説明

泡沫形成用エアゾール製品

【課題】使用環境によらずに高い安全性で適用することができると共に、優れた保存安定性を有し、良好な泡沫を容易に形成することのできる泡沫形成用エアゾール製品を提供すること。
【解決手段】泡沫形成用エアゾール製品は、噴射剤用充填空間と、2つの原液用充填空間とを有し、2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備え、噴射剤用充填空間には、圧縮ガスよりなる噴射剤が充填され、第1の原液用充填空間内には、有機酸0.5〜15.0質量%を含有する第1の原液組成物が充填され、第2の原液用充填空間内には、炭酸水素塩物質0.5〜15.0質量%を含有する第2の原液組成物が充填されており、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とが混合されることにより泡沫が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡沫形成用エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール製品の或る種のものとしては、有効成分などを含有する原液と、噴射剤とよりなるエアゾール組成物が、噴射バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器に充填されなる構成を有しており、吐出物中に含有された噴射剤が気化することによって泡沫が形成され、これにより泡沫状の吐出物が得られるものが知られている。
このような泡沫形成用エアゾール製品において、吐出物が良好な泡沫形成性あるいは泡沫安定性などを得るために、噴射剤として液化石油ガスあるいはジメチルエーテルなどの液化ガスが用いられており、この液化ガスが可燃性を有するものであることから、使用環境によってはその取扱いに危険を伴う場合がある、またはエアゾール容器を廃棄する際において爆発事故が発生するおそれがあるなどの問題がある。また、液化石油ガスおよびジメチルエーテルが他の化石燃料に比べて多くはないものの浮遊粒子状物質あるいは温室効果ガスを発生させるものであり環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0003】
一方、泡沫を形成する組成物としては、例えばクエン酸などの有機酸を含有する有機酸含有組成物と、例えば炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩物質を含有する炭酸水素塩物質含有組成物とよりなり、これらを混合することによって発生する炭酸ガスによって泡沫を形成するものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
然るに、このような組成物においては、有機酸含有組成物と炭酸水素塩物質含有組成物とを別個に、例えばチューブ型容器あるいはカップ型容器など蓋によって密閉状態を形成する容器に充填しておく必要があることから、その適用に際しては、それぞれの容器から組成物を取り出して混合するという煩雑な作業を行わなくてはならず、しかもそれぞれの容器からの取り出し量を調整することができないことに起因して適切な混合比で混合を行うことができないおそれがあり、また、適用毎に容器内の組成物が空気に曝されることとなるため、長期間にわたって十分な保存安定性が得られないおそれがある、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−297007号公報
【特許文献2】特開2000−297008号公報
【特許文献3】特開2009−091365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、使用環境によらずに高い安全性で適用することができると共に、優れた保存安定性を有し、良好な泡沫を容易に形成することのできる泡沫形成用エアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、噴射剤用充填空間と、各々独立した2つの原液用充填空間とを有し、当該2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備え、
当該二重構造容器における噴射剤用充填空間には、圧縮ガスよりなる噴射剤が充填され、
当該二重構造容器における第1の原液用充填空間内には、有機酸と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを含有し、有機酸の含有割合が0.5〜15.0質量%である第1の原液組成物が充填され、
当該二重構造容器における第2の原液用充填空間内には、炭酸水素塩物質と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを含有し、炭酸水素塩物質の含有割合が0.5〜15.0質量%である第2の原液組成物が充填されており、
前記第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、前記第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とが混合されることにより泡沫が形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、前記第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、前記第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物との混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8であることが好ましい。
【0008】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、前記第1の原液組成物の温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであり、前記第2の原液組成物の温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであり、且つ、第1の原液組成物の粘度および第2の原液組成物の粘度のそれぞれが、当該第1の原液組成物の粘度と第2の原液組成物の粘度との平均値に対して±20%以内の範囲内にあることが好ましい。
【0009】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、前記吐出機構が、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とを混合するための混合用空間を有することが好ましい。
【0010】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、人体用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備え、この2つの原液用充填空間の各々に特定の割合で有機酸が含有されてなる第1の原液組成物と、特定の割合で炭酸水素塩物質が含有されてなる第2の原液組成物とが充填されてなるものであることから、二重構造容器における2つの原液用充填空間の各々から第1の原液組成物と第2の原液組成物とを同時に適切な量で吐出させることができるため、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを常に一定の量比で混合することができ、その結果、有機酸と炭酸水素塩物質とが反応することによって発生する二酸化炭素ガスによって良好な泡沫を容易に形成することができる。しかも、第1の原液組成物および第2の原液組成物の噴射剤として不燃性の圧縮ガスが用いられていることから、使用環境によらずに高い安全性が得られ、また、適用に際して第1の原液組成物および第2の原液組成物の各々が容器外の空気に曝されることがないことから、長期間にわたる保存安定性を得ることができる。
従って、本発明の泡沫形成用エアゾール製品によれば、使用環境によらずに高い安全性で適用することができると共に、優れた保存安定性を有し、良好な泡沫を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成の一例を示す説明図である。
【図2】図1におけるA−A’断面を示す断面図である。
【図3】本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成の更に他の例を示す説明図である。
【図4】本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成のまた更に他の例を示す説明図である。
【図5】図4におけるA−A’断面を示す断面図である。
【図6】本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成のまた更に他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、噴射剤用充填空間と、各々独立した2つの原液用充填空間とを有し、当該2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備えており、当該二重構造容器における噴射剤用充填空間内に圧縮ガスよりなる噴射剤が充填されており、それと共に、第1の原液用充填空間内に有機酸を含有する第1の原液組成物が充填され、第2の原液用充填空間内に炭酸水素塩物質を含有する第2の原液組成物が充填されてなるものである。
この本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々から同時に吐出される第1の原液組成物および第2の原液組成物が混合されることにより、有機酸と炭酸水素塩物質とが反応して二酸化炭素ガスが発生し、その二酸化炭素ガスによって泡沫が形成される。
【0014】
(第1の原液組成物)
第1の原液組成物は、有機酸と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを必須成分として含有し、有機酸の含有割合が0.5〜15.0質量%であるものである。
【0015】
第1の原液組成物の必須成分である有機酸としては、例えばクエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0016】
有機酸としては、水に対する溶解性および二酸化炭素発生能の観点から、クエン酸を用いることが好ましい。
【0017】
有機酸の含有割合は、第1の原液組成物100質量%において0.5〜15.0質量%であること必要とされるが、好ましくは2.0〜10.0質量%であり、更に好ましくは4.0〜9.0質量%である。
【0018】
有機酸の含有割合が過大である場合には、第1の原液組成物中において十分に溶解されなくなる、あるいは、第1の原液組成物の粘度が小さくなり、それに伴って適用箇所において液だれが生じるおそれがある。また、製造コストが高くなる。一方、有機酸の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなる。
【0019】
第1の原液組成物の必須成分である水としては、精製水あるいはイオン交換水が用いられる。
【0020】
水の含有割合は、第1の原液組成物100質量%において70.0〜99.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは75.0〜95.0質量%であり、特に好ましくは80.0〜90.0質量%である。
水の含有割合が過大である場合には、他の成分を十分な割合で含有させることができなくなるおそれがある。一方、水の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなくなるおそれがあり、また製造コストが高くなるおそれもある。
【0021】
第1の原液組成物の必須成分である界面活性剤としては、有機酸からの影響を受けにくいことから非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0022】
非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、泡沫形成性の観点から、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、レシチン誘導体などのHLB値が10〜18であるものが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0023】
第1の原液組成物においては、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤の他、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を用いることもできる。
【0024】
界面活性剤の含有割合は、第1の原液組成物100質量%において0.1〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜8.0質量%であり、特に好ましくは1.0〜4.0質量%である。
界面活性剤の含有割合が過大である場合には、製造コストが高くなり、特に人体用に適用する場合には、ベタツキ感などが生じることから良好な使用感が得られなくなるおそれがある。一方、界面活性剤の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがあり、また、第1の原液組成物に十分な乳化安定性が得られなくなるおそれがある。
【0025】
第1の原液組成物の必須成分である高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、ステアリルアルコール、コレステロール、フィトステロール、ラノリンアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコールなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0026】
第1の原液組成物においては、高級アルコールとして、セチルアルコール、セトステアリルアルコールを用いることが好ましい。
【0027】
高級アルコールの含有割合は、第1の原液組成物100質量%において0.1〜10.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜5.0質量%であり、特に好ましくは2.0〜4.0質量%である。
高級アルコールの含有割合が過大である場合には、第1の原液組成物の粘度が大きくなり、それに伴って十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがある。一方、高級アルコールの含有割合が過小である場合には、第1の原液組成物の粘度が小さくなり、それに伴って適用箇所において液だれが生じるおそれがある。また、第1の原液組成物に十分な乳化安定性が得られなくなる、あるいは特に人体用に適用する場合には、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0028】
第1の原液組成物には、必須成分である、有機酸、水、界面活性剤および高級アルコールの他、必要に応じて任意成分が含有されていてもよい。
任意成分としては、例えばエステル類、油性原料、多価アルコール類、ロウ類、ポリマー、その他、基材調整剤(具体的には、例えば保湿剤、増粘剤、色素など)、薬剤、香料などが挙げられ、これらのうちではエステル類が好ましい。
【0029】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品に係る第1の原液組成物において、エステル類は、例えば第1の原液組成物の粘度の調整剤、また特に人体用に適用する場合には、保湿剤あるいはエモリエント剤等の使用感改良剤などとして用いられる。
【0030】
エステル類としては、例えばリノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、乳酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、コハク酸ジオクチル、トリカプリル酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、パルミチン酸セチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0031】
エステル類の含有割合は、泡沫形成用エアゾール製品の使用用途、第1の原液組成物を構成する他の構成成分の種類および含有割合などによっても異なるが、第1の原液組成物100質量%において0.1〜2.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜1.0質量%であり、特に好ましくは0.3〜0.7質量%である。
エステル類の含有割合が過大である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなる、また、特に人体用に適用する場合には、ベタツキ感などが生じることから良好な使用感が得られなくなるなどの問題が生じるおそれがある。一方、エステル類の含有割合が過小である場合には、泡沫形成用エアゾール製品においてエステル類に係る効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0032】
以上のような必須成分および任意成分により構成される第1の原液組成物は、温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは10〜10000mPa・sであり、特に好ましくは1000〜5000mPa・sである。
【0033】
第1の原液組成物の粘度が過大である場合には、第2の原液組成物との混合が十分に行われず、十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがある。一方、第1の原液組成物の粘度が過小である場合には、適用箇所において液だれが生じるおそれがある。
【0034】
また、この第1の原液組成物の粘度は、後述する第2の原液組成物の粘度との関係から、第1の原液組成物の粘度と第2の原液組成物の粘度との平均値(以下、「粘度平均値」ともいう。)に対して±20%以内の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは±15%の範囲内である。
【0035】
この第1の原液組成物の粘度が粘度平均値に対して上記の範囲外にある、すなわち粘度平均値に対して±20%を超える場合には、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量との差が大きくなることに起因して、第1の原液組成物と第2の原液組成物とが混合されることによって形成される泡沫において十分な起泡性が得られなくなるおそれがある。
【0036】
(第2の原液組成物)
第2の原液組成物は、炭酸水素塩物質と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを必須成分として含有し、炭酸水素塩物質の含有割合が0.5〜15.0質量%であるものである。
【0037】
第2の原液組成物の必須成分である炭酸水素塩物質としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0038】
炭酸水素塩物質としては、高い安全性および汎用性を有し、化粧品、医薬品、家庭用品および食品などの種々の分野で広く用いられており、また安価であるとの観点から、炭酸水素ナトリウムを用いることが好ましい。
【0039】
炭酸水素塩物質の含有割合は、第2の原液組成物100質量%において0.5〜15.0質量%であること必要とされるが、好ましくは3.0〜12.0質量%であり、更に好ましくは5.0〜11.0質量%である。
【0040】
炭酸水素塩物質の含有割合が過大である場合には、第2の原液組成物中おいて十分に溶解されなくなるおそれがある。また、製造コストが高くなる。一方、炭酸水素塩物質の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなる。
【0041】
第2の原液組成物の必須成分である水としては、第1の原液組成物を構成する水の具体例として例示したものが挙げられる。
【0042】
水の含有割合は、第2の原液組成物100質量%において70.0〜99.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは75.0〜95.0質量%であり、特に好ましくは80.0〜90.0質量%である。
水の含有割合が過大である場合には、第2の原液組成物に他の成分を十分な割合で含有させることができなくなるおそれがある。一方、水の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなくなるおそれがあり、また製造コストが高くなるおそれもある。
【0043】
第2の原液組成物の必須成分である界面活性剤としては、炭酸水素塩物質からの影響を受けにくいことから非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0044】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、第1の原液組成物を構成する非イオン性界面活性剤の具体例として例示したものが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0045】
第2の原液組成物においては、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤の他、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を用いることもできる。
【0046】
界面活性剤の含有割合は、第2の原液組成物100質量%において0.1〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜8.0質量%であり、特に好ましくは1.0〜4.0質量%である。
界面活性剤の含有割合が過大である場合には、製造コストが高くなり、特に人体用に適用する場合には、ベタツキ感などが生じることから良好な使用感が得られなくなるおそれがある。一方、界面活性剤の含有割合が過小である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがあり、また、第2の原液組成物に十分な乳化安定性が得られなくなるおそれがある。
【0047】
第2の原液組成物の必須成分である高級アルコールとしては、第1の原液組成物を構成する高級アルコールの具体例として例示したものが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
【0048】
第2の原液組成物においては、高級アルコールとして、セチルアルコール、セトステアリルアルコールを用いることが好ましい。
ここに、第2の原液組成物を構成する高級アルコールと、第1の原液組成物を構成する高級アルコールとは、例えば泡沫形成用エアゾール製品の使用用途などに応じ、あるいは製造容易性および製造コストの観点から、異なる種類のものであっても、同一種類のものであってもよい。
【0049】
高級アルコールの含有割合は、第2の原液組成物100質量%において0.1〜10.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜5.0質量%であり、特に好ましくは2.0〜4.0質量%である。
高級アルコールの含有割合が過大である場合には、第2の原液組成物の粘度が大きくなり、それに伴って十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがある。一方、高級アルコールの含有割合が過小である場合には、第2の原液組成物の粘度が小さくなり、それに伴って適用箇所において液だれが生じるおそれがある。また、第2の原液組成物に十分な乳化安定性が得られなくなる、あるいは特に人体用に適用する場合には、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0050】
第2の原液組成物には、必須成分である、炭酸水素塩物質と、水と、界面活性剤と、高級アルコールの他、必要に応じて任意成分が含有されていてもよく、任意成分としては、例えば第1の組成物の原液を構成する任意成分として例示したものが挙げられ(段落0028〜段落0030参照)、それらのうちではエステル類が好ましい。
【0051】
エステル類の含有割合は、泡沫形成用エアゾール製品の使用用途、第2の原液組成物を構成する他の構成成分の種類および含有割合などによっても異なるが、第2の原液組成物100質量%において0.1〜2.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜1.0質量%であり、特に好ましくは0.3〜0.7質量%である。
エステル類の含有割合が過大である場合には、十分な泡沫形成性が得られなくなる、また、特に人体用に適用する場合には、ベタツキ感などが生じることから良好な使用感が得られなくなるなどの問題が生じるおそれがある。一方、エステル類の含有割合が過小である場合には、泡沫形成用エアゾール製品においてエステル類に係る効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0052】
以上のような必須成分および任意成分により構成される第2の原液組成物は、温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは10〜10000mPa・sであり、特に好ましくは1000〜5000mPa・sである。
【0053】
第2の原液組成物の粘度が過大である場合には、第1の原液組成物との混合が十分に行われず、十分な泡沫形成性が得られなくなるおそれがある。一方、第2の原液組成物の粘度が過小である場合には、適用箇所において液だれが生じるおそれがある。
【0054】
また、この第2の原液組成物の粘度は、第1の原液組成物の粘度との関係から、第1の原液組成物の粘度と第2の原液組成物の粘度との平均値(粘度平均値)に対して±20%以内の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは±15%の範囲内である。
【0055】
この第2の原液組成物の粘度が粘度平均値に対して上記の範囲外にある、すなわち粘度平均値に対して±20%を超える場合には、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量との差が大きくなることに起因して、第1の原液組成物と第2の原液組成物とが混合されることによって形成される泡沫において十分な起泡性が得られなくなるおそれがある。
【0056】
(噴射剤)
噴射剤としては、圧縮ガスが用いられる。
圧縮ガスとしては、例えば亜酸化窒素ガス、窒素ガス、炭酸ガスまたはこれらの混合ガスなどが挙げられる。
第1の組成物の噴射剤としては、窒素ガスが好ましい。
【0057】
また、噴射剤は、二重構造容器に充填されたときの圧力が25℃で0.3〜0.8MPaとなるように封入されていることが好ましい。
噴射剤の充填圧力(製品内圧)が過大である場合および過小である場合には、いずれの場合においても良好な噴射状態を得ることができなくなるおそれがある。
【0058】
(二重構造容器)
本発明の泡沫形成用エアゾール製品を構成する二重構造容器は、噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間と共に、第1の原液組成物を充填するための第1の原液用充填空間と、第2の原液組成物を充填するための第2の原液用充填空間とを有しており、これらの第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々から、第1の原液組成物および第2の原液組成物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる構成のものである。
本発明に係る二重構造容器の具体例としては、例えば図1〜図6によって示される下記の4つの容器が挙げられる。
【0059】
図1は、本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成の一例を示す説明図であり、図2は、図1におけるA−A’断面を示す断面図である。
この二重構造容器10は、エアゾール用バルブ12が設けられている金属製の耐圧容器11を備え、この耐圧容器11の内部に、第1の原液組成物を充填するための第1の原液用充填空間を区画する、例えばアルミラミネートフィルムよりなる第1の内袋15Aと、例えばアルミラミネートフィルムよりなる第2の原液組成物を充填するための第2の原液用充填空間を区画する第2の内袋15Bが設けられていると共に、耐圧容器11、第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々の間の間隙によって噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間が形成されている。また、エアゾール用バルブ12には、第1のハウジング13Aおよび第2のハウジング13B内の各々において上下方向に移動可能に配置された、内部にステム通路を有する第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが設けられており、これらの第1のステム14Aおよび第2のステム14Bの上端には、共通のアクチュエータ21が設けられている。
図の例において、16Aは、エアゾール用バルブ12を構成する第1のハウジング13Aの下端において第1のステム14Aのステム通路に連通し、第1の内袋15A内を耐圧容器11の底部に向かって伸びるディップチューブであり、また16Bは、当該エアゾールバルブを構成する第2のハウジング13Bの下端において第2のステム14Bのステム通路に連通し、第1の内袋15B内を耐圧容器11の底部に向かって伸びるディップチューブである。
図1においては、耐圧容器11およびアクチュエータ21の内部に位置する構成要素を破線にて示す。
【0060】
そして、共通のアクチュエータ21には、第1のステム14Aのステム通路に連通する第1のアクチュエータ通路22Aと、第2のステム14Bのステム通路に連通する第2のアクチュエータ通路22Bと、これらの第1のアクチュエータ通路22Aおよび第2のアクチュエータ通路22Bと一端において連通し、他端において吐出口24を形成する混合用空間23が設けられている。
このように、第1の原液用充填空間を形成する第1の内袋15Aに係る第1のステム14Aと、第2の原液用充填空間を形成する第2の内袋15Bに係る第1のステム14Bとに共通のアクチュエータ21を設けることにより、第1の内袋15A内に充填される第1の原液組成物と、第2の内袋15B内に充填される第2の原液組成物とを、それぞれ第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bから同時に吐出させるための吐出機構が形成されている。
【0061】
このような構成の二重構造容器10は、耐圧容器11内において、第1の内袋15A内に第1の原液組成物が充填され、また第2の内袋15B内に第2の原液組成物が充填されると共に、当該耐圧容器11、第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々の間の間隙よりなる噴射剤用充填空間に噴射剤が充填されることにより、耐圧容器11内が噴射剤によって常に加圧された状態とされ、そのため、アクチュエータ21を作動(押下操作)することにより、噴射剤の圧力によって第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bが収縮することに伴って当該第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々から第1の原液組成物および第2の原液組成物が同時に吐出され、当該アクチュエータ21の吐出口24から、第1の原液組成物と第2の原液組成物との混合物が吐出されることとなる。
【0062】
具体的には、第1の原液組成物、第2の原液組成物および噴射剤が充填された二重構造容器10においては、アクチュエータ21が押下操作されない非動作時には、第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが上方に押し上げられて当該第1のステム14Aおよび第2のステム14Bのステム通路が耐圧容器11の内部と遮断された状態とされる。一方、アクチュエータ21が押下操作された動作時には、第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが押し下げられて当該第1のステム14Aおよび第2のステム14Bのステム通路が同時に耐圧容器11の内部と連通された状態とされ、これにより、耐圧容器11内における、第1の内袋15A内の第1の原液組成物および第2の内袋15B内の第2の原液組成物は、各々、第1のディップチューブ16Aおよび第2のディップチューブ16Bにより形成される液体用流路を流通して同時に吐出され、このようにして同時に吐出された第1の原液組成物と第2の原液組成物とは、各々、エアゾール用バルブ12における第1のステム14Aおよび第2のステム14Bに係るステム通路、アクチュエータ21における第1のアクチュエータ通路22Aおよび第2のアクチュエータ通路22Bを介して、混合用空間23に至り、この混合用空間23において混合されて泡沫が形成され、吐出口24から泡沫状の吐出物が吐出される。
【0063】
図3は、本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成の更に他の例を示す説明図である。具体的には、二重構造容器に係るアクチュエータの構成を示す説明用断面図である。
この二重構造容器は、図1および図2に係る二重構造容器10において、アクチュエータ21に代えて、2つの吐出口(具体的には第1の吐出口34Aおよび第2の吐出口34B)を有し、これらの2つの吐出口の各々から第1の原液組成および第2の原液組成物が別々に吐出される構成のアクチュエータ31が設けられてなること以外は当該図1および図2に係る二重構造容器10と同様の構成を有するものである。
すなわち、図3に係る二重構造容器は、アクチュエータ31と共に、図1および図2に係る二重構造容器10を構成する、エアゾール用バルブ12が設けられている耐圧容器11と同様の構成を有する耐圧容器を備えてなるものである。
【0064】
アクチュエータ31は、第1のステムのステム通路と一端において連通し、他端において第1の吐出口34Aを形成する第1のアクチュエータ通路と、第2のステムのステム通路と一端において連通し、他端において第2の吐出口34Bを形成する第2のアクチュエータ通路とが設けられてなる構成を有するものである。
なお、アクチュエータ31は、図1および図2に係る二重構造容器10におけるアクチュエータ21と同様に、第1のステムと、第2のステムとに共通のアクチュエータであり、当該第1のステムおよび第2のステムの上端に設けられている。
【0065】
このような構成の二重構造容器においては、第1の原液組成物、第2の原液組成物および噴射剤が充填された状態においてアクチュエータ31が押下操作された動作時には、耐圧容器内における、第1の内袋内の第1の原液組成物および第2の内袋内の第2の原液組成物が同時に吐出され、第1の原液組成物は、エアゾール用バルブにおける第1のステムに係るステム通路、アクチュエータ31における第1のアクチュエータ通路32Aを介して第1の吐出口34Aから噴射され、一方、第2の原液組成物は、エアゾール用バルブにおける第2のステムに係るステム通路、アクチュエータ31における第2のアクチュエータ通路32Bを介して第2の吐出口34Bから吐出されることとなる。そして、第1の吐出口34Aおよび第2の吐出口34Bの各々から吐出された第1の原液組成物および第2の原液組成物は、これらが適用箇所などにおいて、例えば手指などによって混合されることにより泡沫を形成する。
【0066】
図4は、本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成のまた更に他の例を示す説明図であり、図5は、図4におけるA−A’断面を示す断面図である。
この二重構造容器40は、第1のエアゾール用バルブ42Aが設けられている金属製の第1の耐圧容器41Aと、第2のエアゾール用バルブ42Bが設けられている金属製の第2の耐圧容器41Bとが、容器固定部材48によって一体的に設けられてなる構成を有するものである。
二重構造容器40を構成する第1の耐圧容器41Aは、その内部に、第1の原液組成物を充填するための第1の原液用充填空間を区画する、例えばポリエチレンシートよりなる第1の内袋45Aが設けられている共に、第1の耐圧容器41Aと第1の内袋45Aとの間隙によって噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間が形成されている。また、第1のエアゾール用バルブ42Aには、第1のハウジング43A内において上下方向に移動可能に配置された、内部にステム通路を有する第1のステム44Aが設けられている。
一方、二重構造容器40を構成する第2の耐圧容器41Bは、第1の耐圧容器41Aと同様の構成を有しており、具体的には、その内部に、第2の原液組成物を充填するための第2の原液用充填空間を区画する、例えばポリエチレンシートよりなる第2の内袋45Bが設けられている共に、第2の耐圧容器41Bと第2の内袋45Bとの間隙によって噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間が形成されている。また、第2のエアゾール用バルブ42Bには、第2のハウジング43B内において上下方向に移動可能に配置された、内部にステム通路を有する第2のステム44Bが設けられている。
この図の例において、容器固定部材48は、楕円柱状の外観形状を有し、その一面(図4における容器固定部材48の下面)には、第1のエアゾール用バルブ42Aを構成する第1のハウジング43Aに適合した径を有する凹部と、第2のエアゾール用バルブ42Bを構成する第2のハウジング43Bに適合した径を有する凹部とが形成されており、これらの凹部の各々に第1のハウジング43Aおよび第2のハウジング43Bが嵌合され、これにより、当該凹部の中央部分に形成されている第1のステム44Aおよび第2のステム44Bに適合した径を有する貫通孔から第1のステム44Aおよび第2のステム44Bが突出した状態で第1の耐圧容器41Aおよび第2の耐圧容器41Bを固定する構成のものである。
図4においては、第1の耐圧容器41A、第2の耐圧容器41Bおよびアクチュエータ51の内部に位置する構成要素を破線にて示す。
【0067】
そして、第1のエアゾール用バルブ42Aにおける第1のステム44Aおよび第2のエアゾール用バルブ42Bにおける第2のステム44Bの上端には、共通のアクチュエータ51が設けられている。
この共通のアクチュエータ51には、第1のステム44Aのステム通路に連通する第1のアクチュエータ通路52Aと、第2のステム44Bのステム通路に連通する第2のアクチュエータ通路52Bと、これらの第1のアクチュエータ通路52Aおよび第2のアクチュエータ通路52Bと一端において連通し、他端において吐出口54を形成する混合用空間53が設けられている。
このように、第1のステム44Aと、第2のステム44Bとに共通のアクチュエータを設けることにより、第1の内袋45A内に充填される第1の原液組成物と、第2の内袋45B内に充填される第2の原液組成物とを、それぞれ第1の内袋45Aおよび第2の内袋45Bから同時に吐出させるための吐出機構が形成されている。
【0068】
このような構成の二重構造容器40においては、第1の耐圧容器41Aにおいて、第1の内袋45A内に第1の原液組成物が充填されると共に、当該第1の耐圧容器41Aと、第1の内袋45Aとの間隙よりなる噴射剤用充填空間に噴射剤が充填されることにより、第1の耐圧容器41A内が噴射剤によって常に加圧された状態とされ、また、第2の耐圧容器41B内において、第2の内袋45B内に第2の原液組成物が充填されると共に、当該第2の耐圧容器41Bと第2の内袋45Bとの間隙よりなる噴射剤用充填空間に噴射剤が充填されることにより、第2の耐圧容器41B内が噴射剤によって常に加圧された状態とされていることから、アクチュエータ51を作動(押下操作)することにより、噴射剤の圧力によって第1の内袋45Aおよび第2の内袋45Bが収縮することに伴って当該第1の内袋45Aおよび第2の内袋45Bの各々から第1の原液組成物および第2の原液組成物が同時に吐出され、当該アクチュエータ51の吐出口54から、第1の原液組成物と第2の原液組成物との混合物が吐出されることとなる。
【0069】
具体的には、第1の原液組成物、第2の原液組成物および噴射剤が充填された二重構造容器40においては、アクチュエータ51が押下操作されない非動作時には、第1のステム44Aおよび第2のステム44Bが上方に押し上げられて当該第1のステム44Aおよび第2のステム44Bのステム通路が耐圧容器11の内部と遮断された状態とされる。一方、アクチュエータ51が押下操作された動作時には、第1のステム44Aおよび第2のステム44Bが押し下げられ、これにより、当該第1のステム44Aおよび第2のステム44Bの各々のステム通路が同時に第1の耐圧容器41Aおよび第2の耐圧容器41Bの内部と連通された状態とされる。その結果、第1の耐圧容器41A内における第1の内袋45A内の第1の原液組成物、および第2の耐圧容器41B内における第2の内袋45B内の第2の原液組成物は同時に吐出され、このようにして同時に吐出された第1の原液組成物と第2の原液組成物とは、各々、第1のステム44Aおよび第2のステム44Bに係るステム通路、アクチュエータ51における第1のアクチュエータ通路52Aおよび第2のアクチュエータ通路52Bを介して混合用空間53に至り、この混合用空間53において混合されて泡沫が形成され、吐出口54から泡沫状の吐出物が吐出される。
【0070】
図6は、本発明の泡沫形成用エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成のまた更に他の例を示す説明図である。具体的には、二重構造容器に係るアクチュエータの構成を示す説明用断面図である。
この二重構造容器は、図4および図5に係る二重構造容器40において、アクチュエータ51に代えて、2つの吐出口(具体的には第1の吐出口64Aおよび第2の吐出口64B)を有し、これらの2つの吐出口の各々から第1の原液組成および第2の原液組成物が別々に吐出される構成のアクチュエータ61が設けられてなること以外は図4および図5に係る二重構造容器40と同様の構成を有するものである。
すなわち、図6に係る二重構造容器は、アクチュエータ61と共に、図5および図6に係る二重構造容器40を構成する、第1のエアゾール用バルブ42Aが設けられている第1の耐圧容器41A、第2のエアゾール用バルブ42Bが設けられている第2の耐圧容器41Bおよび容器固定部材48よりなる容器本体と同様の構成を有する容器本体を備えてなるものである。
【0071】
アクチュエータ61は、第1のステムのステム通路と一端において連通し、他端において第1の吐出口64Aを形成する第1のアクチュエータ通路と、第2のステムのステム通路と一端において連通し、他端において第2の吐出口64Bを形成する第2のアクチュエータ通路とが設けられてなる構成を有するものである。
なお、アクチュエータ61は、図4および図5に係る二重構造容器40におけるアクチュエータ51と同様に、第1のステムと、第2のステムとに共通のアクチュエータであり、当該第1のステムおよび第2のステムの上端に設けられている。
【0072】
このような構成の二重構造容器においては、第1の原液組成物、第2の原液組成物および噴射剤が充填された状態においてアクチュエータ61が押下操作された動作時には、第1の耐圧容器内における第1の内袋内の第1の原液組成物、および第2の耐圧容器内における第2の内袋内の第2の原液組成物が同時に吐出され、第1の原液組成物は、第1のエアゾール用バルブにおける第1のステムに係るステム通路、アクチュエータ61における第1のアクチュエータ通路62Aを介して第1の吐出口64Aから噴射され、一方、第2の原液組成物は、第2のエアゾール用バルブにおける第2のステムに係るステム通路、アクチュエータ61における第2のアクチュエータ通路62Bを介して第2の吐出口64Bから吐出されることとなる。そして、第1の吐出口64Aおよび第2の吐出口64Bの各々から噴射された第1の原液組成物と第2の原液組成物とは、これらが適用箇所などにおいて、例えば手指などによって混合されることにより泡沫を形成する。
【0073】
以上のような構成を有する二重構造容器においては、吐出機構により、第1の原液用充填空間に充填されている第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間に充填されている第2の原液組成物とを同時に吐出させることができると共に、第1の原液用充填空間からの第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間からの第2の原液組成物の吐出量とを、例えば第1の原液組成物における有機酸の濃度および第2の原液組成物における炭酸水素塩物質の濃度との関係などに応じて適切な量比となるように調整することができる。
【0074】
本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物との混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8であることが好ましい。
すなわち、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量および第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量のそれぞれが、当該第1の原液組成物の吐出量と第2の原液組成物の吐出量との平均値に対して±20%以内の範囲内にあることが好ましい。
【0075】
混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が上記の範囲外である場合には、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量との差が大きくなるため、第1の原液組成物と第2の原液組成物とが混合されることによって形成される泡沫において十分な起泡性が得られなくなるおそれがある。
【0076】
以上のような本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、二重構造器内における第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々に第1の原液組成物および第2の原液組成物を充填すると共に、噴射剤用充填空間に噴射剤を充填することによって製造される。
【0077】
そして、この本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器が備えられており、この2つの原液用充填空間の各々に特定の割合で有機酸が含有されてなる第1の原液組成物と、特定の割合で炭酸水素塩物質が含有されてなる第2の原液組成物とが充填されていることから、二重構造容器における2つの原液用充填空間の各々から第1の原液組成物と第2の原液組成物と同時に適切な量で吐出させることができるため、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを常に一定の量比で混合することができ、一方の原液組成物の吐出量が他方の原液組成物の吐出量に比して過剰となることがない。その結果、単に吐出機構を作動させる、具体的には例えばアクチュエータを1回押下操作(1プッシュ)することのみによって第1の原液組成物および第2の原液組成物を吐出させることにより、常に、有機酸と炭酸水素塩物質とが反応することによって発生する二酸化炭素ガスによって良好な泡沫を容易に形成することができる。
しかも、第1の原液組成物および第2の原液組成物の噴射剤として不燃性の圧縮ガスが用いられていることから、使用環境によらずに高い安全性が得られ、また、適用に際して第1の原液組成物および第2の原液組成物の各々が容器外の空気に曝されることがないことから、長期間にわたる保存安定性を得ることができる。
従って、本発明の泡沫形成用エアゾール製品によれば、使用環境によらずに高い安全性で適用することができると共に、優れた保存安定性を有し、良好な泡沫を容易に形成することができる。
【0078】
また、本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、二重構造容器を構成する吐出機構が、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とを混合するための混合用空間を有する場合、具体的には、例えば図2および図5に示されるようにアクチュエータに混合用空間が形成されてなるものであることにより、吐出物として泡沫状のものを得ることができる。従って、適用箇所などにおいて、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを混合する必要がないことから、容易に適用することができる。
なお、本発明の泡沫形成用エアゾール製品においては、二重構造容器として、例えば図3および図6に示されているように、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とが別個の吐出口から吐出される構成のアクチュエータを備えてなる吐出機構を有するものを用いた場合には、適用箇所などにおいて第1の原液組成物と第2の原液組成物とを混合して泡沫を形成する必要があるものの、泡沫の形成過程あるいは泡沫の状態変化を楽しむことができる。
【0079】
このような本発明の泡沫形成用エアゾール製品は、例えば人体用あるいはその他の様々な用途に用いることができるが、泡沫が二酸化炭素ガスによって形成されるものであることから、二酸化炭素ガスによる血行促進効果などが得られるため、特に人体用として好適に用いることができる。
具体的には、ヘアスタイリング剤、ヘアワックス剤、ヘアトリートメント剤、染毛剤、シャンプー剤、コンディショナー剤、育毛剤、マッサージング剤、洗顔剤、クレンジング剤、シェービング剤、化粧下地剤、皮膚保護剤、保湿剤、日焼け止め剤、除毛剤、ハンドソープ剤、ボディーソープ剤などとして用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0081】
〔実施例1〜実施例11および比較例1〕
(第1の原液組成物の調製)
先ず、クリーム基材「エマコールHD2146」(三栄化学(株)製)を温度範囲80〜85℃の条件で加温することによって油性溶液(油相)を得、一方、精製水と界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル「BL−9EX」(日光ケミカルズ(株)製)とを混合し、温度範囲80〜85℃の条件で加温することによって水性溶液(水相)を得た。
次いで、得られた油性溶液(油相)を、プロペラ撹拌機を用い、撹拌速度(回転速度)600rpmの条件で撹拌しながら、当該油性溶液中に、得られた水溶性溶液(水相)をゆっくりと添加することによって乳化液を調製した。その後、得られた乳化液を、その液温が30℃以下となるまで冷却した後、有機酸を添加し、撹拌速度600rpmの条件で撹拌することにより、表1および表2に示す組成の第1の原液組成物を調製した。
【0082】
(第2の原液組成物の調製)
先ず、クリーム基材「エマコールHD2146」(三栄化学(株)製)を温度範囲80〜85℃の条件で加温することによって油性溶液(油相)を得、一方、精製水と界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル「BL−9EX」(日光ケミカルズ(株)製)とを混合し、温度範囲80〜85℃の条件で加温することによって水性溶液(水相)を得た。
次いで、得られた油性溶液(油相)を、プロペラ撹拌機を用い、撹拌速度(回転速度)600rpmの条件で撹拌しながら、当該油性溶液中に、得られた水溶性溶液(水相)をゆっくりと添加することによって乳化液を調製した。その後、得られた乳化液を、その液温が30℃以下となるまで冷却した後、炭酸水素塩物質を添加し、撹拌速度600rpmの条件で撹拌することにより、表1および表2に示す組成の第2の原液組成物を調製した。
【0083】
(エアゾール製品の作製)
図1および図2に示す構成の二重構造容器を用意し、当該二重構造容器の第1の原液用充填空間内(第1の内袋内)に第1の原液組成物を充填し、第2の原液用充填空間内(第2の内袋内)に第2の原液組成物を充填すると共に、噴射剤用充填空間内に噴射剤として窒素ガスを、当該二重構造容器内における製品内圧が25℃で0.7MPaとなるように充填することにより、エアゾール製品を作製した。
【0084】
〔比較例2〕
実施例1において、二重構造容器の第1の原液用充填空間内(第1の内袋内)に、第1の原液組成物に代えて、当該実施例1に係る第1の原液組成物の調製過程において得られる乳化液を充填し、また、第2の原液用充填空間内(第2の内袋内)に、第2の原液組成物に代えて、当該実施例1に係る第2の原液組成物の調製過程において得られる乳化液を充填したこと以外は当該実施例1と同様の手法によって比較用のエアゾール製品を作製した。
【0085】
<評価試験>
上記の実施例1〜11、比較例1および比較例2より作製されたエアゾール製品の各々に関して、下記の手法によって吐出物における起泡性を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0086】
(吐出物における起泡性)
容量50mlのビーカー内にエアゾール製品の内容物5gを噴射し、そのビーカー内の吐出物をガラス棒をゆっくりと10回転させることによって撹拌した後、ガラスビーカー内の吐出物の体積を測定し、体積が40ml以上である場合を起泡性が極めて良好であるとして「◎」、体積が20ml以上であって40ml未満である場合を起泡性が良好であるとして「○」、体積が20ml未満である場合を起泡性が不十分であるとして「×」と評価した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1および表2において、評価の「吐出物における起泡性」に係る測定値の欄の「60ml以上」とは、ビーカーから泡沫があふれ出た場合を示す。
また、同表において、「第1の組成物」とは、第1の原液組成物を示し、「第2の組成物」とは、「第2の原液組成物」を示し、また「クエン酸」は、小堺製薬(株)製のものであり、「乳酸」は、関東化学(株)製のものであり、「フマル酸」は、(株)日本触媒製のものであり、「炭酸水素ナトリウム」は、小堺製薬(株)製のものであり、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」は、「BL−9EX」(日光ケミカルズ(株)製)であり、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(1)」は、「セテス−6」であり、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2)」は、「セテス−30」であり、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(3)」は、「セテス−40」であり、「グリセリン」は、花王(株)製のものであり、「1,3−ブチレングリコール」は、協和発酵ケミカル(株)製のものである。
【0090】
表1の結果から、実施例1〜実施例11に係るエアゾール製品によれば、良好な泡沫を容易に形成することができることが確認された。
また、実施例1〜実施例11に係るエアゾール製品は、第1の原液組成物および第2の原液組成物が温度20℃における粘度が10〜15000mP・sの範囲内であると共に、第1の原液組成物の粘度と第2の原液組成物の粘度との平均値に対して±20%の範囲内にあることから、得られる吐出物における、第1の原液組成物と第2の原液組成物との混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8の範囲内となり、高い泡沫形成性(吐出物における起泡性)が得られるものであることが確認された。
一方、比較例1に係るエアゾール製品は、第1の原液組成物における有機酸の含有割合および第2の原液組成物における炭酸水素塩物質の含有割合がいずれも過小であることから、二酸化炭酸ガスの発生量が少ないために十分な泡沫形成性(吐出物における起泡性)が得られないことから、良好な泡沫が得られなかった。
また、比較例2に係るエアゾール製品は、2種類の原液組成物がそれぞれ有機酸および炭酸水素塩物質を含有するものでなく、混合することによって二酸化炭素ガスが発生するものではないことから、泡沫が形成されなかった。
【0091】
また、実施例1〜実施例11に係るエアゾール製品を、温度45℃の環境条件下において、1ヶ月間にわたって長期間保存した後においても良好な泡沫が形成されることが確認された。
【符号の説明】
【0092】
10 二重構造容器
11 耐圧容器
12 エアゾール用バルブ
13A 第1のハウジング
13B 第2のハウジング
14A 第1のステム
14B 第2のステム
15A 第1の内袋
15B 第2の内袋
16A 第1のディップチューブ
16B 第2のディップチューブ
21 アクチュエータ
22A 第1のアクチュエータ通路
22B 第2のアクチュエータ通路
23 混合用空間
24 吐出口
31 アクチュエータ
32A 第1のアクチュエータ通路
32B 第2のアクチュエータ通路
34A 第1の吐出口
34B 第2の吐出口
40 二重構造容器
41A 第1の耐圧容器
41B 第2の耐圧容器
42A 第1のエアゾール用バルブ
42B 第2のエアゾール用バルブ
43A 第1のハウジング
43B 第2のハウジング
44A 第1のステム
44B 第2のステム
45A 第1の内袋
45B 第2の内袋
48 容器固定部材
51 アクチュエータ
52A 第1のアクチュエータ通路
52B 第2のアクチュエータ通路
53 混合用空間
54 吐出口
61 アクチュエータ
62A 第1のアクチュエータ通路
62B 第2のアクチュエータ通路
64A 第1の吐出口
64B 第2の吐出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射剤用充填空間と、各々独立した2つの原液用充填空間とを有し、当該2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備え、
当該二重構造容器における噴射剤用充填空間には、圧縮ガスよりなる噴射剤が充填され、
当該二重構造容器における第1の原液用充填空間内には、有機酸と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを含有し、有機酸の含有割合が0.5〜15.0質量%である第1の原液組成物が充填され、
当該二重構造容器における第2の原液用充填空間内には、炭酸水素塩物質と、水と、界面活性剤と、高級アルコールとを含有し、炭酸水素塩物質の含有割合が0.5〜15.0質量%である第2の原液組成物が充填されており、
前記第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、前記第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とが混合されることにより泡沫が形成されることを特徴とする泡沫形成用エアゾール製品。
【請求項2】
前記第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、前記第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物との混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8であることを特徴とする請求項1に記載の泡沫形成用エアゾール製品。
【請求項3】
前記第1の原液組成物の温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであり、前記第2の原液組成物の温度20℃における粘度が10〜15000mPa・sであり、且つ、第1の原液組成物の粘度および第2の原液組成物の粘度のそれぞれが、当該第1の原液組成物の粘度と第2の原液組成物の粘度との平均値に対して±20%以内の範囲内にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の泡沫形成用エアゾール製品。
【請求項4】
前記吐出機構が、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物とを混合するための混合用空間を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の泡沫形成用エアゾール製品。
【請求項5】
人体用であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の泡沫形成用エアゾール製品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229318(P2012−229318A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97898(P2011−97898)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】