説明

波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置

【課題】共振器長を短くすることができると共に、出力光へのASE光の混入を抑制してSN比を向上させることができ、
製作時に反射膜が剥がれることを抑制して、正確な形状の反射膜の形成が可能となる波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置を提供する。
【解決手段】部分反射ミラーと走査ミラーとによる共振器によって、走査ミラーで選択された波長の光がレーザー発振されるように構成された波長掃引光源装置であって、
前記走査ミラーは、円盤形状の基板上に該円盤形状の円周に沿って等間隔に形成された等幅のスリット状のミラーによって構成され、
前記スリット状のミラーは、前記円盤形状の基板上に成膜された反射膜上における遮光膜の前記ミラーとなる部分を除去することにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置に関し、特に発振波長を掃引することが可能な波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源、特にレーザー光源については、発振波長を可変とするものが通信ネットワーク分野や検査装置の分野で種々利用されてきている。
通信ネットワーク分野では、高速な波長切替、また、検査装置の分野では高速で広範な波長掃引が、要望されている。
検査装置における波長可変(掃引)光源の一つ用途として、レーザー分光器、分散測定器、膜厚測定器、波長掃引型光トモグラフィー(Swept SourceOptical Coherence Tomography、以下、これをSS−OCTと記す。)装置がある。
SS−OCTは、低コヒーレンス光干渉を用いて検体の断層像を撮像するものである。ミクロンオーダーの空間分解能が得られることや無侵襲性等の理由から医用分野における研究が近年、盛んになってきている撮像技術である。
【0003】
現在、OCTは、深さ方向の解像度を数ミクロンとし、且つ数mmの深さまで断層像を得ることができ、眼科撮影、歯科撮影等に用いられている。
中でも、SS−OCTは、光源の発振波長(周波数)を時間的に掃引するものである。これはフーリエ領域(FD)OCTの範疇に入る。
同じくFDOCTの範疇に入るスペクトル領域(スペクトルドメイン:SD)OCTが干渉光を分光する分光器を必用とするのに対し、このSS−OCTでは分光器を用いないことから、光量のロスが少なく高SN比の像取得も期待されている。
【0004】
上記SS−OCT技術を適用した医用画像撮像装置を構成する場合には、掃引速度が速いほど画像取得時間を短縮でき、また、波長掃引幅が広いほど断層像の深さ空間解像度を高めることが可能なためこれらのパラメータは重要である。
具体的には波長掃引幅Δλ、発振波長λ0、検体の屈折率をnとするとき、深さ分解能δLは、

δL=2ln2/π×λo2/nΔλ(式1)

で表される。
したがって、深さ分解能を高めるためには波長掃引幅の拡大が必要であり、広帯域な波長掃引光源が求められている。
一方、SS−OCT装置においては検体の奥深い構造まで検出できること、すなわち長い可干渉距離を実現できることが望まれる。このため、SS−OCT装置の光源の性能としては、発振スペクトル線幅がより狭いほうが望ましい。
具体的には発振スペクトル線幅δλ、発振波長λ0、検体の屈折率をnとするとき、可干渉距離(コヒーレンス長)Lは、

L=λo2/nδλ(式2)

で表わされる。
したがって検体の奥行き方向の測定範囲を広げるためには発振スペクトル線幅の狭小化が必要であり、狭い線幅の波長掃引光源が求められている。
また、波長掃引型光干渉トモグラフィーを生体の断層画像取得に用いる場合、生体内部に照射された光はほとんどが拡散され、後方散乱光として干渉計に結合される率は−40dB〜−50dBと非常に小さい。
したがって、より深い位置での信号検出を可能とするために、高出力な波長掃引光源が求められている。
こうした中、SS−OCT装置に用いる光源として、光利得媒体と波長可変機構とを共振器の中に組み込んだ、外部共振器型の波長掃引光源が主に用いられている。このような光源の中で、波長可変機構としてスリットを移動させて波長を可変とする手法が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1は、光増幅媒体と、該光増幅媒体の外部に回折格子を用いた反射器を備えた波長可変光源を開示する。図5に特許文献1に記載の光源装置を示す。図5−(a)においては、所定の波長利得幅を有する光増幅媒体201より出射された光は、コリメータレンズ202を介して平行光束になる。
この平行光束は回折格子203に入射し,回折波長分散される。回折し波長分散された光束は集光レンズ205によって,回転円盤207上に各波長毎に対応した広がりで集光する。
回転円盤207にはスリット209が放射状に配置されている。
回転円板207の回折格子と反対側には、スリットを透過した光束を反射し一対の共振器の一つとして機能する反射ミラー210が配置されている。
スリット209の一つが、先ほどの各波長毎に対応した広がりで集光する位置にくると、そこで集光光の一部が透過し、この時波長が選択される。透過した光束は反射ミラー210で反射され、再びスリット209を透過し、往路を戻って光増幅媒体201に戻り、光増幅される。
212は一対の共振器におけるもう一つの半透過の反射器であり、ここから不図示のファイバーにカップリングされOCT装置に出力される。
図5−(b)は特許文献1に記載の他の光源装置である。
図5−(b)の装置では、回転円盤207と反射ミラー210の代わりに、スリット状の反射膜232が放射状光に配置された回転円板231を配置している。スリット状の反射膜232の一つが、先ほどと同様に、各波長毎に対応した広がりで集光する位置にくると、そこで集光光を反射する。このとき波長が選択的され、往路を戻って光増幅媒体201に戻り、光増幅される。
212は一対の共振器におけるもう一つの半透過の反射器であり、ここから不図示のファイバーにカップリングされOCT装置に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−98395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
波長掃引光源を用いて医用画像撮像装置を構成する場合には、掃引速度が早いほど像取得時間を短縮できることが好ましいことについては、[背景技術]のところで述べた。
深さ方向(Z)を100KHz、それと横方向(X)にサンプリング点数1000点で2次元の断層像を撮像するには0.01秒かかる。これをさらに縦方向(Y)を同じくサンプリング点数1000点とると10秒で三次元像が取得できることがわかる。
特許文献1に開示された回転円盤を波長選択フィルターとして用いる波長掃引光源は、比較的高速な波長掃引が可能な波長掃引光源であるが、つぎのような課題を有している。
すなわち、図5−(a)に示した透過型スリットを用いる装置では、スリット209と反射ミラー210を共に集光レンズ205の焦点内に配置する必要があるため、集光レンズ205の焦点距離が長くなり、共振器長をあまり短くできない。
このため、高速に波長掃引すると共振器内のラウンドトリップ数が少なくなり、コヒーレンシーが悪化して、OCT像の観察深度が浅くなる。
また、図5−(b)に示したスリット状の反射膜を用いる装置では、出力光へのASE光の混入が多く、SN比が良くなく、更にスリット状の反射膜はパターン形成プロセス途中で剥がれやすく、多数の正確な形状の反射膜を形成することが困難となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、共振器長を短くすることができると共に、出力光へのASE光の混入を抑制してSN比を向上させることができ、
製作時に反射膜が剥がれることを抑制して、正確な形状の反射膜の形成が可能となる波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の波長掃引光源装置は、
部分反射ミラーと、
半導体光増幅媒体と、
前記半導体光増幅媒体の出射光をコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートされた光束に波長よって異なる角度分散を与える回折格子と、 前記回折格子により角度分散を与えられた光束を波長により異なる位置に集光する集光レンズと、
前記集光レンズによる焦点面内を走査して一部の波長の光を反射する走査ミラーと、
を有し、前記部分反射ミラーと前記走査ミラーとによる共振器によって、前記走査ミラーで選択された波長の光がレーザー発振されるように構成された波長掃引光源装置であって、
前記走査ミラーは、円盤形状の基板上に該円盤形状の円周に沿って等間隔に形成された等幅のスリット状のミラーによって構成され、
前記スリット状のミラーは、前記円盤形状の基板上に成膜された反射膜上における遮光膜の前記ミラーとなる部分を除去することにより形成されていることを特徴とする。
また、本発明の光断層画像撮像装置は、上記した波長掃引光源装置を備える光源部と、
前記光源部からの光を検体に照射し、被検体からの反射光を伝達させる被検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記被検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記被検体の光断層画像を取得する画像処理部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共振器長を短くすることができると共に、出力光へのASE光の混入を抑制してSN比を向上させることができ、
製作時に反射膜が剥がれることを抑制して、正確な形状の反射膜の形成が可能となる波長掃引光源装置及び該光源装置を備える光断層画像撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態及び実施例1における発振波長を掃引することが可能な波長掃引光源装置の構成例について説明する模式図。
【図2】本発明の実施形態及び実施例1におけるスリット状ミラーの構造について説明する図。
【図3】本発明の実施例2における波長掃引光源装置の構成例を説明する図。
【図4】本発明の実施例4における光断層画像撮像装置を説明する図。
【図5】従来例における波長掃引光源の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態における発振波長を掃引することが可能な波長掃引光源装置の構成例について、図2の模式図を用いて説明する。
図2において、光利得媒体としての光増幅器26は、レーザー発振の発振波長に利得を有しているものであって、例えば半導体光増幅媒体(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)を用いる。
この光増幅器26の一方の端面からの出射光をコリメートレンズ25で平行光とする。この平行光を波長によって異なる角度分散を与える回折格子24に入射させ、光の波長に応じて異なる角度で回折させる。
この回折光を集光レンズ23によって集光させ、集光された光の焦点位置に、走査ミラーを構成する細長い等幅のスリット状ミラー22が円周上に多数形成された反射ホイール21を設ける。
焦点位置は波長に応じて異なるため、スリット状ミラー22の位置に応じて特定の波長のみが反射され、光増幅器26に再び入射される。
一方、光増幅器26の他方の端面からの光出力はコリメートレンズ27で平行光とする。この平行光の一部は部分反射ミラー28で反射され、光増幅器26に再び入射される。
したがって、スリット状ミラー22と部分反射ミラー28が共振器を構成し、スリット状ミラーで選択された波長の光が外部共振器型光源としてレーザー発振する。そして、部分反射ミラー28を透過した光を光出力として取り出す。
スリット状ミラー22の位置を機械的に移動させることで集光レンズによる焦点面内を走査し、反射される光の波長が変化するため、波長可変が実現できる。
【0013】
図1は、スリット状ミラー22の構造について説明する図である。
スリット状ミラー22は、円盤形状の基板11上に、反射膜12、遮光膜13を順次形成し、遮光膜13のミラーとなる部分を除去することにより形成されている。
基板11としては、ガラス、アルミ等の金属、ポリカーボネイト等の樹脂を円盤形状に加工したもの等を用いることができる。
反射膜12は使用する波長で反射率の高い金属をスパッタや真空蒸着で成膜し形成する。
反射膜の材料は、反射率が高く、基板・遮光膜との密着性が良く、耐候性に優れた材料が適しており、Al、Au、Ag、Cu、Rhのうちのいずか一つの金属、または前記金属を主成分とする合金である金合金、銀合金、アルミ合金、銅合金、ロジウム合金等が好適である。
遮光膜13は、光を吸収する材料ならなんでも利用できるが、安定に正確な形状で形成するために、反射膜よりも4フッ化メタンによる反応性ドライエッチングでのエッチング速度が大きい材料が好ましい。特にドライエッチングが容易なシリコンやゲルマニウム等が好適である。
【0014】
上記のように作成した反射ホイール21を用い、図2に示す波長掃引光源を構成する。
この波長掃引光源は、反射ホイールを用いているため集光レンズ23に焦点距離の短いレンズを使用することが可能となり、共振器長を短くできる。
OCTに必要な8mm以上のコヒーレンス長を得るためには、共振器を光子が往復する回数が10回程度は必要である。
そこで、例えば掃引速度100KHzで波長掃引できる波長掃引光源を実現するためには、共振器を光子が往復する回数が10回以上とするために、共振器長は150mm以下にする必要がある。
上記本発明の波長掃引光源は、共振器長150mm以下で構成することは容易である。さらに、反射ホイール21が基板上/大面積の反射膜/スリット形状に微小面積をエッチングした遮光膜という構成で作られているので、反射ホイール21製造時の歩留まりが高く、作成した反射ホイール21の耐久性も良好になる。
【0015】
以上の本実施形態の波長掃引光源装置によれば、反射ミラーの上に波長選択するためのスリットを遮光膜によって一体で形成されていることから、焦点距離の短い集光レンズを使用することができる。それにより、共振器を短く構成することができ、コヒーレンス長の長い光出力が得られる。その結果、深い観察深度が得られ、且つ、製作時に反射ミラーが剥がれるといった問題を生じない波長掃引光源を実現することができる。
また、遮光膜上に反射防止膜を形成することにより、更に出力光へのASE光の混入を低減させることができ、SN比を向上させることが可能となる。
また、遮光膜を、反射膜よりも4フッ化メタンによる反応性ドライエッチングでのエッチング速度が大きい材料で形成することにより、波長選択用の円盤作成時のプロセスマージンを広くすることができる。これにより、低コストで安定に波長掃引光源を作成することが可能となる。
前記反射膜を、Al、Au、Ag、Cu、Rhのうちのいずか一つの金属、または前記金属を主成分とする合金によって形成し、遮光膜を、SiまたはGeによって形成する。これにより、波長選択用円盤で選択した波長の光の光量と、選択しなかった波長の光の光量差を大きくすることができ、出力光のSN比を更に向上させることが可能となる。
前記反射防止膜を、窒化シリコンまたは2酸化シリコンによって形成することによって、上記したエッチング速度が大きい材料で形成する場合と同様に、波長選択用の円盤作成時のプロセスマージンを広くして、低コストで安定に波長掃引光源の作成が可能となる。
【実施例】
【0016】
[実施例1]
実施例1として、図1、図2に示した波長掃引光源装置の構成例について説明する。
まず、基板11として内径25.4mm、外径63.5mm、厚さ3mmのガラス円板を用い、この基板上に反射膜12として金にアルミニウムを微量添加した金合金薄膜を200nmの厚さでスパッタにより形成した。
さらに、この反射膜上に遮光膜13となるアモルファスシリコン膜を3050nmの厚さでスパッタにより形成した。
この遮光膜上に、ポジ型レジストを塗布し、レーザー露光機を用いて幅3μm、長さ1000μmのスリット形状を、半径30mmの位置に1度刻みで放射状に360本パターニングした。
これを現像してエッチング用マスクを形成し、ドライエッチングでシリコン膜をエッチングして遮光膜13を形成し、スリット状ミラー22が等間隔に360本形成された反射ホイール21を作成した。
ここで、遮光膜となるアモルファスシリコン膜の厚さは、フレネルの公式等を用いて遮光膜の反射率が小さくなる膜厚に選べばよい。
【0017】
上記のように作成した反射ホイール21を用い、図2に示す波長掃引光源を構成した。
集光レンズ23の焦点距離を5mmとし、コリメートレンズ25の焦点距離を3mm、コリメートレンズ27の焦点距離を2mmとした。
回折格子24は1200本/mmの透過型回折格子を用いた。光増幅器26として波長850nmを中心に40nmの波長幅でゲインを持つSOAを使用した。この波長掃引光源の共振器長は約50mmと非常に短くする事が出来た。共振器長が短いため、反射ホイール21を不図示のスピンドルモーターで30000rpmで回転させることで、830nmから870nmの波長掃引幅で180kHzという高速の波長掃引が可能であった。
また、反射ホイール21が基板上/大面積の反射膜/スリット形状に微小面積をエッチングした遮光膜という構成で作られているので、反射ホイール21製造時の歩留まりが高く、作成した反射ホイール21の耐久性も良好なものを得ることができた。
【0018】
[実施例2]
実施例2として、実施例1と異なる波長掃引光源装置の構成例について、図3を用いて説明する。
本実施例では、基板11として内径25.4mm、外径63.5mm、厚さ3mmのガラス円板を用い、この基板上に反射膜12として金にアルミニウムを微量添加した金合金薄膜を200nmの厚さでスパッタにより形成した。
その上に、遮光膜13となるアモルファスシリコンを2960nmの厚さでスパッタにより形成した。更に、この遮光膜上に反射防止膜31となる窒化シリコン(SiN)を120nmの厚さでスパッタにより形成した。
この上に、ポジ型レジストを塗布し、レーザー露光機を用いて幅3μm、長さ1000μmのスリット形状を、半径30mmの位置に1度刻みで放射状に360本パターニングした。
これを現像してエッチング用マスクを形成し、CF4と酸素の混合ガスでドライエッチングしてスリット状の反射ミラー22を形成した。この様にしてスリット状ミラー22が等間隔に360本形成された反射ホイール21を作成した。
上記の様に作成した反射ホイール21を用い、実施例1と同様に図2に示す波長掃引光源を構成した。
実施例2の波長掃引光源は、反射防止膜31により遮光部の反射率が1%未満に抑えられたことにより光出力のSN比が改善した。
反射防止膜として、ここではSiNを用いたが、他の材料も利用でき、2酸化シリコンも好適である。
【0019】
[実施例3]
実施例3として、上記各実施例と異なる形態の構成例について説明する。
本実施例では、実施例2と同様の基板を用い、この基板上に反射膜12としてアルミニウムにシリコンを微量添加したアルミニウム合金を100nmの厚さでスパッタにより形成した。
その上に、遮光膜13となるゲルマニウムを1180nmの厚さでスパッタにより形成した。更に、反射防止膜31としてSiNを125nmの厚さでスパッタにより形成した。
これを実施例2と同様に加工して反射ホイール21を作成した。この反射ホイール21を用い、図2に示す波長掃引光源を構成した。
集光レンズ23の焦点距離を9mmとし、コリメートレンズ25の焦点距離を4mm、コリメートレンズ27の焦点距離を3mmとした。回折格子24は600本/mmの透過型回折格子を用いた。
光増幅器26として波長1050nmを中心に80nmの波長幅でゲインを持つSOAを使用した。
この波長掃引光源の共振器長は約70mmとなった。
反射ホイール21を不図示のスピンドルモーターで30000rpmで回転させることで、1010nmから1090nmの波長掃引幅で180kHzという高速の波長掃引が可能であった。
また、遮光膜としてゲルマニウム薄膜を用いることで、反射ホイール21の生産性を損なわずに1μm帯の高速波長掃引光源が実現できた。
【0020】
[実施例4]
実施例4として、光源部に本発明の波長掃引光源装置を備えた光断層画像撮像装置(OCT)について、図4を用いて説明する。
光断層画像撮像装置(OCT)の原理は,トワイマン・グリーン型の干渉計の構成で説明できる。
一方の腕である厚み(光軸)方向に複数の界面からなる被検面からの反射光と,他方の腕である参照面からの光束との光束を干渉させ,光源の波長を掃引することにより得られる変調干渉信号をフーリエ変換して得られるものである。
このOCTの被検面の深さ方向の分解能と検出幅は光源スペクトルの波長掃引幅とスペクトル幅によることは[背景技術]で述べた。
(1)式のδLが深さ分解能であり、(2)式のLが深さ方向の検出幅となる。
【0021】
図4において102は本発明による波長掃引光源装置、106は被検体である眼底を示す。
110は眼底を一次元走査するためのミラーである。
108は参照反射面、104は被検体からの光束と参照面からの光束を合波干渉させるファイバーカプラー、115は変調干渉信号を光電変換するディテクターである。
116は電気的に検出した信号をデジタル化し、フーリエ変換などの計算をして断層画像を計算するコンピュータ、117はその断層像を可視化するディスプレイである。
【0022】
光源装置102からの光束はファイバー103をとおり、カップラー104で2方向に分岐する。その一方の腕は、ファイバー105をとおり、被検体である眼底の網膜を照射する。
そして、反射光が同様にファイバー105を再びとおりファイバーカップラー104に戻る。
他方の腕に分岐した光束は、ファイバー107をとおり参照ミラー108を照射する。この参照ミラー108からの反射光がファイバー107を再びとおりファイバーカップラー104にもどる。
このように、被検体測定部から伝達された反射光と、参照部から伝達された反射光とがファイバーカップラー104(干渉部)で干渉し、この干渉光がファイバー114をとおって光検出部を構成する光電変換ディテクター115に入る。
このとき光源装置102からの波長を変化させると、断層構造に応じた変調干渉信号がえられる。
この信号をデジタル化し画像処理部を構成するコンピュータ118でフーリエ変換することにより断層信号を取得することができる。これはポイントの断層信号なので、ミラー110を傾け走査して一次元方向の断層像を測定し、ディスプレイ117により可視化することにより光断層像が検出できる。
以上による光源装置によって挿引速度が100KHz以上のため高速に光断層画像が検出でき、また検出深さ幅が広く深さ方向の検出分解能が高いOCT装置を提供できる。
【符号の説明】
【0023】
11:基板
12:反射膜
13:遮光膜
21:反射ホイール
22:スリット状ミラー
23:集光レンズ
24:回折格子
25:コリメートレンズ
26:光増幅器
27:コリメートレンズ
28:部分反射ミラー
31:反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分反射ミラーと、
半導体光増幅媒体と、
前記半導体光増幅媒体の出射光をコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートされた光束に波長よって異なる角度分散を与える回折格子と、
前記回折格子により角度分散を与えられた光束を波長により異なる位置に集光する集光レンズと、
前記集光レンズによる焦点面内を走査して一部の波長の光を反射する走査ミラーと、
を有し、前記部分反射ミラーと前記走査ミラーとによる共振器によって、前記走査ミラーで選択された波長の光がレーザー発振されるように構成された波長掃引光源装置であって、
前記走査ミラーは、円盤形状の基板上に該円盤形状の円周に沿って等間隔に形成された等幅のスリット状のミラーによって構成され、
前記スリット状のミラーは、前記円盤形状の基板上に成膜された反射膜上における遮光膜の前記ミラーとなる部分を除去することにより形成されていることを特徴とする波長掃引光源装置。
【請求項2】
前記ミラーとなる部分を除した遮光膜上には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の波長掃引光源装置。
【請求項3】
前記反射防止膜は、窒化シリコンまたは2酸化シリコンによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波長掃引光源装置。
【請求項4】
前記遮光膜は、反射膜よりも4フッ化メタンによる反応性ドライエッチングでのエッチング速度が大きい材料で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の波長掃引光源装置。
【請求項5】
前記反射膜は、Al、Au、Ag、Cu、Rhのうちのいずれか一つの金属、または前記金属を主成分とする合金によって形成され、
前記遮光膜は、SiまたはGeによって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の波長掃引光源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の波長掃引光源装置を備える光源部と、
前記光源部からの光を被検体に照射し、該被検体からの反射光を伝達させる被検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記被検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記被検体の光断層画像を取得する画像処理部と、
を有することを特徴とする光断層画像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110328(P2013−110328A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255615(P2011−255615)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】