説明

法枠用網状側枠、法枠用金網型枠、法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法

【課題】法枠構造物の縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を抑制することができる、法枠用網状側枠、法枠用金網型枠、法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法を提供すること。
【解決手段】複数の縦線3と、その縦線3より長い複数の横線4とを交互に編み込んだ長尺状の金網の各横線4の両端それぞれに最外部に位置する縦線3Lよりも突出して折り曲げられる突出折曲げ部41を設けた法枠用網状側枠2を一対使用した法枠用金網型枠1を法面の縦方向に配置して縦枠用金網型枠1Aとし、横方向に配置して横枠用金網型枠1Bとする。そして、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの交点部分では、各横線4両端の突出折曲げ部41により形成される角部同士が重なるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の縦線と複数の横線とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠や、かかる法枠用網状側枠を両側に配した法枠用金網型枠、かかる法枠用金網型枠を法面上に縦方向および横方向に配置して構築した法枠構造物、およびかかる法枠用金網型枠の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、切土斜面を安定化させる格子状法枠構造物の内部に埋設される縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠との交点部分では、縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠の横線の端部同士を交差させず、横線同士を単に付き合わせたままで設置したり(例えば、特許文献1参照。)、横線の交点部分をコイル状の巻線により連結して(例えば、特許文献2参照。)、モルタル等のセメント系固化材を吹き付けて法枠を構築する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322238号公報
【特許文献2】実公平6−12045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の背景技術のものでは、縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠との交点部分では、横線端部同士を交差させず、単に付き合せたまま連結したり、あるいは巻き線により連結した後に、モルタル等のセメント系固化材を吹き付けて格子状の法枠を構築していたため、吹き付けたモルタル等のセメント系固化材が乾燥すると、完成した縦枠および横枠自身の重量や土砂崩れ等により、交点部分から縦枠および横枠が離れようとして、縦枠および横枠の交点部分の角部にひび割れが発生する場合がある。
【0005】
特に、法枠構造物を構築する法面等の斜面の傾斜角度が垂直に近い場合や、地盤の弱い斜面では、縦枠および横枠の交点部分にひび割れが発生する確率が高くなり、このひび割れは、当然に法枠構造物の耐久性に悪影響を与える。
【0006】
そこで、本発明は、モルタル等のセメント系固化材を吹き付けて構築した法枠構造物の縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を抑制することができる、法枠用網状側枠、法枠用金網型枠、法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の法枠用網状側枠は、複数の縦線と、その縦線より長い複数の横線とを交互に編み込んだ長尺状の金網からなる法枠用網状側枠であって、前記各横線の両端に、それぞれ、前記複数の縦線のうち当該法枠用網状側枠の長手方向最外部に位置する縦線よりも突出して折り曲げられる一対の突出折曲げ部を設け、その一対の突出折曲げ部は、各横線に対しほぼ直角方向で、かつ、同一方向に折り曲げられている、ことを特徴とする法枠用網状側枠である。
ここで、前記法枠用網状側枠において、前記突出折曲げ部は、前記複数の縦線のうち当該法枠用網状側枠の長手方向最外部に位置する縦線よりも10mm〜50mm突出して折り曲げられている、ようにしても良い。
また、本発明の法枠用金網型枠は、前記法枠用網状側枠を両側に配し、所定間隔を開けて配した複数の連結補助部材を介し連結した、ことを特徴とする法枠用金網型枠である。
また、本発明の法枠構造物は、前記法枠用金網型枠を、法面上に縦方向および横方向に格子状に配置した状態でモルタル等のセメント系固化材を吹付けてなる法枠構造物であって、縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、それぞれの突出折曲げ部により形成される角部同士が重なるように配置した、ことを特徴とする法枠構造物である。
ここで、前記法枠構造物において、縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの横線端部が互いに交差するように配置するようにしても良い。
また、前記法枠構造物において、横方向に配置した前記法枠用金網型枠の下側となる前記法枠用網状側枠の横線両端の突出折曲げ部は、それぞれ、当該法枠用金網型枠の両側で縦方向に配置した前記枠用金網型枠内に位置するように配置する一方、横方向に配置した前記法枠用金網型枠の上側となる前記法枠用網状側枠の横線両端の突出折曲げ部は、それぞれ、当該法枠用金網型枠の両側に縦方向に配置した前記枠用金網型枠外に位置するように配置するようにしても良い。
また、前記法枠構造物において、縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの法枠用金網型枠における最外部の縦線同士が接している、ようにしても良い。
また、前記法枠構造物において、縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの法枠用金網型枠における最外部の縦線同士が接し、かつ、結束線により結束されている、ようにしても良い。
また、本発明の法枠用金網型枠設置方法では、前記法枠用金網型枠を、法面上の縦方向に配置して縦枠用金網型枠を設置する縦枠用金網型枠設置工程と、前記法枠用金網型枠を、法面上の横方向に配置して横枠用金網型枠を設置する横枠用金網型枠設置工程と、を有し、前記縦枠用金網型枠と前記横枠用金網型枠の交点部分では、それぞれの突出折曲げ部により形成される角部同士が重なるように配置した、ことを特徴とする法枠用金網型枠設置方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、法枠用網状側枠の各横線の両端に、それぞれ、複数の縦線のうち当該法枠用網状側枠の長手方向最外部に位置する縦線よりも突出して折り曲げられる一対の突出折曲げ部を設け、その一対の突出折曲げ部は、各横線に対しほぼ直角方向で、かつ、同一方向に折り曲げられているので、縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠の交点部分では、それぞれの突出折曲げ部により形成される角部同士が重なるように配置することにより、モルタル等のセメント系固化材を吹き付けて縦枠と横枠とを構築した後、例えば、その縦枠や横枠がそれら自身の重量や土砂崩れ等により下がる等して、縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠の各横線に交点部分から離れる方向に引張力が働いても、それぞれの横線からほぼ直角に折れ曲がった突出折曲げ部が硬化したセメント系固化材に当り抵抗等となるので、縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の法枠用金網型枠の一例を示す概略全体構成図である。
【図2】実施形態の法枠用金網型枠の正面図である。
【図3】実施形態の法枠用金網型枠の平面図ある。
【図4】実施形態の法枠用金網型枠の側面図である。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態の法枠用金網型枠の全体を示す概略平面図、かかる法枠用金網型枠を複数、法面上に格子状に配置した場合の交点部分の一例および他の例を示す概略全体平面図である。
【図6】(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態の法枠構造物に使用する縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠との交点部分Aを示す概略全体図と、交点部分Aを拡大して示す拡大斜視図、拡大平面図である。
【図7】(a),(b)は、それぞれ、実施形態の法枠構造物に使用する縦枠用金網型枠と横枠用金網型枠とを交点部分Aにて最外部の縦線同士を接触させ結束線により結束した状態を示す拡大斜視図、拡大平面図である。
【図8】(a)〜(c)は、それぞれ、本実施形態の法枠構造物に使用する法枠用金網型枠の他の例を示す概略全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明にかかる法枠用網状側枠、法枠用金網型枠、法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法の実施形態について説明する。
【0011】
≪本実施形態の法枠用網状側枠の構成例の説明≫
図1〜図4は、実施形態の法枠用金網型枠1の一例を示す概略全体構成図、平面図、正面図、側面図である。
【0012】
図1〜図4に示すように、実施形態の法枠用金網型枠1は、少なくとも、左右一対の法枠用網状側枠2と、これらを連結する連結補助部材としてのスペーサー(フープタイあるいはセパレータともいう。)5と、を有して構成される。
【0013】
法枠用網状側枠2は、本実施形態では、予め波状(クリンプ)に加工した縦線3と、複数の横線4とを交互に編み込んだクリンプ金網を使用する。そのため、法枠用網状側枠2の縦線3と横線4の交点部分は、溶接などされてなく、外力を加えれば、多少ずれたり、変形するように構成されている。法枠用網状側枠2をクリンプ金網により構成したのは、自然に形成された斜面や、切土や盛土により人工的に造成された法面等は、凹凸があり、また、その凹凸が不規則なので、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4がそのような凹凸に追従して変形やずれたりする必要があるからである。ただし、法枠用網状側枠2は、クリンプ金網に限らず単に溶接した金網等を用いてもよい。
【0014】
スペーサー5は、上下の横棒6及び左右の縦棒7を井桁状に結合したもので、法枠用網状側枠2の長手方向に沿って、例えば200mm程度の所定間隔ごとに複数個設けられる。なお、図1では、便宜上、1個のみ示しているが、実際には複数設けられている。また、スペーサー5の形状は、縦棒7が2本の井桁形状に限らず、縦棒7が1本でキ字状としてもよい。また、上側の横棒6の中央部を開口させ、その中央部を開口させた左右の横棒6の自由端側を縦棒7に連結したスペーサー5とし、その開口から下側鉄筋(図示せず。)を配設できる法枠用金網型枠1としてもよい。さらに、下側の横棒6の中央部を開口させた法枠用金網型枠1とすることもできる。
【0015】
なお、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4、およびスペーサー5を構成する横棒6及び縦棒7は、亜鉛めっき鉄線等により構成されている。そして、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4の線径は、後述するように、例えば2.15mm、スペーサー5を構成する横棒6及び縦棒7の線径は、例えば3.2mmとしている。
【0016】
そして、本実施形態の法枠用網状側枠2では、各横線4の両端(図1〜図3では、便宜上、一端側しか示していない。)には、複数の縦線3のうち当該法枠用網状側枠2の長手方向最外部に位置する縦線3Lよりも、10mm〜50mm、好ましくは15mm〜30mm突出させ、さらに横線4に対しほぼ直角方向で、かつ、同一方向に折り曲げて、一対の突出折曲げ部41,41を形成している。
【0017】
突出折曲げ部41の突出量を、10mm〜50mm、好ましくは15mm〜30mmとする理由は、突出折曲げ部41の突出量は50mmより大きくても良いが、突出折曲げ部41の突出量が50mmより大きいと、横線4の資材が無駄になると共に、運搬や施工の妨げとなる。そのため、横線4の突出折曲げ部41の突出量は、50mm以下、好ましくは、30mm以下としている。
【0018】
その一方、突出折曲げ部41の突出量が10mm未満であると、直角に折り曲げた突出折曲げ部41による抵抗効果、すなわちモルタル等のセメント系固化材を吹き付けて構築した法枠構造物の縦枠と横枠との交点部分において、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bの各横線に交点部分から離れる方向に引張力が働いても、それぞれの横線4からほぼ直角に折れ曲がった突出折曲げ部41が硬化したセメント系固化材に当り、抵抗となる効果を期待できないからである。そのため、突出折曲げ部41の突出量は、10mm以上、さらに安全を見越して、好ましくは15mm以上としている。
【0019】
なお、法枠用網状側枠2の縦線3と横線4とにより形成される格子状の網目については、上下方向の中間部より端部側の網目を大きくしてもよい。これにより、リバウンドロスを少なくして安定したコンクリート強度の法枠が得られる。
【0020】
また、法枠用金網型枠1を折り畳んで運搬するときは、スペーサー5を上限位置に移動させるようにすると良い。この場合、法枠用金網型枠1を上下反転させてスペーサー5を自重で落下させることにより上限位置に移動させることができる。自重では落下しない程度の多少のスライド抵抗を持たせ、手で持上げるようにしてもよい。これにより持ち運びの際に型枠上下への突出折曲げ部分がなくなり取扱い性が向上するとともに梱包が簡素化され、ダンボールなどの梱包材を大幅に削減できる。そして、法枠構造物施工時には、上下を適正に配置して法枠用金網型枠1を開くことにより自重で(または手で)スペーサー5を下限位置に移動させる。これにより、スペーサー5の縦棒7の下端が法枠用網状側枠2の下縁から突出するので、斜面に植生用金網を敷いた場合等に縦棒7がこれらに引っ掛かり、法枠用金網型枠1が滑らず、法枠施工作業を円滑に行うことができる。
【0021】
≪本実施形態の法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法の説明≫
次に、前述した法枠用金網型枠1を使用した実施形態の法枠構造物および法枠用金網型枠設置方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図5(a)〜(c)は、それぞれ、前述した図1〜図4に示す法枠用金網型枠1の全体を示す概略平面図、かかる法枠用金網型枠1を複数、法面上に格子状に配置した場合の交点部分の一例および他の例を示す概略全体平面図である。
【0023】
図5(a)に示すように、本実施形態の法枠用金網型枠1は、各横線4両端の突出折曲げ部41,41が型枠外側を向くように、一対の法枠用網状側枠2,2を配置して、所定間隔を開けて配設した複数のスペーサー5により連結して構成される。
【0024】
そして、かかる本実施形態の法枠用金網型枠1を法面上に格子状に配置すると、例えば、図5(b)に示すような配置となる。つまり、図5(b)に示すように、本実施形態の法枠用金網型枠1を法面上に縦方向に配置することにより、縦枠用金網型枠1Aとする一方、かかる法枠用金網型枠1を法面上に横方向に配置することにより、横枠用金網型枠1Bとする。
【0025】
そして、本実施形態の縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの交点部分では、それぞれの横線4両端の突出折曲げ部41,41により形成される角部同士が重なるように配置する。これにより、この縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとにモルタル等のセメント系固化材を吹き付けて構築した法枠構造物の交点部分において、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bの交点部分から離れる方向に引張力が働いても、それぞれの横線4からほぼ直角に折れ曲がった突出折曲げ部41,41全体が、硬化したセメント系固化材に当って抵抗等となり、縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を抑制することができる。
【0026】
ここで、図5(b)に示す例では、横枠用金網型枠1Bの下側となる法枠用網状側枠2の横線4両端の突出折曲げ部41,41では、それぞれ、当該横枠用金網型枠1Bの両側で縦方向に配置した縦枠用金網型枠1Aの内部に位置するように配置する。その一方、横枠用金網型枠1Bの上側となる法枠用網状側枠2の横線4両端の突出折曲げ部41,41では、それぞれ、当該横枠用金網型枠1Bの両側で縦方向に配置した縦枠用金網型枠1Aの外側に位置するように配置する。これにより、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとにセメント系固化材を吹き付けてそれぞれ縦枠および横枠を構築した法枠構造物の交点部分において、セメント系固化材の吹き付けにより自重が増した横枠用金網型枠1Bが下方に下がろうとしても、当該横枠用金網型枠1Bの下側および上側の法枠用網状側枠2,2では、それぞれ、各横線4の両端が、モルタル等のセメント系固化材を介して両側の縦枠用金網型枠1Aの法枠用網状側枠2,2の上下の突出折曲げ部41,41に当り支持され、横枠の両端がより下がり難くなるので、この点でも、縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を抑制することができる。
【0027】
なお、図5(b)に示すような配置は一例であり、例えば、図5(c)に示すように、横枠用金網型枠1B上下の法枠用網状側枠2,2の各横線4両端の突出折曲げ部41,41を、それぞれ、当該横枠用金網型枠1Bの両側で縦方向に配置した縦枠用金網型枠1A,1A内に位置するように配置するようにしても勿論よい。要は、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの交点部分で、それぞれの横線4両端の突出折曲げ部41,41により形成される角部同士が重なるように配置すれば、突出折曲げ部41,41が縦枠用金網型枠1Aの内側に位置しようと、外側に位置しようとどちらでも良い。
【0028】
図6(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態の法枠用金網型枠1を、法面上に縦方向におよび横方向に格子状に配置した場合の交点部分Aを示す概略全体図、交点部分Aを拡大して示す拡大斜視図、拡大平面図である。
【0029】
図6(a)〜(c)に示す例では、図5(b),(c)に示すように、突出折曲げ部41,41により形成される角部同士が重なるように配置するだけでなく、さらに、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bの交点部分における横線4,4同士を交差させて配置している。これにより、モルタル等のセメント系固化材を吹付けて縦枠および横枠を構築した際、各横線4,4の突出折曲げ部41,41は、連結相手側の縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1B内に進入するので、突出折曲げ部41,41におけるセメント系固化材のかぶり厚さを十分確保することが可能となり、交点部分における強度がより向上して、交点部分におけるひび割れの発生をさらに防止することができる。なお、本発明では、交点部分における横線4,4同士が交差するように配置することは任意である。
【0030】
また、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの交点部分では、図6(b),(c)に示すように、縦枠用金網型枠1Aおよび横枠用金網型枠1Bそれぞれの法枠用金網型枠1における最外部の縦線3L,3L同士が接するように配置しても良い。このようにすると、最外部の縦線3L,3L同士が当たることにより、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとが互いに安定することになり、縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を確実に防止することができる。なお、本発明では、最外部の縦線3L同士が接するように配置することは任意である。
【0031】
また、さらに、図7(a),(b)に示すように、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの交点部分では、縦枠用金網型枠1Aおよび横枠用金網型枠1Bにおける最外部の縦線3L,3L同士を接触させるだけでなく、その最外部の縦線3L,3L同士をワイヤーや針金等の結束線8により結束するようにしても良い。ここで、図7(a)では、最外部の縦線3L,3L同士を2箇所で結束しているが、本発明ではこれに限らず、結束箇所は1箇所だけでも、3箇所以上でも良く、さらには、その結束箇所の位置も、最外部の縦線3L,3Lの上端と下端、さらには中央部でもどこでも良い。このようにすると、縦枠用金網型枠1Aおよび横枠用金網型枠1Bにおける最外部の縦線3L,3L同士が当たり、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとが互いに安定するだけでなく、最外部の縦線3L,3L同士をワイヤーや針金等の結束線8により結束することにより、さらに縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとの連結が強固になるので、縦枠用金網型枠1Aと横枠用金網型枠1Bとを連結した際、縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生をより確実に防止することができる。なお、本発明では、結束線8により結束も、任意である。
【0032】
このように、本実施の形態の法枠用網状側枠2、法枠構造物1および法枠用金網型枠設置方法によれば、従来のものより縦枠と横枠との交点部分におけるひび割れの発生を防止することができるので、従来よりも、法枠用網状側枠2を構成する縦線3や横線4を細線化して、法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1の軽量化が可能となる。そのため、法枠用網状側枠2の運搬性や、現場作業性が向上し、ひいていはCO削減により環境性能を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、法枠用金網型枠1として、図1〜図7に示すように、法枠用金網型枠1を構成する法枠用網状側枠2の各縦線3の長さが最上位および最下位の横線4a,4b間より長く、各縦線3の上端部および下端部がそれぞれ最上位の横線4aまたは最下位の横線4bから突出しているような法枠用網状側枠2により説明したが、本発明では、これに限らず、例えば図8(a)に示すように、各縦線3’の上端部が最上位の横線まで延びている一方(必要あれば各縦線3’の上端部を最上位の横線に固定しても勿論良い。)、各縦線3’の下端部が最下位の横線から突出しているような法枠用網状側枠2’でも、さらには、図8(b)に示すように、最上位の横線と最下位の横線間より短い各縦線3’’の上端部と下端部を交互に折曲げて、最上位の横線と最下位の横線とに交互に巻付けるようにした法枠用網状側枠2’’でも勿論よく、要は、各縦線の長さや、各縦線の上下両端部の処理については特別こだわらないものである。
【符号の説明】
【0034】
1,1’,1” 法枠用金網型枠
1A 縦枠用金網型枠
1B 横枠用金網型枠
2,2’,2” 法枠用網状側枠
3,3’,3” 縦線
3L 最外部の縦線
3a 上端部
3b 下端部
4 横線
4a 最上位の横線
4b 最下位の横線
5 スペーサー(連結補助部材)
6 横棒
7 縦棒
8 結束線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦線と、その縦線より長い複数の横線とを交互に編み込んだ長尺状の金網からなる法枠用網状側枠であって、
前記各横線の両端に、それぞれ、
前記複数の縦線のうち当該法枠用網状側枠の長手方向最外部に位置する縦線よりも突出して折り曲げられる一対の突出折曲げ部を設け、
その一対の突出折曲げ部は、各横線に対しほぼ直角方向で、かつ、同一方向に折り曲げられている、
ことを特徴とする法枠用網状側枠。
【請求項2】
請求項1記載の法枠用網状側枠において、
前記突出折曲げ部は、
前記複数の縦線のうち当該法枠用網状側枠の長手方向最外部に位置する縦線よりも10mm〜50mm突出して折り曲げられている、
ことを特徴とする法枠用網状側枠。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の法枠用網状側枠を両側に配し、所定間隔を開けて配した複数の連結補助部材を介し連結した、
ことを特徴とする法枠用金網型枠。
【請求項4】
請求項3記載の法枠用金網型枠を、法面上に縦方向および横方向に格子状に配置した状態でモルタル等のセメント系固化材を吹付けてなる法枠構造物であって、
縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、それぞれの突出折曲げ部により形成される角部同士が重なるように配置した、
ことを特徴とする法枠構造物。
【請求項5】
請求項4記載の法枠用金網型枠において、
縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの横線端部が互いに交差するように配置した、
ことを特徴とする法枠構造物。
【請求項6】
請求項4記載の法枠構造物であって、
横方向に配置した前記法枠用金網型枠の下側となる前記法枠用網状側枠の横線両端の突出折曲げ部は、それぞれ、当該法枠用金網型枠の両側で縦方向に配置した前記枠用金網型枠内に位置するように配置する一方、
横方向に配置した前記法枠用金網型枠の上側となる前記法枠用網状側枠の横線両端の突出折曲げ部は、それぞれ、当該法枠用金網型枠の両側に縦方向に配置した前記枠用金網型枠外に位置するように配置した、
ことを特徴とする法枠構造物。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか一の請求項に記載の法枠構造物において、
縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの法枠用金網型枠における最外部の縦線同士が接している、
ことを特徴とする法枠構造物。
【請求項8】
請求項4〜請求項6のいずれか一の請求項に記載の法枠構造物において、
縦方向および横方向に配置した前記法枠用金網型枠の交点部分では、さらに、それぞれの法枠用金網型枠における最外部の縦線同士が接し、かつ、結束線により結束されている、
ことを特徴とする法枠構造。
【請求項9】
請求項3記載の法枠用金網型枠を、法面上の縦方向に配置して縦枠用金網型枠を設置する縦枠用金網型枠設置工程と、
前記法枠用金網型枠を、法面上の横方向に配置して横枠用金網型枠を設置する横枠用金網型枠設置工程と、を有し、
前記縦枠用金網型枠と前記横枠用金網型枠の交点部分では、それぞれの突出折曲げ部により形成される角部同士が重なるように配置する、
ことを特徴とする法枠用金網型枠設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112094(P2012−112094A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259113(P2010−259113)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】