説明

注入可能なデポー組成物

【課題】被検者に注入した時、益剤のための担体として利用することができ、益剤の経時的な持続放出を生ずることのできるゲル組成物の提供。
【解決手段】乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物;および、益剤を含む組成物。特に、組成物をチキソトロピー化して、被検者にできる限り不快感を与えることなく、ゲルの被検者への注入を促進する薬剤を含有するゲル組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、被検者に注入される時、益剤のための担体として利用され、益剤の経時的持続放出を生ずることのできるゲル組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、組成物をチキソトロピー化して、被検者にできるかぎり不快感を与えることなく、ゲルの被検者への注入を促進する化合物を含有する上記したようなゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物分解性のポリマーは、長年にわたって医学的用途に使用されている。これら生物分解性ポリマーの大半は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトンおよびこれらのコポリマーに基づく。過去十年以内、被検者に経時的に計量分配するための益剤のデポーを生ずる注入可能なポリマー組成物の使用に多大の力点が置かれている。
【0003】
薬剤供給システムを移植するために必要とされる切開を回避するための1つの方法は、それらを小粒子、微細球またはマイクロカプセルとして注入することである。例えば、U.S.特許No.5,019,400は、非常に低い温度でのキャスチングプロセスにより制御された放出微細球の製造を記載している。これらの材料は、体内に放出することのできる薬剤を含有しても含有しなくともよい。これらの材料は、シリンジで体内に注射することができるが、これらは、生物分解性の移植片についての要件を必ずしも満足するものではない。
【0004】
これら材料は、事実上、粒状物であるので、ある種の人工器官に必要とされる構造的一体性を有する連続フィルムまたは固体移植片を形成しない。ある種の体腔、例えば、口、歯周ポケット、眼または膣に挿入される時、かなりの液体流動性が存在する場合、これらの小粒子、微細球またはマイクロカプセルは、それらのサイズが小さく、かつ、不連続性であるので、保持されにくい。さらに、粒子は、凝集しやすく、かくして、それらの挙動は、予想することが難しい。また、これらのポリマーから製造され、かつ、体内に放出するための薬剤を含有する微細球またはマイクロカプセルは、大規模スケールで製造することが困難な場合もあり、それらの貯蔵および注入特性には問題が存在する。さらに、マイクロカプセルまたは小粒子システムの1つのその他の制約は、もっぱら手術によらなければそれらが可逆性を欠くことである。すなわち、それらが注入された後に合併症が存在する場合には、身体からそれらを取り出すことは、固体の移植片でよりもかなり困難である。微小粒子またはマイクリカプセルへの封入についてのなおさらなる制約は、蛋白質およびDNA基体の薬剤を封入することが難しく、溶剤および高温での分解が生ずる。
【0005】
前述のチャレンジに答えるべく、種々の薬剤供給システム技術が開発されている。例えば、U.S.特許No.4,938,763;および、その分割U.S.特許No.5,278,201は、動物用のシリンジに入れることができ、in situ形成することができる。生物分解性の移植片を生ずるのに使用される生物分解性のポリマーに関する。1つの実施態様にて、熱可塑性システムが使用され、非反応性のポリマーが生物学的相容性の溶剤に溶解されて、液体を形成し、これらは、動物に入れられ、溶剤は、散逸して、固形の移植片を生ずる。あるいは、熱硬化性のシステムが使用され、有効な量の液体アクリル末端生物分解性のプレポリマーおよび硬化剤が形成され、液体混合物が動物内に入れられ、そこで、プレポリマーが硬化して固形の移植片が形成される。システムは、動物に注入する前に有効なレベルの生物学的活性剤を液体に加えることによりシリンジに入れることが可能な固形の生物分解性供給システムを生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】U.S.特許No.5,019,400
【特許文献2】U.S.特許No.4,938,763
【特許文献3】U.S.特許No.5,278,201
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被検者に注入する時、益剤のための担体として利用することができ、その益剤の経時的持続放出を生ずることのできるゲル組成物が提供される。特に、組成物をチキソトロピー化して、被検者にできるかぎり不快感を与えることなく、ゲルの被検者への注入を促進する薬剤を含有するゲル組成物を記載する。
【0008】
U.S.特許No.5,242,910は、歯周病を治療するための持続的に放出される組成物を記載している。組成物は、ラクチドとグリコリドとのコポリマー;トリアセチン(溶剤/可塑剤として);および、口腔病の軽減を生ずる薬剤を含む。組成物は、ゲルの形を取ることができ、針またはカテーテルのいずれかを使用してシリンジにより歯周腔に挿入することができる。さらなる任意の成分として、組成物は、界面活性剤、芳香剤、粘度調節剤、錯形成剤、抗酸化物、その他のポリマー、ガム、ワックス/油および着色剤を含有することができる。実施例の1つに記載されている粘度調節剤の1つの例は、ポリエチレングリコール400である。U.S.特許Nos.5,620,700および5,556,905は、溶剤および/または可塑剤を使用する注入可能な移植片についてのポリマー組成物に関する。
【0009】
注入可能な移植片についての従来技術のポリマー組成物は、移植部位でのポリマーの迅速な凝固を促進し、かつ、移植片からの薬剤の拡散を促進するために水性体液に非常にまたは比較的溶解性である溶剤/可塑剤を使用していた。しかし、現在、移植片を体内に置き、水性体液にさらす時、水溶性ポリマー溶剤を使用する従来技術の高分子移植片に関するシリアスな問題は、ポリマー組成物への水の迅速な移動であることが観測されている。その特性は、ポリマー組成物からの初期迅速な益剤の放出によって現れる益剤の未制御放出を生ずることが多く、移植片から放出される益剤の“突発”に相当する。突発は、全てではないが、益剤の実質的な部分が非常に短時間、例えば、数時間から1〜2日で放出される結果を生ずることが多い。このような作用は、特に、持続した供給が所望される場合、すなわち、1週間より長く、1ヶ月以上にわたる益剤の供給の場合または狭い治療ウインドーおよび過剰の益剤の放出が治療を受ける被検者に悪い結果をもたらす場合、または、治療を受ける被検者の体内における益剤、例えば、ホルモン等の自然に生ずる毎日の分布を擬似することが必要とされる場合の状況において許容不能であるかもしれない。
【0010】
突発を制御し、益剤の供給を調節および安定化させる試みにて、従来技術では、水性環境への放出を遅らせるために、益剤の粒子を被覆していた。あるいは、種々の安定剤または放出調節剤、例えば、U.S.特許5,656,297;5,654,010;4,985,404および4,853,218に記載されている金属塩が使用されてきた。U.S.特許No.3,923,939は、移植前に、供給デバイスの外部表面およびデバイスの外部表面から伸びる全体の本体厚みの少なくとも5%の層を通して活性剤を取り出すことによって、供給デバイスからの活性剤の初期突発を低下させる方法を記載している。
【0011】
幾つかの成功にも拘わらず、これらの方法は、多くの例において、調節および安定化効果が金属イオンと益剤との錯体の形成の結果であるので、移植片によって有効に供給されるであろう大多数の益剤について完全に満足されるものではない。このような錯体が形成されない時、安定化/調節効果は、その移植部位への導入の際の益剤の望ましくない“突発”を予防するのに適当ではないかもしれない。
【0012】
U.S.特許No.6,130,200は、被検者に注入することのできる益剤のための粘性ゲル担体を記載している。粘性ゲルの使用は、注入可能なデポーシステムで遭遇することの多い益剤の初期突発を低下させる。この特許のある種の応用にて記載されているシステムの多くの長所にも拘わらず、ゲルの粘度は、ゲルをシリンジから分取するために必要とされる比較的高い注入力を生ずるほどの高さであってもよい。
【0013】
国際出願WO98/27962は、シリンジからゲルを噴出するために必要とされる注入力を低下させ、要求されるであろうよりもより小さな針の使用によって被検者に不快感を実質的に与えなくするように、剪断減粘性およびさらに許容可能なゲルの注入性を生ずるチキソトロピーゲル組成物の形成を記載している。そこに記載されているシステムは、多くの用途に対して適当なデポーシステムを生ずるものの、記載されているシステムは、比較的大量の乳化剤、例えば、組成物の合計重量の約1/3量を使用している。ある種のシステムにて、より少量のある種の化合物を乳酸基体のポリマー;および、そのポリマーにふさわしい溶剤を混合すると、形成されるゲルの流動性を改善し、エマルジョンを形成することなく、なお、使用する時に、被検者にいやな不快感を与えることのないゲージを有する針を介して容易に注入可能なチキソトロピー組成物を生ずることが発見された。また、ゲルにチキソトロピー特性を付与するこのようなより少量の薬剤の使用は、意図する治療効果について長時間にわたって益剤の必要とされる量の供給を枯渇することなくより小さなデポー体積および嵩を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様にて、本発明は、乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物を含む組成物を含む。低級アルカノールは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールであり、例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。好ましい化合物は、エタノールである。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。
【0015】
もう1つの態様にて、本発明は、ポリ乳酸ポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物を含む組成物を含む。低級アルカノールは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールであり、例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。好ましい化合物は、エタノールである。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。ポリ乳酸ポリマーは、重量平均分子量ほぼ1,000〜ほぼ120,000、好ましくは、ほぼ5,000〜ほぼ50,000、さらに好ましくは、ほぼ8,000〜ほぼ30,000を有するのがよい。
【0016】
なおもう1つの態様にて、本発明は、乳酸とグリコール酸とのコポリマーとして形成される乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物を含む組成物を含む。低級アルカノールは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールであり、例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。好ましい化合物は、エタノールである。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。本組成物は、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下のエタノール量を含むのがよい。コポリマーの重量平均分子量は、1,000〜ほぼ120,000、好ましくは、ほぼ5,000〜ほぼ50,000、さらに好ましくは、ほぼ8,000〜ほぼ30,000であるのがよい。
【0017】
もう1つの態様にて、本発明は、被検者の体表面下に上記した組成物を移植することを含む被検者に益剤を局所または全身投与する方法を含む。好ましくは、本システムは、被検者に移植後最初の24時間以内に粘性ゲル中に存在する益剤の40重量%以下を放出する。さらに好ましくは、移植後最初の24時間以内に30重量%以下の益剤が放出され、移植された組成物は、突発指数12以下、好ましくは、8以下を有する。
【0018】
もう1つの態様にて、本発明は、上記したような組成物およびそのような組成物の投与方法であり、その益剤が、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維素溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメント;およびこれらの種の精製され、単離された組み換え体および化学的に合成される異類から選択される組成物および方法に係る。好ましい実施態様にて、益剤は、ヒト成長ホルモン、メチオニン-ヒト成長ホルモン;デスフェニルアラニンヒト成長ホルモン、アルファー、ベータまたはガンマーインターフェロン、エリスロポイエチン、グルガコン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、因子VIII、因子IX、黄体ホルモン、リラキシン、卵胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム排泄増加性因子、フィルグラスチム表皮成長因子(EGFs)、血小板誘導成長因子(PDGFs)、インスリン様成長因子(IGFs)、線維芽成長因子(FGFs)、形質転換成長因子(TGFs)、インターロイキン(ILs)、コロニー刺激因子(CSFs、MCFs、GCSFs、GMCSFs)、インターフェロン(IFNs)、内皮成長因子(VEGF、EGFs)、エリスロ蛋白質(EPOs)、アンギオポイエチン(ANGs)、胎盤誘発成長因子(PIGFs)および低酸素誘発転写調節剤(HIFs)である。好ましくは、益剤は、ポリマー、溶剤および益剤合計量の0.1〜50重量%の量存在する。好ましい実施態様にて、益剤は、粘性ゲルに分散または溶解された粒子の形であり、益剤は、平均粒子サイズ0.1〜250μを有する粒子の形である。ある種の好ましい実施態様にて、益剤は、粒子がさらに安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される構成成分を含む粒子の形である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の前述およびその他の目的、特徴および有益性は、以下の図面に関する詳細な説明を読むと、さらに容易に理解されるであろう。図面にて:
【図1】図1は、従来技術の組成物(配合物1〜4)と比較した本発明の種々の組成物について粘度と剪断速度との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、従来技術の組成物(配合物5〜8)と比較した本発明の種々の組成物について粘度と剪断速度との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、20ゲージの注射針を使用するシリンジからの本発明の注入組成物(配合物1〜4)に必要とされる力とポリマー溶剤中のエタノールのパーセンテージとの間の関係を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、24ゲージの注射針を使用するシリンジからの本発明の注入組成物(配合物9〜16)に必要とされる力とポリマー溶剤中のエタノールのパーセンテージとの間の関係を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、24ゲージの注射針を使用するシリンジからの本発明の注入組成物(配合物9〜16)に必要とされる力とポリマー溶剤中のエタノールのパーセンテージとの間の関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物5〜8)から得られるヒト成長ホルモンのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物9〜16)から得られるヒト成長ホルモンのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物(配合物9〜16)から得られるヒト成長ホルモンのインビボ放出特性を示すグラフである。
【図7】図7は、ラットにて観測された配合物5〜8からのヒト成長ホルモン(“hGH”)の放出を特性付ける突発指数特性を示す。
【図8】図8は、ラットにて観測された配合物6および7とNeutropinRデポー配合物からのヒト成長ホルモン(“hGH”)の放出を特性付ける突発指数特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
概観および定義:
本発明は、被検者に注入される時、益剤用の担体として利用され、益剤の経時的持続放出を生ずることのできるゲル組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、組成物をチキソトロピー化して、被検者にできるかぎり不快感を与えることなく、ゲルの被検者への注入を促進する薬剤を含有する上記したようなゲル組成物に関する。
【0021】
本発明を記載し特許請求するのに、以下の術語は、以下に記載する定義に従い使用されるであろう。
【0022】
単数は“a”、“an”で表し、“the”は、特に明瞭に定義されない限り、複数の指示対象を含む。かくして、例えば、“溶剤(a solvent)”は、単数の溶剤および2つ以上の異なる溶剤の混合物を含み、“益剤(a beneficial agent)”とは、単数の益剤および2つ以上の異なる益剤の組み合わせを含み、“アルコール(an alcohol)”とは、単数のアルコールおよび2つ以上の異なるアルコールの混合物を含む等である。
【0023】
“益剤(beneficial agent)”という用語は、所望される有益性に影響を及ぼし、単独あるいはその他の薬学的賦形剤または不活性な成分との組み合わせにて、ヒトまたは動物に投与する際の薬理学的作用に影響を及ぼす薬剤を意味する。
【0024】
本明細書で使用する場合、“ポリヌクレオチド”という用語は、いずれかの鎖長を有するヌクレオチオド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの高分子形をいい、二重鎖および単鎖のDNAおよびRNAが挙げられる。当分野で公知のいずれのタイプの修飾、置換およびヌクレオチド間修飾も含まれる。
【0025】
本明細書で使用する場合、“組み換えポリヌクレオチド”という用語は、その起始または手技による、そのゲノム、cDNA、半合成または合成起源のポリヌクレオチドをいい:事実上、それの結合される全部または一部のポリヌクレオチドに関連するものではなく;事実上、それが結合されるもの以外のポリヌクレオチドをもいい;または、天然に存在しないものをもいう。
【0026】
本明細書で使用する場合、“ポリペプチド”という用語は、例えば、ペプチド類、オリゴペプチド類および蛋白質を含むアミノ酸類のポリマーおよびその誘導体、類縁体およびフラグメント;および、天然産および非天然産の当分野公知のその他の修飾体をいう。
【0027】
本明細書で使用する場合、“精製される”および“単離される”という用語は、ポリペプチドまたはヌクレオチド鎖をいう時、その他の同タイプの生物学的巨大分子が実質的に存在することなく、示した分子が存在することを意味する。本明細書で使用される“精製された”という用語は、同タイプの生物学的巨大分子の少なくとも75重量%、さらに好ましくは、少なくとも85重量%、なおさらに好ましくは、少なくとも95重量%、最も好ましくは、少なくとも98重量%が存在することを意味する。
【0028】
“AUC”という用語は、組成物の移植の時間対移植後の時間“t”によって測定した、被検者中の益剤の血漿濃度を時間に対してプロットすることによる被検者にてのインビボ検定より得られる曲線下の面積を意味する。時間tは、益剤の被検者に対する供給時間に対応する。
【0029】
“突発指数(burst index)”という用語は、益剤の全身供給を意図する個々の組成物に関して、(i)第1の時間(t1)における時間数で割った被検者への組成物の移植後の第1の時間について計算されるAUC÷(ii)供給時間(t2)の合計時間における時間数で割った益剤の供給時間について計算されるAUCで表される商を意味する。例えば、24時間での突発指数は、(i)時間数24で割った被検者への組成物の移植後の最初の24時間について計算されるAUC÷(ii)供給時間の合計時間の時間数で割った益剤の供給時間について計算されるAUCで表される商である。
【0030】
“溶解されるかまたは分散された”という語句は、ゲル組成物にて益剤の存在を達成するあらゆる手段を包含し、溶解、分散、懸濁等が挙げられる。
【0031】
“全身的”という用語は、益剤の被検者への供給または投与に関して、その益剤が被検者の血漿にて生物学的に有意なレベルで検知可能であることを意味する。
【0032】
“局所的”という用語は、益剤の被検者への供給または投与に関して、その益剤が被検者の局所部位に供給されるが、被検者の血漿にて生物学的に有意なレベルで検知可能ではないことを意味する。
【0033】
“ゲルビヒクル”という用語は、益剤が存在することなく、ポリマーと溶剤との混合物によって形成される組成物を意味する。
【0034】
“長時間”という用語は、本発明の移植片からの益剤の放出が、概して、約1週間以上、好ましくは、約30日以上にわたるであろう時間を意味する。
【0035】
“初期突発”という用語は、本発明の個々の組成物に関して、(i)移植後の予め決められた初期時間に組成物から放出される益剤の重量÷(ii)移植された組成物から供給されるはずである益剤の合計量によって得られる商を意味する。初期突発は、移植片の形状および表面積に依存して変化するかもしれないことを理解するべきである。したがって、本明細書にて記載する初期突発に関するパーセンテージおよび突発指数は、組成物の標準的なシリンジにより分取される形で試験される組成物に適用することを意図するものである。
【0036】
“溶解度調節剤”という用語は、益剤に関して、調節剤の不在における益剤の溶解度から、ポリマー溶剤または水に関して、益剤の溶解度を変化させるであろう薬剤を意味する。調節剤は、溶剤または水への益剤の溶解度を増加または低下させることができる。しかし、非常に水溶性の益剤の場合、溶解度調節剤は、概して、益剤の水に対する溶解度を低下させる調節剤であろう薬剤であろう。益剤溶解度調節剤の効果は、例えば、複合体の形成により、溶解度調節剤の溶剤との、または、益剤それ自体とのあるいはその両方との相互作用により生ずるかもしれない。そのためには、溶解度調節剤が益剤に“関する”時、生ずるかもしれないこのような全ての相互作用または形成を意図する。溶解度調節剤は、粘性ゲルとのその組み合わせ以前に、益剤と混合してもよく、あるいは、適宜、益剤の添加前に、粘性のゲルに加えてもよい。
【0037】
“被検者”および“患者”という用語は、本発明の組成物の投与に関し、動物またはヒトを意味する。
【0038】
“生物侵食性”という用語は、in situで、徐々に分解、溶解、加水分解および/または侵食される材料をいう。ここで、概して、“生物侵食性”ポリマーは、加水分解性であり、加水分解を通じて始めてin situで生物侵食性であるポリマーである。
【0039】
“チキソトロピー(thixotropic)”という用語は、機械的力、例えば、剪断力の負荷の際に、液化するかまたは少なくとも見掛け上の粘度の減少を示すことのできるゲル組成物をいうその慣用的な意味において使用される。本明細書で使用する“チキソトロピー剤”は、それが含有される組成物のチキソトロピーを増大させるものであり、剪断減粘性を増進させ、低い注入力の使用を可能とする。
【0040】
本発明のポリマー、溶剤およびその他の化合物は、“生物学的相容性”である必要があり;すなわち、それらは、使用環境にて、刺激、炎症または壊死を生じてはならない。使用環境は、流体環境であり、皮下もしくは筋肉内部またはヒトまたは動物の体腔が挙げられる。
【0041】
注入可能なデポー組成物:
前述したように、長期間にわたって益剤を供給するための注入可能なデポー配合物は、そのデポーを被検者に注入する前に粘性のゲルとして形成するのがよい。粘性のゲルは、益剤がデポーから経時的に放出されるように、分散された益剤を支持し、低い初期突発を有する等の益剤にふさわしい供給特性を付与する。
【0042】
典型的には、粘性のゲルは、デポーとして益剤-粘性ゲル組成物で予め満たした標準的な皮下注射シリンジから注入されるであろう。注入は、注入が皮膚を通して皮下組織内に起こる時、被検者の不快感を減らすように、最小サイズの針(すなわち、最小径)を使用して行うのが好ましいことが多い。16ゲージ以上、好ましくは、20ゲージ以上、さらに好ましくは、22ゲージ以上、なおさらに好ましくは、24ゲージ以上の範囲の針を通してゲルを注入することができることが望ましい。高粘度のゲル、すなわち、粘度約200ポアーズ以上を有するゲルでは、20〜30ゲージ範囲の針を有するシリンジからゲルを分取するための注入力は、手動でする時には、注入困難かまたは到底不可能である。同時に、高粘度のゲルは、注入後および分取の間デポーの一体性を維持することが望ましく、また、ゲル中の益剤の所望される懸濁特性を増進することが望ましい。
【0043】
チキソトロピーゲルは、剪断力に賦される時、低下された粘度を示す。低下の程度は、剪断力に賦される時、一部、ゲルの剪断速度の関数である。剪断力が取り除かれる時、チキソトロピーゲルの粘度は、それが剪断力に賦される前に示したとほぼ同等の粘度に回復する。したがって、チキソトロピーゲルは、シリンジから注入される時、剪断力に賦され、これにより、注入プロセス間に、その粘度が一時的に低下する。注入プロセスが完了する時、剪断力は、取り除かれ、ゲルは、その以前の状態に非常に近く回復する。
【0044】
ポリマー溶剤およびポリマーによって形成される粘性ゲルにチキソトロピー特性を付与する化合物が含まれていてもよいポリマーおよびポリマー溶剤の組成物は、上記した所望される特性を付与する。注入されるべきデポーの嵩および体積を不必要に増大させないほど十分に少ない量の化合物を使用することがさらに望ましい。これに関して、化合物、すなわち、低級アルカノール類、特に、エタノールがポリマー溶剤でないことが望ましい。以下、さらに十分に記載するように、乳酸基体のポリマーおよび適当なポリマー溶剤から粘性ゲルとして形成されるポリマーデポーに、少量の低級アルカノール類、特に、エタノールを加えると、本明細書で記載する発明の組成物にて前述の望ましい特性を生ずる。
【0045】
ポリマーは、ポリラクチド類、つまり、乳酸のみを基体とするか、または、乳酸とグリコール酸とを基体とするコポリマーであってもよく、乳酸基体のポリマーであり、これらは、本発明に従い達成することのできる有益な結果に実質的に悪影響を及ぼさないその他の少量のコモノマー類を含んでもよい。本明細書で使用する場合、“乳酸”という用語は、異性体L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸およびラクチドを含み、他方、“グリコール酸”という用語は、グリコリドを含む。前述のU.S.特許No.5,242,910に示されているように、ポリマーは、U.S.特許No.4,443,340の教示に従い製造することができる。これとは別に、乳酸-基体のポリマーは、U.S.特許No.5,310,865に記載されている技術に従い、乳酸からまたは(またはさらなるコモノマーの有無で)乳酸とグリコール酸との混合物から直接製造することもできる。これら特許の全てのコンテンツは、参考とすることによって組み込む。適した乳酸-基体のポリマーは、市販入手可能である。例えば、分子量8,000、10,000、30,000および100,000を有する50:50の乳酸:グリコール酸コポリマーは、以降に記載するように、Boehringer Ingelheim(Petersburg, VA)、Medisorb Technologies International L. P.(Cincinatti,OH)およびBirmingham Polymers, Inc.(Birmingham, AL)より入手可能である。
【0046】
ポリマーの例としては、ポリ(D,L-ラクチド)ResomerR(ここで、および以降において、上付きRは、登録商標を表す)L104、PLA-L104、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50ResomerRRG502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG502H、PLGA-502H、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG503、PLGA-503、ポリ(D,L-ラクチド−コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG506、PLGA-506、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50、ResomerRRG755、PLGA-755、ポリL-ラクチドMW2,000(ResomerRL206、L207、ResomerRL209、ResomerRL214);ポリD,Lラクチド(ResomerRR104、ResomerRR202、ResomerRR203、ResomerRR206、ResomerRR207、ResomerRR208);ポリL-ラクチド-コ-D,L-ラクチド90:10(ResomerRLR209);ポリグリコリド(ResomerRG205);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50(ResomerRRG504H、ResomerRRG504、ResomerRRG505);ポリD-L-ラクチド-コ-グリコリド75:25(ResomerRRG755、ResomerRRG756);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド(ResomerRRG858);ポリL-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート70:30(ResomerRLT706);ポリジオキサノン(ResomerRRGX210)(Boehringel Ingelheim Chemicals, Inc., Petersburg, VA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
さらなる例としては、D,L-ラクチド/グリコリド100:0(MEDISORBRPolymer 100DL High、MEDISORBRPolymer 100DL Low);DL-ラクチド/グリコリド85/15(MEDISORBR Polymer 8515 DL High、MEDISORBR Polymer 8515 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド75/25(MEDISORBRPolymer 7525 DL High、MEDISORBRPolymer 7525 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド65/35(MEDISORBR Polymer 6535 DL High、MEDISORBR Polymer 6535 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBRPolymer 5050 DL High、MEDISORBRPolymer 5050 DL Low);および、DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBR Polymer 5050 DL 2A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 3A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 4A(3))(Medisorb Technologies International L.P.,Cincinati,OH);ならびに、ポリD,L-ラクチド-コ50:50;ポリD,L-ラクチド-コ−グリコリド65:35;ポリD,L-ラクチド−コ-グリコリド75:25;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15;ポリD,L-ラクチド;ポリL-ラクチド;ポリグリコリド;ポリε-カプロラクトン;ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン25:75および、ポリ-DL-ラクチドコ-カプロラクトン75:25(Birmigham Polymers Inc., Birmingham, AL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
生物学的相容性5〜約90重量%、好ましくは、約10〜約85重量%、好ましくは、約15〜約80重量%、好ましくは、約20〜約75重量%、好ましくは、約30〜約70重量%、典型的には、約35〜約65重量%粘性ゲルであり、前記粘性ゲルは、生物学的相容性のポリマーと溶剤との合計量を占める。
【0049】
溶剤は、生物学的相容性である必要があり、放出前に、使用環境から溶解または分散されかつ単離される益剤粒子を維持することのできる粘性ゲルを形成するためにポリマーを溶解させるように選択される。適した溶剤としては、安息香酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル類、例えば、ベンジルベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート等;トリアセチン、n-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、グリセロールホルマール、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1-ドデシルアザシクロ-ヘプタン-2-オンならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましい溶剤は、安息香酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル類、特に、ベンジルベンゾエートおよびエチルベンゾエートである。さらなる溶剤は、U.S.特許No.6,130,200に記載されており、この特許は、参考とすることによって本明細書に組み込む。
【0050】
溶剤は、典型的には、粘性ゲル、すなわち、ポリマーと溶剤との合計量の、約95重量%〜約20重量%の量存在し、好ましくは、約80重量%〜約50重量%の量存在し、約65重量%〜約35重量%の量存在することが多い。ポリマーと溶剤とを混合することによって形成される粘性ゲルは、混合完了後約1〜2日でHaake Rheometerを使用して1秒当りの剪断速度および25℃で測定して、典型的には、粘度約100〜約200,000ポアーズ、好ましくは、約500〜約50,000ポアーズを示し、約1,000〜約50,000ポアーズであることが多い。ポリマーと溶剤との混合は、慣用的な低剪断装置、例えば、Rossダブルプラネタリーミキサーで、約1〜約2時間で達成される。
【0051】
ポリマーゲルにチキソトロピー特性を付与する化合物は、低級アルカノールから選択される。低級アルカノールは、2〜6個の炭素原子を含有し、直鎖または分岐鎖であるアルコールを意味する。このようなアルコールの例としては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。重要なことに、ポリマーゲルにチキソトロピー特性を付与するこのような化合物は、ポリマー溶剤ではない。(例えば、Development of an in situ forming biodegradable poly-lactide-co-glycolide system for controlled release of proteins, Lambert, W. J., and Peck, K.D., Journal of Controlled Release, 33(1995) 189-195参照。)
驚くべきことに、必要とされる極少量の化合物がポリマーとポリマー溶剤とのポリマー溶液に加えられ、ゲルがシリンジから分取される時、注入力にて所望される低下が達成される。したがって、ポリマー溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満の量の化合物で満足されることが見出された。化合物は、溶剤と化合物との合計重量の0.01〜15重量%、好ましくは、0.1〜5重量%の量存在すればよく、0.5〜5重量%の量であることが多い。
【0052】
益剤は、薬学的に許容可能な担体;および、本発明によって達成される有益な結果に実質的に悪影響を及ぼさないさらなる成分、例えば、抗酸化剤、安定剤、透過促進剤等と組み合わされてもよいいずれかの生理学的または薬理学的に活性な1つまたは複数の物質であってもよい。益剤は、ヒトまたは動物の体内に供給されることが公知であり、ポリマー溶解溶剤よりもむしろより容易に水に溶解性のいずれの化合物であってもよい。これらの薬剤としては、薬剤(drug agent)、医薬品類、ビタミン類、栄養剤等が挙げられる。本記載に合致する薬剤のタイプのうちには、栄養剤、ビタミン類、フード補給剤、不妊剤、受精抑制剤および受精促進剤が含まれる。
【0053】
本発明により供給することのできる薬剤としては、末梢神経、アドリナリン作働受容体、コリン作働受容体、骨格筋、心臓血管システム、平滑筋、血液循環系、シノップ部位(synoptic sites)、神経作用関節部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、再生系、骨格系、局所ホルモン系、食餌および排出系、ヒスタミン系および中枢神経系に作用する薬剤が挙げられる。適した薬剤は、例えば、薬、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、多糖類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤類、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症コルチコステロイド類を含め抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗凝血剤、線維素剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質、類縁体(例えば、合成および置換された類縁体)、誘導体(例えば、その他の巨大分子との攻撃共役体/融合体および当分野公知の手段によって無関係な化学的部位との共有結合共役体を含め)フラグメント;および、精製単離された組み換え体;ならびに、これら種の化学的に合成された異類から選択することができる。
【0054】
本発明の組成物によって供給することのできる薬剤の例としては、プロカイン、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、コカイン、コカイン塩酸塩、クロロプロカイン、クロロプロカイン塩酸塩、プロパラカイン、プロパラカイン塩酸塩、ピペロカイン、ピペロカイン塩酸塩、ヘキシルカイン、ヘキシルカイン塩酸塩、ナエパイン、ナエパイン塩酸塩、ベンゾキシネート、ベンゾキシネート塩酸塩、シクロメチルカイン、シクロメチルカイン塩酸塩、シクロメチルカイン硫酸塩、リドカイン、リドカイン塩酸塩、ブプビカイン、ブプビカイン塩酸塩、メピビカイン、メピビカイン塩酸塩、プリロカイン、プリロカイン塩酸塩、ジブカインおよびジブカイン塩酸塩、エチドカイン、ベンゾカイン、プロポキシカイン、ジクロニン、プラモキシン、オキシブプロカイン、プロクロルペルジンエディシレート、硫酸第1鉄、アミノカプロン酸、メカミラミン塩酸塩、プロカインアミド塩酸塩、アンフェタミン硫酸塩、メタムフェタミン塩酸塩、ベンザムフェタミン塩酸塩、イソプロテレノール硫酸塩、フェンメテトラジン塩酸塩、ベタネコールクロライド、メタコリンクロライド、ピロカルピン塩酸塩、アトロピン硫酸塩、スコポラミンブロマイド、イソプロパミドヨーダイド、トリジヘキセチルクロライド、フェンフォルミン塩酸塩、メチルフェニデート塩酸塩、テオフィリンコリネート、セファレキシン塩酸塩、ジフェニドール、メクリジン塩酸塩、プロクロルペラジンマレエート、フェノキシベンズアミン、チエチルペルジンマレエート、アニシンドン、ジフェナジオンエリスリチルテトラナイトレート、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド、トラズアミド、クロルマジノンアセテート、フェナグリコドール、アロプリノール、アルミニウムアスピリン、メトトレキセート、アセチルスルフイソオキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチコステロンアセテート、コルチゾンアセテート、デキサメタゾンおよびその誘導体、例えば、ベータメタゾン;トリアムシノロン、メチルテストステロン、17-S-エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3-メチルエーテル、プレドニソロン、17α-ヒドロキシプロゲステロンアセテート、19-nor-プロゲステロン、ノルゲストレル、ノレチンドロン、ノレチステロン、ノレチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、イソソルバイドジナイトレート、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドーパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、カルシウムグルコナート、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第1鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、クアンベンツ、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック、フルフェナミック、ジフイナール、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノールプリル、エナラプリル、エナラプリレート、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルフェート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリンおよびイミプラミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる例は、蛋白質およびペプチドであり、これらとしては、骨形成蛋白質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、上皮小体および脳下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロフィン、甲状腺刺激ホルモン、小脳刺激ホルモン、毛膜性腺刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレッシン、パンクレオザイミン、黄体ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ロイプロライド(leuprolide)、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファー-2a、インターフェロンアルファー2bおよびコンセンサスインターフェロン;インターロイキン、成長因子、例えば、上皮成長因子(EGF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF-α)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、エリスロポイエチン(EPO)、インスリン様成長因子-I(IGI-I)、インスリン様成長因子-II(IGF-II)、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-8、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、腫瘍壊死因子-β(TNF-β)、インターフェロン-α(INF-α)、インターフェロン-β(INF-β)、インターフェロン-γ(INF-γ)、インターフェロン-ω(INF-ω)、コロニー刺激因子(CGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、トロンボポエチン(TPO)、卵巣細胞誘導因子(SDF)、胎盤成長因子(PIGF)、肝細胞成長因子(HGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、グリア誘導ノイロトロピン因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、毛様体神経親和性因子(CNTF)、骨形成蛋白質(BMP)、凝血因子、ヒト膵臓ホルモン放出因子;および、これら化合物の類縁体および誘導体;ならびに、これら化合物の薬学的に許容可能な塩類;または、それらの類縁体もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
ある種の好ましい実施態様にて、益剤としては、老化成長因子;増殖成長因子;刺激成長因子;形質転換ペプチド成長因子、例えば、遺伝子;前駆体;形質転換後の変種;代謝物;結合蛋白質;受容体;以下の成長因子属の受容体アゴニストおよびアンタゴニスト:表皮成長因子(EGFs)、血小板誘導成長因子(PDGFs)、インスリン様成長因子(IGFs)、線維芽成長因子(FGFs)、形質転換成長因子(TGFs)、インターロイキン(ILs)、コロニー刺激因子(CSFs、MCFs、GCSFs、GMCSFs)、インターフェロン(IFNs)、内皮成長因子(VEGF、EGFs)、エリスロ蛋白質(EPOs)、血管形成蛋白質(ANGs)、胎盤誘導成長因子(PIGFs)および低酸素誘発転写調節剤(HIFs)が挙げられる。
【0056】
上記しなかったほどに、前述のU.S.特許No.5,242,910に記載されている益剤もまた使用することができる。本発明の1つの特別な有益性は、物質、例えば、蛋白質の例として、酵素リソチームおよびcDNA;および、ウイルスおよび非ウイルスのベクターに組み込まれたDNAが挙げられるが、これらは、微細球に微細封入または加工することが難しく、その他の加工技術に存在するほどの分解レベルを伴わずに本発明の組成物に組み込むことができることである。
【0057】
益剤は、好ましくは、典型的には、平均粒子サイズ約0.1〜約250ミクロン、好ましくは、約1〜約200ミクロン、多くは、30〜125ミクロンを有する粒子の形でポリマーと溶剤とから形成される粘性ゲルに組み込まれる。
【0058】
ポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲル中の益剤の粒子の懸濁液を形成するためには、いずれの慣用的な低剪断デバイスも使用することができ、例えば、周囲条件でRossダブルプラネタリーミキサーを使用することができる。このように、益剤の有効な分布は、実質的に、益剤を分解することなく達成することができる。
【0059】
益剤は、典型的には、組成物中に、ポリマー、溶剤および益剤の合計量の約0.1%〜約50重量%、好ましくは、約1%〜約40重量%、さらに好ましくは、約2%〜約30重量%、多くは、2〜20重量%の量溶解または分散される。組成物中に存在する益剤の量に応じて、種々の放出特性を達成することができる。さらに詳しくは、所定のポリマーおよび溶剤について、これら成分の量および益剤の量を調節することによって、組成物から益剤の拡散よりもポリマーの分解により依存する放出特性を達成することができるし、その逆もできる。この点で、より低い益剤負荷速度で、概して、放出速度が経時的に増大するポリマーの分解を反映する放出特性を達成することができる。より高い負荷速度では、概して、放出速度が経時的に減少する益剤の拡散によって生ずる放出特性を達成することができる。中間の負荷速度では、所望される場合、実質的に一定の放出速度が達成されうるように、合わさった放出特性を達成することができる。個々の放出速度は、個々の状況、例えば、投与される益剤に依存し、約0.1マイクログラム/日〜約30ミリグラム/日のオーダー、好ましくは、約1マイクログラム/日〜約20ミリグラム/日、さらに好ましくは、約10マイクログラム/日〜約10ミリグラム/日のオーダーの放出速度、約24時間〜約180日、好ましくは、24時間〜約120日、さらに好ましくは、24時間〜約90日、多くは、3日〜約90日の期間を達成することができる。
【0060】
慣用的に任意の成分、例えば、吸湿剤、安定剤およびその他の成分が所望される限り、それらは、本発明に従い、達成しうる有益な結果に実質的に悪影響を及ぼさない量使用される。その他の成分は、それらが所望され、組成物に有用な特性を付与する限り、ゲル組成物中に存在してもよく、例えば、ポリエチレングリコール、吸湿剤、安定剤(例えば、tween20、tween80等の界面活性剤;糖、例えば、シュクロース、トレホロース等、塩類、抗酸化剤);気孔形成剤;増量剤(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリシン等);キレート剤(例えば、2価金属イオン類、具体的には、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、銅等);緩衝剤(例えば、ホスフェート、アセタン、スクシネート、ヒスチジン、TRIS等)およびその他が挙げられる。組成物が水性環境で溶解性または不安定性であるペプチドまたは蛋白質を含む時、例えば、安定剤であるのがよい溶解度調節剤を組成物中に含むことが非常に望ましいかもしれない。種々の調節剤は、U.S.特許Nos.5,654,010および5,656,297に記載されており、その開示は、本明細書で参考とすることによって組み込む。hGHの場合、例えば、2価金属、好ましくは、亜鉛の塩量を含むことが好ましい。このような調節剤および安定剤の例は、益剤と錯形成または会合してもよく、安定化または調節放出効果を生じ、例えば、金属カチオン、好ましくは、2価であり、組成物中に、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、その他の酸中和剤等として存在するのがよい。使用されるこのような薬剤の量は、いずれの場合にも、形成される錯体の性質;または、益剤と化合物との間の会合の性質に依存するであろう。溶解度調節剤または安定剤対益剤のモル比約100:1〜1:1、好ましくは、10:1〜1:1が、典型的には使用することができる。
【0061】
気孔形成剤としては、体液と接触した時、溶解、分散または分解してポリマーマトリックスに気孔または溝を生ずる生物学的相容性の材料が挙げられる。典型的には、水溶性である有機および非有機材料、例えば、糖(例えば、シュクロース、デキストロース)、水溶性塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウムおよび炭酸ナトリウム)、水溶性の溶剤、例えば、N-メチル-2-ピロリドンおよびポリエチレングリコール;および、水溶性のポリマー類(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル-セルロース等)が、気孔形成剤として使用するのに便利である。このような材料は、ポリマーの重量の約0.1%〜約100%の可変量存在してもよいが、典型的には、ポリマーの重量の50%未満、さらに典型的には、ポリマーの重量の10〜20%未満であるのがよいであろう。
【0062】
本発明の化合物は、組成物の成分濃度の単なる低下によって粘性を減ずる単なる希釈剤またはポリマー溶剤を構成しない。慣用的な希釈剤の使用は、粘度を低下させるが、希釈された組成物を注入する時、先に記載した突発効果をも生ずる。対照的に、本発明の注入可能なデポー組成物は、一度注入しても、その化合物が本来の系の放出特性にほとんど影響を及ぼさないように化合物を選択することによって、突発効果を回避するように配合することができる。好ましくは、本システムは、被検者に移植後最初の24時間以内に粘性ゲル中に存在する益剤の40重量%以下を放出する。さらに好ましくは、益剤の30重量%以下が移植後最初の24時間以内に放出され、移植された組成物は、突発指数12以下、好ましくは、8以下を有する。
【0063】
本発明の種々の態様のさらなる理解は、以下の実施例に従う図面に記載の結果により達成されるであろう。
【実施例】
【0064】
実施例 1
組成物の注入可能なデポーに使用されるゲルビヒクルは、以下のように調製した。ガラス容器をMettler PJ3000上でトップローダー平衡で風袋を測定した。50:50ResomerRRG502(PLGA RG502)、50:50 ResomerRRG504(PLGA RG504)または固有粘度0.15(PLGA-BPI,Birmingham Polymer Inc.,Birmingham,AL)を有する50:50DL-PLGとして入手可能なポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を粉砕し、425ミクロンより下の篩にかけた。ポリマーをガラス容器内に秤量した。ポリマーを含有するガラス容器の風袋を秤量し、対応する溶剤を加えた。種々のポリマー/溶剤組み合わせに対してパーセンテージとして表される量を以降の表1に記載する。ポリマー/溶剤混合物を250±50rpm(IKA電気攪拌機,IKH−WerkeGmbH&Co. Stanfen、Germany)で約5〜10分間攪拌し、ポリマー粒子を含有する粘着性のペースト様物質を生成した。ポリマー/溶剤混合物を入れた容器をシールし、37℃に平衡させた温度制御インキュベータに1〜4日間入れ、溶剤およびポリマータイプおよび溶剤とポリマーとの比に応じて断続的に攪拌した。ポリマー/溶剤混合物は、それが清澄な琥珀色の均質なゲルの概観を有する時、インキュベータから取り出した。その後、混合物を(65℃)のオーブン内に30分間置いた。PLGA-504は、オーブンから取出す際に混合物に溶解していた。
【0065】
さらなるデポーゲルビヒクルは、以下の溶剤または混合物で調製した:ベンジルベンゾエート(“BB”)、エタノールおよびプロピレングリコール(“PG”)ならびに以下のポリマー類。ポリ(D,L-ラクチド)ResomerRL104、PLA-L104、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50 ResomerRRG502H、PLGA-502H、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50 ResomerRRG503、PLGA-503、ポリL-ラクチドMW2,000(ResomerRL206、ResomerRL207、ResomerRL209、ResomerRL214);ポリD,L-ラクチド(ResomerRR104、ResomerRR202、ResomerRR203、ResomerRR206、ResomerRR207、ResomerRR208);ポリL-ラクチド-コ-D,L-ラクチド90:10 (ResomerRLR209);ポリDL-ラクチド-コ-グリコリド75:25(ResomerRRG752、ResomerRRG755、ResomerRRG756);ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15(ResomerRRG858);ポリL-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート70:30(ResomerRLT706);ポリジオキサノン(ResomerRX2109)(Boehringer Ingelheim Chemicals, Inc.,Peterburg,VA);D,L-ラクチド/グリコリド100:0(MEDISORBRPolymer 100 DL High,MEDISORBR Polymer 100 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド85/15(MEDISORBR Polymer 8515 DL High、MEDISORBR Polymer 8515 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド75/25(MEDISORBR Polymer 7525 DL High、MEDISORBR Polymer 7525 DL Low);DL-ラクチド/グリコリド65/35(MEDISORBR Polymer 6535 DL High、MEDISORBR Polymer 6535DL Low);DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORBR Polymer 5050 DL 2A(3)、MEDISORBR Polymer 5050 DL 3A(3);MEDISORBR Polymer 5050 DL 4A(3));(Medisorb Technologies International L.P.,Cincinati, OH)およびポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド65:35;ポリD,Lラクチド-コ-グリコリド75:25;ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15ポリDL-ラクチド;ポリL-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン25:75;および、ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン75:25(Birmingham Pollymers,Inc.,Birmingham, AL)。典型的なポリマー分子量は、14,400〜39,700(Mw)〔6,400〜12,200(Mn)〕の範囲であった。代表的なゲルビヒクルは、以下の表1に記載する。
【表1】

【0066】
実施例 2
hGH粒子調製
ヒト成長ホルモン(hGH)粒子(酢酸亜鉛を含有してもよい)を以下のように調製した:Concentration/Dialysis Selectorジアフィルターリング装置を使用し、hGH溶液(5mg/ml)の水溶液(BresaGen Corporation, Adelaide, Australia)を10mg/mLまで濃縮した。ジアフィルターリングしたhGH溶液を5倍体積のトリスまたはホスフェート緩衝溶液(pH7.6)で洗浄した。ついで、慣用的な技術を使用し、噴霧乾燥または凍結乾燥によりhGHの粒子を形成した。hGH(5mg/mL)(および酢酸亜鉛の任意の種々のレベル(0〜30mM))を含有するホスフェート緩衝溶液を、以下のパラメータに設定してYamato Mini Spray dryerを使用して噴霧乾燥した:
【表2】

【0067】
以下の凍結および乾燥サイクリルに従いDurastop μP Lyophilizerを使用し、hGH(5mg/mL)を含有するトリス緩衝溶液(5または50mM:pH7.6)から凍結乾燥させた粒子を調製した:
【表3】

【0068】
実施例 3
HGH-ステアリン酸粒子調製
以下のようにして、ヒト成長ホルモン(hFH)粒子を調製した:凍結乾燥させたhGH(3.22グラム、Pharmacia-Upjohn, Stockholm, Sweden)およびステアリン酸(3.22グラム、95%純度、Sigma-Aldrich Corporation, St. Lois,MO)をブレンドし、粉砕した。10,000ポンドの力で5分間、粉砕した材料を13mm丸形ダイで圧縮した。圧縮した錠剤を粉砕し、70メッシュスクリーンで篩にかけ、続いて、400メッシュスクリーンで篩にかけ、サイズ範囲38〜212ミクロンを有する粒子を得た。
【0069】
実施例 4
薬剤負荷
上記のようにして調製した益剤/ステアリン酸を含む圧縮した粒子をゲルビヒクルに10〜20重量%の量加え、乾燥粉末が完全に湿潤するまで手動でブレンドした。ついで、スクエアーチップ金属スパチュラを備えたCaframo機械的攪拌機を使用して慣用的に混合することにより明るい乳黄色の粒子/ゲル混合物を完全にブレンドした。生ずる配合物(6から2)を以下の表2に示す。最終的に均質なゲル配合物を貯蔵または分取するために3、10または30ccの使い捨てシリンジに移した。
【表4】

【0070】
典型的な数の移植可能なゲルを前述の方法に従い調製し、時間の関数として益剤のインビトロ放出について試験し、また、時間の関数として益剤の血清濃度により測定される益剤の放出を測定するためにラットにてインビボ研究した。
【0071】
実施例 5
レオロジー挙動を上記のようにして調製した種々の溶剤と配合したデポービヒクルおよびデポー配合物について試験した。配合物1〜4は、種々の剪断速度下で粘度について試験し、粘度は、Bohlin CVOレオメータ(Bohlis Instruments Limited,Gloucestershire,UK)を使用して37℃で測定した。図1は、ゲル配合物1〜4の粘度を示す。図2は、ゲル配合物5〜8の粘度を示す。低剪断速度での粘度は、配合物への最小の応力でのゲル配合物の厚みを現す。図1および2に示したように、配合物中のエタノールの量が増大すると、粘度を低下させ、剪断減粘性を増大する。
【0072】
実施例 6
デポービヒクルおよびデポー配合物を分取するのに必要とされる注入力を、それぞれ、配合物1〜4および5〜12について評価した。配合物をHamilton 500μlGastightRシリンジ(Hamilton,Reno,NV)に負荷した。図3は、20ゲージの注射針を使用してシリンジから配合物1〜4を注射するのに要求される力間の関係を示すグラフである。図3に示したように、デポービヒクロ配合物の注入力は、組成物中のエタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0%〜15%まで上昇すると、有意に低下した。図4A&4Bは、24ゲージの注射針を使用して室温で1ml/分でシリンジから配合物9〜16を注射するのに要求される力間の関係を示す。注目に値することに、剪断減粘性挙動により、チキソトロピー剤としてエタノールを使用する配合物は、低い剪断速度で、ベンジルベンゾエートを使用する配合物以上の粘度を維持しつつ、有意な注入力の低下を示し;かくして、動物に注入後のデポーが変性されないままであった。
【0073】
実施例 7
hGHインビボ研究
本発明の移植システムによるhGHの全身投与の際のhGHの血清レベルを測定するためにラットにおけるインビボ研究を行ない、その実験記録を以下に公表する。デポーゲルhGH配合物を特注の0.5cc使い捨てシリンジに負荷した。使い捨ての18ゲージ1“注射針をシリンジに取り付け、循環浴を使用して37℃に加熱した。デポーゲルhGH配合物を免疫抑制したラットに注射し、特定の時間間隔で血液を抜き取った。血清試料は、全て、分析前に4℃で貯蔵した。放射免疫検定法(RIA)を使用し、変性しなかったhGHについて試料を分析した。研究の終わりに、ラットは、肉眼臨床観測のために殺し、変性しなかったことを観測するためにデポーを取り出した。
【0074】
図5、6Aおよび6Bは、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物からラットにて得られるヒト成長ホルモン(“hGH”)の典型的なインビボ放出特性を示す。エタノールを含むデポー配合物のインビボ放出特性は、(エタノールを含まない)対照配合物に匹敵する。かくして、本発明のデポー配合物は、益剤のインビボ放出特性に関わりなく有意に注入力を低下させる。
【0075】
研究の終わりに(すなわち、28日目に)、デポーをラットから取り出した。概して、動物に各々注射されたデポーに相当する一片の無変性の丸形デポーが回収された。
【0076】
図7および8は、本発明の配合物を含め、種々のデポー配合物からラットにて得られるヒト成長ホルモン(“hGH”)の放出を提示する突発指数を示す。本発明のデポー配合物は、益剤のインビボ放出特性に関わりなく、有意に注入力を低下させる。
【0077】
本発明の種々の態様に従えば、1つ以上の顕著な有益性が達成されうる。さらに詳しくは、単一加工工程を使用して、標準的な針を通して低い分取力を使用し、手術することなく、動物の部位に注入することのできるデポーゲル組成物を得ることができる。部位に一度配置すると、組成物は、急速にその本来の粘度を回復し、突発効果を実質的に回避するような迅速な硬化を示し、所望される益剤放出特性を生ずることができるであろう。さらに、益剤が、一度、十分に投与されると、それが十分に生物分解性であるので、組成物を取り出す必要がない。なおさらに有益なことに、本発明は、ペプチドおよび核酸基体の薬剤のようなある種の益剤を分解することができ、微細粒子およびマイクロカプセルを使用環境から取り出すことが難しいかもしれない微細粒子または微細封入技術の使用を回避する。粘性のゲルが水、高温またはその他の溶剤を必要としなくとも形成されるので、益剤の懸濁された粒子は、乾燥したままであり、このことは、それらの本来の構成にて、その安定性に寄与する。さらに、塊が形成されるので、注入可能なデポーゲル組成物は、所望される場合、使用環境から回収することができる。
【0078】
本発明は、単独または1つ以上の相互の組み合わせのいずれかにて、以下の特徴および特性を含む。
乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;および、ポリマー溶液と混合されてチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物を含み、前記化合物が、本質的に低級アルカノール類からなる群より選択され、前記量が、溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である組成物;化合物がエタノールであるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下であるその組成物。
【0079】
ポリ乳酸ポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;および、ポリマー溶液と混合されてチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物を含み、前記化合物が、本質的に低級アルカノール類からなる群より選択され、前記量が、溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である組成物;化合物がエタノールであるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下であるその組成物;ポリ乳酸ポリマーの重量平均分子量が、約1,000〜約120,000;好ましくは、約5,000〜約50,000;さらに好ましくは、約8,000〜約30,000であるその組成物。
【0080】
乳酸とグリコール酸とのコポリマーとして形成される乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;および、ポリマー溶液と混合されてチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物を含み、前記化合物が、本質的に低級アルカノール類からなる群より選択され、前記量が、溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である組成物;化合物がエタノールであるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下であるその組成物;エタノールの量が溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下であるその組成物;コポリマーの重量平均分子量が、約1,000〜約120,000;好ましくは、約5,000〜約50,000;さらに好ましくは、約8,000〜約30,000であるその組成物。
【0081】
上記例として示した実施態様は、本発明を限定するというよりも、あらゆる点で、本発明を例示するものである。かくして、本発明は、当業者であれば、本明細書に含まれる記載から誘導することのできる詳細な実施にて多くの変更が可能である。このような変更および変形は、全て、本発明の範囲および精神に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物;および、益剤を含む組成物。
【請求項2】
化合物が、エタノールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
ポリ乳酸ポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物;および、益剤を含む組成物。
【請求項7】
化合物が、エタノールである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
重量平均分子量が、約1,000〜約120,000の範囲である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
乳酸とグリコール酸とのコポリマーとして形成される乳酸基体のポリマー;前記ポリマーとポリマー溶液を形成する溶剤;前記ポリマー溶液と混合されチキソトロピー組成物を形成するのに有効な量の化合物であり、前記化合物が本質的に低級アルカノールからなる群より選択され、前記量が溶剤と化合物との合計重量の15重量%未満である化合物;および、益剤を含む組成物。
【請求項13】
化合物が、エタノールである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.01重量%以上〜15重量%以下である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.1重量%以上〜5重量%以下である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
エタノールの量が、溶剤と化合物との合計重量の0.5重量%以上〜5重量%以下である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
コポリマーの重量平均分子量が、約1,000〜約120,000の範囲である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
益剤が、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維素溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメントから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
益剤が、ポリマー、溶剤および益剤の合計重量の0.1〜50重量%の量存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
益剤が、粘性ゲルに分散または溶解された粒子の形である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
益剤が、粒子の形であり、その粒子が、さらに、安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される構成成分を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
益剤が、薬剤、蛋白質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核蛋白質類、ポリサッカライド類、グリコ蛋白質類、リポ蛋白質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗凝血剤、線維素溶解剤、成長因子、抗体、眼薬および代謝物質;ならびに、それらの類縁体、誘導体およびフラグメントから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
益剤が、ポリマー、溶剤および益剤の合計重量の0.1〜50重量%の量存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
益剤が、粘性のゲルに分散されるかまたは溶解された粒子の形である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
益剤が、粒子の形であり、その粒子が、さらに、安定剤、増量剤、キレート剤および緩衝剤からなる群より選択される構成成分を含む、請求項24に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−265277(P2010−265277A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142427(P2010−142427)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2003−543572(P2003−543572)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(508027589)デュレクト コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】