説明

泡沫分離装置

【課題】製造コストの低廉化を図ると共に、泡沫排出の高効率化を図った泡沫分離装置を提供する。
【解決手段】水槽内の原水中に含まれる懸濁物を分離するための泡沫分離装置10であり、気泡を含む気液混合水が供給される泡沫分離槽20を備えている。該泡沫分離槽20内の懸濁物を吸着して浮上した泡沫65を排出する排出口部27が、前記泡沫分離槽20の上部で且つ直径方向の一方に設けられ、前記泡沫分離槽20の天壁22下面は、泡沫が天壁下面に沿って排出方向に向けて流れるように、泡沫分離槽20の他方から一方に向けて上昇する傾斜面22bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、実験施設、養殖場および水族館における活魚等の水棲生物の飼育水を浄化するのに最適な泡沫分離装置に関する。
【0002】
に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、水棲生物の飼育水には、微細な懸濁物(餌の食べ残し、水棲生物の老廃物)等が絶えず大量に放出されるので、水槽等の閉鎖された空間で水棲生物を飼育するためには、飼育水を清浄に保つための水浄化処理システムが不可欠である。
【0004】
このような水浄化処理システムは、飼育水中に微細な空気を流入して発生する気泡に微細な汚濁物質を吸着させ、浮上した浮遊気泡を泡沫分離・除去する。そして、飼育水を処理した後に、さらに濾過した処理水を水槽に戻すようにしている。
【0005】
前記浮遊気泡を泡沫分離・除去する曝気処理装置として泡沫分離装置が採用されている。かかる泡沫分離装置は、気泡を含む気液混合水が供給される泡沫分離槽を備えている。この泡沫分離槽の天壁は、上方に凸状となる漏斗状に球面形成され、その中央に排出口部が設けられている。そして、懸濁物を吸着して浮上した泡沫が、この排出口部から泡沫分離槽外へ排出されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−136739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の泡沫分離装置は、天壁が上方に凸状となる漏斗状に球面形成され、その中央に排出口部が設けられている構成である。このように、天壁を漏斗状に球面形成するには加工コスト(製造コスト)が高くなる問題がある。また、泡沫分離装置は、懸濁物を吸着した泡沫が順次浮上してくるため、如何にして泡沫を分離槽から排出するかが、処理能力を向上するためにも重要な課題である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、製造コストの低廉化を図ると共に、泡沫排出の高効率化を図った泡沫分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、水槽内の原水中に含まれる懸濁物を分離するための泡沫分離装置であって、気泡を含む気液混合水が供給される泡沫分離槽を備え、該泡沫分離槽内の懸濁物を吸着して浮上した泡沫を排出する排出口部が、前記泡沫分離槽の上部で且つ直径方向の一方に設けられ、前記泡沫分離槽の天壁下面は、泡沫が天壁下面に沿って排出方向に向けて流れるように、泡沫分離槽の他方から一方に向けて上昇する傾斜面が形成されている。
【0010】
前記本発明は、泡沫分離槽の天壁下面が、泡沫分離槽の他方から一方に向けて上昇する傾斜面に形成されているため、従来と異なり上方に凸状となる漏斗状に球面形成する必要がなく、製造コストが安価となる。また、泡沫分離槽内の懸濁物を吸着して浮上した泡沫は、天壁下面に沿って排出方向に向けて流れるため、滞留しようとする泡沫をスムーズに排出できる。
【0011】
前記泡沫分離装置において、前記天壁は平板材から構成されてなることにある。かかる場合は、天壁は平板材を加工すればよいので、その天壁を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、泡沫分離槽の天壁下面は、泡沫分離槽の他方から一方に向けて上昇する傾斜面に形成されているため、従来と異なり上方に凸状となる漏斗状に球面形成する必要がなく、製造コストの低廉化を図ることができる。また、泡沫分離槽内の懸濁物を吸着して浮上した泡沫は、天壁下面に沿って排出方向に向けて流れる構成であるため、泡沫をスムーズに排出でき、泡沫排出の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態の泡沫分離装置を備えた水浄化処理システムの概略図である。
【図2】同泡沫分離装置の一部断面を含む正面図である。
【図3】同泡沫分離装置の側面図である。
【図4】同泡沫分離装置の背面図である。
【図5】同泡沫分離装置の平面図である。
【図6】同泡沫分離装置の一部断面を含む側面図である。
【図7】同泡沫分離装置の上部を示す断面図である。
【図8】同気液分離槽の断面図である。
【図9】同気液分離槽の水位調整手段を示し、水位調整部材を上昇させた状態の断面図である。
【図10】同水位調整手段の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図10は、本発明の一実施の形態を示す。
【0015】
図1は本実施の形態にかかる泡沫分離装置を備えた水浄化処理システムの概略図である。同図において、本実施の形態にかかる水浄化処理システム1は、水棲生物としてサンマ、ヒラメ等の活魚が飼育されている水槽2と、この水槽2から被処理水である原水9が原水供給管7を流れて所定量貯留される補助水槽3と、この補助水槽3から循環ポンプ6により圧送される原水9を泡沫分離する泡沫分離装置10と、この泡沫分離装置10で処理された処理水66を濾過する濾過装置5とを備えている。
【0016】
なお、水槽2と補助水槽3とは、略同等の高さに設定されており、泡沫分離装置10および濾過装置5は、水槽2および補助水槽3よりも高位置に設置されている。しかも、泡沫分離装置10は濾過装置5よりも高位置に設置されている。
【0017】
泡沫分離装置10は、図2〜図6に示すように、曝気処理により、原水9を処理水66と汚泡水67とに分離するものであり、補助水槽3からの原水9が循環ポンプ6により圧送される泡沫分離槽20と、泡沫分離槽20の後段(処理水66の下流側)に配置された気液分離槽30と、泡沫分離槽20および気液分離槽30が立設された架台40とを備えている。
【0018】
泡沫分離槽20は、円筒状の分離槽本体21と、この分離槽本体21の上面開口を閉塞する天壁22と、分離槽本体21内に内蔵された円筒状の初期反応筒23とから構成されている。
【0019】
初期反応筒23の下面には、ベンチュリ管(図示省略)を備えた空気自吸式のインジェクタ(微細気泡発生装置)26が、配管24を介して接続されている。なお、微細気泡発生装置26と循環ポンプ6とが原水供給管8で接続されている。25は、ベンチュリ管の絞り部の直後に連結させたエア吸込み管である。
【0020】
また、図2に示すように、初期反応筒23の下部には、初期反応筒23内と分離槽本体21内とを連通する小径の排水開口23aが形成されている。
【0021】
分離槽本体21の上面は、気液分離槽30側に向けて低くなるように傾斜して設けられている。また、分離槽本体21における気液分離槽30と反対側(分離槽本体21の上部で且つ直径方向の一方)には、分離槽本体21の内外に連通する出口開口27aを有する排出口部27が設けられ、この排出口部27には泡沫排出管28が接続されている。
【0022】
天壁22は、円板状の天壁本体22aの周縁に下向きの環状リブ22bを設けた簡単な構造のものである。このように、天壁22は、平板材を天壁本体22aと環状リブ22bとに加工形成したものであり、曲面に加工形成する必要がないため、加工が容易で製造コストが安価となる。この天壁22は、分離槽本体21の傾斜する上面に固定されているため、天壁22も分離槽本体21の上面と同様に傾斜角度αを有して傾斜した状態となっている。すなわち、天壁本体22a下面には、平面で且つ傾斜角度αを有した傾斜面22bが形成されている。
【0023】
そして、図7に示すように、天壁22の低い側の高さ位置(天壁22下面と分離槽本体21上面と接触する最も低い位置P1)は、排出口部27の出口開口27aよりも低く設定されている。すなわち、排出口部27の出口開口27aは、天壁22下面と分離槽本体21上面とが接触する最も高い側に位置し、しかも、天壁22の低い側の高さ位置P1と、高い側の高さ位置P2との間に設けられている。
【0024】
気液分離槽30は、円筒状の外筒31と、この外筒31内に内蔵された内筒32とから二重筒状に構成されたものである。このように、気液分離槽30を二重筒状に構成することにより、コンパクトにすることができる。
【0025】
内筒32の高さは、外筒31の高さよりも所定距離だけ短く設定されており、この内筒32と外筒31との上下間には、図7に示すように、所定距離の間隔Lが設けられている。また、図2に示すように、内筒32の下部には、内筒32内と外筒31内とを連通する小径の排水開口32aが形成されている。
【0026】
気液分離槽30は、図8〜図10に示すように、その上部に水位調整手段50を備えている。水位調整手段50は、上下面が開口し且つ内筒32に上方から昇降自在で且つ回転自在に嵌合された筒状の水位調整部材51と、この水位調整部材51を昇降させる昇降手段52とを備えている。
【0027】
水位調整部材51の上面には、板状の取付部材53が溶接等により固定されている。また、水位調整部材51の上部周壁には、上面が開口するU字状のスリット54が、水位調整部材51の直径方向に2箇所形成されている。なお、このスリット54が処理水流入口となっている。
【0028】
昇降手段52は、前記取付部材53に下部が挿通される連結部材としてのボルト55と、このボルト55の上部に固定された回転部材としての蝶ナット56とから構成されている。そして、ボルト55の下部は、取付部材53上下面に位置するナット57、57により、取付部材53に締結固定されている。ボルト55の下部を取付部材53に締結固定する際に、スリット54を利用してナット57、57を工具により容易に回動操作することができる。
【0029】
外筒31の上部には、天壁61を有する筒状の排水ソケット60が、外筒31の上方から嵌合されている。そして、この天壁61の中央部には、めねじ部61bが形成されており、このめねじ部61bに前記ボルト55が挿通されるとともに螺合されている。しかも、ボルト55は天壁61の上面側に位置するロックナット63に螺合されている。なお、めねじ部61bは、天壁61を加工して形成してもよいが、天壁61にボルト55が挿通される孔を設けるとともに、天壁61にボルト55が螺合するナットを固定してもよい。
【0030】
ロックナット63を緩めて、蝶ナット56を回動させることにより、ボルト55は、蝶ナット56とともに回動し、天壁61に対して上下方向に進退(昇降)するようになっている。この結果、水位調整部材51もボルト55と一体的に回転し、水位調整部材51を内筒32に対して昇降調整することが可能である。
【0031】
気液分離槽30の外筒31下部と、泡沫分離槽20の分離槽本体21下部とは、連通路41を介して連通されている。従って、泡沫分離槽20で泡沫分離された処理水66は、連通路41を介して気液分離槽30に流入するようになっている。
【0032】
また、内筒32の下面には、分離水回収管44が接続され、この分離水回収管44を介して処理水66が、濾過装置5に供給されるようになっている。また、分離水回収管44から閉止可能な配水管43が分岐されている。
【0033】
外筒31には、図1および図6に示すように、分離回収用接続口部33が設けられ、この分離回収用接続口部33には、外筒31内の処理水66を補助水槽3に戻す分離回収バイパス管35が接続されている。
【0034】
濾過装置5は、公知の濾過手段が採用され、例えば、多孔質のサンゴ砂等を充填した濾過槽を備えている。この濾過装置5で濾過された処理水66は、循環ライン45を介して水槽2に戻されるようになっている。
【0035】
次に、以上の構成からなる本実施形態の水浄化処理システム1を使用する場合について説明する。
【0036】
先ず、循環ポンプ6が起動すると、循環ポンプ6は、原水供給管8を介して補助水槽3内の原水9を泡沫分離槽20に圧送する。すなわち、循環ポンプ6で圧送された原水9は、ベンチュリ管を備えた微細気泡発生装置26を通過するとき、多量の気泡が混入した気液混合水に生成される。そして、気液混合水が初期反応筒23の底部から供給される。
【0037】
初期反応筒23から浮上する気液混合水は泡沫65となり、泡沫65は分離槽本体21内を浮遊する懸濁物を吸着しながら上昇する(図2参照)。この上昇した泡沫65は天壁22下面と接触し、この分離槽本体21の上部の泡沫65は、下方から順次上昇する泡沫65に下方から押される。天壁22下面は傾斜面22bであるため、この天壁22下面が案内面の機能を発揮して、泡沫65を排出方向である排出口部27側に強制的に案内する。
【0038】
さらに、泡沫65は、天壁22下面に沿って移動し、出口開口27aから吸着した懸濁物と共に泡沫分離槽20外に排出され、懸濁物を含む汚泡水67となって除去される。
【0039】
一方、汚泡水67と分離された処理水66は、分離槽本体21下部の連通路41を通って分離槽本体21から気液分離槽30の外筒31に流入する。
【0040】
外筒31下部に入った処理水66は、内外筒31、32間を上方に流れ、水位調整手段50に達する。水位調整手段50に達した処理水66は、その水位を調整している水位調整部材51のスリット54を通して内筒32内に入る。仮に、処理水66内に空気が気泡となって混在していた場合であっても、内外筒31、32間を上方に流れた処理水66が、スリット54を通過する際に、下方に流れを変更するため、このときに、空気が処理水66から分離して排出されることとなる。なお、空気の排出に際しては、天壁61に形成されたエア抜き部61aを介して適宜行うことができる。
【0041】
なお、水位調整手段50により、分離槽本体21内の処理水66の水位が予め調整されており、汚泡水67の分離槽本体21からの排除と、処理水66の外筒31への流入とをバランスよく調整するようにしている。具体的には、汚泡水67の過度な流出を減少させるには、水位調整部材51を下げて分離槽本体21内の水位を下げてやればよい。このように水位を下げることにより、汚泡水67とともに処理水66が泡沫排出管28から不用意に流出するのを防止できる。
【0042】
さらに、処理水66は、内筒32内を下方に流れた後に、濾過装置5へ分離水回収管44を介して送液され、濾過装置5で濾過処理されて図示省略の紫外線殺菌装置を通過した後に、循環ライン45を経由して水槽2へ戻される。
【0043】
また、気液分離槽30内の処理水66の一部は、分離回収バイパス管35を介して補助水槽3に戻される。このように、気液分離槽30から出る処理水66の一部を補助水槽3に戻して、前記のように再度、泡沫分離装置10で泡沫分離処理するため、処理回数を増加させてその処理をより確実なものとしている。なお、気液分離槽30から濾過装置5へ供給する処理水66と、補助水槽3に戻す処理水66とは、略同等量に設定するのが好ましい。
【0044】
また、泡沫分離装置10、濾過装置5、水槽2および補助水槽3は、前記のように順次低くして高低差を設けているため、泡沫分離装置10の水位、濾過装置5の水位、水槽2の水位および補助水槽3の水位は順次下がっている。従って、泡沫分離装置10を出た処理水66を、重力で自然落下させることにより、それぞれに流入させることができる。この結果、水槽2内の原水9を循環させて処理するに際して、単体の循環ポンプ6でも十分に可能であり、循環ポンプ6の個数も少なくできる。
【0045】
泡沫分離装置10内の処理水66を排水する際には、配水管43を開放する。この配水管43の開放により、初期反応筒23内の処理水66は、初期反応筒23下部の排水開口23aを介して分離槽本体21内に流れる。分離槽本体21内の処理水66は、接続管41を介して気液分離槽30の外筒31に入る。また、内筒32内の処理水66は、内筒32の排出開口32aを介して外筒31に入る。そして、最終的に、外筒31内の処理水66は、配水管43を介して排出される。
【0046】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。天壁22の傾斜角度αは、泡沫65の量により適宜設定可能である。天壁22は、平板材からなる天壁本体22aのみで構成することも可能である。
【0047】
また、水位調整手段50は、モータやシリンダ機構により、水位調整部材51を昇降させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 水浄化処理システム
2 水槽
3 補助水槽
5 濾過装置
6 循環ポンプ
9 原水
10 泡沫分離装置
20 泡沫分離槽
21 分離槽本体
22 天壁
22b 傾斜面
25 エア吸込み管
26 インジェクタ(微細気泡発生装置)
27 排出口部
28 泡沫排出管
30 気液分離槽
50 水位調整手段
65 泡沫
66 処理水
67 汚泡水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の原水中に含まれる懸濁物を分離するための泡沫分離装置であって、
気泡を含む気液混合水が供給される泡沫分離槽を備え、該泡沫分離槽内の懸濁物を吸着して浮上した泡沫を排出する排出口部が、前記泡沫分離槽の上部で且つ直径方向の一方に設けられ、前記泡沫分離槽の天壁下面は、泡沫が天壁下面に沿って排出方向に向けて流れるように、泡沫分離槽の他方から一方に向けて上昇する傾斜面が形成されていることを特徴とする泡沫分離装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の泡沫分離装置において、前記天壁は平板材から構成されてなることを特徴とする泡沫分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217672(P2011−217672A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90265(P2010−90265)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】