説明

泥濃式推進装置及び掘削土砂の連続排土方法

【課題】 泥濃式推進装置を利用した、急勾配管路等の布設工事において、掘進時に発生する掘削土砂の排土を安全に効率よく実施する。
【解決手段】 推進装置10前面が面する切羽5の安定のために、地上部から高濃度泥水を供給するとともに、推進装置10の掘進による切羽切削に伴って発生した掘削土砂を、推進装置10内の排土貯槽15に取り込み、排土貯槽15内に貯泥された掘削土砂を掘削土砂を送泥管と排泥管とが連結された送排泥管路中で混合して還流泥水とし、還流泥水を、排泥管22内に配備された渦巻きポンプ29で負圧吸引して排泥管22を介して地上部まで圧送させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泥濃式推進装置及び掘削土砂の連続排土方法に係り、急勾配管路等の掘削において、掘削土砂の排土を安全に効率よく確保することができる泥濃式推進装置及び掘削土砂の連続排土方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泥濃式推進工法は、前部が隔壁で密閉された掘進機としての泥濃式推進装置のカッタチャンバ内に高濃度の泥水を圧送充満し、切羽の安定を図りながら前面カッタにより掘削し、発進立坑に設けられた支圧壁に支持された元押ジャッキの推進力により、推進管を掘進機後方に順次推進して管路を布設する工法である(特許文献1参照)。
【0003】
このとき、切羽で発生した掘削土砂は、高濃度泥水と撹拌混合し流動化させ、推進装置内の排土バルブを開閉することにより、切羽を安定させながら間欠的に排土されるようになっている。掘進機の排泥バルブ(ピンチバルブ)からの排土(掘削土砂)は、掘進機内のチャンバー内に排出され、発進立坑に設けた真空排泥装置(バキューム)の吸引力により、排土管内を空気とともにプラグ流体輸送される。また、大きな礫は、掘進機内の分級機で分別し、トロバケットなどで人力によって搬出される。そして、坑外に搬出された掘削土砂は、排土貯留槽を経て、バキューム車等により、直接運搬処分され、あるいは固化処理後にダンプトラックにより運搬処分される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−169455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の排土方法では、掘削土砂は発進立坑内に設置された真空ポンプによる吸引力により坑外へ排出(排土)される。下水道管渠の場合は、管渠勾配が緩いためほとんどの場合、排土作業については問題にならない。しかし、管渠勾配が下り勾配の工事では、地上設備から到達点までの高低差が大きくなり、通常の真空ポンプでの排土作業用に大型の真空ポンプを管渠内に設置しなくてはならない。
【0006】
このように、推進工法において、急勾配、長距離、高揚程の施工条件において、真空排泥装置を用いたプラグ流体輸送を実施した場合、掘削土砂の見かけ比重を大きく下げて吸引可能な状態にするため、輸送効率が極端に低下する。また、急勾配の場合、トロバケットを用いた礫搬出は危険作業となる。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、急勾配管路等の掘削において、掘削土砂の排土を安全に効率よく確保することができる泥濃式推進装置及び掘削土砂の連続排土方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は高濃度泥水を推進装置前面が面する切羽面の安定のために地上部から供給するとともに、前記推進装置の切羽切削に伴って発生した掘削土砂を前記推進装置内に取り込み、前記掘削土砂を送泥管と排泥管とが連結された送排泥管路中で混合して還流泥水とし、該還流泥水を地上に還流させて、地上装置により泥水処理を行うようにした泥濃式推進装置であって、前記送排泥管路中に設けられ、前記掘削土砂を貯泥する排土貯槽と、該排土貯槽内の掘削土砂を、前記送排泥管路に設けた分岐部に移送する土砂移送手段と、前記分岐部で混合された還流泥水を、負圧吸引して前記排泥管を介して地上部まで圧送させる泥水移送手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記排土貯槽は、前記推進装置のカッタチャンバ背面に設置され、前記切羽で発生し、前記カッタチャンバを通過して排出された掘削土砂が貯泥される箱状容器とすることが好ましい。
【0009】
前記土砂移送手段は、前記排土貯槽内に設置され、先端部が前記排土貯槽の壁面部に形成された排泥流入口に到達するスクリューコンベアとすることが好ましい。
【0010】
前記泥水移送手段は、前記分岐部から延在する排泥管内の還流泥水を負圧吸引可能な渦巻きポンプとすることが好ましい。
【0011】
また、泥濃式推進装置による掘削土砂の連続排土方法として、高濃度泥水を推進装置前面が面する切羽面の安定のために地上部から供給するとともに、前記推進装置の切羽切削に伴って発生した掘削土砂を、前記推進装置内の排土貯槽に取り込み、該排土貯槽内に貯泥された掘削土砂を前記掘削土砂を送泥管と排泥管とが連結された送排泥管路中で混合して還流泥水とし、該還流泥水を、負圧吸引して前記排泥管を介して地上部まで圧送させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、泥濃式推進工法を採用した急勾配管路等の掘削において、掘進時に切羽で発生する掘削土砂の排土を安全に効率よく確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の泥濃式推進装置の構成及びその推進状況を模式的に示した全体構成図。
【図2】図1に示した送排泥管および排土貯槽の構成を示した説明図。
【図3】図2に示した送排泥管の排土流入口での排土の取り込み状態を示した部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の泥濃式推進装置及び掘削土砂の連続排土方法の実施するための形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の泥濃式推進装置が発進立坑から掘進を始めた状態と、そのための各種設備を模式的に示した模式説明図である。同図に示したように、すでに発進立坑1内から、泥濃式推進装置10(以下、単に掘進機10と呼ぶ。)が掘進方向の地盤2内に進入した状態が示されれている。この掘進機10は発進立坑1に設けられた支圧壁3に反力をとるように設置された複数本の元押ジャッキ4により推進する。そして、掘進機10後方に搬入され組み立てられた推進管(図示せず)を順次推進埋設して管路が形成される。
【0016】
一方、掘進機10本体には、掘進時の切羽5の安定を図るために、高濃度泥水を掘進機10前面のカッタチャンバ12まで供給する泥水供給管(図示せず)が掘進機10内に配管されている。カッタチャンバ12内に導かれ、さらに掘進機11前面の切羽5との間に満たされた高濃度泥水は、カッターヘッド13の回転により切羽5で発生した掘削土砂とともに、切羽安定を果たす。このとき、掘削土砂8は戻り泥水と切羽5で混合されずに、掘進機10の推進速度に合わせて、カッタチャンバ12内の泥水圧を制御しながら、ピンチバルブ14を開閉しながら排土され、切羽5での土圧バランスが制御される。このとき、ピンチバルブ14から排出された掘削土砂8はカッタチャンバ12後方に設置された排土貯槽15に一旦貯泥される。
【0017】
図1,図2各図を参照して後述するように、貯泥された掘削土砂8と泥水とは、還流泥水9として送排泥管経路上20で混合され、排泥管22内を通って地上に設置された泥水処理装置7へ送られ、泥水と排土に分離される。このうち、泥水は再度濃度調整され、送排泥経路20を介して循環利用される。本実施例では、送排泥経路20を構成する送泥管21、排泥管22として、直径φ150mmの鋼管が用いられている。したがって、管内を移送される土砂の最大粒径を調整することが必要である。
【0018】
掘削土砂8のうち、粒径50mmを超える礫は、カッタチャンバ12を出る際に、図示しない公知の分級機(トロンメル)で分離し、洗浄して表面の粘土分を除去して破砕機(たとえばシングルトッグルクラッシャー)で粉砕した後に、細粒の土砂とともに排土貯槽15に送られる。排土貯槽15に貯泥され掘削土砂8は、送排泥経路20上の分岐管(排泥流入口18a)から排泥管22を通じての地上の泥水処理装置7まで搬出される。
【0019】
図2(a)は、掘進機10の前部でUターンするように掘進機10内に配管された送泥管21と排泥管22と、排土貯槽15とを示した概略平面図である。送泥管21と排泥管22とはその経路上の最前位置の分岐部18位置で接続されるとともに、経路の中間位置にリターンバルブ23を配置した中間接続管24で連結されている。送泥管21の経路上には、図2(a)に示したように、送泥管21内の供給泥水量を調整する流量調整バルブ25と還流泥水9を所定圧に調整して地上部まで送泥するための送泥バルブ26が設置されている。本実施例では、排土貯槽15としては上面が開放された直方体をなす鋼製タンクが用いられ、その対向した壁面を掛け渡すように、後述するスクリューコンベアが設けられている。
【0020】
送泥管21と排泥管22との最前部での接続部には、掘削土砂8を混合させる分岐管18が接続されている。分岐管18には、図2(a),(b)に示したように、排土貯槽15内に設置された搬土用のスクリューコンベア17の先端部が回転可能に支持され、コンベア17の回転に沿って移送された土砂が分岐管18の排泥流入口18aに送られるようになっている。スクリューコンベア17の根元部は、排土貯槽15の外側に位置した駆動モータ27に支持され、この駆動モータ27の回転制御により、還流泥水内に排出される掘削土砂量を調整できる。このスクリューコンベア17先端と分岐管18との間には管路を閉塞可能なゲートバルブ19が設けられている。このゲートバルブ19の動作により、図2,図3(部分拡大図)に示したように、分岐管18位置での負圧が確保された状態で、排土貯槽15内の掘削土砂8はスクリューコンベア17で分岐管18の排泥流入口18aに向けて移送され、排泥流入口18aからゲートバルブ19を通過後、負圧状態にある排泥管22内を通じて矢印方向に還流泥水9として立坑1外の地上部まで排土される。
【0021】
排泥管22側の管路上の後方には、図2(a),(c)に示したように、吸引側に負圧を生じさせる横型渦巻きポンプ29が設置されている。この横型渦巻きポンプ29を排泥側に設置することにより、本泥濃式推進装置10では、排土を掘進機11内への取り込んだ際に、送泥管21内の圧力より排泥管22の内圧(排泥圧力)を大きくし、掘進機11内の還流側(排泥管22側)、すなわち管路リターン部に負圧を生じさせ、その負圧を利用して掘削土砂8を、排土貯槽15から排泥管22へ吸引させ、さらに泥水と掘削土砂8が混合された循環泥水は、横型渦巻きポンプ29の後方において排泥管22内を所定の加圧状態で地上処理設備まで圧送される。図2(d)は排泥管22に沿った管内の圧力分布を模式的に示した圧力分布図である。この負圧分布は、排泥管22の管路上に設置された渦巻きポンプ29の能力、運転回転数、および吸引側の泥水量の調整により制御することができる。
【0022】
ここで、送泥管21と排泥管22との間の分岐管18から、還流泥水9中に掘削土砂8を取り込む作用について、図1,図2(a),図3を参照して説明する。排泥管22内の還流泥水9の量と管内の圧力のバランスは、図1に示した各送泥ポンプP1、排泥ポンプP2、中継ポンプP3のインバータ制御と送泥管路20上の流量調整バルブ25の開度によって制御される。また、循環泥水の送り出しに必要な流速が確保できるように、負圧監視圧力センサS1によって送泥管21内の圧力が負圧になるように制御される。あわせて送泥管21側の送泥圧力、排泥管22側の排泥圧力もそれぞれの圧力センサS2,S3で検知し、排土貯槽15内に貯留されスクリューコンベア17を通じて排泥流入口18aに送られた掘削土砂8が渦巻きポンプ29の運転により生じた負圧により、分岐管18から排泥管22内に吸引されるように設定されている。このとき、吸引力とのバランスをとるために、スクリューコンベア17を運転制御して分岐管18側に送られる排土量を調整することが好ましい。
【0023】
運転制御時において、循環泥水の噴出を防止するため、送泥管、排泥管内圧カセンサS2,S3、分岐管位置の負圧監視センサS1を用いて管各部での圧力検知を行う。圧力検知結果は、制御部35に送られ、その情報を元に各部のバルブ開閉、ポンプ運転状況を制御する。たとえば分岐管18の排泥流入口18aで負圧状態が得られていない場合には、ゲートバルブ19が自動的に閉じ、負圧を確保できるまで渦巻きポンプ29をインバータ制御し、排泥流入口18aでの負圧状態の確保を図るように自動制御される。
【0024】
また、同様に、負圧が確保できないような機械的あるいは電気的トラブルが発生した場合には、負圧監視圧力センサS1の検知結果により、ゲートバルブ19(図3参照)を閉鎖し、土砂吸引口を自動的に閉鎖するとともに、掘進機10の運転を停止し、泥水還流経路のリターンバルブ23を作動させ泥水の噴出を防ぐ対策をとることが好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 発進立坑
5 切羽
6 調整槽
7 泥水処理装置
8 掘削土砂
9 還流泥水
10 泥濃式推進装置(掘進機)
18 分岐管
20 送排泥経路
21 送泥管
22 排泥管
29 渦巻きポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度泥水を推進装置前面が面する切羽面の安定のために地上部から供給するとともに、前記推進装置の切羽切削に伴って発生した掘削土砂を前記推進装置内に取り込み、前記掘削土砂を送泥管と排泥管とが連結された送排泥管路中で混合して還流泥水とし、該還流泥水を地上に還流させて、地上装置により泥水処理を行うようにした泥濃式推進装置であって、
前記送排泥管路中に設けられ、前記掘削土砂を貯泥する排土貯槽と、該排土貯槽内の掘削土砂を、前記送排泥管路に設けた分岐部に移送する土砂移送手段と、前記分岐部で混合された還流泥水を、負圧吸引して前記排泥管を介して地上部まで圧送させる泥水移送手段とを備えたことを特徴とする泥濃式推進装置。
【請求項2】
前記排土貯槽は、前記推進装置のカッタチャンバ背面に設置され、前記切羽で発生し、前記カッタチャンバを通過して排出された掘削土砂が貯泥される箱状容器であることを特徴とする請求項1に記載の泥濃式推進装置。
【請求項3】
前記土砂移送手段は、前記排土貯槽内に設置され、先端部が前記排土貯槽の壁面部に形成された排泥流入口に到達するスクリューコンベアであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の泥濃式推進装置。
【請求項4】
前記泥水移送手段は、前記分岐部から延在する排泥管内の還流泥水を負圧吸引可能な渦巻きポンプであることを特徴とする請求項1に記載の泥濃式推進装置。
【請求項5】
高濃度泥水を推進装置前面が面する切羽面の安定のために地上部から供給するとともに、前記推進装置の切羽切削に伴って発生した掘削土砂を、前記推進装置内の排土貯槽に取り込み、該排土貯槽内に貯泥された掘削土砂を前記掘削土砂を送泥管と排泥管とが連結された送排泥管路中で混合して還流泥水とし、該還流泥水を、負圧吸引して前記排泥管を介して地上部まで圧送させるようにしたことを特徴とする泥濃式推進装置による掘削土砂の連続排土方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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