説明

波長変換部材および発光装置

【課題】蛍光体粒子の媒体への分散性を向上させた波長変換部材、ならびに、色むらがなく、発光効率が良好な発光装置を提供する。
【解決手段】酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子を覆い蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有する被膜と、前記被膜で覆われた蛍光体粒子を分散させた媒体とを備える波長変換部材、ならびに、半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が入射するように配置された本発明の波長変換部材とを備える発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子を含有する波長変換部材、および当該波長変換部材と半導体発光素子とを組み合わせた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子から発する光を蛍光体によって変換する発光装置は、小型であり、消費電力が白熱電球よりも少ないため、各種表示装置あるいは照明装置の光源として実用化が始まっており、高効率化あるいは高信頼化などの開発が行われている。
【0003】
特開2002−171000号公報(特許文献1)には、波長390〜420nmの光を発する半導体発光素子と、この半導体発光素子からの発光により励起される蛍光体とを用いて、白色光を発する発光装置が開示されている。波長390〜420nmの励起光によって発光する蛍光体として、様々な酸化物や硫化物の蛍光体が用いられている。
【0004】
しかしながら、蛍光体によっては、たとえば硫化物を含む蛍光体は、空気中の水分と反応して加水分解するおそれがある。このような蛍光体の劣化によって、発光装置の耐用年数が低下する。その対策として、たとえば特開2002−223008号公報(特許文献2)には、被膜を有する蛍光体が開示されている。
【0005】
また、酸化物や硫化物系の蛍光体に代わり、近年、酸窒化物や窒化物系の蛍光体の例が特開2002−363554号公報(特許文献3)および特開2003−206481号公報(特許文献4)に開示されている。これらの蛍光体は390〜420nmの波長の光で励起され高効率の発光が得られる上、安定性および耐水性が高く、また使用温度の変化による発光効率の変動が少ないなどの優れた特性を有するものが多い。
【0006】
この窒化物蛍光体の耐熱性をさらに高めるため、窒化金属系または酸窒化金属系材料の被膜を設けることが、特開2004−161807号公報(特許文献5)に開示されている。特許文献5によれば、酸窒化物系蛍光体として(Sra,Ca1-axSiyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:Eu(x=2、y=5)を製造する際にベーク劣化しやすいため、この蛍光体を、N元素を含有する被膜によって覆う。N元素を含有する被膜としては、窒素とアルミニウム、ケイ素、チタン、ホウ素、ジルコニウムなどの金属を含む窒化金属系材料、ポリウレタン、ポリウレアなどのN元素を含有する有機樹脂が用いられる。このN元素を含む被膜を形成していない窒化物系蛍光体は、200〜300℃に加熱することによって急激に発光効率が低下するのに対し、N元素を含有する被膜を設けることにより、窒化物計蛍光材料の窒素の分解を、窒素を供給することによって低減して、耐熱性が向上したとされている。
【0007】
また特開2004−71357号公報(特許文献6)には、発光素子、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体の順に蛍光体を配置したことにより、発光素子に近い側の蛍光体から発する光の再吸収が抑制された発光装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−171000号公報
【特許文献2】特開2002−223008号公報
【特許文献3】特開2002−363554号公報
【特許文献4】特開2003−206481号公報
【特許文献5】特開2004−161807号公報
【特許文献6】特開2004−71357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来は、蛍光体の化学的安定性および耐熱性を向上させる目的で、蛍光体粒子を被膜で覆っていた。しかしながら、蛍光体粒子に被膜を設ける場合、被膜が蛍光体粒子の樹脂などの媒体への分散性にも影響を与えることが考えられる。たとえば、被膜で覆った蛍光体粒子を樹脂中に分散させた場合、樹脂中で蛍光体粒子の二次凝集が起こり、この影響で蛍光の色むらまたは発光効率が低下してしまうことが考えられる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、蛍光体粒子を分散させる樹脂などの媒体への影響についても考慮して酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子を好適な被膜で覆うことによって、蛍光体粒子の媒体への分散性を向上させた波長変換部材を提供することである。
【0010】
また本発明は、色むらがなく、発光効率が良好な発光装置を提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の波長変換部材は、酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子を覆い蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有する被膜と、前記被膜で覆われた蛍光体粒子を分散させた媒体とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の波長変換部材は、以下の(1)または(2)の蛍光体粒子を用いたものであることが好ましい。
【0013】
(1)蛍光体粒子が、Si、Al、O、Nおよび1種もしくは2種以上のランタノイド系希土類元素を含む酸窒化物で形成されたものである、
(2)蛍光体粒子が、Ca、Si、Al、Nおよび1種もしくは2種以上のランタノイド系希土類元素を含む窒化物で形成されたものである。
【0014】
本発明の波長変換部材に用いられる蛍光体粒子を覆う被膜は、金属酸化物で形成されたものであることが好ましく、当該金属酸化物は、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムであることがより好ましい。
【0015】
本発明の波長変換部材に用いられる蛍光体粒子を覆う被膜の厚みは、0.05〜3μmであることが好ましい。
【0016】
本発明の波長変換部材に用いられる媒体は、シリコーン樹脂であることが好ましい。
本発明の波長変換部材は、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子とが、前記媒体中に分散されている構成を備えるものであることが好ましい。
【0017】
また本発明の波長変換部材は、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第1の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第2の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第3の波長変換部とを備えるものであってもよい。
【0018】
本発明はまた、半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が入射するように配置された上述した本発明の波長変換部材とを備える発光装置についても提供する。
【0019】
本発明の発光装置は、波長変換部材が上述したように前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第1の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第2の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第3の波長変換部とを備える場合、以下の(1)または(2)のように実現されることが好ましい。
【0020】
(1)半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が、前記第3の波長変換部材、前記第2の波長変換部材、前記第1の波長変換部材の順に入射するように配置されてなる、
(2)半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が、前記第2の波長変換部材、前記第3の波長変換部材、前記第1の波長変換部材の順に入射するように配置されてなる。
【0021】
また本発明の発光装置における半導体発光素子としては、以下の(1)または(2)のいずれかであることが好ましい。
【0022】
(1)半導体発光素子の発光ピーク波長が370〜480nmである、
(2)半導体発光素子の発光ピーク波長が300〜420nmである。
【0023】
本発明の発光装置における半導体発光素子は、GaN系半導体で形成された半導体発光素子であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子を樹脂などの媒体に分散させた波長変換部材において、前記蛍光体粒子の誘電率よりも大きい誘電率を有する被膜(好ましくは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物にて形成される)にて蛍光体粒子を覆ってなることによって、蛍光体粒子を媒体に分散させたときの分散性が向上される。このような本発明の波長変換部材を、半導体発光素子と組み合わることによって、色むらがなく、発光効率が良好な発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の好ましい一例の波長変換部材1を模式的に示す断面図であり、図2は、本発明に用いられる被膜3が形成された蛍光体粒子2の好ましい一例を模式的に示す断面図である。本発明の波長変換部材1は、図1および図2に示すように、被膜3で覆われた蛍光体粒子2が媒体4中に分散された基本構造を備える。本発明における蛍光体粒子2としては、酸窒化物または窒化物で形成された粒子が用いられる。
【0026】
蛍光体粒子2が酸窒化物で形成される場合、組成元素としてO(酸素)とN(窒素)とを少なくとも含むものであれば、特に制限されるものではないが、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、O、Nおよび一種もしくは二種以上のランタノイド系希土類元素を組成元素として含む蛍光体の粒子であることが望ましい。ここで、酸窒化物に含有されるランタノイド系希土類元素としては、たとえば、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)などを挙げることができ、蛍光体粒子において発光中心として作用する。このような組成元素を有する酸窒化物を用いて蛍光体粒子を用いることで、後述するように波長変換効率に優れた波長変換部材を実現することができる。なお、当該酸窒化物で形成された蛍光体粒子は、具体的には、Ceを賦活したJEM蛍光体(組成式:La1-xAl(Si6-z,Alz)N10-zz:Ce3+xなど)、Euを賦活したβサイアロン(組成式:Si3-zAlz4-zz:Eu2+)などを例示することができる。
【0027】
また蛍光体粒子2が窒化物で形成される場合、組成元素としてNを少なくとも含むものであれば、特に制限されるものではないが、Ca(カルシウム)、Si、Al、Nおよび一種もしくは二種以上のランタノイド系希土類元素を組成元素として含む蛍光体の粒子であることが望ましい。ここで、窒化物に含有されるランタノイド系希土類元素としては、たとえば、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどを挙げることができ、蛍光体粒子において発光中心として作用する。このような組成元素を有する窒化物を用いて蛍光体粒子を用いることで、後述するように波長変換効率に優れた波長変換部材を実現することができる。なお、当該窒化物で形成された蛍光体粒子は、具体的には、Euを賦活したCaAlSiN蛍光体(組成式:CaAlSiN3:Eu2+)などを例示することができる。
【0028】
本発明において用いられる蛍光体粒子2は、その形状は特に制限されるものではなく、不定形、球形、断面方形状など適宜の形状のものが用いられるが、通常、図2に示す例のように不定形であり、中には球形に近い形状のものも含まれる。
【0029】
また、本発明において用いられる蛍光体粒子2の大きさも特に制限されるものではないが、粒子径が3〜20μmの範囲内であることが好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。蛍光体粒子2の粒子径が3μm未満である場合には、発光効率が低下する傾向にあるためであり、また、蛍光体粒子2の粒子径が20μmを超える場合には、蛍光体粒子を樹脂などの媒体に分散させた際にすぐに沈降する傾向にあるためである。なお、上記蛍光体粒子2の粒子径は、たとえば分散剤を添加した純水中に蛍光体粒子を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定された値(メジアン径)を指す。
【0030】
本発明における蛍光体粒子2は、図2に示すように被膜3で覆われてなる。ここで、被膜3としては、蛍光体粒子2よりも誘電率が大きなものが用いられる。上述した酸窒化物または窒化物にて形成された蛍光体粒子2は、誘電率が通常7であるため、被膜3としては誘電率がこの値より大きなものであればよい。被膜3は、好ましくは、誘電率が蛍光体粒子2の誘電率の値よりも1以上大きな値を有するものであることが好ましい。
【0031】
本発明の波長変換部材においては、上述のように蛍光体粒子2を当該蛍光体粒子2よりも大きな誘電率を有する被膜3にて覆うことによって、樹脂などで形成された媒体4に当該蛍光体粒子2を分散させた際の分散性が向上される。この好適な被膜3の誘電率と分散性向上との関係は、ゼータ電位を用いて以下のように説明される。溶液中の帯電した粒子の周りに、反対の電荷をもったイオンが集まるが、その粒子と一緒に動く電荷層の電位をゼータ電位と呼び、一般に溶液中の粒子の分散安定性の指標として用いられている。ゼータ電位の絶対値が大きくなると、粒子間の電気的反発力が大きくなり、粒子の凝集を防ぐことができ、粒子の分散安定性は高くなる。逆にゼータ電位が0に近くなると、粒子は凝集し易くなる。凝集し易い粒子でも、誘電率の高い物質をコーティングすることにより、電気的反発力によって凝集を防ぐことができる。
【0032】
そこで、たとえば酸窒化物蛍光体粒子(誘電率:7)を、たとえば酸化マグネシウム(誘電率:9)で形成された被膜で覆うことで、ゼータ電位の絶対値を大きくすることができる。実施例にて後述するように、酸窒化物蛍光体粒子としてCeを賦活したαサイアロン(組成式:Ca0.25Ce0.25(Si,Al)12(O,N)16)を用いて波長変換部材を作製した場合、被膜を形成していない酸窒化物蛍光体粒子を用いた場合のゼータ電位の絶対値は25mVであったのに対し、酸化マグネシウムを用いて被膜を形成した酸窒化物蛍光体粒子を用いた場合のゼータ電位の絶対値は、60mVと向上される。このゼータ電位の絶対値は、たとえば、蛍光体粒子を溶媒に分散させ、電気泳動法によるゼータ電位測定装置を用いることにより測定することができる。このように、本発明のように誘電率の大きな被膜で覆われた蛍光体粒子を樹脂などの媒体に分散させた場合には、蛍光体粒子の凝集が起こらず、蛍光体粒子の分散性が向上される。
【0033】
さらに、上述した被膜を形成することによって、蛍光体粒子表面における非発光過程(励起状態の電子が、発光を伴う遷移によって非励起状態にならずに、表面準位を介して非発光遷移することにより非励起状態になること)の要因となる表面準位を低減することができる。またさらに、上述した被膜を形成することによって、被膜が蛍光体粒子の保護膜として働くため、発光効率および色度の長期安定性に優れる波長変換部材および後述する発光装置を実現することができるという効果も奏される。
【0034】
本発明の波長変換部材に用いられる被膜3の形成材料は、上述したように酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有するものであれば特に制限されるものではないが、金属酸化物が好ましい。金属酸化物は一般に透明かつ安定であるため、酸窒化物蛍光体粒子または窒化物蛍光体粒子の被膜材料として適している。金属酸化物としては、たとえば、酸化マグネシウム(誘電率:9、屈折率:1.74)、酸化アルミニウム(誘電率:8.5、屈折率:1.63)、酸化タンタル(誘電率:27、屈折率:2.3〜2.55)、酸化チタン(誘電率:100、屈折率:2.3〜2.55)などが挙げられる。中でも、蛍光体粒子の屈折率(2.0)と媒体であるシリコーン樹脂の屈折率(1.43)との中間の屈折率を有する理由から、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムで被膜3が形成されてなることが好ましい。
【0035】
本発明における被膜3は、図2に示す例のように、たとえば不定形(球形に近い場合もある)蛍光体粒子2の表面に金属酸化物の子粒子を付着させ、膜状に形成される。また、図3は、本発明における被膜3’を有する蛍光体粒子2の好ましい他の例を模式的に示す断面図であるが、図3に示す例のように、子粒子の形がある程度保持された状態で金属酸化物を付着させて被膜3’が形成されるように実現されてもよい。なお、被膜3,3’は、蛍光体粒子2の表面全面を覆ってなることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、蛍光体粒子2の表面の一部(好ましくは全表面の80%以下)が露出していてもよい。
【0036】
本発明における被膜3,3’の厚みは、特に制限されるものではないが、0.05〜3μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜1μmの範囲内であることがより好ましい。被膜3,3’の厚みが0.05μm未満である場合には、上述した分散性向上の効果が得られにくい傾向にあり、また、被膜3,3’の厚みが3μmを超えると、発光効率の低下を招く虞があるためである。なお、被膜3,3’の厚みは、次のようにして測定された値を指す。蛍光体粒子を樹脂中に分散させた後に硬化し、アルゴンイオンビームで研磨して蛍光体の断面を露出させる。この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)とEDX(エネルギー分散型X線元素分析装置)を用いて元素分析を行い、得られた元素のマッピング画像から蛍光体粒子を覆っている平均的な厚みを算出する。
【0037】
本発明の波長変換部材1において、上述した被膜3で覆われた蛍光体粒子2を分散させる媒体4としては、たとえばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料、およびガラス材料などの当分野において従来より広く用いられている適宜の材料を特に制限なく用いることができるが、樹脂材料、中でも特にシリコーン樹脂にて媒体4が形成されてなることが好ましい。シリコーン樹脂は、骨格としてシロキサン結合(Si−O)を有しているため、蛍光体の励起光として用いられる青色から近紫外の光によって劣化しにくいためである。
【0038】
本発明の波長変換部材1において、媒体4中に分散させる被膜3で覆われた蛍光体粒子2の量は特に制限されるものではないが、2〜25重量%の範囲内であることが好ましく、5〜20重量%の範囲内であることがより好ましい。媒体4中に分散された蛍光体粒子2の量が2重量%未満である場合には、発光強度が低下する傾向にあり、また、媒体4中に分散された蛍光体粒子2の量が25重量%を超える場合にも、発光強度が低下する傾向にあるためである。
【0039】
本発明の波長変換部材は、複数種の蛍光体粒子が1つの媒体中に分散されてなる構成で実現されてもよい。好適には、蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子と、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子と、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子とが、いずれも上述したように被膜で覆われた状態で、媒体中に分散されてなる構造の波長変換部材が例示される。この場合、第1の蛍光体粒子、第2の蛍光体粒子および第3の蛍光体粒子をそれぞれ覆う被膜は、それぞれ上述した中で別の材料からなっていてもよく、同じ材料からなっていてもよい。このように複数種の蛍光体粒子を1つの媒体中に分散させた構成で波長変換部材を実現する場合、各蛍光体粒子は、その合計量が上述した範囲内となるように媒体中に分散されてなることが好ましい。
【0040】
ここで、蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子としては、上述した酸窒化物または窒化物の蛍光体粒子のうち、たとえばCeを賦活したJEM蛍光体(組成式:La1-xAl(Si6-z,Alz)N10-zz:Ce3+xなど)などの青色蛍光体粒子が例示される。また蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子としては、上述した酸窒化物または窒化物の蛍光体粒子のうち、たとえばEuを賦活したβサイアロンからなる蛍光体(組成式:Si3-zAlz4-zz:Eu2+など)などの緑色蛍光体粒子が例示される。さらに、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子としては、上述した酸窒化物または窒化物の蛍光体粒子のうち、たとえばEuを賦活したCaAlSiN3:Eu2+などの組成の赤色蛍光体粒子が例示される。ここで、各蛍光体粒子の蛍光のピーク波長は、たとえば分光蛍光光度計F−4500(日立製作所製)を用いて測定された値を指す。
【0041】
本発明の波長変換部材はまた、複数個の波長変換部材に、それぞれ異なる種類の蛍光体粒子が分散されてなる構成で実現されてもよい。好適には、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子(上述した第1の蛍光体粒子)が前記媒体に分散された第1の波長変換部材と、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子(上述した第2の蛍光体粒子)が前記媒体に分散された第2の波長変換部材と、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子(上述した第3の蛍光体粒子)が前記媒体に分散された第3の波長変換部材とを備える構造の波長変換部材が例示される。この場合、第1の波長変換部材、第2の波長変換部材および第3の波長変換部材において蛍光体をそれぞれ覆う被膜および媒体は、それぞれ上述した中で別の材料からなっていてもよく、同じ材料からなっていてもよい。第1の波長変換部材、第2の波長変換部材および第3の波長変換部材にそれぞれ分散される第1の蛍光体、第2の蛍光体および第3の蛍光体としては、上述したのと同じものを用いることができる。
【0042】
本発明の波長変換部材は、その形状については特に制限されるものではないが、シート状物に形成されることが好ましい。上述したように本発明の波長変換部材が複数個の波長変換部材(たとえば第1〜第3の波長変換部材)から構成される場合には、複数層のシート状物に形成できる。また後述するように、半導体発光素子と組み合わせて一体化した発光装置を実現する場合には、半導体発光素子、電極(半導体発光素子が電気的に接続される)およびミラーがこれらに囲まれた空間を形成するように予め設けられた基材上に、上記空間を充填するようにして単層または複数層の波長変換部材を形成するようにしてもよい。また、波長変換部材は、その厚みについては特に制限されるものではない。
【0043】
図4は、本発明の好ましい一例の発光装置21を模式的に示す断面図である。本発明は、半導体発光素子を備え、当該半導体発光素子が発する光が入射するように配置された、上述した本発明の波長変換部材とを備える発光装置についても提供する。このような本発明の発光装置21では、上述したように蛍光体粒子の媒体への分散性が向上された波長変換部材1を備えることによって、優れた波長変換効率を有する。
【0044】
図4には、上述した、蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子23と、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子24と、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子25とが、いずれも上述したように被膜26,27,28で覆われた状態で、媒体29中に分散されてなる構造の波長変換部材22を備える例の発光装置21が示されている。本発明の発光装置21は、半導体発光素子30を備え、上述した波長変換部材22は、当該半導体発光素子30が発する光が入射するよに配置される(図4に示す例では、半導体発光素子30は波長変換部材22に封止されてなる。)。また、図4に示す発光装置21は、基体31と、基体31の表面に形成された電極32,33と、ミラー34とを備え、半導体発光素子30は電極32,33に電気的に接続されてなる。
【0045】
このような本発明の発光装置21によれば、波長変換部材にそれぞれ被膜が形成された3種類の蛍光体粒子を配合してなることによって、概ね白色を呈する(色度座標x=0.32〜0.34、色度座標y=0.32〜0.34)発光装置を実現することができる。またこのような本発明の発光装置21によれば、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体の発光スペクトルの半値幅がたとえば50nm以上と広いため、良好な演色性を有する発光装置を実現することができる。
【0046】
また図5は、本発明の好ましい他の例の発光装置41を模式的に示す断面図である。図5に示す例の発光装置41では、上述した、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子(第1の蛍光体粒子)45が媒体51に分散された第1の波長変換部材42と、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子(第2の蛍光体粒子)46が媒体52に分散された第2の波長変換部材43と、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子(第3の蛍光体粒子)47が媒体53に分散された第3の波長変換部材44とを備える波長変換部材を用いた場合を示している。なお、図4に示した例と同様、第1〜第3の蛍光体粒子45,46,47は、それぞれ当該蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有する被膜48,49,50で覆われている。図5に示す例では、半導体発光素子30側から、第3の波長変換部材44、第2波長変換部材43、第1の波長変換部材42が順に積層されてなる。なお、図5に示す例の発光装置41は、このような波長変換部材を用いたこと以外は、図4に示した例の発光装置21と同様の構成を有しており、同様の構成を有する部分には同一の参照符を付して説明を省略する。
【0047】
図5に示す例の発光装置41では、半導体発光装置30から発せられた励起光は、第3の波長変換部材44、第2の波長変換部材43、第1の波長変換部材42でそれぞれ各色に変換される。この際、半導体発光素子30が発する光が、第3の波長変換部材44、第2の波長変換部材43、第1の波長変換部材42の順に入射するように構成されてなることによって、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子47を含む第3の波長変換部材44で発光した光は、その上の蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子46を含む第2の波長変換部材43および蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子45を含む第1の波長変換部材42で吸収されにくい。また、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子46を含む第2の波長変換部材43で発光した光は、その上の蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子45を含む第1の波長変換部材42で吸収されにくい。これは、一般に蛍光体が、その蛍光を発する波長における光吸収率と比べて、蛍光の波長よりも長波長域における光吸収率が小さいことに起因する(特許文献6を参照)。このため、図5に示す例の発光装置41では、各波長変換部材による光吸収を低減して、可視光を効率良く発光させることができる。
【0048】
さらに、本発明の発光装置41では、第1〜第3の蛍光体粒子45,46,47がそれぞれ被膜48,49,50で覆われているため、蛍光体粒子の表面における光の反射が少なく、その結果として蛍光の再吸収が多くなるため、上述したこのような配置にすることによる再吸収を低減するメリットが大きくなる。これにより、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体粒子の発光スペクトルの半値幅が、酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の場合は、たとえば50nm以上と広いため、演色性が良好である発光装置を実現することができる。
【0049】
また図6は、本発明のさらに好ましい他の例の発光装置61を模式的に示す断面図である。図6に示す例の発光装置61は、半導体発光素子30が発する光が、第2の波長変換部材43、第3の波長変換部材44、第1の波長変換部材42の順に入射されるように構成されてなること以外は、図5に示した例の発光装置41と同様であり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略している。図6に示す例の発光装置61は、半導体発光素子30側から、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子(第2の蛍光体粒子)46が媒体52に分散された第2の波長変換部材43、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子(第3の蛍光体粒子)47が媒体53に分散された第3の波長変換部材44、ならびに、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子(第1の蛍光体粒子)45が媒体51に分散された第1の波長変換部材42が順次積層された構造を備えている。
【0050】
本発明では、図6に示すように第1〜第3の波長変換部材42,43,44を配置した場合であっても、視感度が低く発光効率も他の色に比べて若干劣る蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子45を半導体発光素子30から離れた位置に配置していることにより、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子46を含む第2の波長変換部材43および蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子47における第1の蛍光体粒子45からの蛍光の再吸収を抑制することができる。このように、励起光の吸収が多い蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子45を含む第1の波長変換部材42を最上層とすることによって、第2の蛍光体粒子46からのピーク波長が500〜600nmの蛍光および第3の蛍光体粒子47からのピーク波長が600〜700nmの蛍光を効率よく取り出すことができ、全体として波長変換効率に優れた白色の発光装置を実現することができる。また、このような発光装置61においても、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体の発光スペクトルの半値幅がたとえば50nm以上と広いため、演色性が良好である。
【0051】
本発明の発光装置21,41,61に用いられる半導体発光素子30は、当分野において従来より広く用いられている適宜のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、良好な光電変換効率を有することから、発光ピーク波長が370〜480nmの範囲内のものを用いることが好ましく、発光ピーク波長が390〜420nmの範囲内(紫色から近紫外)のものを用いることがより好ましい。このような半導体発光素子30は、GaN系半導体(少なくともGaとNを含み、必要に応じてAl、Inおよびn型ドーパント、p型ドーパントなどを用いた半導体)を用いることが好ましく、特に好適な例としては発光ピーク波長が405nmのGaN系半導体よりなるLEDが例示される。
【0052】
また本発明における半導体発光素子30として、青色光源(波長ピーク波長420〜480nm、たとえば460nm程度のもの)を用いても勿論よい。この場合、青色蛍光体粒子を持ちなくとも、青色および白色を呈する発光装置を実現できるという利点がある。また、現在の技術では、青色蛍光体の効率は他の蛍光体(赤色蛍光体、緑色蛍光体など)と比較すると若干劣るが、青色光源を用いることで、全体としての発光効率を増大させることができるという利点もある。
【0053】
また、半導体発光素子30としては、GaN系半導体よりなる半導体発光素子以外に有機半導体や酸化亜鉛半導体などよりなる半導体発光素子を用いてもよく、また半導体レーザを用いてもよい。
【0054】
本発明の波長変換部材および発光装置を製造する方法については特に制限されるものではなく、当分野において従来より広く行われている適宜の方法によって製造することが可能である。たとえば、まず、蛍光体粒子に被膜形成材料の子粒子を付着させて、蛍光体粒子を覆う被膜を形成する。次に、被膜を形成した蛍光体粒子と媒体の形成材料(たとえば液状のシリコーン樹脂)中に添加し、均一に混合した後、所定時間加熱(たとえば媒体をシリコーン樹脂で形成する場合には120℃で60分間加熱)して、媒体の形成材料を硬化させて媒体を形成する。図1に示した例のような波長変換部材1を作製する場合には、従来公知の適宜の方法を用いて、硬化後の媒体がシート状物となるように成形すればよい。また、図4〜図6に示した例のような発光装置に用いる場合には、たとえば半導体発光素子30、電極32,33およびミラー34に設けた基材31上にこれらによって形成された空間を充填するようにして被膜が形成された蛍光体粒子を均一に混合させた媒体の形成材料を注入して、波長変換部材を作製する。この際、図5および図6に示したように第1〜第3の波長変換部材を作製する場合には、順次、各波長変換部材を作製するようにすればよい。また、図4に示したように、媒体中にそれぞれ被膜で覆われた第1〜第3の蛍光体粒子を分散させた波長変換部材を形成する場合には、それぞれ被膜で覆われた第1〜第3の蛍光体粒子を媒体の形成材料に添加して均一に混合後、1つの波長変換部材を作製するようにすればよい。
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
図2に示したように不定形を有するEuを賦活したβサイアロン蛍光体(組成式:Si3-zAlz4-zz:Eu2+)である緑色蛍光体粒子2に、酸化マグネシウムの子粒子を付着させて、被膜3で覆った。被膜3の厚みは、酸化マグネシウムの重量比が0.1の場合に、0.5μm程度であった。次に、上述の被膜3を形成した緑色蛍光体粒子2をシリコーン樹脂/蛍光体粒子の重量比が100g/10gの割合で、液体状のシリコーン樹脂に添加して均一に混合した後、厚み0.5mmのシート状物に成形し、120℃、60分間の加熱によって硬化させて、図1に示した波長変換部材1を作製した。
【0057】
<比較例1>
被膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、波長変換部材を形成した。
【0058】
<評価>
実施例1および比較例1でそれぞれ作製された波長変換部材について、分散性の評価を以下のようにして行った。β−サイアロン蛍光体および酸化マグネシウムをコーティングしたβ−サイアロン蛍光体を、それぞれ0.5gずつとり、それぞれシリコーン樹脂5gに均一に分散させてガラス管に入れ、沈降試験を行った。均一に分散させた状態から48時間放置した後、分離した上澄み液の高さを比較した。β−サイアロン蛍光体の上澄み液の高さが2mmであったのに対して、酸化マグネシウムをコーティングしたα−サイアロンの上澄み液の高さは殆ど0mmであった。このことから、酸化マグネシウムをコーティングすることにより、分散性は向上したものと考えられる。
【0059】
また、β−サイアロン蛍光体および酸化マグネシウムをコーティングしたβ−サイアロン蛍光体を、それぞれ0.1gずつとり、それぞれエタノール10gに分散させてゼータ電位を測定した(電気泳動法によるゼータ電位測定装置を使用)。比較例1では25mVであったのに対して、実施例1では60mVと大きくなっており、被膜を形成したことで蛍光体粒子の媒体への分散性が向上されていたことが分かった。これは、実施例1では、誘電率が7.5である緑色蛍光体粒子2を覆って誘電率が9である酸化マグネシウムを用いて被膜3を形成したことに起因するものと考えられる。
【0060】
<実施例2>
図4に示した例の発光装置21を作製した。第1の蛍光体粒子23としてCeを賦活したJEM蛍光体(組成式:La1-xAl(Si6-z,Alz)N10-zz:Ce3+x)である青色蛍光体粒子(誘電率:7.5、屈折率:2.0、蛍光のピーク波長:490nm)、第2の蛍光体粒子24としてEuを賦活したβサイアロン蛍光体(組成式:Si3-zAlz4-zz:Eu2+)である緑色蛍光体粒子(誘電率:7.5、屈折率:2.0、蛍光のピーク波長:540nm)、第3の蛍光体粒子25としてEuを賦活したCaAlSiN3からなる赤色蛍光体粒子(誘電率:7.5、屈折率:2.0、蛍光のピーク波長:660nm)を用い、これらの第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25をそれぞれ酸化マグネシウム(誘電率:9.0、屈折率:1.74)で覆って被膜26,27,28を形成した。これらをシリコーン樹脂/合計の蛍光体粒子の重量比が100g/15gとなるように、それぞれの蛍光体を液体状のシリコーン樹脂(硬化時の屈折率:1.4)に添加して均一に混合した後、基体31上に注入し、120℃、60分間の加熱によって硬化させた。このようにして、媒体29中にそれぞれ被膜26,27,28が形成された第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25が分散されてなる波長変換部材22を形成した。
【0061】
なお、基体31には、電極32,33、当該電極32,33に電気的に接続された半導体発光素子30、ならびにミラー34が予め形成されており、媒体29中に半導体発光素子30が封止されるように、上記波長変換部材22を形成した。半導体発光素子30としては、発光ピーク波長が405nmのGaN系半導体(少なくともGaとNを含み、必要に応じてAl、Inおよびn型ドーパント、p型ドーパントなどを用いた半導体)よりなるLEDを用いた。
【0062】
このようにして作製された図4に示した例の発光装置21において、第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25は、これら蛍光体粒子よりも誘電率が大きい酸化マグネシウムで形成された被膜26,27,28で覆われているため、媒体29中における分散性が向上されている。また、波長変換部材22における媒体29の形成材料であるシリコーン樹脂と、第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25の間の屈折率を有する酸化マグネシウムにて被膜26,27,28を形成したことによって、第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25への励起光の入射効率および第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25からの蛍光の取り出し効率を図ることができた。このような発光装置21は、3種類の蛍光体粒子を配合することにより、ほぼ白色である色度座標x=0.32、色度座標y=0.35の色の発光を得ることができた。また、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体粒子の発光スペクトルの半値幅がたとえば50nm以上と広いため、演色性が良好であった。このように、酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子を覆い蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有する被膜と、前記被膜で覆われた蛍光体粒子を分散させた媒体とを備える波長変換部材を半導体発光素子と組み合わせることで、小型で白色を呈する高出力の発光装置が得られた。
【0063】
<実施例3>
図5に示した例の発光装置41を作製した。第1〜第3の蛍光体粒子45,46,47および被膜48,49,50としては、実施例2で上述した第1〜第3の蛍光体粒子23,24,25および被膜26,27,28と同様のものを用いた。
【0064】
まず、被膜50で覆われた第3の蛍光体粒子47(赤色蛍光体粒子)を、シリコーン樹脂/蛍光体粒子の重量比が100g/0.5gとなるように、液状のシリコーン樹脂中に均一に混合し、基体31上に注入した後、120℃、60分間の加熱によって硬化させて、第3の波長変換部材44を形成した(厚み:0.5mm)。基体31には、電極32,33、当該電極32,33に電気的に接続された半導体発光素子30、ならびにミラー34が予め形成されており、媒体29中に半導体発光素子30が封止されるように、上記第3の波長変換部材44を形成した。半導体発光素子30としては、発光ピーク波長が405nmのGaN系半導体よりなるLEDを用いた。
【0065】
次に、被膜49で覆われた第2の蛍光体粒子46(緑色蛍光体粒子)を、シリコーン樹脂/蛍光体粒子の重量比が100g/1.4gとなるように、液状のシリコーン樹脂中に均一に混合し、第3の波長変換部材44上に重ねるように注入し、120℃、60分間の加熱によって硬化させて、第2の波長変換部材43を形成した(厚み:0.5mm)。
【0066】
最後に、被膜48で覆われた第1の蛍光体粒子45(青色蛍光体粒子)を、シリコーン樹脂/蛍光体粒子の重量比が100g/13.1gとなるように、液状のシリコーン樹脂中に均一に混合し、第2の波長変換部材43上に重ねるように注入し、120℃、60分間の加熱によって硬化させて、第1の波長変換部材42を形成した(厚み:0.5mm)。
【0067】
このようにして、図5に示したように、半導体発光素子30が発する光が、第3の波長変換部材44、第2の波長変換部材43、第1の波長変換部材42の順に入射するように構成されてなる発光装置41を作製した。このような発光装置41では、半導体発光装置30から発せられた励起光は、第3の波長変換部材44、第2の波長変換部材43、第1の波長変換部材42でそれぞれ各色に変換される。この際、第3の蛍光体粒子47として赤色蛍光体粒子を含む第3の波長変換部材44で発光した光は、その上の第2の蛍光体粒子46として緑色蛍光体粒子を含む第2の波長変換部材43および第1の蛍光体粒子45として青色蛍光体粒子を含む第1の波長変換部材42で吸収されにくい。また、第2の蛍光体粒子46として緑色蛍光体粒子を含む第2の波長変換部材43で発光した光は、その上の第1の蛍光体粒子45として青色蛍光体粒子を含む第1の波長変換部材42で吸収されにくい。このように、各波長変換部材による光吸収を低減して、可視光を効率良く発光させることができる。
【0068】
さらに、本発明の発光装置41では、第1〜第3の蛍光体粒子45,46,47がそれぞれ被膜48,49,50で覆われているため、蛍光体粒子の表面における光の反射が少なく、その結果として蛍光の再吸収が多くなるため、上述したこのような配置にすることによる再吸収を低減するメリットが大きくなる。これにより、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体粒子の発光スペクトルの半値幅が、酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体の場合は、たとえば50nm以上と広いため、演色性が良好である発光装置を実現することができる。
【0069】
<実施例4>
第3の波長変換部材44と第2の変換部材43の形成順序を逆にしたこと以外は実施例3と同様にして、図6に示した例の発光装置61を作製した。このようにして得られた発光装置61は、半導体発光素子30が発する光が、第2の波長変換部材43、第3の波長変換部材44、第1の波長変換部材42の順に入射するように構成されてなる。この配置によっても、視感度が低く発光効率も他の色に比べて若干劣る第1の蛍光体粒子45としての青色蛍光体粒子を半導体発光素子30から離れた位置に配置することによって、第2の蛍光体粒子46として緑色蛍光体粒子を含む第2の波長変換部材43および第3の蛍光体粒子47として赤色蛍光体粒子を含む第3の波長変換部材44における青色の蛍光の再吸収を抑制することができる。
【0070】
したがって、このような実施例4で作製した発光装置61であっても、青色蛍光体を含む第1の波長変換部材42を最上層とすることによって、緑色および赤色を効率よく取り出すことができ、全体として波長変換効率に優れた白色の発光装置が得られた。これにより、色の三原色を発光することができ、また各蛍光体の発光スペクトルの半値幅がたとえば50nm以上と広いため、演色性が良好であった。
【0071】
今回開示された実施の形態、実施例および比較例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の好ましい一例の波長変換部材1を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の波長変換部材に用いられる被膜3が形成された蛍光体粒子2の好ましい一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の波長変換部材に用いられる被膜3’が形成された蛍光体粒子2の好ましい他の例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の好ましい一例の発光装置21を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の好ましい他の例の発光装置41を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明のさらに好ましい他の例の発光装置61を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 波長変換部材、2 蛍光体粒子、3,3’ 被膜、4 媒体、21,41,61 発光装置、22 波長変換部材、23,45 第1の蛍光体粒子、24,46 第2の蛍光体粒子、25,47 第3の蛍光体粒子、26,27,28,48,49,50 被膜、29,51,52,53 媒体、30 半導体発光素子、31,32 電極、34 ミラー、42 第1の波長変換部材、43 第2の波長変換部材、44 第3の波長変換部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸窒化物または窒化物で形成された蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子を覆い蛍光体粒子よりも大きな誘電率を有する被膜と、前記被膜で覆われた蛍光体粒子を分散させた媒体とを備える、波長変換部材。
【請求項2】
前記蛍光体粒子が、Si、Al、O、Nおよび1種もしくは2種以上のランタノイド系希土類元素を含む酸窒化物で形成されたものである、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記蛍光体粒子が、Ca、Si、Al、Nおよび1種もしくは2種以上のランタノイド系希土類元素を含む窒化物で形成されたものである、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記被膜が金属酸化物で形成されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記金属酸化物が酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項4に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記被膜の厚みが0.05〜3μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記媒体が、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が400〜500nmの第1の蛍光体粒子と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が500〜600nmの第2の蛍光体粒子と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が600〜700nmの第3の蛍光体粒子とが、前記媒体中に分散されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が400〜500nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第1の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が500〜600nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第2の波長変換部材と、前記被膜で覆われ、蛍光のピーク波長が600〜700nmの蛍光体粒子が前記媒体中に分散された第3の波長変換部とを備える、請求項1〜9のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項11】
半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が入射するように配置された請求項1〜10のいずれかに記載の波長変換部材とを備える、発光装置。
【請求項12】
半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が、前記第3の波長変換部材、前記第2の波長変換部材、前記第1の波長変換部材の順に入射するように配置された請求項10に記載の波長変換部材とを備える、発光装置。
【請求項13】
半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する光が、前記第2の波長変換部材、前記第3の波長変換部材、前記第1の波長変換部材の順に入射するように配置された請求項10に記載の波長変換部材とを備える、発光装置。
【請求項14】
前記半導体発光素子の発光ピーク波長が370〜480nmであることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
前記半導体発光素子の発光ピーク波長が390〜420nmであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の発光装置。
【請求項16】
前記半導体発光素子が、GaN系半導体で形成された半導体発光素子であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150518(P2008−150518A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341112(P2006−341112)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】