波形のシーケンスの生成
主シンボルシーケンスを生成し、シーケンス内の各シンボルをランダムに選択された波形に置き換えることにより、波形のシーケンスを生成する。主シンボルシーケンスは、狭い自己相関関数を有し、パルスの列であってもよく、それらパルスは、所定の構成のパケット内に配置される。波形を送信し、送信波形の表現を形成し且つその表現を遅延させ、その表現を、送信波形の反射の結果として受信される信号と相関させることにより、物体を検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、たとえば障害物検出システム、特に、但し排他的ではなく、マルチユーザ環境で動作するように設計された自動車死角又は衝突前警告システムにおいて利用される、波形のシーケンスを生成する方法及び装置に関する。
【0002】
[発明の背景]
1つの重要なタイプの自動車死角又は衝突前警告システムは、検出ゾーンに問合せする(interrogate)ために電磁エネルギ又は超音波エネルギの短パルスを使用する。そして、システムの視野内にあるさまざまな物体によって後方散乱したエネルギを適当に処理することにより、所定の距離(range)に障害物が存在するか否かに関する判断を行う。検出装置を、問合せ(interrogation)パルスが送信された後に特定の遅延(所定の距離に対応する)で反射パルスが現れるか否かを検出するように構成することができる。単に反射パルスの発生を検出する代わりに、各パルス送信後に受信された信号のアナログ値を積分することにより、後方散乱信号強度に対して高感度であり、そのためより優れた性能が可能な構成を提供することができる。マルチチャネル検出装置は、各々に異なる遅延がある、関心のある種々の距離値において物体を検出するいくつかのチャネルを有する。
【0003】
各単一パルスを、適当に構成されたパルスパケットに置き換えると、物体検出力を大幅に向上させることができることが知られている。各パルスパケットは、特定の数Nの同一パルスを含み、その特定の数Nの同一パルスは、各パルス間の間隔が適当に選択された単位時間間隔の整数倍であるように、不均一にずらして配列される。パルス間間隔のパターンは、主パルスパケットと、1パルス持続時間より長い持続時間だけ時間的にシフトしたその複製との間に、わずかな数haのパルス一致(好ましくは多くても1パルス一致)しか発生しないことを保証するように設計される。この条件を、通常、自己相関制約と呼ぶ。
【0004】
N個の同一の単位持続時間の矩形パルスを含むスパン(長さ)Lのパルスパケットを考える。かかるパルスパケットを、シンボル0及び1の2値シーケンス{x}=x1,x2…xLによって都合よく表すことができ、そこでは、シンボル1はパルス発生に対応する。この場合、自己相関制約を、
【0005】
【数1】
【0006】
として表すことができる。ここで、Rxx(d)は自己相関シーケンスであり、dは整数シフトである。d=0である場合、自己相関値Rxx(0)は、単に、パルスパケット内に含まれるパルスの数Nに等しい。
【0007】
特定のパルスの数がNであり且つha=1であるすべてのパルスパケットのクラスでは、最大限コンパクトなパルスパケットは、最小スパンLminを有する。したがって、最大限コンパクトなパルスパケットは、最大のデューティファクタN/L、故に最大平均出力を示す。Nが固定かつha=1の場合、スパンがLminより大きいすべてのパルスパケットを、疎な(sparse)パルスパケットと呼ぶ。
【0008】
自己相関制約により、雑音又は干渉がなく、且つパルスパケットを検出するためにマルチチャネルパルス一致プロセッサが使用される場合、チャネル遅延が受信されているパルスパケットの遅延と一致する場合(この場合、チャネル出力は、ピーク値Nに達する)を除き、各チャネルの出力は最大haである、ということが確実になる。
【0009】
マルチユーザ環境では、ユーザは、自身の信号を同時に且つ非同期に送信してもよく、それにより各受信器は、それ自体の送信信号を認識し且つ検出しなければならないだけでなく、他の送信信号が存在する場合にそれを行うことができなければならない。当該受信器によって検出されるべきパルスパケットが、2値シーケンス
【0010】
【数2】
【0011】
で表されるものとし、干渉するパルスパケットのうちの1つが、別の2値シーケンス
【0012】
【数3】
【0013】
で表されるものとする。マルチユーザ環境において受信器の検出性能を最適化するために、すべての整数シフトdに対し以下の相互相関制約を満足させなければならない。すなわち、
【0014】
【数4】
【0015】
及び
【0016】
【数5】
【0017】
である。2つ以上の送信器が動作している場合、自己相関制約及び相互相関制約が結合されることにより、雑音がなく且つ検出にマルチチャネルパルス一致プロセッサが使用される場合、チャネル遅延が当該受信パルスパケットの遅延に一致する場合を除き、各チャネルの出力は依然としてNより実質的に小さいことが確実になる。
【0018】
自動車への適用では、多くの同様の障害物検出システムが、同じ領域で動作し同じ周波数帯域を共有することができなければならない。相互干渉を回避するために、各システムは、他のすべてのシステムが使用する信号と相関しないことが好ましい別個の信号を使用すべきである。特定の環境において多くの同様のシステムのうちのいずれが動作していることになるかを予測することは不可能であるため、それらの各々に別個の2値シーケンスを割り当てることは実際的ではない。さらに、優れた自己相関特性及び相互相関特性を有し且つ許容できるデューティファクタを示す2値シーケンスの広範なセットを構成することもまた非常に困難である。
【0019】
欧州特許第1330031号明細書(本明細書では「先願」と呼び、その内容は参照により本明細書に援用される)は、自己相関制約と相互相関制約とをともに満足することができる複合パルス列の広範なセットを生成するランダムメカニズムを利用する方法を開示する。したがって、結果としての複合パルス列は、マルチユーザ環境において相互妨害に対し優れた耐性を示す。高デューティファクタを示すシーケンスを生成することもまた可能であり、それにより結果としての検出性能が向上する。
【0020】
先願で開示された方法によれば、複合パルス列は、主パルスパケットのシーケンスから構成され、主パルスパケットは各々、所定の自己相関特性及び相互相関特性を有する適当に構成された主パルスパケットの所定セットからランダムに引き出される。各主パルスパケットの自己相関関数は、「最大1つの一致」という特性を示す。また、任意の2つの異なるパルスパケット間の相互相関関数は、対応する自己相関関数の最大値と比較して小さい値をとる。さらに、マルチユーザ環境における相互妨害に対する耐性を、個々の主パルスパケットをランダムな持続時間のギャップによって分離することによってさらに向上させることができる。そのランダムな持続時間の値を、乱数発生器によって提供される乱数によって確定してもよい。図1は、そのように構成された複合パルス列の構造を示す。
【0021】
結果として、各ユーザが主パルスパケットと同じセットを有してもよいが、各ユーザによって送信された複合パルス列は、ランダムに組み立てられ、したがって統計的に一意である。
【0022】
先願で開示された方法は、マルチユーザ環境において相互干渉の影響を緩和するという問題に対する実際的な解決法を提供するが、この方法は、ピーク自己相関値Rxx(0)=Nの最大(単位)自己相関サイドローブ値に対する比Rを増大させることはできない。Rの値を増大させることにより、障害物検出システムの、大きい障害物(トラック等)に近接して位置するそれより小さい障害物(オートバイ等)を検出し識別する能力が向上する。
【0023】
したがって、特にマルチユーザ環境で動作することが意図されたシステムにおける適用するために、優れた自己相関特性、優れた相互相関特性、及び複数の小さい障害物と大きい障害物とを識別する改善された能力を有する多数のパルス列を生成する方法を提供することが望ましい。
【0024】
[発明の説明]
本発明の態様を、添付の特許請求の範囲に示す。
【0025】
本発明の別の態様によれば、狭い(narrow)自己相関関数(すなわち、すべての非ゼロシフトに対し、ゼロシフトにおける最大値より実質的に小さい値を有する自己相関関数)を有する主シンボルシーケンスを選択し、シーケンスの各シンボルを、有限持続時間の有限数の適当に選択された波形を含むセットからランダムに引き出された波形に置き換える(シンボルの代りに波形を使用する)。波形が、持続時間が同じであり、且つ受信器におけるそれらの識別を容易にするように互いに直交する(相関しない)ことが好ましい。
【0026】
明確にするために、本発明を、主に、主シンボルシーケンスが不連続のパルスの列であり、パルスが所定パケット内に配置される(但し、説明するようにこれらの特徴はいずれも必須ではない)構成の文脈で説明する。ランダムに選択された波形によってパルスを表すメカニズムを、ランダムパルスマッピングの何らかの形態として見てもよい。
【0027】
パルスマッピングに対してM個の直交波形を利用する場合、N個のパルスを含む単一パルスパケットを、MN個もの波形パケットによって表してもよく、すべてのパケットは、同じ時間情報を伝達するが異なるものであり、そのため受信器において識別可能である。
【0028】
ランダムパルスマッピングの動作は、パルス間隔に含まれる時間情報を保持し、ランダムパルスマッピング自体は、各パルスに対し、整数のセットからランダムに選択された指標を割り当てることに相当する。それらの指標を、物理的なシステムにおいて種々の異なる方法で(たとえば、波形の周波数により)表してもよい。
【0029】
「最大1つの一致」という特性を有するN個のパルスを含むパルスパケットにランダムマッピングが適用されない場合、ピーク自己相関値Rxx(0)の最大(単位)自己相関サイドローブ値に対する比Rは、単にNである。しかしながら、ランダムパルスマッピングに対しM個の直交波形が利用される場合、単位サイドローブ値は、平均して1/Mまで低減される。この効果は、パルスが「時間的に」一致するという要件が、ここで、個々のパルスに割り当てられた指標が等しい(追加の一致)という要件と結合されるという事実による。その結果、比Rの平均値はNMまで増大し、大きい障害物と小さい障害物との間の識別が改善されることになる。
【0030】
ランダムパルスマッピングは、単独で使用される場合であっても、マルチユーザ環境において相互妨害に対し優れた耐性を提供する。構成により、各ユーザが同じ主シンボルシーケンス(たとえば主パルスパケット)を繰返し使用してもよいが、対応する波形のシーケンスは、各ユーザがランダムに組み立てるため、統計的に一意である。マルチユーザ環境における相互妨害に対する耐性を、上述した且つ先願において開示された方法に従って個々のパケット間にランダムギャップを挿入することによりさらに向上させることができる。英国特許第2357610号明細書に開示された技法を使用して、ギャップの持続時間を確定することができる。
【0031】
障害物検出システムによっては、送信された波形のピーク出力が制限されており、それを増大させることができないが、距離分解能を高くするとともに検出を確実に達成することが主に重要である。かかる場合、ランダムパルス符号化に使用される直交波形のセットは、受信器において圧縮することができる波形を含むべきであり、それらの送信時の持続時間を、(Z+1)△まで増大することができる。ここでZ△は、パケットにおける主信号間の最短間隔である。ランダムパルスマッピングに対し「圧縮可能な」波形を使用することにより、結果としてのデューティファクタは、(Z+1)までのファクターで増大し、そうでなければそれは意図された適用に対して低すぎる可能性がある。
【0032】
圧縮可能な波形の広いクラスには、正弦波、一般にLFM、又は「チャープ(chirp)」パルスと呼ばれる線形周波数変調を伴う過渡信号、及び当業者には既知である他の波形が含まれる。
【0033】
先願に述べられているように、所望の相互相関特性を有する主パルスパケットを使用して、第1の主パルスパケットを時間的に反転させることにより同じ自己相関特性を有する別の主パルスパケットを構築することができる。これら2つの二重主パルスパケット間の相互相関関数は、2を上回る値を超過しない。本発明の好ましい態様では、パケットの基礎を、第1のパルスパケット及びその時間反転された(「鏡像」)複製を適当にインタリーブすることによって形成される基礎バイナリパルスシーケンスに置くことによって、より大きいデューティファクタを有するパルスパケットを形成することができる。かかる場合、第1のパルスパケットをマッピングするために1つの波形のセットを使用し、第1のパケットの「鏡像」複製をマッピングするために別の波形のセットを使用することが好ましい。2つの波形のセットが相互に排他的である、すなわち、いずれの波形も両方のセットに属する可能性がないことが望ましい。簡単な一例として、主パケットに使用される波形は、第1の周波数を有してもよく、鏡像複製に使用される波形は、第2の周波数を有してもよい。しかしながら、各パケットがいくつかの異なる波形を含むことが好ましい。
【0034】
本発明のさらに好ましい態様によれば、パルスパケットは、以下のように変更される自己相関制約を満足するように構築される。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで、パルスパケットは、シンボル0及び1の2値シーケンス{x1,x2,…xL}として表され、シンボル1はパルス発生に対応する。
【0037】
上記制約は、「最大1つの一致」という要件より限定的である。それは、すべての連続する遅延値d=1、2、…、Zに対し、自己相関シーケンスRxx(d)が0に等しくなければならないためである。したがって、結果としての自己相関シーケンスRxx(d)は、d=0の場合に値Nの主ピークの両側においてスパンZのゼロ相関ゾーンを示す。
【0038】
単一パルスの持続時間が△に等しい場合、ゼロ相関ゾーンは、Zc△/2に等しい障害物間の相対距離ZCDに対応する。ここで、cは、問合せパルスの速度である(cは、電磁パルスの光の速度である)。
【0039】
したがって、変更された自己相関制約を満足するパルスパケットを利用する障害物検出システムは、改良された障害物分解能を有する。それは、より大きい障害物(トラック等)に対応する自己相関関数のサイドローブが、その大きい障害物からの相対距離ZCD内に位置するより小さい障害物(バイク等)に関連する主自己相関ピークをもはや不明瞭にしないためである。
【0040】
変更された自己相関制約から、スパンZのゼロ相関ゾーンを取得するために、パルスパケットにおける任意の2つのパルス位置間の最小差が(Z+1)を下回る可能性がないことになる。
【0041】
本発明のこの態様を使用して、ランダムパルスマッピングの結果として達成される大きい障害物と小さい障害物との間の識別の改善がさらに向上する。
【0042】
上述した態様を結合すること、すなわち変更された自己相関制約(ゼロ相関ゾーンを拡張する)及びランダムパルスマッピングから得られる統計的サイドローブの低減を結合することにより、以下のパケット特性のセットがもたらされる。
1.自己相関ピークN
【0043】
【数7】
【0044】
2.ゼロ相関ゾーン
【0045】
【数8】
【0046】
3.ランダムパルスマッピングによる統計的サイドローブ低減
【0047】
【数9】
【0048】
ここで、サイドローブ値に対する統計的限界1/Mを、「長期的に見て」又は「平均して」満足することができる。実際の適用では、所与の距離にある障害物の存在又は不在に関する判断を、数千個のパルスパケットに基づいてもよいため、限界1/Mは有効に達成可能である。
【0049】
主シンボルシーケンスは、ギャップによって散在された同一のパルスを含んでもよい。この場合、パルスのタイミングは、狭い自己相関シーケンスが得られるようなものである。別法として、主シンボルシーケンスは、異なるタイプのシンボル(たとえば、シンボル−1及び1が異なる極性のパルスを表す2値シーケンス、3値シーケンス等)を含んでもよい。この場合、自己相関シーケンスは、特徴的なシンボルをそれらシンボルのタイミングとともに使用するため、狭い構造を有することができる。したがって、この情報を保存するために、ランダムパルスマッピングは、異なるシンボルタイプに対して異なる波形のセットを使用することが好ましく、各セットの波形は、概して、他のセットの波形から識別することができる。この可能性の特定の例は、上述した、パルスパケットをその「鏡像」反転された複製とインタリーブさせることである。
【0050】
ここで、例として添付図面を参照して本発明を具現化する構成について説明する。
【0051】
[好ましい実施形態の説明]
本発明によるシステムの構造について、以下に説明する。まず、かかるシステムで使用することができる問合せ信号のタイプについて言及する。
【0052】
図2aは、本発明に係る障害物検出システムによって使用される問合せ信号を導出するために使用することができる主パルスパケットの一例を示す。パケットは、106個の位置の中で分散された11のパルスを含み、パケットのパルス位置間の最小差は6に等しい(位置78と84との間)。図2bは、パケットの自己相関シーケンスを示す。パケットは、上述した変更された自己相関制約を満足する。このパケット構成によれば、ゼロ相関ゾーンのスパンは5である。個々のパルスの代わりにランダムに選択された波形を使用する。最も単純な構成では、ランダムパルスマッピングに使用される各波形の持続時間は、△、すなわち各主パルスの持続時間に等しい。
【0053】
図3は、主パルスパケット(図2aにすでに示したものと同じ)と、番号1、2、3及び4によって指標付けされた4つの利用可能な波形w1(t)、w2(t)、w3(t)及びw4(t)のうちの1つを選択することによって得られる、結果としての波形パケットとを示す。この場合、波形は、基本パルスパケットのパルスより大幅に長い。例示する目的で、波形選択に使用するランダムメカニズムは、以下の数字のシーケンスをもたらしたものとする。すなわち、1、4、1、2、3、1、3、3、4、2、4である。図示するように、主パルスパケット及び結果としての波形パケットは、時間的に整列しており、ともに同じ時間情報を含む。
【0054】
デューティファクタを向上させるために、基本パルスパケットを変更することができる。例示的な例として、図4(a)は、図2aの主パルスパケットと同じである第1のパルスパケットを示し、図4(b)は、パケットの「鏡像」複製を示し、図4(c)は、第1のパケットを、そのパケットの「鏡像」複製を時間シフトしたものとインタリーブすることによって得られるパルスパケットを示す。ここでもまた、実際には、個別のパルスの代わりに波形を使用する。上述したように、少なくとも実質的な数の、各パケットを表す波形が、他のパケットを表す波形から識別可能であることが重要である(また、それらが互いから識別可能であることが望ましい)。これを達成するために、波形の2つのセットを使用することが好ましく、第1のパケットのパルスの代わりに第1のセットからランダムに選択したものを使用し、「鏡像」複製パケットのパルスの代わりに第2のセットからランダムに選択したものを使用する。
【0055】
「最大1つの一致」という特性を有する1つの補足パケット(又は複数のパケット)を主パケット及びその「鏡像」複製の組合せに挿入すると、パルスパケットのデューティファクタをさらに増大させることができる。しかしながら、すべてのインタリーブされたパケットに属しているパルスのランダムマッピングに、波形のより多くのセットが必要となる。
【0056】
図5は、本発明による障害物検出システムのブロック図である。本システムは、シンボルのシーケンスを生成し、これらをランダム符号器REに提供するシンボル発生器SGを含む。ランダム符号器は、各シンボルの代わりにランダムに選択された波形を使用し、それら波形を、適当な送信アンテナTAに結合されたアンテナドライバADRに連続して引き渡す。
【0057】
ランダム復号器REは、波形セット発生器WS1、WS2、…WSJを含み、それらは各々、それぞれの波形のセットを生成することができる。それら発生器は、単に波形を格納するメモリであってもよい。各セット内の波形は、互いに直交しており、他のセットの波形に対して相互に直交している。ランダム符号器はまた、選択器SELを有する。選択器SELは、シンボル発生器SGから受け取った各シンボルのタイプに対応するシンボル値を確定し、それに応じて、波形記憶部WS1、WS2、…WSJのうちの対応する1つを選択する。選択器SELはまた、ランダムに指標値を選択し、これを使用して、選択された波形記憶部に格納された波形のうちの1つを選択し、これをアンテナドライバADRに出力する。
【0058】
ランダム符号器REはまた、ランダムに選択された波形を特定する情報をメモリMEMに送出する。格納されているデータは、シンボル発生器SGから受け取られたシンボルを表すシンボル値と、ランダムな指標値とを含むことが好ましい。
【0059】
適当な受信アンテナRAが入力増幅器IAMに接続されている。受信信号は、増幅器IAMによって復号器DECに提供され、復号器DECは、いずれの波形が受け取られるかを判断し、それらの波形を表す指標値を生成する。好ましい実施形態では、復号器DECは、整合フィルタ(matched filter)の複数のバンクを含み、それらは各々、波形のそれぞれのセットに対応する。復号器DECは、出力を提供するバンク内の特定のフィルタを表す指標値と、フィルタがいずれのバンクに属するかを示すシンボル値とを生成する。
【0060】
プロセッサPROは、復号器DECからの出力値と、メモリMEMからの出力値とを受け取る。メモリMEMからの出力値は、問い合せされている距離によって決まる量だけ遅延している。これらの値により、プロセッサPROは、送信波形のシーケンスと受信信号のシーケンスとの間の一致を検出することができ、それにより、障害物が検出されたことを示す出力を生成することができる。好ましくは、プロセッサPROは、メモリMEMによって提供される指標値と復号器DECによって提供される指標値との間に一致があるかチェックし、一致がある場合、メモリMEM及び復号器DECによって提供されるそれぞれのシンボルを相関器に入力する。相関器の出力は積分され、結果として生じた値は、特定の距離に物体が存在する可能性を示す。異なる遅延値を使用することにより、異なる距離に対して動作を繰り返すことができる。
【0061】
図6は、障害物検出システムの1つの特定の形態のより詳細なブロック図を示す。図6では、シンボル発生器SGを、クロック発生器CKGによって駆動されるパルスパケット発生器PPGとして実装する。ランダム符号器を、ランダムパルスマッパRPMとして実装する。メモリMEMを、直列入力並列出力シフトレジスタSIPOを使用して実装する。復号器DECを、M個の整合フィルタMF1、MF2、…MFMのバンクによって実装する。プロセッサPROを、複数の距離セルプロセッサRCPによって実装する。
【0062】
後述するように、本システムは、アンテナドライブADRと入力増幅器IAMとの両方に、適当な搬送周波数で正弦波信号を供給する発振器OSCを組み込んでもよい。
【0063】
パルスパケット発生器PPGは、ランダムパルスマッパRPMに、より詳細には、マルチプレクサMPXの入力PP、記憶レジスタSRGのロード入力LI及びパルス識別器PIDの入力PP(まとめて図5の選択器SELに対応する)に、パルスを繰り返し供給する。図6のシステムは、図2aに示すもの等の、同一のパルスを含むパルスパケットと使用するように意図されている。したがって、パルスが同一であるため、波形の1つのセットがあればよい。このセットを、M個の波形発生器WG1、WG2、…、WGMが提供する。(識別可能なパルスを含むパルスシーケンス(図4(c)に示すもの等)を処理するために、波形発生器の1つ又は複数の追加のセットを提供する。)
【0064】
発生器PPGによって供給される各パルスは、ランダム指標発生器RIGによって生成される数字の値に応じてM個の波形発生器から1つをトリガする。この値を、各パルス発生の時刻の前に入力INを介して記憶シフトレジスタSRGにロードする。
【0065】
好ましくは、M個の波形発生器WG1、WG2、…、WGMによって供給される波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)は、障害物によって反射される信号の識別を容易にするために相互に直交しているべきである。特に、各々の周波数が実質的に異なる正弦波の短いセグメントを使用することによって適当な波形のセットを生成することができる。この特定の場合では、整合フィルタのバンクは、バンドパスフィルタを含み、それらは各々、それぞれの正弦波の周波数に等しい中心周波数と、正弦波セグメントの持続時間(duration)に反比例する帯域幅とを有する。
【0066】
正弦波の短いセグメントを、適当に変更されたリング発振器又はブロッキング発振器(ringing or blocking oscillators)によって容易に生成することができる。米国特許第3612899号明細書(参照により本明細書に援用する)に開示された別の方法は、マイクロ波搬送周波数で電磁エネルギの非常に狭いパルスを直接形成することができる。
【0067】
マルチプレクサMPXの入力OSに保持されたランダム指標IDの値は、その指標値に対応するそれぞれの波形発生器をトリガするための各パルスに対する特定の経路を確定する。たとえば、指標値が2である場合、波形発生器WG2がトリガされることにより適当な波形w2(t)が生成され、それは、(加算増幅器SAM及びアンテナTAに結合されたドライバADRを介して)障害物に対する問合せ信号として送信される。
【0068】
波形発生器WG1、WG2、…、WGMによって生成される波形は、適当な1つの搬送周波数(又は複数の周波数)で生成される場合、アンテナTAによって問合せ信号として直接送信されることが可能である(適当な調整及び必要な場合はドライバADRにおける増幅後)。しかしながら、波形発生器WG1、WG2、…、WGMが波形のベースバンドバージョンしか供給することができない場合、それらの波形を送信アンテナTAに引き渡す前に何らかの形式の「アップコンバートすること」(変調)が必要となる。かかる場合、アンテナドライバADRは、補助発振器OSCによって提供され且つ入力CFを介してドライバADRに与えられる、或る搬送周波数での正弦波基準信号を利用する適当な変調器を組み込む。
【0069】
発生器PPGによって提供される各パルスに対し、パルス識別器PIDは、そのパルスに(ランダム指標発生器RIGによって)割り当てられたランダム指標IDを、パルス発生に関するタイミング情報(入力PPを介して提供される)と結合する。結果としての結合を、2値ワードで表してもよく、たとえば、1に等しい最上位ビット(MSB)がパルス発生をマークしてもよく、残りのビットが、そのパルスに割り当てられたランダム指標IDの値を表してもよい。
【0070】
このように作成された2値ワードは、入力DIを介してレジスタSIPOに与えられる。すなわち、それらのワードは、レジスタSIPOの入力CPに現れるクロックパルスによって確定される時刻にレジスタSIPO内にシフトされる。その結果、パルスパケット発生器PPGによって提供される各パルスは、一意にそれぞれの2値ワードによって表される。すなわち、パルス発生の時刻は、MSBを1に設定することにより対応するタイムスロット(すなわちクロック周期)に与えられており、ランダム指標IDは、2値ワードの残りのビットの値を確定するために使用されている。
【0071】
レジスタSIPOは、総遅延(クロック周期の単位で表される)が、使用される記憶セルの数、すなわち図6に示す構成ではWに等しい、デジタル離散時間遅延線として作用する。したがって、レジスタSIPOは、最新のWクロック周期中に生成されマッピングされるすべての主パルスに関する連続して更新される情報を格納し保持する。この情報は、レジスタSIPOのW個の並列出力において入手することができ、それぞれの距離セルプロセッサRCPに、すべてのレジスタSIPO出力又は選択されたレジスタSIPO出力のみが接続される。例示の目的で、図6は、対応するプロセッサRCPに接続されたレジスタSIPOの出力Kを示す。
【0072】
障害物によって反射され受信アンテナRAを介して受信される信号は、入力増幅器IAMに与えられる。整合フィルタMF1、MF2、…、MFMが、波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)のベースバンドバーションしか処理することができない場合、増幅器IAMに何らかの「ダウンコンバートする」(復調)手段を組み込まなければならなくなる。したがって、適当な周波数の正弦波基準信号を、増幅器IAMの入力CFに結合された補助発振器OSCによって提供することができる。
【0073】
M個の整合フィルタMF1、MF2、…、MFMのバンクは、以下のように動作するように構築される。整合フィルタの共通入力に、利用された波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)のうちのいずれかが与えられると、この特定の波形に整合するフィルタのみが明確な(unequivocal)応答をもたらし、残りのすべての整合フィルタの残余応答はごくわずかとなる。整合フィルタのバンクのこの特定の特性を利用して、ランダムパルスマッピング中に、受信信号から各基礎パルスに割り当てられたランダム指標IDの値が確実に回復する。各距離セルプロセッサRCPによって実行される機能及び動作を、以下のように要約することができる。
【0074】
1.レジスタSIPOのそれぞれの出力によって供給される各2値ワードは、ワード復号器WDRにおいて、パルス発生を示す信号PPと、ランダムパルスマッピング中にランダム指標発生器RIGによってそのパルスに割り当てられたランダム指標IDとに分解される。
【0075】
2.信号PPは、サンプリング回路SCTのサンプリング入力SSに与えられ、ランダム指標IDは、チャネル選択器CHSの入力ISを介して、その指標に対応する整合フィルタの出力を選択する。実施態様に応じて、各整合フィルタは、その出力に、受信波形の強度を示すマルチレベル(たとえばアナログ)信号を提供してもよく、又は受信波形の強度が背景雑音及び/又は干渉の強度より実質的に大きいか否かを示す単なる2値信号を提供してもよい。
【0076】
3.それぞれの整合フィルタのこのように選択された出力は、サンプリング回路SCTに与えられた後、入力SSに現れる信号PPと一致する時刻にサンプリングされる。整合フィルタがその出力において2値信号を生成する場合、サンプリング回路SCTを、単純な論理ゲートまで縮小することができる。付随的に、フィルタ出力の持続時間は、受信波形及びフィルタ特性によって決まる、ということが留意されよう。特性が、フィルタ出力が適当な持続時間を有するというものである場合、比較的長い波形を使用することが許容される。
【0077】
4.SCTの出力は、「積分・ダンプ」タイプ(integrate-and-dump)又は「移動平均(running-average)」(「移動窓」(moving-window))タイプであってもよい積分器INTに供給される。サンプリング回路SCTの代りに論理ゲートが使用される場合、適当に構成されたパルスカウンタが必要な積分を実行することも可能である。
【0078】
5.積分器INTによって達成された結果としてのレベルが、比較器CMPにおいて所定の判断閾値DTと比較される。判断閾値DTを上回る場合、それぞれの距離セルプロセッサRCPに接続されたレジスタSIPO出力の遅延に対応する距離セルにおいて、障害物の存在が宣言される。
【0079】
明らかなように、プロセッサRCP及び整合フィルタのバンクによって合同で実行される主な機能は、波形「デマッパ(de-mapper)」の機能に従来の相関受信器の機能を結合したものである。その結果、すべてのプロセッサRCPの判断出力は、障害物検出システムの視野(FOV)を構成する距離セルにおける潜在的な障害物の存在の包括的な像を提供し、そこから、かかる物体の距離を表す信号が生成される。適当な障害物追跡システムが、この「スナップショット」情報を利用して、運転手に警報を与える警告信号、及びエアバッグ、ブレーキ等の意図された衝突前作動装置の動作を開始するために使用される他の信号を生成することができる。個々の距離セルプロセッサRCPのバンクを使用する代りに、単一プロセッサRCPを、それぞれの距離における物体の存在に関する判断を逐次取得するようにレジスタSIPOのそれぞれ異なる出力に連続的に結合してもよい。
【0080】
システムが2つ以上のタイプのシンボルを使用する場合、レジスタSIPOに格納される各2値ワードに、生成されたシンボルのタイプを表す値が含まれる。また、各シンボルタイプに対し、M個の整合フィルタMF1、MF2、…、MFMのそれぞれのバンクと、関連するチャネル選択器CHSとがある。常に(最大)1つのチャネル選択器のみが出力を提供し、特定のチャネル選択器は受信シンボルによって決まる。このため、チャネル選択器の全体出力は、検出されたシンボルを表す値を生成することができる。これを、標準相関器の一方の入力に供給する。標準相関器は、他方の入力においてワード復号器WDRからシンボルタイプ値を受け取る。そして、相関器の出力を、サンプリング回路SCTに送出することができる。複数のシンボルタイプに関係するこの構成により、自己相関機能及び相互相関機能の改善が容易になり、そのため性能が向上する。
【0081】
図7は、パルスパケット発生器PPGの1つのあり得る構造のブロック図である。発生器は、順次状態モジュールSSM、状態復号器STD、ランダムギャップ発生器RGG及びクロック発生器CKGを備える。
【0082】
システム動作中、順次状態モジュールSSMは、クロック発生器CKGによって供給されるクロックパルスCLKによって確定される時刻にその状態を連続的に変化させる。順次状態モジュールSSMの明確に異なる状態の総数NSは、少なくとも、システムが使用する最長の主パルスパケットのスパンLmaxに等しくなければならない。このため、
【0083】
【数10】
【0084】
である。ここで、Kは、順次状態モジュールSSMによって利用されるフリップフロップの数である。順次状態モジュールSSMは、周期的に動作するように構成され、各サイクルは、総数NS=2Kの利用可能な明確に異なる状態から何らかの都合のよい方法で選択されたNU個の明確に異なる状態を含む。それらNU個の明確に異なる状態の間に、生成されるべき各パルスパケットのパルスの位置を表すN個の所定の状態がある。
【0085】
順次状態モジュールSSMの機能を、従来の2値カウンタにより、適当なフィードバックを有するシフトレジスタにより、又は当業者に周知の同様の順次状態機械により、実装することができる。
【0086】
状態復号器STDは、順次状態モジュールSSMのKビット出力によって駆動される。状態復号器STDは2つの出力を有する。すなわち、一方の出力は、複合パルス列CPTを供給し、他方はパケット終了(end-of-packet)EOPパルスを生成する。たとえば、パケット終了EOPパルスは、すべてのパルスパケットの立下り(trailing)パルスと一致してもよい。状態復号器STDのすべての機能を、組合せロジックによって実装してもよく、又は適当にプログラムされたリードオンリメモリによって実装してもよい。
【0087】
ランダムギャップ発生器RGGは、生成されているすべての主パルスパケットの立下りパルスにランダムギャップを付加する。ランダムギャップ発生器RGGの繰返し動作の各サイクルは、状態復号器STDによって供給されるパケット終了EOPパルスによって開始される。パケット終了パルスEOPにより、ランダム選択器RSは、遅延格納メモリDSに格納された複数の遅延値のうちの1つをランダムに選択する。選択された遅延値が遅延回路DLYに提供されることにより、クロック発生器CKGによって提供される対応する数のクロックパルスが抑止される。これにより、ランダムギャップ発生器RGGの出力CRGは、ランダムな数の連続パルスが抜けているクロックパルスのシーケンスを供給する。その結果、ランダムギャップの持続時間に等しいランダムな時間間隔中、順次状態モジュールSSMの動作が中断する。各ランダムギャップの持続時間が一様に分散され、且つランダムギャップが互いに独立して形成されることが好ましい。
【0088】
図7のパルスパケット発生器PPGは、同じパルスパケットを繰返し生成するが、先願で示したように、代りに、パルスパケットの所定のセットから連続的なパルスパケットがランダムに選択されるように構成することも可能である。
【0089】
上述した構成により、有限長のパルスパケットが繰返し生成され、マッピングプロセスを使用して、個々のパルスの代りに波形を使用する。さまざまな変更が可能である。
【0090】
図8は、パルスパケットの代りに使用することができる複数の代替シンボルシーケンスを示す。図8(a)では、主シンボルシーケンスは、非コヒーレントパルス列であり、パルスは同じ(単位)持続時間である。パルス間のギャップは、狭い自己相関シーケンスを得るように種々の量で変更された単位持続時間の倍数である。ランダム符号器は、各パルスの代りに、波形の単一セットからランダムに選択された波形を使用する。
【0091】
図8(b)は、ギャップによって分離された2値パルス列を含む代替主シンボルシーケンスを示す。図示する構成では、パルスは+1の値と−1の値とを有する。ランダム符号器は、波形の第1のセットからランダムに選択することにより各+1パルスに応答し、波形の第2のセットからランダムに選択することにより各−1パルスに応答する。復号器は、受信信号からバイポーラ波形を復元することが好ましく、このバイポーラ波形は、その後、メモリMEMに格納された送信波形と相関される。
【0092】
変更態様として、パルス列は、3つ以上の値のパルスを含むことができ、各異なる値は、それぞれの波形セットから選択されるようにする。
【0093】
図8(c)は、ギャップによって分離された明確に異なるパルスの形式のさらにあり得る主シンボルシーケンスを示し、明確に異なる各パルスは、各々が2つの異なる値のうちの一方を有することができる複数の隣接するサブパルス(たとえばBarker符号)を含む。この場合、ランダム符号器は、各サブパルスの代りにランダムに選択された波形を使用し、その波形は、サブパルスの値に応じてセットから選択される。
【0094】
図8(d)は、連続信号、この場合は擬似ランダム2値シーケンスの形式の主シンボルシーケンスの一例である。当然ながら、3値又は4値の擬似ランダムシーケンス等の他のシーケンスも別法として可能である。
【0095】
上述した構成では、送信される各シンボルに対して波形の固定セットがあり、このセットからのランダムな選択を、それぞれのシンボルが送信される度に行う。代替構成では、特定のシンボルを表すために使用される波形のセットを、適宜(好ましくはランダムに)変更する。
【0096】
この一例を、形式
+++−−−+−
というサブコードの7要素Barkerシーケンスを含む複合パルスの連続送信に関して説明する。
【0097】
システムに、自由に使用できる20個の波形、すなわちw1、w2、…、w20があるものとする。各複合パルスを送信する前に、システムは、たとえば波形のうちシンボル+を表す3つとシンボル−を表す3つの異なるシンボルをランダムに選択する。たとえば、検討中のシステムは、シンボル+を表すためにw3、w12、w19を選択し、シンボル−を表すためにw4、w5、w10を選択するものとする。選択されたセットを表す情報をメモリに格納する。次に、システムは、各シンボル+を送信するために{w3,w12,w19}から1つをランダムに選択し、各シンボル−を送信するために{w4,w5,w10}から1つをランダムに選択して、複合パルスを送信する。
【0098】
受信器では、メモリの内容(適当な遅延が与えられた後)を使用して整合フィルタの出力を構成することにより、w3、w12及びw19に一致するフィルタの出力が結合される(ORが取られる)ことによりシンボル出力+が提供されるようにし、同様に、w4、w5及びw10に一致するフィルタの出力のORが取られることによりシンボル出力−が提供されるようにする。このように、復号器は、+シンボル及び−シンボル(各シンボルは、6つの整合フィルタのいずれが最大出力を生成するかによって決まる)の出力シーケンスを提供する。相関器は、送信された主シーケンス+++−−+−の遅延バージョンを復号器出力シーケンスとともに使用することにより、相互相関の値を確定する。
【0099】
その結果、相関の動作が、ランダム符号化のために使用される波形に関する補助情報を利用して、主シーケンス(狭い自己相関を有する)と受信波形から復元されたそのバージョンとに対して実行される。
【0100】
そして、次の複合パルスを、異なるランダムに選択された波形を用いて送信してもよい。
【0101】
本発明を使用することにより、主シンボルシーケンスは、信号の形式で生成され、その後ランダム符号化されることが理解される。しかしながら、これは必須ではない。ランダムに選択された波形を、別々の予備的な動作として主シンボルシーケンスを生成する必要なしに、それらの必要なタイミングで直接生成することができる。(それにも関わらず、各波形シーケンスに対し、波形生成のタイミングに対応して、名目(nominal)主シンボルシーケンス及びその自己相関シーケンスを推定することが可能である。)
【0102】
図5の障害物検出システムを、可動プラットフォーム(車両又は船舶等)に取り付けてもよく、又は可動物体の接近を検出するために静止プラットフォームに取り付けてもよい。本システムは、物体の検出に応じて警告信号を生成するように構成された衝突警告システムであってもよい。さらに又は別法として、本システムは、障害物の距離を検出しその距離を示す信号を生成する測距支援システムであってもよい。
【0103】
複数のシステムによって生成される過渡信号のパケットが、上述した相互相関制約を満足することが望ましく、特に相互相関関数が、各自己相関関数の最大値と比較してすべて小さい値を有することが望ましい。さらに、各システムが同じ構造を有することが望ましいため、これらの条件が、個々のシステムによって生成される異なるパケットの相互相関特性に適用されることが望ましい。しかしながら、これを、上述した技法、特にパルスマッピング、パケット間のランダムな間隔、及び優れた相関特性を有するように選択されたタイミングシーケンスを提供することにより達成することができる。
【0104】
上記説明から、過渡信号(たとえば信号パルス又は波形)の形式に言及することが、それらの信号のベースバンド形式に関連するように意図されていることが明らかとなろう。明らかに、過渡信号が送信のための搬送波変調されるように使用される場合、送信波形の詳細な構成が異なってもよい。
【0105】
本明細書では、「ランダム」という用語は、限定なしに、純粋にランダムな非決定論的に生成される信号のみでなく、擬似ランダム2値信号及びカオス的信号を生成する、従来技術において使用されるようなフィードバック回路を備えるシフトレジスタ構成の出力等の擬似ランダムな且つ/又は決定論的な信号をも含むように意図される。
【0106】
本明細書で説明した実施形態を、たとえばデジタル信号プロセッサを組み込んだ専用ハードウェアを使用して実装することができ、又は適当にプログラムされた汎用コンピュータを使用して実装することができる。
【0107】
変調の何らかの適当なフォーマット、すなわちパルスの代りに波形を使用することが、現在好ましいものとしてみなされているが、問合せ信号に「透かしを入れる(watermarking)」ために波形及び波動現象の他の属性(たとえば電磁波の極性)もまた採用することができる。
【0108】
本発明の好ましい実施形態の上述した説明を、例示及び説明の目的で提示した。それは、網羅的であるように、又は本発明を開示した厳密な形式に限定するようには意図されていない。上述した説明に鑑みて、多くの改変、変更及び変形により当業者が本発明を企図された特定の用途に適合されたさまざまな実施形態において利用することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】複合パルス列の構造を示す図である。
【図2a】パルスパケットの一例の図である。
【図2b】図2aのパルスパケットを表す2値シーケンスの自己相関シーケンスを示す。
【図3】ランダムパルスマッピングの原理を示す図である。
【図4】デューティファクタが増大したパルスパケットの一例を示す図である。
【図5】障害物検出システムのブロック図である。
【図6】本発明によって動作するように構成されたランダムパルスマッパを組み込んだ図5のシステムの一実施態様のより詳細なブロック図である。
【図7】図6のシステムのパルスパケット発生器のブロック図である。
【図8】異なるタイプの主シンボルシーケンスを示す図である。
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、たとえば障害物検出システム、特に、但し排他的ではなく、マルチユーザ環境で動作するように設計された自動車死角又は衝突前警告システムにおいて利用される、波形のシーケンスを生成する方法及び装置に関する。
【0002】
[発明の背景]
1つの重要なタイプの自動車死角又は衝突前警告システムは、検出ゾーンに問合せする(interrogate)ために電磁エネルギ又は超音波エネルギの短パルスを使用する。そして、システムの視野内にあるさまざまな物体によって後方散乱したエネルギを適当に処理することにより、所定の距離(range)に障害物が存在するか否かに関する判断を行う。検出装置を、問合せ(interrogation)パルスが送信された後に特定の遅延(所定の距離に対応する)で反射パルスが現れるか否かを検出するように構成することができる。単に反射パルスの発生を検出する代わりに、各パルス送信後に受信された信号のアナログ値を積分することにより、後方散乱信号強度に対して高感度であり、そのためより優れた性能が可能な構成を提供することができる。マルチチャネル検出装置は、各々に異なる遅延がある、関心のある種々の距離値において物体を検出するいくつかのチャネルを有する。
【0003】
各単一パルスを、適当に構成されたパルスパケットに置き換えると、物体検出力を大幅に向上させることができることが知られている。各パルスパケットは、特定の数Nの同一パルスを含み、その特定の数Nの同一パルスは、各パルス間の間隔が適当に選択された単位時間間隔の整数倍であるように、不均一にずらして配列される。パルス間間隔のパターンは、主パルスパケットと、1パルス持続時間より長い持続時間だけ時間的にシフトしたその複製との間に、わずかな数haのパルス一致(好ましくは多くても1パルス一致)しか発生しないことを保証するように設計される。この条件を、通常、自己相関制約と呼ぶ。
【0004】
N個の同一の単位持続時間の矩形パルスを含むスパン(長さ)Lのパルスパケットを考える。かかるパルスパケットを、シンボル0及び1の2値シーケンス{x}=x1,x2…xLによって都合よく表すことができ、そこでは、シンボル1はパルス発生に対応する。この場合、自己相関制約を、
【0005】
【数1】
【0006】
として表すことができる。ここで、Rxx(d)は自己相関シーケンスであり、dは整数シフトである。d=0である場合、自己相関値Rxx(0)は、単に、パルスパケット内に含まれるパルスの数Nに等しい。
【0007】
特定のパルスの数がNであり且つha=1であるすべてのパルスパケットのクラスでは、最大限コンパクトなパルスパケットは、最小スパンLminを有する。したがって、最大限コンパクトなパルスパケットは、最大のデューティファクタN/L、故に最大平均出力を示す。Nが固定かつha=1の場合、スパンがLminより大きいすべてのパルスパケットを、疎な(sparse)パルスパケットと呼ぶ。
【0008】
自己相関制約により、雑音又は干渉がなく、且つパルスパケットを検出するためにマルチチャネルパルス一致プロセッサが使用される場合、チャネル遅延が受信されているパルスパケットの遅延と一致する場合(この場合、チャネル出力は、ピーク値Nに達する)を除き、各チャネルの出力は最大haである、ということが確実になる。
【0009】
マルチユーザ環境では、ユーザは、自身の信号を同時に且つ非同期に送信してもよく、それにより各受信器は、それ自体の送信信号を認識し且つ検出しなければならないだけでなく、他の送信信号が存在する場合にそれを行うことができなければならない。当該受信器によって検出されるべきパルスパケットが、2値シーケンス
【0010】
【数2】
【0011】
で表されるものとし、干渉するパルスパケットのうちの1つが、別の2値シーケンス
【0012】
【数3】
【0013】
で表されるものとする。マルチユーザ環境において受信器の検出性能を最適化するために、すべての整数シフトdに対し以下の相互相関制約を満足させなければならない。すなわち、
【0014】
【数4】
【0015】
及び
【0016】
【数5】
【0017】
である。2つ以上の送信器が動作している場合、自己相関制約及び相互相関制約が結合されることにより、雑音がなく且つ検出にマルチチャネルパルス一致プロセッサが使用される場合、チャネル遅延が当該受信パルスパケットの遅延に一致する場合を除き、各チャネルの出力は依然としてNより実質的に小さいことが確実になる。
【0018】
自動車への適用では、多くの同様の障害物検出システムが、同じ領域で動作し同じ周波数帯域を共有することができなければならない。相互干渉を回避するために、各システムは、他のすべてのシステムが使用する信号と相関しないことが好ましい別個の信号を使用すべきである。特定の環境において多くの同様のシステムのうちのいずれが動作していることになるかを予測することは不可能であるため、それらの各々に別個の2値シーケンスを割り当てることは実際的ではない。さらに、優れた自己相関特性及び相互相関特性を有し且つ許容できるデューティファクタを示す2値シーケンスの広範なセットを構成することもまた非常に困難である。
【0019】
欧州特許第1330031号明細書(本明細書では「先願」と呼び、その内容は参照により本明細書に援用される)は、自己相関制約と相互相関制約とをともに満足することができる複合パルス列の広範なセットを生成するランダムメカニズムを利用する方法を開示する。したがって、結果としての複合パルス列は、マルチユーザ環境において相互妨害に対し優れた耐性を示す。高デューティファクタを示すシーケンスを生成することもまた可能であり、それにより結果としての検出性能が向上する。
【0020】
先願で開示された方法によれば、複合パルス列は、主パルスパケットのシーケンスから構成され、主パルスパケットは各々、所定の自己相関特性及び相互相関特性を有する適当に構成された主パルスパケットの所定セットからランダムに引き出される。各主パルスパケットの自己相関関数は、「最大1つの一致」という特性を示す。また、任意の2つの異なるパルスパケット間の相互相関関数は、対応する自己相関関数の最大値と比較して小さい値をとる。さらに、マルチユーザ環境における相互妨害に対する耐性を、個々の主パルスパケットをランダムな持続時間のギャップによって分離することによってさらに向上させることができる。そのランダムな持続時間の値を、乱数発生器によって提供される乱数によって確定してもよい。図1は、そのように構成された複合パルス列の構造を示す。
【0021】
結果として、各ユーザが主パルスパケットと同じセットを有してもよいが、各ユーザによって送信された複合パルス列は、ランダムに組み立てられ、したがって統計的に一意である。
【0022】
先願で開示された方法は、マルチユーザ環境において相互干渉の影響を緩和するという問題に対する実際的な解決法を提供するが、この方法は、ピーク自己相関値Rxx(0)=Nの最大(単位)自己相関サイドローブ値に対する比Rを増大させることはできない。Rの値を増大させることにより、障害物検出システムの、大きい障害物(トラック等)に近接して位置するそれより小さい障害物(オートバイ等)を検出し識別する能力が向上する。
【0023】
したがって、特にマルチユーザ環境で動作することが意図されたシステムにおける適用するために、優れた自己相関特性、優れた相互相関特性、及び複数の小さい障害物と大きい障害物とを識別する改善された能力を有する多数のパルス列を生成する方法を提供することが望ましい。
【0024】
[発明の説明]
本発明の態様を、添付の特許請求の範囲に示す。
【0025】
本発明の別の態様によれば、狭い(narrow)自己相関関数(すなわち、すべての非ゼロシフトに対し、ゼロシフトにおける最大値より実質的に小さい値を有する自己相関関数)を有する主シンボルシーケンスを選択し、シーケンスの各シンボルを、有限持続時間の有限数の適当に選択された波形を含むセットからランダムに引き出された波形に置き換える(シンボルの代りに波形を使用する)。波形が、持続時間が同じであり、且つ受信器におけるそれらの識別を容易にするように互いに直交する(相関しない)ことが好ましい。
【0026】
明確にするために、本発明を、主に、主シンボルシーケンスが不連続のパルスの列であり、パルスが所定パケット内に配置される(但し、説明するようにこれらの特徴はいずれも必須ではない)構成の文脈で説明する。ランダムに選択された波形によってパルスを表すメカニズムを、ランダムパルスマッピングの何らかの形態として見てもよい。
【0027】
パルスマッピングに対してM個の直交波形を利用する場合、N個のパルスを含む単一パルスパケットを、MN個もの波形パケットによって表してもよく、すべてのパケットは、同じ時間情報を伝達するが異なるものであり、そのため受信器において識別可能である。
【0028】
ランダムパルスマッピングの動作は、パルス間隔に含まれる時間情報を保持し、ランダムパルスマッピング自体は、各パルスに対し、整数のセットからランダムに選択された指標を割り当てることに相当する。それらの指標を、物理的なシステムにおいて種々の異なる方法で(たとえば、波形の周波数により)表してもよい。
【0029】
「最大1つの一致」という特性を有するN個のパルスを含むパルスパケットにランダムマッピングが適用されない場合、ピーク自己相関値Rxx(0)の最大(単位)自己相関サイドローブ値に対する比Rは、単にNである。しかしながら、ランダムパルスマッピングに対しM個の直交波形が利用される場合、単位サイドローブ値は、平均して1/Mまで低減される。この効果は、パルスが「時間的に」一致するという要件が、ここで、個々のパルスに割り当てられた指標が等しい(追加の一致)という要件と結合されるという事実による。その結果、比Rの平均値はNMまで増大し、大きい障害物と小さい障害物との間の識別が改善されることになる。
【0030】
ランダムパルスマッピングは、単独で使用される場合であっても、マルチユーザ環境において相互妨害に対し優れた耐性を提供する。構成により、各ユーザが同じ主シンボルシーケンス(たとえば主パルスパケット)を繰返し使用してもよいが、対応する波形のシーケンスは、各ユーザがランダムに組み立てるため、統計的に一意である。マルチユーザ環境における相互妨害に対する耐性を、上述した且つ先願において開示された方法に従って個々のパケット間にランダムギャップを挿入することによりさらに向上させることができる。英国特許第2357610号明細書に開示された技法を使用して、ギャップの持続時間を確定することができる。
【0031】
障害物検出システムによっては、送信された波形のピーク出力が制限されており、それを増大させることができないが、距離分解能を高くするとともに検出を確実に達成することが主に重要である。かかる場合、ランダムパルス符号化に使用される直交波形のセットは、受信器において圧縮することができる波形を含むべきであり、それらの送信時の持続時間を、(Z+1)△まで増大することができる。ここでZ△は、パケットにおける主信号間の最短間隔である。ランダムパルスマッピングに対し「圧縮可能な」波形を使用することにより、結果としてのデューティファクタは、(Z+1)までのファクターで増大し、そうでなければそれは意図された適用に対して低すぎる可能性がある。
【0032】
圧縮可能な波形の広いクラスには、正弦波、一般にLFM、又は「チャープ(chirp)」パルスと呼ばれる線形周波数変調を伴う過渡信号、及び当業者には既知である他の波形が含まれる。
【0033】
先願に述べられているように、所望の相互相関特性を有する主パルスパケットを使用して、第1の主パルスパケットを時間的に反転させることにより同じ自己相関特性を有する別の主パルスパケットを構築することができる。これら2つの二重主パルスパケット間の相互相関関数は、2を上回る値を超過しない。本発明の好ましい態様では、パケットの基礎を、第1のパルスパケット及びその時間反転された(「鏡像」)複製を適当にインタリーブすることによって形成される基礎バイナリパルスシーケンスに置くことによって、より大きいデューティファクタを有するパルスパケットを形成することができる。かかる場合、第1のパルスパケットをマッピングするために1つの波形のセットを使用し、第1のパケットの「鏡像」複製をマッピングするために別の波形のセットを使用することが好ましい。2つの波形のセットが相互に排他的である、すなわち、いずれの波形も両方のセットに属する可能性がないことが望ましい。簡単な一例として、主パケットに使用される波形は、第1の周波数を有してもよく、鏡像複製に使用される波形は、第2の周波数を有してもよい。しかしながら、各パケットがいくつかの異なる波形を含むことが好ましい。
【0034】
本発明のさらに好ましい態様によれば、パルスパケットは、以下のように変更される自己相関制約を満足するように構築される。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで、パルスパケットは、シンボル0及び1の2値シーケンス{x1,x2,…xL}として表され、シンボル1はパルス発生に対応する。
【0037】
上記制約は、「最大1つの一致」という要件より限定的である。それは、すべての連続する遅延値d=1、2、…、Zに対し、自己相関シーケンスRxx(d)が0に等しくなければならないためである。したがって、結果としての自己相関シーケンスRxx(d)は、d=0の場合に値Nの主ピークの両側においてスパンZのゼロ相関ゾーンを示す。
【0038】
単一パルスの持続時間が△に等しい場合、ゼロ相関ゾーンは、Zc△/2に等しい障害物間の相対距離ZCDに対応する。ここで、cは、問合せパルスの速度である(cは、電磁パルスの光の速度である)。
【0039】
したがって、変更された自己相関制約を満足するパルスパケットを利用する障害物検出システムは、改良された障害物分解能を有する。それは、より大きい障害物(トラック等)に対応する自己相関関数のサイドローブが、その大きい障害物からの相対距離ZCD内に位置するより小さい障害物(バイク等)に関連する主自己相関ピークをもはや不明瞭にしないためである。
【0040】
変更された自己相関制約から、スパンZのゼロ相関ゾーンを取得するために、パルスパケットにおける任意の2つのパルス位置間の最小差が(Z+1)を下回る可能性がないことになる。
【0041】
本発明のこの態様を使用して、ランダムパルスマッピングの結果として達成される大きい障害物と小さい障害物との間の識別の改善がさらに向上する。
【0042】
上述した態様を結合すること、すなわち変更された自己相関制約(ゼロ相関ゾーンを拡張する)及びランダムパルスマッピングから得られる統計的サイドローブの低減を結合することにより、以下のパケット特性のセットがもたらされる。
1.自己相関ピークN
【0043】
【数7】
【0044】
2.ゼロ相関ゾーン
【0045】
【数8】
【0046】
3.ランダムパルスマッピングによる統計的サイドローブ低減
【0047】
【数9】
【0048】
ここで、サイドローブ値に対する統計的限界1/Mを、「長期的に見て」又は「平均して」満足することができる。実際の適用では、所与の距離にある障害物の存在又は不在に関する判断を、数千個のパルスパケットに基づいてもよいため、限界1/Mは有効に達成可能である。
【0049】
主シンボルシーケンスは、ギャップによって散在された同一のパルスを含んでもよい。この場合、パルスのタイミングは、狭い自己相関シーケンスが得られるようなものである。別法として、主シンボルシーケンスは、異なるタイプのシンボル(たとえば、シンボル−1及び1が異なる極性のパルスを表す2値シーケンス、3値シーケンス等)を含んでもよい。この場合、自己相関シーケンスは、特徴的なシンボルをそれらシンボルのタイミングとともに使用するため、狭い構造を有することができる。したがって、この情報を保存するために、ランダムパルスマッピングは、異なるシンボルタイプに対して異なる波形のセットを使用することが好ましく、各セットの波形は、概して、他のセットの波形から識別することができる。この可能性の特定の例は、上述した、パルスパケットをその「鏡像」反転された複製とインタリーブさせることである。
【0050】
ここで、例として添付図面を参照して本発明を具現化する構成について説明する。
【0051】
[好ましい実施形態の説明]
本発明によるシステムの構造について、以下に説明する。まず、かかるシステムで使用することができる問合せ信号のタイプについて言及する。
【0052】
図2aは、本発明に係る障害物検出システムによって使用される問合せ信号を導出するために使用することができる主パルスパケットの一例を示す。パケットは、106個の位置の中で分散された11のパルスを含み、パケットのパルス位置間の最小差は6に等しい(位置78と84との間)。図2bは、パケットの自己相関シーケンスを示す。パケットは、上述した変更された自己相関制約を満足する。このパケット構成によれば、ゼロ相関ゾーンのスパンは5である。個々のパルスの代わりにランダムに選択された波形を使用する。最も単純な構成では、ランダムパルスマッピングに使用される各波形の持続時間は、△、すなわち各主パルスの持続時間に等しい。
【0053】
図3は、主パルスパケット(図2aにすでに示したものと同じ)と、番号1、2、3及び4によって指標付けされた4つの利用可能な波形w1(t)、w2(t)、w3(t)及びw4(t)のうちの1つを選択することによって得られる、結果としての波形パケットとを示す。この場合、波形は、基本パルスパケットのパルスより大幅に長い。例示する目的で、波形選択に使用するランダムメカニズムは、以下の数字のシーケンスをもたらしたものとする。すなわち、1、4、1、2、3、1、3、3、4、2、4である。図示するように、主パルスパケット及び結果としての波形パケットは、時間的に整列しており、ともに同じ時間情報を含む。
【0054】
デューティファクタを向上させるために、基本パルスパケットを変更することができる。例示的な例として、図4(a)は、図2aの主パルスパケットと同じである第1のパルスパケットを示し、図4(b)は、パケットの「鏡像」複製を示し、図4(c)は、第1のパケットを、そのパケットの「鏡像」複製を時間シフトしたものとインタリーブすることによって得られるパルスパケットを示す。ここでもまた、実際には、個別のパルスの代わりに波形を使用する。上述したように、少なくとも実質的な数の、各パケットを表す波形が、他のパケットを表す波形から識別可能であることが重要である(また、それらが互いから識別可能であることが望ましい)。これを達成するために、波形の2つのセットを使用することが好ましく、第1のパケットのパルスの代わりに第1のセットからランダムに選択したものを使用し、「鏡像」複製パケットのパルスの代わりに第2のセットからランダムに選択したものを使用する。
【0055】
「最大1つの一致」という特性を有する1つの補足パケット(又は複数のパケット)を主パケット及びその「鏡像」複製の組合せに挿入すると、パルスパケットのデューティファクタをさらに増大させることができる。しかしながら、すべてのインタリーブされたパケットに属しているパルスのランダムマッピングに、波形のより多くのセットが必要となる。
【0056】
図5は、本発明による障害物検出システムのブロック図である。本システムは、シンボルのシーケンスを生成し、これらをランダム符号器REに提供するシンボル発生器SGを含む。ランダム符号器は、各シンボルの代わりにランダムに選択された波形を使用し、それら波形を、適当な送信アンテナTAに結合されたアンテナドライバADRに連続して引き渡す。
【0057】
ランダム復号器REは、波形セット発生器WS1、WS2、…WSJを含み、それらは各々、それぞれの波形のセットを生成することができる。それら発生器は、単に波形を格納するメモリであってもよい。各セット内の波形は、互いに直交しており、他のセットの波形に対して相互に直交している。ランダム符号器はまた、選択器SELを有する。選択器SELは、シンボル発生器SGから受け取った各シンボルのタイプに対応するシンボル値を確定し、それに応じて、波形記憶部WS1、WS2、…WSJのうちの対応する1つを選択する。選択器SELはまた、ランダムに指標値を選択し、これを使用して、選択された波形記憶部に格納された波形のうちの1つを選択し、これをアンテナドライバADRに出力する。
【0058】
ランダム符号器REはまた、ランダムに選択された波形を特定する情報をメモリMEMに送出する。格納されているデータは、シンボル発生器SGから受け取られたシンボルを表すシンボル値と、ランダムな指標値とを含むことが好ましい。
【0059】
適当な受信アンテナRAが入力増幅器IAMに接続されている。受信信号は、増幅器IAMによって復号器DECに提供され、復号器DECは、いずれの波形が受け取られるかを判断し、それらの波形を表す指標値を生成する。好ましい実施形態では、復号器DECは、整合フィルタ(matched filter)の複数のバンクを含み、それらは各々、波形のそれぞれのセットに対応する。復号器DECは、出力を提供するバンク内の特定のフィルタを表す指標値と、フィルタがいずれのバンクに属するかを示すシンボル値とを生成する。
【0060】
プロセッサPROは、復号器DECからの出力値と、メモリMEMからの出力値とを受け取る。メモリMEMからの出力値は、問い合せされている距離によって決まる量だけ遅延している。これらの値により、プロセッサPROは、送信波形のシーケンスと受信信号のシーケンスとの間の一致を検出することができ、それにより、障害物が検出されたことを示す出力を生成することができる。好ましくは、プロセッサPROは、メモリMEMによって提供される指標値と復号器DECによって提供される指標値との間に一致があるかチェックし、一致がある場合、メモリMEM及び復号器DECによって提供されるそれぞれのシンボルを相関器に入力する。相関器の出力は積分され、結果として生じた値は、特定の距離に物体が存在する可能性を示す。異なる遅延値を使用することにより、異なる距離に対して動作を繰り返すことができる。
【0061】
図6は、障害物検出システムの1つの特定の形態のより詳細なブロック図を示す。図6では、シンボル発生器SGを、クロック発生器CKGによって駆動されるパルスパケット発生器PPGとして実装する。ランダム符号器を、ランダムパルスマッパRPMとして実装する。メモリMEMを、直列入力並列出力シフトレジスタSIPOを使用して実装する。復号器DECを、M個の整合フィルタMF1、MF2、…MFMのバンクによって実装する。プロセッサPROを、複数の距離セルプロセッサRCPによって実装する。
【0062】
後述するように、本システムは、アンテナドライブADRと入力増幅器IAMとの両方に、適当な搬送周波数で正弦波信号を供給する発振器OSCを組み込んでもよい。
【0063】
パルスパケット発生器PPGは、ランダムパルスマッパRPMに、より詳細には、マルチプレクサMPXの入力PP、記憶レジスタSRGのロード入力LI及びパルス識別器PIDの入力PP(まとめて図5の選択器SELに対応する)に、パルスを繰り返し供給する。図6のシステムは、図2aに示すもの等の、同一のパルスを含むパルスパケットと使用するように意図されている。したがって、パルスが同一であるため、波形の1つのセットがあればよい。このセットを、M個の波形発生器WG1、WG2、…、WGMが提供する。(識別可能なパルスを含むパルスシーケンス(図4(c)に示すもの等)を処理するために、波形発生器の1つ又は複数の追加のセットを提供する。)
【0064】
発生器PPGによって供給される各パルスは、ランダム指標発生器RIGによって生成される数字の値に応じてM個の波形発生器から1つをトリガする。この値を、各パルス発生の時刻の前に入力INを介して記憶シフトレジスタSRGにロードする。
【0065】
好ましくは、M個の波形発生器WG1、WG2、…、WGMによって供給される波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)は、障害物によって反射される信号の識別を容易にするために相互に直交しているべきである。特に、各々の周波数が実質的に異なる正弦波の短いセグメントを使用することによって適当な波形のセットを生成することができる。この特定の場合では、整合フィルタのバンクは、バンドパスフィルタを含み、それらは各々、それぞれの正弦波の周波数に等しい中心周波数と、正弦波セグメントの持続時間(duration)に反比例する帯域幅とを有する。
【0066】
正弦波の短いセグメントを、適当に変更されたリング発振器又はブロッキング発振器(ringing or blocking oscillators)によって容易に生成することができる。米国特許第3612899号明細書(参照により本明細書に援用する)に開示された別の方法は、マイクロ波搬送周波数で電磁エネルギの非常に狭いパルスを直接形成することができる。
【0067】
マルチプレクサMPXの入力OSに保持されたランダム指標IDの値は、その指標値に対応するそれぞれの波形発生器をトリガするための各パルスに対する特定の経路を確定する。たとえば、指標値が2である場合、波形発生器WG2がトリガされることにより適当な波形w2(t)が生成され、それは、(加算増幅器SAM及びアンテナTAに結合されたドライバADRを介して)障害物に対する問合せ信号として送信される。
【0068】
波形発生器WG1、WG2、…、WGMによって生成される波形は、適当な1つの搬送周波数(又は複数の周波数)で生成される場合、アンテナTAによって問合せ信号として直接送信されることが可能である(適当な調整及び必要な場合はドライバADRにおける増幅後)。しかしながら、波形発生器WG1、WG2、…、WGMが波形のベースバンドバージョンしか供給することができない場合、それらの波形を送信アンテナTAに引き渡す前に何らかの形式の「アップコンバートすること」(変調)が必要となる。かかる場合、アンテナドライバADRは、補助発振器OSCによって提供され且つ入力CFを介してドライバADRに与えられる、或る搬送周波数での正弦波基準信号を利用する適当な変調器を組み込む。
【0069】
発生器PPGによって提供される各パルスに対し、パルス識別器PIDは、そのパルスに(ランダム指標発生器RIGによって)割り当てられたランダム指標IDを、パルス発生に関するタイミング情報(入力PPを介して提供される)と結合する。結果としての結合を、2値ワードで表してもよく、たとえば、1に等しい最上位ビット(MSB)がパルス発生をマークしてもよく、残りのビットが、そのパルスに割り当てられたランダム指標IDの値を表してもよい。
【0070】
このように作成された2値ワードは、入力DIを介してレジスタSIPOに与えられる。すなわち、それらのワードは、レジスタSIPOの入力CPに現れるクロックパルスによって確定される時刻にレジスタSIPO内にシフトされる。その結果、パルスパケット発生器PPGによって提供される各パルスは、一意にそれぞれの2値ワードによって表される。すなわち、パルス発生の時刻は、MSBを1に設定することにより対応するタイムスロット(すなわちクロック周期)に与えられており、ランダム指標IDは、2値ワードの残りのビットの値を確定するために使用されている。
【0071】
レジスタSIPOは、総遅延(クロック周期の単位で表される)が、使用される記憶セルの数、すなわち図6に示す構成ではWに等しい、デジタル離散時間遅延線として作用する。したがって、レジスタSIPOは、最新のWクロック周期中に生成されマッピングされるすべての主パルスに関する連続して更新される情報を格納し保持する。この情報は、レジスタSIPOのW個の並列出力において入手することができ、それぞれの距離セルプロセッサRCPに、すべてのレジスタSIPO出力又は選択されたレジスタSIPO出力のみが接続される。例示の目的で、図6は、対応するプロセッサRCPに接続されたレジスタSIPOの出力Kを示す。
【0072】
障害物によって反射され受信アンテナRAを介して受信される信号は、入力増幅器IAMに与えられる。整合フィルタMF1、MF2、…、MFMが、波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)のベースバンドバーションしか処理することができない場合、増幅器IAMに何らかの「ダウンコンバートする」(復調)手段を組み込まなければならなくなる。したがって、適当な周波数の正弦波基準信号を、増幅器IAMの入力CFに結合された補助発振器OSCによって提供することができる。
【0073】
M個の整合フィルタMF1、MF2、…、MFMのバンクは、以下のように動作するように構築される。整合フィルタの共通入力に、利用された波形w1(t)、w2(t)、…、wM(t)のうちのいずれかが与えられると、この特定の波形に整合するフィルタのみが明確な(unequivocal)応答をもたらし、残りのすべての整合フィルタの残余応答はごくわずかとなる。整合フィルタのバンクのこの特定の特性を利用して、ランダムパルスマッピング中に、受信信号から各基礎パルスに割り当てられたランダム指標IDの値が確実に回復する。各距離セルプロセッサRCPによって実行される機能及び動作を、以下のように要約することができる。
【0074】
1.レジスタSIPOのそれぞれの出力によって供給される各2値ワードは、ワード復号器WDRにおいて、パルス発生を示す信号PPと、ランダムパルスマッピング中にランダム指標発生器RIGによってそのパルスに割り当てられたランダム指標IDとに分解される。
【0075】
2.信号PPは、サンプリング回路SCTのサンプリング入力SSに与えられ、ランダム指標IDは、チャネル選択器CHSの入力ISを介して、その指標に対応する整合フィルタの出力を選択する。実施態様に応じて、各整合フィルタは、その出力に、受信波形の強度を示すマルチレベル(たとえばアナログ)信号を提供してもよく、又は受信波形の強度が背景雑音及び/又は干渉の強度より実質的に大きいか否かを示す単なる2値信号を提供してもよい。
【0076】
3.それぞれの整合フィルタのこのように選択された出力は、サンプリング回路SCTに与えられた後、入力SSに現れる信号PPと一致する時刻にサンプリングされる。整合フィルタがその出力において2値信号を生成する場合、サンプリング回路SCTを、単純な論理ゲートまで縮小することができる。付随的に、フィルタ出力の持続時間は、受信波形及びフィルタ特性によって決まる、ということが留意されよう。特性が、フィルタ出力が適当な持続時間を有するというものである場合、比較的長い波形を使用することが許容される。
【0077】
4.SCTの出力は、「積分・ダンプ」タイプ(integrate-and-dump)又は「移動平均(running-average)」(「移動窓」(moving-window))タイプであってもよい積分器INTに供給される。サンプリング回路SCTの代りに論理ゲートが使用される場合、適当に構成されたパルスカウンタが必要な積分を実行することも可能である。
【0078】
5.積分器INTによって達成された結果としてのレベルが、比較器CMPにおいて所定の判断閾値DTと比較される。判断閾値DTを上回る場合、それぞれの距離セルプロセッサRCPに接続されたレジスタSIPO出力の遅延に対応する距離セルにおいて、障害物の存在が宣言される。
【0079】
明らかなように、プロセッサRCP及び整合フィルタのバンクによって合同で実行される主な機能は、波形「デマッパ(de-mapper)」の機能に従来の相関受信器の機能を結合したものである。その結果、すべてのプロセッサRCPの判断出力は、障害物検出システムの視野(FOV)を構成する距離セルにおける潜在的な障害物の存在の包括的な像を提供し、そこから、かかる物体の距離を表す信号が生成される。適当な障害物追跡システムが、この「スナップショット」情報を利用して、運転手に警報を与える警告信号、及びエアバッグ、ブレーキ等の意図された衝突前作動装置の動作を開始するために使用される他の信号を生成することができる。個々の距離セルプロセッサRCPのバンクを使用する代りに、単一プロセッサRCPを、それぞれの距離における物体の存在に関する判断を逐次取得するようにレジスタSIPOのそれぞれ異なる出力に連続的に結合してもよい。
【0080】
システムが2つ以上のタイプのシンボルを使用する場合、レジスタSIPOに格納される各2値ワードに、生成されたシンボルのタイプを表す値が含まれる。また、各シンボルタイプに対し、M個の整合フィルタMF1、MF2、…、MFMのそれぞれのバンクと、関連するチャネル選択器CHSとがある。常に(最大)1つのチャネル選択器のみが出力を提供し、特定のチャネル選択器は受信シンボルによって決まる。このため、チャネル選択器の全体出力は、検出されたシンボルを表す値を生成することができる。これを、標準相関器の一方の入力に供給する。標準相関器は、他方の入力においてワード復号器WDRからシンボルタイプ値を受け取る。そして、相関器の出力を、サンプリング回路SCTに送出することができる。複数のシンボルタイプに関係するこの構成により、自己相関機能及び相互相関機能の改善が容易になり、そのため性能が向上する。
【0081】
図7は、パルスパケット発生器PPGの1つのあり得る構造のブロック図である。発生器は、順次状態モジュールSSM、状態復号器STD、ランダムギャップ発生器RGG及びクロック発生器CKGを備える。
【0082】
システム動作中、順次状態モジュールSSMは、クロック発生器CKGによって供給されるクロックパルスCLKによって確定される時刻にその状態を連続的に変化させる。順次状態モジュールSSMの明確に異なる状態の総数NSは、少なくとも、システムが使用する最長の主パルスパケットのスパンLmaxに等しくなければならない。このため、
【0083】
【数10】
【0084】
である。ここで、Kは、順次状態モジュールSSMによって利用されるフリップフロップの数である。順次状態モジュールSSMは、周期的に動作するように構成され、各サイクルは、総数NS=2Kの利用可能な明確に異なる状態から何らかの都合のよい方法で選択されたNU個の明確に異なる状態を含む。それらNU個の明確に異なる状態の間に、生成されるべき各パルスパケットのパルスの位置を表すN個の所定の状態がある。
【0085】
順次状態モジュールSSMの機能を、従来の2値カウンタにより、適当なフィードバックを有するシフトレジスタにより、又は当業者に周知の同様の順次状態機械により、実装することができる。
【0086】
状態復号器STDは、順次状態モジュールSSMのKビット出力によって駆動される。状態復号器STDは2つの出力を有する。すなわち、一方の出力は、複合パルス列CPTを供給し、他方はパケット終了(end-of-packet)EOPパルスを生成する。たとえば、パケット終了EOPパルスは、すべてのパルスパケットの立下り(trailing)パルスと一致してもよい。状態復号器STDのすべての機能を、組合せロジックによって実装してもよく、又は適当にプログラムされたリードオンリメモリによって実装してもよい。
【0087】
ランダムギャップ発生器RGGは、生成されているすべての主パルスパケットの立下りパルスにランダムギャップを付加する。ランダムギャップ発生器RGGの繰返し動作の各サイクルは、状態復号器STDによって供給されるパケット終了EOPパルスによって開始される。パケット終了パルスEOPにより、ランダム選択器RSは、遅延格納メモリDSに格納された複数の遅延値のうちの1つをランダムに選択する。選択された遅延値が遅延回路DLYに提供されることにより、クロック発生器CKGによって提供される対応する数のクロックパルスが抑止される。これにより、ランダムギャップ発生器RGGの出力CRGは、ランダムな数の連続パルスが抜けているクロックパルスのシーケンスを供給する。その結果、ランダムギャップの持続時間に等しいランダムな時間間隔中、順次状態モジュールSSMの動作が中断する。各ランダムギャップの持続時間が一様に分散され、且つランダムギャップが互いに独立して形成されることが好ましい。
【0088】
図7のパルスパケット発生器PPGは、同じパルスパケットを繰返し生成するが、先願で示したように、代りに、パルスパケットの所定のセットから連続的なパルスパケットがランダムに選択されるように構成することも可能である。
【0089】
上述した構成により、有限長のパルスパケットが繰返し生成され、マッピングプロセスを使用して、個々のパルスの代りに波形を使用する。さまざまな変更が可能である。
【0090】
図8は、パルスパケットの代りに使用することができる複数の代替シンボルシーケンスを示す。図8(a)では、主シンボルシーケンスは、非コヒーレントパルス列であり、パルスは同じ(単位)持続時間である。パルス間のギャップは、狭い自己相関シーケンスを得るように種々の量で変更された単位持続時間の倍数である。ランダム符号器は、各パルスの代りに、波形の単一セットからランダムに選択された波形を使用する。
【0091】
図8(b)は、ギャップによって分離された2値パルス列を含む代替主シンボルシーケンスを示す。図示する構成では、パルスは+1の値と−1の値とを有する。ランダム符号器は、波形の第1のセットからランダムに選択することにより各+1パルスに応答し、波形の第2のセットからランダムに選択することにより各−1パルスに応答する。復号器は、受信信号からバイポーラ波形を復元することが好ましく、このバイポーラ波形は、その後、メモリMEMに格納された送信波形と相関される。
【0092】
変更態様として、パルス列は、3つ以上の値のパルスを含むことができ、各異なる値は、それぞれの波形セットから選択されるようにする。
【0093】
図8(c)は、ギャップによって分離された明確に異なるパルスの形式のさらにあり得る主シンボルシーケンスを示し、明確に異なる各パルスは、各々が2つの異なる値のうちの一方を有することができる複数の隣接するサブパルス(たとえばBarker符号)を含む。この場合、ランダム符号器は、各サブパルスの代りにランダムに選択された波形を使用し、その波形は、サブパルスの値に応じてセットから選択される。
【0094】
図8(d)は、連続信号、この場合は擬似ランダム2値シーケンスの形式の主シンボルシーケンスの一例である。当然ながら、3値又は4値の擬似ランダムシーケンス等の他のシーケンスも別法として可能である。
【0095】
上述した構成では、送信される各シンボルに対して波形の固定セットがあり、このセットからのランダムな選択を、それぞれのシンボルが送信される度に行う。代替構成では、特定のシンボルを表すために使用される波形のセットを、適宜(好ましくはランダムに)変更する。
【0096】
この一例を、形式
+++−−−+−
というサブコードの7要素Barkerシーケンスを含む複合パルスの連続送信に関して説明する。
【0097】
システムに、自由に使用できる20個の波形、すなわちw1、w2、…、w20があるものとする。各複合パルスを送信する前に、システムは、たとえば波形のうちシンボル+を表す3つとシンボル−を表す3つの異なるシンボルをランダムに選択する。たとえば、検討中のシステムは、シンボル+を表すためにw3、w12、w19を選択し、シンボル−を表すためにw4、w5、w10を選択するものとする。選択されたセットを表す情報をメモリに格納する。次に、システムは、各シンボル+を送信するために{w3,w12,w19}から1つをランダムに選択し、各シンボル−を送信するために{w4,w5,w10}から1つをランダムに選択して、複合パルスを送信する。
【0098】
受信器では、メモリの内容(適当な遅延が与えられた後)を使用して整合フィルタの出力を構成することにより、w3、w12及びw19に一致するフィルタの出力が結合される(ORが取られる)ことによりシンボル出力+が提供されるようにし、同様に、w4、w5及びw10に一致するフィルタの出力のORが取られることによりシンボル出力−が提供されるようにする。このように、復号器は、+シンボル及び−シンボル(各シンボルは、6つの整合フィルタのいずれが最大出力を生成するかによって決まる)の出力シーケンスを提供する。相関器は、送信された主シーケンス+++−−+−の遅延バージョンを復号器出力シーケンスとともに使用することにより、相互相関の値を確定する。
【0099】
その結果、相関の動作が、ランダム符号化のために使用される波形に関する補助情報を利用して、主シーケンス(狭い自己相関を有する)と受信波形から復元されたそのバージョンとに対して実行される。
【0100】
そして、次の複合パルスを、異なるランダムに選択された波形を用いて送信してもよい。
【0101】
本発明を使用することにより、主シンボルシーケンスは、信号の形式で生成され、その後ランダム符号化されることが理解される。しかしながら、これは必須ではない。ランダムに選択された波形を、別々の予備的な動作として主シンボルシーケンスを生成する必要なしに、それらの必要なタイミングで直接生成することができる。(それにも関わらず、各波形シーケンスに対し、波形生成のタイミングに対応して、名目(nominal)主シンボルシーケンス及びその自己相関シーケンスを推定することが可能である。)
【0102】
図5の障害物検出システムを、可動プラットフォーム(車両又は船舶等)に取り付けてもよく、又は可動物体の接近を検出するために静止プラットフォームに取り付けてもよい。本システムは、物体の検出に応じて警告信号を生成するように構成された衝突警告システムであってもよい。さらに又は別法として、本システムは、障害物の距離を検出しその距離を示す信号を生成する測距支援システムであってもよい。
【0103】
複数のシステムによって生成される過渡信号のパケットが、上述した相互相関制約を満足することが望ましく、特に相互相関関数が、各自己相関関数の最大値と比較してすべて小さい値を有することが望ましい。さらに、各システムが同じ構造を有することが望ましいため、これらの条件が、個々のシステムによって生成される異なるパケットの相互相関特性に適用されることが望ましい。しかしながら、これを、上述した技法、特にパルスマッピング、パケット間のランダムな間隔、及び優れた相関特性を有するように選択されたタイミングシーケンスを提供することにより達成することができる。
【0104】
上記説明から、過渡信号(たとえば信号パルス又は波形)の形式に言及することが、それらの信号のベースバンド形式に関連するように意図されていることが明らかとなろう。明らかに、過渡信号が送信のための搬送波変調されるように使用される場合、送信波形の詳細な構成が異なってもよい。
【0105】
本明細書では、「ランダム」という用語は、限定なしに、純粋にランダムな非決定論的に生成される信号のみでなく、擬似ランダム2値信号及びカオス的信号を生成する、従来技術において使用されるようなフィードバック回路を備えるシフトレジスタ構成の出力等の擬似ランダムな且つ/又は決定論的な信号をも含むように意図される。
【0106】
本明細書で説明した実施形態を、たとえばデジタル信号プロセッサを組み込んだ専用ハードウェアを使用して実装することができ、又は適当にプログラムされた汎用コンピュータを使用して実装することができる。
【0107】
変調の何らかの適当なフォーマット、すなわちパルスの代りに波形を使用することが、現在好ましいものとしてみなされているが、問合せ信号に「透かしを入れる(watermarking)」ために波形及び波動現象の他の属性(たとえば電磁波の極性)もまた採用することができる。
【0108】
本発明の好ましい実施形態の上述した説明を、例示及び説明の目的で提示した。それは、網羅的であるように、又は本発明を開示した厳密な形式に限定するようには意図されていない。上述した説明に鑑みて、多くの改変、変更及び変形により当業者が本発明を企図された特定の用途に適合されたさまざまな実施形態において利用することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】複合パルス列の構造を示す図である。
【図2a】パルスパケットの一例の図である。
【図2b】図2aのパルスパケットを表す2値シーケンスの自己相関シーケンスを示す。
【図3】ランダムパルスマッピングの原理を示す図である。
【図4】デューティファクタが増大したパルスパケットの一例を示す図である。
【図5】障害物検出システムのブロック図である。
【図6】本発明によって動作するように構成されたランダムパルスマッパを組み込んだ図5のシステムの一実施態様のより詳細なブロック図である。
【図7】図6のシステムのパルスパケット発生器のブロック図である。
【図8】異なるタイプの主シンボルシーケンスを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形のシーケンスを生成する方法であって、
前記波形は、狭い自己相関関数を有する主シーケンスのシンボルに対応するタイミングで生成され、
各波形は、それぞれの所定の特性を有する波形のセットからランダムに選択される、波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項2】
前記主シンボルシーケンスは、ギャップによって分離された別個のパルスの列に対応する、請求項1に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項3】
前記パルスは、所定の構成のパケット内に配置される、請求項2に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項4】
パケット内の隣接するパルス間の最小ギャップは所定値を超過し、
それにより、前記パケットの自己相関シーケンスは、所定限界を超過しない連続した相対的なシフトに対してゼロ値を示す、請求項3に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項5】
前記セットの波形は、実質的に相互に直交する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項6】
前記波形は、それぞれ異なる周波数を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項7】
前記主シンボルシーケンスは、複数のタイプのシンボルを含み、
各波形は、各々がそれぞれのシンボルタイプに対応する複数の波形セットのうちの1つから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項8】
前記主シンボルシーケンスは、第2のパルスシーケンスとインタリーブされた第1のパルスシーケンスを含み、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスの時間反転された複製であり、
各パルスシーケンスに対応する少なくとも実質的な数の前記波形は、前記他方のパルスシーケンスに対応するものから識別可能である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項9】
物体を検出する方法であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載された方法を使用して生成される波形のシーケンスを送信することと、
前記送信された波形の反射を受信することと、
前記送信された波形と受信された波形との一致を確定することと
を含む、物体を検出する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の物体を検出する方法であって、
前記送信された波形は、各々が前記主シンボルシーケンスのそれぞれのシンボルタイプに対応するセットから選択され、
前記方法は、受信されたシンボルシーケンスを取得するように前記受信された波形を復号することと、前記送信された波形と前記受信された波形との一致を確定するように前記主シンボルシーケンスを前記受信されたシンボルシーケンスと相互相関させることとを含む方法。
【請求項11】
いずれの波形がランダムに選択されたかを示すデータを格納するステップと、
前記格納されたデータを使用して、前記送信された波形と前記受信された波形との一致を確定するステップと
を含む、請求項9又は10に記載の物体を検出する方法。
【請求項12】
波形のシーケンスを生成する装置であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法に従って動作するように構成された、波形のシーケンスを生成する装置。
【請求項13】
マルチユーザ環境で使用される障害物検出装置であって、
請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法に従って動作するように構成された、障害物検出装置。
【請求項14】
検出された物体の距離を示す信号を提供する手段を有する、請求項13に記載の障害物検出装置。
【請求項15】
車両又は船舶において潜在的な衝突を検出するために使用される、請求項13又は14に記載の障害物検出装置。
【請求項16】
車両又は船舶のための衝突警告システムであって、
請求項15に記載の障害物検出装置と、
障害物検出に応じて警告信号を生成する手段と
を具備する衝突警告システム。
【請求項17】
車両又は船舶のための測距支援装置であって、
請求項15に記載の障害物検出装置と、
検出された障害物の距離を示す信号を生成する手段と
を具備する測距支援装置。
【請求項1】
波形のシーケンスを生成する方法であって、
前記波形は、狭い自己相関関数を有する主シーケンスのシンボルに対応するタイミングで生成され、
各波形は、それぞれの所定の特性を有する波形のセットからランダムに選択される、波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項2】
前記主シンボルシーケンスは、ギャップによって分離された別個のパルスの列に対応する、請求項1に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項3】
前記パルスは、所定の構成のパケット内に配置される、請求項2に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項4】
パケット内の隣接するパルス間の最小ギャップは所定値を超過し、
それにより、前記パケットの自己相関シーケンスは、所定限界を超過しない連続した相対的なシフトに対してゼロ値を示す、請求項3に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項5】
前記セットの波形は、実質的に相互に直交する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項6】
前記波形は、それぞれ異なる周波数を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項7】
前記主シンボルシーケンスは、複数のタイプのシンボルを含み、
各波形は、各々がそれぞれのシンボルタイプに対応する複数の波形セットのうちの1つから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項8】
前記主シンボルシーケンスは、第2のパルスシーケンスとインタリーブされた第1のパルスシーケンスを含み、
前記第2のパルスシーケンスは、前記第1のパルスシーケンスの時間反転された複製であり、
各パルスシーケンスに対応する少なくとも実質的な数の前記波形は、前記他方のパルスシーケンスに対応するものから識別可能である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の波形のシーケンスを生成する方法。
【請求項9】
物体を検出する方法であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載された方法を使用して生成される波形のシーケンスを送信することと、
前記送信された波形の反射を受信することと、
前記送信された波形と受信された波形との一致を確定することと
を含む、物体を検出する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の物体を検出する方法であって、
前記送信された波形は、各々が前記主シンボルシーケンスのそれぞれのシンボルタイプに対応するセットから選択され、
前記方法は、受信されたシンボルシーケンスを取得するように前記受信された波形を復号することと、前記送信された波形と前記受信された波形との一致を確定するように前記主シンボルシーケンスを前記受信されたシンボルシーケンスと相互相関させることとを含む方法。
【請求項11】
いずれの波形がランダムに選択されたかを示すデータを格納するステップと、
前記格納されたデータを使用して、前記送信された波形と前記受信された波形との一致を確定するステップと
を含む、請求項9又は10に記載の物体を検出する方法。
【請求項12】
波形のシーケンスを生成する装置であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法に従って動作するように構成された、波形のシーケンスを生成する装置。
【請求項13】
マルチユーザ環境で使用される障害物検出装置であって、
請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法に従って動作するように構成された、障害物検出装置。
【請求項14】
検出された物体の距離を示す信号を提供する手段を有する、請求項13に記載の障害物検出装置。
【請求項15】
車両又は船舶において潜在的な衝突を検出するために使用される、請求項13又は14に記載の障害物検出装置。
【請求項16】
車両又は船舶のための衝突警告システムであって、
請求項15に記載の障害物検出装置と、
障害物検出に応じて警告信号を生成する手段と
を具備する衝突警告システム。
【請求項17】
車両又は船舶のための測距支援装置であって、
請求項15に記載の障害物検出装置と、
検出された障害物の距離を示す信号を生成する手段と
を具備する測距支援装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2007−526989(P2007−526989A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518351(P2006−518351)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002931
【国際公開番号】WO2005/006014
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002931
【国際公開番号】WO2005/006014
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
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