説明

注出キャップ

【課題】開口強度を比較的低くすることができると共に樹脂による成形不良を極力防止し得る構造の注出キャップを提供することである。
【解決手段】装着部の内側に形成される閉鎖壁13下面に開放予定部130を画するスコア131が形成され、開放予定部130に引っ張り部が形成された樹脂製の注出キャップであって、開放予定部130内に樹脂ゲート部PINを有し、スコア131内面は、上方に傾斜した第1傾斜面131aと、第1傾斜面131aに続き第1傾斜面131より傾きが緩やかな上方に傾斜した第2傾斜面131bと、第2傾斜面131bから続き第1傾斜面131a及び第2傾斜面131bと逆方向に傾斜した第3傾斜面131cとを有し、閉鎖壁13のスコア対向面13aに対する第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部の距離が最小である構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着され、閉鎖壁を環状に形成されたスコアから開口することにより注ぎ口が形成されるようにした注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の注出キャップが知られている。この注出キャップは、樹脂にて形成され、容器の口部に装着されるベース(装着部)の内側に形成された密閉障壁(閉鎖壁)に円環状の細溝(スコア)が形成されるとともに、前記密閉障壁の前記細溝にて囲まれる領域(開放予定部)の周辺部位から突出する支持柱の先端にプルリングが形成された構造となっている。このような構造の注出キャップでは、プルリングを引っ張って支持柱を介して前記密閉障壁を引っ張り上げることにより、当該密閉障壁が円環状の前記細溝(スコア)から切破られて当該細溝で囲まれた領域に対応した注ぎ口が形成されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−206133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したような樹脂製の注出キャップでは、密閉障壁のスコアから切破られる際の強度、いわゆる、開口強度は、必要以上に高くないことが、開け易さの点で好ましい。特に、比較的温度の高い内容物を充填する容器に装着される注出キャップの場合、比較的硬度の高い耐熱性の樹脂が使用されて開口強度が高くなる傾向にあるため、その開口強度をできるだけ低くして開け易くすることが重要である。
【0005】
また、前述したような構造の注出キャップを射出成形等、金型への樹脂の流し込みにより製造する場合、密閉障壁(閉鎖壁)のスコアが形成された部分は、肉厚が薄く、樹脂の流れがスコアの形状に影響され易い。樹脂の流れがスムーズでないと、スコアの形成された部分にピンホールが発生する等の成形不良が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、開口強度を比較的低くすることができると共に樹脂による成形不良を極力防止し得る構造の注出キャップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る注出キャップは、容器の口部に装着される装着部と、該装着部の内側に形成される閉鎖壁とを有し、該閉鎖壁下面に開放予定部を画するスコアが形成され、該開放予定部の前記スコア近傍の所定部位から突出する引っ張り部が形成された樹脂製の注出キャップであって、前記開放予定部内に樹脂ゲート部を有し、前記スコア内面は、上方に傾斜した第1傾斜面と、該第1傾斜面に続き該第1傾斜面より傾きが緩やかな上方に傾斜した第2傾斜面と、該第2傾斜面から続き前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面と逆方向に傾斜した第3傾斜面とを有し、前記閉鎖壁の前記スコアの形成された面と逆側の面であるスコア対向面に対する前記第2傾斜面と前記第3傾斜面との接合部の距離が最小である構成となる。
【0008】
本発明に係る注出キャップにおいて、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面より短い構成とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る注出キャップにおいて、前記閉鎖壁に対する第1傾斜面の角度αが30°乃至60°、第2傾斜面の角度βが5°乃至45°であって、前記各角度αとβとの関係がα>βである構成とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る注出キャップにおいて、前記スコア内面の前記第1傾斜面の下方に続く部分が凸状に湾曲している構成とすることができる。
【0011】
更に、本発明に係る注出キャップにおいて、前記引っ張り部の根元に厚肉部が形成された構成とすることができる。
【0012】
また、本発明係る注出キャップにおいて、前記厚肉部は、前記樹脂ゲート部の位置から略扇状に広がる形状となる構成とすることができる。
【0013】
また、本発明係る注出キャップにおいて、前記厚肉部は、前記樹脂ゲート部を中心角とした角度θが15°乃至45°の略扇状に広がる形状となる構成とすることができる。
【0014】
更に、本発明に係る注出キャップにおいて、前記装着部とヒンジ部を介して連結し、該ヒンジ部を支点とした開閉動作によって前記装着部に対して着脱可能となる蓋体を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る注出キャップによれば、コア対向面との距離が最小となるスコア内面の第2傾斜面と第3傾斜面との接合部からの開口がし易くなると共に、スコア開口後のスコア開口部の縁部に形成され易いバリ状の破断片の形成が低減されるため、スコアにおける開口後の外観向上、内容物の残存低減、誤方向への注出を防止することができる。また、スコア内面に沿って流動する樹脂が、前記スコア対向面との距離が最小となる部分を比較的スムーズに越えることができるようになるので、樹脂による成形不良を極力防止し得るものとなる。
【0016】
また、本発明に係る注出キャップによれば、前記スコア内面の第2傾斜面の長さ、第1傾斜面と第2傾斜面の角度を適正な範囲に選択することにより、前述したスコア内面の第2傾斜面と第3傾斜面との接合部からの開口のし易さ、スコアにおける開口後の外観向上、内容物の残存低減、誤方向への注出防止、成形不良防止を一層図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る注出キャップによれば、前記スコア内面の第1傾斜面の下方に続く部分を凸状の湾曲とすることにより、樹脂ゲート部からの樹脂によって閉鎖壁を形成する際に、樹脂がスムーズにスコア内面の第1傾斜面に対応した部分に流入するため、凸状に湾曲した部分に起こりやすい樹脂溜まりを防止して樹脂溜まり表面層に起こりやすい剥離等の成形不良を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る注出キャップによれば、スコア近傍の所定部位から突出する引っ張り部の根元に厚肉部を形成することにより、樹脂ゲート部からの厚肉部を形成すべく、比較的多い量の樹脂が引っ張り部及び閉鎖壁のスコア内面とスコア対向面との間の部分を形成すべく流動し、成形不良が同様に防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る注出キャップによれば、厚肉部の形状を樹脂ゲート部位置から略扇状とすることにより、樹脂ゲート部から樹脂が順次広がりつつ流動する形状に比較的近いため、前記厚肉部がスムーズに形成され、前記引っ張り部の構成の一部である支持柱の根元のスコア近傍に起こりやすいピンホール等の発生を防ぐことができる。更に、前記厚肉部の樹脂ゲート部を中心角とした角度θが15°乃至45°の略扇状に広がる形状とすることにより、引っ張り部及び閉鎖壁のスコア内面とスコア対向面との間の部分へ選択的に樹脂を流しやすくすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る注出キャップによれば、前記装着部とヒンジ部を介して連結し、該ヒンジ部を支点とした開閉動作によって前記装着部に対して着脱可能となる蓋体を有するため、前述のように引っ張り部及び閉鎖壁のスコア内面と対向面との間の部分へ選択的に樹脂を流しやすくすることによりヒンジ部及び蓋体にも樹脂がスムーズに流しやすくなるため、成形不良がなく開閉動作が極めて容易な注出キャップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の実施の一形態に係る注出キャップの構造を示す平面図である。
【図1B】図1AにおけるA−A線での断面図である。
【図1C】図1Aに示す注出キャップの裏面側の構造を示す平面図である。
【図1D】図1CにおけるB−B線での断面図である。
【図2】図1Bにおける領域Eの詳細構造を示す拡大断面図である。
【図3】図1Bにおける領域Eの構造の変形例を詳細に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0023】
本発明の実施の一形態に係る注出キャップは、図1A乃至図1Cに示すように構成される。なお、図1Aは注出キャップの平面図であり、図1Bは図1AにおけるA−A線断面図であり、図1Cは注出キャップの裏面側の平面図である。
【0024】
図1A乃至図1Cにおいて、この注出キャップ1は、樹脂の射出成形等により作られており、キャップ本体10と蓋体20とがヒンジ部15によって連結された構造となっている。キャップ本体10は、それぞれ円筒状の装着部11と注ぎ部12とが同心的に形成された構造となっており、その注ぎ部12を閉ざすように、中央部が凹んで湾曲した皿状となる閉鎖壁13が形成されている。装着部11には環状の嵌合部(アンダーカット部)11aが形成されており、この嵌合部11aが容器の口部に嵌合され、注出キャップ1が前記容器の口部に装着される。また、閉鎖壁13の下面(容器内部に向かう面)に、注ぎ口に対応する開放予定部130を画するスコア(細溝)131が形成されている。閉鎖壁13の上面には、スコア131によって画される開放予定部130のスコア131近傍の所定部位から突出するように支持柱14aが形成され、その支持柱14aの上端には、支持柱14aとともに引っ張り部14を構成するリング状のプルリング14bが形成されている。
【0025】
支持柱14aに対向する装着部11の外周面部分には、ヒンジ15によって連結される蓋体20が形成されており、蓋体20は、ヒンジ部15を支点とした開閉動作によって装着部11に対して着脱可能となっている。また、蓋体20の内面には、蓋体20が装着部11に接合した状態で注ぎ部12を閉ざす位置に円筒状の栓体21が形成されている。
【0026】
このような注出キャップ1の製造に際しては、樹脂による射出成形時の樹脂ゲート部位置(インジェクションゲート位置)PINは、閉鎖壁13における上面の開放予定部130内の中央、或いはその近傍に設定されている。そして、この樹脂ゲート部位置PINから樹脂が射出されることにより、閉鎖壁13(開放予定部130)上面の中央から、順次前記樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向に向けて射出成形され、注出キャップ1が形成されていく。
【0027】
閉鎖壁13の開放予定部130には、樹脂ゲート部位置PINから、プルリング14bの形成された支持柱14aの根元に至る厚肉部132(図1C参照)が形成されている。この厚肉部132は、図1C及び図1Dに示すように、閉鎖壁13の下面において、スコア131が形成されたスコア形成面に、樹脂ゲート部位置PINを中心角とした角度θ範囲で略扇状に広がった形状となっている。図1Dに示すように、閉鎖壁13の下面において直線状の面範囲を角度θ範囲とするが、この角度θは、15°乃至45°の範囲内で設定されている。
【0028】
図2は、スコア131の詳細形状を示しており、図1Bにおけるスコア131を含む領域Eを詳細に示した図である。
【0029】
図2において、スコア131の内面は、樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cに、順次、直線状の第1傾斜面131a、直線状の第2傾斜面131b及び直線状の第3傾斜面131cが連続するように構成されている。そして、前記第2傾斜面131bの長さは、第1傾斜面131及び第3傾斜面131cの長さよりも小さく、最小としている。また、第1傾斜面131aは上方に傾斜した傾斜面であって、閉鎖壁13と平行な水平面に対して30°乃至60°の範囲の傾斜角度αとなっている。第1傾斜面131aに続く第2傾斜面131bは、第1傾斜面131aより傾きが緩やかな上方に傾斜した傾斜面であって、閉鎖壁13と平行な水平面に対して5°乃至45°の範囲傾斜角度βとなっている。そして前記第1傾斜面の角度αと第2傾斜面の角度βとの関係は、前記角度α>角度βとされている。さらに、第2傾斜面131bから下方に傾斜した第3傾斜面131cは、第1傾斜面131a及び第2傾斜面131bと逆方向に傾斜した傾斜面である。そして、これら傾斜面のうち、第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LP(図2では点として現れている)は、スコア対向面13aとの距離が最小となっている。また、第2傾斜面131bに対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおける厚さD2の変化は、第1傾斜面131aに対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおける厚さD1の変化より緩やかになっている。
【0030】
更に、閉鎖壁13のスコア131のスコア形成面の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向C(樹脂ゲート部位置PIN寄り)において、樹脂ゲート部位置PINからスコア131の第1傾斜面131aに続く部分が凸状に湾曲した湾曲面133となっている。
【0031】
このような構造の注出キャップ1では、樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向に並ぶ、第1傾斜面131aと、第2傾斜面131bと、第3傾斜面131cとで構成されるスコア131の内面と、閉鎖壁13のスコア対向面13aとの間の距離が最小となるのが面ではなく、第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LP線となる。このため、プルリング14bの引っ張りにより、支持柱14aを介して行われる閉鎖壁13のスコア131からなる開放予定部130の開口が、前記スコア対向面13aとの距離が最小となる第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LPから容易に行われる。そのため、開放予定部130をスコア131に沿って切り取るために必要な開口強度が低くなり、スコア131の全ての部分を切破いて、注ぎ部12の閉鎖壁13に開放予定部130に対応した注ぎ口(開口)を形成するための動作がより容易となる。加えて、スコア131開口後の開口部縁部に形成され易いバリ状の破断片の形成が低減されるため、スコアにおける開口後の外観を向上させ、バリ状破断片に内容物の残存することを防ぎ、バリ状破断片を基点とした、注出予定方向と異なった誤方向へ内容物が注出されるのを防止することができる。
【0032】
また、第1傾斜面131a、第2傾斜面131b及び第3傾斜面131cからなるスコア131の内面に対応する閉鎖壁13の部分において、第2傾斜面131bの対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおける厚さD2の変化が、第1傾斜面に対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおける厚さD1の変化より緩やかであるので、金型に流し込まれる樹脂の流路が、スコア131の内面の第2傾斜面131bの部分で比較的緩やかに狭くなるように変化しつつスコア対向面13aとの距離が最小となる部分(第2傾斜面131bと第3傾斜面131cと接合部LP)に達するようになる。このため、流動する樹脂が前記スコア対向面13aとの距離が最小となる部分(第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LP)を比較的スムーズに越えることができるようになる。従って、ピンホールの発生等、樹脂による成形不良を防止できる。
【0033】
また、注出キャップ1において、スコア131内面の第2傾斜面131bの長さは、代傾斜面131a及び第3傾斜面131cの長さよりも小さく、その長さは最小となっているため、前述したスコア131内面の第2傾斜面と第3傾斜面との接合部からの開口を容易にし、スコアにおける開口後の外観を向上させ、バリ状破断片に内容物の残存することを防ぎ、バリ状破断片を基点とした、注出予定方向と異なった誤方向へ内容物が注出されるのを防止し、成形不良防止をより一層図ることができる。
【0034】
更に、スコア131内面の上方に傾斜した第1傾斜面131aの角度が閉鎖壁13と平行な水平面に対して30°乃至60°の範囲の傾斜角度αと、第1傾斜面131aに続く第1傾斜面131aより傾きが緩やかで上方に傾斜した第2傾斜面131bの角度が閉鎖壁13と平行な水平面に対して5°乃至45°の範囲の傾斜角度βとを有し、前記第1傾斜面の角度αと第2傾斜面の角度βとの関係が角度α>βとされているため、前述したスコア131内面の第2傾斜面と第3傾斜面との接合部からの開口を容易にし、スコアにおける開口後の外観を向上させ、バリ状破断片に内容物の残存することを防ぎ、バリ状破断片を基点とした、注出予定方向と異なった誤方向へ内容物が注出されるのを防止し、成形不良防止をより一層図ることができる。
【0035】
また、閉鎖壁13のスコア形成面の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおいてスコア131の第1傾斜面131aに続く部分が凸状に湾曲した湾曲面133となっており、射出金型に射出される樹脂が閉鎖壁13を形成する際に、当該部分に起こりやすい樹脂溜まりができず、湾曲面133に対応する湾曲した部分を通ってよりスムーズにスコア131内面の第1傾斜面131aに対応した部分に流入されるため、樹脂表面層に起こりやすい剥離等の成形不良をより防止することができるようになる。
【0036】
また、閉鎖壁13には、樹脂ゲート部位置PINからプルリング14bの支持柱14aの根元のスコア形成面に厚肉部132が形成されているので、比較的多い量の樹脂が射出金型に射出されて厚肉部132を形成し、引っ張り部14及び閉鎖壁13のスコア131内面とスコア対向面13aとの間の部分を形成すべく流動するようになるので、樹脂による成形不良を防止することができる。このため、支持柱14aの根元のスコア近傍に起こりやすいピンホールの発生を防ぐことができる。
【0037】
また、この厚肉部132の形状は、樹脂ゲート部位置PINから順次樹脂が広がる形状の略扇状になっているので、樹脂ゲート部位置PINから流入する樹脂により厚肉部132がよりスムーズに形成される。厚肉部132は、図1Cに示すように、スコア形成面と同一面に形成すると、プルリング14bに指をスムーズに挿入することができ、且つ、注出キャップの金型の製造工程でも作業効率が良いため、好ましい。
【0038】
そして、この略扇状の厚肉部132の樹脂ゲート部位置PINを中心角とした角度θは、15°乃至45°の範囲とすることにより、前記角度範囲外とした時より、引っ張り部14及び閉鎖壁13のスコア131内面とスコア対面13aとの間の部分へ選択的に樹脂を流しやすくなる。
【0039】
前述したスコア131は、図3に示すように構成することもできる(変形例)。
【0040】
このスコア131の構造は、樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cに、上方に傾斜する直線状の第1傾斜面131aに続いて、上方に傾斜する直線状の第2傾斜面131b、第2傾斜面131bに続いて下方に傾斜する直線状の第3傾斜面131c、更に第3傾斜面131cに続いて下方に傾斜する直線状の第4傾斜面131dが順次並んだ内面を有する点で、図2に示すスコア131の構造と相違している。この場合であっても、図2に示すスコア131と同様に、第2傾斜面131bは、第1傾斜面131aより傾きが緩やかであるとともに、スコア131の内面とスコア対向面13aとの関係において、第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LPとスコア対向面13aとの距離が最小となる。また、第2傾斜面131bに対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向Cにおける厚さD2は、第1傾斜面131aに対応する閉鎖壁13の部分の樹脂ゲート部位置PINから遠ざかる方向における厚さD1の変化より緩やかである。
【0041】
従って、図3に示す構造のスコア131が形成される注出キャップ1であっても、図2に示す場合と同様に、開放予定部130をスコア131に沿って切り取るために必要な開口強度が低く、スコア131を開口して、注ぎ部12の閉鎖壁13に開放予定部130に対応した注ぎ口(開口)を形成する動作がよりし易いものとなる。また、流動する樹脂が前記スコア対向面13aとの距離が最小となる部分(第2傾斜面131bと第3傾斜面131cとの接合部LP)を比較的スムーズに越えることができ、ピンホールの発生等、樹脂による成形不良を防止できる。
【0042】
なお、前述した注出キャップ1では、樹脂ゲート部位置PINは、閉鎖壁13の上面における開放予定部130の中央に設定されているが、これに限らず、開放予定部130内の任意の位置に設定できることは勿論、注出キャップ1(キャップ本体10、蓋体20)において樹脂の流動性が考慮された位置に設定することができる。しかしながら、前述したように、開放予定部130の開口の容易性、開口時のバリ状破断片の形成低減、開口後の外観向上、開口部における内容物の残存低減、誤方向への注出防止、或いは成形不良の防止等を確実に図るためには、樹脂ゲート部位置PINは、閉鎖壁13における開放予定部130の中央、或いはその近傍に設定することが好ましい。
【0043】
そして、前記注出キャップの製造に際して、射出成形時の樹脂ゲート部位置PINは、前述した閉鎖壁13における上面に限らず、下面であってもよい。
【0044】
また、前述した各注出キャップ1では、閉鎖壁13は中央部が凹んで湾曲した皿状となっているが、閉鎖壁13の構造は、これに限られず、略平坦な板状構造であってもよい。
【0045】
厚肉部132の形状は、扇状に限らず、樹脂ゲート部位置PINを基点としたストレート形状としてもよい。前記ストレート形状の厚肉部とした場合は、支持柱14aを中心とした支持柱14a幅の半分乃至2倍の幅のストレート形状とすると、引っ張り部14及び閉鎖壁13のスコア131内面とスコア対面13aとの間の部分へ選択的に樹脂を流しやすくなるため好ましい。また、厚肉部132をスコア形成面と逆側の面にしても良い。
【0046】
開放予定部130を画するスコア131の形状は、図示した円環状に限定されず、菱形や楕円形など、公知のスコア形状全てに適用することができる。
【0047】
また、注出キャップ形状も、図示したヒンジ付き注出キャップに限らず、閉鎖部にスコアが形成され、引っ張り部を引き上げてスコア部を開口し注ぎ口が形成される注出キャップ全てに適用することができる。
【0048】
いずれの場合も、本発明の機能を阻害しない範囲で、様々な形状を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る注出キャップ1は、開口強度を比較的低くすることができると共に、樹脂による成形不良を防止し得るという効果を有し、容器の口部に装着され、閉鎖壁に形成されたスコアから開口することにより、注ぎ口が形成されるようにした注出キャップとして有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 注出キャップ
10 キャップ本体
11 装着部
12 注ぎ部
13 閉鎖壁
13a、13aa スコア対向面
14 引っ張り部
14a 支持柱
14b プルリング
15 ヒンジ部
20 蓋体
21 栓体
130 開放予定部
131 スコア
131a 第1傾斜面
131b 第2傾斜面
131c 第3傾斜面
131d 第4傾斜面
132 厚肉部
133 湾曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着される装着部と、該装着部の内側に形成される閉鎖壁とを有し、該閉鎖壁下面に開放予定部を画するスコアが形成され、該開放予定部の前記スコア近傍の所定部位から突出する引っ張り部が形成された樹脂製の注出キャップであって、
前記開放予定部内に樹脂ゲート部を有し、
前記スコア内面は、上方に傾斜した第1傾斜面と、該第1傾斜面に続き該第1傾斜面より傾きが緩やかな上方に傾斜した第2傾斜面と、該第2傾斜面から続き前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面と逆方向に傾斜した第3傾斜面とを有し、
前記閉鎖壁の前記スコアの形成された面と逆側の面であるスコア対向面に対する前記第2傾斜面と前記第3傾斜面との接合部の距離が最小である注出キャップ。
【請求項2】
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面より短い請求項1記載の注出キャップ
【請求項3】
前記閉鎖壁に対する第1傾斜面の角度αが30°乃至60°、第2傾斜面の角度βが5°乃至45°であって、前記角度αとβとの関係がα>βである請求項1または2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記スコア内面の前記第1傾斜面の下方に続く部分が凸状に湾曲している請求項1乃至3のいずれかに記載の注出キャップ。
【請求項5】
前記引っ張り部の根元に厚肉部が形成された請求項1乃至4のいずれかに記載の注出キャップ。
【請求項6】
前記厚肉部は、前記樹脂ゲート部の位置から略扇状に広がる形状となる請求項5記載の注出キャップ。
【請求項7】
前記厚肉部は、前記樹脂ゲート部を中心角とした角度θが15°乃至45°の略扇状に広がる形状となる請求項6記載の注出キャップ。
【請求項8】
前記装着部とヒンジ部を介して連結し、該ヒンジ部を支点とした開閉動作によって前記装着部に対して着脱可能となる蓋体を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の注出キャップ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254816(P2012−254816A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129641(P2011−129641)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】