説明

波数推定装置

【課題】精度よくメインビーム内の到来波数を推定することができるようにする。
【解決手段】メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定部12と、その基底ベクトルを用いて、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理部13とを設け、メインビーム内波数推定部14がビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号とメインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルから、メインビーム内の到来波数を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナのメインビーム内の到来波数を推定する波数推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、以下の非特許文献1,2に開示されている波数推定装置では、事前に大まかな電波の到来範囲を決めて、この到来範囲に対応するステアリングベクトルの部分空間を求め、そのステアリングベクトルの部分空間と、受信信号から求まる固有ベクトルとの相関によって波数を推定するようにしている。
【0003】
以下の非特許文献1では、到来範囲に対応する部分空間を到来範囲の中心方向(メインビーム方向)に対応するステアリングベクトル及びその微分ベクトルによって規定する方法を提案している。
しかしながら、外部アンテナからの校正信号を用いて得られたステアリングベクトルを用いる場合などには、雑音等のランダム成分が重畳されており、その微分ベクトルを正確に求めることが困難である。
【0004】
一方、以下の非特許文献2では、到来範囲内のステアリングベクトルから求まる固有ベクトルよって部分空間を規定する方法を提案している。
この方法では、外部アンテナからの校正信号などを用いれば、アンテナの相互結合やチャネル間のばらつきなどの装置自身が有する誤差も含めることが可能であり、実用的である。
しかしながら、メインビームの部分空間の設定方法や波数推定方法の具体的な手段が不明である。
また、非特許文献2に開示されている計算機シミュレーション結果を見ると、低SNR(Signal to Noise power Ratio)における波数推定性能が、固有値を用いる波数推定法であるAIC(Akaike Information Criteria)より低いことが明らかである。
【0005】
【非特許文献1】「H.Lee, F.Li, “An eigenvector Technique for detecting the number of emitters in a cluster,” IEEE Trans. Signal Processing, vol.42、 no.9, pp.2380-2388, Sep. 1994.」
【非特許文献2】「高橋龍平、諏訪啓、稲葉敬之、“アンテナメインビーム幅内ステアリングベクトルの部分空間構造を利用した目標数推定法、”信学論(B), vol.J89-B, no.7, pp.1124-1130, Jul, 2006」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の波数推定装置は以上のように構成されているので、外部アンテナからの校正信号を用いて得られたステアリングベクトルを用いる場合などには、雑音等のランダム成分が重畳されており、その微分ベクトルを正確に求めることが困難である。そのため、メインビーム内の到来波数の推定精度が劣化することがあるなどの課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、精度よくメインビーム内の到来波数を推定することができる波数推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る波数推定装置は、メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルを用いて、到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理手段とを設け、メインビーム内波数推定手段がビーム空間処理手段によるビーム空間処理後の到来波信号とメインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、メインビーム内の到来波数を推定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルを用いて、到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理手段とを設け、メインビーム内波数推定手段がビーム空間処理手段によるビーム空間処理後の到来波信号とメインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、メインビーム内の到来波数を推定するように構成したので、精度よくメインビーム内の到来波数を推定することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による波数推定装置を示す構成図であり、図において、送信機1は予め設定された諸元に基づいて送信信号(電磁波)を生成し、その送信信号を複数のサーキュレータ2に出力する処理を実施する。
複数のサーキュレータ2は送信機1から出力された送信信号を移相器4に出力し、移相器4から出力されたアンテナ5の受信信号である到来波信号を受信機6に出力する処理を実施する。
【0011】
移相値算出部3は複数のアンテナ5のメインビーム方向に応じた移相値を算出し、その移相値を複数の移相器4に設定する処理を実施する。
複数の移相器4は移相値算出部3により設定された移相値だけサーキュレータ2から出力された送信信号の位相を移相するとともに、アンテナ5により受信された到来波信号の位相を移相する処理を実施する。
複数のアンテナ5は素子アンテナもしくはサブアレーアンテナであり、移相器4から出力された送信信号をメインビーム方向に放射する一方、メインビーム方向から到来する到来波信号(目標やクラッタに反射された送信信号の反射波)、あるいは、サイドローブ方向から到来する妨害波を受信する。
【0012】
複数の受信機6はサーキュレータ2から出力された到来波信号を取得し、その到来波信号の周波数をダウンコンバートして、その到来波信号をベースバンド信号に変換する処理を実施する。
なお、サーキュレータ2、移相値算出部3、移相器4及び受信機6から到来波信号取得手段が構成されている。
【0013】
複数のAD(Analog to Digital)変換器7は受信機6から出力されたアナログのベースバンド信号をディジタル信号に変換する処理を実施する。
複数のクラッタ抑圧部8はクラッタのドップラ周波数にヌルを有するドップラフィルタを用いて、AD変換器7によりディジタル信号に変換されたベースバンド信号に対するクラッタ抑圧処理を実施することにより、目標以外の不要波であるクラッタを抑圧する。
妨害波抑圧部9は妨害波の到来方向にヌルを有する空間フィルタを用いて、クラッタ抑圧部8によりクラッタが抑圧されたベースバンド信号に対する妨害波抑圧処理を実施することにより、目標以外の不要波である妨害波を抑圧する。
【0014】
積分部10は妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号を積分して、目標信号であるベースバンド信号のSNRを改善する処理を実施する。
目標検出部11は積分部10により積分された目標信号に対する振幅検波処理及び閾値処理を実施して目標を検出する。
なお、積分部10及び目標検出部11から目標検出手段が構成されている。
【0015】
メインビーム部分空間特定部12は予め設定された設計値、あるいは、校正試験時の実測値(校正試験時において、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号)を用いて、メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出する処理を実施する。
なお、メインビーム部分空間特定部12はメインビーム部分空間特定手段を構成している。
ビーム空間処理部13はメインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルを用いて、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号に対するビーム空間処理を実施する。なお、ビーム空間処理部13はビーム空間処理手段を構成している。
【0016】
メインビーム内波数推定部14は目標検出部11により目標が検出されると、ビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号と、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルとから、メインビーム内の到来波数を推定する処理を実施する。なお、メインビーム内波数推定部14はメインビーム内波数推定手段を構成している。
【0017】
図2はこの発明の実施の形態1による波数推定装置のメインビーム部分空間特定部12を示す構成図であり、図において、メインビーム相関行列算出部21はアンテナ5のメインビーム内に到来する到来波信号のステアリングベクトルからメインビーム相関行列を算出する処理を実施する。
メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部22はメインビーム相関行列算出部21により算出されたメインビーム相関行列の固有値及び固有ベクトルを算出する処理を実施する。
メインビーム部分空間設定部23はメインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部22により算出されたメインビーム相関行列の固有値にしたがってメインビーム部分空間の次元を設定し、メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部22により算出された固有ベクトルの中で、その次元に属する固有ベクトルをメインビーム部分空間の基底ベクトルに設定する処理を実施する。
【0018】
図3はこの発明の実施の形態1による波数推定装置のメインビーム内波数推定部14を示す構成図であり、図において、到来波信号相関行列算出部31はビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号の相関行列を算出する処理を実施する。
到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32は到来波信号相関行列算出部31により算出された相関行列の固有値及び固有ベクトルを算出する処理を実施する。
【0019】
波数推定評価関数決定部33は到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32により算出された固有ベクトルと、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルとから波数推定評価関数を決定する処理を実施する。
波数推定部34は波数推定評価関数決定部33により決定された波数推定評価関数の関数値から波数を推定する処理を実施する。
【0020】
次に動作について説明する。
メインビーム部分空間特定部12、ビーム空間処理部13及びメインビーム内波数推定部14を除く、図1の波数推定装置の構成は、目標を探知するためのディジタルビームフォーミング(DBF:Digital Beamforming)方式のレーダの一般的な構成である。
【0021】
まず、送信機1は、予め設定された諸元に基づいて送信信号(電磁波)を生成し、その送信信号を複数のサーキュレータ2に出力する。
サーキュレータ2は、送信機1から送信信号を受けると、その送信信号を移相器4に出力する。
【0022】
移相値算出部3は、複数のアンテナ5のメインビーム方向に応じた移相値を算出し、その移相値を複数の移相器4に設定する。
移相器4は、サーキュレータ2から送信信号を受けると、移相値算出部3により設定された移相値だけ、その送信信号の位相を移相して、移相後の送信信号をアンテナ5に給電する。
これにより、複数のアンテナ5から送信信号がメインビーム方向に放射される。
【0023】
複数のアンテナ5からメインビーム方向に放射された送信信号は、目標やクラッタに反射される。
これにより、複数のアンテナ5によりメインビーム方向から到来する到来波信号(目標やクラッタに反射された送信信号の反射波)が受信される。また、サイドローブ方向から到来する妨害波も受信される。
【0024】
移相器4は、アンテナ5がメインビーム方向から到来する到来波信号(サイドローブ方向から到来する妨害波を含む)を受信すると、移相値算出部3により設定された移相値だけ、その到来波信号の位相を移相して、移相後の到来波信号をサーキュレータ2に出力する。
サーキュレータ2は、移相器4から到来波信号を受けると、その到来波信号を受信機6に出力する。
【0025】
受信機6は、サーキュレータ2から到来波信号を受けると、その到来波信号の周波数をダウンコンバートして、その到来波信号をベースバンド信号に変換する。
AD変換器7は、受信機6からアナログのベースバンド信号を受けると、そのベースバンド信号をディジタル信号に変換し、ディジタルのベースバンド信号をクラッタ抑圧部8に出力する。
【0026】
クラッタ抑圧部8は、AD変換器7からディジタルのベースバンド信号を受けると、クラッタのドップラ周波数にヌルを有するドップラフィルタを用いて、そのベースバンド信号に対するクラッタ抑圧処理を実施することにより、目標以外の不要波であるクラッタを抑圧する。
具体的なドップラフィルタとして、例えば、MTI(Moving Target Indicator)やAMTI(Adaptive Moving Target Indicator)などがある。
【0027】
妨害波抑圧部9は、クラッタ抑圧部8からクラッタ抑圧後のベースバンド信号を受けると、妨害波の到来方向にヌルを有する空間フィルタを用いて、そのベースバンド信号に対する妨害波抑圧処理を実施することにより、目標以外の不要波である妨害波を抑圧する。
具体的な空間フィルタとして、例えば、SMI(Sample Matrix Inverse)やPCI(Principal Component Inverse)がある。
【0028】
積分部10は、目標信号であるベースバンド信号のSNRを改善するため、妨害波抑圧部9から妨害波抑圧後のベースバンド信号を受ける毎に、そのベースバンド信号を積分する。
なお、SNR改善方法として、例えば、DBF及びパルスドップラフィルタを用いるコヒーレント積分などがある
目標検出部11は、積分部10により積分された目標信号を受けると、その目標信号に対する振幅検波処理及び閾値処理を実施して目標を検出する。
なお、具体的な閾値処理として、例えば、CFAR(Constant False Alarm Ratio)処理などがある。
【0029】
上記のDBF方式のレーダでは、メインビーム方向から複数の目標信号(到来波信号)が受信された場合、これらの目標信号が互いにレーダの距離分解能、あるいは、ドップラ分解能以上に離れていれば、別々に目標を検出することが可能であり、その検出数が目標数となる。
しかしながら、複数の目標信号が距離分解能及びドップラ分解能以下の場合には、これらの目標信号から目標を検出して目標数とすると、目標数を誤ってしまうことがある。
即ち、複数の目標が存在するにもかかわらず、1つ目標として取り扱われることがあり、このような場合、オペレータがレーダ周囲の状況を誤って認識してしまうほか、モノパルス測角や超分解能測角等による目標の角度等の推定が正しく行えないシステム的な問題に発展する。
このため、距離分解能及びドップラ分解能以下の複数の目標数を正しく推定することは重要な課題である。
【0030】
そこで、この実施の形態1では、メインビーム内に到来する目標を距離方向及びドップラ方向で分離することが困難な場合に備えるため、メインビーム部分空間特定部12、ビーム空間処理部13及びメインビーム内波数推定部14をDBF方式のレーダに付加するようにしている。
【0031】
メインビーム部分空間特定部12は、目標等の観測を行う実運用以前に、予め処理を実施して、メインビーム部分空間を張る正規直交ベクトルである基底ベクトルを算出する。
即ち、メインビーム部分空間特定部12は、予め設定された設計値、あるいは、校正試験時の実測値(校正試験時において、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号)を用いて、メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出する。
以下、メインビーム部分空間特定部12の処理内容を具体的に説明する。
【0032】
メインビーム部分空間特定部12のメインビーム相関行列算出部21は、アンテナ5のメインビーム内に到来する到来波信号のステアリングベクトル、即ち、下記の式(1)に示すように、メインビーム内のMB個のM次元ステアリングベクトルa(θmb)(mb=1,2,・・・,MB)からメインビーム相関行列RMBを算出する。ただし、Mはアンテナ5の本数である。
【数1】

ただし、ステアリングベクトルa(θmb)は、設計値あるいは校正試験時の実測値を利用するものとする。
【0033】
メインビーム部分空間特定部12のメインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部22は、メインビーム相関行列算出部21がメインビーム相関行列RMBを算出すると、下記の式(2)に示すように、そのメインビーム相関行列RMBの固有値λMBm(m=1,2,・・・,M)及び固有ベクトルeMBmを(m=1,2,・・・,M)算出する。
【数2】

ただし、EMBはM個の固有ベクトルeMBmを列ベクトルとする行列であり、ΛMBはM個の固有値λMBmを対角項にもつ対角行列である。
【0034】
なお、メインビーム相関行列RMBは、エルミート行列であることから、固有値λMBmは実数となり、固有ベクトルeMBmは互いに直交する性質を有する。
よって、固有値λMBmを降順に並べれば、下記の式(3)〜(5)の関係が成立する。
【数3】

【0035】
メインビーム相関行列RMBの固有値λMBm及び固有ベクトルeMBmは、メインビーム内のステアリングベクトルa(θmb)が存在するM次元部分空間を表すものである。
特に、固有ベクトルeMBmがM次元部分空間を張る正規直交基底ベクトルであり、その正規直交基底ベクトルに対応する固有値λMBmがその寄与度を示しており、固有値λMBmが大きいほど寄与度が高い。
このため、値が比較的大きいD個の固有値λMBmに着目して、これに対応するD個の固有ベクトルeMBmを選択すると、M次元部分空間を少ない次元数Dで近似的に表すことができる。ここでは、次元数Dで定義することができる部分空間を「メインビーム部分空間」と称する。
【0036】
メインビーム部分空間特定部12のメインビーム部分空間設定部23は、メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部22がメインビーム相関行列RMBの固有値λMBm及び固有ベクトルeMBmを算出すると、そのメインビーム相関行列RMBの固有値λMBmにしたがってメインビーム部分空間の次元数Dを設定する。
以下、次元数Dの設定方法について、具体的に3つの手段を提示する。
【0037】
メインビーム部分空間の次元数Dを設定する第1の手段では、メインビーム相関行列RMBの固有値λMBmを降順に並べたときの累積固有値率CMB(m)(0<CMB(m)≦1)を下記の式(6)より算出して、その累積固有値率CMB(m)を予め設定された累積率閾値CMB_Set(0<CMB_Set<1)と比較する。
そして、CMB(m)≧CMB_Setとなる最小のmをメインビーム部分空間の次元数Dに設定する。
【数4】

【0038】
メインビーム部分空間の次元数Dを設定する第2の手段では、メインビーム相関行列RMBの固有値λMBmを降順に並べ、隣り合う固有値間の差GMB(l)(l=1,2,・・・,M−1)を下記の式(7)より算出して、隣り合う固有値間の差GMB(l)が最大になるlをメインビーム部分空間の次元数Dに設定する。
【数5】

【0039】
メインビーム部分空間の次元数Dを設定する第3の手段では、予め決めた値D0をそのままメインビーム部分空間の次元数Dに設定する。
メインビーム部分空間設定部23は、第1〜第3の手段でメインビーム部分空間の次元数Dを設定すると、対応するD個の固有ベクトルeMBd(d=1,2,・・・,D)を選択し、その固有ベクトルeMBdをメインビーム部分空間を張る正規直交ベクトル(基底ベクトル)に設定する。
なお、D個のメインビーム部分空間の固有ベクトルeMBdを列ベクトルとするビーム空間行列を定義する。
【数6】

【0040】
ビーム空間処理部13は、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルを用いて、メインビーム部分空間に存在する到来波信号に対するビーム空間処理を実施する。
即ち、ビーム空間処理部13は、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号X(n)(n=1,2,・・・,N、Nはスナップショット数)に対して、下記の式(9)によるビーム空間処理を実施する。
【数7】

ただし、AはK波の目標信号のそれぞれの到来方向(θk)(k=1,2,・・・,K)に対するステアリングベクトルa(θk)を列ベクトルとする行列である。
また、F(n)は目標信号の複素振幅ベクトルであり、N(n)はガウス雑音ベクトルである。
ここでは、クラッタや妨害波は、十分抑圧されているものとして無視している。
【0041】
メインビーム内波数推定部14は、目標検出部11が目標を検出すると、ビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号X(n)と、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルeMBdとから、メインビーム内の到来波数を推定する。
以下、メインビーム内波数推定部14の処理内容を具体的に説明する。
【0042】
メインビーム内波数推定部14の到来波信号相関行列算出部31は、下記の式(11)に示すように、ビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号ベクトルXB(n)の相関行列RBを算出する。
【数8】

【0043】
メインビーム内波数推定部14の到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32は、到来波信号相関行列算出部31がベースバンド信号ベクトルXB(n)の相関行列RBを算出すると、その相関行列RBの固有値λBd及び固有ベクトルeBdを算出する。
【数9】

ただし、EBはD個の固有ベクトルeBdを列ベクトルとする行列であり、ΛBはD個の固有値λBdを対角項にもつ対角行列である。
【0044】
なお、ベースバンド信号ベクトルXB(n)の相関行列RBは、エルミート行列であることから、固有値λBdは実数となり、固有ベクトルeBdは互いに直交する性質を有する。
よって、固有値λBdを降順に並べれば、下記の式(13)〜(15)の関係が成立する。
【数10】

【0045】
ここで、ベースバンド信号に対してビーム空間処理を実施しているので、D個のメインビーム部分空間の固有ベクトルeMBdに対しても、下記の式(16)に示すように、ビーム空間処理を実施する。
【数11】

これより明らかなように、D個のビーム空間処理後のメインビーム部分空間の固有ベクトルは単位行列Iの列ベクトルudとなる.
【0046】
メインビーム内波数推定部14の波数推定評価関数決定部33は、到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32が相関行列RBの固有ベクトルeBdを算出すると、その相関行列RBの固有ベクトルeBdと、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルeMBdとから波数推定評価関数を決定する。
以下、波数推定評価関数の決定方法について、具体的に2つの手段を提示する。
【0047】
波数推定評価関数を決定する第1の手段では、下記の式(17)に示すように、相関行列RBの固有ベクトルeBdをビーム空間処理後のメインビーム部分空間に射影したときの射影長を示す関数P1(d)を波数推定評価関数に決定する。
【数12】

【0048】
波数推定評価関数を決定する第2の手段では、下記の式(18)に示すように、相関行列RBの固有ベクトルeBdをビーム空間処理後のメインビーム部分空間を張る固有ベクトルに射影したときの射影長を示す関数P2(d)を波数推定評価関数に決定する。
【数13】

【0049】
メインビーム内波数推定部14の波数推定部34は、波数推定評価関数決定部33が波数推定評価関数に決定すると、その波数推定評価関数の関数値から波数を推定する。
即ち、波数推定部34は、波数推定評価関数決定部33により決定された波数推定評価関数P1(d)(または、P2(d))の値と、予め設定された閾値を比較して、波数推定評価関数P1(d)の値が閾値を超える回数を計数し、その回数を波数の推定結果Kとする。
あるいは、波数推定評価関数P1(d)(または、P2(d))における隣り合う関数値の差が最大となる固有値の番号lを波数の推定結果Kとする。
【数14】

【0050】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、そのメインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定部12と、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルを用いて、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理部13とを設け、メインビーム内波数推定部14がビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号とメインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルから、メインビーム内の到来波数を推定するように構成したので、精度よくメインビーム内の到来波数を推定することができる効果を奏する。
また、ビーム空間処理によりメインビーム内に到来する目標信号(到来波信号)のSNRを高くすることができる効果を奏する。
【0051】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による波数推定装置を示す構成図である。
図4の波数推定装置では、ビーム空間処理部13を実装していない点で、図1の波数推定装置と相違している。
この実施の形態2では、上記実施の形態1で定義しているビーム空間行列Bを単位行列Iと置き換えれば、上記実施の形態1と同様に取り扱うことができる。
そこで、この実施の形態2では、メインビーム内波数推定部14の処理内容についてのみ説明する。
【0052】
メインビーム内波数推定部14の到来波信号相関行列算出部31は、下記の式(20)に示すように、ビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号X(n)の相関行列Rを算出する。
【数15】

【0053】
メインビーム内波数推定部14の到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32は、到来波信号相関行列算出部31がベースバンド信号ベクトルX(n)の相関行列Rを算出すると、その相関行列Rの固有値λm及び固有ベクトルemを算出する。
【数16】

ただし、EはM個の固有ベクトルemを列ベクトルとする行列であり、ΛはM個の固有値λmを対角項にもつ対角行列である。
【0054】
なお、ベースバンド信号X(n)の相関行列Rは、エルミート行列であることから、固有値λmは実数となり、固有ベクトルemは互いに直交する性質を有する。
よって、固有値λmを降順に並べれば、下記の式(22)〜(24)の関係が成立する。
【数17】

【0055】
メインビーム内波数推定部14の波数推定評価関数決定部33は、到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部32が相関行列Rの固有ベクトルemを算出すると、その相関行列Rの固有ベクトルemと、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルeMBdとから波数推定評価関数を決定する。
以下、波数推定評価関数の決定方法について、具体的に2つの手段を提示する。
【0056】
波数推定評価関数を決定する第1の手段では、下記の式(25)に示すように、相関行列Rの固有ベクトルemをビーム空間処理後のメインビーム部分空間に射影したときの射影長を示す関数P1(m)を波数推定評価関数に決定する。
【数18】

【0057】
波数推定評価関数を決定する第2の手段では、下記の式(26)に示すように、相関行列Rの固有ベクトルemをビーム空間処理後のメインビーム部分空間を張る固有ベクトルに射影したときの射影長を示す関数P2(m)を波数推定評価関数に決定する。
【数19】

【0058】
メインビーム内波数推定部14の波数推定部34は、波数推定評価関数決定部33が波数推定評価関数に決定すると、その波数推定評価関数の関数値から波数を推定する。
即ち、波数推定部34は、波数推定評価関数決定部33により決定された波数推定評価関数P1(m)(または、P2(m))の値と、予め設定された閾値を比較して、波数推定評価関数P1(m)の値が閾値を超える回数を計数し、その回数を波数の推定結果Kとする。
あるいは、波数推定評価関数P1(m)(または、P2(m))における隣り合う関数値の差が最大となる固有値の番号lを波数の推定結果Kとする。
【数20】

【0059】
この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、精度よくメインビーム内の到来波数を推定することができる効果を奏する。
また、ビーム空間処理を実施しないため、アレー自由度が削減されず、対処目標数が削減されない効果を奏する。
【0060】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による波数推定装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
メインビーム内波数推定部41は図1のメインビーム内波数推定部14と同様の処理部であり、目標検出部11により目標が検出されると、ビーム空間処理部13によるビーム空間処理後のベースバンド信号と、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルとから、メインビーム内の到来波数を推定する処理を実施する。なお、メインビーム内波数推定部41は第1のメインビーム内波数推定手段を構成している。
【0061】
メインビーム内波数推定部42は図4のメインビーム内波数推定部14と同様の処理部であり、目標検出部11により目標が検出されると、妨害波抑圧部9により妨害波が抑圧されたベースバンド信号と、メインビーム部分空間特定部12により算出された基底ベクトルとから、メインビーム内の到来波数を推定する処理を実施する。なお、メインビーム内波数推定部42は第2のメインビーム内波数推定手段を構成している。
波数検定部43はメインビーム内波数推定部41により推定された到来波数Kとメインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kを比較し、大きい方の到来波数を最終的な波数推定結果として選択する処理を実施する。なお、波数検定部43は波数検定手段を構成している。
【0062】
次に動作について説明する。
メインビーム内波数推定部41は、図1のメインビーム内波数推定部14と同様にして、メインビーム内の到来波数Kを推定する。
メインビーム内波数推定部42は、図4のメインビーム内波数推定部14と同様にして、メインビーム内の到来波数Kを推定する。
【0063】
波数検定部43は、メインビーム内波数推定部41,42がメインビーム内の到来波数Kを推定すると、メインビーム内波数推定部41により推定された到来波数Kと、メインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kとを比較し、大きい方の到来波数Kを最終的な波数推定結果として選択する。
【0064】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、波数検定部43がメインビーム内波数推定部41により推定された到来波数Kとメインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kを比較し、大きい方の到来波数を最終的な波数推定結果として選択するように構成したので、上記実施の形態1よりも更に、メインビーム内の到来波数の推定精度を高めることができる効果を奏する。
【0065】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4による波数推定装置を示す構成図であり、図において、図5と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
SNR算出部44は図1の目標検出部11と同様に、積分部10により積分された目標信号に対する振幅検波処理及び閾値処理を実施して目標を検出したのち、その目標信号に対するノイズの比率を示すSNRを算出する処理を実施する。なお、SNR算出部44はSNR算出手段を構成している。
波数検定部45はSNR算出部44により算出されたSNRにしたがって、メインビーム内波数推定部41により推定された到来波数K、または、メインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kを最終的な波数推定結果として選択する処理を実施する。
なお、波数検定部45は波数検定手段を構成している。
【0066】
次に動作について説明する。
SNR算出部44は、図1の目標検出部11と同様にして、積分部10により積分された目標信号に対する振幅検波処理及び閾値処理を実施して目標を検出する。
そして、その目標信号に対するノイズの比率を示すSNRを算出する。
【0067】
波数検定部45は、SNR算出部44がSNRを算出すると、そのSNRと予め設定されたSNR閾値を比較する。
そして、そのSNRがSNR閾値未満であれば、メインビーム内波数推定部41により推定された到来波数Kを最終的な波数推定結果として選択する。
一方、そのSNRがSNR閾値以上であれば、メインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kを最終的な波数推定結果として選択する。
【0068】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、波数検定部45がSNR算出部44により算出されたSNRにしたがって、メインビーム内波数推定部41により推定された到来波数K、または、メインビーム内波数推定部42により推定された到来波数Kを最終的な波数推定結果として選択するように構成したので、上記実施の形態1よりも更に、メインビーム内の到来波数の推定精度を高めることができる効果を奏する。
【0069】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による波数推定装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
サイドローブ検出判定部46は目標検出部11による目標の検出結果とメインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果から、到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定する処理を実施する。なお、サイドローブ検出判定部46はサイドローブ検出判定手段を構成している。
【0070】
次に動作について説明する。
サイドローブ検出判定部46は、目標検出部11による目標の検出結果とメインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果を収集する。
サイドローブ検出判定部46は、目標検出部11による目標の検出結果が「目標検出あり」を示している場合において、メインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果が「到来波数=0」を示していれば、到来波信号の到来方向がサイドローブである旨を示す判定結果を出力する。
目標検出部11による目標の検出結果が「目標検出あり」を示している場合において、メインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果が「到来波数≠0」を示していれば、到来波信号の到来方向がサイドローブでない旨を示す判定結果を出力する。
【0071】
以上で明らかなように、この実施の形態5によれば、サイドローブ検出判定部46が目標検出部11による目標の検出結果とメインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果から、到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定するように構成したので、目標の誤検出に伴う誤警報を低減することができる効果を奏する。
【0072】
なお、この実施の形態5では、サイドローブ検出判定部46が目標検出部11による目標の検出結果とメインビーム内波数推定部14による到来波数の推定結果から、到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定するものについて示したが、サイドローブ検出判定部46が目標検出部11による目標の検出結果と、図5又は図6の波数検定部43,45により選択された波数推定結果から、到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定するようにしてもよく、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態1による波数推定装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による波数推定装置のメインビーム部分空間特定部を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による波数推定装置のメインビーム内波数推定部を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による波数推定装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3による波数推定装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4による波数推定装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5による波数推定装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0074】
1 送信機、2 サーキュレータ(到来波信号取得手段)、3 移相値算出部(到来波信号取得手段)、4 移相器(到来波信号取得手段)、5 アンテナ、6 受信機(到来波信号取得手段)、7 AD変換器、8 クラッタ抑圧部、9 妨害波抑圧部、10 積分部(目標検出手段)、11 目標検出部(目標検出手段)、12 メインビーム部分空間特定部(メインビーム部分空間特定手段)、13 ビーム空間処理部(ビーム空間処理手段)、14 メインビーム内波数推定部(メインビーム内波数推定手段)、21 メインビーム相関行列算出部、22 メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部、23 メインビーム部分空間設定部、31 到来波信号相関行列算出部、32 到来波信号相関行列固有値・固有ベクトル算出部、33 波数推定評価関数決定部、34 波数推定部、41 メインビーム内波数推定部(第1のメインビーム内波数推定手段)、42 メインビーム内波数推定部(第2のメインビーム内波数推定手段)、43 波数検定部(波数検定手段)、44 SNR算出部(SNR算出手段)、45 波数検定部(波数検定手段)、46 サイドローブ検出判定部(サイドローブ検出判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナにより受信されたメインビーム方向から到来する到来波信号を取得する到来波信号取得手段と、上記メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、上記メインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルを用いて、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理手段と、上記ビーム空間処理手段によるビーム空間処理後の到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定するメインビーム内波数推定手段とを備えた波数推定装置。
【請求項2】
メインビーム部分空間特定手段は、アンテナのメインビーム内に到来する到来波信号のステアリングベクトルからメインビーム相関行列を算出するメインビーム相関行列算出部と、上記メインビーム相関行列算出部により算出されたメインビーム相関行列の固有値及び固有ベクトルを算出するメインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部と、上記メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部により算出されたメインビーム相関行列の固有値にしたがってメインビーム部分空間の次元を設定し、上記メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部により算出された固有ベクトルの中で、上記次元に属する固有ベクトルを上記メインビーム部分空間の基底ベクトルに設定するメインビーム部分空間設定部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の波数推定装置。
【請求項3】
メインビーム部分空間設定部は、メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部により算出されたメインビーム相関行列の固有値を降順に並べたときの累積固有値率を算出し、上記累積固有値率を所定の累積率閾値と比較して、メインビーム部分空間の次元を設定することを特徴とする請求項2記載の波数推定装置。
【請求項4】
メインビーム部分空間設定部は、メインビーム相関行列固有値・固有ベクトル算出部により算出されたメインビーム相関行列の固有値を降順に並べ、隣り合う固有値間の差が最大になる固有値の番号をメインビーム部分空間の次元に設定することを特徴とする請求項2記載の波数推定装置。
【請求項5】
メインビーム部分空間設定部は、予め設定された値をメインビーム部分空間の次元に設定することを特徴とする請求項2記載の波数推定装置。
【請求項6】
メインビーム内波数推定手段は、到来波信号取得手段により取得された到来波信号の相関行列を算出する到来波信号相関行列算出部と、上記到来波信号相関行列算出部により算出された到来波信号の相関行列の固有ベクトルを算出する到来波信号相関行列固有ベクトル算出部と、上記到来波信号相関行列固有ベクトル算出部により算出された固有ベクトルとメインビーム部分空間を張る基底ベクトルから波数推定評価関数を決定する波数推定評価関数決定部と、上記波数推定評価関数決定部により決定された波数推定評価関数の関数値から波数を推定する波数推定部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の波数推定装置。
【請求項7】
波数推定評価関数決定部は、到来波信号相関行列固有ベクトル算出部により算出された固有ベクトルをメインビーム部分空間に射影したときの射影長を示す関数を波数推定評価関数に決定することを特徴とする請求項6記載の波数推定装置。
【請求項8】
波数推定評価関数決定部は、到来波信号相関行列固有ベクトル算出部により算出された固有ベクトルを、メインビーム部分空間を張る固有ベクトルに射影したときの射影長を示す関数を波数推定評価関数に決定することを特徴とする請求項6記載の波数推定装置。
【請求項9】
波数推定部は、波数推定評価関数決定部により決定された波数推定評価関数の関数値が所定の閾値を超える回数を計数し、上記回数を波数の推定結果とすることを特徴とする請求項6記載の波数推定装置。
【請求項10】
波数推定部は、波数推定評価関数決定部により決定された波数推定評価関数における隣り合う関数値の差が最大となる固有値の番号を波数の推定結果とすることを特徴とする請求項6記載の波数推定装置。
【請求項11】
複数のアンテナにより受信されたメインビーム方向から到来する到来波信号を取得する到来波信号取得手段と、上記メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、上記メインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定するメインビーム内波数推定手段とを備えた波数推定装置。
【請求項12】
複数のアンテナにより受信されたメインビーム方向から到来する到来波信号を取得する到来波信号取得手段と、上記メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、上記メインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルを用いて、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理手段と、上記ビーム空間処理手段によるビーム空間処理後の到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定する第1のメインビーム内波数推定手段と、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定する第2のメインビーム内波数推定手段と、上記第1のメインビーム内波数推定手段により推定された到来波数と上記第2のメインビーム内波数推定手段により推定された到来波数を比較し、大きい方の到来波数を最終的な波数推定結果として選択する波数検定手段とを備えた波数推定装置。
【請求項13】
複数のアンテナにより受信されたメインビーム方向から到来する到来波信号を取得する到来波信号取得手段と、上記メインビーム方向から到来する到来波信号が存在するメインビーム部分空間を特定して、上記メインビーム部分空間を張る基底ベクトルを算出するメインビーム部分空間特定手段と、上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルを用いて、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するビーム空間処理を実施するビーム空間処理手段と、上記ビーム空間処理手段によるビーム空間処理後の到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定する第1のメインビーム内波数推定手段と、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号と上記メインビーム部分空間特定手段により算出された基底ベクトルから、上記メインビーム内の到来波数を推定する第2のメインビーム内波数推定手段と、上記到来波信号取得手段により取得された到来波信号に対するノイズの比率を示すSNRを算出するSNR算出手段と、上記SNR算出手段により算出されたSNRにしたがって、上記第1のメインビーム内波数推定手段により推定された到来波数又は上記第2のメインビーム内波数推定手段により推定された到来波数を最終的な波数推定結果として選択する波数検定手段とを備えた波数推定装置。
【請求項14】
到来波信号取得手段により取得された到来波信号から目標を検出する目標検出手段と、上記目標検出手段による目標の検出結果とメインビーム内波数推定手段による到来波数の推定結果から、上記到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定するサイドローブ検出判定手段とを設けたことを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の波数推定装置。
【請求項15】
到来波信号取得手段により取得された到来波信号から目標を検出する目標検出手段と、上記目標検出手段による目標の検出結果と波数検定手段により選択された波数推定結果から、上記到来波信号の到来方向がサイドローブであるか否かを判定するサイドローブ検出判定手段とを設けたことを特徴とする請求項12または請求項13記載の波数推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−204501(P2009−204501A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47980(P2008−47980)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】