説明

泡持ち向上剤

【課題】低温であっても飲料の泡持ち向上可能な泡持ち向上剤の提供。
【解決手段】穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡持ち向上剤に関し、さらに詳細には、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の泡の主な働きとしては、飲料からの炭酸ガスの抜けの防止、泡立ちによる香り立ち、劣化防止のための蓋としての役割、泡の弾ける音の心地よさ、見た目の美味しさなどがあり、ビール等の飲料の泡持ちを向上させることによる、消費者への訴求効果は高い。また、ビール等の飲料を料飲店などで提供する際には、飲料の温度が低い(冷たい)ことは重要な要件である。
【0003】
しかしながら、冷たいビール等の飲料は、飲料中に炭酸ガスが溶存しやすいことから泡立ちが悪い場合が多い。また、冷たいビール等の飲料は、外気温度と、飲料中の温度との差が大きいことから、泡内の気体が膨張し、破泡しやすく、泡持ちが悪いことはこれまで知られている。したがって、ビール等の飲料において、飲料の温度を低く保ちつつ、泡持ちが良い飲料は消費者への訴求効果が高いにも関わらず、これまで実現することは困難であった。
【0004】
一方、ビール等の飲料の泡持ちを改善させる方法として、ビールに窒素ガスを添加する方法が知られているが(例えば、特開平10−287393号公報(特許文献1)参照)、ビール系飲料に窒素ガスを添加するためには大規模な装置が必要であり、コスト面で課題があった。また、ビール等の飲料に窒素ガスを添加するためには大規模な装置が必要であることから、料飲店などでビール等の飲料を提供する場合には、設置場所の確保等の課題があった。
【0005】
また、凍結させたビールを、細かく砕いて、ビールに乗せて提供するための装置はこれまでに知られているが、本願発明とは、泡持ちの点で全く異なるものである。
【0006】
よって、簡便な手段により、冷たい飲料において、泡持ちを向上させる手段については希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−287393号公報
【発明の概要】
【0008】
一般に、ビール系飲料を冷やしたグラス等に注いだ場合にはこのビール系飲料の泡持ち時間が短くなる。このような事実の存在にもかかわらず、本発明者らは、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤を用いることにより、低温であっても飲料の泡持ちが向上できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0009】
本発明は、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤を提供することを目的とする。
【0010】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む、泡持ち向上剤。
(2)穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、(1)に記載の泡持ち向上剤。
(3)粘度が1.5〜9pa・sである、(1)または(2)に記載の泡持ち向上剤。
(4)温度が−8〜−2.5℃である、(1)〜(3)のいずれかに記載の泡持ち向上剤。
(5)凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜3.5である、(1)〜(4)のいずれかに記載の泡持ち向上剤。
(6)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45である、(1)〜(5)のいずれかに記載の泡持ち向上剤。
(7)粘度が1.5〜9pa・sである、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子。
(8)温度が−8〜−2.5℃である、(7)に記載の凍結微粒子。
(9)凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜3.5である、(7)または(8)に記載の凍結微粒子。
(10)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45である、(7)〜(9)のいずれかに記載の凍結微粒子。
(11)凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程を含む、凍結微粒子の製造方法。
(12)凍結微粒子が泡持ち向上剤である、(11)に記載の製造方法。
(13)凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程が、攪拌羽根を備えたフローズン飲料ディスペンサによって行われる、(11)または(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14)(11)〜(13)のいずれかに記載の製造方法で製造した凍結微粒子を含む、飲料。
(15)穀類分解物含有発泡性飲料と、(1)〜(6)のいずれかに記載の泡持ち向上剤とを混合した、飲料。
(16)穀類分解物含有発泡性飲料と、(7)〜(9)のいずれかに記載の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子とを混合した、飲料。
(17)穀類分解物含有発泡性飲料と、(1)〜(6)のいずれかに記載の泡持ち向上剤とを混合し、発泡させた飲料。
(18)穀類分解物含有発泡性飲料と、(7)〜(9)のいずれかに記載の凍結微粒子とを混合し、発泡させた飲料。
(19)穀類分解物含有発泡性飲料と、(1)〜(6)のいずれかに記載の泡持ち向上剤とを混合する際の該穀類分解物含有発泡性飲料の温度が凍結温度以上10℃以下である、(15)または(17)に記載の飲料。
(20)穀類分解物含有発泡性飲料と、(7)〜(9)のいずれかに記載の凍結微粒子とを混合する際の該穀類分解物含有発泡性飲料の温度が凍結温度以上10℃以下である、(16)または(18)に記載の飲料。
(21)発泡が攪拌、振動、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる、(17)〜(20)のいずれかに記載の飲料。
(22)穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、(15)〜(21)のいずれかに記載の飲料。
(23)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を、飲料に混合して発泡させる、発泡方法。
(24)穀類分解物含有発泡性飲料と、(1)〜(6)のいずれかに記載の泡持ち向上剤とを混合して発泡させる、発泡方法。
(25)穀類分解物含有発泡性飲料と、(7)〜(9)のいずれかに記載の凍結微粒子とを混合して発泡させる、発泡方法。
(26)発泡が攪拌、振動、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる、(23)〜(25)のいずれかに記載の発泡方法。
(27)凍結微粒子製造時に凍結微粒子が接する気体を窒素含有割合が1〜100%の気体に置換する手段を備えた、(1)〜(6)のいずれかに記載の泡持ち向上剤または(7)〜(9)のいずれかに記載の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段を備えた、製造装置。
(28)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とを備えた、製造装置。
(29)さらに、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子と、穀類分解物含有発泡性飲料とを混合した後に、容器に注ぐ手段を備えた、(28)に記載の装置。
(30)さらに、注がれた穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子と、穀類分解物含有発泡性飲料との混合手段を備えた、(28)または(29)に記載の装置。
(31)穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段が飲料ディスペンサによって行われる、(28)〜(30)のいずれかに記載の装置。
(32)飲料ディスペンサがビールディスペンサである、(31)に記載の装置。
(33)穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段がフローズン飲料ディスペンサによって行われる、(28)〜(32)のいずれかに記載の装置。
(34)さらに、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段に、凍結微粒子の添加量を制御できる手段を備えた、(28)〜(33)のいずれかに記載の装置。
(35)さらに、凍結微粒子の攪拌手段を備えた、(33)または(34)に記載の装置。
(36)フローズン飲料ディスペンサが、冷却ユニットと加圧タンクとを備えたフローズン飲料ディスペンサであって、加圧タンクには冷却ユニットと組み合わせた冷却シリンダが内蔵され、冷却シリンダには円筒状のエバポレータと、攪拌手段として、エバポレータに配置したスクリュー式攪拌羽根を備える、(33)〜(35)のいずれかに記載の装置。
(37)攪拌手段が、さらに単位時間当たりの攪拌回数を制御する手段を備えた、(35)または(36)に記載の装置。
(38)攪拌回数を制御する手段が、飲料のトルク値を検出し、自動制御する手段である、(37)に記載の装置。
(39)更に飲料供給ノズルを備え、該飲料供給ノズルの注ぎ口部分が、複数の細穴を有する、(35)〜(38)のいずれかに記載の装置。
(40)フローズン飲料ディスペンサのタンク内の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度を検出し、フローズン飲料ディスペンサに内蔵された飲料攪拌用アジテータの回転数を自動制御する手段を備えた、(35)〜(39)のいずれかに記載の装置。
(41)フローズン飲料ディスペンサのタンク内の飲料の液量を検出し、該タンク内の液量を自動制御する手段を備えた、(35)〜(40)のいずれかに記載の装置。
(42)フローズン飲料ディスペンサのタンク内を、湯、水、または薬剤を用いて自動洗浄する手段を備えた、(35)〜(41)のいずれかに記載の装置。
(43)フローズン飲料ディスペンサのタンク内の窒素含有率を制御する手段を備えた、(35)〜(42)のいずれかに記載の装置。
【0011】
本発明によれば、簡便かつ、安価な手段により、低温であっても飲料の泡持ちを向上できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、各飲料の泡高さ(mm)と、泡の持続時間(分)との関係を示す。CPはコーンタンパクを含有していることを表す。またFは凍結微粒子を添加したものを表す。また、グラフ中の各数値は各飲料の泡高さを表す。
【図2】図2は、各飲料の泡高さ(mm)と、泡の持続時間(分)との関係を示す。CFはビールを凍結させ、粗く砕いたものを入れた群を表し、Fはビールを凍結させ、凍結微粒子としたものを入れた群を表す。また、グラフ中の各数値は各飲料の泡高さを表す。
【図3】図3は、5つの異なる条件下で製造した凍結微粒子を用いた飲料の泡高さ(mm)と、泡の持続時間(分)との関係を示す。また、グラフ中の各数値は各飲料の泡高さを表す。
【図4】図4は、穀類分解物含有発泡性飲料と、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子とを混合した飲料を製造するための装置の模式図である。
【図5】図5は、フローズン飲料ディスペンサ注出口28の形状の一実施態様の断面図である。
【発明の具体的説明】
【0013】
泡持ち向上剤
本発明の泡持ち向上剤は、泡持ち向上剤自体が泡であってもよく、または泡持ち向上剤と他の飲料とを混合して、該飲料から生成された泡の泡持ちを向上させるものであってもよい。泡持ち向上とは、泡持ち向上剤を含まない飲料と比較して、泡持ち向上剤を混合した飲料が、わずかな時間であっても、泡が持続する時間が長ければ、泡持ちが向上したものと判断する。泡が持続するか否かの判断は、例えば、ジョッキに穀類分解物含有発泡性飲料を注ぎ、発泡させた後、本発明の泡持ち向上剤を添加して、空気と接している液面の泡による被覆の有無により判断する。液面の表面全体が泡によって覆われた状態が持続していれば、泡持ち状態が持続していると判断し、液面の表面のうち一部でも泡が消失していれば、泡持ち状態は持続していないものと判断する。生成される泡は、泡持ち向上剤由来の泡でも、泡持ち向上剤を混合する飲料由来の泡のいずれかでもよいが、生成される泡は、泡持ち向上剤由来の泡と、混合する飲料由来の泡の両方であることが好ましい。
【0014】
このような泡持ち向上剤と、穀類分解物含有発泡性飲料とを混合することにより、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちが向上し、冷たい飲料であって、泡持ちが向上した飲料が提供できる。本発明の泡持ち向上剤には、穀類分解物含有発泡性飲料と混合する態様のみではなく、穀類分解物含有発泡性飲料と混合せず、泡持ち向上剤のみを溶かして、飲料とする態様も含まれる。また、穀類分解物含有発泡性飲料以外の飲料と混合する場合も本発明の態様に含まれる。この場合、泡持ち向上剤は、好ましくは麦芽分解物含有発泡性飲料であり、より好ましくはビール系飲料である。
【0015】
本発明の泡持ち向上剤は、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含んでなるものである。ここで、穀類分解物含有発泡性飲料は、穀類の分解物を含む発泡性飲料であればどのような態様の飲料であっても含まれるが、麦芽の分解物を含む飲料であることが好ましい。本発明において、穀類とは、本発明の効果を奏する穀物であれば特に限定されないが、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆であることが好ましく、より好ましくは大麦である。穀類の分解物の具体的な態様としては、特に限定されないが、麦芽、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆、トウモロコシの分解物であり、例えば、大豆タンパク、大豆ペプチド、エンドウタンパク、コーンタンパク分解物が挙げられる。
【0016】
また、本発明の泡持ち向上剤に含まれる穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子は、泡持ち向上成分を含んでなることが好ましい。本発明における、泡持ち向上成分は、泡持ちを向上できる成分であれば特に限定されないが、好ましくはタンパク質、糖タンパク質、ホップ由来苦味物質(例えば、イソフムロン、イソコフムロン)、遷移金属イオン、低分子ポリフェノール、α−グルカン、β−グルカン、およびベントーザンからなる群から選択されるものである。泡持ち向上成分としてのタンパク質としては、例えば、大豆ペプチド、大豆タンパク、エンドウタンパク、コーンタンパク分解物である。
【0017】
本発明の泡持ち向上剤に含まれる穀類分解物含有発泡性飲料は、好ましくは麦芽分解物含有発泡性飲料であり、より好ましくはビール系飲料である。ビール系飲料とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有する飲料をいい、例えば、ビール、発泡酒、リキュール等の発酵麦芽飲料や、その他の醸造酒、もしくは完全無アルコール麦芽飲料(非アルコール麦芽飲料)等の非発酵麦芽飲料が挙げられる。アルコールが含有する飲料を凍結させた場合には、アルコールが含有しない飲料を凍結させた場合に比べて、柔らかいことから、その後の加工の観点からは、アルコールを含む飲料が好ましい。また、ビール系飲料である限り、麦芽飲料に限定されるものではなく、麦や麦芽を使用しない非麦飲料の形態であってもよい。本発明において「非麦飲料」は炭酸ガス等により清涼感が付与された清涼飲料も含まれるものとする。非麦飲料としては、アルコール含量が0重量%である完全無アルコール飲料のような非発酵飲料や、アルコールを含有するアルコール含有飲料が挙げられるが、アルコールを含む態様が好ましい。このアルコール含有非麦飲料としては、発酵して得られた発酵飲料とアルコールが添加された飲料が挙げられる。非麦飲料としては、また、発酵して得られた発酵飲料からアルコール、その他の低沸点成分や低分子成分を除去して得られた非アルコール発酵飲料が挙げられる。ビール系飲料の好ましい態様としては、ビール、発泡酒、完全無アルコール麦芽飲料、非麦飲料が挙げられ、中でもビールが最も好ましい。本発明の穀類分解物含有発泡性飲料は市販の飲料を用いてもよい。
【0018】
本発明の泡持ち向上剤の好ましい態様としては、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子は細かく砕いたものが好ましい。
【0019】
また、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度は、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを向上させる限りにおいて特に限定されないが、好ましくは1.5〜9pa・sであり、より好ましくは2〜9pa・sであり、さらに好ましくは2〜3pa・sである。
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度は、例えば、単一円筒型回転粘度計(東機産業株式会社製、型番:TVB10M、測定条件:スピンドルM4×30rpmで測定)により測定することができる。測定方法としては、例えば、上記粘度計(東機産業株式会社製)に付属のガードを取り付けた状態で、500mL(内径85mm)に凍結微粒子を入れ、ローターを浸液マークまで入れ、粘度(pa・s)を測定することができる。
【0020】
さらに、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の温度は、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを向上させる限りにおいて特に限定されないが、好ましくは−8〜−2.5℃であり、より好ましくは−8〜−3.5℃であり、さらに好ましくは−4.5〜−3.5℃である。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の温度は公知の手段により測定することができる。
【0021】
また、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率は、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較して、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを向上させる限りにおいて特に限定されないが、好ましくは2〜3.5であり、さらに好ましくは2〜2.5である。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率は公知の手段により測定することができ、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積を、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の体積で割ることにより求めることができる。
【0022】
本発明の泡持ち向上剤の好ましい態様としては、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを向上させる限りにおいて特に限定されないが、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45であり、より好ましくは40〜45であり、さらに好ましくは41〜44である。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度は、例えば、色彩色差計(コニカミノルタ社製、型番:CR400)により測定することができる。測定方法としては、白色校正板(白色校正板の値:Y=93.5、x=0.3114、y=0.319)を用いて校正を行い、シャーレ(アズワン社製、φ90mm×高さ15mm)に凍結微粒子を満量入れた状態で蓋をして、シャーレ蓋上から色彩測定により、L値を測定することができる。
【0023】
本発明のより好ましい態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の上記粘度、温度、体積膨張率、および明度差(ΔL)の物性を適宜組み合わせて規定することができるが、例えば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度が、2〜3pa・sであり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜2.5である泡持ち向上剤を挙げることができる。本発明のより好ましい別の態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度が2〜3pa・sであり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の温度が−4.5〜−3.5℃であり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜2.5であり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が41〜44である泡持ち向上剤を挙げることができる。
【0024】
本発明の泡持ち向上剤は、泡持ち向上剤の量を変化させることなく、泡持ち時間を制御することができる。例えば、上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を適度な粘度範囲とすることにより、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率を制御でき、その制御に基づいて、泡持ち時間を制御することができる。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様によれば、ビールの凍結微粒子を含む泡持ち向上剤が挙げられる。
【0026】
泡持ち向上方法
また、本発明の別の態様によれば、上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を用いて飲料の泡持ちを向上させる方法が提供される。すなわち、本発明によれば、上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を飲料に混合する泡持ち向上方法を提供することができる。
【0027】
凍結微粒子
本発明の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子は、粘度が1.5〜9pa・sであり、より好ましくは2〜9pa・sであり、さらに好ましくは2〜3pa・sである凍結微粒子である。粘度は上記と同様の装置、方法により測定することができる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の温度は、−8〜−2.5℃であり、より好ましくは−8〜−3.5℃であり、さらに好ましくは−4.5〜−3.5℃である。温度は、上記と同様に公知の手段により測定することができる。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率は、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較して、特に限定されないが、好ましくは2〜3.5であり、さらに好ましくは2〜2.5である。凍結微粒子の体積膨張率は上記と同様に求めることができる。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45であり、より好ましくは40〜45であり、さらに好ましくは41〜44である。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度は、上記と同様の装置および方法により測定することができる。
【0031】
本発明のより好ましい態様によれば、上記泡持ち向上剤と同様に、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の上記粘度、温度、体積膨張率、および明度差(ΔL)の物性を適宜組み合わせて規定することができるが、例えば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度が、2〜3pa・sであり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜2.5である凍結微粒子を挙げることができる。本発明のより好ましい別の態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の粘度が2〜3pa・sであり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の温度が−4.5〜−3.5℃であり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜2.5であり、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が41〜44である凍結微粒子を挙げることができる。
【0032】
また、後述するように本発明の凍結微粒子は気体の気泡と混合した状態で提供されうる。この場合、凍結微粒子に含まれる気体の種類は特に限定されないが、好ましくは、窒素が含まれている気体が好ましいが、酸素が含まれていても本発明の効果を奏する。これらの気体が凍結微粒子に含まれていることが好ましい。
【0033】
凍結微粒子の製造方法
本発明の凍結微粒子の製造方法は、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中、好ましくは70〜100%の気体中で微粒子とする工程を含む。本発明の製造方法によれば窒素含有割合が1〜100%の気体中で穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子が製造されるため、穀類分解物含有発泡性飲料由来の凍結微粒子に該気体の気泡が混ざった混合物が得られる。すなわち、本発明の凍結微粒子は、凍結微粒子を含んでなる発泡体ということができる。この発泡体は前述のような粘度、温度、体積膨張率、および/または明度差(ΔL)の物性で規定できることはもちろん、本発明の凍結微粒子と同様に穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ち向上剤や穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ち向上方法に用いることができることはいうまでもない。
【0034】
凍結した穀類分解物含有発泡性飲料の製造は、穀類分解物含有発泡性飲料を凍結温度以下とすることができれば、どのような態様であってもよく、例えば、コンプレッサーによる冷媒冷却、ペルチェ冷却、液化窒素による手段が挙げられる。また、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を微粒子とする工程は、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を細かな粒子状にできる手段であれば、どのような態様であってもよく、例えば、フローズンメーカー、アイスクリームメーカー、ミキサーによる手段が挙げられる。本発明のより好ましい態様によれば、攪拌羽根を備えたフローズン飲料ディスペンサにより、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を微粒子とする工程が行われる。例えば、フローズン飲料ディスペンサは、冷却ユニットと加圧タンクとを備えたフローズン飲料ディスペンサであって、加圧タンクには冷却ユニットと組み合わせた冷却シリンダが内蔵され、冷却シリンダには円筒状のエバポレータと、エバポレータに配置したスクリュー式攪拌羽根を備える。冷却シリンダのエバポレータの表面で凍結する工程と、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料をスクリュー式攪拌羽根で削ぎ落す工程の全てにおいて、好ましくは、窒素含有割合が1〜100%の気体中、好ましくは70〜100%の気体中で行うことが好ましい。窒素含有割合が70〜100%の気体中で行う好ましい態様として、例えば、大気と同一組成(窒素が約78%、酸素が約21%、その他アルゴン、二酸化炭素など)中で行うこともでき、より好ましくは大気および/または窒素により0.01〜0.5MPa、さらに好ましくは0.01〜0.1MPa、中でも0.02〜0.07MPaで加圧して行うことが好ましい。したがって、上記の態様のように凍結した穀類分解物含有発泡性飲料の製造、および凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を微粒子とする工程を同時に行ってもよい。これにより、凍結微粒子間に適度に窒素および/または酸素を含有させることができる。
【0035】
また、フローズン飲料ディスペンサに備えられた上記攪拌羽根の攪拌回転数は、特に限定されないが、好ましくは10〜1000rpmが好ましく、より好ましくは40〜500rpmである。
【0036】
さらに、凍結微粒子は、上記フローズン飲料ディスペンサ以外の装置によっても製造することは可能であり、例えば、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料をミキサーにより攪拌することにより凍結微粒子を製造することができる。ミキサーとしては例えば、ミキサー(サンヨー社製、SM-M8型、攪拌羽根長さ/収容容器直径=5/7〜6/7)も用いることができ、10,000〜22,000rpmであることが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造される凍結微粒子は泡持ち向上剤であることが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、凍結させたビールを窒素含有割合が70〜100%の気体中で微粒子とし、凍結微粒子を製造する方法が提供される。
【0039】
本発明のより好ましい態様によれば、凍結したビールを微粒子とする工程が、窒素含有割合が70〜100%の気体中で行われることが好ましい。
【0040】
本発明のより好ましい態様によれば、ビールを、フローズン飲料ディスペンサに加えて、凍結微粒子を製造してもよい。
【0041】
飲料
本発明の飲料は、穀類分解物含有発泡性飲料と、上記泡持ち向上剤とを混合したものであり、また上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子とを混合したものであってもよい。さらに、本発明の飲料は、穀類分解物含有発泡性飲料と、上記泡持ち向上剤とを混合し、発泡させた飲料であってもよく、また穀類分解物含有発泡性飲料と、上記凍結微粒子とを混合し、発泡させた飲料であってもよい。泡持ち向上剤と混合される穀類分解物含有発泡性飲料は、泡持ち向上剤に含まれる穀類分解物含有発泡性飲料と同じものであることが好ましく、凍結微粒子と混合される穀類分解物含有発泡性飲料は、凍結微粒子の穀類分解物含有発泡性飲料と同じものであることが好ましい。
【0042】
本発明の別の好ましい態様によれば、上記凍結微粒子の製造方法で製造した凍結微粒子を含む飲料が提供される。例えば、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程を含む凍結微粒子の製造方法で製造した凍結微粒子を含む飲料、凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程が、攪拌羽根を備えたフローズン飲料ディスペンサによって行われる製造方法で製造した凍結微粒子を含む飲料が提供される。
【0043】
本発明において、発泡は、泡持ち向上剤または凍結微粒子と混合した穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させることができればどのような手段であってもよいが、好ましくは攪拌、振動(例えば、超音波振動)、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる。
【0044】
穀類分解物含有発泡性飲料に、泡持ち向上剤と混合する際の該穀類分解物含有発泡性飲料の温度は、好ましくは凍結温度以上10℃以下であり、より好ましくは凍結温度以上4℃以下であり、さらに好ましくは凍結温度以上0℃以下である。
【0045】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明の飲料は成人用である。本明細書において成人とは、法律上の飲酒可能な年齢をいう。本発明の泡持ち向上剤および穀類分解物含有発泡性飲料の好ましい態様はアルコール飲料であることから、提供対象は成人であることが好ましい。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、ビールと、粘度が1.5〜9pa・sであるビールの凍結微粒子とを混合した飲料が提供される。
【0047】
本発明の別の好ましい態様によれば、ビールと、粘度が1.5〜9pa・sであるビールの凍結微粒子とを混合し、攪拌により発泡させた飲料が提供される。
【0048】
また、本発明の飲料および凍結微粒子は、香料、色素、甘味料等を加えてもよい。
【0049】
発泡方法
本発明の発泡方法は、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を、飲料に混合して発泡させる発泡方法が挙げられ、好ましくは、飲料は穀類分解物含有発泡性飲料である。本発明の発泡方法の別の態様によれば、穀類分解物含有発泡性飲料と、上記泡持ち向上剤と混合して発泡させる発泡方法が挙げられ、また穀類分解物含有発泡性飲料と、粘度が1.5〜9pa・sである穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子と混合して発泡させる発泡方法が挙げられる。穀類分解物含有発泡性飲料と混合される泡持ち向上剤および凍結微粒子は上記で挙げたいずれの態様であってもよい。
【0050】
発泡方法における発泡は、上記と同様の意味で用いられ、発泡させることができればどのような手段であってもよく、好ましくは攪拌、振動(例えば、超音波振動)、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる。
【0051】
本発明の好ましい態様によれば、ビールの凍結微粒子を、ビールに混合して発泡させる発泡方法が提供される。
【0052】
本発明の好ましい態様によれば、ビールと、ビールの凍結微粒子を含む泡持ち向上剤とを混合して発泡させる発泡方法が提供される。
【0053】
本発明の好ましい別の態様によれば、ビールと、粘度が1.5〜9pa・sであるビールの凍結微粒子とを混合して発泡させる発泡方法が提供される。
【0054】
製造装置
本発明の装置は、凍結微粒子製造時に凍結微粒子が接する気体を窒素含有割合が1〜100%の気体に置換する手段を備えた、上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤または上記穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子(例えば、凍結微粒子の粘度が1.5〜9pa・sである)を注ぐ手段を備えた装置が提供される。凍結微粒子製造時に凍結微粒子が接する気体を窒素含有割合が1〜100%の気体に置換する手段とは、大気開放状態で凍結微粒子が製造されていてもよく、またタンク中で凍結微粒子を製造する場合に、タンク内が窒素および/または大気により加圧することにより、凍結微粒子製造時に凍結微粒子が接する気体を窒素含有割合が1〜100%の気体に置換してもよい。
【0055】
また、本発明の別の態様によれば、本発明の装置は、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とを備えた製造装置である。
本発明の好ましい態様によれば、上記の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む泡持ち向上剤または上記穀類分解物含有発泡性飲料(例えば、ビール系飲料)の凍結微粒子(例えば、凍結微粒子の粘度が1.5〜9pa・sである)を注ぐ手段と、上記穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とを備えた製造装置であってもよい。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とが同一の装置内に含まれていてもよく、空間的に離れた別々の装置として存在してもよい。穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段へは、同一の飲料供給タンク(例えば、ビール樽)から供給してもよい。
【0056】
図4は、本発明の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とを備えた製造装置の好適な一実施形態を示す模式図である。以下にビールの流れの概略を説明する。炭酸ガスボンベ2から炭酸ガス供給ライン3を通じて、ビール樽1に炭酸ガスが供給される。ビール樽1に炭酸ガスが供給されるとビール樽1内の空洞内部の気圧が高まり、ビールの液面が押される。これにより、ビール供給ラインを通じて、三方弁6を介して、ビールディスペンサ9と、フローズン飲料ディスペンサ10にビールが供給される。ビールディスペンサ9では、ビールディスペンサ9内の飲料通路11を通過してビールディスペンサ注出口25に向けてビールが通過し、ビールディスペンサ注出レバー26を作動させることにより、ジョッキa12にビールが注ぎ出される。コンプレッサー30により、冷却器7が冷却され、ビールが飲料通路を通過している間にビールが冷却される。このコンプレッサー30を調節することにより、ジョッキa12に注ぎ出されるビールの温度を調節することができる。コンプレッサー30を調節することにより、例えば、ビールを凍結温度以上10℃以下の温度に調節して注ぎ出すことができる。
【0057】
一方、三方弁6を介してビールが供給されるフローズン飲料ディスペンサ10は、冷却ユニット16を搭載したディスペンサ本体にビールの凍結微粒子の製造部となる加圧タンク14を搭載したものである。この加圧タンクは大気開放型のタンクであってもよい。加圧タンク14にはディスペンサ本体に搭載した冷却ユニット16と組合せたスクリュー式攪拌羽根15付きの冷却シリンダ27が内蔵されており、三方弁6を介したビール供給ライン5が加圧タンク14に開口している。ここで、冷却シリンダ27は、ベンドステージに向けて前後の向きに配置した円筒状のエバポレータ(内外二重壁の間に冷媒を流し、その内周面、外周面上に製氷する)と、エバポレータの内外周面上に配置したスクリュー式のオーガ(エバポレータの表面に結氷した氷を削り取る刃)を兼ねたスクリュー式攪拌羽根(アジテータ)15とからなり、攪拌羽根15を攪拌モータのギアボックスに連結して定方向に回転駆動するようにしている。なお、加圧タンク14には冷却シリンダ27の他に、加圧するための窒素ガスボンベ23が窒素供給ライン24を通じて窒素を供給できるように接続されており、また加圧タンク内の液量を検知して、タンク内の液量を自動制御する手段、例えばビールの供給を制御する投入量制御センサ22および凍結微粒子の粘度を検知して冷却ユニットを運転制御する粘度確認冷却制御センサ21などを装備している。投入量制御センサ22および粘度確認冷却制御センサ21は制御ボックス19に接続されており、タッチパネル20により制御できる。また、凍結微粒子をフローズン飲料ディスペンサ注出口からの添加量を制御できる手段、例えばフローズン飲料ディスペンサ注出レバーにより添加量を調節することができる。
【0058】
従って、三方弁6を介してフローズン飲料ディスペンサ10の加圧タンク14に供給されたビールは冷却シリンダ27に流し込まれ、エバポレータの内周面、外周面で凍結し、凍結したビールをスクリュー式攪拌羽根(アジテータ)15により削り取られ、凍結微粒子となる。製造された凍結微粒子は、粘度確認冷却制御センサ21および投入量制御センサ22により、泡持ちを向上させるための粘度およびその量が制御され、フローズン飲料ディスペンサ注出レバー29を操作することにより、フローズン飲料ディスペンサ注出口28から凍結微粒子がジョッキb13へ供給される。
【0059】
図5には、フローズン飲料ディスペンサ注出口28の好適な一実施形態を示す模式図である。フローズン飲料ディスペンサ注出口28を図5のような形状とすることにより、ジョッキb13の液面などに均一に広げることができ、ビールと凍結微粒子との混合を容易にすることができる。
【0060】
ビールの凍結微粒子と、ビールとを注ぐ順序としては、ビールをビールディスペンサ注出口25から注いだ後、ビールの凍結微粒子をフローズン飲料ディスペンサ注出口28から注ぐことが好ましいが、順序は逆であってもよい。
【0061】
フローズン飲料ディスペンサ注出口28と、ビールディスペンサ注出口25とに管がそれぞれ接続され、ビールおよびビールの凍結微粒子が混合タンクへ運ばれ、その混合タンクで、ビールとビールの凍結微粒子とが混合された後、ジョッキ等の容器に注いでもよい。その混合タンク内にビールとビールの凍結微粒子とを攪拌するための装置が備えられていてもよい。
【0062】
また、フローズン飲料ディスペンサ注出口28にモータを接続し、モータに接続された攪拌手段、例えば攪拌棒により、ジョッキb13中の飲料を攪拌してもよい。さらに、ビールディスペンサ注出口にモータを接続し、モータに接続された攪拌手段を備えていてもよい。
【0063】
攪拌羽根15の単位時間当たりの攪拌回数を制御するために、攪拌回数を制制御するための手段、例えば、制御ボックス19から攪拌回数を制御するために制御センサを設けてもよい。攪拌羽根の攪拌回転数は、特に限定されないが、好ましくは10〜1000rpmが好ましく、より好ましくは40〜500rpmである。
【0064】
さらに上記攪拌回数を制制御するための手段が、冷却シリンダ27に、注入された飲料のトルク値を検出し、そのトルク値によって、攪拌羽根15の攪拌回数を自動制御(例えば、タンク内の自動温度制御手段)する手段、例えばトルク制御自動制御センサを取り付け、制御ボックス19により制御してもよい。
【0065】
また、加圧タンク14の内部に、タンク内の凍結微粒子の明度を検出し、フローズン飲料ディスペンサに内蔵されたスクリュー式攪拌羽根(アジテータ)15の回転数を自動制御する手段、例えば明度感知センサを取り付けて、攪拌羽根15の攪拌回数を制御ボックス19により制御してもよい。
【0066】
さらに、加圧タンク14に、湯、水、または薬剤を供給する供給ラインを設け、湯、水、または薬剤を加圧タンク14に注入し、自動洗浄する手段、例えばスクリュー式攪拌羽根(アジテータ)15の攪拌速度を制御して、洗浄する手段を備えていてもよい。
【0067】
また、窒素供給ライン24および窒素ガスボンベ23を用いて、加圧タンク14内の窒素含有率を制御する手段を備え、また加圧タンク14内の窒素含有率を制御するために、該タンク内に窒素含有率制御センサを設けて、タンク内の窒素含有率を1〜100%に制御することもできる。また、加圧タンク14に酸素ボンベおよび酸素供給ラインを設けて、酸素と窒素との加圧タンク14内での割合を制御する手段を設けてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0069】
泡持ち時間の評価試験1
300mLのグラスにビール、非アルコール麦芽飲料、その他の醸造酒(コーンタンパクを含む、CP)、および酎ハイのサンプルを220mL注ぎ、泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した。
また、300mLのグラスにビール、非アルコール麦芽飲料、その他の醸造酒(コーンタンパクを含む、CP)、および酎ハイのサンプルを220mL注ぎ、その上から図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ(エア加圧なし)を用いて各サンプルを凍結させ、微粒子としたもの40gを、凍結微粒子と同じ由来の飲料に入れ、攪拌して、泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した。結果を図1に示す。
【0070】
泡持ち時間の評価試験2
300mLのグラスに−1℃のビールを220mL注ぎ、泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した。
また、300mLのグラスに−1℃のビールを220mL注ぎ、その上から、同じビールを凍結させ、細かく砕いたもの40gを入れ、攪拌後、泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した(CF)。
さらに、300mLのグラスに−1℃のビールを220mL注ぎ、その上から、図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ(エア加圧なし)を用いて同じビールを凍結させ、微粒子としたもの40gを入れ、攪拌後、泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した(F)。結果を図2に示す。
【0071】
凍結微粒子製造条件探索試験
フローズン飲料ディスペンサ内のタンク中のガスの条件が異なることにより、泡高さが異なるかを確認した。具体的には以下の5つの条件の違いにより、泡高さが異なるかを確認した。以下の5つの条件により作成した泡の泡高さを外気温が20℃で時間経過ごとに測定した。その結果を図3に示す。
1.図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ内のタンクに、エアで0.05MPaの圧力にてガスを供給した状態で、ビール1600mLを入れ、凍結微粒子を作成した。300mLのグラスにビール(1.2℃)を220mL注ぎ、作成した凍結微粒子40gを入れ、攪拌した(凍結微粒子(エア加圧))。
2.図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ内のタンクに、エアで加圧せずにガスを供給した状態で、ビール1600mLを入れ、凍結微粒子を作成した。300mLのグラスにビール(1.2℃)を220mL注ぎ、作成した凍結微粒子40gを入れ、攪拌した(凍結微粒子(エア加圧なし))。
3.図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ内のタンクに、エアで0.05MPaの圧力にてCOガスを供給した状態で、ビール1600mLを入れ、凍結微粒子を作成した。300mLのグラスにビール(1.2℃)を220mL注ぎ、作成した凍結微粒子40gを入れ、攪拌した(凍結微粒子(CO2加圧))。
4.図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ内のタンクに、エアで0.05MPaの圧力にてNガスを供給した状態で、ビール1600mLを入れ、凍結微粒子を作成した。300mLのグラスにビール(1.2℃)を220mL注ぎ、作成した凍結微粒子40gを入れ、攪拌した(凍結微粒子(N2加圧))。
5.300mLのグラスにビール(1.2℃)を220mL注ぎ、満量まで泡を注いだ(ビール)。
【0072】
凍結微粒子の粒径の違いによる官能試験
300mLのグラスにビールを注ぎ、図4に示されたフローズン飲料ディスペンサ(エア加圧なし)を用いて該ビールから調製した凍結微粒子または該ビールを凍らせて粗く砕いた氷を加えて、そのそれぞれについて12名のパネラーにより官能評価を行った。凍結微粒子を加えたビールと比較して、ビールを凍らせて粗く砕いた氷を加えたビールでは、泡の消失速度が速く、その泡が粗く、ビール自体が冷えすぎて、冷たすぎるとの評価となった。すなわち、凍結微粒子を加えたビールは、ビールを凍らせて粗く砕いた氷を加えたビールと比較して、泡持ちが格段に向上し、よりクリーミーな泡が実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1.ビール樽
2.炭酸ガスボンベ
3.炭酸ガス供給ライン
4.ディスペンスヘッド
5.ビール供給ライン
6.3方弁1
7.冷却器
8.3方弁2
9.ビールディスペンサ
10.フローズン飲料ディスペンサ
11.飲料通路
12.ジョッキa
13.ジョッキb
14.加圧タンク
15.スクリュー式攪拌羽根
16.冷却ユニット
17.ベントステージ1
18.ベントステージ2
19.制御ボックス
20.タッチパネル
21.粘度確認冷却制御センサ
22.投入量制御センサ
23.窒素ガスボンベ
24.窒素供給ライン
25.ビールディスペンサ注出口
26.ビールディスペンサ注出レバー
27.冷却シリンダ
28.フローズン飲料ディスペンサ注出口
29.フローズン飲料ディスペンサ注出レバー
30.コンプレッサー
31.細穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を含む、泡持ち向上剤。
【請求項2】
穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、請求項1に記載の泡持ち向上剤。
【請求項3】
粘度が1.5〜9pa・sである、請求項1または2に記載の泡持ち向上剤。
【請求項4】
温度が−8〜−2.5℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤。
【請求項5】
凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜3.5である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤。
【請求項6】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤。
【請求項7】
粘度が1.5〜9pa・sである、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子。
【請求項8】
温度が−8〜−2.5℃である、請求項7に記載の凍結微粒子。
【請求項9】
凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の体積膨張率が2〜3.5である、請求項7または8に記載の凍結微粒子。
【請求項10】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度と、凍結微粒子とする前の穀類分解物含有発泡性飲料の明度との差(ΔL)が30〜45である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の凍結微粒子。
【請求項11】
凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程を含む、凍結微粒子の製造方法。
【請求項12】
凍結微粒子が泡持ち向上剤である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
凍結した穀類分解物含有発泡性飲料を、窒素含有割合が1〜100%の気体中で微粒子とする工程が、攪拌羽根を備えたフローズン飲料ディスペンサによって行われる、請求項11または12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法で製造した凍結微粒子を含む、飲料。
【請求項15】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤とを混合した、飲料。
【請求項16】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項7〜9のいずれか一項に記載の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子とを混合した、飲料。
【請求項17】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤とを混合し、発泡させた飲料。
【請求項18】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項7〜9のいずれか一項に記載の凍結微粒子とを混合し、発泡させた飲料。
【請求項19】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤とを混合する際の該穀類分解物含有発泡性飲料の温度が凍結温度以上10℃以下である、請求項15または17に記載の飲料。
【請求項20】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項7〜9のいずれか一項に記載の凍結微粒子とを混合する際の該穀類分解物含有発泡性飲料の温度が凍結温度以上10℃以下である、請求項16または18に記載の飲料。
【請求項21】
発泡が攪拌、振動、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる、請求項17〜20のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項22】
穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項23】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を、飲料に混合して発泡させる、発泡方法。
【請求項24】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤とを混合して発泡させる、発泡方法。
【請求項25】
穀類分解物含有発泡性飲料と、請求項7〜9のいずれか一項に記載の凍結微粒子とを混合して発泡させる、発泡方法。
【請求項26】
発泡が攪拌、振動、減圧、および気体注入からなる群から選択される方法によって行われる、請求項23〜25のいずれか一項に記載の発泡方法。
【請求項27】
凍結微粒子製造時に凍結微粒子が接する気体を窒素含有割合が1〜100%の気体に置換する手段を備えた、請求項1〜6のいずれか一項に記載の泡持ち向上剤または請求項7〜9のいずれか一項に記載の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段を備えた、製造装置。
【請求項28】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段と、穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段とを備えた、製造装置。
【請求項29】
さらに、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子と、穀類分解物含有発泡性飲料とを混合した後に、容器に注ぐ手段を備えた、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
さらに、注がれた穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子と、穀類分解物含有発泡性飲料との混合手段を備えた、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
穀類分解物含有発泡性飲料を注ぐ手段が飲料ディスペンサによって行われる、請求項28〜30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
飲料ディスペンサがビールディスペンサである、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段がフローズン飲料ディスペンサによって行われる、請求項28〜32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
さらに、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子を注ぐ手段に、凍結微粒子の添加量を制御できる手段を備えた、請求項28〜33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
さらに、凍結微粒子の攪拌手段を備えた、請求項33または34に記載の装置。
【請求項36】
フローズン飲料ディスペンサが、冷却ユニットと加圧タンクとを備えたフローズン飲料ディスペンサであって、加圧タンクには冷却ユニットと組み合わせた冷却シリンダが内蔵され、冷却シリンダには円筒状のエバポレータと、攪拌手段として、エバポレータに配置したスクリュー式攪拌羽根を備える、請求項33〜35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
攪拌手段が、さらに単位時間当たりの攪拌回数を制御する手段を備えた、請求項35または36に記載の装置。
【請求項38】
攪拌回数を制御する手段が、飲料のトルク値を検出し、自動制御する手段である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
更に飲料供給ノズルを備え、該飲料供給ノズルの注ぎ口部分が、複数の細穴を有する、請求項35〜38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
フローズン飲料ディスペンサのタンク内の穀類分解物含有発泡性飲料の凍結微粒子の明度を検出し、フローズン飲料ディスペンサに内蔵された飲料攪拌用アジテータの回転数を自動制御する手段を備えた、請求項35〜39のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
フローズン飲料ディスペンサのタンク内の飲料の液量を検出し、該タンク内の液量を自動制御する手段を備えた、請求項35〜40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
フローズン飲料ディスペンサのタンク内を、湯、水、または薬剤を用いて自動洗浄する手段を備えた、請求項35〜41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
フローズン飲料ディスペンサのタンク内の窒素含有率を制御する手段を備えた、請求項35〜42のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−13391(P2013−13391A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211253(P2011−211253)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2011−128512(P2011−128512)の分割
【原出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【特許番号】特許第4959018号(P4959018)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】