説明

注射に有用なβ−ラクタマーゼ阻害剤を使用したβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制する組成物

本発明は、医薬用途として可能な、注射に有用である、β−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼが介在する抗生物質耐性を抑制する組成物について記載する。本発明は、セフトリアキソン(通常セフトリアキソンナトリウムとして)およびスルバクタム(通常スルバクタムナトリウムとして)を含有する医薬組成物に関する。そのような組成物が、重篤な感染症をともなう入院患者のための抗生物質として筋肉内または静脈内投与に有用であることが判明している。特に、本発明は、アミノカルボン酸キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその薬学的に許容される塩を更に含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物が、通常、非経口的に投与されるための液剤中の微粒子形成に対する抵抗性を強化することが判明した。本発明はまた、使用前に再調製される密閉容器に保存される製剤の細目を提供する。本発明はまた、この組成物を製造するための方法を提供する。本発明は、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムを用いる治療が必要である病状または疾患を有する患者の処置方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムとして市販されているセフトリアキソン(通常、セフトリアキソンナトリウムとして)およびスルバクタム(通常、スルバクタムナトリウムとして)を含有する医薬組成物に関する。そのような組成物が、特にβ−ラクタマーゼ産生菌株による重篤感染症を有する入院患者のための抗生物質として筋肉内または静脈内投与に有用であると判明している。本発明は、アミノカルボン酸キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはその薬学的に許容される塩)を更に含む医薬組成物に関する。本明細書に記載されている医薬組成物は、通常、非経口的に投与される液剤中での微粒子形成に対する抵抗性を、強化すると判明した。
【0002】
発明の背景
ペネム系、セフェム系、オキサセフェム系、モノバクタム系およびカルバペネム系のような、新規な化学的分類に属している強力な新規抗菌剤の導入にもかかわらず、過去15年のβ−ラクタム抗生物質に対する細菌耐性の出現率は、増加してきている。
【0003】
Del Carmen Rodriguez M.らは、論文「San Juan Veterans Affairs Medical Centerにおける大腸菌および肺炎桿菌の臨床分離株での広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の表現型確認」(2004)において、グラム陰性菌(GNB)のβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性の重要な機序としての、ESBLsについて論じている。それらは、広域スペクトルのセファロスポリン系およびモノバクタム系と同様に従来のβ−ラクタム系抗生物質を加水分解する酵素である。
【0004】
Jacoby GA.は、論文「広域スペクトルβ−ラクタマーゼの遺伝学」(1994)において、細菌は、既存のプラスミド媒介性のクラスAおよびクラスDのβ−ラクタマーゼを変質させることによって、アズトレオナム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソンおよび他のオキシイミノ−β−ラクタム類に対して耐性適応してきたことを記述している。
【0005】
Niemeyer DM.は、論文「グラム陰性桿菌におけるβ−ラクタマーゼ誘導の調節:耐性パズルを理解することへの鍵」(1994)において、薬剤耐性微生物に起因する感染症が、抗菌療法の出現以降医学的難題をもたらしてきたことを論じている。耐性菌株の出現により、新規な抗生物質が、この10年までに大成功を伴って利用可能となった。多耐性微生物の出現は、現実の差し迫った公衆衛生の懸念をもたらしている。
【0006】
Danziger LH.とPendland SLは、論文「β−ラクタム抗生物質に対する細菌耐性」(1995)において、米国において最も一般的に処方された抗菌物質が、β−ラクタム抗生物質であることを見い出しており、そして、これらの薬剤に対する細菌耐性の最も一般的な機序は、β−ラクタマーゼによる不活性化である。
【0007】
Medeiros AA.は、研究論文「β−ラクタム抗生物質の創出により加速されたβ−ラクタマーゼの進化および伝播」(1997)において、β−ラクタマーゼが、β−ラクタム系抗生物質に対する細菌耐性の主な機序であることを述べている。
【0008】
Ritter E.らは、論文「手術の集中治療室におけるSHV2−β−ラクタマーゼ含有肺炎桿菌株による院内感染症の発生」(1992)(ドイツ語の論文)において、肺炎桿菌の耐性株が、SHV2−広域スペクトルβ−ラクタマーゼ型を産生することを述べた。このように、その細菌は、セホチアム、セフォタキシムおよびセフトリアキソンのような、第三世代のセファロスポリン系に対して、そして、アミノグリコシド系およびアシルアミノペニシリン系に対しても耐性があった。
【0009】
S. J. Cavalieriらは、論文「クラスI酵素を有する細菌に対するβ−ラクタマーゼ阻害剤併用剤の有効性へのβ−ラクタマーゼ阻害剤の影響」において、スルバクタムおよびクラブラン酸がβ−ラクタマーゼを誘発する能力を、エンテロバクター・クロアカ、シトロバクター・フロインディ、霊菌、および緑膿菌のそれぞれ2つの菌株で評価することを意図した試験を生体内(in vivo)および生体外(in vitro)の両方で行った。そのデータは、β−ラクタマーゼ阻害剤が、それらの併用剤の生体内有効性に影響することができることを示唆している。
【0010】
Ghatole M.らは、論文「グラム陰性桿菌におけるセファロスポリン耐性と広域スペクトルβ−ラクタマーゼ産生の相互関係」(2004)において、β−ラクタマーゼ産生が、抗生物質のβ−ラクタム系に対する耐性を発現する重要な機序であることを論じている。広域抗菌スペクトルの活性および安定性を有するセファロスポリン系薬が、この耐性に打ち勝つために取り入れられたが、ほどなく、本質的に誘発性である、広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBLs)の産生が報告された。
【0011】
Lopez-Hernandez S.らは、論文「アシネトバクター・バウマニ臨床分離株におけるβ−ラクタム剤およびβ−ラクタマーゼ阻害剤の生体外活性」(1999)において、156のアシネトバクター・バウマニ臨床分離株に対する、β−ラクタム剤(アンピシリン、ピペラシリンおよびチカルシリン)、ならびにβ−ラクタマーゼ阻害剤の単独(クラブラン酸、スルバクタム、およびタゾバクタム)およびβ−ラクタム剤との併用(アモキシシリン−クラブラン酸、アンピシリン−スルバクタム、ピペラシリン−タゾバクタム、およびチカルシリン−クラブラン酸)とでの生体外活性を比較した。スルバクタムが、アンピシリン/スルバクタム(それぞれ、2および16mg/l)と同様の、低いMIC(50)およびMIC(90)(それぞれ32mg/l)を有する、良好な生体外活性を示した唯一のβ−ラクタマーゼ阻害剤であった。スルバクタムは、多耐性アシネトバクター・バウマニ感染症の処置にとって、良好な代替療法になりえた。
【0012】
Sadar HS.らは、論文「β−ラクタマーゼ阻害剤とのβ−ラクタム類の3種の併用の生体外活性の比較評価:ピペラシリン/タゾバクタム、チカルシリン/クラブラン酸、およびアンピシリン/スルバクタム」(2000)において、チカルシリン/クラブラン酸が、腸内細菌の85.8%に対して活性を有し、その一方で、アンピシリン/スルバクタムは、試料の83.2%を阻害することを認めた。
【0013】
Finegold SMは、論文「混合感染に関わる細菌に対するβ−ラクタム/β−ラクタマーゼ阻害剤の併用の生体外有効性」(1999)において、混合感染は、通常、その重篤性の原因となる嫌気性病原体および日和見病原体を有する、比較的限られた範囲の細菌に起因することを認めた。恐らく混合病因による、致命的な感染症を有する患者のための最高の治療上の選択をするために、臨床医は、関わっていると思われる細菌、そしてそのほとんどがβ−ラクタマーゼを産生するという事実を認識していなければならない。経験的治療が利用できる選択肢の中で、β−ラクタム/β−ラクタマーゼ阻害剤の併用は、良好な選択の代表例である。その抗菌スペクトルは、好気性および嫌気性病原体の両方を含む。
【0014】
様々のβ−ラクタマーゼ産生菌株の増加に対して有効である低廉な抗生物質製剤を提供する必要があることは、明らかである。非経口的投与可能な形態で提供される製剤の必要性もある。耐性菌株の急速な出現につながらない抗生物質製剤を開発する必要性もある。
【0015】
発明の目的および利点
したがって、本発明の目的および利点は、以下のように記載される:
【0016】
本発明の目的は、β−ラクタマーゼ産生菌株に対して有効な抗生物質製剤を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、β−ラクタマーゼ産生菌株に対する抗生物質製剤を、非経口的投与可能な形態で提供することである。
【0018】
更に、本発明の別の目的は、耐性菌株の急速な出現につながらない抗生物質製剤を開発することである。
【0019】
更なる本発明の目的は、抗生物質製剤をβ−ラクタマーゼに対して有効にする工程を経て治療上安全な用量を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、現行のセフトリアキソンナトリウム注射の総殺菌範囲(total bactericidal range)を強化することである。
【0021】
本発明の概要
【0022】
本発明は、医薬用途として可能な、注射に有用である、β−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制する組成物について記載する。
【0023】
本発明は、セフトリアキソン(通常、セフトリアキソンナトリウムとして)およびスルバクタム(通常、スルバクタムナトリウムとして)を含有する医薬組成物に関する。そのような組成物は、特にβ−ラクタマーゼ産生菌株による重篤感染症の入院患者のための抗生物質として筋肉内または静脈内投与に有用であると判明している。本発明は、アミノカルボン酸キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはその薬学的に許容される塩)を更に含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、通常、非経口的に投与される液剤中での微粒子形成に対する抵抗性を強化すると判明した。本発明はまた、使用前に再調製するために密閉容器中に保存される製剤の細目を提供する。本発明はまた、これらの組成物の製造方法を提供する。本発明は、セフトリアキソンナトリウムおよび/またはスルバクタムナトリウムを用いる処置が必要である病状もしくは疾患を有する患者の治療を提供する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、セフトリアキソン(または、その薬学的に許容される塩;以下「セフトリアキソン塩」と言い、セフトリアキソンナトリウムなど)およびスルバクタム(または、その薬学的に許容される塩;以下「スルバクタム塩」と言い、スルバクタムナトリウムなど)を含有する製剤を提供し、それは、下気道感染症、急性細菌性中耳炎、皮膚および皮膚組織感染症、尿路感染症(複雑性および単純性)、骨盤内炎症性疾患、細菌性敗血症、骨および関節感染症、腹腔内感染症、髄膜炎、外科的予防および手術の前後などの病状においてスルバクタムの追加により影響を受けやすい微生物のセフトリアキソン耐性β−ラクタマーゼ産生株に起因する中等度から重度の感染症の処置で使うことができる。
【0025】
本発明の種々の実施態様を、以下に詳細に記述する。
本発明は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩、および
(b) 所定の重量比の、スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩
を含む、医薬用途として可能な、注射に有用である、β−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制する組成物を基本的に提供する。
【0026】
再調製の際に医薬組成物において起こる微粒子形成を最小化することが望まれる。
【0027】
微粒子は、微量の物質であるためそしてその不均一な組成のため化学分析により定量化することができない、ガス泡以外の流動性があり、出所が不規則の異物からなる。場合により、アミノカルボン酸キレート剤のような粒子抑制剤が、本発明において使われる。驚くべきことに、本発明者により、粒子抑制剤を混ぜ込むことが、再調製された製剤において微粒子形成を低減することが見い出された。任意のキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)または、それらの薬学的に許容される塩(通常、ナトリウム塩として)を含む群より選択される。好ましいキレート剤はEDTAおよびその塩、好ましくは米国薬局方で定義されているエデト酸二ナトリウムであり、これらは、本実施態様で用いることができる。再調製された形態において、本実施態様で使用されるEDTAの量は、約0.002mg/ml〜約10mg/mlの範囲で、より好ましくは、0.003〜2mg/mlの範囲である。
【0028】
本組成物は、更に薬学的に許容される等張化剤を含み、従って、組成物を生理学的に等張性にする。
【0029】
本組成物において、スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩に対する、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩の所定の重量比は、それぞれ、約4:1〜約1:4の範囲、好ましくはそれぞれ、約3:1〜約1:3の範囲、より好ましくはそれぞれ、約2:1〜約1:2の範囲である。
【0030】
セフトリアキソンの薬学的に許容される塩は、セフトリアキソンナトリウムのような、そのナトリウム塩である。
【0031】
セフトリアキソンナトリウムは、(6R,7R)−7−[2−(2−アミノ−4−チアゾリル)グリオキシルアミド]−8−オキソ−[[(1,2,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−5,6−ジオキソ−アズ−トリアジン−3−イル)チオ]メチル]−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸、7−(Z)−(O−メチルオキシム)、二ナトリウム塩、3.5水和物(sesquaterhydrate)であり、白色〜帯黄橙色の結晶性粉末の形態であり、その粉末は、水に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノールに極めて溶けにくい。
【0032】
セフトリアキソンナトリウムは、約0.5g/ml〜約0.6g/mlの範囲のタップ密度を有し、含水率は、化合物の約8%〜約11重量%の範囲である。
【0033】
セフトリアキソンナトリウムの溶液のpHは、約6〜約8の範囲にあり、ここで、溶液は、溶液10部中に化合物1部を含有する。
【0034】
本組成物において、スルバクタムの薬学的に許容される塩は、スルバクタムナトリウムのような、そのナトリウム塩である。
【0035】
スルバクタムナトリウムは、ナトリウム(2S,5R)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ(3.2.0)ヘプタン−2−カルボキシラート 4,4−ジオキシドであり、再調製用のオフホワイト色の乾燥粉末の形態であり、スルバクタムのこの粉末は、水または希酸に自由に溶け、アセトン、酢酸エチルまたはクロロホルムにやや溶けにくい。
【0036】
スルバクタムナトリウムの含水率は、化合物の約1重量%未満である。
【0037】
粒子形成抑制剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)および、これらの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩(好ましくはナトリウム塩)の群より選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0038】
本粒子形成抑制剤は、好ましくはEDTAである。
【0039】
本発明の組成物は、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムの滅菌混合物であり、場合により粒子形成抑制剤をともなっている。
【0040】
滅菌混合物は、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムを、それぞれ、約4:1〜約1:4、好ましくは、それぞれ、約3:1〜約1:3、そしてより好ましくは、それぞれ、約2:1〜約1:2の範囲の重量比で含む。
【0041】
本発明の組成物の再調製液剤は、約5〜8の範囲のpHを有している。
【0042】
前に述べた等張化剤は、塩化ナトリウムまたはブドウ糖のどちらかであり、組成物と予め混合しておいてもよく、あるいは、再調製中または注入時に用いてもよい。
【0043】
セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量は、約16.5mg(0.719mEq)〜約264.6mg(11.48mEq)のナトリウムの範囲である。
【0044】
EDTAは、再調製後、液剤中約0.002mg/ml〜約10mg/mlの範囲で存在し、好ましくは、EDTAは、再調製後、液剤中約0.003mg/ml〜約2mg/mlの範囲にある。
【0045】
本発明の更に別の実施態様によれば、本明細書中に開示されている医薬組成物の必要とされる量が、バイアル、アンプル、シリンジ、パケット、パウチおよびオートインジェクターからなる群より選択される密閉気密容器で提供される。これらの容器は、本発明で開示されている組成物を単回投与量または10回までの反復投与量を含有することができる。密閉気密容器の内部空間は、本発明の製剤により占有された充填容積ならびに不活性ガス制限された微小雰囲気により無菌的に占有されたヘッドスペース容積からなり、この微小雰囲気は、希ガスおよび窒素からなる群より選択される1種以上の不活性ガスを本質的に含み、ヘッドスペース容積に対する充填容積の比は1:1以上である。
【0046】
組成物の薬学的に有効な量が、用量を集積した形で、密閉気密容器で提供され、容器は、組成物の適切な再調製液剤を形成するのに十分であり、注射用減菌水、注射用静菌水および等張性減菌塩化ナトリウム溶液の群より選択される水性溶媒/適合性希釈剤の適切な量の導入にとって十分であるヘッドスペース容積を有する。
【0047】
組成物の単位/反復投与量の場合、薬学的に有効な量は、密閉気密容器で提供され、その容器は、適切な量の水性溶媒の導入にとり十分なヘッドスペース容積を有する。単位/反復投与剤は、組成物の適切な再調製液剤の形態である。
【0048】
注射としての使用のために、組成物は、細菌感染症の処置のための筋肉内または静脈内投与の前に再調製のための薬学的に許容される所望の固定用量の組合せ(fixed dose combination)を形成するために、密閉気密容器で、滅菌された乾燥粉末の形態で、提供される。
【0049】
別の代替として、組成物は、適切なハロゲン化された栓およびシールでふたをされた透明なガラス製バイアルのような密閉気密容器で提供され、細菌感染症の処置のための筋肉内または静脈内投与用に再調製するために使用される。
【0050】
組成物が、密閉気密容器中で再調製された形態で提供される場合、容器の内部空間は、再調製された形態の組成物により占有された充填容積ならびに不活性ガス制限された微小雰囲気により無菌的に占有されたヘッドスペース容積からなり、微小雰囲気は、希ガスおよび窒素からなる群より選択される1種以上の不活性ガス、好ましくは窒素を本質的に含み、窒素ガスの量が、ヘッドスペース容積の5%以下であり、そして、ヘッドスペース容積に対する前記充填容積の比は1:1以上である。
【0051】
1つの代替として、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムは、密閉容器中に、薬学的に有効な単回単位用量で存在している。
【0052】
もう1つの代替として、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムは、密閉容器中に、約1〜約10単位投与量に相当する薬学的に有効な量で存在している。
【0053】
この組成物は、密閉容器に、不活性ガスブランケット下で無菌的に充填されることに留意すべきである。
【0054】
本発明はまた、セフトリアキソンナトリウムおよび/またはスルバクタムナトリウムを用いる処置が必要である病状または疾患を有する患者の処置方法を提供し、その方法は、組成物の治療上有効な量を非経口的に投与することを含む。
【0055】
本発明はまた、哺乳類における細菌感染症の処置および管理の方法を提供し、組成物の治療上有効な量を含む。
【0056】
1つの代替として、組成物は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩が、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、約2gの量で存在し、
(b) スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩が、スルバクタムの遊離酸として計算して、約1g〜約2gの範囲における量で存在し、
(c) 組成物が、更に場合によりEDTA約2mgの量を含み、そして、
(d) 組成物が、注射用の水約20mlで再調製される、
ことを含む。
【0057】
本組成物において、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムのナトリウム含量の総量は、約264.6mg(11.48mEq)のナトリウムである。
【0058】
もう1つの代替として、組成物は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩が、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、約1gの量で存在し、
(b) スルバクタムまたはその薬学的に許容される前記の塩が、スルバクタムの遊離酸として計算して、約0.5g〜約1gの範囲の量で存在し、
(c) 組成物が、更に場合によりEDTA約1mgの量を含み、そして、
(d) 組成物が、注射用の水約10mlで再調製される、
ことを含む。
【0059】
この組成物において、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムのナトリウム含量の総量は、を有する約132.3mg(5.74mEq)のナトリウムである。
【0060】
更に別の代替として、組成物は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される前記の塩が、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、約0.5gの量で存在し、
(b) スルバクタムまたはその薬学的に許容される前記の塩が、スルバクタムの遊離酸として計算して、約0.25g〜約0.5gの範囲の量で存在し、
(c) 組成物が、更に場合によりEDTA約0.5mgの量を含み、そして、
(d) 組成物が、注射用の水約5mlで再調製される、
ことを含む。
【0061】
本組成物において、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムのナトリウム含量の総量は、約66.15mg(2.87mEq)のナトリウムである。
【0062】
更なる代替として、組成物は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩が、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、約0.25gの量で存在し、
(b) スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩が、スルバクタムの遊離酸として計算して、約0.125g〜約0.25gの範囲の量で存在し、
(c) 組成物が、更に場合によりEDTA約0.25mgの量を含み、そして、
(d) 組成物が、注射用の水約4mlによって再調製される、
ことを含む。
【0063】
本組成物において、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムのナトリウム含量の総量は、約33.075mg(1.435mEq)のナトリウムである。
【0064】
なお更なる代替として、組成物は、
(a) セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩が、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、約0.125gの量で存在し、
(b) スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩が、スルバクタムの遊離酸として計算して、約0.0625g〜約0.125gの範囲の量で存在し、
(c) 組成物が、更に場合によりEDTA約0.125mgの量を含み、そして、
(d) 組成物が、注射用の水約2mlで再調製される、
ことを含む。
【0065】
本組成物において、セフトリアキソンナトリウムおよびスルバクタムナトリウムのナトリウム含量の総量は、約16.535mg(0.717mEq)のナトリウムである。
【0066】
非経口的な投与の場合、組成物は滅菌された粉末の形態であり、組成物を、非経口投与の前に、注射用滅菌水、注射用静菌水および等張性減菌塩化ナトリウム溶液の群より選択される適合性希釈剤の添加により再調製する。
【0067】
本発明はまた、医薬用途として適切な、注射に有用であるβ−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制する組成物の製造方法、すなわち、
(a) 第一の活性成分が、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩であり、そして、第二の成分が、スルバクタムまたはその薬学的に許容される塩である、2つの活性成分を、滅菌充填し/減菌混合し、場合により粒子形成抑制剤(EDTA)またはその薬学的に許容される塩および/または等張化剤を添加し、滅菌充填/減菌混合を、約1時間〜約4時間までの時間続けて、
(b) 工程(a)の滅菌充填/減菌混合を均衡させ、所望の用量を、前記第二の活性成分に対する前記第一の活性成分の重量比で、それぞれ、約4:1〜約1:4の範囲、好ましくはそれぞれ、約3:1〜約1:3、より好ましくはそれぞれ、約2:1〜約1:2の範囲で、無菌的に得て、
(c) 無菌的に前後の不活性ガス処理をともなって栓をする、
工程を含む製造方法を提供する。
【0068】
前記説明には、多くの具体例が含まれているが、それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の実施態様を例示するものと解釈されるべきである。多くの他の変形例が可能である。したがって、本発明の範囲は、例示されている実施態様によってではなく、請求の範囲およびその均等の範囲により決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制し、ヒトを含む哺乳類用の抗菌性の固定用量の組合せ療法として使用するための非経口的な注射に有用である医薬組成物であって、ある量の流体、好ましくは、注射用の水で再調整後に注射用に整えられる、改善された有効性の組合せの、好ましくは相乗的な組合せの事前混合物である乾燥粉末を含み、そして
(a) β−ラクタム抗生物質またはその薬学的に許容される塩、
(b) β−ラクタマーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
ここで、(a)部および(b)部の化合物が、約1:4〜約4:1、好ましくは約1:3〜約3:1、より好ましくは、2:1の重量比において混合されている;
(c) 前記(a)および(b)の化合物の混合物と混合した、粒子形成抑制剤、そして
(d) 塩化ナトリウムまたはブドウ糖からなる群より選択される、薬学的に許容される等張化剤
ここで、前記等張化剤は、前記再調製の間、あるいは注入時に用いられ、それにより、前記組成物を生理学的に等張性にしている;
を含む医薬組成物。
【請求項2】
(a) 前記β−ラクタム抗生物質が、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフピロム、セフェピム、セフタジジムおよびセフロキシムからなるβ−ラクタム系の群より選択され、前記抗生物質が、好ましくは、ナトリウム塩としてのセフトリアキソン、すなわち、セフトリアキソンナトリウムであり、
(b) 前記β−ラクタマーゼ阻害剤が、スルバクタム、クラブラン酸、タゾバクタムからなる群より選択され、前記阻害剤が、好ましくは、ナトリウム塩としてのスルバクタム、すなわち、スルバクタムナトリウムであり、
(c) 前記粒子形成抑制剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、または、これらの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群より選択されるアミノカルボン酸キレート剤であり、前記EDTAが、最も好ましくは、EDTA二ナトリウムであり、前記EDTAが、再調製後、溶液中約0.002mg/ml〜約10mg/mlの範囲、好ましくは溶液中約0.003mg/ml〜約2mg/mlの範囲で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記固定用量の組合せの総ナトリウム含量が、約16.5mg(0.719mEq)〜約264.6mg(11.48mEq)のナトリウムの範囲であり、約1〜約10単位用量に相当する薬学的に有効な量で密閉容器中に存在している、請求項1および2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の単位または反復投与量が;
(a) 請求項2の前記セフトリアキソンナトリウムが、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、2gの量で存在し、
(b) 請求項2の前記スルバクタムナトリウムが、スルバクタムの遊離酸として計算して、1gの量で存在し、そして
(c) 前記EDTAが約2mgの量で存在し、前記組成物が注射用の水約20mlで再調製されており、
前記セフトリアキソンナトリウムと前記スルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量が、約264.6mg(11.48mEq)のナトリウムである、
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の単位または反復投与量が;
(a) 請求項2の前記セフトリアキソンナトリウムが、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、1gの量で存在し、
(b) 請求項2の前記スルバクタムナトリウムが、スルバクタムの遊離酸として計算して、0.5gの量で存在し、そして
(c) 前記EDTAが約1mgの量で存在し、前記組成物が注射用の水約10mlで再調製されており、
前記セフトリアキソンナトリウムと前記スルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量が、約132.3mg(5.74mEq)のナトリウムである、
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の単位または反復投与量が;
(a) 請求項2の前記セフトリアキソンナトリウムが、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、0.5gの量で存在し、
(b) 請求項2の前記スルバクタムナトリウムが、スルバクタムの遊離酸として計算して、0.25gの量で存在し、そして
(c) 前記EDTAが約0.5mgの量で存在し、前記組成物が注射用の水約5mlで再調製されており、
前記セフトリアキソンナトリウムと前記スルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量が、約66.15mg(2.87mEq)のナトリウムである、
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の単位または反復投与量が;
(a) 請求項2の前記セフトリアキソンナトリウムが、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、0.25gの量で存在し、
(b) 請求項2の前記スルバクタムナトリウムが、スルバクタムの遊離酸として計算して、0.125gの量で存在し、そして
(c) 前記EDTAが約0.25mgの量で存在し、前記組成物が注射用の水約4mlによって再調製されており、
前記セフトリアキソンナトリウムと前記スルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量が、約33.075mg(1.435mEq)のナトリウムである、
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の単位または反復投与量が、
(a) 請求項2の前記セフトリアキソンナトリウムが、セフトリアキソンの遊離酸として計算して、0.125gの量で存在し、
(b) 請求項2の前記スルバクタムナトリウムが、スルバクタムの遊離酸として計算して、0.0625gの量で存在し、そして
(c) 前記EDTAが約0.125mgの量で存在し、前記組成物が注射薬用の水約2mlによって再調製されており、
前記セフトリアキソンナトリウムと前記スルバクタムナトリウムとの総ナトリウム含量が、約16.535mg(0.717mEq)のナトリウムである、
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
不活性ガスのブランケット下で滅菌容器に充填および密閉されていて、前記容器が1つ以上のバイアル、アンプル、シリンジ、パケット、パウチおよびオートインジェクターであり、前記容器の内部空間が、再調製された形態の前記組成物により占有された充填容積ならびに無菌的に不活性ガス制限された微小雰囲気により占有されたヘッドスペース容積からなり、微小雰囲気は希ガスおよび窒素からなる群より選択される1種以上の不活性ガスを本質的に含み;好ましくは窒素であり、前記窒素ガスの量が、前記ヘッドスペース容積の5%以下であり、そして前記ヘッドスペース体積に対する前記充填容積の比が、1:1以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記塩化ナトリウムまたはブドウ糖は滅菌してあり、これら2つの化合物のいずれかの等張溶液を、静脈内の注入時、再調製された溶液を更に希釈するために使用する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
医薬用途として可能な、注射に有用である、β−ラクタマーゼ阻害剤を使用してβ−ラクタマーゼ媒介性の抗生物質耐性を抑制する組成物の製造方法であって、
(a) 第一の活性成分が、セフトリアキソンナトリウムであり、そして、第二の成分が、スルバクタムナトリウムである、2つの活性成分を、滅菌充填し/減菌混合し、
(b) 粒子形成抑制剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を添加し、
(c) 継続する前記滅菌混合を、約1時間〜4時間までの時間続けて、
(d) 工程の滅菌混合を均衡させ、請求項1の重量比のいずれかで所望の用量を無菌的に得て、そして、
(e) 前後に不活性ガス処理をともなって無菌的に栓をする、
工程を含む製造方法。
【請求項12】
ヒトを含む哺乳類の細菌感染症を、請求項1〜9の組成物を非経口的に、1日に2回、静脈内か筋肉内のいずれかに注入することにより処置する方法。

【公表番号】特表2008−521884(P2008−521884A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544016(P2007−544016)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000382
【国際公開番号】WO2006/059344
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507182520)ヴィーナス・レメディーズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VENUS REMEDIES LIMITED
【Fターム(参考)】