説明

波長変換レーザ源のための光学構成

半導体レーザ、波長変換素子、集成レンズ、及び1つ以上の可調光学コンポーネントを有する光学パッケージが提供される。集成レンズ及び可調光学コンポーネントは、半導体レーザの出力ビームを波長変換素子の入力面に向けるため、及び波長変換素子の入力面上の出力ビームの位置を変移させるために構成される。集成レンズ及び可調光学コンポーネントはさらに、半導体レーザから波長変換素子に光路に沿って伝搬するレーザ光が、集成レンズによってコリメートまたはほぼコリメートされてから可調光学コンポーネントによって反射され、可調光学コンポーネントによって反射された後に集成レンズによって波長変換素子の入力面上に集束されるような、折返し光路を定めるために構成される。別の実施形態も開示され、特許請求される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、同時係属であり、共通に譲渡されている、2007年7月20日に出願された、「波長変換レーザ源の光学構成(OPTICALN CONFIGULATIONS FOR WAVELENGTH-CONVERTED LASER SOURCES)」についての米国特許出願第11/880250号の恩典に関し、これを主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は全般的には半導体レーザ、レーザコントローラ、光学パッケージ、及び半導体レーザを組み込んでいるその他の光システムに関する。さらに詳しくは、限定ではなく例として、本発明の実施形態は全般的に、とりわけ、半導体レーザ及び二次高調波発生(SHG)結晶またはその他のタイプの波長変換素子を有するパッケージにおける光アライメントに関する。
【背景技術】
【0003】
赤外または近赤外の、分布帰還(DFB)レーザ、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザまたはファブリ−ペロレーザのような、比較的長波長の単一波長半導体レーザを、2次高調波発生(SHG)結晶のような、光波長変換素子と組み合わせることによって、短波長光源を形成することができる。一般に、SHG結晶は基本レーザ信号の高次高調波を発生するために用いられる。そうするためには、レーザ発振波長が波長変換SHG結晶のスペクトル中心に同調されることが好ましく、レーザの出力が波長変換結晶の入力面において導波路領域とアライメントがとられることが好ましい。
【0004】
MgOドープ周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶のような、代表的なSHG結晶のモード径は数μmの範囲にあり得る。この結果、本発明の発明者等はレーザダイオードからのビームとSHG結晶の導波路のアライメントを適切にとることは極めて困難な課題になり得ることを認識した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、SHG結晶またはその他のタイプの波長変換素子を利用して長波長源(例:近赤外レーザダイオード)から短波長光(例:緑色レーザ光)を発生する光学パッケージに適する光学構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態にしたがえば、半導体レーザ、波長変換素子、集成レンズ及び1つ以上の可調光学コンポーネントを有する光学パッケージが提供される。集成レンズ及び可調光学コンポーネントは、半導体レーザの出力ビームを波長変換素子の入力面に向けるため及び波長変換素子の入力面上の出力ビームの位置を変移させるために、構成される。集成レンズ及び可調光学コンポーネントはさらに、半導体レーザから波長変換素子に光路に沿って伝搬するレーザ光が集成レンズによってコリメートまたはほぼコリメートされてから可調光学コンポーネントによって反射される、可調変換素子によって反射された後に波長変換素子の入力面上に集成レンズによって集束されるような、折返し光路を定めるために構成される。別の実施形態も開示され、考えられる。
【0007】
本発明のさらに考えられる実施形態は、本発明の概念にしたがって半導体レーザを動作させるようにプログラムされたレーザコントローラを有する光学パッケージに関する。本発明の様々な概念は、カラー像形成レーザ投影システム、自動車のヘッドアップディスプレイのようなレーザベースディスプレイ、あるいは光アライメント及び/または波長同調が課題であるいずれのレーザ応用にも適用できるであろうと考えられる。さらに、本明細書に論じられる光学構成は、DBRレーザ、DFBレーザ、ファブリ−ペロレーザ及び多くのタイプの外部キャビティレーザを含むがこれらには限定されない、様々なタイプの半導体レーザの状況において効用を有するであろうと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の一実施形態にしたがうMEMSミラー利用光アライメントパッケージの略図である。
【図2】図2は波長変換素子の入力面上のビームスポットの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造は同様の参照数字で示される、添付図面とともに読めば最善に理解され得る。
【0010】
初めに図1を参照すれば、本発明の特定の実施形態の概念を組み入れることができる様々なタイプの光学パッケージの一般的な構造は、周波数または波長が変換される半導体レーザ源の構成及び作成に関する、容易に入手できる技術文献に教示されるが、本発明の特定の実施形態の概念は、例えば半導体レーザ10及び波長変換素子20を有する、光学パッケージを全般的に参照することによって簡便に説明することができる。図1の構成においては、1つ以上の可調光学コンポーネント30及び適する集成光学系35により、半導体レーザ10によって放射される近赤外光が波長変換素子20の導波路領域に結合され、集成光学系35は単コンポーネント構成または多コンポーネント構成の1つ以上の光学素子からなることができる。図1に示される光学パッケージは、様々な長波長半導体レーザからの様々な短波長レーザビームの発生に特に有用であり、例えば、レーザ投影システムにおける可視レーザ源として用いることができる。
【0011】
可調光学コンポーネント30は、レーザ10によって放射される出力ビームを波長変換素子20の導波路領域に集束させることは困難であることが多いから、特に役に立つ。例えば、MgOドープ周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶のような、代表的なSHG結晶のモード径は数μmの範囲にあり得る。図1及び2を合わせて参照すれば、集成光学系35は可調光学コンポーネント30と協働して、波長変換素子20の入力面22上に同程度の径のビームスポット15をつくる。可調光学コンポーネント30は、調節されるとビーム角偏移を導入するように構成され、したがって、波長変換素子20の入力面22上のビームスポット15の位置を、波長変換素子20の導波路領域24とのアライメントがとられるまで、変えることによって、ビームスポット15の波長変換素子20の導波路領域24とのアライメントを能動的にとるために用いることができる。
【0012】
本発明は適切なアライメントまたはアライメントの度合いを決定する特定の態様のいずれにも限定はされないが、例えば、波長変換素子20の波長変換出力の光路にビームスプリッタ40及び強度センサ50を設けることにより、アライメントをモニタできると考えられる。強度センサ50によって発生される信号の関数として可調光学コンポーネント30の位置または状態を制御するために、フィードバックコントローラ60を用いることができる。さらに、本発明にしたがうアライメントルーチンは、光学パッケージの組立時に、光学パッケージの動作中に、あるいは光学パッケージのライフサイクルのいずれの時点においても、実行できると考えられる。
【0013】
図1に簡略に示される可調光学コンポーネントは、様々な従来の形態またはこれから開発され得る形態をとることができる。例えば、可調光学コンポーネント30は、波長変換素子20の入力面22上のビームスポット15の位置を変移させるように構成され、配置された、1つ以上の可動超小型光−電気機械ミラー、あるいはその他のMEMS素子またはMOEMS素子を有することができる。あるいはまたはさらに、可調光学コンポーネント30はビーム操作及び/またはビーム集束のために構成された1つ以上の液体レンズコンポーネントを有することができる。さらにまた、可調光学コンポーネント30は、超小型アクチュエータに取り付けられた1つ以上のミラー及び/またはレンズを有することができると考えられる。考えられる実施形態の1つにおいて、可調光学コンポーネントは集成光学系35内の可動レンズまたは可調レンズの形態をとり、そうではない可調光学コンポーネント30は固定ミラーの形態をとる。
【0014】
可調光学コンポーネントが可動超小型光−電気機械ミラーを有する場合、ミラーによって定められる偏向角の範囲を約1〜2°程度の値に制限し、曲げ剛性が比較的高いミラーの構成を可能にすることで、光学パッケージの振動への感度を弱めるようにミラーを構成することができる。実際、発明者等は、光学系の焦点距離に依存して、50〜100μm程度の横方向ビームスポットアライメントずれをカバーするには1〜2°の範囲で十分であることを認識した。図示される実施形態において、可調光学コンポーネント30の表面にわたる入射角は、ミラーで反射されるレーザ光は、レーザ光が後にした、同じ集成レンズ35に向けて戻されるから、ほぼ1〜2°の程度にあるように維持することができる。この結果、可調光学コンポーネント30のいかなるミラー湾曲も、あるいは入射角が大きくなると拡大されるであろうその他の光学エラーも、集成レンズ35または光路にある別の光学コンポーネントによって容易に補正することができる。実際、発明者等は、ミラーを小入射角で用いたときのミラー湾曲の影響は1つのコンポーネントをレンズの光軸に沿って移動させることで容易に補正できる像焦点位置の変化であることを認識した。対照的に、比較的大きい入射角でミラーを用いたときには、ミラーの湾曲が光コンポーネントの移動だけでは修正が困難な、非点収差またはコマ収差のような、収差を生じさせ得る。
【0015】
図1に示される光学構成において、超小型光−電気機械ミラー30は比較的コンパクトな折返し光路光学系に組み込まれている。図示される構成において、超小型光−電気機械ミラー30は、光ビームが初めに集成レンズ35を通過して、コリメートまたはほぼコリメートされたビームとして、ミラー30に達し、続いて同じ集成レンズ35を通って戻り、波長変換素子20上に集束されるように、光路を折り返すために構成される。このタイプの光学構成は特に、半導体レーザによって発生されるレーザビームの断面寸法が波長変換素子20の入力面上の導波路の寸法に近い波長変換レーザ源に適用でき、この場合、1に近い倍率により波長変換素子20の入力面上のビームスポット集束において最適な結合が得られるであろう。本発明を定め、説明する目的のため、「コリメートまたはほぼコリメートされた」ビームへの本明細書における言及は、よりコリメートされた状態に向けてビームを導くように、ビームの発散または収斂の度合いが減じられている、いかなるビーム形状も包含することが意図されていることに注意されたい。
【0016】
集成レンズ15は、パッケージの光路に沿って伝搬するレーザビームをコリメートし、集束させるためにはたらくから、コリメート/集束の、二重機能光学コンポーネントとして表すことができる。この二重機能光学コンポーネントは、単一の集成レンズ35がコリメーション及び集束のいずれにも用いられるため、1に近い倍率が必要とされる用途に良く適している。さらに詳しくは、図1に示されるように、半導体レーザ10からのレーザ光出力は、順次に、集成レンズ35の第1の面31で屈折され、集成レンズ35の第2の面32で屈折されて、可調光学コンポーネント30で集成レンズ35の方向に反射される。レーザ光が反射されて集成レンズ35の方向に戻されると、レーザ光は、レーザ光を波長変換素子20の入力面上に集束させるため、初めに集成レンズ35の第2の面32で屈折され、続いて集成レンズ35の第1の面31で屈折される。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、可調光学コンポーネント30は、波長変換素子20の入力面22上に入射する主光線が光学パッケージの出力における主光線とほぼ平行になることを保証するために、集成レンズ35の像焦点の十分近くに配置される。図1に示される構成が収差に関していくつかの利点も提供することを示すこともできる。実際、半導体レーザ10の出力面と波長変換素子20の入力面が集成レンズ35の像焦平面とほぼアライメントがとられて配置され、半導体レーザ10の出力導波路と波長変換素子20の入力導波路が集成レンズ35の光軸に対して対称である場合は、コマ収差のような、反対称フィールド収差は自動的に補正され得ると考えられる。
【0018】
本発明の上記詳細な説明は特許請求されるような本発明の本質及び特質の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。例えば、光学パッケージは、波長変換素子の入力面に対する半導体レーザによって発生されるビームスポットの焦点位置を変えるように構成された、1つ以上の液体レンズコンポーネントのような、焦点可調光学コンポーネントをさらに有することができる。したがって、本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本発明はそのような改変及び変形を包含すると目される。
【0019】
本発明を説明し、定める目的のため、語句「実質的に」及び「ほぼ」は、いずれかの、量的比較、値、測定値またはその他の表現に帰因させ得る不確定性の固有の度合いを表すために本明細書で用いられることに注意されたい。語句「実質的に」及び「ほぼ」は、係わっている主題の基本機能の変化を生じさせずに、量的表現が言明された基準値から変わり得る度合いを表すためにも本明細書で用いられる。
【0020】
特定の仕方でまたは特定の特性または機能を具現化するために、「構成される」本発明のコンポーネントの本明細書における叙述は、目的用法の叙述に対するものとしての、構造の叙述である。例えば、光ビームを特定の態様で向けるために「構成された」集成レンズ及び可調光学コンポーネントへの本明細書における言及は、集成レンズ及び可調光学コンポーネントの既存の物理的状態を表し、したがって、構造特性の明確に限定された叙述としてとられるべきである。
【0021】
「好ましい」、「普通に」及び「一般に」のような語句は、本明細書に用いられる場合、特許請求される本発明の範囲を限定することまたは特許請求される本発明の構造または機能に、必須であるか、肝要であるかまたは重要であることさえ、意味することは意図されていない。むしろ、これらの語句は、本発明の特定の実施形態に利用され得るかまたは利用され得ない、別のまたは追加の特徴を強調することが意図されているに過ぎない。
【符号の説明】
【0022】
10 半導体レーザ
15 ビームスポット
20 波長変換素子
22 波長変換素子入力面
24 導波路領域
30 可調光学コンポーネント
35 集成光学系
40 ビームスプリッタ
50 強度センサ
60 フィードバックコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ、波長変換素子、集成レンズ、及び1つ以上の可調光学コンポーネントを有する光学パッケージにおいて、
前記集成レンズ及び前記可調光学コンポーネントが、前記半導体レーザの出力ビームを前記波長変換素子の入力面に向けるため、及び前記波長変換素子の前記入力面上の前記光ビームの位置を変移させるために構成される、及び
前記集成レンズ及び前記可調光学コンポーネントがさらに、折返し光路を、前記半導体レーザから前記光路に沿って伝搬するレーザ光が初めに前記集成レンズによってコリメートまたはほぼコリメートされてから前記可調光学コンポーネントによって反射され、前記可調光学コンポーネントによって反射された後に、前記波長変換素子の前記入力面上に前記集成レンズによって集束されるように、定めるために構成される
ことを特徴とする光学パッケージ。
【請求項2】
前記集成レンズ及び前記可調光学コンポーネントが、
前記半導体レーザからのレーザ光出力が、順次に、前記集成レンズの第1の面で屈折され、前記集成レンズの第2の面で屈折されて、前記可調光学コンポーネントによって前記集成レンズの方向に反射される、及び
前記レーザ光が反射されて前記集成レンズの方向に戻されると、前記波長変換素子の前記入力面上での集束のために、前記レーザ光が初めに前記集成レンズの前記第2の面で屈折され、続いて前記集成レンズの前記第1の面で屈折される、
ように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光学パッケージ。
【請求項3】
前記半導体レーザ、前記波長変換素子及び前記集成レンズが、前記半導体レーザの出力導波路と前記波長変換素子の入力導波路が前記集成レンズの光軸に対して対称であるように、構成されることを特徴とする請求項1または4に記載の光学パッケージ。
【請求項4】
前記集成レンズと前記可調光学コンポーネントが、前記半導体レーザからのレーザ光出力が初めに前記集成レンズを通過して前記可調光学コンポーネントにコリメートまたはほぼコリメートされたビームとして達し、続いて前記集成レンズを通って戻り、前記波長変換素子上に集束されるように、前記光路を折り返すために構成されることを特徴とする請求項1に記載の光学パッケージ
【請求項5】
前記可調光学コンポーネントが、前記波長変換素子の前記入力面上のビームスポットの位置を変移させるために構成されて、配置された、1つ以上の可動超小型光−電気機械ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載の光学パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−534356(P2010−534356A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518200(P2010−518200)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/008831
【国際公開番号】WO2009/014664
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】