説明

波長選択スイッチおよび光伝送装置

【課題】クロストークを抑制して伝送品質の向上を図る。
【解決手段】波長選択スイッチは、波長分光素子、波長集光素子、複数の透過制御素子および制御部を含む。波長分光素子は、入力信号光の波長分光を行う。透過制御素子は、入力信号光をチャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する。波長集光素子は、透過制御素子から出力された各波長の信号光を集光して出力する。制御部は、チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の透過制御素子の透過率を制御する。また、低周波側の所定帯域または高周波側の所定帯域の少なくとも一方を遮断域にして、波長多重化すべき入力信号光の透過帯域の狭窄化を行い、光スペクトルの重複した帯域部分を削除して、透過信号光を出力することで、クロストークを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチングを行う波長選択スイッチおよび光伝送を行う光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークを構築するノードでは、光挿入分岐機能(OADM:Optical Add Drop Multiplexing)による経路切替を行い、互いに異なる複数の波長の信号光を多重化するWDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送が行われている。
【0003】
特に、OADMでは、ノードの各ポートから、任意の波長チャネルをAdd(挿入)し、または任意の波長チャネルをDrop(分岐)するカラーレスOADM(Colorless OADM)が実現されている。
【0004】
従来技術として、要求に応じてOADM機能を拡張する技術が提案されている。また、光のスペクトル裾を除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87062号公報
【特許文献2】特開2009−212584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、カラーレスOADMにより、波長チャネルのAdd/Dropを行ってWDM伝送を行うことにより、波長ルーティングの効率化が図られる。
しかし、互いに異なる波長の波長チャネルを波長多重化する場合、波長チャネル間のクロストークの発生が問題になる。特に伝送レートが大きいほど、光スペクトルの帯域幅が広がるので、隣接する波長チャネル間でのクロストークの影響が大きくなり、伝送品質が劣化してしまう。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、クロストークを抑制して伝送品質の向上を図った波長選択スイッチを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、クロストークを抑制して伝送品質の向上を図った光伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、波長選択スイッチが提供される。波長選択スイッチは、入力信号光をチャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する複数の透過制御素子と、前記チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の前記透過制御素子の透過率を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
クロストークを抑制して伝送品質の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】波長選択スイッチの構成例を示す図である。
【図2】透過帯域の狭窄化を説明するための図である。
【図3】透過帯域の狭窄化を説明するための図である。
【図4】光伝送システムの構成例を示す図である。
【図5】光伝送システムの構成例を示す図である。
【図6】伝送ペナルティを示す図である。
【図7】波長多重化時の損失を示す図である。
【図8】光スペクトルの重複部分を示す図である。
【図9】光伝送システムの構成例を示す図である。
【図10】光伝送システムの構成例を示す図である。
【図11】伝送ペナルティを示す図である。
【図12】カラーレスの波長設定を示す図である。
【図13】カラーレスの波長設定を示す図である。
【図14】グリッドレスの波長設定を示す図である。
【図15】グリッドレスの波長設定を示す図である。
【図16】光伝送システムの構成例を示す図である。
【図17】光伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は波長選択スイッチの構成例を示す図である。波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)2は、波長分光素子2a、波長集光素子2b、複数の透過制御素子2−1〜2−nおよび制御部2cを含む。
【0012】
波長分光素子2aは、入力信号光の波長分光を行う。透過制御素子2−1〜2−nは、入力信号光をチャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する。波長集光素子2bは、透過制御素子2−1〜2−nから出力された各波長の信号光を集光して出力する。制御部2cは、チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の透過制御素子の透過率を制御する。
【0013】
ここで、透過制御素子2−1〜2−nでは、互いに異なる複数の波長の入力信号光に対して、低周波側または高周波側の少なくとも一方の透過制御素子の透過率を制御して、低周波側または高周波側の少なくとも一方の所定帯域を遮断域にして、波長多重化すべき入力信号光の透過帯域の狭窄化を行う。
【0014】
例えば、波長λ1の入力信号光s1(チャネルs1とする)に対して、チャネルs1の透過制御素子では、低周波側の透過制御素子の透過率を制御して、低周波側の所定帯域を遮断域にする。また、高周波側の透過制御素子の透過率を制御して、高周波側の所定帯域を遮断域にする。このような制御を施して透過帯域を狭窄化し、透過信号光s1−1を生成する。
【0015】
また、波長λ2(λ1≠λ2)の入力信号光s2(チャネルs2とする)に対して、低周波側の透過制御素子の透過率を制御して、低周波側の所定帯域を遮断域にする。また、高周波側の透過制御素子の透過率を制御して、高周波側の所定帯域を遮断域にする。このような制御を施して透過帯域を狭窄化し、透過信号光s2−1を生成する。
【0016】
これにより、入力信号光s1、s2の光スペクトルの重複(overlap)した帯域部分(図中の斜線部)が削除されて、透過信号光s1−1、s2−1が出力されるので、光クロストークを抑制することができ、特性劣化を低減することが可能になる。
【0017】
なお、図では、光スペクトルの重複領域をすべて削除している状態を示しているが、クロストークが許容される範囲内で所望の伝送品質を満たすのであれば、すべての重複領域を削るものではない。
【0018】
上記のWSS2としては、例えば、シリコン基板上に液晶を形成した液晶セルで透過率を制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)タイプのデバイスを適用することができる(透過制御素子はピクセルとも呼ばれる)。または、シリコンチップ上にマイクロミラーを設けてミラー角度で透過率を制御するDLP(Digital Lightwave Processing)タイプのデバイスを適用してもよい。
【0019】
次に透過帯域の狭窄化について説明する。図2、図3は透過帯域の狭窄化を説明するための図である。横軸は周波数(相対周波数:GHz)、縦軸は損失(相対損失:dB)である。
【0020】
図2は、1波の信号光(波長λ0とする)に対して、狭窄化を施していないときの透過特性を示している。中心周波数が0GHzの信号光スペクトルに対して、透過特性a0が図2に示すような形状にあるとする(一番外側のラインの形状)。透過特性a0の内部が透過域(通過域)である。
【0021】
WSS2では、複数の透過制御素子2−1〜2−nによって透過特性a0の1波長チャネル帯域内を分割して制御する。例えば、7素子の透過制御素子2−1〜2−7によって、透過特性a0の1波長チャネル帯域内をそれぞれ分割して制御するものとする。
【0022】
ここでは、低周波側から高周波側へ、透過制御素子2−1〜2−7が順に対応しているとする。この場合、波長λ0の信号光を透過する際は、7素子の透過制御素子2−1〜2−7がすべてオンして透過フィルタリングを行うことで、波長λ0の信号光が透過する。
【0023】
図2の場合、透過特性a1〜a7はそれぞれ、透過制御素子2−1〜2−7に対応している。透過制御素子2−1がオンしたときは、透過特性a1の形状の透過フィルタリングとなり、透過制御素子2−2がオンしたときは、透過特性a2の形状の透過フィルタリングとなる。同様にして、透過制御素子2−7がオンしたときは、透過特性a7の形状の透過フィルタリングとなる。
【0024】
このように、波長λ0の1つの波長チャネルを透過特性a0で透過させる場合には、WSS2では、透過制御素子2−1〜2−7をすべてオンにして、透過特性a1〜a7の透過域を生成することで透過特性a0を実現する。
【0025】
図3は、狭窄化後の透過特性を示している。透過帯域を狭窄化する場合、例えば、入力信号光の低周波側の光透過制御を行う透過制御素子2−1をオフにして、透過制御素子2−1の透過率を下げて、低周波側の透過帯域を遮断する。さらに、入力信号光の高周波側の光透過制御を行う透過制御素子2−7をオフにして、透過制御素子2−7の透過率を下げて、高周波側の透過帯域を遮断する。
【0026】
このような制御を行うことで、透過制御素子2−1〜2−7の内、透過制御素子2−2〜2−6までがオンし、透過制御素子2−1、2−7がオフするので、透過特性a0−1のような形状となる。すなわち、図2で示した透過特性a0の光スペクトルの帯域幅が狭くなって、図3の透過特性a0−1となっており、光スペクトルの狭窄化が行われている。
【0027】
このように、透過特性を波長チャネル帯域内で複数の透過制御素子2−1〜2−nで分割して制御するWSS2により、入力信号光に対して、低周波側および高周波側の透過制御素子の透過率を制御する。そして、低周波側および高周波側の所定帯域の透過光を遮断して、入力信号光の透過帯域の狭窄化を行うこととした。
【0028】
これにより、入力される複数の波長チャネルの信号光に対して、光スペクトル幅を狭くして透過することができる。このため、隣接する波長チャネル間での光スペクトルの重なり部分が解消されて、クロストークを抑制することができるので、特性劣化を低減することが可能になる。
【0029】
なお、上記では、低周波側の1つの透過制御素子と、高周波側の1つの透過制御素子とをオフにして透過率を下げる例を示したが、伝送レートに応じて、光スペクトルの重複部分が解消されるように、低周波側および高周波側に対して、複数の透過制御素子をオフにしてもよい。
【0030】
さらに、低周波側と高周波側とを均一に透過率を下げる制御に限らず、例えば、低周波側は2素子分透過率を下げ、高周波側は1素子透過率を下げるといったように、低周波側と高周波側とを不均一に透過率を下げるように制御してもよい。
【0031】
さらにまた、上記では低周波および高周波の両側の所定帯域を遮断域にして狭窄化したが、低周波側のみ、または高周波側のみの所定帯域を遮断域にすることもできる。
次にWSS2のシステム適用例を説明する前に、カラーレスOADM機能を有する一般的な光伝送システムについて説明する。
【0032】
図4、図5は光伝送システムの構成例を示す図である。光伝送システム5は、光伝送装置50−1〜50−nを備え、光ファイバ伝送路Fでシリアルに接続される。光伝送装置50−1〜50−nは、プリアンプ51a、ポストアンプ51b、光分岐部52および光合波部53を含む。
【0033】
プリアンプ51aは、光ファイバ伝送路Fを流れてきたWDM信号光を増幅する。光分岐部52は、増幅されたWDM信号光を受信して2分岐する。2分岐された一方のWDM信号光は、主伝送ラインへ(光合波部53へ)スルー出力され、2分岐された他方のWDM信号光は、トリビュタリ側へDropされる。
【0034】
光合波部53は、トリビュタリからAddされた信号光を受信する。そして、光分岐部52から送信されたWDM信号光と、Addされた信号光とを波長多重化して、あらたなWDM信号光を生成する。なお、光合波部53の適用デバイスとして、光カプラやWSSといったデバイスを使用して、波長多重化を行うことができる。
【0035】
ポストアンプ51bは、光合波部53から出力されたWDM信号光を増幅して、光ファイバ伝送路Fを通じて次段装置へ出力する。
上記のような光伝送システム5において、光伝送装置50−1から波長チャネルch19、ch20、ch21をAddする。また、光伝送装置50−2〜50−(n−1)では、波長チャネルch20の両側の波長チャネルch19、ch21のAdd、Dropを繰り返し、光伝送装置50−nでは、波長チャネルch19、ch20、ch21をDropする。このようなモデルを構築した際の伝送ペナルティについて以下説明する。
【0036】
図6は伝送ペナルティを示す図である。横軸はスパン番号、縦軸は伝送ペナルティ(Qペナルティ:dB)である。スパン番号が大きくなるほど長距離伝送であり、伝送ペナルティの値が大きいほど伝送特性が劣化することになる。
【0037】
伝送ペナルティQ1は、光伝送装置50−1〜50−nの光合波部53における波長多重化処理を、光カプラで実現したときの伝送ペナルティの値である。また、伝送ペナルティQ2は、光合波部53における波長多重化処理を、LCOSタイプのWSSで実現したときの伝送ペナルティである。さらに、伝送ペナルティQ0は、波長多重化せずに装置間をスルー伝送した1波の信号光の伝送ペナルティである。
【0038】
図に示す伝送ペナルティQ1〜Q3から、光カプラまたはWSSで波長多重化してWDM伝送を行う場合は、波長多重化を行わない伝送のときと比べて、伝送品質が大きく劣化することがわかる。
【0039】
これは、波長多重化時に、隣接する波長チャネル間のクロストークが発生することが主な原因である。また、伝送ペナルティQ1は、伝送ペナルティQ2よりも大きいので、WSSを使用した場合よりも、光カプラを使用して波長多重化した場合の方が伝送品質の劣化が大きいことがわかる。
【0040】
次に波長多重化時の光カプラおよびWSSの光損失について説明する。図7は波長多重化時の損失を示す図である。横軸は周波数(相対周波数:GHz)、縦軸は損失(相対損失:dB)を示す。損失L0(点線)は、光カプラの損失値であり、損失L1(実線)は、WSSの損失値である。
【0041】
光合波部53に光カプラを使用して、複数波長チャネルの信号光の波長多重化を行う場合、光カプラでは、パワー多重を行うために、どの周波数(波長)のチャネルに対しても一定の損失レベルとなる。すなわち、隣接する波長チャネルの光スペクトルの裾が減衰せずに合波するので、クロストークによる劣化が顕著となる。
【0042】
一方、WSSを使用して、複数波長チャネルの信号光の波長多重化を行う場合は、波長チャネル間の中心波長(図では−25GHz、+25GHz)での光減衰が3〜6dBと小さくなって波長多重化される。
【0043】
このため、光スペクトルの裾がやや減衰して波長多重化されるので、光カプラの場合と比べれば、クロストークの特性は良くなる。ただし、光スペクトルの裾が完全に遮断されて多重化されるわけではなく、また、伝送レートが大きくなるにつれて、隣接波長チャネルの光スペクトルの重複部分は大きくなるので、単純にWSSを使用しただけでは所望の伝送品質は見込めない。
【0044】
次に伝送レートが大きくなるにつれてクロストークの影響が顕著に現れることについて説明する。図8は光スペクトルの重複部分を示す図である。横軸は周波数(GHz)、縦軸は光パワー(dBm)である。ここで10Gb/sの伝送から40Gb/sの伝送へと情報量を増やした場合について考える。
【0045】
10Gb/sの場合、例えば、中心周波数の間隔を50GHzの間隔で波長多重化しても、1波の光スペクトル半値は10GHzであるから、隣接する波長チャネルの光スペクトルの裾が重複することがない。
【0046】
これに対し、40Gb/sの場合では、中心周波数の間隔を50GHzの間隔で波長多重化すると、1波の光スペクトル半値は40GHzであるから、隣接する波長チャネルの光スペクトルの裾が重複してしまう(図中、斜線部)。
【0047】
このように、信号光の光スペクトル幅は、伝送レートが高くなるほど広がるので、伝送レートの高いWDM伝送を行った場合、光スペクトルの裾が重なってしまい、クロストークによる信号劣化が顕著に現れる。
【0048】
次に透過帯域の狭窄化を行うWSS2を適用した光伝送装置および光伝送システムについて説明する。図9、図10は光伝送システムの構成例を示す図である。光伝送システム1は、光伝送装置10−1〜10−nを備え、光ファイバ伝送路Fでシリアルに接続される。
【0049】
また、ネットワーク管理装置(NMS:Network Management System)100が光伝送装置10−1に接続されている。ネットワーク管理装置100は、ユーザインタフェース機能を有し、光伝送装置10−1〜10−nを含むシステム全体の運用管理を行う。
【0050】
光伝送装置10−1〜10−nは、プリアンプ11a、ポストアンプ11b、WDM光分岐部12、WDM光合波部13、制御部14、光分波部20および光挿入部30を含む。WDM光分岐部12と光分波部20は、波長チャネルのDrop関連の処理を主に行い、WDM光合波部13と光挿入部30は、波長チャネルのAdd関連の処理を主に行う。
【0051】
光分波部20は、波長分離部21−1〜21−n、受信部21−1−1〜21−1−n、・・・、21−n−1〜21−n−nを含む。波長分離部21−1には、受信部21−1−1〜21−1−nが接続し、波長分離部21−nには、受信部21−n−1〜21−n−nが接続する。
【0052】
光挿入部30は、波長多重化部31−1〜31−n、送信部31−1−1〜31−1−n、・・・、31−n−1〜31−n−nを含む。波長多重化部31−1には、送信部31−1−1〜31−1−nが接続し、波長多重化31−nには、送信部31−n−1〜31−n−nが接続する。
【0053】
なお、適用デバイスとして、WDM光分岐部12には光カプラを使用し、WDM光合波部13、波長分離部21−1〜21−nおよび波長多重化部31−1〜31−nにはWSSを使用している。
【0054】
プリアンプ11aは、光ファイバ伝送路Fを流れてきたWDM信号光を増幅する。WDM光分岐部12は、増幅されたWDM信号光を受信して2分岐する。2分岐された一方のWDM信号光は、主伝送ラインへ(WDM光合波部13へ)スルー出力され、2分岐された他方のWDM信号光は、光分波部20へ出力される。
【0055】
光分波部20内の波長分離部21−1〜21−nは、WDM光分岐部12から分岐出力されたWDM信号光を波長毎の信号光に分離する。受信部21−1−1〜21−1−n、・・・、21−n−1〜21−n−nは、波長分離部21−1〜21−nから出力された信号光を波長毎に受信し、各波長の信号光の受信処理を行って、クライアント側へ出力する。
【0056】
一方、光挿入部30内の送信部31−1−1〜31−1−n、・・・、31−n−1〜31−n−nは、クライアントから送信された信号の送信処理を行う。波長多重化部31−1〜31−nは、送信部31−1−1〜31−1−n、・・・、31−n−1〜31−n−nから送信された各波長の信号光の波長多重化を行い、波長多重化した信号光をWDM光合波部13へ送信する。
【0057】
WDM光合波部13は、光挿入部30からAddされた信号光(波長多重化信号光)を受信する。そして、WDM光分岐部12から送信されたWDM信号光と、Addされた信号光とを波長多重化して、あらたなWDM信号光を生成する。
【0058】
ポストアンプ11bは、WDM光合波部13から出力されたWDM信号光を増幅して、光ファイバ伝送路Fを通じて次段装置へ出力する。
制御部14は、ネットワーク管理装置100からの設定を受けて、自装置内の運用設定・監視制御を行う。また、運用状態をネットワーク管理装置100へ通知する。さらに、他装置内の制御部14とも通信を行う。
【0059】
なお、ネットワーク管理装置100と制御部14との通信、または、装置間の制御部14における通信は、例えば、OSC(Optical Supervisory Channel)信号などを用いて行われる。
【0060】
ここで、光伝送システム1の波長多重化が行われる構成部に対して、図1で上述した透過帯域の狭窄化を行うWSS2を適用する。具体的には、光挿入部30内の波長多重化部31−1〜31−nに対して、WSS2(第1の波長選択スイッチ)を適用して、Addすべき波長チャネルの透過帯域を狭窄化する。
【0061】
または、波長多重化部31−1〜31−nに加えて、さらにWDM光合波部13に対しても、WSS2(第2の波長選択スイッチ)を適用して透過帯域の狭窄化を行うことができる。
【0062】
なお、WSS2による透過帯域の狭窄化制御の設定は、例えば、ネットワーク管理装置100から該当光伝送装置内の制御部14に通知され、通知を受けた制御部14が該当のWSS2に対して狭窄化の設定を実施する。
【0063】
次に光伝送システム1における伝送ペナルティについて説明する。図11は伝送ペナルティを示す図である。横軸はスパン番号、縦軸は伝送ペナルティ(Qペナルティ:dB)である。
【0064】
伝送ペナルティQ1、Q2は、図6で示した値と同じであり、伝送ペナルティQ1は、従来システムにおいて、波長多重化処理を光カプラで実現した場合であり、伝送ペナルティQ2は、波長多重化処理をLCOSタイプのWSSで実現した場合である。
【0065】
一方、伝送ペナルティQ3は、光伝送システム1の波長多重化部31−1〜31−nにおいて、図1で示したWSS2を適用して、透過帯域の狭窄化を行って波長多重化処理を行ったときの値を示している。
【0066】
さらに、伝送ペナルティQ4は、光伝送システム1の波長多重化部31−1〜31−nとWDM光合波部13の両方に対して、図1で示したWSS2を適用して、透過帯域の狭窄化を行って波長多重化処理を行ったときの値を示している。
【0067】
図に示されるように、伝送ペナルティQ3、Q4は、伝送ペナルティQ1、Q2よりも値が大幅に低くなっている。すなわち、WSS2で透過帯域の狭窄化を施して波長多重化を行うことにより、従来の光伝送システム5に比べて、クロストークが大幅に低減されていることがわかる。
【0068】
なお、伝送ペナルティQ3では、Addされる最初の波長多重化処理ブロックのみで狭窄化を行い、スルーされたWDM信号光と合波する部分では、狭窄化処理を行わない場合である。また、伝送ペナルティQ4は、Addされる最初の波長多重化処理ブロックと、スルーされたWDM信号光と合波する部分との両方で、狭窄化処理を行っている場合である。
【0069】
伝送ペナルティQ3、Q4の測定値の差異は、上記の構成上の差異にもとづくものであるが、伝送ペナルティQ3、Q4を比較すると、伝送ペナルティQ3の方が、伝送ペナルティQ4よりも特性は良い。
【0070】
これは、Addされる最初のブロックと、スルーされたWDM信号光と合波するブロックとの両方で、狭窄化処理を行うと、光スペクトルの重複部分の削除だけでなく、光スペクトル自身の狭窄化により、情報量も削減されてしまうことによるものである。ただし、このような場合でも、従来の光伝送システム5に比べれば、クロストークは大幅に低減されて伝送品質を向上させることができる。
【0071】
次にカラーレスの波長設定とグリッドレス(Gridless)の波長設定について説明する。図1で示したWSS2の透過制御素子2−1〜2−nに対して所定の透過制御を行うことにより、波長の狭窄化設定だけでなく、カラーレスやグリッドレスの波長設定を行うこともできる。
【0072】
図12、図13はカラーレスの波長設定を示す図である。横軸は周波数(相対周波数:GHz)、縦軸は損失(相対損失:dB)を示す。
図12は、波長λ0の1波の信号光の透過特性を示している。中心周波数が0GHzの信号光スペクトルに対して、透過特性b0が図12に示すような形状にあるとする(一番外側のラインの形状)。
【0073】
図12の例では、波長λ0の波長チャネルを透過特性b0で透過させる場合、7つの透過制御素子をすべてオンにして、透過特性b1〜b7の透過域を生成することで、透過特性b0を実現している。
【0074】
図13は、波長λ1の信号光の透過特性b10を示している。波長λ0の中心周波数が0GHzの信号光スペクトルの透過帯域を、波長λ1の中心周波数が50GHzの信号光スペクトルの透過帯域に波長シフトした状態を示している。
【0075】
すなわち、透過特性b0を生成していた7つの透過制御素子をすべてオフにし、透過特性b10を生成する際の7つの透過制御素子をすべてオンにして、透過特性b11〜b17の透過域を生成することで、透過特性b10を実現している。
【0076】
このように、所定の波長帯域を設定する場合には、WSS2の1波長チャネル分の透過制御素子をオンにして、該波長帯域の透過特性を生成することにより、透過すべき波長を変更することができ、カラーレスの波長設定を行うことができる。
【0077】
図14、図15はグリッドレスの波長設定を示す図である。横軸は周波数(相対周波数:GHz)、縦軸は損失(相対損失:dB)を示す。
図14は、波長λ0の1波の信号光の透過特性を示している。中心周波数が0GHzの信号光スペクトルに対して、透過特性c0が図14に示すような形状にあるとする(一番外側のラインの形状)。
【0078】
図14の例では、波長λ0の波長チャネルを透過特性c0で透過させる場合、7つの透過制御素子をすべてオンにして、透過特性c1〜c7の透過域を生成することで、透過特性c0を実現している。
【0079】
図15は波長λ0の波長チャネルの中心周波数を1グリッド分、高周波側へシフトした状態を示している。ここで、図14で示した透過特性c0を実現している透過特性c1〜c7のそれぞれが透過制御素子2−1〜2−7の制御に対応しているものとする。
【0080】
透過特性c0を1グリッド分(1つの透過制御素子で制御できる周波数分)、高周波側にシフトさせる場合、透過制御素子2−1をオフにして、透過特性c1を遮断域にする。さらに、あらたな透過制御素子2−8をオンにして、透過特性c8の透過域を生成する。このような制御を行うことにより、1グリッド分高周波側へシフトして微調整することができる。
【0081】
このように、低周波数側の透過制御素子の透過率を下げ、高周波数側の透過制御素子の透過率を上げることで、所定のグリッドの数分、透過信号の中心波長を高周波側へシフトすることができる。
【0082】
逆に、高周波数側の透過制御素子の透過率を下げ、低周波数側の透過制御素子の透過率を上げることで、所定のグリッドの数分、透過信号の中心波長を低周波側へシフトすることができる。これにより、グリッドレスの波長設定を行うことができる。
【0083】
以上説明したように、WSS2の透過制御素子2−1〜2−nに対して所定の透過制御を行うことにより、波長の狭窄化設定だけでなく、カラーレスやグリッドレスの波長設定を行うこともできる。
【0084】
このため、WSS2を波長多重化を行う構成に適用することにより、波長の狭窄化によるクロストークの抑制に加えて、さらにカラーレスやグリッドレスの波長設定を行うこともできるので、柔軟なシステムを構築することができ、運用性の向上を図ることが可能になる。
【0085】
次に光伝送システム1の変形例について説明する。図16、図17は光伝送システムの構成例を示す図である。光伝送システム1aは、光伝送装置10a−1〜10a−nを備え、光ファイバ伝送路Fでシリアルに接続される。
【0086】
また、ネットワーク管理装置100(NMS)が光伝送装置10a−1に接続されている。ネットワーク管理装置100は、ユーザインタフェース機能を有し、光伝送装置10a−1〜10a−nを含むシステム全体の運用管理を行う。
【0087】
なお、図9、図10で上述した光伝送システム1は、多波長のAdd/Dropを行う場合に適した構成であり、変形例の光伝送システム1aは、少数波長のAdd/Dropを行う場合に適した構成である。
【0088】
光伝送装置10a−1〜10a−nは、プリアンプ11a、ポストアンプ11b、WDM光分岐部12−1、WDM光合波部13−1、制御部14a、光分波部20aおよび光挿入部30aを含む。
【0089】
WDM光分岐部12−1と光分波部20aは、波長チャネルのDrop関連の処理を主に行い、WDM光合波部13−1と光挿入部30aは、波長チャネルのAdd関連の処理を主に行う。
【0090】
光分波部20aは、波長分離部21a、受信部22−1〜22−nを含む。光挿入部30aは、送信部32−1〜32−nを含む。なお、適用デバイスとして、WDM光分岐部12−1には光カプラを使用し、WDM光合波部13−1および波長分離部21aには、WSSを使用している。
【0091】
プリアンプ11aは、光ファイバ伝送路Fを流れてきたWDM信号光を増幅する。WDM光分岐部12−1は、増幅されたWDM信号光を受信して2分岐する。2分岐された一方のWDM信号光は、主伝送ラインへ(WDM光合波部13−1へ)スルー出力され、2分岐された他方のWDM信号光は、光分波部20aへ出力される。
【0092】
光分波部20a内の波長分離部21aは、WDM光分岐部12−1から分岐出力されたWDM信号光を波長毎の信号光に分離する。受信部22−1〜22−nは、波長分離部21aから出力された信号光を波長毎に受信し、各波長の信号光の受信処理を行ってクライアント側へ出力する。
【0093】
一方、光挿入部30a内の送信部32−1〜32−nは、クライアントから送信された信号の送信処理を行う。WDM光合波部13−1は、光挿入部30aからAddされた信号光を受信する。そして、WDM光分岐部12−1から送信されたWDM信号光と、Addされた信号光とを波長多重化して、あらたなWDM信号光を生成する。
【0094】
ポストアンプ11bは、WDM光合波部13−1から出力されたWDM信号光を増幅して、光ファイバ伝送路Fを通じて次段装置へ出力する。
制御部14aは、ネットワーク管理装置100からの設定を受けて、自装置内の運用設定・監視制御を行う。また、運用状態をネットワーク管理装置100へ通知する。さらに、他装置内の制御部14aとも通信を行う。なお、ネットワーク管理装置100と制御部14aとの通信や、装置間の制御部14aの通信は、例えば、OSC信号などを用いて行われる。
【0095】
ここで、光伝送システム1aの波長多重化が行われる構成部に対して、図1で上述した透過帯域の狭窄化を行うWSS2の機能を適用する。具体的には、光伝送装置10a−1〜10a−nの全装置内すべてのWDM光合波部13−1に対して、WSS2の機能を適用して、Addすべき波長チャネルの透過帯域を狭窄化する。
【0096】
または、初段の光伝送装置10a−1内のWDM光合波部13−1に対してのみ、WSS2の機能を適用して、Addすべき波長チャネルの透過帯域を狭窄化し、光伝送装置10a−2〜10a−n内のWDM光合波部13−1には、透過帯域の狭窄化を行わないようにしてもよい。
【0097】
なお、WSS2による透過帯域の狭窄化制御の設定は、例えば、ネットワーク管理装置100から該当光伝送装置内の制御部14aに通知され、通知を受けた制御部14aが該当のWSS2に対して狭窄化の設定を実施する。このような光伝送システム1aの構成にすることにより、波長多重化時のクロストークを抑制して伝送品質の向上を図ることが可能になる。
【0098】
以上説明したように、WSS2の透過制御素子2−1〜2−nの透過率を制御して、低周波側または高周波側の少なくとも一方の所定帯域を遮断域にして、波長多重化すべき入力信号光毎に透過帯域の狭窄化を行う構成とした。これにより、隣接波長チャネル間の光スペクトルの裾を効率よく削ることができ、クロストークを抑圧して伝送品質の向上を図ることが可能になる。
【0099】
また、クロストークによる信号劣化の大幅な抑制だけでなく、カラーレスOADMやグリッドレスOADMによる機能も実現することができるので、システムの柔軟性および運用性の向上を図ることが可能になる。
【0100】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
2 波長選択スイッチ
2−1〜2−n 透過制御素子
s1、s2 入力信号光
s1−1、s2−1 透過信号光
2a 波長分光素子
2b 波長集光素子
2c 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号光をチャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する複数の透過制御素子と、
前記チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の前記透過制御素子の透過率を制御する制御部と、を有することを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
低周波側の所定帯域または高周波側の所定帯域の少なくとも一方を遮断域にして、前記入力信号光の透過帯域の狭窄化を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
互いに異なる複数の波長の入力信号光の波長多重化を行う第1の波長選択スイッチと、
前記第1の波長選択スイッチから出力された第1の信号光を、第2の信号光に波長多重して挿入する第2の波長選択スイッチと、
を備え、
前記第1の波長選択スイッチは、入力信号光をチャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する複数の第1の透過制御素子と、前記チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の前記第1の透過制御素子の透過率を制御する制御部とを有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
前記第1の波長選択スイッチは、低周波側の所定帯域または高周波側の所定帯域の少なくとも一方を遮断域にして、前記入力信号光の透過帯域の狭窄化を行う、
ことを特徴とする請求項3記載の光伝送装置。
【請求項5】
前記第2の波長選択スイッチは、
前記第1の信号光および前記第2の信号光を各チャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する複数の第2の透過制御素子を有し、
前記制御部は、前記チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の前記第2の透過制御素子の透過率を制御することを特徴とする請求項3記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記第2の波長選択スイッチは、低周波側の所定帯域または高周波側の所定帯域の少なくとも一方を遮断域にして、前記入力信号光の透過帯域の狭窄化を行う、
ことを特徴とする請求項5記載の光伝送装置。
【請求項7】
互いに波長が異なる複数の信号光をそれぞれ出力する複数の送信部と、
前記送信部から送信された複数の信号光を、第2の信号光に波長多重して挿入する波長選択スイッチと、
を備え、
前記波長選択スイッチは、前記複数の信号光を各チャネル帯域内で波長帯域別に分割して透過または遮断する複数の透過制御素子と、前記各チャネル帯域内の低周波側または高周波側の少なくとも一方の前記透過制御素子の透過率を制御する制御部とを有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項8】
前記波長選択スイッチは、前記各チャネル帯域内の低周波側の所定帯域または高周波側の所定帯域の少なくとも一方を遮断域にして、前記複数の信号光の透過帯域の狭窄化を行う、
ことを特徴とする請求項7記載の光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−194471(P2012−194471A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59619(P2011−59619)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】