説明

泥水シールド装置

【課題】掘削機内の圧力を検出する圧力検出部が、掘削機が掘削した掘削物によって閉塞等の影響を受けず、掘削機内の圧力が正確に検出できる泥水シールド装置の提供。
【解決手段】送泥配管(2)及び排泥配管(3)とは別に、掘削機(1)内に連通し掘削機(1)内の圧力を検知するための圧力検知ライン(8)を設け、該圧力検知ライン(8)には掘削機(1)内の圧力を計測する圧力計測手段(Mp1)と循環用ポンプ(PP3)が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水シールド工法で用いられる装置であって、トンネル建設用掘削機(以下、掘削機という)と、その掘削機に泥水を供給する送泥配管設備と、その泥水と掘削土砂とを排出する排泥配管設備、及び送泥配管と排泥配管とを連通するバイパス配管と、を設けた泥水シールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4で示す泥水シールド装置Bでは、掘削機1と、例えば地上側に配設した作泥調整槽5から掘削機1に泥水を配送する送泥配管2及び送泥ポンプPP1等を含む送泥配管設備と、掘削機1からその掘削機1で掘削した土砂を含む泥水を排出する排泥配管3及び排泥ポンプPP2等を含む排泥配管設備と、掘削機1を迂回して送泥配管2と排泥配管3とを連通し、開閉弁V3を介装したバイパス配管4とを有している。
【0003】
図4で示す従来の掘削装置Bにおける送泥配管2は、一端が作泥調整槽5に接続され、他端が掘削機1に接続されている。
この送泥配管2においては、作泥調整槽5からバイパス配管4が分岐する分岐点24までの間の領域に、モータMr1によって駆動される送泥ポンプPP1及び開閉弁V6が介装されている。
又、作泥調整槽5からは、モータMrmで駆動される補助ポンプPm及び開閉弁V7が介装された補助送泥配管7が、送泥配管2の前記開閉弁V6の下流の領域で合流して設けられている。
そして、送泥配管2における送泥ポンプPP1からバイパス配管4との分岐点24までの間の領域であって分岐点24近傍の領域には、送泥配管2内の流体の圧力を検出する圧力メータMp2が介装されている。
さらに、送泥配管2における前記分岐点24から掘削機1までの間の領域には、送泥配管2を開閉する開閉弁V1が介装されている。又、その開閉弁V1と並列に、開閉弁V1を迂回するバイパス管20が設けられている。そして、バイパス管20には、流量調整弁CVが介装されている。
【0004】
排泥配管3は、一端が掘削機1に接続され、他端が地上側の処理設備(図示せず)に接続されている。この排泥排管3において、掘削機1とバイパス管4との合流点34との間の領域には、排泥配管3を開閉する開閉弁V2が介装されている。又、排泥排管3における合流点34と図示しない地上側の処理設備との間の領域には、モータMr2で駆動される排泥ポンプPP2及び流量計FMが介装されている。
【0005】
掘削機1の背後(地上側:図4では右側)には隔壁15が形成されている。掘削機1には掘削機1内の切羽水圧を検出するための導圧管16が設けられ、この導圧管16の先端には圧力メータMp1が取り付けられている。この導圧管16は隔壁15を貫通して掘削機1の反対側(地上側:図4では右側)に、相当の長さに延長されている。
【0006】
掘削装置Bには、前記送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、排泥ポンプPP2の駆動モータMr2、各開閉弁V1〜V3及び流量調整弁CVを制御するために、コントロールユニット10Bが装備されている。
コントロールユニット10Bは、流量計FM、圧力メータMp1及びMp2と入力信号ラインLiを介して接続されており、送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、排泥ポンプPP2の駆動モータMr2、各開閉弁V1〜V3及び流量調整弁CVと、制御信号ラインLoを介して接続されている。
【0007】
圧力メータMp2では、圧力メータMp1の計測値に対して、掘削機1から圧力メータMp2の取付位置までの管内抵抗だけ増加した値が計測される。
コントロールユニット10Bは、掘削中には、予め設定した(掘削機1における)切羽設定水圧と圧力メータMp1、Mp2の双方で検出した圧力値とを比較し、その比較結果により、前記送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、各開閉弁V1〜V3及び流量調整弁CVを制御している。
【0008】
制御の一例として、掘削中の(掘削機1における)切羽設定水圧と圧力メータMp1で検出した圧力値とを比較し、その差圧に基づいて、送泥ポンプPP1の駆動用モータMr1の回転数を自動制御している。
掘削停止時のバイパス運転においては、(掘削機1における)切羽設定水圧と圧力メータMp1で検出した圧力値とを比較し、その差圧に基いて、流量調整弁CVの開度を自動制御している。
掘削停止中で、且つバイパス運転していない場合には、補助送泥配管7に介装された補助ポンプPmの駆動モータMrmが、圧力メータMp2が検出した送泥管2の圧力値に基づき制御される。即ち、切羽の先端において逸水が生じ、泥水圧が低下した場合に、圧力メータMp2がそれを検出して駆動モータMrmを作動して補助ポンプPmを駆動せしめ、切羽に泥水を供給して地盤の崩落を防止している。
排泥ポンプPP2の駆動モータMr2は、流量計FMの検出した流量に基いて、排泥管3内の流量が所定値となる様に、その回転数を自動制御される。
【0009】
ここで、上述した泥水シールド工法では、掘削前には予め地質の調査(ボーリング)を行い、地中の水位を把握している。そして、掘削停止時に、掘削機1に連通する配管2、3の各弁V1、V2、CVを閉鎖し、自然水圧を確認している。このような方法によって、自然水圧を知り、掘削時の設定圧力(切羽設定水圧)の参考にしている。
【0010】
上述したような従来技術では、粘性土質のような掘削地盤(地山)を掘削する場合、圧力メータMp1へ圧力を伝達する導圧管16を掘削機1の隔壁15から取り出し、更に(導圧管16を用いて)配管延長しているために、圧力メータMp1を設けた箇所(検出部)においては圧力を伝達する流体(掘削機1内から導入された泥水)が全く移動しない(流動性が全く無い)。従って、導圧管16及び/又は圧力メータMp1を設けた箇所(検出部)において、粘性土が付着し或いは固着することにより、掘削機1内の圧力を正確に検出することが出来なくなる。そして、掘削機1内の圧力を正確に検出することが出来ないことに起因して、制御誤動作を誘発し、送泥ポンプPP1の駆動用モータMr1の回転制御や、流量制御弁CVの開度制御に支障を来たすことも散見されている。
【0011】
その他の従来技術として、例えば、掘削土砂を取り込むチャンバに臨む位置で、回転部と固定部の間、或いは相対的な回転部の間にシール部材を介装したシールド機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、斯かる従来技術は、掘削土砂を取り込むチャンバに臨むシール部材のシール機能を強化し、回転部と固定部との隙間へ掘削土砂や泥水の粒子が侵入することを防止することを目的としており、上述した問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2005−194787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案するものであり、掘削機内の圧力を検出する圧力検出部が、掘削機の掘削した掘削物(例えば、粘性土)の付着によって掘削機内の圧力が正確に検出できない事態を防止することが出来る泥水シールド装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の泥水シールド装置(A:図1に示す)は、トンネル建設用掘削機(1)と、(その掘削機1に)泥水を供給(配送)する(送泥配管2及び送泥ポンプPP1を含む)送泥配管設備と、泥水(掘削機1で掘削した土砂を含む)及び掘削土砂とを(掘削機1から)排出する(排泥配管3及び排泥ポンプPP2を含む)排泥配管設備と、送泥配管(2)と排泥配管(3)を連通するバイパス配管(4)とを有する泥水シールド装置において、(前記送泥配管2及び排泥配管3とは別に、)掘削機(1)内に連通して掘削機(1)内の流体(泥水)が循環可能な圧力検知ライン(8)を(掘削機1内の圧力を検知するために)設け、該圧力検知ライン(8)には掘削機(1)内の圧力を計測する圧力計測手段(圧力メータMp1)及び循環用ポンプ(PP3)が介装されている(請求項1)。
【0014】
そして、前記循環用ポンプ(PP3)は、掘削機(1)が停止している際に作動するように構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0015】
又、前記循環用ポンプ(PP3)は、粘土質地盤を掘削している場合に作動するように構成されているのが好ましい(請求項3:図3)。
【発明の効果】
【0016】
上述する構成を具備する本発明の泥水シールド装置によれば、送泥配管(2)及び排泥配管(3)とは別に、掘削機(1)内に連通し掘削機(1)内の圧力を検知するための圧力検知ライン(8)を設け、該圧力検知ライン(8)には掘削機(1)内の圧力を計測する圧力計測手段(Mp1)と循環用ポンプ(PP3)が介装されている(請求項1)ので、圧力計測手段(Mp1)に圧力を導入する流体(泥水)は、圧力検知ライン(8)と圧力計測手段(Mp1)と循環用ポンプ(PP3)で構成される回路を循環する。従って、圧力計測手段(Mp1)に圧力を導入する流体(泥水)が流動しない事態(流動性を全く失う事態)が生じることが無く、当該流体(泥水)中の粘性土が圧力検知ライン(8)を閉塞することや、圧力計測手段(Mp1)の検知部に付着してしまうことは生じない。
【0017】
そして本発明において、循環用ポンプ(PP3)は掘削機(1)が停止している際に作動するように構成すれば(請求項2)、閉塞が生じ易い掘削停止時でも、圧力計測手段(Mp1)と循環用ポンプ(PP3)とで構成される圧力検知ライン(8)では流体(泥水)が循環しており、圧力検知ライン(8)が閉塞する事態が防止され、圧力計測手段(Mp1)の検知部に粘土等の粘性流体が付着してしまう事態が防止される。そのため、計測結果に影響が及ぶようなことも無い。
【0018】
又、循環用ポンプ(PP3)を、粘性土質の地盤を掘削している場合に作動するように構成すれば(請求項3:図3の制御による実施形態)、閉塞が生じ易い粘性土質の地盤を掘削している場合であっても、上述した通り、循環用ポンプ(PP3)が作動することによって圧力検知ライン(8)の閉塞が防止して、当該ライン(8)の閉塞による不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号Aで示す泥水シールド工法用の装置(泥水シールド装置)は、掘削機1と、地上側から掘削機に泥水を配送する送泥配管2と、掘削機1から(掘削機1で)掘削した土砂を含む泥水を排出する排泥配管3と、バイパス配管4とを備えており、バイパス配管4は、掘削機1を迂回して送泥配管2と排泥配管3とを連通し、且つ、開閉弁V3を介装している。
送泥配管2は、その一端(図1では左端)が地上側の作泥調整槽5に接続され、他端12が掘削機1に接続されている。
【0020】
その送泥配管2において、作泥調整槽5からバイパス配管4との分岐点24までの間の領域には、モータMr1によって駆動される送泥ポンプPP1及び開閉弁V6が介装されている。
更に、作泥調整槽5からは、補助送泥配管7が、モータMrmによって駆動される補助ポンプPm及び開閉弁V7を介装し、前記送泥配管2に開閉弁V6下流(分岐点24の上流)の領域で合流して設けられている。
そして、送泥配管2における送泥ポンプPP1からバイパス配管4との分岐点24までの間の領域で、且つ、分岐点24近傍の領域には、送泥配管2内の流体の圧力を検出する圧力メータMp2が介装されている。
送泥配管2における前記分岐点24から掘削機1までの間の領域には、送泥配管2を開閉する開閉弁V1が介装されている。送泥配管2には、開閉弁V1と並列で且つ開閉弁V1をバイパスするバイパス管20が設けられている。このバイパス管20には、流量調整弁CVが介装されている。
【0021】
排泥配管3は、その一端(図1中左端)13が掘削機1に接続され、他端(図1中右端)が地上側の処理設備(図示せず)に接続されている。
その排泥排管3において掘削機1と前記バイパス配管4との合流点34との間の領域には、排泥配管3を開閉する開閉弁V2が介装されている。また排泥排管3における合流点34と地上側の処理設備(図示せず)との間の領域には、排泥ポンプPP2が介装され、さらに流量計FMを介装して処理設備へ連通されている。
【0022】
掘削機1の背後(地上側:図1では右側)には隔壁15が形成されている。そして掘削機1には、掘削機1内の切羽水圧を検出するための圧力検知ライン8が、掘削機1の隔壁15よりも背後側(地上側:図1では右側)に配置されている。或いは圧力検知ライン8は、掘削機1の隔壁15を貫通して、圧力検知ライン8内を流れる流体が掘削機1内の空間と循環可能となる様に設けられている。
この圧力検知ライン8にはモータMr3で駆動される循環用ポンプPP3が介装され、更に、循環用ポンプPP3の吐出側には圧力メータMp1が介装されている。
【0023】
圧力検知ライン8において、圧力メータMp1と掘削機1の隔壁15との間の領域には、開閉弁V4が介装されている。また、圧力検知ライン8において、掘削機の隔壁15と循環ポンプPP3との間の領域には、開閉弁V5が介装されている。
ここで開閉弁V4、V5は、例えば、圧力メータMp1及び循環ポンプPP3のメンテナンスや装置全体が停止の際に閉鎖され、掘削機1内の流体が圧力検知ライン8へ流れ込んでしまうことを防止するため等に使われる。
【0024】
泥水シールド装置Aにはコントロールユニット10が装備されており、そのコントロールユニット10は、送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、排泥ポンプPP2の駆動モータMr2、補助ポンプPmの駆動用モータMrm、各開閉弁V1〜V3、V6、V7及び流量調整弁CVを制御するのに用いられる。
コントロールユニット10は、入力信号ラインLiを介して、圧力メータMp1、Mp2と接続されている。そしてコントロールユニット10は、制御信号ラインLoを介して、送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、排泥ポンプPP2の駆動モータMr2、循環用モータPP3の駆動用モータMr3、補助ポンプPmの駆動用モータMrm、各開閉弁V1〜V3、V6、V7及び流量調整弁CVと接続されている。
【0025】
圧力メータMp2では、圧力メータMp1の計測値に対して、掘削機1から圧力メータMp2の取付位置までの管内抵抗だけ増加した圧力値が計測される。
コントロールユニット10は、掘削中には、予め設定した切羽設定水圧と圧力メータMp1、Mp2の双方で検出した圧力値とを比較しており、その比較結果に基いて、前記送泥ポンプPP1の駆動モータMr1、各開閉弁V1〜V3及び流量調整弁CVを制御している。一方、排泥ポンプPP2の駆動モータMr2は、排泥ポンプPP2の後方の排泥配管3に設けた流量計FMの検出した流量値と予め設定した流量値とを比較して所定流量に制御されている。
補助ポンプPmは、掘削停止時で且つバイパス配管4を泥水が流過していない場合に、圧力メータMp1の測定値が低下して逸水が生じていると判定された場合に、モータMrmを作動することにより(補助ポンプPmが)駆動されて泥水を切羽側に供給する。以って、切削されている地盤の崩落を防止するためである。
【0026】
詳細は図2或いは図3を参照して説明するが、制御の一例として、掘削中においては、切羽設定水圧と圧力メータMp1で検出した圧力値とを比較し、その差圧に基づいて、送泥ポンプPP1の回転数、即ちモータMr1の回転数を制御している。
【0027】
掘削停止時のバイパス運転においては、切羽設定水圧と圧力メータMp1で検出した圧力値とを比較してその差圧に基き、流量調整弁CVの開度を制御する。
ここで、掘削停止時には、送泥配管2に介装した開閉弁V1を閉じ、流量調節弁CVの開度調節を行うことで、掘削機1内に流入する泥水の量を抑制する。一方、バイパス配管4に介装した開閉弁V3は開いて、泥水の多くをバイパス配管4側に流し、排泥配管3の流量計FMの検出値に基づいて排泥ポンプPP2を制御する。そのように制御すれば、掘削停止時であっても、掘削機1内に幾らかの量の泥水を流入、循環させることが出来るので、掘削機1内、特に圧力メータMp1による圧力検知に関わる箇所における粘土等の乾燥・固着を防止することができる。
【0028】
掘削停止時の他の制御例としては、切羽設定水圧と圧力メータMp2で検出した圧力値とを比較し、その差圧に基いて、送泥ポンプPP1の回転数、即ち、送泥ポンプPP1の駆動モータMr1の回転数を制御する。
【0029】
泥水シールド装置A全体を停止させた場合の制御例としては、各開閉弁V1〜V3、V6及び流量制御弁CVを閉鎖し、送泥ポンプPP1、排泥ポンプPP2を停止する。そして、圧力検知ライン8の循環ポンプPP3の作動の必要性、すなわち圧力検知ライン8において流体(泥水)を循環させるか否かについて操作員が判断して、循環ポンプPP3を作動させる必要がある(或いは圧力検知ライン8において流体(泥水)を循環させる必要がある)場合には、循環ポンプPP3を作動する。
【0030】
次に、図2の制御フローチャートをも参照して、図1に示す泥水シールド装置の制御について説明する。
図2において、ステップS1では、圧力メータMp1、Mp2によって圧力検知ライン8及び送泥配管2中の流体(泥水)の圧力(p1、p2)を検出する。
【0031】
ステップS2において、コントロールユニット10は、泥水シールド装置Aの運転モード(掘削か、掘削機のみ停止か、装置全体を停止か)を判断する(ステップS2における「泥水シールド装置をどうする?」)。そして、掘削を続行するのであればステップS3に進み、掘削機1のみを停止するのであればステップS6に進み、装置全体を停止するのであればステップS8に進む。
【0032】
ステップS2において掘削を続行するのであれば(ステップS2で「掘削」)、ステップS3において、送泥配管2に介装した開閉弁V1、V6及び排泥配管3に介装した開閉弁V2を開き、補助送泥配管7に介装した開閉弁V7及びバイパス配管4に介装した開閉弁V3は閉じる。この時、排泥ポンプPP2を作動させる。
次のステップS4では、圧力メータMp1で計測した圧力値p1と予め設定しておいた掘削機1内の所定の圧力値との差に基づいて、流量制御弁CVの開度及び送泥ポンプPP1の駆動用モータMr1の回転数を制御する。排泥ポンプPP2は、流量計FMの検出値と予め設定した流量値とを比較し、駆動用モータMr2の回転数を制御する。そして、ステップS5に進む。
【0033】
ステップS5では、コントロールユニット10は、圧力メータMp1で計測した圧力値p1が所定値以下か否かを判断する。
圧力値p1が所定値以下であれば(ステップS5でYES)、圧力メータMp1の測定位置近傍が「固着し始める可能性あり」と判断してステップS10に進む。
一方、圧力値p1が所定値を超えれば(ステップS5でNO)、「(圧力メータMp1の測定位置近傍において)固着の心配はない」と判断して、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0034】
ステップS2において掘削機1のみ停止するのであれば(ステップS2で「掘削機のみ停止」)、ステップS6において、送泥配管2に介装した開閉弁V1及び排泥配管3に介装した開閉弁V2を閉じ、バイパス配管4に介装した開閉弁V3は開放し、排泥ポンプPP2は作動させる。
【0035】
次のステップS7では、圧力メータMp1で計測した圧力値と予め設定しておいた掘削機1内の所定の圧力値との差に基づいて、流量制御弁CVの開度を制御し、モータMrmを作動してその回転数を制御する。
更に、圧力メータMp2で計測した圧力値p2と予め設定しておいた掘削機1内の所定の圧力値との差に基づいて、送泥ポンプPP1の駆動モータMr1の回転数を制御し、排泥ポンプPP2は、流量計PMの測定値で制御する。
そしてステップS10に進む。
【0036】
ステップS2においてシールド装置A全体を停止するのであれば(ステップS2で「全体停止」)、ステップS8において、各開閉弁V1〜V3、V6及び流量制御弁CVを閉鎖し、送泥ポンプPP1、排泥ポンプPP2を停止させる。
ここで圧力メータMp2が所定圧力以下を検出、すなわち、切羽からの逸水と判断された場合は、補助送泥管7の開閉弁V7を開き、流量制御弁CVの開度を大きくして、補助ポンプPmの駆動モータMrmを作動させる。
そして、ステップS9に進む。
【0037】
ステップS9では、コントロールユニット10は、圧力検知ライン8の循環ポンプPP3を作動させるか否かを判断する。ここで、循環ポンプPP3を停止させるケースとしては、掘削施工全体が完了し、掘削機内や検知ライン8の粘土質等が完全に排除された場合等がある。
循環ポンプPP3を作動させるのであれば(ステップS9がYES)ステップS10に進み、作動させないのであれば(ステップS9がNO)、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0038】
ステップS10では、循環ポンプPP3を作動させ、その後、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0039】
次に、図3のフローチャートに基づいて、制御の変形例について説明する。
図3で示す変形例は、図2のステップS5の工程を省略している。換言すれば、図3で示す制御では、例えば、粘性土質の地盤の掘削の場合等、ステップS2において掘削を続行する場合(ステップS2で「掘削」)において、圧力メータMp1で計測した圧力値p1如何に拘わらず、圧力検知ラインの循環ポンプPP3を常時作動させる実施例である。
【0040】
その他については、図3の変形例における制御は、図2で示す制御と同様である。
このケースでは、施工土壌は粘性土壌の割合が高く、循環ポンプPP3を少しでも停止させると圧力メータMp1の取り付け箇所の閉塞が懸念され、圧力メータMp1の検知精度確保のためにこの様な制御が選択される。
【0041】
上述した構成の泥水シールド装置によれば、掘削機1内に連通し掘削機1内の圧力流体(泥水)を循環させて圧力を検知する圧力検知ライン8を設け、該圧力検知ライン8には掘削機1内の圧力を計測する圧力メータMp1と循環用ポンプPP3とが介装されており、循環用ポンプPP3を作動して、圧力検知ライン8を圧力流体(泥水)が循環するように構成されているので、粘性土等の様な管路の閉塞や圧力メータへの付着が生じる可能性が高い土壌の掘削時や、掘削停止時においても、圧力検知ライン8の圧力メータMp1の取付位置が、粘土等の粘性流体によって閉塞されるようなことが無く、常に正確な圧力を計測する事が出来るのである。
【0042】
そして、掘削中に圧力メータMp1の計測値p1が所定値以下となった場合に、循環用ポンプPP3を作動するように構成すれば、計測値に影響が及ばない場合には循環用ポンプPP3が作動しないので、消費電力、すなわち、ランニングコストを抑制することが出来る。
【0043】
一方、施工土壌における粘性土壌の割合が高く、循環ポンプPP3を少しでも停止させると、圧力メータMp1の取り付け箇所が閉塞する恐れがある場合には、圧力メータMp1の検知精度確保のために、循環ポンプPP3を、常時作動状態を維持するように制御することが出来る。
【0044】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示すブロック図。
【図2】実施形態にかかる制御方法の一例を示した制御フローチャート。
【図3】図2に対する変形例である制御フローチャート。
【図4】従来の泥水シールド装置の構成を示したブロック図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・掘削機
2・・・送泥配管
3・・・排泥配管
4・・・バイパス配管
5・・・作泥調整槽
10・・・コントロールユニット
15・・・隔壁
20・・・バイパス管
24・・・分岐点
34・・・合流点
Mp1、Mp2・・・圧力検出手段/圧力メータ
V1〜V7・・・開閉弁
CV・・・流量制御弁
FM・・・流量計
PP1・・・送泥ポンプ
PP2・・・排泥ポンプ
PP3・・・循環ポンプ
Pm・・・補助ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル建設用掘削機と、泥水を供給する送泥配管設備と、泥水及び掘削土砂とを排出する排泥配管設備と、送泥配管と配泥配管を連通するバイパス配管を有する泥水シールド装置において、前記掘削機内に連通して掘削機内の流体が循環可能な圧力検知ラインを設け、該圧力検知ラインには圧力を計測する圧力計測手段及び循環用ポンプが介装されていることを特徴とする泥水シールド装置。
【請求項2】
前記循環用ポンプは、掘削機が停止している際に作動するように構成されている請求項1の泥水シールド装置。
【請求項3】
前記循環用ポンプは、粘性土質の地盤を掘削している場合に作動するように構成されている請求項1の泥水シールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−247200(P2007−247200A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70126(P2006−70126)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【Fターム(参考)】