説明

注出口

【課題】口径が選択可能であるとともに、流体をより安定して注出でき得る注出口を提供する。
【解決手段】袋状容器に取り付けられる注出口14は、袋状容器に固着される基体16と、前記基体上面から立脚した筒体18と、に大別される。筒体18は、略筒状の注口部22a,22bと当該注口部22a,22bの上端に接続されたキャップ部24a,24bとからなる筒セット20a,20bが上下に複数並んでいる。そして、複数の筒セット20a,20bの注口部22a,22bは、互いに、内径が異なっている。各キャップ部24a,24bは、破断可能な薄肉の弱化部25a,25bを介して対応する注口部22a,22bの上端に接続されるとともに、その外壁に前記弱化部25a,25bを破断する際に指をかける摘み部30a,30bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器などの袋状容器に取り付けられる注出口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、袋状容器の開口端に、注出口を取り付けた形態の容器が広く知られている。こうした容器は、たとえば、詰め替え用洗剤や、点滴液など、様々な流体を収容するために使用されている。ここで、この容器を製品として出荷する際には、当然ながら、注出口が蓋されている必要がある。この蓋としては、たとえば、注出口の先端に螺合可能なキャップなどがある。しかし、かかる構成とした場合、注出口とキャップとを個別に製造したうえで、当該キャップを注出口に装着する必要があり、部品点数の増加や製造工程の煩雑化という問題を招いていた。
【0003】
こうした問題を避けるために、下記特許文献1−6には、キャップが一体成形された注出口が開示されている。これら注出口において、キャップに相当する部分は、注出口に対して破断容易な薄肉部などを介して接続されている。そして、この薄肉部を破断することで、キャップ部分を注出口から分離させている。
【0004】
なお、特許文献1−4には、分離後のキャップ部分が、注出口の口部に嵌合することで、当該注出口を蓋する注出口が開示されている。また、特許文献4−6には、分離後のキャップ部分が、注出口の口部に螺合することで、当該注出口を蓋する注出口が開示されている。かかる注出口によれば、部品点数を低減でき、また、製造工程を簡易化することができる。
【0005】
ところで、一般に、注出口の口径は、注ぐべき流体(袋状容器に収容される流体)の粘度や使用態様に応じて変えることが望ましい。たとえば、シャンプーなどの高粘度の流体を注ぐ場合には、比較的大径の注出口を用いることが望ましい。その一方で、飲料などの低粘度の流体を注ぐ場合には、比較的小径の注出口を用いることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−12241号公報
【特許文献2】特開平10−119993号公報
【特許文献3】特開平7−232751号公報
【特許文献4】特開平5−229566号公報
【特許文献5】特開2002−29552号公報
【特許文献6】特開2005−88945号公報
【特許文献7】特開2002−284198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の注出口の多くは、その口径が一定であるため、取り扱う流体の種類(製品種類)ごとに、異なる注出口を用意する必要があった。この場合、製品ごとに注出口の金型やシールバーの作成が必要となり、費用負担が大きくなっているほか、型替えなどの生産性がアイテムごとに必要という問題があった。
【0008】
ここで、特許文献7には、先端に向かうに従い縮径する注出路が内部に形成された筒部と、袋状容器に融着される融着部と、を備え、筒部の外壁に筒部を破断するための指掛部を複数設けた注出口部材が開示されている。この注出口部材の筒部には、複数箇所に破断可能な薄肉部が形成されており、破断する薄肉部を選択することで、注出口の口径を変更できるようになっている。かかる注出口部材によれば、上述した問題はある程度解消できる。
【0009】
しかし、この特許文献7の注出口部材では、指掛部が、筒部の全長にわたって形成されている。したがって、筒部のどの部分で切り離したとしても、切り離しにより形成された注ぎ口のすぐ横に指掛部が位置することになる。こうした注ぎ口横の指掛部は、流体を注ぎ動作を阻害しがちであった。たとえば、詰め替え用シャンプーを、プラスチック製のシャンプー容器に詰め替える場合、通常は、注ぎ口の一部を、シャンプー容器の口部に挿入して行う。しかし、注ぎ口のすぐ横に指掛部が存在すると、注ぎ口をシャンプー容器の口部に挿入できなかった。そのため、注ぎ口とシャンプー容器口部とを、少し離した状態で流体を注ぎ入れる必要があり、安定した詰め替え作業ができなかった。また、一部では、注ぎ口の先端に他の部材、例えば、チューブなどを装着したいという要望もあるが、上述したように、注ぎ口のすぐ横に指掛部が存在すると、こうした他部材の装着が出来ないという問題もあった。
【0010】
つまり、従来、口径が選択可能であるとともに、流体を安定して注出でき得る注出口はなかった。そこで、本発明では、口径が選択可能であるとともに、流体をより安定して注出でき得る注出口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の注出口は、袋状容器に取り付けられる注出口であって、前記袋状容器に固着される基体と、前記基体上面から立脚し、前記袋状容器に連通する注出路が内部に形成されるとともに上端面が閉塞された筒体と、を備え、前記筒体は、略筒状の注口部と当該注口部の上端に接続されたキャップ部とからなる筒セットが上下に複数並ぶ構成であり、前記複数の筒セットの注口部は、互いに、内径が異なっており、各キャップ部は、破断可能な薄肉の弱化部を介して対応する注口部の上端に接続されるとともに、その外壁に前記弱化部を破断する際に指をかける摘み部が設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
好適な態様では、前記複数の筒セットのうち少なくとも一つは、前記弱化部破断のために行う前記キャップ部のねじり方向を規制する規制部が設けられている。この場合、前記規制部は、前記注口部の外壁に設けられ、前記キャップ部をねじった際に前記摘み部に当接する突起部であることが望ましい。また、前記規制部は、少なくとも、前記複数の筒セットのうち最も基体側に位置する筒セットに設けられる、ことが望ましい。
【0013】
他の好適な態様では、前記複数の筒セットのうち少なくとも一つは、前記弱化部破断により、前記キャップ部を対応する注口部から切り離した後に、当該キャップ部を前記注口部に再度装着する再装着機構が設けられている。この場合、前記再装着機構は、前記キャップ部の外壁に形成された雄ネジと、前記注口部の内壁に形成されるとともに前記雄ネジと螺合する雌ネジと、を含むことが望ましい。また、前記再装着機構は、少なくとも、前記複数の筒セットのうち最も基体側に位置する筒セットに設けられる、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、摘み部は、キャップ部の外壁にのみ設けられているため、弱化部の破断により形成される注ぎ口の横に左右に張り出す部材は存在しないことになる。その結果、本発明の注出口によれば、口径が選択可能であるとともに、流体をより安定して注出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態である口付袋状容器の正面図である。
【図2】第一実施形態に係る注出口の斜視図である。
【図3】第一実施形態に係る注出口の一部破断した正面図である。
【図4】第二実施形態に係る注出口の斜視図である。
【図5】第二実施形態に係る注出口の一部破断した正面図である。
【図6】第二実施形態に係る注出口の上面図である。
【図7】第三実施形態に係る注出口の斜視図である。
【図8】第三実施形態に係る注出口の一部破断した正面図である。
【図9】他の注出口の一部破断した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である口付袋状容器10の斜視図である。また、図2は、口付袋状容器10に用いられる注出口14の斜視図である。さらに、図3は、この注出口14の一部破断正面図である。
【0017】
本実施形態の口付袋状容器10は、図1に示すとおり、袋状容器12と、当該袋状容器12の端部に固着される注出口14と、に大別される。袋状容器12は、いわゆるパウチ容器であり、合成樹脂フィルムなどのフレキシブルシートから形成される。注出口14は、この袋状容器12の一部に形成される開口部に、公知のヒートシール技術によりされる。なお、図1では、袋状容器12の上端辺と側端辺とが交わる角部を斜めに切り落として形成される斜辺に注出口14を固着しているが、注出口14は、他の部位に固着されてもよい。例えば、袋状容器12の上端辺や、下端辺に、注出口14を固着するようにしてもよい。
【0018】
注出口14は、袋状容器12にヒートシールされる基体16と、当該基体16の上面から立脚する筒体18と、に大別される。この基体16および筒体18は、合成樹脂などにより一体成形されている。基体16は、さらに、袋状容器12にヒートシールされるシール部40と、当該シール部40の上側に配置された鍔部42と、に大別される。鍔部42の下側に位置するシール部40は、断面略楕円形(より正確には二つの円弧が線対称に向かい合う略舟形)の筒状体であり、このシール部40の外側面に袋状容器12を構成するフレキシブルシートがヒートシールされる。
【0019】
鍔部42の上面から立脚する筒体18は、その内部に袋状容器12の内部に連通する注出路が形成された略筒状部材である。筒体18の上端面は、開栓前の状態では、閉塞されており、流体の流出が防止されている。
【0020】
ここで、本実施形態の筒体18は、複数の筒セット20a,20b(以下、特に区別しない場合は、添字アルファベットを省略し、「筒セット20」という。他部材も同じ)に大別される。すなわち、筒体18は、下側に位置する第一筒セット20aと、当該第一筒セット20aの上端に接続された第二筒セット20bと、に大別される。各筒セット20は、略円筒状の注口部22a,22bと、当該注口部22の上端に接続されたキャップ部24a,24bと、を備えている。したがって、本実施形態の筒体18は、鍔部42側から順に、第一注口部22a、第一キャップ部24a、第二注口部22b、第二キャップ部24bが並ぶ構成となっている。
【0021】
注口部22は、開栓時に、対応するキャップ部24が切り離された場合に、流体が注ぎ出る注ぎ口として機能する円筒である。この注口部22の内径は、筒セット20ごとに異なっており、本実施形態では、第一注口部22aに比べて第二注口部22bのほうが小径となっている。つまり、本実施形態では、上側の筒セット20ほど、注口部22の口径が小さくなっている。
【0022】
キャップ部24は、対応する注口部22の上端に接続され、当該注口部22からの流体の外部流出を阻害する部材である。このキャップ部24の径は、対応する注口部22とほぼ同じか僅かに小さくなっている。このキャップ部24は、開栓時には、対応する注出口14から切り離され廃棄される。なお、図3から明らかなとおり、第一キャップ部24aは、第一注口部22aおよび第二注口部22bに連通するべく、その上端および下端が開口されている。また、第二キャップ部24bは、第二キャップ部24bに連通するべく、その下端は開口されているものの、その上端は、流体の外部流出を防止するべく閉塞されている。
【0023】
各キャップ部24は、破断容易な弱化部25を介して、対応する注口部22に接続されている。本実施形態では、肉厚を破断容易な程度に薄くすることで弱化部25を形成している。そして、かかる弱化部25を設けることで、キャップ部24を、対応する注口部22に対して、ねじり回すことで、キャップ部24より上側が、対応する注口部22から切り離されるようになっている。
【0024】
キャップ部24の外壁には、弱化部25のねじ切り動作の際、指をかける摘み部30が形成されている。この摘み部30は、正面向かって左右に張り出した板状部材である。左右に張り出すことにより、ユーザは、キャップ部24を中心とする弧状の力がかけ易くなる。すなわち、ねじ切る動作の際、例えば、左側の摘み部30の一面(前面または背面)に一つの指を、右側の摘み部30の他面(背面または前面)に他の指を引っ掛け、手首をひねれば、容易に、キャップ部24を中心とする円状の力がかけることができ、結果として、容易に弱化部25をねじ切ることができる。
【0025】
ところで、この摘み部30は、いずれも、袋状容器12の表面とほぼ平行な平面上に配置されている。かかる配置とすることで、口付袋状容器10全体として厚みを抑えることができる。また、全ての摘み部30の方向を揃えることで、意図しない弱化部25の破断が防止できる。例えば、搬送時などに、第一キャップ部24aに設けられた第一摘み部30aに、何らかの原因で、面に垂直な方向の力が加わったとする。このとき、第二キャップ部24bに設けられた第二摘み部30bが、第一摘み部30aと異なる平面上に設けられていた場合、面に垂直な方向の力は第一摘み部30aだけで受けとめなければならなくなる。そして、当該力の大きさによっては、第一摘み部30a、ひいては、第一キャップ部24aが第一注口部22aに対してねじ回され、意図しない弱化部25aの破断が生じるおそれがある。一方、第一摘み部30a、第二摘み部30bが、同一平面上に設けられている場合、面に垂直な方向の力は、第一摘み部30a、第二摘み部30bの両方で受けることができる。その結果、一つの摘み部30に加わる力を低減でき、摘み部30、ひいてはキャップ部24の注口部22に対するねじ回しを効果的に防止することができる。そして、結果として、意図しない弱化部25の破断を防止できる。
【0026】
以上が、注出口14の構成である。以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、一つの注出口14に、口径の異なる二つの注口部22が設けられている。そして、適宜、切り離すキャップ部24を選択することにより、注ぎ口の口径を選択できる。例えば、袋状容器12に収容されている流体が高粘度である場合、ユーザは、第一キャップ部24aを第一注口部22aに対してねじ回し、第一キャップ部24aより上側部分を切り離せばよい。この場合、袋状容器12には、大径の第一注口部22aが残存する。この大径の第一注口部22aを介して流体を注ぐことで、高粘度であっても、良好に流体を注ぐことができる。
【0027】
一方、袋状容器12に収容されている流体が低粘度の場合、注ぎ口が大径では、注ぐ際の流体の勢いが大きくなりすぎ、流体が飛び散ったりするおそれがある。したがって、その場合、ユーザは、第二キャップ部24bを第二注口部22bに対してねじ回し、第二キャップ部24bのみを切り離せばよい。この場合、小径の第二注口部22bが、上端開口した状態で残存する。また、このとき、第一注口部22a、第一キャップ部24aは、この第二注口部22bに流体を案内する流出路として機能する。そして、この小径の第二注口部22bを介して流体を注ぐことで、低粘度であっても、良好に流体を注ぐことができる。
【0028】
なお、第一キャップ部24aおよび第二キャップ部24bのいずれを切り離すべきかは、予め、流体を製品として出荷する、メーカ側で決定しておく。そして、袋状容器12や、注出口14の表面に、切り離すべきキャップ部24の情報を記載しておくことが望ましい。いずれにしても、このように、一つの注出口14で、注ぎ口の口径が複数選択できるようにすることで、口付袋状容器10の製造コストが低減でき、さらに、生産管理を簡易化できる。すなわち、口径が選択でき得ない従来の注出口14の場合、取り扱う流体の種類(製品種類)ごとに、異なる注出口14を用意しなければいけない。この場合、製品ごとに注出口14の金型やシールバーの作成が必要となり、費用負担が大きくなっているほか、型替えなどの生産性がアイテムごとに必要という問題があった。一方、本実施形態のように、一つの注出口14で、注ぎ口の口径が複数選択できることにより、取り扱う流体に応じて、異なる注出口14を用意する必要がなくなる。
【0029】
ところで、既述したように、本実施形態において、最終的に注ぎ口として機能する、第一注口部22aおよび第二注口部22bは、いずれも、外壁に大きく張り出した部材が設けられていない円筒形部材である。このように注口部22の外壁に張り出した部材を設けないことにより、流体をより安定して注ぐことができる。すなわち、例えば、袋状容器12に収容されている詰め替え用液体を、プラスチック製容器に詰め替える場合、通常、注出口14の先端をプラスチック製容器の開口に差し込んだ状態で流体を注ぐのが望ましい。しかし、かかる場合において、注出口14の先端となる注口部22の外壁に摘み部30のように大きく張り出した部材が存在すると、当該注口部22をプラスチック製容器の開口に差し込めず、不安定な状態でしか流体を注ぎ入れることができなくなる。また、収容されている流体が、飲料や流動食(クラッシュゼリーなど)の場合、ユーザは、注出口14の先端に直接口をつけて流体を飲むことが予想される。この口をつける注口部22の外壁に摘み部30のように大きく張り出した部材があると、ユーザは違和感を覚えるばかりでなく、場合によっては、流体が非常に飲みづらくなることが予想される。また、一部においては、チューブなどの他部材を注ぎ口に装着したいという要望もあるが、注口部22の外壁に摘み部30のように大きく張り出した部材があると、こうした他部材が装着できないことになる。
【0030】
そこで、本実施形態では、最終的に注ぎ口となる注口部22の外壁には摘み部30のような大きく張り出した部材を設けず、切り離されるキャップ部24に摘み部30を形成している。これにより、キャップ部24の切り離しを容易にしつつ、安定して流体を注ぐことができる。
【0031】
次に、第二実施形態について説明する。図4は、第二実施形態にかかる注出口14の斜視図である。また、図5は、注出口14の一部破断した正面図である。また、図6は、注出口14の上面図である。
【0032】
この注出口14は、第一実施形態の注出口14と類似の構成となっている。すなわち、注出口14は、袋状容器12にヒートシールされる基体16と、当該基体16の上面から立脚する筒体18と、に大別される。また、筒体18は、基体16側から順に、第一注口部22aおよび第一キャップ部24aからなる第一筒セット20aと、第二注口部22bおよび第二キャップ部24bからなる第二筒セット20bと、が順番に並んでいる。そして、第一注口部22aと第一キャップ部24aとの間、および、第二注口部22bと第二キャップ部24bとの間には、破断容易な程度に薄肉の弱化部25a,25bが設けられている。また、第一キャップ部24a、第二キャップ部24bの外壁には、左右に張り出した摘み部30a,30bが設けられている。そして、摘み部30に指を引っ掛けて、所望のキャップ部24を対応する注口部22に対してねじ回すことで、当該キャップ部24から上側を切り離せるようになっている。
【0033】
ここで、本実施形態の注出口14では、上記構成に加え、さらに、弱化部25破断のために行うキャップ部24のねじり方向を規制する規制部を設けている。規制部としては、種々の構成が考えられるが、本実施形態では、注口部22の外壁に設けられた突起部31a,31bを規制部として用いている。
【0034】
この突起部31は、いずれも、キャップ部24を所定の方向にねじった際に摘み部30に当接する位置に設けられており、この当接により、キャップ部24の当該所定方向へのねじりを阻害する。より具体的に説明すると、図4、図6に示すように、第一注口部22aの外壁には、右側の第一摘み部30aの手前側、および、左側の第一摘み部30aの奥側に突起部31aが設けられている。かかる位置に突起部31aを設けた場合、第一キャップ部24を上面視右回り方向(図6における右回り方向)に捻ろうとしても、摘み部30aと突起部31aとが干渉してしまい、第一キャップ部24の右回り方向へのねじりが阻害される。換言すれば、かかる突起部31aを設けることにより、第一キャップ部24aは、左回り方向にしかねじれないことになる。
【0035】
一方、第二注口部22bの外壁には、右側の第二摘み部30bの奥側、および、左側の第二摘み部30bの手前側に突起部31bが設けられている。かかる位置に突起部31bを設けた場合、第二キャップ部24bは、右回り方向にしかねじれないことになる。
【0036】
つまり、本実施形態では、規制部(突起部31)により、第一キャップ部24aは、左回りに方向にしかねじれず、第二キャップ部24bは右回り方向にしかねじれないことになる。
【0037】
かかる構成とするのは次の理由による。既述の説明で明らかなとおり、本実施形態の注出口14は、注ぐ流体の性質(粘度など)などに応じて、第一弱化部25aまたは第二弱化部25bのいずれかを選択し、破断することにより開封される。しかし、ユーザのミスにより、本来、破断すべき弱化部25とは異なる弱化部25を、誤って破断してしまう場合もある。ここで、本来、下側に位置する第一弱化部25aを破断(第一注口部22aを開封)しなければいけないのに、誤って、上側に位置する第二弱化部25bを破断(第二注口部22bを開封)してしまった場合には、大した問題はない。この場合は、注出口14に残存している第一弱化部25aを、再度、破断すれば、第一注口部22aを注ぎ口として利用できる。
【0038】
一方、本来、上側に位置する第二弱化部25bを破断(第二注口部22bを開封)しなければいけないのに、誤って、上側に位置する第一弱化部25aを破断(第一注口部22aを開封)してしまった場合には大きな問題となる。この場合、小径の第二注口部22bは、第二キャップ部24bとともに切り離されてしまっているので、小径の第二注口部22bを注ぎ口として用いることが不可能となる。
【0039】
そこで、本実施形態では、こうしたミスを低減するために、第一キャップ部24aは、左回りにしかねじれないようにしている。すなわち、ユーザの多くは、右利きであることが多く、右回りにねじることが自然と言える。換言すれば、本実施形態の注出口14によれば、ユーザは、第一キャップ部24aを切り離すことを明確に意識しない限り、切り離しにくい構成になっているといえる。その結果、第二キャップ部24bを切り離すべきなのに、誤って第一キャップ部24aを切り離すといったミスを効果的に低減できる。
【0040】
なお、本実施形態では、第一筒セット20a、第二筒セット20bの両方に、キャップ部24のねじり方向を規制する規制部(突起部)を設けている。しかし、規制部は、少なくとも、複数の筒セット20のうち最も基体16側に位置するセット(すなわち第一筒セット20a)に設けられていれば、必ずしも、全ての筒セット20に設けられていなくてもよい。また、本実施形態では、注口部22の外壁に設けた突起部31を、規制部として利用しているが、キャップ部24のねじり方向を規制できるのであれば、他の部材を規制部として用いてもよい。例えば、摘み部30の形状を、所望の方向にしか力を掛けにくい形状にし、当該形状の摘み部30を規制部として用いてもよい。ここで所望の方向にしか力を掛けにくい形状としては、種々考えられるが、例えば、摘み部30を、指を引っ掛けるべき面のみを平坦面、他方の面が球面となった半球状としてもよい。
【0041】
次に、第三実施形態について説明する。図9は、第三実施形態に係る注出口14の斜視図である。また、図9は、注出口14の一部破断正面図である。
【0042】
この注出口14は、第一実施形態の注出口14と類似の構成となっている。すなわち、注出口14は、袋状容器12にヒートシールされる基体16と、当該基体16の上面から立脚する筒体18と、に大別される。また、筒体18は、基体16側から順に、第一注口部22aおよび第一キャップ部24aからなる第一筒セット20a、第二注口部22bおよび第二キャップ部24bからなる第二筒セット20bが順番に並んでいる。そして、第一注口部22aと第一キャップ部24aとの間、および、第二注口部22bと第二キャップ部24bとの間には、破断容易な程度に薄肉の弱化部25a,25bが設けられている。また、第一キャップ部24a、第二キャップ部24bの外壁には、左右に張り出した摘み部30a,30bが設けられている。そして、摘み部30に指を引っ掛けて、所望のキャップ部24を対応する注口部22に対してねじ回すことで、当該キャップ部24から上側を切り離せるようになっている。
【0043】
ここで、本実施形態の注出口14では、上記構成に加え、さらに、弱化部25の破断により、キャップ部24を注出口14から切り離した後に、当該キャップ部24を注出口14に再度装着する再装着機構が設けられている。この再装着機構は、複数の筒セット20全てに設けられてもよいが、本実施形態では、最も下側に位置する第一筒セット20aにのみ設けている。
【0044】
すなわち、本実施形態では、第一注口部22aの内壁に設けられた雌ネジ34および第一キャップ部24aの外壁に設けられた雄ネジ32で再装着機構を構成している。第一キャップ部24aの外壁に設けられた雄ネジ32は、第一注口部22aの内壁に設けられた雌ネジ34に螺合可能な大きさとなっている。そのため、第一弱化部25aを破断して、第一キャップ部24aより上側を注出口14から切り離した後でも、第一キャップ部24aの雄ネジ32を、第一注口部22aに設けられた雌ネジ34に螺合することで、第一キャップ部24aで第一注口部22aを栓できるようになっている。そして、その結果、間違って第一弱化部25aを破断したとしても、当該間違いを修正することができる。
【0045】
すなわち、本来、第二弱化部25bを破断すべきなのに、誤って第一弱化部25aを破断したとしても、切り離された第一キャップ部24aを螺合により第一注口部22aに再装着すれば、間違った破断を修正することができる。そして、第一キャップ部24aを再装着した状態で、第二弱化部25bを破断すれば、当初の目的どおり、小径の第二注口部22bを開口することができる。
【0046】
つまり、本実施形態のように、キャップ部24を注出口14から分離した後に、当該キャップ部24を注出口14に再度装着する再装着機構を設けることにより、間違って破断したとしても、当該間違いを修正することができる。なお、本実施形態では、第一筒セット20aのみに再装着機構を設けているが、他の筒セット20にも再装着機構を設けてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、螺合により再装着を行っているが、他の方法で再装着を行ってもよい。例えば、図9に示すように、第一キャップ部24aを上に向かうにつれて大径になる形状とし、この第一キャップ部24aを切り離した後、第一注口部22aの内部に挿入し、嵌合することで再装着する構成としてもよい。
【0048】
また、これまでの説明では、筒セット20を二つのみとしているが、より多数の筒セット20を設けてもよい。筒セット20の個数を増やすことにより、注ぎ口の口径をより自由に選ぶことができる。また、これまでの説明では、上側に近づくにつれて、注口部22の口径が小さくなるようにしているが、必ずしも、そうでなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 口付袋状容器、12 袋状容器、14 注出口、16 基体、18 筒体、20 筒セット、22 注口部、24 キャップ部、25 弱化部、30 摘み部、31 突起部、32 雄ネジ、34 雌ネジ、40 シール部、42 鍔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状容器に取り付けられる注出口であって、
前記袋状容器に固着される基体と、
前記基体上面から立脚し、前記袋状容器に連通する注出路が内部に形成されるとともに上端面が閉塞された筒体と、
を備え、
前記筒体は、略筒状の注口部と当該注口部の上端に接続されたキャップ部とからなる筒セットが上下に複数並ぶ構成であり、
前記複数の筒セットの注口部は、互いに、内径が異なっており、
各キャップ部は、破断可能な薄肉の弱化部を介して対応する注口部の上端に接続されるとともに、その外壁に前記弱化部を破断する際に指をかける摘み部が設けられている、
ことを特徴とする注出口。
【請求項2】
請求項1に記載の注出口であって、
前記複数の筒セットのうち少なくとも一つは、前記弱化部破断のために行う前記キャップ部のねじり方向を規制する規制部が設けられている、ことを特徴とする注出口。
【請求項3】
請求項2に記載の注出口であって、
前記規制部は、前記注口部の外壁に設けられ、前記キャップ部をねじった際に前記摘み部に当接する突起部である、ことを特徴とする注出口。
【請求項4】
請求項2または3に記載の注出口であって、
前記規制部は、少なくとも、前記複数の筒セットのうち最も基体側に位置する筒セットに設けられる、ことを特徴とする注出口。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の注出口であって、
前記複数の筒セットのうち少なくとも一つは、前記弱化部破断により、前記キャップ部を対応する注口部から切り離した後に、当該キャップ部を前記注口部に再度装着する再装着機構が設けられている、ことを特徴とする注出口。
【請求項6】
請求項5に記載の注出口であって、
前記再装着機構は、前記キャップ部の外壁に形成された雄ネジと、前記注口部の内壁に形成されるとともに前記雄ネジと螺合する雌ネジと、を含むことを特徴とする注出口。
【請求項7】
請求項5または6に記載の注出口であって、
前記再装着機構は、少なくとも、前記複数の筒セットのうち最も基体側に位置する筒セットに設けられる、ことを特徴とする注出口。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−207486(P2011−207486A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74457(P2010−74457)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】