説明

注意喚起システム、喚起情報提供方法、コンピュータプログラム

【課題】電車の出発予定時刻前に出力する喚起情報を、運行時間に影響を与える遅延事由の発生状況に応じて前倒しできるようにする。
【解決手段】遅延事由毎の前倒し時間、経路探索条件、出発予定時刻、喚起時刻並びに探索開始時刻を登録DBM1に登録しておく。主制御部11は、探索開始時刻に達すると、気象情報提供システム30等から運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が、登録された遅延事由と適合するときは、登録された出発予定時刻に出発すれば目的地に到着するはずの時刻よりも前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を経路探索システム20に探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と登録されている出発予定時刻との時間差を超える時間だけ、登録された注意喚起時刻よりも早めた時刻に所定の注意喚起情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車、バス等の交通機関の運行情報を利用して、出発地から目的地までの最適経路の探索を行うとともに、運行遅延事由が生じた場合であっても、ユーザが到着予定時刻までに目的地に確実に到着できるようにするため、そのユーザ宛に、適切な出発予定時刻での出発を促すための喚起情報を出力する注意喚起システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天候、道路交通情報等に応じ、起床のアラーム発出時刻を変動させる目覚ましシステムが知られている。例えば、天候、道路交通情報等の情報を取得して、これらの情報に基づいてアラームを作動させるのに最適な時刻の計算を行い、インターネット等を介してアラーム作動を遠隔制御する目覚ましシステムがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−294236
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の目覚ましシステムは、天候、道路交通情報等に応じて、アラーム作動時刻を変動させることにより、目的地へ到着予定時刻に遅刻することのないよう、ユーザに適切な起床時刻に起床するよう促す点で便利である。
しかしながら、アラーム作動時刻の計算の基礎となる目的地までの経路は、予め登録された特定の経路(標準経路又は振替経路)に限定されるため、運行遅延事由によっては、必ずしも、その時刻における最適経路になるとは限らないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解消し、運行遅延事由に応じた最適のタイミングで喚起情報を出力することができる注意喚起システム、喚起情報提供方法、及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の注意喚起情報提供システムは、出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索システム、及び、運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段と、運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を記憶する記憶手段と、現在時刻を計測する時計機構と、前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索システムに探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を出力する制御手段と、を有する注意喚起システムである。
【0006】
本発明の他の注意喚起情報提供システムは、ユーザが操作するユーザ端末及び運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段と、運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を記憶する記憶手段と、現在時刻を計測する時計機構と、出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索手段と、前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索手段に探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を前記ユーザ端末に向けて出力する制御手段と、を有する注意喚起システムである。
【0007】
本発明の喚起情報提供方法は、交通機関の出発予定時刻よりも早く到達する喚起時刻に喚起情報を出力するユーザ端末に対して前記喚起情報を提供する方法であって、運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、前記交通機関の出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を所定の記憶装置に記憶させる段階と、前記探索開始時刻に達したときに、外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を所定の経路探索手段で探索し、これにより得られた探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に、前記ユーザ端末に向けて前記喚起情報を提供する段階とを有する喚起情報提供方法である。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムは、記憶装置が接続されたコンピュータを、上述した注意喚起システムとして動作させるための第1のコンピュータプログラムと、上述した他の注意喚起システムとして動作させるための第2のコンピュータプログラムである。
第1のコンピュータプログラムは、コンピュータを、前記注意喚起システムの前記通信手段、前記記憶手段、前記時計機構、及び前記制御手段として機能させるコンピュータプログラムである。
第2のコンピュータプログラムは、コンピュータを、前記他の注意喚起システムの前記通信手段、前記記憶手段、前記時計機構、前記経路探索手段、及び前記制御手段として機能させるコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運行遅延事由に応じて喚起情報の出力時期を前倒しするので、ユーザは、運行遅延事由が生じても、それが生じなかった場合の到着予定時刻までに確実に到着できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の注意喚起システムは、種々の態様で実施することができる。
図1は、本発明を、ユーザが保有するネットワーク型の注意喚起システムとして実施する場合の全体構成図である。この実施形態の注意喚起システム10は、電車、バス、航空機等の交通機関の最適経路の探索を行う経路探索システム20、気象情報を提供する気象情報提供システム30、運行障害情報を提供する運行障害提供システム40と、インターネット等の通信回線N1を介して接続されて構成される。
【0011】
まず、注意喚起システム10に接続される外部システムについて説明する。
[経路探索システム]
経路探索システム20は、Webサーバを基本構成としており、注意喚起システム10との間で双方向通信を行うデータ通信用インタフェース21、検索条件設定部22、経路探索エンジン23及び運行情報DB(DBはデータベースの略、以下同じ)を備えて構成される。
【0012】
経路探索条件設定部22には、注意喚起システム10から送られた出発地及び目的地のほか、経由地、出発時間、到着時間のいずれか、あるいはこれらの組み合わせをもとに、経路探索エンジン23に、検索条件を設定する。経路探索エンジン23は、設定された検索条件を受け付けると、運行情報DB24に蓄積されている路線・時刻表を含む運行情報をもとに、経路の運行コストが最も小さい次の駅又は停留所の探索処理を、連鎖的に繰り返すことにより、経路探索条件に従う最適経路候補を特定する。そして、特定した最適経路候補をデータ通信用インタフェース21及び通信回線N1を介して注意喚起システム10に返信する。「運行コスト」は通常は運行所要時間を対象とするが、距離、運賃、これらの組み合わせを対象とすることもできる。経路探索エンジン23の基本機能部分は、例えば本出願人が提供している経路探索ソフトウエア「駅すぱあと」(登録商標)のものを使用することができる。
【0013】
[気象情報提供システム]
気象情報提供システム30もまた、Webサーバを基本構成としており、注意喚起システム10との間で双方向通信を行うデータ通信用インタフェース31と、気象情報DB31とを含んで構成される。気象情報DBには、全国各地の現在の天気、天気予報等の気象情報が、その内容を表す記号ないしシンボルと共に記録されており、地名及び時間帯を伴う情報要求を受信したときに、その時間帯及び地名に対応する気象情報を情報要求元(例えば注意喚起システム10)に送信する。音声情報が付加される場合、あるいは、音声情報のみで提供される場合もあり、この場合は、定型の文章で提供される。
【0014】
[運行障害提供システム]
運行障害情報提供システム40は、路線毎の車両故障、事故等の運行障害事由が発生したときに、その内容を表すテキスト情報を、当該事由を表す記号ないしシンボルと共に注意喚起システム10に通知されるようになっている。運行障害事由毎のテキスト情報を蓄積し、注意喚起システム10の方から、その蓄積情報にアクセスするようになっていても良い。音声情報が付加される場合、あるいは、音声情報のみで提供される場合もあり、この場合は、定型の文章で提供される。
【0015】
[注意喚起システム]
次に、本実施形態の注意喚起システム10について、詳細に説明する。
注意喚起システム10は、ユーザが保有するもので、ハードディスク装置等の記憶装置、表示装置、音出力装置及び通信機能を備えたコンピュータと注意喚起処理用プログラムとの協働により実現することができる。本実施形態では、コンピュータのプロセッサが注意喚起用プログラムを実行することにより、記憶装置に登録データベース(データベースを「DB」と略す)M1を構築するとともに、コンピュータを、主制御部11、計時部12、認識処理部13、通信制御部14、入力制御部15、サウンド制御部16、及び、表示制御部17として機能させる。
【0016】
登録DBM1には、前倒し条件テーブルM100、探索条件テーブルM110、設定時刻テーブルM120が格納される。
前倒し条件テーブルM100には、注意を喚起する時刻を早めるための条件、すなわち、前倒し条件に適合するかどうかを判別するための運行遅延事由、及び、運行遅延事由毎にどの位前倒しするかを定める前倒し時間が運行遅延事由の識別情報と共に記録される。探索条件テーブルM110には、ユーザが設定した、経路探索システム20に入力するための経路探索条件が、ユーザの識別情報と共に記録される。
設定時刻テーブルM120には、例えば目的地別に、探索開始時刻、喚起時刻、出発予定時刻、到着予定時刻が記録される。これらの記録内容については、後で詳しく述べる。
【0017】
計時部12は、現在時刻を計測するための時計機構であり、計測した結果を内部バスB1を通じて主制御部11に伝達する。認識処理部13は、入力される情報が音声情報の場合に、その音声情報を例えば自然言語認識ツールにより定型のテキスト情報に変換する。音声情報は、気象情報提供システム30又は運行障害情報提供システム40から送られるものである。テキスト情報が定型文でない場合は、認識処理部13により定型文に変更する。通信制御部14は、経路探索システム20,気象情報提供システム30及び運行障害情報提供システム40との間の通信制御を行う。
【0018】
入力制御部15は、キーボード等の入力装置K1を操作するユーザにより入力されたデータを受け付け、登録すべきものは主制御部11との協働により登録DBM1の各テーブルM100〜M120に登録し、それ以外のものは、主制御部11に伝達するための制御を行う。サウンド制御部16は、主制御部11の指示により、スピーカSP1への音出力制御を行う。表示制御部17は、主制御部11の指示により、表示装置への情報の表示制御を行う。
【0019】
主制御部11は、上述した各機能ブロック11〜17及び登録DBM1への情報の読み書きを統括的に制御するとともに、喚起情報提供処理を実行するための各種制御ないし処理、例えば、時刻監視、メニュー表示、取得情報の認識、前倒し条件設定、時刻等登録、経路探索の指示等を行う。これらの制御ないし処理の手順については、後述する。
【0020】
[動作]
次に、上記のように構成される注意喚起システム10の動作例を説明する。
注意喚起システム10は、サービスを受けたいユーザによる各種条件の登録ないし設定を受け付けた後、現在時刻及び運行遅延事由(前倒し条件に適合する事由)の発生の有無を監視する。前倒し条件に適合する事由を検知しない場合には、ユーザが設定した喚起時刻に制御情報を生成し、他方、前倒し条件に適合する事由を検知した場合は、前倒し条件に従う時刻に制御情報を生成する。そして、この制御情報をもとに、所定の喚起情報を出力するように該当する機能ブロックを制御する。「前倒し条件」とは、ユーザに対して注意を喚起するための喚起情報の出力時刻を早める処理を行うための条件をいう。
【0021】
まず、前倒し条件の設定処理について説明する。この前倒し条件は、システム側で、すべてのユーザに対して共通となるように予め設定しておいても良いが、ここでは、ユーザが、自己の事情に応じて、個別に設定できるものとして説明する。
図2は、前倒し条件設定の処理手順図である。
ユーザにより前倒し条件設定が選択されると、主制御部11は、表示制御部17を制御して、表示装置D1へのメニュー表示を行う(ステップR101)。表示されるのは、地震、大雨・雪、濃霧など、運行時間に遅延を与える天候の種類、事故、車両故障などの自然現象以外の運行遅延事由、及び、各事由毎に設定する前倒し時間の入力画面である。ユーザが入力装置K1を操作して、該当する情報を選択及び入力すると、入力制御部15は、登録DBM1の前倒し条件テーブルM100への登録を行う(ステップR102,R103)。
【0022】
このようにして登録された前倒し条件テーブルM100の内容例を図5に示す。前倒し条件テーブルM100は、自動的に付番されるIDで識別されるフィールドに、遅延事由の種類と、前倒し時間とが登録される。例えば「001」のIDは、天候1(例えば濃霧)について10分の前倒し時間、「002」のIDは、天候2(例えば大雨又は雪)について20分、「003」のIDは、天候3(例えば地震)について30分が設定される。他のIDについても同様となる。
【0023】
次に、時刻等登録処理について説明する。図3は、時刻等登録処理の処理手順図である。
ユーザにより時刻等登録処理が選択されると、主制御部11は、表示制御部17を制御して、表示装置D1へのメニュー表示を行う(ステップR201)。表示されるのは、出発予定時刻からどの位早めに喚起情報を出力して欲しいかを表す喚起時間、出発地(出発駅又は登録した出発地名)、経由地(経由駅又は登録した目的地名)、目的地(目的駅又は登録した目的地名)、出発予定時刻又は到着予定時刻、並びに、これらの条件が1回限りか、毎日繰り返すかどうかの選択画面である。毎日繰り返す場合は、タグ情報を設定する。喚起時間は、例えば出発予定時刻よりも「30分前」というような時間である。
【0024】
ユーザが、入力装置K1を操作して、該当する情報を入力すると、入力制御部15はこれらの情報を受け付け、図示しないキャッシュメモリに一時記憶する(ステップR202)。「出発予定時刻」と「到着予定時刻」については、通常は、「出発予定時刻」のみであるが、到着予定時刻を優先したい場合は、その時刻のみとすることができる。また、出発地と目的地がわかれば、最低限の経路探索は可能なので、経由地は省略されていても良い。
【0025】
ユーザからのこれらの情報をすべて受け付けると、主制御部11は、受け付けた出発地及び目的地(又は経由地)並びに出発予定時刻(又は到着予定時刻)を経路探索システム20に出力して経路探索を実行させる。探索結果を受け取ったときは、表示制御部17を制御して、その探索結果を表示装置に表示させる(ステップR203)。探索結果は複数の経路候補となる。これらの経路候補は、最低コスト(例えば最低所要時間)順に表示され、ユーザによるいずれか一つの選択を待つ(ステップR204:No)。入力装置K1を通じてユーザにより経路候補の一つが選択されると、それを最適経路として扱う(ステップR104:Yes)。そして、最適経路の出発予定時刻及び到着予定時刻を特定するとともに、出発予定時刻に上記の喚起時間を加算して喚起時刻を特定し、さらに、喚起時刻に、前倒し条件テーブルM100に設定されている前倒し時間の最大値に数分間を加算した時間早めることにより、探索開始時刻を算出する(ステップR205)。
【0026】
例えば、10時に到達する予定の最適経路の出発予定時刻が8時30分、喚起時間が30分(つまり喚起時刻は8時00分)で、前倒し時間の最大値が30分である場合に(この時点での時刻は7時30分)、さらに5分を早めた7時25分を探索開始時刻として算出する。複数の経路について前倒しをする場合は、上記の手順を繰り返す。
【0027】
主制御部11は、出発地、経由地、目的地については、これらを探索条件テーブルM110に登録するとともに、探索開始時刻、喚起時刻、出発予定時刻、到着予定時刻については、これらを設定時刻テーブルM120に登録する。
【0028】
このようにして登録された探索条件テーブルM110の内容例を図6、設定時刻テーブルM120の内容例を図7に示す。
図6を参照すると、探索条件テーブルM110には、自動的に付番されるIDで識別されるフィールドに、出発地、経由地及び目的地が登録されている。例えばID「101」のフィールドには、出発地「高円寺」、経由地「新宿」、目的地「三田(東京)」が登録される。出発地「高円寺」は、ID「102」以降にも同様に登録される。なお、経由地は、省略してあっても良い。
【0029】
設定時刻テーブルM120は、出発地別又は目的地別に登録可能である。図7は、目的地別の設定時刻テーブルM120の例である。図示の例では、目的地IDが自動的に付番され、その目的地IDで識別されるフィールドに、探索開始時刻、喚起時刻、出発予定時刻、到着予定時刻が登録される。出発地別に登録する場合は、目的地IDが出発地IDに置き換わる。
【0030】
[喚起情報提供処理]
次に、喚起情報提供処理について説明する。喚起情報提供処理は、前倒し条件テーブルM100、探索条件テーブルM110及び時刻設定テーブルM120に基づいて主制御部11により実行される。
図4は、主制御部11による注意喚起処理の手順説明図である。
主制御部11は、計時部12の計測結果に基づき、設定時刻テーブルM120に登録された探索開始時刻(複数の時刻が登録されているときは最先の時刻)に達したことを検知すると(ステップS101:Yes)、出発地、経由地及び目的地のいずれかが関わる地域について、気象情報提供システム30から気象情報(天候の種類等)を取得するとともに、運行障害情報提供システム40から当該地域における運行障害情報が存在するかどうかを調べる。存在する場合は、その情報を取得する(ステップS102)。取得した気象情報又は運行障害情報が定型文でない場合は、適宜、認識処理部13を起動して、情報内容をテキストの定型文に変換する。
【0031】
主制御部11は、取得した情報が、予め前倒し条件テーブルM100に登録されている条件と適合するかどうかを定型文認識処理により判別する(ステップS103)。適合しない場合は、通常の天候状態で事故等も無いとして、設定時刻テーブルM120に登録された喚起時刻の到達を待つ(ステップS103:No、S104)。他方、取得された情報が、前倒し条件テーブルM100に登録されている条件と適合する場合は、探索条件テーブルM110に登録されている探索条件を経路探索システム20に伝達し、直ちに経路探索を開始させる(ステップS103:Yes、S105)。伝達する探索条件は、複数のものが登録されている場合は、最優先として設定した探索条件であるが、他の探索条件をも含めても良い。
【0032】
探索条件による最適経路の探索結果を取得したときは(ステップS106)、遅くとも、設定時刻テーブルM120に登録されている到着予定時刻から前倒し条件テーブルM100に登録されている前倒し時間(例えば30分)だけ早めた時刻までに到着する経路の出発予定時刻と、探索された現在の最適経路の出発予定時刻との時間差を算出する(ステップS107)。時刻調整の必要があるかどうかを調べ、必要がある場合は、喚起時刻を早める(ステップS108)。
【0033】
例えば、もともと登録している運行経路が、図6のID「101」により識別される、「高円寺」を出発地、「三田(東京都)」を目的地とする運行経路であり、図7に示されるように、登録されている到着予定時刻が10時00分、出発予定時刻が8時30分、喚起時刻が8時00分、7時25分の探索開始時刻に取得した情報が、前倒し条件テーブルM100の「天候3」と適合する場合、前倒し時間は30分である。前倒し時間だけ早めた到着予定時刻は、遅くとも9時30分であるから、それ以前に目的地に到着する複数の経路のうち、到着予定時刻が最も遅い経路、例えば9時28分に到着する予定の経路を特定する。そして、特定した経路の出発予定時刻が、現在、設定時刻テーブルM120に登録されている出発予定時刻(8時30分)よりもどの位早いかを調べる。例えば9時28分に到着する経路の出発予定時刻との時間差が32分であったとすると、登録されている喚起時刻(8時00分)を32分だけ早め、その喚起時刻(7時28分)を一時的に登録する。
【0034】
主制御部11は、早めた喚起時刻(7時28分)に到達したことを検知したときは、スピーカSP1から音による喚起情報(警告音)を鳴動させ、あるいは、表示装置から視覚による喚起情報(メッセージ)を出力させるための制御情報を生成し、この制御情報をサウンド制御部16又は表示制御部17に出力する。
なお、運行障害事由を検知しなかった場合は、もともとの喚起時刻(8時00分)に上記制御情報を生成し、出力する(ステップS111)。
【0035】
これにより、運行遅延事由が生じている場合は、予め登録されている喚起時刻を前倒しして経路探索し、その結果、1本以上早い電車、バス等を利用できる時刻に喚起情報が出力されるので、ユーザは、気象や電車等の運行状況に変化があった場合であっても、予め登録した目的地への到着予定時刻までに、確実に到着することができる。
【0036】
[第2実施形態]
第1実施形態では、ユーザが保有して操作する通信機能付のコンピュータを注意喚起システム10として動作させる場合の例を説明したが、本発明の注意喚起システムは、上述した経路探索システム20の拡張機能として実現することもできる。この場合、ユーザは、喚起情報を出力可能な携帯電話や自己のパーソナルコンピュータ(PC)を保有するだけで足りる。以下、この場合の実施形態例を説明する。
【0037】
図8は、第2実施形態の注意喚起システムの全体構成図である。この注意喚起システム50は、記憶装置を備えたWebサーバが注意喚起用プログラムを読み込んで実行することにより実現される。この実施形態では、Webサーバを主制御部51、計時部52、認識処理部53及びデータ通信用インタフェース54、探索条件設定部55、経路探索エンジン56として動作させるとともに、記憶装置に、登録DBM2と運行情報DBとを構築する。
【0038】
第1実施形態との比較では、計時部52は計時部12、認識処理部53は認識処理部13、探索条件設定部55は探索条件設定部22、経路探索エンジン56は経路探索エンジン23、運行情報DB57は運行情報DB24、登録DBM2は登録DBM1にそれぞれ対応する。つまり、同じ機能を有し、同じ情報を扱う。
【0039】
気象情報提供システム30、運行障害情報提供システム40は、第1実施形態の場合と同じである。通信回線N2は、第1実施形態の通信回線N1に対応する。
【0040】
ユーザが操作するPC60a又は携帯電話60bは、それぞれ、注意喚起システム50との間でデータ通信を行う機能、ブラウザ機能、喚起情報出力機能を備えるものである。これらの機能は、PC60a又は携帯電話60bが標準的に備えているものをそのまま使用することができる。
【0041】
第2実施形態の注意喚起システム50は、データ通信用インタフェース54が、PC60a及び携帯電話60bに、それぞれ、条件等設定用のブラウザ画面を提供し、このブラウザ画面より入力された情報を登録DBM2に登録するとともに、上述した喚起情報をPC60a及び携帯電話60bに出力する。主制御部51は、そのための制御を行う点が第1実施形態の場合と異なる。喚起情報は、携帯電話60bの場合は、付属の警告音又はバイブレーションとすることができる。この喚起情報は、上述した制御情報により生成される。
【0042】
[変形例]
本発明の注意喚起システム10,50において、気象情報提供システム30及び運行障害情報提供システム40で特定される遅延事由が生じている路線を特定できた場合は、喚起時刻に、喚起情報と共にその路線において運行遅延が生じている情報を提供するようにしても良い。このようにすれば、運行遅延事由が生じている情報を提供し、次善策をとる余裕をユーザに与えることができる。
また、当該特定した路線を外した経路探索を行うための探索条件を作成し、これにより、当該路線を迂回する経路の探索により上記の注意喚起処理を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態による注意喚起システムの全体構成図。
【図2】前倒し条件設定処理の手順説明図。
【図3】時刻等登録処理の手順説明図。
【図4】注意喚起処理の手順説明図。
【図5】前倒し条件テーブルの内容例を示す図。
【図6】探索条件テーブルの内容例を示す図。
【図7】設定時刻テーブルの内容例を示す図。
【図8】第2実施形態による注意喚起システムの全体構成図。
【符号の説明】
【0044】
10,50 注意喚起システム
11,51 主制御部
12,52 計時部
13,53 認識処理部
14 通信制御部
15 入力制御部
16 サウンド制御部
17 表示制御部
20 経路探索システム
21,54 データ通信用インタフェース
22,55 探索条件設定部
23,56 経路探索エンジン
24,57 運行情報DB
30 気象情報提供システム
31 データ通信用インタフェース
32 気象情報DB
40 運行障害情報提供システム
60a 携帯電話
60b PC(パーソナルコンピュータ)
B1,B2 内部バス
D1 表示装置
SP1 スピーカ
K1 入力装置
N1,N2 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索システム、及び、運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段と、
運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を記憶する記憶手段と、
現在時刻を計測する時計機構と、
前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索システムに探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を出力する制御手段と、
を有する注意喚起システム。
【請求項2】
ユーザが操作するユーザ端末及び運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段と、
運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を記憶する記憶手段と、
現在時刻を計測する時計機構と、
出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索手段と、
前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索手段に探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を前記ユーザ端末に向けて出力する制御手段と、
を有する注意喚起システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記前倒し時間だけ早めた到着予定時刻以前に目的地に到着する経路が複数存在する場合に、これらの複数の経路のうち、前記到着予定時刻が最も遅くなる経路を前記新たな運行経路として特定する、
請求項1又は2記載の注意喚起システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記喚起情報と共に、遅延事由が生じている路線又は当該路線の迂回経路の情報を提供する、
請求項1又は2記載の注意喚起システム。
【請求項5】
交通機関の出発予定時刻よりも早く到達する喚起時刻に喚起情報を出力するユーザ端末に対して前記喚起情報を提供する方法であって、
運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、前記交通機関の出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を所定の記憶装置に記憶させる段階と、
前記探索開始時刻に達したときに、外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を所定の経路探索手段で探索し、これにより得られた探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に、前記ユーザ端末に向けて前記喚起情報を提供する段階とを有する、
喚起情報提供方法。
【請求項6】
記憶装置が接続されたコンピュータを、
出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索システム、及び、運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段;
運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を前記記憶装置に記憶する記憶手段;
現在時刻を計測する時計機構;
前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索システムに探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を出力する制御手段;
として機能させるコンピュータプログラム。
【請求項7】
記憶装置が接続されたコンピュータを、
ユーザが操作するユーザ端末及び運行遅延事由を表す情報を提供する外部システムとの間で通信を行う通信手段;
運行時間に影響を与える遅延事由毎の前倒し時間、出発地及び目的地を含む経路探索条件、出発予定時刻、当該出発予定時刻よりも早い喚起時刻並びに当該注意喚起時刻よりもさらに早く到達する探索開始時刻を前記記憶装置に記憶する記憶手段;
現在時刻を計測する時計機構;
出発地と目的地との間の運行経路の探索を行う経路探索手段;
前記時計機構による計測時刻が前記探索開始時刻に達したときに前記外部システムから前記出発予定時刻に判明している運行遅延事由を表す情報を取得し、取得した情報が前記登録された遅延事由と適合するかどうかを判別し、適合するときは、前記出発予定時刻に前記出発地を出発すれば前記目的地に到着するはずの時刻よりも当該遅延事由について記憶された前記前倒し時間以上早く到達する時刻までに当該目的地に到着する新たな運行経路を前記経路探索手段に探索させ、これにより受け取った探索結果により特定される新たな出発予定時刻と前記出発予定時刻との時間差を超える時間だけ前記喚起時刻よりも早めた時刻に所定の喚起情報を前記ユーザ端末へ出力する制御手段;
として機能させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−97281(P2010−97281A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265606(P2008−265606)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(596130185)株式会社 ヴァル研究所 (14)