても、この手順を繰り返した(以下の反応時間を適用した;300〜355μm粒子:10時間;355〜400μm粒子:12時間;および400〜455μm粒子:1時間)。
【0106】
最後に上記微小粒子を塩酸でpH 7.4に酸性化し、約70℃のオーブンで乾燥させた。
【0107】
(実施例16)
本実施例では、実施例15に従って形成された微小粒子をエステル化した。まず、エステル化表面処理を行うため、実施例15の乾燥微小粒子800gを、還流凝縮器を備えた2Lの反応容器に秤量した。そして、ジエチルエーテル1.5L中に250gの塩化チオニルを含む溶液を撹拌しながら加えた。撹拌は室温で20時間続けた。その後、溶媒および揮発性の反応物を、ろ過とそれに続く減圧乾燥によって除去した。次に、エーテル1.5mL中に500gのトリフルオロエタノールを含む溶液を導入し、懸濁液を室温でさらに20時間撹拌した。最後に、上記粒子を減圧下で乾燥させた。
【0108】
(実施例17)
本実施例では、実施例16とは別の表面処理において、実施例15の乾燥微粒子800gを1140gのトリフルオロエタノールと反応させ、44gの硫酸を触媒として加えた。上記混合物を室温で20時間撹拌して、ろ過した後、減圧下で乾燥させた。
【0109】
(実施例18)
上述の実施例15および実施例16で開示したように、トリフルオロエタノールで部分的にエステル化された乾燥PMMAカリウム塩微小粒子800gを、MP−1 Precision Coater(登録商標)流動層コーティング装置(Aeromatic−Fidler AG[スイス ブーベンドルフ]製)にて、PTFEPによりスプレーコーティングした。上記粒子を気流(40〜60m3/時、入力温度55℃)によって捕らえ、空気−流体同軸ノズルからのPTFEP溶液の微小液滴を使用してスプレーコーティングした。上記溶液の組成物は、PTFEP0.835g、酢酸エチル550gおよび酢酸イソペンチル450gであり、これを10〜30g/分の速度で1.3mm幅の内側の孔を通って提供した。ノズルヘッドでは、加圧空気(2.5バール)によって微粒化された。噴霧溶液の全量(3kg)は、厚さ150nmのPTFEPフィルムにて粒子をコーティングするために算出された。
【0110】
(実施例19)
前述の通りトリフルオロエタノールで部分的にエステル化された、実施例15および実施例16の乾燥カリウム塩微小粒子を、市販される流動層コーティング装置(実施例16を参照)にて、酢酸エチル中で希釈したPTFEP溶液によりスプレーコーティングした。このようにコーティングした100mgの乾燥微小粒子を、トリフルオロエタノールで部分的にエステル化された、コーティングされていない乾燥PMAカリウム塩微小粒子と共に、脱イオン水100mLに塩化セシウム30.0gを溶解することによって調製した、約30%の塩化セシウム水溶液中に浸漬した。10分間の平衡時間の後、上清液体を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄し、さらに10分間平衡化させて、上清を捨て、界面活性物質を含まないpH 7.4のリン酸バッファー溶液3mLに懸濁した。次に、溶液中の造影剤の密度を整合させるため、溶液中の粒子の密度を測定した。各タイプの微小粒子には、Imeron(登録商標)300造影剤(密度1.335g/mL)3.5mLとリン酸バッファー生理食塩水(密度1.009g/mL)4mLの比率で含有される造影剤溶液を加えた。いずれのヒドロゲルも、溶液中における45〜50%の造影剤濃度で浮力に達した。これは、1.16g/mLという増加した微小粒子の密度に相当する。
【0111】
(実施例20)
本実施例では、実施例15の方法に従って微小粒子が形成されたが、但し、粒子の中和後に外側の硫酸バリウムコーティングを微小粒子上に調製し、硫酸バリウムコーティング手順の前の中和後に粒子を乾燥させなかった。硫酸バリウムコーティングを調製するため、0.5M硫酸ナトリウム(Na2SO4)溶液2000mLに水和粒子2500mLを入れ、4〜12時間の間飽和させた。続いて、上記粒子懸濁液に0.5M塩化バリウム(BaCl2)溶液1950mLを、室温で撹拌しながらゆっくりと加えた。過剰な脱イオン水で洗浄した後に得られる、膨張した状態にある粒子には、硫酸バリウム粉末でコーティングされた表面を含んでいた。続いて、実施例16に記載した方法で粒子を乾燥させ、エステル化した。続いて、以下の実施例21の流動層法を使用して粒子をコーティングした。得られた微小粒子は、非付着性硫酸バリウム粉末により外側がコーティングされていた。本発明および手順に従って調製された硫酸バリウムコーティングは、乾燥時の粒子の凝塊形成が防止され、密度が増加する。硫酸バリウムの濃度および比率は異なる結果を得るために変更させることができ、過剰な硫酸バリウムを使用することで、残る塩化バリウムを最小限にすることができる。ガラス瓶を汚染している過剰な硫酸バリウム粉末を最小限にするため、本実施例に従って形成された粒子は熱水で効果的に洗浄した。硫酸バリウムは、水和された微小粒子の流動化の補助として乾燥させる前に、粒子の付着を防止する作用が効果的に働く。
【0112】
(実施例21)
硫酸バリウム粉末ビーズの流動層コーティングは、実施例20に従って形成された硫酸バリウムの表面層を有するポリメタクリレートビーズを使用して行ったが、バリウムイオンがコア中に拡散し、ヒドロゲルコア内で沈殿が形成されるように、過剰な塩化バリウムが使用された。
【0113】
粒子を調製するに当たっては、添加順序を逆にすることを除いて、実施例20に示すのと同じ硫酸バリウムコーティング手順を繰り返した。このようにして、水和された微小粒子2500mLを脱イオン水2500mLにゆっくりと加え、5モル%(200mL)の0.5M(BaCl2)を撹拌しながらゆっくりと加えた。不可逆的なアクリル酸バリウムの形成を防止するため、添加は3分以内に行った。続いて、室温で撹拌しながら、2倍の量(400mL)の0.5M硫酸ナトリウム(Na2SO4)によって、すぐに反応を停止させた。その後、上記粒子を2Lの脱イオン水で3回洗浄した。この操作により、粒子中に硫酸バリウムが沈殿した。
【0114】
得られた沈殿は、ヒドロゲルコアの孔の中に沈殿しており、水によって複数回洗浄しても除去することができなかった。このようにして形成された粒子は、修飾していない粒子に比べて恒久的に密度が増加していることが認められた。密度の増加は、使用する塩化バリウムのモル量によって調整することができた。この手順により、0〜15モル%の範囲の塩化バリウムが再現的に使用された。本手順の評価では、粒子内への塩化バリウムの拡散に基づき、添加の時間が5分を超えると、ヒドロゲルコアの外側の孔が不可逆的に架橋し、これによって内側の硫酸バリウムの沈殿浸出が防止されることが分かった。この効果は、表面は透明のまま、硫酸バリウムの「拡散前面」が粒子内の白色の帯としてはっきりと確認できる形で、光学顕微鏡により確認できた。
【0115】
実施例20および実施例21のいずれにおいても、乾燥工程時に凝塊形成せず、そのため表面の損傷が防止される、抗付着特性を持った粒子がもたらされる。一般的には、粒子を完全に乾燥させることなく流動化させることができることから、当該利点によって、流動層手順に必要となる粒子の量を最小限にすることができる。残りの含水率は、凝塊形成のない乾燥重量をベースに、最高1:1の比率まで増やすことも可能である。また、前期実施例では、密度特性が向上し、その密度変化が恒久的であるように思われる粒子も生成される。
【0116】
一般的には、本明細書に記載の手順を適用すると、本発明に従って0モル%〜約100モル%の範囲、好ましくは0モル%〜約15モル%の硫酸バリウムを導入して、好ましい弾性、密度および機械安定性を有する粒子を生成することも可能であることが、本開示に基づき理解されるはずである。
【0117】
続いて、本実施例で形成された、コア内に硫酸バリウムを加えた粒子を、実施例16に従ってエステル化させ、減圧乾燥させた。乾燥ビーズ300gを水300gに懸濁すると、1分以内にポリメタクリレートのコアによって完全に吸収されるが、硫酸バリウム粉末粒子の表面は乾燥しているように見え、凝塊形成する傾向は見られなかった。
【0118】
内部に50重量%(wt%)の水を有する粒子(この時点で600g)を、実施例18に従ってMP−1 Precision Coater(登録商標)流動層コーティング装置にて、APTMS/PTFEPによりスプレーコーティングしたが、但し、追加のアミノシラン定着剤を使用した。使用した処理機器は実施例18のものと同じであるが、得られたコーティングには3つの異なる層が含まれていた。即ち、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)定着剤の底面コーティングの上に、APTMSおよびPTFEPの混合物の第二コーティング層、およびPTFEPの第三の表面層が形成された。3種類全てのスプレー溶液は、重量%比が1:1の酢酸イソペンチルおよび酢酸エチルの混合物にコーティング材料を溶解することによって調製した。第1の溶液には、酢酸塩混合物200gに溶解された35μLのAPTMSが含まれ、第2の溶液には、酢酸塩混合物150mg中に25μLのAPTMSおよび125mgのPTFEPが含まれており、第3の溶液には、酢酸塩混合物60g中に50mgのPTFEPが含まれていた。スプレー溶液の量および濃度は、350μmの粒子を有する300gバッチのコーティングを基準にしている。吸収された水は、5〜10g/分の速度で蒸発させた。30分後に工程を停止した時には、コーティングの厚さが100nmに達し、残りの含水率は18.4重量%であった。
【0119】
(実施例22)
本実施例では、実施例15に従って形成された微小粒子にて、有機染料の吸収を試験した。まず、1mLの水和ビーズを含むリン酸バッファー生理食塩水2mLに、5〜10μLのそれぞれの色素を、10ミリモルのエタノール溶液として加えた。そして、ガラス瓶を穏やかに振盪しながら、上記試料を室温で30〜60分間インキュベーションした後、上清液体を捨て、粒子を2mLの脱イオン水、生理食塩水またはPBSバッファー溶液のいずれかで2回洗浄し、光学および蛍光顕微鏡で可視化した。試験した色素には、DiI等のカルボシアニンをベースした色素と共に評価される、フルオレセイン二酢酸およびローダミン6G等のトリフェニルメタン誘導体が含まれた。また、トリフェニルメタンをベースしたフルオレセインおよびローダミン色素は、イオン相互作用を通じて、親水性PMMAヒドロゲルコアに対する特異的な親和性を呈し、当該色素は、実質的な浸出なく洗浄と蒸気滅菌を繰り返す厳しい条件に容易に耐えることができた。
【0120】
一方、カルボシアニン色素DiIは、親水性PMAAコア材料に浸透することなく、疎水性PTFEPシェルに対する高い選択性を呈した。そのため、DiIとフルオレセイン二酢酸を組み合わせてその後染色を行ったところ、コアおよびシェルの両方を、蛍光光学顕微鏡を使用して同時に可視化することができた。従って、この手順では、実際の用途で遭遇する条件下でコアおよびシェルを同時に可視化するPMAA粒子の高速且つ高感度の蛍光染色検定が可能となる。さらに、PTFEPシェルに対する機械弾性応力または損傷の評価も可能となり、粒子の各種成分に対する特定クラスの色素の親和性を示すことができる。
【0121】
前述の実施態様には、本発明の広義の概念から逸脱しない範囲で変更を加えることができることは、当業者によって理解されるはずである。従って、開示された特定の実施態様に本発明が限定されることはなく、添付の請求範囲により定義される本発明の精神および範囲内の変更を本発明が包含することが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
以下の概要並びに本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとより良く理解できるはずである。本発明を説明する目的から、現在好ましいとされる実施態様の図面を示す。但し、示された正確な装置および手段に本発明が限定されないことは理解されるはずである。
【図1】本発明の一実施態様に基づく粒子を調製するために使用される、一般的な凍結濃縮法の概略的な説明である。
【図2】本明細書の実施例1の微粒子を調製するに当たって液体窒素にポリマー溶液を提供する手動の滴下技術を示す。
【図3】本明細書に開示される凍結濃縮法の一実施態様によって調製される、未添加のポリホスファゼン粒子(微粒子)である。図3Aは倍率4倍の光学顕微鏡写真を示し、図3Bは、倍率100倍の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図4】本発明の一実施態様に従って形成された、ウシインシュリン(20重量%)を加えた粒子(微粒子)の倍率100倍のSEM像である。
【図5】未添加のポリホスファゼン微粒子の表面形状である。図5Aは原子力間顕微鏡を使用して得られた画像であり、図5Bは、未添加のポリホスファゼン微粒子表面を示す倍率5000倍の走査型電子顕微鏡画像である。
【図6】本発明の一実施態様で使用される凍結濃縮の構成を示し、凍結容器である。
【図7】本発明の一実施態様で使用される凍結濃縮の構成を示し、シリンジポンプである。
【図8】本明細書の実施例14において微小粒子のマイクロカテーテル試験に使用される装置の断面図である。
【図9】水和/脱水サイクル直後の試料Cの微小粒子の表面の倍率1000倍のSEM像、および実施例14の評価で使用された実施例12の試料Cに従って形成された微小粒子のフィルム厚を示す倍率50,000倍のSEM像である。
【図10】実施例14の評価で使用された実施例12の試料Cに従って形成された微小粒子の、カテーテル通過後の表面特徴を示す、倍率1000倍(図10A、図10Bおよび図10C)および倍率5000倍(図10D)のSEM像である。
【図11】実施例14の熱応力試験後に実施例12の試料Cによって形成された微小粒子のSEM像である。図11Aは、強調された白色の対比部分において少量の層間剥離を示す倍率50倍のSEM像である。図11Bは、図11Aの微粒子の倍率200倍のSEM像である。図11Cおよび図11Dはそれぞれ、微細な欠点のみを示す、他の試料Cの微小粒子の倍率200倍および1000倍のSEM像である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年5月24日に出願された米国仮特許出願第60/684,307号、および2004年10月25日に出願された米国仮特許出願第60/621,729号の米国特許法第119条(e)項による優先権の利益を有し、これらの全ての開示は、本明細書に参考として組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
微粒子およびナノ粒子を含む小粒子は、診断および治療手順において多くの医学的用途を有する。医学的用途において使用される先行技術の粒子の殆どは、接触する組織の炎症や有害な免疫反応の誘起を含む多くの不利な点によって特徴付けられる。
【0003】
さらに、先行技術の粒子を調製するために使用される材料の多くは、哺乳動物の体内で比較的急速に分解され、その結果、長期間にわたる無傷の粒子の存在が必要となる特定の手段において、それらの有用性が損なわれる。さらに、先行技術の材料の分解は、患者において有害な反応を引き起こす有毒または刺激性の化合物を遊離する可能性がある。
【0004】
特定のタイプの先行技術の粒子にとっては、治療する身体の部位に注射するために粒子を送達懸濁液に取り込むに当たって、所望の懸濁特性を達成することが困難であることが当該分野において問題となっている。多くの場合、粒子は溶液中で沈殿するか、または「浮遊する」傾向にあるため、均一に懸濁されず、均一な送達を行うことができない。さらに、粒子は送達溶液中で凝集または凝塊形成する、および/または送達装置の一部に付着する傾向にあり、これらの接着力/引力の分を補う必要がある。
【0005】
安定した分散を達成するには、粒子の引力相互作用の破壊をもたらす界面活性物質を含めた適切な分散剤を加えることが知られている。粒子の相互作用の特性によって、以下の材料、即ち、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)80、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム等の陽イオン性、陰イオン性または非イオン性界面活性物質、血清アルブミン等の種々の天然のタンパク質、その他いずれかの高分子界面活性物質が、送達組成物中で使用されることがある。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖またはデキストリン等の増粘剤が、沈殿による粒子の沈降を防止し、溶液の粘度を増加させるために使用することも可能である。浮力を達成するために、密度添加剤を使用してもよい。
【0006】
また、水性懸濁液中で清澄で透明な高分子アクリレートヒドロゲルを使用する際に、懸濁の度合を測定するため、溶液中で微小粒子を可視化することも困難である。粒子状で不活性沈殿物である硫酸バリウムを使用する試みが、骨用セメントのため、およびX線検査時に製品を可視化するシリコーンのため、並びに高分子アクリレート粒子に放射線不透過性を与えるための添加剤として知られている。非特許文献1を参照されたい。また、硫酸バリウムは流動化を向上させるものとして知られており、湿った凝集粒子に抗固着性質を付与する無機充填材としてしばしば使用されている。微小粒子を可視化を向上させるその他の先行技術の試みには金の使用が含まれ、例えばEmbosphere Gold(登録商標)は少量の金を使用してアクリレート微小粒子に赤紫色の色を与えている。
【非特許文献1】Jayakrishnan et al.,Bull.Mat.Sci.,(1989)Vol.12,No.1,pp.17−25
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当該技術分野では、哺乳動物システムの自然のシステムによって分解されず、生体適合性を有し、抗凝集性を有し、使用中に懸濁液内で容易に可視化され、および/または許容される物理的および懸濁特性を実証する、様々な治療および診断手順等の特定用途のために優先的な、通常は球形をした形状となるように形成することができる小粒子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、治療手順および/または診断手順に使用するための粒子を含む。上記粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む。
【0009】
また、哺乳動物の組織への血流を最小限にする方法であって、少なくとも1種類の粒子を使用して上記哺乳動物中の血管の少なくとも一部を閉塞することを含み、上記粒子がポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む方法も含まれる。
【0010】
さらに、本明細書には、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の粒子並びに活性物質を上記局所領域に接触させて、有効量の上記活性物質が上記局所領域に接触するようにすることを含む方法が開示されている。
【0011】
また、本発明には、経口投与用の活性物質の徐放処方物であって、上記処方物がポリマーカプセルおよび活性物質を含み、上記ポリマーカプセルがポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む処方物が含まれる。
【0012】
さらに、本発明は、哺乳動物中の血管を通った粒子の通過を追跡する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体並びに造影剤を含む、少なくとも一種類のトレーサー粒子を哺乳動物の血流に注入し、当該粒子の経路を画像化することを含む方法を含む。
【0013】
また、本明細書には、向上した超音波画像化方法が開示されている。上記方法は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む、少なくとも1種類の中空マイクロカプセルを超音波被験体の領域に投与し、超音波を使用して上記被験体領域を画像化することを含む。
【0014】
また、本発明は、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の粒子並びに活性物質を上記局所領域に接触させて、有効量の上記活性物質が上記局所領域に接触するようにし、上記粒子が密度を増加させる物質を含む方法を含む。
【0015】
さらに、アクリルベースのポリマーから形成される粒子の凝塊形成および/または凝集を最小限にする方法であって、上記粒子のコアおよび/または表面に硫酸バリウムを提供することを含む方法が開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書には、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体を使用して製造され得る粒子、並びに当該粒子の製造方法が開示されている。さらに、本明細書には、本明細書に開示される粒子を使用した治療および/または診断方法および手順(上記粒子を使用した塞栓形成法を含む)、上記粒子を使用した活性物質の(経口または局所)送達方法、上記粒子を使用して身体を通過する血液またはその他の体液を追跡または可視化する方法、および上記粒子を使用する向上した超音波(断層撮影)方法が開示される。
【0017】
また、胃腸系への活性物質の局所送達および/または活性物質の全身送達のための粒子を含む経口投与のための徐放性薬物送達処方物、並びに活性物質の局所送達のために皮下または静脈に注射することのできる徐放性薬物送達処方物が含まれる。
【0018】
本発明の全ての方法、組成物および処方物は、本明細書に開示される少なくとも1種類の粒子を利用する。本明細書で使用される「粒子」は、後述する特定の方法および用途での使用に適したいずれかの直径を有する、概ね球形または楕円形の粒子、中空または固体を意味し、微粒子、ナノ粒子、ビーズ、および当該技術分野で公知である同様の性質のその他の物体を含む。
【0019】
本明細書に開示される一実施態様による本発明の好ましい粒子は、その全部または一部が、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]またはポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]の誘導体として知られる特定のポリホスファゼンポリマーを含む。上記特定ポリマーの使用は、無機ポリマー主鎖を含むという点で少なくとも部分的に無機的であり、且つ哺乳動物(ヒトおよび動物を含む)に導入した時に特異的または非特異的免疫システムを引き起こさないという点で生体適合的でもある粒子もたらす。また、本発明の範囲には、制御された薬物送達媒体として、または血管およびその他の器官を可視化するトレーサー粒子としての当該粒子の使用も含まれる。
【0020】
上記粒子は、血管を閉塞する上で十分に大きなサイズで、並びにこれよりも小さな管を容易に通過する上で十分に小さなサイズで調製することができるため、例えば可視化または薬物送達等の目的の種々の治療手順および/または診断手順において有用である。さらに、上記ポリマーの生体適合的性質のため、上記粒子は、異物が哺乳動物の身体に取り込まれた時に通常発生する免疫反応、例えば「移植片拒絶」または「アレルギー性ショック」、並びに免疫システムのその他の有害な反応の回避または排除を促進する。さらに、本発明の粒子は、インビボにおける生分解の減少を呈するため、生物学的環境における粒子の長期的な安定性を向上させることが明らかになっている。さらに、粒子中のポリマーによって何らかの分解が起こる状況では、上記分解から遊離する生成物に無毒量のリン、アンモニアおよびトリフルオロエタノールのみが含まれ、これは、有利なことに、哺乳動物組織と接触した際に抗炎症反応を促進することが知られている。
【0021】
本発明の各粒子は、ポリマー、ポリ[ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]またはその誘導体(本明細書中ではさらに「ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]」または「PTFEP」とも呼ばれる)で一部が形成される。上記の好ましいポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]ポリマーは、以下に示す式(I)によって表わされるモノマーの繰り返しによって構成される:
【0022】
【化1】
式中のR1〜R6は全てトリフルオロエトキシ(OCH2CF3)基であり、nは少なくとも約100からより大きな分子長まで変化する可能性があり、好ましくはnが約4,000〜約300,000であり、さらに好ましくはnが約4,000〜約3,000であり、最も好ましくはnが約13,000〜約30,000である。また、本発明の粒子の調製においては、上記ポリマーの誘導体も使用することができる。「誘導体」とは、1以上のR1〜R6官能基または主鎖原子が異なる原子または官能基によって置換されている式(I)の構造を有するモノマーによって構成されるポリマーであって、ポリマーの生物学的不活性が殆ど変わらないポリマーを意味する。具体的な官能基には、エトキシ(OCH2CH3)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ(OCH2CF2CF3)、2,,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピルオキシ(OCH(CF3)2)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ(OCH2CF2CF2CF3)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルオキシ(OCH2(CF2)7CF3)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルオキシ(OCH2CF2CHF2)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルオキシ(OCH2CF2CF2CF3)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチルオキシ(OCH2(CF2)7CHF2)が含まれる。さらに、いくつかの実施態様では、1%以下のR1〜R6基が、さらに弾性のホスファゼンポリマーを得るための架橋を補助するアルケノキシ基であることもあり、これらには、OCH2CH=CH2、OCH2CH2CH=CH2またはアリルフェノキシ基が含まれる。
【0023】
本発明の粒子を調製するために使用されるポリマーの分子量は、上記式に基づく分子量を有することが好ましく、さらに好ましくはポリマーが少なくとも約70,000g/モルの分子量、さらに好ましくは少なくとも約1,000,000g/モルの分子量、さらに好ましくは少なくとも約3×106g/モル〜約20×106g/モルの分子量を有する。最も好ましくは、少なくとも約10,000,000g/モルの分子量を有するポリマーである。
【0024】
本発明によって形成される粒子の直径は、粒子が使用される最終応用によって必然的に変化する。当該粒子の直径は、好ましくは約1μm〜約5,000μmであり、約1μm〜約1,000μmの直径が最も好ましい。その他のよくあるサイズには、約200μm〜約500μm、約1μm〜約200μm、および約500μm以上が含まれるが、種々の組み合わせの粒子サイズ、並びに約1μm〜約5,000μmという広い範囲内の種々の範囲が本開示の範囲内にあることが、本開示に基づき理解されるはずである。1種類以上の粒子を含むことが好ましい粒子を使用した方法では、全ての粒子が同じ直径または形状をしている必要はない。しかし、本発明によれば、以下の模範的な範囲を有する、正確に測定された粒子を調製することが可能である:
100μm±25μm
250μm±50μm
400μm±50μm
500μm±50μm
700μm±50μm
900μm±50μm。
また、前述のような種々の範囲、例えば500〜700μmの範囲の粒子も、配合用途のために調製および混合できる可能性があることも、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
また、上記粒子は、調製時または治療および/または診断用途のいずれかにおいて、ポリマーまたは粒子の性質を向上、変化またはその他により修正するために作用するその他の化合物が含まれることもある。例えば、ペプチド、タンパク質、ホルモン、炭水化物、多糖類、核酸、脂質、ビタミン、ステロイド等の活性物質、および有機または無機物質が粒子に取り込まれることもあれば、デキストラン、その他の糖類、ポリエチレングリコール、グルコース等の賦形剤、並びに例えばグルタミン酸キトサンを含む種々の塩が粒子に取り込まれることもある。
【0026】
さらに、希望に応じて、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体以外のポリマーを粒子に含ませてもよい。ポリマーの具体例には、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸コポリマー)、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、およびポリウレタンが含まれる。その他のポリマーには、ポリアクリレート、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アシル置換アセチルセルロースおよびその誘導体、分解性または非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、およびポリエチレンオキシドが含まれる。また、本明細書に開示されるように、すでに形成された粒子のマトリックス中に追加の化合物を含有、拡散、挿入または封入する方法、または粒子の調製時にポリマー溶解物またはポリマー溶媒に追加の化合物を加える方法を含めた、当該技術分野で公知であるいずれかの方法によって、選択された化合物を取り込むことも可能である。
【0027】
化合物が付加された、または付加されていない粒子は、前述のようなポリマーを含めた、一つ以上のさらなるポリマー層でコーティングされることもある。さらに、PTFEPまたはその誘導体は、本明細書に開示される粒子の形成に使用される、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるその他の適切なポリマーまたはコポリマーで形成された粒子上に、当該コーティングを形成するために使用することができる。好ましくは、微小粒子等の粒子をコーティングする場合、PTFEPは、以下にさらに詳細に示すようなアクリルベースのポリマーで形成された微小粒子において、コーティングとして使用される。
【0028】
コーティングが有益とされるのは、例えば、粒子が徐放性の、経口投与用薬物送達処方物(腸溶コーティング)で使用される場合、または粒子が毒性を有する可能性がある造影剤(非生分解性コーティング)によって加えられる場合である。
【0029】
上記微粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]を含む粒子の調製に適した、当該技術分野で公知であるいずれかの方法によって調製するも可能である。本明細書の一実施態様による方法では、「ポリマー溶液」が1種類以上のポリマー溶液並びにPTFEPおよび/またはその誘導体を、ポリマーが溶解するまで混合することによって調製される。
【0030】
上記ポリマー溶液の調製での使用に適した溶媒には、ポリマーPTFEPおよび/またはその誘導体が溶解できるいずれかの溶媒が含まれる。模範的な溶媒には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルエーテル、ヘキサフルオロベンゼン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
上記ポリマー溶液は、PTFEPおよび/またはその誘導体ポリマーを、ポリマー約1重量%からポリマー20重量%濃度、好ましくはポリマー約5重量%から10重量%の濃度で含有する。当該ポリマーを最終粒子に含めることを望む場合は、前述のようなその他のポリマーを上記溶液中に存在させるか、または第二の溶液粉末の形状またはその他の形状で容器中に加えることも可能である。
【0032】
上記工程の実施に当たっては、続いて上記ポリマー溶液が、好ましくは滴またはエアゾールの形状で、非溶媒を含む容器中に分注される。「非溶媒」とは、PTFEPポリマーを殆ど溶解しない有機または無機溶媒であって、融点がポリマーが溶解している溶媒(ポリマー溶媒)の融点よりも低いために、インキュベーション工程の過程で溶媒が解けるよりも前に非溶媒が解けるものを意味する。好ましくは、この非溶媒とポリマー溶媒の融点の差は約10℃であり、さらに好ましくは約15℃であり、最も好ましくは約20℃以上である。特定の条件下では、ポリマー溶媒と非溶媒の融点の差が15℃以上の場合に、得られる粒子の構造的な完全性が向上する可能性があることが明らかになっている。しかし、非溶媒の融点は、ポリマー溶媒の融点よりもわずかに低ければ十分である。
【0033】
非溶媒/ポリマー溶媒の配合を、約1〜5日間、または上記ポリマー溶媒が粒子から完全に除去されるまでインキュベーションする。理論に束縛されることを望むわけではないが、ポリマーが少なくともゲル化するように、インキュベーションの間、上記非溶媒は、粒子由来の微視的なポリマー溶液の液滴からポリマー溶媒を抽出する機能を有すると仮定される。上記インキュベーション期間が経過するにつれて、液滴は小さくなり、溶媒はさらに抽出され、ゲル化されたポリマーコアを含む硬化した外側の高分子シェルをもたらし、最終的にはインキュベーションが完了すると、残りの溶媒が完全に除去される。上記インキュベーション期間に高分子液滴が概ね球形を維持するようにするため、上記インキュベーション期間の全てではなくとも殆どの間、液滴を凍結しておくか、または概ねゲル状態にしておく必要がある。そのため、非溶媒の温度は、凍結濃縮工程の間、溶媒の融点以下に維持してもよい。
【0034】
図1に示すように、(a)と表示された容器では、ポリマー溶液液滴が、シリンジまたはその他の装置のいずれかを使用して、調整された速度で、液体窒素の最上層に分注されることが示されている。上記窒素層は、凍結されたポリマー溶液液滴から溶媒を抽出する役割を最終的に果たす、選択された非溶媒を含む最下層の上に位置する。上記非溶媒層は、ポリマー溶液の分注の前に液体窒素を使用して前もって凍結されている。(b)と表示された容器は、凍結された高分子液滴が沈むであろう、凍結した非溶媒の結露の開始を示す。(c)と表示された容器は、非溶媒内でインキュベーションした高分子溶液液滴が相当量の溶媒を消耗した、約3日間のインキュベーションの後の凍結濃縮を示す。成果物は、硬化した外側シェルを有するビーズ形状のゲル化したポリマー粒子である。説明でも明らかなように、非溶媒の一部の蒸発によって容器中の非溶媒の高さはわずかに低下する。この工程の間にビーズのサイズがどの程度減少するかは、ポリマー溶液中のポリマーの初期濃度による。
【0035】
本発明によるPTFEP含有粒子の調製方法の一実施態様では、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの方法を使用して、当該粒子を形成することができる。これを達成する模範的な好ましい2つの方法には、(i)ポリマー溶液を追加する前に、前述の方法の実施態様で容器に存在する非溶媒を、凝固点の近くまでまたは凝固点まで冷却して、ポリマー液滴が予め冷却した非溶媒と接触した時に凍結するようにする方法;または(ii)予め凍結させた非溶媒層の上に配置された、窒素等の液体ガスと接触することによってポリマー液滴を凍結させる方法が含まれる(図2を参照)。方法(ii)においては、窒素が蒸発した後、非溶媒をゆっくりと解凍し、凍結した状態の微粒子が液体の冷却された非溶媒中に沈んで、抽出工程(ポリマー溶媒の除去)が実施されることになる。
【0036】
この一般的な方法を修正することによって、中空、概ね中空、または多孔性の粒子を調製することができる。例えば、例えばインキュベーションの最終段階に減圧を適用することによって、ビーズからの溶媒の除去を急速に行うと、多孔性ビーズが得られる。
【0037】
本発明の粒子は、いずれかの所望のサイズで調製することができ、「微粒子」は、圧縮空気または超音波ノズルのいずれか、例えば、Sonotek 8700−60msまたはLechler US50超音波ノズル(それぞれ、Sono[.tek] Corporation[米国ニューヨーク ミルトン]製、およびLechler GmbH[ドイツ メッツィンゲン]製)を使用してポリマーエアゾールにポリマー溶液を噴霧することによって、得ることができる。これよりも大きな粒子の場合は、シリンジまたはその他の液滴生成装置を使用して非溶媒溶液に液滴を分注することによって、得ることができる。さらに、当業者に公知の通り、濃度が高いほど球形の直径が大きくなることから、粒子のサイズは、ポリマー溶液中のポリマーの初期濃度の増減によって変更または修正することもできる。
【0038】
本明細書に開示される粒子の別の実施態様では、PTFEPのシェルと共に、アクリルポリマーまたはコポリマーをベースした、標準的なおよび/または好ましいコアを上記粒子が含むことができる。当該粒子は好ましい球形をもたらすことでき、塞栓形成のための造影剤の懸濁液中で使用する比重を向上させることができる。本明細書に開示される、PTFEPシェルを有する、アクリルポリマーをベースとしたポリマーは、概ね球形であり、機械柔軟性および圧縮率、並びに比重特性の向上を呈する。上記コアポリマーは、本明細書に参考文献として組み入れられる、B. Thanoo et al., “Preparation of Hydrogel beads from Crosslinked Poly(Methyl Methacrylate) Microspheres by Alkaline Hydrolysis,” J. Appl. P. Sci., Vol.38, 1153−1161 (1990)に記載されるような、当該技術分野で公知であるいずれかの許容された手法を使用して形成することができる。かかるアクリルベースのポリマーは、好ましくは、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ヘキサメチル(HMMA)またはメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、およびそれらの誘導体、上記アクリル酸誘導体の変異体またはコポリマーを含むが、これらに限定されない非加水分解性の前駆体を重合することによって形成される。最も好ましくは、MMAである。上記ポリマーは、水和したまたは部分的に水和した(ヒドロゲルの)状態でコア内に存在しなければならない。当該ポリマーは、向上した生分解性等の適切なヒドロゲル特性および構造を呈するため、並びに水による分解に対する耐性を備えることによってポリマー構造の機械安定性を保持することを補助するため、好ましくは架橋される。
【0039】
好ましくは、上記コアプリポリマーは、懸濁またはエマルション重合タイプである分散重合によって形成される。エマルション重合は、約10nm〜約10μmの概ね球形の粒子をもたらす。懸濁重合は、同様の粒子であるが、サイズが約50〜約1200μmの粒子をもたらす。
【0040】
懸濁重合は、水溶液相またはさらに好ましくはモノマー相に可溶化することができる熱開始剤を使用して開始することができる。上記モノマー相の組成物中での使用に適した開始剤には、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、または当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる、ペルオキシドをベースした開始剤が含まれ、最も好ましい開始剤はラウロイルペルオキシドである。開始剤は、好ましくはモノマー重量をベースとした約0.1〜約5重量%の量で、さらに好ましくはモノマー重量をベースとした約0.3〜約1重量%の量で存在する。前述の通り、架橋コモノマーは、上記水和ポリマーの形成に使用するのが好ましい。重合粒子コアの調製に使用される、アクリルをベースとした主成分モノマーと共に使用する、適切な架橋コモノマーには、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)等のグリコールをベースした種々の材料が含まれ、最も好ましくは、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGMDA)である。また、希望に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。MA重合用の連鎖移動剤も、適切なものであればいずれでも使用することができる。本明細書における好ましい実施態様では、特定の重合反応に許容される量で、ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤として使用することもできる。
【0041】
上記水相組成物は、好ましくは界面活性物質/分散剤、および錯化剤を含み、任意のバッファーが必要である。界面活性物質/分散剤は、本明細書で使用されるモノマー、例えばCyanamer(登録商標)370M、並びに4/88、26/88、40/88等のポリアクリル酸および部分加水分解ポリビニルアルコール界面活性物質と適合しなければならない。分散剤は、分散液中の水の量をベースとした約0.1〜約5重量%の量で、さらに好ましくは、分散液中の水の量をベースとした約0.2〜約1重量%の量で存在しなければならない。任意のバッファー溶液は、適切なpHを維持することが必要な場合に使用することができる。好ましいバッファー溶液には、リン酸ナトリウム(Na2HPO4/NaH2PO4)が含まれる。適切な錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、これは、約10〜約40ppm、さらに好ましくは約20〜約30ppmのEDTA濃度で水相に加えることができる。上記水相組成物においては、モノマーと水の比率が約1:4〜約1:6であることが好ましい。
【0042】
上記重合は、好ましくは約60℃〜約80℃の周囲条件で、約1〜2時間のゲル化時間で行わなければならない。粒子の形成には、100〜500rpmの速度による撹拌が好ましく、これよりも速度が遅いと粒子のサイズが大きくなり、速度が早いと粒子のサイズが小さくなる。
【0043】
微粒子等のPMMA粒子が形成されると、当該粒子は、PMMA 1モルにつき約1〜10モル過剰の水酸化カリウムを使用する等、当該技術分野で標準的な加水分解条件に曝されることが好ましい。当該水酸化カリウムは、エチレングリコールにおける約1〜15%の水酸化カリウム濃度にてもたらされる。続いて溶液は、好ましくは約150〜185℃の温度で数時間加熱される。反応量および費用を最小限にするには、PMMA 1モルにつき約5モル過剰以下、さらに好ましくは3モル過剰以下の水酸化カリウムである、より少量の水酸化ナトリウムが使用されることが好ましい。また、当該加水分解反応を行うためには、エチレングリコールにおける約10〜15%、さらに好ましくは約14〜約15%の水酸化カリウム濃度が使用されることも好ましい。全体の反応時間を減らすには、より高温での加熱条件が使用されることは、当業者によって理解されるであろう。反応時間は、得られる粒子の全体直径によって変化する。例えば、以下の条件によって、35%の圧縮率および所望の安定性を有する粒子がもたらされる。即ち、溶液は、直径約200〜300μmの場合約7.5〜約8.5時間、直径約300〜355μmの場合約9.5〜約10.5時間、直径約355〜400μmの場合約11.5〜約12.5時間、直径約400〜455μmの場合約13.5〜約14.5時間等で加熱しなければならない。粒子サイズは、例えば撹拌速度や水相とモノマーの比率を変更する等、重合工程を変更することによって調整することができる。さらに、界面活性物質と分散剤の比率を大きくすることによって、より小さなサイズを達成することができる。
【0044】
加水分解の後、粒子は反応混合物から分離され、pHは、さらなる工程または意図する用途に適した範囲に調整することができる。生理学的用途を意図する場合は、粒子コアのpHを約1.0〜約9.4、好ましくは約7.4に調整することができる。ヒドロゲルコア材料のサイズ、膨潤比および弾性はpH値に依存するため、粒子の凝塊形成および/または構造損傷を防止するべく乾燥時に有益な効果を有するように、より低いpHを使用することも可能である。粒子は、好ましくは、意図する用途に応じて異なるサイズ分画にふるい分けられる。また、粒子の乾燥は、約40〜80℃の温度で数時間から約1日の間オーブンを使用することを含む、いずれかの標準的な乾燥工程を使用して行われるのが好ましい。
【0045】
親水性ヒドロゲル粒子に所望の表面特性を与えるには、PTFEPコーティングを受けるための接着力を与えるため、ヒドロゲルの表面を、テトラアルキルアンモニウム塩、多価アルコールおよび類似の物質等の適切なイオン性または非イオン性界面活性物質で処理することも可能である。接着特性のより恒久的な変化は、ポリメタクリル酸基を適切な反応物質と反応させることによって粒子表面に疎水性を与えることによりもたらされる。適切な反応物質には、疎水性アルコール、アミドおよびカルボン酸誘導体が含まれるが、これらに限定されない。さらに好ましくは、トリフルオロエタノール等のハロゲン化アルコールが含まれる。上記コーティングが塗布されると、当該表面処理によってコアからのコーティングの層間剥離も防止されようになる。好ましい表面処理には、塩化チオニルとの最初の処理に続く、トリフルオロエタノールとの反応が含まれるが、これらに限定されない。また、トリフルオロエタノール等の硫酸と疎水性アルコールの混合物中で粒子を懸濁することによっても表面を処理することができる。当該処理が好ましいとされるのは、コーティングの層間剥離を最小限にするという点から、粒子がコーティングされる場合である。
【0046】
また、最も好ましくは、上記PMAコア粒子が、硫酸バリウムの表面層でコーティングされ、および/または硫酸バリウムが注入されてもよい。上記硫酸バリウムは放射線不透過性であり、使用中に完成粒子を可視化する上で役立つ。また、硫酸バリウムは、特に乾燥時の凝塊形成を減らし、PTFEP外部コーティングによるPMA粒子の流動層コーティングを可能にするように、粒子の流動化特性を向上させ、それによりPTFEP外核と重合性アクリレートコア粒子との接着力を向上させる。コア粒子が膨脹した時でさえ、流動化を可能にすることによって、硫酸バリウムは全体のコーティングおよび接着特性も向上させる。また、PTFEPによる膨潤状態でさえもコア粒子のコーティングを可能にすることによって、硫酸バリウムは、乾燥状態で粒子をコーティングした後、コア粒子が膨潤しPTFEPのシェル上で力を及ぼす懸濁液に粒子を曝す場合と比べて、PTFEPシェルにひびが入るか、または破裂する可能性も減少させる。コア粒子上の硫酸バリウムのコーティングは、好ましくはPMAビーズのヒドロゲル表面上の不透明なコーティングを形成する形で硫酸バリウムを接着することによって塗布される。さらに、硫酸バリウムは、粒子サイズを限定する静電効果を減らす上でも役立つ。さらなる湿度の吸収を可能にすることによって、硫酸バリウムは静電状態を弱める傾向がある。
【0047】
PMA粒子に単に軽く付着した硫酸バリウム結晶は、PMA粒子上に十分な量のアミノシラン接着促進剤を噴霧することによって、粒子表面に共有結合的に架橋するか、または化学的にグラフトすることも可能である。これは、粒子の水和後の溶液中の硫酸バリウム微粒子物質を効果的に減らす上で役立つ。具体的な粒子には、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、および同様のシランをベースした接着促進剤が含まれる。
【0048】
本明細書に開示される通りに作製された微小粒子の可視化を向上させるさらに別の方法には、ヒドロゲルコア粒子の内部に水溶性有機染料を吸収させることが含まれる。具体的な染料は、好ましくはヒトへの使用が認められたFDA染料であり、これらは、体内で安全且つ無毒であるものとして公知であるかまたは開発されることになり、並びに許容されるコントラストを提供できるものである。有機染料には、D&Cバイオレットno.2等の染料、並びに好ましくはコンタクトレンズおよび吸収性縫合糸等の医療用具として承認されているその他の染料が含まれる。硫酸バリウムは、結晶サイズが小さいために光の回折によって粒子を可視化する無機充填材および微粒子顔料として作用するのに対して、染料は、粒子中に含浸されると、可視の色スペクトルの相補的な部分を吸収する。
【0049】
続いて、コアヒドロゲルポリマーを形成するための前述の方法に従って作製された微小粒子を含む粒子は、PTFEPおよび/またはその誘導体でコーティングされる。コーティング工程は、溶媒流動層および/または噴霧法を含め、いずれか適切なものを使用することができる。しかし、好ましい結果を達成するには、粒子が気流を通過し、気流内で回転している間に噴霧を介してコーティングされる流動層法を使用することもできる。上記PTEFPまたは誘導体ポリマーは、ノズルの目詰まりを回避するため、希釈した溶液内で提供され、噴霧される。
【0050】
当該溶液に使用される具体的な溶媒には、酢酸エチル、アセトン、ヘキサフルオロベンゼン、メチルエチルケトンおよび類似の溶媒、およびそれらの混合物および組み合わせが含まれ、最も好ましくは酢酸エチルのみまたは酢酸エチルと酢酸イソアミルの混合物である。標準的な好ましい濃度は、溶液における約0.01〜約0.3重量%、さらに好ましくは約0.02〜0.2重量%、最も好ましくは約0.075〜約0.2重量%のPTFEPまたはその誘導体の濃度である。ヒドロゲルのタイプは、粒子コーティング法のように変更できることが本開示に基づき理解されるはずであるが、本明細書に開示される処理法および用途で有用なコアは、本明細書に開示されるように形成された後、PTFEPおよび/またはその誘導体によりコーティングされることが好ましい。
【0051】
先に考察した通り、上記粒子は、塞栓形成、薬物送達、画像化(超音波)およびトレーサー粒子等の種々の医学および治療用途に使用することができる。例えば、一実施態様では、本発明に、哺乳動物の特定組織への血流を最小限にする方法が含まれる。通常塞栓形成と呼ばれるこの工程には、本発明の1種類以上の粒子を使用して、血管の少なくとも一部または血管全体を閉塞または遮断することが含まれる。当該手順は、例えば腫瘍組織等の好ましくない血管組織に伴う疾患および症状、または子宮内膜症等の特定細胞の非制御増殖に伴う疾患の治療において特に有用である。当該手順において、粒子は前述の手順に従って調製され、カテーテル、シリンジまたは外科切開等の、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる、侵襲的または非侵襲的な医療行為によって血管に挿入することができる。上記塞栓形成は、血管の一部のみを閉塞するか、または血管全体を閉塞するように、実施することができる。上記方法では、希望に応じて、本明細書に開示されるような、細胞増殖抑制剤、抗炎症剤、抗細胞分裂剤、または細胞増殖活性物質、またはその他の好ましい活性物質等の活性物質を加えた粒子を使用することもできる。本発明に基づく塞栓形成粒子は、光学的可視性の向上、放射線不透過性の改善、および約1.17g/cm3という最適な比重の実現が実証されている。本発明における塞栓形成粒子は、粒子サイズ、局所薬物送達のために埋め込まれた医薬品、および制御された薬物溶出特性に関して先に述べた通り、マーカーとして異なる染料と共に使用することも可能である。
【0052】
塞栓形成治療において使用するに当たっては、粒子の送達に有益な特性を保証するために、粒子密度を考慮することが好ましい。密度が不一致の送達媒体を使用すると、カテーテルをベースしたシステムの目詰まりが起こることがある。さらに、手術時に十分なレベルの蛍光コントラストを達成するには、送達媒体に特定の最小量の造影剤を含めることが好ましい。一般的に、ポリメタクリレートヒドロゲルの密度は、平衡含水率曲線に応じて1.05g/cm3〜1.10g/cm3となっている。最も一般的な、1mL当たり300mgのヨウ素を含むヨウ素化非イオン性造影剤媒体は、1.32〜1.34g/cm3の密度を有する。本明細書で使用される「浮力」とは、懸濁している媒体と粒子密度が殆ど同じ場合に生じる、溶液中で粒子が殆ど自由に浮遊することができる能力を意味する。本明細書に開示される通りに本発明に従って形成されたコーティング粒子は、送達媒体中に約30%の造影剤がある場合に浮力に達することができるが、当該レベルは、本明細書に開示される手法に従って、かかる好ましい使用のために調整することができる。
【0053】
上記粒子の密度を増加させる1つの方法は、重水または酸化ジューテリウム(D2O)の使用である。粒子を膨張させるために重水を使用すると、D2OがH2Oに置換され、それにより良い分散および浮力レベルを達成するために粒子重量が増加する。通常は、これにより、当該手法を使用して造影剤の量が少なくとも約5%増える能力がもたらされる。しかし、上記粒子が造影剤水溶液と接触すると、時間と共に幾らかの平衡化効果が生じる。従って、この目的のためにD2Oを使用する時には、懸濁時間を最小限に保つことが好ましく、またはD2Oも使用した溶液内で上記造影剤が提供されることがさらに好ましい。
【0054】
また、pH 1の粒子は水酸化セシウムを使用して中和することができ、および/または最終的に中和された粒子は塩化セシウムで平衡化することができる。当該化合物は、ポリメタクリル酸のセシウム塩が形成されるか、ポリメタクリル酸が拡散して塩化セシウムが濃縮されるように、粒子中にセシウムを拡散する。
【0055】
セシウムは粒子の密度を増加させ、その結果、さらに多量の造影剤を添加する性能が向上する。標準的な浮力レベルは、塞栓形成で要求されるように、約45〜約50%の造影剤を送達媒体に加えられるように、セシウム法を使用して調整することができる。セシウム塩は無毒であり、蛍光透視法を使用して粒子を見えるようにする。132.9g/モルのセシウムの原子量は、ヨウ素の原子量よりもわずかに大きいため、全体密度を増加させ、造影剤がなくてもX線コントラスト可視性を向上させること含めた有利な効果をもたらす。放射性アイソトープのセシウムが好ましい特定の癌治療では、当該活性物質を、塞栓溶液中で粒子に浮力を与える代替のセシウム源として使用することができる他、活性治療源として使用することができる。
【0056】
密度および/または溶液中での浮力が適用可能な特性である、塞栓形成またはその他の用途に使用する微粒子等の粒子の密度を向上させる前述の手法は、本明細書に開示される好ましい粒子に応用することができ、および/またはその他の同様の粒子に応用することもできる。上記開示は本明細書の好ましい粒子のセシウムおよびまたはD2O処理に限定されることはなく、当該手法はその他のアクリルをベースしたヒドロゲルおよびその他のポリマー粒子等のその他の粒子と広く関連することが理解されるはずである。
【0057】
前述の通り、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの技術を使用して、硫酸バリウムは、コア粒子と好ましいPTFEPコーティングの間に使用するか、または上記コア粒子の内部に導入することができる。また、有機染料も、同様に粒子コア中に含めることもできる。これらの材料、特に硫酸バリウムは、密度の増加並びに放射線不透過性の実現にも貢献する。前述のD2Oまたはセシウム化合物によって提供される一般的な密度の増加に加えて、上記硫酸バリウムは、殆どおよび/または完全な水和時においても利益をもたらし、懸濁液中の粒子の等張性を維持することが可能になる。従って、硫酸バリウム粉末コーティングは、生理的浸透圧に対する影響がない不活性沈殿物を提供することができる。
【0058】
特定のコア粒子およびコーティングの組み合わせに最も有益な効果を与えるために、前述の種々の浮力添加剤を単独でまたは組み合わせて使用できることが、本開示に基づき理解されるはずである。
【0059】
本発明にはまた、哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法が含まれる。上記方法には、有効量の活性物質が上記部位に局所的に放出されるように、先に述べた本発明の少なくとも1種類の粒子を局所領域に接触させることが含まれる。この方法により治療できる可能性がある疾患または症状には、活性物質の局所または局所領域投与が薬物の全身吸収に比べて何らかの利点を達成するいずれのものも含まれる。適切な活性物質には、NSAIDS、ステロイド、ホルモン、並びに核酸、潰瘍、クローン病、潰瘍性結腸炎および過敏性大腸炎等の消化管の疾患の治療に使用される物質が含まれる。その他の活性物質には、タクロリムス、シロリムス、パクリタクセル、シス−/カルボプラチン、抗腫瘍薬、ドキソルビシンおよび/または細胞接着を阻害するavβ3インテグリン遮断薬等の受容体遮断薬が含まれる。
【0060】
局所領域に活性物質を送達するために開発された粒子の直径が約1〜約1,000μmである場合、薬物を加えた微粒子は、不注意な閉塞を起こすことなく、送達器具としてシリンジおよび/またはカテーテルを使用して哺乳動物の体内の局所領域に投与することができる。例えば、造影剤を使用して、鼠径部動脈にカテーテルを挿入し、局所投与したい部位に到達するまでその動きを観察することができる。そして、適切な注射媒体内の粒子の懸濁液をカテーテルを通じて注入して、身体の特定部位のみが薬物を加えたビーズ(粒子)による治療を受けることが保証される。当業者に理解されることとして、注射媒体には、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになる医薬として許容された媒体、例えば生理食塩水、PBSまたはその他全ての適切な生理的媒体が含まれる。本明細書に開示されるさらなる実施態様によると、本発明には、粒子および造影剤をはじめとした、粒子が溶液中で殆ど分散されている、注入可能な分散液が含まれる。好ましい一実施態様では、上記粒子が蛍光透視法により検出可能となっている。
【0061】
本発明のポリマー粒子は、経口投与のための活性物質の徐放性処方物を調製するために使用することもできる。上記処方物は、前述の通り活性物質が加えられた粒子を含む。使用される上記ポリマー粒子は、中空、概ね中空または固体であってもよい。上記粒子は、スプレー液滴よりミクロサイズの粒子を製造する、即ちポリマー溶解物を錠剤化(pastillation)する前にポリマー溶液中の活性物質を分散または溶媒化(solvation)するか、または凍結濃縮法を行うことによって、上記粒子に活性物質を追加することができる。また、追加されていないポリマー粒子を調製して、活性物質を含む溶液に浸漬することができる。続いて、活性物質がポリマーマトリクス中に拡散する上で十分な時間の間、粒子を上記溶液中でインキュベートする。粒子を乾燥させた後、活性物質はポリマー粒子中に保持される。この追加メカニズムを使用した場合、インキュベーション媒体中の薬物濃度を調整し、平衡条件に達した時にインキュベーション媒体から粒子を除去することによって、薬物の追加を調整することができる。
【0062】
さらに、活性物質は、特に粒子が閉塞または塞栓形成法で使用されている場合に、相乗的な方法で粒子の作用を補完するように選択できることが想定される。例えば、腫瘍組織への血流を最小限にする場合は、閉塞に使用した粒子に細胞増殖抑制剤または抗有糸分裂阻害剤を加えることができる。
【0063】
また、哺乳動物の体内の血管またはその他の空洞を通る粒子の動きを追跡する方法も提供される。上記方法には、血管、空洞、または当該空洞または血管に隣接する導管に、少なくとも1種類のトレーサー粒子を注入することが含まれ、上記トレーサー粒子は前述の方法によって調製された少なくとも1種類の粒子である。
【0064】
上記トレーサー粒子には、身体の空洞、血管および/またはその他の局所を通過する粒子の可視化を補助する造影剤が含まれてもよい。一般的に、この用途においては、より小さな粒子が好ましく、特に粒子を血流に注入する場合は、例えば、約1〜約10μmの範囲の粒子が好ましい。しかし、上記粒子は、この目的のために、上記方法が適用される血管、身体の空洞、または隣接する空洞または導管を閉塞するほど大きなものでない限り、いかなるサイズのものでも構わない。
【0065】
上記粒子に造影剤が加えられると、使用した造影剤によりX線装置またはその他のいずれかの造影法を使用して、その動きを可視化することができる。しかし、上記粒子に造影剤が含まれない場合、粒子の流れは、コンピュータ断層撮影法に基づく19F−NMRを使用して可視化することができる。
【0066】
希望に応じて、造影剤を含むトレーサー粒子をポリマーコーティング法によってコーティングすることも可能である。上記ポリマーコーティング法には、いずれかのホスファゼンポリマーを含めた、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかのポリマーが含まれてもよい。造影剤に毒性または毒性の懸念がある場合、1種類以上のコーティングが非生分解性を備えていることが好ましい。
【0067】
本発明にはまた、向上した超音波画像化(断層撮影)法を実施する方法も含まれる。これを行うには、少なくとも1種類の中空のマイクロカプセルを、可視化した超音波被験体領域に投与しなければならない。当該投与は、シリンジ、カテーテルまたはその他の侵襲性または非侵襲性医療装置、および/または外科切開を含めた、当該技術分野で公知であるまたは開発されることになるいずれかの手段によって達成することができる。当該方法においては、中空または概ね中空である粒子、即ち、粒子全体の容積の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%に相当する内部空洞を有する粒子を使用することが好ましい。上記中空粒子は、画像化したい超音波被験体部分に投与される。理論に束縛されることを望むわけではないが、上記粒子は、周囲の組織と比べて急激な密度の変化による超音波「エコー」の上昇により、超音波画像を増強することが推測される。上記粒子の中空の空洞は、超音波を反映するように作用し、それによって画像を増強する。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、ポリマー溶媒である酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下し、上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0069】
(実施例2)
直径約350〜450μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、1%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0070】
(実施例3)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が12×106g/モルのPTFEPポリマーを、メチルイソブチルケトンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を、エタノール/ペンタン比1:9(v/v)の混合物150mLの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0071】
(実施例4)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が9×106g/モルのPTFEPポリマーを、イソアミルケトンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのペンタンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0072】
(実施例5)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が16×106g/モルのPTFEPポリマーを、シクロヘキサノンに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を、エタノール/ジエチルエーテル比1:1(v/v)の混合物150mLの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0073】
(実施例6)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのヘキサンの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。
【0074】
(実施例7)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのエタノールの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。粒子は著しくゲル状になっており、乾燥後は楕円形になっていた。
【0075】
(実施例8)
直径約500〜600μmの微粒子を調製した。最初に、分子量が3×106g/モルのPTFEPポリマーを、酢酸エチルに溶解することによってポリマー溶液を調製し、2%(wt/v)のポリマー溶液を得た。上記ポリマー溶液4mLを、5mLのシリンジを使用して液体窒素に手動で滴下した。上記分散液を150mLのジエチルエーテルの凍結層の上に分注した(図2を参照)。凍結濃縮には3日間を要した。その後、ポリマー粒子を反応容器から取り出し、21℃で風乾した。乾燥後に得られた粒子は緻密で均一な球形であった。
【0076】
(実施例9)
図6に示すような2Lの凍結容器に、非溶媒としてジエチルエーテル100mLを充填した。上記凍結容器は、以下の表1に示すような特徴および標準寸法を有していた。
【0077】
【表1】
液体窒素は、非溶媒が凍るまでゆっくりと加えた。続いて、非溶媒層から垂直に測定した時に液体窒素量が約5〜10cm上昇するまで、上記容器に追加の液体窒素を充填した。
上記容器を絶縁蓋で閉じ、テフロン(登録商標)チューブを介してシリンジポンプに連結されたシリンジ針を、上記蓋の小さな開口部に差し込んだ。
【0078】
図7に示すシリンジポンプは、5〜40mg/mLの酢酸エチルポリマー溶液の5〜15mLを上記凍結容器にゆっくりと分注するために使用された。上記シリンジポンプは、以下の特徴、即ち、ポンプハウジング(J)、シリンジ(K)、並びにテフロン(登録商標)チューブを取り付けたテフロン(登録商標)分注器を有する。ポンプの速度は、1時間当たり約10mLの分注量に調整された。並行する複数の容器に上記分注量を分注するため、1個の入口と1〜8個の出口を有するテフロン(登録商標)シリンダーが使用された(非溶媒と溶媒の容量比は10%(V/V)以下のままであることが好ましく、それ以上になると、粒子が互いに接着する可能性がある)。上記ポリマー溶液の容器への分注が完了したら、さらに100mLの非溶媒を液体窒素の上にゆっくりと注いだ。
【0079】
尚、この工程を実施するに当たっては、分注に使用する針の先端がG33サイズ等のように小さいことが好ましい。さらに、重力により落下した液滴が液体窒素の表面に当たった時にすぐに沈むように、滴下距離は5cm以上にしなければならない。
【0080】
容器中の液体窒素は、約1日かけてゆっくりと蒸発させた。すると、非溶媒がゆっくりと溶け始め、まだ凍っているポリマー溶液の液滴が、冷却された非溶媒に沈んだ。そして、日を改めてインキュベーションを行った後、今やゲル化したポリマービーズ(粒子)を簡単なろ過によって容器から抽出した。上記ビーズを室温で約30分間乾燥させると、本明細書に開示されるいずれかの用途で使用する準備が整った。
【0081】
(実施例10)
実施例1の方法によって調製された微粒子の形状および表面形状を、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡によって調べた。当該解析の結果を図3Aおよび3Bに示す。図3Aには、倍率4倍の光学顕微鏡を使用して観察された微粒子を示す。図3Bには、倍率100倍の走査型電子顕微鏡を使用して観察された微粒子を示す。
【0082】
未添加の粒子の表面形状は、ガラス転移温度を超えた半結晶性ポリマーでは一般的なことが分かる。非晶質および結晶領域は、試料表面の全体にわたって広くみられる。表面の性質は、直径ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の孔を有する微少孔である。
【0083】
また、ウシインシュリンを加えた粒子も走査型電子顕微鏡(倍率100倍)を使用して解析した。これらの結果を図4Aおよび図4Bに示す。
【0084】
(実施例11)
好ましいコア粒子を得るため、PMMAと3種類の異なる架橋性モノマー(EDGMA、DEGDMAおよびTEGDMA)、異なるラジカル開始剤(ベンゾイルペルオキシド(BPO)およびラウロイルペルオキシド(LPO))、錯化剤であるEDTA、種々の分散剤(Cyanamer 370M、ポリアクリル酸(PAA))および種々のポリビニルアルコールの組み合わせを変えて使用し、いくつかの重合を行った。いくつかの重合においては、リン酸ナトリウムバッファー溶液(Na2HPO4/NaH2PO4)を使用した。選択した分散剤のタイプおよび濃度により、反応手順によっては失敗に終わったものも認められた。当該分散剤の失敗は、発熱反応の早期の発生、水相および有機相の融合、およびガラス相の早すぎる開始の形で示された。実施例は成功したもののみ示す。以下の表2には、成功した実験を、当該試料(1〜6)の成分、濃度および反応条件を含めて示す。
【0085】
【表2】
(実施例12)
本明細書に開示される手順によって形成されたヒドロゲル微小粒子を、塞栓形成用途に使用するため、浮力および懸濁特性について評価した。上記微小粒子には、修飾されていないポリメタクリル酸カリウム塩ヒドロゲル粒子を使用した試料(試料A);トリフルオロエチルエステル化ポリメタクリル酸カリウム塩ヒドロゲルを使用した試料(試料B);および粒子がPTFEPでコーティングされていることを除いて試料Bと同じヒドロゲルを使用した試料(試料C)が含まれた。そして、5個のリン酸バッファー生理食塩錠剤(Fluka(登録商標))をミリQ超純水999.5mlに溶解することによって、0.05容量%のTween(登録商標)20を含むpH 7.4の等張リン酸バッファー生理食塩溶液を調製した。上記溶液にTween(登録商標)20界面活性物質0.5mlが加えられ、続いて評価のため、上記等張バッファー生理食塩水中にImeron300(登録商標)造影剤を20〜50容量%含む溶液を調製した。
【0086】
次に、調製した造影剤溶液を4mLのガラス瓶にそれぞれ2mLずつ入れ、前期ガラス瓶に50〜80mgの水和ヒドロゲル試料A〜Cを加えた。最初に、100mgの乾燥ヒドロゲル微小粒子に900mgの等張リン酸バッファー生理食塩溶液またはD2Oを加えることによって、各試料を水和し、膨脹した1mLのヒドロゲルを得た。そして直後に浮力特性を測定した後、浮力平衡が達成されるおよび/または超えるまで10分毎に測定した。
【0087】
全ての粒子は、30〜40%の造影剤を含有する造影剤溶液中で、5分以内に平衡密度に達した。D2Oにより膨脹させた粒子は、最初の10分以内は重量があるものの、浸漬から15〜20分後には時間と共に粒子からD2Oが拡散した。D2Oに代わる追加の水を加えないと、D2Oで水和させた微小粒子は、適切な浮力によって達成可能な造影剤の割合を最大5%増加させることが可能となった。40〜50%の割合で造影剤を加えると、粒子は時間と共に浮遊し始めた。
【0088】
試料Cについては、溶液中31±1容量%の造影剤において、平衡浮力(整合した密度)が達成された。試料Aおよび試料Bについては、一般的に膨脹パターンおよびそれに続く密度が、架橋剤含量、pH、イオン強度および使用される陽イオンの原子価によって左右される。しかし、本明細書においては、ポリメタクリル酸ヒドロゲル材料が持つスポンジ様特性によって、膨脹が浮力に影響を与えないとみなされた。試料Cのように当該材料をPTFEPでコーティングすると、膨脹の遅れが観察され、浮力平衡が達成されるのがより遅くなった。
【0089】
(実施例13)
続いて、かかる時間の遅れを考慮に入れ、さらに好ましい密度を達成し、上記粒子の蛍光透視可視性を向上させるため、実施例12の試料Bおよび試料Cで使用されたタイプの微小粒子についてセシウム処理を作用させた。
【0090】
試料Bおよび試料Cは、100mgを30重量%の塩化ナトリウム溶液中で、それぞれ10分間水和させた。平衡に達したら上清の液体を静かに捨て、脱イオン水で微小粒子を洗浄した。続いて、上記微小粒子をさらに10分間平衡化され、上清の液体を静かに捨て、界面活性物質を含まないpH 7.4の等張リン酸バッファー溶液3mLに懸濁した。次に、Imeron(登録商標)300を20〜50容量%の間で変化させた造影剤溶液を使用して、浮力に対する効果を評価した。本実施例においては、試料Bおよび試料Cの微小粒子0.1gが使用され、4.0mLの等張リン酸バッファー/Tween(登録商標)20溶液を含む初期バッファー溶液に3.5mLのImeon300造影剤が加えられた。
【0091】
塩化セシウムを使用した平衡手順により、密度が増加した粒子が得られた。いずれの微小粒子試料も、Tween(登録商標)20界面活性物質の有無に関係なく、造影剤濃度45〜50%のImeron(登録商標)300造影剤溶液中で最終的な浮力を示した。飽和の条件は、粒子の初期pH、手順で使用されたpHおよび粒子中のメタクリル酸基に応じた飽和状態により異なると考えられる。3.6未満のpHでは、水素イオンと陽イオンの間の一定した交換が認められた。その結果、セシウムの量を加減した約3.6以上および6.6未満のpHで有利な結果が得られた。上記の好ましい範囲内では、浮力が変化し得る。7.4のpHの試験を基づいた合理的な中性のレベルでは、上記微小粒子を造影剤バッファー溶液中で一晩保存した後でも、浮力は失われなかった。
【0092】
(実施例14)
さらなる圧縮率および機械特性の試験を、実施例12の試料Bおよび/または試料Cの微粒子で実施した。さらなる評価に使用された圧力試験台を図8に示す。0〜250mm/時の可変送り速度を提供するモーター4、およびギヤボックス6を有する自動化シリンジプランジャー2には、さらに0〜500Nの力を測定することができるLorenz社の圧力変換器が装備されていた。上記シリンジプランジャー2は、図示の通りシリンジ本体10と結合していた。変換器のデジタル出力は、パーソナルコンピュータを使用して記録された。上記シリンジ本体10には、造影剤濃度約30〜32容量%の等張リン酸バッファー/界面活性物質(Tween(登録商標)20)溶液5mLが充填されていた。微小粒子を56mgの乾燥質量でシリンジに入れた後、上記シリンジ内容物を、シリンジの遠心端14に取り付けられたマイクロカテーテル12に注入した。上記マイクロカテーテルは、管腔直径が533μmであった。そして、上記カテーテルからシャーレ16(微小粒子溶液を入れるために表示)に微小粒子を押し出す際に必要な力を、圧力として測定し、記録した。
【0093】
特定の計算を行うに当たっては、以下の情報が、塞栓形成における微粒子の一般的な使用をベースとして適用された。一般的には、塞栓形成に使用するガラス瓶が9.8mlの注射液中に0.2gの塞栓形成粒子を含むように(上清液8mLにて水和微小粒子2mL)、当該標準微粒子に約90%の水分が含有される。標準的な調製手順には、単一のガラス瓶の内容物に8mLのImeron(登録商標)300を加えることが含まれる。これにより、注射溶液中に8ml/(9.8mL+8mL)=44.9容量%の造影剤を含む平衡濃度がもたらされる。上記溶液は、通常の場合、最終送達のために1mLシリンジに調製される。従って、注射密度は以下の通りとなる:
ρ=VEmb/VTot=2mL/18mL=0.111塞栓形成剤/容量画分。
【0094】
試料Cの微粒子は、通常の塞栓形成粒子とほぼ同じ平衡含水率を示した。通常の外科手術手順に望まれるのと同じ注射密度を達成するため、前述の通り、等張リン酸バッファーおよび界面活性物質中に31容量%の造影剤を含む溶液5mlに、56mgの試料Cの微粒子を加えた。
【0095】
試料Bおよび試料Cの微粒子を、7.4のpHにて、管腔直径が同じ別のマイクロカテーテルで評価した。水平および垂直の両方向における注射は、異なる浮力レベルの下で、および異なる膨脹レベルにて行われた(pH 7.4ではなくpH 6.0をベースとした)。評価の結果、微粒子の直径がマイクロカテーテルの内径以下にある限り、微粒子は基準溶液と同じ様に追加の摩擦力なくカテーテルを通過したことが実証された。微粒子の直径が管腔直径と同じに達すると、約1.0〜1.4kg重量までの増加が測定された。およそ20%の圧縮では、カテーテル内で摩擦力を上回るために約1.5〜2.3kgの力が必要であった。中から高程度の注入圧の目安としては、5kg以上の力がかけられた。また、粒子が注射媒体よりも重い時には、垂直位に注射すると目詰まりが観察され、水平位に微小粒子を注射すると、重大な目詰まりは軽減され、時間と共により大量の微小粒子を注射することが可能となった。
【0096】
さらに、当該注射圧が注射媒体自体と同じになるように、水平方向の注射とより低いpH(膨脹の減少)を組み合わせて使用すると、注射圧が最小限に低減された。また、試料Cの微小粒子の注射は、生理的pHにて良好な注射圧パターンを示した。カテーテルの入口は目詰まりせず、カーブにおける各ピークは、カテーテルを通過する単一または複数の微小粒子のいずれかと一致した。
【0097】
種々のカテーテルシミュレーション試験の結果、本発明が、塞栓形成用の注射媒体の密度と殆ど一致する密度を有する注射用微小粒子を形成するために使用できることが示されている。さらに、粒子の圧縮率は、シリンジプランジャーに対する約5kg以上の力なしで注射できる程度が可能となっている。そして、注射媒体のpHは約6まで下げることができ、または試料Bおよび試料Cの微小粒子がカテーテルを通過しやすくするため、水平に注射することができる。血流に入ると、粒子はpH 7.4の環境にて本来のサイズに膨張することができる。
【0098】
試料Cの微小粒子では、追加の膨張試験を行い、イオン濃度が低い時に膨張が増大することが観察された。そして、溶液の濃度が高くなるにつれて、膨張は減少した。試料Cの微小粒子をバッファー溶液にて連続して希釈すると、微小粒子のサイズが17%〜20%上昇した。また、等張リン酸バッファー溶液中に混合すると、微小粒子は最初にサイズが83.8〜97%増大する。それに対し、脱イオン水に混合すると、サイズは約116.2〜約136.6%増大し、これは微小粒子が乾燥粒子であることを意味する。
【0099】
試料Cの微小粒子の圧縮率を評価するさらなる試験では、図8のシリンジ圧力試験台が使用されたが、試料Cの微小粒子のリン酸バッファー溶液懸濁液を含むシリンジに連結されたポリエチレンチューブに付属の先細りのピペットを通過する微小粒子を評価するに当たって、光学顕微鏡が使用された。内径490μmまで狭くなるピペットは、測定時に光のひずみを回避し、ピペットから排出された液体を回収するため、最も狭い部分がリン酸バッファー溶液に浸るように、シャーレに取り付けられた。そして、圧縮前および圧縮時に、ピペットを通過する微小粒子の光学顕微鏡写真を撮影した。微小粒子を観察するに当たっては、いずれの微小粒子も破砕されず、狭い部位を通過した後にも破片または層剥離が形成されなかった。狭い部位には意図的に大きすぎるものが選択された微粒子(圧縮率約40%)は破損または破裂しなかったものの、上記の狭い部位で目詰まりした。微小粒子がカテーテルを通過できる間の微小粒子に対する合理的な力の量に基づく最大圧縮率は約38.7%であった。これらの評価に基づき、試料Cの微小粒子は、分解して患者に損傷の危険性をもたらすよりも、カテーテルを目詰まりさせるほどに大きな粒子をもたらす特性を示している。以下の表3に示す通り、試験の結果からは、塞栓形成用途に使用する試料Cの微小粒子において、提示される好ましい使用パラメータが得られた。
【0100】
【表3】
さらに、試料Cの微粒子を機械および熱応力安定性試験にかけた。Terumo Progreat Trackerカテーテルを通過した微小粒子は、脱イオン水で洗浄し、残留するバッファー溶液および造影剤を除去した。上記微小粒子を60℃で12時間脱水し、表面解析のためにSEMに移した。そして、ミリQ超純水中で同様の水和/脱水を行い、但しカテーテルを通過していない元のロットの微小粒子から採取した粒子と上記微小粒子を比較した。図9Aおよび9Bには、水和/脱水サイクル直後の試料Cの表面、および模範的な試料Cの微小粒子のフィルム厚をそれぞれ示す。カテーテルを通過した後の各種倍率(図10A、図10B、図10Cおよび図10D)によるSEMでは、コーティングが層間剥離していないことが示されている(図10A)。微小粒子の中には、コーティングフィルムにいくらかの広がりが見られるものもあった(図10Bおよび図10C)。一方、図10Dに示すようなより近い倍率では、コーティング層の形状が依然として無傷であることが示されている。
【0101】
殺菌装置は、2Lの脱イオン水と、等張リン酸バッファー/界面活性物質(Tween(登録商標)20)溶液3.3mg中に試料Cの微小粒子56mgをそれぞれ含む10個のガラス瓶で満たし、電源を投入した。上記滅菌装置の起動後、約15分で水の沸点に達し、水蒸気によって空気を除去するため、上記温度を3分間維持した。続いて、上記容器を密閉し、圧力および温度をそれぞれ125℃および1.2バールに上昇させた。これには約10分を要した。次に、上記温度を15時間維持した後、冷却のために上記容器の電源を切断した。容器の排出を行ってから約30分で温度が60℃に達し、試料を回収し、容器をしっかりと閉じた。次に、試料ガラス瓶を開け、上清液体を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄した。脱水が終了したら、上記微小粒子をSEMによる測定にかけた。測定の結果、当該熱応力下では、微小粒子のコーティングにわずかな層間剥離しか見られないことが示された(図11Aにおける強調された白色の対比部分を参照)。当該微粒子の全体における割合は、わずかに約5〜10%であった。これを詳しく観察すると、発生した層間剥離は、PTFEPコーティングにおける結晶−非晶質ドメインの境界に沿って発生しているように思われた(図11Bを参照)。殆どの微粒子は微細な欠陥(わずかな円形パッチの欠損等)を示した程度であったが、微小粒子の外部コーティングが損傷することはなかった(図11Cおよび11Dを参照)。
【0102】
(実施例15)
微小粒子は本明細書の好ましい実施態様に従って形成され、重量平均分子量が約85,000〜124,000であり、約87〜89%で加水分解されているPVA約23g、並びに水1000gを使用して、ポリビニルアルコール(PVA)の脱イオン水溶液を調製した。そして、脱イオン水900g、リン酸水素二ナトリウム4.53g、リン酸二水素ナトリウム0.26g、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.056gを使用して、リン酸バッファー溶液を調製した。メタクリル酸メチル(MMA)モノマーは、使用前に減圧蒸留した。
【0103】
重合は、KPG社の機械撹拌装置を備えた、2,000mLの三ツ口の丸底フラスコを使用して行った。上記フラスコはまた、温度計、還流凝縮器および排気弁と共に窒素入口も備えていた。重合工程ではさらに、上記で調製したPVA溶液100mL、リン酸バッファー溶液900mL、ジラウロイルペルオキシド0.65g、メタクリル酸メチルエステル200.2gおよびトリエチレングリコールジメタクリレート2.86gを使用した。
【0104】
最初に、PVA溶液およびバッファー溶液を反応フラスコに入れ、蒸留したMMAおよびトリエチレングリコールジメタクリレートを導入し、続いてジラウロイルペルオキシドを同じフラスコに加え、固体が完全に溶解するまで上記成分を撹拌した。そして、上記反応フラスコにアルゴンガスを充填し、撹拌速度を150rpmに設定して、大部分の粒子サイズが300〜355μmの範囲内にある粒子を生成した。撹拌は約5分間続けた。次に、攪拌機を100rpmに設定し、アルゴンの流れを中断した。さらに、上記反応フラスコを70℃に加熱した水浴に入れ、ほぼこの温度に約2時間維持した。その後、水浴の温度を73℃に上げて、1時間維持した後、水浴の温度をさらに85℃まで上昇させ、さらに1時間維持した。撹拌および加熱を中断したら、溶液をろ過し、得られたポリメチルアクリル酸の微小粒子を70℃のオーブンで約12時間乾燥させた。続いて、上記微小粒子をふるいにかけ、100〜150μm、150〜200μm、200〜250μm、250〜300μm、300〜355μm、355〜400μm、および400〜450μmのサイズ分画で回収したところ、最大の収量は300〜355μmであった。
【0105】
このようにして形成されたPMMA微小粒子を加水分解した。250〜300μmの微小粒子100g分、水酸化カリウム150gおよびエチレングリコール1400gを、還流凝縮器と共に乾燥管が接続された200mLのフラスコに加え、上記混合物を165℃にて8時間加熱し、完全に加水分解を行った。その後、上記混合物を室温に冷却し、溶液を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄した。その他の校正したサイズの微小粒子についても、この手順を繰り返した(以下の反応時間を適用した;300〜355μm粒子:10時間;355〜400μm粒子:12時間;および400〜455μm粒子:1時間)。
【0106】
最後に上記微小粒子を塩酸でpH 7.4に酸性化し、約70℃のオーブンで乾燥させた。
【0107】
(実施例16)
本実施例では、実施例15に従って形成された微小粒子をエステル化した。まず、エステル化表面処理を行うため、実施例15の乾燥微小粒子800gを、還流凝縮器を備えた2Lの反応容器に秤量した。そして、ジエチルエーテル1.5L中に250gの塩化チオニルを含む溶液を撹拌しながら加えた。撹拌は室温で20時間続けた。その後、溶媒および揮発性の反応物を、ろ過とそれに続く減圧乾燥によって除去した。次に、エーテル1.5mL中に500gのトリフルオロエタノールを含む溶液を導入し、懸濁液を室温でさらに20時間撹拌した。最後に、上記粒子を減圧下で乾燥させた。
【0108】
(実施例17)
本実施例では、実施例16とは別の表面処理において、実施例15の乾燥微粒子800gを1140gのトリフルオロエタノールと反応させ、44gの硫酸を触媒として加えた。上記混合物を室温で20時間撹拌して、ろ過した後、減圧下で乾燥させた。
【0109】
(実施例18)
上述の実施例15および実施例16で開示したように、トリフルオロエタノールで部分的にエステル化された乾燥PMMAカリウム塩微小粒子800gを、MP−1 Precision Coater(登録商標)流動層コーティング装置(Aeromatic−Fidler AG[スイス ブーベンドルフ]製)にて、PTFEPによりスプレーコーティングした。上記粒子を気流(40〜60m3/時、入力温度55℃)によって捕らえ、空気−流体同軸ノズルからのPTFEP溶液の微小液滴を使用してスプレーコーティングした。上記溶液の組成物は、PTFEP0.835g、酢酸エチル550gおよび酢酸イソペンチル450gであり、これを10〜30g/分の速度で1.3mm幅の内側の孔を通って提供した。ノズルヘッドでは、加圧空気(2.5バール)によって微粒化された。噴霧溶液の全量(3kg)は、厚さ150nmのPTFEPフィルムにて粒子をコーティングするために算出された。
【0110】
(実施例19)
前述の通りトリフルオロエタノールで部分的にエステル化された、実施例15および実施例16の乾燥カリウム塩微小粒子を、市販される流動層コーティング装置(実施例16を参照)にて、酢酸エチル中で希釈したPTFEP溶液によりスプレーコーティングした。このようにコーティングした100mgの乾燥微小粒子を、トリフルオロエタノールで部分的にエステル化された、コーティングされていない乾燥PMAカリウム塩微小粒子と共に、脱イオン水100mLに塩化セシウム30.0gを溶解することによって調製した、約30%の塩化セシウム水溶液中に浸漬した。10分間の平衡時間の後、上清液体を捨て、微小粒子を脱イオン水で洗浄し、さらに10分間平衡化させて、上清を捨て、界面活性物質を含まないpH 7.4のリン酸バッファー溶液3mLに懸濁した。次に、溶液中の造影剤の密度を整合させるため、溶液中の粒子の密度を測定した。各タイプの微小粒子には、Imeron(登録商標)300造影剤(密度1.335g/mL)3.5mLとリン酸バッファー生理食塩水(密度1.009g/mL)4mLの比率で含有される造影剤溶液を加えた。いずれのヒドロゲルも、溶液中における45〜50%の造影剤濃度で浮力に達した。これは、1.16g/mLという増加した微小粒子の密度に相当する。
【0111】
(実施例20)
本実施例では、実施例15の方法に従って微小粒子が形成されたが、但し、粒子の中和後に外側の硫酸バリウムコーティングを微小粒子上に調製し、硫酸バリウムコーティング手順の前の中和後に粒子を乾燥させなかった。硫酸バリウムコーティングを調製するため、0.5M硫酸ナトリウム(Na2SO4)溶液2000mLに水和粒子2500mLを入れ、4〜12時間の間飽和させた。続いて、上記粒子懸濁液に0.5M塩化バリウム(BaCl2)溶液1950mLを、室温で撹拌しながらゆっくりと加えた。過剰な脱イオン水で洗浄した後に得られる、膨張した状態にある粒子には、硫酸バリウム粉末でコーティングされた表面を含んでいた。続いて、実施例16に記載した方法で粒子を乾燥させ、エステル化した。続いて、以下の実施例21の流動層法を使用して粒子をコーティングした。得られた微小粒子は、非付着性硫酸バリウム粉末により外側がコーティングされていた。本発明および手順に従って調製された硫酸バリウムコーティングは、乾燥時の粒子の凝塊形成が防止され、密度が増加する。硫酸バリウムの濃度および比率は異なる結果を得るために変更させることができ、過剰な硫酸バリウムを使用することで、残る塩化バリウムを最小限にすることができる。ガラス瓶を汚染している過剰な硫酸バリウム粉末を最小限にするため、本実施例に従って形成された粒子は熱水で効果的に洗浄した。硫酸バリウムは、水和された微小粒子の流動化の補助として乾燥させる前に、粒子の付着を防止する作用が効果的に働く。
【0112】
(実施例21)
硫酸バリウム粉末ビーズの流動層コーティングは、実施例20に従って形成された硫酸バリウムの表面層を有するポリメタクリレートビーズを使用して行ったが、バリウムイオンがコア中に拡散し、ヒドロゲルコア内で沈殿が形成されるように、過剰な塩化バリウムが使用された。
【0113】
粒子を調製するに当たっては、添加順序を逆にすることを除いて、実施例20に示すのと同じ硫酸バリウムコーティング手順を繰り返した。このようにして、水和された微小粒子2500mLを脱イオン水2500mLにゆっくりと加え、5モル%(200mL)の0.5M(BaCl2)を撹拌しながらゆっくりと加えた。不可逆的なアクリル酸バリウムの形成を防止するため、添加は3分以内に行った。続いて、室温で撹拌しながら、2倍の量(400mL)の0.5M硫酸ナトリウム(Na2SO4)によって、すぐに反応を停止させた。その後、上記粒子を2Lの脱イオン水で3回洗浄した。この操作により、粒子中に硫酸バリウムが沈殿した。
【0114】
得られた沈殿は、ヒドロゲルコアの孔の中に沈殿しており、水によって複数回洗浄しても除去することができなかった。このようにして形成された粒子は、修飾していない粒子に比べて恒久的に密度が増加していることが認められた。密度の増加は、使用する塩化バリウムのモル量によって調整することができた。この手順により、0〜15モル%の範囲の塩化バリウムが再現的に使用された。本手順の評価では、粒子内への塩化バリウムの拡散に基づき、添加の時間が5分を超えると、ヒドロゲルコアの外側の孔が不可逆的に架橋し、これによって内側の硫酸バリウムの沈殿浸出が防止されることが分かった。この効果は、表面は透明のまま、硫酸バリウムの「拡散前面」が粒子内の白色の帯としてはっきりと確認できる形で、光学顕微鏡により確認できた。
【0115】
実施例20および実施例21のいずれにおいても、乾燥工程時に凝塊形成せず、そのため表面の損傷が防止される、抗付着特性を持った粒子がもたらされる。一般的には、粒子を完全に乾燥させることなく流動化させることができることから、当該利点によって、流動層手順に必要となる粒子の量を最小限にすることができる。残りの含水率は、凝塊形成のない乾燥重量をベースに、最高1:1の比率まで増やすことも可能である。また、前期実施例では、密度特性が向上し、その密度変化が恒久的であるように思われる粒子も生成される。
【0116】
一般的には、本明細書に記載の手順を適用すると、本発明に従って0モル%〜約100モル%の範囲、好ましくは0モル%〜約15モル%の硫酸バリウムを導入して、好ましい弾性、密度および機械安定性を有する粒子を生成することも可能であることが、本開示に基づき理解されるはずである。
【0117】
続いて、本実施例で形成された、コア内に硫酸バリウムを加えた粒子を、実施例16に従ってエステル化させ、減圧乾燥させた。乾燥ビーズ300gを水300gに懸濁すると、1分以内にポリメタクリレートのコアによって完全に吸収されるが、硫酸バリウム粉末粒子の表面は乾燥しているように見え、凝塊形成する傾向は見られなかった。
【0118】
内部に50重量%(wt%)の水を有する粒子(この時点で600g)を、実施例18に従ってMP−1 Precision Coater(登録商標)流動層コーティング装置にて、APTMS/PTFEPによりスプレーコーティングしたが、但し、追加のアミノシラン定着剤を使用した。使用した処理機器は実施例18のものと同じであるが、得られたコーティングには3つの異なる層が含まれていた。即ち、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)定着剤の底面コーティングの上に、APTMSおよびPTFEPの混合物の第二コーティング層、およびPTFEPの第三の表面層が形成された。3種類全てのスプレー溶液は、重量%比が1:1の酢酸イソペンチルおよび酢酸エチルの混合物にコーティング材料を溶解することによって調製した。第1の溶液には、酢酸塩混合物200gに溶解された35μLのAPTMSが含まれ、第2の溶液には、酢酸塩混合物150mg中に25μLのAPTMSおよび125mgのPTFEPが含まれており、第3の溶液には、酢酸塩混合物60g中に50mgのPTFEPが含まれていた。スプレー溶液の量および濃度は、350μmの粒子を有する300gバッチのコーティングを基準にしている。吸収された水は、5〜10g/分の速度で蒸発させた。30分後に工程を停止した時には、コーティングの厚さが100nmに達し、残りの含水率は18.4重量%であった。
【0119】
(実施例22)
本実施例では、実施例15に従って形成された微小粒子にて、有機染料の吸収を試験した。まず、1mLの水和ビーズを含むリン酸バッファー生理食塩水2mLに、5〜10μLのそれぞれの色素を、10ミリモルのエタノール溶液として加えた。そして、ガラス瓶を穏やかに振盪しながら、上記試料を室温で30〜60分間インキュベーションした後、上清液体を捨て、粒子を2mLの脱イオン水、生理食塩水またはPBSバッファー溶液のいずれかで2回洗浄し、光学および蛍光顕微鏡で可視化した。試験した色素には、DiI等のカルボシアニンをベースした色素と共に評価される、フルオレセイン二酢酸およびローダミン6G等のトリフェニルメタン誘導体が含まれた。また、トリフェニルメタンをベースしたフルオレセインおよびローダミン色素は、イオン相互作用を通じて、親水性PMMAヒドロゲルコアに対する特異的な親和性を呈し、当該色素は、実質的な浸出なく洗浄と蒸気滅菌を繰り返す厳しい条件に容易に耐えることができた。
【0120】
一方、カルボシアニン色素DiIは、親水性PMAAコア材料に浸透することなく、疎水性PTFEPシェルに対する高い選択性を呈した。そのため、DiIとフルオレセイン二酢酸を組み合わせてその後染色を行ったところ、コアおよびシェルの両方を、蛍光光学顕微鏡を使用して同時に可視化することができた。従って、この手順では、実際の用途で遭遇する条件下でコアおよびシェルを同時に可視化するPMAA粒子の高速且つ高感度の蛍光染色検定が可能となる。さらに、PTFEPシェルに対する機械弾性応力または損傷の評価も可能となり、粒子の各種成分に対する特定クラスの色素の親和性を示すことができる。
【0121】
前述の実施態様には、本発明の広義の概念から逸脱しない範囲で変更を加えることができることは、当業者によって理解されるはずである。従って、開示された特定の実施態様に本発明が限定されることはなく、添付の請求範囲により定義される本発明の精神および範囲内の変更を本発明が包含することが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
以下の概要並びに本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとより良く理解できるはずである。本発明を説明する目的から、現在好ましいとされる実施態様の図面を示す。但し、示された正確な装置および手段に本発明が限定されないことは理解されるはずである。
【図1】本発明の一実施態様に基づく粒子を調製するために使用される、一般的な凍結濃縮法の概略的な説明である。
【図2】本明細書の実施例1の微粒子を調製するに当たって液体窒素にポリマー溶液を提供する手動の滴下技術を示す。
【図3】本明細書に開示される凍結濃縮法の一実施態様によって調製される、未添加のポリホスファゼン粒子(微粒子)である。図3Aは倍率4倍の光学顕微鏡写真を示し、図3Bは、倍率100倍の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図4】本発明の一実施態様に従って形成された、ウシインシュリン(20重量%)を加えた粒子(微粒子)の倍率100倍のSEM像である。
【図5】未添加のポリホスファゼン微粒子の表面形状である。図5Aは原子力間顕微鏡を使用して得られた画像であり、図5Bは、未添加のポリホスファゼン微粒子表面を示す倍率5000倍の走査型電子顕微鏡画像である。
【図6】本発明の一実施態様で使用される凍結濃縮の構成を示し、凍結容器である。
【図7】本発明の一実施態様で使用される凍結濃縮の構成を示し、シリンジポンプである。
【図8】本明細書の実施例14において微小粒子のマイクロカテーテル試験に使用される装置の断面図である。
【図9】水和/脱水サイクル直後の試料Cの微小粒子の表面の倍率1000倍のSEM像、および実施例14の評価で使用された実施例12の試料Cに従って形成された微小粒子のフィルム厚を示す倍率50,000倍のSEM像である。
【図10】実施例14の評価で使用された実施例12の試料Cに従って形成された微小粒子の、カテーテル通過後の表面特徴を示す、倍率1000倍(図10A、図10Bおよび図10C)および倍率5000倍(図10D)のSEM像である。
【図11】実施例14の熱応力試験後に実施例12の試料Cによって形成された微小粒子のSEM像である。図11Aは、強調された白色の対比部分において少量の層間剥離を示す倍率50倍のSEM像である。図11Bは、図11Aの微粒子の倍率200倍のSEM像である。図11Cおよび図11Dはそれぞれ、微細な欠点のみを示す、他の試料Cの微小粒子の倍率200倍および1000倍のSEM像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療手順および/または診断手順において使用するための粒子であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、粒子。
【請求項2】
前記粒子が多孔性粒子である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、該コアは、アクリルベースのポリマーから形成されるヒドロゲルを含み、該外部コーティングはポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記コアがさらに硫酸バリウムを含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
前記コアが硫酸バリウムの内部コーティングに囲まれており、前記外部コーティングが該硫酸バリウムの内部コーティングを包囲する、請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記硫酸バリウムが前記コアに吸収されている、請求項4に記載の粒子。
【請求項7】
前記粒子がさらに、該粒子の密度を増加させる物質を含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項8】
前記物質が、酸化ジューテリウム、セシウム、少なくとも1種類の有機染料、硫酸バリウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
哺乳動物中の組織への血流を最小限にする方法であって、
少なくとも1種類の粒子を用いて該哺乳動物中の血管の少なくとも一部を閉塞する工程;
を包含し、該粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、方法。
【請求項10】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、該コアは、アクリルベースのポリマーから形成されるヒドロゲルを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、活性物質とを含む少なくとも1種類の粒子を、該局所領域に接触させて、有効量の該活性物質が該局所領域に曝露されるようにする工程;
を包含する、方法。
【請求項13】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、前記活性物質が前記外部コーティングを通って送達され、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が、アクリルベースのポリマーコアから形成されるヒドロゲル、および外部コーティングを含み、前記活性物質が該コア中にある状態で送達されて該外部コーティングを通って拡散し、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
経口投与用の活性物質の徐放処方物であって、該処方物は、ポリマーカプセルおよび活性物質を含み、該ポリマーカプセルは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、処方物。
【請求項17】
前記ポリマーカプセルが、コアと、前記コアを囲む外部コーティングとを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含む、請求項16に記載の徐放処方物。
【請求項18】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物中の血管を通る粒子の通過を追跡する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、造影剤とを含む、少なくとも一種類のトレーサー粒子を哺乳動物の血流に注入する工程;および
該粒子の経路を画像化する工程;
を包含する、方法。
【請求項20】
前記トレーサー粒子が、コアと、該コアを囲む外部コーティングとを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記造影剤が、硫酸バリウム、タンタル化合物、ガドリニウム化合物およびヨウ素含有化合物からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
向上した超音波画像化方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の中空マイクロカプセルを、超音波被験体の領域に投与する工程;および
超音波を使用して該被験体の領域を画像化することを含む、方法。
【請求項24】
哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、活性物質とを含む少なくとも1種類の粒子を、該局所領域に接触させて、有効量の該活性物質が該局所領域に曝露されるようにする工程;
を包含し、該粒子は、密度を増加させる物質を含む、方法。
【請求項25】
前記密度を増加させる物質が、酸化ジューテリウム、セシウム、少なくとも1種類の有機染料、硫酸バリウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子が外部コーティングおよびコアを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含み、該粒子は、該粒子にセシウムを提供するために塩化セシウムで前処理されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が外部コーティングおよびコアを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲル、および硫酸バリウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記硫酸バリウムが、前記コアのコーティングとして存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記硫酸バリウムが、前記コア内で拡散される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
アクリルベースのポリマーから形成された粒子の凝塊形成および/または凝集を最小限にする方法であって、
該粒子のコアおよび/または表面に硫酸バリウムを提供する工程;
を包含する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体の外部コーティングを含み、
該方法は、
該外部コーティングに対する損傷を最小限にする工程;
をさらに包含する、方法。
【請求項1】
治療手順および/または診断手順において使用するための粒子であって、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、粒子。
【請求項2】
前記粒子が多孔性粒子である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、該コアは、アクリルベースのポリマーから形成されるヒドロゲルを含み、該外部コーティングはポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記コアがさらに硫酸バリウムを含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
前記コアが硫酸バリウムの内部コーティングに囲まれており、前記外部コーティングが該硫酸バリウムの内部コーティングを包囲する、請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記硫酸バリウムが前記コアに吸収されている、請求項4に記載の粒子。
【請求項7】
前記粒子がさらに、該粒子の密度を増加させる物質を含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項8】
前記物質が、酸化ジューテリウム、セシウム、少なくとも1種類の有機染料、硫酸バリウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
哺乳動物中の組織への血流を最小限にする方法であって、
少なくとも1種類の粒子を用いて該哺乳動物中の血管の少なくとも一部を閉塞する工程;
を包含し、該粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、方法。
【請求項10】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、該コアは、アクリルベースのポリマーから形成されるヒドロゲルを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、活性物質とを含む少なくとも1種類の粒子を、該局所領域に接触させて、有効量の該活性物質が該局所領域に曝露されるようにする工程;
を包含する、方法。
【請求項13】
前記粒子がコアおよび外部コーティングを含み、前記活性物質が前記外部コーティングを通って送達され、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が、アクリルベースのポリマーコアから形成されるヒドロゲル、および外部コーティングを含み、前記活性物質が該コア中にある状態で送達されて該外部コーティングを通って拡散し、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
経口投与用の活性物質の徐放処方物であって、該処方物は、ポリマーカプセルおよび活性物質を含み、該ポリマーカプセルは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む、処方物。
【請求項17】
前記ポリマーカプセルが、コアと、前記コアを囲む外部コーティングとを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含む、請求項16に記載の徐放処方物。
【請求項18】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物中の血管を通る粒子の通過を追跡する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、造影剤とを含む、少なくとも一種類のトレーサー粒子を哺乳動物の血流に注入する工程;および
該粒子の経路を画像化する工程;
を包含する、方法。
【請求項20】
前記トレーサー粒子が、コアと、該コアを囲む外部コーティングとを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子コアがさらに、コーティングとして、かつ/または該コア内に吸収された、硫酸バリウムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記造影剤が、硫酸バリウム、タンタル化合物、ガドリニウム化合物およびヨウ素含有化合物からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
向上した超音波画像化方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含む少なくとも1種類の中空マイクロカプセルを、超音波被験体の領域に投与する工程;および
超音波を使用して該被験体の領域を画像化することを含む、方法。
【請求項24】
哺乳動物の体内の局所領域に活性物質を送達する方法であって、
ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体と、活性物質とを含む少なくとも1種類の粒子を、該局所領域に接触させて、有効量の該活性物質が該局所領域に曝露されるようにする工程;
を包含し、該粒子は、密度を増加させる物質を含む、方法。
【請求項25】
前記密度を増加させる物質が、酸化ジューテリウム、セシウム、少なくとも1種類の有機染料、硫酸バリウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子が外部コーティングおよびコアを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲルを含み、該粒子は、該粒子にセシウムを提供するために塩化セシウムで前処理されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が外部コーティングおよびコアを含み、該外部コーティングは、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン〕および/またはその誘導体を含み、該コアは、アクリルベースのポリマーのヒドロゲル、および硫酸バリウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記硫酸バリウムが、前記コアのコーティングとして存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記硫酸バリウムが、前記コア内で拡散される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
アクリルベースのポリマーから形成された粒子の凝塊形成および/または凝集を最小限にする方法であって、
該粒子のコアおよび/または表面に硫酸バリウムを提供する工程;
を包含する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記粒子は、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]および/またはその誘導体の外部コーティングを含み、
該方法は、
該外部コーティングに対する損傷を最小限にする工程;
をさらに包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【公表番号】特表2008−517899(P2008−517899A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537420(P2007−537420)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004007
【国際公開番号】WO2006/046155
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(502368901)セロノヴァ バイオサイエンスィズ ジャーマニー ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004007
【国際公開番号】WO2006/046155
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(502368901)セロノヴァ バイオサイエンスィズ ジャーマニー ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]