説明

泥水の脱水処理方法及びシステム

【課題】一定強度の脱水ケーキを安定して得ることが可能な泥水の脱水処理方法及び泥水の脱水処理システムを提供する。
【解決手段】凝集反応槽3で泥水に凝集剤を反応させて凝集泥水を生成し、該凝集泥水を回転するドラムスクリーン41で水切りした後、スクリュープレス5で圧搾脱水して所定の含水率を有する脱水ケーキCを生成する。濃度が異なる複数の泥水に最適なドラムスクリーン41の最適回転速度を泥水の濃度毎にデータとして所得しておき、該データを参照して、ドラムスクリーン41の回転駆動を制御し、さらに、凝集反応槽3からドラムスクリーン41に供給する凝集泥水の単位時間当り供給量が最適となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてダム湖・港湾・河川の浚渫工事、トンネル掘削工事等で発生する泥水の脱水処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖・港湾・河川の浚渫工事、トンネル掘削工事等で発生した水、粘土、シルトなどの混合物(以下、「泥水」という。)は、脱水処理装置によって水が分離され脱水ケーキとされる。凝集反応槽で泥水と凝集剤とが攪拌混合されて土粒子どうしがフロックを形成し、凝集泥水が生成され、スクリュープレスの濾筒内に供給され、該濾筒内に配設されたスクリューの回転により当該濾筒内を搬送されつつ圧搾脱水されて脱水ケーキとなる。
【0003】
凝集反応槽から凝集泥水をスクリュープレスに直接供給すると、水切りが不十分であり、スクリュープレスに供給される凝集泥水の含水率が高くなる。そのため、スクリュープレスの受入口にその付近の濾筒部で濾過しきれなかった水が溜り、スクリュープレスの処理効率が低下する。また、スクリュープレスの排出口まで凝集泥水中の水分が移送され、生成された脱水ケーキは、含水率が高く強度に劣り、再利用できないおそれもある。
【0004】
そこで、特許文献1には、水切りコンベアで水切りした後に、凝集泥水をスクリュープレスに供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3924738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発生地による泥水の濃度の変化によって、生成される脱水ケーキの含水率が変化し、一定強度の脱水ケーキを安定して得ることができない。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、一定強度の脱水ケーキを安定して得ることが可能な泥水の脱水処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、凝集反応槽で泥水に生成される脱水ケーキの強度増加材を添加した混合物を生成し、該混合物に凝集剤を反応させて凝集泥水を生成し、該凝集泥水を回転するドラムスクリーンで水切りした後、スクリュープレスで圧搾脱水して所定の含水率を有する脱水ケーキを生成する泥水の脱水処理方法であって、前記強度増加材の含有率とスクリュープレスの仕様とから求めた前記脱水ケーキの限界含水率に基づき前記スクリュープレスのスクリューの最適回転速度を定め、該最適回転速度で前記スクリューが回転するときの前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理量を求め、該単位時間当り処理量の凝集泥水が前記スクリュープレスに供給されるよう、前記強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の混合物に前記凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を前記ドラムスクリーンに供給し、当該凝集泥水の水切りに最適な前記ドラムスクリーンの最適回転速度を前記泥水の濃度毎にデータとして所得しておき、前記最適回転速度で回転するよう、前記スクリュープレスのスクリューの回転駆動を制御し、前記強度増加材の含有率及び泥水の濃度に応じた前記ドラムスクリーンの最適回転速度を、前記データを参照して決定し、該決定した最適回転速度で回転するよう、前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御するとともに、前記最適回転速度で前記ドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合と前記スクリュープレスを前記最適回転速度で回転させるときの凝集泥水の単位時間当り処理量とに基づき、前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御することを特徴とする。
【0009】
第1発明によれば、強度増加材の含有率及び泥水の濃度に基づいてドラムスクリーンの回転駆動及び該ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当りの供給量を制御するので、強度増加材の含有率及び泥水の濃度の変化に拘らず、スクリュープレスに供給される凝集泥水の含水率を一定にすることが可能となる。よって、スクリュープレスから排出される脱水ケーキは、所定の含水率を有し、一定強度となる。
【0010】
さらに、強度増加材の含有率及びスクリュープレスの仕様から脱水ケーキの限界含水率は一義的に求まり、該求めた脱水ケーキの限界含水率に基づきスクリュープレスのスクリューの最適回転速度が定める。そして、この求めた最適回転速度で回転するよう、スクリュープレスの回転駆動を制御するので、スクリュープレスから排出される脱水ケーキが必要強度を有し、好適に再利用することが可能となる。
【0011】
さらに、ドラムスクリーンの最適回転速度を決定する際に参照するデータは、強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の混合物に凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を実際にドラムスクリーンに供給して、当該凝集泥水の水切りに最適なドラムスクリーンの最適回転速度を泥水の濃度毎に予め取得しているので、泥水の濃度が変化しても、ドラムスクリーンの最適回転速度を容易に決定することができる。
【0012】
さらに、最適回転速度でドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合とスクリュープレスを最適回転速度で回転させるときの凝集泥水の単位時間当り処理量とに基づき、凝集反応槽からドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御するので、処理能力を最大化することが可能となる。
【0013】
また、第1発明において、前記凝集反応槽で、生成される前記脱水ケーキの強度増加材を泥水に添加した混合物を生成するので、生成される脱水ケーキの強度を適宜増加させることができ、再利用に適した強度を有する脱水ケーキを安定的に生成することが可能となる。
【0014】
また、第1発明において、前記強度増加材は、砂、フライアッシュ、スラグ、セメントのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0015】
第2発明は、泥水に生成される脱水ケーキの強度増加材を添加した混合物における、強度増加材の含有率及び泥水濃度の異なる複数の混合物に凝集剤を反応させて凝集泥水を生成する凝集反応槽と、前記泥水の濃度を検知する泥水濃度検知部と、前記混合物における強度増加材の含有率を検知する強度増加材含有率検知部と、 回転して、前記凝集反応槽で生成した凝集泥水を水切りするドラムスクリーンと、該泥水濃度検知部が検知した泥水の濃度に基づいて、前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御するドラムスクリーン制御部と、前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御する凝集泥水供給量制御部と、前記ドラムスクリーンで水切りした凝集泥水を圧搾脱水して所定の含水率を有する脱水ケーキを生成するスクリュープレスと、前記強度増加材の含有率とスクリュープレスの仕様とから求めた前記脱水ケーキの限界含水率に基づき前記スクリュープレスのスクリューの最適回転速度を定め、該最適回転速度で前記スクリューが回転するときの前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理量を求め、該単位時間当り処理量の凝集泥水が前記スクリュープレスに供給されるよう、前記強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の混合物に前記凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を前記ドラムスクリーンに供給し、当該凝集泥水の水切りに最適な前記ドラムスクリーンの最適回転速度を前記泥水の濃度毎に取得したデータを蓄積するデータ蓄積部と、前記スクリュープレスの回転駆動を制御するスクリュープレス制御部とを備え、前記ドラムスクリーン制御部は、前記データ蓄積部が蓄積するデータを参照して、前記強度増加材含有率検知部で検知した強度増加材の含有率及び前記泥水濃度検知部で検知した前記泥水の濃度に応じた前記ドラムスクリーンの最適回転速度を決定し、該決定した最適回転速度で回転するように前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御し、前記凝集泥水供給量制御部は、前記最適回転速度で前記ドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合と前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理容量とに基づき、前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御することを特徴とする。
【0016】
第2発明によれば、前記強度増加材含有率検知部で検知した強度増加材の含有率及び泥水濃度検知部で検知した泥水の濃度に基づいて、ドラムスクリーン制御部がドラムスクリーンの回転駆動を制御し、凝集泥水供給量制御部がドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当りの供給量を制御するので、強度増加材の含有率及び泥水の濃度の変化に拘らず、スクリュープレスに供給される凝集泥水の含水率を一定にすることが可能となる。よって、スクリュープレスから排出される脱水ケーキは、所定の含水率を有し、一定強度となる。
【0017】
さらに、強度増加材の含有率及びスクリュープレスの仕様から脱水ケーキの限界含水率は一義的に求まり、該求めた脱水ケーキの限界含水率に基づきスクリュープレスのスクリューの最適回転速度が定める。そして、この求めた最適回転速度で回転するよう、スクリュープレス制御部がスクリュープレスの回転駆動を制御するので、スクリュープレスから排出される脱水ケーキが必要強度を有し、好適に再利用することが可能となる。
【0018】
さらに、ドラムスクリーンの最適回転速度を決定する際に参照するデータは、強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の泥水に凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を実際にドラムスクリーンに供給して、当該凝集泥水の水切りに最適なドラムスクリーンの最適回転速度を泥水の濃度毎に予め取得してデータ蓄積部データに蓄積されているので、前記強度増加材含有率検知部で検知した強度増加材の含有率及泥水濃度検知部で検知した泥水の濃度が変化しても、ドラムスクリーン制御部はドラムスクリーンの最適回転速度を容易に決定することができる。
【0019】
さらに、凝集泥水供給量制御部は、最適回転速度でドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合とスクリュープレスを最適回転速度で回転させるときの凝集泥水の単位時間当り処理量とに基づき、凝集反応槽からドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御するので、処理能力を最大化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る泥水の脱水処理システムを説明する図。
【図2】泥水の濃度の相違によるドラムスクリーンの回転速度と水切り割合との関係を示すグラフ。
【図3】泥水の脱水処理方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る泥水の脱水処理システムAについて説明する。図1を参照して、泥水の脱水処理装置Aは、主として、泥水貯留槽(原泥槽)1、混合物貯留槽2、凝集反応槽3、ホッパー4及びスクリュープレス5から構成されている。
【0022】
泥水貯留槽1は、泥水を貯留する。泥水は、ダム湖・港湾・河川の浚渫工事、トンネル掘削工事等で発生した泥状物から礫や多くの砂が除去された、水、粘土、シルトなどからなる混合物である。泥水貯留槽1に貯留される泥水は、沈降防止のために、不図示のモータにより回転駆動する攪拌翼により攪拌される。泥水貯留槽1内に貯留される泥水は、ポンプP1により吐出されて、管路11を介して混合物貯留槽2に向けて圧送される。ポンプP1は、制御部12により駆動制御される。
【0023】
泥水貯留槽1には、泥水貯留槽1内の泥水の濃度αを検知する泥水濃度検知部13が設けられている。泥水濃度検知部13は、泥水貯留槽1内の泥水の比重を測定して、この比重測定値と、予め測定により得た泥水の比重と濃度との相関関係を示すデータとに基づいて、泥水の濃度αを検知する。
【0024】
混合物貯留槽2は、泥水と砂との混合物を貯留する。泥水は、泥水貯留槽1からポンプP1により吐出されて、管路11を介して混合物貯留槽2内に供給される。砂は、泥水の脱水率向上と脱水ケーキの強度増加を目的として添加されるもので、不図示の砂置き場からベルトコンベア等を介して混合物貯留槽2内に供給される。混合物貯留槽2に貯留される混合物は、沈降防止のために、不図示のモータにより回転駆動する攪拌翼により攪拌される。混合物貯留槽2内に貯留される混合物は、ポンプP2により吐出されて、管路21を介して凝集反応槽3に向けて圧送される。ポンプP2は、制御部(凝集泥水供給制御部)22により駆動制御される。
【0025】
混合物貯留槽2には、混合物貯留槽2内の乾物(泥水中の水以外の固形物)中の砂含有率Aを検知する砂含有率検知部23が設けられている。砂含有率検知部23は、混合物貯留槽2内の混合物の比重を測定して、この比重測定値と、泥水濃度検知部13で検知された泥水の濃度αの値とから、予め測定により得た混合物の比重と砂含有率との相関関係を示すデータとに基づいて、混合物貯留槽2内の乾物中の砂含有率Aを検知する。
【0026】
凝集反応槽3は、詳細は図示されていないが、攪拌翼が形成された回転軸が不図示のモータにより回転駆動することにより内部に滞留する滞留物を攪拌するとともに、滞留物を上流側から下流側に移送する二軸のパドルミキサーである。なお、この凝集反応槽3内に送り翼が形成された回転軸を設け、これをモータにより回転駆動することにより滞留物を移送するようにしてもよい。
【0027】
混合物貯留槽2から吐出された混合物が、受入口31から凝集反応槽3内に供給される。凝集反応槽3内に供給された混合物は、滞留物として攪拌翼により攪拌されるとともに送り翼により下流側に移送されながら、投入口32から投入されたアニオン系やカチオン系等の凝集剤と混合されて反応することにより、土粒子が凝集されてフロックを形成し、凝集泥水となる。
【0028】
攪拌翼及び必要に応じて送り翼が回転する槽の下流側の側壁が堰33となっており、堰33を越えて溢れ出た凝集泥水が、排出口34を介してホッパー4に流れ込む。
【0029】
ホッパー4は、回転するドラムスクリーン41を内蔵している。ドラムスクリーン41は、細かい網目が多数形成された円筒状の水切り用のスクリーンであり、モータM1により回転駆動される。モータM1は、制御部(ドラムスクリーン制御部)42により回転駆動が制御される。ドラムスクリーン41の上方部が開口を介して露出している。回転するドラムスクリーン41の外筒表面に落下した凝集泥水は、ドラムスクリーン41の回転に伴い下流側に搬送されるが、凝集泥水の一部の水分は、ドラムスクリーン41の網目を通過して濾液として不図示の濾液処理槽に送られる。一方、ドラムスクリンーン41を通過した凝集泥水は、スクリュープレス5に供給される。また、水を噴きかけてドラムスクリーン41を洗浄する不図示の散水シャワーが設けられており、この水も同様に前記濾液処理槽に排出される。
【0030】
砂含有率A及び泥水の濃度が異なる複数の混合物に凝集反応槽3で投入する凝集剤を反応させて生成した複数の凝集泥水を、ドラムスクリーン41で水切りしたときにおけるドラムスクリーン41の最適回転速度N及びこの最適回転速度Nでドラムスクリーン41を回転駆動させたときの水切り割合Sを示すデータがデータ蓄積部43に蓄積されている。これらのデータは、ドラムスクリーン41を用いて実験を行うこと等によって得たものである。なお、水切り割合Sは、ドラムスクリーン41に処理容量限近傍の凝集泥水を供給したとき、換言すれば、水切り割合がS程度となる量の凝集泥水を供給したときに得られたデータである。ドラムスクリーン41の最適回転速度N及び水切り割合Sは、ドラムスクリーン41の仕様、即ち径、幅、網目の大きさ、水切り部分の周長等によって定まり、ドラムスクリーン41に固有のものである。
【0031】
泥水の濃度が同じ凝集泥水を同じ時間当たりの供給量でもってドラムスクリーン41で水切りした場合、図2を参照して、ドラムスクリーン41の回転速度Nが低速であると、ドラムスクリーン41の外筒表面上に存する凝集泥水の上に後続する凝集泥水が落下するので、水切り割合Sが低い。一方、ドラムスクリーン41の回転速度Nが高速であると、凝集泥水がドラムスクリーン41の外筒表面上に存する時間が短いので、水切り割合Sが低い。よって、水切り割合Sが良好なドラムスクリーン41の回転速度Nの領域が存在する。
【0032】
泥水が高濃度であると、図2中の実線で示す曲線を参照して、水切り割合Sは相対的に劣り、且つ水切り割合Sが良好なドラムスクリーン41の回転速度Nの領域D1が狭い。この水切り割合Sの良好な回転速度Nの領域自体を最適回転速度Nとすることができる。一方、泥水が低濃度であると、図2中の点線で示す曲線を参照して、水切り割合Sは相対的に高く、且つ水切り割合Sが良好なドラムスクリーン41の回転速度Nの領域D2が広い。そして、ドラムスクリーン41の駆動に要するエネルギー効率も考慮するならば、ドラムスクリーン41の最適回転速度Nは、水切り割合Sが良好な回転速度Nの領域D1又はD2内、最も低い回転速度となる。また、砂分の含有率が高いほど、水切り割合Sは良好となる。
【0033】
スクリュープレス5は、パンチングメタル等で形成された水平方向を長手とする円筒状の濾筒51と、該濾筒51内に回転自在に配設されたスクリュー52とを備え、濾筒51内に供給された凝集泥水をスクリュー52で下流側(図1中左側)に搬送させつつ圧搾脱水して、分離した水が濾筒51の隙間から落下する。
【0034】
濾筒51には受入口53が開設されており、ホッパー4から供給される凝集泥水が受入口53から濾筒51内に投入される。スクリュー52は、濾筒51の上流側から下流側に向けて次第に拡径するテーパー状のスクリュー軸と、スクリュー軸の外周面に固定した螺旋状のスクリュー羽根とから構成されている。スクリュー52は、モータM2により回転駆動される。モータM2は、制御部(スクリュープレス制御部)54により回転駆動が制御される。
【0035】
スクリュー52を回転させると、受入口53から受け入れた凝集泥水がスクリュー羽根による送り作用で濾筒51の上流側から下流側に搬送される。濾筒51とスクリュー軸との間の空間は下流側に向けて次第に狭くなっているため、凝集泥水は濾筒51の下流側に向けて搬送されつつ圧搾される。凝集泥水の水分は濾筒51を通して搾り出され、濾液として落下し、底部に形成された集水枡55を介して、前記濾液処理槽に排出される。なお、図示しないが、水を噴きかけて濾筒51の外表面を洗浄する散水管が設けられており、この水も同様に前記濾液処理槽に排出される。濾筒51の下流側端部には排出口56が開設されている。脱水された凝集泥水である脱水ケーキCは、排出口56から外部に排出される。
【0036】
以下、泥水の脱水処理システムAを用いた本発明の実施形態に係る泥水の脱水処理方法について、図3も参照して説明する。
【0037】
最初に、スクリュープレス5への凝集泥水の単位時間当り供給量Xを決定する(S10)。単位時間当り供給量Xは、スクリュープレス5のスクリュー52の回転速度に応じて変化するが、ここでは、まず、脱水ケーキCの強度を決定する(S11)。脱水ケーキCは、その強度に応じて、盛土や埋め戻し土として再利用される。脱水ケーキCの強度は、例えば、JISA1228で規定されるコーン指数で評価される。コーン指数が800kN/m以上であれば第2種建設発生土、400kN/m以上であれば第3種建設発生土、200kN/m以上であれば第4種建設発生土に分類され、それぞれ再利用の用途が規定されている。
【0038】
脱水ケーキCの強度は、その含水率と砂含有率Aとによって定まる。そして、この砂含有率Aと使用するスクリュープレス5の仕様によって更なる脱水が不能な限界含水率が定まる。これは、この種の含水率の高い泥水において、スクリュープレス5の濾筒51を介しての重力による自然濾過により脱水される割合が大きく、圧搾による脱水がその断面の開口面積の小さくなるスクリュープレス5の出口付近の短い区間のみに集中して行われるため、スクリュープレス5のスクリュー52の回転速度を変更しても、自然濾過から圧搾に転ずる時点での脱水率は、泥水の濃度に関係なくほぼ一定値となることによる。よって、脱水ケーキCの含水率は、スクリュー52の回転速度が所定の範囲内であればその高低に関係なく、限界含水率に近いほぼ一定値となる。このように、供給する泥水の濃度に関係なく、砂含有率Aと使用するスクリュープレス5の仕様に依存して、脱水ケーキCの含水率が定まるので、脱水ケーキCの必要強度を決定すると、要求強度に見合う泥水の乾物中の砂含有率A1が決定する(S12)。すなわち、種々の砂含有率Aでもってスクリュープレス4により限界含水率になるまで脱水し、そのとき、脱水ケーキCの強度が必要強度を満たす砂含有率Aのものを要求強度に見合う泥水の乾物中の砂含有率A1とするのである。そして、砂含有率検知部23が検知する砂含有率Aが、決定した砂含有率A1となるように、混合物貯留槽2内に貯留されている混合物中の含有率A1を調整する。具体的には、砂含有率Aが砂含有率A1より低いときには、不図示の砂置き場からベルトコンベア等を介して混合物貯留槽2内に砂を供給する。砂含有率Aが砂含有率A1より高いときには、ポンプP1を駆動させて、泥水貯留槽1から混合物貯留槽2内に泥水を供給する。
【0039】
決定した砂含有率Aとスクリュープレス5の仕様、即ちスクリュー52の径、全長、羽根ピッチ、排出口57の開口幅、濾筒51の目の大きさ等とに基づいて、スクリュー52の最適回転速度Nを決定する(S13)。例えば、スクリュープレス5での凝集泥水の処理量を優先すると、スクリュー52の最適回転速度Nは、脱水ケーキCの必要強度が得ることが可能な、換言すれば、限界含水率に達する最速の回転速度である。スクリュー52の最適回転速度Nが定まることにより、スクリュープレス5への凝集泥水の単位時間当り供給量Xが決定する(S10)。
【0040】
次に、ホッパー4への凝集泥水の単位時間当り供給量Yを決定する(S20)。ホッパー4へ供給された凝集泥水は、ドラムスクリーン41により水切りが行われるので、単位時間当り供給量Yは、単位時間当り供給量Xからドラムスクリーン41による水切り割合S分だけ増加させたものとなる。
【0041】
泥水濃度検知部13により泥水の濃度αを検知する(S21)。S12で決定した砂含有率A1とS21で検知した泥水の濃度αとから、データ蓄積部43に蓄積されたデータを参照して、ドラムスクリーン41の最適回転速度N及び水切り割合Sを決定する(S22)。これにより、ホッパー4への凝集泥水の単位時間当り供給量Yが決定される(S20)。
【0042】
そして、混合物貯留槽2に貯留された混合物が、単位時間当り供給量Yだけ凝集反応槽3に供給されるように、制御部22によってポンプP2を駆動制御し、混合物貯留槽2に貯留される混合物が所定量となるように、制御部13によってポンプP1を駆動制御する。また、ドラムスクリーン41が最適回転速度Nで回転するように、制御部42によってモータM1の回転を駆動制御し、スクリュー52が最適回転速度Nで回転するように、制御部54によってモータM2の回転を駆動制御する。
【0043】
以上説明したように、泥水濃度検知部13が検知した泥水の濃度αに応じて、ドラムスクリーン41は最適回転速度Nで回転するともに、ドラムスクリーン41に供給される凝集泥水の単位時間当り供給量が制御されるので、泥水の濃度αの変化に拘らず、スクリュープレス5に供給される凝集泥水の含水率を一定にすることが可能となる。よって、スクリュープレス5から排出される脱水ケーキCは、所定の含水率を有し、一定強度となり、再利用性が優れたものとなる。
【0044】
また、脱水ケーキCの必要強度に基づき、混合物中の砂含有率を決定し、該決定した砂含有率に基づいて決定した最適回転速度Nでスクリュー52が回転する。そのため、スクリュープレス5から排出される脱水ケーキCが必要強度を有し、好適に再利用することが可能となる。さらに、データ蓄積部43に蓄積されたデータは、砂含有率及び泥水の濃度Aが異なる複数の複合物に応じたものであるので、脱水ケーキCの必要強度が変更されて砂含有率が変化しても、ドラムスクリーン41の最適回転速度Nを決定することができる。さらに、凝集泥水供給量制御部は、ドラムスクリーン41が最適回転速度Nで回転させたときの水切り割合Sとスクリュープレス5での凝集泥水の単位時間当り処理容量とに基づき、凝集反応槽3からドラムスクリーン41に供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御するので、処理能力を最大化することが可能となる。
【0045】
なお、泥水の脱水処理システムAとして、横型のスクリュープレス5を用いた場合を例に挙げて説明したが、縦型のスクリュープレスを用いるなど、システムの構成要素や配設順序等を適宜変更してもよい。
【0046】
また、各制御部13,22,42,54は、自動制御を行うものであっても、スイッチ等を用いて作業者が制御を行うものであってもよい。さらに、データ蓄積部43は、パーソナルコンピュータのメモリ等にデータを蓄積するものであっても、書面等にデータやグラフ等を記載したものであってもよい。
【0047】
さらに、脱水ケーキの強度増加のための強度増加材として砂を添加したが、本発明はこれに限らず、フライアッシュ、スラグ、セメント等の材料を単独又は砂と併用して用いるようにしてもよい。
【0048】
なお、強度増加材の種類によっては、砂のように水切りを促進する効果があるとは限らず、ドラムスクリーン41の最適回転速度N及びスクリュープレス5の限界含水率は、強度増加材の種類及び含有率によって変化することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1…泥水貯留槽、 2…混合物貯留槽、 3…凝集反応槽、 5…スクリュープレス、 13…泥水濃度検知部、 22…制御部(凝集泥水供給制御部)、 23…砂含有率検知部、 41…ドラムスクリーン、 42…制御部(ドラムスクリーン制御部)、 43…データ蓄積部、 51…濾筒、 52…スクリュー、 54…制御部(スクリュープレス制御部)、 A…泥水の脱水処理システム、 C…脱水ケーキ、 M1…モータ、 M2…モータ、 P2…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集反応槽で泥水に生成される脱水ケーキの強度増加材を添加した混合物を生成し、該混合物に凝集剤を反応させて凝集泥水を生成し、該凝集泥水を回転するドラムスクリーンで水切りした後、スクリュープレスで圧搾脱水して所定の含水率を有する脱水ケーキを生成する泥水の脱水処理方法であって、
前記強度増加材の含有率とスクリュープレスの仕様とから求めた前記脱水ケーキの限界含水率に基づき前記スクリュープレスのスクリューの最適回転速度を定め、該最適回転速度で前記スクリューが回転するときの前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理量を求め、該単位時間当り処理量の凝集泥水が前記スクリュープレスに供給されるよう、前記強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の混合物に前記凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を前記ドラムスクリーンに供給し、当該凝集泥水の水切りに最適な前記ドラムスクリーンの最適回転速度を前記泥水の濃度毎にデータとして所得しておき、
前記最適回転速度で回転するよう、前記スクリュープレスのスクリューの回転駆動を制御し、
前記強度増加材の含有率及び泥水の濃度に応じた前記ドラムスクリーンの最適回転速度を、前記データを参照して決定し、該決定した最適回転速度で回転するよう、前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御するとともに、
前記最適回転速度で前記ドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合と前記スクリュープレスを前記最適回転速度で回転させるときの凝集泥水の単位時間当り処理量とに基づき、前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御することを特徴とする泥水の脱水処理方法。
【請求項2】
前記強度増加材は、砂、フライアッシュ、スラグ、セメントのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の泥水の脱水処理方法。
【請求項3】
泥水に生成される脱水ケーキの強度増加材を添加した混合物における、強度増加材の含有率及び泥水濃度の異なる複数の混合物に凝集剤を反応させて凝集泥水を生成する凝集反応槽と、
前記泥水の濃度を検知する泥水濃度検知部と、
前記混合物における強度増加材の含有率を検知する強度増加材含有率検知部と、
回転して、前記凝集反応槽で生成した凝集泥水を水切りするドラムスクリーンと、
該泥水濃度検知部が検知した泥水の濃度に基づいて、前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御するドラムスクリーン制御部と、
前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御する凝集泥水供給量制御部と、
前記ドラムスクリーンで水切りした凝集泥水を圧搾脱水して所定の含水率を有する脱水ケーキを生成するスクリュープレスと、
前記強度増加材の含有率とスクリュープレスの仕様とから求めた前記脱水ケーキの限界含水率に基づき前記スクリュープレスのスクリューの最適回転速度を定め、該最適回転速度で前記スクリューが回転するときの前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理量を求め、該単位時間当り処理量の凝集泥水が前記スクリュープレスに供給されるよう、前記強度増加材の含有率及び泥水濃度が異なる複数の混合物に前記凝集剤を反応させて生成した複数種の凝集泥水を前記ドラムスクリーンに供給し、当該凝集泥水の水切りに最適な前記ドラムスクリーンの最適回転速度を前記泥水の濃度毎に取得したデータを蓄積するデータ蓄積部と、
前記スクリュープレスの回転駆動を制御するスクリュープレス制御部と、を備え、
前記ドラムスクリーン制御部は、前記データ蓄積部が蓄積するデータを参照して、前記強度増加材含有率検知部で検知した強度増加材の含有率及び前記泥水濃度検知部で検知した前記泥水の濃度に応じた前記ドラムスクリーンの最適回転速度を決定し、該決定した最適回転速度で回転するように前記ドラムスクリーンの回転駆動を制御し、
前記凝集泥水供給量制御部は、前記最適回転速度で前記ドラムスクリーンを回転させたときの水切り割合と前記スクリュープレスでの凝集泥水の単位時間当り処理容量とに基づき、前記凝集反応槽から前記ドラムスクリーンに供給する凝集泥水の単位時間当り供給量を制御することを特徴とする泥水の脱水処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−16042(P2011−16042A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160813(P2009−160813)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(594140395)ヒロサワ機械株式会社 (4)
【出願人】(391044351)富国工業株式会社 (9)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】