説明

注出キャップ付きブロー成形壜体

【課題】 本発明は、合成樹脂製ブロー成形壜体であるデラミボトルに弁付き注出キャップを組付けものにおいて、内容液の注出に伴う底部近傍での内層の萎み変形が、外力によることなくスムーズにかつ十分に進行可能に構成された壜体の、適正に内容液を注出することを技術的課題とするものである。
【解決手段】 筒状の胴部の上端から肩部を介して口筒部を起立設し、外殻を形成する外層と、外層に剥離自在に積層し、萎み変形可能に内袋体を形成する内層とから構成される壜体に注出キャップを組付けたもので、壜体を、胴部から底部にかけての形状を平断面形状が前後方向に扁平化した扁平筒状とし、底部の形状を、下方に向けて、前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出する形状とし、注出キャップを、外気の侵入を許さない弁機能を有するものとした、と云うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻を形成する外層と、この外層に剥離自在に積層し、萎み変形可能に内袋体を形成する内層とから成る合成樹脂製ブロー成形壜体、所謂、デラミボトルに関するもので、さらに詳言すれば、壜体の口筒部に弁機能付きの注出キャップを組付けた壜体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デラミボトルの口筒部に注出キャップを配設したスクイズタイプの注出容器についての記載がある。図5、6はこの種の注出容器の一例を示すもので、図5(a)は半縦断側面図、図5(b)は底部近傍の斜視図、図6は図5中のC−C線に沿った平断面図であり、壜体101(デラミボトル)の口筒部102に逆止弁を備えた注出キャップ31を配設したものである。
【0003】
この壜体101は口筒部102、肩部103、胴部104、底部105を有し、外殻を形成する外層111と、この外層に剥離自在に積層し、萎み変形可能に内袋体112aを形成する内層112から構成されている。また、図6に見られるように胴部104は円筒状である。
【0004】
この注出容器はクリーム状の化粧料等の比較的粘度の高い内容液の注出に使用するもので、容器本体を手でスクイズ状に押圧して内容液を注出すると、吸気孔121から外層111と内層112の間に外部の空気が導入され、内層112は変形したままの形状を保持しつつ、外層111がその復元力により元の形状に復帰するようにしたもので、内容液をほぼ全量使い切ることができると共に、逆止弁の作用効果も相俟って内袋体112a中に外部から空気が侵入しないように構成し、内容液の品質の低下を抑制することができる。
【0005】
そして、図6中には使用途中における内層112の萎み変形の状態を例示している。このように一部で内層112が反転変形を伴いながら萎み変形し、相対抗して位置する内層112が部分的に密着状に合わさり、その他の部分で内容液Lの流路が確保されている。
【0006】
そして、内容液をほぼ使い切る段階では、内層112の萎み変形がさらに進行し、大部分で内層112が密着状に合わさり流路が閉塞した状態となる。ここで、この種のデラミボトルでは上記のような内層112の萎み変形の態様を制御して、内容液の流動通路を最後まで確保して注出操作がスムーズ達成できるようにすると共に、内容液をほぼ最後まで使い切れるようにすることが重要な技術要素の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−72864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者らは、上記したようなデラミボトルに注出キャップを組み合せた注出容器が、内袋体中への外部からの空気の侵入を阻止して内容液の品質の低下を抑制することができると云う特徴を有することを利用し、この種の注出容器を比較的低粘度の液体を主成分とした内容物、特に食品調味料等の鮮度を要求される用途に使用展開しようとしている。
【0009】
内容液の粘度が比較的低い場合には、クリーム等の比較的粘度の高い内容液の場合とは異なり、特に胴部をスクイズすることなく注出容器を正立姿勢から傾斜姿勢、あるいは倒立姿勢にすることにより内容液の自重で、自然落下により注出させる、と云うような従来この種の注出容器ではなかった新しい態様で使用することができる。
【0010】
一方で上記のような新しい使用態様で、内容液の注出をスムーズに、かつ内容液がほぼ最後まで使い切れるようにするためには、内容液の注出に伴って、スクイズ等の外力によることなく、自然に、底部から胴部を経て肩部に向けて順次、スムーズに、図6に示したような内層の萎み変形が進行して行く必要がある。
【0011】
しかし、図5、6に示したような従来の壜体101(デラミボトル)をそのまま上記した新しい態様で使用すると、底部105近傍での内層112の萎み変形の進行がスムーズに、また十分に進行せず、胴部104下端部近傍で内層112の萎み変形が先に進行して流路が塞がれてしまい、内容液が使いきれずに残留してしまうと云う問題がある。
【0012】
そこで本発明は、合成樹脂製ブロー成形壜体であるデラミボトルにおいて、内容液の注出に伴う底部近傍での内層の萎み変形が外力を作用させなくともスムーズにかつ十分に進行可能に壜体形状を構成し、この壜体に内容液を好適に注出ことのできる注出キャップを組み付けた壜体を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
筒状の胴部の上端から肩部を介して口筒部を起立設し、外殻を形成する外層と、この外層に剥離自在に積層し、萎み変形可能に内袋体を形成する内層とから構成される合成樹脂製ブロー成形壜体を有すること、
外層の所定位置に、外層と内層との層間に外部空気を導入するための吸気孔を開設すること、
胴部から底部にかけての形状を平断面形状が前後方向に扁平化した扁平筒状とし、底部の形状を、下方に向けて、前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出する形状とすること、
壜体の口筒部に着脱可能に組付いて、内容液の吐出口を形成する注出キャップを有すること、
注出キャップに、外気が前記内層内に侵入するのを阻止する弁機能を設けたこと、
にある。
【0014】
なお、上記構成では、壜体の方向を規定するために平断面形状が扁平化している方向を便宜上前後方向としている。
【0015】
本願発明者らは、図5、6で示した従来の壜体101の底部105における内層112の萎み変形の挙動を検討するなかで、底部105が、単純な筒状の胴部104とは異なり、図5(b)に示されるように側周壁105pと底面壁105bから有底筒状に形成されていること、すなわち、ブロー成形品のため比較的厚肉で、側周壁105pに対して略垂直に形成される底面壁105bが障害となって、萎み変形において内層112の反転変形がスムーズに進展しないことが、底部105において萎み変形がスムーズにまた十分に進行しない主たる要因であることを見出し、この検討結果に基づき、上記壜体の構成を創出するに至った。
【0016】
上記構成の壜体(デラミボトル)に、弁機能付きの注出キャップを組付けると、まず胴部から底部にかけての形状を、平断面形状が前後方向に扁平化した扁平筒状とすることにより、内層の萎み変形を壜体の前後方向にさらに扁平化する変形態様に大まかに制御することができる。すなわち、平断面形状でみると、当初、楕円状、長円状等に形成されている内層が、内容液の注出に伴い前後方向に反転変形を伴いながらさらに扁平化し、最終的には前後方向に二重に積層したような状態となる。
【0017】
さらに、底部の形状を下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出した形状とすることにより、従来では前述したように側周壁と底面壁から構成されていた底部の形状を、謂わば、側周壁と底面壁の区別をなくし、胴部との境界から底部の下端(底面の中央部)に至るまで、その断面形状が縮径状に緩やかにスムーズに変化する形状とすることができ、このような形状とすることにより、上記した前後方向に扁平化した扁平筒状とすることによる作用効果と相俟って、底部近傍における内層の萎み変形において内層の反転変形をスムーズに進展させることができ、内容液の注出に伴い、内層の萎み変形を、自然に、底部の下端から胴部を経て肩部に向けて順次、スムーズに進行させることができ、内容液の注出がスムーズに進行すると共に、内容液をほぼ全量使い切ることが可能となる。
【0018】
所望量の内容液の注出を終了させて時点で、外気が偏平に萎み変形した内層内に侵入しようとするが、この外気を侵入させようとする内層内の圧力作用により、弁機能部が弁閉状態となって、内層内への外気の侵入が阻止される。
【0019】
このように、内容液を収納している内層内への外気の侵入を弁機能部分が確実に阻止するので、内容液の外気による酸化等による品質劣化の発生を確実に防止する。
【0020】
なお、本発明の上記構成において、「球弧殻状」と云う形状には楕円球弧殻状、長円球弧殻状等の形状が含まれ、外観デザインや成形性も考慮して、適宜の膨出状の湾曲面形状を選択することができる。
【0021】
本発明の他の構成は、上記主たる構成に加えて、注出キャップの弁機能を、自重により開閉動作するものとした、ものである。
【0022】
注出キャップの弁機能を、自重により開閉動作するものとしたものにあっては、壜体を傾動させることにより内容液を注出することができ、通常の注出容器と略同等に取扱うことができる。
【0023】
また、本発明の他の構成は、注出キャップの弁機能を、外部からの押圧操作により開閉動作するものとした、ものである。
【0024】
注出キャップの弁機能を、外部からの押圧操作により開閉動作するものとしたものにあっては、注出される内容液の量を、外部からの押圧操作で調整することができるので、内容液の必要注出量の調整が容易となる。
【0025】
また、本発明の他の構成は、外部からの押圧操作力を作用させる部分を、ドーム状に膨出して弾性変形可能な押しボタン部とした、ものである。
【0026】
外部からの押圧操作力を作用させる部分を、ドーム状に膨出して弾性変形可能な押しボタン部としたものにあっては、弁機能部を開閉させるに充分な弾性変位幅を無理なく得ることができると共に、その操作力も指先のわずかな力で済む。
【0027】
また、本発明の他の構成は、押しボタン部に、弁体の弁片をスプリングの弾力に逆らって押し下げる押し下げ片を一体に垂下設した、ものである。
【0028】
押しボタン部に、弁体の弁片をスプリングの弾力に逆らって押し下げる押し下げ片を一体に垂下設したものにあっては、弁片と押しボタン部の間隔に関する構造的な制約を殆ど受けることがないので、注出キャップの設計の自由度を高めることができる。
【0029】
また、本発明の他の構成は、押しボタン部に、弁体の弁片体を一体に垂下設した、ものである。
【0030】
押しボタン部に、弁体の弁片体を一体に垂下設したものにあっては、押しボタン部の弾力を利用することにより、弁体を弁片体だけで構成することができ、その分、弁体の構成を簡単化することができる。
【0031】
また、本発明の他の構成は、壜体を外ケース内に正立姿勢で収納し、該外ケースを、前記壜体を出し入れ可能とすべく、下ケース体と上ケース体とに分割した、ものである。
【0032】
壜体を外ケース内に正立姿勢で収納し、該外ケースを、前記壜体を出し入れ可能とすべく、下ケース体と上ケース体とに分割したものにあっては、レフィル容器である壜体を正立姿勢で置くことができると共に、柔軟性に富んで把持し難い壜体を、安定して取扱うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、底部の形状を下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出する形状とすることにより、謂わば、側周壁と底面壁の区別をなくして、底部の形状を胴部との境界から下端(底面の中央部)に至るまで、その断面形状が縮径状にスムーズに変化する形状とすることができ、前後方向に扁平化した扁平筒状とすることによる作用効果と相俟って、底部近傍における内層の萎み変形において内層の反転変形をスムーズに進展させることができ、内容液の注出に伴い、内層の萎み変形を、自然に、底部の下端から胴部を経て肩部に向けて順次、スムーズに進行させることができ、内容液の注出がスムーズに進行すると共に、内容液をほぼ全量使い切ることが可能となる。
【0034】
内容液を収納している内層内への外気の侵入を弁機能部分が確実に阻止して、内容液の外気のよる酸化等による品質劣化の発生を確実に防止するので、内容液の高品質を安定して維持することができ、これにより内容液を安心して使用することができる。
【0035】
注出キャップの弁機能を、自重により開閉動作するものとしたものにあっては、通常の注出容器と略同等に取扱うことができるので、違和感なく自然な状態で使用することができる。
【0036】
注出キャップの弁機能を、外部からの押圧操作により開閉動作するものとしたものにあっては、内容液の必要注出量の調整が容易となるので、内容液を無駄なく適正に使用することができる。
【0037】
外部からの押圧操作力を作用させる部分を、ドーム状に膨出して弾性変形可能な押しボタン部としたものにあっては、弁機能部を開閉させるに充分な弾性変位幅を無理なく得ることができると共に、その操作力も指先のわずかな力で済むので、内容液の必要とする注出処理を、正確にかつ確実に得ることができる。
【0038】
押しボタン部に、弁体の弁片をスプリングの弾力に逆らって押し下げる押し下げ片を一体に垂下設したものにあっては、注出キャップの設計の自由度を高めることができるので、注出キャップを簡単にかつ安価に製作することができる。
【0039】
押しボタン部に、弁体の弁片体を一体に垂下設したものにあっては、弁体の構成を簡単化することができるので、注出キャップ全体の構造を簡単化させることができる。
【0040】
壜体を外ケース内に正立姿勢で収納し、外ケースを、下ケース体と上ケース体とに分割したものにあっては、壜体を正立姿勢で置くことができると共に、柔軟性に富んで把持し難い壜体を、安定して取扱うことができるので、レフィル容器である壜体を良好にそして安全に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は本発明の壜体の一実施例を縦断して示す正面図、(b)は底部近傍の斜視図である。
【図2】図1に示した壜体の縦断側面図である。
【図3】(a)は図1中のA−A線、(b)はB−B線に沿って示す平断面図である。
【図4】(a)は図1中の底シール部における外層と内層の積層状態を示す断面図であり、(b)は底シール部の底割れ状態を示す断面図である。
【図5】(a)はデラミボトルの従来例を示す半縦断側面図、(b)は底部近傍の斜視図である。
【図6】図5中のC−C線に沿って示す平断面図である。
【図7】注出キャップの第一の構成例を示す、縦断面図である。
【図8】注出キャップの第二の構成例を示す、縦断面図である。
【図9】注出キャップの第三の構成例を示す、縦断面図である。
【図10】注出キャップの第四の構成例を示す、縦断面図である。
【図11】注出キャップの第五の構成例を示す、縦断面図である。
【図12】注出キャップの第六の構成例を示す、縦断面図である。
【図13】注出キャップの第七の構成例を示す、縦断面図である。
【図14】壜体の使用形態例の一例を示す、全体外観斜視図である。
【図15】図14に示した外ケースの、半縦断側面図である。
【図16】捨てキャップを組付けた構成例を示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜3は本発明によるデラミボトルである壜体の一実施例を示すもので、図1(a)、(b)は縦断正面図と底部近傍の斜視図であり、図2は側面図、図3(a)は図1中のA−A線、(b)はB−B線に沿って示す平断面図である。なお、図2と図3(a)中に壜体1の前後左右方向を便宜上規定する符号F、B、L、Rを示している。
【0043】
この壜体1は、低密度ポリエチレン樹脂製で外殻を形成する外層11と、ナイロン樹脂製で内袋体12aを形成する内層12を共押出してブロー成形したものであり、口筒部2と、テーパー筒状の肩部3と、扁平筒状の胴部4と、そして底部5を有する。本実施例では外層11の胴部4における平均厚さは280ミクロン、内層12の平均厚さは100ミクロンである。
【0044】
また、口筒部2の外層11部分には外層11と内層12との層間に外部空気を導入するための吸気孔21が開設されている。また、ブロー成形時に底部5には底シール部22が形成されている。
【0045】
ここで、ブロー成形後、多くの場合、外層11と内層12は密着した状態にあるが、デラミボトルとして使用する場合には、内層12の萎み変形がスムーズに進行するように、口筒部2からバキュームで内袋体12a内を吸引して略全領域で、内層12を外層11から一端剥離しておくことが好ましい。
【0046】
口筒部2には、逆止弁として作用する弁機構部を配設した注出キャップ31を螺合組付けしており、このように壜体1に注出キャップ31を組付けて注出容器として使用する。
【0047】
また、胴部4から底部5にかけての形状は扁平筒状で、その平断面形状は図3に示すように略楕円状である。また、胴部4の上端位置(肩部3との境界位置)から底部5にかけての領域では、扁平状の平断面形状の長径及び短径を緩やかに縮径する形状としている。
【0048】
そして、底部5は図1(b)の斜視図に示すように、下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出する形状としており、図1(a)の縦断正面図からも分かるように、正面側Fからみても底部5の下端が緩やかに下方に湾曲状に膨出した形状をしている。
【0049】
この底部5の形状の特徴は、図5(b)に示した従来例の壜体101の底部105と比較すると明確であり、図5(b)に示される底部105が、側周壁105pとこの側周壁105pに略垂直状に形成される底面壁105bから有底筒状に形成されているのに対して、上記実施例の底部5は従来の壜体105の側周壁105pと底面壁105bの区別を無くし、底部5の形状を胴部4との境界から下端(底面の中央部)に至るまで、その断面形状が縮径状にスムーズに変化する形状としている。
【0050】
次に、本実施例の壜体1の内袋体12aに水を満杯に充填した後、図1、2に示されるように、逆止弁機構を配設した注出キャップ31を口筒部2に螺合組付けした注出容器を構成し、この注出容器を倒立姿勢に保持して、内容液である水の注出試験を実施した。
【0051】
その結果、本実施例の壜体1では、底部5近傍における内層12の萎み変形において内層12の反転変形をスムーズに進展させることができ、水の注出に伴い、内層12の萎み変形を、外力を作用させること無く、自然に、底部5の下端から胴部4を経て肩部3に向けて順次、スムーズに進行させることができ、内容液の注出がスムーズに進行すると共に、内容液を口筒部2近傍に若干残留する分を除いて、ほぼ全量注出することができた。
【0052】
上記試験における良好な注出結果は、胴部4から底部5にかけての形状を扁平筒状とすること、胴部4の上端位置から底部5にかけての領域でこの扁平筒の平断面形状の長径及び短径を緩やかに縮径する形状とすること、そして底部5の形状を下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出した形状とすることの作用効果が相俟って、実現できたものであるが、特に、底部5の形状を下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出した形状とすることにより、注出の初期段階で底部5近傍での内層12の萎み変形に伴う反転変形をスムーズに進展させることができた。
【0053】
以上、実施例に沿って壜体1の構造と作用動作を説明したが、壜体1の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。たとえば、外層と内層の組み合わせについてはポリエチレン/ナイロンの組み合わせの他にも、両層の剥離性を考慮してさまざまな組み合せのものを採用することができる。
【0054】
また、本実施例の壜体1はレフィル容器としての利用を想定して胴部における外層の厚さを280ミクロン程度と、比較的薄肉としたが、使用目的や成形性等を考慮して厚肉にしたり、さらに薄肉としたりすることもできる。
【0055】
また、底部の膨出形状は、下方に向けて前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出した形状と云う範疇のなかで、内層の萎み変形のし易さの他に、外観デザイン、そして成形性も考慮して、球弧殻状の湾曲面の湾曲の程度を変化させながら適宜選択ができるものである。
【0056】
また、本実施例では吸気孔21を口筒部に形成する例を示したが、ブロー成形時に底部の底面に形成される底シール部22を利用して吸気孔21を形成することもできる。図4(a)は図2中、小さな円で囲った底シール部22における外層11と内層12の積層状態を示す断面図である。
【0057】
ここで、この底シール部22を外部から押圧力を作用させる等により、外層11が内層12から剥離して、所謂、底割れ状態となり間隙を形成することができ、この間隙を利用して吸気孔21とすることができる。
【0058】
なお、吸気孔21の開設位置は適宜選択することができ、実施例のように口筒部2であっても、底部5底面であってもよい。さらに口筒部2と底部5底面の両方に開設してもよい。
【0059】
注出キャップ31は、壜体1の口筒部2に組付く組付き部材32と、この組付き部材32に覆い被さり状に組付く天板部材36と、組付き部材32と天板部材36の間に組付き、弁孔45を形成する弁形成部材43と、弁体49とから構成されている。
【0060】
組付き部材32は、口筒部2に着脱可能に組付く組付き筒33の上端に頂板34を連設して有頂筒状に構成され、頂板34の上面に天板部材36との結合部である装着筒片35が設けられており、この装着筒片35は頂板34の周端部分および周端部寄り部分に起立状に設けられている。
【0061】
注出キャップ31の頂面を形成する天板部財36は、略平板状となった天板37下面に、組付き部材32の装着筒片35と強固に嵌合する結合片38を垂下設すると共に、弁形成部材43を組付き部材32の頂板34上に押付ける押さえ片39を有している。
【0062】
組付き部材32と天板部材36との間に挟持された弁形成部材43は、主体板44の上面に、天板部材36からの押さえ付け力を受ける周側壁46を起立設して内容液Lの注出通路を形成すると共に、弁孔45を開設し、主体板44の下面に組付き部材32に対する組付き部分である結合垂下片48が設けられている。
【0063】
図7から図9は、弁体49をボール弁50で構成した実施例を示すもので、組付き部材32に弁座面を形成すると共に、ボール弁50を変位可能に収納位置させる、先細りの筒片を垂下設している。
【0064】
なお、図示実施例にあっては、組付き部材32と天板部材36とが別体物として構成されているが、この組付き部材32と天板部材36とを、後端部間でヒンジ結合して一体に成形することも可能である。
【0065】
図7に示した実施例は、弁機能部を、壜体1の傾動に従ったボール弁50の転げ落ち変位により弁開状態となるように構成されており、弁孔45の孔面には、内容液Lの通過を妨げることなく、ボール弁50の抜け出しを阻止する複数の突片45aが設けられている。
【0066】
この図7に示した実施例は、壜体1を傾けるだけで、内容液Lを注出することができるので、通常の注出容器と同等に取扱うことができる。
【0067】
図8および図9に示した実施例は、弁形成部材43の弁孔45の開口縁を弁座面として機能させ、これにより弁機能部を、壜体1の傾動に従ったボール弁50の転げ落ち変位した状態でも弁閉状態を維持するように構成されており、天板部材36には、弁孔45に位置したボール弁50を、外部からの押圧操作により押し上げて弁開状態とする、ドーム状の押しボタン部40と押し下げ片41の組合せ物が設けられている。
【0068】
この図8および図9に示した実施例は、壜体1を傾けた注出可能状態で、押しボタン部40を押圧して押込み、これによって押し下げ片41により弁孔45に位置しているボール弁50を押し上げて、弁開状態として内容液Lの注出を達成する。なお、押しボタン部40は、図8に示すように天板部材36と一体に設けても、図9に示すように、天板部材36とは別体にして設けてもよい。
【0069】
図10から図12は、弁体49を弁片51とスプリング52の組合せで構成した実施例を示すもので、組付き部材32に弁体49を一定姿勢で収納する下方を開放した筒片を垂下設しており、弁片51はスプリング52の弾力により、弁孔45の孔縁に下方から密に押付けられており、天板部材36には、図8および図9に示した実施例と同様に、ボタン部40と押し下げ片41の組合せ物が設けられている。
【0070】
この図10から図12に示した実施例にあっては、壜体1の傾動変位に関わりなく、押しボタン部40を押圧して押込み、これによって押し下げ片41により、スプリング52の弾力に逆らって弁孔45に位置している弁片51を押し下げて、弁開状態とする。この実施例において、弁片51とスプリング52の組合せ物は、図10および図11に示すように、組付き部材32とは別体に構成しても、または図12に示すように、組付き部材32と一体に構成しても良い。
【0071】
図13は、弁体49を弁片体42で構成し、この弁片体42を、押し下げ片41に代えて押しボタン部40に一体設して設けた実施例を示すもので、弁片体42の膨大した下端先端部が、弁孔45の孔縁に、押しボタン部40の弾力により下方から密接することにより、弁閉状態を維持する。
【0072】
この図13に示した実施例において、弁片体42の弁孔45内に挿入する部分は、弁孔45の口径よりも充分に小さい太さとなっており、弁孔45との間に充分な通路空間を確保している。
【0073】
なお、押しボタン部40を設けた実施例において、この押しボタン部40は、天板部材36に一体設しても、天板部材36とは別体に構成しても良く、押しボタン部40を別体にて天板部材36に組付けることで、押しボタン部40を軟材質にて形成でき、これによりスムーズな開閉を可能とする。
【0074】
図14は、注出キャップ付き壜体を、充分な剛性を有する外ケース53内に収納して、注出キャップ付き壜体を正立姿勢で置くことができるようにすると共に、手で把持しての取り扱いを容易で安定するようにしたもので、外ケース53は、壜体1の胴部4と底部5を保持する下ケース体54と、壜体1の肩部3を覆う上ケース体59とから構成されている。
【0075】
下ケース体54(図15参照)は、下端で脚部を形成する筒状の胴筒55の下端部内に、壜体1の底部5を支える底板57を連設して構成され、胴筒55の一部に窓孔56が開設されていると共に、上端部の前後部には、係止押圧片58が突設されている。
【0076】
上ケース体59は、壜体1の肩部3を覆うテーパー筒状の肩筒60で構成され、この肩筒60の前後部下端には、下ケース体54の係止押圧片58が下方から乗り越え係止する係止孔を開設した係止孔片61が垂下設されている。
【0077】
窓孔56は、内容液Lの自然流下による注出ではなく、内容液Lを、壜体1の胴部4を押圧することにより強制的に注出する場合に利用されるもので、この窓孔56に露出している胴部4部分を押圧すると共に、弁体49を弁開状態として、内容液Lを急速に注出することができる。
【0078】
外ケース53に収納された壜体1は、その肩部3の上半部分を露出させているが、この肩部3の上半部分は、壜体1がブロー成形品であることから萎み変形し難い部分となっていて、繰り返しの注出操作を行う上で最終的に内容液Lが残留し易い部分となるので、この露出した肩部3の上半部分に表示を施して、この肩部3の上半部分内に残留した内容液Lを強制的に注出するようにして、内容液Lの無駄の発生を無くすようにしている。
【0079】
内容液Lを使い尽くしたならば、係止押圧片58を押圧して係止孔片61との係止を解除させて、上ケース体59を下ケース体54から分離させて、外ケース53から注出キャップ付き壜体を抜き出し、注出キャップ31を分離して再使用し、壜体1を廃棄する。すなわち、壜体1をレフィル容器として取扱う。
【0080】
図16は、本発明による注出キャップ付き壜体を始めて購入する場合の、捨てキャップ62を組付けた状態を示すもので、捨てキャップ62は、壜体1への組付き部分と、注出キャップ31を組付ける部分とを有しているが、壜体1の販売形態によっては、注出キャップ31を組付ける部分は設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明の注出キャップ付きブロー成形壜体は、内容液の注出に伴い外力によることなく底部近傍での内層の萎み変形がスムーズにかつ十分に進行可能に構成されたものであり、特に比較的低粘度の液体を主成分とした内容物であり鮮度を要求される食品調味料等の注出キャップ付き容器として幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0082】
1、101;壜体
2、102:口筒部
3、103;肩部
4、104;胴部
5、105;底部
11、111;外層
12、112;内層
12a、112a;内袋体
21;吸気孔
22;シール部
31;注出キャップ
32;組付き部材
33;組付き筒
34;頂板
35;装着筒片
36;天板部材
37;天板
38;結合片
39;押さえ片
40;押しボタン部
41;押し下げ片
42;弁片体
43;弁形成部材
44;主体板
45;弁孔
46;周側壁
47;シール筒片
48;結合垂下片
49;弁体
50;ボール弁
51;弁片
52;スプリング
53;外ケース
54;下ケース体
55;胴筒
56;窓孔
57;底板
58;係止押圧片
59;上ケース体
60;肩筒
61;係止孔片
62;捨てキャップ
L ;内容液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部の上端から肩部を介して口筒部を起立設し、外殻を形成する外層と、該外層に剥離自在に積層し、萎み変形可能に内袋体を形成する内層とから成り、前記外層の所定位置に、該外層と内層との層間に外部空気を導入するための吸気孔を開設し、前記胴部から底部にかけての形状を平断面形状が前後方向に扁平化した扁平筒状とし、前記底部の形状を、下方に向けて、前後方向に扁平化した球弧殻状に膨出する形状とした合成樹脂製の壜体と、該壜体の口筒部に着脱可能に組付いて、前記内容液の吐出口を形成する注出キャップとから構成され、該注出キャップに、外気が前記内層内に侵入するのを阻止する弁機能を設けた注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項2】
注出キャップの弁機能を、自重により開閉動作するものとした請求項1に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項3】
注出キャップの弁機能を、外部からの押圧操作により開閉動作するものとした請求項1に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項4】
外部からの押圧操作力を作用させる部分を、ドーム状に膨出して弾性変形可能な押しボタン部とした請求項3に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項5】
押しボタン部に、弁体の弁片をスプリングの弾力に逆らって押し下げる押し下げ片を一体に垂下設した請求項4に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項6】
押しボタン部に、弁体の弁片体を一体に垂下設した請求項4に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。
【請求項7】
壜体を外ケース内に正立姿勢で収納し、該外ケースを、下ケース体と上ケース体とに分割して、前記壜体の出し入れを可能とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の注出キャップ付きブロー成形壜体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−73770(P2011−73770A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229064(P2009−229064)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】