説明

泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物

【課題】使用しやすい泡状の殺菌・消毒・清浄剤であって、泡立ちが充分である、殺菌・消毒・清浄剤に適した組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるノニオン界面活性剤、殺菌成分および水を必須成分として含有する泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物である。
好適な態様としては、上記のノニオン界面活性剤は、HLBは10以上であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される。また、殺菌成分は、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩およびヒノキチオールの錯体から選択される。本発明の組成物は、低級アルコールを含有しないし、また、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤のいずれもを含有しない。本発明の組成物は、ポンプフォームタイプ用として特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物に関し、洗い流す必要がなく、しかも拭き取る必要もない、泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒノキチオール(4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−シクロヘプタ−2,4,6−トリエン−1−オン)は、ヒノキ油、ヒバ油等の天然物からの抽出物として、または化学合成により得られる物質である。このヒノキチオールは、抗菌・殺菌・防腐効果に優れ、しかも人体等の皮膚に対する刺激性が低いという性質を有することが知られている。そして、このようなヒノキチオールまたはその金属塩を水溶液の形態で、種々の菌を殺菌・消毒することが既に提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記の殺菌・消毒剤は水ベースであるため、適用した後はそのままでよく、人体に適用する場合でも洗い流す必要はない。しかし、容器から一旦手に取り出して塗布する時や直接噴霧する時には、水溶液が垂れるといった問題や、アルコールベースとは異なり速乾性がなく、適用部位がびしょびしょに濡れるので、特に、人体に適用した場合、手や適用部位をタオル等で拭き取ったり、乾燥させたりすることが必要となるという問題がある。従って、殺菌・消毒剤をこのような問題がないように使いやすい形態とすることが望ましい。
【0004】
その1つとして、例えば、泡状とすることが考えられる。泡状であれば、容器から一旦手に取り出した時には垂れることがなく、また、使用量が水溶液よりも少量となるので、手や適用部位がびしょびしょに濡れるということもなく、拭き取りや乾燥等を行う必要がない。
【0005】
ところで、皮膚清拭剤では泡状のものが既に知られているが(特許文献4参照)、この皮膚清拭剤には殺菌剤は配合されていない。一般に、泡の形成は界面活性剤の配合により行われる。この皮膚清拭剤では、ショ糖脂肪酸エステル等の糖エステル系界面活性剤を含有する組成物を泡状としているが、糖エステル系界面活性剤を使用しているため、泡立ちが不充分であるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−342236号公報
【特許文献2】特開2001−131061号公報
【特許文献3】特開2002−238524号公報
【特許文献4】特開2002−363062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決しようとするものであり、その目的は、使用しやすい泡状の殺菌・消毒・清浄剤であって、泡立ちが充分である、殺菌・消毒・清浄剤に適した組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、特定の界面活性剤を用いて泡状とすることにより、泡立ちが良好で極め細かい泡を形成でき、しかも、手で擦りつけると比較的速く泡が消え、また、使用後にはべたつき感がない、殺菌・消毒・清浄剤とすることができることを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(a)ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるノニオン界面活性剤、
(b)殺菌成分、および
(c)水
を必須成分として含有する泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物である。
【0009】
本発明の好適な態様として、ノニオン界面活性剤はそのHLBが10以上であるのがよい。また、ノニオン界面活性剤はポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるのがよく、中でも、ポリグリセリンモノラウリン酸エステルおよびポリグリセリンモノミリスチン酸エステルから選択されるのがよい。また、ノニオン界面活性剤の含有量は、0.01〜5.0重量%であるのがよい。
【0010】
また、本発明の別の好適な態様として、殺菌成分はヒノキチオール、ヒノキチオールの塩およびヒノキチオールの錯体から選択されるのがよく、中でも、ヒノキチオールおよびヒノキチオールのアルカリ金属塩から選択されるのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の別の好適な態様として、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、低級アルコールを含有しないのがよく、また、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤のいずれも含有しないのがよい。
【0012】
さらにまた、本発明の別の好適な態様として、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、ポンプフォームタイプ用の組成物であるのがよい。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、泡状であるため、水溶液タイプにおける問題がない。即ち、容器から一旦手に取り出した時には垂れることがなく、また、使用量が水溶液よりも少量となるので、手や適用部位がびしょびしょに濡れるということもなく、拭き取りや乾燥等を行う必要がない。また、適用部位に泡が消えるまで手で擦りつけて使用するため、適用部位に均一に接触させることができ、また水溶液タイプよりも接触面積が大きくなる。さらに、泡により殺菌するので少量でも殺菌効果が期待できる。
(2)本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物では、ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1つのノニオン界面活性剤を使用する。このことにより、泡立ちが良好でしかも極め細かい泡を形成できる。また、手で擦ると比較的速く泡が消えるので、洗い流し、拭き取り等を必要としない。特に、殺菌成分としてヒノキチオールまたはその金属塩もしくは金属錯体等を使用する場合、これらは遅効性であるため、洗い流しや拭き取り等を必要としないことが特に有効となる。さらには、使用後にべたつき感がない。
泡状の製剤には、ポンプフォームタイプとエアゾールタイプがあり、エアゾールタイプは噴射剤の助けを借りて泡状とするが、ポンプフォームタイプでは、界面活性剤自体の起泡性が特に良好であること要求される。上記のノニオン界面活性剤の起泡性は極めて良好であるため、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物をポンプフォームタイプとした場合でも泡立ちは良好となる。
上記のノニオン界面活性剤としてHLBが10以上のものを使用すれば、水に対する溶解性が高くなるので、泡立ちはさらに良好となる。
(3)低級アルコールは皮膚刺激性があり肌が荒れやすい。また、アルコールを含有すると泡立ちが低下する傾向にある。本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物では、低級アルコールを含有しないので、このような問題はない。
(4)アニオン界面活性剤や両性界面活性剤は、起泡性が高すぎて手で擦ると泡が消え難く、そのため洗い流し、拭き取り等を必要とする。また、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤は、皮膚刺激性があるため洗い流し、拭き取り等を必要とする。本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤の何れもを含有しないので、このような問題はない。
(5)エアゾールタイプの場合には、噴射剤としてフロンガス、石油液化ガス、窒素ガス、炭酸ガス等を使用するので、環境面や安全面における問題がある。本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物を、噴射剤を必要としないノンエアゾールタイプである、ポンプフォームタイプとすれば、このような問題はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、(a)ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1つのノニオン界面活性剤、(b)殺菌成分、および(c)水を必須成分として含有する。
【0015】
<成分(a)>
本発明においては、ノニオン界面活性剤として、ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1つが使用される。これらのノニオン界面活性剤を配合することにより、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物では、泡立ちが良好でしかも極め細かい泡が形成され、手で擦ると比較的速く泡が消えるので、洗い流し、拭き取り等が必要ではなく、使用後にべたつくことがない、という効果がある。
【0016】
本発明で使用するポリアルキレングリコールエーテルとしては、例えば、下記一般式(I)の化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ、水素原子、炭素数10〜20のアルキル基または炭素数10〜20のアルケニル基を表す。但し、R1が水素原子の時、R2は水素原子ではない。R3は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。mは2〜50の整数を表す。)。
【0019】
上記一般式(I)において、R1およびR2における「炭素数10〜20のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。R1およびR2における「炭素数10〜20のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。また、R3における「炭素数1〜5のアルキル基」は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は1〜3である。mは10〜30が好ましい。
【0020】
上記一般式(I)のポリアルキレングリコールエーテルにおいては、モノエーテル体とジエーテル体があるが、本発明においては、親水性がより高い点から、モノエーテル体が好適である。また、ポリアルキレングリコールエーテルの中でも、ポリエチレングリコールエーテル(即ち、R3が水素原子)が好適に使用される。ポリエチレングリコールモノエーテルの好適な具体例としては、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノベヘニルエーテル等が挙げられ、中でも、起泡性が特に優れている点から、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノイソステアリルエーテルが好適に使用される。
【0021】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、下記一般式(II)の化合物が挙げられる。
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R4およびR5は、同一または相異なって、それぞれ、水素原子、炭素数10〜20のアルキルカルボニル基または炭素数10〜20のアルケニルカルボニル基を表す。但し、R4が水素原子の時、R5は水素原子ではない。nは2〜20の整数を表す。)。
【0024】
上記一般式(II)において、R4およびR5における「炭素数10〜20のアルキルカルボニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。R4およびR5における「炭素数10〜20のアルケニルカルボニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。nは4〜12が好ましい。
【0025】
上記一般式(II)のポリグリセリン脂肪酸エステルにおいては、モノエステル体とジエステル体があるが、本発明においては、親水性がより高い点から、モノエステル体が好適である。ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの好適な具体例としては、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリグリセリンモノパルミチン酸エステル、ポリグリセリンモノステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノイソステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノオレイン酸エステル等が挙げられ、中でも、起泡性が特に優れている点から、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリグリセリンモノオレイン酸エステルが好適に使用され、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルが特に好適に使用される。
【0026】
上記のノニオン界面活性剤においては、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物を手に適用する場合を考慮すると、食品添加物であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好適であり、中でも、起泡性および消泡性が特に優れ、かつ使用後にしっとり感を付与できることから、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステルが特に好適に使用され、中でも、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルが最も好適である。
【0027】
上記のノニオン界面活性剤は、そのHLBが10以上、特に10〜25であることが好ましい。HLBが10未満であると、水に対する溶解性が低くなるので、泡立ちが低下するおそれがある。
【0028】
上記のノニオン界面活性剤は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物においては、上記のノニオン界面活性剤の含有量は0.01〜5.0重量%、特に0.1〜1.0重量%が好ましい。この含有量が0.01重量%未満であると、本発明の組成物は泡状にならない。逆に、5.0重量%を超えると、泡が濃密となり、消泡性が悪化するおそれがある。
【0030】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物においては、本発明の効果を阻害しない限り、その他のノニオン界面活性剤、例えば、レシチン、レシチン誘導体、アクリル系の高分子乳化剤等を併用してもよい。
【0031】
<成分(b)>
本発明で使用する殺菌成分としては、水に溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩、ヒノキチオールの錯体が挙げられる。ここで、上記の塩や錯体としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;その他、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、スズ、コバルト、チタン、バナジウム等の金属;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;モルホリン、ピペラジン等のヘテロ環アミン;アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等と、ヒノキチオールとの塩または錯体が挙げられる。
【0032】
また、錯体として、アルミニウム化合物とヒノキチオールとの錯化合物であってもよい。ここで上記のアルミニウム化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、カリウムミョーバン、アンモニウムミョーバン、ナトリウムミョーバン等の無機アルミニウム化合物が挙げられる。また、以下の有機アルミニウム化合物も使用することができる。例えば、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム等の一塩基性または二塩基性カルボン酸のアルミニウム塩;ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等の脂肪酸のアルミニウム塩;グルタミン酸アルミニウム、アスパラギン酸アルミニウム、システィン酸アルミニウム、サルコシン酸アルミニウム、β−アラニン酸アルミニウム等のアミノ酸のアルミニウム塩;その他、アシルグルタミン酸アルミニウム、アシルメチルタウリンアルミニウム、アシル−β−メチルアラニンアルミニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アルミニウム、スルホコハク酸アルミニウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルミニウム、リン酸エステルアルミニウム、アルキル硫酸アルミニウム、あるいはアルギン酸、コンドロイチン硫酸、フミン酸、ヒアルロン酸、グリチルリチン酸、ポリアクリル酸、デキストラン硫酸等の有機系高分子化合物のアルミニウム置換体等が挙げられる。
【0033】
なお、ヒノキチオールとアルミニウム化合物との錯化合物は、WO97/002025号に開示されているように、使用するアルミニウム化合物の種類やpHにより、ヒノキチオールのアルミニウム塩、ヒノキチオールとアルミニウム化合物との錯化合物またはこれらが共存した状態となる。その製造方法としては、WO97/002025号に開示されているように、例えば、常温下でヒノキチオールまたはその塩をエチルアルコール、水等との混合溶液とし、この混合溶液をアルミニウム化合物の水溶液または流動パラフィン等の非水溶液、あるいはこれらの混合溶液中に注加、混合することにより行われる。
【0034】
その他の殺菌成分としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、クロルキレノール、トリクロロカバニリド、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピペリジニウム、塩化ベンゼントニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、感光素201号等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、殺菌成分として、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩、ヒノキチオールの錯体が好適であり、中でも、ヒノキチオール、ヒノキチオールのアルカリ金属塩(特に、ナトリウム塩、カリウム塩)が特に好適である。
【0036】
上記の殺菌成分は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。これらの殺菌成分は、殺菌対象となる菌に応じて適宜選択される。
【0037】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物においては、上記の殺菌成分の含有量は、使用する殺菌成分の種類にもよるが、0.0001〜1.0重量%、特に0.01〜0.5重量%が好ましい。この含有量が0.0001重量%未満であると、殺菌効果が期待できず、逆に、1.0重量%を超えると、皮膚に対する安全性に問題を生じるおそれがある。
【0038】
<水(c)>
本発明で使用する水は、蒸留水であることが好ましい。本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物においては、水の含有量は、上記のノニオン界面活性剤や殺菌成分が上記の範囲となるように適宜調整される。
【0039】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物においては、本発明の効果を阻害しない限り、他の成分を配合してもよく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジグリセリン誘導体(例えば、ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、砂糖、マルチトール、トレハロース、グルコシルトレハロース等の保湿剤、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、キチン、キトサン、アロエエキス、オウレンエキス等の薬効成分、オウゴンエキス、酵母エキス、ユーカリエキス、クジンエキス、ローズマリーエキス、チョウジエキス、アスパラサネリアスエキス、クマザサエキス、イラクサエキス、緑茶エキス、紅茶エキス、ウーロン茶エキス、甘茶エキス、柿エキス等の消臭エキス等が配合可能である。
【0040】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等の低級(炭素数4以下の)アルコールを含有しない。このことにより、肌が荒れることはなく、また、アルコールによる泡立ちの阻害がない。
【0041】
また、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤カチオン界面活性剤を含有しない。このことにより、手で擦ると泡が消え、また皮膚刺激性もないので、洗い流し、拭き取り等を必要としない。
【0042】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、上記のノニオン界面活性剤、殺菌成分および水、必要に応じて他の成分を加えて、これらを混合することにより調製される。
【0043】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、使用する殺菌成分の種類にもよるが、種々の菌に対して殺菌・消毒・清浄効果を発揮し、例えば、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩、ヒノキチオールの錯体の場合、緑膿菌(P.aeruginosa)、メチシリン耐性黄色ブトウ球菌(MRSA)、黄色ブトウ球菌(MSSA)、大腸菌(E.coli)、病原性大腸菌O157、サルモネラ菌、バンコマイシン耐性腸球菌、ボツリヌス毒素やカンピロバクター等の嫌気性菌、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼントニウムの場合、黄色ブドウ球菌、アクネ菌等の菌に対して効果を発揮する。
【0044】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、泡状であるため、容器から一旦手に取り出した時には垂れることがなく、また、使用量が水溶液よりも少量となるので、手や適用部位がびしょびしょに濡れるということもなく、拭き取りや乾燥等を行う必要がない。また、適用部位に泡が消えるまで手で擦りつけて使用するため、適用部位に均一に接触させることができ、また水溶液タイプよりも接触面積が大きくなる。さらに、泡により殺菌するので少量でも殺菌効果が期待できる。
【0045】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、噴射剤の助けを借りて泡状とするエアゾールタイプと、噴射剤を使用としないノンエアゾールタイプであるポンプフォームタイプのいずれも適用可能である。ポンプフォームタイプでは界面活性剤自体の起泡性により泡状となるが、本発明で使用する上記のノニオン界面活性剤の起泡性は極めて良好であるため、ポンプフォームタイプとすることも可能となる。このポンプフォームタイプでは、噴射剤を必要としないので、エアゾールタイプのような環境面や安全面における問題が生じない。
【0046】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1〜3および比較例1〜8
以下に示す処方にて、実施例1〜3および比較例1〜8の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物を調製した。
【0048】
重量%
表1に示すノニオン界面活性剤 0.5
ヒノキチオールナトリウム塩水溶液 12.5
蒸留水 87.0
合計 100
(ヒノキチオール濃度250ppm)
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜3および比較例1〜8で得られた組成物をポンプフォーマー(大和製罐製)に充填し、泡状殺菌・消毒・清浄剤を調製した。これらの泡状殺菌・消毒・清浄剤について、以下の方法により評価試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0051】
<評価方法>
1.泡立ち
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを以下の4段階の基準により目視による評価を行った。
◎:泡の形成が多く、かつ泡がクリーミーである。
○:泡の形成が多く、かつ泡がややクリーミーである。
△:泡の形成が少なく、かつ泡が粗い。
×:泡が立たない。
【0052】
2.消泡性
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを手で擦りあわせた。この時の消泡性について、以下の4段階の基準により評価を行った。
◎:手で擦ると15秒以内で消える。
○:手で擦ると30秒以内15秒未満で消える。
△:手で擦ると1分以内30秒で消える。
×:1分より長く手で擦っても消えない。
【0053】
3.使用感
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを手で擦りあわせた。この時の使用後のベタツキ感について、以下の3段階の基準により評価を行った。
○:使用後ベタツキ感がない。
△:使用後ベタツキ感が少しある。
×:使用後ベタツキ感がある。
【0054】
表1から明らかなように、実施例1〜3で調製された泡状殺菌・消毒・清浄剤は、泡立ち、消泡性および使用感において、何れも優れたものであることがわかる。
【0055】
抗菌効果試験
<各被験試料>
実施例1のフォーム:実施例1の組成物をポンプフォーマー(大和製罐製)に充填した
もの
コントロールフォーム:実施例1でヒノキチオールナトリウム塩水溶液の代わりに蒸留
水を配合した組成物(ノニオン界面活性剤0.5重量%)をポ
ンプフォーマー(大和製罐製)に充填したもの
エタノールジェル:フマキラー社製ハンド用清潔ジェル
(エタノール含量70% アロエエキス配合)
70%エタノール。
【0056】
<使用菌株>
大腸菌 Escherichia coli FMK1254
病原性大腸菌 Escherichia coli O157H7堺株
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus ATCC25923。
【0057】
<寒天培地>
MacConkey Agar(Difco):
大腸菌E.coli FMK1254および
病原性大腸菌E.coli O157H7堺株に使用
Nutrient Agar(Difco):
黄色ブドウ球菌S.aureus ATCC25923に使用。
【0058】
<実験操作>
1)各菌株をTSBにて37℃で1晩培養した。菌液を生理食塩水で希釈し、約104CFU/mlの菌液を調製した。
2)ポリシャーレに各被験試料をそれぞれ4.5gずつ加え(実施例1のフォームとコントロールフォームは、泡状として加えた)、上記1)の菌液を0.5mlずつ各シャーレに接種して十分混合した、各被験試料につき2セットずつ作製した。
3)各試験液について、菌液の接種直後、並びに37℃で1時間および2時間保温した後に菌数を測定した。保温は孵化器中でシャーレのふたを少し浮かせた状態で行った。菌数の測定は、菌液0.1mlを2枚の寒天培地にコンラージした後、それぞれ37℃で24時間培養してコロニー数を計測し、平均値を算出した。
4)上記2)で作製した2セット目の試料液については、菌液の接種後に37℃で2時間保温し、再び菌液を0.5ml接種して十分に混合した。その後、上記3)と同様の方法により、菌液の再接種直後、並びに37℃で1時間および2時間保温した後に菌数を測定した。
【0059】
これらの抗菌効果試験の結果を表2〜4に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
なお、表2〜4中の「B」は菌液と各被験試料との混合液における計算上の菌数を示し、「*」は再接種した時点を示す。
【0064】
表2〜4から明らかなように、実施例1のフォームについては、いずれの菌に対しても接種後2時間でまた再接種後2時間でも優れた抗菌効果が認められた。これに対して、コントロールフォーム(ヒノキチオール配合なし)では、いずれの菌に対しても抗菌効果があまり認められなかった。このことから、実施例1の優れた抗菌効果はヒノキチオールによるものであることがわかる。
【0065】
エタノールジェルについては、接種後2時間では、いずれの菌に対しても優れた抗菌効果を示したが、再接種後2時間では、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対しては優れた抗菌効果を示したものの、病原性大腸菌に対しては抗菌効果があまり認められなかった。70%エタノールについては、接種後2時間では、いずれの菌に対しても優れた抗菌効果を示したが、再接種後2時間では、黄色ブドウ球菌に対しては抗菌効果があまり認められず、大腸菌および病原性大腸菌に対しては抗菌効果が全く認められなかった。70%エタノールの再接種後2時間の抗菌効果がエタノールジェルよりも劣っている主な要因としては、エタノールが蒸発してしまったことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、洗い流し、拭き取り等を必要とせず、手で擦りつけるだけでよいため、どのような場所でも使用できる。特に、水がない場所や水が汚染されている場所では利用価値が非常に高い。また、携帯用としても便利なものである。また、水溶液タイプと比較して、適用部位に均一に接触でき、接触面積が大きく、少量でも殺菌効果が期待できる。従って、本発明の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物は、産業上、非常に有用なものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリアルキレングリコールエーテルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるノニオン界面活性剤、
(b)殺菌成分、および
(c)水
を必須成分として含有することを特徴とする、泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項2】
ノニオン界面活性剤のHLBが10以上であることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項3】
ノニオン界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項4】
ノニオン界面活性剤が、ポリグリセリンモノラウリン酸エステルおよびポリグリセリンモノミリスチン酸エステルから選択されることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項5】
ノニオン界面活性剤の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項6】
殺菌成分が、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩およびヒノキチオールの錯体から選択されることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項7】
殺菌成分が、ヒノキチオールおよびヒノキチオールのアルカリ金属塩から選択されることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項8】
低級アルコールを含有しないことを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項9】
アニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤のいずれもを含有しないことを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。
【請求項10】
ポンプフォームタイプ用の組成物であることを特徴とする、請求項1記載の泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物。


【公開番号】特開2006−1911(P2006−1911A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182690(P2004−182690)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【出願人】(501382063)株式会社ジェイシーエス (14)
【Fターム(参考)】