説明

波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器

【課題】広い波長帯域の光から特定の波長を抽出可能な波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター5は、第一反射膜551及び第三反射膜553を有する第一基板51と、第一反射膜551に第一ギャップG1を介して対向する第二反射膜552を有する第二基板52と、第三反射膜553に第二ギャップG2を介して対向する第四反射膜554を有する第三基板53と、第一ギャップG1を変更する静電アクチュエーター56とを備え、平面視において各反射膜が重なる光干渉領域Ar0を有し、第一及び第二反射膜551,552により構成される波長可変干渉部57の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つは、第三及び第四反射膜553,554により構成される波長固定干渉部58の複数の透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような波長可変干渉フィルターにより取り出される光の波長λは、下記式(1)に示す条件を満たす。
【0003】
[数1]
mλ=2ndcosθ …(1)
【0004】
(1)式において、nは反射膜間の媒体の屈折率(空気の場合はn=1)であり、dは、反射膜間の間隔である。また、mは、次数であり、整数(m=1,2,3・・・)の値を採る。すなわち、波長可変干渉フィルターの分光特性は、次数mが異なる複数のピーク波長を有する。
したがって、波長可変干渉フィルターに対して広い波長帯域の光を入射させると、複数のピーク波長に対応した光が透過されることとなり、特定のピーク波長に対する光のみを抽出したい場合に不都合となる。
【0005】
これに対して、上記のような波長可変干渉フィルターから、所定のピーク波長を取り出す装置が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
特許文献2には、波長可変干渉フィルターを複数重ね合わせて特定のピーク波長に対する光を抽出する構成や、波長可変干渉フィルターと、透過波長域が固定された固定式の干渉フィルターと重ね合わせて特定のピーク波長に対する光を抽出する構成が開示されている。
また、特許文献3には、波長可変干渉フィルターの前段に、複数のフィルターが組み込まれたフィルター円板を配置し、フィルター円板を回転させて、波長可変干渉フィルターと重ね合わせるフィルターを切り替える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−94312号公報
【特許文献2】特開2009−33222号公報
【特許文献3】特開2000−329617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献2や特許文献3では、波長可変干渉フィルターの光路上に、波長固定型の干渉フィルターやカラーフィルターを設ける構成となる。このように光路上に配置される光学素子の数が増えると、装置の複雑化や小型化に対応できないという課題があり、1つのフィルターで広波長帯域の光から特定の波長を抽出可能な構成が望まれている。
【0008】
本発明は、広い波長帯域の光から特定の波長を抽出可能な波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、を具備し、前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なることを特徴とする。
【0010】
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜により波長可変干渉部が構成される。この波長可変干渉部の透過特性は、上述した(1)式に示すように、次数mに対応して複数のピーク波長を有する。したがって、波長可変干渉部を透過可能な光は、これらのピーク波長に対応した光となる。
また、波長可変干渉部では、ギャップ量変更部により第一反射膜及び第二反射膜の間のギャップのギャップ量を制御することで、透過特性におけるピーク波長を変動させることができる。このため、波長可変干渉部により取り出すことが可能な光の波長域は、複数のピーク波長の変動範囲に対応した複数の測定対象波長域となる。したがって、波長可変干渉フィルターに入射する測定対象光が広い波長帯域を有する場合、波長可変干渉部から、複数の測定対象波長域に対応した複数波長の光が透過される。
これに対して、本発明では、第三反射膜及び第四反射膜により波長固定干渉部が構成される。この波長固定干渉部の透過特性は、波長可変干渉部と同様、(1)式に示すように、次数mに対応した複数のピーク波長を有し、ピーク波長を中心とした所定の透過可能波長域の光が透過可能となる。そして、本発明では、測定対象光の波長帯域内において、波長可変干渉部の測定対象波長域のうちのいずれか1つが、波長固定干渉部の透過可能波長域のいずれか1つと重なる。このような構成では、測定対象波長域と重ならない透過可能波長域の光、及び透過可能波長域と重ならない測定対象波長域の光は、光干渉領域から透過されず、測定対象波長域と透過可能波長域とが重なる範囲内の特定の波長の光が光干渉領域を透過する。
このため、本発明の波長可変干渉フィルターでは、測定対象光の波長帯域が広い場合であっても、他のバンドパスフィルター等を用いることなく、所望の特定波長の光を抽出することができる。
【0011】
例えば、波長可変干渉フィルターにより測定可能な測定対象光の波長帯域が可視光域から近赤外光域(例えば400nm〜1300nm)であり、波長可変干渉部における第一反射膜及び第二反射膜間のギャップのギャップ量を450nmから600nmの間で変更可能な場合、波長可変干渉部の測定可能波長域は、1次ピーク波長の変動範囲に対応した900nm〜1200nm、2次ピーク波長の変動範囲に対応した450nm〜600nm、3次ピーク波長の変動範囲に対応した300nm〜400nmとなる。
この場合、例えば波長可変干渉フィルターから可視光域の光(例えば450nm〜750nm)を透過させたい場合、例えば波長固定干渉部の1次ピーク波長を中心とした透過可能波長域を、波長可変干渉部の可視光域に対応した測定対象波長域に重ねるよう、第三反射膜と、第四反射膜と、第三反射膜及び第四反射膜間のギャップのギャップ量とを設定すればよい。このような波長可変干渉フィルターを用いることで、可視光域から近赤外域の波長帯域を有する測定対象から、可視光域の所定波長の光を透過させることができる。
【0012】
本発明の波長可変干渉フィルターで、前記第一基板及び前記第三基板の少なくともいずれか一方には、他方に対向する面に凹部が設けられ、前記凹部の底面に前記第三反射膜又は第四反射膜が設けられていることが好ましい。
本発明では、第一基板及び第三基板のうちの少なくともいずれか一方に凹部が設けられる。凹部の形成位置としては第一基板及び第三基板の双方に設けられていてもよく、第一基板及び第三基板のいずれか一方に設けられるものであってもよい。このような凹部が設けられることで、第三反射膜及び第四反射膜間を、所定のギャップを介して対向させることができ、構成の簡略化を図れる。
【0013】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記凹部は、前記第一基板及び前記第三基板のうち、いずれか一方に設けられていることが好ましい。
本発明では、前記凹部は、第一基板及び第三基板のいずれか一方に形成される。このような構成では、例えば、第一基板及び第三基板の双方に凹部を設ける構成に比べて、基板加工工程を簡略化でき、製造効率性を向上させることができる。
【0014】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記光干渉領域は、前記第三反射膜及び前記第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる複数の小領域を備えていることが好ましい。
本発明では、光干渉領域に第三反射膜及び第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる複数の小領域が設けられているため、それぞれの小領域において、異なる波長の光を透過させることができる。
例えば、第一の小領域では、波長可変干渉部の1次ピーク波長に対応した測定対象波長域が、固定干渉部の複数の透過可能波長域のいずれかと重なり、第二の小領域では、波長可変干渉部の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域が、固定干渉部の複数の透過可能波長域のいずれかと重なるように、各小領域における第三反射膜及び第四反射膜間のギャップのギャップ量を設計する。この場合、光干渉領域のうち、第一の小領域から波長可変干渉部の1次ピーク波長に対応した測定対象波長域の光を透過させ、第二の小領域から波長可変干渉部の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域の光を透過させることができる。
これにより、1つ(単体)の波長可変干渉フィルターにより、測定対象光から複数の波長の光を、それぞれ独立して取り出すことができる。
【0015】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記光干渉領域は、複数の部分領域を備え、各部分領域には、それぞれ、前記第三反射膜及び前記第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる複数の小領域が設けられていることが好ましい。
本発明では、光学領域は、複数の部分領域に分割され、かつこの部分領域内において更に小領域に分割される。そして、これらの小領域は、上記発明と同様に、第三反射膜と第四反射膜との間のギャップのギャップ量が異なり、それぞれの小領域において、異なる波長の光を透過させる。
このような波長可変干渉フィルターでは、部分領域を例えば画素単位で分割することができ、複数の波長に対応した複数の分光画像を同時に取り出すことができる。
【0016】
本発明の波長可変干渉フィルターは、互いに隣り合う前記小領域間の領域境界部への光の入射を阻止する遮光部を備えていることが好ましい。
ここで、遮光部が設けられる位置としては、領域境界部への光の入射を阻止できる位置であればいかなる位置であってもよく、例えば第三基板及び第二基板のうち、光入射側の基板の表面に設けられてもよく、第三反射膜や第四反射膜上に設けられてもよい。また、波長可変干渉部が波長固定干渉部よりも光入射側に位置する場合であれば、第一反射膜や第二反射膜に設けられる構成としてもよい。
【0017】
本発明では、上述のような小領域の間の領域境界部への光の入射を阻止する遮光部が設けられている。隣り合う小領域は、それぞれ第三反射膜及び第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる値に設定されるので、小領域間の領域境界部では、段差や傾斜面が形成されることになる。このような段差や傾斜面に光が入射すると、光の反射や屈折により光の進行方向が変化する。このように、光の進行方向が変化すると、例えば、光が反射膜に入射されずに透過してしまったり、光が各反射膜の面に対して斜めに入射し、取り出したい目的波長とは異なる波長の光が波長可変干渉フィルターを透過してしまったりし、波長可変干渉フィルターの分解能の低下の原因となる。
これに対して、本発明では、遮光部により領域境界部への光の入射が阻止されるため、上記のような領域境界部における光の反射や屈折を回避でき、波長可変干渉フィルターの分解能の低下を抑制できる。
【0018】
本発明の光学フィルターデバイスは、第一基板、前記第一基板に対向して配置された第二基板、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜、前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部、前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板、前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜、及び前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、を具備し、前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なることを特徴とする。
【0019】
本発明の光学フィルターデバイスでは、上述した発明と同様、測定対象光が広い波長帯域を有する場合であっても、測定対象波長域と透過可能波長域とが重なる範囲内の特定の波長を抽出の光を抽出することができる。また、波長可変干渉フィルターが筐体に収納される構成であるため、帯電物質や水粒子等の異物の侵入を抑制できる。これにより、反射膜への帯電物質の付着による波長可変干渉部における第一反射膜及び第二反射膜間のギャップや、波長固定干渉部における第三反射膜及び第四反射膜間のギャップの変動、反射膜の劣化を防止することができる。
【0020】
本発明の光学モジュールは、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、光を検出する検出部と、を具備し、前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なり、前記検出部は、前記光干渉領域により取り出された光を検出することを特徴とする。
【0021】
本発明では、測定対象光が広い波長帯域を有する場合であっても、測定対象波長域と透過可能波長域とが重なる範囲内の特定波長の光を抽出することができ、当該特定の波長の光を検出部により検出することができる。したがって、広い波長帯域を有する測定対象光から、所望の特定波長の光の光量を精度よく検出することができる。
【0022】
本発明の電子機器は、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、を具備し、前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は光干渉領域を有し、前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なることを特徴とする。
【0023】
本発明では、測定対象光が広い波長帯域を有する場合であっても、測定対象波長域と透過可能波長域とが重なる範囲内の特定の波長を抽出の光を抽出することができる。したがって、電子機器において、例えば光干渉領域を透過した特定波長の光を検出して、その検出した光に基づいて、各種処理を実施する場合に、特定波長以外の波長の光が混入せず、正確な処理を実施することができる。更に、電子機器において、例えば光干渉領域を透過した光を外部に出力する電子機器などでは、所望の特定波長の光を外部に出力することができる。
【0024】
本発明の波長可変干渉フィルターは、基板と、変位可能なギャップを介して対向して配置された2つの反射膜、及び前記ギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部を有する波長可変干渉部と、固定されたギャップを介して対向して配置された2つの反射膜を有する波長固定干渉部と、を有し、前記波長可変干渉部に含まれる反射膜のうち一つは、前記基板の一方の面に設けられており、前記波長固定干渉部に含まれる反射膜のうち一つは、前記基板の前記一方の面とは反対の面に設けられており、前記基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜と前記第三反射膜とは重なって配置されていることを特徴とする。
【0025】
本発明では、波長可変干渉部及び波長固定干渉部を備え、基板の一方側の面に波長可変干渉部を構成する2つの反射膜のうちの1つが、基板の他方側の面に波長固定干渉部を構成する2つの反射膜のうちの1つが設けられる。このような構成では、上述した発明と同様に、波長可変干渉部及び波長固定干渉部の双方を透過した光が取り出される。ここで、波長可変干渉部の測定対象波長域のうちのいずれか1つが、波長固定干渉部の透過可能波長域のいずれか1つと重なるように構成されていれば、広い波長帯域の測定対象光から特定の波長の光を抽出することができる。
また、波長可変干渉フィルターに対して、複数のバンドパスフィルターを別途直列に配置するような構成に比べて、1つの波長可変干渉フィルターで特定波長の光を抽出することができるので、構成の簡略化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図3】第一実施形態の第一小領域における波長可変干渉部の測定対象波長域及び波長固定干渉部の透過可能波長域を示す図。
【図4】第一実施形態の第二小領域における波長可変干渉部の測定対象波長域及び波長固定干渉部の透過可能波長域を示す図。
【図5】変形例における波長可変干渉部及び波長固定干渉部の測定対象波長域及び波長固定干渉部の透過可能波長域を示す図。
【図6】第二実施形態の分光カメラの概略構成を示す図。
【図7】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの第三基板における凹部の概略構成を示す平面図。
【図8】第三実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図9】本発明の波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置を示す概略図。
【図10】図9のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の波長可変干渉フィルターを備えた食物分析装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る分光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、例えば測定対象Xで反射した測定対象光における各波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。なお、本実施形態では、測定対象Xで反射した測定対象光を測定する例を示すが、測定対象Xとして、例えば液晶パネル等の発光体を用いる場合、当該発光体から発光された光を測定対象光としてもよい。
そして、この分光測定装置1は、図1に示すように、光学モジュール10と、光学モジュール10から出力された信号を処理する制御回路部20と、を備えている。
【0028】
[光学モジュールの構成]
光学モジュール10は、波長可変干渉フィルター5と、検出部11と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15とを備える。
この光学モジュール10は、測定対象Xで反射された測定対象光を、入射光学系(図示略)を通して、波長可変干渉フィルター5に導き、波長可変干渉フィルター5を透過した光を検出部11で受光する。そして、検出部11から出力された検出信号は、I−V変換器12、アンプ13、及びA/D変換器14を介して制御回路部20に出力される。
【0029】
[波長可変干渉フィルターの構成]
次に、光学モジュールに組み込まれる波長可変干渉フィルターについて説明する。
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、第一基板51、第二基板52、及び第三基板53を備えている。これらの各基板51,52,53は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。そして、第一基板51及び第二基板52は、接合膜54Aにより接合され、第一基板及び第三基板53は、接合膜54Bにより接合されている。これらの接合膜54A,54Bとしては、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜等を用いることができる。
【0030】
波長可変干渉フィルター5における第一基板51の第二基板52に対向する面には第一反射膜551が設けられ、第二基板52の第一基板51に対向する面には第二反射膜552が設けられている。これらの第一反射膜551及び第二反射膜552は、第一ギャップG1を介して対向配置されている。
また、波長可変干渉フィルター5には、第一反射膜551及び第二反射膜552の間の第一ギャップG1のギャップ量gを調整するのに用いられる静電アクチュエーター56(ギャップ変更部)が設けられている。この静電アクチュエーター56は、第一基板51側に設けられる第一電極561と、第二基板52側に設けられる第二電極562とを備えている。
【0031】
更に、波長可変干渉フィルター5における第一基板51の第三基板53に対向する面には第三反射膜553が設けられ、第三基板53の第一基板51に対向する面には第四反射膜554が設けられている。これらの第三反射膜553及び第四反射膜554は、第二ギャップG2を介して対向配置されている。ここで、第二ギャップG2は、第三反射膜553及び第四反射膜554がギャップ量gで対向する領域と、第三反射膜553及び第四反射膜554がギャップ量gで対向する領域とを備えている。
【0032】
そして、波長可変干渉フィルター5を第一基板51、第二基板52、及び第三基板53の基板厚み方向から見た平面視(フィルター平面視)において、第一反射膜551、第二反射膜552、第三反射膜553、及び第四反射膜554が重なる領域が本発明の光干渉領域Ar0となる。
光干渉領域Ar0のうち、互いに対向する第一反射膜551及び第二反射膜552により波長可変干渉部57が構成される。この波長可変干渉部57は、静電アクチュエーター56により第一ギャップG1のギャップ量gを調整することで、第一反射膜551及び第二反射膜552を透過する光の波長を変化させることができる。
また、光干渉領域Ar0のうち、互いに対向する第三反射膜553及び第四反射膜554により、波長固定干渉部58が構成される。この波長固定干渉部58は、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第一波長固定干渉部581と、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第二波長固定干渉部582とで異なる波長の光を透過させる。ここで、この光干渉領域Ar0のうち、波長固定干渉部58の第二ギャップG2のギャップ量が「g」となる領域を第一小領域Ar1、第二ギャップG2のギャップ量が「g」となる領域を第二小領域Ar2と定義する。
【0033】
また、フィルター平面視において、各基板51,52,53の平面中心点Oは、各反射膜551,552,553,554の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。
なお、本実施形態では、光学モジュール10に入射した測定対象光は、第三基板53側に入射され、各反射膜551,552,553,554により取り出された光は、第二基板52を透過して検出部11に入射する。
【0034】
[第一基板の構成]
次に、第一基板51の構成について詳述する。
第一基板51は、第二基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、第一電極561及び第二電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、第一電極561の内部応力による第一基板51の撓みはない。この第一基板51は、エッチングにより形成される電極配置溝511及び反射膜設置部512を備える。
【0035】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、第一基板51の平面中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、フィルター平面視において、電極配置溝511の中心部から第二基板52側に突出して形成される。電極配置溝511の溝底面(電極設置面511A)には、第一電極561が設けられ、反射膜設置部512の突出先端面(反射膜設置面512A)には、第一反射膜551が設けられる。
【0036】
電極設置面511Aに設けられる第一電極561は、平面中心点Oを中心とした環状に形成され、好ましくは、円環状に形成される。なお、この環形状としては、当該円環形状の一部が分断されている構成、例えば略C字状となる構成をも含む。
また、第一基板51には、第一電極561の外周縁から第一基板51の外周部まで延出する第一引出電極(図示略)が形成され、この第一引出電極は、電圧制御部15に接続される。
これらの第一電極561及び第一引出電極としては、導電性膜であれば、いかなる電極材料を用いてもよく、例えば、ITOや、Cr/Au積層電極等を用いることができる。
なお、この第一電極561上には、第一電極561及び第二電極562の間の絶縁耐圧を確保するために、絶縁膜が積層される構成としてもよい。
【0037】
反射膜設置部512の反射膜設置面512Aには、少なくとも光干渉領域Ar0を覆って第一反射膜551が設けられる。この第一反射膜551としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、第一反射膜551としては、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよく、誘電体多層膜及び金属膜を積層した反射膜や、誘電体単層膜及び合金膜を積層した反射膜等を用いてもよい。
【0038】
また、第一基板51の第三基板53に対向する面には、少なくとも光干渉領域Ar0を覆って、第三反射膜553が設けられる。この第三反射膜553としては、第一反射膜551と同様に、AgやAg合金を用いることができる。また、第三反射膜553としては、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよく、誘電体多層膜及び金属膜を積層した反射膜、又は誘電体単層膜及び合金膜を積層した反射膜等を用いてもよい。
【0039】
[第二基板の構成]
次に、第二基板52の構成について詳述する。
第二基板52は、図2に示すように、平面中心点Oを中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり、可動部521を保持する保持部522とを備える。
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第二基板52の厚み寸法と同一寸法に形成される。また、可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも第一電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成される。そして、可動部521の第一基板51に対向する面は、反射膜設置面512Aに平行な可動面521Aとなり、第二反射膜552及び第二電極562が設けられる。
【0040】
第二反射膜552は、上述した第一反射膜551と同一の構成の反射膜が用いられる。
第二電極562は、フィルター平面視において、第一電極561と重なる領域に設けられている。また、第二基板52には、第二電極562の外周縁から第二基板52の外周部まで延出する第二引出電極(図示略)が形成され、この第二引出電極は、電圧制御部15に接続される。これらの第二電極562及び第二引出電極としては、第一電極561や第一引出電極と同様に、導電性膜であれば、いかなる電極材料を用いてもよく、例えば、ITOや、Cr/Au積層電極等を用いることができる。また、第一電極561と同様、第二電極562上には、第一電極561及び第二電極562の間の絶縁耐圧を確保するために、絶縁膜が積層される構成としてもよい。
【0041】
また、可動部521には、第一基板51とは反対の面において、反射防止膜が形成されていてもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成することができる。
【0042】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。
このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により第一基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により第二基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された第二反射膜552の撓みも防止できる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成等としてもよい。
【0043】
[第三基板の構成]
次に、第三基板53の構成について詳述する。
第三基板53は、例えば第一基板51と同様の厚み寸法を有している。したがって、第四反射膜554の内部応力による第三基板53の撓みはない。この第三基板53は、エッチングにより形成されるギャップ形成用の凹部531を備える。
この凹部531の底面部には、第四反射膜554が設けられる。第四反射膜554としては、上述した第三反射膜553と同一の構成の反射膜が用いられる。
【0044】
また、凹部531は、第二ギャップG2のギャップ量を「g」にするための第一凹部531Aと、第二ギャップG2のギャップ量を「g」にするための第二凹部531Bとを備え、それぞれ溝深さが異なる値に形成される。
このような凹部531では、第一小領域Ar1に対応した第一凹部531Aと、第二小領域Ar2に対応した第二凹部531Bとの深さ寸法が異なるため、これら第一凹部531A及び第二凹部531Bの間の領域境界部532には、傾斜面(又は段差面)が形成される。
【0045】
更に、第三基板53の第一基板51に対向しない面(光入射面)には、遮光部533が設けられる。この遮光部533としては、測定対象となる波長の光を透過しない膜であれば特に限定されず、例えば、可視光を利用する場合では、Cr膜を下地としたAu膜を用いてもよく、黒色塗料等を塗布することで構成されていてもよい。
この遮光部533は、環状に形成され、環内周径533Aにより光干渉領域Ar0の径寸法が規定される。すなわち、遮光部533は、アパーチャーとして機能する。
また、遮光部533は、フィルター平面視において、凹部531の領域境界部532と重なる位置にも形成される。これにより、領域境界部532への光の入射を防止でき、波長可変干渉フィルター5の光学特性の低下を抑制することができる。
【0046】
また、第三基板53の光入射面には、光干渉領域Ar0内に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、第三基板53の表面での光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0047】
[波長可変干渉フィルターの透過特性]
次に、上述のような波長可変干渉フィルター5の透過特性について、図面に基づいて説明する。
図3は、波長可変干渉フィルターにおける第一小領域Ar1の分光特性(透過特性)を示す図である。図3において、一点鎖線は、波長固定干渉部58(第一波長固定干渉部581)の透過特性を示し、実線は波長可変干渉部57の透過特性を示す。
また、図4は、波長可変干渉フィルターにおける第二小領域Ar2の分光特性(透過特性)を示す図である。図4において、一点鎖線は、波長固定干渉部58(第二波長固定干渉部582)の透過特性を示し、実線は波長可変干渉部57の透過特性を示す。
【0048】
一般に、一対の反射膜が空気(屈折率n=1)を介して平行に対向する干渉フィルターに対して垂直に光が入射する場合、上述した(1)式に示すように、λ=2d/mの波長の光が透過される。
したがって、波長可変干渉部57及び波長固定干渉部58の透過特性は、図3及び図4に示すように、次数mが異なる複数のピーク波長を有する特性となる。
波長可変干渉部57は、第一ギャップG1のギャップ量gを変化させることが可能であるため、図3及び図4に示すように、測定対象波長域P1〜P3において透過光のピーク波長を変化させることが可能となる。
一方、第一波長固定干渉部581及び第二波長固定干渉部582は、それぞれ第二ギャップG2のギャップ量が固定されているため、ピーク波長の位置は変動しない。すなわち、第一波長固定干渉部581及び第二波長固定干渉部582は、第二ギャップG2のギャップ量に対応したピーク波長a1〜a4を有し、これらのピーク波長a1〜a4を中心とした所定波長域(透過可能波長域A1〜A4)内の光を透過させる。
【0049】
ここで、本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、可視光域から近赤外光域(400nm〜1000nm)の範囲内で、図3に示すように、波長可変干渉部57の3次ピーク波長の変動範囲(測定対象波長域P3)の一部と、第一波長固定干渉部581の2次ピーク波長を中心とした透過可能波長域A2の一部とが重なる。
波長可変干渉フィルター5の光干渉領域Ar0を透過する光は、波長可変干渉部57及び波長固定干渉部58の双方を透過する光である。したがって、第一小領域Ar1を透過する光は、測定対象波長域P3と透過可能波長域A2とが重なる波長域B1(本実施形態では、図3に示すようにB1=A2)となる。
同様に、図4に示すように、波長可変干渉部57の2次ピーク波長の変動範囲(測定対象波長域P2)と、第二波長固定干渉部582の1次ピーク波長を中心とした透過可能波長域A3とが重なる。したがって、第二小領域Ar2を透過する光は、測定対象波長域P2と透過可能波長域A3とが重なる波長域B2(本実施形態では、図4に示すようにB2=A3)となる。
【0050】
なお、本実施形態では、波長固定干渉部58は、波長可変干渉部57における測定対象波長域をカバーできる程度に、透過可能波長域が大きい透過特性を持たせているが、例えば波長可変干渉部57の測定対象波長域が大きい場合や、波長固定干渉部58の透過可能波長域が小さい(鋭いピークを有する)場合もある。
この場合、例えば、図5に示すように、波長固定干渉部58を、透過可能波長域A5を有する領域と、透過可能波長域A6を有する領域とに分割し、透過可能波長域A5及び透過可能波長域A6により、波長可変干渉部57の測定対象波長域P2をカバーする構成などとすればよい。
【0051】
[検出部の構成]
次に、図1に戻り、光学モジュール10の検出部11について説明する。
検出部11は、波長可変干渉フィルター5の光干渉領域Ar0を透過した光を受光(検出)し、受光量に基づいた検出信号を出力する。
具体的には、検出部11は、アレイ状に配置された複数の撮像素子(例えばCCD素子等)を備える。また、検出部11は、光干渉領域Ar0のうち、第一小領域Ar1の光が受光される領域、及び第二小領域Ar2が受光される領域が予め設定されている。すなわち、検出部11は、第一小領域Ar1を透過した光、及び第二小領域Ar2を透過した光をそれぞれ独立して検出することができる。
【0052】
[I−V変換器、アンプ、A/D変換器、及び電圧制御部の構成]
検出部11は、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度(光量)に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、検出部11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御回路部20に出力する。
電圧制御部15は、制御回路部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に対して電圧を印加する。これにより、静電アクチュエーター56の第一電極561及び第二電極562間で静電引力が発生し、可動部521が第一基板51側に変位して、第一ギャップG1のギャップ量gが所定値に設定される。
【0053】
[制御回路部の構成]
次に、分光測定装置1の制御回路部20について説明する。
制御回路部20は、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御回路部20は、図1に示すように、フィルター駆動部21と、光量取得部22と、分光解析部23と、を備える。
また、制御回路部20は、各種データを記憶する記憶部(図示略)を備え、当該記憶部には、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧に対する、当該波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長の関係を示すV−λデータが記憶される。
【0054】
フィルター駆動部21は、記憶部に記憶されるV−λデータを参照し、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する電圧を順次切り替えて、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長を順次切り替える。
光量取得部22は、検出部11により検出された光量を取得し、フィルター駆動部21により設定された第一ギャップG1に対応する光の光量として記憶部に記憶する。
なお、検出部11は、上述したように、光干渉領域Ar0の第一小領域Ar1を受光する領域、及び第二小領域Ar2を受光する領域を備えており、各領域から独立した検出信号が出力される。したがって、光量取得部22は、各領域から出力される検出信号に基づいて、第一小領域Ar1を透過した光の光量、及び第二小領域Ar2を透過した光の光量をそれぞれ取得する。
分光解析部23は、光量取得部22により取得され記憶部に記憶された各波長に対する光量に基づいて、測定対象光の分光スペクトルを解析する。
【0055】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、第一基板51に設けられる第一反射膜551と、第二基板52に設けられる第二反射膜552とが第一ギャップG1を介して互いに対向して波長可変干渉部57を構成する。この波長可変干渉部57は、静電アクチュエーター56に印加する電圧を変化させることで、第一ギャップG1のギャップ量gを適宜変更することができる。
また、第一基板51の第三反射膜553と、第三基板53の第四反射膜554とが第二ギャップG2を介して互いに対向し、波長固定干渉部58を構成する。この波長固定干渉部58は、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第一波長固定干渉部581と、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第二波長固定干渉部582とを備える。
更に、波長可変干渉フィルター5は、フィルター平面視において、各反射膜551,552,553,554が重なり合う光干渉領域Ar0を備え、この光干渉領域Ar0は、更に、第一波長固定干渉部581が設けられる領域に対応した第一小領域Ar1、及び第二波長固定干渉部582が設けられる領域に対応した第二小領域Ar2を有する。
【0056】
そして、本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、測定対象光の波長帯域において、波長可変干渉部57における3次ピーク波長に対応した測定対象波長域P3と、第一波長固定干渉部581における2次ピークに対応した透過可能波長域A2とが波長域B1において重なり合う。また、波長可変干渉部57における2次ピーク波長に対応した測定対象波長域P2と、第二波長固定干渉部582における1次ピーク波長に対応した透過可能波長域A3とが波長域B2において重なり合う。
このため、第一小領域Ar1からは波長域B1の光が透過可能となり、その他の波長域の光は、波長可変干渉部57及び波長固定干渉部58の少なくともいずれか一方を透過することができない。同様に、第二小領域Ar2からは、波長域B2の光が透過可能となり、その他の波長域の光は、波長可変干渉部57及び波長固定干渉部58の少なくともいずれか一方を透過することができない。
これにより、波長帯域が可視光から近赤外光までの広い範囲に及ぶ波長帯域の測定対象光が波長可変干渉フィルターに入射した場合でも、各小領域Ar1,Ar2において、1つのピーク波長の光を抽出することができる。
また、他のバンドパスフィルター等を用いることなく、1つの(単体の)波長可変干渉フィルター5のみにより、複数のピーク波長から所定の1つのピーク波長の光を取り出すことができる。したがって、光学モジュール10や分光測定装置1の構成の簡略化を図ることができる。
【0057】
本実施形態では、第三基板53に凹部531が設けられ、この凹部531の深さ寸法により波長固定干渉部58における第二ギャップG2のギャップ量が規定される。
このような構成では、例えば、第一基板51及び第三基板53の双方に凹部を形成する構成に比べ、1つの基板のみを加工すればよいため、製造効率性を向上させることができる。
また、第一基板51に凹部を形成する場合、第一基板51の第二基板52に対向する面に電極配置溝511を形成する必要があるため、基板両面に対してそれぞれエッチング処理が必要となる。これに対して、第三基板53に凹部531を形成する場合では、第一基板51の第二基板52に対向する片面のみにエッチング処理を実施すればよく、加工効率性が向上する。
なお、本実施形態では、第三基板53に凹部531を設ける構成としたが、第三基板53を加工せず、第一基板51に凹部を設ける構成としてもよい。このような構成でも、本実施形態と同様に、1つの基板のみを加工することで第二ギャップG2のギャップ量を設定することができるため、製造効率性を向上させることができる。また、第一基板51に凹部を設ける場合、第三基板53に対してエッチング等の基板加工を施す必要がない。
【0058】
本実施形態では、波長固定干渉部58は、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第一波長固定干渉部581、及び、第二ギャップG2がギャップ量gとなる第二波長固定干渉部582を備える。
このような構成では、第一波長固定干渉部581と第二波長固定干渉部582とで、透過する光のピーク波長が異なり、ピーク波長に対応した透過可能波長域も異なる。そして、第一波長固定干渉部581の透過可能波長域A1,A2のうち、透過可能波長域A2が波長可変干渉部57の測定対象波長域P3と重なり、第二波長固定干渉部582の透過可能波長域A3,A4のうち、透過可能波長域A3が波長可変干渉部57の測定対象波長域P2と重なる。このため、波長可変干渉フィルター5の第一小領域Ar1では、波長域B1の光を取り出すことができ、第二小領域Ar2では、波長域B2の光を取り出すことができる。
このように、波長固定干渉部58の第二ギャップG2のギャップ量が異なる領域を複数設けることで、1つの(単体の)波長可変干渉フィルター5から、複数の波長をそれぞれ個別に取り出すことができ、1回の測定により、複数のピーク波長に対応した光を取得することができる。
これにより、分光測定装置1により測定対象光の波長帯域内における各波長の光の光量を測定する場合に、1度の測定で2つのピーク波長に対する光量を取得することができるため、測定実施回数を減らすことができ、迅速な分光測定を実施することができる。
【0059】
本実施形態では、第三基板53の第一波長固定干渉部581と第二波長固定干渉部582の間には、傾斜面または段差面となる領域境界部532が設けられる。そして、第三基板53には、この領域境界部532に入射する光を遮光する遮光部533が設けられる。
このため、領域境界部532への光の入射がなく、領域境界部532の傾斜面や段差面で屈折や反射される光がない。したがって、各反射膜551,552,553,554に対して、傾斜した角度(直交以外の角度)で入射する光成分がなく、波長可変干渉フィルター5における分解能低下を抑制できる。
【0060】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、波長可変干渉フィルター5の光干渉領域Ar0に、波長固定干渉部58の第二ギャップG2がギャップ量gとなる第一小領域Ar1、及びギャップ量gとなる第二小領域Ar2を設ける構成を例示した。これに対して、第二実施形態は、光干渉領域Ar0が更に細かく分割されている点で第一実施形態と相違する。
【0061】
図6は、第二実施形態における分光カメラ(分光測定装置)の概略構成を示す図である。なお、以上の実施形態において、上記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0062】
図6に示すように、分光カメラ1Aは、光学モジュール10Aと、光学モジュール10Aから出力された信号を処理する制御回路部20Aと、を備えている。
この分光カメラ1Aは、例えば測定対象Xで反射した画像光(測定対象光)における各波長の分光画像を取得する装置である。
【0063】
[光学モジュールの構成]
光学モジュール10Aは、波長可変干渉フィルター5Aと、撮像部11Aと、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15とを備える。
この光学モジュール10Aは、測定対象Xで反射された測定対象光を、テレセントリック光学系(図示略)を通して、波長可変干渉フィルター5Aに導き、波長可変干渉フィルター5Aを透過した光を撮像部11Aで撮像する。そして、撮像部11Aで撮像された画像信号は、I−V変換器12、アンプ13、及びA/D変換器14を介して制御回路部20Aに出力される。
【0064】
[波長可変干渉フィルターの構成]
本実施形態の波長可変干渉フィルター5Aは、第一実施形態の波長可変干渉フィルター5と略同様の構成を有し、第三基板53Aの構成が上記第一実施形態の第三基板53と相違する。
図7は、第二実施形態の第三基板53Aの凹部534の概略構成を示す平面図である。
図7に示すように、本実施形態の第三基板53Aは、深さ寸法がより細かい領域に分割された凹部534を備える。
具体的には、本実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、光干渉領域Ar0は、アレイ状に分割した複数の部分領域Ar3を備える。この部分領域Ar3は、取得する分光画像の画素単位で分割されている。そして、この部分領域Ar3内において更に、3つの小領域(第一小領域Ar31、第二小領域Ar32、第三小領域Ar33)に分割される。
【0065】
第三基板53Aの凹部534は、これらの部分領域Ar3及び各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応して、隣り合う領域間で異なる深さ寸法となるように形成されている。なお、図7では、第一小領域Ar31に対応する領域を「1」、第二小領域Ar32に対応する領域を「2」、第三小領域Ar33に対応する領域を「3」の番号を付し、部分領域Ar3の境界線を太線にて表示している。
【0066】
このような本実施形態では、波長固定干渉部58における各小領域Ar31,Ar32,Ar33を透過する光のピーク波長がそれぞれ異なり、それぞれ異なる透過可能波長域を有する。
そして、第一小領域Ar31に対応する波長固定干渉部58は、測定対象光の波長帯域(例えば可視光域から近赤外光域)において、波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域と重なる1次ピーク波長を有し、当該1次ピーク波長に対応した透過可能波長域を有する。また、第一小領域Ar31に対応する波長固定干渉部58では、測定対象光の波長帯域において、その他のピーク波長(2次以降のピーク波長)及び当該ピーク波長に対応した透過可能波長域は、波長可変干渉部57の測定対象波長域と重ならない。したがって、第一小領域Ar31では、波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域と、波長固定干渉部58の1次ピーク波長に対応した透過可能波長域とが重なる第一波長域の光のみが透過可能となる。
【0067】
第二小領域Ar32に対応する波長固定干渉部58は、測定対象光の波長帯域において、波長可変干渉部57の3次ピーク波長に対応した測定対象波長域と重なる2次(又は1次)ピーク波長を有し、当該ピーク波長に対応した透過可能波長域を有する。また、第二小領域Ar32に対応する波長固定干渉部58では、測定対象光の波長帯域において、その他のピーク波長及び当該ピーク波長に対応した透過可能波長域は、波長可変干渉部57の測定対象波長域と重ならない。したがって、第二小領域Ar32では、波長可変干渉部57の3次ピーク波長に対応した測定対象波長域と、波長固定干渉部58の2次(又は1次)ピーク波長に対応した透過可能波長域とが重なる第二波長域の光のみが透過可能となる。
【0068】
第三小領域Ar33に対応する波長固定干渉部58は、測定対象光の波長帯域において、波長可変干渉部57の4次ピーク波長に対応した測定対象波長域と重なる3次(又は2次又は1次)ピーク波長を有し、当該ピーク波長に対応した透過可能波長域を有する。また、第三小領域Ar33に対応する波長固定干渉部58では、測定対象光の波長帯域において、その他のピーク波長及び当該ピーク波長に対応した透過可能波長域は、波長可変干渉部57の測定対象波長域と重ならない。したがって、第三小領域Ar33では、波長可変干渉部57の4次ピーク波長に対応した測定対象波長域と、波長固定干渉部58の3次(又は2次又は1次)ピーク波長に対応した透過可能波長域とが重なる第三波長域の光のみが透過可能となる。
また、図7では省略しているが、第一実施形態と同様に、第三基板53Aの第一基板51に対向しない面には、各小領域Ar31,Ar32,Ar33の間の領域境界部532への光の入射を阻止する遮光部が設けられている。
【0069】
[撮像部の構成]
撮像部11Aは、光干渉領域Ar0に対応した撮像領域を備え、この撮像領域において、各部分領域Ar3に対応した画素領域を有する。また、撮像部11Aの各画素領域は、各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応付けられた3つの撮像素子を備えている。つまり、1つの小領域(Ar31,Ar32,Ar33)を透過した光は、当該小領域に対応付けられた1つの撮像素子に入射する。
このような撮像部11Aでは、波長可変干渉フィルター5Aを透過した画像光を、各部分領域と透過した光を1画素とした画像として取得(撮像)することができる。また、各画素領域では、それぞれ各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応した波長の光が受光可能であるため、各波長に対応した分光画像を取得することが可能となる。例えば、各画素領域の第一小領域Ar31に対応した撮像素子により、第一小領域Ar31に対応した所定波長の分光画像を取得することができる。
【0070】
[制御部の構成]
制御回路部20Aは、図6に示すように、フィルター駆動部21と、光量取得部22と、分光画像取得部24とを備える。
分光画像取得部24は、光量取得部22により取得される各撮像素子からの検出信号に基づいて、撮像部11Aにて撮像された撮像画像(分光画像)を取得する。上述したように、本実施形態では、撮像部11Aは、各部分領域Ar3に対応した各画素領域を備え、各画素領域に各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応した撮像素子が配置されている。したがって、分光画像取得部24は、第一小領域Ar31に対応した撮像素子からの検出信号に基づいて、波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域の波長の分光画像を取得できる。同様に、分光画像取得部24は、第二小領域Ar32に対応した撮像素子から、波長可変干渉部57の3次ピーク波長に対応した測定対象波長域の波長の分光画像を取得でき、第三小領域Ar33に対応した撮像素子からの検出信号に基づいて、波長可変干渉部57の4次ピーク波長に対応した測定対象波長域の波長の分光画像を取得できる。
【0071】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、光干渉領域Ar0は、撮像部11Aにより撮像される画像の画素領域に対応した複数の部分領域Ar3に分割され、これらの部分領域Ar3は、更に、複数(3つ)の小領域Ar31,Ar32,Ar33に分割される。そして、第三基板53に設けられる凹部534は、各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応する部分がそれぞれ異なる深さ寸法となるように形成される。ここで、第一小領域Ar31に対応する波長固定干渉部58では、波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域に対して、1つの透過可能波長域が重なるように第二ギャップのギャップ量が設定される。また、第二小領域Ar32に対応する波長固定干渉部58では、波長可変干渉部57の3次ピーク波長に対応した測定対象波長域に対して、1つの透過可能波長域が重なるように第二ギャップのギャップ量が設定される。また、第三小領域Ar33に対応する波長固定干渉部58では、波長可変干渉部57の4次ピーク波長に対応した測定対象波長域に対して、1つの透過可能波長域が重なるように第二ギャップのギャップ量が設定される。
これにより、測定対象光が、例えば可視光域から近赤外光域までの広い波長帯域を有する場合であっても、波長可変干渉部57の2次ピーク波長、3次ピーク波長、及び4次ピーク波長に対応した光を各小領域Ar31,Ar32,Ar33から独立して射出させることができる。
【0072】
また、各部分領域が撮像部11Aの画素領域に対応しているため、各小領域Ar31,Ar32,Ar33に対応した各撮像素子からの検出信号に基づいて、各ピーク波長に対応した分光画像を取得することができる。このような構成では、1回の撮像により3つのピーク波長に対応した分光画像を取得することができる。したがって、例えば複数の波長の分光画像を撮像したい場合に、撮像に要する時間を短縮することができる。
【0073】
また、本実施形態では、1つの(単体の)波長可変干渉フィルター5Aにより、次数の異なる複数のピーク波長に対応する分光画像を取得することができ、例えば、他のバンドパスフィルター等が不要となるため、構成の簡略化を図ることができる。
【0074】
[第三実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態の分光測定装置1又は第二実施形態の分光カメラ1Aでは、光学モジュール10,10Aに対して、波長可変干渉フィルター5,5Aが直接設けられる構成とした。しかしながら、光学モジュールとしては、複雑な構成を有するものもあり、特に小型化の光学モジュールに対して、波長可変干渉フィルター5を直接設けることが困難な場合がある。本実施形態では、そのような光学モジュールに対しても、波長可変干渉フィルター5,5Aを容易に設置可能にする光学フィルターデバイスについて、以下に説明する。
図8は、本発明の第三実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図である。
【0075】
図8に示すように、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5と、当該波長可変干渉フィルター5を収納する筐体601と、を備えている。なお、本実施形態では、一例として波長可変干渉フィルター5を例示するが、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aが用いられる構成としてもよい。
筐体601は、ベース基板610と、リッド620と、ベース側ガラス基板630と、リッド側ガラス基板640と、を備える。
【0076】
ベース基板610は、例えば単層セラミック基板により構成される。このベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の第二基板52が設置される。ベース基板610への第二基板52の設置としては、例えば接着層等を介して配置されるものであってもよく、他の固定部材等に嵌合等されることで配置されるものであってもよい。また、ベース基板610には、光干渉領域Ar0に対向する領域に、光通過孔611が開口形成される。そして、この光通過孔611を覆うように、ベース側ガラス基板630が接合される。ベース側ガラス基板630の接合方法としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用できる。
【0077】
このベース基板610のリッド620に対向するベース内側面612には、波長可変干渉フィルター5の各引出電極(第一引出電極、第二引出電極)と接続される内側端子部615が設けられている。なお、各引出電極と内側端子部615との接続は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)615Aを用いることができ、例えばAgペースト、ACF(Anisotropic Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)等により接合する。なお、内部空間650を真空状態に維持する場合は、アウトガスが少ないAgペーストを用いることが好ましい。また、FPC615Aによる接続に限られず、例えばワイヤーボンディング等による配線接続を実施してもよい。
また、ベース基板610は、各内側端子部615が設けられる位置に対応して、貫通孔614が形成されており、各内側端子部615は、貫通孔614に充填された導電性部材を介して、ベース基板610のベース内側面612とは反対側のベース外側面613に設けられた外側端子部616に接続されている。
そして、ベース基板610の外周部には、リッド620に接合されるベース接合部617が設けられている。
【0078】
リッド620は、図8に示すように、ベース基板610のベース接合部617に接合されるリッド接合部624と、リッド接合部624から連続し、ベース基板610から離れる方向に立ち上がる側壁部625と、側壁部625から連続し、波長可変干渉フィルター5の第一基板51側を覆う天面部626とを備えている。このリッド620は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド620は、リッド接合部624と、ベース基板610のベース接合部617とが、接合されることで、ベース基板610に密着接合されている。
この接合方法としては、例えば、レーザー溶着の他、銀ロウ等を用いた半田付け、共晶合金層を用いた封着、低融点ガラスを用いた溶着、ガラス付着、ガラスフリット接合、エポキシ樹脂による接着等が挙げられる。これらの接合方法は、ベース基板610及びリッド620の素材や、接合環境等により、適宜選択することができる。
【0079】
リッド620の天面部626は、ベース基板610に対して平行となる。この天面部626には、波長可変干渉フィルター5の光干渉領域Ar0に対向する領域に、光通過孔621が開口形成されている。そして、この光通過孔621を覆うように、リッド側ガラス基板640が接合される。リッド側ガラス基板640の接合方法としては、ベース側ガラス基板630の接合と同様に、例えばガラスフリット接合や、エポキシ樹脂等による接着などを用いることができる。
【0080】
〔第三実施形態の作用効果〕
本実施形態の光学フィルターデバイス600では、筐体601により波長可変干渉フィルター5が保護されているため、異物や大気に含まれるガス等による波長可変干渉フィルター5の特性変化を防止でき、また、外的要因による波長可変干渉フィルター5の破損を防止できる。また、帯電粒子の侵入を防止できるため、第一電極561や第二電極562の帯電を防止できる。したがって、帯電によるクーロン力の発生を抑制でき、反射膜551,552の平行性をより確実に維持することができる。
【0081】
また、例えば工場で製造された波長可変干渉フィルター5を、光学モジュールや電子機器を組み立てる組み立てライン等まで運搬する場合に、光学フィルターデバイス600により保護された波長可変干渉フィルター5では、安全に運搬することが可能となる。
また、光学フィルターデバイス600は、筐体601の外周面に露出する外側端子部616が設けられているため、光学モジュールや電子機器に対して組み込む際にも容易に配線を実施することが可能となる。
【0082】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0083】
例えば、上記実施形態では、光干渉領域Ar0が複数の小領域Ar1,Ar2に分割される構成、又は複数の部分領域Ar3に分割され、かつ各部分領域が複数の小領域Ar31,Ar32,Ar33に分割される構成を例示したが、これに限定されない。
すなわち、第二ギャップG2のギャップ量が光干渉領域Ar0において一様な寸法となる構成としてもよい。この場合、例えば、波長可変干渉部57の複数のピーク波長に対応した測定対象波長域のうち、測定を実施したい測定実施波長域の光が透過されるように、波長固定干渉部58の第二ギャップG2のギャップ量が設定されていればよい。
【0084】
第二実施形態において、各部分領域Ar3内に3つの小領域Ar31,AR32,Ar33が設けられる例を示したが、4つ以上の小領域が設けられる構成としてもよい。
また、撮像部11Aで撮像される分光画像の画素単位に対応して各部分領域Ar3が設けられる例を示したが、複数画素に対応した部分領域を設ける構成としてもよい。
【0085】
第二実施形態では、波長可変干渉部57における次数が異なるピーク波長に対応した測定対象波長に対応して、各小領域Ar31,Ar32,Ar33における第二ギャップG2のギャップ量を設定した。すなわち、第二実施形態では、第一小領域Ar31から波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応する測定対象波長域の光、第二小領域Ar32から波長可変干渉部57の3次ピーク波長に対応する測定対象波長の光、第三小領域Ar33から波長可変干渉部57の4次ピーク波長に対応する測定対象波長の光が透過されるように、第二ギャップのギャップ量が設定されている。
これに対して、図5に示すように、異なる複数の小領域により、1つの測定対象波長域の光を取り出す構成としてもよい。例えば、波長可変干渉部57の2次ピーク波長に対応した測定対象波長域(450nm〜600nm)の光を取り出すことを目的とした波長可変干渉フィルターでは、第一〜第三小領域に、透過波長域が測定対象波長域と重なる第一〜第三波長固定干渉部を配置する。
ここで、第一波長固定干渉部の1次ピーク波長に対応した透過波長域が450nm〜500nmとなり、第二波長固定干渉部の1次ピーク波長に対応した透過波長域が500nm〜550nmとなり、第三波長固定干渉部の1次ピーク波長に対応した透過波長域が550nm〜600nmとなり、その他の透過波長域において、波長可変干渉部の他の測定対象波長域と重なりがないものとする。
このような構成では、測定対象波長域の光は、第一ギャップG1のギャップ量gに応じて第一〜第三小領域のうちのいずれかを透過する構成となる。また、この場合でも、波長可変干渉部の他のピーク波長に対応した光は、波長可変干渉フィルターを透過せず、特定の波長域の光のみを抽出することができる。
【0086】
上記第一及び第二実施形態において、第三基板53の光入射面に遮光部533が設けられる構成を示したが、これに限定されない。遮光部533が設けられる位置としては、例えば、凹部531,534の領域境界部532上や、第四反射膜554上に設けられる構成としてもよい。
また、本実施形態では、波長可変干渉フィルター5に第三基板53側から光が入射する例を示したが、例えば第二基板52側から光が入射する構成としてもよい。この場合、例えば、第一基板51や第二基板52、第一反射膜551や第二反射膜552上に遮光部が領域境界部532への光の入射を阻止する遮光部が設けられる構成としてもよい。
【0087】
上記各実施形態では、波長可変干渉フィルター5,5Aのギャップ量変更部として、電圧印加により静電引力により第一ギャップG1のギャップ量gを変動させる静電アクチュエーター56を例示したが、これに限定されない。
例えば、第一電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、第二電極562の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
更に、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、及び上部電極層を積層配置させ、下部電極層及び上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
【0088】
また、本発明の電子機器として、第一実施形態において分光測定装置1を例示し、第二実施形態において分光カメラ1Aを例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0089】
図9は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図10は、図9のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図9に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、及び排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、及び受光素子137(検出部)等を含む検出装置と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5の代わりに、波長可変干渉フィルター5Aや光学フィルターデバイス600を配置してもよい。
また、図10に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
更に、ガス検出装置100の制御部138は、図10に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、及び排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0090】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0091】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
【0092】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、及びレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0093】
なお、上記図9及び図10において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0094】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0095】
図11は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図11に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。なお、波長可変干渉フィルター5に代えて、波長可変干渉フィルター5Aや光学フィルターデバイス600が配置されてもよい。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0096】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0097】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、及びその含有量を求める。また、得られた食物成分及び含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。更に、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、更には、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0098】
また、図11において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
更には、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0099】
更には、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0100】
更には、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0101】
更には、光学モジュール及び電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0102】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、及び電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0103】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0104】
1…分光測定装置(電子機器)、1A…分光カメラ(電子機器)、5,5A…波長可変干渉フィルター、11…検出部、11A…撮像部(検出部)、51…第一基板、52…第二基板、53…第三基板、56…静電アクチュエーター(ギャップ変更部)、57…波長可変干渉部、58…波長固定干渉部、100…ガス検出装置(電子機器)、200…食物分析装置(電子機器)、551…第一反射膜、552…第二反射膜、553…第三反射膜、554…第四反射膜、600…光学フィルターデバイス、601…筐体、A1,A2,A3,A4…透過可能波長域、Ar0…光干渉領域、Ar1…第一小領域、Ar2…第二小領域、Ar3…部分領域、Ar31…第一小領域、Ar32…第二小領域、Ar33…第三小領域、G1…第一ギャップ、G2…第二ギャップ、P1,P2,P3,P4…測定対象波長域、X…測定対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、
前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、
前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、
を具備し、
前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、
前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、
測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なる
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板及び前記第三基板の少なくともいずれか一方には、他方に対向する面に凹部が設けられ、
前記凹部の底面に前記第三反射膜又は第四反射膜が設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記凹部は、前記第一基板及び前記第三基板のうち、いずれか一方に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記光干渉領域は、前記第三反射膜及び前記第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる複数の小領域を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記光干渉領域は、複数の部分領域を備え、
各部分領域には、それぞれ、前記第三反射膜及び前記第四反射膜間のギャップのギャップ量が異なる複数の小領域が設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
互いに隣り合う前記小領域間の領域境界部への光の入射を阻止する遮光部を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
第一基板、前記第一基板に対向して配置された第二基板、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜、前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部、前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板、前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜、及び前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜を備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、
を具備し、
前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、
前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、
前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、
測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なる
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項8】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、
前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、
前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、
光を検出する検出部と、
を具備し、
前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は、光干渉領域を構成し、
前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、
前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、
測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なり、
前記検出部は、前記光干渉領域により取り出された光を検出する
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項9】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板の第一基板に対向する面に、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面とは反対の面に対向して配置された第三基板と、
前記第一基板の前記第三基板に対向する面に設けられた第三反射膜と、
前記第三基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第三反射膜に対してギャップを介して対向する第四反射膜と、
を具備し、
前記第一基板、前記第二基板、及び前記第三基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜、前記第二反射膜、前記第三反射膜、及び前記第四反射膜が重なる領域は光干渉領域を有し、
前記光干渉領域に対応した前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の測定対象波長域を有する波長可変干渉部を構成し、
前記光干渉領域に対応した前記第三反射膜及び前記第四反射膜は、次数が異なる複数のピーク波長に対応した複数の透過可能波長域を有する波長固定干渉部を構成し、
測定対象光の波長帯域内において、前記波長可変干渉部の複数の測定対象波長域のうちいずれか1つが、前記波長固定干渉部の複数の前記透過可能波長域のうちのいずれか1つと重なる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
基板と、
変位可能なギャップを介して対向して配置された2つの反射膜、及び前記ギャップのギャップ量を変化させるギャップ変更部を有する波長可変干渉部と、
固定されたギャップを介して対向して配置された2つの反射膜を有する波長固定干渉部と、を有し、
前記波長可変干渉部に含まれる反射膜のうち一つは、前記基板の一方の面に設けられており、
前記波長固定干渉部に含まれる反射膜のうち一つは、前記基板の前記一方の面とは反対の面に設けられており、
前記基板の基板厚み方向から見た平面視において、前記基板に設けられた2つの反射膜は重なって配置されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−113900(P2013−113900A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257620(P2011−257620)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】