注射可能タキサン医薬品組成物
新規な注射可能タキサン医薬品組成物。最先端のタキサン医薬品組成物と比較してより小さい割合のエタノール及びより小さいエタノール/タキサン比を有する安定な組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体臨床医学の分野に関し、特に、新規な注射可能タキサン医薬品組成物、及び、癌性腫瘍の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
パクリタキセル及びドセタセルなどのタキサンが癌性腫瘍の治療において有用な生物学的作用を有していることは長い間知られている。注射できるものとして適切な溶媒中におけるこれらの化合物の低い溶解性も知られており、それによって様々な界面活性剤及び/又は他の賦形剤を含む様々な製剤が開発されてきた。
【0003】
したがって、例えば、文献EP0593601B1は、ポリソルベート(Tween(登録商標))、ポリエトキシ化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))及びポリオキシエチレングリコールエステル(Emulphor(登録商標))からなる群から選択される界面活性剤と、5%未満のエタノールとを含むタキサン組成物を記載する。文献EP0593656B1は、ポリソルベートとエタノールとを含むタキサン組成物を記載する。安定性の問題により、これらの発明のドセタセルの商業的組成物は、2個のバイアル瓶、すなわち、ポリソルベート80中にドセタセルの溶液を含む第1の瓶、及び、水性エタノール溶液を含む第2のバイアル瓶で提供される。2個のバイアル瓶を、8時間の物理的及び化学的安定性を有する予備混合溶液を得るために混合する必要があり、後に投与するべく潅流バッグにおいて混合した後に希釈する必要がある(ドセタセルデータシートからの製品特性)。したがって、このシステムは、投与前にドセタセルを2回希釈するものであり、すぐに使用できる保存可能な組成物を得ることができず、また、細胞毒性化合物の扱いが困難であり、ヘルスケアに対する健康リスクとなる。
【0004】
文献EP0671912B1は、5%未満のエタノールを含む溶液と、タキサンと、ポリソルベート、エチレンオキシドのエーテルエステル、及び、脂肪酸グリセリドから選択される界面活性剤との第1コンパートメント、並びに、200未満の分子量を有する有機溶媒又は無機塩類から選択された溶媒の第2コンパートメントで構成された潅流溶液調製用のダブルコンパートメント注射可能組成物を記載する。この論文の実施例によれば、第1コンパートメントの溶液は、特許EP0593601B1に従って調製される。EP0593601B1に記載されているように、エタノールを含まないパクリタキセル又はドセタセルの溶液は、8時間乃至100時間及び数ヶ月間の物理安定性を有する。しかしながら、EP0593601B1又はEP0671912には、タキサン、エタノール及び界面活性剤を一容器中に含む注射用又は潅流用組成物の数か月間又は1週間の物理的及び化学的安定性についての単一のデータは存在しない。更に、上に示されているように、欧州医薬品庁に提出されたドセタセルのデータシートは、エタノール及びポリソルベート80に含まれるドセタセルの水溶液の安定性が、2℃乃至8℃で又は室温で保存したときにわずか8時間であることを示す。
【0005】
更に、文献WO2007/020085A2は、1個のコンパートメント、タキサン、生理的に許容可能な溶媒、及び、生理的に許容可能な界面活性剤を含む、注射又は潅流のための組成物を記載する。選択的に、これらの組成物はクエン酸も含む。したがって、バイアル瓶を再構成する必要がなく、潅流バッグに直接注入される。この文献は、40℃で3か月間保存したときに組成物の分解が5%未満であることを示している。この文献の好ましい実施形態によれば、タキサン、エタノール、及び、ポリソルベート以外の界面活性剤を含む組成物は、少なくとも18重量%のエタノールの最小パーセンテージ、及び、少なくとも7.9/1のエタノール/タキサン重量比を有する。一方で、この比率は界面活性剤に依存するが、組成物中の界面活性剤の量は、重量でタキサンの量の12倍〜35倍である。また、Solutol(登録商標)HS15及びTween(登録商標)80の特定の場合において、実施例における界面活性剤の量は、それぞれ、重量でタキサンの量の30倍及び26倍である。同様に、この文献の実施例の組成物中のエタノールの割合は、エタノール/タキサン重量比が16.5/1から26.3/1の間で変動すると共に、34重量%から58重量%の間で変動する。治療に高用量のタキサンの投与が必要であれば、大量の組成物、したがって、大量のエタノールを投与する必要がある。
【0006】
文献WO00/20036A1は、パクリタキセル、水、酸、好ましくはクエン酸、及び、1つ以上の有機溶媒、好ましくはトリアセチン、グリセリン、エタノール及びSolutol(登録商標)HS15を含む医薬品組成物を記載する。この文献は、16時間乃至24時間の70℃におけるデグラデーション値から、室温における本発明の組成物の安定性は18か月以上であると推定している。同様に、組成物中のSolutol(登録商標)HS15の量は、この文献の詳細な説明によれば、重量でパクリタキセルの量の50倍〜200倍であると結論付けることができる。さらに、無水エタノールの量は、重量でパクリタキセルの量の12.5倍〜166.7倍で様々である(表1)。したがって、高用量のパクリタキセルの投与は、多量のエタノールの投与を伴う。
【0007】
更に、文献EP0876145A1は、保存することができ、タキサン、エタノール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル(Tween(登録商標))及びポリエトキシ化されたヒマシ油(Cremophor(登録商標))を含むタキサンの溶液を記載する。好ましい実施形態によれば、この溶液は、15体積%乃至30体積%のエタノールを含み、エタノールの量がタキサンの量の19.7倍〜59倍であると算出される。この文献中の実施例の製剤によれば、エタノール/パクリタキセル比率は、重量で26.3/1である。
【0008】
文献WO2005/020962A1は、不水溶性の治療薬、特にタキサン、ビタミンE、エタノール、生体利用性増強剤、並びに、界面活性剤としてチロキサポール又はTPGS(ポリエチレングリコールでエステル化されたビタミンEスクシナート)とチロキサポールとの混合物を含む、任意の経路で投与される組成物を記載する。明細書中の実施形態によれば、パクリタキセルの量は、組成物の0.5重量%乃至4重量%であり、好ましくは1.5重量%乃至3重量%である。この発明の明細書中のもう1つの実施形態によれば、この実施形態は、5%のみのエタノールにどの治療薬が溶解することができるか又はどのような量で溶解するかに言及していないが、エタノールの相対的割合が最終組成の5%乃至50%であり、好ましくは30重量%に等しい。この文献のエタノール及びタキサンを共に用いる実施例によれば、エタノールの量は、重量でパクリタキセルの量の10倍〜20倍であり、実施例の組成物の30重量%に相当すると計算される。
【0009】
更に、文献WO2005/097105A1は、可溶化剤としてポリエチレングリコール15ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)及びグリコフロールを含む注射可能タキサン組成物を記載する。この組成物は毒性を最小限にしながらも溶解度が向上している。さらに、この組成物は、溶液のpHを好ましくは4乃至6に調整するための酸性薬剤を含む。しかしながら、最も良好なケースで40℃においてわずか48時間後に0.7%以上が分解するので、パクリタキセルを含む実施例の組成物の安定性は薬学的に許容できるものではない。
【0010】
文献DE19925211A1、EP0835657A1、EP0674510A1、WO03/053350A2、WO03/022247A1、WO2005/020962A1は、溶液の化学的安定性を向上させるための酸を含む様々な溶媒及び界面活性剤を伴うタキサン溶液に関する。
【0011】
一方で、いくつかの界面活性剤は、毒性、過敏性又は呼吸困難の問題を生じさせることもある。したがって、最終注射剤を調製するために行われる操作の数を減らしながら、最先端の医薬品組成物においてエタノール及び界面活性剤のレベルを低下させることができる物理的及び化学的に安定なタキサン医薬品組成物を発見する必要性がなお存在する。
【0012】
文献US2004/127551A1、WO01/72299A1、WO03/057208A1、EP1479382A1及びWO00/78247A1は、タキサン及び溶媒、好ましくは界面活性剤及び共可溶化剤を含む経口的投与用組成物を記載する。特に、最初の3つの文献の組成物は安定化剤も含む。5つの文献の組成物の共可溶化剤は、組成物の粘度を低下させ、体温における組成物の流動性を向上させる薬剤である。粘度を低下させる共可溶化剤には、特に、界面活性剤、エタノール、水、並びに、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル及びアセチルクエン酸トリエチルなどのシトレートエステルが含まれる。組成物中の共可溶化剤の量は組成物の90重量%以内である。好ましい実施形態において、共可溶化剤はエタノールであり、組成物は、5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜30重量%、より好ましくは20重量%のエタノールを含む。しかし、好ましい実施形態及び実施例の実施形態によれば、組成物が19.5重量%〜22.4重量%のエタノールを含み、エタノールの量がパクリタキセルの量の16.2倍〜18.6倍であることに注目すべきである。経口投与されるパクリタキセルの製剤に影響する吸収及び耐用性の問題が、これまでに経口投与用パクリタキセル薬剤の市販を阻害してきたことにも言及する必要がある。
【0013】
文献EP1194120A1は、トリグリセリド、少なくとも2つの界面活性剤を含む担体、1つが親水性であり、及び、特にパクリタキセルを含む治療薬を含む医薬品組成物を記載する。選択的に、この組成物は、治療薬又は組成物のトリグリセリドの溶解性を増大させる可溶化剤を含むことがある。それらのアルキルシトレートエステルがエタノールを含む医薬品組成物中のタキサンの可溶化剤であることは、明細書又はその文献中の実施例で明示されていないが、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル及びアセチルクエン酸トリブチルが上述した可溶化剤である。
【0014】
驚くべきことに、クエン酸アルキルエステルの添加によって、低いエタノール含有量及び低濃度の界面活性剤を含みながら、非経口投与用として安定かつ適切なタキサン医薬品組成物が得られることがわかった。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、タキサンの非経口投与用の安定な医薬品組成物を提供する。この組成物は癌性腫瘍の治療に有用である。
【0016】
したがって、本発明の第1態様は、治療的有効量のタキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、及び、エタノールを含む非経口投与用の安定な医薬品組成物に言及する。
【0017】
本発明において、「タキサン」は、パクリタキセル、ドセタセル、これらの誘導体、類似化合物、代謝産物、プロドラッグ、これらの水和物及び塩を意味する。特定の一実施形態において、本発明の組成物中のタキサンは、パクリタキセル、ドセタセル無水物又はドセタセル三水和物、好ましくはドセタセル無水物又はドセタセル三水和物からなる群より選択される。
【0018】
本発明において、「安定(stable)」は、ヒト用途のための医薬品登録のための技術的要求事項の調和に関する国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)による2003年2月6日のバージョンQ1A(R2)に記載されている製薬の安定性基準を満たすことを意味する。
【0019】
特定の一実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、組成物の20重量%未満であり、好ましくは組成物の15重量%未満である。
【0020】
特定の一実施形態において、本発明の組成物中のタキサンの濃度は、0.05mg/ml乃至220mg/mlであり、好ましくは10mg/ml乃至80mg/mlである。好ましい実施形態において、本発明の組成物中のタキサンの量は、組成物の2重量%乃至5重量%である。
【0021】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、重量でタキサンの量の7倍未満であり、好ましくは重量でタキサンの量の5倍未満であり、より好ましくは重量でタキサンの量の3倍未満である。
【0022】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤は、限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸のモノエステル(Tween(登録商標)Emalex、Nikkol、Hodag、Dacol又はLiposorb)、ソルビタン脂肪酸のモノエステル(Span(登録商標))、ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(Crodet,Cithrol,Kessco(登録商標)、Nikkol、Mapeg(登録商標)、Myrj、Tagat(登録商標)、Aldo(登録商標)、Capmul(登録商標)、Glycerox、Lactomul(登録商標)又はEmerest(登録商標))、ポリオキシエチレングリコールエステル(Emulphor(登録商標))、ポリエトキシ化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)、Emalex、Eumulgin(登録商標)、Nikkol、Cerex又はSimusol(登録商標))、脂肪酸のポリグリセロールエステル(Nikkol Decaglyn、Polymuls、Caprol(登録商標))、ポリエチレングリコールエーテル(Volpe又はBrij(登録商標))、ポロキサマ(Lutrol(登録商標)又はPluronic(登録商標))、ポリオキシエチレンフェニルエーテル(Triton(登録商標)又はIgepal(登録商標))、又は、これらの混合物を含む最先端技術において知られている薬学的に許容可能なあらゆる非イオン性の界面活性剤である。好ましくは、界面活性剤は、Tween(登録商標)、Solutol(登録商標)HS15、Lutrol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、又は、これらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは、Tween(登録商標)及び、Solutol(登録商標)HS15からなる群より選択される。
【0023】
本発明の組成物中の界面活性剤の量量は、各界面活性剤の親水性/親油性のバランス及びその分子量に依存する。特定の一実施形態において、組成物中の界面活性剤の総量は、重量で、組成物中のタキサンの量の1倍〜50倍であり、好ましくはタキサンの量の10倍〜30倍の重量であり、特に好ましくは重量でタキサンの量の15倍〜20倍である。特定の一実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤がSolutol(登録商標)HS15のみである場合、界面活性剤の量は、組成物中のタキサンの量の10倍〜25倍であり、好ましくは15倍〜20倍の重量である。特定の一実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤がTween(登録商標)80のみである場合、界面活性剤の量は、重量で組成物中のタキサンの量の7倍〜15倍であり、好ましくは重量で10倍〜12倍である。
【0024】
本発明において、「クエン酸アルキルエステル」という用語は、限定されるものではないが、例えば、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル又はこれらの混合物を含む、アセチル基によって置換された又は置換されていないクエン酸エステルであって、エステルのアルキル部分が飽和直鎖炭化水素基又は分岐炭化水素基であるものを意味する。好ましくは、クエン酸アルキルエステルは、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルからなる群より選択される。
【0025】
もう一つの特定の実施形態において、クエン酸のアルキルエステルの総量は、重量で組成物中のタキサンの量の0.1倍〜10倍であり、好ましくは重量で組成物中のタキサンの量の1倍〜5倍である。
【0026】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、組成物の重量の5%乃至15%であり、好ましくは7%乃至12%である。
【0027】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の医薬品組成物は、溶液のpHを2乃至6の間、好ましくは2.5乃至4.5の間の値への低下させるための少なくとも1つの酸をさらに含む。本発明の組成物中に選択的に含まれる酸は、例えば、限定されるものではないが、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アミドトリゾ酸、酒石酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、ギ酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、チロシン又はこれらの混合物といった、上述のpHを得ることが可能な任意の鉱酸、有機酸、及び/又は、アミノ酸である。好ましい実施形態において、本発明の組成物に加える酸は、塩酸、クエン酸、乳酸、アスパラギン酸及びグリシンからなる群より選択される。
【0028】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物の非経口投与は、ボーラス、点滴、及び/又は、静脈内潅流によって行われ、潅流用溶液によって投与するのが好ましい。
【0029】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、予備充填シリンジ、バイアル、アンプル、ボトル、潅流バッグ、又は、当業者に公知のその他のパッケージング材の形態の均一な溶液として与えられる。
【0030】
本発明の組成物は、最先端技術において公知の任意の方法によって調製することができる。特に、本発明の組成物は、無菌条件下において調製される。
【0031】
別の一態様において、本発明の医薬品組成物は、限定されるものではないが、例えば、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫といった、腫瘍の増殖の阻害及び/又は除去にタキサンが有効なあらゆる種類の癌性腫瘍の治療に用いられる。
【0032】
別の一態様によれば、本発明は、限定されるものではないが、例えば、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫といった、腫瘍の増殖の阻害及び/又は除去にタキサンが有効なあらゆる種類の癌性腫瘍の治療用の医薬品の調製における本発明の組成物の使用に関する。
【0033】
別の一態様によれば、本発明は、治療的有効量の癌の治療用の薬剤を含む1つ以上の薬剤との合併療法又は組み合わせにおいて本発明の医薬品組成物の治療的有効量を投与するステップを具える癌性腫瘍の治療方法に関する。癌の治療用の薬剤は、限定されるものではないが、例えば、ドキソルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ、カペシタビン、シスプラチン、プレドニゾン、プレドニゾロン、5−フルオロウラシル、リュープロリド、ブセレリン、ゴセレリン、ヒストレリン又はトリプトレリンを含む。
【0034】
本発明の別の一態様において、水性担体中における本発明の組成物の直接的希釈によって、少なくとも1つの界面活性剤、タキサン、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、エタノール、及び、選択的に酸を含むマイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液であることを特徴とする潅流用溶液が得られることがわかった。好ましい実施形態において、水性担体は、5%デキストロース血清及び0.9%生理食塩水血清からなる群より選択される。もう一つの好ましい実施形態において、マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液中の粒子サイズの分布曲線の最大値は、0.2nmから40nmの間であり、好ましくは2nmから30nmであり、より好ましくは5nmから15nmの間である。
【0035】
本発明の組成物の投与量は、特にタキサン、患者の状態、患者の体重、治療する腫瘍の重症度、投与の形態及び頻度を含むいくつかの要因に応じて変わる。好ましい実施形態において、潅流用組成物中のドセタセルの濃度は、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であり、好ましくは0.05mg/mlから0.74mg/mlの間であり、3週間ごとに最大100mg/m2を投与する。別の好ましい一実施形態において、潅流用組成物中のパクリタキセルの濃度は、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であり、3週間ごとに最大220mg/m2を投与する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
驚くべきことに、治療的有効量のタキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、及び、15重量%未満の量のエタノールを含む非経口投与用の安定な医薬品組成物を発見した。
【0037】
実施例
これらの実施例は、本発明の例示であり、それらに限定するようには意図されていない。
【0038】
実施例1
第1手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
機械攪拌機とあらかじめ30℃に加熱した加熱ジャケットとを装備した10−L容量の反応器に20gのドセタセル無水物を入れた。75gのクエン酸トリブチル、26gの無水エタノール、4gのアスパラギン酸、及び、予め40℃に加熱することによって融解させた240gのTween(登録商標)80をその周りに加えた。すべてのドセタセル無水物が完全に溶解するまでその混合物を激しく撹拌した。得られた溶液を0.22μm孔径の絶対フィルタで濾過することによって除菌し、投薬した。
【0039】
実施例2
第2手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
堅く閉まる蓋と、機械攪拌機と、加熱ジャケットとを装備したステンレススチール又はガラス容器中に350gのLutrol(登録商標)F68を置き、その内容物を120℃で30分間加熱して生成物の確実に滅菌した。その反応器内容物を連続的に冷却して、30℃から35℃の間の温度に達するようにした。20gのドセタセル無水物、75gのクエン酸アセチルトリエチル、7gの乳酸及び70gの無水エタノールを、機械攪拌機と加熱ジャケットとを装備したもう1つの密封容器中に置いた。すべてのドセタセルが完全に溶解するまでその混合物を撹拌した。得られた溶液を、0.22μm孔径の除菌フィルタを通して、無菌Lutrol(登録商標)F68を含む容器中に移した。均一で完全に透明な溶液が得られるまで反応器の内容物を30分間撹拌し、投薬した。
【0040】
実施例3
第3手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
堅く閉まる蓋と、機械攪拌機と、加熱ジャケットとを装備したステンレス鋼又はガラス容器に350gのSolutol(登録商標)HS15を置き、完全に溶解するまで内容物を30℃乃至35℃に加熱した。20gのドセタセル三水酸基化合物、85gのクエン酸トリヘキシル及び65gの無水エタノールを、機械攪拌機と加熱ジャケットとを装備したもう1つの密封容器中に置いた。すべてのドセタセルが完全に溶解するまでその混合物を撹拌した。両方の溶液を全体が均一になるまで穏やかに混合し、投与した。得られた溶液を0.22μm孔径の殺菌フィルタで濾過することによって除菌し、投薬した。
【0041】
実施例4
ドセタセルの医薬品組成物
20gのドセタセル無水物、60gのクエン酸トリエチル、50gの無水エタノール、6gのクエン酸及び350gのSolutol(登録商標)HS15から開始した以外は、実施例1と同じ手順で組成物を調製した。
【0042】
実施例5
パクリタキセルの医薬品組成物
20gのパクリタキセル、75gのクエン酸トリエチル、26gの無水エタノール及び200gのCremophor(登録商標)ELから開始した以外は、実施例1と同じ手順で組成物を調製した。
【0043】
実施例6
安定性実施例
実施例4に従って調製した医薬品組成物を、ヒト用途のための医薬品登録のための技術的要求事項の調和に関する国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)の新薬剤用の安定性試験に関する文献Q1A(R2)に記載されている5℃の保存条件及び25℃の加速熟成に供した。以下のクロマトグラフ法を用いてHPLCによって安定性を分析した。
*溶出液:水及びアセトニトリル
*カラム:Water symmetry C18 3.5μm 4.6×100mm
*温度 :30℃
*流速 :1.0ml/分
*検出 :最大225nmのUV
*アイソクラチック:A/B 60:40
結果を表1にまとめる。
【0044】
実施例7
潅流用溶液の調製
ヒトにおける製品の投与のために、5%のグルコースの溶液又は0.9%塩化ナトリウム溶液中において薬剤の予備稀釈を行う必要がある。これは、250mlの5%グルコース溶液又は0.9%塩化ナトリウム溶液を含む潅流バッグ又はボトルを所持することによって実行される。実施例1〜5で得た溶液のいずれかの適切な容積をこの潅流バッグ又はボトルに注入する。その後、全く透明溶液が得られるまで、潅流バッグ又はボトルを穏やかに攪拌しなければならない。潅流用のバッグ又はボトルに注入した調製の容積は、潅流バッグ中の薬剤濃度が1.2mg/ml未満のタキサンとなるのに十分でなければならない。投与が250mgを超える有効成分量を必要とする場合、潅流用により大容積の溶液を調製することが必要である。
【0045】
実施例8
平均粒子サイズの測定
実施例4の組成物用の0.9%生理食塩水血清中の実施例6の潅流用の組成物中の粒子サイズを、動的光散乱(DLS)技術を用いたZetasizerナノS装置で測定した。表2は、Z平均パラメータによる様々な時の粒子サイズの値を示している。
【0046】
実施例9
比較毒性試験
実施例4の組成物又はTaxotere(登録商標)の調合物のいずれかを1回量で2.75回、ヒトの最大容量で投与して、ラットにおける比較毒性試験を行った。死亡率、臨床的症状、体重変化、血液学所見、及び、巨視的病理所見を14日間評価し、両方の製剤についての同様の結果を得た。
【0047】
実施例10
賦形薬組成物
実施例4の組成物の賦形剤及び添加物のみを用いて組成物を調製した。60gのクエン酸トリエチル、50gの無水エタノール、6gのクエン酸、及び、350gのSolutol(登録商標)HS15から開始した以外は、実施例4の組成物のように組成物を調製した。
【0048】
実施例11
Taxotere(登録商標)溶媒組成物
19.08gの無水エタノール、54gのポリソルベート80及び127.37gの水から開始して、タキソテール(登録商標)組成物(欧州医薬品庁及びFDAによって承認されたドセタセル組成物)の賦形剤及び添加物のみを用いて組成物を調製した。
【0049】
実施例12
比較毒性の場合
この研究の目的は、28日間のテスト項目の累積的毒性に関する情報を得ることであった。SDラットにおける28日間の静脈内毒性試験、実施例10の組成物対実施例11の組成物の一用量(2.5倍最大ヒト用量)の1日1回の投与を実行した。さらに、この研究は、ヒトにおける毒物学上のリスクの評価に関する合理的根拠を与え、潜在的標的器官をも示した。ドセタセルの最大ヒト用量は2.7mg/kgであり、ラットにおけるヒトと同等の投与量を、体表面積をベースとした変換を用いて算出した(6.2のファクター要因)。SDラットに投与したドセタセルの量は41.85mg/kgであった。実施例10の組成物の賦形剤及び添加物、並びに、実施例11の組成物の賦形剤及び添加物の投与量を、41.85mg/kgのドセタセルとの比率を維持することを除いて、表3に示す。
結果:表4を参照されたい。
【0050】
実施例13
ビーグル犬における比較準急性毒物学的研究
ビーグル犬における実施例4の組成物とTaxotere(登録商標)との比較準急性毒物学的研究を5日間の反復投与で実行した。この研究の目的は、5日間連続で1日1回静脈内投与したときの、対照事項のタキソテール(登録商標)に対する実施例4の組成物の亜急性毒性を比較することであった。研究計画の概要を表5に記載する。
結果:
1.死亡:死亡は全く記録されなかった。
2.臨床的症状:表6を参照されたい。
【0051】
実施例14
マウスにおける比較準急性毒物学的研究
マウスにおける実施例4の組成物とTaxotere(登録商標)との比較準急性毒物学的研究を5日間の反復投与で実行した。この研究の目的は、5日間連続で毎日静脈内投与したときの、対照事項のTaxotere(登録商標)に対する実施例4の組成物の亜急性毒性を比較することであった。研究計画の概要を表7に記載する。
結果:
1.死亡:死亡は全く記録されなかった。
2.臨床的症状:表8を参照されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体臨床医学の分野に関し、特に、新規な注射可能タキサン医薬品組成物、及び、癌性腫瘍の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
パクリタキセル及びドセタセルなどのタキサンが癌性腫瘍の治療において有用な生物学的作用を有していることは長い間知られている。注射できるものとして適切な溶媒中におけるこれらの化合物の低い溶解性も知られており、それによって様々な界面活性剤及び/又は他の賦形剤を含む様々な製剤が開発されてきた。
【0003】
したがって、例えば、文献EP0593601B1は、ポリソルベート(Tween(登録商標))、ポリエトキシ化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))及びポリオキシエチレングリコールエステル(Emulphor(登録商標))からなる群から選択される界面活性剤と、5%未満のエタノールとを含むタキサン組成物を記載する。文献EP0593656B1は、ポリソルベートとエタノールとを含むタキサン組成物を記載する。安定性の問題により、これらの発明のドセタセルの商業的組成物は、2個のバイアル瓶、すなわち、ポリソルベート80中にドセタセルの溶液を含む第1の瓶、及び、水性エタノール溶液を含む第2のバイアル瓶で提供される。2個のバイアル瓶を、8時間の物理的及び化学的安定性を有する予備混合溶液を得るために混合する必要があり、後に投与するべく潅流バッグにおいて混合した後に希釈する必要がある(ドセタセルデータシートからの製品特性)。したがって、このシステムは、投与前にドセタセルを2回希釈するものであり、すぐに使用できる保存可能な組成物を得ることができず、また、細胞毒性化合物の扱いが困難であり、ヘルスケアに対する健康リスクとなる。
【0004】
文献EP0671912B1は、5%未満のエタノールを含む溶液と、タキサンと、ポリソルベート、エチレンオキシドのエーテルエステル、及び、脂肪酸グリセリドから選択される界面活性剤との第1コンパートメント、並びに、200未満の分子量を有する有機溶媒又は無機塩類から選択された溶媒の第2コンパートメントで構成された潅流溶液調製用のダブルコンパートメント注射可能組成物を記載する。この論文の実施例によれば、第1コンパートメントの溶液は、特許EP0593601B1に従って調製される。EP0593601B1に記載されているように、エタノールを含まないパクリタキセル又はドセタセルの溶液は、8時間乃至100時間及び数ヶ月間の物理安定性を有する。しかしながら、EP0593601B1又はEP0671912には、タキサン、エタノール及び界面活性剤を一容器中に含む注射用又は潅流用組成物の数か月間又は1週間の物理的及び化学的安定性についての単一のデータは存在しない。更に、上に示されているように、欧州医薬品庁に提出されたドセタセルのデータシートは、エタノール及びポリソルベート80に含まれるドセタセルの水溶液の安定性が、2℃乃至8℃で又は室温で保存したときにわずか8時間であることを示す。
【0005】
更に、文献WO2007/020085A2は、1個のコンパートメント、タキサン、生理的に許容可能な溶媒、及び、生理的に許容可能な界面活性剤を含む、注射又は潅流のための組成物を記載する。選択的に、これらの組成物はクエン酸も含む。したがって、バイアル瓶を再構成する必要がなく、潅流バッグに直接注入される。この文献は、40℃で3か月間保存したときに組成物の分解が5%未満であることを示している。この文献の好ましい実施形態によれば、タキサン、エタノール、及び、ポリソルベート以外の界面活性剤を含む組成物は、少なくとも18重量%のエタノールの最小パーセンテージ、及び、少なくとも7.9/1のエタノール/タキサン重量比を有する。一方で、この比率は界面活性剤に依存するが、組成物中の界面活性剤の量は、重量でタキサンの量の12倍〜35倍である。また、Solutol(登録商標)HS15及びTween(登録商標)80の特定の場合において、実施例における界面活性剤の量は、それぞれ、重量でタキサンの量の30倍及び26倍である。同様に、この文献の実施例の組成物中のエタノールの割合は、エタノール/タキサン重量比が16.5/1から26.3/1の間で変動すると共に、34重量%から58重量%の間で変動する。治療に高用量のタキサンの投与が必要であれば、大量の組成物、したがって、大量のエタノールを投与する必要がある。
【0006】
文献WO00/20036A1は、パクリタキセル、水、酸、好ましくはクエン酸、及び、1つ以上の有機溶媒、好ましくはトリアセチン、グリセリン、エタノール及びSolutol(登録商標)HS15を含む医薬品組成物を記載する。この文献は、16時間乃至24時間の70℃におけるデグラデーション値から、室温における本発明の組成物の安定性は18か月以上であると推定している。同様に、組成物中のSolutol(登録商標)HS15の量は、この文献の詳細な説明によれば、重量でパクリタキセルの量の50倍〜200倍であると結論付けることができる。さらに、無水エタノールの量は、重量でパクリタキセルの量の12.5倍〜166.7倍で様々である(表1)。したがって、高用量のパクリタキセルの投与は、多量のエタノールの投与を伴う。
【0007】
更に、文献EP0876145A1は、保存することができ、タキサン、エタノール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル(Tween(登録商標))及びポリエトキシ化されたヒマシ油(Cremophor(登録商標))を含むタキサンの溶液を記載する。好ましい実施形態によれば、この溶液は、15体積%乃至30体積%のエタノールを含み、エタノールの量がタキサンの量の19.7倍〜59倍であると算出される。この文献中の実施例の製剤によれば、エタノール/パクリタキセル比率は、重量で26.3/1である。
【0008】
文献WO2005/020962A1は、不水溶性の治療薬、特にタキサン、ビタミンE、エタノール、生体利用性増強剤、並びに、界面活性剤としてチロキサポール又はTPGS(ポリエチレングリコールでエステル化されたビタミンEスクシナート)とチロキサポールとの混合物を含む、任意の経路で投与される組成物を記載する。明細書中の実施形態によれば、パクリタキセルの量は、組成物の0.5重量%乃至4重量%であり、好ましくは1.5重量%乃至3重量%である。この発明の明細書中のもう1つの実施形態によれば、この実施形態は、5%のみのエタノールにどの治療薬が溶解することができるか又はどのような量で溶解するかに言及していないが、エタノールの相対的割合が最終組成の5%乃至50%であり、好ましくは30重量%に等しい。この文献のエタノール及びタキサンを共に用いる実施例によれば、エタノールの量は、重量でパクリタキセルの量の10倍〜20倍であり、実施例の組成物の30重量%に相当すると計算される。
【0009】
更に、文献WO2005/097105A1は、可溶化剤としてポリエチレングリコール15ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)及びグリコフロールを含む注射可能タキサン組成物を記載する。この組成物は毒性を最小限にしながらも溶解度が向上している。さらに、この組成物は、溶液のpHを好ましくは4乃至6に調整するための酸性薬剤を含む。しかしながら、最も良好なケースで40℃においてわずか48時間後に0.7%以上が分解するので、パクリタキセルを含む実施例の組成物の安定性は薬学的に許容できるものではない。
【0010】
文献DE19925211A1、EP0835657A1、EP0674510A1、WO03/053350A2、WO03/022247A1、WO2005/020962A1は、溶液の化学的安定性を向上させるための酸を含む様々な溶媒及び界面活性剤を伴うタキサン溶液に関する。
【0011】
一方で、いくつかの界面活性剤は、毒性、過敏性又は呼吸困難の問題を生じさせることもある。したがって、最終注射剤を調製するために行われる操作の数を減らしながら、最先端の医薬品組成物においてエタノール及び界面活性剤のレベルを低下させることができる物理的及び化学的に安定なタキサン医薬品組成物を発見する必要性がなお存在する。
【0012】
文献US2004/127551A1、WO01/72299A1、WO03/057208A1、EP1479382A1及びWO00/78247A1は、タキサン及び溶媒、好ましくは界面活性剤及び共可溶化剤を含む経口的投与用組成物を記載する。特に、最初の3つの文献の組成物は安定化剤も含む。5つの文献の組成物の共可溶化剤は、組成物の粘度を低下させ、体温における組成物の流動性を向上させる薬剤である。粘度を低下させる共可溶化剤には、特に、界面活性剤、エタノール、水、並びに、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル及びアセチルクエン酸トリエチルなどのシトレートエステルが含まれる。組成物中の共可溶化剤の量は組成物の90重量%以内である。好ましい実施形態において、共可溶化剤はエタノールであり、組成物は、5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜30重量%、より好ましくは20重量%のエタノールを含む。しかし、好ましい実施形態及び実施例の実施形態によれば、組成物が19.5重量%〜22.4重量%のエタノールを含み、エタノールの量がパクリタキセルの量の16.2倍〜18.6倍であることに注目すべきである。経口投与されるパクリタキセルの製剤に影響する吸収及び耐用性の問題が、これまでに経口投与用パクリタキセル薬剤の市販を阻害してきたことにも言及する必要がある。
【0013】
文献EP1194120A1は、トリグリセリド、少なくとも2つの界面活性剤を含む担体、1つが親水性であり、及び、特にパクリタキセルを含む治療薬を含む医薬品組成物を記載する。選択的に、この組成物は、治療薬又は組成物のトリグリセリドの溶解性を増大させる可溶化剤を含むことがある。それらのアルキルシトレートエステルがエタノールを含む医薬品組成物中のタキサンの可溶化剤であることは、明細書又はその文献中の実施例で明示されていないが、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル及びアセチルクエン酸トリブチルが上述した可溶化剤である。
【0014】
驚くべきことに、クエン酸アルキルエステルの添加によって、低いエタノール含有量及び低濃度の界面活性剤を含みながら、非経口投与用として安定かつ適切なタキサン医薬品組成物が得られることがわかった。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、タキサンの非経口投与用の安定な医薬品組成物を提供する。この組成物は癌性腫瘍の治療に有用である。
【0016】
したがって、本発明の第1態様は、治療的有効量のタキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、及び、エタノールを含む非経口投与用の安定な医薬品組成物に言及する。
【0017】
本発明において、「タキサン」は、パクリタキセル、ドセタセル、これらの誘導体、類似化合物、代謝産物、プロドラッグ、これらの水和物及び塩を意味する。特定の一実施形態において、本発明の組成物中のタキサンは、パクリタキセル、ドセタセル無水物又はドセタセル三水和物、好ましくはドセタセル無水物又はドセタセル三水和物からなる群より選択される。
【0018】
本発明において、「安定(stable)」は、ヒト用途のための医薬品登録のための技術的要求事項の調和に関する国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)による2003年2月6日のバージョンQ1A(R2)に記載されている製薬の安定性基準を満たすことを意味する。
【0019】
特定の一実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、組成物の20重量%未満であり、好ましくは組成物の15重量%未満である。
【0020】
特定の一実施形態において、本発明の組成物中のタキサンの濃度は、0.05mg/ml乃至220mg/mlであり、好ましくは10mg/ml乃至80mg/mlである。好ましい実施形態において、本発明の組成物中のタキサンの量は、組成物の2重量%乃至5重量%である。
【0021】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、重量でタキサンの量の7倍未満であり、好ましくは重量でタキサンの量の5倍未満であり、より好ましくは重量でタキサンの量の3倍未満である。
【0022】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤は、限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸のモノエステル(Tween(登録商標)Emalex、Nikkol、Hodag、Dacol又はLiposorb)、ソルビタン脂肪酸のモノエステル(Span(登録商標))、ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(Crodet,Cithrol,Kessco(登録商標)、Nikkol、Mapeg(登録商標)、Myrj、Tagat(登録商標)、Aldo(登録商標)、Capmul(登録商標)、Glycerox、Lactomul(登録商標)又はEmerest(登録商標))、ポリオキシエチレングリコールエステル(Emulphor(登録商標))、ポリエトキシ化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)、Emalex、Eumulgin(登録商標)、Nikkol、Cerex又はSimusol(登録商標))、脂肪酸のポリグリセロールエステル(Nikkol Decaglyn、Polymuls、Caprol(登録商標))、ポリエチレングリコールエーテル(Volpe又はBrij(登録商標))、ポロキサマ(Lutrol(登録商標)又はPluronic(登録商標))、ポリオキシエチレンフェニルエーテル(Triton(登録商標)又はIgepal(登録商標))、又は、これらの混合物を含む最先端技術において知られている薬学的に許容可能なあらゆる非イオン性の界面活性剤である。好ましくは、界面活性剤は、Tween(登録商標)、Solutol(登録商標)HS15、Lutrol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、又は、これらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは、Tween(登録商標)及び、Solutol(登録商標)HS15からなる群より選択される。
【0023】
本発明の組成物中の界面活性剤の量量は、各界面活性剤の親水性/親油性のバランス及びその分子量に依存する。特定の一実施形態において、組成物中の界面活性剤の総量は、重量で、組成物中のタキサンの量の1倍〜50倍であり、好ましくはタキサンの量の10倍〜30倍の重量であり、特に好ましくは重量でタキサンの量の15倍〜20倍である。特定の一実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤がSolutol(登録商標)HS15のみである場合、界面活性剤の量は、組成物中のタキサンの量の10倍〜25倍であり、好ましくは15倍〜20倍の重量である。特定の一実施形態において、本発明の組成物中の界面活性剤がTween(登録商標)80のみである場合、界面活性剤の量は、重量で組成物中のタキサンの量の7倍〜15倍であり、好ましくは重量で10倍〜12倍である。
【0024】
本発明において、「クエン酸アルキルエステル」という用語は、限定されるものではないが、例えば、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル又はこれらの混合物を含む、アセチル基によって置換された又は置換されていないクエン酸エステルであって、エステルのアルキル部分が飽和直鎖炭化水素基又は分岐炭化水素基であるものを意味する。好ましくは、クエン酸アルキルエステルは、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルからなる群より選択される。
【0025】
もう一つの特定の実施形態において、クエン酸のアルキルエステルの総量は、重量で組成物中のタキサンの量の0.1倍〜10倍であり、好ましくは重量で組成物中のタキサンの量の1倍〜5倍である。
【0026】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物中のエタノールの量は、組成物の重量の5%乃至15%であり、好ましくは7%乃至12%である。
【0027】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の医薬品組成物は、溶液のpHを2乃至6の間、好ましくは2.5乃至4.5の間の値への低下させるための少なくとも1つの酸をさらに含む。本発明の組成物中に選択的に含まれる酸は、例えば、限定されるものではないが、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アミドトリゾ酸、酒石酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、ギ酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、チロシン又はこれらの混合物といった、上述のpHを得ることが可能な任意の鉱酸、有機酸、及び/又は、アミノ酸である。好ましい実施形態において、本発明の組成物に加える酸は、塩酸、クエン酸、乳酸、アスパラギン酸及びグリシンからなる群より選択される。
【0028】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物の非経口投与は、ボーラス、点滴、及び/又は、静脈内潅流によって行われ、潅流用溶液によって投与するのが好ましい。
【0029】
もう一つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、予備充填シリンジ、バイアル、アンプル、ボトル、潅流バッグ、又は、当業者に公知のその他のパッケージング材の形態の均一な溶液として与えられる。
【0030】
本発明の組成物は、最先端技術において公知の任意の方法によって調製することができる。特に、本発明の組成物は、無菌条件下において調製される。
【0031】
別の一態様において、本発明の医薬品組成物は、限定されるものではないが、例えば、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫といった、腫瘍の増殖の阻害及び/又は除去にタキサンが有効なあらゆる種類の癌性腫瘍の治療に用いられる。
【0032】
別の一態様によれば、本発明は、限定されるものではないが、例えば、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫といった、腫瘍の増殖の阻害及び/又は除去にタキサンが有効なあらゆる種類の癌性腫瘍の治療用の医薬品の調製における本発明の組成物の使用に関する。
【0033】
別の一態様によれば、本発明は、治療的有効量の癌の治療用の薬剤を含む1つ以上の薬剤との合併療法又は組み合わせにおいて本発明の医薬品組成物の治療的有効量を投与するステップを具える癌性腫瘍の治療方法に関する。癌の治療用の薬剤は、限定されるものではないが、例えば、ドキソルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ、カペシタビン、シスプラチン、プレドニゾン、プレドニゾロン、5−フルオロウラシル、リュープロリド、ブセレリン、ゴセレリン、ヒストレリン又はトリプトレリンを含む。
【0034】
本発明の別の一態様において、水性担体中における本発明の組成物の直接的希釈によって、少なくとも1つの界面活性剤、タキサン、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、エタノール、及び、選択的に酸を含むマイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液であることを特徴とする潅流用溶液が得られることがわかった。好ましい実施形態において、水性担体は、5%デキストロース血清及び0.9%生理食塩水血清からなる群より選択される。もう一つの好ましい実施形態において、マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液中の粒子サイズの分布曲線の最大値は、0.2nmから40nmの間であり、好ましくは2nmから30nmであり、より好ましくは5nmから15nmの間である。
【0035】
本発明の組成物の投与量は、特にタキサン、患者の状態、患者の体重、治療する腫瘍の重症度、投与の形態及び頻度を含むいくつかの要因に応じて変わる。好ましい実施形態において、潅流用組成物中のドセタセルの濃度は、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であり、好ましくは0.05mg/mlから0.74mg/mlの間であり、3週間ごとに最大100mg/m2を投与する。別の好ましい一実施形態において、潅流用組成物中のパクリタキセルの濃度は、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であり、3週間ごとに最大220mg/m2を投与する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
驚くべきことに、治療的有効量のタキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル、及び、15重量%未満の量のエタノールを含む非経口投与用の安定な医薬品組成物を発見した。
【0037】
実施例
これらの実施例は、本発明の例示であり、それらに限定するようには意図されていない。
【0038】
実施例1
第1手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
機械攪拌機とあらかじめ30℃に加熱した加熱ジャケットとを装備した10−L容量の反応器に20gのドセタセル無水物を入れた。75gのクエン酸トリブチル、26gの無水エタノール、4gのアスパラギン酸、及び、予め40℃に加熱することによって融解させた240gのTween(登録商標)80をその周りに加えた。すべてのドセタセル無水物が完全に溶解するまでその混合物を激しく撹拌した。得られた溶液を0.22μm孔径の絶対フィルタで濾過することによって除菌し、投薬した。
【0039】
実施例2
第2手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
堅く閉まる蓋と、機械攪拌機と、加熱ジャケットとを装備したステンレススチール又はガラス容器中に350gのLutrol(登録商標)F68を置き、その内容物を120℃で30分間加熱して生成物の確実に滅菌した。その反応器内容物を連続的に冷却して、30℃から35℃の間の温度に達するようにした。20gのドセタセル無水物、75gのクエン酸アセチルトリエチル、7gの乳酸及び70gの無水エタノールを、機械攪拌機と加熱ジャケットとを装備したもう1つの密封容器中に置いた。すべてのドセタセルが完全に溶解するまでその混合物を撹拌した。得られた溶液を、0.22μm孔径の除菌フィルタを通して、無菌Lutrol(登録商標)F68を含む容器中に移した。均一で完全に透明な溶液が得られるまで反応器の内容物を30分間撹拌し、投薬した。
【0040】
実施例3
第3手順で調製したドセタセルの医薬品組成物
堅く閉まる蓋と、機械攪拌機と、加熱ジャケットとを装備したステンレス鋼又はガラス容器に350gのSolutol(登録商標)HS15を置き、完全に溶解するまで内容物を30℃乃至35℃に加熱した。20gのドセタセル三水酸基化合物、85gのクエン酸トリヘキシル及び65gの無水エタノールを、機械攪拌機と加熱ジャケットとを装備したもう1つの密封容器中に置いた。すべてのドセタセルが完全に溶解するまでその混合物を撹拌した。両方の溶液を全体が均一になるまで穏やかに混合し、投与した。得られた溶液を0.22μm孔径の殺菌フィルタで濾過することによって除菌し、投薬した。
【0041】
実施例4
ドセタセルの医薬品組成物
20gのドセタセル無水物、60gのクエン酸トリエチル、50gの無水エタノール、6gのクエン酸及び350gのSolutol(登録商標)HS15から開始した以外は、実施例1と同じ手順で組成物を調製した。
【0042】
実施例5
パクリタキセルの医薬品組成物
20gのパクリタキセル、75gのクエン酸トリエチル、26gの無水エタノール及び200gのCremophor(登録商標)ELから開始した以外は、実施例1と同じ手順で組成物を調製した。
【0043】
実施例6
安定性実施例
実施例4に従って調製した医薬品組成物を、ヒト用途のための医薬品登録のための技術的要求事項の調和に関する国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)の新薬剤用の安定性試験に関する文献Q1A(R2)に記載されている5℃の保存条件及び25℃の加速熟成に供した。以下のクロマトグラフ法を用いてHPLCによって安定性を分析した。
*溶出液:水及びアセトニトリル
*カラム:Water symmetry C18 3.5μm 4.6×100mm
*温度 :30℃
*流速 :1.0ml/分
*検出 :最大225nmのUV
*アイソクラチック:A/B 60:40
結果を表1にまとめる。
【0044】
実施例7
潅流用溶液の調製
ヒトにおける製品の投与のために、5%のグルコースの溶液又は0.9%塩化ナトリウム溶液中において薬剤の予備稀釈を行う必要がある。これは、250mlの5%グルコース溶液又は0.9%塩化ナトリウム溶液を含む潅流バッグ又はボトルを所持することによって実行される。実施例1〜5で得た溶液のいずれかの適切な容積をこの潅流バッグ又はボトルに注入する。その後、全く透明溶液が得られるまで、潅流バッグ又はボトルを穏やかに攪拌しなければならない。潅流用のバッグ又はボトルに注入した調製の容積は、潅流バッグ中の薬剤濃度が1.2mg/ml未満のタキサンとなるのに十分でなければならない。投与が250mgを超える有効成分量を必要とする場合、潅流用により大容積の溶液を調製することが必要である。
【0045】
実施例8
平均粒子サイズの測定
実施例4の組成物用の0.9%生理食塩水血清中の実施例6の潅流用の組成物中の粒子サイズを、動的光散乱(DLS)技術を用いたZetasizerナノS装置で測定した。表2は、Z平均パラメータによる様々な時の粒子サイズの値を示している。
【0046】
実施例9
比較毒性試験
実施例4の組成物又はTaxotere(登録商標)の調合物のいずれかを1回量で2.75回、ヒトの最大容量で投与して、ラットにおける比較毒性試験を行った。死亡率、臨床的症状、体重変化、血液学所見、及び、巨視的病理所見を14日間評価し、両方の製剤についての同様の結果を得た。
【0047】
実施例10
賦形薬組成物
実施例4の組成物の賦形剤及び添加物のみを用いて組成物を調製した。60gのクエン酸トリエチル、50gの無水エタノール、6gのクエン酸、及び、350gのSolutol(登録商標)HS15から開始した以外は、実施例4の組成物のように組成物を調製した。
【0048】
実施例11
Taxotere(登録商標)溶媒組成物
19.08gの無水エタノール、54gのポリソルベート80及び127.37gの水から開始して、タキソテール(登録商標)組成物(欧州医薬品庁及びFDAによって承認されたドセタセル組成物)の賦形剤及び添加物のみを用いて組成物を調製した。
【0049】
実施例12
比較毒性の場合
この研究の目的は、28日間のテスト項目の累積的毒性に関する情報を得ることであった。SDラットにおける28日間の静脈内毒性試験、実施例10の組成物対実施例11の組成物の一用量(2.5倍最大ヒト用量)の1日1回の投与を実行した。さらに、この研究は、ヒトにおける毒物学上のリスクの評価に関する合理的根拠を与え、潜在的標的器官をも示した。ドセタセルの最大ヒト用量は2.7mg/kgであり、ラットにおけるヒトと同等の投与量を、体表面積をベースとした変換を用いて算出した(6.2のファクター要因)。SDラットに投与したドセタセルの量は41.85mg/kgであった。実施例10の組成物の賦形剤及び添加物、並びに、実施例11の組成物の賦形剤及び添加物の投与量を、41.85mg/kgのドセタセルとの比率を維持することを除いて、表3に示す。
結果:表4を参照されたい。
【0050】
実施例13
ビーグル犬における比較準急性毒物学的研究
ビーグル犬における実施例4の組成物とTaxotere(登録商標)との比較準急性毒物学的研究を5日間の反復投与で実行した。この研究の目的は、5日間連続で1日1回静脈内投与したときの、対照事項のタキソテール(登録商標)に対する実施例4の組成物の亜急性毒性を比較することであった。研究計画の概要を表5に記載する。
結果:
1.死亡:死亡は全く記録されなかった。
2.臨床的症状:表6を参照されたい。
【0051】
実施例14
マウスにおける比較準急性毒物学的研究
マウスにおける実施例4の組成物とTaxotere(登録商標)との比較準急性毒物学的研究を5日間の反復投与で実行した。この研究の目的は、5日間連続で毎日静脈内投与したときの、対照事項のTaxotere(登録商標)に対する実施例4の組成物の亜急性毒性を比較することであった。研究計画の概要を表7に記載する。
結果:
1.死亡:死亡は全く記録されなかった。
2.臨床的症状:表8を参照されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル及びエタノールを含むことを特徴とする非経口投与用の安定な医薬品組成物。
【請求項2】
前記エタノールの量が20重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
前記エタノールの量が15%重量未満であることを特徴とする請求項2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタセル無水物又はドセタセル三水和物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記タキサンの濃度が0.05mg/mlから220mg/mlの間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
前記タキサンの濃度が10mg/mlから80mg/mlの間であることを特徴とする請求項5に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の7倍未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の5倍未満であることを特徴とする請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の3倍未満であることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸のモノエステル、ソルビタン脂肪酸のモノエステル、ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリエトキシ化ヒマシ油、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、ポロキサマ、ポリオキシエチレンフェニルエーテル又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の1倍〜50倍であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の10倍〜30倍であることを特徴とする請求項11に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の15倍〜20倍であることを特徴とする請求項12に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
前記クエン酸アルキルエステルが、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
前記クエン酸アルキルエステルの総量が重量でタキサンの量の0.1倍〜10倍であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
前記クエン酸アルキルエステルの総量が重量でタキサンの量の1倍〜5倍であることを特徴とする請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記エタノールの量が5重量%から15重量%の間であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記エタノールの量が7重量%から12重量%の間であることを特徴とする請求項17に記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記組成物のpHを2から6の間の値に調整するための少なくとも1つの酸を含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
前記組成物のpHが2.5から4.5の間の値に調整されたことを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
前記酸が、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アミドトリゾ酸、酒石酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、ギ酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、チロシン又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項19又は20のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
予備充填シリンジ、バイアル、アンプル、ボトル又は潅流用バッグに与えられることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
非経口投与が、ボーラス、点滴、及び/又は、静脈内潅流によって行われることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項24】
癌性腫瘍の治療用であることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項25】
前記癌性腫瘍が、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫からなる群より選択されることを特徴とする請求項28に記載の医薬品組成物。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載の組成物と、静脈内潅流に適した水性担体とを、直接的に混合によって得られるマイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液であることを特徴とする潅流用組成物。
【請求項27】
前記水性担体がデキストロース血清及び生理食塩水血清からなる群より選択されることを特徴とする請求項26に記載の潅流用組成物。
【請求項28】
前記マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液の粒子サイズの分布曲線の最高値が、0.2nmから40nmの間であることを特徴とする請求項26乃至27のいずれか1項に記載の潅流用組成物。
【請求項29】
前記マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液中のタキサンの濃度が、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であることを特徴とする請求項26乃至28のいずれか1項に記載の潅流用組成物。
【請求項1】
タキサン、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル及びエタノールを含むことを特徴とする非経口投与用の安定な医薬品組成物。
【請求項2】
前記エタノールの量が20重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
前記エタノールの量が15%重量未満であることを特徴とする請求項2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタセル無水物又はドセタセル三水和物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記タキサンの濃度が0.05mg/mlから220mg/mlの間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
前記タキサンの濃度が10mg/mlから80mg/mlの間であることを特徴とする請求項5に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の7倍未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の5倍未満であることを特徴とする請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
前記エタノールの重量がタキサンの重量の3倍未満であることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸のモノエステル、ソルビタン脂肪酸のモノエステル、ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリエトキシ化ヒマシ油、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、ポロキサマ、ポリオキシエチレンフェニルエーテル又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の1倍〜50倍であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の10倍〜30倍であることを特徴とする請求項11に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤の総量が重量でタキサンの量の15倍〜20倍であることを特徴とする請求項12に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
前記クエン酸アルキルエステルが、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
前記クエン酸アルキルエステルの総量が重量でタキサンの量の0.1倍〜10倍であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
前記クエン酸アルキルエステルの総量が重量でタキサンの量の1倍〜5倍であることを特徴とする請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記エタノールの量が5重量%から15重量%の間であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記エタノールの量が7重量%から12重量%の間であることを特徴とする請求項17に記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記組成物のpHを2から6の間の値に調整するための少なくとも1つの酸を含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
前記組成物のpHが2.5から4.5の間の値に調整されたことを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
前記酸が、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アミドトリゾ酸、酒石酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、ギ酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、チロシン又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項19又は20のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
予備充填シリンジ、バイアル、アンプル、ボトル又は潅流用バッグに与えられることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
非経口投与が、ボーラス、点滴、及び/又は、静脈内潅流によって行われることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項24】
癌性腫瘍の治療用であることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項25】
前記癌性腫瘍が、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵癌、肝癌、肺癌、カポジ肉腫、黒色腫、頚部、喉部及び口の癌腫、脳癌腫、神経膠芽細胞腫及びリンパ腫からなる群より選択されることを特徴とする請求項28に記載の医薬品組成物。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載の組成物と、静脈内潅流に適した水性担体とを、直接的に混合によって得られるマイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液であることを特徴とする潅流用組成物。
【請求項27】
前記水性担体がデキストロース血清及び生理食塩水血清からなる群より選択されることを特徴とする請求項26に記載の潅流用組成物。
【請求項28】
前記マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液の粒子サイズの分布曲線の最高値が、0.2nmから40nmの間であることを特徴とする請求項26乃至27のいずれか1項に記載の潅流用組成物。
【請求項29】
前記マイクロエマルジョン又はマイクロ懸濁液中のタキサンの濃度が、0.05mg/mlから1.2mg/mlの間であることを特徴とする請求項26乃至28のいずれか1項に記載の潅流用組成物。
【公表番号】特表2011−529930(P2011−529930A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521479(P2011−521479)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005691
【国際公開番号】WO2010/015400
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511028397)
【氏名又は名称原語表記】GP PHARM,S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005691
【国際公開番号】WO2010/015400
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511028397)
【氏名又は名称原語表記】GP PHARM,S.A.
【Fターム(参考)】
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