注射針用キャップ
【課題】注射針の先端に手指を近づけずに着脱する。脱着の動作を簡単にする。紛失を防止する。
【解決手段】筒部2の先端に取り付けられた注射針3を保護する注射針用キャップ4であって、筒部2の外周面にその軸線L方向に移動可能に装着すると共に、先端4cに注射針3を突出させる小孔4aを設け、筒部2の後側に向けて移動させることで小孔4aから注射針3を突出させると共に、筒部2の先端側に向けて移動させることで注射針3を収納するようにしている。
【解決手段】筒部2の先端に取り付けられた注射針3を保護する注射針用キャップ4であって、筒部2の外周面にその軸線L方向に移動可能に装着すると共に、先端4cに注射針3を突出させる小孔4aを設け、筒部2の後側に向けて移動させることで小孔4aから注射針3を突出させると共に、筒部2の先端側に向けて移動させることで注射針3を収納するようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を保護する注射針用キャップに関する。さらに詳しくは、本発明は注射針を取り付けた筒部への装着の仕方を改良した注射針用キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
注射器の注射針を保護するキャップは、シリンジ部に嵌め込む部分(基端部分)の直径を最大にし、先端部分に向かって細くなる略円錐形状を成している。このキャップは、注射針を覆うようにシリンジ部の先端に嵌め込んで装着されていた。そして、キャップを外す場合には、キャップをシリンジ部から引き抜くようにしていた。
【0003】
ところで、注射器の使用後にキャップを装着する際、医療従事者が誤って使用後の注射針で手指を刺してしまうことがないように種々の提案がなされている。例えば、特開平9−253206号公報に開示されている注射針用キャップを図11に示す。注射針用キャップ101の側面に隙間102を設け、注射針103をその隙間102から注射針用キャップ101の中に収納できるようにしている。かかる構成の注射針用キャップ101によれば、注射針103の先端を注射針用キャップ101を保持する手指に向けることがないので、医療従事者が誤って使用後の注射針103で指を刺してしまうことを防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−253206号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の注射針用キャップ101は注射器の使用時に注射器本体から外して分離するものであるため、キャップ装着時に注射針103の先端を手指に向けることはないとしても、外したキャップ101を装着する動作自体は必要である。また、キャップ101の取り外しや装着を片手で素早く行うのは困難である。また、外したキャップ101を床に落としたり紛失しないように気を付ける必要がある。さらに、キャップ装着時に注射針103の先端を手指に向けることはなくても、注射針103の先端に手指を近づける必要はある。
【0006】
本発明は、注射針の先端に手指を近づけずに装着できる注射針用キャップを提供することを目的とする。また、本発明は、脱着の動作が簡単で、しかも紛失することがない注射針用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、筒部の先端に取り付けられた注射針を保護する注射針用キャップにおいて、筒部の外周面にその軸線方向に移動可能に装着すると共に、先端に注射針を突出させる小孔を設け、筒部の後側に向けて移動させることで小孔から注射針を突出させると共に、筒部の先端側に向けて移動させることで注射針を収納するものである。
【0008】
したがって、筒部に対して注射針用キャップをその軸線方向に移動させることで、注射針を露出させたり収納したりできる。このため、注射針の先端に手指を近づける動作がなくなる。また、キャップを筒部から分離することがない。
【0009】
また、請求項2記載の注射針用キャップは、注射針を収納した状態で筒部に係止する第1の係止手段を備えるものである。したがって、外力を受けて注射針用キャップが動き、使用時以外に注射針が露出するのを防止することができる。
【0010】
また、請求項3記載の注射針用キャップは、第1の係止手段が、筒部からの外れを防止するストッパを備えるものである。したがって、注射針用キャップが筒部から外れるのを防止することができる。
【0011】
また、請求項4記載の注射針用キャップは、注射針を突出させた状態で筒部に係止する第2の係止手段を備えるものである。したがって、注射の最中に外力を受けてキャップが動くのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
しかして、請求項1記載の注射針用キャップでは、上述のように構成しているので、注射針を収納する際、注射針の先端に手指を近づけるような動作をしなくてすむ。このため、使用済みの注射針を誤って手指に刺してしまうことを完全に防止することができ、安全性をより一層向上させることができる。また、筒部に対して注射針用キャップを移動させるだけで注射針を露出させ又は収納することができるので、その操作が簡単であり、片手操作も容易である。また、注射針用キャップを筒部から分離しないので、キャップを紛失することがない。さらに、手指の保護のために別部品を追加するものではないので、部品点数の増加を抑えることができ、製造コストの増加を抑えることができる。
【0013】
また、請求項2記載の注射針用キャップでは、注射針を収納した状態で筒部に係止する第1の係止手段を備えているので、外力を受けて注射針用キャップが動き、使用時以外に注射針が露出するのを防止することができる。このため、安全性をより一層向上させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の注射針用キャップでは、第1の係止手段が筒部からの外れを防止するストッパを備えているので、注射針用キャップが筒部から外れるのを防止することができる。このため、安全性をより一層向上させることができる。
【0015】
さらに、請求項4記載の注射針用キャップでは、注射針を突出させた状態で筒部に係止する第2の係止手段を備えているので、注射の最中に外力を受けて注射針用キャップが動くのを防止することができる。このため、注射行為の妨げになるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2に、本発明を適用した注射針用キャップの実施形態の一例を示す。注射針用キャップ4は、例えば注射器1の筒部2であるシリンジ部(以下、シリンジ部2という)の先端に取り付けられた注射針3を保護するものである。注射針用キャップ4は、シリンジ部2の外周面にその軸線L方向に移動可能に装着される共に、先端4cに注射針3を突出させる小孔4aを設け、シリンジ部2の後側に向けて移動させることで小孔4aから注射針3を突出させる(図2)と共に、シリンジ部2の先端側に向けて移動させることで注射針3を収納する(図1)ものである。
【0018】
注射針用キャップ(以下、単にキャップという)4は、例えば円筒形状を成しており、シリンジ部2の長さよりも若干短くなっている。キャップ4の基端には指をかけるフランジ4bが設けられている。キャップ4は、例えば樹脂製のもので、透明又は半透明になっている。キャップ4を透明又は半透明にすることで、キャップ4をシリンジ部2の後側に向けて移動させて注射針3を露出させた状態でも、シリンジ部2に付された目盛りを読み取ることができる。
【0019】
キャップ4の先端4cに設けられた小孔4aの直径は、注射針3の直径よりも若干大きくなっている。ただし、様々な種類の注射針3に対応できるように、使用する可能性のある注射針3のうち最も太いものにあわせて小孔4aの直径を決定しても良い。このようにすることで、キャップ4の汎用性を向上させることができる。また、キャップ4の長さは、注射針3の長さよりも若干長くなっている。ただし、様々な種類の注射針3に対応できるように、使用する可能性のある注射針3のうち最も長いものにあわせてキャップ4の長さを決定しても良い。このようにすることで、キャップ4の汎用性を向上させることができる。
【0020】
キャップ4は、ある程度の弾性を有している。このため、注射を行う場合、キャップ4を径方向に潰しながらシリンジ部2を握ることができる。ただし、キャップ4は細長い円筒形状を成しているため長手方向には十分な強度を有しており潰れ難い。このため、注射針3を収納している状態ではキャップ4が潰れて注射針3を露出させることはなく、注射針3をしっかりと覆うことができて安全である。
【0021】
本実施形態のキャップ4は、注射針3を収納した状態でシリンジ部2に係止する第1の係止手段6と、注射針3を突出させた状態でシリンジ部2に係止する第2の係止手段17を備えている。
【0022】
第1の係止手段6は、キャップ4の内周面に設けられたキャップラッチ5と、シリンジ部2の外周面に設けられた針側シリンジ外ラッチ7及び針側シリンジ内ラッチ8より構成されている。針側シリンジ外ラッチ7は、シリンジ部2からの外れを防止するストッパでもある。針側シリンジ内ラッチ8の高さは、針側シリンジ外ラッチ7の高さよりも若干低くなっている。このため、キャップラッチ5は針側シリンジ外ラッチ7を乗り越えて移動することはできないが、針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて移動することは可能である。各ラッチ5,7,8の注射器1の長手方向に沿う断面は、例えば三角形状を成している。ただし、各ラッチ5,7,8の形状はこれに限るものではなく、例えば四角形や半円形等でも良い。
【0023】
キャップラッチ5は、例えば図3に示すように、同一直径上の2箇所に設けられている。針側シリンジ外ラッチ7は、円周方向に沿って形成された凸部で、例えば図4に示すように、同一直径上の2箇所に切り欠き9が設けられている。キャップラッチ5は、切り欠き9を通ることで針側シリンジ外ラッチ7を通り抜けることができる(図5の矢印A)。
【0024】
針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間隔は、部分的に狭くなっている。図5に、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8を平面的に展開して示す。針側シリンジ内ラッチ8は、例えば2つに分割されている(図6)。分割された各針側シリンジ内ラッチ8は針側シリンジ外ラッチ7に向けて斜めに形成されている。このため、シリンジ部2に対してキャップ4を捻り、図5に2点鎖線で示すように、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8との間にキャップラッチ5を挟み込むことでキャップ4を固定することができる。この状態から、キャップ4を反対方向に捻ることで、各ラッチ7,8の間からキャップラッチ5を引き抜いてキャップ4の固定を解除できる。
【0025】
なお、キャップ4の固定を解除する方向にキャップ4を捻ると、キャップラッチ5は分割された針側シリンジ内ラッチ8の端面に当接する。この位置ではキャップラッチ5は切り欠き9に対向しており、そのままキャップ4をシリンジ部2から引き抜いて取り外すことができる。
【0026】
キャップラッチ5の針側シリンジ内ラッチ8側の側面5aは、図5に示すように傾斜しており、キャップラッチ5は針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に食い込むくさび形状を成している。
【0027】
第2の係止手段17は、キャップラッチ5と、シリンジ部2の外周面に設けられたピストン側シリンジ外ラッチ10及びピストン側シリンジ内ラッチ11より構成されている。即ち、キャップラッチ5は第1の係止手段6と第2の係止手段17との共有である。ピストン側シリンジ内ラッチ11の高さは、ピストン側シリンジ外ラッチ10の高さよりも若干低くなっている。このため、キャップラッチ5はピストン側シリンジ外ラッチ10を乗り越えて移動することはできないが、ピストン側内ラッチを乗り越えて移動することは可能である。各ラッチ10、11の注射器1の長手方向に沿う断面形状は、例えば三角形状を成している。ただし、各ラッチ10、11の形状はこれに限るものではなく、例えば四角形や半円形等でも良い。
【0028】
ピストン側シリンジ外ラッチ10及びピストン側シリンジ内ラッチ11は、円周方向に沿って形成された凸部である。図7にピストン側シリンジ外ラッチ10を示す。ピストン側シリンジ内ラッチ11も高さを除いて同様の形状である。また、図8に、ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11を平面的に展開して示す。ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11の間隔は一定である。
【0029】
キャップ4は、注射器1の製造時にシリンジ部2に取り付けられる。即ち、製造ラインにおいて、シリンジ部2にキャップ4が装着される。このとき、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7の切り欠き9に通すことで、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に移動させることができる。そして、キャップ4を捻り、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間隔の狭い部分にキャップラッチ5を挟み込むことで、キャップ4をシリンジ部2に固定することができる。キャップ4をシリンジ部2に固定しているので、キャップ4を意図的に動かさなければ注射針3が露出することはない。
【0030】
医療現場で注射器1を使用するためにキャップ4を外す場合には、キャップ4を注射器1の後側に向けて移動させれば良い。換言すると、キャップ4をより深く装着する方向に移動させれば良い。例えば、キャップ4のフランジ4bとシリンジ部2のフランジ2aとを一緒に片手で挟み、握力を利用してキャップ4のフランジ4bをシリンジ部2のフランジ2aに引き寄せるようにしてキャップ4を移動させる。キャップラッチ5が針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて移動する。そして、キャップラッチ5がピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えてピストン側シリンジ外ラッチ10に当たるまでキャップ4を移動させる。各ラッチ5,8,11の高さを適切に設計しておくことでラッチ5のラッチ8,11の乗り越えが適切になされ、キャップ4を片手で素早く移動させることができる。キャップ4の移動に伴って小孔4aから注射針3が突出するので、注射器1の使用が可能になる。
【0031】
ピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えたキャップラッチ5は当該ピストン側シリンジ内ラッチ11とピストン側シリンジ外ラッチ10との間で保持されるので、キャップ4が位置保持される。したがって、注射器1の使用時にキャップ4がずれて邪魔になることはなく、通常の注射器1と同様に使用できる。
【0032】
なお、薬剤瓶等から薬剤を直接吸入する場合には、キャップ装着状態のままでキャップ4の先端4cを薬剤瓶等の口蓋に押し付け、キャップ4を移動させながら注射針3を口蓋に刺し込むようにしても良い。
【0033】
注射器1を使用した後、注射針3を収納するには、キャップ4を注射器1の先端側に向けて移動させれば良い。換言すると、キャップ4をその装着が浅くなる方向に移動させれば良い。例えば、シリンジ部2のフランジ2a付近を親指と人差し指の付け根部分で握り、親指と人差し指の指先でキャップ4のフランジ4bを押し出すようにしてキャップ4を移動させる。キャップラッチ5がピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えて移動する。そして、キャップラッチ5が針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて針側シリンジ外ラッチ7に当たるまでキャップ4を移動させる。各ラッチ5,8,11の高さを適切に設計しておくことでラッチ5のラッチ11,8の乗り越えが適切になされ、キャップ4を片手で素早く移動させることができる。キャップ4の移動に伴って小孔4aから突出していた注射針3が引っ込みキャップ4内に収納される。そして、キャップ4を捻り、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に挟み込むことで、注射針3を収納した状態でキャップ4を固定することができる。
【0034】
本発明のキャップ4は、使い捨ての注射器1にも、繰り返し使用する注射器1にも適用することができる。そして、使い捨ての注射器1に適用する場合、注射器1と一緒にキャップ4も使い捨てにしても良いが、使い捨てにせずに繰り返し使用しても良い。また、繰り返し使用する注射器1に適用する場合、注射器1と一緒にキャップ4も繰り返し使用しても良いが、使い捨てにしても良い。
【0035】
このように、本発明のキャップ4を着脱(注射針3の露出と収納)させる方向は、従来のキャップの着脱方向とは逆方向である。このため、注射針3の先端に手指を近づけることなく着脱を行うことができる。即ち、本発明のキャップ4は従来のキャップとは全く別の発想で着脱を行うものである。このため、使用済みの注射針3を誤って手指に刺してしまうことを完全に防止することができ、安全性をより一層向上させることができる。
【0036】
また、キャップ4の着脱の操作は片手で素早く行うことができる簡単なものである。
【0037】
また、キャップ4をシリンジ部2から外して分離することがないので、キャップ4の紛失を防止することができると共に、外したキャップ4の管理に気を取られることがなく、注射行為に集中することができる。
【0038】
また、本発明の注射器1は部品点数を増加させるものではないので、製造コストの増加を抑えることができる。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の説明では、第1の係止手段6と第2の係止手段17を備えていたが、これらの両方又はいずれか一方を省略しても良い。この場合、キャップ4とシリンジ部2との間に生じる摩擦力によって意図的に移動させる場合以外のキャップ4の移動を防止することが考えられる。また、キャップ4の先端4cの内面をシリンジ部2の先端に度当たりさせることで、第2の係止手段17のピストン側シリンジ外ラッチ10を不要にしても良い。
【0040】
また、上述の説明では、キャップ4を樹脂製にしていたが、キャップ4の材料は樹脂に限るものではなく、例えばガラス等でも良い。
【0041】
また、第2の係止手段17をキャップ4の固定が可能な構造にしても良い。例えば、ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11の間隔を部分的に狭くし、キャップ4を捻ることでキャップラッチ5を各ラッチ10,11の間隔の狭い部分に挟み込んでキャップ4を固定するようにしても良い。この場合、例えば各ラッチ10,11のいずれか一方を、上述の針側シリンジ内ラッチ8のように分割して斜めに形成することが考えられる。注射を行う場合、キャップ4ごとシリンジ部2を掴むことが考えられるが、第2の係止手段17によってキャップ4を固定することでキャップ4のぐら付きを防止することができる。特に、キャップ4をガラス製にした場合等にはキャップ4を径方向に潰してシリンジ部2を掴むことが難しいので、キャップ4を固定してぐら付きを防止することが好ましい。
【0042】
また、キャップ4の小孔4aをシール等で塞いでおき、注射を行う時にシール等を剥がすようにしても良い。また、注射を行った後、注射針3を収納してからキャップ4の小孔4aをシール等で塞ぐようにしても良い。
【0043】
また、注射器を使用しない注射針に適用しても良い。注射器を使用しない注射針として、例えば点滴用の注射針に適用した例を図9に示す。点滴用の注射針13は、筒部2の先端に注射針3が取り付けられ、後端には図示しないチューブが接続されている。この場合にも、筒部2に対してキャップ4をその装着を深くする方向に移動させることで、図9(b)に示すようにキャップ4の小孔4aから注射針3を突出させることができると共に、この状態からキャップ4をその装着を浅くする方向に移動させることで、図9(a)に示すようにキャップ4内に注射針3を収納することができる。なお、注射時には、筒体2とキャップ4を絆創膏12を使用して人体に固定する。点滴用の注射針13のキャップ4においても、図1のキャップ4と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、注射器を使用しない注射針として、例えば翼付静注針に適用した例を図10に示す。翼付静注針14の筒部2である針固定部(以下、針固定部2という)の先端には注射針3が取り付けられ、後端には図示しないチューブが接続されている。キャップ4には翼部15を通すスリット16が形成されている。針固定部2に対してキャップ4をその装着を深くする方向に移動させることで、図10(b)に示すようにキャップ4の小孔4aから注射針3を突出させることができると共に、この状態からキャップ4をその装着を浅くする方向に移動させることで、図10(a)に示すようにキャップ4内に注射針3を収納することができる。翼付静注針14のキャップ4においても、図1のキャップ4と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上述の説明では、キャップ4を透明又は半透明にしていたが、必ずしも透明でなくても良い。例えば注射器1に適用する場合には、キャップ4が透明でなくても、例えばスリット、孔等を設けておくことでシリンジ部2に付されている目盛りを読み取ることができるときには、キャップ4は透明又は半透明でなくても良い。また、例えば点滴用の注射針13や翼付静注針14に適用する場合等、筒部2の目盛りを読み取る必要がない場合には、キャップ4を透明又は半透明にしなくても良い。なお、キャップ4が透明又は半透明でなくても良い場合には、キャップ4の材料は、例えば金属等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の注射針用キャップの第1の実施形態を示し、注射針を収納した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図2】本発明の注射針用キャップの第1の実施形態を示し、注射針を露出した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図3】図1のキャップラッチを示す断面図である。
【図4】図1の針側シリンジ外ラッチを示す断面図である。
【図5】図1の針側シリンジ外ラッチと針側シリンジ内ラッチとを展開して示す平面図である。
【図6】図1の針側シリンジ内ラッチを示す断面図である。
【図7】図1のピストン側シリンジ外ラッチを示す断面図である。
【図8】図1のピストン側シリンジ外ラッチとピストン側シリンジ内ラッチとを展開して示す平面図である。
【図9】本発明の注射針用キャップの第2の実施形態を示し、(a)は点滴用の注射針を収納した状態を一部断面にして示す側面図、(b)は点滴用の注射針を露出させた状態を一部断面にして示す側面図である。
【図10】本発明の注射針用キャップの第3の実施形態を示し、(a)は翼付静注針を収納した状態を一部断面にして示す側面図、(b)は翼付静注針を露出させた状態を一部断面にして示す側面図である。
【図11】従来の注射針用キャップを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
2 シリンジ部(筒部)
3 注射針
4 キャップ
4a 小孔
4c 先端
5,7,8,10,11 ラッチ
6 第1の係止手段
17 第2の係止手段
L 筒部の軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を保護する注射針用キャップに関する。さらに詳しくは、本発明は注射針を取り付けた筒部への装着の仕方を改良した注射針用キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
注射器の注射針を保護するキャップは、シリンジ部に嵌め込む部分(基端部分)の直径を最大にし、先端部分に向かって細くなる略円錐形状を成している。このキャップは、注射針を覆うようにシリンジ部の先端に嵌め込んで装着されていた。そして、キャップを外す場合には、キャップをシリンジ部から引き抜くようにしていた。
【0003】
ところで、注射器の使用後にキャップを装着する際、医療従事者が誤って使用後の注射針で手指を刺してしまうことがないように種々の提案がなされている。例えば、特開平9−253206号公報に開示されている注射針用キャップを図11に示す。注射針用キャップ101の側面に隙間102を設け、注射針103をその隙間102から注射針用キャップ101の中に収納できるようにしている。かかる構成の注射針用キャップ101によれば、注射針103の先端を注射針用キャップ101を保持する手指に向けることがないので、医療従事者が誤って使用後の注射針103で指を刺してしまうことを防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−253206号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の注射針用キャップ101は注射器の使用時に注射器本体から外して分離するものであるため、キャップ装着時に注射針103の先端を手指に向けることはないとしても、外したキャップ101を装着する動作自体は必要である。また、キャップ101の取り外しや装着を片手で素早く行うのは困難である。また、外したキャップ101を床に落としたり紛失しないように気を付ける必要がある。さらに、キャップ装着時に注射針103の先端を手指に向けることはなくても、注射針103の先端に手指を近づける必要はある。
【0006】
本発明は、注射針の先端に手指を近づけずに装着できる注射針用キャップを提供することを目的とする。また、本発明は、脱着の動作が簡単で、しかも紛失することがない注射針用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、筒部の先端に取り付けられた注射針を保護する注射針用キャップにおいて、筒部の外周面にその軸線方向に移動可能に装着すると共に、先端に注射針を突出させる小孔を設け、筒部の後側に向けて移動させることで小孔から注射針を突出させると共に、筒部の先端側に向けて移動させることで注射針を収納するものである。
【0008】
したがって、筒部に対して注射針用キャップをその軸線方向に移動させることで、注射針を露出させたり収納したりできる。このため、注射針の先端に手指を近づける動作がなくなる。また、キャップを筒部から分離することがない。
【0009】
また、請求項2記載の注射針用キャップは、注射針を収納した状態で筒部に係止する第1の係止手段を備えるものである。したがって、外力を受けて注射針用キャップが動き、使用時以外に注射針が露出するのを防止することができる。
【0010】
また、請求項3記載の注射針用キャップは、第1の係止手段が、筒部からの外れを防止するストッパを備えるものである。したがって、注射針用キャップが筒部から外れるのを防止することができる。
【0011】
また、請求項4記載の注射針用キャップは、注射針を突出させた状態で筒部に係止する第2の係止手段を備えるものである。したがって、注射の最中に外力を受けてキャップが動くのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
しかして、請求項1記載の注射針用キャップでは、上述のように構成しているので、注射針を収納する際、注射針の先端に手指を近づけるような動作をしなくてすむ。このため、使用済みの注射針を誤って手指に刺してしまうことを完全に防止することができ、安全性をより一層向上させることができる。また、筒部に対して注射針用キャップを移動させるだけで注射針を露出させ又は収納することができるので、その操作が簡単であり、片手操作も容易である。また、注射針用キャップを筒部から分離しないので、キャップを紛失することがない。さらに、手指の保護のために別部品を追加するものではないので、部品点数の増加を抑えることができ、製造コストの増加を抑えることができる。
【0013】
また、請求項2記載の注射針用キャップでは、注射針を収納した状態で筒部に係止する第1の係止手段を備えているので、外力を受けて注射針用キャップが動き、使用時以外に注射針が露出するのを防止することができる。このため、安全性をより一層向上させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の注射針用キャップでは、第1の係止手段が筒部からの外れを防止するストッパを備えているので、注射針用キャップが筒部から外れるのを防止することができる。このため、安全性をより一層向上させることができる。
【0015】
さらに、請求項4記載の注射針用キャップでは、注射針を突出させた状態で筒部に係止する第2の係止手段を備えているので、注射の最中に外力を受けて注射針用キャップが動くのを防止することができる。このため、注射行為の妨げになるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2に、本発明を適用した注射針用キャップの実施形態の一例を示す。注射針用キャップ4は、例えば注射器1の筒部2であるシリンジ部(以下、シリンジ部2という)の先端に取り付けられた注射針3を保護するものである。注射針用キャップ4は、シリンジ部2の外周面にその軸線L方向に移動可能に装着される共に、先端4cに注射針3を突出させる小孔4aを設け、シリンジ部2の後側に向けて移動させることで小孔4aから注射針3を突出させる(図2)と共に、シリンジ部2の先端側に向けて移動させることで注射針3を収納する(図1)ものである。
【0018】
注射針用キャップ(以下、単にキャップという)4は、例えば円筒形状を成しており、シリンジ部2の長さよりも若干短くなっている。キャップ4の基端には指をかけるフランジ4bが設けられている。キャップ4は、例えば樹脂製のもので、透明又は半透明になっている。キャップ4を透明又は半透明にすることで、キャップ4をシリンジ部2の後側に向けて移動させて注射針3を露出させた状態でも、シリンジ部2に付された目盛りを読み取ることができる。
【0019】
キャップ4の先端4cに設けられた小孔4aの直径は、注射針3の直径よりも若干大きくなっている。ただし、様々な種類の注射針3に対応できるように、使用する可能性のある注射針3のうち最も太いものにあわせて小孔4aの直径を決定しても良い。このようにすることで、キャップ4の汎用性を向上させることができる。また、キャップ4の長さは、注射針3の長さよりも若干長くなっている。ただし、様々な種類の注射針3に対応できるように、使用する可能性のある注射針3のうち最も長いものにあわせてキャップ4の長さを決定しても良い。このようにすることで、キャップ4の汎用性を向上させることができる。
【0020】
キャップ4は、ある程度の弾性を有している。このため、注射を行う場合、キャップ4を径方向に潰しながらシリンジ部2を握ることができる。ただし、キャップ4は細長い円筒形状を成しているため長手方向には十分な強度を有しており潰れ難い。このため、注射針3を収納している状態ではキャップ4が潰れて注射針3を露出させることはなく、注射針3をしっかりと覆うことができて安全である。
【0021】
本実施形態のキャップ4は、注射針3を収納した状態でシリンジ部2に係止する第1の係止手段6と、注射針3を突出させた状態でシリンジ部2に係止する第2の係止手段17を備えている。
【0022】
第1の係止手段6は、キャップ4の内周面に設けられたキャップラッチ5と、シリンジ部2の外周面に設けられた針側シリンジ外ラッチ7及び針側シリンジ内ラッチ8より構成されている。針側シリンジ外ラッチ7は、シリンジ部2からの外れを防止するストッパでもある。針側シリンジ内ラッチ8の高さは、針側シリンジ外ラッチ7の高さよりも若干低くなっている。このため、キャップラッチ5は針側シリンジ外ラッチ7を乗り越えて移動することはできないが、針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて移動することは可能である。各ラッチ5,7,8の注射器1の長手方向に沿う断面は、例えば三角形状を成している。ただし、各ラッチ5,7,8の形状はこれに限るものではなく、例えば四角形や半円形等でも良い。
【0023】
キャップラッチ5は、例えば図3に示すように、同一直径上の2箇所に設けられている。針側シリンジ外ラッチ7は、円周方向に沿って形成された凸部で、例えば図4に示すように、同一直径上の2箇所に切り欠き9が設けられている。キャップラッチ5は、切り欠き9を通ることで針側シリンジ外ラッチ7を通り抜けることができる(図5の矢印A)。
【0024】
針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間隔は、部分的に狭くなっている。図5に、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8を平面的に展開して示す。針側シリンジ内ラッチ8は、例えば2つに分割されている(図6)。分割された各針側シリンジ内ラッチ8は針側シリンジ外ラッチ7に向けて斜めに形成されている。このため、シリンジ部2に対してキャップ4を捻り、図5に2点鎖線で示すように、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8との間にキャップラッチ5を挟み込むことでキャップ4を固定することができる。この状態から、キャップ4を反対方向に捻ることで、各ラッチ7,8の間からキャップラッチ5を引き抜いてキャップ4の固定を解除できる。
【0025】
なお、キャップ4の固定を解除する方向にキャップ4を捻ると、キャップラッチ5は分割された針側シリンジ内ラッチ8の端面に当接する。この位置ではキャップラッチ5は切り欠き9に対向しており、そのままキャップ4をシリンジ部2から引き抜いて取り外すことができる。
【0026】
キャップラッチ5の針側シリンジ内ラッチ8側の側面5aは、図5に示すように傾斜しており、キャップラッチ5は針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に食い込むくさび形状を成している。
【0027】
第2の係止手段17は、キャップラッチ5と、シリンジ部2の外周面に設けられたピストン側シリンジ外ラッチ10及びピストン側シリンジ内ラッチ11より構成されている。即ち、キャップラッチ5は第1の係止手段6と第2の係止手段17との共有である。ピストン側シリンジ内ラッチ11の高さは、ピストン側シリンジ外ラッチ10の高さよりも若干低くなっている。このため、キャップラッチ5はピストン側シリンジ外ラッチ10を乗り越えて移動することはできないが、ピストン側内ラッチを乗り越えて移動することは可能である。各ラッチ10、11の注射器1の長手方向に沿う断面形状は、例えば三角形状を成している。ただし、各ラッチ10、11の形状はこれに限るものではなく、例えば四角形や半円形等でも良い。
【0028】
ピストン側シリンジ外ラッチ10及びピストン側シリンジ内ラッチ11は、円周方向に沿って形成された凸部である。図7にピストン側シリンジ外ラッチ10を示す。ピストン側シリンジ内ラッチ11も高さを除いて同様の形状である。また、図8に、ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11を平面的に展開して示す。ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11の間隔は一定である。
【0029】
キャップ4は、注射器1の製造時にシリンジ部2に取り付けられる。即ち、製造ラインにおいて、シリンジ部2にキャップ4が装着される。このとき、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7の切り欠き9に通すことで、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に移動させることができる。そして、キャップ4を捻り、針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間隔の狭い部分にキャップラッチ5を挟み込むことで、キャップ4をシリンジ部2に固定することができる。キャップ4をシリンジ部2に固定しているので、キャップ4を意図的に動かさなければ注射針3が露出することはない。
【0030】
医療現場で注射器1を使用するためにキャップ4を外す場合には、キャップ4を注射器1の後側に向けて移動させれば良い。換言すると、キャップ4をより深く装着する方向に移動させれば良い。例えば、キャップ4のフランジ4bとシリンジ部2のフランジ2aとを一緒に片手で挟み、握力を利用してキャップ4のフランジ4bをシリンジ部2のフランジ2aに引き寄せるようにしてキャップ4を移動させる。キャップラッチ5が針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて移動する。そして、キャップラッチ5がピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えてピストン側シリンジ外ラッチ10に当たるまでキャップ4を移動させる。各ラッチ5,8,11の高さを適切に設計しておくことでラッチ5のラッチ8,11の乗り越えが適切になされ、キャップ4を片手で素早く移動させることができる。キャップ4の移動に伴って小孔4aから注射針3が突出するので、注射器1の使用が可能になる。
【0031】
ピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えたキャップラッチ5は当該ピストン側シリンジ内ラッチ11とピストン側シリンジ外ラッチ10との間で保持されるので、キャップ4が位置保持される。したがって、注射器1の使用時にキャップ4がずれて邪魔になることはなく、通常の注射器1と同様に使用できる。
【0032】
なお、薬剤瓶等から薬剤を直接吸入する場合には、キャップ装着状態のままでキャップ4の先端4cを薬剤瓶等の口蓋に押し付け、キャップ4を移動させながら注射針3を口蓋に刺し込むようにしても良い。
【0033】
注射器1を使用した後、注射針3を収納するには、キャップ4を注射器1の先端側に向けて移動させれば良い。換言すると、キャップ4をその装着が浅くなる方向に移動させれば良い。例えば、シリンジ部2のフランジ2a付近を親指と人差し指の付け根部分で握り、親指と人差し指の指先でキャップ4のフランジ4bを押し出すようにしてキャップ4を移動させる。キャップラッチ5がピストン側シリンジ内ラッチ11を乗り越えて移動する。そして、キャップラッチ5が針側シリンジ内ラッチ8を乗り越えて針側シリンジ外ラッチ7に当たるまでキャップ4を移動させる。各ラッチ5,8,11の高さを適切に設計しておくことでラッチ5のラッチ11,8の乗り越えが適切になされ、キャップ4を片手で素早く移動させることができる。キャップ4の移動に伴って小孔4aから突出していた注射針3が引っ込みキャップ4内に収納される。そして、キャップ4を捻り、キャップラッチ5を針側シリンジ外ラッチ7と針側シリンジ内ラッチ8の間に挟み込むことで、注射針3を収納した状態でキャップ4を固定することができる。
【0034】
本発明のキャップ4は、使い捨ての注射器1にも、繰り返し使用する注射器1にも適用することができる。そして、使い捨ての注射器1に適用する場合、注射器1と一緒にキャップ4も使い捨てにしても良いが、使い捨てにせずに繰り返し使用しても良い。また、繰り返し使用する注射器1に適用する場合、注射器1と一緒にキャップ4も繰り返し使用しても良いが、使い捨てにしても良い。
【0035】
このように、本発明のキャップ4を着脱(注射針3の露出と収納)させる方向は、従来のキャップの着脱方向とは逆方向である。このため、注射針3の先端に手指を近づけることなく着脱を行うことができる。即ち、本発明のキャップ4は従来のキャップとは全く別の発想で着脱を行うものである。このため、使用済みの注射針3を誤って手指に刺してしまうことを完全に防止することができ、安全性をより一層向上させることができる。
【0036】
また、キャップ4の着脱の操作は片手で素早く行うことができる簡単なものである。
【0037】
また、キャップ4をシリンジ部2から外して分離することがないので、キャップ4の紛失を防止することができると共に、外したキャップ4の管理に気を取られることがなく、注射行為に集中することができる。
【0038】
また、本発明の注射器1は部品点数を増加させるものではないので、製造コストの増加を抑えることができる。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の説明では、第1の係止手段6と第2の係止手段17を備えていたが、これらの両方又はいずれか一方を省略しても良い。この場合、キャップ4とシリンジ部2との間に生じる摩擦力によって意図的に移動させる場合以外のキャップ4の移動を防止することが考えられる。また、キャップ4の先端4cの内面をシリンジ部2の先端に度当たりさせることで、第2の係止手段17のピストン側シリンジ外ラッチ10を不要にしても良い。
【0040】
また、上述の説明では、キャップ4を樹脂製にしていたが、キャップ4の材料は樹脂に限るものではなく、例えばガラス等でも良い。
【0041】
また、第2の係止手段17をキャップ4の固定が可能な構造にしても良い。例えば、ピストン側シリンジ外ラッチ10とピストン側シリンジ内ラッチ11の間隔を部分的に狭くし、キャップ4を捻ることでキャップラッチ5を各ラッチ10,11の間隔の狭い部分に挟み込んでキャップ4を固定するようにしても良い。この場合、例えば各ラッチ10,11のいずれか一方を、上述の針側シリンジ内ラッチ8のように分割して斜めに形成することが考えられる。注射を行う場合、キャップ4ごとシリンジ部2を掴むことが考えられるが、第2の係止手段17によってキャップ4を固定することでキャップ4のぐら付きを防止することができる。特に、キャップ4をガラス製にした場合等にはキャップ4を径方向に潰してシリンジ部2を掴むことが難しいので、キャップ4を固定してぐら付きを防止することが好ましい。
【0042】
また、キャップ4の小孔4aをシール等で塞いでおき、注射を行う時にシール等を剥がすようにしても良い。また、注射を行った後、注射針3を収納してからキャップ4の小孔4aをシール等で塞ぐようにしても良い。
【0043】
また、注射器を使用しない注射針に適用しても良い。注射器を使用しない注射針として、例えば点滴用の注射針に適用した例を図9に示す。点滴用の注射針13は、筒部2の先端に注射針3が取り付けられ、後端には図示しないチューブが接続されている。この場合にも、筒部2に対してキャップ4をその装着を深くする方向に移動させることで、図9(b)に示すようにキャップ4の小孔4aから注射針3を突出させることができると共に、この状態からキャップ4をその装着を浅くする方向に移動させることで、図9(a)に示すようにキャップ4内に注射針3を収納することができる。なお、注射時には、筒体2とキャップ4を絆創膏12を使用して人体に固定する。点滴用の注射針13のキャップ4においても、図1のキャップ4と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、注射器を使用しない注射針として、例えば翼付静注針に適用した例を図10に示す。翼付静注針14の筒部2である針固定部(以下、針固定部2という)の先端には注射針3が取り付けられ、後端には図示しないチューブが接続されている。キャップ4には翼部15を通すスリット16が形成されている。針固定部2に対してキャップ4をその装着を深くする方向に移動させることで、図10(b)に示すようにキャップ4の小孔4aから注射針3を突出させることができると共に、この状態からキャップ4をその装着を浅くする方向に移動させることで、図10(a)に示すようにキャップ4内に注射針3を収納することができる。翼付静注針14のキャップ4においても、図1のキャップ4と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上述の説明では、キャップ4を透明又は半透明にしていたが、必ずしも透明でなくても良い。例えば注射器1に適用する場合には、キャップ4が透明でなくても、例えばスリット、孔等を設けておくことでシリンジ部2に付されている目盛りを読み取ることができるときには、キャップ4は透明又は半透明でなくても良い。また、例えば点滴用の注射針13や翼付静注針14に適用する場合等、筒部2の目盛りを読み取る必要がない場合には、キャップ4を透明又は半透明にしなくても良い。なお、キャップ4が透明又は半透明でなくても良い場合には、キャップ4の材料は、例えば金属等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の注射針用キャップの第1の実施形態を示し、注射針を収納した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図2】本発明の注射針用キャップの第1の実施形態を示し、注射針を露出した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図3】図1のキャップラッチを示す断面図である。
【図4】図1の針側シリンジ外ラッチを示す断面図である。
【図5】図1の針側シリンジ外ラッチと針側シリンジ内ラッチとを展開して示す平面図である。
【図6】図1の針側シリンジ内ラッチを示す断面図である。
【図7】図1のピストン側シリンジ外ラッチを示す断面図である。
【図8】図1のピストン側シリンジ外ラッチとピストン側シリンジ内ラッチとを展開して示す平面図である。
【図9】本発明の注射針用キャップの第2の実施形態を示し、(a)は点滴用の注射針を収納した状態を一部断面にして示す側面図、(b)は点滴用の注射針を露出させた状態を一部断面にして示す側面図である。
【図10】本発明の注射針用キャップの第3の実施形態を示し、(a)は翼付静注針を収納した状態を一部断面にして示す側面図、(b)は翼付静注針を露出させた状態を一部断面にして示す側面図である。
【図11】従来の注射針用キャップを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
2 シリンジ部(筒部)
3 注射針
4 キャップ
4a 小孔
4c 先端
5,7,8,10,11 ラッチ
6 第1の係止手段
17 第2の係止手段
L 筒部の軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部の先端に取り付けられた注射針を保護する注射針用キャップにおいて、前記筒部の外周面にその軸線方向に移動可能に装着すると共に、先端に前記注射針を突出させる小孔を設け、前記筒部の後側に向けて移動させることで前記小孔から前記注射針を突出させると共に、前記筒部の先端側に向けて移動させることで前記注射針を収納することを特徴とする注射針用キャップ。
【請求項2】
前記注射針を収納した状態で前記筒部に係止する第1の係止手段を備えることを特徴とする請求項1記載の注射針用キャップ。
【請求項3】
前記第1の係止手段は、前記筒部からの外れを防止するストッパを備えることを特徴とする請求項2記載の注射針用キャップ。
【請求項4】
前記注射針を突出させた状態で前記筒部に係止する第2の係止手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の注射針用キャップ。
【請求項1】
筒部の先端に取り付けられた注射針を保護する注射針用キャップにおいて、前記筒部の外周面にその軸線方向に移動可能に装着すると共に、先端に前記注射針を突出させる小孔を設け、前記筒部の後側に向けて移動させることで前記小孔から前記注射針を突出させると共に、前記筒部の先端側に向けて移動させることで前記注射針を収納することを特徴とする注射針用キャップ。
【請求項2】
前記注射針を収納した状態で前記筒部に係止する第1の係止手段を備えることを特徴とする請求項1記載の注射針用キャップ。
【請求項3】
前記第1の係止手段は、前記筒部からの外れを防止するストッパを備えることを特徴とする請求項2記載の注射針用キャップ。
【請求項4】
前記注射針を突出させた状態で前記筒部に係止する第2の係止手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の注射針用キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−43327(P2006−43327A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232239(P2004−232239)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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