波長透過フィルタ及びこれを有する受動分岐型光ファイバ線路並びにその障害点検出システム
【課題】 比較的低コストで、受動分岐型光ファイバ線路の障害点を精度良く検出することができる障害点検出システムの構築に資するべく透過波長窓を容易且つ任意に設定することができる波長透過フィルタを提供する。
【解決手段】
光ファイバ11の長手方向に沿い反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティング12、13を直列に形成するとともに、ファイバーグレーティング12、13のうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで特定波長範囲の中の所定波長の光を透過させる透過波長窓14を設けた。
【解決手段】
光ファイバ11の長手方向に沿い反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティング12、13を直列に形成するとともに、ファイバーグレーティング12、13のうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで特定波長範囲の中の所定波長の光を透過させる透過波長窓14を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長透過フィルタ及びこれを有する受動分岐型光ファイバ線路並びにその障害点検出システムに関し、特に1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐し、1台の親局に対し多数の加入者局を接続するファイバ網で、例えばFTTH(Fiber To The Home)を実現する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
受動分岐型光ファイバ線路は1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐し、1台の親局に対して多数の加入者局を接続するファイバ網である。FTTHの光ファイバでは1対1で接続される構成、光・電気変換器により能動的に分岐する構成の他に、前記受動分岐方式が実用化されている。
【0003】
図13に示すように、1対1で接続される光ファイバでは、光ファイバ1の断線や損失増加を検出するためにOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)2が利用されている。これは、光パルスを光ファイバ1の片端から送り、連続的に戻ってくるレーリー散乱光や端面からのフレネル反射光の時間遅れに基づき損失増加点や断線点を検出するものである。
【0004】
ところが、図14に示すように、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により複数に分岐する受動分岐型光ファイバ線路において前記OTDR2を適用すると、断線によって生じたフレネル反射光がどの分岐線路1−1〜1−4から戻ってきたかが分からない。OTDR2には各分岐線路1−1〜1−4で生じたフレネル反射光やレーリー散乱が重畳して入射されるからである。
【0005】
このため、断線前の健全時のフレネル反射光パターンと各分岐線路1−1〜1−4の線路長を予め測定しておき、障害時に消失したフレネル反射の分岐ポートと新たに生じたフレネル反射の時間的位置から障害点を特定する方法が考えられている。しかし、この場合、健全時には各分岐線路1−1〜1−4の線路長が同一のものが存在すると、消失ポートの判別が困難となり、また断線した位置が他の分岐線路1−1〜1−4と同一長さになった場合も検出が困難となる。このため、分岐線路1−1〜1−4の線路長を管理してそれぞれ異なるようにする必要がある。また、断線には至らない場合で急峻な曲げ等による損失増加の検出も必要であるが、複数の分岐線路1−1〜1−4からのレーリー散乱光が重なると損失の増加点での変化量が著しく小さくなり、検出できない可能性がある。
【0006】
一方、分岐線路を判別するために、分岐線路毎に異なる波長を用いる方式も提案されている。その一例を図15に示す。同図に示す例は、波長分離フィルタ4−1〜4−8を用いる構成であるが、波長によっては複数の分岐線路1−1〜1−8に伝送される。このため、波長間の差分をとることによって分岐線路1−1〜1−8毎の散乱特性を得ているが、差分の計算により誤差が大きくなり、小さな損失の増加を検出することが難しい。
【0007】
このため、図16に示すように、もう一組の波長フィルタ5−1〜5−8を用いて各分岐線路1−1〜1−8毎に1波長を与える方法も検討されている。しかし、この場合には、光伝送路の構成が複雑且つコスト高となり、不経済である。また、多数の光部品が通信経路に挿入されるので、光通信回線への悪影響が懸念される。
【0008】
なお、図15及び図16に示す場合において、OTDR2からの試験光信号(本例では1605nm〜1675nm)は、波長分離フィルタ6を介して光ファイバ1に合波される。
【0009】
また、この種の従来技術を開示する公知技術としては、次の特許文献を挙げることができる。
【0010】
従来、低コストな反射型フィルタとしてファイバーグレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)が知られている。これは光ファイバ中に周期的な屈折率の強弱を構成し、その周期の2倍とファイバ屈折率を乗じた値に一致する波長の光がブラッグ反射を生じることを利用したもので、特定の波長を反射させる場合に利用される。しかし、単体では透過フィルタとして使うことができない。
【0011】
一方、ファイバ中のファイバーグレーティングの中央で屈折率の強弱を反転させた(強弱の位相が波長に対して1/4ずれた)λ/4シフトグレーティングは反射波長帯の中央に狭い透過域を生じることが知られている。しかし、この場合は透過窓幅が狭く、温度変動などを考慮すると利用が困難である。また、透過窓幅を拡大縮小したり、その左右の反射波長幅を自由に変化させることが難しい。
【0012】
さらに、通常の透過フィルタでは、その波長域だけ透過し、その他の光は遮断されてしまうので、目的の波長の光とともに通信用等の他の波長の光を同時に通すことが不可能である。
【0013】
【特許文献1】特開平8−111665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑み、比較的低コストで、光分岐線路の断線点や損出の増大点となる障害点などを精度良く検出することができる受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを提供することを究極の目的とし、同時に前記システムを構築するための受動分岐型光ファイバ線路を提供するとともに、透過波長窓を容易且つ任意に設定して前記受動分岐型光ファイバ線路の構築に資することができる波長透過フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明の構成は、次の点を特徴とする。
1) 反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、隣接するファイバーグレーティングのうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設けたこと。
【0016】
本発明によれば、隣接するファイバーグレーティングの反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓を設けることができる。
2) 反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、少なくとも一つのファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与してその反射波長域を変えることにより隣接するファイバーグレーティングの一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるようにして所定波長域の光を透過させる少なくとも一つの透過波長窓を設けること。
【0017】
本発明によれば、ファイバーグレーティング部分に対する外力乃至温度変化の付与によりファイバーグレーティングの反射波長域の幅を調整することができ、これにより隣接するファイバーグレーティング同士の最大反射波長と最小反射波長とで規定される透過波長窓を任意の位置に形成できる。また、同一反射波長域の異なる位置に複数個の透過波長窓を形成することも可能になる。
3) 1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路
において、
特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有する波長透過フィルタであって各透過波長窓の透過波長がそれぞれ異なる1個又は複数個づつの波長透過フィルタを、前記各分岐線路にそれぞれ挿入したこと。
【0018】
本発明によれば、各分岐線路に固有の波長の信号を一つ又は複数割り当てて光信号を伝送することができる。
4) 上記3)に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、上記1)に記載する波長透過フィルタであること。
【0019】
本発明によれば、隣接するファイバーグレーティングの反射波長域の重なり幅を設定することにより反射波長域の中に任意の大きさで、しかも各分岐線路毎に透過波長がそれぞれ異なる透過波長窓を容易に設けることができる。
5) 上記3)に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、上記2)に記載する波長透過フィルタであること。
【0020】
本発明によれば、ファイバーグレーティング部分に対する外力乃至温度変化の付与によりファイバーグレーティングの反射波長域の幅を調整することができ、これにより隣接するファイバーグレーティング同士の最大反射波長と最小反射波長とで規定される透過波長窓を任意の位置に形成できるとともに、同一反射波長域の異なる位置に複数個の透過波長窓を形成することも可能になり、反射波長域の中に任意の大きさで、しかも各分岐線路毎に透過波長がそれぞれ異なる透過波長窓を容易に設けることができる。
6) 上記3)乃至5)のいずれか一つに記載する受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて光パルス信号を送ることで特定の波長の光パルス信号が各分岐線路の波長透過フィルタの波長透過窓を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにしたこと。
【0021】
本発明によれば、各分岐線路に割り当てた固有の波長の信号の少なくとも一つを各分岐線路の障害点の検出信号として利用することができる。
7) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
複数の直線状のマスクを、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバを横断するように配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、2グループに分けた一方のグループの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する工程と、
一方のグループの光ファイバと他方のグループの光ファイバとを1本づつ接続することにより一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設ける工程とを有すること。
【0022】
本発明によれば、各分岐線路で異なる反射波長域のファイバーグレーティングを一度の紫外線照射で形成することができ、これに続く一方のグループと他方のグループの光ファイバ同士の接続により、それぞれ波長が異なる透過波長窓を有する複数本の光ファイバを形成できる。このようにして形成した各光ファイバは、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路及びその障害点検出システムの分岐線路とすることができる。
8) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、隣接するマスク同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、それぞれ反射波長域が異なる複数のファイバーグレーティングを、同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有すること。
【0023】
本発明によれば、上記方法と同様に、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路に適用する光ファイバを提供し得るが、一度の紫外光の照射だけで、光ファイバの接続工程を有しない分、上記7)に記載する方法より簡単に前記光ファイバを形成することができる。
9) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを平行に前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、複数のファイバーグレーティングを形成する工程と、
前記ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバの軸方向に張力を付与して前記各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有すること。
【0024】
本発明によれば、上記方法と同様に、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路に適用する光ファイバを提供し得るが、一度の紫外光の照射だけで、光ファイバの接続工程を有しない分、上記8)と同様に、上記7)に記載する方法より簡単に前記光ファイバを形成することができる。このとき、本発明では、各グループにおいては隣接するマスクの間隔が所定通り漸増するように配設する必要もないのでさらに効率よく所望の波長透過フィルタを形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成の本発明に係る波長透過フィルタは、安価なファイバーグレーティングで反射波長域内に所望の波長の光信号を透過する透過波長窓を形成し得るので、任意の波長の光信号を選択的に透過させることができる精度の良いフィルタを安価に作製することができる。さらに、この場合のファイバーグレーティング自身が光ファイバでできているので、光ファイバの分岐線路との接続も容易であり、接続損失や信号光の反射を低く抑えることが可能である。
【0026】
また、本発明に係る受動分岐型光ファイバ線路によれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタをモジュール化しているので、既存の受動分岐型光ファイバ線路に追加することが容易になる。このため、既存の受動分岐型光ファイバ線路の各分岐線路に特定の個別の波長域の光信号を割り当てることが可能になり、既存の分岐線路における光通信を損なうことなく、経済的に高機能化することが可能になる。
【0027】
さらに、本発明に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムによれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタをモジュール化しているので、既存の受動分岐型光ファイバ線路に追加することが容易になる。このため、既存の分岐線路による通信性能に影響を与えることなく、障害点を検出するシステムを経済的に追加することができる。
【0028】
本発明に係る波長透過フィルタの作成方法によれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタを可及的に少ない工程で一貫して作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0030】
同図に示すように、光ファイバ11には、その長手方向に関する2箇所に反射型フィルタであるファイバーグレーティング12、13が直列に配設してある。ここで、ファイバーグレーティング12、13は、一方のファイバーグレーティング12の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング13の最小反射波長よりも小さくなるように形成してあり、両者の反射波長域の重畳部分で所定波長域の光を透過させる透過波長窓14を形成している。さらに詳言すると、ファイバーグレーティング12の透過率特性を図1(b)中に実線で、またファイバーグレーティング13の透過率特性を図1(b)に点線でそれぞれ示すが、ファイバーグレーティング12、13は直列に接続してあるので、両者の透過特性を重畳した場合には、図1(c)に示すように反射波長域の重畳部分が形成され、この重畳部分が反射波長域にあって特定の波長域の光を透過する透過波長窓14となる。なお、反射波長域は図に示す透過率特性の凹部に相当する(以下同じ。)。
【0031】
かかる本形態によれば、隣接するファイバーグレーティング12、13の反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓14を設けることができる。すなわち、特定の波長範囲の中の所定の波長の光信号を選択的に透過させる透過波長窓14を形成し得る。したがって、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓14の波長域に含まれる特定波長の光信号も伝送し得る。
【0032】
なお、屈折率の変調度が一様なユニフォームグレーティングでは反射波長帯域の両側に弱い反射波長帯であるサイドバンドを有する場合がある。このサイドバンドが所望の透過窓に当たると、ファイバーグレーティング12、13の間で多重反射を生じ、透過光の品質を低下させる。図2は、屈折率の変調度を中央で高くなるよう分布させることでサイドバンドをなくしたアポダイズグレーティングを示しており、このタイプを適用することが有効である。
【0033】
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では2箇所にファイバーグレーティング12、13を配設したが、複数箇所であればこの数に特別な制限はない。3箇所に配設した場合を第2の実施の形態として説明する。本形態は、反射波長域を広くしたい場合に有効であり、反射波長域の異なるファイバーグレーティングを3個以上接続し、1箇所だけが透過反射窓となるように反射波長域の上端と下端との位置を合わせたものである。
【0034】
図3は本発明の第2の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0035】
同図に示すように、光ファイバ21には、その長手方向に関する3箇所に反射型フィルタであるファイバーグレーティング22、23、24が直列に配設してある。ここで、ファイバーグレーティング23、24は、一方のファイバーグレーティング23の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング24の最小反射波長よりも小さくなるように形成してあり、両者の反射波長域の重畳部分で所定波長域の光を透過させる透過波長窓25を形成している。一方、ファイバーグレーティング22の最大反射波長はファイバーグレーティング23の最小反射波長と同じか、又は若干大きくなっている。さらに詳言すると、ファイバーグレーティング22の透過率特性を図3(b)中に実線で、またファイバーグレーティング23の透過率特性を図3(b)に点線で、ファイバーグレーティング24の透過率特性を図3(c)に一点鎖線でそれぞれ示すが、ファイバーグレーティング22、23、24は直列に接続してあるので、両者の透過特性を重畳した場合には、図3(c)に示すように反射波長域の重畳部分が形成され、この重畳部分が当該反射波長域にあって特定の波長域の光を透過する透過波長窓25となる。
【0036】
かかる本形態によれば、隣接するファイバーグレーティング23、24の反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓25を設けることができる。すなわち、前記第1の実施の形態と同様に、特定の波長範囲の中の所定の波長の光信号を選択的に透過させる安定した透過波長窓25を形成し得る。したがって、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓25の波長域に含まれる特定波長の光信号も伝送し得る。
【0037】
本形態においては、透過波長窓をもう一つ形成することもできる。これには、一方のファイバーグレーティング22の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング23の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで両者の反射波長域の重畳部分を形成すれば良い。
【0038】
一般的には、隣接するファイバーグレーティング同士の反射波長域の重なりを調整することにより、ファイバーグレーティングの数より1個少ない数までは、透過波長窓を形成することができる。
【0039】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0040】
同図に示すように、ファイバーグレーティングの反射波長域は、ファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与することによっても変更することができる。
【0041】
本形態は、図3に示す第2の実施の形態に係る波長透過フィルタの中央のファイバーグレーティング23に張力を付与して引っ張るか又は加熱した場合である。この場合、ファイバーグレーティング23の反射波長域は長波長側に移動する。本形態は、この移動によりファイバーグレーティング23の最小反射波長がファイバーグレーティング22の最大反射波長よりも大きくなると同時に、ファイバーグレーティング23の最大反射波長がファイバーグレーティング24の最小反射波長と同じか、または若干大きくなっている場合である。
【0042】
本形態では透過波長窓35が短波長側に移動しただけで基本的な機能は上記第2の実施の形態と変わるところはない。
【0043】
図3および図4において、全てのファイバーグレーティングに一様に外力乃至温度変化を加えても、各々の反射波長域が一様にシフトするので、透過波長幅を維持したまま透過波長をわずかに変化させることができるが、その変化量には限りがある。本形態では、一つないし限定数のファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を加えて、隣り合う2つの反射波長域の間で形成される透過波長窓を閉じたり開いたりすることで、透過波長を大きく変化できることが特長である。
【0044】
<第4の実施の形態>
図5は本発明の第4の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0045】
同図に示すように、本形態は、図3に示す第2の実施の形態に係る波長透過フィルタの左端のファイバーグレーティング22(最も短波長域に反射波長域を有する)に圧縮力を付与するか又は冷却した場合である。この場合、ファイバーグレーティング22の反射波長域は短波長側に移動する。本形態は、この移動によりファイバーグレーティング22の最大反射波長がファイバーグレーティング23の最小反射波長よりも小さくなると同時に、ファイバーグレーティング23の最大反射波長はファイバーグレーティング24の最小反射波長よりも小さくなっている場合である。この結果、透過波長窓25の他に透過波長窓46も形成され、反射波長域の中に2種類の波長域に対応する透過波長窓25、46が形成される。
【0046】
本形態では透過波長窓25の他、透過波長窓46も有するので、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓25、46の波長域にそれぞれ含まれる特定の2種類の光信号も伝送し得る。
【0047】
<第5の実施の形態>
図6は本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図、(c)はその各分岐線路における透過波長窓を含む透過率特性を示す説明図である。
【0048】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路11−1〜11−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路11−1〜11−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路11−1〜11−8は図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタを有している。すなわち、各分岐線路11−1〜11−8はファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8の透過波長域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0049】
したがって、本形態によれば、共通の通信波長帯の共通光信号と、各分岐線路11−1〜11−8に個別に割り当てられた1波の個別光信号とを伝送することができる。ここで共通光信号は各分岐線路11−1〜11−8に割り当てた固有の時間帯に時分割方式の光信号として伝送され、個別光信号は実質的な周波数分割方式で各分岐線路11−1〜11−8に伝送される。
【0050】
図6には、分岐線路11−1〜11−8において、1310nm帯と1550nm帯が共通に使用される共通光信号の通信波長帯であり、1600nm帯に個別波長帯の個別光信号を割り当てた例を示す。
【0051】
同図に示すように、1600nm帯の波長λ1〜λ8が光ファイバ1から伝送される場合、分岐線路11−1は透過波長域がλ1で、それ以外の波長λ2〜λ8の光信号を反射するように、分岐線路11−2は透過波長域がλ2で、それ以外の波長λ1、λ3〜λ8の光信号を反射するように透過波長窓14−1、14−2が形成してあり、以下同様に透過波長窓14−3〜14−8が形成してあるので、各分岐線路11−1〜11−8には波長λ1〜λ8の光信号の1つだけが透過する。
【0052】
なお、分岐線路11−1〜11−8の数は8分岐に限らず、増減させることが可能である。分岐数を増やすには、ファイバーグレーティングの反射波長域ができるだけ広く、反射波長域両端の波長分離特性が急峻であることが必要である。実際の分岐線路では32分岐の構成が多いが、その程度の分岐数は十分適用可能である。
【0053】
また、周囲の気温などによってファイバーグレーティングの温度が変化する場合、ファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の全ての温度が一様に変化するならば、各分岐線路11−1〜11−8において透過波長が若干変化するが、その変化量は分岐線路間でほぼ同程度なので、分岐線路間での透過波長窓の重なりが生ずることはない。さらに、温度変化によって反射波長が変化しないように工夫したファイバーグレーティングも実用化されている。
【0054】
<第6の実施の形態>
図7は本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【0055】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、図6に示す第5の実施の形態と同様に、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路61−1〜61−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路61−1〜61−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路61−1〜61−8は図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタを2組有している。この結果、各分岐線路61−1〜61−8はファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8を有するとともに、ファイバーグレーティング15−1〜15−8及びファイバーグレーティング16−1〜16−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓64−1〜64−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8及び64−1〜64−8の透過波域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0056】
本形態によれば、共通の通信波長帯の共通光信号と、各分岐線路61−1〜61−8に個別に割り当てられた2種類の個別光信号とを伝送することができる。すなわち、2種類の波長域で実質的な周波数分割方式を実現できる。
【0057】
図7では1600nm帯と1400nm帯とのそれぞれ1波づつが各分岐線路61−1〜61−8に伝送される。各分岐線路61−1〜61−8の1600nm帯及び1400nm帯における透過波長は全て異なり、透過波長以外の1600nm帯および1400nm帯の波長は全て反射する。このため、例えば、1600nm帯を、後述するファイバ障害探査用に利用し、1400nm帯をストリーミングや映像配信など、親局と個別端末間での専用通信回線として利用することができる。
【0058】
<第7の実施の形態>
図8は本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【0059】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、図7に示す第6の実施の形態と同様に、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路71−1〜71−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路71−1〜71−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路71−1〜71−8は、図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタと、例えば図5に示す第4の実施の形態に係る波長透過フィルタのように2個の透過波長窓25、46を有する波長透過フィルタとを組み合わせて直列に接続して構成してあり、各分岐線路71−1〜71−8のファイバーグレーティング12−1〜12−8、13−1〜13−8及びファイバーグレーティング22−1〜22−8、23−1〜23−8、24−1〜24−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8及び透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8及び透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8の透過波長域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0060】
本形態は、要するに図7に示す第6の実施の形態における一方の反射波長域に2種類の透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を形成したものである。
【0061】
このように透過波長域が異なる2種類の透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を形成することにより、例えば一方の透過波長窓25−1〜25−8を透過する個別光信号を上り、他方の透過波長窓46−1〜46−8を透過する個別光信号を下りとする双方向通信が可能となる。
【0062】
図8では、各分岐線路71−1〜71−8において1600nm帯で1波、1400nm帯で2波の個別光信号が伝送されるようにした場合を示しており、1600nm帯を後述するファイバ障害探査用、1400nmの2波のうちの1波を上り回線、もう1波を下り回線というように双方向に個別の専用回線を設けることができる。
【0063】
<第8の実施の形態>
図9は本発明の第8の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【0064】
本形態は図6に示す第5の実施の形態を対象として障害点検出システムを構築したものである。図9に示すように、本形態では、基線である光ファイバ1に波長分離フィルタ6を介してOTDR2を接続してある。ここでOTDR2は波長が1600nm乃至1680nmの光パルスを順次波長を変えて送出することができる。一方、各分岐線路11−1〜11−8のファイバーグレーティング12−1〜12−8、13−1〜13−8で形成する透過波長窓14−1〜14−8(図6参照)は、それぞれ1602±1nm、1604±1nm、1606±1nm、1608±1nm、1610±1nm、1612±1nm、1614±1nm、1616±1nmの波長の個別光信号を透過するように形成してある。そこで、OTDR2から順次波長を変えて光パルスを送ることで特定の波長の光パルス信号である個別光信号が各分岐線路11−1〜11−8の波長透過窓(14−1〜14−8)を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路11−1〜11−8における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路11−1〜11−8の障害点を検出することができる。
【0065】
なお、共通光信号による通常の通信は、各分岐線路11−1〜11−8の反射波長域ではない、例えば上り1310nm帯及び下り1550nm帯を用いて従来と同様に時分割で行えば良い。
【0066】
また、本形態に係る障害点検出システムは、図7に示す第6の実施の形態や図8に示す第7の実施の形態ももちろん対象とすることができる。この際、障害点検出の試験信号は、例えば図7及び図8の透過波長窓14−1〜14−8を利用して個別に伝送すれば良い。
【0067】
<第9の実施の形態>
図10は本発明の第9の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を示す図で、(a)は光ファイバを配設した状態を概念的に示す説明図、(b)はその透過波長窓14−1〜14−8を示す説明図である。
【0068】
本例は図6に示す第5の実施の形態に係る透過波長窓14−1〜14−8を有する分岐線路11−1〜11−8を形成する場合である。
【0069】
同図に示すように、先ず複数本(図では16本)の光ファイバ91−1−1〜91−8−1、91−1−2〜91−8−2を平行に並べる。次に、複数の直線状のマスク99を、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバ91−1−1〜91−8−1、91−1−2〜91−8−2を横断するように配設し、紫外線を照射して露光する。
【0070】
ここで、前記マスク99間の間隔の調整により、2グループに分けた一方のグループIの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループIIのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する。
【0071】
最後に、グループIの光ファイバ91−1−1〜91−8−1とグループIIの光ファイバ91−1−2〜91−8−2とを1本づつ溶着することにより、一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓14−1〜14−8を有する光ファイバ91−1〜91−8とする。
【0072】
波長が一定間隔で異なるファイバーグレーティングを1個づつ製作するのは不経済である。また、反射波長帯の絶対的な値を正確にするよりも、互いの波長差を正確にすることが必要である。
【0073】
本形態では、複数の光ファイバを横断するマスクの配置を工夫した上で紫外線を照射することによって、反射波長帯が一定間隔でシフトするファイバーグレーティングを一度に作製することができる。また、反射波長帯が一定間隔で増大する一連のファイバーグレーティングのうち、反射波長帯の長波長側と短波長帯が一致する所で2グループI、IIに分け、2つのグループI、IIを直列に接続することで、透過波長窓14−1〜14−8帯が一定間隔で増大する一連の波長透過フィルタを一括して製作することができる。
【0074】
なお、反射帯のサイドバンドを抑制するアポダイズを持たせるため、紫外線照射強度はファイバ長さ方向の中央で強くなるよう分布を持たせることも可能である。
【0075】
<第10の実施の形態>
図11は本発明の第10の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【0076】
本形態は、図10に示す第9の実施の形態のように2グループに分けることなく、さらに1工程を削減したものである。
【0077】
すなわち、図11に示すように、本形態では、平行に並べた光ファイバ91−1〜91−8の長手方向に関する2箇所で各光ファイバ91−1〜91−8を横断するとともに、それぞれの箇所で隣接するマスク101、102同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク101、102間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスク101、102を前記光ファイバ91−1〜91−8上に配設し、この状態で各光ファイバ91−1〜91−8に紫外線を照射して露光したものである。
【0078】
このことにより、それぞれ反射波長域が異なる2個のファイバーグレーティングを、各光ファイバ91−1〜91−8において、一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで、それぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を一度に各光ファイバ91−1〜91−8に形成している。
【0079】
<第11の実施の形態>
図12は本発明の第11の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【0080】
本形態も、図10に示す第9の実施の形態のように2グループに分けることなく、さらに1工程を削減したものであるが、同時にマスク同士も平行に配設することで、この配設工程の作業性も改善したものである。
【0081】
具体的には、図12に示すように、先ず、平行に並べた光ファイバ91−1〜91−8の長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバ91−1〜91−8を横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク111、112間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスク111、112を平行に前記光ファイバ91−1〜91−8上に配設するとともに、紫外線を照射して露光することにより、各ファイバーグレーティングを形成する。その後、各ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバ91−1〜91−8の軸方向に張力IIIを付与して各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバ91−1〜91−8において一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を形成する。
【0082】
<他の実施の形態>
上記第5乃至第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、第1乃至第4の実施の形態に記載する波長透過フィルタを利用して構成したが、これに限るものではない。すなわち、この種の波長透過フィルタとしては、特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有するものであれば特別な制限はない。例えば、1)屈折率変調を利用することにより1本のファイバーグレーティングで所望の特性を得るように形成したもの、2)ファイバーグレーティングではない一般の反射フィルタを組み合わせてレンズでファイバーに接続したもの、3)ある広い反射帯を分離するフィルタと狭い透過フィルタとを並列に接続したもの等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は受動分岐型光ファイバ線路を介して情報の授受を行う、例えばFTTHシステム等の光通信システムに利用して有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図2】ファイバーグレーティングの屈折率変調タイプと反射率特性について示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図、(c)はその各分岐線路における透過波長窓を含む透過率特性を示す説明図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【図9】本発明の第8の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図10】本発明の第9の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を示す図で、(a)は光ファイバを配設した状態を概念的に示す説明図、(b)はその透過波長窓を示す説明図である。
【図11】本発明の第10の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【図12】本発明の第11の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【図13】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第1の方法を示す説明図である。
【図14】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第2の方法を示す説明図である。
【図15】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第3の方法を示す説明図である。
【図16】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第4の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
11,21 光ファイバ
12,13,22,23,24 ファイバーグレーティング
14,25,35,46 透過波長窓
11−1〜11−8,61−1〜61−8,71−1〜71−8 分岐線路
【技術分野】
【0001】
本発明は波長透過フィルタ及びこれを有する受動分岐型光ファイバ線路並びにその障害点検出システムに関し、特に1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐し、1台の親局に対し多数の加入者局を接続するファイバ網で、例えばFTTH(Fiber To The Home)を実現する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
受動分岐型光ファイバ線路は1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐し、1台の親局に対して多数の加入者局を接続するファイバ網である。FTTHの光ファイバでは1対1で接続される構成、光・電気変換器により能動的に分岐する構成の他に、前記受動分岐方式が実用化されている。
【0003】
図13に示すように、1対1で接続される光ファイバでは、光ファイバ1の断線や損失増加を検出するためにOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)2が利用されている。これは、光パルスを光ファイバ1の片端から送り、連続的に戻ってくるレーリー散乱光や端面からのフレネル反射光の時間遅れに基づき損失増加点や断線点を検出するものである。
【0004】
ところが、図14に示すように、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により複数に分岐する受動分岐型光ファイバ線路において前記OTDR2を適用すると、断線によって生じたフレネル反射光がどの分岐線路1−1〜1−4から戻ってきたかが分からない。OTDR2には各分岐線路1−1〜1−4で生じたフレネル反射光やレーリー散乱が重畳して入射されるからである。
【0005】
このため、断線前の健全時のフレネル反射光パターンと各分岐線路1−1〜1−4の線路長を予め測定しておき、障害時に消失したフレネル反射の分岐ポートと新たに生じたフレネル反射の時間的位置から障害点を特定する方法が考えられている。しかし、この場合、健全時には各分岐線路1−1〜1−4の線路長が同一のものが存在すると、消失ポートの判別が困難となり、また断線した位置が他の分岐線路1−1〜1−4と同一長さになった場合も検出が困難となる。このため、分岐線路1−1〜1−4の線路長を管理してそれぞれ異なるようにする必要がある。また、断線には至らない場合で急峻な曲げ等による損失増加の検出も必要であるが、複数の分岐線路1−1〜1−4からのレーリー散乱光が重なると損失の増加点での変化量が著しく小さくなり、検出できない可能性がある。
【0006】
一方、分岐線路を判別するために、分岐線路毎に異なる波長を用いる方式も提案されている。その一例を図15に示す。同図に示す例は、波長分離フィルタ4−1〜4−8を用いる構成であるが、波長によっては複数の分岐線路1−1〜1−8に伝送される。このため、波長間の差分をとることによって分岐線路1−1〜1−8毎の散乱特性を得ているが、差分の計算により誤差が大きくなり、小さな損失の増加を検出することが難しい。
【0007】
このため、図16に示すように、もう一組の波長フィルタ5−1〜5−8を用いて各分岐線路1−1〜1−8毎に1波長を与える方法も検討されている。しかし、この場合には、光伝送路の構成が複雑且つコスト高となり、不経済である。また、多数の光部品が通信経路に挿入されるので、光通信回線への悪影響が懸念される。
【0008】
なお、図15及び図16に示す場合において、OTDR2からの試験光信号(本例では1605nm〜1675nm)は、波長分離フィルタ6を介して光ファイバ1に合波される。
【0009】
また、この種の従来技術を開示する公知技術としては、次の特許文献を挙げることができる。
【0010】
従来、低コストな反射型フィルタとしてファイバーグレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)が知られている。これは光ファイバ中に周期的な屈折率の強弱を構成し、その周期の2倍とファイバ屈折率を乗じた値に一致する波長の光がブラッグ反射を生じることを利用したもので、特定の波長を反射させる場合に利用される。しかし、単体では透過フィルタとして使うことができない。
【0011】
一方、ファイバ中のファイバーグレーティングの中央で屈折率の強弱を反転させた(強弱の位相が波長に対して1/4ずれた)λ/4シフトグレーティングは反射波長帯の中央に狭い透過域を生じることが知られている。しかし、この場合は透過窓幅が狭く、温度変動などを考慮すると利用が困難である。また、透過窓幅を拡大縮小したり、その左右の反射波長幅を自由に変化させることが難しい。
【0012】
さらに、通常の透過フィルタでは、その波長域だけ透過し、その他の光は遮断されてしまうので、目的の波長の光とともに通信用等の他の波長の光を同時に通すことが不可能である。
【0013】
【特許文献1】特開平8−111665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑み、比較的低コストで、光分岐線路の断線点や損出の増大点となる障害点などを精度良く検出することができる受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを提供することを究極の目的とし、同時に前記システムを構築するための受動分岐型光ファイバ線路を提供するとともに、透過波長窓を容易且つ任意に設定して前記受動分岐型光ファイバ線路の構築に資することができる波長透過フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明の構成は、次の点を特徴とする。
1) 反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、隣接するファイバーグレーティングのうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設けたこと。
【0016】
本発明によれば、隣接するファイバーグレーティングの反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓を設けることができる。
2) 反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、少なくとも一つのファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与してその反射波長域を変えることにより隣接するファイバーグレーティングの一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるようにして所定波長域の光を透過させる少なくとも一つの透過波長窓を設けること。
【0017】
本発明によれば、ファイバーグレーティング部分に対する外力乃至温度変化の付与によりファイバーグレーティングの反射波長域の幅を調整することができ、これにより隣接するファイバーグレーティング同士の最大反射波長と最小反射波長とで規定される透過波長窓を任意の位置に形成できる。また、同一反射波長域の異なる位置に複数個の透過波長窓を形成することも可能になる。
3) 1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路
において、
特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有する波長透過フィルタであって各透過波長窓の透過波長がそれぞれ異なる1個又は複数個づつの波長透過フィルタを、前記各分岐線路にそれぞれ挿入したこと。
【0018】
本発明によれば、各分岐線路に固有の波長の信号を一つ又は複数割り当てて光信号を伝送することができる。
4) 上記3)に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、上記1)に記載する波長透過フィルタであること。
【0019】
本発明によれば、隣接するファイバーグレーティングの反射波長域の重なり幅を設定することにより反射波長域の中に任意の大きさで、しかも各分岐線路毎に透過波長がそれぞれ異なる透過波長窓を容易に設けることができる。
5) 上記3)に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、上記2)に記載する波長透過フィルタであること。
【0020】
本発明によれば、ファイバーグレーティング部分に対する外力乃至温度変化の付与によりファイバーグレーティングの反射波長域の幅を調整することができ、これにより隣接するファイバーグレーティング同士の最大反射波長と最小反射波長とで規定される透過波長窓を任意の位置に形成できるとともに、同一反射波長域の異なる位置に複数個の透過波長窓を形成することも可能になり、反射波長域の中に任意の大きさで、しかも各分岐線路毎に透過波長がそれぞれ異なる透過波長窓を容易に設けることができる。
6) 上記3)乃至5)のいずれか一つに記載する受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて光パルス信号を送ることで特定の波長の光パルス信号が各分岐線路の波長透過フィルタの波長透過窓を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにしたこと。
【0021】
本発明によれば、各分岐線路に割り当てた固有の波長の信号の少なくとも一つを各分岐線路の障害点の検出信号として利用することができる。
7) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
複数の直線状のマスクを、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバを横断するように配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、2グループに分けた一方のグループの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する工程と、
一方のグループの光ファイバと他方のグループの光ファイバとを1本づつ接続することにより一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設ける工程とを有すること。
【0022】
本発明によれば、各分岐線路で異なる反射波長域のファイバーグレーティングを一度の紫外線照射で形成することができ、これに続く一方のグループと他方のグループの光ファイバ同士の接続により、それぞれ波長が異なる透過波長窓を有する複数本の光ファイバを形成できる。このようにして形成した各光ファイバは、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路及びその障害点検出システムの分岐線路とすることができる。
8) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、隣接するマスク同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、それぞれ反射波長域が異なる複数のファイバーグレーティングを、同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有すること。
【0023】
本発明によれば、上記方法と同様に、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路に適用する光ファイバを提供し得るが、一度の紫外光の照射だけで、光ファイバの接続工程を有しない分、上記7)に記載する方法より簡単に前記光ファイバを形成することができる。
9) 複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを平行に前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、複数のファイバーグレーティングを形成する工程と、
前記ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバの軸方向に張力を付与して前記各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有すること。
【0024】
本発明によれば、上記方法と同様に、上記4)、5)の受動分岐型光ファイバ線路に適用する光ファイバを提供し得るが、一度の紫外光の照射だけで、光ファイバの接続工程を有しない分、上記8)と同様に、上記7)に記載する方法より簡単に前記光ファイバを形成することができる。このとき、本発明では、各グループにおいては隣接するマスクの間隔が所定通り漸増するように配設する必要もないのでさらに効率よく所望の波長透過フィルタを形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成の本発明に係る波長透過フィルタは、安価なファイバーグレーティングで反射波長域内に所望の波長の光信号を透過する透過波長窓を形成し得るので、任意の波長の光信号を選択的に透過させることができる精度の良いフィルタを安価に作製することができる。さらに、この場合のファイバーグレーティング自身が光ファイバでできているので、光ファイバの分岐線路との接続も容易であり、接続損失や信号光の反射を低く抑えることが可能である。
【0026】
また、本発明に係る受動分岐型光ファイバ線路によれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタをモジュール化しているので、既存の受動分岐型光ファイバ線路に追加することが容易になる。このため、既存の受動分岐型光ファイバ線路の各分岐線路に特定の個別の波長域の光信号を割り当てることが可能になり、既存の分岐線路における光通信を損なうことなく、経済的に高機能化することが可能になる。
【0027】
さらに、本発明に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムによれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタをモジュール化しているので、既存の受動分岐型光ファイバ線路に追加することが容易になる。このため、既存の分岐線路による通信性能に影響を与えることなく、障害点を検出するシステムを経済的に追加することができる。
【0028】
本発明に係る波長透過フィルタの作成方法によれば、透過波長窓が一定間隔でシフトする一連の波長透過フィルタを可及的に少ない工程で一貫して作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0030】
同図に示すように、光ファイバ11には、その長手方向に関する2箇所に反射型フィルタであるファイバーグレーティング12、13が直列に配設してある。ここで、ファイバーグレーティング12、13は、一方のファイバーグレーティング12の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング13の最小反射波長よりも小さくなるように形成してあり、両者の反射波長域の重畳部分で所定波長域の光を透過させる透過波長窓14を形成している。さらに詳言すると、ファイバーグレーティング12の透過率特性を図1(b)中に実線で、またファイバーグレーティング13の透過率特性を図1(b)に点線でそれぞれ示すが、ファイバーグレーティング12、13は直列に接続してあるので、両者の透過特性を重畳した場合には、図1(c)に示すように反射波長域の重畳部分が形成され、この重畳部分が反射波長域にあって特定の波長域の光を透過する透過波長窓14となる。なお、反射波長域は図に示す透過率特性の凹部に相当する(以下同じ。)。
【0031】
かかる本形態によれば、隣接するファイバーグレーティング12、13の反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓14を設けることができる。すなわち、特定の波長範囲の中の所定の波長の光信号を選択的に透過させる透過波長窓14を形成し得る。したがって、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓14の波長域に含まれる特定波長の光信号も伝送し得る。
【0032】
なお、屈折率の変調度が一様なユニフォームグレーティングでは反射波長帯域の両側に弱い反射波長帯であるサイドバンドを有する場合がある。このサイドバンドが所望の透過窓に当たると、ファイバーグレーティング12、13の間で多重反射を生じ、透過光の品質を低下させる。図2は、屈折率の変調度を中央で高くなるよう分布させることでサイドバンドをなくしたアポダイズグレーティングを示しており、このタイプを適用することが有効である。
【0033】
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では2箇所にファイバーグレーティング12、13を配設したが、複数箇所であればこの数に特別な制限はない。3箇所に配設した場合を第2の実施の形態として説明する。本形態は、反射波長域を広くしたい場合に有効であり、反射波長域の異なるファイバーグレーティングを3個以上接続し、1箇所だけが透過反射窓となるように反射波長域の上端と下端との位置を合わせたものである。
【0034】
図3は本発明の第2の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0035】
同図に示すように、光ファイバ21には、その長手方向に関する3箇所に反射型フィルタであるファイバーグレーティング22、23、24が直列に配設してある。ここで、ファイバーグレーティング23、24は、一方のファイバーグレーティング23の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング24の最小反射波長よりも小さくなるように形成してあり、両者の反射波長域の重畳部分で所定波長域の光を透過させる透過波長窓25を形成している。一方、ファイバーグレーティング22の最大反射波長はファイバーグレーティング23の最小反射波長と同じか、又は若干大きくなっている。さらに詳言すると、ファイバーグレーティング22の透過率特性を図3(b)中に実線で、またファイバーグレーティング23の透過率特性を図3(b)に点線で、ファイバーグレーティング24の透過率特性を図3(c)に一点鎖線でそれぞれ示すが、ファイバーグレーティング22、23、24は直列に接続してあるので、両者の透過特性を重畳した場合には、図3(c)に示すように反射波長域の重畳部分が形成され、この重畳部分が当該反射波長域にあって特定の波長域の光を透過する透過波長窓25となる。
【0036】
かかる本形態によれば、隣接するファイバーグレーティング23、24の反射波長域の重なり幅を設定することで反射波長域の中に任意の大きさの透過波長窓25を設けることができる。すなわち、前記第1の実施の形態と同様に、特定の波長範囲の中の所定の波長の光信号を選択的に透過させる安定した透過波長窓25を形成し得る。したがって、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓25の波長域に含まれる特定波長の光信号も伝送し得る。
【0037】
本形態においては、透過波長窓をもう一つ形成することもできる。これには、一方のファイバーグレーティング22の最大反射波長が他方のファイバーグレーティング23の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで両者の反射波長域の重畳部分を形成すれば良い。
【0038】
一般的には、隣接するファイバーグレーティング同士の反射波長域の重なりを調整することにより、ファイバーグレーティングの数より1個少ない数までは、透過波長窓を形成することができる。
【0039】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0040】
同図に示すように、ファイバーグレーティングの反射波長域は、ファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与することによっても変更することができる。
【0041】
本形態は、図3に示す第2の実施の形態に係る波長透過フィルタの中央のファイバーグレーティング23に張力を付与して引っ張るか又は加熱した場合である。この場合、ファイバーグレーティング23の反射波長域は長波長側に移動する。本形態は、この移動によりファイバーグレーティング23の最小反射波長がファイバーグレーティング22の最大反射波長よりも大きくなると同時に、ファイバーグレーティング23の最大反射波長がファイバーグレーティング24の最小反射波長と同じか、または若干大きくなっている場合である。
【0042】
本形態では透過波長窓35が短波長側に移動しただけで基本的な機能は上記第2の実施の形態と変わるところはない。
【0043】
図3および図4において、全てのファイバーグレーティングに一様に外力乃至温度変化を加えても、各々の反射波長域が一様にシフトするので、透過波長幅を維持したまま透過波長をわずかに変化させることができるが、その変化量には限りがある。本形態では、一つないし限定数のファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を加えて、隣り合う2つの反射波長域の間で形成される透過波長窓を閉じたり開いたりすることで、透過波長を大きく変化できることが特長である。
【0044】
<第4の実施の形態>
図5は本発明の第4の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【0045】
同図に示すように、本形態は、図3に示す第2の実施の形態に係る波長透過フィルタの左端のファイバーグレーティング22(最も短波長域に反射波長域を有する)に圧縮力を付与するか又は冷却した場合である。この場合、ファイバーグレーティング22の反射波長域は短波長側に移動する。本形態は、この移動によりファイバーグレーティング22の最大反射波長がファイバーグレーティング23の最小反射波長よりも小さくなると同時に、ファイバーグレーティング23の最大反射波長はファイバーグレーティング24の最小反射波長よりも小さくなっている場合である。この結果、透過波長窓25の他に透過波長窓46も形成され、反射波長域の中に2種類の波長域に対応する透過波長窓25、46が形成される。
【0046】
本形態では透過波長窓25の他、透過波長窓46も有するので、反射波長域以外の波長域の光信号と同時に、透過波長窓25、46の波長域にそれぞれ含まれる特定の2種類の光信号も伝送し得る。
【0047】
<第5の実施の形態>
図6は本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図、(c)はその各分岐線路における透過波長窓を含む透過率特性を示す説明図である。
【0048】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路11−1〜11−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路11−1〜11−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路11−1〜11−8は図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタを有している。すなわち、各分岐線路11−1〜11−8はファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8の透過波長域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0049】
したがって、本形態によれば、共通の通信波長帯の共通光信号と、各分岐線路11−1〜11−8に個別に割り当てられた1波の個別光信号とを伝送することができる。ここで共通光信号は各分岐線路11−1〜11−8に割り当てた固有の時間帯に時分割方式の光信号として伝送され、個別光信号は実質的な周波数分割方式で各分岐線路11−1〜11−8に伝送される。
【0050】
図6には、分岐線路11−1〜11−8において、1310nm帯と1550nm帯が共通に使用される共通光信号の通信波長帯であり、1600nm帯に個別波長帯の個別光信号を割り当てた例を示す。
【0051】
同図に示すように、1600nm帯の波長λ1〜λ8が光ファイバ1から伝送される場合、分岐線路11−1は透過波長域がλ1で、それ以外の波長λ2〜λ8の光信号を反射するように、分岐線路11−2は透過波長域がλ2で、それ以外の波長λ1、λ3〜λ8の光信号を反射するように透過波長窓14−1、14−2が形成してあり、以下同様に透過波長窓14−3〜14−8が形成してあるので、各分岐線路11−1〜11−8には波長λ1〜λ8の光信号の1つだけが透過する。
【0052】
なお、分岐線路11−1〜11−8の数は8分岐に限らず、増減させることが可能である。分岐数を増やすには、ファイバーグレーティングの反射波長域ができるだけ広く、反射波長域両端の波長分離特性が急峻であることが必要である。実際の分岐線路では32分岐の構成が多いが、その程度の分岐数は十分適用可能である。
【0053】
また、周囲の気温などによってファイバーグレーティングの温度が変化する場合、ファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の全ての温度が一様に変化するならば、各分岐線路11−1〜11−8において透過波長が若干変化するが、その変化量は分岐線路間でほぼ同程度なので、分岐線路間での透過波長窓の重なりが生ずることはない。さらに、温度変化によって反射波長が変化しないように工夫したファイバーグレーティングも実用化されている。
【0054】
<第6の実施の形態>
図7は本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【0055】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、図6に示す第5の実施の形態と同様に、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路61−1〜61−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路61−1〜61−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路61−1〜61−8は図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタを2組有している。この結果、各分岐線路61−1〜61−8はファイバーグレーティング12−1〜12−8及びファイバーグレーティング13−1〜13−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8を有するとともに、ファイバーグレーティング15−1〜15−8及びファイバーグレーティング16−1〜16−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓64−1〜64−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8及び64−1〜64−8の透過波域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0056】
本形態によれば、共通の通信波長帯の共通光信号と、各分岐線路61−1〜61−8に個別に割り当てられた2種類の個別光信号とを伝送することができる。すなわち、2種類の波長域で実質的な周波数分割方式を実現できる。
【0057】
図7では1600nm帯と1400nm帯とのそれぞれ1波づつが各分岐線路61−1〜61−8に伝送される。各分岐線路61−1〜61−8の1600nm帯及び1400nm帯における透過波長は全て異なり、透過波長以外の1600nm帯および1400nm帯の波長は全て反射する。このため、例えば、1600nm帯を、後述するファイバ障害探査用に利用し、1400nm帯をストリーミングや映像配信など、親局と個別端末間での専用通信回線として利用することができる。
【0058】
<第7の実施の形態>
図8は本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【0059】
同図に示すように、本形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、図7に示す第6の実施の形態と同様に、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により分岐した複数(図では8本)の分岐線路71−1〜71−8を有しており、一つの親局に対し前記各分岐線路71−1〜71−8を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である。ここで、各分岐線路71−1〜71−8は、図1に示す第1の実施の形態に係る波長透過フィルタと、例えば図5に示す第4の実施の形態に係る波長透過フィルタのように2個の透過波長窓25、46を有する波長透過フィルタとを組み合わせて直列に接続して構成してあり、各分岐線路71−1〜71−8のファイバーグレーティング12−1〜12−8、13−1〜13−8及びファイバーグレーティング22−1〜22−8、23−1〜23−8、24−1〜24−8の反射波長域の重なりで形成する透過波長窓14−1〜14−8及び透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を有している。ここで、各透過波長窓14−1〜14−8及び透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8の透過波長域は相互に重なることがないように少しずつずらしてある。
【0060】
本形態は、要するに図7に示す第6の実施の形態における一方の反射波長域に2種類の透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を形成したものである。
【0061】
このように透過波長域が異なる2種類の透過波長窓25−1〜25−8、46−1〜46−8を形成することにより、例えば一方の透過波長窓25−1〜25−8を透過する個別光信号を上り、他方の透過波長窓46−1〜46−8を透過する個別光信号を下りとする双方向通信が可能となる。
【0062】
図8では、各分岐線路71−1〜71−8において1600nm帯で1波、1400nm帯で2波の個別光信号が伝送されるようにした場合を示しており、1600nm帯を後述するファイバ障害探査用、1400nmの2波のうちの1波を上り回線、もう1波を下り回線というように双方向に個別の専用回線を設けることができる。
【0063】
<第8の実施の形態>
図9は本発明の第8の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【0064】
本形態は図6に示す第5の実施の形態を対象として障害点検出システムを構築したものである。図9に示すように、本形態では、基線である光ファイバ1に波長分離フィルタ6を介してOTDR2を接続してある。ここでOTDR2は波長が1600nm乃至1680nmの光パルスを順次波長を変えて送出することができる。一方、各分岐線路11−1〜11−8のファイバーグレーティング12−1〜12−8、13−1〜13−8で形成する透過波長窓14−1〜14−8(図6参照)は、それぞれ1602±1nm、1604±1nm、1606±1nm、1608±1nm、1610±1nm、1612±1nm、1614±1nm、1616±1nmの波長の個別光信号を透過するように形成してある。そこで、OTDR2から順次波長を変えて光パルスを送ることで特定の波長の光パルス信号である個別光信号が各分岐線路11−1〜11−8の波長透過窓(14−1〜14−8)を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路11−1〜11−8における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路11−1〜11−8の障害点を検出することができる。
【0065】
なお、共通光信号による通常の通信は、各分岐線路11−1〜11−8の反射波長域ではない、例えば上り1310nm帯及び下り1550nm帯を用いて従来と同様に時分割で行えば良い。
【0066】
また、本形態に係る障害点検出システムは、図7に示す第6の実施の形態や図8に示す第7の実施の形態ももちろん対象とすることができる。この際、障害点検出の試験信号は、例えば図7及び図8の透過波長窓14−1〜14−8を利用して個別に伝送すれば良い。
【0067】
<第9の実施の形態>
図10は本発明の第9の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を示す図で、(a)は光ファイバを配設した状態を概念的に示す説明図、(b)はその透過波長窓14−1〜14−8を示す説明図である。
【0068】
本例は図6に示す第5の実施の形態に係る透過波長窓14−1〜14−8を有する分岐線路11−1〜11−8を形成する場合である。
【0069】
同図に示すように、先ず複数本(図では16本)の光ファイバ91−1−1〜91−8−1、91−1−2〜91−8−2を平行に並べる。次に、複数の直線状のマスク99を、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバ91−1−1〜91−8−1、91−1−2〜91−8−2を横断するように配設し、紫外線を照射して露光する。
【0070】
ここで、前記マスク99間の間隔の調整により、2グループに分けた一方のグループIの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループIIのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する。
【0071】
最後に、グループIの光ファイバ91−1−1〜91−8−1とグループIIの光ファイバ91−1−2〜91−8−2とを1本づつ溶着することにより、一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓14−1〜14−8を有する光ファイバ91−1〜91−8とする。
【0072】
波長が一定間隔で異なるファイバーグレーティングを1個づつ製作するのは不経済である。また、反射波長帯の絶対的な値を正確にするよりも、互いの波長差を正確にすることが必要である。
【0073】
本形態では、複数の光ファイバを横断するマスクの配置を工夫した上で紫外線を照射することによって、反射波長帯が一定間隔でシフトするファイバーグレーティングを一度に作製することができる。また、反射波長帯が一定間隔で増大する一連のファイバーグレーティングのうち、反射波長帯の長波長側と短波長帯が一致する所で2グループI、IIに分け、2つのグループI、IIを直列に接続することで、透過波長窓14−1〜14−8帯が一定間隔で増大する一連の波長透過フィルタを一括して製作することができる。
【0074】
なお、反射帯のサイドバンドを抑制するアポダイズを持たせるため、紫外線照射強度はファイバ長さ方向の中央で強くなるよう分布を持たせることも可能である。
【0075】
<第10の実施の形態>
図11は本発明の第10の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【0076】
本形態は、図10に示す第9の実施の形態のように2グループに分けることなく、さらに1工程を削減したものである。
【0077】
すなわち、図11に示すように、本形態では、平行に並べた光ファイバ91−1〜91−8の長手方向に関する2箇所で各光ファイバ91−1〜91−8を横断するとともに、それぞれの箇所で隣接するマスク101、102同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク101、102間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスク101、102を前記光ファイバ91−1〜91−8上に配設し、この状態で各光ファイバ91−1〜91−8に紫外線を照射して露光したものである。
【0078】
このことにより、それぞれ反射波長域が異なる2個のファイバーグレーティングを、各光ファイバ91−1〜91−8において、一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで、それぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を一度に各光ファイバ91−1〜91−8に形成している。
【0079】
<第11の実施の形態>
図12は本発明の第11の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【0080】
本形態も、図10に示す第9の実施の形態のように2グループに分けることなく、さらに1工程を削減したものであるが、同時にマスク同士も平行に配設することで、この配設工程の作業性も改善したものである。
【0081】
具体的には、図12に示すように、先ず、平行に並べた光ファイバ91−1〜91−8の長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバ91−1〜91−8を横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク111、112間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスク111、112を平行に前記光ファイバ91−1〜91−8上に配設するとともに、紫外線を照射して露光することにより、各ファイバーグレーティングを形成する。その後、各ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバ91−1〜91−8の軸方向に張力IIIを付与して各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバ91−1〜91−8において一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を形成する。
【0082】
<他の実施の形態>
上記第5乃至第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路は、第1乃至第4の実施の形態に記載する波長透過フィルタを利用して構成したが、これに限るものではない。すなわち、この種の波長透過フィルタとしては、特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有するものであれば特別な制限はない。例えば、1)屈折率変調を利用することにより1本のファイバーグレーティングで所望の特性を得るように形成したもの、2)ファイバーグレーティングではない一般の反射フィルタを組み合わせてレンズでファイバーに接続したもの、3)ある広い反射帯を分離するフィルタと狭い透過フィルタとを並列に接続したもの等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は受動分岐型光ファイバ線路を介して情報の授受を行う、例えばFTTHシステム等の光通信システムに利用して有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図2】ファイバーグレーティングの屈折率変調タイプと反射率特性について示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る波長透過フィルタに関する図で、(a)はファイバーグレーティングを形成した光ファイバの概念図、(b)は各ファイバーグレーティング毎の波長と透過率の関係を示す特性図、(c)は(b)の特性を重畳して得る透過波長窓を示す説明図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図、(c)はその各分岐線路における透過波長窓を含む透過率特性を示す説明図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路に関する図で、(a)はその波長と透過率との関係を示す特性図、(b)はこの受動分岐型光ファイバ線路を概念的に示す説明図である。
【図9】本発明の第8の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図10】本発明の第9の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を示す図で、(a)は光ファイバを配設した状態を概念的に示す説明図、(b)はその透過波長窓を示す説明図である。
【図11】本発明の第10の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【図12】本発明の第11の実施の形態に係る透過フィルタの作製方法を概念的に示す説明図である。
【図13】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第1の方法を示す説明図である。
【図14】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第2の方法を示す説明図である。
【図15】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第3の方法を示す説明図である。
【図16】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第4の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
11,21 光ファイバ
12,13,22,23,24 ファイバーグレーティング
14,25,35,46 透過波長窓
11−1〜11−8,61−1〜61−8,71−1〜71−8 分岐線路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、隣接するファイバーグレーティングのうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設けたことを特徴とする波長透過フィルタ。
【請求項2】
反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、少なくとも一つのファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与してその反射波長域を変えることにより隣接するファイバーグレーティングの一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるようにして所定波長域の光を透過させる少なくとも一つの透過波長窓を設けることを特徴とする波長透過フィルタ。
【請求項3】
1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路
において、
特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有する波長透過フィルタであって各透過波長窓の透過波長がそれぞれ異なる1個又は複数個づつの波長透過フィルタを、前記各分岐線路にそれぞれ挿入したことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項4】
請求項3に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、請求項1に記載する波長透過フィルタであることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項5】
請求項3に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、請求項2に記載する波長透過フィルタであることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか一つに記載する受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて光パルス信号を送ることで特定の波長の光パルス信号が各分岐線路の波長透過フィルタの波長透過窓を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにしたことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項7】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
複数の直線状のマスクを、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバを横断するように配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、2グループに分けた一方のグループの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する工程と、
一方のグループの光ファイバと他方のグループの光ファイバとを1本づつ接続することにより一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設ける工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【請求項8】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、隣接するマスク同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、それぞれ反射波長域が異なる複数のファイバーグレーティングを、同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【請求項9】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを平行に前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、複数のファイバーグレーティングを形成する工程と、
前記ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバの軸方向に張力を付与して前記各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【請求項1】
反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、隣接するファイバーグレーティングのうち一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設けたことを特徴とする波長透過フィルタ。
【請求項2】
反射波長域の異なる反射型フィルタであるファイバーグレーティングの複数個を直列に接続するとともに、少なくとも一つのファイバーグレーティングに外力乃至温度変化を付与してその反射波長域を変えることにより隣接するファイバーグレーティングの一方の最大反射波長が他方の最小反射波長よりも小さくなるようにして所定波長域の光を透過させる少なくとも一つの透過波長窓を設けることを特徴とする波長透過フィルタ。
【請求項3】
1本の光ファイバを光カプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路
において、
特定の反射波長帯域内に所定の透過波長窓を有する波長透過フィルタであって各透過波長窓の透過波長がそれぞれ異なる1個又は複数個づつの波長透過フィルタを、前記各分岐線路にそれぞれ挿入したことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項4】
請求項3に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、請求項1に記載する波長透過フィルタであることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項5】
請求項3に記載する受動分岐型光ファイバ線路において、
前記波長透過フィルタは、請求項2に記載する波長透過フィルタであることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか一つに記載する受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて光パルス信号を送ることで特定の波長の光パルス信号が各分岐線路の波長透過フィルタの波長透過窓を透過し、透過した光パルス信号に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにしたことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項7】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
複数の直線状のマスクを、隣接するもの同士の間隔が漸増するとともに前記各光ファイバを横断するように配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、2グループに分けた一方のグループの各ファイバーグレーティングの最大反射波長が他のグループのいずれかのファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにそれぞれ反射波長域が異なるファイバーグレーティングを形成する工程と、
一方のグループの光ファイバと他方のグループの光ファイバとを1本づつ接続することにより一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することで所定波長域の光を透過させる透過波長窓を設ける工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【請求項8】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、隣接するマスク同士の間隔が漸増し、しかも前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、それぞれ反射波長域が異なる複数のファイバーグレーティングを、同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるように形成することでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【請求項9】
複数の光ファイバを平行に並べる工程と、
前記光ファイバの長手方向に関する2箇所で前記各光ファイバを横断するとともに、前記2箇所のそれぞれにおいて隣接するマスク間の間隔が異なるように、複数の直線状のマスクを平行に前記光ファイバ上に配設する工程と、
前記各マスクが配設された前記各光ファイバに紫外線を照射して露光することにより、複数のファイバーグレーティングを形成する工程と、
前記ファイバーグレーティングを形成した各光ファイバの軸方向に張力を付与して前記各ファイバーグレーティングの反射波長域がそれぞれ異なるようにし、同時に同一光ファイバにおいて一方のファイバーグレーティングの最大反射波長が他方のファイバーグレーティングの最小反射波長よりも小さくなるようにすることでそれぞれ異なる所定波長域の光を透過させる透過波長窓を各光ファイバに形成する工程とを有することを特徴とする波長透過フィルタの作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−91756(P2006−91756A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280292(P2004−280292)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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