説明

泡状薬液散布装置

【課題】
泡状薬液散布装置において、薬液を効率的に均等な濃度で泡状化し散布する。
【解決手段】
多数の噴霧ノズル(14,…)を設けている散布ブーム(11)と、噴霧ノズル(14,…)を覆うように設けている発泡体製造手段(21)とを備えた泡状薬液散布装置において、この発泡体製造手段21を所定長さの筒体(21a)と、筒体(21a)の先端側に取り付けている多孔板(21b)とで構成し、筒体(21a)の長手方向を噴霧ノズル(14,…)の薬液噴霧方向に沿わせて覆うように配設する。そして、薬液タンク(9)の薬液を防除ポンプ(24)により散布ブーム(11)に圧送し、送風機(26)で風を筒体(21a)の基端側から先端側へ向けて送り、多孔板(21b)から噴風するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状薬液散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡剤散布用のブーム装置において、長尺の筒状ブーム内に、長手方向に沿うように薬液の供給管を取り付け、この供給管に多数の薬液噴霧ノズルを設け、これらのノズルに対応して筒状ブームに開口を形成し、この開口にそれぞれ多孔性部材を固着し、筒状ブームの一端とブロワとを屈曲自在のベローズを介して接続し、薬液タンクからポンプによって供給管に薬液を圧送し、ノズルから薬液を噴霧して多孔性部材に付着した薬液をブロワの送風によって気泡化するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−117151公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のものは、噴霧ノズルから噴出する薬液に対して直交する横方向から送風し薬液を泡化する構成である。従って、噴霧ノズルから噴出した薬液が送風により曲げられ対向する多孔板に付着しない薬液も多く、効率良く泡状化されないという不具合があった。また、送風上手側の噴霧ノズルから噴出した噴霧薬液は下手側に送られた下手側の多孔性部材に噴霧薬液が多く付着し、始端側の気泡に比較して下手側の薬液の濃度が高くなる傾向があり、均等な薬液濃度の気泡が発生しないという不具合が発生する。
【0005】
そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような不具合を解消するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、多数の噴霧ノズル(14,…)を設けている散布ブーム(11)と、前記噴霧ノズル(14,…)を覆うように設けている発泡体製造手段(21)とを備え、該発泡体製造手段21を所定長さの筒体(21a)と、筒体(21a)の先端側に取り付けている多孔板(21b)とで構成し、前記筒体(21a)の長手方向を前記噴霧ノズル(14,…)の薬液噴霧方向に沿わせて覆うように配設し、薬液タンク(9)の薬液を防除ポンプ(24)により前記散布ブーム(11)に圧送し、送風機(26)により前記筒体(21a)の始端側から終端側に向けて送風し前記多孔板(21b)から噴風するようにしたことを特徴とする泡状薬液散布装置とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記散布ブーム(11)を着脱自在の所定長さの送風管(20)で覆い、該送風管(20)に多数の前記発泡体製造手段(21,…)を取り付けたことを特徴とする泡状薬液散布装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、散布ブーム(11)の噴霧ノズル(14)には薬液噴出方向に沿わせて筒体(21a)を取り付け送風するので、噴霧薬液を効率的に均等な濃度で泡状化することができ、また、泡状化した薬液を噴霧方向に沿わせて放出するので、作物への付着精度を高め、薬液のドリフトの発生をなくし、作物の茎葉部への付着効果を高めることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、散布ブーム(11)を泡体製造手段(21,…)付きの送風管(20)により覆っているので、散布ブーム(11)に対して送風管(20)を着脱することにより、噴霧薬液の散布状態から泡状薬液の散布状態に容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】散布作業車の側面図。
【図2】散布作業車の前側部の側面図。
【図3】泡状散布装置の正面図。
【図4】泡状散布装置の正面図。
【図5】散布作業車の側面図。
【図6】散布作業車の側面図。
【図7】散布作業車の側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施例について説明する。まず、図1に基づき本発明を備えた薬液を散布する散布作業車1について説明する。
散布作業車1の走行車体2には略等径の左右前輪3,3、左右後輪4,4が設けられていて、走行車体2の前側部には防除散布装置Aを取り付けている。走行車体2の左右前輪3,3間上方にはエンジン(図示省略)を搭載し、エンジン回りをボンネット5で被覆している。左右前輪3,3と左右後輪4,4間上方には操縦席6を設け、操縦席6の前方にハンドル7を設けている。ハンドル7を左右に操舵すると、左右前輪3,3及び左右後輪4,4が同時に操舵される四輪操舵構成としている。また、操縦席6の回りを取り囲むように薬液タンク9を着脱自在に設け、操縦席6の下方に防除ポンプ24を設けている。走行車体2の前側部には昇降リンク16を介して防除散布装置Aを昇降自在に設け、防除散布装置Aをセンター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12により構成している。
【0012】
しかして、薬液タンク9の薬液を防除ポンプ24により防除散布装置Aに送り、センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12の噴霧ノズル14,…から薬液を散布する構成である。
【0013】
次に、図2〜図4に基づき防除散布装置Aの具体構成について説明する。
センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12には所定間隔毎に多数の噴霧ノズル14,…を設け、これらの散布ブーム11,12,12を所定長さの送風管20で覆い、送風管20には噴霧ノズル14,…を覆うように発泡体製造手段21を設けている。
【0014】
この発泡体製造手段21は、所定長さの筒体21aと、筒体21aの先端側に取り付けている多孔板21bとで構成している。送風管20の長手方向所定間隔毎に発泡体製造手段21の筒体21a,…を直交するように延出しいる。この筒体21a,…の長手方向上側部で噴霧ノズル14,…を被覆し、且つ、筒体21aの長手方向を噴霧ノズル14,…の薬液噴霧方向に沿わせて鉛直状に配設し、送風管20に送られた風を筒体21aの上側から下側の多孔板21bに向けて送風し、多孔板21bの孔部に付着した薬液を泡化し、下方に向けて散布するように構成している。
【0015】
従来技術では、噴霧ノズルから噴出する薬液に対して直交する横方向から送風し薬液を泡化する構成である。従って、噴霧ノズルから噴出した噴霧薬液が送風により曲げられて下手側に流れ、噴霧ノズルに対向する多孔板に付着しない薬液も多く、薬液が効率的に泡状化されない不具合があった。また、送風下手側の多孔板に付着する噴霧薬液が多くなり、下手側ほど泡状薬液の濃度が高くなる不具合も発生していた。
【0016】
しかし、前記構成によると、噴霧ノズル14,…の薬液噴出方向に沿わせて発泡体製造手段21の筒体21aを取り付け送風するので、薬液を効率的に泡状化し、薬液量を節減することができる。また、泡状化した薬液を直下に放出するので、作物への付着精度を高め、泡状薬液のドリフトの発生をなくし、作物の茎葉部への付着を良好にし防除効果を高めることができる。
【0017】
また、散布ブーム11,12,12には送風管20を着脱自在に取り付けているので、送風管20を取り外すことにより、散布ブーム11,12,12を通常の噴霧薬液散布状態に戻すことができ、薬液の泡状散布あるいは霧状散布を容易に選択することができる。
【0018】
また、前記発泡体製造手段21の筒体21aの下端部には、多孔板21bを着脱自在に取り付けているので、薬液の霧状散布と泡状散布とを容易に切り換えることができる。
また、図4に示すように、センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12を、発泡体製造手段21,…付きの所定長さの送風管20,…で覆い、噴霧ノズル14,…の噴霧薬液を囲むように発泡体製造手段21,…を配設することにより、薬液の泡状散布幅を広げ、作業能率を高めることができる。
【0019】
また、図5に示すように、散布作業車1の操縦席6の左右一側に操作パネル23を設け、操作パネル23には防除ポンプ24操作用の防除ポンプスイッチ25を設けている。
そして、防除ポンプスイッチ25をONすると、防除ポンプ25と送風機26が同時に駆動を開始し、OFFにすると、防除ポンプ25と送風機26が同時に停止するように構成している。このように構成することにより、操作を簡単にしながら薬液の泡状散布を円滑に行なうことができる。
【0020】
また、薬液タンク9の後方には送風機26を設け、ミッションケース27からPTO軸28を延出し、電磁クラッチ付き駆動プーリ31、ベルト伝動装置32を経由して送風機26に動力を伝達している。送風機26の送風口には送風パイプ45の後側始端側を連結し、送風パイプ45の終端側を前側に延出し、前記送風管20の長手方向中間部に連通している。また、送風パイプ45における操縦席6側方の中途部には風力調節板46を設けている。
【0021】
また、送風パイプ45の中途部には風力調節板46を設けているので、薬液散布量の大小に合わせて風量を調節すると、薬液量に応じて適正に泡状化し散布することができる。また、送風パイプ45の中途部の操縦席6側方部位に風力調節板46を設けたので、オペレータは散布作業をしながら容易に風力調節をすることができる。
【0022】
また、ミッションケース27から後方へ向けてPTO軸28を延出することにより、送風機26の伝動構成を簡単に構成することができる。
また、薬液タンク9の後方に送風機26を設けるにあたり、薬液タンク9の上側部を越えないように送風機26を構成しているので、オペレータの後方視界を良好にし、安全に散布作業をすることができる。
【0023】
また、図6に示すように、操作パネル23には防除ポンプ24駆動専用の防除ポンプスイッチ34と、送風機26駆動専用の送風機スイッチ35を別々に設けてもよい。このように構成すると、薬液の霧状散布時には送風機スイッチ35をOFFすることにより、エンジンの馬力を節減しながら薬液の霧状散布作業をすることができる。
【0024】
また、操作パネル23には防除ポンプ24駆動専用の防除ポンプスイッチ34と送風機26駆動専用の送風機スイッチ35を別々に設けるにあたり、機体前側に配設している防除ポンプ24用の防除ポンプスイッチ34を操作パネル23の前側部に、機体の後側に配設している送風機26用の送風機スイッチ35を後側部に設けるようにしてもよい。このように構成すると、操作部材の機体配置位置に合わせてスイッチ34、35を前後に配置することで、スイッチの操作ミスをなくすることができる。
【0025】
次に、図6に基づき散布作業車1の薬液散布制御について説明する。
防除ポンプ24及び送風機26の動力伝動部には電磁クラッチ付きの駆動プーリ31を有し、ミッションケース27には車速センサ37を設け、車速センサ37の検出情報をコントローラ(図示省略)に入力するように構成している。しかして、車速センサ37からコントローラに走行車速情報が入力されると、コントローラの指令により、電磁クラッチ付き駆動プーリ31を動力伝達状態とし、防除ポンプ24及び送風機26を駆動する。また、車速センサ37からコントローラに停止車速情報が入力されると、コントローラの指令により、電磁クラッチ付き駆動プーリ31の伝動を切りにし、防除ポンプ24及び送風機26の駆動を停止する。このように構成することにより、薬液の散布過剰を抑制し、エンジンの消費馬力を抑制しながら、薬液の適正散布をすることができる。
【0026】
また、車速センサ37からコントローラ(図示省略)に検出情報が入力されると、車速の大小に応じて風力調節板46を大小に調節すると、風力調節板46の調節を自動化し、薬液の泡状散布調節の操作性を向上させることができる。
【0027】
また、図7に示すように構成してもよい。送風機26の回転軸26aの前側端部に撹拌軸41を延出するように取り付け、この撹拌軸41aの前側部を薬液タンク9内に延出し、撹拌軸41aの前側端部に撹拌羽根42を取り付け、撹拌羽根42を回転するように構成する。また、防除ポンプ24の吐出薬液の一部を薬液タンク9へ戻すように構成し、この戻り薬液の撹拌作用と撹拌羽根42の撹拌作用とで薬液タンク9内の薬液の沈殿を防止している。
【0028】
前記構成によると、薬液タンク9内で撹拌羽根42を回転させて薬液を撹拌させると共に、防除ポンプ24からの戻り薬液で薬液を撹拌するので、薬液タンク9内の薬液の沈殿を確実に防止できる。
【0029】
また、前記撹拌羽根42に代えて、送風機26から薬液撹拌用の風を分岐して薬液タンク9に送り込み、薬液を撹拌するようにしてもよい。このように構成すると、大型の薬液タンク8での薬液撹拌能力を向上させ、薬液と水とを良好に混合しながら薬液散布作業をすることができる。
【0030】
また、図7に示すように、走行車体2の前方には、昇降リンク16を介してセンター散布ブーム11を昇降自在に構成する。このセンター散布ブーム11の左右幅を機体幅と略同幅に構成し、センター散布ブーム11を所定長さの送風管20で覆い、送風管20に設けた発泡体製造手段21,…により、噴霧ノズル14,…を覆うようにする。また、送風パイプ45の前側部に左右方向の軸心線回りに上下方向回動自在に延長送風パイプ45aを接続し、延長送風パイプ45aの前側端部を送風管20に接続している。しかして、センター散布ブーム11の昇降に対応して、延長送風パイプ45aが上下に回動する。なお、送風パイプ45を屈曲自在の材質で構成し、センター散布ブーム11の昇降に対応して送風パイプ45が屈曲して対応するように構成してもよい。
【0031】
前記構成によると、操縦席6のオペレータは左右前輪3,3の上方部位を通してセンター散布ブーム11の薬液散布状態を視認することができ、センター散布ブーム11と作物の高さを確認しながら薬液の泡状散布状態を確認することができる。
【符号の説明】
【0032】
11 散布ブーム
14 噴霧ノズル
20 送風管
21 発泡体製造手段
21a 筒体
21b 多孔板
26 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の噴霧ノズル(14,…)を設けている散布ブーム(11)と、前記噴霧ノズル(14,…)を覆うように設けている発泡体製造手段(21)とを備え、該発泡体製造手段21を所定長さの筒体(21a)と、筒体(21a)の先端側に取り付けている多孔板(21b)とで構成し、前記筒体(21a)の長手方向を前記噴霧ノズル(14,…)の薬液噴霧方向に沿わせて覆うように配設し、薬液タンク(9)の薬液を防除ポンプ(24)により前記散布ブーム(11)に圧送し、送風機(26)により前記筒体(21a)の始端側から終端側に向けて送風し前記多孔板(21b)から噴風するようにしたことを特徴とする泡状薬液散布装置。
【請求項2】
請求項1の発明において、前記散布ブーム(11)を着脱自在の所定長さの送風管(20)で覆い、該送風管(20)に多数の前記発泡体製造手段(21,…)を取り付けたことを特徴とする泡状薬液散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−30456(P2011−30456A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177637(P2009−177637)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】