説明

注射針カートリッジ及び注射器

【課題】針先事故等を未然に抑制し得る安全性の高いカートリッジ式の注射針及び注射器を提供すること。
【解決手段】注射針カートリッジ1は、注射針100を貫通させて保持する略円柱状の保持部材10と、第1の底板110及び第1のスライダ部111を有する第1のホルダ部材11と、第2の底板120及び第2のスライダ部121を有する第2のホルダ部材12とを有している。一対のホルダ部材11、12は、第1の底板110と第2の底板120とが対面して形成される収容部102に保持部材10を収容するように構成してある。収容部102は、各スライダ部111、121とが保持部材10の外周に沿って交互に配置される状態において軸方向に伸縮可能であり、かつ、各スライダ部111、121の先端面が相互に対面する状態において軸方向に縮小不可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てカートリッジ式の注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、糖尿病患者等、日常的な薬剤の投与が必要な患者の通院負担等を軽減できるよう、家庭や職場などで自ら注射を行うための携帯用の注射器がある。このような注射器としては、注射針の2次使用による感染等を予防すべく、使い捨てのカートリッジ式の注射針を採用したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記従来のカートリッジ式の注射針では、次のような問題がある。すなわち、カートリッジ式の注射針を注射器本体に装着する際や取り外す際などに針先事故が発生するおそれがあるという問題がある。さらに、使用済みの注射針では、針先事故等に起因した2次感染が発生するおそれがあるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−66475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、針先事故等を未然に抑制し得る安全性の高いカートリッジ式の注射針及び注射器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、両端面から突出するように軸方向に注射針を貫通させて保持する略円柱状の保持部材と、
上記保持部材の一方の端面に対面する第1の底板、及び上記保持部材の外周側面に当接して該保持部材を把持し得るように上記第1の底板から立設した第1のスライダ部を有する第1のホルダ部材と、
上記保持部材の他方の端面に対面する第2の底板、及び上記保持部材の外周側面に当接して該保持部材を把持し得るように上記第2の底板から立設した第2のスライダ部を有する第2のホルダ部材とを有しており、
上記一対のホルダ部材は、上記第1の底板と上記第2の底板とが対面して形成される収容部に上記保持部材を収容すると共に、該保持部材の軸回りに相対的に回転し得るように構成してあり、
上記収容部は、上記各スライダ部が上記保持部材の外周に沿って交互に配置される状態において軸方向に伸縮可能であり、かつ、上記各スライダ部の先端面が相互に対面する状態において軸方向に縮小不可能であって、
上記保持部材の上記注射針は、上記収容部を軸方向に縮小したときに上記各底板を貫通して突出するように構成してあることを特徴とする注射針カートリッジにある(請求項1)。
【0007】
上記第1の発明の注射針カートリッジは、軸方向に上記注射針を貫通させて保持する上記保持部材と、上記第1の底板から立設する上記第1スライダ部を有する上記第1のホルダ部材と、上記第2の底板から立設する上記第2スライダ部を有する上記第2のホルダ部材とを含むものである。
【0008】
上記一対のホルダ部材は、上記第1の底板と上記第2の底板とが対面して形成される上記収容部に上記保持部材を収容するように構成してあり、かつ、上記収容部に収容した上記保持部材の軸回りに相対的に回転し得るように構成してある。上記注射針カートリッジでは、上記第1スライダ部と上記第2スライダ部とが上記保持部材の外周に沿って交互に配置される状態において軸方向に上記収容部を伸縮可能である。そして、該収容部を縮小することで上記保持部材の上記注射針が上記各底板を貫通して突出し得る。一方、上記注射針カートリッジでは、上記第1スライダ部の先端面と上記第2スライダ部の先端面とを対面させることにより上記収容部が軸方向に縮小不可能な状態を設定することができる。
【0009】
つまり、上記第1の発明の注射針カートリッジでは、上記一対のホルダ部材の相対回転位置を変更することにより、上記注射針を突出あるいは後退させ得る伸縮可能状態と、上記注射針が突出しない縮小不可能状態とを確実性高く切り替えることができる。それ故、上記注射針カートリッジによれば、上記のような縮小不可能状態を設定することで、上記注射針を確実に上記収容部内に格納でき、針先事故等を確実性高く未然に防止することができる。
【0010】
以上のように、上記第1の発明の注射針カートリッジは、針先事故等を未然に防止し得る安全性を高く確保した優れた製品である。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明の注射針カートリッジと、
薬剤を収容すると共に上記注射針カートリッジの一方の注射針を差し込むための先端面を設けた本体部と、
該本体部の先端側に外挿する有底略円筒状であって、内部に収容した上記注射針カートリッジの他方の注射針が貫通する貫通孔を設けたキャップ部とを有しており、
上記キャップ部は、上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることができ、かつ、上記本体部に対する軸方向の進退により上記収容部を軸方向に縮小させ得るように構成してあることを特徴とする注射器にある(請求項9)。
【0012】
上記第2の発明の注射器は、安全性を高く確保した上記第1の発明の注射針カートリッジを採用したものである。それ故、この注射器では、例えば、使用後に上記注射針カートリッジを取り外す際や、取り外した後等に針先事故等が発生するおそれが少ない。
【0013】
以上のように、上記第2の発明の注射器は、針先事故等が発生するおそれを抑制した安全性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明においては、上記保持部材は、該保持部材に外挿され、かつ、上記第1あるいは上記第2のスライダ部の内周側に位置する略円筒状のインナーリングを有しており、
該インナーリングは、上記一対のホルダ部材の上記相対的な回転を規制するための回転規制機構を備えていることが好ましい(請求項2)。
【0015】
この場合には、上記回転規制機構により上記一対のホルダ部材の相対的な回転を規制しておけば、例えば、軸方向に縮小不可能に設定したはずの上記注射針カートリッジが不用意に縮小可能な状態となるおそれを抑制できる。そして、不用意に縮小可能な状態が設定されるおそれを抑制できれば、針刺し事故等の発生を確実性高く回避することができる。
【0016】
また、上記注射針カートリッジは、未使用状態において上記軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることで上記軸方向に縮小可能な状態となり、使用後において再度、上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることで上記軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能なように構成してあり、
上記回転規制機構は、上記注射針カートリッジが上記軸方向に縮小可能な状態に移行する前は上記一対のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、上記注射針カートリッジが上記軸方向に縮小可能な状態から上記軸方向に縮小不可能な状態に移行した後、上記一対のホルダ部材の相対的な回転を規制するように構成してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記注射針カートリッジの使用後に、上記軸方向に縮小不可能な状態を設定すれば、当該注射針カートリッジが再度、上記軸方向に縮小可能な状態に移行するおそれを確実性高く抑制することができる。
【0017】
また、上記第1及び上記第2のスライダ部に外挿する略円筒状のアウターリングを有しており、
該アウターリングは、上記軸方向に伸縮可能な状態の上記注射針カートリッジについて、上記一対のホルダ部材の軸方向の最大の離隔距離を規制可能なように構成した伸張規制機構を備えていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記軸方向に伸縮可能な状態の上記注射針カートリッジについて、上記一対のホルダ部材の上記最大の離隔距離を規制することで、上記各スライダ部が上記保持部材を把持する状態を確実性高く維持できる。それ故、上記ホルダ部材が上記保持部材から脱落するおそれを抑制できる。上記ホルダ部材の脱落を防止できれば、注射針の外部への露出を確実性高く防止でき、針刺し事故等の発生を未然に回避できる。
【0018】
また、上記各スライダ部は、該各スライダ部の先端面が相互に対面する状態において他方のスライダ部に係合する係合部を有しており、
上記スライダ部同士が上記係合部を介して係合することで、上記一対のホルダ部材の軸方向の相対的な進退を規制可能なように構成してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記軸方向に縮小不可能な状態の上記注射針カートリッジについて、上記一対のホルダ部材が軸方向に離隔するおそれを防止できる。それ故、上記各スライダ部が上記保持部材を把持する状態を確実性高く維持し、上記ホルダ部材の脱落を未然に防止することができる。そして、ホルダ部材の脱落を防止できれば、注射針の外部への露出を確実性高く防止でき、針刺し事故等の発生を未然に回避できる。
【0019】
また、上記保持部材の滅菌状態を保持するための気密部材を有しており、上記保持部材の上記注射針は、上記気密部材を貫通して突出するように構成してあることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記気密部材により上記注射針を含む上記保持部材の滅菌状態を高いレベルで維持することができる。それ故、上記注射針カートリッジによれば、上記注射針が雑菌等によって汚染されるおそれを未然に抑制でき、注射行為に伴って、対象とする人体等への雑菌の侵入を未然に防止できる。
【0020】
また、上記保持部材と上記各スライダ部との当接箇所には、軸方向に沿って設けた溝状の進退溝と該進退溝内に収容された状態で進退する凸部とを設けてあり、上記進退溝は、上記凸部が軸方向に脱落しないように形成してあることが好ましい(請求項7)。
【0021】
この場合には、上記保持部材から上記各ホルダ部材が脱落し、上記注射針が外部に露出するおそれを未然に防止することができる。それ故、上記注射針カートリッジによれば、上記収容部を軸方向に伸長させるように上記各ホルダ部材を操作する際に発生するおそれがある針先事故等を未然に防止し得る。
【0022】
また、注射針カートリッジを装着する注射器に係合する係合部を設けた略円筒状の第1部材と、該第1部材を内挿するための中空部を設けてあると共に上記第1部材に対して軸方向に進退する第2部材とを含み、上記一対のホルダ部材及び上記保持部材を一体的に収容するように構成したアプリケータを有しており、
該アプリケータは、上記第1部材に対して上記第2部材を相対的に回転させることで上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることができ、かつ、第1部材に対する第2部材の進退により上記収容部を軸方向に縮小し得るように構成してあることが好ましい(請求項8)。
【0023】
上記アプリケータは、上記注射器に対する上記注射針カートリッジの装着を補助する機能と、上記一対のホルダ部材を相対回転させる機能と、上記注射針カートリッジを収容するという機能とを有している。それ故、上記アプリケータを利用する場合には、上記注射器に対する上記注射針カートリッジの装着性を格段に向上させることができ、かつ、安全性を一層向上することができる。
【0024】
上記第2の発明において、上記一対のホルダ部材を相対的に回転させる方法としては、一方のホルダ部材と上記本体部との相対回転を規制すると共に、他方のホルダ部材と上記キャップ部との相対回転を規制しておき、上記本体部に対して上記キャップ部を相対回転させることで上記一対のホルダ部材を相対回転させる方法がある。さらに、他の方法としては、回転可能な回転部材を備えたキャップ部を利用した方法がある。この方法では、一方のホルダ部材と上記回転部材の相対回転を規制しておくと共に、他方のホルダ部材と上記キャップ部本体との相対回転を規制しておけば、上記回転部材の回転に応じて上記一対のホルダ部材を相対回転させることができる。
【0025】
また、上記注射器は、予備の上記注射針カートリッジを格納するための格納部を備えていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記予備の注射針カートリッジを上記格納部に格納しておくことで、例えば、1日の生活の中で必要となる上記注射針カートリッジを上記注射器と共に一体的に携帯することができる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本例は、使い捨ての注射針カートリッジ1及び、この注射針カートリッジ1を使用する注射器2に関する例である。この内容について、図1〜図8を用いて説明する。
本例の注射針カートリッジ1は、図1に示すごとく、両端面から突出するように軸方向に注射針100を貫通させて保持する略円柱状の保持部材10と、保持部材10の一方の端面に対面する第1の底板110、及び保持部材10の外周側面に当接して該保持部材10を把持し得るように第1の底板110から立設した第1のスライダ部111を有する第1のホルダ部材11と、保持部材10の他方の端面に対面する第2の底板120、及び保持部材10の外周側面に当接して該保持部材10を把持し得るように第2の底板120から立設した第2のスライダ部121を有する第2のホルダ部材12とを有している。
【0027】
上記一対のホルダ部材11、12は、図1に示すごとく、第1の底板110と第2の底板120とが対面して形成される収容部102に保持部材10を収容すると共に、該保持部材10の軸回りに相対的に回転し得るように構成してある。
上記収容部102は、図1、図5及び図6に示すごとく、第1のスライダ部111と第2のスライダ部121とが保持部材10の外周に沿って交互に配置される状態において軸方向に伸縮可能であり、かつ、第1のスライダ部111の先端面と第2のスライダ部121の先端面とが対面する状態において軸方向に縮小不可能である。
そして、保持部材10の注射針100は、図7に示すごとく、収容部102を軸方向に縮小したときに各底板110、120を貫通して突出するように構成してある。
以下に、この内容について詳しく説明する。
【0028】
本例の注射器2は、図1及び図2に示すごとく、一般に、投薬ペンと呼ばれるペンタイプの皮下注射器である。このような注射器2(以下、投薬ペン2という。)は、例えば、一定時間毎の投薬を必要とする糖尿病患者などの患者が、自ら注射することを目的としたものである。この投薬ペン2は、上記の使い捨ての注射針カートリッジ1を装着して注射行為を実施するためのものである。
【0029】
投薬ペン2は、図2に示すごとく、本体部をなす略円筒状の軸体20と、数回投与分の液状の医薬を収容する薬剤カートリッジ24と、薬剤を注射するための押し込み操作部であるプッシュロッド21と、1回の注射による薬剤の投与量を事前に設定するための投与量設定機構23とを有するものである。
【0030】
軸体20の先端部分の外周には、図1及び図2に示すごとく、注射針カートリッジ1を保持するアプリケータ15(後述する。)に内挿するためのねじ部22を設けてある。そして、当該ねじ部22の内周側に当たる軸体20の先端には、穿刺可能かつ再封止可能なゴム製の隔膜220を設けてある。軸体20における開口端をなす後端には、薬剤を注射するためのプッシュロッド21を配設してある。このプッシュロッド21は、軸方向の押し込み動作により薬剤を注射できるように構成してある。
【0031】
薬剤カートリッジ24は、上記軸体20に内挿する略円筒状の容器である。この薬剤カートリッジ24における上記隔膜220側の端面は、液密な状態で隔膜220に押し当て可能なように構成してある。一方、薬剤カートリッジ24におけるプッシュロッド21側の端部は開口端をなし、当該開口端には進退可能かつ液密な状態でプランジャ(図示略)を内挿してある。このプランジャは、プッシュロッド21の押し込み動作に応じて軸体20の先端側に向けて前進ストロークするように構成してある。
【0032】
上記投与量設定機構23は、プッシュロッド21の押し込み動作に伴うプランジャの前進ストローク量を事前に設定するための機構である。この投与量設定機構23は、略円筒状の軸体20の後端に近い外周部分に穿孔した貫通窓232と、薬剤カートリッジ24と軸体20との間隙に配置した薄肉略円筒状のダイヤルスリーブ231とを組み合わせてなる。
【0033】
投与量設定機構23は、軸体20の外周面に印刷した軸方向に沿う基準ライン233と、ダイヤルスリーブ231の外周に印刷した0、1、2・・・の投与量を表す数字及び目盛りとを有する。この投与量設定機構23では、軸体20の貫通窓232を介して、ダイヤルスリーブ231の数字及び目盛りを目視し得る。そして、ダイヤルスリーブ231を回転させることで、軸体20の外周の基準ライン233に対して投与量に当たる数字及び目盛りを合致させることができる。本例の投与量設定機構23によれば、ダイヤルスリーブ231の回転操作により、注射時のプランジャの前進ストローク量を設定することで正確な投与量を事前に設定し得る。
【0034】
次に、上記注射針カートリッジ1について図1〜図7を用いて説明する。この注射針カートリッジ1は、図1を用いて上記したごとく、注射針100を貫通させて保持する略円柱状の保持部材10と、第1の底板110及び第1のスライダ部111を含む第1のホルダ部材11と、第2の底板120及び第2のスライダ部121を含む第2のホルダ部材12とを有している。本例の注射針カートリッジ1では、保持部材10を収容した一対のホルダ部材11、12の全体をポリプロピレンよりなるフィルム13によって覆うことで注射針100の滅菌状態を維持してある。なお、フィルム13としては、本例のポリプロピレン製のもののほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質のものを採用することができる。
【0035】
保持部材10は、図1及び図3に示すごとく、直径約4mm、長さ28mmのポリプロピレンよりなる略円柱状の部材であり、その中心軸に沿ってステンレス製の注射針100を貫通配置したものである。注射針100は、保持部材10の両端側に、それぞれ、5mm突出しており、その両端に針先を有している。一方の針先は、注射部位である人体の皮膚等に差し込むための針先であり、他方の針先は、投薬ペン2の隔膜220に差し込むための針先である。さらに、本例の保持部材10は、図1及び図3〜図5に示すごとく、その外周面における周方向の8カ所に、各スライダ部111、121の軸方向の摺動動作をガイドするための断面凹状のガイド溝10mを有している。
【0036】
なお、上記注射針100の材質としては、本例のステンレスのほか、樹脂材料を採用することもできる。樹脂よりなる注射針100の場合には、使用後の廃棄処分等が一層、容易になる。さらに、生分解性プラスチック等により注射針100を形成すれば、廃棄処分をさらに容易にでき、環境を害するおそれを抑制できる。
【0037】
各ホルダ部材11、12は、ポリプロピレンよりなる部品である。各ホルダ部材11、12を構成する底板110、120は、図1及び図3〜図5に示すごとく、直径約10mm、厚さ1mmの略円板状をなす部分であり、注射針100が貫通する貫通孔105を軸芯に沿って設けたものである。各スライダ部111、121は、底板110、120の外周部分から立設する複数の柱状部101よりなる。本例の各スライダ部111、121は、それぞれ周方向4ヶ所の柱状部101を有している。
【0038】
ここで、本例では、上記貫通孔105として、完全に貫通する孔を採用している。これに代えて、ホルダ部材11、12の成形時に貫通孔105に薄い膜を形成しておくことも良い。この場合には、注射針カートリッジ1全体を覆うフィルム13(図1参照。)に代えて、注射針カートリッジ1の両端面を除く外周側面のみを覆うフィルムを採用することができる。この外周側面を覆うフィルムと、貫通孔105の薄い膜との組み合わせによれば、本例のフィルム13と同様、注射針100の滅菌状態を確実性高く維持できる。
【0039】
なお、底板110、120の形状としては、本例の略円板状に代えて、六角形や八角形等の多角形状とするのも良い。この場合には、上記アプリケータ15から取り出しした状態での転がりを防止して、作業台などから落下等するおそれを抑制できる。
さらになお、保持部材10及びホルダ部材11、12の材質としては、本例のポリプロピレン製のもののほか、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質のものを採用することができる。さらに、生分解性プラスチックにより保持部材10あるいはホルダ部材11、12を形成することも良い。この場合には、注射針カートリッジ1の廃棄処分を一層、容易にできる。
【0040】
各柱状部101の先端部分の内周面には、図3〜図5に示すごとく、内周側に向けて突出する凸部101tを設けてある。この凸部101tは、保持部材10のガイド溝10mに係合し、当該ガイド溝10mに沿って軸方向に進退するものである。なお、図3〜図5では、理解の容易のため、各ホルダ部材11、12の柱状部101を1本ずつ図示してある。
【0041】
各スライダ部111、121の凸部101tが異なるガイド溝10mに位置した状態では、図3及び図4に示すごとく、一方のスライダ部111の柱状部101と他方のスライダ部121の柱状部101とが径方向の境界線を介して相互に隣接する、いわゆるくし歯状を形成し得る状態(図7参照。)にある。一方、各スライダ部111、121の凸部101tが共通するガイド溝10mに位置した状態では、図5に示すごとく、一方のスライダ部111の柱状部101と、他方のスライダ部121の柱状部101とが相互に対向する状態(図6参照。)をなす。
【0042】
さらに、本例の注射針カートリッジ1は、図8〜図10に示すごとく、保持部材10及び一対のホルダ部材11、12を一体的に保持するアプリケータ15を有している。アプリケータ15は、投薬ペン2の先端外周のねじ部22に係合する内周ねじ151nを設けた略円筒状の第1部材151と、該第1部材151を内挿した状態で軸方向に進退する第2部材152とを含むものである。なお、本例では、ポリプロピレンよりなる第1部材151、第2部材152を採用したが、これに代えて、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料よりなるものを採用することもできる。
【0043】
アプリケータ15は、図8及び図9に示すごとく、第1部材151に対して第2部材152を相対的に回転させることで上記一対のホルダ部材11、12を相対的に回転させることができ、かつ、第1部材151に対する第2部材152の進退により、一対のホルダ部材11、12がなす収容部102を軸方向に伸縮し得るように構成してある。
【0044】
具体的には、本例の第1部材151の外周面には、軸方向を中心としたら旋をなす溝状の凹部151rを設けてある。一方、第2部材152の内周面には、第1部材の凹部151に係合するら旋状の凸部152rを設けてある。このアプリケータ15では、上記凹部151rと上記凸部152rとの係合により、第1部材151と第2部材152との相対回転に応じてアプリケータ15全体を軸方向に伸縮可能である。
【0045】
さらに、このアプリケータ15では、図8〜図10に示すごとく、第2部材152の内周面と、第2のホルダ部材12の外周面との間に適度な摩擦力が生じるようにしてある。また、本例のアプリケータ15では、第1部材151の内周面に、ホルダ部材11の底板110の回転止めを設けてある。それ故、本例の注射針カートリッジ1では、第1部材151に対して第2部材152を相対回転させるのに伴って、第1のホルダ部材11に対して第2のホルダ部材12を相対的に回転させることができる。
【0046】
第1部材151の内周面には、第1のホルダ部材11の底板110が軸方向に引き抜かれることを防止するための凸部151tを設けてある。また、第2部材152の内周面には、第2のホルダ部材12の底板120が軸方向に引き抜かれることを防止するための凸部152tを設けてある。これにより、アプリケータ15の軸方向の伸長に応じて、内部に収容した一対のホルダ部材11、12を軸方向に伸長させることが可能である。
【0047】
次に、使用前の注射針カートリッジ1の構成について説明する。
使用前の注射針カートリッジ1では、図9に示すごとく、第1部材151と第2部材152とを組み合わせたアプリケータ15が軸方向に伸長された状態にある。そして、アプリケータ15内部には、一対のホルダ部材11、12と保持部材10とが一体的に収容されている。この使用前の注射針カートリッジ1においては、図9に示すごとく、対向する一対のホルダ部材11、12の底板110、120の間隙である収容部102に保持部材10が収容されており、注射針100の両端が収容部102内に位置している。
【0048】
使用前の注射針カートリッジ1における上記一対のホルダ部材11、12では、図5及び図6に示すごとく、各スライダ部111、121の凸部101tが共通のガイド溝10mに位置している。そして、この注射針カートリッジ1では、各スライダ部111、121の柱状部101の先端面が相互に対面する状態にある。それ故、この注射針カートリッジ1では、一対のホルダ部材11、12に軸方向の荷重を作用しても縮小することがなく、注射針100が外部に突出するおそれが少ない。すなわち、この注射針カートリッジ1は、針先事故等を未然に防止し得る安全性の高いものである。
【0049】
次に、上記の投薬ペン2を利用した注射針カートリッジ1の使用方法について図8〜図10を用いて説明する。注射針カートリッジ1を装着した投薬ペン2を利用して注射行為を実施するに当たっては、まず、図8に示すごとく、投薬ペン2に対して注射針カートリッジ1を装着する。本例では、アプリケータ15ごと、注射針カートリッジ1を投薬ペン2に装着した。
【0050】
図8に示すごとく、投薬ペン2に対してアプリケータ15を相対回転することで、投薬ペン2の先端部のねじ部22をアプリケータ15に螺入する。
その後、第1部材151に対して第2部材152を相対的に回転させることにより、一対のホルダ部材11、12を相対的に回転させる。
【0051】
ここで、本例の注射針カートリッジ1においては、上記のごとく、第2部材152の内周面と第2のホルダ部材12との間に適度な摩擦力が作用している。一方、一対のスライダ部111、121は、図8に示すごとく、くし歯状に噛み合っておらず、容易に相対回転し得る状態にある。それ故、投薬ペン2をアプリケータ15に螺入した状態(図8)で、第2部材152を回転させれば、第1部材151に対して第2部材152を相対回転でき、それに伴って第1のホルダ部材11に対して第2のホルダ部材12を回転させることができる。
【0052】
第2のホルダ部材12を相対回転させると、図3、図4及び図9に示すごとく、該第2のホルダ部材12の凸部101tを周方向に隣り合うガイド溝10mへ移動させることができる。これにより、図3及び図4に示すごとく、各ホルダ部材11、12の凸部101tを異なるガイド溝10mに位置させ、図9に示すごとく、各スライダ部111、121の柱状部101をくし歯状に配置させることができる。
【0053】
ここで、本例の注射針カートリッジ1では、隣り合うガイド溝10m間における凸部101tの移動時に、樹脂材料よりなる柱状部101の弾性変形に伴う適度なクリック感が得られるように各柱状部101を形成してある。このクリック感によれば、使用者が操作を確認しながら、確実性高く上記の操作を行うことができる。そしてこれにより、図9に示すごとく、一対のホルダ部材11、12を軸方向に縮小可能な状態を設定できる。
【0054】
図9の状態を基にして、第2部材152をさらに回転させていくと、第1部材151の外周のら旋状の凹部151rと、第2の部材152の内周のら旋状の凸部152rとの係合により、第1部材151と第2部材152とを組み合わせたアプリケータ15を軸方向に縮小させることができる。同時に、アプリケータ15の内部の一対のホルダ部材11、12を軸方向に縮小させていくことができる。
【0055】
一対のホルダ部材11、12を軸方向に縮小させると、内部の収容部102を軸方向に縮小させることができる。そして、収容部102の軸方向の長さを縮小させることにより、図10に示すごとく、保持部材10に保持した注射針100が、底板110、120の貫通孔105(図1参照。)を貫通し、フィルム13(図1参照。)を突き破って外部に突出し得る。投薬ペン2側を向く注射針100は、投薬ペン2の上記隔膜220を突き刺し、針先が薬剤カートリッジ24の内部に位置する。一方、投薬ペン2の先端側、すなわち外部側を向く注射針100は、アプリケータ15の第2部材152の貫通孔152hを貫通して外部に向けて突出する。
【0056】
本例の注射針カートリッジ1は、以上のような手順により注射可能な状態を設定することができる。注射針カートリッジ1を装着した投薬ペン2では、先端側の注射針100を人体の皮膚等に突き刺した後、プッシュロッド21を押し込みすることで薬剤カートリッジ24内の薬剤を注射することができる。ここで、この投薬ペン2では、上記投与量設定機構23を用いて予め投与量を設定することで、当該投与量分の薬剤を精度高く注射することができる。
【0057】
次に、注射行為を終了した後の注射針カートリッジ1の処理方法について説明する。注射針カートリッジ1を取り外すに当たっては、まず、アプリケータ15の第2部材152を逆向きに回転させる。そうすると、第1部材151の外周面のら旋状の凹部151rと、第2部材152の内周面のら旋状の凸部152rとの係合により、アプリケータ15全体を軸方向に伸長できる。ここで、本例の注射針カートリッジ1では、第1のホルダ部材11の底板110が第1部材151の凸部151tに係合しており、かつ、第2のホルダ部材12の底板120が第2部材152の凸部152tに係合している。それ故、この注射針カートリッジ1では、アプリケータ15の軸方向の伸長に伴って、図9に示すごとく、一対のホルダ部材11、12を軸方向に伸長させることができる。
【0058】
同図に示すごとく、一対のホルダ部材11、12を軸方向に伸長させると、収容部102の軸方向長さを伸長させることができ、各底板110、120の貫通孔105(図1)から注射針100を内部に引き抜くことができる。投薬ペン2側を向く注射針100は、隔膜220から引き抜かれ、先端が一対のホルダ部材11、12の内部の収容部102に位置する。一方、投薬ペン2の先端側、すなわち外部側を向く注射針100は、底板120の貫通孔105から内部に引き抜かれ、一対のホルダ部材11、12の内部の収容部102に位置する。
【0059】
その後、図3及び図9に示すごとく、ホルダ部材11、12の各凸部101tがガイド溝10mの端部に位置するまで一対のホルダ部材11、12を伸長させるよう、上記第2部材を回転させていく。そして、各スライダ部111、121の柱状部101が軸方向に重なり合わない状態を形成する。すなわち、一対のホルダ部材11、12について、スライダ部111、121がくし歯状に噛み合った状態を解消して、保持部材10の軸回りに容易に相対回転可能な状態を形成する。なお、本例では、保持部材10のガイド溝10mに端部を設けてある。それ故、一対のホルダ部材11、12を軸方向に伸長させる際、保持部材10からホルダ部材11、12が脱落するおそれが少ない。
【0060】
ここで、上記のごとく第2部材152とホルダ部材12との間は適度な摩擦力が生じるように形成してある。それ故、上記のごとく一対のホルダ部材11、12が容易に相対回転し得る状態で、さらに第2部材152を回転させれば、該第2部材152に従動してホルダ部材12を回転できる。そして、他方のホルダ部材11に対して、ホルダ部材12を相対回転させることができる。第1のホルダ部材11に対して第2のホルダ部材12を相対回転させると、図5及び図8に示すごとく、第2のホルダ部材12の凸部101tを周方向に隣り合うガイド溝10mに移動させ、各ホルダ部材の凸部101tを共通するガイド溝10mに位置させることができる。これにより、図8に示すごとく、上記一対のホルダ部材11、12の柱状部101の先端面を相互に対面させることができ、当該一対のホルダ部材11、12について軸方向に縮小不可能な状態を設定できる。
【0061】
その後、投薬ペン2に対してアプリケータ15全体を回転させることで、注射針カートリッジ1及びアプリケータ15を投薬ペン2から取り外すことができる。このように取り外した注射針カートリッジ1では、一対のホルダ部材11、12が軸方向に伸長され、かつ、縮小不可能な状態となっている。すなわち、この注射針カートリッジ1では、注射針100の先端が内部に収容されており、かつ、軸方向に荷重を作用しても注射針100が再突出するおそれが極めて少ない。それ故、使用後の注射針カートリッジ1を廃棄するに当たって、針先事故が発生するおそれが非常に少ない。
【0062】
以上のように、本例の注射針カートリッジ1及び投薬ペン2によれば、使用後の注射針カートリッジ1を安全性高く廃棄できる。それ故、この注射針カートリッジ1を使用すれば、例えば、針先事故に起因した2次感染等が発生するおそれを効果的に抑制することができる。
【0063】
なお、上記第1のスライダ部111の柱状部101の先端形状、及び第2のスライダ部121の柱状部101の先端形状を、図11に示すごとく、くさび状の凸形状とくさび状の凹形状との組み合わせにすることも良い。この場合には、上記凸形状と上記凹形状との間に作用する軸方向の当接荷重を基にして、各ホルダ部材11、12の相対回転位置を調整する回転方向の力を発生させることが可能になる。この回転方向の力によれば、凸形状と凹形状とを位置精度高く当接させ、上記一対のスライダ部111、121を確実性高く相対させることができる。それ故、上記凸形状と上記凹形状との組み合わせによれば、上記一対のスライダ部111、121が相互に対面する状態、すなわち、上記一対のホルダ部11、12を軸方向に縮小不可能な状態を一層、確実性高く維持できる。
【0064】
また、使用前の注射針カートリッジ1の状態として、本例に代えて、一対のスライダ部111、121が周方向に交互に位置する状態(図1及び図9参照。)を採用することも良い。この場合には、注射するに先立って、一対のホルダ部材11、12を相対回転させる手間を省略することができる。
さらに、これに加えて、第1のスライダ部111のガイド溝10m間の移動を禁止すると共に、第2のスライダ部121について、所定の方向に1回のみ、隣のガイド溝10mへ移動可能なように構成しておくことも好ましい。例えば、保持部材10の軸方向に直交する断面を図示した図12に示すごとく、深浅2種類のガイド溝10mを周方向に交互に形成すると共に、凸部101tの断面に斜面101sを設けることにより上記のような構成を実現できる。
【0065】
なお、上記のように一対のスライダ部111、121が周方向に交互に位置する状態を使用前の注射針カートリッジ1の状態として採用する場合には、上記貫通孔105に薄い膜を形成しておくのが良い。この場合には、製品搬送中の振動等に起因して保持部材10が相対的に変位し、貫通孔105から注射針100が不用意に突出してしまうおそれを、上記薄い膜の存在により未然に抑制できる。一方、薄い膜を設けず貫通孔105を完全に貫通させておく場合には、保持部材10の外周面とスライダ部111、121との間で適度な摩擦力が作用するように構成したり、振動等による保持部材10の移動を防止するための止め形状をスライダ部111、121の内周面に形成する等の措置を施しておくことが好ましい。
【0066】
図12中の矢印の根元側の凸部101tについては、矢印方向の回転力が作用した場合、ガイド溝10mの開口端部と斜面101sとの当接により径方向外方の荷重が作用し得る。この径方向外方に向かう荷重によれば、ガイド溝10mから凸部101tが離脱し易くなり、隣り合う他のガイド溝10mに向けて比較的、容易に移動できる。一方、矢印方向と反対側の回転力が作用した場合には、ガイド溝10mの側壁面と凸部101tの側面とが対面することになるため、上記のような径方向外方の荷重が発生するおそれが少なく、他のガイド溝10mへの移動は困難である。
【0067】
同図中の矢印の先端側の深いガイド溝10mに位置した凸部101tについては、他のガイド溝10mに向けて移動するおそれが少ない。深いガイド溝10mでは、いずれの回転方向の力が作用しても、ガイド溝10mの側壁面と凸部101tの側面とが対面することになり、上記のような径方向外方の荷重が凸部101tに作用するおそれが少ないからである。それ故、深いガイド溝10mに凸部101tが位置した後は、当該凸部101tが他のガイド溝10mに向けて移動するおそれが極めて少ない。
【0068】
以上のように、図12のごとくガイド溝10m及び凸部101tを構成すれば、第2のスライダ部121について、所定の方向に1回のみ、隣のガイド溝10mへ移動可能なように構成することができる。この場合には、注射針カートリッジ1の使用後に縮小不可能な状態(図8参照。)を設定した後、再度、縮小可能な状態(図9参照。)に逆戻りするおそれを少なくできる。
【0069】
(実施例2)
本例は、実施例1の投薬ペンを基にして、アプリケータに代えてキャップ状のキャップ部16を採用した例である。この内容について、図13〜図16を用いて説明する。
本例の注射針カートリッジ1は、図13に示すごとく、実施例1の注射針カートリッジを基にして、ホルダ部材11、12の底板110、120の外周の1カ所に、外周側に向けて突出する凸部115、125を設けたものである。
【0070】
一方、本例の投薬ペン2は、図14に示すごとく、実施例1の投薬ペンを基にして、隔膜220の外周側をなす軸部を軸方向に延長すると共に、略円筒形状をなす延長部分の内周に、第1のホルダ部材11の凸部115を収容する溝状の凹部25を設けたものである。凹部25は、軸方向に延設された第1の凹部251と、該第1の凹部251の隔膜220側の端部から周方向に延設した第2の凹部252とを組み合わせたものである。
【0071】
上記キャップ部16は、図15に示すごとく、一方に開口端を有する有底略円筒形状を呈するポリプロピレンよりなる部材である。底部分には、注射針100を貫通、突出させるための貫通孔165を形成してある。キャップ部16の内周面には、第2のホルダ部材12の凸部125を収容する凹部160を設けてある。凹部160は、軸方向に延設された第1の凹部161と、該第1の凹部161の底側の端部から周方向に延設された第2の凹部162とを組み合わせてなる。
【0072】
次に、本例の投薬ペン2を使用する方法について説明する。本例の投薬ペン2により注射行為を実施するに当たっては、まず、図13及び図15に示すごとく、キャップ部16の内部に注射針カートリッジ1を投入する。このとき、注射針カートリッジ1側の凸部125と、キャップ部16の凹部160とが係合するようにする。
【0073】
次に、注射針カートリッジ1を収容するキャップ部16に対して、本体部である投薬ペン2の先端を挿入する。ここで、本例では、図13〜図15に示すごとく、キャップ部16に収容した注射針カートリッジ1側の凸部115と、投薬ペン2側の凹部25との周方向位置を合致できるよう、キャップ部16及び投薬ペン2の外周の周方向の1カ所に位置合わせ用の印(図示略)を印刷してある。それ故、本例の投薬ペン2では、位置合わせ用の印の周方向位置を略一致させた状態で投薬ペン2を差し込むことで、投薬ペン2の凹部25と注射針カートリッジ1の凸部115とを確実性高く係合させることができる。
【0074】
キャップ部16に対して投薬ペン2を最も深く挿入すると、図13〜図15に示すごとく、注射針カートリッジ1の凸部115が第2の凹部252に位置し、凸部125が第2の凹部162に位置することになる。この状態で、キャップ部16と投薬ペン2とを相対的に回転させると、注射針カートリッジ1の各凸部115、125が、第1の凹部251あるいは161から離れる方向に移動し、第2の凹部252、162の端部に到達し得る。
【0075】
この状態で、さらにキャップ部16と投薬ペン2とを相対回転させると、当該回転動作を注射針カートリッジ1に伝達でき、一対のホルダ部材11、12を相対的に回転させることができる。そして、各ホルダ部材11、12の柱状部101の先端面が対面する状態(図6参照。)から、図16に示すごとく各ホルダ部材11、12の柱状部がくし歯状に互い違いに配置された縮小可能状態に移行させることができる。
【0076】
この縮小可能状態を設定した後、注射部位にキャップ部16の先端を押しつけると、キャップ部16に対して投薬ペン2をさらに差し込みでき、それに伴って注射針カートリッジ1を軸方向に縮小させることができる。これにより、一方の注射針100を投薬ペン2の隔膜220に差し込みできると共に、他方の注射針100をキャップ部16から外部に突出させることができる。その後、投薬ペン2のプッシュロッドを押し込みすれば、実施例1と同様、規定量の薬剤を注射することができる。
【0077】
次に、使用済みの注射針カートリッジ1の処理方法について説明する。まず、投薬ペン2からキャップ部16を引き抜きする。このとき、各ホルダ部材11、12の凸部115、125は、図13〜図15を用いて上記したごとく、投薬ペン2あるいはキャップ部16の第2の凹部162、252に係合している。それ故、キャップ部16の引き抜きに応じて一対のホルダ部材11、12の軸方向長さを伸長させることができる。そしてこれにより、一対のホルダ部材11、12の内部に注射針100を収容させることができる。
【0078】
一対のホルダ部材11、12が軸方向に伸長し切った状態で、キャップ部16に対して投薬ペン2を逆向きに回転させると、それに伴って、注射針カートリッジ1の各凸部115、125が、それぞれ、第2の凹部252あるいは162の他端、すなわち、第1の凹部251、161側の端部に移動する。この状態で、さらに投薬ペン2を回転させると、該キャップ部16と投薬ペン2との相対回転に従動して一対のホルダ部材11、12を相対回転させることができる。これにより、一対のホルダ部材11、12の各スライダ部111、121の柱状部101の先端面が対面する状態(図6参照。)を設定できる。
【0079】
その後、投薬ペン2からキャップ部16を完全に引き抜き、内部から注射針カートリッジ1を取り出すことにより、使用済みの注射針カートリッジ1を処理できる。ここで、キャップ部16から取り出した注射針カートリッジ1では、上記のごとく、各スライダ部111、121をなす柱状部101の先端面が相互に対面する状態(図6参照。)にある。すなわち、この使用済みの注射針カートリッジ1は、注射針100が内部に収容され、かつ、軸方向に縮小不可能な状態のものである。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0080】
(実施例3)
本例は、実施例2の投薬ペンを基にして、注射針カートリッジ1の外形状を変更すると共に、キャップ部17の構成を変更した例である。この内容について、図17〜図19を用いて説明する。
本例の投薬ペン2は、連結部材としてのジョイント18を介して、キャップ部17を一体的に組み付けしたものである。そして、本例の注射針カートリッジ1では、各ホルダ部材11、12の各底板110、120(図1参照。)の形状を八角形状としてある。
【0081】
ジョイント18は、図17に示すごとく、ポリプロピレンよりなる略円筒状の部品である。投薬ペン2側に当たる内周面には、投薬ペン2の先端外周のねじ部(図2における符号22。)に係合する内周ねじ部182を形成してある。一方、反対側の端部には、断面略半円状の切り欠きを形成することにより、半円部181を形成してある。さらに、本例のジョイント18は、その外周面に、投薬ペン2に対するキャップ部17の相対運動を規制するための凸部180を設けてある。
【0082】
ジョイント18の半円部181では、ホルダ部材(図16における符号11。)の回転を規制できるよう、底板110の八角形状に対応する内周形状を形成してある。さらに、この半円部181の端部には、底板110の軸方向の変位を規制するための係止部183を設けてなる。
【0083】
キャップ部17は、図18に示すごとく、一方の端部に開口端を有する有底略円筒状の部材であり、底部分に注射針を貫通させる貫通孔175を設けたものである。キャップ部17は、注射針カートリッジ(図16における符号1)を出し入れするための開閉シャッタ174付きの開口窓173を有している。さらに、キャップ部17は、上記ジョイント18の凸部180を収容する貫通溝状のスリット170を有している。
【0084】
スリット170は、図17及び図18に示すごとく、軸方向に沿う進退スリット部171と、該進退スリット部171における投薬ペン2側に当たる端部から周方向に沿うように延設された回転スリット部172とを組み合わせてなる。進退スリット部171に凸部180が係合する状態のキャップ部17は、投薬ペン2に対して軸方向に進退し得る。一方、回転スリット部172に凸部180が係合する状態のキャップ部17は、投薬ペン2に対して相対的に回転し得る。
【0085】
キャップ部17の開口窓173は、図18に示すごとく、軸方向に伸長した状態の注射針カートリッジを収容できるように形成した開口部分である。キャップ部17の内側には、底側に位置するホルダ部材(図16における符号12。)の回転及び軸方向位置を規制するための係止部(図示略。)を設けてある。開閉シャッタ174は、軸方向に進退可能な断面略円弧状のプレートよりなり、軸方向の進退により開口窓173を開閉できるように構成してある。
【0086】
本例の投薬ペン2は、図17〜図19に示すごとく、先端にジョイント18をねじ結合すると共に、当該ジョイント18の凸部180がスリット170に係合するようにキャップ部17を組み付けしたものである。この投薬ペン2を用いて注射行為を実施するに当たっては、まず、開閉シャッタ174を軸方向に後退させることにより開口窓173を開口させる。
【0087】
そして、開口窓173を介してキャップ部17内に注射針カートリッジを収容する。ここで、ジョイント18の係止部183に一方のホルダ部材11を係合させると共に、キャップ部17の係止部(図示略)に他方のホルダ部材12を係合させる。これにより、投薬ペン2に対するキャップ部17の相対回転に応じて一対のホルダ部材11、12を相対的に回転させることができ、かつ、キャップ部17の軸方向の進退に応じて一対のホルダ部材11、12を軸方向に伸縮できるように設定する。
【0088】
上記のごとくキャップ部17内部に注射針カートリッジを収容し、開閉シャッター174を閉じた後、投薬ペン2に対してキャップ部17を相対的に回転させる。このとき、ジョイント18の凸部180が回転スリット部172を移動する。同時に、キャップ部17とジョイント18との相対的な回転に伴って、一対のホルダ部材11、12を相対的に回転させることができる。そして、各スライダ部の柱状部の先端面が対面する状態(図6参照。)から、柱状部101がくし歯状に互い違いに配置された縮小可能状態(図7参照。)に移行させることができる。
【0089】
その後、投薬ペン2に対してキャップ部17を押し込むと、ジョイント18の凸部180が進退スリット部171を移動し、それに応じて一対のホルダ部材11、12の軸方向の距離を短縮できる。そしてこれにより、キャップ部17の貫通孔175から注射針を突出させることができる。
【0090】
その後、使用済みの注射針カートリッジを処理するに当たっては、まず、ジョイント18の凸部180が回転スリット部172に到達するよう、投薬ペン2からキャップ部17を引き抜きする。これにより、一対のホルダ部材11、12の軸方向の距離を拡大でき、それに応じて注射針を一対のホルダ部材11、12の内部に収容させることができる。
【0091】
さらに、投薬ペン2に対してキャップ部17を逆向きに相対回転させると、一対のホルダ部材11、12を相対的に回転できる。これにより、各スライダ部の柱状部の先端面が対面する状態(図6参照。)を設定することができる。その後、開閉シャッタ174を軸方向に後退させて開口窓173を開口させ、使用済みの注射針カートリッジを取り出す。取り出した注射針カートリッジでは、注射針が内部に収容されており、かつ、軸方向に縮小不可能な状態であるため、安全性高く取り扱うことが可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例2と同様である。
【0092】
(実施例4)
本例は、実施例3の投薬ペンを基にして、予備の注射針カートリッジ1を収納する機能を追加した例である。この内容について、図20及び図21を用いて説明する。
本例の投薬ペン2は、図20に示すごとく略円筒形状のキャップ部17に並列して略円筒状の格納部178を有している。格納部178は、使用前の注射針カートリッジ1を直列に格納できるように形成してある。格納部178とキャップ部17とは、開閉シャッタ174により開閉する開口窓(図示略)を介して連通可能なように構成してある。それ故、本例の投薬ペン2では、開閉シャッタ174により開口窓を開けた状態で、格納部178の注射針カートリッジ1をキャップ部17内部に向けて移動させることができる。
【0093】
さらに、本例のキャップ部17は、格納部178に連通する開口窓に対面するように配置される図示しない第2の開口窓を有している。この第2の開口窓は、上記開閉シャッタ174に連動する図示しない第2の開閉シャッタを備えている。それ故、本例の投薬ペン2では、開閉シャッタ174に連動して2カ所の開口窓を開口することで、キャップ部17内部の使用済みの注射針カートリッジ1を取り出すことができると共に、格納部178に格納した未使用の注射針カートリッジ1を新たに装填することができる。
【0094】
以上のように、本例の投薬ペン2によれば、例えば、一日の注射回数に応じた数の注射針カートリッジ1を格納部178に収容しておくことができる。それ故、この投薬ペン2によれば、1日の生活の中で必要となる注射針カートリッジ1を投薬ペン2と共に一体的、かつ、コンパクトに取り扱うことができる。
【0095】
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例3と同様である。
さらになお、複数の注射針カートリッジ1を直列に収容する本例の格納部178に代えて、図21に示すごとく、注射針カートリッジ1を並列して収容する格納部178を採用することもできる。さらに、格納部178の内部に回転式のレボルバー機構を設けることも良い。この場合には、レボルバー機構を利用して使用済みの注射針カートリッジ1を空きスロットに回収すると共に、未使用の注射針カートリッジ1をキャップ部17内部に装填することができる。
【0096】
(実施例5)
本例は、実施例3を基にして、一対のホルダ部材11、12の相対回転を規制する回転規制機構をなすインナーリング31を保持部材10に追加した例である。この内容について、図22〜図30を用いて説明する。
さらに、本例では、実施例3の投薬ペンを基にして、注射針カートリッジ1、ジョイント18及びキャップ部17等の構成を変更してある。
【0097】
本例の注射針カートリッジ1は、図22及び図23に示すごとく、軸方向に注射針100を貫通させた略円柱状の保持部材10と、周方向3カ所の柱状部101よりなる第1のスライダ部111を含む第1のホルダ部材11と、周方向3カ所の柱状部101よりなる第2のスライダ部121を含む第2のホルダ部材12とを備えている。特に、本例の注射針カートリッジ1の保持部材10は、当該保持部材10に外挿するインナーリング31を備えたものである。なお、ここで、図22は、各部品を軸方向に分離して図示した分解組み立て図である。
【0098】
ホルダ部材11、12は、図22及び図23に示すごとく、六角外形状の底板110、120と、該底板110、120から120度毎に立設する柱状部101を含むスライダ部111、121とを有している。各柱状部101の形成幅は、周方向60度である。そして、底板110、120には、保持部材10の小径部104が貫通突出するための貫通孔105を穿孔してある。なお、本例の底板110、120は、六角形状の板を円柱が貫くような形状を呈しているが、機能的な構成については、実施例3の注射針カートリッジ1の底板と同様のものである。
【0099】
インナーリング31は、図22及び図23に示すごとく、ポリプロピレンよりなる略円筒状を呈する部材である。インナーリング31は、その外周壁面をコの字状に切り込みしてなる略矩形状の係合片311を、120度毎の3カ所に有している。各係合片311は、軸方向に略平行であって、かつ、周方向における同じ側に位置する1辺のみを介してインナーリング31の本体側に接続されている。ポリプロピレンよりなる弾力性を備えたインナーリング31の一部である各係合片311は、外力が作用しない状態では、図22に図示するごとく径方向外方に拡開した状態にある。
【0100】
さらに、インナーリング31は、図22及び図23に示すごとく、各係合片311の付け根部分に当たる外周面に、軸方向に沿って延設された畝状の凸部である回り止め310を有している。さらに、インナーリング31は、保持部材10に対する挿入方向側に位置する端面に、軸方向に突出する係合凸部312を有している。この係合凸部312は、上記係合片311の付け根側から先端側に向かう周方向に向けて次第にその突出量が大きくなると共に、その突出量が最大となる位置に軸方向と略平行な係合面313を有している。係合凸部312の軸方向の突出量は、軸方向に平行な係合面313を介し、最大突出量からゼロに急激に変化している。
【0101】
保持部材10は、図22及び図23に示すごとく、軸方向の中間的な位置にオフセットして設けた大径部103を形成してなると共に、軸方向の両端に小径部104を設けた略円柱状の部材である。一方の小径部104Aの軸方向長さは、他方の小径部104Bよりも長く形成してある。軸方向に長い方の小径部104Aは、インナーリング31を外挿するように構成してあり、インナーリング31を外挿してなお、小径部104が軸方向に突出し得る。インナーリング31は、小径部104Aに外挿した状態で、軸方向に進退でき、周方向に回転し得る。小径部104Aに外挿したインナーリング31は、各係合片311を径方向内側に向けて縮めた際、大径部103と一体をなすように形成してある。
【0102】
大径部103は、図22及び図23に示すごとく、その外周面に、スライダ部111、121の周方向の相対回転を規制するための畝状の凸部106を形成してなる。凸部106としては、第1のスライダ部111の柱状部101に係合するものと、第2のスライダ部121の柱状部101に係合するものとがある。第1のスライダ部111の相対回転を規制する凸部106は、120度毎の周方向3箇所に位置している。第2のスライダ部121の相対回転を規制する凸部106は、60度毎の周方向6箇所に位置している。第1のスライダ部111用の3箇所の凸部106によれば、周方向60度の形成幅の柱状部101よりなる第1のスライダ部111が回転し得る範囲を60度以内に規制することができる。また、第2のスライダ部121用の6箇所の凸部106によれば、同様の柱状部101よりなる第2のスライダ部121の回転を規制することができる。
【0103】
さらに、図22及び図23に示すごとく、大径部103と小径部104Aとの段差がなす端面、すなわちインナーリング31側の端面には、インナーリング31の係合凸部312と隙間なく嵌り合うよう、軸方向に窪む凹状の係合凹部105を形成してある。インナーリング31の係合凸部312と、保持部材10の係合凹部105とが嵌り合った状態では、インナーリング31の係合面313の作用により、該係合凸部312の突出量が増大する方向の相対回転を確実性高く規制し得る。
【0104】
組み付け状態(未使用状態)の注射針カートリッジ1では、図22及び図23に示すごとく、一対のホルダ部材11、12が形成する収容部102内に、インナーリング31を外挿した保持部材10が収容されている。この注射針カートリッジ1では、インナーリング31の各係合片311が、第1のスライダ部111の柱状部101の内周側に位置している。各係合片311は、柱状部101から作用する内周方向の外力により弾性変形している。
【0105】
さらに、組み付け状態(未使用状態)の注射針カートリッジ1では、図22及び図23に示すごとく、インナーリング31の係合凸部312と、保持部材10の係合凹部105とが嵌合しない状態にある。この状態の注射針カートリッジ1は、インナーリング31が軸方向に後退していると共に、係合凹部105の周方向位置と係合凸部312の周方向位置とが略一致する回転位置を基準として、図23の左下から見て反時計回りに60度、インナーリング31を回転させたごとき状態にある。この状態では、一対のホルダ部材11、12のスライダ部111、121が相互に対向する軸方向に縮小不可能な状態となっている。
【0106】
本例のジョイント18は、図24に示すごとく、周方向の一部が欠落した不完全な略円環状であって、かつ、不完全な断面六角形の内周形状を呈する略C字状の回転部材182と、該回転部材182を回転可能な状態で保持するジョイント本体部181とを組み合わせた部品である。回転部材182は、周方向の1カ所に欠落箇所を設けた略C字状の部材であり、当該欠落箇所に面する端部に、径方向外周側に突出する回転レバー183を有している。
【0107】
ジョイント本体部181は、軸方向の中間に仕切板184を設けてなると共に、外周面に凸部180を設けた略円筒状の部材である。仕切板184により区画された一方の端部は、実施例3と同様の投薬ペン2を内挿する部分である。他方の端部は、周方向の1カ所において120度近い開口部を設けた不完全な円筒形状を呈している。当該他方の端部では、保持部185を仕切板184に面して形成してあると共に、当該保持部185よりも小径の係止部188を先端側に設けてある。保持部185は、回転部材182を回転可能な状態で保持する部分である。組み付けに当たっては、略C字状の回転部材182を弾性変形させて撓めながら保持部185に収容している。保持部185に収容された回転部材182は、保持部185のへり部186と回転レバー183とが干渉する回転位置と、軸方向に突出するよう仕切板184に設けた凸状の回転止め187と回転レバー183とが干渉する回転位置との間の回転範囲で回転し得る。
【0108】
本例のキャップ部17は、図25及び図26に示すごとく、回転部材182を組み付けたジョイント18に外挿する部材である。キャップ部17は、投薬ペン2側に位置する略円筒形状を呈する部分と、外部から注射針カートリッジ1をセットするための開口部173を設けた不完全な円筒形状を呈する部分とからなる部材である。
【0109】
キャップ部17は、その外周面170に、ジョイント18の凸部180を軸方向に進退させるためのスリット溝171を有している。また、キャップ部17の底部分、すなわち投薬ペン2の先端側の端部には、第2のホルダ部材12の六角形状の底板120の回転及び軸方向の変位を規制するための保持部172を形成してある。そして、キャップ部17の底面には、注射針カートリッジ1の注射針等を貫通させるための貫通孔174を穿孔してある。
【0110】
本例の投薬ペン2に未使用状態の注射針カートリッジ1をセットした状態は、図27(A)に示す状態であり、この状態における注射針カートリッジ1は、図22及び図28(A)に示す状態にある。この状態の注射針カートリッジ1は、各ホルダ部材11、12のスライダ部111、121が相互に対向し、軸方向に縮小不可能な状態にある。なお、図27は、スライダ部111、121が相互に対向する状態(同図(A)及び(C)。)において、各ホルダ部材11、12の柱状部101が2本ずつ図示できるような断面を設定し、その断面形状を示したものである。また、図28では、ホルダ部材11、12を点線及びドットハッチにより図示してある。
【0111】
回転部材182を図25に示す回転位置から図26に示す回転位置に回転させると、回転を規制された第2のホルダ部材12に対して第1のホルダ部材11を回転させることができる。このとき、図22及び図28(A)に示すごとく、第1のスライダ部111をなす柱状部101と回り止め310との係合により、インナーリング31が一緒に回転する。これにより、注射針カートリッジ1は、分解図である図29及び図28(B)に示す状態となる。この状態の注射針カートリッジ1は、各ホルダ部材11、12のスライダ部111、121がくし歯状に交互に位置し、軸方向に縮小可能な状態である。さらに、この状態では、同図に示すごとく、インナーリング31の係合凸部312の周方向位置と、大径部103の係合凹部105の周方向位置とが略一致した状態となる。
【0112】
この状態では、図27(B)及び図28(B)に示すごとく、スライダ部111、121がくし歯状に互い違いにかみ合う構造により一対のホルダ部材11、12が軸方向に縮小可能である。キャップ部17に対して投薬ペン2を深く差し込むことで、注射針カートリッジ1を軸方向に縮小させれば、両端側に注射針100を突出させて注射可能な状態を設定できる。また、注射針カートリッジ1を軸方向に縮小する際には、図28(C)に示すごとく、インナーリング31が軸方向内側に移動し、その係合凸部312と大径部103の係合凹部105とが嵌り合うことになる。
【0113】
その後、キャップ部17から投薬ペン2を引き抜くことで、注射針カートリッジ1を軸方向に伸張させ、第1のスライダ部111と第2のスライダ部121との軸方向の重なり部分をなくせば、一対のホルダ部材11、12を相対回転させ得る状態になる。このとき、インナーリング31の係合凸部312と大径部103の係合凹部105とが嵌り合う状態(図28(C)参照。)が、そのまま維持され得る。この状態で、回転部材182を図26に示す回転位置から図25に示す回転位置に回転させると、回転を規制された第2のホルダ部材12に対して、第1のホルダ部材11を相対回転させることができる。このとき、大径部103の係合凹部105に係合するインナーリング31は、第1のホルダ部材11と一緒に回転できず、第1のホルダ部材11のみが回転する。そして、これにより、図28(D)に示すごとく、注射針カートリッジ1に対して、各スライダ部111、121が相互に対向して軸方向に縮小不可能な状態を設定できる。
【0114】
このとき、図28(D)及び分解図である図30に示すごとく、第1のスライダ部111の柱状部101による押圧力から開放された係合片311は、外方に向けて拡開する。拡開した係合片311によれば、同図(B)に示す状態に復帰してしまうような第1のホルダ部材11の相対回転を確実性高く規制できる。一方、第1のホルダ部材11の逆向きの相対回転は、保持部材10の凸部106と、第1のスライダ部111の柱状部101との係合によって確実性高く規制されている。したがって、使用後の注射針カートリッジ1について、各スライダ部111、121が相互に対向して軸方向に縮小不可能な状態を確実性高く維持し得る。
【0115】
以上のように、本例の投薬ペン2では、上記インナーリング31の作用により、使用後の注射針カートリッジ1について軸方向に縮小不可能な状態を確実性高く維持させることが可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例3と同様である。
【0116】
(実施例6)
本例は、実施例5を基にして、他方のスライダ部と係合する係合部を各スライダ部に設けた例である。この内容について、図31及び図32を用いて説明する。
本例のホルダ部材11(12)は、スライダ部111(121)を構成する柱状部101の先端に、対向するスライダ部121(111)の柱状部101と係合する係合部112(122)を有している。
【0117】
図31に示すごとく、係合部112、122が互いに係合し、スライダ部111、121が相互に対向する状態では、軸方向に縮小不可能な状態であり、かつ、伸張することもできない状態を設定することができる。一方、スライダ部111、121を、図32に示すごとく相対的に回転させれば、係合部112、122の係合状態を開放でき、軸方向に縮小可能な状態を設定し得る。なお、図31及び図32では、保持部材を省略してある。 なお、その他の構成及び作用効果については、実施例5と同様である。
【0118】
(実施例7)
本例は、実施例6を基にして、一対のホルダ部材11、12の軸方向の最大の離隔距離を規制する伸張規制機構をなすアウターリング32を追加した例である。この内容について、図33を用いて説明する。なお、図33では、保持部材を省略してある。
アウターリング32は、同図に示すごとく、ホルダ部材11、12のスライダ部111、121に外挿する略円筒状の部材である。
【0119】
アウターリング32は、その外周壁をコの字状に切り込みしてなるロック片320を60度毎に有している。各ロック片320は、軸方向に沿って延設されており、付け根の軸方向の向きを交互に切り換えてある。ロック片320は、その先端側に、内側に向けて突出するカギ状部321を形成してなる。
【0120】
一方、本例のスライダ部111、121の柱状部101は、先端近くの外周面に、上記カギ状部321が係合する凹状の溝部114、124を有している。この溝部114、124は、周方向に沿って延設され、柱状部101の幅方向の全域に渡って形成されている。この溝部114、124によれば、係合するカギ状部321の周方向の変位を許容し得る。そのため、本例の注射針カートリッジ1では、溝部114、124にカギ状部321が係合した状態であっても、ホルダ部材11、12を相対回転させ得る。
【0121】
アウターリング32を外挿した注射針カートリッジ1では、各スライダ部111、121がくし歯状に噛み合った状態で伸張させようとしたとき、ロック片320のカギ状部321が溝部114、124と係合することにより、一対のホルダ部材11、12の最大の離隔距離を確実性高く規制できる。さらに、スライダ部111、121にアウターリング32を外挿した注射針カートリッジ1においては、スライダ部111、121の柱状部101を外周側に折り曲げる等のいたずらを未然に防止することができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例6と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】実施例1における、注射針カートリッジの構成を示す斜視図。
【図2】実施例1における、投薬ペンを示す側面図。
【図3】実施例1における、一対のホルダ部材及び保持部材について軸方向に縮小可能な状態を示す側面図。
【図4】実施例1における、一対のホルダ部材及び保持部材について軸方向に縮小する途中の状態を示す側面図。
【図5】実施例1における、一対のホルダ部材及び保持部材について軸方向に縮小不可能な状態を示す側面図。
【図6】実施例1における、軸方向に縮小不可能な状態の注射針カートリッジを示す側面図。
【図7】実施例1における、注射針を突出させた状態の注射針カートリッジを示す側面図。
【図8】実施例1における、投薬ペンに対する注射針カートリッジの装着構造その1を示す断面図。
【図9】実施例1における、投薬ペンに対する注射針カートリッジの装着構造その2を示す断面図。
【図10】実施例1における、投薬ペンに対する注射針カートリッジの装着構造その3を示す断面図。
【図11】実施例1における、他の注射針カートリッジを示す側面図。
【図12】実施例1における、他のガイド溝と凸部との係合構造を示す断面図。
【図13】実施例2における、注射針カートリッジを示す側面図。
【図14】実施例2における、投薬ペンの先端部分を示す斜視図。
【図15】実施例2における、キャップを示す一部断面図。
【図16】実施例2における、投薬ペンに対する注射針カートリッジの装着構造を示す断面図。
【図17】実施例3における、ジョイントを示す斜視図。
【図18】実施例3における、キャップを示す斜視図。
【図19】実施例3における、投薬ペンに対するキャップの組み付け構造を示す斜視図。
【図20】実施例4における、投薬ペンを示す斜視図。
【図21】実施例4における、その他の投薬ペンを示す斜視図。
【図22】実施例5における、注射針カートリッジの組み立て構造を示す分解組み立て図。
【図23】実施例5における、未使用状態の注射針カートリッジの斜視図。
【図24】実施例5における、ジョイントの分解組み立て図。
【図25】実施例5における、ジョイントを組み付けたキャップを示す斜視図その1。
【図26】実施例5における、ジョイントを組み付けたキャップを示す斜視図その2。
【図27】実施例5における、注射針カートリッジの断面構造を示す断面図。
【図28】実施例5における、注射針カートリッジの動作順序を説明する説明図。
【図29】実施例5における、使用状態の注射針カートリッジの構造を示す分解図
【図30】実施例5における、使用後の注射針カートリッジの構造を示す分解図。
【図31】実施例6における、一対のスライダ部の係合状態を示す斜視図(保持部材を省略。)。
【図32】実施例6における、一対のスライダ部の非係合状態を示す斜視図(保持部材を省略。)。
【図33】実施例7における、注射針カートリッジの組み立て構造を示す分解組み立て図(保持部材を省略。)。
【符号の説明】
【0123】
1 注射針カートリッジ
10 保持部材
100 注射針
102 収容部
110、120 底板
111、121 スライダ部
2 投薬ペン
20 軸体
220 隔膜
23 投与量設定機構
24 薬剤カートリッジ
31 インナーリング
32 アウターリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面から突出するように軸方向に注射針を貫通させて保持する略円柱状の保持部材と、
上記保持部材の一方の端面に対面する第1の底板、及び上記保持部材の外周側面に当接して該保持部材を把持し得るように上記第1の底板から立設した第1のスライダ部を有する第1のホルダ部材と、
上記保持部材の他方の端面に対面する第2の底板、及び上記保持部材の外周側面に当接して該保持部材を把持し得るように上記第2の底板から立設した第2のスライダ部を有する第2のホルダ部材とを有しており、
上記一対のホルダ部材は、上記第1の底板と上記第2の底板とが対面して形成される収容部に上記保持部材を収容すると共に、該保持部材の軸回りに相対的に回転し得るように構成してあり、
上記収容部は、上記各スライダ部が上記保持部材の外周に沿って交互に配置される状態において軸方向に伸縮可能であり、かつ、上記各スライダ部の先端面が相互に対面する状態において軸方向に縮小不可能であって、
上記保持部材の上記注射針は、上記収容部を軸方向に縮小したときに上記各底板を貫通して突出するように構成してあることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項2】
請求項1において、上記保持部材は、該保持部材に外挿され、かつ、上記第1あるいは上記第2のスライダ部の内周側に位置する略円筒状のインナーリングを有しており、
該インナーリングは、上記一対のホルダ部材の上記相対的な回転を規制するための回転規制機構を備えていることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項3】
請求項2において、上記注射針カートリッジは、未使用状態において上記軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることで上記軸方向に縮小可能な状態となり、使用後において再度、上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることで上記軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能なように構成してあり、
上記回転規制機構は、上記注射針カートリッジが上記軸方向に縮小可能な状態に移行する前は上記一対のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、上記注射針カートリッジが上記軸方向に縮小可能な状態から上記軸方向に縮小不可能な状態に移行した後、上記一対のホルダ部材の相対的な回転を規制するように構成してあることを特徴とする上記注射針カートリッジ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記第1及び上記第2のスライダ部に外挿する略円筒状のアウターリングを有しており、
該アウターリングは、上記軸方向に伸縮可能な状態の上記注射針カートリッジについて、上記一対のホルダ部材の軸方向の最大の離隔距離を規制可能なように構成した伸張規制機構を備えていることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記各スライダ部は、該各スライダ部の先端面が相互に対面する状態において他方のスライダ部に係合する係合部を有しており、
上記スライダ部同士が上記係合部を介して係合することで、上記一対のホルダ部材の軸方向の相対的な進退を規制可能なように構成したことを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記保持部材の滅菌状態を保持するための気密部材を有しており、上記保持部材の上記注射針は、上記気密部材を貫通して突出するように構成してあることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記保持部材と上記各スライダ部との当接箇所には、軸方向に沿って設けた溝状の進退溝と該進退溝内に収容された状態で進退する凸部とを設けてあり、上記進退溝は、上記凸部が軸方向に脱落しないように形成してあることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、注射針カートリッジを装着する注射器に係合する係合部を設けた略円筒状の第1部材と、該第1部材を内挿するための中空部を設けてあると共に上記第1部材に対して軸方向に進退する第2部材とを含み、上記一対のホルダ部材及び上記保持部材を一体的に収容するように構成したアプリケータを有しており、
該アプリケータは、上記第1部材に対して上記第2部材を相対的に回転させることで上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることができ、かつ、第1部材に対する第2部材の進退により上記収容部を軸方向に縮小し得るように構成してあることを特徴とする注射針カートリッジ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の注射針カートリッジと、
薬剤を収容すると共に上記注射針カートリッジの一方の注射針を差し込むための先端面を設けた本体部と、
該本体部の先端側に外挿する有底略円筒状であって、内部に収容した上記注射針カートリッジの他方の注射針が貫通する貫通孔を設けたキャップ部とを有しており、
上記キャップ部は、上記一対のホルダ部材を相対的に回転させることができ、かつ、上記本体部に対する軸方向の進退により上記収容部を軸方向に縮小させ得るように構成してあることを特徴とする注射器。
【請求項10】
請求項9において、予備の上記注射針カートリッジを格納するための格納部を備えていることを特徴とする注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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