説明

泥水式シールド掘進機

【課題】トンネルの掘進中に切羽面に逸水等が生じた際に、切羽面を泥水圧によって安定させた状態に復帰させて、トンネルの掘進を引き続いて行えるようにする。
【解決手段】カッターチャンバー12に充填された泥水21の圧力によって切羽面20を安定させながらトンネルの掘進を行う、カッターチャンバー12の後方にエアチャンバー14を備える泥水式シールド掘進機において、空気層15に空気を圧送する給気配管24と空気層15から空気を排出する排気配管35に、給気側エアーコントロールバルブ26,26aと排気側エアーコントロールバルブ38a,38bが各々設けられていると共に、給気配管24と接続して、圧縮空気を貯留する空気タンク22が設けられている。給気側エアーコントロールバルブ26,26a及び排気側エアーコントロールバルブ38a,38bは、チャンバー内空気圧検出器27による検出結果を受けて、これらの開き度が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水式シールド掘進機に関し、特にカッターチャンバーに充填された泥水の圧力によって切羽面を安定させながらトンネルの掘進を行う泥水式シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水式シールド掘進機は、掘進機本体の先端部に設けられて切羽面を掘削するカッターヘッドの後方に、隔壁によって仕切られたカッターチャンバーを形成すると共に、このカッターチャンバーに泥水を充填して、充填した泥水の圧力(泥水圧)によって切羽面を安定させながらトンネルの掘進を行うシールド掘進機であり、カッターチャンバーに充填した泥水を、泥水槽や泥水タンクとの間で循環させて、掘削土砂を泥水と共に泥水槽や泥水タンクに搬送することで、カッターヘッドによって掘削した掘削土砂をカッターチャンバーから排出しつつトンネルの掘進を行えるようになっている。
【0003】
また、泥水式シールド掘進機を改良したものとして、カッターチャンバーの後方にエアチャンバーを形成すると共に、カッターチャンバーとエアチャンバーとをこれらの下部において連通させることで、エアチャンバー内の泥水層の上方に空気層を形成した状態でトンネルの掘進を行うようにした、エアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
このようなエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機では、例えばエアチャンバー内における泥水層と空気層との境界部分である泥水の液面の高さを、空気層の空気圧の制御と、カッターチャンバー及びエアチャンバーへの泥水の送泥や排泥の制御とによって、所定の高さとなるように設定した状態で、切羽面における地山側からの水圧の変化等による圧力変動を、エアチャンバー内の空気層を形成する空気の圧縮膨張性によって緩和しながら、トンネルの掘進を行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−120175号公報
【特許文献2】特開2009−13702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、泥水式シールド掘進機によって掘削される地山の土質は、トンネルの掘進に伴って変化するものであり、また特に、例えば大断面のトンネルの場合、地山の土質が断面方向に均質でない場合が多く、例えば均等係数の少ない砂層や、砂礫層や、岩盤層に遭遇したり、切羽面にこれらの層が含まれていると、泥水の噴発や放出等を原因として、逸水等によるトラブルが発生する場合がある。逸水等が生じた場合には、カッターチャンバー内の加圧された泥水が切羽面から地山側に抜けることで、カッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力も急激に低下することになる。また、例えばカッターチャンバーから泥水を排泥する排泥管が閉塞したり、キャビテーションが発生すると、カッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力が急激に上昇することになる。
【0007】
ここで、切羽面における逸水や、排泥管の閉塞等が生じた場合に、これらを検知してカッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力を早急に回復できれば、切羽面を安定させて引き続き掘進を行えるようになるものと考えられる。すなわち、例えば逸水による圧力の急激な低下が検知された際には、回復したカッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力を介して、比重及び粘性が高くなるように調整された泥水に含まれる、例えばベントナイト成分によって、逸水が生じた部分の切羽面の地山にマッドケーキ(不透水層)を再度生成させることで、所望の大きさの泥水圧が再び得られるようにして、切羽面を安定させながら引き続き掘進を行えるようになるものと考えられる。
【0008】
一方、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機では、エアチャンバー内の空気層の空気圧を調整できるようにするために、エアチャンバーに空気を送る配管に接続して、アキュームレ−タやコンプレッサーが設けられており、また空気を送る配管には減圧弁や給気バルブが設けられているが、これらのコンプレッサーやアキュームレ−タでは、小規模な地山の崩壊等による地山側の圧力変動に対しては、エアチャンバー内の空気層に加圧空気を供給することによって、これらの圧力変動を吸収することが可能である一方で、空気層に供給可能な加圧空気の容量が限られているため、カッターチャンバーやエアチャンバーに逸水等による急激な圧力の低下が生じた場合には、特に例えば大断面のトンネルの場合、加圧空気の容量が不足して、カッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力を早急に回復させることが難しい。また、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機では、排泥管の閉塞等による圧力の急激な上昇が検知された場合には、カッターチャンバーやエアチャンバー内の圧力を早急に回復させることは困難である。
【0009】
本発明は、トンネルの掘進中に切羽面における逸水や、排泥管の閉塞等によるカッターチャンバーやエアチャンバー内の急激な圧力の低下や上昇が生じた際に、これを検知して圧力を早急に回復させることで、泥水圧によって切羽面を安定させた状態に復帰させて、トンネルの掘進を引き続いて行えるようにすることのできるエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、掘進機本体の先端部に設けられて切羽面を掘削するカッターヘッドと、該カッターヘッドの後方に配置されたカッター側隔壁によって仕切られて、該カッター側隔壁と前記カッターヘッドとの間に形成されたカッターチャンバーと、該カッターチャンバーの後方に配置された本体側隔壁によって仕切られて、該本体側隔壁と前記カッター側隔壁との間に形成されたエアチャンバーとを含んで構成され、前記カッターチャンバーに充填された泥水の圧力によって切羽面を安定させながらトンネルの掘進を行う泥水式シールド掘進機において、前記エアチャンバーと前記カッターチャンバーとは、前記カッター側隔壁の下部に設けられらた連通口を介して連通していることで、前記エアチャンバーの下部に泥水層が、上部に空気層が形成されており、切羽面における地山側の圧力変動を、前記エアチャンバー内の前記空気層の空気の圧縮膨張性によって緩和しながらトンネルの掘進を行えるようになっており、前記空気層に空気を圧送する給気配管と前記空気層から空気を排出する排気配管に、給気側エアーコントロールバルブと排気側エアーコントロールバルブが各々設けられていると共に、前記給気配管と接続して、圧縮空気を貯留する空気タンクが設けられており、前記給気側エアーコントロールバルブ及び前記排気側エアーコントロールバルブは、制御装置と接続していて、前記カッターチャンバー内の泥水圧及び/又は前記エアチャンバー内の前記空気層の空気圧の検出結果を受けて、これらのバルブの開き度が制御されるようになっており、前記給気側エアーコントロールバルブ及び前記排気側エアーコントロールバルブは、トンネルの掘進時においては開いた状態となっていて、前記空気タンクから空気を圧送し続けると共に、前記空気層から空気を排出し続けながら、前記空気層の空気圧が所定の圧力に保持されるように前記制御装置によって各バルブの開き度が制御されるようになっており、且つ前記カッターチャンバー内の泥水圧及び/又は前記エアチャンバー内の前記空気層の空気圧の急激な低下や上昇が検出された際に、前記空気層の空気圧が前記所定の圧力に復帰するように前記制御装置によって各バルブの開き度が制御されるようになっている泥水式シールド掘進機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の泥水式シールド掘進機は、前記空気タンクと貯留配管を介して接続して、圧縮空気を生成する空気圧縮機が設けられており、前記貯留配管に、貯留減圧調整バルブが設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の泥水式シールド掘進機は、前記チャンバー内で保持される前記空気層の前記所定の圧力が、施工現場における地下水位に基づいて設定される管理圧力であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の泥水式シールド掘進機は、前記空気タンクに貯留される圧縮空気の空気圧が、前記空気層の前記所定の圧力の2〜10倍の圧力であることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の泥水式シールド掘進機は、前記給気配管の前記給気側エアーコントロールバルブよりも下流側に、給気減圧調整バルブが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機によれば、トンネルの掘進中に切羽面における逸水や、排泥管の閉塞等によるカッターチャンバーやエアチャンバー内の急激な圧力の低下や上昇が生じた際に、これを検知して圧力を早急に回復させることで、泥水圧によって切羽面を安定させた状態に復帰させて、トンネルの掘進を引き続いて行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る泥水式シールド掘進機の構成を説明する略示縦断面図である。
【図2】図1のA−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る泥水式シールド掘進機10は、例えば地下水が存在する地盤に、例えばトンネルの断面の直径が6〜20m程度の大きさの、道路や地下鉄用のトンネルを構築する工事において、周囲の地盤に影響を与えることなく、泥水の圧力(泥水圧)によって切羽面20を安定させながらトンネルを掘進してゆくためのシールド掘進機として採用されたものである。また、本実施形態の泥水式シールド掘進機10は、切羽面20を掘削するカッターヘッド12の後方に形成されたカッターチャンバー13の後方に、さらにエアチャンバー14を備えることで、切羽面20における地山側の圧力変動を、エアチャンバー14に形成された空気層15の空気の圧縮膨張性によって緩和しながら、トンネルの掘進を行えるようにする機能を備えると共に、トンネルの掘進中に切羽面における逸水や、排泥管34の閉塞等が生じてカッターチャンバー13やエアチャンバー14内の圧力が急激に低下したり上昇した際に、低下したり上昇したカッターチャンバー13やエアチャンバー14内の圧力を早急に元の圧力に回復させることで、泥水圧によって切羽面20を安定させた状態に容易に復帰できるようにする機能を備えている。
【0018】
すなわち、本実施形態の泥水式シールド掘進機10は、掘進機本体11の先端部に設けられて切羽面を掘削するカッターヘッド12と、カッターヘッド12の後方に配置されたカッター側隔壁16によって仕切られて、カッター側隔壁16とカッターヘッド12との間に形成されたカッターチャンバー13と、カッターチャンバー13の後方に配置された本体側隔壁17によって仕切られて、本体側隔壁17とカッター側隔壁16との間に形成されたエアチャンバー14とを含んで構成され、カッターチャンバー12に充填された泥水21の圧力によって切羽面20を安定させながらトンネルの掘進を行うシールド掘進機において、エアチャンバー14とカッターチャンバー13とは、カッター側隔壁16の下部に設けられらた連通口18を介して連通していることで、エアチャンバー14の下部に泥水層19が、上部に空気層15が形成されており、切羽面20における地山側の圧力変動を、エアチャンバー14内の空気層15の空気の圧縮膨張性によって緩和しながらトンネルの掘進を行えるようになっている。
【0019】
そして、空気層15に空気を圧送する給気配管24と空気層15から空気を排出する排気配管35に、給気側エアーコントロールバルブ26,26aと排気側エアーコントロールバルブ38a,38bが各々設けられていると共に、給気配管24と接続して、圧縮空気を貯留する空気タンク22が設けられており、給気側エアーコントロールバルブ26,26a及び排気側エアーコントロールバルブ38a,38bは、制御装置(図示せず)と接続していて、カッターチャンバー13内の泥水圧を検出する泥水圧検出器50やエアチャンバー14内の空気層15の空気圧を検出するチャンバー内空気圧検出器27による、カッターチャンバー13内の泥水圧及び/又はエアチャンバー14内の空気層15の空気圧の検出結果を受けて、これらのバルブ26,26a,38a,38bの開き度が制御されるようになっている。給気側エアーコントロールバルブ26,26a及び排気側エアーコントロールバルブ38a,38bは、トンネルの掘進時においては開いた状態となっていて、空気タンク22から空気を圧送し続けると共に、空気層15から空気を排出し続けながら、空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるように制御装置によって各バルブ26,26a,38a,38bの開き度が制御されるようになっており、且つカッターチャンバー13内の泥水圧及び/又はエアチャンバー14内の空気層15の空気圧の急激な低下や上昇が検出された際に、空気の排出量よりも空気の圧送量を増やしたり、空気の排出量よりも空気の圧送量を少なくして、空気層15の空気圧が所定の圧力に復帰するように制御装置によって各バルブ26,26a,38a,38bの開き度が制御されるようになっている。
【0020】
また、本実施形態では、空気タンク22と貯留配管28を介して接続して、圧縮空気を生成する空気圧縮機23が設けられており、貯留配管28に、貯留減圧調整バルブ29が設けられている。
【0021】
本実施形態では、泥水式シールド掘進機10の掘進機本体11は、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機の掘進機本体と略同様の構成を備えている。すなわち、掘進機本体11は、筒状(円筒状)に形成された外殻体30と、掘進機本体11の先端部に配設されると共に、公知のカッター回転駆動機構(図示せず)によって回転制御されて切羽面を掘削するカッターヘッド12と、カッターヘッド12から掘進方向と反対方向に離間して外殻体30の内部に形成されたカッター側隔壁16と、カッター側隔壁16から掘進方向と反対方向に離間して外殻体30の内部に形成された本体側隔壁17とを有している。
【0022】
カッター側隔壁16は、外殻体30の内部を掘進方向の前後に仕切るように形成された円板状の仕切板からなる。カッター側隔壁16の後方に配置される本体側隔壁17は、図2にも示すように、中央部分が円形に切り抜かれると共に、下端部分が弓形形状に切り欠かれた、略円環ドーナ板形状の仕切板からなる。本体側隔壁17の円形に切り抜かれた中央部分には、円筒形状の内筒体31が内側に嵌め込まれている。内筒体31は、カッター側隔壁16の背面まで延設してこれに密着した状態で、本体側隔壁17に一体として接合されている。本体側隔壁17の弓形形状に切り欠かれた下端部分には、カッターチャンバー13側に傾斜する平坦な底部をエアチャンバー14に形成する、底板32が設けられている。底板32は、カッター側隔壁16の背面まで延設してこれに密着した状態で、本体側隔壁17に一体として接合されている。
【0023】
これらによって、カッター側隔壁16と本体側隔壁17の間には、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機と同様に、下端部分が切り欠かれた略円環ドーナ形状のエアチャンバー14が形成される。また、エアチャンバー14は、底部を覆う底板32の直上部分において、カッター側隔壁16の下部に開口形成された連通口18を介して、カッターチャンバー13と連通している。これによって、カッターチャンバー13からエアチャンバー14に泥水が送り込まれて、空気層15の下方の略下半部分に、泥水層19が形成されるようになっている。さらに、エアチャンバー14を径方向に区画してこれの中央部分に設けられた内筒体31の内側には、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機と同様に、ギヤやモータ等を備える公知のカッター回転駆動機構(図示せず)が設けられている。
【0024】
また、本実施形態では、泥水式シールド掘進機10の掘進機本体11に、カッターチャンバー13に泥水を送泥する送泥管33と、カッターチャンバー13から泥水を掘削土砂と共に排出する排泥管34とを備える。
【0025】
送泥管33は、本体側隔壁17及びカッター側隔壁16の上部において、本体側隔壁17の後方からこれらを貫通して、カッターチャンバー13の上部に先端開口が開口するように取り付けられている。送泥管33は、送泥ポンプ(図示せず)を駆動することで、例えば立坑やトンネルの内部に設置した泥水槽や泥水タンク(図示せず)から、カッターチャンバー13に向けて泥水を送泥できるようになっている。
【0026】
排泥管34は、底板32によって仕切られたエアチャンバー14の底部の下方において、カッター側隔壁16を貫通して、カッターチャンバー13の下部に後端開口が開口するように取り付けられている。排泥管34は、排泥ポンプ(図示せず)を駆動することで、例えば立坑やトンネルの内部に設置した泥水槽や泥水タンク(図示せず)に向けて、掘削土砂が混ざった泥水を、カッターチャンバー13から排出できるようになっている。
【0027】
そして、送泥管33を介してカッターチャンバー13に泥水を送泥し、排泥管34を介してカッターチャンバー13から泥水を掘削土砂と共に排泥して、泥水槽や泥水タンク(図示すせ)との間で泥水をを循環させさながら、切羽面20をカッターヘッド12によって掘削しつつトンネルの掘進が行われるようになっている。送泥ポンプや排泥ポンプは、従来のエアチャンバーを備える泥水式シールド掘進機と同様に、これらによる送泥量や排泥量を制御する公知の制御装置(図示せず)と接続されており、例えばカッターチャンバー13に設けられた泥水圧検出器50による検出結果に基づいて、カッターチャンバー13内の泥水圧が所定の値となるように、送泥量や排泥量を制御できるようになっている。
【0028】
また、本実施形態では、エアチャンバー14を形成する本体側隔壁17の上部に、当該本体側隔壁17からカッター側隔壁側16に張り出して、液面計設置室40が、その底面部に形成された計測開口41を泥水層19の液面の直上部分に配置して設けられており、液面計設置室40には、計測開口41との間の中空計測路を密閉可能に開閉するボールバルブ等からなるバルブ機構43を介在させて、エアチャンバー14内の泥水層19の液面19aからの反射波を検出して泥水層19の水位を計測する液面計44が、着脱可能に取り付けられている。液面計44は、送泥管33を介した送泥量や排泥管34を介した排泥量を制御する公知の制御装置(図示せず)と接続されており、液面計44によって計測された泥水層19の液面19aの水位の計測結果に基づいて、エアチャンバー14内の泥水層19の水位が所定の水位となるように、送泥量や排泥量を制御できるようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、泥水式シールド掘進機10の掘進機本体11には、エアチャンバー14内の空気層15に空気を圧送する給気配管24と、空気層15から空気を排出する排気配管35が、本体側隔壁17の上部において当該本体側隔壁17を貫通して設けられている。給気配管24には、空気タンク22と、空気圧縮機23と、給気減圧調整バルブ25と、給気側エアーコントロールバルブ26とが接続している。
【0030】
空気タンク22としては、例えば0.1〜1MPa程度の圧縮空気を貯留することが可能な、圧気工法等の各種の工事に用いる、例えば1000〜6000L程度の容量を備える公知の空気タンクを用いることができる。空気タンク22には、エアー送圧検出器22aが設けられている。
【0031】
ここで、空気タンク22に貯留される圧縮空気の圧力は、好ましくは施工現場における地下水位に基づいて設定される管理圧力を、トンネルの掘進時にエアチャンバー14内で保持されるべき空気層15の所定の圧力として、当該所定の圧力の2〜10倍の圧力であることが好ましく、5〜10倍の圧力であることがさらに好ましい。空気タンク22に貯留される圧縮空気の圧力が高すぎると、例えばカッターチャンバー13やエアチャンバー14内の圧力の急激な低下が検知された場合において、給気側エアーコントロールバルブ26,26aの開き度を大きくすることで空気タンク22から空気層15に圧縮空気を必要量増加して圧送した後に、給気側エアーコントロールバルブ26,26aの開き度を絞って圧縮空気の圧送量を元の状態に戻す際に、給気側エアーコントロールバルブ26,26aの開き度が絞られてゆく間に過度の圧縮空気が空気層15に圧送されてしまうことで、カッターチャンバー13やエアチャンバー14内の圧力が必要以上に高くなる現象であるリバウンドが、過度に大きくなるといった不利益が生じることになる。空気タンク22に貯留される圧縮空気の圧力が低すぎると、低下したカッターチャンバー13やエアチャンバー14内の圧力を早急に回復させるのに必要な、十分な量の圧縮空気を、空気層15に圧送するのが難くなるといった不利益が生じることになる。
【0032】
圧縮空気を生成する空気圧縮機23としては、例えば0.1〜1MPa程度の圧縮空気を生成することが可能な、公知の各種の圧縮空気生成機を用いることができる。
【0033】
本実施形態では、圧送配管24は、これの上流側において枝分かれした、2本の分岐給気配管24a,24bを介して空気タンク22と接続しており、第1分岐給気配管24aには、手動ゲートバルブ36、給気減圧調整バルブ25、給気側エアーコントロールバルブ26、及び逆止弁37が、空気タンク22側からこれらの順番で設けられている。すなわち、本実施形態では、給気配管24の上流側部分を構成する第1分岐給気配管24aにおける、給気側エアーコントロールバルブ26よりも下流側に、給気減圧調整バルブ25が設けられている。
【0034】
ここで、手動ゲートバルブ36は、例えば泥水式シールド掘進機10を構成する機器が故障したり、給気側エアーコントロールバルブ26が故障した際に、第1分岐給気配管24aを介した空気の圧送を遮断するために設けられている。給気減圧調整バルブ25は、不必要に高圧な圧縮空気が、第1分岐給気配管24aを介してエアチャンバー14内の空気層15に圧送されないようにするために設けられている。給気側エアーコントロールバルブ26は、通常のトンネルの掘進時には、エアチャンバー14内の空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるように、空気タンク22から第1分岐給気配管24aを介して所望の量の圧縮空気が空気層15に圧送されるように調整すると共に、カッターチャンバー13内の泥水圧やエアチャンバー14内の空気層15の空気圧の急激な低下や上昇が検知された際には、空気層15の空気圧が所定の圧力に早急に回復されるように、空気タンク22から第1分岐給気配管24aを介して空気層15に圧送される圧縮空気の圧送量を調整するために設けられている。
【0035】
第2分岐給気配管24bには、第2手動ゲートバルブ36a、第2給気側エアーコントロールバルブ26a、及び第2逆止弁37aが、空気タンク22側からこれらの順番で設けられている。ここで、第2手動ゲートバルブ36aは、例えば泥水式シールド掘進機10を構成する機器が故障したり、第2給気側エアーコントロールバルブ26aが故障した際に、第2分岐給気配管24bを介した空気の圧送を遮断するために設けられている。第2給気側エアーコントロールバルブ26aは、通常のトンネルの掘進時には、エアチャンバー14内の空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるように、空気タンク22から第2分岐給気配管24bを介して所望の量の圧縮空気が空気層15に圧送されるように調整すると共に、カッターチャンバー13内の泥水圧やエアチャンバー14内の空気層15の空気圧の急激な低下や上昇が検知された際には、空気層15の空気圧が所定の圧力に早急に回復されるように、空気タンク22から第2分岐給気配管24bを介して空気層15に圧送される圧縮空気の圧送量を調整するために設けられている。
【0036】
また、本実施形態では、空気圧縮機23と空気タンク24とを連通する貯留配管28には、第3手動ゲートバルブ36b、及び貯留減圧調整バルブ29が、空気圧縮機23側からこれらの順番で設けられている。ここで、第3手動ゲートバルブ36bは、例えば泥水式シールド掘進機10を構成する機器が故障したり、貯留減圧調整バルブ29が故障した際に、貯留配管28を介した圧縮空気の圧送を遮断するために設けられている。貯留減圧調整バルブ29は、空気圧縮機23によって生成された不必要に高圧な圧縮空気が、貯留配管28を介して空気タンク24に貯留されないようにするために設けられている。
【0037】
さらに、本実施形態では、本体側隔壁17の上部に設けられた排気配管35は、これの下流側において枝分かれした、2本の分岐排気配管35a,35bを備えており、各分岐排気配管35a,35bには、排気側エアーコントロールバルブ38a,38b、及び逆止弁39a,39bが各々設けられている。
【0038】
ここで、排気側エアーコントロールバルブ38a,38bは、通常のトンネルの掘進時には、エアチャンバー14内の空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるように、給気側エアーコントロールバルブ26や第2給気側エアーコントロールバルブ26aと連動して、空気層15から分岐排気配管35a,35bを介して所望の量の空気が各々排出されるように調整すると共に、カッターチャンバー13内の泥水圧やエアチャンバー14内の空気層15の空気圧の急激な低下や上昇が検知された際には、給気側エアーコントロールバルブ26や第2給気側エアーコントロールバルブ26aと連動して、空気層15の空気圧が所定の圧力に早急に回復されるように、空気層15から分岐排気配管35a,35bを介して所望の量の空気が各々排出されるように調整するために設けられている。
【0039】
さらにまた、本実施形態では、本体側隔壁17の上部には、エアチャンバー14の空気層15に臨んでチャンバー内空気圧検出器27が設けられており、このチャンバー内空気圧検出器27によって検出された空気層15の圧力の検出結果は、給気側エアーコントロールバルブ26,26aや排気側エアーコントロールバルブ38a,38bと接続していて、これらのバルブ26,26a,38a,38bの開き度を調整することによりエアチャンバー14内の圧力を制御する、公知の制御装置(図示せず)に送ることができるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では、上述の空気タンク22に設けられたエアー送圧検出器22aや、第1分岐給気配管24aに設けられた給気減圧調整バルブ25、給気側エアーコントロールバルブ26及び逆止弁37や、第2分岐給気配管24bに設けられた第2給気側エアーコントロールバルブ26a及び第2逆止弁37aや、貯留配管28に設けられた貯留減圧調整バルブ29や、排気配管35の分岐排気配管35a,35bに設けられた排気側エアーコントロールバルブ38a,38b及び逆止弁39a,39b等は、上述のカッターチャンバー13に設けられた泥水圧検出器50や、送泥管33に設けられた送泥ポンプ、排泥管34に設けられた排泥ポンプ等と共に、カッターチャンバー13内やエアチャンバー14内の圧力を制御する上述の制御装置と接続している。これらの機器は、泥水圧検出器50やチャンバー内空気圧検出器27によって検出された、カッターチャンバー13内の泥水圧や空気層15の空気圧の検出結果を受けて、圧縮空気が空気タンク22から空気層15に所定の圧力及び流量で圧送されるように、またエアチャンバー14の空気層15の空気圧が所定の圧力となるように、制御装置を介して自動又は手動によって制御できるようになっている。
【0041】
そして、上述の構成を備える本実施形態の泥水式シールド掘進機10によれば、例えば切羽面20に逸水等が生じていない、小規模な地山の崩壊等による地山側の小さな圧力変動を伴う通常のトンネルの掘進時においては、給気側エアーコントロールバルブ26,26a及び排気側エアーコントロールバルブ38a,38bを、これらのバルブ26,26a,38a,38bの開き度を調整して開いた状態としたまま、空気タンク22から空気を圧送し続けると共に、空気層15から空気を排出し続けながら、空気層15の空気圧を所定の圧力に保持して、切羽面20における地山側の圧力変動を、エアチャンバー14に形成された空気層15の空気の圧縮膨張性によって緩和しつつトンネルの掘進を行う。
【0042】
一方、切羽面20の逸水や、排泥管34の閉塞が生じたりして、泥水圧検出器50やチャンバー内圧力検出器27によってカッターチャンバー13内やエアチャンバー14内における泥水圧や空気圧の急激な低下や上昇が検知されたら、例えば給気側エアーコントロールバルブ26,26aの開き度を制御して、空気タンク22から空気層15に圧送される空気の量を増加したり減少したりすると共に、排気側エアーコントロールバルブ38a,38bの開き度を制御して、空気層15から排出される空気の量を減少させたり増加させることによって、急激に低下したり上昇した空気層15の空気圧を、所定の圧力となるように早急に復帰させることが可能になる。
【0043】
ここで、本実施形態では、給気側エアーコントロールバルブ26,26a及び排気側エアーコントロールバルブ38a,38bは、トンネルの掘進時においては開いた状態となっていて、常時、空気層15に空気を圧送すると共に空気層15から空気を排気して、空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるよう制御されているので、カッターチャンバー13内やエアチャンバー14内における泥水圧や空気圧の急激な低下や上昇が検知された際には、これらのバルブ26,26a,38a,38bの開き度を調整する制御によって、空気層15に滞留する空気の量を増やしたり減少させたりすることで、空気層15の空気圧を即座に回復することが可能になる。これによって、エアチャンバー14内における空気圧の急激な低下が検知されてからバルブを開いたり閉じたりするものと比較して、バルブの開閉時の時間遅れを減少させて、よりスムーズに且つ早急に、空気層15の空気圧が所定の圧力となるように回復させることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、エアチャンバー14内の空気層15と給気配管24を介して接続して、圧縮空気を貯留する空気タンク22が設けられており、この空気タンク22には、好ましくは圧縮空気を生成する空気圧縮機23から送られる相当の量の圧縮空気を常時貯留しておくことができるので、エアチャンバー14内の空気層15の空気圧が所定の圧力に保持されるように空気層15に圧縮空気を圧送し続けたり、空気層15の空気圧の急激な低下が検出された際には圧縮空気の圧送量を増やすのに十分な量の圧縮空気を確保して、空気層15の空気圧が所定の圧力となるように、容易に保持させたり回復させたりすることが可能になる。
【0045】
これらによって、本実施形態のエアチャンバー14を備える泥水式シールド掘進機10によれば、トンネルの掘進中に切羽面における逸水や、排泥管の閉塞等によるカッターチャンバー13やエアチャンバー14内の急激な圧力の低下や上昇が生じた際に、これを検知して圧力を早急に回復させることで、泥水圧によって切羽面を安定させた状態に復帰させて、トンネルの掘進を引き続いて行えるようにすることが可能になる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、圧送配管は、これの上流側において枝分かれした2本の分岐給気配管を備えている必要は必ずしも無く、一本の圧送配管によって空気層と空気タンクとが接続していても良い。排気配管は、これの下流側において枝分かれした2本の分岐排気配管を備えて備えている必要は必ずしも無く、一本の排気配管によって空気層から空気を排出するようにしても良い。また、給気配管の給気側エアーコントロールバルブよりも下流側に、給気減圧調整バルブを設ける必要は必ずしも無い。さらに、エアチャンバー内の水位の変動も考慮して制御することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 泥水式シールド掘進機
11 掘進機本体
12 カッターヘッド
13 カッターチャンバー
14 エアチャンバー
15 空気層
16 カッター側隔壁
17 本体側隔壁
18 連通口
19 泥水層
20 切羽面
21 泥水
22 空気タンク
23 空気圧縮機
24 給気配管
24a 第1分岐給気配管
24b 第2分岐給気配管
25 給気減圧調整バルブ
26,26a 給気側エアーコントロールバルブ
27 チャンバー空気圧検出器
28 貯留配管
29 貯留減圧調整バルブ
33 送泥管
34 排泥管
35 排気配管
35a,35b 分岐排気配管
38a,38b 排気側エアーコントロールバルブ
40 液面計設置室
43 バルブ機構
44 液面計
50 泥水圧検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機本体の先端部に設けられて切羽面を掘削するカッターヘッドと、該カッターヘッドの後方に配置されたカッター側隔壁によって仕切られて、該カッター側隔壁と前記ッターヘッドとの間に形成されたカッターチャンバーと、該カッターチャンバーの後方に配置された本体側隔壁によって仕切られて、該本体側隔壁と前記カッター側隔壁との間に形成されたエアチャンバーとを含んで構成され、前記カッターチャンバーに充填された泥水の圧力によって切羽面を安定させながらトンネルの掘進を行う泥水式シールド掘進機において、
前記エアチャンバーと前記カッターチャンバーとは、前記カッター側隔壁の下部に設けられた連通口を介して連通していることで、前記エアチャンバーの下部に泥水層が、上部に空気層が形成されており、切羽面における地山側の圧力変動を、前記エアチャンバー内の前記空気層の空気の圧縮膨張性によって緩和しながらトンネルの掘進を行えるようになっており、
前記空気層に空気を圧送する給気配管と前記空気層から空気を排出する排気配管に、給気側エアーコントロールバルブと排気側エアーコントロールバルブが各々設けられていると共に、前記給気配管と接続して、圧縮空気を貯留する空気タンクが設けられており、
前記給気側エアーコントロールバルブ及び前記排気側エアーコントロールバルブは、制御装置と接続していて、前記カッターチャンバー内の泥水圧及び/又は前記エアチャンバー内の前記空気層の空気圧の検出結果を受けて、これらのバルブの開き度が制御されるようになっており、
前記給気側エアーコントロールバルブ及び前記排気側エアーコントロールバルブは、トンネルの掘進時においては開いた状態となっていて、前記空気タンクから空気を圧送し続けると共に、前記空気層から空気を排出し続けながら、前記空気層の空気圧が所定の圧力に保持されるように前記制御装置によって各バルブの開き度が制御されるようになっており、且つ前記カッターチャンバー内の泥水圧及び/又は前記エアチャンバー内の前記空気層の空気圧の急激な低下や上昇が検出された際に、前記空気層の空気圧が前記所定の圧力に復帰するように前記制御装置によって各バルブの開き度が制御されるようになっている泥水式シールド掘進機。
【請求項2】
前記空気タンクと貯留配管を介して接続して、圧縮空気を生成する空気圧縮機が設けられており、前記貯留配管に、貯留減圧調整バルブが設けられている請求項1記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項3】
前記チャンバー内で保持される前記空気層の前記所定の圧力が、施工現場における地下水位に基づいて設定される管理圧力である請求項1又は2記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項4】
前記空気タンクに貯留される圧縮空気の空気圧が、前記空気層の前記所定の圧力の2〜10倍の圧力である請求項3記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項5】
前記給気配管の前記給気側エアーコントロールバルブよりも下流側に、給気減圧調整バルブが設けられている請求項1〜4のいずれか1項記載の泥水式シールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83110(P2013−83110A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224485(P2011−224485)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】