説明

波長変換部材および光起電装置

【課題】 本発明の目的は、広範な励起発光波長帯域を有すると共に、耐久性に優れた波長変換部材を提供することにある。また、本発明の目的は、高性能で信頼性に優れた光起電装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明の波長変換部材は、光が入射する方向に対して、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される第1波長変換層と、赤外線をより短波長側の光に変換する波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される第2波長変換層とを、互いに隣接してこの順に積層してなることを特徴とする。また、本発明の光起電装置は、上記に記載の波長変換部材を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材および光起電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光起電装置は、太陽光を光電変換して電気エネルギーを取り出す太陽電池として用いられる。この種の光起電装置としては、現在、光を起電力に変換する光起電層に単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコンやアモルファスシリコン、CdTe、CIGSを用いたものが主流である。最近では、色素増感型太陽電池などの有機太陽電池なども開発されており、有機系材料を含む様々な光起電層が用いられるようになってきた。
【0003】
これらの光起電装置の場合、分光感度が略可視光領域に限られているものが多く、太陽光線のうち紫外領域や赤外領域などの可視光以外の領域を効率よく電気エネルギーに変換することができない。また、結晶シリコン太陽電池には、赤外線や紫外光の吸収による温度上昇に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。さらに、有機系材料を含む光起電層を用いた有機太陽電池においては、紫外線による有機系材料の劣化に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。
【0004】
紫外領域を利用する方法として、紫外光をカットせず太陽電池セルに達するようにする方法があるが、紫外領域での太陽電池セルの分光感度が低いため、効果は少ない(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−235610号公報
【特許文献2】特開2008−195674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、広範な励起発光波長帯域を有すると共に、耐久性に優れた波長変換部材を提供することにある。
また、本発明の目的は、高性能で信頼性に優れた光起電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(20)に記載の本発明により達成される。
(1)光が入射する方向に対して、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される第1波長変換層と、赤外線をより短波長側の光に変換する第2波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される第2波長変換層とを、互いに隣接してこの順に積層してなることを特徴とする波長変換部材。
(2)前記第1波長変換層は、200nmを超えて430nm以下の光を吸収し、430nmを超える光を発光するものである上記(1)に記載の波長変換部材。
(3)前記第2波長変換層は、850nmを超えて2500nm以下の光を吸収し、430nmを超えて850nm以下の光を発光するものである上記(1)または(2)に記載の波長変換部材。
(4)前記第1波長変換物質の含有量は、前記第1組成物全体の10〜70体積%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の波長変換部材。
(5)前記第2波長変換物質の含有量は、前記第2組成物全体の10〜70体積%である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の波長変換部材。
(6)前記第1波長変換物質が、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の波長変換部材。
(7)前記第1波長変換物質の一次粒子の平均粒径は、1〜100nmである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の波長変換部材。
(8)前記第2波長変換物質が、希土類元素あるいはアルカリ金属元素を含む半導体粒子である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の波長変換部材。
(9)前記希土類元素あるいはアルカリ金属元素が、ユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)からなる群より選択される1以上の元素である上記(8)に記載の波長変換部材。
(10)前記第2波長変換物質の半導体粒子が、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上である上記(8)または(9)に記載の波長変換部材。
(11)前記第2波長変換物質の希土類元素の含有量は、前記第2波長変換物質全体0.01〜30重量%である上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の波長変換部材。
(12)前記第2波長変換物質のアルカリ金属元素の含有量は、前記第2波長変換物質の希土類元素の1〜20重量%である上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の波長変換部材。
(13)前記第2波長変換物質の一次粒子の平均粒径は、1〜100nmである上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の波長変換部材。
(14)前記第1波長変換層の厚さ(t1)と、前記第2波長変換層の厚さ(t2)との比(t1/t2)が、0.01〜30である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の波長変換部材。
(15)上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の波長変換部材を有することを特徴とする光起電装置。
(16)前記波長変換部材は、その面内に凹凸構造を有するものである上記(15)に記載の光起電装置。
(17)前記凹凸構造の高低差が、300nm〜100μmである上記(16)に記載の光起電装置。
(18)前記凹凸構造の面内周期が、300nm〜50μmである上記(16)または(17)に記載の光起電装置。
(19)前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する上記(16)ないし(18)のいずれかに記載の光起電装置。
(20)前記第1波長変換層と、前記第2波長変換層との間で、前記凹凸構造の形状が異なっている上記(16)ないし(19)のいずれかに記載の光起電装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広範な励起発光波長帯域を有すると共に、耐久性に優れた波長変換部材を提供することができる。
また、本発明によれば、高性能で信頼性に優れた光起電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の波長変換部材を説明するための断面図である。
【図2】本発明の光起電装置を説明するための断面図である。
【図3】光起電装置の他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図4】光起電装置の他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図5】光起電装置の他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図6】光起電装置の他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図7】光起電装置の他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の波長変換部材および光起電装置について説明する。
本発明の波長変換部材は、光が入射する方向に対して、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される第1波長変換層と、赤外線をより短波長側の光に変換する波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される第2波長変換層とを、互いに隣接してこの順に積層してなることを特徴とする。
また、本発明の光起電装置は、上記に記載の波長変換部材を有することを特徴とする。
【0011】
(波長変換部材)
まず、波長変換部材について説明する。
図1に、本発明の波長変換部材の好適な実施形態の断面図を示す。
図1に示すように、波長変換部材100は、光(太陽光)の入射光10側を第1波長変換層1として、第1波長変換層1と、第2波長変換層2とを、互いに隣接してこの順に積層していることを特徴とする。これにより、各層が異なる吸収波長を有することができ、それによって励起発光波長帯を広くすることができる。
【0012】
ここで、第1波長変換層1は、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される。これにより、主として紫外線および紫色領域(具体的には430nm以下の波長)の光を吸収し、430nmを超える波長の光を発光することができる。さらに、それによって、波長変換部材等に含まれる有機部材が紫外線等で劣化するのを抑制することもできる。
【0013】
前記第1波長変換物質としては、例えば無機系の半導体粒子、発光性金属クラスター、発光性金属錯体、発光性有機物等が挙げられる。これらの中でも無機系の半導体粒子が好ましい。これにより、第1波長変換層1の耐久性および発光特性の安定性を向上することができる。
前記無機系の半導体粒子としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、窒化ガリウム(GaN)、リン化インジウム(InP)等が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上が好ましく、特に酸化亜鉛が好ましい。酸化亜鉛は、資源枯渇のおそれが少なく、かつ毒性が低いため、製造コストおよび後述する複合粒子を製造するための作業容易性の観点から有用である。
【0014】
前記第1波長変換物質の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜10nmが好ましく、特に1〜5nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、量子サイズ効果等により、吸収・発光特性が向上する。前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。
【0015】
上述したような第1波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、特に限定されないが、希土類元素を有していても良い(ドープしていも良い)。これにより、励起発光波長帯をより好ましい波長領域に調節することができる。
前記希土類元素としては、例えば原子番号57から71までのランタノイド元素と、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる17元素を、1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)の中から選ばれる1種以上が好ましい。これらの希土類元素は、特に優れた波長変換機能を有するものであるため、第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)中に含まれる希土類元素として好適である。
【0016】
このように、第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)が希土類元素を有することにより、発光波長等の発光特性の制御が可能となる。たとえば、太陽電池に用いる場合では、太陽電池の光電変換に使用されない紫外線を、太陽電池の光電変換に使用される光の波長に変換することにより、太陽電池の光電変換効率を向上することができる。
【0017】
また、前記第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)は、2種類以上の希土類元素を含んでいるのが好ましい。第1波長変換物質中に2種類以上の希土類元素が含まれていると、それぞれでエネルギーの異なる励起状態を有しているため、相互にエネルギーの授受が行われることとなる。その結果、半導体粒子は、より多くの光量を吸収することができるようになり、発光特性が向上する。
【0018】
また、前記第1波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、さらにアルカリ金属元素を含むものであっても良い。このような第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)では、発光特性の向上を図ることができる。
【0019】
前記アルカリ金属元素は、それ単独で第1波長変換物質に作用させるよりも、希土類元素とともに相乗的に作用させることが好ましい。すなわち、前記第1波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)に希土類元素とアルカリ金属元素とを添加することにより、本発明で用いる第1波長変換物質は、これらの元素を単独で含む場合に比べて、相対的に優れた波長変換機能と、高い発光特性(発光効率)とを併せ持つものとなる。これは、アルカリ金属元素が、希土類元素由来の発光を阻害する失活部位を中和する機能を持つからである。この機能により、この種の第1波長変換物質は、より小さい粒子サイズでも発光を示すと考えられる。
【0020】
アルカリ金属元素としては、長周期元素周期表で第1A族に属する元素であれば特に限定されないが、リチウム(Li)およびナトリウム(Na)が好ましく用いられ、リチウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属元素は、第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)内に取り込まれることで、発光失活の原因をブロックするため、第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)の発光特性の向上に大きく寄与するものである。また、リチウムがより好ましく用いられるのは、ナトリウムよりもよりイオン半径が小さく、第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)の結晶内により取り込まれやすいため、より発光失活を防ぐ効果があるからである。
【0021】
アルカリ金属元素の含有量は、特に限定されないが、希土類元素の含有量の1〜20重量%程度であるのが好ましく、3〜15重量%程度であるのがより好ましい。アルカリ金属元素の含有量を前記範囲内とすることにより、前述した効果がより顕著なものとなる。なお、アルカリ金属元素の含有量が前記下限値を下回ると、アルカリ金属元素を添加した効果が得られないおそれがある。一方、アルカリ金属元素の含有量が前記上限値を上回ると、希土類元素における波長変換機能の発現が阻害されてしまうおそれがある。
【0022】
前記第1波長変換物質(無機系の半導体粒子)に希土類元素等をドープする方法としては、例えばゾルゲル法やソルボサーマル法等の液相法、火炎法やスパッタリング法等の気相法等が挙げられる。
【0023】
また、第1波長変換物質として無機系の半導体粒子を用いる場合は、この無機系の半導体粒子と、この無機系の半導体粒子と異なる無機化合物の粒子を含む複合粒子であることが好ましい。これにより、第1波長変換層1の耐久性を、より向上することができる。
ここで、前記複合粒子とは、前記無機化合物の粒子と前記無機系の半導体粒子とが混合されている場合、前記無機系の半導体粒子と前記無機化合物とが表面で付着している場合、前記無機系の半導体粒子が前記無機化合物の粒子中に含まれる場合、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合等が挙げられる。これらの中でも、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合が好ましい。これにより、耐久性をより向上することができる。
【0024】
前記無機化合物の粒子としては、ZnO、SiO、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO、YVO、Yの粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)の少なくとも一つの粒子が好ましい。これにより、耐久性や、発光量子収率等の発光特性を向上することができる。
【0025】
前記無機系の半導体粒子の含有量は、特に限定されないが、前記複合粒子全体の10〜80体積%であることが好ましく、特に30〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に耐久性や発光特性に優れる。
【0026】
前記複合粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、20〜100nmが好ましく、特に45〜55nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に樹脂への分散性が向上し、樹脂に複合粒子を高充填し発光特性を向上できるばかりか、可視光領域で透明な樹脂組成物を得ることができる。
前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。また、電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)を用いた場合、複合粒子の粒径を粉末の状態で評価することができる。
【0027】
特に酸化亜鉛を用いた複合粒子の場合は、複合粒子中のリチウム含有量が3重量%以下であることが好ましく、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下にすることにより、複合粒子における半導体粒子の凝集抑制することができる。この理由は、詳しくは解明されていないものの、リチウムが、大気中の湿気を吸着させることにより、半導体粒子と無機化合物の粒子との吸着(凝集)を阻害しているためであると考えられる。リチウムは、酸化亜鉛にドープされるものと、不純物として存在するものとがある。これらの中でも不純物として存在するリチウム含有量が上記範囲以下であることが好ましい。
【0028】
すなわち、リチウムは複合微粒子に分布し、前記無機系の半導体粒子と無機化合物の粒子との円滑な吸着(凝集)を妨げるため、複合粒子はその粒子形状が球形にならず、異形状になり易くなると考えられる。さらには、異形状になった場合、無機系の半導体粒子が露出し易くなるため、露出した半導体粒子についてはその活性を制御することができなくなる。その結果、第1組成物の耐光性、長期安定性が低下するものと考えられる。さらに、発光量子収率をも高めることができる。
【0029】
リチウム含有量を前記範囲内にする方法としては、例えば、前記無機系の半導体粒子または複合粒子に洗浄処理を施す方法、半導体粒子の分散液をイオン交換樹脂(透過膜)に通す方法等が挙げられる。
【0030】
また、原料中にリチウムを用いない無機系の半導体粒子の製造方法(例えば、酸化亜鉛合成法等)を用いても、リチウム含有量を前記範囲内にすることができる。
【0031】
また、リチウム含有量を前記上限値以下にすれば、上述したような効果が得られるが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上という下限値が設定されてもよい。リチウム含有量をこの下限値以上とすることにより、上記の課題をより確実に解決することができる。これは、上記の課題を解決するという効果は、リチウム含有量の減少に伴って顕著になるものの、効果の大きさには極大値が存在しており、この極大値が前記下限値よりリチウム含有量が多い領域に位置しているからである。すなわち、リチウム含有量を前記下限値未満とした場合、発光特性が低下するおそれがある。
【0032】
前記リチウム含有量は、例えばイオンクロマト分析法により測定することができる。なお、イオンクロマト分析の場合、前述したリチウム含有量は、リチウムイオン含有量として測定される。ここで、イオンクロマト分析は、イオンクロマトグラフィーを用い、例えば以下のような手順で行われる。
まず、分析に供する試料を容器にとり、超純水で希釈する。その後、容器を密閉した後、恒温器に投入し、例えば125℃×20時間で容器に熱水処理を施す。次いで、熱水処理を施した容器を室温まで徐冷する。そして、容器内の試料に遠心分離処理およびフィルターろ過処理を施し、各処理を経た試料をイオンクロマト分析の検液とする。次いで、イオンクロマトグラフィーに、得られた検液および既知の濃度のイオン類標準試料を導入し、検量線法により検液中の各イオンの含有量を定量する。以上のようにして、リチウム含有量を測定することができる。
【0033】
また、前述した希土類元素の含有量は、特に限定されないが、前記複合粒子全体の0.01〜20重量%が好ましく、特に0.02〜10重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光量子収率等の発光特性に優れる。
【0034】
前記無機系における半導体粒子の第1組成物中の含有量は、特に限定されないが、前記第1組成物全体の10〜70体積%特に40〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に樹脂組成物の成形性を確保することができ、かつ、樹脂組成物中において無機系の半導体粒子(複合粒子)の充填性が確保されるため、無機系の半導体粒子(複合粒子)が規則的に均一に配列し易くなる。その結果、樹脂組成物を層状に成形した場合、層の透明性を向上することができる。
【0035】
前記第1波長変換物質(複合粒子)は、第1バインダーによって固定化されている。例えば、第1バインダーが後述する樹脂の場合、樹脂はバインダーの機能と共にベース樹脂となり、第1波長変換層1の基本を形成する。
このような前記第1バインダーとしては、樹脂、カップリング剤、前記無機系の半導体体粒子および前記無機化合物と異なる無機材料(具体的にはシリカ、ジルコニア、ガラス、石英等)等が挙げられるが、これらの中でも樹脂が好ましい。これにより、第1波長変換層1の形成を容易にすることができる。このような第1バインダーは、透明(紫外光〜赤外光に対する吸収が無い)であることが好ましい。これにより、前記第1波長変換物質の吸収波長以外の波長を容易に透過させることが可能となる。
【0036】
前記樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。これらを用いることにより、樹脂組成物の光透過性をより高めることができる。
このうち前記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、および水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
また、前記アクリル系樹脂としては、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば、特に限定されないが、直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、特に、以下の一般式(1)および一般式(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートを重合したアクリル樹脂が好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
より好ましくは、一般式(1)において、R、Rが水素で、aが1、bが0である構造を有するジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CHOCOCH=CHで、R、Rが水素で、Pが1である構造を有するパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、および、X、R、Rがすべて水素で、Pが0または1である構造を有するアクリレートより選ばれた少なくとも1種のアクリレートが用いられ、粘度等の点を考慮すると、さらに好ましくは、X、R、Rがすべて水素で、Pが0である構造を有するノルボルナンジメチロールジアクリレートが用いられる。
【0041】
また、アクリル樹脂として、水分散型アクリル樹脂を用いることができる。水分散型アクリル樹脂とは、水を主成分とする分散媒に分散したアクリルモノマー、オリゴマー、またはポリマーであり、水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行しないが、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するタイプ、または、自己架橋可能な官能基を有し、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いなくとも加熱のみで架橋し固化するタイプのアクリル樹脂である。
前者のタイプでは水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行せず、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するものであれば特に制限されるものではなく、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いてもよいし、自己架橋可能な官能基を利用してもよい。また、反応を完結させる目的で加熱することは制限されない。自己架橋可能な官能基としては特に限定されないが、例えば、カルボキシル基同士、エポキシ基同士、メチロール基同士、ビニル基同士、一級アミド基同士、アルコキシシリル基同士、メチロール基とアルコキシメチル基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボジイミド基とカルボキシル基などが挙げられる。水分散型アクリル樹脂は、波長変換物質を含有する複合粒子が水に親和性がある場合に好適に用いられる。
【0042】
一方、シリコーン系樹脂としては、市販のLED用シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0043】
また、架橋性を有するエチレンビニルアセテート樹脂には、酢酸ビニル含有率(VA含有量)が25重量%以上のものが好ましく用いられ、例えば、三井化学ファブロ株式会社のソーラーエバ(登録商標)等を好適に用いることができる。
【0044】
なお、上述したような硬化性樹脂とは、最終的にネットワーク構造を形成するものであればよく、イオンを媒体としてネットワークを形成するアイオノマー樹脂なども使用することができる。
【0045】
また、樹脂を用いた第1樹脂組成物には、上述した硬化性樹脂および第1波長変換物質以外に、架橋を促進させるための触媒、架橋剤、他の波長変換物質、複合粒子と樹脂との親和性を向上し、複合粒子の分散性を向上させるためのアルコキシ基を有する化合物、カップリング剤、界面活性剤等の各種添加物を含有していてもよい。
【0046】
このような添加物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のケイ素のアルコキシド化合物、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のケイ素を含有する各種カップリング剤、アルミニウム、チタンなどのケイ素以外の元素を含むアルコキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0047】
また、前記第1波長変換物質(無機系の半導体粒子、複合粒子)を硬化性樹脂である第1バインダーに分散させるときには、ケイ素を含有するシランカップリング剤を分散剤として使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、窒素またはアミノ基を有するものが好ましく用いられ、アミノシランやアザシラン等が好ましく用いられる。アミノシランを使用する場合、アルコキシ基が2官能であるジシランやアルコキシ基が1官能であるモノシランが好ましく、コストと性能のバランスからN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましく用いられる。アザシランを使用する場合、環状アザシラン等が好ましく用いられ、コストと性能のバランスから2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、またはN−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン等が好ましく用いられる。
【0048】
前記樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記第1樹脂組成物全体の20〜65体積%が好ましく、特に30〜55体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光特性、耐久性に優れる。
【0049】
上述したような第1樹脂組成物を、例えばドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等により塗布し(必要に応じて硬化剤を加え)、加熱や紫外線照射して樹脂組成物を硬化することで第1波長変換層1を得ることができる。
【0050】
このような前記第1波長変換層は、200nmを超えて430nm以下の光を吸収し、430nmを超える光を発光するものであることが好ましい。これにより、通常光電変換に使用されない紫外線を、光電変換可能な波長変換の光に変換することができ、より光電変換効率の高い太陽電池を実現可能な波長変換材料が得られる。
【0051】
このような第1波長変換層1の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に5〜50μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に430nmを超える光の透過性と430nm以下の光の変換に優れる。
【0052】
第2波長変換層2は、赤外線をより短波長側の光に変換する第2波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される。これにより、850nmを超えて2500nm以下の光を吸収し、430nmを超えて850nm以下の光を発光することができる。
従来は、赤外線のような長波長の側の光を、短波長側に波長変換させることは、技術的に困難であった。これに対して、本願発明では、多光子励起機構を利用することで赤外線をより効率よく短波長側の光に変換することが可能となったものである。
【0053】
前記第2波長変換物質としては、例えば無機系の半導体粒子、ローダミン、ベンゾチアジアゾール等の発光性有機化合物等が挙げられる。これらの中でも無機系の半導体粒子が好ましい。これにより、長波長の側の光を短波長側に波長変換させる効率を向上することができる。
【0054】
前記無機系の半導体粒子としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)、リン化インジウム(InP)等が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上が好ましい。これらは、赤外線を吸収し、可視領域で発光する物質として実績があり、これらにより、光の変換効率を向上することができる。
【0055】
前記第2波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜10nmが好ましく、特に1〜5nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、量子サイズ効果等により、吸収・発光特性が向上する。前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。
【0056】
上述したような第2波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、希土類元素を有する(ドープしている)ことが好ましい。これにより、励起発光波長帯をより好ましい波長領域に調節することができる。
前記希土類元素としては、例えば原子番号57から71までのランタノイド元素と、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる17元素を、1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)の1種または2種以上を組み合わせたものが好ましい。これらの希土類元素は、特に優れた波長変換機能を有するものであるため、無機系の半導体粒子中に含まれる希土類元素として好適である。
【0057】
このように、第2波長変換物質(無機系の半導体粒子)が希土類元素を有することにより、発光波長等の発光特性の制御が可能となる。たとえば、太陽電池に用いる場合では、太陽電池の光電変換に使用されない赤外線を、太陽電池の光電変換に使用される光の波長に変換することにより、太陽電池の光電変換効率を向上することができる。
【0058】
また、前記第2波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、2種類以上の希土類元素を含んでいるのが好ましい。半導体粒子中に2種類以上の希土類元素が含まれていると、それぞれでエネルギーの異なる励起状態を有しているため、相互にエネルギーの授受が行われることとなる。その結果、半導体粒子は、より多くの光量を吸収することができるようになり、発光特性が向上する。
【0059】
また、前記第2波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)は、さらにアルカリ金属元素を含むものであっても良い。これにより、さらに前記第2波長変換物質の発光特性の向上を図ることができる。
【0060】
前記アルカリ金属元素は、それ単独で半導体材料に作用させるよりも、希土類元素とともに相乗的に作用させることが好ましい。すなわち、前記第2波長変換物質(無機系の半導体粒子)に希土類元素とアルカリ金属元素とを添加することにより、これらの元素を単独で含む場合に比べて、相対的に優れた波長変換機能と、高い発光特性(発光効率)とを併せ持つことが可能となる。これは、アルカリ金属元素が、希土類元素由来の発光を阻害する失活部位を中和する機能を持つからである。この機能により、この種の第2波長変換物質は、より小さい粒子サイズでも発光を示すと考えられる。
【0061】
前記アルカリ金属元素としては、長周期元素周期表で第1A族に属する元素であれば特に限定されないが、リチウム(Li)およびナトリウム(Na)が好ましく用いられ、リチウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属元素は、第2波長変換物質(無機系の半導体粒子)内に取り込まれることで、発光失活の原因をブロックするため、第2波長変換物質の発光特性の向上に大きく寄与するものである。また、リチウムがより好ましく用いられるのは、ナトリウムよりもよりイオン半径が小さく、第2波長変換物質(特に、無機系の半導体粒子)の結晶内により取り込まれやすいため、より発光失活を防ぐ効果があるからである。
【0062】
アルカリ金属元素の含有量は、特に限定されないが、希土類元素の含有量の1〜20重量%程度であるのが好ましく、3〜15重量%程度であるのがより好ましい。アルカリ金属元素の含有量を前記範囲内とすることにより、前述した効果がより顕著なものとなる。なお、アルカリ金属元素の含有量が前記下限値を下回ると、アルカリ金属元素を添加した効果が得られないおそれがある。一方、アルカリ金属元素の含有量が前記上限値を上回ると、希土類元素における波長変換機能の発現が阻害されてしまうおそれがある。
【0063】
前記第2波長変換物質(無機系の半導体粒子)に希土類元素等をドープする方法としては、例えばゾルゲル法やソルボサーマル法等の液相法、火炎法やスパッタリング法等の気相法等が挙げられる。
【0064】
また、第2波長変換物質として無機系の半導体粒子を用いる場合は、前記無機系の半導体粒子およびこの無機系の半導体粒子と異なる無機化合物の粒子を含む複合粒子であることが好ましい。これにより、第2波長変換層2の耐久性を、より向上することができる。
ここで、前記複合粒子とは、前記無機化合物の粒子と前記無機系の半導体粒子とが混合されている場合、前記無機系の半導体粒子と前記無機化合物とが表面で付着している場合、前記無機系の半導体粒子が前記無機化合物の粒子中に含まれる場合、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合等が挙げられる。これらの中でも、前記無機系の半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合が好ましい。これにより、耐久性をより向上することができる。
【0065】
前記無機化合物の粒子としては、ZnO、SiO、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO、YVO、Yの粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)の少なくとも一つの粒子が好ましい。これにより、耐久性や、発光量子収率等の発光特性を向上することができる。
【0066】
前記無機系の半導体粒子の含有量は、特に限定されないが、前記複合粒子全体の10〜80体積%であることが好ましく、特に30〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に耐久性や発光特性に優れる。
【0067】
前記複合粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、20〜100nmが好ましく、特に45〜55nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に樹脂への分散性が向上し、樹脂に複合粒子を高充填し発光特性を向上できるばかりか、可視光領域で透明な樹脂組成物を得ることができる。
前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。また、電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)を用いた場合、複合粒子の粒径を粉末の状態で評価することができる。
【0068】
前記第2波長変換物質は、第2バインダーによって固定化されている。例えば、第2バインダーが後述する樹脂の場合、樹脂はバインダーの機能と共にベース樹脂となり、第2波長変換層2の基本を形成する。
【0069】
このような前記第2バインダーとしては、樹脂、カップリング剤、前記半導体体粒子および前記無機化合物と異なる無機材料(具体的にはシリカ、ジルコニア、ガラス、石英等)等の第1バインダーと同様のものを用いることができる。これらの中でも樹脂が好ましい。これにより、第2波長変換層2の形成を容易にすることができる。このような第2バインダーは透明であることが好ましい。これにより、前記第2波長変換物質の吸収波長以外の波長を容易に透過させることが可能となる。
【0070】
前記第2波長変換物質の第2組成物中の含有量は、特に限定されないが、前記第2組成物全体の10〜70体積%が好ましく、特に40〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に樹脂組成物の成形性を確保することができ、かつ、樹脂組成物中において無機系の半導体粒子(複合粒子)の充填性が確保されるため、無機系の半導体粒子(複合粒子)が規則的に均一に配列し易くなる。その結果、樹脂組成物を層状に成形した場合、層の透明性を向上することができる。
【0071】
上述したような第2バインダーに樹脂を用いた第2樹脂組成物は、例えばドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等により塗布し(必要に応じて硬化剤を加え)、加熱や紫外線照射して樹脂組成物を硬化することで第2波長変換層2を得ることができる。
【0072】
このような第2波長変換層2の厚さ(t2)は、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に5〜50μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に波長を変換した後の光の透過性と、850nmを超えて2500nm以下である波長の光の変換に優れる。
【0073】
第2波長変換層2は、850nmを超えて2500nm以下の光を吸収し、430nmを超えて850nm以下の光を発光するものであることが好ましい。これにより、第1波長変換層1と異なる赤外領域を吸収波長帯として有し、励起波長帯域を広げることができる。
【0074】
第1波長変換層1(t1)と、第2波長変換層2の厚さ(t2)との比(t1/t2)は、特に限定されないが、0.01〜30であることが好ましく、特に0.05〜10であることが好ましい。これにより、特に効果的に各波長の光を変換することができる。
【0075】
上述したような第1波長変換層1と、第2波長変換層2とを接合して、本発明の波長変換部材100を得ることができる。
積層する方法としては、例えば第1波長変換層および第2波長変換層は、光起電層の上方に順次成膜する方法等が挙げられる。
第1波長変換層1と、第2波長変換層2との間には、接着剤等が設けられても良いが、光の透過率の観点で第1波長変換層1と第2波長変換層2とが隣接して配置されていることが好ましい。
【0076】
なお、図1では、第1波長変換層1および第2波長変換層2で構成される波長変換部材100について説明したが、本発明はこれに限定されず、さらに第3波長変換層を有していても、第4波長変換層を有していても良い。
このような第3波長変換層や第4波長変換層は、第1波長変換層1と第2波長変換層2との間に設けられても良いし、第1波長変換層1の上側(図1中上側)に設けられても良いし、第2波長変換層2の下側(図1中下側)に設けられても良い。
【0077】
(光起電装置)
次に、本発明の光起電装置について説明する。
図2に示すように、光起電装置(本発明の光起電装置)5は、太陽光の照射に伴って起電力を生じる光起電層3を有しており、太陽光の入射光側より、第1波長変換層1と、第2波長変換層2と、光起電層3とがこの順に積層されている。これにより、太陽光に対して広範な励起波長帯域を有することができる。
【0078】
光起電層3は、光により起電力を生じるものであり、p型半導体層、真性半導体層、n型半導体層からなる半導体層と、EVA樹脂組成物などの封止材、半導体層の片面または両側の面に設けられた透明電極層を備えている。
半導体層を構成する材料としては、半導体材料であれば特に限定はされないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、量子ドット半導体等が挙げられる。
透明電極は、特に限定されないが、例えばITOの膜や酸化錫の膜などにより構成される。なお、光起電装置5の構成はこれに限定されるものではなく、種々の光起電装置5に適用することができる。特に市販の光起電層3を用意して、これに波長変換層を取り付ける場合、光起電層3の上にさらにガラス、透明電極、無反射層、保護層等が形成されるのが好ましい。この場合、ガラス、透明電極、無反射層、保護層等の上または下に波長変換層を取り付ければよい。
【0079】
図2に示す実施形態では、第1波長変換層1は、紫外線から紫色領域の波長(具体的には430nm以下の波長)の光を吸収し、430nmを超える波長の光に変換する。また、第2波長変換層2は、主として赤外線(具体的には、850nmを超えて2500nm以下の波長)の光を吸収し、430nmを超えて850nm以下の光に変換する。変換後の太陽光線は、光起電層3に入射する。したがって、波長変換層を備えない場合に比べて、光起電層3における光電変換効率が高められるとともに、光起電層3に有機材料が用いられている場合、その劣化を抑制することができる。その結果、例えば太陽電池における光電変換層のような光起電層3の寿命の向上が図られる。
【0080】
この実施形態において、それぞれの波長変換層は、バインダーに中に分散された半導体粒子(無機系の半導体粒子、有機系の半導体粒子)を備える。特に、無機系の半導体粒子が複合粒子である場合は、無機系の半導体粒子の活性を制御するとともに、第1バインダー中に均一に分散し得るものであるため、第1波長変換層1において、複合粒子が均一に分散している。したがって、第1波長変換層1は、波長変換した光を、光起電層3全体に対して均等に入射させることができる。さらに、第1波長変換層1は、紫外線領域の波長が第2波長変換層2に透過するのを抑制することができる。したがって、第2波長変換層2がより効率よく赤外線を可視光に変換するのを促進させることができる。
【0081】
なお、光起電装置5は、例えば、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の各種デバイスに適用することができる。
【0082】
<他の実施形態>
次に、本発明の光起電装置における他の実施形態(第2実施形態)について説明する。
図3〜8は、それぞれ、本発明の光起電装置5における他の実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【0083】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、光起電装置が、規則的に分布した点状の樹脂組成物の硬化物を有する以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0084】
図3(a)に示す光起電装置5は、光起電層3の上方に設けられ、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物を複数個有している。それぞれの樹脂組成物の硬化物は、光が入射する方向に対して、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される第1波長変換層と、赤外線をより短波長側の光に変換する波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される第2波長変換層とが、互いに隣接してこの順に積層してなる波長変換部材100で構成されている。
これら複数の樹脂組成物の硬化物は、互いの離間距離がほぼ等間隔になっており、光起電層3の上面に規則的に配列している。換言すれば、波長変換部材100は、光起電装置5の上面に形成された、本発明の樹脂組成物の硬化物で構成された凹凸構造を有するものとなる。なお、図3(b)に示す波長変換部材100の場合、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物が点在していることから、波長変換部材100は途切れ途切れの構造になっているが、このような構造であっても、本明細書では、波長変換部材というものとする。
【0085】
波長変換部材100が凹凸構造を有していることにより、1つの樹脂組成物の硬化物に入射した光は、反射する場合、図3(a)の上方ではなく、左右方向に反射する確率が高くなる。左右方向に反射した光は、隣り合う硬化物に再び入射し、屈折を伴って光起電層3に入射することとなる。その結果、波長変換部材100が凹凸構造を有していない場合には、反射により光起電層3に入射する光が失われていたのに対し、図3(a)に示す波長変換部材100の場合、凹凸構造がなければ失われていたはずの光の一部を光起電層3に入射させることができる。すなわち、図3に示す波長変換部材100は、上述したような波長変換機能に加え、反射防止機能を有するものとなる。その結果、光起電装置5における光電変換効率をより高めることができる。
【0086】
凹凸構造の高低差は、斜め方向からの太陽光の吸収とコストとのバランスから、300nm〜100μmであるのが好ましく、1〜50μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのがさらに好ましい。なお、凹凸構造の高低差は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡等の各種顕微鏡を用いて測定することができる。
【0087】
また、凹凸構造の面内周期は、300nm〜50μmであるのが好ましい。凹凸構造の面内周期を前記範囲内とすることにより、凹凸構造の表面で光が反射される確率を特に低下させ、凹凸構造の反射防止機能を特に高めることができる。
さらには、波長変換部材100の吸収波長領域とほぼ同程度またはそれ以下の周期にするのが好ましい。これにより、波長変換部材100に光が入射するとき、フレネル反射が起こり難くなる。そして、凹凸構造の形状によらず、波長変換部材100による光の反射が減少し、波長変換部材100に入射する光量がより増加することとなる。その結果、光起電層3に入射する光量も増加する。
【0088】
また、面内直角方向(X方向、Y方向)の凹凸周期は同じであっても異なっていてもよい。また、同じ方向における面内周期のばらつきがあってもよい。凹凸構造の面内周期は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の各種顕微鏡を用いて取得した画像情報をフーリエ変換することにより求めることができる。
【0089】
凹凸構造の形状としては、例えば、ドット、マイクロレンズ、ライン・アンド・スペース(L&S)、ハニカム、セル、四角錐、モスアイ、円錐形など、さまざまな形状が挙げられる。コストと効率の観点から、ドット、マイクロレンズ、L&S、セル、四角錐の形状が好ましく、より好ましくは、ドット、マイクロレンズの形状である。
【0090】
なお、図3〜5および図7に示す凹凸構造は、ドットまたはマイクロレンズの形状をなす凹凸構造の例である。これらの凹凸構造は、平面視形状が略円形をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
【0091】
また、波長変換部材100が備える凹凸構造は、図3に示すような途切れ途切れの構造以外に、図4に示すように、光起電層3の上面を覆う平板状の形態をなす樹脂組成物の硬化物と、その上に設けられ、規則的に分布した点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物との積層体の構造であってもよい。このような構造であれば、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物以外の領域に入射した光も、波長変換部材100に入射し、その波長を変換することができる。換言すれば、図4に示す波長変換部材100によれば、図3に示す波長変換部材100では波長変換することができなかった光についても、波長変換することができるので、光起電層3において光電変換可能な波長領域の光の割合を増やすことができる。
【0092】
なお、凹凸構造は、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物の分布は、規則的であっても、不規則的であってもよい。規則的である場合、分布のパターンは特に限定されない。
【0093】
また、凹凸構造は、図5(a)に示すように、光が照射される側(上流側)が凸であっても、図5(b)に示すように、光起電層3側が凸であってもどちらでもよいが、光起電層3に多くの光を入射させるという観点では、光起電層3側が凸であるのが好ましい。この場合、凹凸構造は、図5(b)に示すように、光起電層3に埋め込まれた状態になっていてもよい。また、この場合の凹凸構造の面内周期は、300nm〜1μmの範囲にすることが好ましい。
【0094】
また、凹凸構造は、隣り合う凹凸が同じ樹脂組成物で構成されていても、異なる樹脂組成物で構成されていてもよい。樹脂組成物の光吸収波長範囲が比較的狭い場合は、光吸収波長範囲を広げるなどの目的で、隣り合う凹凸の樹脂組成物を異なるものに設定することにより、光起電装置5の発電効率を容易に向上させることができる。
【0095】
さらに、凹凸構造は、図5(c)に示すように、それぞれの凸部に、より小さな微細凹凸形状を有していてもよい。これにより、微細凹凸形状によって光閉じ込め効果が生じ、波長変換部材100による光の反射をより減少させることができる。微細凹凸形状の高低差は、100〜500nmが好ましい。
【0096】
なお、凹凸構造は、図5(a)の凹凸構造と図5(b)の凹凸構造とを組み合わせた構造、すなわち、光が照射される側と光起電層3側の双方に凸があるような構造であってもよい(図5(d)参照)。この場合、光起電層3側が凸である凹凸構造の面内周期を、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内周期より小さくすることが好ましい。これにより、光起電層3に入射する光量を増やすことができる。
また、光起電層3側が凸である凹凸構造の面内位置と、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内位置とは、互いにずれているのが好ましい。これにより、平面視における波長変換部材100の面積をより大きく確保することができ、波長変換部材100に入射する光量を増やすことができる。
【0097】
また、図6に示す凹凸構造は、L&Sの形状をなす凹凸構造の例である。具体的には、図6に示す凹凸構造は、図6(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
さらには、図7に示す凹凸構造も、L&Sの形状をなす凹凸構造の例であるが、図7に示す凹凸構造は、図7(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物と、X方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物とが、それぞれ直交するように配列している。これにより、図7に示す凹凸構造は、平面視にて格子状をなしている。
【0098】
以上のような凹凸構造を有する波長変換部材100は、本発明の樹脂組成物を前述したような各種塗布法により塗布した後、塗布物を硬化することにより形成されるが、特に樹脂組成物をインクジェット法により塗布するのが好ましい。インクジェット法によれば、所望の領域に所定の量の樹脂組成物を正確に塗布することができる。このため、凹凸構造の形状を正確に再現することができる。
また、塗布面にあらかじめ樹脂組成物に対して撥液性を制御するように表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、インクジェット法により吐出された樹脂組成物が、表面張力により自ずと半球状に成形される。その結果、図3に示すような波長変換部材100をより簡単に形成することができる。
【0099】
なお、インクジェット装置には、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等の各種吐出方式があるが、比較的高粘度の樹脂組成物を吐出可能であるという観点から、ピエゾ方式または静電方式のインクジェット装置が好ましく用いられる。
【0100】
また、凹凸構造を形成した後、凹凸構造の上にさらに別の樹脂組成物をオーバーコートするようにしてもよい。これにより、光起電装置5における耐汚性、耐久性などの低下を抑制できる。
なお、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0101】
以上、本発明の波長変換部材および光起電装置の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光起電装置には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
1.第1波長変換物質の製造
<1>まず、酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)の濃度が0.1Mとなるようにエタノールを加え、酢酸亜鉛二水和物のエタノール溶液400mlを調製した。このエタノール溶液を約80℃で約3時間加熱撹拌しながら全溶液の量が120mlになるまで濃縮した。濃縮後、さらにエタノール120mlを加え、室温まで冷却した。次いで、得られたエタノール溶液に、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)の濃度が0.14Mになるように加え、23℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。これにより、エタノール分散液400mlを得た。このエタノール分散液は、紫外線照射により緑色に発光し、エタノール中に半導体粒子を含んでいることを確認した。
その後、得られたエタノール溶液400mlにヘキサンを添加し、10,000Gで1分間の遠心分離処理を施した。ヘキサンは、半導体粒子のエタノール溶液の体積を1としたとき、体積比で3程度になる量(1200ml)を添加した。その後、上澄みを除去し、ペースト状の残留物4.9gを得た。次いで、エタノール400mlをペースト状の残留物に加え、再分散させた。これにより、洗浄された半導体粒子のエタノール分散液を得た。
【0104】
<2>次に、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30重量%、分散媒:2−プロパノール)をエタノールで約34倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.15Mの分散液を調製した。次に、この分散液10mlと、上記<1>で作製した半導体粒子のエタノール分散液40mlとを混合し、混合分散液を調製した。
次いで、得られた混合分散液を、噴霧乾燥法により半導体粒子とシリカ粒子との複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は400℃とし、キャリアガスには窒素を使用した。
【0105】
<3>上記の操作の繰り返しで得た複合粒子3.0gをエタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、複合粒子が分散した透明な分散液を得た。
【0106】
2.第1樹脂組成物の製造
前記一般式(2)において、X、R、Rがすべて水素で、Pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(試作品番 TO−2111;東亞合成(株)製)0.30g、N−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン(Gelest社製、SIM6501.4)0.24g、および<3>で作製した複合粒子の透明分散液60gを混合した。その後、透明分散液を撹拌しながら40℃で30hPaの条件下で3時間処理を行い、揮発分を除去した。
その後、透明分散液中に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン製、ダロキュア1173)0.003gを溶解させた。これにより、第1樹脂組成物を得た。
【0107】
3.第1波長変換層の製造
上記で得た第1樹脂組成物を、厚み50μmの表面処理を施したETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)フィルム上に塗布した。乾燥後の厚みは約20μmであった。そして、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して第1樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、真空下約180℃で1時間加熱処理を行い、溶媒を除去した。これにより、第1波長変換層(厚さ20μm)を形成した。
【0108】
4.第2波長変換物質(1)の製造
<4−1>硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)0.1M、硝酸エルビウム六水和物(Er(NO・6HO)、硝酸イッテルビウム六水和物(Yb(NO・6HO)、硝酸リチウム(LiNO)を蒸留水100mlに溶解させた。この際、亜鉛イオンと希土類元素イオン、リチウムイオンの添加量は、モル比で亜鉛イオン:エルビウムイオン:イットリビウムイオン:リチウムイオン=97:0.2:1.3:1.0となるように調製した。この溶液を温度80℃に保ちながら3当量のクエン酸を加え、その後、水酸化アンモニウムで中和した。溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子の分散液を得た。
【0109】
<4−2>次に、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30重量%、分散媒:2−プロパノール)をエタノールで約34倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.15Mの分散液を調製した。次に、この分散液10mlと、<4−1>で作製した半導体粒子の分散液40mlとを混合し、混合分散液を調製した。
次いで、得られた混合分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、目的の複合粒子を合成した。燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。
【0110】
上記の操作の繰り返しで得た複合粒子3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、複合粒子が分散した透明な分散液(1)を得た。
【0111】
5.第2波長変換物質(2)の製造
<5−1>0.1Mの酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)と酢酸ツリウムx水和物(Tm(CHCOO)・xHO)、酢酸イッテルビウムx水和物(Yb(CHCOO)・xHO)とをエタノール100mlに分散させた。酢酸亜鉛二水和物と酢酸エルビウムx水和物、酢酸イッテルビウムx水和物の各々の量が、重量比で、Zn2+:Tm3+:Yb=97:1:2になるように調製した。
このエタノール溶液を約80℃で約3時間加熱撹拌しながら全溶液の量が120mlになるまで濃縮した。濃縮後、さらにエタノール120mlを加え、室温まで冷却した。次いで、得られたエタノール溶液に、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)の濃度が0.14Mになるように加え、23℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。これにより、半導体粒子のエタノール分散液400mlを得た。
【0112】
<5−2>その後、得られたエタノール溶液400mlにヘキサンを添加し、10,000Gで1分間の遠心分離処理を施した。ヘキサンは、半導体粒子のエタノール溶液の体積を1としたとき、体積比で3程度になる量(1200ml)を添加した。その後、上澄みを除去し、ペースト状の残留物4.9gを得た。次いで、エタノール400mlをペースト状の残留物に加え、再分散させた。これにより、洗浄された半導体粒子のエタノール分散液を得た。
【0113】
<5−3>次に、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30重量%、分散媒:2−プロパノール)をエタノールで約34倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.15Mの分散液を調製した。次に、この分散液10mlと、<5−2>で作製した半導体粒子の分散液40mlとを混合し、混合分散液を調製した。
次いで、得られた混合分散液を、火炎法にて燃焼・乾燥させて、目的の複合粒子を合成した。燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。
【0114】
上記の操作の繰り返しで得た複合粒子3.0gを大気下900℃で30分間焼成した後、エタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、複合粒子が分散した透明な分散液(2)を得た。
【0115】
6.第2樹脂組成物の製造
前記一般式(2)において、X、R、Rがすべて水素で、Pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(試作品番 TO−2111;東亞合成(株)製)0.30g、N−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン(Gelest社製、SIM6501.4)0.24g、および上記で作製した2種類の複合粒子の透明分散液(1)および(2)を、各々30gずつを混合した。その後、透明分散液を撹拌しながら40℃で30hPaの条件下で3時間処理を行い、揮発分を除去した。
その後、透明分散液中に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン製、ダロキュア1173)0.003gを溶解させた。これにより、第2樹脂組成物を得た。
【0116】
7.第2波長変換層の製造
上記で得た第2樹脂組成物を、上記で得られた第1波長変換層上に塗布した。新たに塗布した層の乾燥後の厚みは約20μmであった。そして、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して第2樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、真空下約180℃で1時間加熱処理を行い、溶媒を除去した。これにより、第1波長変換層の上に第2波長変換層(厚さ20μm)を形成した。
【0117】
8.波長変換部材および光起電装置の製造
次いで、CIGS太陽電池セルの上に太陽電池用封止材EVA(VA含有量28%、架橋型)シートを敷き、さらにその上に、第2波長変換層、第1波長変換層およびETFEフィルムの配置し、真空加熱処理して光起電装置を作製した。
【0118】
(実施例2)
第2樹脂組成物の第2波長変換物質として、上述した第2波長変換物質(1)の1種類のみにした以外は、実施例1と同様にした。
【0119】
(実施例3)
第2波長変換物質として、以下の2種類のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
<1>硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO)0.1M、硝酸エルビウム六水和物(Er(NO・6HO)、を蒸留水100mlに溶解させた。この際、イットリウムイオンと希土類元素イオンの添加量は、モル比でイットリウムイオン:エルビウムイオン=98:2となるように調製した。この溶液を温度80℃に保ちながら3当量のクエン酸を加え、その後水酸化アンモニウムで中和した。溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子の分散液を得た。
【0120】
<2>硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO)0.1M、硝酸ホルミウム六水和物(Ho(NO・6HO)、硝酸イッテルビウム六水和物(Yb(NO・6HO)、硝酸リチウム(LiNO)を蒸留水100mlに溶解させた。この際、イットリウムイオンと希土類元素イオン、リチウムイオンの添加量は、モル比でイットリウムイオン:ホルミウムイオン:イットリビウムイオン:リチウムイオン=97:0.2:1.3:1.0となるように調製した。この溶液を温度80℃に保ちながら3当量のクエン酸を加え、その後水酸化アンモニウムで中和した。溶液を2時間撹拌して、目的の半導体粒子の分散液を得た。
【0121】
(実施例4)
第1波長変換層の厚さを1μmに、第2波長変換層の厚さを50μmにした以外は、実施例1と同様にした。
【0122】
(実施例5)
第1波長変換層の厚さを50μmに、第2波長変換層の厚さを2.5μmにした以外は、実施例1と同様にした。
【0123】
(実施例6)
第1波長変換物質として、以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
0.1Mの酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)と酢酸エルビウムx水和物(Er(CHCOO)・xHO)とをエタノール100mlに分散させた。酢酸亜鉛二水和物と酢酸エルビウムx水和物の量が、重量比で、Zn2+:Er3+=98:2になるように調製した。このエタノール溶液を約80℃で約3時間加熱撹拌しながら全溶液の量が120mlになるまで濃縮した。濃縮後、さらにエタノール120mlを加え、室温まで冷却した。次いで、得られたエタノール溶液に、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)の濃度が0.14Mになるように加え、23℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。これにより、半導体粒子のエタノール分散液400mlを得た。
【0124】
(比較例1)
第2波長変換層を設けなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0125】
(比較例2)
第1波長変換層を設けなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0126】
(比較例3)
第1波長変換層と第2波長変換層の積層の順を逆にした以外は、実施例1と同様にした。
【0127】
各実施例および比較例で得られた起電力装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を、表1に示す。
【0128】
1)粒径評価
得られた複合粒子について、電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)により、複合粒子の粒径を観察した。観察方法は、100万倍程度の適切な倍率で観察した画像を100箇所観察し、その画像内にある粒子の平均粒径を算出した。
【0129】
2)発光特性の評価
得られた波長変換部材について、以下の発光特性の評価を行った。
・蛍光分光光度計(日立製作所製、F−2500)により、励起吸収波長500nmおよび550nm照射下、おおよその励起ピーク波長を観測した。
・蛍光分光光度計(日立製作所製、F−2500)により、励起吸収波長370nmおよび980nm照射下、おおよその発光ピーク波長を観測した。
【0130】
3)透明性の評価
波長変換部材を形成したETFEフィルムに関して、以下の透明性の評価を行った。
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて全光線透過率とヘイズを測定した。なお、ETFEフィルム単体の全光線透過率は94.2%、ヘイズは2.4であった。
【0131】
4)発電効率および耐候性の評価
光起電装置の短絡電流密度Jsc(mA/cm)、光電変換効率測定について説明する。擬似太陽光照射装置(分光計器(株)製、OTENTO−SUNV型ソーラシミュレータ)を用いて1kW/mの光を照射し、そのとき生じた電流と電圧をI−Vテスタ(ケースレーインスツルメンツ(株)製、2400型ソースメータ)を用いて、JIS C 8913に準じて測定した。
また、別途、波長変換層を形成しない以外は、すべて上記と同様にして作製した光起電装置を比較用光起電装置として用意した。そして、実施例1で得られた光起電装置について測定された短絡電流密度Jscから、比較用光起電装置について測定された短絡電流密度Jscを引いた値を、短絡電流密度差ΔJscとした。
また、得られた光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行い、Jscおよび光電変換効率の低下がほとんど見られなかった場合は耐候性が○、顕著な低下が見られた場合は耐候性が×とした。
【0132】
【表1】

【0133】
表1から明らかなように、実施例1〜6は、370nmおよび980nmのいずれの波長領域においても励起ピークがあり、このことから励起発光波長帯域が、紫外領域だけでなく赤外領域にも広がっていることが示唆された。
また、実施例1および6は、発電効率にも優れていた。
【符号の説明】
【0134】
1 第1波長変換層
2 第2波長変換層
3 光起電層
5 光起電装置
10 太陽光の入射光
100 波長変換部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する方向に対して、紫外線および紫色領域の光をより長波長側の光に変換する第1波長変換物質および第1バインダーを含む第1組成物で構成される第1波長変換層と、赤外線をより短波長側の光に変換する第2波長変換物質および第2バインダーを含む第2組成物で構成される第2波長変換層とを、互いに隣接してこの順に積層してなることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記第1波長変換層は、200nmを超えて430nm以下の光を吸収し、430nmを超える光を発光するものである請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記第2波長変換層は、850nmを超えて2500nm以下の光を吸収し、430nmを超えて850nm以下の光を発光するものである請求項1または2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記第1波長変換物質の含有量は、前記第1組成物全体の10〜70体積%である請求項1ないし3のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記第2波長変換物質の含有量は、前記第2組成物全体の10〜70体積%である請求項1ないし4のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記第1波長変換物質が、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記第1波長変換物質の一次粒子の平均粒径は、1〜100nmである請求項1ないし6のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記第2波長変換物質が、希土類元素あるいはアルカリ金属元素を含む半導体粒子である請求項1ないし7のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記希土類元素あるいはアルカリ金属元素が、ユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)からなる群より選択される1以上の元素である請求項8に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記第2波長変換物質の半導体粒子が、酸化亜鉛(ZnO)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・バナデート(VYO)およびリン化インジウム(InP)の中から選ばれる1種以上である請求項8または9に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記第2波長変換物質の希土類元素の含有量は、前記第2波長変換物質全体0.01〜30重量%である請求項8ないし10のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記第2波長変換物質のアルカリ金属元素の含有量は、前記第2波長変換物質の希土類元素の1〜20重量%である請求項8ないし11のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項13】
前記第2波長変換物質の一次粒子の平均粒径は、1〜100nmである請求項1ないし12のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記第1波長変換層の厚さ(t1)と、前記第2波長変換層の厚さ(t2)との比(t1/t2)が、0.01〜30である請求項1ないし13のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の波長変換部材を有することを特徴とする光起電装置。
【請求項16】
前記波長変換部材は、その面内に凹凸構造を有するものである請求項15に記載の光起電装置。
【請求項17】
前記凹凸構造の高低差が、300nm〜100μmである請求項16に記載の光起電装置。
【請求項18】
前記凹凸構造の面内周期が、300nm〜50μmである請求項16または17に記載の光起電装置。
【請求項19】
前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する請求項16ないし18のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項20】
前記第1波長変換層と、前記第2波長変換層との間で、前記凹凸構造の形状が異なっている請求項16ないし19のいずれかに記載の光起電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−213744(P2011−213744A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80164(P2010−80164)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】