説明

波長選択偏波制御器

【課題】 光波長多重信号の偏光面を波長成分ごとに調整することができ,しかも各成分に時間的なずれが生じない,波長選択偏波制御器を提供する。
【解決手段】 この波長選択偏波制御器は,光波長多重信号が入射するテレセントリック光学系11と,テレセントリック光学系から出力された光の偏波面を調整する偏波制御器12と,偏波制御器からの出力を光路へと出力するための出力光学系13と,を有する。テレセントリック光学系11は,光波長多重信号が入射する第1の回折格子15と,回折格子15を経た光波長多重信号を集光する第1の集光レンズ16と,を有する偏波制御器12は,複数の位相変調器21,22,23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ランダムな偏光状態で多重された光波長多重信号を,レーザー分離せずに波長成分ごとに偏光制御を行うことができる波長選択偏波制御器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長多重光情報通信において,光波長多重信号の位相及び強度を制御する装置として,帯域可変スペクトルシェイパー(VBS)が知られている。たとえば,特開2008−310190号公報(下記特許文献1)には,VBSが開示されている。
【0003】
また,波長成分ごとに偏波調整を行い,偏波面が調整された多数の波長の光信号を出力するための装置として,多入力多出力光偏波コントローラが知られている。たとえば,特開平8−262394号公報(下記特許文献2)には,多入力多出力光偏波コントローラが開示されている。この多入力多出力光偏波コントローラは,光波長多重信号を波長に応じて分離し,それぞれの波長成分の偏波面を調整した後に,合波することで,光波長多重信号に含まれるそれぞれの波長成分の偏波面を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310190号公報
【特許文献2】特開平8−262394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したVBSは,光波長多重信号の偏光を制御できない。
【0006】
上記した多入力多出力光偏波コントローラは,複数の波長成分を合波する際に,それぞれの成分のタイミングがずれる。
【0007】
そこで,本発明は,光波長多重信号の偏光面を波長成分ごとに調整することができ,しかも各成分に時間的なずれが生じない,波長選択偏波制御器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は,本発明の波長選択偏波制御器により解決される。本発明の波長選択偏波制御器は,光波長多重信号を,レーザー分離せずに波長成分ごとに偏光制御を行うことができる。本発明の波長選択偏波制御器は,テレセントリック光学系を構成する回折格子及び集光レンズと,テレセントリック光学系から出力されひとつの光線内で波長ごとに並べられた各成分の偏波を調整する偏波制御器と,偏波制御器からの出力を光路へと出力するための出力光学系とを有する。本発明は,基本的には,テレセントリック光学系にて,光波長多重信号をひとつのビーム内で波長ごとに並べられた光線とし,それぞれの成分ごとに偏波制御器にて偏波調整することで,光波長多重信号を分離せずに波長ごとに偏波面を調整できるという知見に基づくものである。
【0009】
本発明の第1の側面は,波長選択偏波制御器に関する。この波長選択偏波制御器は,光波長多重信号が入射するテレセントリック光学系11と,テレセントリック光学系から出力された光の偏波面を調整する偏波制御器12と,偏波制御器からの出力を光路へと出力するための出力光学系13と,を有する。
【0010】
テレセントリック光学系11は,光波長多重信号が入射する第1の回折格子15と,回折格子15を経た光波長多重信号を集光する第1の集光レンズ16と,を有する。そして,テレセントリック光学系11は,光波長多重信号をひとつの光線内で波長ごとに並べた状態で偏波制御器12へ伝えるものである。
【0011】
偏波制御器12は,複数の位相変調器21,22,23を有する。複数の位相変調器21,22,23の例は,0度の第1の位相変調器と,45度の第2の位相変調器と,0度の第3の位相変調器をこの順に有するものである。偏波制御器12は,テレセントリック光学系11から出力された,光波長多重信号の波長成分ごとに偏波面を制御するものである。
【0012】
複数の位相変調器21,22,23の上記とは別の例は,90度の第1の位相変調器と,135度の第2の位相変調器と,90度の第3の位相変調器をこの順に有するものである。すなわち,先に説明した波長選択偏波制御器において,0度の位相変調器の替わりに90度の位相変調器を用いてもよい。また,同様に,45度の位相変調器の替わりに135度の位相変調器を用いてもよい。
【0013】
出力光学系13は,たとえば,テレセントリック光学系11と対称的な構成を有するものや,光線が反射されて戻る場合は,テレセントリック光学系11そのものがあげられる。テレセントリック光学系11は,偏波制御器12からの出力光が入射する第2の集光レンズ31と,第2の集光レンズ31を経た出力光が入射する第2の回折格子32とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,光波長多重信号の偏光面を波長成分ごとに調整することができ,しかも各成分に時間的なずれが生じない,波長選択偏波制御器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は,本発明の波長選択偏波制御器を説明するためのブロック図である。
【図2】図2は,0度,45度及び0度の位相変調器による偏光調整の概念図である。
【図3】図3は,偏波制御器を構成する液晶セルの例を示す図である。
【図4】図4は,実施例1の波長選択偏波制御器を示す概念図である。
【図5】図5は,実施例2の波長選択偏波制御器を示す概念図である。
【図6】図6は本発明の第3の実施例の偏光無依存波長分散素子を使用した波長選択偏波制御器を示す図である。図6Aは,装置の波長分離がわかる方向から見た図である。図6Bは図6Aと直交する方向から見た図である。
【図7】図7は本発明の実施例4の偏光依存波長分散素子を使用した波長選択偏波制御器を示す図である。図7Aは,装置の波長分離がわかる方向から見た図である。図7Bは図7Aと直交する方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を説明する。図1は,本発明の波長選択偏波制御器を説明するためのブロック図である。図1に示されるように,この波長選択偏波制御器は,光波長多重信号が入射するテレセントリック光学系11と,テレセントリック光学系から出力された光の偏波面を調整する偏波制御器12と,偏波制御器からの出力を光路へと出力するための出力光学系13と,を有する。
【0017】
波長選択偏波制御器は,光波長多重信号に含まれる波長成分ごとに偏波面を調整できる装置である。
【0018】
テレセントリック光学系11は,光波長多重信号が入射する第1の回折格子15と,回折格子15を経た光波長多重信号を集光する第1の集光レンズ16と,を有する。テレセントリック光学系は,光軸と主光軸とが平行とみなせるような光学系である。テレセントリック光学系11は,偏波面調整器,偏光板及び反射板を含む光学素子をさらに含んでもよい。回折格子は,アレイ導波路回折格子(AWG)であってもよい。光波長多重信号の例は,シングルモードファイバや偏波面保持ファイバから出力され,テレセントリック光学系へと入力されるものである。
【0019】
テレセントリック光学系11は,光波長多重信号をひとつの光線内で波長ごとに並べた状態で偏波制御器12へ伝えるものである。すなわち,第1の回折格子15に光波長多重信号が入射する。すると,第1の回折格子15にて,波長成分ごとに光波長多重信号が分散する。この分散した光波長多重信号を第1の集光レンズ16で集光する。すると,ひとつの光線内で,波長成分ごとに並んだ光波長多重信号を得ることができる。そして,ひとつの光線内で,波長成分ごとに並んだ光波長多重信号を偏波制御器12へと出力する。すなわち,第1の集光レンズ16は,ひとつの光線内で,波長成分ごとに並んだ光波長多重信号を偏波制御器12に出力できる位置に設置される。
【0020】
偏波制御器12は,複数の位相変調器21,22,23を有する。複数の位相変調器21,22,23は,印加する電圧又は印加する電場により変調量を制御できる導波路型のものであってもよい。このような導波路型の位相変調器の例は,LN位相変調器である。さらに,複数の位相変調器21,22,23を光波長多重信号の波長成分ごとに有するものであってもよい。このように,それぞれの波長成分ごとに偏波制御器12が存在するので,ひとつの光線に含まれるそれぞれの波長成分ごとに偏波面を調整することができる。そして,本発明の波長選択偏波制御器は,偏波面の調整をひとつの光線に対して行うため,波長ごとのタイミングのずれを生ずることなく,各波長成分の偏波面を調整できる。
【0021】
複数の位相変調器21,22,23の例は,0度の第1の位相変調器と,45度の第2の位相変調器と,0度の第3の位相変調器をこの順に有するものである。0度の位相変調器は,x軸方向とy軸方向とで位相のずれが0度から360度の範囲で可変な位相変調器を意味する。45度の位相変調器は,x軸に対して45度方向と135度方向とで,位相のずれが0度から360度の範囲で可変な位相変調器を意味する。位相変調器は公知であり,公知の位相変調器を適宜用いることができる。
【0022】
図2は,0度,45度及び0度の位相変調器による偏光調整の概念図である。上記の例では,液晶LCの配向が0度,45度及び0度の順に並べられている。
【0023】
このうち,0度の位相変調器及び45度の位相変調器を用いることで,直線偏光の偏光面を制御できる。このように偏波面を調整した状態で,ファイバに光線を戻すことで,直線偏光の波長多重信号を得ることができる。また,本発明の波長選択偏波制御器は,直線偏光に偏光面を調整した後に,位相変調器を用いて任意の偏光状態とすることができる。先に説明したとおり,複数の位相変調器21,22,23は,90度の第1の位相変調器と,135度の第2の位相変調器と,90度の第3の位相変調器をこの順に有するものであってもよい。すなわち,0度の位相変調器の替わりに90度の位相変調器を用いてもよい。また,45度の位相変調器の替わりに135度の位相変調器を用いてもよい。
【0024】
さらに位相変調器の制御量を用いれば入射された各波長成分の偏光状態を求めることができる。これにより,本発明の波長選択偏波制御器は,偏波状態のモニタとしても機能する。具体的には,波長選択偏波制御器は,コンピュータなどの制御装置を有する。そして,制御装置は,各位相変調器と接続されている。そして,制御装置は,位相変調器から制御量に関する情報を受け取り,記憶部に記憶する。そして,制御装置は,メインメモリに格納した制御プログラムの指令を受けて,記憶部から制御量に関する情報を読み出して,演算部で偏波量を求める演算を行う。制御装置は,演算結果を適宜記憶部に記憶する他,モニタなどの出力部へ出力する。このようにして,本発明の波長選択偏波制御器は,偏波状態のモニタとしても機能する。
【0025】
図3は,偏波制御器を構成する液晶セルの例を示す図である。図3に示されるように,偏波制御器12は,ライン状又はマトリクス状に形成された複数の液晶セルを有するものであってもよい。液晶セルは,たとえば,それぞれ液晶物質を具備するとともに,液晶物質をはさむように存在する電極を具備する。なお,この電極は,透明電極であってもよいし,セルの周囲のいずれかに存在する金属電極であっても良い。具体的な構成として,たとえば,10μm〜40μmの格子ピッチを有する液晶素子を3枚接合し,接合したものをガラス基板に搭載すればよい。なお,上記の格子ピッチがセルの幅を決める要因となる。なお,隣接する液晶セル同士の間には,ギャップが設けられてもよい。
【0026】
前記液晶セルのうち集光レンズ側にあるものにおける集光径が小さいほど,得られるバンドパスの幅が小さくなるため好ましい。このような観点から,集光径として,20μm以上80μm以下の範囲のものがあげられ,好ましくは30μm以上70μmの範囲のものである。そして,液晶セルのサイズとして,10μm以上40μm以下があげられ,好ましくは15μm以上30μm以下であり,15μm以上25μm以下でも良い。このように微小なセルを用いるので,たとえば,10GHz間隔のパスバンドを達成できる。また,波長が大きくなるほど,集光径が大きくなるので,短波長側は2つの液晶セルでひとつの光を受けて,長波長側は3つの液晶セルでひとつの光を受けても良い。なお,集光径は,集光レンズにより集光された複数の光が液晶セル上に結像してできる光の直径である。
【0027】
テレセントリック光学系11は,偏波制御器12からの出力光が入射する第2の集光レンズ31と,第2の集光レンズ31を経た出力光が入射する第2の回折格子32とを有する。集光レンズ31及び回折格子32は,先に説明したものと同様のものを用いることができる。さらに,波長選択偏波制御器がリフレクタ―を有する場合,第1の集光レンズ及び第1の回折格子をそれぞれ第2の集光レンズ及び第2の回折格子として用いることができる。出力光学系13は,たとえば,テレセントリック光学系11と対称的な構成を有するものや,光線が反射されて戻る場合は,テレセントリック光学系11そのものがあげられる。この場合,公知のリフレクタ又はミラーが存在すればよい。すると,偏波面を制御した後の光線を光路に戻すことで,ひとつの波長多重信号として,出力することができる。
【実施例1】
【0028】
図4は,実施例1の波長選択偏波制御器を示す概念図である。図4中,INは入射された波長多重信号を示す。PMFは,偏波面保持ファイバを示す。ALは集光レンズを示す。Polは偏波面調整器を示す。グレーティングは回折格子を示す。空間変調器は,偏波制御器を示す。QWPは1/4波長板を示す。MRはミラーを示す。SMFはシングルモードファイバを示し,OUTは出力信号を示す。
【0029】
PMFから出力された光は,集光レンズの中心よりオフセットした位置に入射する。そして,この光はコリメート光として斜めに進む。斜めに進んだ光は,回折格子を通り,集光レンズに入射する。集光レンズにより集光された光は,偏波調整器へと入射する。偏波調整器で偏波面を調整された光は,集光レンズに入射する。そして,集光レンズから出射した光は,コリメート光として1/4波長板及びミラーを経て,偏光面が45度回転する。その後,偏光面が回転した光は,再度,偏波調整器に入射して,対称光路を経て,SMFから出力される。
【実施例2】
【0030】
図5は,実施例2の波長選択偏波制御器を示す概念図である。図5に示すような態様であっても実施例1と同様の波長選択偏波制御器を提供できる。
【実施例3】
【0031】
図6は本発明の第3の実施例の偏光無依存波長分散素子を使用した波長選択偏波制御器を示す図である。図6Aは,装置の波長分離がわかる方向から見た図であり,図6Bは図6Aと直交する方向から見た図である。図中,611は光入力ファイバ,612は光出力ファイバ,621はコリメートレンズ,622は集光レンズ,63は波長分散素子,641・644は配向軸0°液晶セル,642・643は配向軸45°液晶セル,65はビームスプリッタ,66は全反射ミラー,67は偏光分離素子,681・682は受光素子,691はA/D変換器,692は演算処理回路である。図示は行っていないが,この他に,データを記憶するメモリ機能や演算処理回路のデータを元に液晶セルの動作を決め制御するコンピュータからなる。以下に本実施例の動作を説明する。
【0032】
ファイバ611から入力された光波長多重信号光は,レンズ621でコリメートされ,波長分散素子63へ入力されることにより,各波長に応じて角度を変え,レンズ622へ入力される。ファイバ611,ファイバ612,レンズ621,レンズ622は,両側テレセントリック光学系となっており,波長ごとに主光線が光軸と平行な状態でレンズ622により集光される。集光された信号光は,液晶641と642へ入力される。液晶641と642は,波長分離方向に信号光の波長数と同数以上のセルが配置されており,波長ごとに入力される液晶セルが異なる。液晶642を通過した信号光は,ビームスプリッタ65へ入力され,一部が透過し,一部が反射する。
【0033】
まず,透過した信号光(以下,モニタ光)について記載する。モニタ光は,偏光分離素子により,P偏光とS偏光成分に分離される。分離されたそれぞれの偏光成分は,受光素子681と682へ入力される。受光素子681と682は,波長分離方向に信号光の波長数と同数以上の受光素子が配置されており,モニタ光の波長ごとの各偏光成分の光強度を取得することが可能である。受光素子681と682で取得されたその光強度は,A/D変換器によりデジタル化され,それを比較する機能を有する演算処理回路692にて,比較演算される。なお,図示は行っていないが,通常,適当なレンズ系でリレーし,受光素子681と682へモニタ光を入力させる。受光素子681(もしくは,682)での受光強度が最大,受光素子682(もしくは,681)での受光強度が0となるように,液晶641と642の位相量を制御することで,各波長のモニタ光の全てを直線偏光に制御することが出来,結果として,液晶642の出力側において,信号光を直線偏光に制御することが出来る。この時に液晶641と642の位相制御量の値から,ジョーンズマトリクス法により,信号光の各波長の偏光状態を算出することが可能である。
【0034】
一方,ビームスプリッタ66にて反射された信号光は,前述の通り,直線偏光に制御されており,全反射ミラー66にて直線偏光の状態で反射される。信号光は直線偏光の状態で液晶644と643に入力される。液晶643と644は,波長分離方向に信号光の波長数と同数以上のセルが配置されており,波長ごとに入力される液晶セルが異なる。信号光は液晶の配向軸に対して相対的に45°,0°の直線偏光で入力されるため,液晶643と644の位相量を個々に制御することで,信号光を波長ごとに任意の偏光状態に制御することが出来る。偏光制御された信号光は,レンズ622によりコリメートされ波長分散素子に入射し,分離していた各波長が再合波される。波長ごとに偏光制御され合波された信号光は,レンズ621にて集光され,ファイバ612にて出力される。
【0035】
本実施例では,信号光の偏光状態のモニタの構成として,偏光分離素子と受光素子を用いた構成を示したが,偏光状態を測定可能な別の光学系で代用することも可能である。公知であるため具体的には示さないが,ビームスプリッタ,偏光分離素子,固定位相差素子,検光子,受光素子,A/D変換器,演算処理回路により構成される一般的なストークスパラメータ測定光学系を用いることも可能である。
【実施例4】
【0036】
図7は本発明の実施例4の偏光依存波長分散素子を使用した波長選択偏波制御器を示す図である。図7Aは,装置の波長分離がわかる方向から見た図であり,図7Bは図7Aと直交する方向から見た図である。図中,611〜66までは前述の通りであるが,波長分散素子63は偏光依存性を顕著に持つものとする。711〜714は偏光分離素子,721〜724は1/2波長板,73は偏光依存波長分散素子,741〜744は波長板721〜724と同じ光路長の光路長補正板である。詳細な図示は行っていないが,図6の67〜692で構成されるモニタ部を併せて有する。
【0037】
ファイバ611から入力された光波長多重信号光は,偏光分離素子711によりP偏光成分とS偏光成分に分離される。片方の偏光は補正板741を通りそのままレンズ621へ入力される。もう片方の偏光は,入力偏光に対して光学軸が45°傾いた波長板721に入力され,偏光面が90°回転,つまり,片方の偏光と同じ偏光となりレンズ621へ入力される。偏光面の揃った二つの信号光は,レンズ621でコリメートされ,波長分散素子73へ入力されることにより,各波長に応じて角度を変え,レンズ622へ入力され集光される。信号光のうちの一つは,補正板742を通り偏波分離素子712へ入力される。もう一つの信号光は,入力偏光に対して光学軸が45°傾いた波長板722に入力され,偏光面が90°回転,つまり,片方の信号光と直交した偏光となり偏光分離素子712へ入力される。その結果,偏光分離素子712により二つに分離していた信号光が偏波合波され出力される。集光された信号光は,液晶641と642へ入力される。液晶641と642は,波長分離方向に信号光の波長数と同数以上のセルが配置されており,波長ごとに入力される液晶セルが異なる。液晶642を通過した信号光は,ビームスプリッタ65へ入力され,一部が透過し,一部が反射する。以降,液晶643までは,実施例3と同じ動作を行うことで,液晶643の出力側において信号光を波長ごとに任意の偏光状態に制御することが出来る。偏光制御された信号光は,偏光分離素子713により,P偏光成分とS偏光成分に分離される。片方の偏光は補正板743を通りレンズ622へ入力される。もう片方の偏光は,入力偏光に対して光学軸が45°傾いた波長板723に入力され,偏光面が90°回転,つまり,片方の偏光と同じ偏光となりレンズ622へ入力される。偏光制御され分離された二つの信号光は,レンズ622によりコリメートされ,波長分散素子73へ入力されることで波長合波される。波長合波された片方の信号光は,レンズ621により集光され,補正板744を通り,偏光分離素子714へ入力される。もう片方の信号光は,レンズ621により集光され,入力偏光に対して光学軸が45°傾いた波長板724に入力されることにより,偏光面が90°回転し,偏光分離素子714へ入力される。結果,偏光分離された二つの信号光が,偏光分離素子714にて偏光合波され,波長ごとに偏光制御された信号光が一つとなり,ファイバ612より出力される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は光情報通信の分野で利用され得る。
【符号の説明】
【0039】
11 テレセントリック光学系
12 偏波制御器
13 出力光学系
15 第1の回折格子
16 第1の集光レンズ
21,22,23 位相変調器
31 第2の集光レンズ
32 第2の回折格子
611 光入力ファイバ, 612 光出力ファイバ
621 コリメートレンズ, 622 集光レンズ
63 偏波無依存波長分散素子
641・644 配向軸0°液晶, 642・643 配向軸45°液晶
65 ビームスプリッタ
66 全反射ミラー
67 偏光分離素子
681,682 受光素子
691 A/D変換器, 692 演算処理回路
711,712,713,714 偏光分離素子
721・722・723・724 1/2波長板
73 偏光依存波長分散素子
741・742・743・744 光路長調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波長多重信号が入射するテレセントリック光学系(11)と,
前記テレセントリック光学系から出力された光の偏波面を調整する偏波制御器(12)と,
前記偏波制御器からの出力を光路へと出力するための出力光学系(13)と,を有し,
前記テレセントリック光学系(11)は,
光波長多重信号が入射する第1の回折格子(15)と,
前記回折格子(15)を経た光波長多重信号を集光する第1の集光レンズ(16)と,を有し,
前記光波長多重信号をひとつの光線内で波長ごとに並べた状態で前記偏波制御器(12)へ伝えるものであり,
前記偏波制御器(12)は,
複数の位相変調器(21,22,23)を有し,
前記テレセントリック光学系(11)から出力された,前記光波長多重信号の波長成分ごとに偏波面を制御するものであり,
前記出力光学系(13)は,
前記偏波制御器(12)からの出力光が入射する第2の集光レンズ(31)と,
前記第2の集光レンズ(31)を経た出力光が入射する第2の回折格子(32)とを有する,
波長選択偏波制御器。
【請求項2】
前記複数の位相変調器(21,22,23)は,0度の第1の位相変調器と,45度の第2の位相変調器と,0度の第3の位相変調器をこの順に有するものである,
請求項1に記載の波長選択偏波制御器。
【請求項3】
前記複数の位相変調器(21,22,23)は,90度の第1の位相変調器と,135度の第2の位相変調器と,90度の第3の位相変調器をこの順に有するものである,
請求項1に記載の波長選択偏波制御器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3277(P2013−3277A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132791(P2011−132791)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【出願人】(501392361)株式会社 オプトクエスト (24)
【Fターム(参考)】