説明

波長可変ダイオードレーザを用いたガスタービンの高温ガス温度測定

【課題】波長可変レーザを用いてガスタービン内の高温ガス温度を測定すること。
【解決手段】ガスタービン(10)に装着された燃焼ガス測定装置であって、該測定装置が、ガスタービン(10)内の燃焼ガス通路(30)を通過するレーザビームを放出(110)する波長可変ダイオードレーザ(22)と、1334ナノメートル(nm)の波長の第1のレーザビームと、1380nm又は1391nmの波長の第2のレーザビームとを放出するよう波長調整(100、102)される波長可変ダイオードレーザ用のコントローラ(20)と、燃焼ガス(30)を通過する放射線ビームの各々を検知(100)し、波長の各々において燃焼ガスによるビームの吸収を示す吸収信号(112)を生成するレーザセンサ(22)と、を備え、コントローラ(20)が、非一時的な記憶媒体上に格納され、第1のレーザビーム及び第2のレーザビームの吸収信号の比に基づいて燃焼ガス温度を決定(114)するプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザを用いた高温ガス温度の決定に関し、より詳細には、ガスタービンにおける高圧燃焼ガス温度の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼ガス温度は、正確に決定することが困難である。燃焼ガスは、極めて高温で、腐食性があり、乱流を生じ、高圧になる。燃焼ガス温度、例えば、タービン燃焼温度(Tfire)は、従来、排出ガス温度及び圧縮機吐出ガス圧力などの要因に基づいて推定されている。この燃焼ガス温度の推定は、ある一定のレベルの不確定性を有する。この不確定性を補償するために、燃焼ガス温度は、より大きな不確定性があることが分かっている場合には必要とされるよりも低い温度に設定される。
【0003】
燃焼ガス温度は、ガスタービンの出力に影響を及ぼす。燃焼ガス温度が高くなると、出力は増大する。例えば、燃焼ガス温度(Tfire)が10°F上昇すると、200メガワット(200MW)ガスタービンにおいて出力が1メガワット(1MW)増大することができる。不確定性レベルを低減すると、燃焼ガス温度を高くすることができ、これに対応してガスタービンの出力の増大をもたらす。
【0004】
ガスタービンのガス温度を正確に決定するために、分光測定、例えばレーザ測定が提案されている。国際特許出願WO2007/014960では、温度測定装置により、ガスタービンの燃焼ガス流中の酸素に対応する波長のレーザ光の吸収を測定することを記載している。米国特許出願公開2008/0289342では、ガスタービンのガス流中の酸素に対応するレーザ光波長の吸収を測定することによって燃焼温度を決定することを記載している。
【0005】
燃焼ガスに起因する吸収を測定するレーザ波長は、ガス温度の算出精度を最適にするよう選択すべきである。吸収が測定される波長は、従来では、ガス中の化学種の温度依存性遷移に対応するように選択されている。燃焼ガス化学種の温度依存性遷移に起因して吸収が生じる利用可能な波長は複数存在する。吸収線強度データを取得してガスタービンの燃焼ガス温度を正確に算出するため、レーザ吸収が測定されることになる波長のペアを選択する方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7075653号明細書
【発明の概要】
【0007】
ガスタービン内の燃焼温度又は他の高温ガス温度を正確に測定するシステム及び方法を開発した。波長可変ダイオードレーザは、ガスタービンを流れる燃焼ガスにレーザビームを配向する。放射線センサは、近赤外域における水蒸気倍音遷移のペアに相当する波長で生じる放射線吸収を測定する。燃焼ガスの温度は、これら2つの波長での測定吸収の比に基づいて算出される。波長のペアは、相対的に離隔され、隣接する波長での近隣の強い吸収線が無い。吸収強度線が離隔され、隣接線が存在しないことにより、ガスタービンにおいて高圧で生じる吸収強度の隣接強度線の併合が回避される。
【0008】
ガスタービンに装着された燃焼ガス測定装置は、ガスタービン内の燃焼ガス通路を通過する放射線ビームを生成する波長可変レーザと、ガスの燃焼化学種の温度依存性遷移に対応する少なくとも第1の選択波長及び第2の選択波長を有し、第1の選択波長及び第2の選択波長が近隣波長の吸収ピークに近接していない放射線を放出するようレーザを波長調整する波長可変レーザ用コントローラと、燃焼ガスを通過する放射線ビームを検知し、第1の選択波長及び第2の選択波長の各々において燃焼ガスによるビームの吸収を示す吸収信号を生成する検出器と、非一時的な記憶媒体上に格納され、第1の選択波長及び第2の選択波長の吸収信号の比に基づいて燃焼ガス温度を決定するプログラムを実行するプロセッサと、を備える。
【0009】
ガスタービンに装着された燃焼ガス測定装置は、ガスタービン内の燃焼ガス通路を通過するレーザビームを放出する波長可変ダイオードレーザと、1334ナノメートル(nm)の波長の第1のレーザビームと、1380nm又は1391nmの波長の第2のレーザビームとを放出するよう波長調整される波長可変ダイオードレーザ用のコントローラと、燃焼ガスを通過する放射線ビームの各々を検知し、波長の各々において燃焼ガスによるビームの吸収を示す吸収信号を生成するレーザセンサと、非一時的な記憶媒体上に格納され、第1のレーザビーム及び第2のレーザビームの吸収信号の比に基づいて燃焼ガス温度を決定するプログラムを実行するプロセッサと、を備える。
【0010】
高圧環境において燃焼ガス温度を算出する方法であって、本方法は、燃焼ガス中の化学種の温度に関連する遷移に伴う強い強度線を識別する段階と、燃焼ガスの燃焼化学種の温度依存遷移に伴う強い強度線を識別する段階と、燃焼化学種に伴うものとして識別された強い強度線のうち、非近隣の強い強度線を有する第1及び第2の強い強度線を選択する段階と、各々が第1及び第2の強い強度線にそれぞれ関連する第1の波長及び第2の波長を識別する段階と、識別された第1及び第2の波長の各々で燃焼ガス通路を通るレーザビームを投影し、識別された第1及び第2の波長の各々での燃焼ガスによるビームの吸収に関するデータを収集する段階と、収集されたデータを用いて燃焼ガス温度を算出する段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンの概略図。
【図2】図1に示すガスタービンの燃焼器とタービンとの間の接続部の断面図。
【図3】7200/cm〜7207/cm波長の放射線周波数範囲における燃焼ガスによるレーザ放射線吸収を示すグラフ。
【図4】7200/cm〜7207/cm波長の放射線周波数範囲における燃焼ガスによるレーザ放射線吸収を示すグラフ。
【図5】種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフ。
【図6】種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフ。
【図7】種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフ。
【図8】種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフ。
【図9】波長可変ダイオードレーザを用いて燃焼温度を決定する例示的な方法を示すプロセスチャート。
【図10】波長可変ダイオードレーザを用いて燃焼温度を決定する例示的な方法を示すプロセスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、圧縮機12、燃焼缶16を備えた燃焼器14、及びタービン18を有する産業用ガスタービンエンジン10の概略図である。空気は、軸流圧縮機12に流入し、該圧縮機が空気を加圧し、燃焼器を形成する燃焼缶16の環状アレイに該空気を吐出する。空気及び燃料混合気が燃焼缶内で点火され、燃焼により形成された高温ガスがタービン18に流れる。高温燃焼ガス15は、第1段ステータブレードの環状アレイ及び第1段タービンバケットの環状アレイを越えて流れる。高温の燃焼ガス流が、環状アレイタービンバケットの列を越えて流れ、タービンバケットと、同様に圧縮機に接続された関連シャフトとを回転させる。タービンによる圧縮機の回転により、圧縮機が燃焼器への空気を加圧するようになる。
【0013】
タービンに流入する高温燃焼ガスの温度は、従来、燃焼温度(Tfire)と呼ばれている。燃焼温度は、第1のステータの後縁及び第1のタービンバケットの前縁での燃焼ガス流路におけるような、タービンの仕事が開始される場所のガス温度として定義することができる。
【0014】
コントローラ20、例えば、非一時的な記憶媒体及びプロセッサを備えたコンピュータは、燃焼ガス温度を算出するのに使用されるレーザ及びセンサ組立体22から波長吸収データを受け取る。コントローラは、算出燃焼ガス温度を用いて、燃料制御部23及び圧縮機12への入口ガイドベーンを調整するなどにより、ガスタービンを制御する。コントローラはまた、算出燃焼ガス温度を用いてガスタービンの性能に関するデータを出力する。
【0015】
図2は、ステータの第1の列の後縁及びタービンバケットの第1の列の前縁に近接した、タービン16への入口に対応するガスタービン10の拡大断面図である。ガスタービン10のケーシング24は、従来、ガスタービンの内部構成要素(例えば、タービンバケット及びステータ)を検査するためにボロスコープを挿入するのに使用されるポート26を有する。
【0016】
ポート26は、燃焼器からタービンに及びタービンを流れる燃焼ガスを監視するレーザ及びレーザセンサ組立体22へのアクセスを可能にする。レーザ及びセンサ組立体22は、ガスタービンのケーシング24上、又はケーシング内に装着され、ボアホールポート26を通って延びる。レーザ及びセンサ組立体22のシャフト28は、ケーシング上のポート26の1つを通って、ガス流路30の外周に延びる。
【0017】
シャフト28内には、シャフトの内側先端32と、電子制御部及びレーザ及びセンサ組立体22に付随する検知回路との間でレーザ光又は電気信号を伝達するための光路(例えば光ファイバ)又は電線がある。先端32は、各々が電気信号線に接続されたレーザダイオード及びダイオードセンサを含むことができる。レーザダイオードは、燃焼ガス流路30を通過する放射線34のビームを投射する。ダイオードセンサは、ガス流路を通過した後のビーム34を受け取り、ビームの強度(例えば強さ)を示す信号を生成する。
【0018】
先端32は、第1のステータ38と第1のタービンバケット40との間の狭いギャップと、該ギャップを通る流路の外周において整列することができる。レーザ光34は、流路を通って半径方向内向きに放射され、流路に隣接する半径方向内向き面から反射して、先端32において放射線検出器(例えば、光学センサ又は光ファイバ)に戻る。レーザ光34は、タービンのシャフトから反射することができる。
【0019】
レーザ光を反射するのではなく、シャフト28のペアは、ガスタービンのケーシング24上で軸方向に整列することができる異なるボアスコープポート26に挿入され、各シャフトの先端32がガス通路を通って延びる光線に沿うように位置決めすることができる。レーザ光34は、第1の先端から投影され、光検出器又は光捕集装置、例えば光ファイバは他の先端にある。更に、複数のシャフト28(又はシャフトのペア)は、異なるボアスコープポート又はガスタービンのケーシング内の他の開口を通って延び、ガス流路内の種々の位置のガス温度を監視することができる。
【0020】
波長可変ダイオードレーザ及びセンサ組立体22は、波長可変ダイオードレーザ光源、伝送(例えばビーム整形)光学装置、レーザビーム受信光学装置、及びフォトダイオードのような検出器を有する従来システムとすることができる。レーザダイオードは、波長特性全体にわたってレーザの放射線放出波長を水蒸気のような燃焼ガスの特定の燃焼化学種の吸収波長に変更するよう、電子回路及び組立体22に関連するコンピュータコントローラによって調節される。
【0021】
レーザからの放射線放出の吸収は、レーザビームの強度を低下させ、該強度の低下は検出器により測定される。検出器は、レーザにより放出される波長の放射線の吸収量を示す線強度信号を生成する。線強度信号は、コンピュータ20又は他の処理ユニットに出力され、これらが信号を用いて燃焼ガスオン温度を決定する。コンピュータ20は、レーザ組立体22内のレーザを調整するコンピュータとは分離することができ、又は組み合わせることもできる。
【0022】
波長可変ダイオードレーザは、出力放射線の周波数をスペクトラムの紫外線域、可視域、及び赤外域の一部又は全部にわたって調整できるレーザである。波長可変ダイオードレーザは、調整が実施されることになる波長範囲に基づいて選択することができる。ダイオードレーザの典型的な実施例は、InGaAsP/InP(900nmから1.6μmにわたって波長変更可能)及びInGaAsP/InAsP(1.6μmから2.2μmにわたって波長変更可能)である。ダイオードレーザは、これらの温度又はレーザの媒体中のガスに注入される注入電流密度を調節することにより波長を調整することができる。
【0023】
レーザ及びセンサ組立体22の光センサは、従来の吸収分光技術を用いて、レーザが波長調整されたときに放出される種々の波長の放射線吸収を測定する。レーザ放射線、例えば、光が燃焼ガスを通過すると、ガス中の燃焼化学種が特定の波長の放射線を吸収する。更に、ガスの温度が発生する吸収量に影響を及ぼす。
【0024】
選択波長のレーザ放射吸収を測定することにより、燃焼ガスの温度の算出に有効なデータが提供される。詳細には、ガスの温度は、各々がガス成分(化学種)の温度依存性遷移に対応する、2つの波長で測定されるレーザ放射線の吸収比から推測することができる。
【0025】
レーザ放射線の選択波長は、燃焼ガス内で発生する水蒸気遷移の波長に対応する。線強度は、ガスタービンを流れる加圧燃焼ガスを通るレーザ放射線に基づいたこれら2つの選択波長で測定される。吸収線強度は、レーザダイオードが波長調整されて選択波長の各々で代替的に放射するときに実質的に同時に2つの選択波長を測定する。
【0026】
2つの吸収線強度の比を従来手法で使用して、燃焼ガスの温度比を算出する。波長可変ダイオードレーザ吸光分光(TDLAS)技法を用いて、吸収線強度を測定して燃焼ガス温度を算出することができる。詳細には、波長は、近赤外域における水蒸気倍音遷移に相当するよう選択される。燃焼ガスの温度は、2つの水蒸気倍音遷移に対応する波長の測定吸収比に基づいて算出することができる。
【0027】
燃焼ガスの決定のために吸収が測定される波長は、水蒸気による吸収に対応し、吸収がピークに達する波長近傍にはないように選択される。他の吸収ピーク波長から離れた波長を選択することにより、ガス圧力が増大したときに選択波長が近隣の吸収ピークと確実に併合されないようにする。
【0028】
ガスタービンなどの内燃(IC)エンジンの用途では、可変の圧力広がり(衝突広がり)は、吸収測定を複雑にし、吸収遷移と近隣の遷移との可変の重なり度をもたらす。典型的な水蒸気遷移の衝突広がりは、γairが300Kにて約0.05cm-1/atmである。候補レーザ波長が、2.5cm-1内に近隣遷移を有する場合、IC内の高い燃焼圧で有意な重なり合いが存在することになる。重なり度(干渉)は、エンジンのP/Tサイクル中の相対線強度に依存する。最も簡単な線選択プロセスは、2.5cm-1内に最近傍が存在しない線だけを保持することになる。
【0029】
図3及び図4は、7200/cm〜7207/cm波長の放射線周波数範囲における燃焼ガスによるレーザ放射線吸収を示すグラフである。図3に示すように、強い吸収線(ピーク)が7204/cm(1388ナノメートル(nm)の波長に相当)で発生し、直ぐ近くの小さな線が、ガス圧が10気圧(ATM)であるときに7205/cmで生じる。図4は、ガス圧が30ATMまで上昇すると、2つの吸収線が拡散し併合することを示している。ガス圧が上昇したときの吸収線の併合は、吸収線のうちの1つに起因する吸収の測定精度を低下させる。
【0030】
ガスタービンにおける典型的なTfire測定では、燃焼圧は約15気圧(15atm)である。典型的な水蒸気遷移の衝突広がりは、300Kで約0.05cm-1/atmのγairである。15atmでは、水蒸気遷移における半値全幅(FWHM)は、0.75cm-1だけ変化する。これは、高圧での線の何らかの併合につながることはない。
【0031】
図5及び図6は、種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフである。ガスの圧力は、図5及び6に示す実施例においては1気圧(atm)である。図5は、波長7495/cm(1334nm)及び温度2000ケルビン(1727℃及び3140.6°F)での強い線の吸収を示している。7490/cm〜7515/cmの範囲において吸収線を有する近隣の波長が存在しない。図6は、7243/cm(1380nm)の波長での強い線の吸収を示す。
【0032】
波長ペア(i)7495/cm(1334nm)及び7243/cm(1380nm)、と(ii)7495/cm及び7185/cm(1391nm)は、近赤外における水蒸気倍音遷移に相当し、干渉を引き起こすような近隣する吸収線が無い。
【0033】
図5は、周囲温度(296K)において無視できる線強度を示しており、これは、周囲温度が燃焼ガスの温度算出に影響を及ぼす干渉又は雑音を生じないことを表している。図7に示すように、133nm波長での吸収の線強度は、温度と共に増大する。
【0034】
図6は、波長7243/cm、周囲温度(296K)で強い吸収線強度を示し、温度2000Kにて通常線強度を示している。7243/cm(1380nm)波長での吸収は、温度に反比例する。
【0035】
温度依存性線強度[cm-2atm-1]は、基準温度T0における既知の線強度の項で表すことができる。
【0036】
【数1】

式中、Q(T)は分子分配関数、h[Jsec]はプランク定数、c[cm/s]は光の速度、k[J/K]はボルツマン定数、及びE”[cm-1]は低エネルギー状態である。
【0037】
温度は、2つの異なる温度依存性遷移の積分吸収の測定比から推測することができる。
【0038】
【数2】

式中、Pabs[atm]は吸収化学種の分圧、φν[cm]は特定遷移の線形関数、S(T0,νi)はνi[cm-1]を中心とする遷移の線強度、基準温度T0では、E”[cm-1]は低エネルギー状態、Tはガス温度[K]である。
【0039】
温度に対する上記比の相対感度は、次式で得られる。
【0040】
【数3】

この式から、高い温度感度を有するには低状態差の大きな線ペアが望ましいことが分かる。
【0041】
図5及び6に示す実施例では、感度(σ)は、1500K〜2000K(2240°F〜3140°F)の温度範囲で5.71である。
【0042】
高レベルの感度は、波長1334nm及び1380nmのペアを用いて行った温度測定のペアの精度が約0.35%であることを示し、これは2500°Fでわずか9°Fの誤差に相当する。
【0043】
図7(図5と同じ)及び図8は、種々の波長の燃焼ガスによるレーザ吸収の線強度を示す例示的なグラフである。図7は、波長7495/cm(1334nm)及び温度2000ケルビン(K)(1727℃及び3140.6°F)での強い吸収線を示している。7490/cm〜7515/cmの範囲の吸収線を有する近隣波長は存在しない。図8は、7185/cm(1391nm)の波長での強い吸収線を示している。
【0044】
図8において7185cm-1付近に別の吸収線があるが、この他の線の線強度は小さい。温度の測定を確実にするための基準は、2つの遷移が同様の信号対雑音比(SNR)を有することである。最小検出可能吸収度が2E−4及びSNRが10とすると、ピーク吸収度は2E−3よりも大きくなければならない。圧力15気圧及び経路長1cmとすると、図8の7185cm-1(圧力広がりを有する)での線は、温度測定の精度にあまり影響を及ぼさない。
【0045】
図8は、周囲温度(296K)での波長7185/cm(1391nm)で強い吸収線強度と、温度2000Kで通常線強度とを示している。7185/cm(1391nm)波長での吸収は、温度に反比例する。
【0046】
図7及び8に示す実施例では、感度(σ)は、1500K〜2000K(2240°F〜3140°F)の温度範囲で3.91である。高レベルの感度は、波長1334nm及び1380nmのペアを用いて行った温度測定の精度が2500°Fで15°F以内であることを示している。
【0047】
レーザ及びセンサ組立体22におけるダイオードレーザは、燃焼ガスにより吸収される波長に相当しない第3の波長(例えば、635nm)に調整することができる。第3の波長で検出される線強度信号は、レーザ及びセンサ組立体22内の光学装置の透過率を示す基準、及びレーザビームを組立体22の先端22における検出器に反射して戻すのに使用されるタービンシャフト又は他の表面の反射率を示す基準として用いることができる。
【0048】
図9及び10は、燃焼温度の測定のために波長可変レーザシステムを設定して燃焼温度を測定する例示的な方法のフローチャートである。燃焼温度の測定する方法の一部は、プロセッサ又は図2に示すコンピュータ27がアクセス可能な非一時的な記憶媒体上に格納されたコンピュータプログラム内の命令として具現化することができる。
【0049】
ステップ100において、同じか又は実質的に同様の燃焼ガスを試験して、燃焼ガス、例えば、燃焼化学種により吸収される放射線の波長を識別する。燃焼ガスは、例えば、1気圧(ATM)などの低圧で、或いは、圧縮機吐出圧力と同様の圧力、例えば20ATM〜30ATMで試験することができる。低圧で試験することにより、高圧にて生じやすい吸収強度線の併合が回避される。吸収線は、実験室の燃焼室において識別することができる。波長可変ダイオードレーザを用いて、好適な波長範囲を走査し、燃焼ガス中の化学種により吸収が生じる波長に関するデータを取得することができる。
【0050】
ステップ102において、ステップ100で得られた吸収線強度に関するデータを評価し、燃焼ガス中の化学種に対応し且つ温度関連遷移を受ける強度の線を識別する。例えば、温度関連遷移を受ける燃焼ガスの化学種は、水蒸気及び酸素である。ガスタービンにおける燃焼、特に燃焼ガスの当業者は、データ中のどの吸収強度線が燃焼ガスの化学種の温度依存性遷移に対応するかを判定するのに十分な知識を有し、レーニングを受けているであろう。
【0051】
ステップ104において、ステップ102で識別された強度の線から、同じ燃焼ガス化学種に関連する強度の線のグループ(例えば、ペア)を見つけ出す。ステップ106において、グループ内の強度の線を評価し、各線が近隣強度線を持たない線のペアを識別する。例えば、1334nmと1380nm、及び1334nmと1391nmの波長のペアは、水蒸気の温度依存性遷移に起因した関連の吸収強度線を有し、近隣の強い吸収線が無い。
【0052】
ステップ104において、ステップ102で識別されたどの強度線が近隣強度線から離れているかを判定する。ステップ104で識別された近隣強度線の無い強度線に対応する波長のペアは、燃焼ガスの温度を算出するために吸収が測定される波長のペアとして選択される。ステップ108において、強度線、特に温度依存性の強度線に関連していない波長を識別する。
【0053】
ステップ110において、レーザ及びセンサ組立体をガスタービンに導入し、波長可変レーザダイオードがガスタービン内のガス通路を通ってビームを放出するようにする。レーザビームは、第1のステータと第1のタービンとの間のギャップを通過し、Tfire温度の位置から直接的に吸収データを収集することができる。
【0054】
ステップ112において、ガスタービンの作動中に、レーザ及びセンサ組立体は、ガスタービンを通るレーザビームを投影することにより吸収データを収集し、レーザは、ステップ106で選択された波長に調整される。レーザの調整は、ステップ106及び108において選択した波長に一定期間毎に且つ迅速に波長を変更するように周期的に行うことができる。吸収データは、レーザ及び検出器組立体においてコントローラに関連する記憶媒体中に収集され格納される。ステップ114において、吸収データは、レーザ及び検出器組立体において又はガスタービン用のコントローラにおいて処理されて、ステップ106において識別された2つの波長で得られる線強度(吸収データ)の比に基づいて燃焼ガスを算出する。更に、レーザ及び検出器組立体は、燃焼ガスの化学種による吸収の無い強度信号の線を示す基準として、ステップ108において識別された波長で収集される吸収データを使用する。ガスタービンのコントローラは、算出した燃焼ガス温度を使用して、ガスタービンを制御し、ガスタービンの性能に関する報告を生成する。
【0055】
現時点で最も実用的且つ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に添付の請求項の技術的思想及び範囲内に含まれる様々な修正形態及び均等な構成を保護するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0056】
10 ガスタービン12 圧縮機
14 燃焼器
16 燃焼缶
18 タービン
20 コントローラ
22 レーザ及びレーザセンサ組立体
23 燃料コントローラ
24 ガスタービンのケーシング
26 ケーシング上のポート
28 組立体のシャフト
30 ガス流路
32 シャフトの先端
34 レーザ光
38 第1のステータ
40 第1のタービンバケット
100 燃焼ガスを試験
102 燃焼ガスの化学種の温度関連遷移に伴う強度線を識別する
104 同じ化学種に伴う強度線のグループを見つけ出す
106 近隣強度線の無いグループ内の強度線のペアを識別する
108 強度線の無い波長を識別する
110 ガスタービン内のレーザ及びセンサ組立体を位置決めする
112 ガスタービンの運転からデータを収集する
114 ガス温度を算出する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(10)に装着された燃焼ガス測定装置であって、
前記ガスタービン(10)内の燃焼ガス通路を通過する放射線ビーム(34)を生成する波長可変レーザ(22)と、
ガスの燃焼化学種の温度依存性遷移(102)に対応する少なくとも第1の選択波長及び第2の選択波長を有し、前記第1の選択波長及び第2の選択波長が近隣波長(104)の吸収ピークに近接していない放射線を放出するようレーザを波長調整(100)する波長可変レーザ用コントローラ(20)と、
前記燃焼ガスを通過する放射線ビームを検知(100、112)し、前記第1の選択波長及び第2の選択波長の各々において前記燃焼ガスによるビームの吸収を示す吸収信号を生成する検出器(22)と、
を備え、前記コントローラ(20)が、非一時的な記憶媒体上に格納され、前記第1の選択波長及び第2の選択波長の吸収信号の比に基づいて燃焼ガス温度を決定(114)するプログラムを実行する、燃焼ガス測定装置。
【請求項2】
前記第1の選択波長が1334ナノメートル(nm)であり、前記第2の選択波長が1380nm又は1391nmである、請求項1に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項3】
前記燃焼化学種が水蒸気である、請求項1に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項4】
前記波長可変レーザ(22)は、放射線ビームが前記ガスタービンの第1のタービンステータ(38)と第1のタービンバケット(40)との間で前記ガス通路(30)を通過するように前記ガスタービン(10)内に装着される、請求項1に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項5】
前記波長可変レーザ(22)が波長可変ダイオードレーザである、請求項1に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項6】
前記放射線ビームが、前記ガスタービンのタービン表面から反射される、請求項1に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項7】
ガスタービン(10)に装着された燃焼ガス測定装置であって、
前記ガスタービン(10)内の燃焼ガス通路(30)を通過するレーザビームを放出(110)する波長可変ダイオードレーザ(22)と、
1334ナノメートル(nm)の波長の第1のレーザビームと、1380nm又は1391nmの波長の第2のレーザビームとを放出するよう波長調整(100、102)される波長可変ダイオードレーザ用のコントローラ(20)と、
前記燃焼ガス(30)を通過する放射線ビームの各々を検知(100)し、波長の各々において燃焼ガスによるビームの吸収を示す吸収信号(112)を生成するレーザセンサ(22)と、
を備え、前記コントローラ(20)が、非一時的な記憶媒体上に格納され、前記第1のレーザビーム及び第2のレーザビームの吸収信号の比に基づいて燃焼ガス温度を決定(114)するプログラムを実行する、燃焼ガス測定装置。
【請求項8】
前記波長可変レーザ(22)は、レーザビームが前記ガスタービンの第1のタービンステータ(38)と第1のタービンバケット(40)との間で前記ガス通路(30)を通過するように前記ガスタービン内に装着される、請求項7に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項9】
前記放射線ビームが、前記ガスタービンのタービン表面から反射される、請求項7に記載の燃焼ガス測定装置。
【請求項10】
高圧環境において燃焼ガス温度を算出する方法であって、
燃焼ガス(30)中の化学種の温度に関連する遷移に伴う強い強度線を識別(102)する段階と、
前記燃焼ガスの燃焼化学種の温度依存遷移に伴う強い強度線を識別(104)する段階と、
前記燃焼化学種に伴うものとして識別された強い強度線のうち、非近隣の強い強度線を有する第1及び第2の強い強度線を選択(106)する段階と、
各々が前記第1及び第2の強い強度線にそれぞれ関連する第1の波長及び第2の波長を識別(108)する段階と、
前記識別された第1及び第2の波長の各々で燃焼ガス通路(30)を通るレーザビームを投影(110)し、前記識別された第1及び第2の波長の各々での前記燃焼ガスによるビームの吸収に関するデータを収集(112)する段階と、
前記収集されたデータを用いて燃焼ガス温度を算出(114)する段階と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の波長が1334ナノメートル(nm)であり、前記第2の波長が1380nm又は1391nmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記収集データを用いた前記燃焼ガス温度の算出(114)は、前記第1及び第2の波長での前記ビームの吸収の比を決定する段階を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記燃焼化学種が水蒸気である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記非近隣の強い強度線は、前記第1及び第2の選択波長と別の強い強度線との間に少なくとも2つの波長がある、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザが波長可変ダイオードレーザである、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57623(P2012−57623A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198124(P2011−198124)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】