説明

波長変換部材およびそれを用いた太陽光発電モジュール

【課題】光電変換効率が高く、耐候性も高い太陽電池用波長変換部材及び、これを用いた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ガラス繊維中にEuが賦活されたYを含む酸化物等の蛍光発光材料を含有するガラス繊維布からなることを特徴とする波長変換部材の下部と側面部に太陽光発電部材を有する太陽電池モジュールとする。蛍光発光材料が酸素や水分等により劣化して経時で発光効率が低下してしないように、蛍光発光材料の劣化を防止する手段として蛍光発光材料を含有するガラス繊維の表面に被覆層を有し、該被覆層が蛍光発光材料を含有しないガラスを主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換効率が高く、耐候性も高い波長変換部材及び、これを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽光発電モジュールとしては、結晶シリコン太陽電池・アモルファスシリコン太陽電池等のシリコン系太陽電池、GaAs・CdS/CdTeやCIS、CIGSなどの化合物半導体系の太陽電池、色素増感太陽電池・有機薄膜太陽電池等の有機太陽電池等、様々なタイプの太陽光発電モジュールが用いられているが、紫外線領域の光はほとんど発電に寄与していないことが多い。そこで紫外線領域の光を蛍光発光材料で発電に寄与できる波長域の光に変換し、太陽光発電モジュールの発電効率をあげることが多数提案されている。
【0003】
しかし、ここで用いられる蛍光発光材料は、酸素や水分等により劣化しやすく、経時で発光効率が低下してしまうことが知られている。そこでこの蛍光発光材料の劣化を防止する手段として、例えば、蛍光物質粒子をガラスで包埋して保護する方法(特許文献1)や、蛍光物質粒子の周囲をシリカガラス等の被覆層で保護する方法(特許文献2)が用いられている。これらの方法で、酸素バリア性や水蒸気バリア性は得られるが、このような形で蛍光性物質を含有させた波長変換部材は、前者では、発光した光がガラス層中に閉じ込められて太陽光発電部材に充分光が到達せず、光電変換効率向上効果が小さくなってしまう。また、後者では、蛍光性物質が粒子形状で等方的に発光するため、変換された光の一部しか太陽光発電部材に達しないために光電変換効率の向上は不十分であった。さらに、太陽光の短波長領域を有効に利用するためには、波長変換部材は太陽電池の最表面に設置することが望ましいが、該蛍光物質は有機材料中に分散されているため、この有機材料が短波長の波長を含む太陽光に長期間さらされることで劣化し、波長変換部材が破壊されることによっても光電変換効率が低下していくので、耐候性の向上が望まれている。
【0004】
従って、光電変換効率が高く、耐候性も高い太陽電池用波長変換部材が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−41796号公報
【特許文献2】特開2010−34502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の目的は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光電変換効率が高く、耐候性も高い太陽電池用波長変換部材及び、これを用いた太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
1、ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布を含有することを特徴とする波長変換部材。
2、前記蛍光発光材料が少なくともEuが賦活されたYを含む酸化物であることを特徴とする前記1に記載の波長変換部材。
3、前記ガラス繊維の平均繊維直径が500nm以下であることを特徴とする前記1〜2のいずれか一項に記載の波長変換部材。
4、前記ガラス繊維の表面に被覆層を有し、該被覆層が蛍光発光材料を含有しないガラスを主成分とすることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の波長変換部材。
5、波長変換部材の下部と側面部に太陽光発電部材を有する前記1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、光電変換効率が高く、耐候性も高い太陽電池用波長変換部材及び、これを用いた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の波長変換部材を用いた太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の波長変換部材を用いた太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布を含有する波長変換部材であって、前記蛍光発光材料がガラス繊維中に存在することにより、耐湿性、耐酸素透過性が高く、さらに、ガラス繊維布自身がフイルム状の部材を形成するための構造材としての役割も有しており、必ずしも有機材料を必要としないため耐候性に優れる。さらに前記波長変換部材の下部と側面部に太陽光発電部材を配置させることで、より発電効率の高い太陽光発電モジュールが得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0012】
以下、本発明の各構成要件について詳細に説明する。
【0013】
《波長変換部材》
本発明における波長変換部材は、ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布を必須構成として有する。さらに透明樹脂を含有させ、ガラス繊維布による光散乱を減少して透明性を向上することでさらに光電変換効率を向上させるのに繋げても良く、また、フイルム部材としての強度をさらに向上させるために基材を設けてもよい。
【0014】
ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布は、蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体を従来の方法で防糸して製織することにより得ることができるし、エレクトロスピニング法で布状にキャストして形成することもできる。
【0015】
本発明における蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体は、溶融したガラス中に蛍光発光材料を含有させたものや、ゾルゲル法で形成されるシリカ系材料中に蛍光発光材料を含有させたもの等が挙げられるが、ゾルゲル法で形成されるシリカ系材料中に蛍光発光材料を含有させたものがより低温で処理でき、より多種の蛍光発光材料を使用できる点で好ましい。
【0016】
ゾルゲル法で形成されるシリカ系材料中に蛍光発光材料を含有させたガラス繊維は、蛍光発光材料を、溶媒中、シリコンアルコキシドと処理してガラス繊維前駆体を調製した後に、該ガラス繊維前駆体を防糸して得ることもできるし、エレクトロスピニング法により出射後に50℃から350℃に加熱処理することにより得ることもできる。
【0017】
ゾルゲル法に用いられるシリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0018】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0019】
モノアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
ゾルゲル法に用いられる溶媒としては、ゾルゲル法に用いられるシリコンアルコキシド成分を溶解可能であることが必要であり、水と有機溶媒の混合溶液が用いられる。ゾルゲル法に用いられるシリコンアルコキシド成分を溶解可能である有機溶媒としては、非プロトン性溶媒(2,5−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、トルエン等)、プロトン性溶媒(メタノール及びエタノール等のアルコール類)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0022】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0023】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒等が挙げられ、保管安定性の観点から、アルコール系溶媒が好ましい。これらの中でもエタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールプロピルエーテル等が好ましい。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
ガラス繊維の平均繊維直径は500nm以下が好ましい。これによりガラス繊維布の光散乱が減少し、光電変換効率が向上するし、透明樹脂を必ずしも用いなくてよくなるため耐候性も高まる。なお強度の点からは平均繊維直径は50nm以上が好ましい。繊維直径は蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体の射出条件を制御することで行うことができるが、より細い繊維を得ることができる点でエレクトロスピニング法を用いることが好ましい。
【0025】
なお、本発明における平均繊維径とは、任意に選択した10本の繊維について、それぞれ任意の1個所の繊維径を電子顕微鏡で観察し、その平均値をいう。本発明における平均繊維径からの各繊維の直径のバラつきは±20%であることが好ましい。例えば平均繊維径が100nmの場合、80〜120nmの直径を有する繊維から構成されていることを言い、繊維径のバラつきは±20%の範囲であることが好ましく、より好ましくは±10%の範囲である。本発明のガラス繊維布は主に繊維径のバラつきが±20%の範囲繊維から構成されていれば良く、要求される性能を損なわない範囲であれば繊維径のバラつきが±20%の範囲以外の繊維が含まれていても問題は無い。
【0026】
平均繊維径を制御する手段としては、例えば、ゾルゲル法で形成されるシリカ系材料中に蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体をエレクトロスピニング法で布状にキャストして形成する場合、前駆体の固形分濃度、印加電圧、紡糸距離、環境温湿度が考えられる。前駆体固形分濃度は、飽和溶解量に至るまで任意に設定することができ、繊維を構成するシリコンアルコキシドの溶媒に対する溶解性に合わせて任意に設定することができるが溶液の取扱い性、紡糸性を考えた場合10〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
印加電圧、ターゲット距離は繊維を構成する前駆体の紡糸性に併せて任意に選択することができるが、好ましくは2〜5kV/cmの範囲となる組み合わせが好ましい。紡糸時の環境温度はシリコンアルコキシドを溶解させるために用いる溶媒の沸点以下であれば任意に選択することができる。環境湿度は目的とする繊維の平均繊維径にあわせて任意に選択することができるが、相対湿度80%以下であることが好ましい。
【0028】
また本発明では、上記ガラス繊維布を構成するガラス繊維表面にさらに蛍光発光材料を含有しないガラスを主成分とする被覆層を設けることでより好ましい光電変換効率と耐候性が得られる。光電変換効率が向上するメカニズムは定かではないが、後述するように太陽光発電部材を側面に配置することにより光電変換効率が向上したことから、蛍光発光材料からの発光をガラス繊維内に閉じ込める効果が高まり、繊維端から選択的に取り出せることで発光エネルギーを効率よく利用することができたのだと思われる。
【0029】
ここで、上記「主成分」とは、被覆層の構成成分のうち、90質量%以上のことを指し、好ましくは、95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0030】
耐候性に関しては、被覆層が保護層として機能したと考えられる。ガラス繊維に被覆層を設ける方法には、例えば、特開2007−197859号公報に記載のようなノズルの形状を工夫することにより行うことができる。
【0031】
波長変換材料の膜厚としては特に制限はないが、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜90μmであることがより好ましい。
【0032】
〔蛍光発光材料〕
本発明における蛍光発光材料は、太陽光発電モジュールの発電効率を高くできるように、感度特性に合わせて発光する材料であれば特に限定されず、例えば無機酸化物蛍光発光体、量子ドット蛍光発光体、有機蛍光発光色素、有機蛍光発光錯体等が挙げられ、これらを単独で使用してもよく、また、2種以上併用してもよい。特に、製造時の安定性や耐候性の点から無機酸化物蛍光発光体、量子ドット蛍光発光体、有機蛍光発光錯体であることが好ましい。
【0033】
〈無機酸化物蛍光発光体〉
本願発明において、無機酸化物蛍光微粒子とは、酸化物系の母結晶中に賦活剤として発光イオンを含有したものを表す。無機酸化物蛍光微粒子の材料としては、近紫外光を吸収して蛍光を発する材料であれば、特に限定はされないが、例えば、母結晶となる酸化物としては、Mg、K、Ca、Sr、Y、Ba、Zn、Ga、In、Al、La、Gd、V、B、P、Siの酸化物やこれらの複合酸化物をあげることができる。
【0034】
賦活剤としての発光イオンには、Mn、Ag、Ce、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Tm、Sm、Bi等が1種類以上用いられている無機酸化物蛍光微粒子をあげることができる。
【0035】
中でも、Eu、Tb、Dy、Ho、Sm、Mnのいずれか1種類以上が少なくとも用いられていることが好ましく、さらに、多くの太陽電池において感度の高い600nm前後に発光を有するEuが少なくとも用いられていることが最も好ましい。また、母結晶の結晶構造を崩さないように、母結晶中の元素が同族の発光イオンに置換されている無機蛍光体が好ましい。特にEuが賦活剤として用いられる場合、Y、Laを少なくとも1種類以上含有してなる母結晶であることが好ましく、合成の容易さ、耐候性の高さ、太陽電池の効率向上の高さから少なくともEuが賦活されたYを含む酸化物であることが最も好ましい。
【0036】
無機酸化物蛍光発光体の平均粒径としては、20nmから500nmが好ましく、20nmから100nmがより好ましい。
【0037】
無機酸化物蛍光発光体の平均粒径は、各無機酸化物蛍光発光体の直径の数平均値であり、この値は電子顕微鏡観察により求めることができる。すなわち無機酸化物蛍光発光体の電子顕微鏡観察から、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる無機酸化物蛍光発光体をランダムに200個以上観察し、各無機酸化物蛍光発光体の粒径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。ここで、本発明に係る平均粒径とは、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる無機酸化物蛍光発光体の外縁を2本の平行線で挟んだ距離の内最小の距離を指す。なお、平均粒径を測定する際、明らかに無機酸化物蛍光発光体の側面などを表しているものは測定しない。
【0038】
以下に本発明に使用される無機酸化物蛍光発光体の具体的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
[青色発光蛍光体化合物]
SrAl1425:Eu2+
BaMgAl1017:Eu2+
CaCl:Eu2+
[緑色発光蛍光体化合物]
SiO:Ce3+,Tb3+
BaSiO:Eu2+
GdS:Tb
LaS:Tb
Al12:Ce3+
SrGe12:Ce3+
YVO:Bi3+
[赤色発光蛍光体化合物]
S:Eu3+
S:Eu3+,Bi3+
LaS:Eu3+
YVO:Eu3+
YVO:Eu3+,Bi3+
:Eu3+
:Eu3+、Bi3+
La:Eu3+
SiO:Eu3+
BaMgSi:Ce、Mn
BaSrMgSi:Ce,Mn。
【0039】
本願発明における無機酸化物蛍光発光体粒子の形成は、従来公知の固相法、液相法、噴霧熱分解法、水熱合成法等、種々の製法を適用することができるが、例えば、特開2010−90346号公報の記載に従って形成することができる。
【0040】
(有機蛍光発光色素)
本願発明における有機蛍光発光色素は、特に限定されないが、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体(フェニルアントラセン誘導体)、ペンタセン誘導体、アゾール誘導体(オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾアザトリアゾール誘導体)、チオフェン誘導体(オリゴチオフェン誘導体)、カルバゾール誘導体、ジエン系(シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体)、スチリル誘導体、(ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、スチルベン誘導体)、シロール誘導体、スピロ化合物、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾール誘導体(ピラゾリン誘導体)、ピリジン環化合物、ピロール誘導体(ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体)、フルオレン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピレン誘導体(フェナントレン誘導体)、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、フェニレン化合物、ローダミン類、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、キナゾリノン誘導体、キノフタロン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、シアニン系化合物を1種類以上含む有機蛍光発光色素が挙げられる。
【0041】
具体的な例としては、Lumogen F シリーズ(製造元:BASF)、7−Diethylamino−4a,8a−dihydro−chromen−2−one、7−Diethylamino−4−trifluoromethyl−chromen−2−one、7−Diethylamino−3−phenyl−chromen−2−one、1,4−Bis−[2−(4−fluoro−phenyl)−vinyl]−2,5−bis−octyloxy−benzene、[4−[2−(4−Fluoro−phenyl)−vinyl]−phenyl]−diphenyl−amine、Diphenyl−(4−styryl−phenyl)−amine、5−tert−Butyl−2−(2−(4−(2−(5−tert−butylbenzoxazol−2−yl)vinyl)phenyl)vinyl)benzoxazole(テクノケミカル株式会社)、新規有機蛍光色素シリーズ(製造元:ハリマ化成株式会社)、シンロイヒカラーシリーズ(販売元:シンロイヒ株式会社)、TINOPAL OB、TINOPAL OB−one(販売元:チバ・ジャパン株式会社)等が挙げられる。中でも特に、Lumogen F Violet570、Blue650やRed 305(製造元:BASF)は、紫外領域から可視領域の入り口にかけての広い励起帯を有し、量子収率が高く、励起光と放出光との重なりが少ないため特に好ましい。
【0042】
(有機蛍光発光錯体)
本願発明における有機蛍光発光錯体は、配位結合や水素結合によって、一種以上の発光中心に、配位子が配位して形成された分子性化合物を指す。特に限定はされないが、錯体の発光中心には、例えば、遷移金属元素、典型元素、非典型元素等が用いられる。配位子には、蛍光発光する構造体を用いても良い。これらの錯体は、発光中心を1分子以上含んでもよく、種類も一種類以上含んでも良い。典型元素ではBeが、非典型元素ではBが、遷移金属元素ではAl、Fe、Cu、Zn、Ru、Ir、Pt、Au、Re、Os等が含まれている錯体は、配位子を交換することで所望の発光特性を持たせることができ、比較的安価に入手することができるため好ましい。更に、遷移金属元素中の希土類であるGd、Yb、Y、Eu、Tb、Yb、Nd、Er、Sm、Dy、Ce等の何れかが含まれている錯体は、励起光と放出光との重なりが小さく、配位子に強く依存しない半値幅の狭い発光を持つため好ましい。特に、Eu錯体は量子収率も高くより好ましい。中でも特に、Eu(TTA)phen(販売元:東京化成工業株式会社)は、量子収率も高く、励起光と放出光と波長の差が非常に大きく重なりが無く、励起光の帯域が広いため好ましい。
【0043】
(量子ドット蛍光発光体)
本願発明における量子ドット蛍光発光体は、原子が数百個から数千個集まったナノスケールの塊で、3次元全ての方向から電子を閉じ込めた構造を有したものを指す。量子ドットは、粒径を変更することで任意の吸収・励起・放出光特性を付与することができ、且つ粒径が小さく入射光を散乱させないため好ましい。種類は特に限定されないが、例えば、Cd、Se、Te、Pb等の何れかの組み合わせからなるコア層と、Zn、S等からなるシェル層からなるコアシェル構造体や、Cd、Se、Te、Pb、Zn、S等の何れかの組み合わせからなる構造体が用いることができる。量子ドット蛍光発光体の例としては、CdSe/ZnSコアシェルエヴィドット、PbSコアエヴィドット(販売元:オーシャンフォトニクス株式会社)、Qdot ナノクリスタル(販売元:ライフテクノロジーズジャパン株式会社)等が挙げられる。
【0044】
波長変換材料中のガラス繊維に対する蛍光発光材料の比率は、蛍光発光材料の比率が高すぎると変換効率の低下することがあり、ガラス繊維前駆体100質量%に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、0.05〜30質量%であることがより好ましく、0.1〜15質量%であることが最も好ましい。
【0045】
〔透明樹脂〕
本願発明の波長変換材料に用いられる透明樹脂としては、波長変換材料に用いられる発光蛍光材料との親和性が良ければ特に限定されないが、反応性モノマーを熱あるいはエネルギー線で硬化させてなる硬化性樹脂が好ましい。反応性モノマーは1種類でも良いが、屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーを含むことが好ましい。屈折率の異なる反応性モノマーの比率を調整することで、前記ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布との屈折率差が調整でき、波長変換材料の透明性を高めることができる。反応性モノマーの具体的な例としては、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等のような(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいはビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物、環式脂肪族エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート化合物、縮合多環式エポキシ化合物、含ケイ素エポキシ化合物、含ホスフィンエポキシ化合物等のようなエポキシ基を有する化合物等が挙げられるが、重合基を2つ以上有すると耐熱性を向上させることができる。
【0046】
本願発明の波長変換材料に用いられる透明樹脂の光透過率は、80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0047】
本願発明の波長変換材料に用いられる透明樹脂のガラス転移温度は、使用環境、保存環境を考慮すると120℃以上であることが好ましい。
【0048】
硬化後に光透過率が80%以上で、ガラス転移温度が120℃以上となる好ましい反応性モノマーとしては、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートやジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物、環式脂肪族エポキシ化合物やトリグリシジルイソシアヌレート化合物などのエポキシ化合物を例示できる。これらの中でも透明性が高く、耐光性に優れ、さらに成形しやすいことから環式脂肪族エポキシ化合物(例えば、ダイセル化学工業製EHPE3150)、水添ビスフェノールA化合物(例えば東都化成社製ST3000、ST4000) が最も好ましい。
【0049】
エポキシ化合物の硬化剤としては、酸無水物系硬化剤またはジシアンジアミドを用いることが樹脂の透明性を高める上で望ましい。特に、ジシアンジアミドはエポキシ樹脂組成物の硬化度を制御し易く、成形の上でも望ましい硬化剤である。
【0050】
透明樹脂の配合量はガラス繊維布に対して1〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量% である。透明樹脂の配合量がこの範囲であれば耐候性の劣化が少なく、透明性向上の効果が認められる。
【0051】
波長変換材料は、2層以上の複数の層でも良く、その場合、各層に含有する蛍光発光材料は同一のものでも良いが、より効率よく発光領域を稼ぐには、異なる蛍光発光材料を含有していることがより好ましい。
【0052】
〔基材〕
本発明における波長変換部材には必須の構成材ではないが、フイルム部材としての強度をさらに向上させるために基材を設けてもよい。
【0053】
本願発明の波長変換部材に用いられる基材は透明基材である。透明基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はない。例えば、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムや薄膜ガラスを用いることが好ましい。
【0054】
透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等の二軸延伸ポリエステル系フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。
【0055】
本発明に用いられる透明基材には接着性を確保するために、易接着層を設けることができる。易接着層については従来公知の技術を使用できる。易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0056】
《太陽光発電モジュール》
本発明で使用可能な太陽電池の種類は特に制限されることはなく、結晶シリコン太陽電池・アモルファスシリコン太陽電池等のシリコン系太陽電池、GaAs・CdS/CdTeやCIS、CIGSなどの化合物半導体系の太陽電池、色素増感太陽電池・有機薄膜太陽電池等の有機太陽電池等、すべての太陽電池に適用することができる。太陽光発電部材は例えば以下のようにして作製することができる。
【0057】
CdS/CdTe太陽電池の作製例
透明ガラス基板の一方の面にCdS膜およびCdTe膜がこの順に形成されており、CdTe膜には集電体膜と正電極となるAgIn膜が形成されており、CdS膜には負電極となるAgIn膜が形成されている。
【0058】
CdS膜は、CdS粉とCdCl粉とを重量比で4:1のプロピレングリコールと水の混合溶液に、重量比で100:12:30の割合で分散してなるCdSペーストを透明ガラス基板に印刷し、乾燥を行った後、690℃の窒素ガス気流下で約60分加熱し焼結処理を行って作成した。
【0059】
CdTe膜は、CdとTeを水中で粉砕し、乾燥した粉とCdCl粉をエチレングリコールモノフェニルエーテルに、重量比で100:0.5:30の割合で分散してなるCdTeペーストを透明ガラス基板上に形成したCdS膜上に印刷し、乾燥を行った後、620℃の窒素ガス気流下で約20分加熱し焼結処理を行って作製した。
【0060】
本実施例では、CdS膜、CdTe膜、集電体膜およびAgIn膜で構成される基本セルを印刷パターニングでガラス基板に4個直列に接続したCdS/CdTe太陽電池を用いた。CdS膜の膜厚は8〜10μmであり、CdTe膜の膜厚は15〜20μmである。
【0061】
本発明では上記のようにして作製した太陽光発電部材の太陽光が当たる面上に、波長変換部材を配置するが(図1)、さらに図2に示すようにこの波長変換部材の側面側にも太陽光発電部材を配置させるのが、光電変換効率をより高められるためより好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0063】
〔試料1の作製〕
下記の配合量で蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体1を作製した。
【0064】
BaMgSi:Ce、Mn(蛍光発光材料) 1g
テトラエトキシシラン(TEOS) 10g
水 3g
エタノール 10g
アンモニア水(5%) 2g
上記前駆体をエレクトロスピニング装置により、繊維布形成後の平均繊維直径が600nmとなるような条件で、離型処理したアルミ支持体上に布状に射出した後に120℃1時間加熱処理し、支持体より剥離してガラス繊維布を得た。得られたガラス繊維布をγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで処理した後、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業社製TEPIC)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製リカシッドMH−700)147重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業社製TPP−PB)2重量部を110℃で溶融混合したエポキシ系樹脂組成物を含浸し、脱泡した。この樹脂を含浸したガラス繊維布をオーブン中で120℃*3時間加熱し、厚さ50μmの波長変換部材を得た。
前述のCdS/CdTe太陽電池の作製例にて作成した太陽電池の受光面となる透明ガラス基板の他方の面に、接着部材として透明粘着シート(日東電工社製、LUCIACS CS9621T)を用いて前記波長変換部材を貼り付けて太陽光発電モジュール試料1を作製した。
【0065】
〔試料2の作製〕
試料1記載のガラス繊維前駆体1を120℃で加熱しながら紡糸し、さらに120℃1時間加熱処理して繊維直径が1000nmのガラス繊維を得た。このガラス繊維を製織してガラス繊維布とした後、試料1記載のエポキシ系樹脂組成物を試料1と同様に含浸、脱泡、加熱処理して、厚さ50μmの波長変換部材を作製し、試料1と同様に太陽電池に貼りつけて太陽光発電モジュール試料2を作製した。
【0066】
〔試料3の作製〕
試料2で得たエポキシ系樹脂組成物を含有しないガラス繊維布をそのまま用いる以外は同様にして太陽光発電モジュール試料3を作製した。
【0067】
〔試料4の作製〕
試料1において、離型処理したアルミ支持体上のかわりにポリエチレンナフタレート支持体を用いて剥離せずにそのまま用いる以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料4を作製した。
【0068】
〔試料5の作製〕
試料1の蛍光発光材料を、Eu(TTA)phen(販売元:東京化成工業株式会社)に変更した以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料5を作製した。
【0069】
〔試料6の作製〕
試料1の蛍光発光材料を、CdSe/ZnSコアシェルエヴィドット(販売元:オーシャンフォトニクス株式会社)に変更した以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料6を作製した。
【0070】
〔試料7の作製〕
試料1の蛍光発光材料を、Lumogen F Red 305(製造元:BASF)に変更した以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料7を作製した。
【0071】
〔試料8の作製〕
試料1の蛍光発光材料を、YVO:Eu3+に変更した以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料8を作製した。
【0072】
〔試料9の作製〕
試料8のガラス繊維の平均繊維直径を300nmに変更し、エポキシ系樹脂組成物による含浸を行わない以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料9を作製した。
【0073】
〔試料10の作製〕
下記の配合量で蛍光発光材料を含有させたガラス繊維前駆体2を作製した。
【0074】
YVO:Eu3+(蛍光発光材料) 1g
テトラエトキシシラン(TEOS) 10g
水 3g
エタノール 10g
アンモニア水(5%) 2g
下記の配合量で蛍光発光材料を含有しないガラス繊維前駆体3を作製した。
【0075】
テトラエトキシシラン(TEOS) 10g
水 3g
エタノール 10g
アンモニア水(5%) 2g
上記前駆体2、及び前駆体3をエレクトロスピニング装置により、重量比が1:0.44、前駆体2がコア側、前駆体3がシェル側になり、さらに繊維布形成後の平均繊維直径が360nmなる条件で、離型処理したアルミ支持体上に布状に射出した後に120℃1時間加熱処理し、支持体より剥離してガラス繊維布を得た。このガラス繊維布を用いる以外は試料9と同様にして、太陽光発電モジュール試料10を作製した。
【0076】
〔試料11の作製〕
波長変換部材の側面にも太陽光発電部材を配置させる以外は試料10と同様にして太陽光発電モジュール試料11を作製した。
【0077】
〔試料12の作製〕
試料1でガラス繊維前駆体に蛍光発光材料を含有させなかった以外は同様にして、太陽光発電モジュール試料12を作製した。
【0078】
〔試料13の作製〕
試料1記載の110℃で溶融混合したエポキシ系樹脂組成物中に、BaMgSi:Ce、Mn(蛍光発光材料)を単位面積当たりの添加量が試料1と同様になる量を分散し、離型処理したアルミ支持体上に塗布後オーブン中で120℃、3時間加熱し、支持体から剥離して厚さ50μmの波長変換部材を得た以外は試料1と同様にして太陽光発電モジュール試料13を作製した。
【0079】
〔試料14の作製〕
特開2008−41796実施例1で蛍光体をBaMgSi:Ce、Mn 10gとし、ガラス材料を90gに変更した以外は同様にして得られた波長変換部材を用いて、試料1のように太陽光発電部材に貼りつけ太陽光発電モジュール試料14を作製した。
【0080】
〔試料15の作製〕
特開2010−34502実施例の被覆蛍光物質粒子Aの作製で蛍光物質粒子をBaMgSi:Ce、Mnに変更する以外は同様にして被覆蛍光物質粒子を作製した。得られた被覆蛍光物質粒子24重量部をγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで処理した後、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業社製TEPIC)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製リカシッドMH−700)147重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業社製TPP −PB)2重量部を110℃で溶融混合したエポキシ系樹脂組成物と混合し、オーブン中で120℃3時間加熱し厚さ50μmの波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて、試料1のように太陽光発電部材に貼りつけ太陽光発電モジュール試料15を作製した。
【0081】
《太陽光発電モジュールの評価》
上記で作成した各太陽光発電モジュールについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0082】
[評価方法]
(太陽発電効率)
上記方法で作製した太陽光発電モジュールについて、ソーラーシミュレーターにより、AM1.5Gフィルタ、100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、フィルファクター(FF)をそれぞれ測定し、〔式1〕に従ってエネルギー変換効率η(%)を求め、太陽光発電モジュール試料14のエネルギー変換効率に対する比率を求め表1に示した。
【0083】
【数1】

【0084】
(耐候性評価)
メタルハライドランプ方式の耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を使用し、試料面放射強度:2.16MJ/m以下、ブラックパネル温度63℃、相対湿度:50%、照射時間500時間の条件で耐候性試験を行い、その後、温度85℃、湿度85%RH環境で3000時間保存した加速試験後の発電効率を初期の発電効率に対する残存比率を求め、下記の基準で評価した。
【0085】
5:95%以上
4:90%以上、95%未満
3:80%以上、90%未満
2:70%以上、80%未満
1:50%以上、70%未満
0:50%未満
評価結果を表1に示した。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の結果からわかるように、本願発明の太陽光発電モジュールは発電効率も高く、耐候性も高い太陽光発電モジュールを作成出来ることがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 太陽電池モジュール
2 波長変換部材
3 接着部材
4 太陽光発電部材
5 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維中に蛍光発光材料を含有するガラス繊維布を含有することを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記蛍光発光材料が少なくともEuが賦活されたYを含む酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記ガラス繊維の平均繊維直径が500nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記ガラス繊維の表面に被覆層を有し、該被覆層が蛍光発光材料を含有しないガラスを主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
波長変換部材の下部と側面部に太陽光発電部材を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79179(P2013−79179A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221225(P2011−221225)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】