説明

注射器及びプランジャロッド

【課題】落下等による衝撃に強い注射器及びプランジャロッドを提供する。
【解決手段】プランジャロッドは、ピストンが取り付けられる第1軸部61と、その後方に突出する第2軸部62とを備え、第2軸部62には、可撓性のフック部63が設けられており、ピストンの移動による注射中は第1軸部61と軸部62とが一体となってケーシングに対して軸方向に移動し、第1軸部61に対して軸部62をさらに押し込むことで、フック部63が、接続部に当接し、挿通孔に収納され、第2軸部62のみが移動可能になり、ケーシングの先端部により針の外周を覆うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器及びプランジャロッドに関するものであり、より詳細には、投与後、注射針を格納することができる注射器、及び当該注射器に用いられるプランジャロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、注射後、注射針に針キャップを被せる際に、操作者の指に投与後の注射針が突き刺さる等といった、いわゆる針刺し事故を防止するために、注射動作に続いて注射針の格納を自動的に行うことが可能な注射器が開発されている。
【0003】
このような注射器としては、例えば特許文献1に記載されている注射器が挙げられる。この従来の注射器では、図20に示すように、プランジャロッドは、押圧部132と該押圧部132に加えられた力を受ける受部131とを備えている。押圧部132は、受部131に挿通するようになっている。そして、受部131と押圧部132は、架橋ブリッジ133を介して当接しており、投与後に押圧部132を押し込み操作するだけで、架橋ブリッジ133が破断する。そして、さらに押圧部131を押し込むことにより注射針15が保護されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、プランジャ心棒端部から延び、かつ内側から外側に向いた複数の可撓性タブを備えた注射器が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6712793号明細書(2004年3月30日発行)
【特許文献2】特表2001−521793号公報(平成13(2001)年11月13日公表)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の注射器には、以下の問題が生じる。
【0006】
特許文献1に記載されている注射器では、軸方向に掛かる力が全て架橋ブリッジ133に掛かっているため、注射器の落下等による衝撃は架橋ブリッジに集中し破断しやすくなっていた。その結果、架橋ブリッジの強度が弱まり、流通時にすでに架橋ブリッジ133が破断してしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、落下等による衝撃に強い注射器及びプランジャロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の注射器は、上記の課題を解決するために、先端に注射針を取付け可能でかつ後端が開口する筒状のシリンジと、該シリンジ内に軸方向移動自在に設けられるピストンと、先端部に上記ピストンが取り付けられかつ後端部が上記シリンジの後端開口から後方に突出するプランジャロッドと、上記シリンジの外周側に設けられるケーシングと、上記シリンジの後端部に設けられ、該シリンジとケーシングとを接続する接続部とを備え、上記ケーシングは、その先端部よりも上記シリンジ先端に取り付けられた注射針が先端側に突出する第1位置から、その先端部により上記注射針の外周を覆う第2位置に向けて上記シリンジに対して軸方向移動可能であり、上記プランジャロッドは、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成された注射器であって、上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方(上記他方の軸部)には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、第2軸部のみがシリンジに対して軸方向移動可能になり、上記移動可能になった第2軸部がシリンジ及び第1軸部に対して軸方向先端側に押し込まれることにより、該第2軸部とともに上記ケーシングをその第1位置から第2位置へ移動させるように、上記ケーシングに後方から当接する操作部が第2軸部に設けられたことを特徴としている。
【0009】
本発明の注射器は、先端に注射針を取付け可能でかつ後端が開口する筒状のシリンジと、該シリンジ内に軸方向移動自在に設けられるピストンと、先端部に上記ピストンが取り付けられかつ後端部が上記シリンジの後端開口から後方に突出するプランジャロッドと、上記シリンジの外周側に設けられるケーシングとを備えるというものである。なお、シリンジの先端には予め注射針が固定されていてもよく、使用時に注射針アタッチメントを装着していてもよい。上記シリンジ内には注射液が収容されており、その後部が上記ピストンにより、液密状にシールされている。また、本発明の注射器は、使用前にはシリンジ内に注射液が収容されておらず、使用時に注射液をシリンジ内へ吸引した上で使用するような構成であってもよい。
【0010】
上記の構成によれば、上記ケーシングは、その先端部よりも上記シリンジ先端に取り付けられた注射針が先端側に突出する第1位置から、その先端部により上記注射針の外周を覆う第2位置に向けて上記シリンジに対して軸方向移動可能であるので、上記ケーシングが第1位置にある場合には、注射針が突出した状態になる一方、上記ケーシングが第2位置にある場合、注射針の外周が覆われ、ケーシングにより収容された状態になる。
【0011】
上記の構成によれば、上記プランジャロッドは、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成されている。そして、上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられている。そして、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっている。すなわち、上記フック部は、ピストンが先端に移動するまでの間(注射液がシリンジ内に収容されている間)は他方の軸部の端部に当接したままになっている。このため、ピストンが先端に移動するまでの間では、第2軸部が軸方向先端側に押し込まれることにより、力が上記端部に伝わり、この端部を介してピストンに力が伝わり、移動するようになっている。
【0012】
また、ピストンが先端に移動した後(シリンジ内の注射液を注射し終わった後、すなわち投与後)、さらに第2軸部が押し込まれる(付勢する)。このとき、上記フック部と接続部との当接によりフック部が内側に弾性変形して上記挿通孔に収納され、フック部の他方の軸部の端部での当接(係止)が解除される。そして、上記当接が解除された後、シリンジに対して第2軸部のみが軸方向移動自在になる。このとき、第2軸部が軸方向先端側に押し込まれることにより、力はピストンには伝わらず、第2軸部にのみ伝えられることになる。
【0013】
そして、このように移動可能になった第2軸部がシリンジ及び第1軸部に対して軸方向先端側に押し込まれることにより、第2軸部に設けられた操作部が上記ケーシングに後方から当接する。これにより、力は、上記ケーシングの後端に伝わり、上記ケーシング及び第2軸部が、上記シリンジに対して軸方向に移動する。そして、ケーシングが上記第1位置から上記第2位置へ移動したとき、注射針の外周を覆い、ケーシングにより注射針が収容された状態になる。
【0014】
本発明の注射器によれば、第2軸部の軸方向移動が、端部で係止されているので、従来の架橋ブリッジにより第2軸部の移動を係止しているプランジャロッドよりも、落下に対する衝撃に強くなっている。すなわち、従来の注射器では、第2軸部軸方向に掛かる力が全て架橋ブリッジに掛かっていた。しかも、針収納時に破断する必要があるため、架橋ブリッジは、一定の力により破断する程度の強度に設計されていた。このため、注射器の落下等による衝撃は架橋ブリッジに集中し破断しやすくなっていた。その結果、架橋ブリッジの強度が弱まり、流通時にすでに架橋ブリッジが破断してしまうという問題が生じる。
【0015】
しかしながら、本発明の構成では、第2軸部が、端部で係止されている。このため、端部に落下に対する軸方向の衝撃が掛かったとしても、第1軸部全体に衝撃による力が掛かることになり、第1軸部と第2軸部との当接部に力が集中することがない。このため、上記の構成では、従来よりも、落下等による衝撃に強い注射器を実現できる。
【0016】
なお、軸方向におけるフック部と接続部との当接位置は、シリンジ内の注射液を注射し終わる直前(すなわち投与終了直前)のタイミングで、フック部と接続部とが当接可能になる位置であればよい。すなわち、上記当接位置は、シリンジの長さと第1軸部の長さ(第1軸部とピストンの長さ)との関係により設定される。それゆえ、接続部に設けられたフック部との当接部は、上記当接位置及びその設定に応じて、適宜形状が設計可能である。この当接部の形状としては、例えば、先端側に凹んだ形状であってもよく、後端側に突出した形状であってもよい。さらには、接続部がプレート形状である場合には、プレートと同一平面でフック部が当接していてもよい。
【0017】
すなわち、本発明の注射器では、上記接続部におけるフック部との当接部として、上記フック部と当接し、かつ軸方向後方に突出した突出部が設けられていてもよい。
【0018】
また、本発明の注射器では、上記接続部には、上記第1軸部及び上記第2軸部を軸方向に案内保持する中心挿通孔が形成されており、上記突出部は、上記中心挿通孔を取り囲む筒形状になっていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記突出部は、上記中心挿通孔を取り囲む筒形状になっているので、注射器の動作中に上記第1軸部及び上記第2軸部が軸を中心に回転してしまっても、フック部と突出部との当接を確実にすることができる。
【0020】
また、本発明の注射器では、上記フック部の外周部は、上記突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状になっていることが好ましい。
【0021】
「上記突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状」とは、軸方向後端側からみたとき、突出部の側壁が、フック部の外周部の形状を含む形状になっていることをいう。これにより、上記の構成によれば、上記フック部は、より多くの箇所で、上記突出部の側壁と当接することになる。それゆえ、上記の構成によれば、よりスムーズにフック部が上記挿通孔に収納される。
【0022】
また、本発明の注射器は、上記第1軸部に、第2軸部が挿通する挿通孔が形成されており、上記フック部は、第2軸部に設けられ、第1軸部の軸方向後端部に当接する当接面と、上記接続部(好ましくは突出部)と当接可能であり、かつ軸方向前方に傾斜した傾斜面とを有することが好ましい。
【0023】
このように、フック部に、上記接続部(好ましくは突出部)と当接可能であり、かつ軸方向前方に傾斜した傾斜面が形成されていることにより、ピストンが先端に移動した後(シリンジ内の注射液を注射し終わった後、すなわち投与後)、さらに第2軸部が押し込まれる(付勢する)際に、フック部が挿通孔に収納されやすくなる。
【0024】
また、本発明の注射器では、上記フック部は、上記当接面から軸方向に延び、上記挿通孔に当接可能な突起部を備えたことが好ましい。
【0025】
上記の構成により、第2軸部が軸方向先端側に押し込まれる際に、第2軸部の横方向(軸方向に対し垂直な方向)の移動を制限することが可能になる。それゆえ、第1軸部と第2軸部とが一体となって管状ケーシングに対して軸方向に移動するときに、第2軸部の横方向の移動が制限され(横方向のずれが軽減され)、第2軸部から第1軸部へ円滑に力が伝わる。この結果、プランジャロッドを安定させて押し込むことができる。
【0026】
また、本発明の注射器では、第1軸部と第2軸部との何れか一方は、上記フック部が形成された部分に、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部を備えたことが好ましい。
【0027】
このように、上記フック部が形成された部分に、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部を備えたことにより、心棒部とフック部との間に空間(間隙)が形成される。それゆえ、フック部は、第2軸部の軸方向に対し垂直な方向に弾性変形が可能な構造(可撓性構造)を実現することが可能になる。ここで、フック部を備えた軸部を固定して考えた場合に、フック部が弾性変形して挿通孔に収納される際移動する方向(軸方向と垂直な方向)を、本明細書中で以下「フック部収納時移動方向」と称することとする。なお、心棒部とフック部とにより形成された間隙は、フック部の可撓性の程度に応じて適宜設定可能であるが、少なくとも該間隙は、フック部が弾性変形し挿通孔に収まるように設定されていることが好ましい。
【0028】
さらに、上記心棒部には、軸方向に延びる板状のリブが形成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、操作部を軸方向先端部へ押し込む際に、軸方向に掛かる力に対する心棒部の強度が強まり、心棒部の撓みが防止される。
【0030】
また、心棒部に軸方向に延びるリブが設けられている場合、注射動作の僅かなズレ(例えば、プランジャロッドの押し込み方向が軸方向から僅かにズレる)、フック部とフィンガーグリップの突出部との当接箇所のズレ、第2軸部の製造誤差等により、フック部が第1軸部の挿通孔に収納される際にリブと接触する場合がある。フック部がリブと接触することにより、注射動作後の操作部の押し込みによる、第2軸部の軸方向先端部側への移動がスムーズに行われなくなるおそれがある。
【0031】
それゆえ、本発明の注射器では、上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納される際に、上記板状のリブと上記フック部との接触を防止する構造になっていることが好ましい。
【0032】
本発明の注射器では、上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部の軸方向先端部と離間するように配されていることが好ましい。
【0033】
これにより、フック部が第1軸部の挿通孔に収納される際に、フック部の軸方向先端部とリブとの接触を確実に防止することができる。その結果、注射動作後の操作部の押し込みによる、第2軸部の軸方向先端部側への移動がスムーズに行われる。
【0034】
本発明の注射器では、上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部における軸方向先端部を含むフック部全体と離間するように配されていることが好ましい。
【0035】
これにより、フック部が第1軸部の挿通孔に収納されるときの、フック部の軸方向先端部とリブとの接触防止効果がより確実になる。
【0036】
また、本発明の注射器では、上記第2軸部には、第1軸部と係合することで該第2軸部の軸方向後端への移動を制限する係止部が設けられていることが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、第2軸部の軸方向後端への移動を制限する係止部が設けられているので、第2軸部が、保管時、流通時、及び使用時に抜け落ちることがなくなる。さらに、第2軸部を移動させることによりプランジャロッド全体を軸方向後端側に移動させることができ、別容器(アンプル、バイアル等)に入った注射液を、本発明の注射器に吸引することも可能となる。また、上記係止部は、第1軸部に設けられ、第2軸部と係合する構成であってもよい。
【0038】
また、本発明の注射器では、第1軸部及び第2軸部のうち、挿通孔に挿通される上記他方の軸部には、挿通孔内の該他方の軸部の移動を軸方向へ案内する挿通案内部が設けられていることが好ましい。挿通案内部の形状としては、例えば上記他方の軸部が第2軸部である場合、フック部より先端側に伸びており挿通孔に沿う形状であればよく、好ましくは、第2軸部のフック部が形成されていない部分と同一の断面形状で、かつフック部より先端側に伸びた形状があげられる。他方の軸部が第1軸部である場合には、上記同様の形状でフック部より後端側に伸びた形状があげられる。
【0039】
上記の構成によれば、挿通孔内の他方の軸部の移動を軸方向へ案内する挿通案内部が設けられているので、注射器使用前、投与時、及び針収納時における、第1軸部と第2軸部との相互位置を安定化させることができる。
【0040】
また、本発明の注射器では、上記接続部は、プレートと、該プレートから直径方向に張り出す一対のタブと、上記ケーシングを案内保持するスロットとを備え、上記プレートには、上記第1位置にあるケーシングを係止する第1の係止片が設けられていることが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、上記プレートには、上記第1位置にあるケーシングを係止する第1の係止片が設けられているので、第1位置にあるケーシングをより確実に固定することが可能になる。
【0042】
また、上記接続部のプレートには、さらに、上記ケーシングが第2位置に移動したとき、フック部の挿通孔への収納により移動可能になった第2軸部を係止する第2の係止片が設けられていることが好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、上記プレートには、上記フック部の挿通孔への収納により移動可能になった第2軸部を係止する第2の係止片が設けられているので、ケーシングが第2位置に移動したとき、第2軸部に設けられた操作部と接続部とが固定される。このため、第2位置にあるケーシングをより確実に固定することができ、使用終了後にケーシングがずれて再び針が露出することがない。
【0044】
また、本発明の注射器では、さらに、注射針の未装着時にシリンジ先端に取り付けられる栓体と、上記ケーシングの先端部に着脱可能に外嵌される先端キャップとを備え、上記先端キャップは、上記栓体を覆うことが好ましい。上記の構成によれば、栓体とケーシングの隙間から異物がケーシング内に入り込むことを先端キャップにより防止することができる。
【0045】
なお、本発明の注射器は、医療用、及び医療用以外の種々の用途のいずれかの注射器としても実施可能であり、より好ましくは医療用である。
【0046】
本発明のプランジャロッドは、上記の課題を解決するために、筒状のシリンジと、該シリンジ内に軸方向移動自在に設けられるピストンと、上記シリンジの外周側に設けられるケーシングと、上記シリンジの後端部に設けられ、該シリンジとケーシングとを接続する接続部とを備え、注射針を格納する注射針格納機構を有する注射器に用いるためのプランジャロッドであって、上記プランジャロッドは、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成されているとともに、上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、第2軸部のみがシリンジに対して軸方向移動可能になることを特徴としている。なお、上記「注射針格納機構」とは、投与後のプランジャロッドの押し込みにより、注射針が格納されるような機構のことをいう。
【0047】
また、本発明のプランジャロッドでは、上記接続部に、上記第1軸部及び上記第2軸部を軸方向に案内保持する中心挿通孔が形成され、上記突出部が、上記中心挿通孔を取り囲む筒形状になった注射器に用いられるプランジャロッドであって、上記フック部の外周部は、上記突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状になっていることが好ましい。
【0048】
また、本発明のプランジャロッドでは、上記第1軸部に、第2軸部が挿通する挿通孔が形成されており、上記フック部は、第2軸部に設けられ、第1軸部の軸方向後端部に当接する当接面と、上記突出部と当接可能であり、かつ軸方向前方に傾斜した傾斜面とを有することが好ましい。
【0049】
また、本発明のプランジャロッドでは、上記フック部は、上記当接面から軸方向に延び、上記挿通孔に当接可能な突起部を備えたことが好ましい。
【0050】
本発明のプランジャロッドでは、第1軸部と第2軸部との何れか一方は、上記フック部が形成された部分に、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部を備えたことが好ましい。
【0051】
上記心棒部には、軸方向に延びる板状のリブが形成されていることが好ましい。
【0052】
本発明のプランジャロッドでは、上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納される際に、上記板状のリブと上記フック部との接触を防止する構造になっていることが好ましい。
【0053】
本発明のプランジャロッドでは、上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部の軸方向先端部と離間するように配されていることが好ましい。
【0054】
本発明のプランジャロッドでは、上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部における軸方向先端部を含むフック部全体と離間するように配されていることが好ましい。
【0055】
また、本発明のプランジャロッドでは、上記第2軸部には、第1軸部と係合することで該第2軸部の軸方向後端への移動を制限する係止部が設けられていることが好ましい。
【0056】
また、本発明のプランジャロッドでは、第1軸部及び第2軸部のうち、挿通孔に挿通される上記他方の軸部には、挿通孔内の該他方の軸部の移動を軸方向へ案内する挿通案内部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0057】
以下、本発明の効果を説明する。
【0058】
本発明の注射器は、以上のように、上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、第2軸部のみがシリンジに対して軸方向移動可能になり、上記移動可能になった第2軸部がシリンジ及び第1軸部に対して軸方向先端側に押し込まれることにより、該第2軸部とともに上記ケーシングをその第1位置から第2位置へ移動させるように、上記ケーシングに後方から当接する操作部が第2軸部に設けられた構成である。
【0059】
また、本発明のプランジャロッドは、以上のように、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成されているとともに、上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、シリンジに対して第2軸部のみが軸方向移動可能になった構成である。
【0060】
上記の、本発明の注射器および本発明のプランジャロッドの構成において、フック部の動作について、より具体的に記載すれば以下の通りである。すなわち、ピストンがシリンジ先端に移動しさらに付勢したときに、上記フック部が接続部と当接することによりフック部が内側に弾性変形して、上記挿通孔に収容され、シリンジに対して第2軸部のみが軸方向移動可能となる。
【0061】
上記の構成では、第2軸部が、端部で係止されているため、端部に落下に対する軸方向の衝撃が掛かったとしても、第1軸部全体に衝撃による力が掛かることになり、第1軸部と第2軸部との当接部に力が集中することがない。このため、上記の構成では、従来よりも、落下等による衝撃に強い注射器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図15に基づいて説明すると以下の通りである。図1は、本実施形態の注射器の構成を示す全体縦断面図であり、図1(a)は薬液の注射開始前の構成を示し、図1(b)は投与終了時点(薬液の注射完了時点)の構成を示し、図1(c)は、注射針格納完了時点の構成を示す。
【0063】
図1に示すように、注射器1は、先端に注射針2を取付け可能で且つ後端が開口している円筒状のシリンジ3と、ゴム製のピストン4と、フィンガーグリップ(接続部)5と、第1軸部61及び第2軸部62で構成されるプランジャロッド6と、管状ケーシング7とを備えている。
【0064】
ピストン4は、シリンジ3内に設けられており、液密性を維持しつつ軸方向に移動可能になっている。そして、シリンジ3の後端開口部には、フィンガーグリップ5が取り付けられている。また、プランジャロッド6の先端部には、ピストン4が取り付けられている。そして、プランジャロッド6の後端部は、シリンジ3の後端開口から後方へ向かって突出するようになっている。また、シリンジ3の外周側には、管状ケーシング7が設けられている。
【0065】
シリンジ3は、先端部にはノズル部31が一体成形されている。注射器1の出荷時や保管時には、ノズル部31にはゴム栓(不図示)が取り付けられており、シリンジ3内に収容された薬液を外気から密封している。そして、ゴム栓を取り外して、注射針2を備える注射針アタッチメント20をノズル部31に嵌着することによって、注射針2がシリンジ3の先端に取り付けられるようになっている。また、シリンジ3の後端部にはフランジ33が一体成形されている。
【0066】
また、注射器1は、管状ケーシング7の先端部に着脱自在に外嵌される先端キャップ(不図示)をさらに備えている。この先端キャップは、先端部が閉塞されているとともに後端が開口している。そして、この後端の開口部が管状ケーシング7の先端部に嵌着され、先端キャップと管状ケーシング7先端部とは全周にわたって接触している。上記ゴム栓は、管状ケーシング7に取り付けられた先端キャップの内部に収容され、該先端キャップによりゴム栓が覆われている。この先端キャップを装着することで、ゴム栓と管状ケーシング7との隙間から異物が管状ケーシング7とシリンジ3との間に混入することが防止される。また、図1には示されていないが、注射器1は、一端側が閉塞されている後端キャップを備えていてもよい。さらに、この後端キャップは、フィンガーグリップ5の後端側で管状ケージング7に螺着され、注射器の後端側全体を覆うことが可能になっていてもよい。
【0067】
次に、注射器1におけるフィンガーグリップ5、プランジャロッド6、及び管状ケーシング7の構成について、より具体的に説明する。
【0068】
まず、フィンガーグリップ5の構成について、図2〜図4に基づいて説明する。図2は、注射器1のフィンガーグリップ5の構成を示し、図2(a)は上面図であり、図2(b)は底面図である。また、図3は、図2(a)のI−I線断面図である。さらに、図4は、図2(a)のII−II線断面図である。
【0069】
フィンガーグリップ5は、図2〜図4に示すように、楕円板状プレート(プレート)51と、一対のタブ52と、チャック54と、一対の第2係止片55と、一対の第1係止片56とを一体に備えている。一対のタブ52は、楕円板状プレート51から長軸方向に張り出すように形成されている。また、チャック54は、楕円板状プレート51の前面から前方に延出しており、シリンジ3のフランジ33に外嵌固定されている。また、一対の第2係止片55は、楕円板状プレート51の後面から後方に延出している。また、一対の第1係止片56は、楕円板状プレート51の前面から前方に延出しており、管状ケーシング7を係止するようになっている。楕円板状プレート51には、管状ケーシング7を案内保持する円弧状のスロット53と、プランジャロッド6を案内保持する中心貫通孔57とが形成されている。
【0070】
さらに、楕円板状プレート51の前面には、後方に突出した突出部58が形成されている。この突出部58は、楕円板状プレート51の中央部に形成されており、中心貫通孔57から連続した円筒形状(すなわち、中心貫通孔57の直径と同一の直径の円筒形状)になっている。この突出部58は、シリンジ3の薬液の注射終了後に、第2軸部62の軸方向移動係止を解除し、第2軸部62のみが軸方向先端部側へ移動可能にする機能を有する。この突出部58による第2軸部62の軸方向移動係止解除機構については、後述する。
【0071】
なお、図2〜図4では、突出部58は円筒形状になっているが、突出部58の形状は、これに限定されるものではなく、楕円板状プレートの前面から後方へ突出し、後述する第2軸部62のフック部と当接可能な形状であればよい。例えば、突出部58は、楕円板状プレートの前面から後方へ突出する棒状体であってもよい。プランジャロッドが軸中心に回転しても動作可能であるという観点から、突出部58は円筒形状になっていることが好ましい。
【0072】
また、このフィンガーグリップ5は、成形可能な樹脂、例えば、ポリカーボネート製、またはABS樹脂製の射出成形品により構成できる。このとき、フィンガーグリップ5は、突出部58と楕円板状プレート51とを別々の成形品として製造し、両者を組立てることにより製造されていてもよい。また、突出部58と楕円板状プレート51とが一体的に成形されたものであってもよい。
【0073】
次に、プランジャロッド6の構成について、図5及び図6に基づいて説明する。図5は、注射器1のプランジャロッド6の構成を示し、図5(a)は上面図であり、図5(b)は側面図である。また、図6は、図5(a)のIII−III線断面図である。
【0074】
図5及び図6に示すように、プランジャロッド6は、第1軸部61と第2軸部62とを備えている。第1軸部61の先端部には、ピストン4が取り付けられるようになっている。第1軸部61はピストン4の後端部から後方に延びて上記フィンガーグリップ5の中心貫通孔57に挿通されるようになっている。また、第2軸部62は、第1軸部61へ軸方向に挿通されるようになっている。そして、第2軸部62の後端部は、管状ケーシング7の後端部よりも後方に突出している。そして、第2軸部62の後端部には、フレア状またはフランジ状の操作部69が形成されている。操作部69を軸方向先端部へ押し込むと、ピストン4の摺動によりシリンジ3内の薬液が注射されることになる。
【0075】
プランジャロッド6の第1軸部61の構成について説明する。図7は、プランジャロッド6の第1軸部61単体を軸方向後端側から見た平面図である。また、図8(a)は、プランジャロッド6の第1軸部61単体の正面図であり、図8(b)は、第1軸部61単体の側面図である。さらに、図9(a)は、図7のIV−IV線断面図であり、図9(b)は、図7のV−V線断面図である。図7〜図9に示すように、第1軸部61の内周には、軸方向全長に渡って、第2軸部62を内部に挿通し得る挿通孔65が形成されている。さらに、この挿通孔65には、第1軸部61を軸方向に案内する案内溝66が形成されている。また、図5に示すように、第2軸部62の外周面には、軸方向先端部から後方へ向けて延びる案内凸部67が形成されている。そして、案内溝66と案内凸部67とが互いに係合することで、第2軸部62は、第1軸部61の挿通孔65内部を軸方向に移動可能になっている。
【0076】
次に、プランジャロッド6の第2軸部62の構成について説明する。図10及び図11は、プランジャロッド6の第2軸部62の構成を示し、図10(a)は正面図であり、図10(b)は側面図である。また、図11(a)は、第2軸部62の上面図であり、図11(b)は、図11(a)におけるVI−VI線断面図であり、図11(c)は、図11(a)におけるVII−VII線断面図である。
【0077】
図10及び図11に示されるように、第2軸部62には、フック部63が2つ設けられている。この2つのフック部63は、第2軸部62の軸に対し互いに線対称になるように設けられている。そして、フック部63は、第2軸部62の軸に対し垂直な方向に弾性変形が可能な構造(可撓性構造)になっている。このフック部63は、第1軸部61の軸方向後端部64と当接するようになっている。フック部63と軸方向後端部64との当接は、ピストン4がシリンジ3の軸方向先端部に移動した(シリンジ3の薬液を注射し終わった)ときまで維持される。また、図10及び図11に示すように、第2軸部62には、係止部68が設けられており、この係止部68が第1軸部61の軸方向後端部64と係合することで、挿通孔65内部における第2軸部62の軸方向後端への移動を制限している。この係止部68により、第2軸部62が、保管時、流通時、及び使用時に抜け落ちることがなく、また、薬液注入時等にプランジャロッド6を軸方向後端側に移動させることができるようになっている。
【0078】
また、図10に示されるように、第2軸部62には、挿通孔内の第2軸部62の移動を軸方向へ案内する挿通案内部70が設けられている。挿通案内部70が設けられているので、注射器使用前、投与時、及び針収納時における、第1軸部61と第2軸部62との相互位置を安定化させることができる。
【0079】
以下、第2軸部62のフック部63の詳細な構成、及び、軸方向後端部64とフック部63との当接について、図12に基づいて説明する。図12(a)は、第2軸部62のフック部63の構成を示す断面図であり、図12(b)は、第1軸部61の軸方向後端部64に当接された第2軸部62のフック部63を示す断面図である。
【0080】
図12(a)及び図12(b)に示されるように、第2軸部62では、フック部63が形成されている部分は、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部62aになっている。すなわち、フック部63は、心棒部62aから分岐したような構成になっている。そして、心棒部62aとフック部63との間に空間(間隙)を設けることで、フック部63は、第2軸部62の軸に対し垂直な方向に弾性変形が可能な構造(可撓性構造)を実現している。なお、心棒部62aとフック部63とにより形成された間隙は、フック部63の可撓性の程度に応じて適宜設定可能であるが、少なくとも該空間は、フック部63が弾性変形し第1軸部61の挿通孔65に収まるように設定されていることが好ましい。
【0081】
また、フック部63は、先端部63aと支持部63bとからなっている。先端部63aには、第1軸部61の軸方向後端部64に当接する当接部としての当接面63aが形成されている。図12(b)に示されるように、第2軸部62が、この当接面63aにて、第1軸部61の軸方向後端部64と当接することにより、第2軸部62の軸方向先端部側への移動が係止される。
【0082】
また、フック部63の当接面63aから軸方向先端部側へ突出するように突起部63aが形成されている。この突起部63aは、図12(b)に示されるように、第1軸部61の軸方向後端部64(挿通孔65の内壁)に係合し、第2軸部62の横方向(軸方向に対し垂直な方向)の移動を制限する。この突起部63aが設けられていることにより、第1軸部61と第2軸部62とが一体となって管状ケーシング7に対して軸方向に移動するときに、第2軸部62の横方向の移動が制限され(横方向のずれが軽減され)、第2軸部62から第1軸部61へ円滑に力が伝わる。この結果、プランジャロッド6を安定させて押し込むことができる。
【0083】
また、当接面63aの軸方向後端側には、第2軸部62の軸に対し傾斜した傾斜面63aが形成されている。後述の通り、フック部63では、この傾斜面63aがフィンガーグリップ5の突出部58と当接し、フック部63が内側に弾性変形し、さらに押し込まれることにより、第2軸部62の軸方向先端部側への移動の係止が解除されるようになっている。また、傾斜面63aは、第1軸部61の挿通孔65への挿入が容易になるように、軸方向前部側へ向かって傾斜した面になっている。
【0084】
したがって、プランジャロッド6は、ピストン4がシリンジ3内の軸方向途中部から先端に移動する間は、当接面63aを介して軸方向後端部64に力が加わり、第1軸部61と第2軸部62とが一体となって管状ケーシング7に対して軸方向移動自在になっている。そして、ピストン4がシリンジ3の軸方向先端部に移動した(シリンジ3の薬液を注射し終わった)とき、第1軸部61の押し込み動作(移動)が規制される。そして、このとき、傾斜面63aがフィンガーグリップ5の突出部58と当接している。そして、第2軸部62がさらに付勢したとき、第2軸部62のみが軸方向先端部側へ移動可能になる。
【0085】
このようにフック部63の挿通孔65への収納により移動可能になった第2軸部62を、さらにシリンジ3及び第1軸部61に対して軸方向先端側に押し込むことにより、操作部69が管状ケーシング7の後方から当接するようになる。そして、管状ケーシング7の後方から当接した操作部69を、さらに軸方向先端側へ押し込むことにより、第2軸部62とともに、管状ケーシング7がその第1位置から第2位置へ移動するようになる。「第1位置」とは、管状ケーシング7において注射針2が突出した状態になる位置のことをいう(図1(a)及び(b)参照)。また、「第2位置」とは、管状ケーシング7の先端部により注射針2の外周を覆い、注射針2がケーシングにより収容された状態になる位置のことをいう(図1(c)参照)。
【0086】
このようにプランジャロッド6では、第2軸部62の軸方向移動が、第1軸部61の軸方向後端部64で係止されているので、従来の架橋ブリッジにより第2軸部の移動を係止しているプランジャロッドよりも、落下に対する衝撃に強くなっている。すなわち、従来では、第2軸部軸方向に掛かる力が全て架橋ブリッジに掛かっていたため、注射器の落下等による衝撃は架橋ブリッジに集中し破断しやすくなっていた。その結果、架橋ブリッジの強度が弱まり、流通時にすでに架橋ブリッジが破断してしまうという問題が生じる。
【0087】
しかしながら、プランジャロッド6では、第2軸部62が、第1軸部61の軸方向後端部64で係止されている。このため、軸方向後端部64に落下に対する軸方向の衝撃が掛かったとしても、第1軸部61全体に衝撃による力が掛かることになり、第1軸部61と第2軸部62との当接部に力が集中することがない。このため、プランジャロッド6は、従来よりも、落下に対する衝撃に強くなっている。
【0088】
なお、軸方向におけるフック部63とフィンガーグリップ5との当接位置は、シリンジ内の注射液を注射し終わる直前(すなわち投与終了直前)のタイミングで、フック部63とフィンガーグリップ5とが当接可能になる位置であればよい。すなわち、上記当接位置は、シリンジの長さと第1軸部61の長さ(第1軸部61とピストン4の長さ)との関係により設定される。それゆえ、フック部63とフィンガーグリップ5の当接部は、上記のような軸方向後方に突出した突出部58に限定されず、例えば、先端側に凹んだ形状であってもよく、後端側に突出した形状であってもよい。さらには、フィンガーグリップ5のプレートと同一平面でフック部が当接していてもよい。
【0089】
なお、図5〜図12では、第1軸部61に第2軸部62が挿通し、第1軸部61に挿通孔65が形成されている構成が示されているが、プランジャロッド6の構成は、この構成に限定されるものではなく、第1軸部あるいは第2軸部にフック部が形成された構成であればよい。例えば、第2軸部に第1軸部が挿通し、第2軸部に挿通孔が形成され、かつ第1軸部に、第2軸部前端部に当接するフック部が形成された構成であってもよい。
【0090】
第2軸部に挿通孔が形成された場合におけるプランジャロッドの構成としては、例えば図13に示される構成が挙げられる。
【0091】
図13に示されるように、プランジャロッドは、第2軸部62’’に第1軸部61’’が挿通する構成になっている。この構成では、フック部63’’の支持部63’’bに、フィンガーグリップ5’と当接する傾斜面63’’aが形成されている。また、フィンガーグリップ5’には、上記のような軸方向後方に突出した突出部が設けられていない。フック部63’’の傾斜面63’’aは、プランジャロッドを案内保持する中心貫通孔の後端側端部と当接するようになっている。図13では、フィンガーグリップ5’のプレートと同一平面でフック部63’’が当接している構成になっている。
【0092】
上記の構成であっても、フック部63’’の傾斜面63’’aがフィンガーグリップ5’に当接することにより、フック部63’’の弾性変形が起きる。そして、フック部63’’が第2軸部62’’に挿通格納されるようになる。
【0093】
次に、ピストン4がシリンジ3の軸方向先端部に移動した(シリンジ3の薬液を注射し終わった)後、さらに押し込んだときのプランジャロッドの動作について、図14を用いて、さらに詳述する。
【0094】
図14(a)は、シリンジ3の薬液を注射し終わる直前におけるフック部63の状態を示し、図14(b)は、シリンジ3の薬液の注射完了時のフック部63の状態を示す。図14(c)〜(f)はそれぞれ、図14(b)の状態からさらにプランジャロッドを押し込んだときのフック部63の状態を示している。
【0095】
図14(a)に示されるように、フック部63の先端部63aは、第1軸部61の軸方向後端部64が当接面63aに当接することで、その軸方向移動が係止されている。なお、上述したように、当接面63aを介した先端部63aと軸方向後端部64との係合は、シリンジ3の薬液を注射し終わる直前に限らず、ピストン4がシリンジ3内の軸方向途中部から先端に移動する間(すなわち、注射中)維持されている。そして、これにより、注射中に第1軸部61と第2軸部62とが一体となって、軸方向に移動するようになっている。
【0096】
また、シリンジ3の薬液を注射し終わる直前には、フィンガーグリップに形成された突出部58が先端部63aの傾斜面63aに当接している。
【0097】
そして、さらに第2軸部62が軸方向前部へ押し込まれると、図14(b)に示されるように、フック部63の先端部63aが内側に弾性変形する。この弾性変形は、先端部63aに、押し込みによる力と、傾斜面63aと突出部58との摩擦力に対する反作用(力)とが掛かることにより起こる。そして、この先端部63aの内側への弾性変形に伴い、当接面63aが内側へずれて、先端部63aと軸方向後端部64との係合が弱まる。
【0098】
さらに押し込まれると、図14(c)に示されるように、先端部63aは、傾斜面63aを介して、突出部58をスライドする。これに伴い、先端部63aは、さらに内側へ弾性変形し、突出部58により形成された開口部に収まるようになる。このとき、当接面63aは、さらに内側へずれて、軸方向後端部64と当接しなくなり、その結果、先端部63aの軸方向移動の係止が解除される。
【0099】
そして、図14(d)に示されるように、第2軸部62がさらに押し込まれると、先端部63aの傾斜面63aは、第1軸部61の軸方向後端部64に当接する。そして、押し込みによる力と、傾斜面63aと軸方向後端部64との摩擦力に対する反作用(力)とにより、先端部63aがさらに内側に弾性変形する。
【0100】
そして、図14(e)に示されるように、フック部63の先端部63aが挿通孔65に完全に収まる状態になる。なお、上記の注射完了直前ないし挿通孔へのフック部収容までの工程において、ゴム製のピストン4がシリンジ3の先端部に当接した状態で若干の弾性変形をすることにより、図14(a)ないし図14(e)のフック部収容動作をスムーズに行うことができる。
【0101】
このようにフック部63の先端部63aが挿通孔65に完全に収まった後、図14(f)に示されるように、第2軸部62のみが軸方向先端部側へ移動可能になる。
【0102】
なお、図示していないが、図14(e)の状態から、さらに第2軸部62をシリンジ3に対して押し込んでいくと、この第2軸部62とともに管状ケーシング7がシリンジ3に対して軸方向に第2位置に移動し、管状ケーシング7先端部により注射針2の外周を保護する。この際、フィンガーグリップ5の一対の第2係止片55により、第2軸部62の操作部69が係止されているので、より確実に管状ケーシング7を第2位置に固定することが可能になる。
【0103】
次に、管状ケーシング7の構成について、図15に基づいて説明する。図15は、注射器1の管状ケーシング7の構成を示し、図15(a)は正面図であり、図15(b)は側面図である。
【0104】
管状ケーシング7は、図15に示すように、先端側の小径筒部71と後端側の大径筒部72とがテーパー部73を介して一体的に設けられている。小径筒部71は完全な円筒からなり、その内径はシリンジ3の外径よりも若干大径である。大径筒部72は、直径方向に対向し且つ離間する一対の円弧状壁部72a,72bにより主構成されており、各円弧状壁部72a,72bがそれぞれフィンガーグリップ5のスロット53に挿通され、軸方向移動自在に案内保持されている。そして、管状ケーシング7は、その先端部よりもシリンジ先端に取り付けられた注射針2が先端側に突出する第1位置から、その先端部により注射針2の外周を覆う第2位置に向けて、上記シリンジ3に対して軸方向移動可能となっている。また、管状ケーシング7の外周面には、後端キャップを螺着するためのネジ74が形成されている。
【0105】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図16及び図17に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態において説明すること以外の構成は、上記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、上記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0106】
以下、本実施形態の注射器に備えられたプランジャロッドにおける第2軸部62’の具体的構成について、図16及び図17を参照して、説明する。図16は、第2軸部62’の構成を示し、図16(a)及び図16(b)はともに断面図である。また、図17は、第2軸部62’のフック部の構成を示し、図17(a)は斜視図であり、図17(b)は、第2軸部62’を、フック部先端側かつ軸に対し垂直な面で切った断面図である。なお、図17(b)では、簡潔のため、操作部69を省略している。さらに、図17(b)において、ハッチングされた領域が第2軸部の心棒部に相当する。
【0107】
図16及び図17に示されるように、第2軸部62’では、心棒62aを補強するリブ62bが設けられている。このリブ62bは、板状になっており、心棒62aの軸方向に延びている。そして、この板状のリブ62bは、上面視で心棒62aと交差するように形成されている。このリブ62bの形成に伴い、第1軸部へ挿通する際にフック部63’が収納可能になるように、フック部63’は、(先端側から見た)幅が狭くなった形状になっている。
【0108】
このように心棒62aに板状のリブ62bが設けられていることにより、操作部69を軸方向先端部へ押し込む際に、軸方向に掛かる力に対する心棒62aの強度が強まり、心棒62aの撓みが防止される。
【0109】
フック部63’の外周部には、軸を中心とした円弧状側面63’bが形成されていてもよい。この円弧状側面63’bは、フィンガーグリップに設けられた円筒形状の突出部58(図2(a)参照)の側壁に沿った形状になっている。この構成により、フック部63’は、フィンガーグリップに設けられた円筒形状の突出部58(図2(a)参照)の側壁と当接することになる。それゆえ、よりスムーズにフック部63’が挿通孔に収納される。
【0110】
なお、フック部63’の外周部側面は、円弧状側面に限定されず、フィンガーグリップに設けられた突出部の筒形状に応じて適宜設定できる。たとえば、フィンガーグリップに設けられた突出部が四角形筒形状である場合、フック部63’の外周部側面を四角形筒の側壁に沿った平面とすることが可能である。
【0111】
また、心棒に軸方向に延びるリブが設けられている場合、注射動作の僅かなズレ(例えば、プランジャロッドの押し込み方向が軸方向から僅かにズレる)、フック部とフィンガーグリップの突出部との当接箇所のズレ、第2軸部の製造誤差等により、フック部が第1軸部の挿通孔に収納されるときにリブと接触するおそれがある。フック部がリブと接触することにより、注射動作後の操作部の押し込みによる、第2軸部の軸方向先端部側への移動がスムーズに行われなくなるおそれがある。それゆえ、本実施形態の注射器では、フック部がフィンガーグリップの突出部と当接することにより、第1軸部の挿通孔に収納されるときに、リブとフック部との接触を防止する構造になっていることが好ましい。
【0112】
以下、リブとフック部との接触を防止する構造の一例について、図18に基づいて、説明する。図18は、本実施形態の注射器における第2軸部の変形例(変形例1とする)を示し、図18(a)は正面図であり、図18(b)は側面図であり、図18(c)は、図18(a)におけるVIII−VIII線断面図である。
【0113】
図18(b)に示されるように、変形例1の注射器における第2軸部では、リブ62bは、フック部63’’’の軸方向先端部と離間するように配されており、その離間距離がDになっている。より具体的には、フック部63’’’を通過し、フック部が弾性変形して挿通孔に収納される際移動する、軸方向と垂直な方向(フック部収納時移動方向)に直線L1をひいたとき(図18(c)参照)、リブ62bは、直線L1の方向及び軸方向のいずれにも垂直な直線L2の方向で、フック部63’’’の軸方向先端部と離間するように配されている。これにより、フック部63’’’が第1軸部の挿通孔に収納される際に、フック部63’’’の軸方向先端部とリブ62bとの接触を確実に防止することができる。その結果、注射動作後の操作部の押し込みによる、第2軸部の軸方向先端部側への移動がスムーズに行われる。言葉を換えて言えば、図18の正面図(図18(a))において、紙面に沿っての水平方向(紙面に沿い、かつ、軸方向(紙面での上下方向)と垂直となる方向)が直線L1の方向である。また、L1および軸方向のいずれにも垂直な方向、すなわち図18(a)において紙面と垂直な方向が、直線L2の方向である。また、上記に記載した2つの特性(フック部の外周部側面が突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状となっていること、および、フック部収納時にリブとフック部との接触を防止する構造となっていること)に関して、図18では両方の特性を兼ね備えた実施形態を図示しているが、この2つの特性は、いずれか一方のみを具備していても良い。具体的には、たとえば、フック部の外周部側面が突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状となっているが、リブとフック部との接触を防止する構造となっていないような注射器も、本発明の一つの態様である。
【0114】
フック部63’’’の軸方向先端部とリブ62bとの上記離間距離Dは、上記の観点(注射動作の僅かなズレ、フック部と突出部との当接箇所のズレ、第2軸部の製造誤差等)によるフック部収納時のリブとの接触を充分防止できる程度の距離があればよく、特に限定されない。また、リブ62bの幅(直線L2方向の幅)は距離Dの分だけ狭くなるため、離間距離Dを大きく取り過ぎると、リブの幅が充分取れず、リブ62bによる心棒62aの補強効果が小さくなってしまう。そのため、第2軸部の材質、強度、フック部の収納時の動き、製造誤差等の条件により左右されるが、上記、フック部とリブとの接触を充分防止でき、かつリブの幅が狭すぎない範囲で、離間距離Dの適切な範囲は適宜選択可能である。以下に限定されないが、離間距離Dの大きさとしては、リブ62bの幅(直線L2方向の幅、ただし、ここでは離間距離Dにより狭くなっていない、軸方向後端側でのリブ62bの幅(すなわちリブ62bの最大幅)を基準とする)を1として、例えばDとして0.05〜0.4の範囲、好ましくは0.1〜0.3の範囲が挙げられ、より好ましくは0.15〜0.25の範囲が挙げられる。また、離間距離Dを設ける軸方向の範囲は、フック部の軸方向先端部が含まれていればよく、図18(b)に示した範囲がその一例であるが、これに限定されず、適宜軸方向に伸縮可能である。
【0115】
また、図18(a)及び(c)に示されるように、心棒62aとフック部63’’’とは互いに対向している。そして、図18(c)に示されるように、板状のリブ62bは、心棒62aにおけるフック部63’’’との対向面に垂直になるように形成されている。これらの構成から、図18(a)〜(c)に示された第2軸部の構成は、以下のように表現することができる。すなわち、変形例1における第2軸部は、心棒62aにおけるフック部63’’’との対向面に垂直になるリブ62bの面を正面とし、この正面に対し垂直な方向を法線方向(この例では、上記直線L2の方向)としたとき、板状のリブ62bは、上記法線方向においてフック部63’’’の軸方向先端部と離間するように配されている構成であると表現することができる。
【0116】
図19は、本実施形態の注射器における第2軸部の他の変形例(変形例2とする)を示し、図19(a)は正面図であり、図19(b)は側面図であり、図19(c)は、図19(a)におけるVIII−VIII線断面図である。
【0117】
上記変形例1における第2軸部では、フック部63’’’の軸方向先端部よりも後方側では、板状のリブ62bは、直線L2の方向で離間されていなかった。すなわち、図18(a)に示されるフック部63’’’の軸方向先端部よりも後方側のVIII−VIII線で切断した断面図(図18(c))では、直線L2の方向において、リブ62bはフック部63’’’と離間するように配されていない。
【0118】
これに対し、変形例2における第2軸部では、図19(c)に示されるように、フック部63’’’’の軸方向先端部よりも後方側のVIII−VIII線(図19(a)参照)で切断したときでも、リブ62bはフック部63’’’’と離間するように配されている。
【0119】
具体的には、図19(b)に示されるように、変形例2の注射器における第2軸部では、直線L2の方向で、フック部63’’’’における軸方向先端部を含むフック部63’’’’全体と離間するように配されている。そして、フック部63’’’’の軸方向先端部とリブ62bとの離間距離がDになっており、フック部63’’’’における軸方向先端部よりも後ろ側の部分とリブ62bとの離間距離がDになっている。変形例2では、離間距離Dが離間距離Dの1/2よりも大きくなっている。
【0120】
このように、フック部63’’’’における軸方向先端部を含むフック部63’’’’全体と離間するように配されているので、フック部63’’’’が第1軸部の挿通孔に収納されるときの、フック部63’’’’の軸方向先端部とリブ62bとの接触防止効果がより確実になる。
【0121】
上記離間距離DおよびDは、前記の観点(注射動作の僅かなズレ、フック部と突出部との当接箇所のズレ、第2軸部の製造誤差等)によるフック部収納時のリブとの接触を充分防止できる程度の距離があればよく、特に限定されない。また、Dの分だけリブ62bの幅(直線L2方向の幅)は狭くなり、Dの分だけフック部63’’’’およびリブ62bの合計幅(直線L2方向の幅)は狭くなるため、離間距離DおよびDを大きく取り過ぎると、リブの幅またはフック部の幅が充分取れず、リブ62bによる補強効果が小さくなり、またはフック部の強度が確保できなくなる可能性がある。そのため、第2軸部の材質、強度、フック部の収納時の動き、製造誤差等の条件により左右されるが、上記、フック部とリブとの接触を充分防止でき、かつリブおよびフック部の幅が狭すぎない範囲で、離間距離DおよびDの適切な範囲は適宜選択可能である。また、接触防止の効果はフック部の軸方向先端部分でより大きいため、D>D/2の関係にあることが好ましい。
【0122】
以下に限定されないが、離間距離DおよびDの大きさとしては、リブ62bの幅(直線L2方向の幅、ただし、ここでは離間距離Dにより狭くなっていない、軸方向後端側でのリブ62bの幅(すなわちリブ62bの最大幅)を基準とする)を1として、例えばDとして0.05〜0.45の範囲が、好ましくは0.1〜0.35の範囲が挙げられ、より好ましくは0.15〜0.30の範囲が挙げられる。また、Dとしては、リブ62bの幅を1として、例えば0.03〜0.35の範囲が、好ましくは0.05〜0.25の範囲が挙げられ、より好ましくは0.10〜0.20の範囲が挙げられる。また、離間距離Dを設ける軸方向の範囲は、フック部の軸方向先端部が含まれていればよく、図19(b)に示した範囲がその一例であるが、これに限定されず、適宜軸方向に伸縮可能である。
【0123】
変形例1の構成は、変形例2の構成と比較して、フック部の軸方向先端部とリブとの接触を防止するとともに、フック部及びリブの強度を高く保つことができるという効果を奏する。また、変形例2の構成は、変形例1の構成と比較して、フック部の軸方向先端部とリブとの接触防止効果がより高い。したがって、変形例1及び変形例2の構成は、フック部及びリブの強度等に応じて適宜選択しうる。つまり、比較的強度が高い材料でフック部及びリブを形成した場合には、変形例2の構成を採用するか、または離間距離D,D1,D2を比較的大きな値とすることが好ましい。一方で、比較的強度が低い材料でフック部及びリブを形成した場合には、フック部及びリブの強度確保の観点から、変形例1の構成を採用するか、または離間距離D,D1,D2を比較的小さな値とすることが好ましい。
【0124】
なお、リブとフック部との接触を防止する構造は、上記の変形例1及び2の構成に限定されるものではない。直線L2方向においてリブがフック部と接触するような構成であっても、リブ62bに直線L1方向に対し傾斜した傾斜面を形成することで、リブとフック部との接触を防止することが可能である。また、リブ62bにおける直線L1方向の角部のうちフック部に近い側の角部に、所定の曲率を有する曲面が形成されていてもよい。
【0125】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、特に医療産業への利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施形態の注射器の構成を示す全体縦断面図であり、(a)は薬液の注射開始前の構成を示し、(b)は投与終了時点(薬液の注射完了時点)の構成を示し、(c)は、注射針格納完了時点の構成を示す。
【図2】上記注射器におけるフィンガーグリップの構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は底面図である。
【図3】図2(a)のI−I線断面図である。
【図4】図2(a)のII−II線断面図である。
【図5】上記注射器のプランジャロッドの構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図6】図5(a)のIII−III線断面図である。
【図7】プランジャロッドの第1軸部単体を軸方向後端側から見た平面図である。
【図8】(a)は、プランジャロッドの第1軸部単体の正面図であり、(b)は、第1軸部単体の側面図である。
【図9】(a)は、図7のIV−IV線断面図であり、(b)は、図7のV−V線断面図である。
【図10】プランジャロッドの第2軸部の構成を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図11】(a)は、第2軸部の上面図であり、(b)は、(a)におけるVI−VI線断面図であり、(c)は、(a)におけるVII−VII線断面図である。
【図12】(a)は、第2軸部のフック部の構成を示す断面図であり、(b)は、第1軸部の軸方向後端部に当接された第2軸部のフック部を示す断面図である。
【図13】第2軸部に挿通孔が形成された場合におけるプランジャロッドの構成を示す側面図である。
【図14】(a)は、シリンジの薬液を注射し終わる直前におけるフック部の状態を示し、(b)は、シリンジの薬液の注射完了時のフック部の状態を示し、(c)〜(f)はそれぞれ、(b)の状態からさらにプランジャロッドを押し込んだときのフック部の状態を示している。
【図15】注射器の管状ケーシングの構成を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図16】本発明の他の実施の形態の注射器に備えられた第2軸部の構成を示し、(a)及び(b)はともに断面図である。
【図17】図16の第2軸部のフック部の構成を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、フック部先端側かつ軸に対し垂直な面で切った断面図である。なお、ハッチングされた領域が第2軸部の心棒部に相当する。
【図18】第2軸部の変形例を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は、(a)におけるVIII−VIII線断面図である。
【図19】第2軸部の他の変形例を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は、(a)におけるVIII−VIII線断面図である。
【図20】従来の注射器の構成を示す全体縦断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1 注射器
2 注射針
3 シリンジ
4 ピストン
5 フィンガーグリップ(接続部)
51 楕円板状プレート(プレート)
52 一対のタブ
53 スロット
55 一対の第2係止片
56 一対の第1係止片
6 プランジャロッド
61,61’’ 第1軸部
62,62’,62’’ 第2軸部
69 操作部
7 管状ケーシング(ケーシング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に注射針を取付け可能でかつ後端が開口する筒状のシリンジと、該シリンジ内に軸方向移動自在に設けられるピストンと、先端部に上記ピストンが取り付けられかつ後端部が上記シリンジの後端開口から後方に突出するプランジャロッドと、上記シリンジの外周側に設けられるケーシングと、上記シリンジの後端部に設けられ、該シリンジとケーシングとを接続する接続部とを備え、
上記ケーシングは、その先端部よりも上記シリンジ先端に取り付けられた注射針が先端側に突出する第1位置から、その先端部により上記注射針の外周を覆う第2位置に向けて上記シリンジに対して軸方向移動可能であり、
上記プランジャロッドは、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成された注射器であって、
上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、
ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、第2軸部のみがシリンジに対して軸方向移動可能になり、
上記軸方向移動可能になった第2軸部がシリンジ及び第1軸部に対して軸方向先端側に押し込まれることにより、該第2軸部とともに上記ケーシングをその第1位置から第2位置へ移動させるように、上記ケーシングに後方から当接する操作部が第2軸部に設けられたことを特徴とする注射器。
【請求項2】
上記接続部には、上記フック部と当接し、かつ軸方向後方に突出した突出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
上記接続部には、上記第1軸部及び上記第2軸部を軸方向に案内保持する中心挿通孔が形成されており、上記突出部は、上記中心挿通孔を取り囲む筒形状になっていることを特徴とする請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
上記フック部の外周部は、上記突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状になっていることを特徴とする請求項3に記載の注射器。
【請求項5】
上記第1軸部に、第2軸部が挿通する挿通孔が形成されており、
上記フック部は、
第2軸部に設けられ、第1軸部の軸方向後端部に当接する当接面と、
上記接続部と当接可能であり、かつ軸方向前方に傾斜した傾斜面とを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の注射器。
【請求項6】
上記フック部は、上記当接面から軸方向に延び、上記挿通孔に当接可能な突起部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の注射器。
【請求項7】
第1軸部と第2軸部との何れか一方は、上記フック部が形成された部分に、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の注射器。
【請求項8】
上記心棒部には、軸方向に延びる板状のリブが形成されていることを特徴とする請求項7に記載の注射器。
【請求項9】
上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納される際に、
上記板状のリブと上記フック部との接触を防止する構造になっていることを特徴とする請求項8に記載の注射器。
【請求項10】
上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部の軸方向先端部と離間するように配されていることを特徴とする請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部における軸方向先端部を含むフック部全体と離間するように配されていることを特徴とする請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
上記第2軸部には、第1軸部と係合することで該第2軸部の軸方向後端への移動を制限する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の注射器。
【請求項13】
第1軸部及び第2軸部のうち、挿通孔に挿通される上記他方の軸部には、挿通孔内の該他方の軸部の移動を軸方向へ案内する挿通案内部が設けられていることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の注射器。
【請求項14】
上記接続部は、プレートと、該プレートから直径方向に張り出す一対のタブと、上記ケーシングを案内保持するスロットとを備え、
上記プレートには、上記第1位置にあるケーシングを係止する第1の係止片が設けられていることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の注射器。
【請求項15】
上記接続部のプレートには、さらに、上記ケーシングが第2位置に移動したとき、フック部の挿通孔への収納により移動可能になった第2軸部を係止する第2の係止片が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の注射器。
【請求項16】
さらに、注射針の未装着時にシリンジ先端に取り付けられる栓体と、上記ケーシングの先端部に着脱可能に外嵌される先端キャップとを備え、
上記先端キャップは、上記栓体を覆うことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の注射器。
【請求項17】
筒状のシリンジと、
該シリンジ内に軸方向移動自在に設けられるピストンと、
上記シリンジの外周側に設けられるケーシングと、
上記シリンジの後端部に設けられ、該シリンジとケーシングとを接続する接続部とを備え、注射針を格納する注射針格納機構を有する注射器に用いるためのプランジャロッドであって、
上記プランジャロッドは、先端部に上記ピストンが取り付けられる第1軸部と、該第1軸部よりも後方に突出する第2軸部とを備え、上記第1軸部と上記第2軸部との何れか一方に、他方の軸部が挿通する挿通孔が形成されているとともに、
上記第1軸部と上記第2軸部とのいずれか一方には、可撓性のフック部が設けられており、上記フック部は、ピストンがシリンジ先端に移動するまでの間は、他方の軸部の端部と当接して第1軸部と第2軸部とが一体となって上記ケーシングに対して軸方向移動自在になっており、
ピストンが先端に移動しさらに付勢したときに、フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納され、第2軸部のみがシリンジに対して軸方向移動可能になることを特徴とするプランジャロッド。
【請求項18】
上記接続部に、上記第1軸部及び上記第2軸部を軸方向に案内保持する中心挿通孔が形成され、上記突出部が、上記中心挿通孔を取り囲む筒形状になった注射器に用いられるプランジャロッドであって、
上記フック部の外周部は、上記突出部の筒形状を形成する側壁に沿った形状になっていることを特徴とする請求項17に記載のプランジャロッド。
【請求項19】
上記第1軸部に、第2軸部が挿通する挿通孔が形成されており、
上記フック部は、
第2軸部に設けられ、第1軸部の軸方向後端部に当接する当接面と、
上記接続部と当接可能であり、かつ軸方向前方に傾斜した傾斜面とを有することを特徴とする請求項17または18に記載のプランジャロッド。
【請求項20】
上記フック部は、上記当接面から軸方向に延び、上記挿通孔に当接可能な突起部を備えたことを特徴とする請求項17〜19の何れか1項に記載のプランジャロッド。
【請求項21】
第1軸部と第2軸部との何れか一方は、上記フック部が形成された部分に、フック部が形成されていない部分よりも幅が狭くなった心棒部を備えたことを特徴とする請求項17〜20の何れか1項に記載のプランジャロッド。
【請求項22】
上記心棒部には、軸方向に延びる板状のリブが形成されていることを特徴とする請求項21に記載のプランジャロッド。
【請求項23】
上記フック部が接続部と当接することにより、上記挿通孔に収納される際に、
上記板状のリブと上記フック部との接触を防止する構造になっていることを特徴とする請求項22に記載のプランジャロッド。
【請求項24】
上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部の軸方向先端部と離間するように配されていることを特徴とする請求項23に記載のプランジャロッド。
【請求項25】
上記板状のリブは、フック部収納時移動方向および軸方向のいずれにも垂直な方向で、フック部における軸方向先端部を含むフック部全体と離間するように配されていることを特徴とする請求項24に記載のプランジャロッド。
【請求項26】
上記第2軸部には、第1軸部と係合することで該第2軸部の軸方向後端への移動を制限する係止部が設けられていることを特徴とする請求項17〜25の何れか1項に記載のプランジャロッド。
【請求項27】
第1軸部及び第2軸部のうち、挿通孔に挿通される上記他方の軸部には、挿通孔内の該他方の軸部の移動を軸方向へ案内する挿通案内部が設けられていることを特徴とする請求項17〜26の何れか1項に記載のプランジャロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−73519(P2008−73519A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218866(P2007−218866)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】