説明

泡入浴装置

【課題】据え付け施工時に施工者によって調整及び初期設定された最適な泡質をユーザが誤って低下させることがなく、簡素でコスト低廉な泡入浴装置を提供する。
【解決手段】浴室91に設置された浴槽92に生成した泡を供給する泡生成装置2と、浴室外に電源入り切り手段34を有し複数の制御モードを内部に有して生成する泡質の調整ならびに泡生成動作及び停止を制御する制御装置3と、浴室を利用するユーザが操作する操作スイッチ42、43を有して制御装置3の制御モードを切り替え操作する操作装置(操作部41)と、を備えた泡入浴装置1であって、少なくとも電源入り切り手段34の操作を含む複数の操作を組合せた操作手順により、制御御装置3の制御モードを泡生成装置2の泡質を調整する泡質調整モードに遷移させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡を含んだ温水を浴槽に供給する泡入浴装置に関し、より詳細には、据え付け施工時に泡質を調整する際の泡質調整モードに遷移する操作手順に特徴を有した泡入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の泡入浴装置には、温水に空気を混入させて撹拌することにより泡を生成する泡生成装置と、泡生成装置の泡生成動作及び停止を制御する制御装置と、浴室内に設けられ、入浴中のユーザが泡生成動作及び停止を容易に切り替え操作をおこなう操作装置と、を備えるものがある。この種の泡入浴装置では、設置箇所の環境条件、例えば浴槽の大きさや給湯器の温水吐出圧などに依存して泡質が変化し得る。このため、制御装置に泡質調整モードを持たせ、設置箇所への据え付け施工時に、施工者が泡生成装置の動作条件を調整し、泡質が最適となるようにカスタマイズ(初期設定)することが望ましい。
【0003】
泡生成装置の操作装置に類似した技術として、給湯器用のリモコンが特許文献1及び2に開示されている。特許文献1の給湯器リモコンは、パラメータ変更スイッチ、パラメータ選択スイッチ、モード切替手段などを備え、温水温度の調整だけでなく自動湯張りや浴室暖房まで調整できるようになっている。そして、スイッチ類の操作順序を合理化することで使用者の使い勝手を向上できる、とされている。また、特許文献2の給湯器の遠隔操作リモコンは、モード選択手段、モード表示手段、設定値選択手段などを備え、スイッチ数を増やすことなく新たな機能や設定モードを容易に増やすことが可能になる、とされている。
【0004】
一方、泡生成装置の専用の調整装置に類似した技術として、特許文献3に給湯器の制御基板用データ書込装置が開示されている。このデータ書込装置は、複数個のキーを有する制御端末から成り、給湯器の制御基板に搭載されたマイクロコンピュータにデータを送出してメモリに書き込むようになっている。これにより、給湯器の制御基板を交換したときのデータの読み出しや写し取り等の煩雑な作業が不要になる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−226544号公報
【特許文献2】特開2004−347287号公報
【特許文献3】特開平10−325596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、泡生成装置の泡質の最適化の調整及び初期設定は、据え付け施工時に施工者が一度実施すれば、以降はユーザが繰返して行う必要はない。逆に、いつでも誰でも調整できるようになっていると、ユーザの不用意な誤操作により泡生成装置の動作条件が変更され、泡質の最適化が損なわれるおそれがある。特許文献1及び2のリモコンは、このような誤操作に対する防止機能が不十分と考えられ、泡入浴装置への適用は好ましくない。
【0007】
また、特許文献3のデータ書込装置は、泡入浴装置の据え付け施工時の調整及び初期設定に適用できるが、据え付け施工のたびに設置箇所まで持ち込む必要があって煩わしく、データ書込装置自体の設計コスト及び製造コストも増加する。
【0008】
なお、泡入浴装置の制御装置に限らずコンピュータを応用した制御装置では、据え付け施工時に調整や初期設定を行う調整モードを隠しモードあるいは隠しメニューとすることが行われている。すなわち、予め定められた特定の操作手順を実施することで調整モードへ遷移できるように制御装置の制御ロジックを構成し、特定の操作手順を施工者のみに開示してユーザには開示しないようにする。これにより、ユーザの誤操作のおそれは低減されるが、ユーザのイレギュラーな操作が偶発的に特定の操作手順に類似して調整モードに遷移するおそれが全く無くなる訳ではない。
【0009】
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、据え付け施工時に施工者によって調整及び初期設定された最適な泡質をユーザが誤って低下させることがなく、簡素でコスト低廉な泡入浴装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の泡入浴装置は、温水に空気を混入させて泡を生成し、生成された泡を浴室に設置された浴槽に供給する泡生成装置と、前記浴室外に電源入り切り手段を有し複数の制御モードを内部に有して前記泡生成装置で生成する泡の泡質の調整ならびに泡生成動作及び停止を制御する制御装置と、前記浴室を利用するユーザが操作する操作スイッチを有して前記制御装置の制御モードを切り替え操作する操作装置と、を備えた泡入浴装置であって、少なくとも前記制御装置の電源入り切り手段の入り操作を含む複数の操作を組み合わせた操作手順を実施することにより、前記制御装置の制御モードを前記泡生成装置の泡質を調整する泡質調整モードに遷移させるようにした。
【0011】
さらに、前記操作手順は、前記電源入り切り手段が入り操作されてから前記操作スイッチが操作されるまでの起動時間、及び、前記操作スイッチが操作されてから前記電源入り切り手段が切り操作されるまでの停止時間の少なくとも一方を所定時間範囲内に限定した操作を含むことが好ましい。
【0012】
さらに、前記制御装置の前記泡質調整モードにおいて、前記操作装置の操作スイッチの操作により前記泡生成装置で前記泡質を調整するときの動作条件を変更できるようにしてもよい。
【0013】
さらに、前記制御装置の電源入り切り手段は、電源プラグのコンセントへの差し操作及びコンセントからの抜き操作によって行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の泡入浴装置では、少なくとも浴室外の電源入り切り手段の入り操作を含む複数の操作を組み合わせた操作手順を実施することにより、制御装置の制御モードを泡質調整モードに遷移させるようにしている。これにより、操作手順中に浴室外での操作を含むので、浴室を利用するユーザ(浴室で入浴中のユーザ)の誤操作あるいはイレギュラーな操作が行われても偶発的に泡質調整モードに遷移するおそれを低減できる。したがって、据え付け施工時に施工者によって調整及び初期設定された最適な泡質をユーザが誤って低下させることがない。
【0015】
さらに、前記操作手順が起動時間及び停止時間の少なくとも一方を所定時間範囲内に限定した操作を含む態様では、操作の順番だけでなく時間制約の条件を付け加えたので、ユーザの誤操作のおそれを一層低減できる。さらに、時間制約の条件を付け加えることにより少数の操作スイッチで当該操作手順を実現できる。したがって、操作装置をシンプルな構成にでき、コストも低減できる。
【0016】
さらに、泡質調整モードにおいて、操作スイッチの操作により泡質を調整するときの動作条件を変更できるようにした態様では、モード遷移用及び泡質調整用に操作スイッチを兼用できる。したがって、操作装置を小形でシンプルな構成にでき、コストも低減できる。
【0017】
さらに、電源入り切り手段を電源プラグの抜き差し操作によって行う態様では、制御装置にメインスイッチを備える場合と比較して、ユーザのイレギュラーな操作で偶発的に泡質調整モードに遷移するおそれがより一層低減され、全く考えなくてもよくなる。つまり、操作装置の操作スイッチの操作と制御装置の電源プラグの抜き差し操作とを組み合わせた特定の操作手順は、ユーザが操作装置のみをイレギュラーに操作しても発生し得ない。したがって、据え付け施工時に施工者によって調整及び初期設定された最適な泡質をユーザが誤って低下させることは有り得なくなる。また、制御装置のメインスイッチを無くして簡素化できるので、泡入浴装置のコストも低廉になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の泡入浴装置の構成を模式的に説明する図である。
【図2】制御装置が内部に有する制御モード及びモード遷移条件を示すモード遷移図(状態遷移図)である。
【図3】据え付け施工時に施工者が行う泡質調整フローのフローチャートである。
【図4】通常の使用時にユーザが行う泡生成フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための実施形態を、図1〜図4を参考にして説明する。図1は、本発明の実施形態の泡入浴装置1の構成を模式的に説明する図である。泡入浴装置1は、泡生成装置2、制御装置3、及び操作装置4で構成され、一般的な交流電源で動作する。
【0020】
泡生成装置2は、浴室91内の浴槽92に隣接して設置されており、泡を生成し泡を含んだ温水を浴槽92に供給する。泡生成装置2は、アクチュエータとして図略の温水循環ポンプ、エアコンプレッサ、及び撹拌ポンプを有している。温水循環ポンプは、浴槽92から温水を採取し、泡を含んだ温水を吐泡口21から浴槽92内に噴出するように、閉水路内で温水を循環させるアクチュエータである。エアコンプレッサは、閉水路の途中で温水内に空気を混入させるアクチュエータである。撹拌ポンプは、空気の混入された温水を撹拌して泡を生成するアクチュエータである。
【0021】
また、泡生成装置2は、閉水路を開閉する弁類や温水の温度を検出する温度センサなどを有している。さらに、泡生成装置2は、図略の温水器から温水を導入する温水器連係手段や、泡の生成効率を向上するための発泡剤供給手段、不要な泡を無くすための消泡手段などを有していてもよい。前述した3つのアクチュエータや弁類の動作は制御装置3から制御され、前述した温度センサなどの検出信号は制御装置3に伝送される。泡生成装置2の内部構成は、上述に限定されず、公知の構成を適宜応用できる。
【0022】
3つのアクチュエータの動作条件は可変に調整できるようになっており、動作条件の組み合わせに依存して生成される泡の泡質が変化する。例えば、温水循環ポンプの動作条件を「強」に設定すれば吐泡口から泡を含んだ温水が強く噴出され、「弱」に設定すれば泡を含んだ温水が弱く噴出される。また、エアコンプレッサの動作条件を「強」に設定すれば温水中の泡の比率が高まり、「弱」に設定すれば泡の比率が低下する。さらに、撹拌ポンプの動作条件を「強」に設定すれば温水中の泡が微細となり、「弱」に設定すれば泡は大きくなる。
【0023】
本実施形態において、3つのアクチュエータの動作条件として、10通りの組み合わせが予め準備されている。そして、各動作条件の組み合わせと組合せ番号N(=1〜10)とを対応付けたプリセット情報が制御装置3内に記憶されている。据え付け施工時には、施工者が設置箇所の環境条件に合わせていずれかの組み合わせを選択して組合せ番号Nを初期設定し、泡質が最適となるようにカスタマイズする。なお、泡質を最適化する調整及び初期設定は、据え付け施工時に施工者が一度実施すればよく、以降ユーザは設定変更を行うべきではない。動作条件の組み合わせは10通りに限定されず、組み合わせの総数は任意である。さらには、インバータなどを用いて動作条件を可変連続的に調整するようにしてもよい。
【0024】
制御装置3は、浴室91の隣の隣室95に設置されており、後述する複数の制御モードM1〜M5を内部に有して泡生成装置2で生成する泡の泡質の調整ならびに泡生成動作及び停止を制御する。制御装置3には電子制御装置が用いられており、図略のコンピュータを内蔵し、入出力部31を備え、ソフトウェアで記述された制御ロジックで動作するようになっている。複数の制御モード及びモード間の遷移は、制御ロジックによって規定されている。入出力部31は、接続線32、33を用いて泡生成装置2及び操作装置4に接続されており、適宜制御指令や検出情報を授受するようになっている。なお、接続線32、33に代えて無線通信手段を備え、制御指令や検出情報を無線通信で授受するようにしてもよい。
【0025】
制御装置3は、電源入り切り手段としてのメインスイッチを有していない。したがって、電源の遮断及び投入は、電源入り切り手段としての電源プラグ34を隣室95内のコンセント96に抜き差し操作することによって行う。電源プラグ34をコンセント96に差し操作すると、制御装置3の電源が投入されて自動的に起動し、泡生成装置2及び操作装置4への電源供給も行われる。電源プラグ34は、長期間にわたって差し込まれた状態に維持されるのが一般的であるが、泡入浴装置1を使用するたびに抜き差し操作してもよい。なお、制御装置3がメインスイッチを有する構成としてもよく、電源の入り切り操作を浴室外で行う点は変わらない。
【0026】
操作装置4は、入浴中のユーザの操作の便宜を考慮して浴室91内の壁面に設置されている。なお、これに限定されず、操作装置4を浴室91外、例えば浴室入口の手前の壁面に設置するようにしてもよい。操作装置4は、操作部41及び表示部45で構成されている。操作部41は、ユーザが表示部45の画面を切り替えるための操作スイッチ42、及びユーザが泡生成動作と停止とを切り替えるための常用スイッチ43を有している。本実施形態では、操作スイッチ42を、施工者が泡質調整を行うための操作スイッチとしている。操作スイッチ42及び常用スイッチ43には、例えば押しボタン式スイッチを用いることができ、その押下操作は制御装置3で検出される。
【0027】
表示部45には、例えば、液晶ディスプレイを用いることができ、あるいは、発光ダイオード(LED)などの表示ランプを適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。表示部45の表示内容は、制御装置3から指令される。例えば、画面にて制御装置3の制御モードM1〜M5を表示する際、表示部45は、制御装置3の各制御モードM1〜M5に対応してそれぞれ、「起動中」「スタンバイ」「泡生成」「初期スタンバイ」「泡質調整」を表示する。さらに、表示部45は、制御装置3の泡質調整モードM5における3つのアクチュエータの動作条件の組み合わせを示す組合せ番号Nを表示する。
【0028】
次に、制御装置3の制御モードM1〜M5とモード遷移条件について説明する。図2は、制御装置3が内部に有する制御モードM1〜M5及びモード遷移条件を示すモード遷移図(状態遷移図)である。図示されるように、制御装置3は、電源投入確認モードM1、スタンバイモードM2、泡生成モードM3、初期スタンバイモードM4、及び泡質調整モードM5の5モードを有している。ユーザの通常の使用時に、制御装置3は電源投入確認モードM1、スタンバイモードM2、及び泡生成モードM3の3モードに遷移する。初期スタンバイモードM4及び泡質調整モードM5は、据え付け施工時に施工者が泡質調整及び初期設定を行うための専用の制御モードである。
【0029】
図2中の最も上に示された停止の状態で、制御装置3の電源プラグ34をコンセント96に差し操作すると、電源が投入され動作中に移行して制御ロジックが起動する。制御装置3の制御ロジックでは、まず調整許可条件が成立しているか否かを判定する(図中のM0)。調整許可条件は、泡質調整モードM5へ遷移するための前提条件であり、後述するように過去の操作履歴が所定履歴を辿っている場合に限り成立する。したがって、初回起動の場合や、過去の操作履歴が所定履歴と異なる場合には調整許可条件は不成立となっており、電源投入確認モードM1に遷移する。また、調整許可条件が成立しているときは、初期スタンバイモードM4に遷移する。
【0030】
電源投入確認モードM1は、調整許可条件を成立させるか否かを選択するモードである。電源投入確認モードM1で、30秒が経過すると自動的にスタンバイモードM2に遷移する。また、30秒以内に操作装置4の操作スイッチ42が押下されると、調整許可条件を成立させてスタンバイモードM2に遷移する。
【0031】
ここで、制御装置3の電源プラグ34を差し操作してから30秒以内に操作装置4の操作スイッチ42を押下することは、泡質調整モードM5に遷移するための第1操作手順となる。第1操作手順では、電源が入り操作されてから操作スイッチ42が押下されるまでの起動時間を30秒以内という所定時間範囲内に限定している。
【0032】
スタンバイモードM2は、通常の使用時には、ユーザによる常用スイッチ43の押下を待機するモードとなる。スタンバイモードM2で、常用スイッチ43が押下されると、泡生成モードM3に遷移する。また、スタンバイモードM2は、据え付け施工時には、一旦成立した調整許可条件を不成立させるか否かを選択するモードとなる。スタンバイモードM2で1分が経過すると、自動的に調整許可条件を不成立とする。
【0033】
ここで、調整許可条件を成立状態で保持するためには、スタンバイモードM2に遷移した後1分以内に電源プラグ34をコンセント96から抜き操作して電源を遮断する必要があり、これが泡質調整モードM5に遷移するための第2操作手順となる。第2操作手順では、電源投入確認モードM1での操作スイッチ42が押下されてからスタンバイモードM2で電源が切り操作されるまでの停止時間を1分以内という所定時間範囲内に限定している。
【0034】
泡生成モードM3は、泡入浴装置1が主機能を発揮するモードであり、後述する初期設定済みの最適値Nbestに基づいて3つのアクチュエータを起動制御し、泡を含んだ温水を吐泡口21から浴槽92内に噴出する。泡生成モードM3で、常用スイッチ43が押下されると、スタンバイモードM2に遷移する。
【0035】
初期スタンバイモードM4は、泡質調整モードM5の起動待ちをしているモードであり、電源が投入されて起動した時点で調整許可条件が成立しているときにのみ遷移する。調整許可条件は、過去の操作履歴が第1操作手順及び第2操作手順をこの順番で辿っている場合に限り成立している。初期スタンバイモードM4で1分が経過すると自動的にスタンバイモードM2に遷移し、1分以内に操作スイッチ42が押下されると泡質調整モードM5に遷移する。
【0036】
ここで、制御装置3の電源プラグ34を再度差し操作してから1分以内に操作スイッチ42を押下する操作が、泡質調整モードM5に遷移するための第3操作手順となる。第3操作手順では、電源が再度入り操作されてから操作スイッチ42が押下されるまでの起動時間を1分以内という所定時間範囲内に限定している。結局、泡質調整モードM5に遷移するために、施工者は第1、第2、及び第3操作手順をこの順番通りに行う必要がある。
【0037】
なお、初期スタンバイモードM4には、調整許可条件が成立しているときに泡質調整モードM5に直ちに遷移せず、施工者が泡質調整を実施して良いか否かを確認するための時間を確保する意味が有る。例えば、浴槽92に温水が無い状態だと、アクチュエータが空運転をして負担のかかるおそれがある。また例えば、発泡剤が投入されていないと良好に泡を生成できない。このような泡質調整に障害となる事項が無いことを確認した上で、施工者は泡質調整モードM5への遷移を行うことができる。
【0038】
泡質調整モードM5は、3つのアクチュエータの動作条件の組み合わせを表すプリセット情報に基づいて各組合せ番号Nで試験的に泡を生成し、泡質が最適となる動作条件の組合せ番号Nを初期設定するモードである。泡質調整モードM5に遷移すると、まず組合せ番号N=1に該当する動作条件で試験的に泡が生成される。また、操作スイッチ42が押下されるたびに組合せ番号Nが1ずつ増加し、泡質調整モードM5を維持して組合せ番号Nに該当する動作条件で泡が生成される。さらに、組合せ番号N=10に該当する動作条件で泡が生成されているときに操作スイッチ42が押下されると、組合せ番号N=1に該当する動作条件に戻り、以降サイクリックに動作条件が変更される。泡質調整モードM5で試験的に泡が生成される各組合せ番号Nは、表示部45に表示されている。
【0039】
そして、泡質が最適となる動作条件の組合せ番号Nが判明すると、施工者は、当該の組合せ番号Nで泡が生成されているときに常用スイッチ43を押下する。すると、制御装置3内に当該の組合せ番号Nが最適値Nbestとして保存され、スタンバイモードM2に遷移する。
【0040】
なお、いずれの制御モードM1〜M5においても、電源プラグ34が抜き操作されて電源が遮断されると、泡入浴装置1全体が停止する。このとき、前述した調整許可条件及び最適値Nbestは、不揮発性メモリに保存されているので保持される。
【0041】
次に、実施形態の泡入浴装置1の操作フローについて説明する。図3は、据え付け施工時に施工者が行う泡質調整フローのフローチャートである。図中の右側は泡入浴装置1の動作を示し、中央は施工者の操作を示し、左側は制御装置3の制御モードを示している。このフローチャートに準拠した泡質調整の手順は、施工者向けの施工要領書などに開示されており、ユーザ向けの取扱説明書には開示されていない。
【0042】
図中のステップS1で、まず施工者が電源プラグ34をコンセント96に差し操作すると、制御装置3が起動する。このとき、初回起動であるため調整許可条件は成立しておらず、電源投入確認モードM1に遷移する。ステップS2で、制御装置3は表示部45を「起動中」とし、ステップS3で起動後に30秒が経過したか否かを判定する。そして、30秒以内にステップS4で施工者が操作スイッチ42を押下すると、ステップS5で調整許可条件を成立させてスタンバイモードM2に遷移する(第1操作手順)。また、ステップS4で操作スイッチ42が押下されていないと、電源投入確認モードM1を維持してステップS3に戻る。ステップS3で30秒が経過すると、泡質調整を行わずに泡質調整フローを終了してスタンバイモードM2で待機する。
【0043】
スタンバイモードM2のステップS6で、制御装置3は、表示部45を「スタンバイ」とする。そして、1分以内にステップS7で施工者が電源プラグ34を抜き操作すると、調整許可条件の成立状態を保持して停止する(第2操作手順)。また、1分が経過しても電源プラグ32の抜き操作が行われなかったとき、泡質調整を行わずに泡質調整フローを終了してスタンバイモードM2で待機する。
【0044】
次に、ステップS8で、施工者が電源プラグ34をコンセント96に再度差し操作すると、制御装置3が再度起動する。このとき、調整許可条件が成立しているので初期スタンバイモードM4に遷移する。制御装置3は、ステップS9で表示部45を「初期スタンバイ」とし、ステップS10で再度の起動後に1分が経過したか否かを判定する。そして、1分以内にステップS11で施工者が操作スイッチ42を押下すると、泡質調整モードM5に遷移する(第3操作手順)。また、ステップS11で操作スイッチ42が押下されていないと、初期スタンバイモードM4を維持してステップS10に戻る。ステップS10で1分が経過すると、泡質調整を行わずに泡質調整フローを終了してスタンバイモードM2で待機する。
【0045】
泡質調整モードM5のステップS12で、制御装置3は、表示部45を「泡質調整」とし、さらに、初回は組合せ番号N=1である旨の表示を行う。次のステップS13では、組合せ番号N=1に対応する動作条件で泡を試験的に生成する。そして、泡を生成しているときにステップS14で施工者が操作スイッチ42を押下すると、ステップS15で組合せ番号Nを1だけ増加させ(N=10のときはN=1に戻し)、ステップS12に戻る。2回目以降のステップS12では、組合せ番号Nの値に対応した表示を行い、2回目以降のステップS13では、組合せ番号Nの値に対応する動作条件で泡を試験的に生成する。
【0046】
そして、泡質が最適となる動作条件の組合せ番号Nで泡を生成しているときに、ステップS16で施工者が常用スイッチ43を押下すると、ステップS17で当該の組合せ番号Nを最適値Nbestとして保存する。制御装置3は泡の生成を終了し、これで泡質調整及び初期設定が完了し、泡質調整フローを終了してスタンバイモードM2で待機する。なお、泡質調整フロー終了後のスタンバイモードM2で1分間が経過すると、調整許可条件が不成立とされる。
【0047】
次に、図4は、通常の使用時にユーザが行う泡生成フローのフローチャートである。図中の右側は泡入浴装置1の動作を示し、中央はユーザの操作を示し、左側は制御装置3の制御モードを示している。図中のステップS31で、まずユーザが電源プラグ34をコンセント96に差し操作すると、制御装置3が起動する。このとき、初回起動であるため調整許可条件は成立しておらず、電源投入確認モードM1に遷移する。制御装置3は、ステップS32で表示部45を「起動中」とし、30秒が経過すると自動的にスタンバイモードM2に遷移する。
【0048】
スタンバイモードM2のステップS33で、制御装置3は、表示部45を「スタンバイ」とする。なお、図3の泡質調整フローが終了したときは、ステップS33に合流する。そして、ステップS34で、ユーザが常用スイッチ43を押下すると、泡生成モードM3に遷移する。泡生成モードM3のステップS35で表示部45を「泡生成」とし、ステップS36で初期設定済みの最適値Nbestに基づいて泡を生成し、泡を含んだ温水を吐泡口21から浴槽92内に噴出する。
【0049】
泡を生成しているときに、ステップS37で、ユーザが常用スイッチ43を押下すると、ステップS38で泡の生成を停止する。そしてその後、スタンバイモードM2に遷移し、ステップS33に戻る。以降は、常用スイッチ43の押下操作のたびにスタンバイモードM2と泡生成モードM3とが交互に切り替わる。
【0050】
仮に、図4の電源投入確認モードM1中に、ユーザがイレギュラーな操作として常用スイッチ43でなく操作スイッチ42を30秒以内に押下すると、第1操作手順を実施したことになって図3のステップS5に到達し、一時的に調整許可条件が成立する。しかしながら、図3の泡質調整フローを知らないユーザが、ステップS7に示される第2操作手順及びステップS11に示される第3操作手順を続けて行うことは殆ど考えられない。特に、第2操作手順及び第3操作手順は浴室91外での電源プラグ34の抜き差し操作を含み、加えて所定時間範囲内の制約もあるため、偶発的にユーザがこれらの操作手順を行うことは考えなくてもよくなる。この結果、ユーザのイレギュラーな操作スイッチ42の操作があっても、制御装置3はスタンバイモードM2と泡生成モードM3との間でのみ遷移し、泡質調整モードM5に遷移することはあり得ない。
【0051】
実施形態の泡入浴装置1によれば、操作スイッチ42の操作と浴室91外での制御装置3の電源の入り切り操作とを組み合わせた第1〜第3操作手順をこの順番通りに実施した場合に限り、制御装置3の制御モードを泡質調整モードM5に遷移させるようにしている。さらに、制御装置3の電源の入り切り操作を電源プラグ34の抜き差し操作によって行い、第1及び第3操作手順で起動時間を所定時間範囲内に限定し、第2操作手順で停止時間を所定時間範囲内に限定している。これにより、ユーザのイレギュラーな操作で偶発的に泡質調整モードM5に遷移するおそれが低減され、全く考えなくてもよくなる。したがって、据え付け施工時に施工者によって調整及び初期設定された最適な泡質をユーザが誤って低下させることがない。
【0052】
また、操作装置4に設けられた操作部41の操作スイッチ42は複数の機能を持つことから、操作装置4が小形でシンプルな構成とされて操作が簡単である。さらに、制御装置3は、電源の入り切り操作を電源プラグ34の抜き差し操作によって行い、メインスイッチを備えず簡素である。これらの小形化及び簡素化の総合的な効果により、泡入浴装置1のコストが低廉になる。
【0053】
なお、泡質調整モードM5に遷移するための第1〜第3操作手順は一例であって、様々な変形や応用が可能である。操作手順を複雑化すれば、ユーザの誤操作のおそれは低減されるが施工者の操作が煩雑化し、操作手順を簡略化すれば、ユーザの誤操作のおそれが増加して施工者の操作が軽減される。
【符号の説明】
【0054】
1:泡入浴装置
2:泡生成装置 21:吐泡口
3:制御装置 31:入出力部 32、33:接続線
34:電源プラグ(電源入り切り手段)
4:操作装置 41:操作部 42:操作スイッチ 43:常用スイッチ
45:表示部
91:浴室 92:浴槽 95:隣室 96:コンセント
M1:電源投入確認モード M2:スタンバイモード M3:泡生成モード
M4:初期スタンバイモード M5:泡質調整モード
N:3つのアクチュエータの動作条件の組合せ番号
Nbest:組合せ番号の最適値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水に空気を混入させて泡を生成し、生成された泡を浴室に設置された浴槽に供給する泡生成装置と、前記浴室外に電源入り切り手段を有し複数の制御モードを内部に有して前記泡生成装置で生成する泡の泡質の調整ならびに泡生成動作及び停止を制御する制御装置と、前記浴室を利用するユーザが操作する操作スイッチを有して前記制御装置の制御モードを切り替え操作する操作装置と、を備えた泡入浴装置であって、
少なくとも前記制御装置の電源入り切り手段の入り操作を含む複数の操作を組み合わせた操作手順を実施することにより、前記制御装置の制御モードを前記泡生成装置の泡質を調整する泡質調整モードに遷移させるようにした泡入浴装置。
【請求項2】
請求項1に記載の泡入浴装置であって、前記操作手順は、前記電源入り切り手段が入り操作されてから前記操作スイッチが操作されるまでの起動時間、及び、前記操作スイッチが操作されてから前記電源入り切り手段が切り操作されるまでの停止時間の少なくとも一方を所定時間範囲内に限定した操作を含む泡入浴装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の泡入浴装置であって、前記制御装置の前記泡質調整モードにおいて、前記操作装置の操作スイッチの操作により前記泡生成装置で前記泡質を調整するときの動作条件を変更できるようにした泡入浴装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の泡入浴装置であって、前記制御装置の電源入り切り手段は、電源プラグのコンセントへの差し操作及びコンセントからの抜き操作によって行われる泡入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−90876(P2013−90876A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236114(P2011−236114)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】