波長変換装置
【課題】より単純な非線形光学結晶の反転配置により、高効率で波長変換光を取り出す波長変換装置を提供する。
【解決手段】波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向に向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルが常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を2つ接合する。2つの非線形光学結晶は、常光線と異常光線とが位相整合条件を満たすようにc軸に対する波動ベクトルの方向を決定し、2つの非線形光学結晶の接合面を常光線と異常光線の波動ベクトルの方向と平行とし、波動ベクトルの方向に対して、一方の非線形結晶の結晶方位を反転させて他方の非線形結晶を配置し、2つの非線形結晶の異常光線のポィンティングベクトルが、両結晶の接合面方向に向かうように接合される。
【解決手段】波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向に向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルが常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を2つ接合する。2つの非線形光学結晶は、常光線と異常光線とが位相整合条件を満たすようにc軸に対する波動ベクトルの方向を決定し、2つの非線形光学結晶の接合面を常光線と異常光線の波動ベクトルの方向と平行とし、波動ベクトルの方向に対して、一方の非線形結晶の結晶方位を反転させて他方の非線形結晶を配置し、2つの非線形結晶の異常光線のポィンティングベクトルが、両結晶の接合面方向に向かうように接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置に関し、更に詳しくは、ある波長の入射波を非線形光学結晶に通すことによって異なる波長の射出波を高効率に得ることができる波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーは、1960年にアメリカのメイマンがルビーレーザーの発振に成功して以来、目覚しい発展を遂げ、現在では多種多様な用途に用いられている。しかし、自然界に存在する物質、あるいは人工的に生成した物質から得られるレーザーの発振波長は、波長の全範囲にわたって存在するわけではなく、図8にその一部を示すように、飛び飛びの値しか存在しない。したがって、欲しい波長のレーザー光が必ずしも簡単に手に入るわけではなく、欲しい波長のレーザー光が得られるのはむしろ稀な例である。
【0003】
そこで、レーザー光を非線形光学結晶を通して波長変換し、入射レーザー光とは異なる波長を持つ射出レーザー光を得ようとする、いわゆる非線形光学現象を用いた波長変換の試みが広くなされている。
【0004】
レーザー光の角振動数をωとすると、代表的な非線形光学現象の例として以下の過程が挙げられる。
(1)第二高調波発生:ω+ω→2ω
(2)和周波発生:ω1+ω2→ω3
(3)差周波発生:ω1−ω2→ω3
(4)光パラメトリック発生:ω3→ω1+ω2
【0005】
(1)の第二高調波発生では、例えば通信波長帯域に属する1.55μm帯のレーザーの波長を、約780nmのレーザー光に変換することができる。また、(2)の和周波発生では、1.06μmと0.53μmのレーザー光を入射して、0.35μmの紫外光を得ることができる。更に、(3)の差周波発生では赤外、遠赤外の長波長光を、(4)の光パラメトリック発生では、広い範囲にわたって波長可変のレーザー光を得ることができる。
【0006】
これらの波長変換に用いられる主な非線形光学結晶の例としては、水晶(αSiO2)、KDP(KH2PO4)、KTP(KTiOPO4)、LN(LiNbO3)、BBO(β-BaB2O4)、LBO(LiB3O5)、CLBO(CsLiB6O10)、有機結晶、ポリマーその他等がある。
【0007】
非線形光学現象は、非線形光学結晶に強い強度のレーザー光を照射した時に生じる現象である。光の周波数では、磁場の作用は電場の作用に比べて十分小さく無視することができ、電場がかかったときの物質の状態変化は、物質中に分極が誘起されるということで表現できる。通常、分極の大きさは電場に比例するとすれば十分であるが、照射するレーザーの強度を大きくすると、線形応答の範囲を超え、非線形な応答が無視できなくなる。
【0008】
非線形性を考慮すると、物質の分極は光電場の冪級数で、以下のように展開できる。
【0009】
P(t)=ε0χ(1)E(t)+ε0χ(2)E2(t)+ε0χ(3)E3(t)+・・・(1)
【0010】
ここでε0は真空の誘電率、χ(1)を線形感受率、χ(2)を2次の非線形感受率、χ(3)を3次の非線形感受率といい、第2項、第3項は、それぞれE2(t)とE3(t)に比例する2次の非線形分極、3次の非線形分極を表す。但し、空間反転に対して対称な結晶に対しては、χ(2)は恒等的に0となる。また、結晶の異方性を考慮すると、本来はχ(n)はテンソルで、E(t)はベクトルで表現されるが、ここでは簡単のため、電場Eおよび分極Pはともに一軸方向に偏っているとし、それぞれスカラー量として扱う。
【0011】
2次の非線形分極P(2)(t)について考察する。結晶への入射波をE(t)=Acosωtとすると、下記、式(2)が得られる。
【0012】
P(2)(t)=(ε0χ(2)A2/2)(cos2ωt+1)・・・・・・・(2)
【0013】
第1項は入射波の2倍の周波数で振動する分極を表し、この分極成分から2倍の周波数の光が発生する。この第1項は第二高調波発生(Second Harmonic Generation;SHG)とよばれ、また、第2項は結晶内部に光の強度に比例する静的分極が誘起される現象を表し、光整流(optical rectification)とよばれる。この第二高調波発生の過程を、図9に示す。
【0014】
この第二高調波発生で高い変換効率を得るには、位相整合条件を満たす必要がある。入射波の波動ベクトルをk1、第二高調波発生の波動ベクトルをk2とすると、|Δk|=|k2―2k1|=0、即ちk1、k2を同方向とすると(2ω1/c)(n2−n1)=0、よって基本波(入射波)と2倍波の屈折率が等しい時に位相整合条件は満たされる。ここでω1は入射波の角振動数、n1は入射波の屈折率、n2は2倍波の屈折率、cは光速である。
【0015】
しかし、屈折率には分散(波長による依存性)があるため、一般に上記関係は満たされず、位相整合条件を満たすために、主として次のような方法が用いられている。
【0016】
(1)角度位相整合法
(2)導波路構造を利用する方法
(3)擬似位相性合法
【0017】
本発明は、上記(1)の角度位相整合法、すなわち複屈折を用いた位相整合を用いるため、以下角度位相整合法による位相整合のみ取り扱うものとする。
【0018】
光の複屈折を取り扱うため、入射波を照射する結晶について簡単に説明しなければならない。結晶を光学的性質で分類すると、等方性結晶、一軸性結晶、二軸性結晶に分けられる。一軸性結晶(uniaxial crystal)では光が伝播するとき、直交する2つの偏光成分の位相速度が等しくなる結晶方位があり、これをc軸(光学軸)という。しかし、c軸以外の方向に光が伝播する場合、すなわち波動ベクトルがc軸と一致しない場合は、その直交する2つの偏光成分は互いに異なる位相速度を持つ。このとき電場(電束密度)の振動方向がc軸に直交する偏光を常光線(ordinary ray)とよぶ。また、常光線の偏光と直交し、c軸を含む面内にある偏光を異常光線(extraordinary ray)という。常光線の電場ベクトルは波動ベクトルと直交するが、異常光線の電場ベクトルは波動ベクトルと直交しない。このため電場ベクトルと磁場ベクトルの外積で与えられるポィンティングベクトルの向き、すなわち異常光線の伝播する向きは、波動ベクトルの向きと一致しなくなる。
【0019】
常光線の屈折率は波動ベクトルの方向によらず一定値noをとるが、異常光線の屈折率neは、波動ベクトルがc軸に対しθの角度をとるとき、以下のように表される。
【0020】
1/ne2(ω、θ)=cos2θ/no2(ω)+sin2θ/ne2(ω)
・・・・・・・・・・・・・・(3)
【0021】
ここでno(ω)およびne(ω)は、それぞれ角周波数ωの常光線と異常光線の主屈折率である。また、ne>noの結晶を正の一軸性結晶、ne<noの結晶を負の一軸性結晶という。波動ベクトルkとc軸のなす角θに対して、2つの屈折率をプロットすると、常光線に対応した屈折率円と異常光線に対応した屈折率楕円が描ける。
【0022】
図10は、負の一軸性結晶の場合について上記屈折率曲線を描いたものである。図10でOEの長さが式(3)の屈折率ne(θ)に等しい。
【0023】
また、第二高調波発生はω光子2個から2ω光子1個が作られるが、上記(1)の複屈折を用いた位相整合では、ω光子2個が同一の偏光状態にあるtype(i)の位相整合と、ω光子2個が直交する偏光状態にあるtype(ii)の位相整合とがある。位相整合条件は、基本波と2倍波の屈折率が等しくなることであり、負の一軸性結晶を用いたtype(i)の位相整合では、
ne(2ω、θm)=no(ω、θm)=no(ω)
すなわち、
ne2ω(θm)=noω(θm)=noω・・・・・・・・・・・・・・・(4)
である。このθmを位相整合角という。
【0024】
したがって、θmに対する条件式(4)と、ω、2ωにおける屈折率を用いて式(3)を書き直して用いると、一軸性結晶の位相整合条件は、下記の式のように表現される。即ち、位相整合条件を満たすc軸に対する光の入射角θmは、下記の式を満たすように定められる。
【0025】
【数1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
【0026】
図11に負の一軸性結晶の場合について、常光線である入射波(ω)の屈折率円と異常光線である射出波(2ω)の屈折率楕円を図10と同様に描いたものを示す。負の一軸性結晶では、角周波数2ωの異常光屈折率楕円と角周波数ωの常光線屈折率円は交点を有し得る。この交点で与えられるc軸とOEの成す角が上記θmであり、ne2ω(θm)=noω(θm)(=noω)として与えられるtype(i)の位相整合条件を満足することができる。
【0027】
以上のように、角度位相整合することによって、高効率の射出波を取り出せることが期待される。
【0028】
【特許文献1】特開平7−120797号公報
【0029】
【非特許文献1】非線形光学(コロナ社:黒田和男 著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかし、図10に見るように、一軸性結晶の場合(図10は負の一軸性結晶を示す)、常光線では波動ベクトルとポィンティングベクトル(エネルギーの流れ)は一致するが、異常光線では波動ベクトルとポィンティングベクトルsの方向は一致せず、異常光線の光線方向sは屈折率楕円体表面に直交する。このため、角度位相整合が満足されて基本波(常光線;ω)と2倍波(異常光線;2ω)の波面は一致しても、エネルギーが流れる方向が異なるウォークオフ(walk off)現象が生じる。これが方解石など複屈折性を持つ光学結晶を通してみた像が2重写しに見える原因であり、レーザーのように入射波(基本波、常光線;ω)のビーム幅が細い場合は、ウォークオフにより基本波と2倍波はウォークオフ角ρで空間的に分離してしまい、相互作用長が短くなってしまう(図12)。そのため、射出光の強度は弱くなり、2倍波の取り出し効率は著しく低くなる(非特許文献1を参照)。
【0031】
このようなウォークオフによる第二高調波発生の低効率化を阻止するため、特許文献1には以下のような発明が開示されている。すなわち、光学異方性を示しかつ入射された基本波長の光と該基本波長の光と異なる少なくとも1つの変換波長の光とを射出する複数個の非線形光学材料を、各々を通過する光の進行方向に沿って位相整合条件を満たすような結晶学的方位に向けて位置し、かつ少なくとも2つの非線形光学材料を結晶軸を含む平面が同一になるように配置すると共に該結晶軸の向きを結晶学的に異なる方向に向くように配置した、波長変換装置である(図13)。
【0032】
詳細には、図13に表す結晶片112A〜112Jの各々を、第二高調波発生の位相整合条件が満たされるように入射光軸に対する結晶軸の角度にする。図14のように、結晶片112Aでは、常光線120は上記入射光軸の方向に直進するが、異常光線122は通常の屈折の法則に従わず所定角度のウォークオフ角を以って進行する。この結晶片112Aに隣接する結晶片112Bは、位相整合条件を満たすと同時に、結晶学的に異なる方向に向くように結晶軸方向を反転して配置されるため、異常光線122は結晶片112Aにおける所定角度のウォークオフ角と常光線120を軸として対称な方向に進行するウォークオフ角を以って進行する。このように結晶片112A〜112Jの各々は、結晶軸116A〜116Jが結晶光学的に異なる方向となるように交互に配置することにより、ウォークオフによる波長変換効率の減少を防止している。
【0033】
しかし、このようにして得られる変換光(今の場合2倍波)の強度は、変換光の通過する媒質結晶の長さの2乗に略比例するので、上記特許文献1の発明のように、光の進行方向に多数の結晶を配置しなければならない。また、各々の結晶の配置角度の調整も煩雑なものとなる。
【0034】
そこで、本発明は、より単純な非線形光学結晶の反転配置により、高効率で波長変換光を取り出す装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明に係る波長変換装置は、波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向を向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルは該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を、2つの該非線形光学結晶のc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、前記常光線と前記異常光線とが接合面に平行に入射したとき、非線形光学効果による波長変換の位相整合条件を満たすように前記接合面に対する前記c軸の方向を決定し、前記2つの非線形光学結晶の接合面を前記常光線と異常光線との前記波動ベクトルの方向と平行とし、前記波動ベクトルを軸として、一方の前記非線形光学結晶の結晶方位を180度反転させて他方の前記非線形光学結晶を配置し、かつ、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルが、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に向かうように、前記2つの非線形光学結晶が接合された波長変換装置である。
【0036】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶の各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有し得る。
【0037】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶に、一様に作用する電界を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有してもよい。
【0038】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶に、一様に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有してもよい。
【0039】
本発明に係る波長変換方法は、前記波長変換装置および該波長変換装置から射出される射出光に垂直に設置されたフィルターを準備するステップと、前記波長変換装置の前記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルを、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に集中させるステップと、前記入射波に対して波長変換されたレーザー光をフィルターを通して取り出すステップと、を含む。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る波長変換装置によれば、上下に2つの非線形光学結晶を、位相整合条件を満たし、かつ、異常波の進行方向を上記2つの非線形光学結晶の接合面方向に向くように調整して配置・接合するため、ウォークオフによる波長変換効率の減少を抑制し、容易に波長変換効率を向上させることができる。
【0041】
本発明の波長変換装置は、角度調整手段、電界調整手段、圧力調整手段又は温度調整手段等により、あるいはこれらの調整手段の組み合わせにより、位相整合条件がより満足されるように異常波の進行方向等を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】負の一軸性非線形光学結晶の屈折率楕円、位相整合条件を満たす角度θm方向を向く波動ベクトル、および波動ベクトルに対してこれを反転した屈折率楕円とを表す図である。
【図2】非線形光学結晶中の位相整合条件を満たす基本波(正常波)と2倍波(異常波)のそれぞれの波動ベクトルとポィンティングベクトルとを表す図であり、上半分の非線形光学結晶と下半分の非線形光学結晶とでは結晶軸の向きが波動ベクトルを対称軸として反転している図である。
【図3】波動ベクトルを対称軸として、図1の屈折率楕円を分離して表した断面図である。
【図4】互いに結晶方位を反転して接合した2つの非線形光学結晶の接合面に沿って常光波が進行する場合の異常波(SHG)の進行方向を表す断面イメージ図である。
【図5】位相整合条件を結晶軸の角度調整により行うことを説明するイメージ図である。
【図6】位相整合条件を結晶に付与する電界によって調整することを説明するイメージ図である。
【図7】位相整合条件を結晶に付与する圧力及び/又は温度により調整することを説明するイメージ図である。
【図8】代表的なレーザーと発振波長の関係を示す図である。
【図9】長さLの非線形光学結晶中に角周波数ωの基本波が入射し、非線形光学効果により角周波数2ωの第二高調波が発生する様子を表す図である。
【図10】負の一軸性結晶の場合の異常波に対する屈折率楕円と、これと同周波数における正常波の屈折率円を表すとともに、c軸と角度θをなす波動ベクトルkの方向と異常波のポィンティングベクトルs(エネルギーの流れを表す)の方向を示す図である。
【図11】異常波の屈折率楕円と正常波の屈折率円を表すであり、楕円と円の交点が角度位相整合における角度位相整合条件を満足する位相整合角θmを与える図である。
【図12】位相整合におけるウォークオフを表す図である。
【図13】特許文献1の発明に係る波長変換装置の概略図である。
【図14】特許文献1の発明に係る波長変換装置を構成するBBO結晶片の配置を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明に係る波長変換装置の実施形態について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
【0044】
また、説明を簡単にするため、入射波を照射する非線形光学結晶は負の一軸性非線形光学結晶とし、本装置による波長変換の例として第二高調波発生を用いることとする。
【0045】
図2を参照して、本発明に係る波長変換装置1は、波動ベクトルKo及びポィンティングベクトルSoが入射波の進行方向に向く常光線と、波動ベクトルKeは入射波ベクトルkの方向に向くが、ポィンティングベクトルSe=sが当該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する負の一軸性非線形光学結晶10A、10Bを、2つの該一軸性非線形光学結晶10A、10Bのc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、上記常光線と上記異常光線とが位相整合条件を満たすように前記c軸に対する波動ベクトルKo=Ke/2=kの方向および光の入射角を決定する。
【0046】
さらに、本発明の波長変換装置1は、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面を、常光線と異常光線の波動ベクトルの方向である波動ベクトルkの方向に平行とし、波動ベクトルkを軸として、一方の一軸性非線形光学結晶10A(10B)の結晶方位を180度反転させて他方の一軸性非線形光学結晶10B(10A)を配置するようにし、かつ、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの上記異常光線のポィンティングベクトルsが、当該2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように、上記2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bが接合された波長変換装置1である。
【0047】
上記波長変換装置1では、波動ベクトルKo=Kp/2=k、すなわち、入射波と常光波の波動ベクトルが等しく、異常光(2倍波)の波動ベクトルが正常波(入射波)の波動ベクトルの1/2となっている。したがって、上記のように、入射波の波動ベクトルをk1、第二高調波発生の波動ベクトルをk2とすると、|Δk|=|k2―2k1|=0が成立し、波長変換装置1は、上記位相整合条件を満たすこととなる。
【0048】
上記式(4)のように、この位相整合条件は、ne2ω(θm)=noω(θm)(=noω)と等価であり、図11において実線の円noω(θ)と実線の楕円ne2ω(θ)のθ=θmでの交点に対応している。すなわち、c軸から角度θmとなる方向に入射波の波動ベクトルが向くとき、Ko=Ke/2=kの条件が満たされる。
【0049】
ところが、一般に、一軸性非線形光学結晶においては、常光線のポィンティングベクトルSo(=E×H)の方向は常光線の波動ベクトルKo=kの方向と一致するが、異常光線のポィンティングベクトルSe=sの方向は異常光線の波動ベクトルKe=kの方向と一致しない。したがって、非線形光学結晶においては、図12のように常光線と異常光線のエネルギーの流れは分離して相互作用が小さくなり、非線形波(本実施例では第二高調波)の取り出し効率は低くなる。
【0050】
そこで、波動ベクトルkを軸として非線形光学結晶を180度反転すると、図11で示される異常波である第二高調波の屈折率楕円ne2ω(θ)は図1のように軸方位が2θmだけ傾いたものになる。反転した非線形光学結晶中でエネルギーの流れる方向、即ちポィンティングベクトルs’の方向は、位相整合方向(波動ベクトルkの方向)に対して、ポィンティングベクトルsと対称の方向となる。
【0051】
上記2つの一軸性非線形光学結晶のポィンティングベクトルs、s’が、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように接合するには、図3のように、波動ベクトルkと平行で、かつ常光線の偏光方向を含む面を接合面として、上記2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの結晶方位を揃えればよい。
【0052】
上記のように2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bを接合することにより、図4に表すように、異常波(本実施形態において2倍波、;SHG光)は接合面の方向に集中するようになり、ウォークオフの現象が実質抑制され、ウォークオフによる波長変換効率の低下を効率よく防止することができる。
【0053】
しかし、上記本発明に係る波長変換装置1は、異常光線のポィンティングベクトルsが、該2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように、c軸の方向が調節されて接合されているが、形状誤差や寸法誤差等により位相整合の効率等が低下する場合がある。このようにして生じる波長変換効率の低下を防止するために、本発明の波長変換装置1は、以下に説明する角度調整手段、電界調整手段、圧力調整手段又は温度調整手段等により、あるいはこれらの調整手段の組み合わせにより、位相整合条件がより満足されるように異常波の進行方向等を調整することができる。
【0054】
図5のように、本発明に係る波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bの各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有し得る。非線形光学結晶10Aと非線形光学結晶10Bのなす角度を微調整することにより、より正確に位相整合条件を満足させることができる。
【0055】
このような角度調整機能を持たせる場合は、2つの非線形光学結晶10A、10Bの間には間隙が生じるが、非線形光学結晶と略等しい油や溶液で間隙を満たし、間隙による効率の低下が起こらないようにする。
【0056】
また、本発明の波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bに、例えば一様に作用する電界を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有してもよい。図6に示すように、非線形光学結晶10A、10Bを電極20A、20Bで挟持し、電源22により非線形光学結晶10A、10Bに一様な電界を付与し、常光線と異常光線の屈折率を調整することにより、より正確に位相整合条件を満足させることができる。
【0057】
さらに、図7に示すように、本発明の波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bに例えば一様に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有してもよい。非線形光学結晶10A、10Bを函体30で覆い、加減圧装置や加熱冷却装置等32により非線形光学結晶10A、10Bに作用を加え、位相整合条件を調整することができる。
【0058】
以上に説明した波長変換装置1により、これを構成する2つの非線形光学結晶10A、10Bに入射波を照射することにより、入射波に対して波長(周波数)が変換された変換波長波を得ることができる。上記実施形態では、この非線形光学現象として第二高調波発生を取り上げ、角周波数ωの光子2つから、角周波数2ωの、波長が入射波の半分となったレーザー光を得る波長変換装置1について説明した。
【0059】
このような波長変換装置1に入射波を照射して射出光の波長を変換する、本発明に係る波長変換方法は、波長変換装置1および波長変換装置1から射出される射出光に垂直に設置されたフィルター12を準備するステップと、波長変換装置1の上記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、2つの非線形光学結晶10A、10B中に発生する異常光線のポィンティングベクトルを、非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に集中させるステップと、上記入射波に対して波長変換されたレーザー光をフィルター12を通して取り出すステップと、を含む(図2、図4参照)。
【0060】
入射波を、波長変換装置1を構成する非線形光学結晶10A、10Bの上記波動ベクトルの方向に照射すると、上述したように、常光線は波動ベクトル及びポィンティングベクトルが共に入射波の方向(波動ベクトルの方向)に向くが、異常光線は波動ベクトルが入射波の方向に向くのに対しポィンティングベクトルは常光線と異なる方向に向く。非線形光学結晶10A、10Bは、異常光線のポィンティングベクトルが、非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に集中するように接合されるため、結晶の長さLにわたってウォークオフは抑制され、高パワーの変換波長波が非線形光学結晶10A、10Bの接合面末端から得ることができる。したがって、変換波長波のみを透過させるフィルター12を通すことにより、高効率に波長の変換されたレーザー光を取り出すことができる。
【0061】
以上、本発明の波長変換装置について、第二高調波発生(SHG)を例として説明したが、本発明は第二高調波発生に限定されるものではなく、入射レーザーを更に異なる波長のレーザーに変換することも可能である。また、本発明に用いる非線形光学結晶は、一軸性に限定されず、二軸性の非線形光学結晶であってもよい。
【0062】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る波長変換装置は、非線形光学効果によって入射レーザー光の波長を所定の波長に変換したレーザー光を取り出すことができる。所望の波長のレーザー光を得ることにより、種々の産業に応用・利用することが出来る。
【符号の説明】
【0064】
1:波長変換装置
10A、10B:非線形光学結晶
12:フィルター
20A、20B:電極
22:電源
30:函体
32:加減圧装置、加熱冷却装置等
112:BBO結晶
112A〜112J:結晶片
116A〜116J:結晶軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置に関し、更に詳しくは、ある波長の入射波を非線形光学結晶に通すことによって異なる波長の射出波を高効率に得ることができる波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーは、1960年にアメリカのメイマンがルビーレーザーの発振に成功して以来、目覚しい発展を遂げ、現在では多種多様な用途に用いられている。しかし、自然界に存在する物質、あるいは人工的に生成した物質から得られるレーザーの発振波長は、波長の全範囲にわたって存在するわけではなく、図8にその一部を示すように、飛び飛びの値しか存在しない。したがって、欲しい波長のレーザー光が必ずしも簡単に手に入るわけではなく、欲しい波長のレーザー光が得られるのはむしろ稀な例である。
【0003】
そこで、レーザー光を非線形光学結晶を通して波長変換し、入射レーザー光とは異なる波長を持つ射出レーザー光を得ようとする、いわゆる非線形光学現象を用いた波長変換の試みが広くなされている。
【0004】
レーザー光の角振動数をωとすると、代表的な非線形光学現象の例として以下の過程が挙げられる。
(1)第二高調波発生:ω+ω→2ω
(2)和周波発生:ω1+ω2→ω3
(3)差周波発生:ω1−ω2→ω3
(4)光パラメトリック発生:ω3→ω1+ω2
【0005】
(1)の第二高調波発生では、例えば通信波長帯域に属する1.55μm帯のレーザーの波長を、約780nmのレーザー光に変換することができる。また、(2)の和周波発生では、1.06μmと0.53μmのレーザー光を入射して、0.35μmの紫外光を得ることができる。更に、(3)の差周波発生では赤外、遠赤外の長波長光を、(4)の光パラメトリック発生では、広い範囲にわたって波長可変のレーザー光を得ることができる。
【0006】
これらの波長変換に用いられる主な非線形光学結晶の例としては、水晶(αSiO2)、KDP(KH2PO4)、KTP(KTiOPO4)、LN(LiNbO3)、BBO(β-BaB2O4)、LBO(LiB3O5)、CLBO(CsLiB6O10)、有機結晶、ポリマーその他等がある。
【0007】
非線形光学現象は、非線形光学結晶に強い強度のレーザー光を照射した時に生じる現象である。光の周波数では、磁場の作用は電場の作用に比べて十分小さく無視することができ、電場がかかったときの物質の状態変化は、物質中に分極が誘起されるということで表現できる。通常、分極の大きさは電場に比例するとすれば十分であるが、照射するレーザーの強度を大きくすると、線形応答の範囲を超え、非線形な応答が無視できなくなる。
【0008】
非線形性を考慮すると、物質の分極は光電場の冪級数で、以下のように展開できる。
【0009】
P(t)=ε0χ(1)E(t)+ε0χ(2)E2(t)+ε0χ(3)E3(t)+・・・(1)
【0010】
ここでε0は真空の誘電率、χ(1)を線形感受率、χ(2)を2次の非線形感受率、χ(3)を3次の非線形感受率といい、第2項、第3項は、それぞれE2(t)とE3(t)に比例する2次の非線形分極、3次の非線形分極を表す。但し、空間反転に対して対称な結晶に対しては、χ(2)は恒等的に0となる。また、結晶の異方性を考慮すると、本来はχ(n)はテンソルで、E(t)はベクトルで表現されるが、ここでは簡単のため、電場Eおよび分極Pはともに一軸方向に偏っているとし、それぞれスカラー量として扱う。
【0011】
2次の非線形分極P(2)(t)について考察する。結晶への入射波をE(t)=Acosωtとすると、下記、式(2)が得られる。
【0012】
P(2)(t)=(ε0χ(2)A2/2)(cos2ωt+1)・・・・・・・(2)
【0013】
第1項は入射波の2倍の周波数で振動する分極を表し、この分極成分から2倍の周波数の光が発生する。この第1項は第二高調波発生(Second Harmonic Generation;SHG)とよばれ、また、第2項は結晶内部に光の強度に比例する静的分極が誘起される現象を表し、光整流(optical rectification)とよばれる。この第二高調波発生の過程を、図9に示す。
【0014】
この第二高調波発生で高い変換効率を得るには、位相整合条件を満たす必要がある。入射波の波動ベクトルをk1、第二高調波発生の波動ベクトルをk2とすると、|Δk|=|k2―2k1|=0、即ちk1、k2を同方向とすると(2ω1/c)(n2−n1)=0、よって基本波(入射波)と2倍波の屈折率が等しい時に位相整合条件は満たされる。ここでω1は入射波の角振動数、n1は入射波の屈折率、n2は2倍波の屈折率、cは光速である。
【0015】
しかし、屈折率には分散(波長による依存性)があるため、一般に上記関係は満たされず、位相整合条件を満たすために、主として次のような方法が用いられている。
【0016】
(1)角度位相整合法
(2)導波路構造を利用する方法
(3)擬似位相性合法
【0017】
本発明は、上記(1)の角度位相整合法、すなわち複屈折を用いた位相整合を用いるため、以下角度位相整合法による位相整合のみ取り扱うものとする。
【0018】
光の複屈折を取り扱うため、入射波を照射する結晶について簡単に説明しなければならない。結晶を光学的性質で分類すると、等方性結晶、一軸性結晶、二軸性結晶に分けられる。一軸性結晶(uniaxial crystal)では光が伝播するとき、直交する2つの偏光成分の位相速度が等しくなる結晶方位があり、これをc軸(光学軸)という。しかし、c軸以外の方向に光が伝播する場合、すなわち波動ベクトルがc軸と一致しない場合は、その直交する2つの偏光成分は互いに異なる位相速度を持つ。このとき電場(電束密度)の振動方向がc軸に直交する偏光を常光線(ordinary ray)とよぶ。また、常光線の偏光と直交し、c軸を含む面内にある偏光を異常光線(extraordinary ray)という。常光線の電場ベクトルは波動ベクトルと直交するが、異常光線の電場ベクトルは波動ベクトルと直交しない。このため電場ベクトルと磁場ベクトルの外積で与えられるポィンティングベクトルの向き、すなわち異常光線の伝播する向きは、波動ベクトルの向きと一致しなくなる。
【0019】
常光線の屈折率は波動ベクトルの方向によらず一定値noをとるが、異常光線の屈折率neは、波動ベクトルがc軸に対しθの角度をとるとき、以下のように表される。
【0020】
1/ne2(ω、θ)=cos2θ/no2(ω)+sin2θ/ne2(ω)
・・・・・・・・・・・・・・(3)
【0021】
ここでno(ω)およびne(ω)は、それぞれ角周波数ωの常光線と異常光線の主屈折率である。また、ne>noの結晶を正の一軸性結晶、ne<noの結晶を負の一軸性結晶という。波動ベクトルkとc軸のなす角θに対して、2つの屈折率をプロットすると、常光線に対応した屈折率円と異常光線に対応した屈折率楕円が描ける。
【0022】
図10は、負の一軸性結晶の場合について上記屈折率曲線を描いたものである。図10でOEの長さが式(3)の屈折率ne(θ)に等しい。
【0023】
また、第二高調波発生はω光子2個から2ω光子1個が作られるが、上記(1)の複屈折を用いた位相整合では、ω光子2個が同一の偏光状態にあるtype(i)の位相整合と、ω光子2個が直交する偏光状態にあるtype(ii)の位相整合とがある。位相整合条件は、基本波と2倍波の屈折率が等しくなることであり、負の一軸性結晶を用いたtype(i)の位相整合では、
ne(2ω、θm)=no(ω、θm)=no(ω)
すなわち、
ne2ω(θm)=noω(θm)=noω・・・・・・・・・・・・・・・(4)
である。このθmを位相整合角という。
【0024】
したがって、θmに対する条件式(4)と、ω、2ωにおける屈折率を用いて式(3)を書き直して用いると、一軸性結晶の位相整合条件は、下記の式のように表現される。即ち、位相整合条件を満たすc軸に対する光の入射角θmは、下記の式を満たすように定められる。
【0025】
【数1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
【0026】
図11に負の一軸性結晶の場合について、常光線である入射波(ω)の屈折率円と異常光線である射出波(2ω)の屈折率楕円を図10と同様に描いたものを示す。負の一軸性結晶では、角周波数2ωの異常光屈折率楕円と角周波数ωの常光線屈折率円は交点を有し得る。この交点で与えられるc軸とOEの成す角が上記θmであり、ne2ω(θm)=noω(θm)(=noω)として与えられるtype(i)の位相整合条件を満足することができる。
【0027】
以上のように、角度位相整合することによって、高効率の射出波を取り出せることが期待される。
【0028】
【特許文献1】特開平7−120797号公報
【0029】
【非特許文献1】非線形光学(コロナ社:黒田和男 著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかし、図10に見るように、一軸性結晶の場合(図10は負の一軸性結晶を示す)、常光線では波動ベクトルとポィンティングベクトル(エネルギーの流れ)は一致するが、異常光線では波動ベクトルとポィンティングベクトルsの方向は一致せず、異常光線の光線方向sは屈折率楕円体表面に直交する。このため、角度位相整合が満足されて基本波(常光線;ω)と2倍波(異常光線;2ω)の波面は一致しても、エネルギーが流れる方向が異なるウォークオフ(walk off)現象が生じる。これが方解石など複屈折性を持つ光学結晶を通してみた像が2重写しに見える原因であり、レーザーのように入射波(基本波、常光線;ω)のビーム幅が細い場合は、ウォークオフにより基本波と2倍波はウォークオフ角ρで空間的に分離してしまい、相互作用長が短くなってしまう(図12)。そのため、射出光の強度は弱くなり、2倍波の取り出し効率は著しく低くなる(非特許文献1を参照)。
【0031】
このようなウォークオフによる第二高調波発生の低効率化を阻止するため、特許文献1には以下のような発明が開示されている。すなわち、光学異方性を示しかつ入射された基本波長の光と該基本波長の光と異なる少なくとも1つの変換波長の光とを射出する複数個の非線形光学材料を、各々を通過する光の進行方向に沿って位相整合条件を満たすような結晶学的方位に向けて位置し、かつ少なくとも2つの非線形光学材料を結晶軸を含む平面が同一になるように配置すると共に該結晶軸の向きを結晶学的に異なる方向に向くように配置した、波長変換装置である(図13)。
【0032】
詳細には、図13に表す結晶片112A〜112Jの各々を、第二高調波発生の位相整合条件が満たされるように入射光軸に対する結晶軸の角度にする。図14のように、結晶片112Aでは、常光線120は上記入射光軸の方向に直進するが、異常光線122は通常の屈折の法則に従わず所定角度のウォークオフ角を以って進行する。この結晶片112Aに隣接する結晶片112Bは、位相整合条件を満たすと同時に、結晶学的に異なる方向に向くように結晶軸方向を反転して配置されるため、異常光線122は結晶片112Aにおける所定角度のウォークオフ角と常光線120を軸として対称な方向に進行するウォークオフ角を以って進行する。このように結晶片112A〜112Jの各々は、結晶軸116A〜116Jが結晶光学的に異なる方向となるように交互に配置することにより、ウォークオフによる波長変換効率の減少を防止している。
【0033】
しかし、このようにして得られる変換光(今の場合2倍波)の強度は、変換光の通過する媒質結晶の長さの2乗に略比例するので、上記特許文献1の発明のように、光の進行方向に多数の結晶を配置しなければならない。また、各々の結晶の配置角度の調整も煩雑なものとなる。
【0034】
そこで、本発明は、より単純な非線形光学結晶の反転配置により、高効率で波長変換光を取り出す装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明に係る波長変換装置は、波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向を向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルは該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を、2つの該非線形光学結晶のc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、前記常光線と前記異常光線とが接合面に平行に入射したとき、非線形光学効果による波長変換の位相整合条件を満たすように前記接合面に対する前記c軸の方向を決定し、前記2つの非線形光学結晶の接合面を前記常光線と異常光線との前記波動ベクトルの方向と平行とし、前記波動ベクトルを軸として、一方の前記非線形光学結晶の結晶方位を180度反転させて他方の前記非線形光学結晶を配置し、かつ、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルが、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に向かうように、前記2つの非線形光学結晶が接合された波長変換装置である。
【0036】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶の各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有し得る。
【0037】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶に、一様に作用する電界を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有してもよい。
【0038】
本発明に係る波長変換装置は、前記接合された2つの非線形光学結晶に、一様に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有してもよい。
【0039】
本発明に係る波長変換方法は、前記波長変換装置および該波長変換装置から射出される射出光に垂直に設置されたフィルターを準備するステップと、前記波長変換装置の前記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルを、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に集中させるステップと、前記入射波に対して波長変換されたレーザー光をフィルターを通して取り出すステップと、を含む。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る波長変換装置によれば、上下に2つの非線形光学結晶を、位相整合条件を満たし、かつ、異常波の進行方向を上記2つの非線形光学結晶の接合面方向に向くように調整して配置・接合するため、ウォークオフによる波長変換効率の減少を抑制し、容易に波長変換効率を向上させることができる。
【0041】
本発明の波長変換装置は、角度調整手段、電界調整手段、圧力調整手段又は温度調整手段等により、あるいはこれらの調整手段の組み合わせにより、位相整合条件がより満足されるように異常波の進行方向等を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】負の一軸性非線形光学結晶の屈折率楕円、位相整合条件を満たす角度θm方向を向く波動ベクトル、および波動ベクトルに対してこれを反転した屈折率楕円とを表す図である。
【図2】非線形光学結晶中の位相整合条件を満たす基本波(正常波)と2倍波(異常波)のそれぞれの波動ベクトルとポィンティングベクトルとを表す図であり、上半分の非線形光学結晶と下半分の非線形光学結晶とでは結晶軸の向きが波動ベクトルを対称軸として反転している図である。
【図3】波動ベクトルを対称軸として、図1の屈折率楕円を分離して表した断面図である。
【図4】互いに結晶方位を反転して接合した2つの非線形光学結晶の接合面に沿って常光波が進行する場合の異常波(SHG)の進行方向を表す断面イメージ図である。
【図5】位相整合条件を結晶軸の角度調整により行うことを説明するイメージ図である。
【図6】位相整合条件を結晶に付与する電界によって調整することを説明するイメージ図である。
【図7】位相整合条件を結晶に付与する圧力及び/又は温度により調整することを説明するイメージ図である。
【図8】代表的なレーザーと発振波長の関係を示す図である。
【図9】長さLの非線形光学結晶中に角周波数ωの基本波が入射し、非線形光学効果により角周波数2ωの第二高調波が発生する様子を表す図である。
【図10】負の一軸性結晶の場合の異常波に対する屈折率楕円と、これと同周波数における正常波の屈折率円を表すとともに、c軸と角度θをなす波動ベクトルkの方向と異常波のポィンティングベクトルs(エネルギーの流れを表す)の方向を示す図である。
【図11】異常波の屈折率楕円と正常波の屈折率円を表すであり、楕円と円の交点が角度位相整合における角度位相整合条件を満足する位相整合角θmを与える図である。
【図12】位相整合におけるウォークオフを表す図である。
【図13】特許文献1の発明に係る波長変換装置の概略図である。
【図14】特許文献1の発明に係る波長変換装置を構成するBBO結晶片の配置を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明に係る波長変換装置の実施形態について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
【0044】
また、説明を簡単にするため、入射波を照射する非線形光学結晶は負の一軸性非線形光学結晶とし、本装置による波長変換の例として第二高調波発生を用いることとする。
【0045】
図2を参照して、本発明に係る波長変換装置1は、波動ベクトルKo及びポィンティングベクトルSoが入射波の進行方向に向く常光線と、波動ベクトルKeは入射波ベクトルkの方向に向くが、ポィンティングベクトルSe=sが当該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する負の一軸性非線形光学結晶10A、10Bを、2つの該一軸性非線形光学結晶10A、10Bのc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、上記常光線と上記異常光線とが位相整合条件を満たすように前記c軸に対する波動ベクトルKo=Ke/2=kの方向および光の入射角を決定する。
【0046】
さらに、本発明の波長変換装置1は、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面を、常光線と異常光線の波動ベクトルの方向である波動ベクトルkの方向に平行とし、波動ベクトルkを軸として、一方の一軸性非線形光学結晶10A(10B)の結晶方位を180度反転させて他方の一軸性非線形光学結晶10B(10A)を配置するようにし、かつ、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの上記異常光線のポィンティングベクトルsが、当該2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように、上記2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bが接合された波長変換装置1である。
【0047】
上記波長変換装置1では、波動ベクトルKo=Kp/2=k、すなわち、入射波と常光波の波動ベクトルが等しく、異常光(2倍波)の波動ベクトルが正常波(入射波)の波動ベクトルの1/2となっている。したがって、上記のように、入射波の波動ベクトルをk1、第二高調波発生の波動ベクトルをk2とすると、|Δk|=|k2―2k1|=0が成立し、波長変換装置1は、上記位相整合条件を満たすこととなる。
【0048】
上記式(4)のように、この位相整合条件は、ne2ω(θm)=noω(θm)(=noω)と等価であり、図11において実線の円noω(θ)と実線の楕円ne2ω(θ)のθ=θmでの交点に対応している。すなわち、c軸から角度θmとなる方向に入射波の波動ベクトルが向くとき、Ko=Ke/2=kの条件が満たされる。
【0049】
ところが、一般に、一軸性非線形光学結晶においては、常光線のポィンティングベクトルSo(=E×H)の方向は常光線の波動ベクトルKo=kの方向と一致するが、異常光線のポィンティングベクトルSe=sの方向は異常光線の波動ベクトルKe=kの方向と一致しない。したがって、非線形光学結晶においては、図12のように常光線と異常光線のエネルギーの流れは分離して相互作用が小さくなり、非線形波(本実施例では第二高調波)の取り出し効率は低くなる。
【0050】
そこで、波動ベクトルkを軸として非線形光学結晶を180度反転すると、図11で示される異常波である第二高調波の屈折率楕円ne2ω(θ)は図1のように軸方位が2θmだけ傾いたものになる。反転した非線形光学結晶中でエネルギーの流れる方向、即ちポィンティングベクトルs’の方向は、位相整合方向(波動ベクトルkの方向)に対して、ポィンティングベクトルsと対称の方向となる。
【0051】
上記2つの一軸性非線形光学結晶のポィンティングベクトルs、s’が、2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように接合するには、図3のように、波動ベクトルkと平行で、かつ常光線の偏光方向を含む面を接合面として、上記2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの結晶方位を揃えればよい。
【0052】
上記のように2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bを接合することにより、図4に表すように、異常波(本実施形態において2倍波、;SHG光)は接合面の方向に集中するようになり、ウォークオフの現象が実質抑制され、ウォークオフによる波長変換効率の低下を効率よく防止することができる。
【0053】
しかし、上記本発明に係る波長変換装置1は、異常光線のポィンティングベクトルsが、該2つの一軸性非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に向かうように、c軸の方向が調節されて接合されているが、形状誤差や寸法誤差等により位相整合の効率等が低下する場合がある。このようにして生じる波長変換効率の低下を防止するために、本発明の波長変換装置1は、以下に説明する角度調整手段、電界調整手段、圧力調整手段又は温度調整手段等により、あるいはこれらの調整手段の組み合わせにより、位相整合条件がより満足されるように異常波の進行方向等を調整することができる。
【0054】
図5のように、本発明に係る波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bの各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有し得る。非線形光学結晶10Aと非線形光学結晶10Bのなす角度を微調整することにより、より正確に位相整合条件を満足させることができる。
【0055】
このような角度調整機能を持たせる場合は、2つの非線形光学結晶10A、10Bの間には間隙が生じるが、非線形光学結晶と略等しい油や溶液で間隙を満たし、間隙による効率の低下が起こらないようにする。
【0056】
また、本発明の波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bに、例えば一様に作用する電界を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有してもよい。図6に示すように、非線形光学結晶10A、10Bを電極20A、20Bで挟持し、電源22により非線形光学結晶10A、10Bに一様な電界を付与し、常光線と異常光線の屈折率を調整することにより、より正確に位相整合条件を満足させることができる。
【0057】
さらに、図7に示すように、本発明の波長変換装置1は、上記接合された2つの非線形光学結晶10A、10Bに例えば一様に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有してもよい。非線形光学結晶10A、10Bを函体30で覆い、加減圧装置や加熱冷却装置等32により非線形光学結晶10A、10Bに作用を加え、位相整合条件を調整することができる。
【0058】
以上に説明した波長変換装置1により、これを構成する2つの非線形光学結晶10A、10Bに入射波を照射することにより、入射波に対して波長(周波数)が変換された変換波長波を得ることができる。上記実施形態では、この非線形光学現象として第二高調波発生を取り上げ、角周波数ωの光子2つから、角周波数2ωの、波長が入射波の半分となったレーザー光を得る波長変換装置1について説明した。
【0059】
このような波長変換装置1に入射波を照射して射出光の波長を変換する、本発明に係る波長変換方法は、波長変換装置1および波長変換装置1から射出される射出光に垂直に設置されたフィルター12を準備するステップと、波長変換装置1の上記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、2つの非線形光学結晶10A、10B中に発生する異常光線のポィンティングベクトルを、非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に集中させるステップと、上記入射波に対して波長変換されたレーザー光をフィルター12を通して取り出すステップと、を含む(図2、図4参照)。
【0060】
入射波を、波長変換装置1を構成する非線形光学結晶10A、10Bの上記波動ベクトルの方向に照射すると、上述したように、常光線は波動ベクトル及びポィンティングベクトルが共に入射波の方向(波動ベクトルの方向)に向くが、異常光線は波動ベクトルが入射波の方向に向くのに対しポィンティングベクトルは常光線と異なる方向に向く。非線形光学結晶10A、10Bは、異常光線のポィンティングベクトルが、非線形光学結晶10A、10Bの接合面方向に集中するように接合されるため、結晶の長さLにわたってウォークオフは抑制され、高パワーの変換波長波が非線形光学結晶10A、10Bの接合面末端から得ることができる。したがって、変換波長波のみを透過させるフィルター12を通すことにより、高効率に波長の変換されたレーザー光を取り出すことができる。
【0061】
以上、本発明の波長変換装置について、第二高調波発生(SHG)を例として説明したが、本発明は第二高調波発生に限定されるものではなく、入射レーザーを更に異なる波長のレーザーに変換することも可能である。また、本発明に用いる非線形光学結晶は、一軸性に限定されず、二軸性の非線形光学結晶であってもよい。
【0062】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る波長変換装置は、非線形光学効果によって入射レーザー光の波長を所定の波長に変換したレーザー光を取り出すことができる。所望の波長のレーザー光を得ることにより、種々の産業に応用・利用することが出来る。
【符号の説明】
【0064】
1:波長変換装置
10A、10B:非線形光学結晶
12:フィルター
20A、20B:電極
22:電源
30:函体
32:加減圧装置、加熱冷却装置等
112:BBO結晶
112A〜112J:結晶片
116A〜116J:結晶軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向に向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルは該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を、2つの該非線形光学結晶のc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、
前記常光線と前記異常光線とが接合面に平行に入射したとき、非線形光学効果による波長変換の位相整合条件を満たすように前記接合面に対する前記c軸の方向を決定し、
前記2つの非線形光学結晶の接合面を前記常光線と異常光線との前記波動ベクトルの方向と平行とし、
前記波動ベクトルを軸として、一方の前記非線形光学結晶の結晶方位を180度反転させて他方の前記非線形光学結晶を配置し、
かつ、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルが、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に向かうように、
前記2つの非線形光学結晶が接合された波長変換装置。
【請求項2】
前記接合された2つの非線形光学結晶の各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有する、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記接合された2つの非線形光学結晶に作用する電界を調整することにより、位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有する、請求項1または2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記接合された2つの非線形光学結晶に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより、位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の波長変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の波長変換装置および該波長変換装置から射出される射出光に垂直に設置されたフィルターを準備するステップと、
前記波長変換装置の前記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、
前記2つの非線形光学結晶中に発生する前記異常光線のポィンティングベクトルを、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に集中させるステップと、
前記入射波に対して波長変換されたレーザー光を、前記フィルターを通して取り出すステップと、を含む、波長変換方法。
【請求項1】
波動ベクトル及びポィンティングベクトルが入射波の方向に向く常光線と、波動ベクトルは入射波の方向に向くが、ポィンティングベクトルは該常光線と異なる方向に向く異常光線とに分離する非線形光学結晶を、2つの該非線形光学結晶のc軸(光学軸)が接合面を対称面として互いに対称になるように接合する波長変換装置であって、
前記常光線と前記異常光線とが接合面に平行に入射したとき、非線形光学効果による波長変換の位相整合条件を満たすように前記接合面に対する前記c軸の方向を決定し、
前記2つの非線形光学結晶の接合面を前記常光線と異常光線との前記波動ベクトルの方向と平行とし、
前記波動ベクトルを軸として、一方の前記非線形光学結晶の結晶方位を180度反転させて他方の前記非線形光学結晶を配置し、
かつ、前記2つの非線形光学結晶の前記異常光線のポィンティングベクトルが、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に向かうように、
前記2つの非線形光学結晶が接合された波長変換装置。
【請求項2】
前記接合された2つの非線形光学結晶の各々を、独立にc軸の向きを調整することにより位相整合条件を満たすように調整する角度調整手段を有する、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記接合された2つの非線形光学結晶に作用する電界を調整することにより、位相整合条件を満たすように調整する電界調整手段を有する、請求項1または2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記接合された2つの非線形光学結晶に作用する圧力及び/又は温度を調整することにより、位相整合条件を満たすように調整する圧力調整手段及び/又は温度調整手段を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の波長変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の波長変換装置および該波長変換装置から射出される射出光に垂直に設置されたフィルターを準備するステップと、
前記波長変換装置の前記波動ベクトルの方向に入射波を照射するステップと、
前記2つの非線形光学結晶中に発生する前記異常光線のポィンティングベクトルを、該2つの非線形光学結晶の接合面方向に集中させるステップと、
前記入射波に対して波長変換されたレーザー光を、前記フィルターを通して取り出すステップと、を含む、波長変換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−271633(P2010−271633A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125271(P2009−125271)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(504299106)株式会社先端赤外 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(504299106)株式会社先端赤外 (3)
【Fターム(参考)】
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