説明

波長合分波器

【課題】偏波無依存で使用することができ、かつ作成を容易にする。
【解決手段】同一平面にプレーナ導波路としてそれぞれ形成されている、第1入出力端13aを有する第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を具える。第1光導波路部、第2光導波路部、及び第3光導波路部はこの順序で連続的につながっており、第1光導波路部は、0次及び1次モードの光を励起し、かつ第1入出力端から第2光導波路部との境界13bに向かって連続的に幅広となる形状で形成されている。そして、第1波長の光に対して、第1入出力端から入力され、第2光導波路部と第3光導波路部との境界15aに到達した0次モードのTE光と1次モードのTE光との位相差mπにおけるmと、第1入出力端から入力され、第2光導波路部と第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTM光と1次モードのTM光との位相差mπにおけるmとが、ともに偶数又は奇数となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異なる波長の光を合分波する波長合分波器に関し、特に、偏波無依存で使用可能な波長合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知の通り、光加入者系システムでは、加入者から局への光伝送、すなわち上り伝送、及び局から加入者への光伝送、すなわち下り伝送が一本の光ファイバによって行われる。そのため、上り伝送と下り伝送とでは異なる波長の光が使用される。従って、このような光加入者系では、局側及び加入者側の双方において、異なる波長の光を合波及び分波するための波長合分波器を具える必要がある。そして、加入者側に用いられる波長合分波器は、ONU(Optical Network Unit)と呼ばれる(例えば特許文献1〜5参照)。
【0003】
近年、上述した波長合分波器として、光軸合わせを不要とする光導波路型の波長合分波器が研究されている。このような波長合分波器としては、例えば、マッハツェンダ干渉計を用いたもの、方向性結合器を用いたもの、多モード干渉光導波路を用いたもの等が知られている。
【0004】
マッハツェンダ干渉計を用いた波長合分波器には、回路理論を用いて波長特性を設計できるとう利点がある。しかし、ONUに使用するSiによって構成されたマッハツェンダ型の波長合分波器は、等価屈折率や結合係数の波長依存性が大きいために設計が難しいという欠点がある。
【0005】
また、波長合分波器では、導波路幅の差によりクロストーク特性が劣化し易いという欠点がある。
【0006】
これらに対して、多モード干渉光導波路を用いた波長合分波器では、上述した光加入者系システムにおいて、主に上り伝送に使用される約1.3μmの波長の光と、主に下り伝送に使用される約1.5μmの波長の光とを分離することができる(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許明細書 第4860294号
【特許文献2】米国特許明細書 第5764826号
【特許文献3】米国特許明細書 第5960135号
【特許文献4】米国特許明細書 第7072541号
【特許文献5】特開平8−163028号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Baojun Li etal.“1×2 optical waveguide filters based on multimode interference for 1.3− and 1.55−μm operation”,Optical Engineering,vol.41,No.3,pp723−727(March,2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示された波長合分波器は、大きな偏波依存性があり、TE成分及びTM成分のどちらか一方の偏波成分に対してしか使用することができない。
【0010】
また、非特許文献1に開示された波長合分波器は、SiGeを材料として構成されているため、例えばSiを材料とする素子と比して作成が困難である。
【0011】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、偏波無依存で使用することができ、かつ作成が容易な波長合分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的の達成を図るため、この発明による波長合分波器は、以下の特徴を有している。
【0013】
すなわち、この発明による波長合分波器は、同一平面にプレーナ導波路としてそれぞれ形成されている、第1入出力端を有する第1光導波路部、第2光導波路部、及び第2入出力端を有する第1サブ導波路と第3入出力端を有する第2サブ導波路とからなる第3光導波路部を具えている。
【0014】
これら第1光導波路部、第2光導波路部、及び第3光導波路部はこの順序で連続的につながっている。
【0015】
そして、この発明による波長合分波器では、第1入出力端と第2入出力端との間、及び第1入出力端と第3入出力端との間で伝搬光が伝搬する。
【0016】
また、第1光導波路部は、0次及び1次モードの光を励起し、かつ第1入出力端から第2光導波路部との境界に向かって、この境界に沿った幅方向に直線的に幅広となる形状で形成されている。
【0017】
そして、この発明による波長合分波器では、第1波長の伝搬光に対して、第1入出力端から入力され、第1光導波路部及び第2光導波路部を順次伝搬し、第2光導波路部と第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTE光と1次モードとのTE光との、次式(1)で与えられる位相差mπにおける係数mと、第1入出力端から入力され、第1光導波路部及び第2光導波路部を順次伝搬し、第2光導波路部と第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTM光と1次モードとのTM光との、次式(2)で与えられる位相差mπにおける係数mとが、ともに偶数または奇数となる第1入出力端の幅、第1光導波路部の長さ、第2光導波路部の幅、及び第2光導波路部の長さが設定されている。
【0018】
φTE1+ΔβTE1L=mπ (1)
ここで、φTEは、第1光導波路部においてTE光に生じる位相変化量、ΔβTEは、第2光導波路部における、0次モードのTE光の伝搬定数と1次モードのTE光の伝搬定数との差、Lは、第2光導波路部の、幅方向に直交しかつ平面に沿った長さである。
【0019】
φTM+ΔβTML=mπ (2)
ここで、φTMは、第1光導波路部においてTM光に生じる位相変化量、ΔβTMは、第2光導波路部における、0次モードのTM光の伝搬定数と1次モードのTM光の伝搬定数との差である。
【発明の効果】
【0020】
上述のような構成上の特徴を有することによって、この発明によれば、TE光及びTM光の双方において波長を合分波することが可能となり、すなわち、偏波無依存で使用することができ、かつ容易に作成可能な波長合分波器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態による波長合分波器の要部を概略的に示す図であり、波長合分波器を、第1光導波路部、第2光導波路部、及び第3光導波路部が形成されている平面に沿って示す平面図である。
【図2】第1の実施の形態による波長合分波器の要部を概略的に示す図であり、波長合分波器を、図1に示すI−I線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。
【図3】第1の実施の形態による波長合分波器の波長分離特性の説明に供する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る波長合分波器について説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に、各構成要素の形状、大きさ、及び配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。従って、この発明の構成は、何ら図示の構成例にのみ限定されるものではない。
【0023】
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態では、第1光導波路部、第2光導波路部、及び第3光導波路部を具える波長合分波器について説明する。
【0024】
図1及び図2は、この発明の第1の実施の形態による波長合分波器の要部を概略的に示す図である。図1は、波長合分波器を、第1光導波路部、第2光導波路部、及び第3光導波路部が形成されている平面に沿って示す平面図である。また、図2は、波長合分波器の、図1に示すI−I線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。
【0025】
なお、実際の波長合分波器では、図1に示す構造体において、波長合分波器の全面がクラッド内に埋め込まれて形成されている。しかし、この図1では、第1の実施の形態に係る特徴部分を明瞭に示すために、クラッドを省略して示している。
【0026】
第1の実施の形態による波長合分波器11は、第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を具えている。
【0027】
これら第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17は、同一平面に、多モードのプレーナ導波路としてそれぞれ形成されており、この順序で連続的かつ一体的に繋がって形成されている。
【0028】
このように第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を配設するために、これら第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17は、共通する1つの基板19上に形成されている。
【0029】
すなわち、基板19は、単結晶Siによって構成されている。そして、この基板19上には、SiOによって構成されているクラッド21が積層されている。そして、第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を含む波長合分波器11は、基板19の基板面19aに沿って、すなわち同一平面に沿って、クラッド21内にSiを材料として埋め込まれている。
【0030】
ここで、この実施の形態では、波長合分波器11を上述した光加入者系システムにおいて使用する場合には、すなわち、上り光信号として例えば1.31μmの波長の光を、また、下り光信号として例えば1.49μmの波長の光を用いる場合には、第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を含む波長合分波器11を構成するSiの屈折率を好ましくは例えば3.5、また、クラッド21を構成するSiOの屈折率を好ましくは例えば1.46に設定する。
【0031】
また、第1の実施の形態では、波長合分波器11を、縦方向、すなわち基板19の厚み方向において単一モードの光導波路として構成する。そのために、一体的に形成されているこれら第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17の厚みDは、好ましくは0.5μm以下、より好適には、0.3μmに設定されている。
【0032】
ここで、このような波長合分波器11は、例えば周知のSOI基板を用意することによって、容易に製造することができる。
【0033】
すなわち、まず、単結晶Si層、SiO膜、及びSi膜がこの順に積層されて構成されたSOI基板を用意する。そして、周知のエッチング技術を用いてSi膜を部分的に除去することによって、このSi膜の残存部分から、上述した第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を形成する。しかる後、SOI基板全面に、これら作り込まれた第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17を埋め込んでSiO膜を堆積する。これによって、上述したような、単結晶Si基板、すなわち基板19上に、SiOで構成されたクラッド21内に埋め込まれて、波長合分波器11が形成される。
【0034】
また、第1光導波路部13は、第2光導波路部15との境界13bと対向する側面13aとして、第1入出力端13aを有している。そして、第1光導波路部13は、この第1入出力端13aにおいて、単一モード光導波路である第1入出力光導波路23を介して、上述した光加入者系システムにおける局側装置(図示せず)と光学的に接続されている。
【0035】
なお、第1入出力光導波路23と第1入出力端13aとの接続位置は、以下の条件に基づいて設計される。すなわち、第1入出力光導波路23の接続位置は、当該第1入出力光導波路23から第1入出力端13aへ入力され、第1入出力光導波路23及び第2光導波路部15を順次伝搬する光が、第2光導波路部15と第3光導波路部17との境界15aへ到達した際に、その波長に応じた干渉パターンが、第2光導波路部15と、後述する第1サブ導波路25または第2サブ導波路27との接続位置で極大となるように設計される。
【0036】
また、上り光信号として例えば1.31μmの波長の光を、また、下り光信号として例えば1.49μmの波長の光を用いる場合には、第1入出力光導波路23は、波長合分波器11と一体的に、0.3μmの厚みで、かつ例えば0.3μmの幅、すなわち第1入出力端13aに沿った幅で形成されているのが好ましい。
【0037】
また、この第1の実施の形態による波長合分波器11は、0次及び1次モードの励起光に対応した波長合分波器として構成されている。そのために、第1光導波路部13は、0次及び1次モードの光を励起する光導波路として形成されている。すなわち、第1入出力端13aの、境界13bに沿った幅Wは、0次及び1次モードの光を励起するように設定されている。なお、第1入出力端13aの幅Wの具体的な好適例については後述する。また、この実施の形態において、以下、境界13bに沿った方向を幅方向、また、この幅方向に沿った寸法を幅と称する。また、この幅方向に直交し、かつ第1光導波路部13、第2光導波路部15、及び第3光導波路部17が形成されている平面に沿った、すなわち基板面19aに沿った方向を長さ方向、そして、この長さ方向に沿った寸法を長さと称する。
【0038】
また、第1光導波路部13は、図1に示す構成例では、その平面形状がテーパ形状で、すなわち第1入出力端13aから第2光導波路部15との境界13bに向かって、連続的かつ直線的に幅方向に幅広となる台形形状、好ましくは等脚台形形状で形成されている。この台形は、例えば、互いに平行な上辺13aと、この上辺よりも長い下辺13bと、さらに、これら上辺及び下辺の端間をそれぞれつなぐ互いに長さの等しい2つの側辺とを有している。また、第1光導波路部13は、設計上の自由度の向上を目的として、上辺に対応する第1入出力端13aと第1入出力光導波路23と間に、第1入出力端13aと等しい幅を有する矩形状の光導波路を追加的に含む構成としてもよい(図示せず)。
【0039】
また、第2光導波路部15は、図1に示す構成例では、その平面形状が矩形状の光導波路であり、かつ第1光導波路部13との境界13bにおいて、その第1の辺の長さに対応する幅Wと、第1光導波路部13の下辺13bの長さに対応する幅を揃えて形成されている。
【0040】
また、第3光導波路部17は、第1光導波路部13と第2光導波路部15との境界13bと対向する、第2光導波路部15の第2の辺15a、すなわち境界15aにおいて、第2光導波路部15と接続されている。
【0041】
さらに、この第3光導波路部17は、それぞれ平面形状が台形形状、より好ましくは等脚台形形状の第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27からなり、上辺と、この上辺よりも長い下辺と、これら上辺及び下辺の端間をそれぞれ繋ぐ互いに長さの等しい2つの側辺とを有している。
【0042】
これら第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27は、互いに離間して、第2光導波路部15と、第2の辺15aの一部分に対応する境界15aa及び15abにおいてそれぞれ下辺を接続させている。
【0043】
また、第1サブ導波路25は、境界15aaと対向する一端(上述した上辺に対応する)として第2入出力端25aを、及び第2サブ導波路27は、境界15abと対向する一端(上述した上辺に対応する)として第3入出力端27aを、それぞれ有している。
【0044】
そして、第1サブ導波路25は、第2入出力端25aにおいて、単一モード光導波路である第2入出力光導波路29を介して、上述した光加入者系システムにおける加入者側装置(図示せず)と光学的に接続されている。また、第2サブ導波路27は、第3入出力端27aにおいて、単一モード光導波路である第3入出力光導波路31を介して、上述した光加入者系システムにおける加入者側装置と光学的に接続されている。これら第2入出力光導波路29及び第3入出力光導波路31は、設計に応じて、いずれか一方が上り光信号を加入者側装置から波長合分波器11へ伝搬する上り用の光導波路として、また、他方が下り光信号を波長合分波器11から加入者側装置へ伝搬する下り用の光導波路として、それぞれ使用される。
【0045】
また、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27は、それぞれ境界15aa及び15abから第2入出力端25a及び第3入出力端27aに向かって、連続的に幅狭となる形状で形成されている。
【0046】
ここで、第2光導波路部15から第3光導波路部17へ、漏れを抑制して光を伝搬させるためには、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27と第2光導波路部15との境界15aa及び15abの幅W3a及びW3bを、第2光導波路部15の幅Wに応じて、可能な限り大きく設定するのが好ましい。そして、同様の理由から、第1サブ導波路25及び第2光導波路部15の接続位置と、第2サブ導波路27及び第2光導波路部15の接続位置との離間距離Wを、可能な限り小さく設定するのが好ましい。なお、これらW3a、W3b、及びWの具体的な好適例については後述する。
【0047】
また、第2入出力端25aは、第2入出力光導波路29と幅を揃えて形成されている。また、第3入出力端27aは、第3入出力光導波路31と幅を揃えて形成されている。そして、上り光信号として例えば1.31μmの波長の光を、また、下り光信号として例えば1.49μmの波長の光を用いる場合には、第2入出力光導波路29及び第3入出力光導波路31は、波長合分波器11と一体的に、0.3μmの厚みで、かつ例えば0.3μmの幅、すなわち第2入出力端25a及び第3入出力端27aに沿った幅でそれぞれ形成されているのが好ましい。
【0048】
上述した構成とすることによって、この第1の実施の形態による波長合分波器11において、伝搬光、すなわち上り光信号及び下り光信号は、第1入出力端13aと第2入出力端25aとの間、及び第1入出力端13aと第3入出力端27aとの間を伝搬する。
【0049】
このような波長合分波器11を、偏波無依存で使用するためには、第1入出力端の幅W、第1光導波路部13の長さS、第2光導波路部15の幅W、及び第2光導波路部15の長さLを、使用する伝搬光の波長と波長合分波器11及びクラッド21を構成する材料に応じて、適宜設定する必要がある。以下、これら各寸法を決定するための条件について説明する。
【0050】
0次及び1次モードの光を励起する光導波路において、この光導波路を伝搬する、ある波長の0次モードの光と1次モードの光との位相差は、この光導波路部の長さ、及び0次モードの光と1次モードの光との伝搬定数差の積で与えられる。そして、異なる幅及び長さの光導波路部が複数結合されて構成されている光学素子では、この光導波路を伝搬する、ある波長の0次モードの光と1次モードの光との位相差は、上述した長さ及び伝搬定数差の積の和によって与えられる。
【0051】
従って、波長合分波器11において、第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15を順次伝搬し、第2光導波路部15と第3光導波路部17との境界15aに到達した、ある波長、すなわち第1波長の、0次モードのTE光と1次モードのTE光との位相差mπは、次式(1)で与えられる。なお、波長合分波器11において、第1光導波路部13は、上述したようにテーパ形状で形成されているため幅が一定していない。そのため、第1光導波路部13における0次モードの光と1次モードとの光との位相差については、長さ及び伝搬定数差の積ではなく位相変化量φを以って表す
φTE1+ΔβTE1L=mπ (1)
ここで、φTE1は、第1光導波路部13において第1波長のTE光に生じる位相変化量、ΔβTE1は、第2光導波路部15における、第1波長の、0次モードのTE光の伝搬定数と1次モードのTE光の伝搬定数との差、Lは、第2光導波路部15の長さである。
【0052】
このように与えられる位相差mπにおいて、係数mが整数となる場合には、TE光の干渉により光は、第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15をm回蛇行しつつ伝搬し、第1サブ導波路25または第2サブ導波路27のいずれかに入力される。
【0053】
また、同様に、波長合分波器11において、第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15を順次伝搬し、第2光導波路部15と第3光導波路部17との境界15aに到達した、第1波長の、0次モードのTM光と1次モードのTM光との位相差mπは、次式(2)で与えられる。
【0054】
φTM+ΔβTML=mπ (2)
ここで、φTMは、第1光導波路部13において第1波長のTM光に生じる位相変化量、ΔβTMは、第2光導波路部15における、第1波長の、0次モードのTM光の伝搬定数と1次モードのTM光の伝搬定数との差である。
【0055】
このように与えられるmπにおいて、係数mが整数となる場合には、TE光の干渉により光は、第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15をm回蛇行しつつ伝搬し、第1サブ導波路25または第2サブ導波路27のいずれかに入力される。
【0056】
従って、mπにおけるmと、mπにおけるmとが、ともに偶数又は奇数となる場合には、第1入出力端13aから入力される光、すなわち下り光信号は、TE光及びTM光ともに、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のうち、同じ一方のサブ導波路に入力される。すなわち、偏波無依存で、下り光信号が第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のうち、同じ一方のサブ導波路に入力される。
【0057】
そこで、この第1の実施の形態による波長合分波器11は、mとmとがともに偶数または奇数となる、第1入出力端の幅W、第1光導波路部の長さS、第2光導波路部の幅W、及び第2光導波路部の長さLが設定されている。
【0058】
また、波長合分波器11は、下り光信号と上り光信号とを合波及び分波するために、この第1波長とは異なる第2波長の光が、第1波長の光とは異なる経路を伝搬するように設計されている。すなわち、波長合分波器11において、第1入出力端13aから入力される第1波長の光が、第1サブ導波路25に入力される場合には、第1入出力端13aから入力される第2波長の光が、第2サブ導波路27に入力され、また、第1入出力端13aから入力される第1波長の光が、第2サブ導波路27に入力される場合には、第1入出力端13aから入力される第2波長の光が、第1サブ導波路25に入力される。そして、光の伝搬経路は可逆であるため、これらいずれかの経路が成立する場合には、第2波長の光を上り光信号として使用することが可能となる。
【0059】
そこで、波長合分波器11は、第1波長及び第2波長の光を合分波するために、上述した条件に加えて、さらに以下の条件に基づいて形成されている。
【0060】
第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15を順次伝搬し、第2光導波路部15と第3光導波路部17との境界15aに到達した第2波長の0次モードのTE光と1次モードのTE光との位相差mπは、次式(3)で与えられる。
【0061】
φTE2+ΔβTE2L=mπ (3)
ここで、φTE2は、第1光導波路部13において第2波長のTE光に生じる位相変化量、ΔβTE2は、第2光導波路部15における、第2波長の、0次モードのTE光の伝搬定数と1次モードのTE光の伝搬定数との差、Lは、第2光導波路部15の長さである。
【0062】
このように与えられるmπにおいて、係数mが整数となる場合には、上述した係数m及び係数mと同様に、TE光の干渉により光は、第1入出力端13aから入力され、第1光導波路部13及び第2光導波路部15をm回蛇行しつつ伝搬し、第1サブ導波路25または第2サブ導波路27のいずれかに入力される。
【0063】
従って、上述したmπにおける係数m及びmπにおける係数mが奇数の場合には、係数mを偶数とし、mπにおける係数m及びmπにおける係数mが偶数の場合には、係数mを奇数とすることによって、第2波長の光は、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のうち、第1波長の光とは異なる一方のサブ導波路に入力される。
【0064】
そこで、この第1の実施の形態による波長合分波器11は、係数mと係数mとがともに奇数の場合には係数mが偶数となり、また、係数mと係数mとがともに偶数の場合には係数mが奇数となる、第1入出力端の幅W、第1光導波路部の長さS、第2光導波路部の幅W、及び第2光導波路部の長さLが設定されている。
【0065】
なお、波長合分波器11を光加入者系システムにおいてONUとして使用する場合、加入者側装置から波長合分波器11へ入力される上り光信号は、偏光が一定した状態で波長合分波器11へ入力される。そのため、波長合分波器11を偏波無依存で使用可能とするに当たり、上り光信号として使用する第2波長の光については、TE光について上述した条件の係数mを設定すればよい。
【0066】
そして、波長合分波器11をONUとして使用する場合には、上り光信号として1.31の波長の伝搬光、及び下り光信号として1.49μmの波長の伝搬光に対応させて上述した各寸法を設定する。これら各波長の上り及び下り光信号を使用する場合には、例えば好ましくは、第1入出力端13aの幅Wを0.75μm、第1光導波路部13の長さSを15μm、第2光導波路部15の幅Wを2.2μm、及び第2光導波路部15の長さLを62μmとする。その結果、係数m及び係数mが7.0となり、ともに奇数となるため、1.49μmの波長の下り光信号は、TE光及びTM光ともに、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のうち、同じ一方のサブ導波路に入力される。また、このとき、係数mが6.0となり、係数m及び係数mとは異なり偶数となるため、例えば上り光信号として使用される1.31μmの波長のTE光は、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のうち、1.49μmの波長の波長とは異なる一方のサブ導波路に入力される。
【0067】
また、この設計例のように第1入出力端13aの幅Wを設定することによって、すなわち第1入出力端13aの幅Wを0.75μmとすることによって、第1光導波路部13は、0次及び1次モードモードを励起する。また、この設計例において、波長合分波器11を設計する場合には、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27を、第2光導波路15の第2の辺15aの幅方向の中点から等しい距離だけ離間させ、これら第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27と第2光導波路部15との境界15aa及び15abの幅W3a及びW3bをともに0.6μm、第1サブ導波路25及び第2光導波路部15の接続位置と、第2サブ導波路27及び第2光導波路部15の接続位置との離間距離Wを0.3μmとするのが好ましい。そして、第1入出力光導波路23を、第1入出力端13aの幅方向の中点から、0.15μm離間した位置で第1光導波路部13と接続するのが好ましい。
【0068】
次に、上述した各寸法によって設計された波長合分波器11の波長分離特性について、図3を参照して説明する。
【0069】
図3は、第1の実施の形態による波長合分波器11の波長分離特性の説明に供する特性図である。図3において、縦軸は、第1入出力端13aから入力され、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27から出力される伝搬光の光強度を任意単位で目盛ってあり、横軸は波長をμm単位で目盛ってある。
【0070】
また、図3は、第1入出力端13aから偏波成分としてTE光及びTM光を含む光を入力し、第1サブ導波路25及び第2サブ導波路27のそれぞれにおいて検出される光の強度を、波長を変化させながら計算したものである。計算に当たっては、3次元FDTD(Finite Differrence Time Domain)法を用いた。
【0071】
なお、図3にいて、曲線33は、第1サブ導波路25から出力されるTE光の光強度を示している。また、曲線35は、第1サブ導波路25から出力されるTM光の光強度を示している。また、曲線37は、第2サブ導波路27から出力されるTE光の光強度を示している。また、曲線39は、第2サブ導波路27から出力されるTM光の光強度を示している。
【0072】
図3における曲線33及び曲線35を参照すると、第1サブ導波路25において出力されるTE光及びTM光の光強度は、1.49μm付近の波長でピークを持ち、また、約1.31μm付近の波長でボトムを持つ。従って、第1入出力端13aから入力された1.49μm付近の光は、TE光及びTM光ともに、すなわち偏波無依存で、第1サブ導波路25に出力されることがわかる。
【0073】
また、図3における曲線37及び曲線39を参照すると、第2サブ導波路27において出力されるTE光及びTM光の光強度は、1.49μm付近の波長でボトムを持ち、また、約1.31μm付近の波長でピークを持つ。従って、第1入出力端13aから入力された1.31μm付近の光は、TE光及びTM光ともに、すなわち偏波無依存で、第2サブ導波路27に出力されることがわかる。
【0074】
なお、このシミュレーションを行った波長合分波器11では、既に説明したように、上述した各寸法を決定する際の条件において、波長1.31μmのTM光については考慮していない。そのため、第2サブ導波路27から出力されるTM光の強度を示す曲線39は、第2サブ導波路27から出力されるTE光の強度を示す曲線37と比して、波長1.31μm付近のピークがわずかに低く、また、波長1.49μm付近のボトムがわずかに高くなっている。しかしながら、上述したように、波長合分波器11をONUとして使用する場合、加入者側装置から波長合分波器11へ入力される上り光信号は、偏光が一定した状態で波長合分波器11へ入力される。そのため、図3の曲線37から明らかなように、波長合分波器11では、上り光信号として使用する、波長1.31μmのTE光について確実に波長分離特性が得られているため、この波長合分波器11を問題なくONUとして使用することが可能である。
【0075】
これらのことから、明らかなように、波長合分波器11は、TE光及びTM光の双方において波長を合分波することが可能であり、偏波無依存のONUとして使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
11:波長合分波器
13:第1光導波路部
13a:第1入出力端
15:第2光導波路部
17:第3光導波路部
19:基板
21:クラッド
23:第1入出力光導波路
25:第1サブ導波路
25a:第2入出力端
27:第2サブ導波路
27a:第3入出力端
29:第2入出力光導波路
31:第3入出力光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面にプレーナ導波路としてそれぞれ形成されている、第1入出力端を有する第1光導波路部、第2光導波路部、及び第2入出力端を有する第1サブ導波路と第3入出力端を有する第2サブ導波路とからなる第3光導波路部を具え、
該第1光導波路部、該第2光導波路部、及び該第3光導波路部はこの順序で連続的につながっており、
前記第1入出力端と前記第2入出力端との間、及び前記第1入出力端と前記第3入出力端との間で伝搬光が伝搬し、
前記第1光導波路部は、0次及び1次モードの光を励起し、かつ前記第1入出力端から前記第2光導波路部との境界に向かって、該境界に沿った幅方向に直線的に幅広となる形状で形成されており、
第1波長の伝搬光に対して、
前記第1光導波路部においてTE光に生じる位相変化量をφTE、前記第2光導波路部における、0次モードのTE光の伝搬定数と1次モードのTE光の伝搬定数との差をΔβTE、及び前記第2光導波路部の、前記幅方向に直交しかつ前記平面に沿った長さをLとしたとき、前記第1入出力端から入力され、前記第1光導波路部及び前記第2光導波路部を順次伝搬し、前記第2光導波路部と第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTE光と1次モードのTE光との、次式(1)で与えられる位相差mπ
φTE1+ΔβTE1L=mπ (1)
における係数mと、
前記第1光導波路部においてTM光に生じる位相変化量をφTM、及び前記第2光導波路部における、0次モードのTM光の伝搬定数と1次モードのTM光の伝搬定数との差をΔβTMとしたとき、前記第1入出力端から入力され、前記第1光導波路部及び前記第2光導波路部を順次伝搬し、前記第2光導波路部と第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTM光と1次モードのTM光との、次式(2)で与えられる位相差mπ
φTM+ΔβTML=mπ (2)
における係数mとが、ともに偶数又は奇数となる前記第1入出力端の幅、前記第1光導波路部の長さ、前記第2光導波路部の幅、及び前記第2光導波路部の長さが設定されている
ことを特徴とする波長合分波器。
【請求項2】
請求項1に記載の波長合分波器において、
さらに、前記第1波長とは異なる第2波長の伝搬光に対して、
前記第1光導波路部においてTE光に生じる位相変化量をφTE、前記第2光導波路部における、0次モードのTE光の伝搬定数と1次モードのTE光の伝搬定数との差をΔβTEとしたとき、前記第1入出力端から入力され、前記第1光導波路部及び前記第2光導波路部を順次伝搬し、前記第2光導波路部と前記第3光導波路部との境界に到達した0次モードのTE光と1次モードのTE光との、次式(3)で与えられる位相差mπ
φTE2+ΔβTE2L=mπ (3)
における係数mが、
前記m及び前記mが奇数の場合には偶数となり、また、前記m及び前記mが偶数の場合には奇数となる前記第1入出力端の幅、前記第1光導波路部の長さ、前記第2光導波路部の幅、及び前記第2光導波路部の長さが設定されている
ことを特徴とする波長合分波器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長合分波器において、
前記第1波長が、波長1.49μmである
ことを特徴とする波長合分波器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長合分波器において、
前記第2波長が、波長1.31μmである
ことを特徴とする波長合分波器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長合分波器において、
Siを材料として形成されている
ことを特徴とする波長合分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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