説明

波長変換フィルム、これを用いた太陽電池モジュール及びこれらの製造方法

【課題】スペクトルミスマッチによる太陽光損失を低減し、さらに高い可視光透過率を有する構成とすることにより、光利用効率を高め、発電効率を向上させることのできる波長変換フィルム、これを用いた太陽電池モジュール、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の光透過性層と太陽電池セル100とを有する太陽電池モジュールの光透過性層の一つとして用いられる蛍光物質を含む波長変換フィルム300において、前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質粒子であることを特徴とする波長変換フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用の波長変換フィルム及びこれを用いた太陽電池モジュール、並びにこれらの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、発電に寄与しない波長域の光を、発電に寄与する波長域の光に波長変換することにより発電効率を高くしうる太陽電池モジュール、それに用いる波長変換フィルム、及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン結晶系の太陽電池モジュールの概略図(断面図)を図3に示す。表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)201は、耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いられており、封止材202(通常、エチレンビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸模様が施されている。
【0003】
また、その凹凸模様は内側(すなわち、図3では保護ガラス201の下面)に形成されており、太陽電池モジュールの表面は平滑である。また保護ガラス201の下側には太陽電池セル100及びタブ線203を保護封止するための封止材202及びバックフィルム204が設けられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記した従来の太陽電池モジュールでは、太陽電池セル100と封止材202の屈折率差が大きいため、セル−封止材界面で光反射が起きて光を効率よく利用できない難点がある。
【0005】
なお、斜めを含むあらゆる角度からの外部光を、反射損失を少なくして効率よく取り入れる手法の一つに、moth−eye(昆虫の目)構造があることは古くから知られている。これは微細な円錐や三角錐、四角錐等の透明形状物を、フィルムの表面に百nmスケールで規則的に配列する構造を形成することで、反射損失を少なくし効率よく外部光を取り入れる技術である(例えば、非特許文献2参照)。
これを改良して太陽電池モジュールに応用したものが特許文献1に示されている。
【0006】
一方、蛍光物質(発光材料ともいう)を用い、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与しない紫外域又は赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与しうる波長域の光を発光する層を太陽電池受光面側に設ける手法は、多数提案されている(例えば、特許文献2〜14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−101513号公報
【特許文献2】特開2000−328053号公報
【特許文献3】特開平09−230396号公報
【特許文献4】特開2003−243682号公報
【特許文献5】特開2003−218379号公報
【特許文献6】特開平11−345993号公報
【特許文献7】特開2006−024716号公報
【特許文献8】特公平08−004147号公報
【特許文献9】特開2001−094128号公報
【特許文献10】特開2001−352091号公報
【特許文献11】特開平10−261811号公報
【特許文献12】特許第2660705号公報
【特許文献13】特開2006−269373号公報
【特許文献14】特開昭63−006881号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】濱川圭弘編「太陽光発電」―最新の技術とシステム―、2000年、株式会社シーエムシー
【非特許文献2】豊田宏;”無反射周期構造”、光学、32巻8号489ページ(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2〜14にある、発電に寄与しない光を発電に寄与しうる波長域の光に波長変換する提案で、波長変換フィルムには蛍光物質が含有されているが、この蛍光物質は一般的に形状が大きく、入射した太陽光が波長変換フィルムを通過する際に、散乱して太陽電池セルに十分届かず、発電に寄与しない割合が増加する。その結果、波長変換フィルムで紫外域の光を可視域の光に変換しても、入射した太陽光に対する発電される電力の割合(発電効率)があまり高くならないという課題がある。
また、蛍光物質は耐湿性及び耐熱性等がなく、劣化しやすい問題がある。さらに、分散媒樹脂中の蛍光物質の濃度を上げていくとある濃度以上だと濃度消光が起こるため、一定濃度以上では使用できないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題を軽減しようとするもので、耐湿性、耐熱性に優れ、分散性が良く、濃度消光を抑制した蛍光物質を用いることにより、太陽電池モジュールにおける光利用効率を向上させ、発電効率を安定的に向上させることを目的とする。たとえば、シリコン結晶系太陽電池では、太陽光のうち、400nmよりも短波長、1200nmよりも長波長の光が有効に利用されず、太陽光エネルギーのうち約56%が、このスペクトルミスマッチにより太陽光発電に寄与しない。本発明は、耐湿性、耐熱性に優れ、分散性が良く、濃度消光の起こらない蛍光物質を用い、波長変換し、効率よく且つ安定的に太陽光を利用することにより、スペクトルミスマッチを克服しようというものである。
【0011】
即ち、本発明の波長変換フィルムは、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ濃度消光の起こらない蛍光物質を含有することを目的とする。また、本発明の波長変換フィルムは、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するのと同時に、その光を散乱なしに、太陽電池セルへ効率よく導入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質粒子を波長変換フィルムに用いることにより、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するのと同時に、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ濃度消光の起こらない波長変換フィルムを提供できることを見出した。
また、波長変換フィルムの分散媒樹脂と、被覆蛍光物質粒子の被覆層との屈折率をある一定の範囲とすることにより、入射した太陽光を蛍光物質が散乱させることなく、太陽電池セルへ効率よく導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
(1)複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの光透過性層の一つとして用いられる、蛍光物質及び分散媒樹脂を含む波長変換フィルムにおいて、
前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質粒子である波長変換フィルム。
【0014】
(2)前記波長変換フィルムが、前記太陽電池セルの受光面上に配置され、前記被覆層の屈折率が1.5〜2.1であり、前記分散媒樹脂の屈折率が1.5〜2.1であり、且つ前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことを特徴とする上記(1)に記載の波長変換フィルム。
【0015】
(3)前記被覆層が、ゾルゲル法で形成したシリカガラスであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の波長変換フィルム。
【0016】
(4)前記蛍光物質が、ユーロピウム錯体であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の波長変換フィルム。
【0017】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムを有する太陽電池モジュール。
【0018】
(6)蛍光物質粒子を、シリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカガラスで被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質粒子を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
前記被覆蛍光物質粒子を分散媒樹脂に分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を有する、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムの製造方法。
【0019】
(7)複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの製造方法において、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムを積層して、前記光透過性層の一つを構成する工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、太陽電池モジュールに適用したときに、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するための蛍光物質が、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ濃度消光が起こらないため、効率よく且つ安定的に太陽光を利用できる波長変換フィルムを提供できる。また、太陽光を散乱なしに、太陽電池セルへ効率よく導入できる波長変換フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の波長変換型ライトトラッピングフィルムをモジュールに組み込んだ場合の概略図である。
【図2】太陽電池セルへ波長変換型ライトトラッピングフィルムを形成させる工程を説明するための概略図である。
【図3】従来型の太陽電池モジュールの構造図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<波長変換フィルム及びその製造方法>
本発明の波長変換フィルムは、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられ、蛍光物質及び分散媒樹脂を含み、前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質粒子であることを特徴とする。これにより、蛍光物質粒子の耐湿性及び耐熱性が向上し、分散性が良く且つ濃度消光を抑制することができる。
【0023】
被覆蛍光物質粒子の被覆層と波長変換フィルムの分散媒樹脂との屈折率は、それぞれ1.5〜2.1であることが好ましく、且つ前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことが好ましい。また、前記被覆層と分散媒樹脂との屈折率の差を小さくすると、太陽光の散乱損失は小さくできることからより好ましい。屈折率がこれを満たさないと、その層界面での反射が大きくなり、光損失も大きくなる傾向がある。
【0024】
即ち、本発明の波長変換フィルムにおいて、あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するために、波長変換フィルムの屈折率が、該波長変換フィルムより光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率より高く、且つ該波長変換フィルムの反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(「セル反射防止膜」ともいう)及びSi層等の屈折率よりも低くすることが好ましい。
具体的には、波長変換フィルムより光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜の屈折率は、1.25〜1.45、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率は、通常1.45〜1.55程度のものが用いられる。該波長変換フィルムの反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(セル反射防止膜)の屈折率は、通常1.9〜2.1程度及びSi層等の屈折率は、通常3.3〜3.4程度のものが用いられる。以上のことより、本発明の波長変換フィルムの屈折率を1.5〜2.1とし、好ましくは1.5〜2.1とする。
【0025】
なお、光透過性層のその他の層の好ましい屈折率は、以下に示す通りである。例えば、光透過性層の光入射側から3層をa層、b層、c層としたとき、それぞれの層の屈折率na、nb、ncが、下記式を満たすか、近似していることが好ましい。
nb=√na・nc
【0026】
本発明は、次式(1)で表わされる、前記波長変換フィルムの規格化吸光係数aの値が、入射光の波長が400〜1200nmで、0.1以下であることが好ましい。aが上記範囲であると、保護ガラス、封止材と同程度の光透過性が得られ、波長変換フィルムによる光吸収損失は考慮に入れる必要がなくなる。
【0027】
【数1】

(ただし、Tは光透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である。)
【0028】
なお、Tの光透過率とは、波長変換フィルムの凹凸のない状態の材料自体の光透過率のことである。また、Lのフィルム平均厚みとは、波長変換フィルム材料の平均厚みのことである。
【0029】
蛍光物質粒子の屈折率は材料固有の値であり、一般的に蛍光物質粒子の屈折率は1.5程度である。波長変換フィルムの分散媒樹脂としては、実用上1.5〜2.1のものが使用されるため、蛍光物質粒子と分散媒樹脂との屈折率の差を小さくするために、分散媒樹脂の屈折率と同程度(屈折率1.5〜2.1)の被覆層材料を用いて、被覆蛍光物質粒子と分散媒樹脂の屈折率の差を小さくすることが、レイリー散乱による太陽光の散乱損失を低減させる点から好ましい。
【0030】
光の散乱は、フィルム中の被覆蛍光物質粒子、つまり被覆層と分散媒樹脂との屈折率の差、及び被覆蛍光物質粒子の粒子径の大きさとそれぞれ相関する。具体的には、光の散乱は、被覆層の屈折率と分散媒樹脂との屈折率との差が小さければ、被覆蛍光物質粒子の粒子径の影響をさほど受けず、光の散乱も小さいものとなる。しかし、被覆層の屈折率と分散媒樹脂との屈折率との差が大きくなると、光の散乱は、被覆蛍光物質粒子の粒子径の大きさに影響を受けることとなるため、なるべく小さい粒子径であることが好ましい。
【0031】
ここで、被覆蛍光物質粒子のレイリー散乱(光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱)における、被覆蛍光物質粒子の粒子径と、被覆層の屈折率との関係を下記式に示す。
【0032】
【数2】

【0033】
上記式からわかるように、被覆蛍光物質粒子の屈折率(すなわち、被覆層材料の屈折率)と分散媒樹脂の屈折率を同程度とすることにより、散乱を小さくできる。
また、被覆蛍光物質粒子の粒子径を小さくすることで散乱による太陽光の損失はより小さくできることも上記式よりわかる。具体的には、前記被覆蛍光物質粒子の一次粒子径が100nm以下であることが好ましい。
【0034】
また、本発明の波長変換フィルムに用いる被覆層材料で被覆された被覆蛍光物質粒子の粒子(一次粒子径)の大きさは、レイリー散乱による散乱損失を十分に小さくするために光の波長の1/3よりも小さいことが望ましい。つまり、紫外域の光はおよそ400nmであるので、被覆蛍光物質粒子の一次粒子径の大きさとしては100nm以下であることが要求される。
【0035】
本発明は、波長変換フィルムに用いる、被覆層材料として、シリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法で、蛍光物質表面に成膜したシリカガラスであることが望ましい。ゾルゲル法を用いることで、低温且つ簡単なプロセスで被覆蛍光物質粒子の形成が可能であるので、低コストで波長変換型トラッピングフィルムを製造することが可能になる。
なお、ここで「シリカガラス」とは、酸化チタン、酸化ニオブ、アルミナ、窒化シリコン、酸窒化シリコン等を適宜含んでいてもよい。
【0036】
蛍光物質は一般的に酸素や水分によって劣化してしまい、波長変換効率が時間と共に劣化してしまうという問題がある。そのため、被覆層材料としてシリカガラスで蛍光物質粒子の周囲を覆うことで、シリカガラスが酸素や水分を遮断して、蛍光物質の波長変換効率が劣化するのを防ぐという効果が得られる。
【0037】
蛍光物質粒子をゾルゲル法によりシリカガラスで被覆する方法は、公知の方法で行えばよく、特に制限はないが、蛍光物質粒子を、溶媒中、シリコンアルコキシドと処理して、加熱処理することにより、行うことができる。
シリカガラスの屈折率は、1.45程度であるが、酸化チタン、酸化ニオブ、アルミナ、窒化シリコン、酸窒化シリコン等を適宜含ませ、分散媒樹脂との屈折率を同程度とするよう調整することも好ましい。
【0038】
また、シリカガラスに異種金属を配合することも好ましい。具体的には、分散媒樹脂として好ましく用いられる材料の屈折率に対して、被覆層材料の屈折率を同程度となるように調整する。
【0039】
シリカガラスに配合する異種金属としては、Ti、Ta、Ge、Zn、Zr、Al、Sb、Be、Cd、Cr、Sn、Cu、Ga、Mn、Fe、Mo、V、W及びCe等が挙げられる。
【0040】
異種金属を配合したシリカガラスは、目的の屈折率に調整すべく量を調整し、上記異種金属の金属アルコキシドをシリコンアルコキシドに混合し、ゾルゲル反応をこの混合物に対して起こさせることで得られる。
異種金属の金属アルコキシドとしては、M(OR)nが挙げられる。Mは、金属、nはその価数、Rは炭素数1〜10の有機基で、Rは全て同一でも全て異なっていてもよい。
【0041】
蛍光物質粒子をゾルゲル法によりシリカガラスで被覆する方法は、特に制限はないが、蛍光物質粒子を適当な溶媒に溶解し、別途、シリコンアルコキシド、アルコール溶媒、水を用いて、攪拌してゾルゲル用溶液を作製する。ここで、先に調整した蛍光物質溶液を加え、十分に攪拌し、触媒を添加する。溶液中に白い析出物が見られるまで攪拌し、ガラス、テフロン(登録商標)等のバット上に移し、80〜120℃程度、2時間以上加熱処理して乾燥することにより、行うことができる。
【0042】
ゾルゲル法に用いられる溶媒としては、水と有機溶媒の混合溶液が用いられる。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール及びエタノール等のアルコール類、クロロホルム、トルエン等が挙げられる。
なお、蛍光物質粒子の周囲に被覆層が形成されたことの確認は、間接的だが、例えば、85℃、85%RHの条件で高温高湿耐性を測定し、被覆層形成前の蛍光物質粒子の高温高湿耐性の向上の有無によって判断する。
【0043】
ゾルゲル法に用いられるシリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0044】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0045】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
上記以外の化合物としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルアルカン、ビスシリルベンゼン等が挙げられる。
【0048】
また、例えば、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサ−n−プロポキシジシラン、ヘキサ−iso−プロポキシジシラン等のヘキサアルコキシジシラン類、1,2−ジメチルテトラメトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラエトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラプロポキシジシラン等のジアルキルテトラアルコキシジシラン類等が挙げられる。
【0049】
加水分解性基Xが、ハロゲン原子(ハロゲン基)である化合物(ハロゲン化シラン)も使用でき、具体的には、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がハロゲン原子で置換されたハロゲン化シラン等が挙げられる。
さらに、加水分解性基Xが、アセトキシ基である化合物(アセトキシシラン)も使用でき、具体的には、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がアセトキシ基で置換されたアセトキシシラン等が挙げられる。またさらに、加水分解性基Xが、イソシアネート基である化合物(イソシアネートシラン)も使用でき、具体的には、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がイソシアネート基で置換されたイソシアネートシラン等が挙げられる。
さらにまた、加水分解性基Xが、ヒドロキシル基である化合物(ヒドロキシシラン)も使用でき、具体的には、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がヒドロキシル基で置換されたヒドロキシシラン等が挙げられる。
【0050】
これらシリコンアルコキシドは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
また、シリコンアルコキシドの多量体等の部分縮合物を加水分解縮合して得られる樹脂、シリコンアルコキシドの多量体等の部分縮合物とシリコンアルコキシドとを加水分解縮合して得られる樹脂、シリコンアルコキシドとその他の化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、シリコンアルコキシドの多量体等の部分縮合物とその他の化合物(シリコンアルコキシドと部分縮合を起こしうる化合物、具体的には、OH基をもった化合物)とを加水分解縮合して得られる樹脂、等を使用することもできる。
【0051】
シリコンアルコキシドの多量体等の部分縮合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサ−n−プロポキシジシロキサン、ヘキサ−iso−プロポキシジシロキサン等のヘキサアルコキシジシロキサン、部分縮合が進んだトリシロキサン、テトラシロキサン、オリゴシロキサン等が挙げられる。
【0052】
なお、蛍光物質としては、ユーロピウム錯体が好ましい。具体的には、中心元素のユーロピウム(Eu)の他、配位子となる分子が必要であるが、本発明では、配位子を制限するものではなく、ユーロピウムと錯体を形成する分子であれば、何でもよい。このようなユーロピウム錯体からなる蛍光物質の一例としては、N.Kamata, D.Terunuma, R.Ishii, H.Satoh, S.Aihara, Y.Yaoita, S.Tonsyo, J. Organometallic Chem.,685,235,2003.に挙げられているEu(TTA)phen等が利用できる。Eu(TTA)Phenの製造法は、例えば、Masaya Mitsuishi, Shinji Kikuchi, Tokuji Miyashita, Yutaka Amano, J.Mater.Chem.2003, 13, 285−2879に開示されている方法を参照できる。
【0053】
ユーロピウム錯体を用いることで、高い発電効率を有する太陽電池モジュールを実現できる。ユーロピウム錯体は、紫外線域の光を高い波長変換効率で赤色の波長域の光に変換し、この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与する。
【0054】
被覆蛍光物質粒子の一次粒子径の測定方法は、例えば、電子顕微鏡等を用いて行える。
ゾルゲル法で得られる被覆蛍光物質粒子の一次粒子径を100nmとするには、ゾルゲル法における反応時間、温度、配合割合、溶媒の種類、触媒等を適宜調整すればよい。
【0055】
本発明の波長変換フィルムは、後述するように、上記被覆蛍光物質粒子と分散媒樹脂とを混合して樹脂組成物を作製し、フィルム状にすることにより作製される。本発明の波長変換フィルムは、微細な凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐等を有する形状も好ましい。
微細な凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐等を有さなくとも、よく、この場合は製造工程が簡易となる。
【0056】
上述のように、波長変換フィルムより光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜の屈折率は、1.25〜1.45、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率は、通常1.45〜1.55程度のものが用いられる。該波長変換フィルムの反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(セル反射防止膜)の屈折率は、通常1.9〜2.1程度及びSi層等の屈折率は、通常3.3〜3.4程度のものが用いられる。以上のことより、本発明の波長変換フィルムの屈折率を1.5〜2.1とし、好ましくは1.5〜2.1とする。
波長変換フィルムの屈折率を1.5〜2.1とするには、分散媒樹脂及び被覆蛍光物質粒子の屈折率をこの範囲とすればよい。
【0057】
フィルムの分散媒樹脂に導入される被覆蛍光物質粒子は、そこでの光散乱が少ないことが望まれる。そのためには、波長変換フィルムの分散媒樹脂として好ましく用いられる材料(屈折率1.5〜2.1)に、被覆層材料の屈折率を合わせるよう調整することが好ましい。
【0058】
本発明において、分散媒樹脂として用いられる屈折率1.5〜2.1のものは、下記に挙げられる。
ポリ(2,6−ジクロロスチレン)(1.625)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)(1.64)、ポリ(2−クロロスチレン)(1.610)、ポリ(2−ビニルナフタレン)(1.682)、ポリ(2−ビニルチオフェン)(1.638)、ポリ(α−メチルスチレン)(1.61)、ポリ(α−ナフチルカルバニルメタクリレート)(1.63)、ポリ(α−ナフチルメタクリレート)(1.641)、ポリ(クロロ−p−キシレン)(1.629)、ポリ(スチレンスルフィド)(1.657)、ポリ(スルフォン)[ポリ[4,4’−イソプロピリデンジフェノキシジ(4−フェニレン)スルフィド]](1.633)。
その他、有機無機ハイブリッド樹脂が挙げられ、具体的には、酸化チタン系ハイブリッド樹脂のものが使用可能である。酸化チタンハイブリッド系樹脂は他の樹脂、例えば、特開2008−297537号公報、特開2008−255124号公報に記載の樹脂組成物を用いることができる。
【0059】
本発明において、太陽電池モジュールは、反射防止膜、保護ガラス、封止材、波長変換フィルム、該波長変換フィルムの凹又は凸部形成の鋳型となる型フィルム、太陽電池セル、バックフィルム、セル電極、タブ線等の中の必要部材から構成される。これらの部材の中で、光透過性を有する光透過性層としては、反射防止膜、保護ガラス、封止材、本発明の波長変換フィルム、型フィルム、太陽電池のSiNx:H層(セル反射防止膜)及びSi層等が挙げられる。
【0060】
本発明において、上記で挙げられる光透過性層の積層順は、通常、太陽電池モジュールの受光面から順に、必要により形成される反射防止膜、保護ガラス、封止材、必要により形成される型フィルム、本発明の波長変換フィルム、太陽電池セルのSiNx:H層(セル反射防止膜)、Si層となる。
【0061】
なお、本発明の波長変換フィルムは、太陽電池セルの受光面上に配置されることが好ましい。そうすることで、太陽電池セル受光表面の、セル電極等を含めた凹凸形状に隙間なく追従できる。
【0062】
本発明の波長変換フィルムは、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられるものであり、より詳しくは、片面は太陽電池セルの表面(受光面)の凹凸形状に隙間なく追従し、他面は微細な凸又は凹形状を隙間なく多数敷き詰めるように形成され、前記微細凹部又は凸部の各々の形状は、略同一形状の円錐状若しくは多角錐状であり、その屈折率は1.5〜2.1で、且つ前記被覆蛍光物質粒子を含有し、複数の光透過性層を光入射側から層1、層2、・・・層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことを特徴とする波長変換フィルムである。
また、本発明は、太陽電池モジュールに用いる型フィルム付波長変換フィルム、すなわち、上記波長変換フィルムと、その波長変換フィルムの微細凹又は凸部側に、その微細凹若しくは凸部に相補(隙間無く、完全に噛み合う)して接着する微細凸又は凹部が隙間なく多数形成され、且つその屈折率が波長変換フィルムにおける屈折率よりも小さい型フィルム(フィルムの凹又は凸部形成の鋳型となる型フィルム)とが重層されてなる、外観は平滑な型フィルム付きフィルムも提供する。なお、型フィルムは、本発明の波長変換フィルムの微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐が受光面に隙間なく多数敷き詰めるように形成するための鋳型として用いられるものである。
【0063】
本発明の波長変換フィルムは、前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことが好ましい。屈折率がこれを満たさないと、その層界面での反射が大きくなり、光損失も大きくなる傾向がある。
【0064】
あらゆる角度からの入射光を効率よく太陽電池セル内に導入するために、波長変換フィルムの微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐面は、頂角が狭いほうが有利であるが、波長変換フィルムと太陽電池セルとの界面で反射損失がある場合、頂角が狭すぎると反射光は再度外部へ漏れてしまう。
【0065】
反射光及び波長変換された光を、波長変換フィルムによって再度反射させ、うまく太陽電池セルに導入するために、頂角は75〜150度が好ましく、最も好ましいものとして理想的には頂角が90度がよい。頂角が90度であると、性能、加工精度の点で最も良好な角度といえる。
【0066】
文献、例えば、豊田宏;”無反射周期構造”、光学、32巻8号489ページ(2003年)によれば、底辺の大きさは、使用する最短波長をその材料の屈折率で除した値となっており、例として屈折率を2.0とした場合、太陽電池モジュールでは175nm程度となる。しかし、このような微細構造を得るためには、加工方法も制限される。従って、本発明ではこのような超微細構造は必要としない。そのため、加工の容易性を考慮し、好ましくは1〜1000μmであり、更に好ましくは10〜100μmである。
【0067】
本発明の波長変換フィルムの厚みについては、該波長変換フィルムを台座部分と微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐部分に分けて考える。太陽電池セルの凹凸形状に追従して埋め込む必要があるため、台座部分の厚みは太陽電池セルの凹凸以上なければいけない。なお、この太陽電池セルの凹凸は、太陽電池セルのセル電極、タブ線等も含まれる。
【0068】
通常、太陽電池セル表面には、テクスチャー構造を施してあり、これの深さが0〜20μmである。一方、波長変換フィルムに、外部光からの反射損失を少なくするために、規則的に隙間なく多数敷き詰めるように形成された微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐の高さは、主として加工上の要請から、1〜100μmである。具体的には、本発明の波長変換フィルムの台座部分の厚みは、太陽電池セル表面のテクスチャー構造の深さ0〜20μmよりも大きくし、波長変換フィルムの微細凹部又は凸部の厚みは、加工上の要請から1〜100μmとすることが好ましい。
【0069】
本発明の波長変換フィルムの片面は太陽電池セル表面(受光面)の凹凸に隙間なく追従しており、図1に示すように、通常、太陽電池セル100上に貼り合わせ、波長変換フィルム300の微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を有する面では、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐をフィルムに形成するために用いた型フィルムを取り除き、封止材202を積層させ、空隙を生じさせず隙間なく波長変換フィルム300の微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を埋めるようにするか、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐をフィルムに形成するために用いた型フィルムを除去せずに積層させたままとしてもよい。なお、図1において、接続用タブ線及び電極は省略されているが、本発明の波長変換フィルムは、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を有する面の他面である太陽電池セル受光面では、接続用タブ線及び電極の凹凸形状に対しても隙間なく追従できることが好ましい。
【0070】
波長変換フィルムは、一方の面では上述のように太陽電池セルの凹凸に追従し、また他方の面では外部光からの反射損失を少なくするために好ましく設けられる、規則的に隙間なく規則的に隙間なく多数敷き詰めるように形成された微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐が転写されるようにする。そのために、波長変換フィルムを形成する際は、前記被覆蛍光物質粒子を含有した樹脂組成物を半硬化状態で用いることが重要である。樹脂組成物の分散媒樹脂として、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を付与しやすい光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、加熱又は加圧により流動する熱可塑性樹脂等が、単独あるいは組み合わせて用いられる。なかでも形状転写性をみたすものとして、例えば、ゾルゲル法で得られる、チタニウムテトラアルコキシドを含む有機−無機ハイブリッド組成物が樹脂組成物として好ましく挙げられる。
いずれの場合でも、波長変換のために、樹脂組成物中には上記被覆蛍光物質粒子、好ましくはユーロピウム錯体を含む被覆蛍光物質粒子を含有させる。
【0071】
本発明の波長変換フィルム用樹脂組成物中の、上記被覆蛍光物質粒子の好ましい配合量は、ユーロピウムの元素質量濃度で0.001〜5質量%が好ましい。0.001質量%以下であると、発光効率が小さい傾向があり、5質量%以上であると、濃度消光により発光効率が低下する傾向がある。
【0072】
上述したように、樹脂組成物の分散媒樹脂として、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が好ましく用いられる。波長変換フィルム用樹脂組成物の分散媒樹脂に光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂の樹脂構成や光硬化方法は特に制限はない。例えば、光ラジカル開始剤による光硬化方法では、波長変換フィルム用樹脂組成物は、上記蛍光物質の他、(A)光硬化性樹脂(分散媒樹脂)、(B)架橋性モノマ、及び(C)光により遊離ラジカルを生成する光開始剤、からなる。
【0073】
ここで(A)光硬化性樹脂(分散媒樹脂)としては、アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルと、これらと共重合し得るその他のビニルモノマーを構成モノマとして共重合してなる共重合体が用いられる。これらの共重合体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステル又はメタクリル酸無置換アルキルエステルや、これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル及びメタクリル酸置換アルキルエステル等が挙げられる。
また、アクリル酸又はメタクリル酸やアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと共重合しうるその他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、(A)成分の分散媒樹脂の重量平均分子量は、塗膜性及び塗膜強度、現像性の点から10,000〜300,000であることが好ましい。
【0074】
(B)架橋性モノマとしては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル);ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);等を挙げることができる。
特に好ましい(B)架橋性モノマとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが挙げられる。なお、上記化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0075】
特に波長変換フィルムの屈折率を高くする場合には、(A)分散媒樹脂及び/又は(B)架橋性モノマに、臭素、イオウ原子を含んでいることが有利である。臭素含有モノマの例としては、第一工業製薬社製のニューフロンティアBR−31、ニューフロンティアBR−30、ニューフロンティアBR−42M等が挙げられる。イオウ含有モノマ組成物としては、三菱瓦斯化学社製のIU−L2000、IU−L3000、IU−MS1010が挙げられる。ただし、本発明で使用される臭素、イオウ原子含有モノマ(それを含む重合物)は、ここに挙げたものに限定されるものではない。
【0076】
(C)光開始剤としては、紫外線又は可視光線により遊離ラジカルを生成する光開始剤が好ましく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(イルガキュア)651)、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(イルガキュア)184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1173)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
また、(C)光開始剤として使用しうる光開始剤としては、例えば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせも挙げられる。また、それ自体では光開始性はないが、前記物質と組み合わせて用いることにより全体として光開始性能のより良好な増感剤系となるような添加剤、例えば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンを用いることができる。
【0078】
上記はアクリル系の光硬化性樹脂についての例示であるが、通常用いられるエポキシ系の光硬化性樹脂も、本発明の波長変換フィルムの分散媒樹脂として好ましく用いることができる。
【0079】
波長変換フィルム用樹脂組成物の分散媒樹脂に、加熱又は加圧により流動する熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば、天然ゴム(屈折率(以下、nともいう)=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)等の(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)等のポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)等のポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散媒樹脂として使用可能である。
これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0080】
さら上記樹脂との共重合樹脂として、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)等を使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れている。
【0081】
エポキシアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
【0082】
エポキシアクリレート等のように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は、必要に応じて、2種以上併用することができる。これら樹脂の軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。太陽電池ユニットの使用環境温度が通常は80℃以下であることと加工性を考慮すると、上記樹脂の軟化温度は特に好ましくは80〜120℃である。
【0083】
熱可塑性樹脂を分散媒樹脂として用いた場合の、その他の樹脂組成物の構成は、上記被覆蛍光物質粒子を含有させれば特に制限はないが、通常用いられる成分、例えば、可塑剤、難燃剤、安定剤等を含有させることが可能である。
【0084】
波長変換フィルムにおける屈折率を高めるために、上記波長変換フィルム用樹脂組成物に、屈折率の高い(好ましくは屈折率1.6以上)無機材料(無機微粒子)を分散させることができる。但し、樹脂中に分散される無機微粒子の粒子の大きさが波長以上に大きくなると、光を散乱させるので、逆効果となる。
【0085】
このような無機微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウムスズ混合酸化物、アンチモンスズ混合酸化物等であり、これらは必要に応じて、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、高級脂肪酸等で表面処理がなされていてもよい。
【0086】
これら無機微粒子を樹脂中の分散させるために、分散剤、チタネート系、アルミニウム系、シリコン系のカップリング剤を用いてもよい。分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社のディスパービックの商品名で供給される製品群、Disperbyk−111、Disperbyk−110、Disperbyk−116、Disperbyk−140、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182等、花王社製のアセタミン24、アセタミン86、コータミン24P、コータミン86PW、コータミン60W、コータミンD86P、ファーミンCS、ファーミン08D、ファーミン20D、ファーミン80、ファーミン86T、ファーミンO、ファーミンT、ファーミンD86、ファーミンDM24C、ファーミンDM0898、ファーミンDM1098、ファーミンDM2098、ファーミンDM2465、ファーミンDM2463、ファーミンDM2458、ファーミンDM4098、ファーミンDM4662、ファーミンDM6098、ファーミンDM6875、ファーミンDM8680、ファーミンDM8098、ファーミンDM2285等が挙げられる。
【0087】
また、チタネート系カップリング剤としては、味の素社がプレンアクトの商品名で提供する製品、KR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41B、KR−38S、KR−138S、KR−238S、338X、KR−44、KR−9SA等が挙げられる。アルミニウム系カップリング剤としては、同社製のプレンアクトAL−M等が挙げられる。
【0088】
一方、波長変換フィルム用樹脂組成物に、ゾルゲル法を用いて得られる有機−無機ハイブリッド組成物を用いる場合には、有機−無機ハイブリッド組成物の必須成分として上記蛍光物質、及び下記一般式(a)で表される金属アルコキシドを用いる。
(RM−(OR 式(a)
【0089】
本発明は、このうちの下記一般式(b)で示されるチタニウムテトラアルコキシドを用いることも好ましい。
Ti−(OR) 式(b)
【0090】
相補的に、上記一般式(a)のMがZn、Zr、Al、Si、Sb、Be、Cd、Cr、Sn、Cu、Ga、Mn、Fe、Mo、V、W、Ge及びCeから選ばれる金属であっても差し支えない。上記一般式(a)のR及びRは、炭素数1〜10の有機基であり、Mに複数個結合しているが、それぞれはすべて同一でも、違っていてもよい。nは0以上の整数、mは1以上の整数で、n+mは、Mの価数に等しい。また、上記一般式(b)のRは、炭素数1〜10の有機基である。より好ましい金属アルコキシドは、チタニウムテトラアルコキシドであり、より好ましくはチタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ(n−ブトキシド)等が挙げられる。
ゾルゲル法による有機−無機ハイブリッド組成物に用いる金属アルコキシドは一種類でも複数種類でもよい。
【0091】
樹脂組成物のとして用いられるゾルゲル法で作製される有機−無機ハイブリッド組成物は、上記被覆蛍光物質粒子、ポリマー、モノマ、開始剤を必須成分とし、必要に応じて、溶剤、接着助剤、安定剤、界面活性剤等を添加することができる。ポリマーとしては、例えば、前記(A)光硬化性樹脂等が挙げられ、モノマとしては、前記(B)架橋性モノマ等が挙げられ、開始剤としては、前記(C)光開始剤等が挙げられる。
【0092】
本発明の波長変換フィルムは、(1)蛍光物質粒子を、シリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカガラスで被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質粒子を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
(2)前記被覆蛍光物質粒子を分散媒樹脂に分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を含む工程により製造できる。
【0093】
樹脂組成物として、ゾルゲル法による有機−無機ハイブリッド組成物を用いる場合、波長変換フィルムは、溶液状にしたゾルゲル法用の上記被覆蛍光物質粒子を含む樹脂組成物中に、上記一般式(a)又は(b)で表される金属アルコキシド、水及び酸及び/又はアルカリ触媒を加え、PET等の基材に塗布し、加熱により溶剤を揮発させることにより、半硬化状態の樹脂組成物層を得、太陽電池セルに貼り付けた後に微細凹凸形状を形成して得られる。ゾルゲル法に用いられる酸触媒は、塩酸、有機酸等の一般に用いられる酸触媒が挙げられ、アルカリ触媒は、水酸化ナトリウム、有機アルカリ等の一般に用いられるアルカリ触媒が挙げられる。ただし、選ばれる金属アルコキシドの反応性によっては、水及び/又は酸及び/又はアルカリ触媒が必要でなくなる場合もある。また加熱温度も金属アルコキシドの反応性に依存している。
【0094】
Tiのように反応性の高いものでは、加熱温度は100℃程度以下の温度でもよい。なお、半硬化状態の樹脂組成物層を形成する際に、ワニスとして太陽電池セル上に塗布し、その後、半硬化状態の樹脂組成物層とすることも可能である。
【0095】
本発明では、必ずしも(−M−O−)の三次元構造は必要ではなく、高屈折率化を実現できればよい。特に酸化チタニウムの三次元構造は、光触媒で用いられるように、半導体となる。
【0096】
しかし、この構造は、光劣化の点で不都合であるため、三次元構造をあえて壊すために、別な金属アルコキシドと併用するか、意図的に加水分解、脱水縮合が中途半端になるよう、あらかじめ水の量を少なくする手法が有効である。具体的には、ゾルゲル法で用いる水の量をチタン原子1モルに対し2モル以下とすることが好ましい。
【0097】
ゾルゲル法による有機−無機ハイブリッド組成物を樹脂組成物として用いる以外であっても、半硬化状態の樹脂組成物層を作製するには、上記被覆蛍光物質粒子を含有する樹脂組成物をPET等の基材に塗布し、加熱により溶剤を揮発させてフィルム状とする方法が挙げられる。なお、フィルム状とする場合、基材の反対面にPP等のセパレータフィルムにより保護することも好ましい。フィルム状の半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セルへ貼り付けるには、太陽電池セルへ真空ラミネートすればよい。または、フィルム状とせずに、上記樹脂組成物をワニス状で用いて、太陽電池セルへ直接塗布し、溶剤乾燥して、半硬化状態の樹脂組成物層とすることも可能である。ワニス状で塗布した時点で太陽電池セル凹凸を完全に埋め込むことができる。
【0098】
半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セル上に形成した後、次に、波長変換フィルムに、微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成する場合は、同形状の微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を有する型フィルムを、半硬化状態の樹脂組成物層の上に載せ、さらに真空ラミネートし、半硬化状態の樹脂組成物層に形状転写し、波長変換フィルムを得る。なお、半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セル上に貼り付けた後に、型フィルムで微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成して、波長変換フィルムを得るのではなく、基材上に形成されたフィルム状の樹脂組成物層を型フィルムの上に貼り付けるか、又は樹脂組成物を型フィルムに直接塗布し、微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成して波長変換フィルムを得てから、太陽電池セル上に貼り付けても良い。
【0099】
この時点で型フィルムを剥離してから波長変換フィルムを硬化しても、型フィルムをつけたまま波長変換フィルムを硬化してもよい。半硬化状態の波長変換フィルムの硬化方法は、あらかじめ該樹脂組成物に光硬化性を付与しても、熱硬化性を付与してもよい。
【0100】
<太陽電池モジュール及びその製造方法>
本発明は、上記波長変換フィルム又は型フィルム付き波長変換フィルムを用いた太陽モジュールも範囲とする。
本発明の波長変換フィルムは、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられる。
【0101】
本発明の波長変換フィルムに用いる蛍光物質にユーロピウム錯体を用いることで高い発電効率を有する太陽電池モジュールを実現出来る。ユーロピウム錯体は紫外域の光を高い波長変換効率で赤色の波長域の光に変換し、この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与する。
【0102】
本発明の波長変換フィルムとなる、フィルム状の樹脂組成物層を用いて、太陽電池セル上に波長変換フィルムを形成し、太陽電池モジュールを製造する一つの方法について、図2を用いて説明する。
【0103】
図2の(a)に示すように、基材であるPET等の基材フィルム304と、PP等のセパレータフィルム306に挟まれた半硬化状態の、被覆蛍光物質粒子を含有した半硬化状態の樹脂組成物層305を、太陽電池セルへ貼り付ける場合、まずセパレータフィルム306を剥がす。
【0104】
次に、図2の(b)に示すように、真空ラミネータを用い、太陽電池セル100に半硬化状態のユーロピウム錯体からなる蛍光物質を含有した半硬化状態の樹脂組成物層305を、基材フィルム304をつけたまま貼り付ける。
【0105】
その後、図2の(c)に示すように、前記基材フィルム304を剥がし、半硬化状態の樹脂組成物層305上に型フィルム301を載せ、図2の(d)に示すように、さらに真空ラミネータで、微細凹凸形状の転写を行い、波長変換フィルム300a(硬化前)を得る。
【0106】
硬化前の波長変換フィルム300aを得た後、さらに光又は熱で半硬化状態のユーロピウム錯体からなる蛍光物質を含有した、波長変換フィルム300aを硬化させ、波長変換フィルム300b(硬化後)を得る。硬化後は、このまま型フィルム301を残し、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい。
【0107】
また、図2の(e)のように、(d)の状態から型フィルム301を剥がした後、図1に示すように、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい。
【0108】
このとき、太陽電池セルのテクスチャー構造が深さ10μmで、型フィルム凹凸の深さが10μmとすれば、ラミネート前の波長変換フィルムは少なくとも20μmの厚みが必要ということになる。先述の言い方をすれば、前者が台座部分で、後者が本発明の特徴である凸又は凹形状の多角錐もしくは円錐部分となる。
【0109】
なお、型フィルム(波長変換フィルムの凸又は凹計上の多角錐若しくは円錐部形成の鋳型となる型フィルム)は、特開2002−225133号公報に記載の方法等により作製することができる。型フィルム形成に用いられる樹脂組成物は、波長変換フィルムで用いられる光硬化性樹脂を含むものが挙げられる。なお、型フィルムの形状は、波長変換フィルムに微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐が受光面に隙間なく多数敷き詰めるように形成されるようなものとする。
型フィルムの具体的な作製例は、実施例のところで後述する。
【0110】
本発明の波長変換フィルムは、太陽モジュールとする前の状態のもの、具体的には硬化性樹脂を用いた場合は、半硬化状態のフィルムをいう。なお、半硬化状態の波長変換フィルムと、硬化した後(太陽モジュール化した後)の波長変換フィルムとの屈折率は大きくは変わらない。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0112】
<被覆蛍光物質粒子の作製>
(被覆蛍光物質粒子A〜Hの作製)
まず、蛍光物質粒子を合成する。4,4,4−トリフルオロ−1−(チエニル)−1,3−ブタンジオン(TTA)200mgを7mlのエタノールに溶解し、ここへ1Mの水酸化ナトリウム1.1mlを加え混合した。7mlのエタノールに溶かした62mgの1,10−フェナントロリンを先の混合溶液に加え、1時間攪拌した後、EuCl・6HO 103mgの3.5ml水溶液を加え、沈殿物を得る。これをろ別し、エタノールで洗浄し、乾燥する。ヘキサン−エチルアセテートにより再結晶精製をし、蛍光物質粒子Eu(TTA)Phenを得た。なお、蛍光物質粒子の一次粒子径は10〜50nmであった。
【0113】
上記で得られたEu(TTA)Phenを用い、表1に示す配合量でゾルゲル用溶液を作製した。ここで、表1中に記載されている数字はモル比を示している。なお、Eu(TTA)Phenの使用量はモル比で、TEOSに対して1/160モルである。また、TEOSはテトラエトキシシラン、DMFはジメチルホルムアミド、NHはアンモニアを示す。
【0114】
表1に記載された比率で作製した溶液中に、上記で得られた蛍光物質粒子(ユーロピウム錯体(Eu(TTA)phen))(一次粒子径:10〜50nm)を混合し、10分間攪拌を行った。次に、ガラス基板上にキャスト法で塗布して、120℃、1時間の条件で加熱処理を行い、被覆蛍光物質粒子A〜Hを作製した。
【0115】
得られた被覆蛍光物質粒子(Eu(TTA)phen蛍光物質粒子の周囲をシリカガラスで覆った粒子)の形状を電子顕微鏡で観察を行い、一次粒子径の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
(被覆蛍光物質粒子I〜Lの作製)
表2に示す配合量でゾルゲル用溶液を作製した。ここで、表2中に記載されている数字はモル比を示している。また、TEOSはテトラエトキシシラン、THFはテトラヒドロフラン、NHはアンモニアを示す。
【0118】
表2に記載された比率で作製した溶液中に、上記で得られた蛍光物質粒子(ユーロピウム錯体(Eu(TTA)phen))(一次粒子径:10〜50nm)を混合し、10分間攪拌を行った。次に、ガラス基板上にキャスト法で塗布して、120℃、1時間の条件で加熱処理を行い、被覆蛍光物質粒I〜Nを作製した。
【0119】
得られた被覆蛍光物質粒子(Eu(TTA)phen蛍光物質粒子の周囲をシリカガラスで覆った粒子)の形状を走査型電子顕微鏡で観察を行い、一次粒子径の測定を行った。その結果も表2に記載している。
【0120】
【表2】

【0121】
(実施例1)
<太陽電池モジュールの作製>
太陽電池モジュールの作製方法は、いくつかのステップによって形成される。以下、波長変換フィルムの形成(貼り付け)方法を含めた太陽電池モジュールの作製方法に関して説明する。
【0122】
(1)型フィルム用の感光性樹脂組成物の調製
分散媒樹脂(A成分)としてのアクリルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:ヒタロイドHA7885)50質量部、架橋性モノマ(B成分)としてのEO変性ビスフェノールAジメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:ファンクリルFA−321M)50質量部及び光開始剤(C成分)としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:IRGACURE184)3.0質量部を、有機溶媒のメチルエチルケトンに溶かしワニス(樹脂組成物)とした。このワニスをシリコンウエハ上に約5000Åとなるように膜を形成した。
【0123】
(2)型フィルムの作製
有効面積が155mm角であり、底辺20μm及び高さ10μmの四角錘が隙間なく形成されている金型上に、上記樹脂組成物を1〜2滴、滴下し、50μm厚の両面易接着処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A−4300)をこの上に載せた。樹脂組成物とPETフィルムの間に気泡が入らないようにローラーで気泡を取り除き、PET側からUV光を照射した。金型からPETフィルムを剥がすことにより、凹形状の四角錘型フィルムを得た。屈折率は、基材及び感光性樹脂組成物層とも1.49だった。
なお、得られた型フィルムの四角錘寸法は、金型と同じである。
【0124】
(3)波長変換フィルム用の被覆蛍光物質粒子を含む樹脂組成物の調製
大阪ガスケミカル社製のエポキシ樹脂(商品名:オグソールEG)100質量部に対し、トルエンを66.67質量部加え、1昼夜攪拌した。これを試験用樹脂とした(ただし、この樹脂単独では硬化しない。本実施例では、あくまでもの分散媒樹脂として、硬化性は無視した)。さらに上記で合成した被覆蛍光物質粒子Nを0.3質量部加え樹脂組成物1とした。
【0125】
(4)波長変換フィルムの作製
上記で得られた型フィルム(感光性樹脂組成物層)の上に上記樹脂組成物1をギャップを7milとしたアプリケータにより塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で、15分間かけて乾燥し、波長変換フィルム1を得た。塗膜上には、セパレータフィルムとして、PPフィルムで半硬化状態の波長変換フィルムを保護した。なお、波長変換フィルム1は、底辺が20μm、高さが10μmの四角錘が隙間なく形成され、また台座部分の厚みは42μmであった。
【0126】
(5)波長変換フィルム付太陽電池モジュールの作製
タブ線接続され、あらかじめ太陽電池特性を測定してある太陽電池セル上に、上記波長変換フィルム1からセパレータフィルムを剥がしてから載せ、保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子(株)製)、封止材としてのEVA樹脂((株)三井ファブロ製、商品名:ソラエバ)、波長変換フィルムを貼り付けた太陽電池セル(受光面を下に向ける)、前記EVA樹脂、バックフィルムとしてPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A−4300)を重ね、真空ラミネータを用いてラミネートして、波長変換フィルム付太陽電池モジュール1を得た。なお、太陽電池特性の測定は、以下に述べる太陽電池モジュール特性評価と装置、手法ともに同様である。
なお、各層の屈折率は以下の通りである。保護ガラス(1.50)、封止材(1.49)、型フィルム基材部分(PET)(1.49)、型フィルム微細凹凸部分(1.49)、波長変換フィルム1(1.61)、太陽電池セルのうちSiNx:H層(2.1)、Si層(3.4)。
各層の屈折率、層厚を表3に示す。
【0127】
(6)太陽電池モジュール特性
ワコム電創(株)製、ソーラーシミュレータ、WXS−155S−10、AM1.5G、英弘精機(株)製、I−Vカーブトレーサー、MP−160を用い、波長変換フィルム付太陽電池モジュール1の性能を評価した。その評価データを表4に示す。
【0128】
(実施例2)
<太陽電池モジュールの作製>
微細形状を含まない波長変換フィルムを設けた太陽電池モジュールを作製した。
(1)波長変換フィルム用の被覆蛍光物質粒子を含む樹脂組成物の調製
メチルメタクリレートポリマ(和光純薬社製)100質量部に対し、トルエンを163質量部加え、数日攪拌し、溶液化した。この樹脂溶液にさらに上記で合成した被覆蛍光物質粒子Aを0.3質量部加え、樹脂組成物2とした。
【0129】
(2)波長変換フィルムの作製
タブ線接続され、あらかじめ太陽電池特性を測定してある太陽電池セル上に、上記で得られた樹脂組成物2を滴下し、アプリケータにて、タブ線の厚みをギャップとして塗布した。100℃の熱風対流式乾燥機で、15分間かけて乾燥し、波長変換フィルムを作製し、波長変換フィルム付太陽電池セルを得た。
(3)波長変換フィルム付太陽電池モジュールの作製
保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子(株)製)、封止材としてのEVA樹脂((株)三井ファブロ製、商品名:ソラエバ)、上記で得られた被覆蛍光物質粒子を含む層のある太陽電池セル、(受光面を下に向ける)、前記EVA樹脂、バックフィルムとしてPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A−4300)を重ね、真空ラミネータを用いてラミネートし、波長変換フィルム付太陽電池モジュール2を得た。
なお、各層の屈折率は以下の通りである。保護ガラス(1.50)、封止材(1.49)、波長変換フィルム2(1.49)、太陽電池セルのうちSiNx:H層(2.1)、Si層(3.4)。
各層の屈折率、層厚を表3に示す。
(4)太陽電池モジュール特性
太陽電池モジュール2を実施例1と同様の方法で評価した。そのデータを表4に示す。
【0130】
(比較例1)
<太陽電池モジュールの作製>
波長変換フィルムを有さない太陽電池モジュールを以下の方法で作製した。
(1)太陽電池モジュールの作製
保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子(株)製)、封止材としてのEVA樹脂((株)三井ファブロ製、商品名:ソラエバ)、上記で得られた被覆蛍光物質粒子を含む層のある太陽電池セル、(受光面を下に向ける)、前記EVA樹脂、バックフィルムとしてPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A−4300)を重ね、真空ラミネータを用いてラミネートし、太陽電池モジュール3を得た。
なお、各層の屈折率は以下の通りである。保護ガラス(1.50)、封止材(1.49)、太陽電池セルのうちSiNx:H層(2.1)、Si層(3.4)。
各層の屈折率、層厚を表3に示す。
(2)太陽電池モジュール特性
太陽電池モジュール3を実施例1と同様の方法で評価した。そのデータを表4に示す。
【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の波長変換フィルムは、スペクトルミスマッチによる太陽光損失を低減し、さらに高い可視光透過率を有する構成とすることにより、光利用効率を高め、発電効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0134】
100 太陽電池セル
201 保護ガラス(カバーガラス)
202 封止材(充填材)
203 タブ線
204 バックフィルム
300a、b 波長変換フィルム
301 型フィルム
304 基材フィルム
305 半硬化状態の樹脂組成物層
306 セパレータフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの光透過性層の一つとして用いられる、蛍光物質及び分散媒樹脂を含む波長変換フィルムにおいて、
前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質粒子である波長変換フィルム。
【請求項2】
前記波長変換フィルムが、前記太陽電池セルの受光面上に配置され、前記被覆層の屈折率が1.5〜2.1であり、前記分散媒樹脂の屈折率が1.5〜2.1であり、
且つ前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことを特徴とする請求項1に記載の波長変換フィルム。
【請求項3】
前記被覆層が、ゾルゲル法で形成したシリカガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換フィルム。
【請求項4】
前記蛍光物質が、ユーロピウム錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長変換フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムを有する太陽電池モジュール。
【請求項6】
蛍光物質粒子を、シリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカガラスで被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質粒子を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
前記被覆蛍光物質粒子を分散媒樹脂に分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムの製造方法。
【請求項7】
複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの製造方法において、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムを積層して、前記光透過性層の一つを構成する工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−34502(P2010−34502A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78199(P2009−78199)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】