説明

注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物、その硬化物

【課題】高い光線透過率、基材への密着性、耐屈曲性、低い吸水率を有する注型用活性エネルギー線硬化性樹脂を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから合成されるウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリロイルピペリジン(B)、並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物:基材上に、前述の樹脂組成物の硬化物を積層した光学部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、高い光線透過率、基材への密着性、耐屈曲性、低い吸水率を有する硬化物を製造するに適した、作業性の良好な注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。更に詳しくはモールドプリント賦型に適した、注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、強靭性、柔軟性、耐擦傷性、耐薬品性等の優れた特性を持たせることが可能であり、更に活性エネルギー線により短時間で硬化する特性を持ち、一般的に透明性に優れるという点で、特に光学部品の量産に向いている。
【0003】
近年、携帯電話等の電子機器において機器の薄型化のために、特にシート状またはフィルム状の透明プラスチック基材上に樹脂硬化物からなる微細で複雑な凹凸表面形状を形成した部品が用いられている。例えば携帯電話のキーに相当する部分に、凹凸形状を設けた樹脂賦型物(以下、「キーシート」という)や、携帯電話のキー裏面にクッション材として、凸形状を設けた樹脂賦型物(以下、「プランジャー」という)を用いることが挙げられる。このような場合、賦型物には高い光線透過率、基材への密着性、耐屈曲性、低い吸水率が求められている。
【0004】
キーシートやプランジャーの製造方法としては、表面に複数の凹部が形成された円筒状またはロール状の版体をその軸回りに回転させながら、凹部に活性エネルギー線重合性樹脂を充填し、透明プラスチック基材上でラミネートした後、充填された樹脂を硬化させ、版体から取り出すことにより賦型物を製造する方法が特許文献1により開示されている。
【0005】
しかし、この文献で用いられている活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、その成分としてイソボルニルアクリレートを多く含んでいるためプラスチック基材との密着性が低いといった問題がある。高極性の環構造モノマーを多く使うことで、基材への密着性を向上させることができるが、吸水率も大幅に上昇してしまう。
【0006】
一方、アクリロイルピペリジンを用いた例として、特許文献2では優れた強伸度、耐熱性を持つ樹脂組成物が、特許文献3では優れた耐吸水性、引張強度を持つ樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−24803号公報
【特許文献2】特開平05−209022号公報
【特許文献3】特開2005−82691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、その成分としてアルカリ性コロイダルシリカ懸濁水溶液を含んでいるために吸水率が高いことから、キーシートやプランジャー用途には不適切であった。また特許文献3の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、その成分として特定の希釈剤を含むウレタンアクリレートを含有しているため、基材に対する密着力がキーシートやプランジャー用途でも十分であるとは言い難く、その改良が望まれていた。
【0009】
従って、本発明は高い光線透過率、基材への密着性、耐屈曲性、低い吸水率を有する注型用活性エネルギー線硬化性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから合成されるウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリロイルピペリジン(B)、並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物にある。
【0011】
また、本発明の要旨は、基材上に、前述の樹脂組成物の硬化物を積層した光学部品にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、得られる硬化物が高い光線透過率、基材への密着性、耐屈曲性、低い吸水率を有するという点で、活性エネルギー線での注型重合による成形材料、特に、プラスチックフィルム基材上への賦型に非常に適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから合成されるウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリロイルピペリジン(B)、並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含む。
【0014】
[ウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)]
本発明の樹脂組成物は、基材との密着性や耐屈曲性を持たせるため、ウレタンポリ(メタ)アクリレート(以下「(A)成分」という)を含有する。(A)成分は、以下に説明するポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応により得られる。
【0015】
[ポリイソシアネート(a1)]
ポリイソシアネート(以下「(a1)成分」という)の具体例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3量体〜5量体等を用いることもできる。これらの中で、得られる(A)成分の粘度が低く注型の作業性が向上する点や、硬化物の透明性が高いという点で、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0016】
[ポリオール(a2)]
ポリオール(以下「(a2)成分」という)の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、スピログリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール等の単量体またはこれらの単量体から選ばれる少なくとも1種から構成されるポリアルキレンポリオール、前記単量体にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリカプロラクトンポリオール、前記単量体と、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート及びジフェニルカーボネート等の炭酸エステルのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール等が使用可能である。これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。これらの中で、硬化物に耐屈曲性を付与するという点で、ポリアルキレンポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0017】
[ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)]
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(以下「(a3)成分」という)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;それらのカプロラクトン変性品やアルキルオキサイド変性品等に代表されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート変性品;ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のモノエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物等が挙げられる。これらの中で、得られる(A)成分の粘度が低く、注型の作業性が向上するという点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
(a1)成分と(a2)成分、(a3)成分との付加反応は、従来知られる各種の方法に従って行なうことができる。例えば、30〜90℃に加温した(a1)成分とジブチル錫ジラウレート等の触媒との混合物中に、(a2)成分を2〜6時間かけて滴下し、さらに1〜3時間反応させ、(a3)成分を1〜3時間かけて滴下し、さらに1〜3時間反応させることにより、(A)成分を合成できる。(A)成分の合成に用いる(a1)成分、(a2)及び(a3)成分の使用割合は、0.5≦((a1)成分のイソシアネート基総数)/((a2)成分及び(a3)成分のヒドロキシル基総数)≦1.0となるようにするのが好ましい。0.5以上にすることによって、硬化物に基材への密着性を付与することができる。一方、1.0以下にすることによって、イソシアネート基の反応率が高くなり、樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。特に好ましい(a1)成分及び(a2)成分の使用割合は、0.9≦(a1)成分のイソシアネート基総数/(a2)成分及び(a3)成分のヒドロキシル基総数≦1.0である。
【0019】
ウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は、下限値が500以上であることが好ましく、更には2,000以上であることがより好ましい。また、その上限
値は40,000以下であることが好ましく、更には20,000以下であることがより好ましい。前記の各下限値は、得られる樹脂硬化物の耐屈曲性の点で意義がある。また、前記の各上限値は、粘度を低くして注型作業性を向上する点で意義がある。また、ウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)は、ウレタンジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。これは、基材との密着性が良い賦型物を得るという点で意義がある。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分の配合量は、(A)、(B)を含む重合性成分全体の合計100質量%を基準として、25〜75質量%が好ましく、35〜65質量%がより好ましい。前記各下限値は、耐屈曲性が良く、基材との密着性が良い賦型物を得る点で意義がある。また前記各上限値は、粘度を低くして注型作業性を向上する点で意義がある。
【0021】
[(メタ)アクリロイルピペリジン(B)]
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリロイルピペリジン(以下「(B)成分」という)を含有する。この(B)成分は、特に低い吸水性を維持したまま、樹脂硬化物の基材との密着性、耐屈曲性を向上させる作用を奏する。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、(B)成分の配合量は、(A)、(B)を含む重合性成分全体の合計100質量%を基準として、5〜55質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましい。前記各下限値は、樹脂硬化物の基材との密着性、耐屈曲性を向上する点で意義がある。また前記各上限値は、良好な硬化性を得るという点で意義がある。
【0023】
[活性エネルギー線重合開始剤(C)]
本発明の樹脂組成物において、活性エネルギー線重合開始剤(C)(以下「(C)成分」という)は、活性エネルギー線照射により効率よく樹脂硬化物を得るための成分である。活性エネルギー線重合開始剤(C)としては、主として波長300〜400nmの紫外線に感応してラジカル源を発生するものが好ましい。
【0024】
活性エネルギー線重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
、メチルフェニルグリオキシレ−ト、エチルフェニルグリオキシレ−ト、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2-メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上の混合系で用いてもよい。特に、樹脂硬化物に高い光線透過率や基材への密着性を付与できる点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2-メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物において、(C)成分の添加量は、(A)成分、(B)成分を含む重合性成分全体の合計100質量%に対して、0.005〜5質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。前記各下限値は、樹脂硬化物の光線透過率や基材への密着性を向上する点で意義がある。また前記各上限値は、硬化物の透明性を確保する点で意義がある。
【0026】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は必要に応じ、(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも1つ有する(A)成分、(B)成分以外の重合性成分、添加剤として酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、樹脂重合体、充填材、溶剤等を配合してもよい。
【0027】
重合性成分の具体例としては、アクリルアミド、7−アミノ−3,7−ジメチルオク
チル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(A)成分以外のポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンモノ(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上の混合系で用いてもよい。
【0028】
酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物が挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレートに代表されるサリチル酸系紫外線吸収剤、ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0030】
ブルーイング剤の具体例としては、通常、青系、紫系、緑系の顔料が挙げられる。さらに、必要に応じて赤系、橙系、茶系等の顔料を混合することによって、調色することができる。赤系、橙系、茶系等の顔料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、キナクリドン系化合物、ペリレン系化合物等が挙げられる。
【0031】
顔料の具体例としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム
赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラックが挙げられる。
【0032】
消泡剤の具体例としては、非シリコーン系消泡剤であるポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のポリシロキサン系消泡剤や、非シリコーン系消泡剤であるアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリル酸共重合物等のアクリル酸系消泡剤や、ブタジエン共重合物系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤が挙げられる。
【0033】
熱安定剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(混合モノ−およびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジメチルベンゼンホスホネート、トリメチルホスフェートが挙げられる。
【0034】
光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン類が挙げられる。
【0035】
帯電防止剤の具体例としては、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0036】
防曇剤の具体例としては、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシプロピルウレタンが挙げられる。
【0037】
樹脂重合体の具体例としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
【0038】
充填材の具体例としては、有機あるいは無機からなる微粒子、フィラーが挙げられる。微粒子、フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、石英粉、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、マイカ、タルクが挙げられる。
【0039】
溶剤の具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートが挙げられる。溶剤の配合量は(A)、(B)を含む重合性成分全体の合計100質量%あたり、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
[樹脂組成物の硬化方法]
本発明の樹脂組成物の硬化方法としては、樹脂組成物を注型重合により硬化させる方法が好ましい。具体的には、鋳型内に樹脂組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射することにより重合硬化させて、所望形状に賦型された樹脂硬化物を得ることができる。また、鋳型の所望位置に基材を配置した状態で重合硬化させれば、所望形状の樹脂硬化物を基材上に有する賦型物を得ることができる。
【0041】
特に、プラスチックフィルム等のプラスチック基材上へのモールドプリント賦型が好ましい。モールドプリント賦型とは、上面が開放された凹部を有する鋳型に樹脂組成物を流し込み、次いでその上面をプラスチック基材でシールし、活性エネルギー線を照射することにより樹脂組成物を重合硬化させて、プラスチック基材上に所望形状の樹脂硬化物を一体成形し、その後脱型する方法である。
【0042】
プラスチック基材としては、透明プラスチックフィルムが好ましい。その場合は、基材面側から活性エネルギー線を照射できる。具体例としては、アクリル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系および塩化ビニル系のプラスチックフィルムが挙げられる。また、基材には、予めプライマー、エッチング等の易付着処理を施すことが好ましい。
【0043】
活性エネルギー線の照射源としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量としては500〜2,000mJ/cmの範囲であることが好ましい。
【0044】
[光学部品]
本発明の光学部品とは、電子機器のスイッチ、クッション部位や、製品表層の装飾、プリズムシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズといったシート状レンズ、液晶テレビ等の前面パネルや拡散板、携帯電話部材に用いられるキーシート等の透明部材のことである。
【0045】
[キーシート]
本発明のキーシートとは、基材上に本発明の樹脂硬化物からなる層を有することを特徴とする。このキーシートは、例えば、所定の位置(キーに相当する位置)に突起を有する樹脂硬化物層がプラスチック基材上に形成された賦型シートまたは賦型フィルムから成る。そして、このキー部分を押すと、内部回路の接点が樹脂硬化物層の突起の押圧により接続するように構成される。このようなキーシートは、特に、携帯電話機等の入力手段である複数のキーが集合配置された部分の薄型化に有用である。
【0046】
[プランジャー]
本発明のプランジャーとは、基材上に本発明の樹脂硬化物からなる層を有することを特徴とする。このキーシートは、例えば、所定の位置(キーの裏側相当する位置)に突起を有する樹脂硬化物層がプラスチック基材上に形成された賦型シートまたは賦型フィルムから成る。そして、キー部分を押すと、内部回路の接点が樹脂硬化物層の突起の押圧により接続するように構成される。このようなプランジャーは、特に、携帯電話機等の入力手段である複数のキーが集合配置された部分の薄型化に有用である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例を用いて説明する。なお、以下の記載において「部」は質量部を意味する。
【0048】
[合成例1](ウレタンジアクリレート(A1)の製造)
5リットルの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製、商品名デスモジュールI)220部、ジブチル錫ジラウレート(旭電化工業(株)製、商品名アデカスタブBT−11)0.1部を入れた。この混合物を70℃とし、攪拌しながらポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学(株)製、商品名プラクセル205)260部を4時間にわたって滴下した。さらに、ハイドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、商品名MQ)0.3部を加えた。この混合物を攪拌しながら2時間かけて75℃まで昇温し、さらに攪拌しながら2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学(株)製、商品名HEA)120部を2時間にわたって滴下した。滴下終了後、更に2時間反応を続行し、ウレタンジアクリレート(A1)を得た。
【0049】
ウレタンジアクリレート(A1)のGPC(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)を、GPCシステム(東ソー(株)製、商品名HLC−8220GPC)を用いて以下の条件にて測定した。その結果、Mw3,600であった。
カラム:「TSK−gel superHZM−M」、「TSK−gel HZM−M」、「TSK−gel HZ2000」、
溶離液:THF、
流量:0.35ml/min、
注入量:10μl、
カラム温度:40℃、
検出器:UV−8020。
【0050】
[合成例2](アクリロイルピペリジン(ACPD)の製造)
1リットルの4つ口フラスコに、ピペリジン(和光純薬工業(株)製)85部、2−ブタノン(和光純薬工業(株)製)100部を入れた。この混合物を10℃とし、攪拌しながら、アクリル酸クロライド(和光純薬工業(株)製)91部、トリエチルアミン(和光純薬工業(株)製)100部、2−ブタノン(和光純薬工業(株)製)100部、フェノチアジン(和光純薬工業(株)製)0.1部の混合物を1時間にわたって滴下した。更に、25度の状態で4時間攪拌を行い、アクリロイルピペリジン(ACPD)を得た。
【0051】
[合成例3](エポキシジアクリレート(X1)の製造)
5リットルの4つ口フラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業(株)製、商品名;アデカレジンEP−4100)200部、アクリル酸72部、トリエチルアンモニウムクロライド(日本油脂(株)製、商品名;TEMA−Cl)2.3部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部を入れた。この混合物を70℃まで1時間で昇温した後1時間保持、80度まで0.5時間で昇温した後1時間保持、90度まで0.5時間で昇温した後1時間保持、更に95度まで0.5時間で昇温した後6時間保持し、エポキシジアクリレート(X1)を得た。そのMwは、760であった。
【0052】
[実施例1]
(1)樹脂組成物の調製:
(A)成分としてウレタンジアクリレート(A1)60部、(B)成分としてアクリロイルピペリジン40部、(C)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア184)1部を室温で混合攪拌して樹脂組成物を得た。
【0053】
(2)鋳型1および2の作製:
縦120mm、横120mmおよび厚さ1.8mmのガラス板の四辺上に、幅25mmおよび厚さ25μmの両面粘着テープ(トラスコ中山(株)製、品番TRT−25)を貼り、この両面粘着テープの上に、幅25mmおよび厚さ0.5mmの鉄板(大祐機材(株)製、圧伸鋼板)を、ガラス板の端面と鉄板の端面とが揃うように積層して鋳型1を作製した。また、前記と同様のガラス板の四辺上に、幅10mmおよび厚さ25μmの粘着テープ(日東電工(株)製、品番No.31B)を1枚積層して鋳型2を作製した。
【0054】
(3)サンプルの作製:
前記で得た鋳型1の中に、先に調製した樹脂組成物をそれぞれ注入した。次いで、注入した側を、予め易付着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、商品名コスモシャインA4100、厚み188μm)の非易付着処理面でシールした。このフィルム面側から、高圧水銀灯により照度250mW/cm、光量1,000mJ/cmの紫外線を照射し、樹脂組成物を硬化させて鋳型から脱型し、厚みが0.525mmの硬化物フィルム1Aを得た。
【0055】
また、鋳型1の中に樹脂組成物を流し込み、PETフィルムの易付着処理面でシールし、高圧水銀灯により照度250mW/cm、光量100mJ/cmの紫外線を照射し、鋳型から脱型して、PETフィルムの表面に厚みが0.525mmの硬化物層が積層されたフィルム1Bを得た。
【0056】
更に、鋳型2の中に樹脂組成物を流し込み、PETフィルムの易付着処理面でシールし、高圧水銀灯により照度250mW/cm、光量1,000mJ/cmの紫外線を照射し、鋳型から離型して、PETフィルムの表面に厚みが25μmの硬化物層が積層されたフィルム2を得た。そして、以下の物性評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0057】
(4)物性評価:
<E型粘度>
東機産業(株)製の粘度計(商品名VISCOMETER TVE−20H)を用い、JIS−Z8803に従って樹脂組成物のE型粘度を測定した。評価基準としては、E型粘度[mPa・s]が100以上10,000未満である場合を○、これらの範囲以外を×とした。
【0058】
<硬化性>
フィルム1Bの表面硬化性を確認した。硬化物面を指で触りベタツキがない場合を○、ベタツキがある場合を×とした。
【0059】
<光線透過率>
硬化物フィルム1Aの光線透過率(%)を測定した。光線透過率の測定には(株)村上色彩技術研究所製、ヘーズメーターHM−65Wを用いた。光線透過率が92%以上の場合を○、92%未満の場合を×とした。
【0060】
<密着性>
JIS−K5600−5−6に従い、測定を行った。フィルム2の樹脂硬化物5mm×5mmの部分に、縦横1mm間隔でカッターを用いてフィルムまで達する切り込みを入れて、マス目を25個形成した。これに粘着テープ(日東電工(株)製、品番No.31B)を貼り付けてから剥がし、基材に残ったマスの数により密着性を評価した。評価基準としては、分類0又は1の場合を○、2〜5の場合を×とした。
【0061】
<耐屈曲性>
フィルム2の硬化物面を外側にして、180度折り曲げ、賦型物が割れるかどうかを判定した。賦型物が割れなかった場合を○、賦型物が割れてしまった場合を×とした。
【0062】
<吸水率>
JIS−K−7209に従い、測定を行った。硬化物フィルム1Aを、50℃のオーブンに24時間入れ乾燥させた後、23℃の環境下で直ちに計量し、この値をWとした。続いて、23℃の純水に72時間浸漬した後、表面の水分をふき取って23℃の環境下で直ちに計量し、この値をWとした。(Wb−W)/Wを吸水率とした。評価基準としては、吸水率10%未満の場合を○、10%以上の場合を×とした。
【0063】
[実施例2〜8および比較例1〜5]
表1および表2に示す樹脂組成物を用い、その他は実施例1と同様にして、硬化物フィルム1A、賦型フィルム1B、2を作製し、評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1および表2中の略号は以下の通りである。
・「A1」:合成例1で得たウレタンジアクリレート(重量平均分子量3,600)
・「ACPD」:合成例2で得たアクリロイルピペリジン
・「ACMO」:アクリロイルモルホリン((株)興人製、商品名ACMO)
・「THFA」:テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名THFA)
・「IBXA」:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名IBXA)
・「M−327」:カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートであり、一般式(1)の式中においてl+m+nの平均が3である化合物(東亜合成(株)製、商品名M−327)
【0067】
【化1】

【0068】
・「Irg.184」:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア184)
・「X1」:合成例3で得たエポキシジアクリレート(重量平均分子量760)
・「M−6200」:二官能ポリエステルアクリレート(東亜合成(株)製、商品名M−6200)
・「THFMA」:テトラヒドロフルフリルメタクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名THFMA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから合成されるウレタンポリ(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリロイルピペリジン(B)、並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する注型用活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項2】
基材上に、請求項1に記載の樹脂組成物の硬化物を積層した光学部品。
【請求項3】
基材上に、請求項1に記載の樹脂組成物の硬化物を積層したキーシート又はプランジャー。

【公開番号】特開2011−80001(P2011−80001A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234830(P2009−234830)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】